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特許7162162スルホニオ基含有エーテル化合物を含むめっき液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-19
(45)【発行日】2022-10-27
(54)【発明の名称】スルホニオ基含有エーテル化合物を含むめっき液
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/38 20060101AFI20221020BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20221020BHJP
   C25D 7/12 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
C25D3/38 101
C25D7/00 G
C25D7/00 J
C25D7/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022541302
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2022008580
【審査請求日】2022-07-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000120386
【氏名又は名称】株式会社JCU
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100150898
【弁理士】
【氏名又は名称】祐成 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】岸本 一喜
(72)【発明者】
【氏名】樋口 翔太
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03000799(US,A)
【文献】特開2016-183410(JP,A)
【文献】特開2008-231033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 3/38
C25D 7/00
C25D 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性の金属塩、及び
スルホニオ基含有エーテル化合物
を含有し、
前記金属塩が銅を含む塩である、めっき液。
【請求項2】
前記スルホニオ基含有エーテル化合物が、式1で示される構造を有する、請求項1記載のめっき液。
【化1】
(式1中、R及びRは、それぞれ独立して置換又は非置換の脂肪族又は芳香族の炭化水素基であり、RとRは互いに結合して環状構造を形成していてもよい;Eは、前記スルホニオ基含有エーテル化合物中のエーテル部位、又は前記エーテル部位が結合した置換もしくは非置換の脂肪族もしくは芳香族の炭化水素基である。)
【請求項3】
前記スルホニオ基含有エーテル化合物が、質量平均分子量2,000以上10,000以下の化合物である、請求項1又は2に記載のめっき液。
【請求項4】
前記スルホニオ基含有エーテル化合物を0.1mg/L~1g/Lの濃度で含有する、請求項1~3の何れか1項記載のめっき液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき液に関する。より具体的には、ビアフィリング特性に優れ、平坦なめっき表面を形成可能な、スルホニオ基含有エーテル化合物を含むめっき液に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に金属をめっきする技術が、電子材料の分野で用いられており、液晶ディスプレイ、半導体装置等の電子機器等に応用されている。例えば、細線回路等のプリント電子回路や半導体用ウェハ等の様々な部位に金属を適用する技術として、めっき処理が多用されている。金属としては、良好な電気的特性を有し、多様な処理方法が可能な銅が、主に用いられている。
【0003】
プリント配線板の製造においては、配線間の間隙やビアホールなどの穴を、銅等の金属で埋め込むことがある。半導体用ウェハの製造においても、ウェハ表面に形成された微小なビアやトレンチなどを、金属で埋め込む操作が行われる。特に、ビルドアップ工法に代表される基板積層工法では、層間の接続穴(ホール)を埋める(フィリング)、いわゆるビアフィリングめっきが多用されるようになってきた。
【0004】
こうしたビアフィリングめっきに代表される金属埋め込み技術として、電解めっき法が知られており、めっき液として例えば酸性の硫酸銅めっき液やアルカリ性のシアン系又はピロリン酸系銅めっき液等が用いられている。中でも硫酸銅に代表される強酸の金属塩を含有するめっき液は、液管理や電着速度制御などがアルカリ性のものと比較して容易な点から、広く使用されている。
【0005】
埋め込みめっき処理においては、金属塩の他に、レベラー(レベリング剤)といわれる有機物、さらには酸及び界面活性剤等を含有する組成のめっき液が、一般に用いられている。レベラーを含有させることで、めっきの電着性を制御して、ビアやトレンチ、配線間の間隙を確実に埋め込むことができ、均一な性状のめっき処理が可能となる。
【0006】
例えば、特許文献1には、電着反応を抑制する高分子界面活性剤、電着速度を促進するジチオビスアルカンスルホン酸等の硫黄系飽和有機化合物、高分子アミン化合物からなるレベラーを含有する硫酸銅めっき液が開示されている。特許文献2には、フェニル基等を有するスルホニウム化合物をレベラーとし、さらにノニオン系界面活性剤を含有する錫めっき液が開示されている。特許文献3には、グリシジルエーテル基を有する化合物と含窒素複素環化合物とを反応させて得られる第3級アミン化合物が、新規なレベラーとして開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-105584号公報
【文献】特開2016-183410号公報
【文献】国際公開第2011/135716号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
昨今のプリント配線板や半導体用ウェハの製造においては、間隙をめっきによって完全に埋め込み、高度に平坦化することが求められる。特許文献1に開示されためっき液は、こうした高レベルな平坦化の上で難がある。特許文献2記載の技術では、特定のレベラーを添加することによって錫めっき表面の平滑性を改善しているが、これらレベラーは、錫以外の金属めっき液では平滑剤として機能し難い。こうした課題は、特許文献3に開示されたアミン系のレベラーでは解決されているものの、めっき表面のさらなる平坦化が希求される。用途によっては、めっき液を窒素分不含とすることも、求められている。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、ビアフィリング特性に優れ、平坦なめっき表面を形成し得るめっき液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、めっき液中に、レベラーとしてスルホニオ基含有エーテル化合物を含有させることにより、平坦化性能に優れるめっき液が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
(1)本発明の第1の発明は、
水溶性の金属塩、及び
スルホニオ基含有エーテル化合物
を含有するめっき液である。
【0012】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記スルホニオ基含有エーテル化合物が、式1で示される構造を有する、めっき液である。
【化1】
(式1中、R及びRは、それぞれ独立して置換又は非置換の脂肪族又は芳香族の炭化水素基であり、RとRは互いに結合して環状構造を形成していてもよい;Eは、前記スルホニオ基含有エーテル化合物中のエーテル部位、又は前記エーテル部位が結合した置換もしくは非置換の脂肪族もしくは芳香族の炭化水素基である。)
【0013】
(3)本発明の第3の発明は、第2の発明において、前記スルホニオ基含有エーテル化合物が、前記R及び前記Rで示される基を有する有機硫黄化合物と、反応性基を有するエーテル化合物との反応生成物である、めっき液である。
【0014】
(4)本発明の第4の発明は、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記スルホニオ基含有エーテル化合物が、質量平均分子量2,000以上10,000以下の化合物である、めっき液である。
【0015】
(5)本発明の第5の発明は、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記金属塩が銅を含む塩である、めっき液である。
【0016】
(6)本発明の第6の発明は、第1から第5の発明のいずれかにおいて、前記スルホニオ基含有エーテル化合物を0.1mg/L~1g/Lの濃度で含有する、めっき液である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ビアフィリング特性に優れ、平坦なめっき表面を形成し得るめっき液を提供することができる。本発明のめっき液はまた、窒素フリーのめっき液が求められる用途において、従来のレベラーを代替することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これらは例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0019】
≪1.めっき液≫
本発明のめっき液は、水溶性の金属塩、及びスルホニオ基含有エーテル化合物を含有するものである。
【0020】
[めっき液の構成について]
(1)水溶性の金属塩
本発明のめっき液を構成する水溶性の金属塩に特に制限はなく、銅(Cu)、錫(Sn)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、インジウム(In)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、鉛(Pb)、レニウム(Re)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)等の水溶性金属塩、さらにはゲルマニウム(Ge)やヒ素(As)、アンチモン(Sb)のような半金属の水溶性塩等、めっきに使用されるどのような塩をも包含する。複数の金属塩を併用して、ブロンズめっきや半田めっき等の複合めっき用のめっき液とすることも可能である。
【0021】
なお、本発明において「水溶性の金属塩を含有するめっき液」とは、広く液中から水溶性の金属塩が検出され得るめっき液すべてを包含する。すなわち、上記のような金属がイオン化して溶解しためっき液であればよく、例えば不溶性の金属酸化物を酸に溶解させて得られる金属塩等も、本発明における「水溶性の金属塩」に相当する。また、本発明のめっき液はこれら金属塩の水溶液であることが好ましいが、メタノール、エタノール等のアルコール;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、各種グライム等のエーテル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の炭酸エステル;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ピロリドン等の含窒素溶媒;ジメチルスルホキシド(DMSO)等の含硫黄溶媒などの有機溶媒を含んでいてもよい。目的及び使用する金属塩によっては、有機溶媒を主溶媒とすることもできる。
【0022】
水溶性金属塩における、金属との対イオンの種類にも、特に制限はない。例えば硝酸、硫酸、塩酸を始めとするハロゲン化水素酸、リン酸、塩素酸を始めとするオキソ酸等の無機酸のアニオン;メタンスルホン酸、プロパンスルホン酸等のアルカンスルホン酸類、イセチオン酸、プロパノールスルホン酸等のアルカノールスルホン酸類、クエン酸、酒石酸、ギ酸などの脂肪族又は芳香族カルボン酸等の有機酸のアニオン等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のめっき液を構成する金属塩は、モリブデン酸塩や塩化白金酸塩のように、アニオン中に金属元素を有する塩であってもよく、その場合の対アニオンもアルカリ金属イオンやアンモニウムイオン等、任意のものとすることができる。また、例えばモリブデン酸ニッケルのような塩を含有させ、ニッケル-モリブデン合金めっき用のめっき液とすることも可能である。
【0023】
上記のように本発明のめっき液は、どのような金属の塩を含有するものであってもよいが、電子材料分野での使用を考えると、銅、金、ニッケル、錫等の金属を含む塩であることが好ましい。これらの金属はプリント配線板や半導体用ウェハの製造において多用され、また、こうした金属塩を含有するめっき液では、本発明による平坦化性能が顕著となる。特に、硫酸銅や硝酸銅を始めとする、銅を含む塩が好ましい。
【0024】
本発明のめっき液における、水溶性金属塩の濃度に特に制限はなく、含有する金属塩やめっき対象に応じて任意に設定することができる。一般に電子材料分野におけるめっきでは、金属イオンの質量換算で10~80g/L、特に35~75g/L程度の濃度が採用され、本発明のめっき液もこうしたイオン濃度とすることができる。
【0025】
なお、上記で金属酸化物を酸に溶解させる実施形態について言及したが、酸の含有は、めっき液の管理や電着速度の制御等を容易にする利点も有する。本発明においても、たとえ原料として水溶性の金属塩を用いた場合でも、めっき液が酸を含有することが好ましい。ここで使用する酸に特に制限はなく、硫酸や硝酸等の上記した無機酸及び/又は有機酸の内の所望のものを、めっき液の組成やめっき対象に合わせて使用することができる。例えば、水溶性金属塩が硫酸銅である場合、めっき液は酸として硫酸を含有することが好ましい。酸の濃度にも制限はなく、例えば5~200g/L、特に10~150g/L程度に設定することが可能である。
【0026】
(2)スルホニオ基含有エーテル化合物
本発明のめっき液は、上記した水溶性の金属塩と共に、スルホニオ基含有エーテル化合物を含有する。このことによって、めっき液のビアフィリング特性が改善され、平坦なめっき表面を形成することが可能となる。
【0027】
ここで、スルホニオ基含有エーテル化合物とは、スルホニオ基(R-基:Rは水素原子または有機基)とエーテル結合(-O-)とを有する化合物であり、エーテル化合物の一種であると同時にスルホニウム化合物の一種である。本発明のめっき液は、スルホニオ基含有エーテル化合物としてどのような化合物を含有していてもよく、その種類に特に制限はない。複数種のスルホニオ基含有エーテル化合物を併用することも可能である。
【0028】
その中でも特に、めっき液に含有されるスルホニオ基含有エーテル化合物が、下記の式1で示される構造を有するものであることが好ましい。スルホニオ基含有エーテル化合物が式1の構造を有するものであれば、本発明のめっき液は、さらに平坦化性能に優れたものとなる。
【化2】
【0029】
上記式1において、R及びRは、それぞれ独立して置換又は非置換の脂肪族又は芳香族の炭化水素基であり、RとRは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。ここで、R及びRの少なくとも一方は脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルキル基、特に炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましい。こうした構造であれば、本発明のめっき液は平坦化性能をより発揮し易くなる。また、RとRとが互いに結合して環状構造を形成している場合、R及びRは結合してアルキレン基、特に炭素数3~7のアルキレン基として、硫黄原子と共に4員環~8員環を形成していることが好ましい。R及び/又はRが芳香族炭化水素基である場合は、当該炭化水素基は置換又は非置換のフェニル基であることが好ましい。ここで、フェニル基等の芳香族炭化水素基及び脂肪族炭化水素基上の置換基の種類、数、及び位置に特に制限はない。本発明のめっき液が有する平坦化性能は、R及び/又はRの炭化水素基、特に芳香族炭化水素基が、アルキル基やアルコキシ基のような電子供与性基を有している場合にも、また、ハロゲン基やハロゲン化炭化水素基のような電子吸引基を有している場合にも、損なわれることがない。
【0030】
また、上記式1においてEは、上記のようなスルホニオ基含有エーテル化合物中のエーテル部位、又は当該エーテル部位が結合した置換もしくは非置換の脂肪族もしくは芳香族の炭化水素基である。ここで、エーテル部位は、エーテル結合(-O-)を1個以上有していればよく、その構造に特に制限はない。例えばアルコキシ基やフェノキシ基を始めとする各種オキシ基、そうしたオキシ基を置換基として有する脂肪族又は芳香族炭化水素基、ポリオキシエチレニル基のようなエーテル結合を複数個有する基、上記のようなオキシ基を側鎖に有するアミノ基、アミド基、アシル基等であってもよい。また、オキシ基を置換基として有する脂肪族又は芳香族炭化水素基は、例えばメトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシフェニル基等の比較的小さな基であってもよく、長鎖アルコキシ基を有する炭化水素基、メトキシ基やエトキシ基を有する長鎖アルキル基や長鎖アルケニル基等の式量の大きな基であってもよい。ポリオキシエチレニル基においても、その炭素数等に特に制限はない。
【0031】
上記の置換基Eはまた、末端及び/又は側鎖に、他のスルホニオ基を有していてもよい。ここで、「他のスルホニオ基」は、置換基Eが結合した先のスルホニオ基と同種であっても良く、異なっていてもよい。スルホニオ基含有エーテル化合物中のスルホニオ基の数に特に制限はないが、分子中に好ましくは1~20個、特に2~10個のスルホニオ基を有するエーテル化合物の含有により、めっき液の平坦化性能を特に優れたものとすることができる。
【0032】
スルホニオ基含有エーテル化合物は特に、エーテル部位が、アルキレンオキシド構造、例えばエチレンオキシド構造、特にポリエチレンオキシド構造を有することが好ましい。アルキレンオキシド構造を有するスルホニオ基含有エーテル化合物は、一般に水溶性が良好であるため、めっき液中に多量に含有させることができる。そのため、めっき液の平坦化性能をさらに改善することが可能となる。アルキレンオキシド構造を有するエーテル化合物はまた、後記するように比較的容易に調製することができる。ポリオキシアルキレン構造を有するスルホニオ基含有エーテル化合物の具体例として、例えば下記式1-1のような化合物を挙げることができる。
【化3】
【0033】
式1-1の化合物においては、式1中のR及びRに相当する基がいずれもメチル基で、Eに相当する基はエーテル部位が結合した芳香族炭化水素となっている。一般に芳香族スルホニル化合物は、脂肪族スルホニル化合物に比べて安定であるため、本発明で使用するスルホニオ基含有エーテル化合物においても、置換基R、R、及びEの硫黄原子側サイトが、置換又は非置換の芳香族炭化水素基、特に置換又は非置換のフェニル基であることが好ましい。但し、スルホニオ基含有エーテル化合物は、こうした構造に限定されるものではない。
【0034】
上記のように、スルホニオ基含有エーテル化合物は、ある程度鎖長が長い、分子量が比較的大きな化合物であってもよい。スルホニオ基含有エーテル化合物の分子量に特に制限はないが、質量平均分子量が500以上100,000以下、中でも1,000以上15,000以下、特に2,000以上10,000以下であることが好ましい。後記する実施例にも示すように、こうした分子量のスルホニオ基含有エーテル化合物を含有するめっき液は、優れた平坦化性能を示す。特にビアフィリング性能は、一般にめっき液中のスルホニオ基含有エーテル化合物の分子量が大きいほど良好となる傾向があり、質量平均分子量が2,000以上のスルホニオ基含有エーテル化合物を含有するめっき液で特に良好となる。また、スルホニオ基含有エーテル化合物は、質量平均分子量が10,000程度以下であれば、十分な水溶性も担保されるので、本発明のめっき液中により多量に含有させることができ、平坦化性能をさらに良好とすることが可能である。なお、スルホニオ基含有エーテル化合物の分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)等により、単分散ポリエチレンオキサイドやポリエチレングリコール等を標準として測定することができる。
【0035】
(スルホニオ基含有エーテル化合物の調製)
スルホニオ基含有エーテル化合物は、例えば、有機硫黄化合物と、反応性基を有するエーテル化合物との反応によって調製することができる。本発明の好ましい一実施形態において、スルホニオ基含有エーテル化合物は、上記のR及びRで示される基を有する有機硫黄化合物と、反応性基を有するエーテル化合物との反応生成物である。
【0036】
ここで、エーテル化合物上の反応性基に特に制限はなく、エポキシ基、スルホニル基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、アミノ基等、種々の反応性基から所望の基を選択することができる。あるいは、アリル基を有するエーテル化合物と、アリル基含有スルホニウム化合物とを、過酸化物等で結合させてスルホニオ基含有エーテル化合物を調製することも可能である。その中でも、反応が確実かつ迅速に進行する点から、反応性基としてはエポキシ基又はスルホニルオキシ基が好ましく、特にエポキシ基が好ましい。
【0037】
反応性基がエポキシ基である場合、例えば、下記の反応式αのように、式2αで表される有機硫黄化合物と、式3で表されるエポキシ基含有エーテル化合物とを、メタンスルホン酸等の酸の存在下で反応させることにより、式1α1及び/又は式1α2のようなスルホニオ基含有エーテル化合物を調製することができる。
【化4】
ここで、R及びRは、上記式1中のR及びRと同一であり;Eo及びErはエーテル部位を含む基であって;-CH-CH(OH)-Er等は、式1中の-E、すなわち式1で表されるスルホニオ基含有エーテル化合物中のエーテル部位に相当する基である。なお、式1α1及び式1α2中の基Erが式3中の基Eoとは別の符号で表されているが、これはEo自体が反応して他の基に変化する(例えばEoがエポキシ基をさらに有し、それらエポキシ基を起点として重合する等)場合があるためである。
【0038】
あるいは、例えば下記の反応式βのように、式2βで表されるようなヒドロキシ基を有するスルホニウム化合物と、式3で表されるエポキシ基含有エーテル化合物とを、炭酸カリウム等の触媒存在下で反応させることにより、式1β1及び/又は式1β2のようなスルホニオ基含有エーテル化合物を調製することも可能である。
【化5】
ここで、R及びRは、上記式1中のR及びRと同一であり;Aは置換又は非置換の脂肪族又は芳香族の2価の炭化水素基であり;Eo及びErはエーテル部位を含む基であって;-A-O-CH-CH(OH)-Er等は、式1中の-Eに相当する基である。式1β1及び式1β2で表される化合物は、式1で表されるスルホニオ基含有エーテル化合物において、Eが、エーテル部位が結合した置換もしくは非置換の脂肪族もしくは芳香族の炭化水素基である化合物に相当する。
【0039】
また、反応性基がスルホニルオキシ基である場合も、例えば、下記の反応式γのように、式2βで表されるようなヒドロキシ基を有するスルホニウム化合物と、式4で表されるスルホニルオキシ基含有エーテル化合物とを、炭酸カリウム等の触媒存在下で反応させることにより、式1γのようなスルホニオ基含有エーテル化合物を調製することが可能である。
【化6】
ここで、R及びR、A、並びにEo及びErは、上記反応式β中の置換基と同一であり、Rは置換又は非置換の脂肪族又は芳香族の炭化水素基、例えばメチル基である。
【0040】
なお、反応式αに代表される反応において、メタンスルホン酸以外の酸、例えば硫酸、リン酸、酢酸等を使用することも可能である。反応式β及びγに代表される反応においても、炭酸カリウム以外の触媒、例えば水酸化ナトリウム、トリエチルアミン等を使用することができる。
【0041】
(2-1)有機硫黄化合物
また、スルホニオ基含有エーテル化合物は、置換基R及びRを有するどのような有機硫黄化合物からも調製することができるが、上記した式2αで表される有機硫黄化合物及び/又は式2βで表される有機硫黄化合物を使用することが好ましい。
【0042】
式2α及び2βで表される有機硫黄化合物において、R及びRは、それぞれ独立して置換又は非置換の脂肪族又は芳香族の炭化水素基であり、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。式1についての説明で記載したように、R及びRの少なくとも一方は脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルキル基、特に炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましい。また、RとRとが互いに結合している場合、R及びRは硫黄原子と共に4員環~7員環を形成していることが好ましい。R及び/又はRが芳香族炭化水素基である場合は、当該炭化水素基は置換又は非置換のフェニル基であることが好ましい。
【0043】
式2βで表される有機硫黄化合物において、Aは置換又は非置換の脂肪族又は芳香族の2価の炭化水素基であればよいが、好ましくは置換又は非置換の芳香族炭化水素基であり、より好ましくは置換又は非置換のフェニレン基である。フェノール性水酸基を有する有機硫黄化合物であれば、エーテル化合物中のエポキシ基やスルホニルオキシ基等の反応性基と反応を起こし易い。-A-OH基は特に、p-ヒドロキシフェニル基であることが好ましい。
【0044】
式2βで表される有機硫黄化合物においてはまた、R及びRは炭素数1~6の炭化水素基、中でも炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。特に、R及びRの両者が、メチル基であることが好ましい。式2βで表される有機硫黄化合物の特に好ましい実施形態の一つは、下記の式2-1で表される化合物である。勿論、これ以外の有機硫黄化合物も、好ましく使用できる。
【化7】
【0045】
なお、式2βで表される有機スルホニウム化合物の対アニオンに特に制限はなく、メチルスルホネートアニオンを始めとするアルキルスルホネートアニオン、テトラフロロボレートアニオンを始めとするホウ酸系アニオン、ヘキサフロロホスフェートアニオンを始めとするリン酸系アニオン、硫酸アニオン、硝酸アニオン、ハロゲン化物イオン等、どのようなタイプのアニオンであってもよい。
【0046】
式2αで表される有機硫黄化合物の特に好ましい実施形態としては、例えば下記の式2-2~式2-7で表される化合物が挙げられる。
【化8】
【0047】
勿論、式2-2~式2-7以外の有機硫黄化合物も、好ましく使用できる。なお、式2-3で表される化合物は、分子中のヒドロキシ基(フェノール性水酸基)を通じて、反応式βのようにしてエーテル化合物と反応することも可能である。
【0048】
(2-2)反応性基を有するエーテル化合物
有機硫黄化合物と反応させるエーテル化合物は、上記したように反応性基を有する限りどのようなものであってもよいが、好ましくは反応性基としてエポキシ基又はスルホニルオキシ基を含有する。上記式3又は式4で表されるエーテル化合物が、より好ましい。特に、式3及び式4中の置換基Eoが、アルキレンオキシド構造、例えばエチレンオキシド構造、特にポリエチレンオキシド構造を有することが好ましい。その分子量にも特に制限はないが、質量平均分子量が50以上10,000以下、中でも70以上 5,000以下、特に100以上1,000以下であることが好ましい。
【0049】
エーテル化合物はまた、分子中に2個以上のエポキシ基を有することが好ましい。エポキシ基が複数あれば、有機硫黄化合物との反応時にエーテル化合物同士の重合反応も進行し、ポリオキシアルキレン構造を有するスルホニオ基含有エーテル化合物を生成し得る。その結果、得られるスルホニオ基含有エーテル化合物は高分子量であると同時に水溶性も良好なものとなり、めっき液をさらに平坦化性能に優れるものとすることができる。
【0050】
式3で表される反応性基を有するエーテル化合物の特に好ましい実施形態としては、例えば下記の式3-1~式3-4で表される化合物が挙げられる。
【化9】
【0051】
勿論、上記以外のエポキシ基含有エーテル化合物を、式3の化合物として使用することも可能である。式3-1において、m及びnはそれぞれ0~10、特に1~6の整数であることが好ましく;m+nは好ましくは1~20、特に好ましくは2~10である。なお、式3-1で表される化合物等を、複数種併用することも可能である。その場合、あるいは式3-1で表される化合物同士が重合した場合、m及びnの平均値は必ずしも整数にはならないが、そうした実施形態も本発明の範囲内に包含される。
【0052】
式4で表される反応性基を有するエーテル化合物の特に好ましい実施形態としては、例えば下記の式4-1で表される化合物が挙げられる。
【化10】
【0053】
勿論、これ以外のスルホニルオキシ基含有エーテル化合物も、好ましく使用できる。なお、式4-1において、nは1~10,000、特に2~1,000の整数であることが好ましい。式4-1で表される化合物等を、複数種併用することも可能である。その場合、nの平均値は必ずしも整数にはならないが、そうした実施形態も本発明の範囲内に包含される。
【0054】
これらのエーテル化合物を、上記した有機硫黄化合物と反応させることにより、スルホニオ基含有エーテル化合物を合成することができる。例えば、式2-1で表される有機硫黄化合物と、式3-1で表されるエーテル化合物とを、反応式βに従って反応させることにより、上記した式1-1の化合物を調製することができる。なお、反応の際の有機硫黄化合物とエーテル化合物中の反応性基とのモル比は、必ずしも1:1程度、例えば1:0.9~1:1.1程度にする必要はない。目的とするスルホニオ基含有エーテル化合物の構造や分子量に応じて、エーテル化合物中の反応性基:有機硫黄化合物の等量比を、例えば1:0.1~1:0.9、特に1:0.2~1:0.8等として、エーテル化合物同士を重合させることも可能である。
【0055】
(スルホニオ基含有エーテル化合物の含有量)
本発明のめっき液において、スルホニオ基含有エーテル化合物の含有量に特に制限はなく、めっき対象や使用する金属塩に応じて任意に設定することができる。例えば、スルホニオ基含有エーテル化合物を0.1mg/L~1g/L程度の濃度で含有することができ、中でも1~700mg/L程度の濃度で含有することがより好ましく、1~500mg/L程度の濃度で含有することが特に好ましい。スルホニオ基含有エーテル化合物の含有量が0.1mg/L程度以上であれば、めっき液は良好な平坦化性能を発現し、同含有量が1g/L程度以下であれば、コスト的に有利である。
【0056】
(3)添加剤
上記のように、本発明のめっき液は、水溶性の金属塩及びスルホニオ基含有エーテル化合物を含有する。また、めっき液の管理や電着速度の制御等を容易にする上で、所望により、上記のような硫酸等の酸をさらに含有することができる。
【0057】
また、本発明のめっき液には、所望により、ハロゲン化物イオン、さらには光沢剤、界面活性剤、錯化剤、酸化防止剤、導電性塩、湿潤剤類、フタロシアニン化合物やヤーヌス・グリーンを始めとする色素等の添加剤が含有されていてもよい。以下でこれら添加剤の幾つかについて説明するが、本発明のめっき液が含有し得る添加剤は、これらに限定されるものではない。
【0058】
(ハロゲン化物イオン)
通常の酸性金属めっき液にはまた、光沢金属めっきやレベリングを行う目的からハロゲン化物イオンが添加される場合もある。本発明においても、めっき液中に必要に応じて塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン化物イオンを添加してもよい。特に、塩化物イオン(Cl)が好ましい。この場合のハロゲン化物イオンの濃度は、めっき液全体中のイオン質量濃度で、例えば0.01~150mg/L、好ましくは10~100mg/L程度とすることができる。
【0059】
(光沢剤)
光沢剤は、めっき皮膜に光沢を付与するだけでなく、凹部での金属の析出を促進し、めっき表面の平坦化に寄与し得る。光沢剤の種類に特に制限はなく、ベンズアルデヒド、o-クロロベンズアルデヒド、2,4,6-トリクロロベンズアルデヒド、m-クロロベンズアルデヒド、p-ニトロベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、フルフラール、1-ナフトアルデヒド、2-ナフトアルデヒド、2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒド、3-アセナフトアルデヒド、ベンジリデンアセトン、ピリジデンアセトン、フルフリルデンアセトン、シンナムアルデヒド、アニスアルデヒド、サリチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、グルタルアルデヒド、パラアルデヒド、バニリンなどの各種アルデヒド、トリアジン、イミダゾール、インドール、キノリン、2-ビニルピリジン、アニリン、フェナントロリン、ネオクプロイン、ピコリン酸、チオ尿素類、N-(3-ヒドロキシブチリデン)-p-スルファニル酸、N-ブチリデンスルファニル酸、N-シンナモイリデンスルファニル酸、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル(1’))エチル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-エチル-4-メチルイミダゾリル(1’))エチル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-ウンデシルイミダゾリル(1’))エチル-1,3,5-トリアジン、サリチル酸フェニル、あるいは、ベンゾチアゾール、2-メルカトプトベンゾチアゾール、2-メチルベンゾチアゾール、2-アミノベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メトキシベンゾチアゾール、2-メチル-5-クロロベンゾチアゾール、2-ヒドロキシベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メチルベンゾチアゾール、2-クロロベンゾチアゾール、2,5-ジメチルベンゾチアゾール、5-ヒドロキシ-2-メチルベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール類、ビス(3-ナトリウムスルホプロピル)ジスルフィド等のスルフィド類などが挙げられる。これらの内でも、スルフィド系化合物を光沢剤として含有することにより、本発明のめっき液の平坦化特性をさらに改善することができる。特に、ビス(3-ナトリウムスルホプロピル)ジスルフィドが好ましい。なお、光沢剤を含有する場合、その濃度は0.01 mg/L~50mg/L程度、特に0.1mg/L~10mg/L程度とするのが好ましい。
【0060】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、特に制限はなく、通常のアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、及び両性界面活性剤等から所望のものを選択することができる。界面活性剤を含有する場合、その濃度は10mg/L~50g/L程度、特に50mg/L~500mg/L程度とするのが好ましい。
【0061】
アニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンノニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウム、2-ナフトール-3,6-ジスルホン酸ジナトリウム等のナフトールスルホン酸塩、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム等の(ポリ)アルキルナフタレンスルホン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩等が挙げられる。
【0062】
カチオン系界面活性剤としては、例えばモノ~トリアルキルアミン塩、ジメチルジアルキルアンモニウム塩、トリメチルアルキルアンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルジメチルアンモニウム塩、オクタデセニルジメチルエチルアンモニウム塩、ドデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ドデシルピコリニウム塩、ドデシルイミダゾリニウム塩、オレイルイミダゾリニウム塩、オクタデシルアミンアセテート、ドデシルアミンアセテート等が挙げられる。
【0063】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば糖エステル、脂肪酸エステル、アルコキシルリン酸(塩)、ソルビタンエステル、脂肪族アミド等とエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとの付加縮合物、シリコン系ポリオキシエチレンエーテル、シリコン系ポリオキシエチレンエステル、フッ素系ポリオキシエチレンエーテル、フッ素系ポリオキシエチレンエステル、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化あるいはスルホン化付加物等が挙げられる。
【0064】
両性界面活性剤としては、例えばベタイン、カルボキシベタイン、イミダゾリニウムベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸等が挙げられる。
【0065】
(錯化剤)
錯化剤は、めっき液中での金属イオンの安定化や、合金めっきにおける析出合金組成の均一化に寄与し得る添加剤である。特に銀等の貴金属を含むめっき液では、一般にオキシカルボン酸、ポリカルボン酸、モノカルボン酸等の錯化剤が用いられる。錯化剤を含有する場合、その濃度は例えば0.1g/L~500g/L 程度、特に1g/L~100g/L程度とすることができる。錯化剤の具体例としては、グルコン酸、クエン酸、グルコヘプトン酸、グルコノラクトン、グルコヘプトラクトン、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アスコルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、ジグリコール酸、チオグリコール酸、チオジグリコール酸、チオグリコール、チオジグリコール、メルカプトコハク酸、3,6-ジチア-1,8-オクタンジオール、3,6,9-トリチアデカン-1,11-ジスルホン酸、チオビス(ドデカエチレングリコール) 、ジ(6-メチルベンゾチアゾリル)ジスルフィドトリスルホン酸、ジ(6-クロロベンゾチアゾリル)ジスルフィドジスルホン酸、グルコン酸、クエン酸、グルコヘプトン酸、グルコノラクトン、グルコヘプトラクトン、ジチオジアニリン、ジピリジルジスルフィド、メルカプトコハク酸、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジオキシビス(エチルアミン)-N,N,N’,N’-テトラ酢酸、グリシン類、ニトリロトリメチルホスホン酸、あるいはこれらの塩などが挙げられる。また、チオ尿素類などの含イオウ化合物、トリス(3-ヒドロキシプロピル) ホスフィン等を含有してもよい。
【0066】
(酸化防止剤)
酸化防止剤は、金属塩の酸化を防止するために用いられるもので、錫めっき液等では重要である。酸化防止剤は、例えば0.1g/L~500g/L程度、特に1g/L~100g/L程度の濃度で含有することができる。酸化防止剤としては、例えば次亜リン酸類、アスコルビン酸、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、ハイドロキノンスルホン酸、ハイドロキノン、α又はβ-ナフトール、カテコール、レゾルシン、フロログルシン、ヒドラジン、フェノールスルホン酸、カテコールスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、及びそれらの塩等が挙げられる。
【0067】
[めっき液の調製について]
本発明のめっき液は、上記のような成分から、常法を用いて調製することができ、その詳細は、各成分の組成や配合量等を考慮して適宜決定すればよい。
【0068】
≪2.めっき処理≫
上述したように、本発明のめっき液を用いてめっき処理を行うことにより、プリント配線板や半導体用ウェハ等の空隙を平坦化し、平坦なめっき表面を形成することができる。
【0069】
(めっき対象)
本発明のめっき液は、各種の基板、ウェハ等、任意の対象に使用することができる。本発明のめっき液によれば、平坦なめっき表面を形成することが可能である。本発明のめっき液は、均一電着性にも優れ、また、サブμm~数百μmに亘る各種サイズの空隙を平坦化することもできる。本発明のめっき液はさらに、異方性にも優れ、主として目的とする箇所のみをめっきすることも可能であるので、電子部品等のめっきに有用である。電子部品としては、プリント基板、フレキシブルプリント基板、フィルムキャリア、半導体集積回路、抵抗、コンデンサ、フィルタ、インダクタ、サーミスタ、水晶振動子、スイッチ、リード線などが挙げられるが、本発明のめっき液の対象はこれらに限定されない。ウェハのバンプ電極等のように、電子部品の一部に本発明のめっき液を適用して皮膜を形成することもできる。
【0070】
本発明のめっき液で基板をめっきする場合にも、対象とする基板は特に限定されない。例えば、樹脂製等の基板に金属等の導電層を形成し、パターニングしたものや、表面に微細な回路パターンが設けられた、シリコンウェハ等の半導体基板、プリント基板等の電子回路用基板等を、めっき対象とすることができる。
【0071】
これらの基板には、ブラインドビアホール、微細配線用のトレンチ(溝)、基板を貫通するスルーホール等が混在していても良い。本発明のめっき液はビアフィリング特性に優れるので、ビアやトレンチを有する基板のめっきに好適である。本発明のめっき液を、基板の配線形成用に使用することも可能である。
【0072】
これらの基板の具体的な例としては、ICベアチップが直接実装されるパッケージ基板などのプリント基板や、LSIなどが直接実装されるシリコンウェハ、更には半導体チップそのものの製造を目的としたシリコンウェハ基板等を挙げることができる。
【0073】
(めっき操作)
本発明のめっき液は、例えば上記のような基板を通常のめっき操作によってめっきすることができる。以下で本発明のめっき液を用いるめっき操作の、一実施形態について説明するが、本発明はこうした実施形態に限定されるものではない。
【0074】
例えばめっき対象の基板に、所望によりバリア層の形成等の前処理を行い、その後、基板に対して給電層となる金属シード層を形成する等の導電化処理を行う。この導電化処理は、通常の導電化処理方法により行うことができ、例えば無電解めっきによる金属(カーボンを含む) 被覆処理、カーボンやパラジウム等によるいわゆるダイレクトめっき処理工法、スパッタリング、蒸着または化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition:CVD)等により行うことができる。
【0075】
導電化処理された基板を、次いで、本発明のめっき液でめっきする。その際の条件は特に限定されず、通常のめっき条件に従えばよい。例えば液温20~30℃ 程度、陰極電流密度0.05~3A/dm程度でめっきを行えばよい。また、めっき時間はめっきの目的に合わせて適宜設定すればよい。更に、このめっきの際にはエアレーション、ポンプ循環、パドル撹拌等による液攪拌を行うことが好ましい。
【0076】
以上で説明した実施形態によれば、上記基板にあるブラインドビアホール、スルーホール、トレンチ、シリコン貫通電極等を、表層めっき厚(ブラインドビアホール、スルーホール、トレンチ、シリコン貫通電極と同時にめっきされる、それらのない基板部分のめっきの厚さ)が薄い状態で埋めることができる。
【0077】
具体的には、例えばパターニングされ、直径50μm、深さ30μmのブラインドビアホールを有する基板にめっきをしてビアホールを完全に埋めるために、1.5A/dmの陰極電流密度で30分程度めっきを行うこともできる。このときの表層めっき厚は、例えば10μm程度となり得る。
【0078】
また、半導体製造を目的として、例えば直径0.1~0.5μm、深さ0.2~1μmのビアホールやトレンチを有するシリコンウェハなどの基板にめっきをしてビアホールやトレンチを完全に埋めるために、2A/dm程度の陰極電流密度で150秒程度めっきすることもできる。この時の表層めっき厚は、例えば1μm程度となる。
【0079】
さらに、3次元実装を目的として、例えば直径10μm、深さ20μmのシリコン貫通電極へのフィリングめっきするために、2A/dmの陰極電流密度で10分程度めっきすることもできる。この時の表層めっき厚は、例えば5μm程度となる。また、例えば直径20μm、深さ100μmのシリコン貫通電極へのフィリングめっきのために、0.2A/dmの陰極電流密度で60分程度めっきすることもできる。この時の表層めっき厚は、例えば3μm程度となる。
【0080】
本発明のめっき液を用いるめっき方法における操作及び条件は、上記に限定されず、本発明のめっき液は、種々のめっきプロセスあるいは装置に適用可能である。
【実施例
【0081】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0082】
≪合成例1~11≫
本発明のめっき液を調製するに先立ち、各種スルホニオ基含有エーテル化合物を、下記のようにして合成した。なお、下記合成例において、生成物の構造はH-NMR等により、質量平均分子量はGPCにより分析した。GPC分析は、単分散ポリエチレンオキサイド及びポリエチレングリコールを標準試料として、示差屈折率検出器(RI)にて行った。また、NMR測定は400MHzにて行った。
【0083】
<合成例1>
反応容器に、式3-1(n+m=6)で表されるポリグリセロールポリグリシジルエーテル2.87g、純水5g、式2-1で表される4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムメタンスルホネート3.41g(エポキシ基に対する反応基量0.8当量)、炭酸カリウム1.76gを、記載の順番で入れた。内温を70℃に昇温後、70℃±5℃で3時間撹拌した。反応溶液を室温に戻し、50%硫酸4.34gを加えて反応を停止させた。水で全体の体積を40mLに調整し、スルホニオ基含有エーテル化合物(SE-1)を濃度157g/Lの水溶液として得た。SE-1は、式1-1で表される構造を有していると推定される。H-NMR(溶媒:重水)において、原料の式2-1の化合物では3.08ppmに現れるメチル基由来のピークが3.21ppmに、6.7及び7.6ppm付近に現れる芳香環由来のピークが7.2~7.3及び7.9ppm付近に、それぞれブロードなピークとして現れた。また、GPCで測定したところ、SE-1の質量平均分子量は7,800であった。
【0084】
<合成例2>
反応容器に、グリセロールポリグリシジルエーテル(式3-2)0.5g、純水1g、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムメタンスルホネート(式2-1)0.47g(エポキシ基に対する反応基量0.5当量)、炭酸カリウム0.24gを、記載の順番で入れた。内温を70℃に昇温後、70℃±5℃で3時間撹拌した。反応溶液を室温に戻し、50%硫酸1.57gを加え反応を停止させた。水で全体の体積を20mLに調整し、スルホニオ基含有エーテル化合物(SE-2)を濃度49g/Lの水溶液として得た。反応後に原料とは異なるスルホニオ基が生成していることは、H-NMRにより確認した。SE-2の質量平均分子量は、4,120であった。
【0085】
<合成例3>
反応容器に、エチレングリコールジグリシジルエーテル(式3-3)3.24g、純水3g、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムメタンスルホネート(式2-1)1.99g(エポキシ基に対する反応基量0.3当量)、炭酸カリウム1.03gを、記載の順番で入れた。内温を70℃に昇温後、70℃±5℃で3時間撹拌した。反応溶液を室温に戻し、50%硫酸3.9gを加え反応を停止させた。水で全体の体積を40mLに調整し、スルホニオ基含有エーテル化合物(SE-3)を濃度131g/Lの水溶液として得た。反応後に原料とは異なるスルホニオ基が生成していることは、H-NMRにより確認した。SE-3の質量平均分子量は、2,710であった。
【0086】
<合成例4>
反応容器に、ポリエチレングリコール(分子量600)末端メタンスルホニル化物(式4-1)1.17g、純水2g、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムメタンスルホネート(式2-1)1.04g(エポキシ基に対する反応基量1.0当量)、炭酸カリウム0.54gを、記載の順番で入れた。内温を70℃に昇温後、70℃±5℃で3時間撹拌した。反応溶液を室温に戻し、純水を約10mL加えた後、50%硫酸2.2gを加え反応を停止させた。水で全体の体積を30mLに調整し、スルホニオ基含有エーテル化合物(SE-4)を濃度74g/Lの水溶液として得た。反応後に原料とは異なるスルホニオ基が生成していることは、H-NMRにより確認した。SE-4の質量平均分子量は、3,160であった。
【0087】
<合成例5>
反応容器に、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(式3-1:n+m=6)0.95g、アセトニトリル4g、チオアニソール(式2-2)0.54g(エポキシ基に対する反応基量0.8当量)、メタンスルホン酸0.52gを、記載の順番で入れた。内温を80℃に昇温後、80℃±5℃で4時間撹拌した。反応溶液を室温に戻し、純水 5g、50%硫酸2.35gを加え反応を停止させた。水で全体の体積を50mLに調整し、スルホニオ基含有エーテル化合物(SE-5)を濃度30g/Lの水系溶液として得た。なお、SE-5がスルホニウム化合物になっていることは、NMRにより確認した。H-NMR(溶媒:DMSO-d6)において、原料の式2-2の化合物では7.27~7.31ppmに現れる芳香環由来のピークが、7.71~8.09ppmに現れた。SE-5の質量平均分子量は、7,020であった。
【0088】
<合成例6>
反応容器に、ソルビトールポリグリシジルエーテル(式3-4)1.39g、アセトニトリル4g、チオアニソール(式2-2)0.81g(エポキシ基に対する反応基量0.8当量)、メタンスルホン酸0.78gを、記載の順番で入れた。内温を80℃に昇温後、80℃±5℃で4時間撹拌した。反応溶液を室温に戻し、純水5g、50%硫酸2.35gを加え反応を停止させた。水で全体の体積を50mLに調整し、スルホニオ基含有エーテル化合物(SE-6)を濃度44g/Lの水系溶液として得た。なお、SE-6がスルホニウム化合物になっていることは、H-NMRにより確認した。SE-6の質量平均分子量は、5,360であった。
【0089】
<合成例7>
反応容器に、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(式3-1:n+m=6)0.88g、アセトニトリル4g、4-(メチルチオ)フェノール(式2-3)0.57g(エポキシ基に対する反応基量0.8当量)、メタンスルホン酸0.49gを、記載の順番で入れた。内温を80℃に昇温後、80℃±5℃で4時間撹拌した。反応溶液を室温に戻し、純水5g、50%硫酸2.35gを加え反応を停止させた。水で全体の体積を 50mLに調整し、スルホニオ基含有エーテル化合物(SE-7)を濃度29g/Lの水系溶液として得た。なお、SE-7がスルホニウム化合物になっていることは、H-NMRにより確認した。SE-7の質量平均分子量は、7,360であった。
【0090】
<合成例8>
反応容器に、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(式3-1:n+m=6)2.01g、アセトニトリル7g、4-(メチルチオ)トルエン(式2-4)1.28g(エポキシ基に対する反応基量0.8当量)、メタンスルホン酸1.11gを、記載の順番で入れた。内温を80℃に昇温後、80℃±5℃で4時間撹拌した。反応溶液を室温に戻し、純水5g、50%硫酸2.35gを加え反応を停止させた。水で全体の体積を250mLに調整し、スルホニオ基含有エーテル化合物(SE-8)を濃度14g/Lの水系溶液として得た。なお、反応後にスルホニオ基が生成していることは、H-NMRにより確認した。SE-8の質量平均分子量は、6,360であった。
【0091】
<合成例9>
反応容器に、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(式3-1:n+m=6)1.24g、アセトニトリル5g、4-フルオロチオアニソール(式2-5)0.81g(エポキシ基に対する反応基量0.8当量)、メタンスルホン酸0.69gを、記載の順番で入れた。内温を80℃に昇温後、80℃±5℃で4時間撹拌した。反応溶液を室温に戻し、純水5g、50%硫酸2.35gを加え反応を停止させた。水で全体の体積を100mLに調整し、スルホニオ基含有エーテル化合物(SE-9)を濃度21g/Lの水系溶液として得た。なお、反応後にスルホニオ基が生成していることは、H-NMRにより確認した。SE-9の質量平均分子量は、6,520であった。
【0092】
<合成例10>
反応容器に、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(式3-1:n+m=6)2.94g、アセトニトリル11g、イソプロピルスルフィド(式2-6)2.00 g(エポキシ基に対する反応基量0.8当量)、メタンスルホン酸 1.62gを、記載の順番で入れた。内温を80℃に昇温後、80℃±5℃で4時間撹拌した。反応溶液を室温に戻し、純水5g、50%硫酸2.35gを加え反応を停止させた。水で全体の体積を70mLに調整し、スルホニオ基含有エーテル化合物(SE-10)を濃度71g/Lの水系溶液として得た。なお、SE-10がスルホニウム化合物になっていることは、NMRにより確認した。H-NMR(溶媒:DMSO-d6)において、原料の式2-6の化合物では1.18~1.20ppmに現れるメチル基由来のピークが、1.45~1.48ppmに現れた。SE-10の質量平均分子量は、6,450であった。
【0093】
<合成例11>
反応容器に、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(式3-1:n+m=6)2.98g、アセトニトリル11g、テトラヒドロチオフェン(式2-7)1.21 g(エポキシ基に対する反応基量0.8当量)、メタンスルホン酸1.64gを、記載の順番で入れた。内温を80℃に昇温後、80℃±5℃で4時間撹拌した。反応溶液を室温に戻し、純水5g、50%硫酸2.35gを加え反応を停止させた。水で全体の体積を40 mLに調整し、スルホニオ基含有エーテル化合物(SE-11)を濃度105g/Lの水系溶液として得た。なお、反応後にスルホニオ基が生成していることは、H-NMRにより確認した。SE-11の質量平均分子量は、7,460であった。
【0094】
≪実施例1~11≫
(硫酸銅めっき液の調製)
めっき液のレベラーとして、合成例1~11で得られたスルホニオ基含有エーテル化合物SE-1~SE-11をそれぞれ使用し、本発明に従う下記組成の硫酸銅めっき液を調製した。
<硫酸銅めっき液組成>
・硫酸銅五水和物:200g/L(Cu2+濃度:50g/L)
・硫酸:100g/L
・塩化物イオン:40mg/L(Clの濃度、塩酸として添加)
・ポリエチレングリコール(分子量6000)(界面活性剤):500mg/L
・ビス-(3-ナトリウムスルホプロピル)ジスルフィド(光沢剤):1mg/L(実施例7のみ2mg/L)
・SE-1~SE-11(レベラー):濃度は後記する表1に記載
【0095】
(硫酸銅めっき)
上記硫酸銅めっき液のそれぞれに、無電解銅めっきを施した開口径φ120μm、深さ75μmのブラインドビアホールを有する樹脂基板を入れ、以下の条件で硫酸銅めっきを行った。
<硫酸銅めっき条件>
・電流密度:1.5A/dm
・時間:45分
・浴量:500mL
・攪拌:エアレーション 1.5L/min
【0096】
(ビアフィリング性の評価)
上記めっき後の各基板について凹み量を測定し、ビアフィリング性を評価した。評価結果を、各めっき液の組成と共に、後記する表1に示す。
【0097】
≪比較例1~3≫
レベラーとして以下の化合物を用いた以外は、実施例1~11と同一の操作を行って、ビアフィリング性を評価した。評価結果を、各めっき液の組成と共に、後記する表1に示す。
・比較例1~2:4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム・メタンスルホネート(式2-1)
・比較例3:ヤーヌス・グリーン(JGB:硫酸銅めっきのレベラーとして一般的に使用される、下記構造の化合物)
【化11】
【0098】
【表1】
【0099】
表1に示した結果から明らかなように、本発明に従い水溶性の金属塩(硫酸銅)及びスルホニオ基含有エーテル化合物を含有するめっき液によれば、めっき後の基板を極めて平坦なものとすることができた。一方、エーテル結合を有さないスルホニウム化合物を用いた比較例1及び2では、基板上の凹みはめっき後にも殆どフィリングされなかった。比較例2におけるようにレベラー濃度を高めても、平坦化効果は発揮されず、レベラーとしてスルホニオ基含有エーテル化合物を含有することの重要性が示された。また、本発明に従う実施例1~11のめっき液はいずれも、一般的なレベラーであるJGBを含有する比較例3のめっき液に比べ、優れた平坦化性能を示した。
【要約】
ビアフィリング特性に優れ、平坦なめっき表面を形成し得るめっき液を提供する。
水溶性の金属塩、及びスルホニオ基含有エーテル化合物を含有するめっき液。金属塩は銅を含む塩であることが好ましく、スルホニオ基含有エーテル化合物は、質量平均分子量2,000以上10,000以下の化合物であることが好ましい。また、めっき液中でのスルホニオ基含有エーテル化合物の濃度は、0.1mg/L~1g/Lであることが好ましい。