(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】自然石の水泳用貯水器
(51)【国際特許分類】
E04H 4/00 20060101AFI20221020BHJP
C02F 1/00 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
E04H4/00 502Z
C02F1/00 J
(21)【出願番号】P 2021559514
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 EP2020058371
(87)【国際公開番号】W WO2020193635
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-06
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521438386
【氏名又は名称】ヨゼフ クッサー ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】クッサー、ゲオルク
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第01/003560(WO,A1)
【文献】特許第3018458(JP,B2)
【文献】特公平06-059265(JP,B2)
【文献】国際公開第07/029277(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第02017456(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01760225(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102006049023(DE,A1)
【文献】特開平10-052379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 4/00 - 4/16
A47K 3/02
C02F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一人以上の人を収容する水泳用貯水器(1、1'、1''、1'''、1'''')であって、前記水泳用貯水器(1、1'、1''、1'''、1'''')は、
少なくとも一つの底板(2、2'、2''、2'''、2'''')と、
前記水泳用貯水器(1、1'、1''、1'''、1'''')の使用中に水で満たすことができる内部容積(4、4''、4'''、4'''')を少なくとも一つの前記底板(2、2'、2''、2'''、2'''')とともに包囲する境界壁(3、3'、3''、3'''、3'''')と、
前記内部容積(4,4''、4'''、4'''')にある水を処理するための処理設備(5)であって、前記内部容積(4,4''、4'''、4'''')に接続された入口(51)と、前記内部容積(4,4''、4'''、4'''')に接続された出口(52)と、前記入口(51)と前記出口(52)との間の水の流れ方向に配置された処理要素(53)と、を備える処理設備(5)と、を備え
、
前記底板(2、2'、2''、2'''、2'''')および前記境界壁(3、3'、3''、3'''、3'''')は、それぞれ一つ以上の一枚岩の自然石から構成されており、一枚岩の前記自然石は、前記底板(2、2'、2''、2'''、2'''')と、前記境界壁(3、3'、3''、3'''、3'''')と、前記底板(2、2'、2''、2'''、2'''')と前記境界壁(3、3'、3''、3'''、3'''')との接合面と、の内側において、互いに密着して水密に、互いに接合されていて、
前記底板(2、2'、2''、2'''、2'''')および前記境界壁(3、3'、3''、3'''、3'''')は、それぞれ、厚さ方向に自然石の一層のみで構成されており、前記底板(2、2'、2''、2'''、2'''')は、前記境界壁(3、3'、3''、3'''、3'''')とともに、水密性を維持しつつ、前記水泳用貯水器(1、1'、1''、1'''、1'''')の使用中に前記内部容積(4,4''、4'''、4'''')にある水によって発生する圧力に耐えるように設計されていて、
前記内部容積(4,4''、4'''、4'''')は、少なくとも0.5mの深さ(41)を有し、前記内部容積(4,4''、4'''、4'''')は、少なくとも2mの内部自由長(42,42'、42''')および少なくとも2mの内部自由幅(43,43''')を有して、前記内部自由長(42,42'、42''')は前記内部自由幅(43,43''')に対して直角に配置されている
ことを特徴とする水泳用貯水器(1、1'、1''、1'''、1'''')。
【請求項2】
前記境界壁(3、3''、3'''、3'''')は、前記
水泳用貯水器(1、1''、1'''、1'''')の平
面視において長方形の形状であり、二つの長手方向側壁(31,31'、31'''、31'''')および二つの幅方向側壁(32、32'、32'''')から構築されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の水泳用貯水器(1、1''、1'''、1'''')。
【請求項3】
前記境界壁(3')は、前記
水泳用貯水器(1')の平
面視において、円形か、楕円形か、多角形か、またはこれらの形状が混在した形状で提供される
ことを特徴とする、請求項1に記載の水泳用貯水器(1')。
【請求項4】
前記処理設備(5)は、前記境界壁(3)および前記底板(2)の外側に配置される
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の水泳用貯水器(1')。
【請求項5】
前記入口(51)および前記出口(52)は、前記境界壁(3)の凹部に水密に接続される
ことを特徴とする、請求項4に記載の水泳用貯水器(1')。
【請求項6】
一枚岩の前記自然石は、前記底板(2、2'、2''、2'''、2'''')と、前記境界壁(3、3'、3''、3'''、3'''')と、前記底板(2、2'、2''、2'''、2'''')と前記境界壁(3、3'、3''、3'''、3'''')との接合面と、の内側において、互いに密着して水密に、接着剤を用いて互いに接合されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の水泳用貯水器(1')。
【請求項7】
前記底板(2、2'、2''、2'''、2'''')および/または前記境界壁(3、3'、3''、3'''、3'''')の個々の一枚岩の前記自然石の材料同士を密着させた接合部が前記自然石自体と同様の強度を有する
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の
水泳用貯水器(1、1'、1''、1'''、1'''')。
【請求項8】
前記底板(2、2'、2''、2'''、2'''')および/または前記境界壁(3、3'、3''、3'''、3'''')の個々の一枚岩の前記自然石の材料同士を密着させた接合部が前記自然石自体と実質的に同じ強度を有する
ことを特徴とする、請求項7に記載の
水泳用貯水器(1、1'、1''、1'''、1'''')。
【請求項9】
前記境界壁(3)は、設計定数と、前記深さ(41)の三乗と、の積の累乗根に相当する壁厚を有する
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の水泳用貯水器(1)。
【請求項10】
前記設計定数は前記自然石の最大応力強度に依存する
ことを特徴とする、請求項9に記載の水泳用貯水器(1)。
【請求項11】
前記境界壁(3'')の、前記内部容積(4'')とは反対側である外側を囲むように回収カラー(6'')が配置されて、使用中に前記内部容積(4'')から前記境界壁(3'')を越えてあふれ出る水を集めるようにすることができる
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の水泳用貯水器(1'')。
【請求項12】
前記処理設備
(5)の前記入口
(51)は、前記回収カラー(6'')と流体的に接続されている
ことを特徴とする、請求項11に記載の水泳用貯水器(1'')。
【請求項13】
前記回収カラー(6'')は、一枚岩の自然石で構築され、前記回収カラー(6'')の一枚岩の自然石同士の相互接合、および前記回収カラー(6'')の前記境界壁(3'')との接合は、材料同士を密着させるだけで行われる
ことを特徴とする、請求項12に記載の水泳用貯水器(1'')。
【請求項14】
前記回収カラー(6'')は、実質的に水平に配置された底部分(61'')と、実質的に垂直に配置された壁部分(62'')と、を備え、前記底部分(61'')が前記壁部分(62'')と前記境界壁(3'')とともに排水路(63'')を形成し、前記入口
(51)は底部(61'')の凹部に流体的に接続されている
ことを特徴とする、請求項13に記載の水泳用貯水器(1'')。
【請求項15】
前記
水泳用貯水器(1''')は、前記底板(2''')と前記境界壁(3''')とを少なくとも二つの貯水器部分に分離する少なくとも一つの分離箇所(8''')を備え、少なくとも二つの前記貯水器部分は、前記分離箇所(8''')でクランプ装置(81''')によって互いに接合されている
ことを特徴とする、請求項11乃至請求項14のいずれか1項に記載の水泳用貯水器(1''')。
【請求項16】
前記貯水器部分は、それ自体が一枚岩の自然石で構築されて、材料同士を密着させるだけで互いに接合されている
ことを特徴とする、請求項15に記載の水泳用貯水器(1''')。
【請求項17】
クランプ装置(81''')によって変形されて少なくとも二つの前記貯水器部分を互いに封止する封止材(82''')を前記分離箇所(8''')に挿入する
ことを特徴とする、請求項15に記載の水泳用貯水器(1''')。
【請求項18】
前記分離箇所(8''')が前記回収カラー
(6'')も分離する
ことを特徴とする、請求項17に記載の水泳用貯水器(1''')。
【請求項19】
前記底板(2、2'、2''、2'''、2'''')および前記境界壁(3、3'、3''、3'''、3'''')の一枚岩の自然石は花崗岩で構成され、前記
水泳用貯水器
(1、1'、1''、1'''、1'''')に加工される一枚岩の自然石は、すべて、同じ種類の花崗岩からか、または異なる種類の花崗岩で構成され、および/または、
花崗岩から形成された一枚岩の自然石の表面は、表面処理される
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項18のいずれか1項に記載の水泳用貯水器(1、1'、1''、1'''、1'''')。
【請求項20】
前記底板(2'''')の下方に配置されて複数の支持台(92'''')から成る貯水器台座(9'''')が提供され、前記支持台(92'''')は、互いに間隔を置いて配置され、前記底板(2'''')は前記支持台(92'''')の上に載っていて、および/または、
前記貯水器台座(9'''')はコンクリート板(91'''')をさらに備え、その上に前記支持台(92'''')が互いに間隔を置いて配置される
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項19のいずれか1項に記載の水泳用貯水器(1、1'、1''、1''')。
【請求項21】
前記境界壁(3'''')を少なくとも部分的に取り囲む包囲要素(93'''')が提供され、前記包囲要素(93'''')は、少なくとも一つのスペーサ(931'''')で前記境界壁(3'''')と当接する
ことを特徴とする、請求項20に記載の水泳用貯水器(1、1'、1''、1''')。
【請求項22】
前記スペーサ(931'''')は、前記境界壁(3'''')と前記包囲要素(93'''')との間で力を伝達できるようにした接触要素を介して前記境界壁(3'''')と接続されていて、
前記接触要素は、前記境界壁(3'''')の上半分に存在する
ことを特徴とする、請求項21に記載の水泳用貯水器(1、1'、1''、1''')。
【請求項23】
前記接触要素は、環状である
ことを特徴とする、請求項22に記載の水泳用貯水器(1、1'、1''、1''')。
【請求項24】
前記接触要素は、境界壁(3'''')の上部三分の一の位置に存在する
ことを特徴とする、請求項22に記載の水泳用貯水器(1、1'、1''、1''')。
【請求項25】
前記底板(2、2'、2''、2'''、2'''')および前記境界壁(3、3'、3''、3'''、3'''')を形成する一枚岩の自然石は、一枚岩の自然石同士を密着させて接合することと併せて、前記
水泳用貯水器(1、1'、1''、1'''、1'''')の使用中に前記内部容積(4、4''、4'''、4'''')に存在する水によって生じる圧力に起因して前記底板(2、2'、2''、2'''、2'''')および前記境界壁(3、3'、3''、3'''、3'''')に発生する曲げ引張応力によって発生する力の少なくとも一部を吸収する
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項24のいずれか1項に記載の水泳用貯水器(1、1'、1''、1'''、1'''')。
【請求項26】
前記貯水器台座(9'''')および/または前記包囲要素(93'''')が、少なくとも一つのスペーサ(931'''')と組み合わせて、前記
水泳用貯水器(1、1'、1''、1'''、1'''')の使用中に前記内部容積(4、4''、4'''、4'''')に存在する水から生じる圧力に起因して前記底板(2、2'、2''、2'''、2'''')および前記境界壁(3、3'、3''、3'''、3'''')に発生する曲げ引張応力によって発生する力の一部を吸収し、前記底板(2、2'、2''、2'''、2'''')および前記境界壁(3、3'、3''、3'''、3'''')が前記力の残りの部分を吸収する
ことを特徴とする、請求項21乃至請求項24のいずれか1項に記載の水泳用貯水器(1、1'、1''、1'''、1'''')。
【請求項27】
前記長手方向側壁(31,31'、31'''、31'''')と前記幅方向側壁(32、32'、32'''')は、互いに且つ前記底板(2、2''、2'''、2'''')に対して直角に配置されている
ことを特徴とする、請求
項2に記載の水泳用貯水器(1、1''、1'''、1'''')。
【請求項28】
請求項1乃至請求項27のいずれか1項に記載の水泳用貯水器(1、1'、1''、1''')の製造方法であって、
複数の一枚岩の自然石で構成され、前記一枚岩の自然石同士の接合は純粋に材料同士が密着して行われる底板(2、2'、2''、2'''、2'''')を構築することと、
境界壁(3、3'、3''、3'''、3'''')および/または前記底板(2、2'、2''、2'''、2'''')に、処理設備(5)を接続するために提供される凹部を設けることと、
前記底板(2、2'、2''、2'''、2'''')から垂直に上方へ延設し自閉して、前記
水泳用貯水器(1、1'、1''、1''')の使用中に水で満たされる内部容積(4、4''、4'''、4'''')を前記底板(2、2'、2''、2'''、2'''')とともに水密に囲む前記境界壁(3、3'、3''、3'''、3'''')であって、前記境界壁(3、3'、3''、3'''、3'''')は複数の一枚岩の自然石で構成されており、前記境界壁(3、3'、3''、3'''、3'''')および前記底板(2、2'、2''、2'''、2'''')の一枚岩の前記自然石同士の接合が純粋に材料同士を密着させて行われる前記境界壁(3、3'、3''、3'''、3'''')を前記底板(2、2'、2''、2'''、2'''')の縁に構築することと、
前記内部容積(4、4''、4'''、4'''')と接続された入口(51)と、前記内部容積(4、4''、4'''、4'''')と接続された出口(52)と、前記入口(51)と前記出口(52)との間の水の流れ方向に配置された処理要素(53)と、を備え、前記入口(51)と前記出口(52)が前記凹部に水密に接続されている前記処理設備(5)を接続することと、を含む
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ活動またはレクリエーション活動を行う一人以上の人を収容するための貯水器であって、水泳用貯水器や水泳プールやジャグジーとも呼ばれ、少なくとも底板と境界壁を備えていて、底板と境界壁が当該貯水器の内部容積を囲んでいる貯水器に関するものである。本発明はさらに、そのような貯水器を水泳用貯水器として使用すること、およびそのような貯水器を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水泳用貯水器は、通常は水泳プールとも呼ばれ、一般的にはスポーツ活動の場として、また暑い日には老若男女の涼を取るレクリエーションの場として大変人気がある。それに伴い、水泳プールのサイズやタイプも様々である。中でも、例えば庭の土など地面に埋め込むことで、水泳プールの水面が周囲の地面とほぼ同じ高さになるようにすることができる。また、地面に埋め込まずに、地面から上に立設させて作るタイプもある。これらのタイプでは、水面が周囲の地面よりも高くなる。地面に設置するタイプの水泳プールの場合、側壁は、一方では内側から水泳プール内の水の水圧に、他方では外側から周囲の地面や土の圧力に耐える必要がある。地面から上に立設するように作られた水泳プールの場合、使用時には水泳プール内の水によって発生する水圧に側壁が耐える必要がある。そのため、すべてのタイプの水泳プールには高い強度が要求され、特に水泳プールの側壁の強度が重要となる。
【0003】
前述した必要な強度に加えて、水泳プールには他にも重要な要件がある。水泳プールに使用される素材は、細菌の繁殖を防ぐために通常は塩素処理された水泳プールの水に耐えられるものでなければならない。そのため、水と接触する表面には耐薬品性が求められる。したがって、一方では掃除がしやすいように、また他方では利用者がプールに入る際に滑らないように、表面を工夫する必要がある。表面は、利用者が通常は裸足で、しかも濡れた足で踏むことも多いので、滑りやすい表面ではスリップなどによる怪我のリスクがある。また、水中にある面は、利用者が泳ぐときや、例えばボール遊びやダイビングなどのプールでの他の活動の際に、押し離すことができるように、滑りにくい機能を備えていることが望ましい。自然石の表面は、適切な加工によって表面構造を適切な粗さに調整することができるので、特に水泳プールに適していることがわかっており、また、これらの表面は、非常に上質な印象をもたらし、水泳プール利用者に自然な感覚を持たせることができる。
【0004】
水泳プールや水泳プール製造の分野では、上記のような要件を満たす既知の先行技術が長期間に亘り既に存在している。例えば、ドイツ特許出願DE 10 2006 049 023 A1によれば、自然石の表面を有する水泳プールを製造するために、まずコンクリート製の耐荷重基盤構造を用意し、次にコンクリート製の下部構造の上に自然石製の目立つ表面をかぶせることが知られている。このかぶせ作業には、例えばネジなどの補強材を使用する。さらに、中国の実用新案CN 203050160 Uによれば、花崗岩製の個々の部品がスチールピンによって支持基盤体に固定されている水泳プールが知られている。これらの花崗岩製部品は、基盤体の内側の面にのみかぶせられる。最後に、欧州特許出願EP 1 760 225 A1には、複合材料製のパネルによって耐荷重構造を持つモジュール式水泳プールが開示されている。この耐荷重構造に、あとで自然石の表面処理を施すことができる。
【0005】
WO2007/029277 A1号公報には、人工水盤の様々な実施形態が開示されている。これらの実施形態のいくつかには、自然石から成る仕上げ面が設けられている。開示されている水盤はいずれも多層構造を呈していて、特に防水膜によって密閉されている。さらに、DE 2017456 Aには、内側にある金属部品製の耐荷重構造に、石でできた化粧面がかぶせられている水泳用貯水器が開示されている。金属部品製の耐荷重構造は、水泳用貯水器の底部および側壁の両方を備えている。
【0006】
しかし、上述したようにこの技術分野で既に知られている先行技術の欠点は、自然石の表面を有する水泳プールが例外なく多層構造で必然的に複雑な構成であることである。さらに、これらの既に知られている水泳プールには、他の重大な欠点に加えて、特に、常に腐食の影響を受けやすく、その腐食傾向のせいで長期的に安定した特性を有することができない接合要素が存在する。
【0007】
したがって、本発明の目的は、単純化された全体構造を有し堅牢で長期的に安定した自然石表面の水泳プールを提供することができる解決策を提案することである。
【発明の概要】
【0008】
本発明の上記課題は、スポーツ活動やレクリエーション活動を行う一人以上の人を収容する貯水器であって、少なくとも一つの底板と、一つの境界壁と、を有し、前記底板および前記境界壁は前記貯水器の使用中に水で満たすことができる内部容積を囲む貯水器と、前記内部容積にある水を処理するための処理設備であって、前記内部容積に接続された入口と、前記内部容積に接続された出口と、前記入口と前記出口との間の水の流れ方向に配置された処理要素と、を備える処理設備と、によって解決される。前記底板および前記境界壁は、それぞれ一つ以上の一枚岩の自然石から構成されており、一枚岩の前記自然石は、前記底板と、前記境界壁と、前記底板と前記境界壁との接合面と、の内側において、互いに密着して水密に、具体的には接着剤を用いて互いに接合されている。前記底板は、前記境界壁とともに、前記境界壁に加えて耐荷重下部構造を設けなくても、水密性を維持しつつ、水泳プールの使用中に前記内部容積にある水によって発生する圧力に耐えるように設計されている。さらに、前記内部容積は、少なくとも0.5mの深さ、少なくとも2mの内部自由長、および少なくとも2mの内部自由幅を有し、前記内部自由長は前記内部自由幅に対して直角に配置されている。本発明の好ましい実施形態によれば、本発明による前記貯水器は、自由長と、それと直角に配置された自由幅と、を有する。この場合、「自由長」および「自由幅」は、各々、対応する方向における前記内部容積の最大内寸として理解すべきである。自由幅および自由長に垂直に、前記内部容積の深さが定義される。したがって、本発明による前記貯水器は、少なくとも、自由長×自由幅×深さ=2m×2m×0.5mに相当する寸法を有している。本発明による前記貯水器のさらに好ましい深さは、少なくとも1mの深さである。この深さであれば、前記貯水器内で水中を泳ぐ動作は大人でもできる。本発明による前記貯水器のさらに好ましい自由長は、少なくとも3mの長さである。このような貯水器によれば、単純化された全体構造を有する、堅牢で長期的に安定した自然石表面の水泳プールを提供することができるので、上述の問題に対する解決策を提供し、先行技術の欠点を回避することができる。
【0009】
好ましい実施形態によれば、本発明による前記貯水器は、内部容積を水密に取り囲む貯水器シェルを備えていてもよい。前記内部容積には、前記貯水器の使用時、特に水泳プールとして使用する際に水が満たされる。前記貯水器シェルは、底面が底板で、側面が境界壁で形成されている。前記底板と前記境界壁には、前記貯水器を水泳プールやジャグジーとして使用する際に必要な開口部や凹部を設けることができる。そのような設備としては、例えば、入出口、スポットライト、スピーカーなどがある。
【0010】
先に述べたように、前記貯水器の水を浄化・処理するために、処理設備が提供されている。この処理設備は、通常、前記貯水器の使用期間中は連続して稼働する。実際の水の浄化は、処理要素によって、あるいは処理要素内で行われる。この処理要素は、前記内部容積から前記処理要素に水を運び、前記処理要素から前記内部容積に水を戻すポンプで構成されている。前記処理要素には少なくとも一つのフィルタが設けられており、水から不純物や浮遊物をろ過する。前記フィルタに加えて、殺菌装置や凝集装置などのような、水を浄化したり処理したりする別の構成要素を提供することもできる。前記内部容積から前記処理要素への接続は、例えばパイプとして設計された入口によって形成される。しかし、以下で説明するように、入口の他の実施形態も考えられる。浄化された水を前記処理要素から前記内部容積に戻すための前記接続部が出口で、通常はパイプとして設計されている。
【0011】
本発明によれば、前記貯水器シェル、すなわち底板と境界壁との組合わせは、自然石のみで構成されており、これらの自然石は互いに密着して水密に結合されている。本発明と先行技術の大きな違いは、前記貯水器用の耐荷重下部構造が存在しないことである。これによって、先行技術で知られている貯水器の建設に必要な多くの作業ステップを省略することができる。さらに、本発明に係る貯水器は、先行技術の貯水器と比較して、前記境界壁の厚さ方向に自然石の層が一つしかない。そのため、前記底板も自然石の一層のみで構成されている。この工法では、別の下部構造を作るために必要な作業工程や、それに続いて下部構造に自然石の表面を貼り付けるための作業工程がすべて省略される。もちろん、本発明に係る貯水器は、下部構造が既に存在する場合にはその上に建設することも可能である。特に大きな貯水器の場合は、例えばコンクリート板で形成された下部構造の上に新しい構造を作ることもできる。このような下部構造を使用すれば、特に貯水器の水平方向の配置が容易になる。同時に、貯水器シェル全体は高品質の自然石のみで作られていて、特に花崗岩から作られた貯水器の場合、環境の影響や化学物質に対して長期的に非常に強い耐性がある。したがって、本発明に係る貯水器は、非常に堅牢で耐性がある。自然石の堅固な構造により、本発明に係る貯水器は、そのすべての表面に自然石の表面を有しているので、どんな利用者にとっても極めて高品質に見えて喜ばれる。同時に、この自然石の表面は、非常に心地よいのに滑りにくい触感を持つので、利用者に触覚的に非常に高品質な印象を与える。貯水器表面全体の自然石表面の粗さは、前述の滑りにくさと清掃のしやすさの両方において最適な粗さになるように調整することができる。明確に言うと、非常に滑らかな表面は、清掃しやすいかもしれないが、滑りやすく、全体的な印象としては手触りが良くない。一方、非常に粗い表面は、非常に滑りにくいかもしれないが、非常に粗い表面に付着した汚れが落ちにくいため、掃除がしにくい。しかし、本発明に係る貯水器の自然石表面の粗さは、期待される要件を満たし、利用者が望むように、例えば研磨によって正確に調整することができる。
【0012】
前記貯水器シェルは一枚岩の自然石で構築されている。一枚岩とは、個々の自然石が、例えば採石場で切り出された石から成るなど、一つだけで構成されていることである。一枚岩の自然石は、石の中に分離や結合の部分がないので、非常に高い強度を有している。特に自然石として花崗岩を使用した場合、このような一枚岩の自然石は非常に大きな応力を吸収することができるので、上述のような貯水器シェルは非常に薄肉にすることができ、前記貯水器の印象を非常にスリムにすることができる。また、このようなスリムな形状は、特に前述の先行技術の水泳プールで提案されているような多層構造と比較して、非常に上質な全体的印象を与える。
【0013】
前記底板および前記境界壁を形成する一枚岩の各自然石は、前述した、本発明に係る前記貯水器では、材料同士が互いに接合しただけで、すなわち、追加の形状適合型(確動的)接合要素や力適合型(非確動的)接合要素を使用せずに、接合されることが好ましい。特に、個々の一枚岩の自然石は、薄い接着剤層によって互いに接合することができ、同時に個々の自然石の間を密封することができる。このような材料同士の接着はほとんど目立たないので、本発明に係る貯水器は自然石から完全に一体化して作られているような印象を与えるという利点がある。このような接着に使われる接着剤は、ほとんどの場合、自然石同士の間に配置されるので、光や紫外線にさらされることがなく、長期的に安定した特性を得ることができる。したがって、本発明によれば、前記貯水器シェル全体が堅牢で高品質な素材のみで構成されている。驚くべきことに、このような構造は、従来技術で知られている耐荷重下部構造がなくても、内部容積の水が前記境界壁と前記底板に発生させる力を吸収することができることを、本発明の発明者たちは発見した。前記貯水器の境界壁は、耐荷重支持構造物がなくても、前記貯水器の内部容積の水圧から生じる力を単独で吸収するのに十分な強度を有している。自然石の高い強度を、適切に選択された、材料同士の接着と組み合わせることによって、前記貯水器シェルは非常にスリムな視覚的印象で設計することができ、見る人の目にこれまでにない印象を与えることができる。このスリムな構造は、特に地上に立設した貯水器の場合、非常に魅力的で、高級感のある印象を与えることができる。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、前記境界壁は、前記貯水器の平面図において長方形の形状であり、二つの長手方向側壁と二つの幅方向側壁から構築されていることが分かる。ここで、前記長手方向側壁と前記幅方向側壁は、互いに、前記底板に対して直角に配置されているのが好ましい。本実施形態では、前記貯水器シェルが形成する内部容積は立方体状で、四方を平らな壁で囲まれている。別の一実施形態では、前記境界壁は、前記貯水器の平面図において、円形か、楕円形か、多角形か、またはこれらの形状が混在した形状で提供される。したがって、本発明に係る貯水器は、水泳プールの古典的な内部容積が立方体の形状に限定されるものではない。周方向の前記境界壁は、前記貯水器の平面図において多種多様な形状にすることができ、また、直線部分に加えて、あるいはそれに代えて、曲線部分あるいは円弧部分を有することができる。もちろん、曲線部分を直線部分と組み合わせた形状を選ぶこともできる。また、前記底板は平面にすることに限定されない。貯水器において、例えば平板状の複数の底板部分を互いに段差をつけて配置することで、子供向けの深さと大人向けの深さなど、前記貯水器の領域ごとに内部容積の深さが異なるようにすることができる。また、前記底板は、傾斜していたり湾曲していたりしてもよい。一般的に、貯水器の形状にはほとんど制限がなく、これまでに知られているあらゆる貯水器形状を本発明に係る貯水器で作ることができる。前記境界壁も平面である必要はなく、垂直方向に曲面や段差や平面から外れた他の形状であっても構わない。例えば、前記境界壁を下から上に向かって傾斜させることで、前記貯水器の内部容積を円錐形にすることもできる。
【0015】
本発明のさらなる実施形態によれば、前記処理設備は、前記境界壁および前記底板の外側に配置されることによって、前記入口および前記出口は、前記境界壁または前記底板の凹部に水密に接続されるのが好ましい。前記処理設備は、この設計では、特に保守作業時にアクセスしやすいように、前記貯水器シェルの外側に配置されている。前記処理要素と前記内部容積との接続は、入口と出口を前記境界壁の凹部に接続することによって行われる。また、入口と出口を別のやり方で前記処理要素に接続することも考えられる。例えば、入口として、詳細は後述する回収カラーを前記貯水器に提供してもよい。また、出口として、浄化された水の前記内部容積への別のリサイクルを、例えば前記内部容積に開口する滝などのような形で提供してもよい。また、別のやり方として、前記処理設備を前記内部容積の内側に配置し、そこで例えば別の一枚岩の自然石で前記内部容積の他の部分から分離してもよい。
【0016】
有利なことに、底板および/または境界壁の個々の一枚岩の前記自然石の材料同士を密着させた接合部が同様の強度、具体的には自然石自体と同じ強度を有するように提供することができる。これは、密着させてまとめる接合要素として、硬化した状態で同様の強度、特に、それを用いて接着された一枚岩の自然石と同じ強度を有する接着剤を選択することによって達成できる。接着剤が硬化した状態での曲げ強度や圧縮強度などの強度は、それを用いて接着された自然石の強度と少なくとも同程度であることが望ましい。しかし、硬化した状態の接着剤の強度は、例えば一枚岩の自然石の強度の半分など、より低い強度にしてもよいし、例えば一枚岩の自然石の四倍など、より高い強度にしてもよい。このような強度を有していても、ここで記載した種類の貯水器は、建設し長期的に安全に運営できる可能性が高い。強度とは、ここでは、例えば材料が耐え得る最大の引張応力、圧縮応力、曲げ応力を意味する。特に、使用する接着剤が硬化した状態での曲げ引張強度を考慮する必要がありる。この曲げ引張強度は、前述した、前記自然石の強度に関する前記接着剤の強度の関係に対応するか、少なくとも同様であることが望ましい。前記接合部と前記自然石の強度が同じか、少なくとも同程度であることが好ましいので、全体的に均質な強度の接合が可能となる。このように前記貯水器シェル全体の強度が均一であれば、ひいては、なかんずく、必要な壁の厚さなどの設計計算が簡単で信頼性の高くなるのに都合がよい。また、前記貯水器の想定使用温度に適応した接着剤を使用することが好ましい。60℃の温度まで永続的に安定している接着剤を使用することによって、個々の一枚岩の自然石同士の長期的に安定した接合を保証できる。
【0017】
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、前記境界壁は、設計定数と、深さの三乗すなわち(深さ)3と、の積の累乗根に相当する壁厚を有し、前記設計定数は前記自然石の最大応力強度に依存するのが好ましい。このような本発明の実施形態では、前記境界壁の壁厚は、前記貯水器の内部容積の深さに依存する。前記壁厚を計算するには、まず設計定数に前記貯水器の内部容積の深さの三乗を乗じる。「(深さ)3」は、数学的な原理によれば、前記貯水器の内部容積の深さの三乗に相当する。最後に、さらに前記壁厚を計算する際には、設計定数と(深さ)3の積から平方根を取ることによって、前記境界壁の壁厚が求められる。このようにして算出された前記壁厚は、前記内部容積からの水圧に対して前記境界壁が恒久的な強度を持つために必要な最小の壁厚となる。もちろん、前記境界壁は、計算された前記最小値よりも厚く設定することも可能である。従来技術で知られた水泳プールでは、貯水器の構造的強度は、コンクリートやスチールなどの既知で標準的な材料から成る、部分的または全面的な耐荷重下部構造によって提供されており、自然石は構造的機能を持たない補助的な表面材料としてかぶせられている。このような下部構造用として知られる材料や建設方法については、昔から計算原理があり、そのうちのいくつかはすでに標準化されている。これに対して、本発明による前記貯水器は、耐荷重下部構造を持たないので、本発明による前記貯水器の強度は、層理のない自然石から作られた前記境界壁によってのみもたらされることになる。水泳用貯水器を上述のように作るに際し、自然石だけで作られた貯水器、特に水泳プールの設計には、これまで、決まった計算原理はない。従来技術では、内部容積の水圧によって発生する、境界壁において支配的な応力を計算することしか知られていなかった。しかし、これらの応力を長期的に安定して安全に補償するために自然石からどのような厚さを選択すればよいのかについて、指針となる値は存在しない。したがって、水泳用貯水器として好適な純粋な自然石貯水器は、従来技術によるものは知られておらず、このような規模の貯水器の製造業者は、これまで一貫して、コンクリートなどの下部構造に自然石を表面部材としてかぶせるという、既知の「確実な」建設方法を採用してきた。自然石貯水器の素材としては、花崗岩、ノーライト、片麻岩などの硬い石が特に適しており、中でも花崗岩は好まれる素材選択肢の一つとなっている。自然石貯水器は、もちろん他の自然石を使って作ることもできる。ここで、前記壁厚の設計には、選択した自然石の強度を考慮する必要がある。
【0018】
さらに、本発明では、前記境界壁の、前記内部容積とは反対側である外側を囲むように回収カラーが配置されて、使用中に前記内部容積から前記境界壁を越えてあふれ出る水を集めるようにすることができる。前記処理設備の前記入口は、前記回収カラーと流体的に接続されるのが好ましく、前記回収カラーは、一枚岩の自然石で構築され、前記回収カラーの一枚岩の自然石同士の相互接合、および前記回収カラーの前記境界壁との接合は、材料同士を密着させるだけで行われるのが好ましい。これとは別の一実施形態によれば、前記貯水器からあふれ出る水を集める回収カラーを提供することができる。例えば、前記処理設備が浄化された水を前記内部容積にポンプで送り込む際に、前記内部容積から水がこぼれる。これによって、前記貯水器からある程度オーバーフローが発生し、余剰水は前記回収カラーによって集められ、前記入口を経由して前記処理設備に戻される。これによって、前記余剰水は、前記境界壁の全周にわたってその上縁を越えて直接に排水され、前記境界壁の外縁を直接流れて前記回収カラーに入ることができる。オーバーフロー貯水器とも呼ばれるこのような一実施形態では、前記貯水器からオーバーフローした水の水流は前記回収カラーに入り、その後、オーバーフロータンクに入り、続いて前記処理設備に入り、最後に前記貯水器に戻ることになる。また、前記余剰水を特定の場所で前記境界壁を越えるか中を通して導くこともできる。例えば、前記境界壁の上端の最も低い位置にオーバーフロー先端部を設けることで、前記内部容積から集まった余剰水をそこから運び出すことができる。このようなオーバーフロー先端部は、前記回収カラーと重なるように配置されている。これによって、前記余剰水は前記回収カラーに導かれ、前記貯水器全体が周囲物に対して水密に設計されていることが保証される。さらに別の一実施形態では、重なり先端部が、前記境界壁の周りに、前記境界壁に対して水密に配置される。このような重なり先端部は、水平方向に前記境界壁から外側に伸びる。前記境界壁の上端を越えた水は、そのまま境界壁を下に流れ落ち、最後に前記重なり先端部に出会う。水は前記重なり先端部に沿って外側に流れ、最後に前記重なり先端部の最も低い部分から滴り落ちる。前記重なり先端部は、このように、前記内部容積からこぼれ出た水を、前記境界壁を起点として外部に導く。本実施形態では、前記内部容積からオーバーフローした水を回収する回収装置を、前記貯水器シェルとは別に配置してもよい。例えば、前記貯水器とは接続されていない余水路を提供してもよい。したがって、前記余水路は前記貯水器とは異なる素材で作ることもできる。本実施形態では、前記重なり先端部も一枚岩の自然石から作られており、それ自体と前記境界壁とは、純粋に材料同士の接合、具体的には接着剤による接合によって接合されている。前記重なり先端部は、例えばポリエチレンやスチールなどの別の材料で作ることもできる。前記重なり先端部の下に滴下方向に配置された余水路または他の回収装置は、前記貯水器シェルに直接には接続されないように設計してもよい。したがって、重なり先端部は、前記内部容積からこぼれた水を導く役割を果たす。このような重なり先端部は、もちろん、周りを取り囲んで前記貯水器シェルに接合された回収カラーと組み合わせることもできる。前記回収カラーは、前記貯水器シェルと同じやり方で、すなわち、一枚岩の自然石を、材料同士を密着させるだけで前記貯水器シェルと接合して構築することができる。この結果、前記回収カラーには、上述した前記貯水器シェルと同様のメリットがある。前記回収カラーは前記境界壁を囲むように設置されているので、前記貯水器に入りたい人やそこから出たい人が前記回収カラーを踏んでしまう可能性がある。前記回収カラーはまた、滑りにくく手触りがよい表面から成るので、前記貯水器の利用者は、前記回収カラーの領域でも、使用上の安全性を確保できると同時に心地よい手触りを感じることができる。
【0019】
本発明では、前記回収カラーは、実質的に水平に配置された底部分と、実質的に垂直に配置された壁部分と、を備え、前記底部分および前記壁部分が前記境界壁とともに排水路を形成できることが好ましい。したがって、前記入口は底部の凹部に流体的に接続されているが、前記境界壁に配置されていても構わない。本発明に係る前記貯水器のこのような実施形態では、前記回収カラーの個々の領域が一緒になって排水路を形成し、この排水路は、前記内部容積からこぼれた水を回収し、オーバーフロータンクを介して前記処理設備の入口に供給することを意図している。ここで、前記回収カラーは、個々の一枚岩の自然石同士を密着させて構成してもよい。あるいは、一体化した前記底部分から前記排水路を作り出すことも可能で、例えば研磨して作り出すこともできる。また、前記排水路にカバーを設け、その下を通って排水が流れ出るようにしてもよい。このようなカバーもまた、排水できる穴や凹みが内部に配置された、自然石の板で構成できるのが好ましい。
【0020】
別の好ましい一実施形態によれば、前記貯水器は、前記底板と前記境界壁とを少なくとも二つの貯水器部分に分離する少なくとも一つの分離箇所を備える。少なくとも二つの前記貯水器部分は、前記分離箇所でクランプ装置によって互いに接合されているのが好ましく、前記貯水器部分は、それ自体が一枚岩の自然石で構成されているのがさらに好ましく、材料同士を密着させるだけで互いに接合されている。場合によっては、前記貯水器を一体で輸送して目的地に設置することができないこともある。その理由としては、例えば、貯水器の寸法が大きすぎて輸送車に載らないなどがあり得る。特に、前記貯水器の内側自由長や自由長が10mを超える場合はそれに該当する。しかし、例えば、設置場所やその途中にスペースがなく、小さな部分しか前記設置場所に運べない場合など、寸法が小さくても前記貯水器に分離箇所が必要な場合もある。また、前記貯水器の構築には耐荷重が限られた機械しか使えないので、重量の関係で前記貯水器をいくつかの部分に分割することが必要な場合もある。このように、様々な理由で前記貯水器を複数の個別部分に分割することが必要な場合がある。上述した前記実施形態では、前記貯水器は複数の個別部分で構成されていて、それぞれが上述した一つ以上の前記実施形態に従って構成されており、特に、耐荷重下部構造を有していない。これらの実施形態では、前記貯水器は、複数の個別部分で構成するモジュラー方式を採用している。このようなモジュール方式は、例えば、設置場所に少ししかスペースがなく、大型の機械を使用できない場合にも適している。この場合、前記貯水器の個別部分を手作業または小型軽量の機械で位置決めして構築する必要がある。前記貯水器が複数の小さくて軽い部分で構成される場合は特に便利である。また、例えば、高層ビルの屋上に貯水器を設置することも可能である。また、高所に貯水器を設置する際にも、単一部分で構成された貯水器よりもはるかに容易に前記個別部分を設置場所に運ぶことができる前記モジュラー方式は有効である。
【0021】
前記個別部分は、前記貯水器の設置場所において前記個別部分の間の分離箇所で互いに接合されることが好ましい。前記個別部分を前記分離箇所で接合するために、構築された状態で、前記貯水器または前記貯水器シェルの前記個別部分を非確動的に接合させるクランプ装置が提供されるのが好ましい。しかし、これらのクランプ装置は、各々の前記分離箇所に作用するだけで、前記個別部分の一枚岩の自然石同士の接合には作用しない。クランプ装置によって変形されて少なくとも二つの前記貯水器部分を互いに封止する封止材を前記分離箇所に挿入することが好ましく、前記分離箇所が前記回収カラーも分離することがさらに好ましい。これらの実施形態では、前記分離箇所の表面または内部に、前記貯水器シェルの個別部分の間の水密性を支援する封止材を提供してもよい。このような封止材は、例えば、前記分離箇所に挿入されるいわゆる封止コードによって形成できる。このような封止コードを収容するために、前記個別部分の境界面に溝を設け、前記封止コードをある程度収容し、前記封止コードの残りの部分が前記溝および前記境界面を越えて外側に突出するようにしてもよい。このような溝によって、前記封止コードは、前記個別部分をクランプする際に導かれるので、接合される構成要素同士の間で意図せずに滑ってしまうことはない。また、前記溝があることで、目に見える接合部分の寸法を小さくすることができる。あるいは、他の封止材を使用することも可能であり、例えば、封止糊や、一枚岩の自然石同士を互いにまとめて接合するための接着剤などがある。
【0022】
好ましい一実施形態によれば、前記底板および前記境界壁の一枚岩の自然石は花崗岩から成って提供されるのがさらに好ましく、前記貯水器に加工される一枚岩の自然石は、すべて、同じ種類の花崗岩からか、または異なる種類の花崗岩から成るのが好ましい。花崗岩は、とりわけ強度と硬度が高く、加工しやすく、様々な色や色調があるので、特に貯水器の構築に適することがわかっている。そこで、本発明による前記貯水器は、単一の種類の花崗岩のみで構成することによって、均一な外観を得ることができる。あるいは、貯水器用に様々な異なる種類の花崗岩を使用することも考えられる。例えば、前記貯水器には濃い色調の自然石を、周囲の前記回収カラーには薄い色調の花崗岩を使用してもよい。もちろん、他の可能性として同一色ではない色の組合せも考えられる。例えば、前記貯水器シェル用として明色の一枚岩の自然石と暗色の一枚岩の自然石とを交互に並べることも可能で、好みのパターンを設定することができる。本発明の別の好ましい一実施形態によれば、花崗岩から形成された一枚岩の自然石の表面は、表面処理されるように提供できる。このような表面処理は、その特性に影響を与える可能性がある。例えば、塗装膜や含浸剤を施すことで、改質した外観を自然石に与えることができる。また、水中の化学物質に対する表面の耐性をさらに向上させるために、含浸剤を塗布することも考えられる。
【0023】
本発明に係る前記貯水器の別の一実施形態では、前記底板の下方に配置されて複数の支持台から成る貯水器台座が提供され、前記支持台は、互いに間隔を置いて配置され、前記底板は前記支持台の上に載っている。この実施形態では、前記貯水器は、前記底板の下方に位置する貯水器台座の上に配置されている。この貯水器台座は、前記内部容積にある水と前記貯水器シェルの自重とによって発生する重量を底土に誘導する役割を果たす。ここで、前記貯水器台座は、互いに間隔を置いて、具体的には、一定の間隔で配置された複数の支持台で構成されている。ここで、前記支持台は、個別に底土に固定することも、共通の要素に固定することもできる。前記貯水器の底板は、前記支持台の上に全面的に載っているわけではなく、ある部分だけが載っている。前記支持台同士の間は空洞となっており、その中では前記底板が支持なしで続いている。これらの空洞領域では、前記底板は、前記貯水器内の水の重さと圧力によって曲げ応力を受け、単独で、つまり追加の補助構造や耐荷重構造なしに、自らに作用する曲げ引張応力を吸収する。
【0024】
オプションとして、本発明に係る前記貯水器では、前記貯水器台座はコンクリート板をさらに備え、その上に前記支持台が互いに間隔を置いて配置されることも提供できる。本実施形態では、前記貯水器台座は、複数の支持台がその上に配置される、水平に配向されたコンクリート板で構成されている。このようなコンクリート板を設けることで、前記貯水器全体の水平配向が、個別に固定される支持台を有する場合に比べて容易に実現できる。
【0025】
別の一実施形態では、前記境界壁を少なくとも部分的に取り囲む包囲要素が提供され、この包囲要素は、少なくとも一つのスペーサを有して前記境界壁と当接し、強固にまたは摩擦を介して接続されている。つまり、前記包囲要素は、少なくとも一つのスペーサを有して前記境界壁と接触しており、それ相当の圧縮力を吸収することができるが、必ずしも引張力を吸収する必要はない。ここで、前記貯水器は、前記貯水器を水平方向にその周囲を取り囲む周辺領域につなぐ役割を果たす少なくとも一つの対応する包囲要素を備える。例えば、前記包囲要素の上に、例えば自然石やタイルなどで作られた踏み石を設置して、前記貯水器への通路やアクセスとして機能させることができる。また、前記包囲要素に土や腐植土をかけて、前記境界壁まで含めた前記貯水器の周囲に植えることも可能である。したがって、前記包囲要素は、前記貯水器のうち前記貯水器シェルの外側の周囲を様々に構成するための支援要素として機能する。この点での一つの実施形態は、前記境界壁に対して前記内部容積とは反対側にある前記境界壁の全周に亘って、前記包囲要素を張りめぐらすことである。あるいは、前記包囲要素は、前記貯水器の外周の一部に沿ってしか延びていなくてもよい。前記包囲要素は、前記境界壁の周りに、前記境界壁までのスペーサとしての間隔を空けて配置されるのが好ましい。前記包囲要素は、例えば、前記包囲要素と前記境界壁との間の配向および/または位置を固定する役割を果たす少なくとも一つのスペーサを介して、前記貯水器に固定される。前記包囲要素が前記境界壁の大部分または前記境界壁全体を取り囲む場合には、互いに間隔を空けて配置された複数のスペーサを設けてもよい。
【0026】
別のオプションとして、本発明に係る貯水器において、前述のスペーサが、前記境界壁と前記包囲要素との間で力を伝達できる、具体的には環状の接触要素を介して前記境界壁に接続されていて、そのような接触要素が、前記境界壁の上半分、具体的には境界壁の上部三分の一の位置に存在するように提供してもよい。本実施形態では、前記包囲要素と前記境界壁との間の接合と力の伝達は、前記スペーサの上述の接触要素を介して行われる。便宜上、前記接触要素は円形であり、限られた領域でしか前記境界壁と当接しない。そのため、前記包囲要素と前記境界壁との間の力の伝達は、前記接触要素と前記境界壁との間の接触面の領域でしか行われない。通常、前記包囲要素は前記境界壁の上端付近に配置されるという事実によって、前記接触要素を備えた前記スペーサも、前記境界壁の上半分、具体的には上部三分の一に配置される。したがって、前記境界壁と前記包囲要素との間の力の伝達は、前記境界壁のこの上部領域でしか行われない。そのため、前記境界壁の下半分では、通常、前記包囲要素と前記境界壁との間で力の伝達は行われない。
【0027】
本発明による貯水器の別の一実施形態では、前記底板および前記境界壁を形成する一枚岩の自然石が、一枚岩の自然石材料同士を接合することと併せて、曲げ引張応力によって発生する力の少なくとも一部を吸収するように提供されて、前記曲げ引張応力は、前記貯水器の使用中に前記内部容積に存在する水によって生じる圧力に起因して前記底板および前記境界壁に発生する。前記底板と前記境界壁で構成される前記貯水器シェルを形成する自然石には、水圧による曲げ応力がかかる。従来の技術では、貯水器シェルの外面全体がそれに載せられて水圧による力を吸収する全面使用の下部構造はまだ提供されていない。ここで、前記貯水器シェルは、前記内部容積にある水から生じる力の少なくとも大部分を吸収する。少なくとも一つのスペーサを介して前記境界壁に接合されている上述のような包囲要素を使用する場合、前記貯水器の内部の水圧に起因する力の一部をこの包囲要素によって吸収することが可能である。しかし、いずれにしても、前記貯水器の内部の水圧によって生じ自然石だけで吸収することができる曲げ引張応力が、自然石に発生する。ここで、前記包囲要素は、自然石に作用する圧縮力を吸収することによって自然石から取り除き、自然石内のこれらの曲げ引張応力を低減することができる。
【0028】
別のオプションとして、本発明に係る貯水器では、前記貯水器台座および/または前記包囲要素が、少なくとも一つのスペーサと組み合わせて、前記貯水器の使用中に前記内部容積に存在する水から生じる圧力に起因して前記底板および前記境界壁に発生する曲げ引張応力の一部を吸収し、前記底板および前記境界壁がこれらの曲げ引張応力の残りの部分を吸収するように提供することができる。前記貯水器台座および/または前記包囲要素は、自然石に作用する圧縮力を吸収して放散することができるので、自然石の引張曲げ応力を低減し、自然石から取り除くことができる。そのため、本実施形態では、前記貯水器シェルの内部の水によって生じる力や荷重の一部が、前記貯水器台座および/または前記貯水器シェルに接合された前記包囲要素によって弱められる。これらの要素を前記貯水器シェルに接合することによって、前記貯水器シェルが部分的に支持されたり解放されたりして、前記貯水器シェルの自然石にかかる曲げ引張応力を軽減することができる。
【0029】
また、本発明の課題は、スポーツ活動やリクリエーションに供する活動を行う一人以上の人を収容する貯水器として、自己支持型の貯水器シェルを使用することによって解決される。前記貯水器シェルは、底板と境界壁とによって形成されており、前記底板および前記境界壁は、それぞれ少なくとも一つの一枚岩の自然石で構成されており、一枚岩の前記自然石は、材料同士を密着させて接合するだけで水密に互いに接合されている。本発明によれば、材料同士が互いに接合された自然石のみで構成された貯水器は、貯水器や水泳プールとして使用される。また、前記貯水器内にある水を処理する処理設備を提供することもできる。自己支持型の前記貯水器シェルは、少なくとも一つの自らの分離箇所によって分割されて、前記貯水器シェルの少なくとも二つの部分を互いに別々に前記構築場所に輸送可能となると同時に、前記構築場所で互いに水密に接合可能となるのが好ましく、それによって、前記構築場所で前記貯水器、好ましくは先に説明した本発明に係る貯水器が形成されるように提供される。本発明を使用するこの実施形態では、個別部分から構成される多部分構成貯水器は、前記構築場所で接合され、その後、水泳用貯水器および/または水泳プールとして使用される。ここで、前記個別部分は、本発明に係る、本発明がもたらす利点を有する前記貯水器の既述の実施形態の一つ以上にそれぞれ対応している。
【0030】
最後になるが、本発明の課題は、さらに、具体的には、上述した各実施形態の一つによる貯水器の製造方法によって解決され、本発明による方法は、好ましくは、以下に記載された順序のとおりに、
(a)複数の一枚岩の自然石で構成され、前記一枚岩の自然石同士の接合は純粋に材料同士が密着して行われる底板を構築することと、
(b)境界壁および/または前記底板に、処理設備を接続するための凹部を設けることと、
(c)前記底板から垂直に上方へ延設し自閉して、前記貯水器の使用中に水で満たされる内部容積を前記底板とともに水密に囲む前記境界壁であって、前記境界壁は複数の一枚岩の自然石で構成されており、前記境界壁および前記底板の一枚岩の前記自然石同士の接合が純粋に材料同士を密着させて行われる前記境界壁を前記底板の縁に構築することと、
(d)前記内部容積に接続された入口と、前記内部容積に接続された出口と、前記入口と前記出口との間の水の流れ方向に配置された処理要素と、を備え、前記入口と前記出口が前記凹部に水密に接続されている前記処理設備を接続することと、を含む。
【0031】
本発明に係る前記方法は、特に、先に述べた構成の一つに従って貯水器を構築するのに役立つ。そのために、まず底板を個別の一枚岩の自然石で構成する。この底板の下には、コンクリートなどの耐荷重構造物は必要ない。もちろん、例えばコンクリート板のような下部構造の上に前記貯水器を構築することも可能で、これにより、前記貯水器の例えば水平方向における配向が容易になる。しかし、このような下部構造は絶対に必要というわけではない。前記底板は、小石や砂が敷き詰められた底土の上に直接置くことができる。そして次のステップでは、境界壁を前記底板に接合する。前記境界壁は、前記底板の上に設置することも、前記底板の横に接合することもできる。底板と、境界壁と、両者の接合部と、は、材料同士を密着させるだけで形成される。他の材料で作られた接合要素は使用されない。個々の一枚岩の自然石の間の前記接合部は、一方では機械的な結合の役割を果たすと同時に、他方では前記底板および前記境界壁で形成される前記貯水器シェルを密閉する役割も果たす。貯水器シェルの構築後、必要であれば、前記貯水器用の設備を収容するのに役立つ凹部を前記貯水器シェルに形成する。最後に、前記貯水器の使用中にその中にある水を浄化することができるように、処理設備が前記貯水器シェルに接続される。本発明に係る方法で、簡略化された全体構造を有する、堅牢で長期的に安定した自然石表面の水泳プールを提供することができ、これによって、上述したような既知の問題に対する解決策をさらに提供して先行技術の欠点を効果的に回避することができる。
【0032】
一体で、つまり分離箇所なしに設置場所まで輸送可能な貯水器の製造は、通常は完全に製造工場で行われる。そこで、前記底板を前記境界壁と材料同士で接合させて、具体的には接着させて、前記貯水器シェルが完全に構築される。通常は、設置場所での接着は行われない。前記貯水器の製造の最終工程である、前記処理設備の接続は、通常は、現地で前記貯水器の設置場所で行われる。一つ以上の分離箇所を有する貯水器の場合、通常は、すべての材料同士の接合、具体的には接着は、製造工場で行われる。したがって、前記貯水器の個別部分やモジュールもまた可能な限り工場で迅速に準備されるので、設置場所で前記貯水器シェルを完成させるには、個別部分やモジュールを分離箇所で接合することだけが必要になる。個別部分やモジュールは、前記底板の部分と前記境界壁の部分の両方で構成することができる。したがって、提供される分離箇所は、底板および境界壁を端から端まで通る。前記貯水器シェルの一枚岩の自然石、したがって前記底板の内側と、前記境界壁の内側と、底板と境界壁との前記接合部と、の接着は、製造工場において一定の環境条件の下で、処理的に非常に安定して行うことができる。具体的には、製造工場では、一定の気候条件と、自由に設定できる必要な純度と、が得られる。しかし、設置場所で接着を行うことも可能である。ただし、設置場所での接着の欠点として、例えば湿度や汚染など、接着処理に適さない境界条件があり得る。
【0033】
前記貯水器の一実施形態を説明するために上述した特徴は、類似的に、本発明による使用を規定するため、および本発明による処理を規定するために使用することができ、使用上の特徴および/または処理上の特徴として明示的にここに開示される。同じことが逆方向にも当てはまり、用途や処理についてのみ開示される特徴が、本発明による貯水器を規定するために使用されることもあり得る。
【0034】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される可能性があるように、単数形の「ein」/「eine」/「einer」および「der」/「die」/「das」は、文脈が明らかにそうでないことを示していない限り、それらの複数形も含み得る。同様に、「umfassen」、「enthalten」、「aufweisen」という単語は、「ausschlieslich」および「nicht ausschlieslich」の両方、すなわち「einschlieslich, aber nicht beschrankt auf…」という意味で理解されるべきものである。また、「mehrere」、「Vielfaches」、「Vielzahl」という用語は、通常、二つ以上、すなわち2、または1のさらなる整数倍数を含んだ、>2を意味し、「einzeln」または「allein」という用語は、一、したがって「=1」に言及する。さらに、「mindestens eins」または「wenigstens eins」という表現は、一つ以上、すなわち1、または同様に整数倍数を有する、>1を意味する。さらに、「hierin」、「oben」、「vorher」、および「unten」、または「nachfolgend」という単語および同様の意味を持つ単語が本明細書で使われた場合は、本明細書全体を指しており、本明細書の特定の部分を参照しているのではない。
【0035】
本明細書の特定の実施形態の説明は、網羅的であること、または本明細書で提供される開示を開示通りの形態に限定することを意図するものではない。本明細書に記載されている、本開示の具体的な実施形態および実施例は、説明を目的としたものであるが、本技術分野の当業者であれば理解できるように、本開示の保護範囲内で様々な同等の変形例が可能である。記載されている実施形態の特定の技術要素は、他の実施形態の技術要素と組み合わせたり、置き換えたりすることができる。図面では、繰り返しを避けるため同種の参照符号は同種の要素を示し、特別な知識がなくても当業者が実施可能な部分は、分かりやすくするために省略することがある。本開示の特定の実施形態に関連する利点は、それらの実施形態に関連して説明されるが、他の実施形態もこれらの利点を有し得る。
【0036】
以下の実施形態は、本発明の様々な可能な変形例を説明するためのものである。したがって、後述するような具体的な技術的詳細は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。添付の特許請求の範囲で定義される本願の保護範囲から逸脱することなく、様々な変形や変更を行うことができることは、当業者には明らかである。本発明の別の態様および利点は、図に示す好ましい実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明に係る貯水器の好ましい実施形態の斜視図である。
【
図2】本発明に係る貯水器の好ましい第二実施形態の平面図である。
【
図3】本発明に係る貯水器の好ましい第三実施形態の斜視図である。
【
図4】本発明に係る貯水器の第四実施形態の斜視図である。
【
図5】本発明に係る
図4の貯水器の二つの貯水器部分の接合前の断面を示す斜視図である。
【
図6】本発明に係る貯水器の第五実施形態の断面側面図である。
【
図7】本発明に係る貯水器の
図6に示した第五実施形態の切断詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の好ましい実施形態に関する以下の説明において、図は本発明の主題を模式的に示しているに過ぎない。本発明の好ましい実施形態を図面に示し、以下でより詳細に説明する。
【0039】
図1は、本発明に係る貯水器1の好ましい一実施形態の斜視図である。 図示されている第一実施形態は、長方形の基本形状を有している。貯水器1の底面には底板2が形成されている。この底板2は、ここでは一枚岩の自然石だけで形成されている。「一枚岩」という用語は、ここでは、底板2が単一部分で構成されており、いくつかの個別部分から構築されているのではないことを意味するものとして理解すべきである。通常、このような一枚岩の自然石は、採石場から最終形状よりも大きく採取され、あとで所望の寸法に加工される。底板2の上には、境界壁3が載置される。境界壁3は、底板2によって下側が限定された貯水器1の内部容積4を取り囲んで限定する。貯水器1の使用時には、境界壁3の上端まで内部容積4に水を入れることができる。ここで、境界壁3は、前から後に向かって、すなわち水泳プール1の長手方向に延びて、長手方向側壁31とも呼ばれる二つの側壁31と、右から左に向かって、すなわち貯水器1の幅方向に延びて、幅方向側壁32とも呼ばれる二つの側壁32と、で構成される。
【0040】
境界壁3の個別部分は、材料同士が密着して互いに接合されている。個別部分の接続は、図示されている実施形態では、接着だけで行われている。境界壁3の底板2への接合も、接着だけで行われる。例えばネジやクリップなどの接合要素は一切使用されていない。境界壁3も、接着部分以外は、自然石のみで構成されている。したがって、底板2および境界壁3で形成される、貯水器1の貯水器シェルの全体が、自然石および接着部分だけで作られる。使用される接着剤および自然石は、水に対しても塩素水に対しても非常に長い間化学的に耐性がある。金属製の接合要素を使用していないため、貯水器シェル全体が長期間にわたって腐食しにくい。図示した実施形態では、前側の幅方向側壁32および二つの長手方向側壁31は、それぞれ単一の一枚岩の自然石から形成されている。一方、後側の幅方向側壁32は、複数の一枚岩の自然石で構成される。後側の幅方向側壁32のこれらの個別部分は、貯水器1の貯水器シェルの他の部分と同様に、互い同士だけで接着され、すなわち、ここでも追加の接合要素は使用されていない。後側の幅方向側壁32を複数の自然石で構築するようなことを、具体的には大きい寸法の貯水器1で選択した場合、個々の自然石の最大の大きさは、例えば採石場から石加工現場や水泳プール製造場への輸送の必要性によって制限される。本発明によれば、貯水器1の個別部分は、自然石自体と同じ機械的強度を有する接着剤結合によって互いに結合される。特別な用途の場合、貯水器の個々の一枚岩の自然石同士の接着剤接合に加えて、形状適合型接合要素や力適合型接合要素を配置することももちろん可能である。応用例としては、例えば高層ビルの屋上に貯水器を設置する場合のように、貯水器の構築に対してより厳しい安全規制が存在する可能性がある。このような場合には、例えば複合アンカーのような規定の追加的な接合要素を適用して、境界壁3および底板2の個別部分の接合が追加的な保護基準に従うようにすることももちろん可能である。
【0041】
本発明による貯水器1は、自然石以外の材料で作られた耐荷重下部構造を有しない。底板2および境界壁3という形態の、自然石で構築された強固な要素だけで、水圧を吸収するのに必要な強度を確保している。したがって、本発明に係る貯水器1は、自立して、自然石だけで作られている。もちろん、本発明に係る貯水器は、例えばコンクリート板の下部構造の上に取り付けることも可能である。しかし、このような下部構造は、恒久的な静的強度を得るために必要ではない。自然石、特に花崗岩は、長期間の安定度が非常に高く、通常のコンクリート製の下部構造よりもはるかに長期間の安定度が高い。また、自然石の強固な構造は、個々の層同士の間に、例えば下部構造と化粧面との間に、水が浸入するのを防ぎことができる。このように、本発明に係る貯水器は、高品質な素材を使用しているため、既知の水泳プールや貯水器よりも大幅に耐久性がある。最初に下部構造を作り次にこの下部構造に自然石製の表面をかぶせる先行技術に係る貯水器と比較して、本発明に係る貯水器1は、大幅に減少した作業工程で作ることができる。また、本発明に係る貯水器1は、全体的に、例えばその外側も、自然石の表面から成っている。その結果、本発明に係る貯水器1は、ほぼ非常に高品質な素材だけで構成されているため、使用者に非常に高品質な印象を与えると同時に、どこをとっても最適な滑りにくい表面を提供することができる。本発明に記載されている製造方法によれば、貯水器1の境界壁3を非常にスリムにすることが可能であり、したがって、コンクリートの下部構造とその後にかぶせられる自然石の化粧面を有する既知の水泳プール/貯水器の多層構造よりもかなりスリムにすることができる。
【0042】
本発明に係る貯水器1の図示した実施形態における内部容積4は、立方体である。内部容積4は、深さ41が0.5mより大きい。さらに好ましい深さ41は、1mよりも大きい深さである。内部容積4の自由長42は2mより大きく、内部容積4の自由幅43は2mより大きい。これらの好ましい寸法によって内部容積4内にある水を使い、使用者は、水泳やその他のスポーツまたはレクリエーション活動を行うことができる。
図1では、右側の長手方向側壁31の右側に、処理設備5が見えている。処理設備5は入口51を備え、それを介して、内部容積4内にある水が、長手方向側壁31の後部の凹部を介して処理要素53に供給される。ここで、処理要素53は、典型的には、水を搬送するためのポンプと、搬送された水から浮遊物や汚れを濾過するフィルタと、を備える。処理された水は、処理要素53の後、出口52を介し、図示の場合は右側の長手方向側壁31の前部の下半分にある凹部を介して、内部容積4に戻る。処理設備5は、処理要素53に加えて、例えば殺菌装置および/または凝集装置のような別の構成要素を備えていてもよい。
【0043】
図2は、別の第二の好ましい実施形態である貯水器1'の平面図である。
図1に示した第一の好ましい実施形態とは対照的に、
図2に示した第二の実施形態の境界壁3'は、平面視で長方形の形状を有さない。
図2の境界壁3'のうち下向きの領域だけが、下側の幅方向側壁32'と長手方向側壁31'の形で、平らな壁で構築されている。上側の幅方向側壁32'は、
図2に示した平面図において、半円環の形状、もっと厳密に言えば、ほぼ文字「U」を逆さにした形状をしている。内部容積4'の自由長42'は、ここでは、下側の平らな幅方向側壁32'と、そこから最も離れた、
図2に示した図では上側の幅方向側32'の円環の最上部に位置する点である、上側の幅方向側壁32'の曲線の頂点と、の間に延びる内部容積4'の最大の長さ寸法である。本発明に係る貯水器1'は、平面視で多種多様な形状を有することができる。
図2に示した形状は、直線的な壁と曲線的な壁が混在する形状である。もちろん、平面図で、例えば純粋な円環形状や多角形の形状のような他の形状を有する境界壁も設計することができる。ここで、自由長および自由幅は、常に貯水器シェルの内部容積のそれぞれの方向における最大寸法として定義される。
図2に示した、貯水器1'の実施形態では、底板2'が合計三つの一枚岩の自然石で構成されており、接着によって形成された接合部が
図2において水平方向に走っている。
図2は、貯水器1'を簡略化して示しただけで、分かりやすくするために、処理設備は示していない。
【0044】
図3は、第三の好ましい実施形態である貯水器1''の斜視図である。ここに示した実施形態は、
図1における貯水器1の実施形態と同様に、底板2''および境界壁3''で形成される貯水器シェルを備える。ここでも、底板2''および境界壁3''は、内部容積4''を囲んでいる。
図1に示した実施形態を参照して既に説明したように、底板2''および境界壁3''は、一枚岩の自然石で強固に構成されており、これらは材料同士を密着させるだけで互いに接合されている。
図3に示した好ましい実施形態では、分かりやすくするためにここでは図示していない処理設備も備えており、この処理設備は、内部容積4内の水を処理要素に連続的にポンプで送り込み、そこで水を浄化する。浄化後の水は内部容積4''に戻される。
図3に示す実施形態では、境界壁3''の上端を伝って流出した水は、境界壁3''の外側を囲むように配置された回収カラー6''によって集められ、いわゆる「インフィニティ」プールのような印象を与える。貯水器1''にいる使用者にとっては、貯水器1''には水面上に突出する部分がないため、開放的な水域にいるような印象を与えることができる。水は、回収カラー6''から、凹部65''を通過して、処理設備の(図示しない)入口に入る。同時に、回収カラー6''は、例えば人が貯水器1に飛び込んだときに排出される水を受ける役割を果たす。回収カラー6''も一枚岩の自然石で構築されるのが好ましい。ここで、回収カラー6''は、この場合は基本的に水平に並ぶ板として設計された複数の底部61''を備える。回収カラー6''は、その外縁部では、垂直に配向した複数の壁部62''で囲まれている。壁部62''と、底部61''と、底部61''に隣接して配置された、境界壁3''の外側の領域と、が一体となって、内部容積4''からあふれ出る水を回収して凹部65''に供給する排水路63''を形成している。続いて、処理設備の入口がこの凹部65''に流体的に接続される。回収カラー6''の個々の部分は、一枚岩の自然石で強固に構築されており、追加の固定要素を使用せずに、相互間および境界壁3に接着される。ここで図示し記載した実施形態に特に適した自然石材料は、花崗岩であって、花崗岩は、強度が高く、その表面、具体的にはその粗さを要求に応じて個別にきちんと設定できる。
【0045】
図4は、第四の好ましい実施形態である貯水器1'''の斜視図である。
図4に示した実施形態は、
図1および
図3に示した好ましい実施形態よりもはるかに長い自由長42'''を有している。この自由長42'''は、ここでは10mよりも長く提供される。このような長い貯水器1'''は、もはや一体としてそのまま設置場所まで運ぶことはできないので、貯水器1'''、具体的には底板2'''および境界壁3'''で形成される貯水器シェルを分割して、貯水器部分を個別に設置場所まで運ぶ必要がある。設置場所では、まず各部分を互いに接合する。図示した、好ましい実施形態である貯水器1'''の場合は、貯水器シェルを二つの貯水器部分に分割する分離部分8'''がある。さらに大きなサイズのプール/貯水器の場合は、貯水器シェルを複数の部分に分割する複数の分離部分8'''を設けることもできる。さらに、
図4に示した、自由長42'''に沿って配置される分離部分8'''に加えて、自由幅43'''に沿って一つ以上の分離部分8'''を配置することも可能である。分離部分8'''では、二つの貯水器部分が強固かつ水密に互いに接合される。
図4では、貯水器1'''が再び簡略化された構造で図示されている、つまり、分かりやすくするために処理設備は図示されていない。また、
図3に係る実施形態では、一つ以上の分離部分を設けることも可能である。この場合、オプションの分離部分も回収カラー6''を通る。一般に、内部容積の形状が異なる貯水器シェルを、例えば
図2に示したように複数の貯水器部分に分割し、分離部分で互いに接合することももちろん可能である。
【0046】
分離部分8'''および二つの貯水器部分の配置の詳細を
図5に示す。ここで、
図5は、
図4の貯水器1'''の二つの貯水器部分を接合する前の切断部分の斜視図である。
図5は、特に分離部分8'''を介して二つの貯水器部分を接合する前の状態を示している。図示したのは、
図4に示した右側の長手方向側壁31'''の領域にある貯水器1'''の一部だけである。
図5では、境界壁3'''に対応する二つの部分がまだ互いに分離して示されている。分離部分8'''は、境界壁3'''のこれら二つの部分の間に位置している。境界壁3'''の内部容積4''に面した側には、クランプ装置81'''が見える。このクランプ装置81'''は、二つの端部要素811'''を有しており、それぞれ境界壁3'''の各部分に取り付けられている。端部要素811'''同士の接合は、材料同士を密着させて、および/または、追加の接合要素を介して行うことができる。図示のケースでは、各端部要素811'''に一つ以上の締結開口部812'''が配置されており、これを通して、端部要素811'''を、例えばねじ接続を介して境界壁3'''に追加的に接合することができる。それに伴い、端部要素811'''は、その二つの脚部のうちの一つを介して境界壁3'''に接合される。この境界壁用脚部と直角に別の脚部が配置されており、この脚部は、二つの端部要素811'''を互いに接合する役割を果たす。この別の脚部は、境界壁3''から離れるように延びて穴813'''を提供する。貯水器部分を互いに接合するために、端部要素811'''のそれぞれの穴813'''を介して、ここでは図示しない、二つの端部要素811'''をクランプして互いに接合させるのに役立つクランプ手段が使用され、それによって二つの貯水器部分は分離部分8'''で互いに強固に接合される。このようなクランプ手段としては、例えば、片側がナットでクランプされるネジ溝付きボルトなどが挙げられる。二つの貯水器部分を互いに封止するために、分離部分8'''に封止手段82'''を挿入する。図示したケースでは、封止手段82'''は、実際は封止コードなどである。封止コード82'''を収容するために、境界壁3'''の分離部分8'''に面する端面の奥には溝83'''が切られている。この溝83'''は、封止コード82'''の少なくとも一部を収容するので、その締結が容易になる。クランプ装置81'''によって貯水器の二つの部分がクランプされると、封止手段82'''は境界壁3'''の奥で変形し、その結果、分離部分8'''を水密に封止することができる。もちろん、封止コード以外の封止手段によっても、例えば、一枚岩の自然石同士を相互に結合するために使用するように、封止塗料や接着剤による接合によって封止するができる。二つの貯水器部分を接続するために、通常は、分離部分8'''に沿って配置される複数のクランプ装置81'''が提供されている。この目的のために、クランプ装置81'''を貯水器シェルの下に、底板2'''に固定して、配置することもできる。
【0047】
図6は、本発明に係る貯水器の第五実施形態である貯水器1'''' の断面側面図を示している。
図6に示した実施形態は、
図1に示した実施形態と同様である。描かれているのは、底板2''''と、境界壁3''''と、を有する立方体の貯水器1''''である。底板2'''' および境界壁3''''は一体となって、境界壁3'''' の上限まで水で満たすことができる内部容積4'''' を囲む貯水器シェルを形成している。貯水器シェル全体は、ここでも、材料同士が密着して互いに接合された一枚岩の自然石で構築されている。貯水器1'''' は、やはり処理設備5を備えているが、分かりやすくするために
図6には示していない。貯水器1'''' には、長手方向側壁31'''' が複数あるが、断面図では、そのうちの後部の長手方向側壁31'''' だけを示している。二つの長手方向側壁31'''' は、その端部で二つの幅方向側壁32'''' に接合されている。二つの幅方向側壁32'''' は、
図6では断面が示されている。ここでは、貯水器1'''' は、コンクリート板91'''' と、複数の支持台92'''' と、から成る貯水器台座9'''' の上に設置されている。
図6にした、本発明に係る貯水器の第五の実施形態である貯水器1'''' は、自立させて使用することも、水泳プールとして地面や地中に埋めて使用することもできる。貯水器台座9'''' は、主に貯水器1'''' を水平に配置する役割を果たす。ここで、コンクリート板91'''' は、貯水器台座9'''' の最下層を形成する。コンクリート板91'''' は、例えば、ローラーを掛けた地中に打設処理などを行って作ることができる。
図6に示した実施形態では、貯水器の底板2'''' は、コンクリート板91'''' の上に直接に載るのではなく、コンクリート板91'''' 上に設けられた多数の支持台92'''' 上で支持されている。軸受台座92'''' は、ここでは、例えば構造用モルタルから形成される円筒状の部位によって形成されている。また、支持台92'''' は、垂直方向に長く延びるように設計することができ、例えば、コンクリート板91'''' 上に設けられる基礎杭によって形成することができる。貯水器1'''' の底板2'''' は、多数の支持台92'''' 上に載ることによって、貯水器1'''' と、内部容積4'''' にある水と、によって発生する重力を、地中に分散させることができる。したがって、貯水器台座9''''、具体的には、支持台92''''には、貯水器1''''の重力に起因する圧縮力による負荷がかかる。内部容積4'''' にある水によって、貯水器シェル、具体的には底板2'''' に発生する曲げ応力は、貯水器シェル自体によって完全に、あるいは少なくとも大部分が補償される。底板2'''' の曲げ応力は、具体的には支持台92'''' 上に直接に載っていない部分で発生する。当然のことながら、支持台92'''' の支持点の位置でも自然石に曲げ応力が発生し、その理由は、水によって発生する曲げ応力曲線、すなわち、支持台92'''' の下側の支持点と、支持台92'''' の上側の支持点の領域と、の間に発生する曲げ引張応力が、連続ビームのパターンに従うためである。ここで、隣接する二つの支持台92'''' 同士の距離によって、底板2'''' に発生する曲げ応力の量が決まる。ここでは次のようなことが当てはまる。隣接する二つの支持台92'''' 同士の距離が大きくなるにつれて、底板2'''' に発生する曲げ応力は大きくなる。実際には、隣接する二つの支持台92'''' 同士間の距離は、支持台92'''' 同士間に発生する曲げ応力が、一枚岩の自然石で構築された底板2'''' の曲げ強度よりも低くなるように選択される。この代わりとなる実施形態(図示せず)では、貯水器台座9'''' は、コンクリート板91'''' を使用せずに設計することもできる。例えば、ここで、個々の基礎杭を下層の地中に挿入し、それに対応して支持台92'''' を形成することができる。
【0048】
ここで図示して説明した第五の実施形態である貯水器1'''' では、境界壁3'''' の上部領域の周囲に、包囲要素93'''' が配置されている。この周囲の要素93'''' は、例えば、貯水器1'''' を取り囲む歩行可能領域用の地下構造となる。この歩行可能領域には、とりわけ自然石やタイルを貼ることができる。そのため、包囲要素93'''' は、貯水器シェルに属するのではなく、貯水器シェルを周囲につなぐ役割を果たす。また、包囲要素93'''' は、ここでは境界壁3'''' から離れて配置されている。包囲要素93'''' と境界壁3'''' との間の距離は、スペーサ931'''' によって確保される。
図6に参照符号VIIで示した領域は、後述の
図7に詳細に示されている。
【0049】
図7は、
図6に示した本発明に係る貯水器の第五実施形態である貯水器1'''' の断面詳細図である。ここで、
図7は、
図6にVIIで示された部分を詳細に示している。ここで見るのは、包囲要素93'''' が配置されている境界壁3'''' の上端部である。包囲要素93'''' は、境界壁3'''' を囲んでいる。包囲要素93'''' と幅方向側壁32'''' との間には、スペースS'''' がある。包囲要素93'''' は、そのせいで、貯水器シェルから間隔を空けて設けられている。包囲要素93'''' は、スペーサ931'''' によって幅方向側壁32'''' と接続されている。
図7は、このようなスペーサ931''''を示している。包囲要素93'''' が貯水器シェルを取り囲んでいるので、貯水器シェルと包囲要素93'''' の全周囲に亘って、そのようなスペーサ931'''' がいくつか配置されており、ギャップS'''' を恒久的なものにする役割を果たしている。図示した実施形態では、スペーサ931''''は、二つの接続要素9311''''を介して、包囲要素93''''に固定的に接続されている。接合要素9311''''は、例えば、ダボを用いてまたは用いずに包囲要素93''''にねじ込まれるねじによって形成してもよい。接続要素9311'''' は、同時に、スペーサ931'''' の支持体9312'''' にしっかりと接続されている。また、支持体9312'''' には、調整要素9313'''' が接続されており、ここでは、支持体9312'''' の右端に取り付けられている。調整要素9313'''' は、支持体9312'''' にねじ込まれる、図では左向きのねじ付きボルトで構成されている。このねじ接続によって、支持体9312'''' を超えて突出する調整要素9313''''の長さが調整可能である。調整要素9313'''' は、幅方向側壁32'''' に接している右向きの接触要素をさらに備えている。スペースS''''の幅は、調整要素9313'''' によって調整できる。圧縮力は、スペーサ931'''' を介して、包囲要素93'''' と幅方向側壁32'''' との間で伝達することができる。力の流れは調整エレメント9313'''' を介して行われ、その接触要素が貯水器シェルに当接している。この接触要素は、例えばネジ接続や接着剤接続によって貯水器シェルに固定することもできるし、摩擦接続によって当接させることもできる。包囲要素93'''' は、本実施形態では、複数のスペーサ931'''' を介して貯水器シェルに接続されている。したがって、貯水器シェルの周りに配置された複数の箇所で、圧縮力が貯水器シェルから包囲要素93'''' に、またその逆に伝達されることになる。したがって、力の伝達に使用されるスペーサ931'''' は、互いに距離を置いて貯水器シェルに配置され、それぞれがその接触要素で貯水器シェルに当接している。したがって、個々のスペーサ931'''' 同士の間には、包囲要素93'''' とプールシェルとの間で力の伝達が行われない、境界壁の領域がある。このような領域では、貯水器シェルは、内部容積4'''' にある水によって発生する曲げ応力だけで応力を受ける。したがって、貯水器シェルの周りに包囲要素93'''' が間隔を置いて配置されていても、貯水器内部の水圧に起因する、貯水器シェルの曲げ応力を吸収する支持装置や下部構造の役割は果たさない。ここで図示され説明されているように、複数のスペーサ931'''' の助けを借りて包囲要素93'''' が配置されている場合でも、貯水器シェルは自立するように設計されている。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の好ましい実施形態に限定されるものではない。以下の請求項の範囲で示される本発明から逸脱することなく、実施形態に様々な変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0051】
1、1'、1''、1'''、1'''' 貯水器
2、2'、2''、2'''、2'''' 底板
3、3'、3''、3'''、3'''' 境界壁
31,31'、31'''、31'''' 長手方向側壁
32、32'、32'''' 幅方向側壁
4,4''、4'''、4'''' 内部容積
41 深さ
42,42'、42''' 内側の自由長
43,43''' 内側の自由幅
5 処理設備
51 入口
52 出口
53 処理要素
6'' 回収カラー
61'' 底部分
62'' 壁部分
63'' 排出路
8''' 分離部分
81'' ' クランプ装置
811''' 端部要素
812''' 締結開口部
813''' 穴
82''' 封止手段
83''' 溝
9'''' 貯水器台座
91'''' コンクリート板
92'''' 支持台
93'''' 包囲要素
931'''' スペーサ
9311'''' 設読要素
9312'''' 支持体
9313'''' 調整要素
S'''' ギャップ