(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】ガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造
(51)【国際特許分類】
H02B 13/045 20060101AFI20221021BHJP
H02B 13/035 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
H02B13/045 A
H02B13/035 301G
H02B13/035 301H
H02B13/035 301K
(21)【出願番号】P 2019012861
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】弁理士法人小竹アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】川上 芳弘
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】実開平1-93904(JP,U)
【文献】特開2009-100518(JP,A)
【文献】特開平7-222315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00 - 1/38
H02B 1/46 - 7/08
H02B 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス絶縁開閉装置の容器内に引き込まれた第1乃至第3の架空送電線のそれぞれに対応して設けられた第1乃至第3接地端子部が前記容器の外部に配置され、
前記第1乃至第3接地端子部は、これら第1乃至第3接地端子部を接続する接地板がボルトで着脱可能に固定され、前記ボルトの螺合部からのガスの漏出を防止するシール材が配置され、前記接地板及び前記接地板に接続されたアース線で接地される、
ガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造において、
前記接地板は、導電性金属で形成された接地板支持体が前記第1乃至第3接地端子部に対応して固定手段によって着脱可能に固定され、前記接地板支持体が前記ボルトによって前記第1乃至第3接地端子部に固定されることにより、前記接地板支持体を介して前記第1乃至第3接地端子部に前記ボルトで固定された、
ことを特徴とするガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造。
【請求項2】
前記接地板支持体には、導電性金属で形成されたアース線接続軸が設けられ、
ことを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造。
【請求項3】
前記アース線接続軸は、軸部の先端に前記軸部よりも大径の鍔部が形成された、
ことを特徴とする請求項2に記載のガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、変電所や発電所に設置されるガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、変電所や発電所等には、遮断器、断路器、母線電線路、避雷器、計器用変成器、作業用接地装置などを、絶縁性が高い六フッ化硫黄が充填された単一の容器内に収容したガス絶縁開閉装置が設置されることがある(特許文献1参照)。そして、このようなガス絶縁開閉装置に接続された架空送電線の張替等の工事後には、ガス絶縁開閉装置の外部接地端子を操作して、架空送電線の各相が計画どおり接続されているかどうかメガー検相されると共に、架空送電線の絶縁抵抗が測定される(特許文献2参照)。
【0003】
図3は、従来のガス絶縁開閉装置100の外部接地端子構造を示す図である。この
図3に示すガス絶縁開閉装置100の外部接地端子構造は、ガス絶縁開閉装置100の容器101内に引き込まれた第1乃至第3の架空送電線のそれぞれに対応して設けられた第1乃至第3接地端子部102(絶縁抵抗測定用絶縁端子部)が容器101の外部に配置されている。これら第1乃至第3接地端子部102には、銅製の接地板103がボルト104で固定されている。そして、第1乃至第3接地端子部102は、接地板103で接続され、接地板103に固定されたアース線取付部105、及びアース線取付部105に接続されたアース線(図示せず)で接地(アース)されるようになっている。
【0004】
このような
図3に示すガス絶縁開閉装置100の外部接地端子構造は、例えば、メガー検相する場合、第1乃至第3接地端子部102の各ボルト104を取り外し、接地板103及びアース線取付部105を取り外した後、メガー検相する1箇所の接地端子部102を除き、他の2箇所の接地端子部102をアース線(図示せず)を介してアースし、検相する1箇所の接地端子部102に絶縁抵抗計を接続するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-154630号
【文献】特開昭58-90181号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、
図3に示した従来のガス絶縁開閉装置100の外部接地端子構造は、接地板103及びアース線端子部105の取り外し時と取り付け時ごとに各接地端子部102に脱着されるため、ボルト104の螺合部からのガス(ガス絶縁開閉装置100の容器101に封入された六フッ化硫黄)の漏出を防止するシール材106がボルト104の脱着の繰り返しによって損傷し、ガス絶縁開閉装置100の容器101内のガスが漏出する虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、ガス絶縁開閉装置内のガスの漏出を防止するシール材が接地端子部のボルによって損傷させられるのを防止し、そのシール材の損傷に起因するガスの漏出を防止し得るガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るガス絶縁開閉装置1の外部接地端子構造は、ガス絶縁開閉装置1の容器4内に引き込まれた第1乃至第3の架空送電線のそれぞれに対応して設けられた第1乃至第3接地端子部5が前記容器4の外部に配置されている。前記第1乃至第3接地端子部5は、これら第1乃至第3接地端子部5を接続する接地板3がボルト7で着脱可能に固定され、前記ボルト7の螺合部からのガスの漏出を防止するシール材8が配置され、前記接地板3及び前記接地板3に接続されたアース線で接地される。そして、前記接地板3は、導電性金属で形成された接地板支持体6が前記第1乃至第3接地端子部5に対応して固定手段10によって着脱可能に固定され、前記接地板支持体6が前記ボルト7によって前記第1乃至第3接地端子部5に固定されることにより、前記接地板支持体6を介して前記第1乃至第3接地端子部5に前記ボルト7で固定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造によれば、架空送電線の張替工事等の後に、架空送電線のメガー検相及び絶縁抵抗の測定を行う場合、接地板支持体を接地端子部に固定するボルトが脱着されることなく、接地板を接地板支持体に固定する固定手段が取り外されるだけで、接地板が各接地板支持体から分離される。したがって、本発明に係るガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造は、ボルトを第1乃至第3接地端子部に脱着することに起因するシール材の損傷、及びシール材の損傷に起因する容器内のガスの漏出を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例に係るガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造を示す図であり、
図1(a)はガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造の平面図、
図1(b)はガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造の正面図(容器側ボルトを一部省略して示す正面図)、
図1(c)は
図1(a)のA1方向から見たガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造の側面図(容器側ボルトを一部省略して示す側面図)、
図1(d)は
図1(a)のA2-A2線に沿って接地板を切断して示すガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造の側面図(容器側ボルトを一部省略して示す側面図)である。
【
図2】
図1に示した接地板支持体から接地板及びアース線取付部を取り外した状態のガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造を示す図であり、
図2(a)はガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造を示す平面図、
図2(b)はガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造を示す正面図(容器側ボルトを一部省略して示す正面図)、
図2(c)は
図2(a)のA3方向から見たガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造を示す側面図(容器側ボルトを一部省略して示す側面図)である。
【
図3】従来例に係るガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造を示す図であり、
図3(a)はガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造の平面図、
図3(b)はガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造の正面図(容器側ボルトを一部省略して示す正面図)、
図3(c)は
図3(a)のA4方向から見たガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造の側面図(容器側ボルトを一部省略して示す側面図)、
図3(d)は
図3(a)のA5-A5線に沿って接地板を切断して示すガス絶縁開閉装置の外部接地端子構造の側面図(容器側ボルトを一部省略して示す側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づき詳述する。
【0012】
図1は、本発明の実施例に係るガス絶縁開閉装置1の外部接地端子構造を示す図である。なお、
図1(a)は、ガス絶縁開閉装置1の外部接地端子構造を示す平面図である。また、
図1(b)は、ガス絶縁開閉装置1の外部接地端子構造を示す正面図(容器側ボルト2を一部省略して示す正面図)である。また、
図1(c)は、
図1(a)のA1方向から見たガス絶縁開閉装置1の外部接地端子構造を示す側面図(容器側ボルト2を一部省略して示す側面図)である。また、
図1(d)は、
図1(a)のA2-A2線に沿って接地板3を切断して示す側面図(容器側ボルト2を一部省略して示す側面図)である。
【0013】
図1において、ガス絶縁開閉装置1は、図示しない遮断器、断路器、母線電線路、避雷器、計器用変成器、作業用接地装置などが容器4内に収容されると共に、第1乃至第3の架空送電線(図示しない各相の架空送電線)が容器4内に引き込まれ、絶縁性が高い六フッ化硫黄が容器4内に充填されている。容器4の上方の外部には、第1乃至第3の架空送電線に対応する第1乃至第3接地端子部5が配置されている。これら第1乃至第3接地端子部5には、導電性金属板で略コ字形状に形成された接地板支持体6がボルト7によって固定されている。また、これら第1乃至第3接地端子部5には、ボルト7の螺合部からのガス(六フッ化硫黄)の漏出を防止するシール材8(例えば、円環状のパッキン)が配置されている。
【0014】
接地板支持体6は、接地端子部5にボルト7で固定される矩形形状の下辺部6aと、この下辺部6aに直交するように下辺部6aの一端から立ち上がる矩形形状の脚部6bと、この脚部6bの上端から下辺部6aと平行に延びる矩形形状の上辺部6cと、からなっている。なお、この
図1において、接地板支持体6は、下辺部6aが脚部6bの下端から前方に向かって延び、上辺部6cが脚部6bの上端から前方に向かって延びている。
【0015】
接地板支持体6の上辺部6cには、導電性金属(例えば、銅)製の接地板3が固定手段(例えば、ボルト・ナット)10で脱着可能に固定されている。その結果、第1乃至第3の接地端子部5にそれぞれボルト7で固定された第1乃至第3の接地板支持体6は、一枚の接地板3によって接続されている。なお、固定手段10は、ボルト・ナットを例示したが、これに限られず、ボルト・ナットよりも脱着作業を効率的に行えるクリップでもよい。
【0016】
接地板支持体6の脚部6bには、脚部6bから後方に向かって延びる導電性金属製のアース線接続軸11が固定されている。このアース線接続軸11は、丸棒状の軸部11aの先端に軸部11aよりも大径の鍔部11bが形成されている。このようなアース線接続軸11は、軸部11aにアース線(図示せず)が取り付けられた場合、アース線が軸部11aの先端から抜け落ちるのを鍔部11bで防止することができるようになっている。
【0017】
接地板支持体6から張り出した接地板3の先端部には、アース線取付部12が固定されている。このアース線取付部12は、接地板3に固定される金属板13と、この金属板13の表裏両面にそれぞれ固定された先端接地部材14と、を有している。そして、一対の先端接地部材14,14には、それぞれアース線が接続されるようになっている。
【0018】
このような
図1に示すガス絶縁開閉装置1の外部接地端子構造において、第1乃至第3接地端子部5は、ボルト7、接地板支持体6、接地板3、アース線取付部12、及びこのアース線取付部12に接続されるアース線(図示せず)によって接地(アース)されるようになっている。
【0019】
図2は、
図1に示した接地板支持体6から接地板3及びアース線取付部12を取り外した状態のガス絶縁開閉装置1の外部接地端子構造を示す図である。なお、
図2(a)は、ガス絶縁開閉装置1の外部接地端子構造を示す平面図である。また、
図2(b)は、ガス絶縁開閉装置1の外部接地端子構造を示す正面図(容器側ボルト2を一部省略して示す正面図)である。また、
図2(c)は、
図2(a)のA3方向から見たガス絶縁開閉装置1の外部接地端子構造を示す側面図(容器側ボルト2を一部省略して示す側面図)である。
【0020】
(第1の工程)
図1に示したガス絶縁開閉装置1の外部接地端子構造は、架空送電線の張替工事等の工事を行う場合、容器4の内部に収容された図示しない断路器によって第1乃至第3の架空送電線と第1乃至第3接地端子部5とが遮断されている。しかしながら、第1乃至第3接地端子部5には、誘導電圧が生じる場合がある。そして、第1乃至第3接地端子部5に生じた誘導電圧により、作業者が感電する虞がある。そこで、架空送電線の張替工事等の工事後にメガー検相及び架空送電線の絶縁抵抗の測定を行う場合、第1乃至第3の各接地板支持体6のアース線接続軸11にアース線を接続して、第1乃至第3接地端子部5をボルト7、接地板支持体6、アース線接続軸11、及びアース線を介して接地(アース)する。その後、
図2に示すように、第1乃至第3の各接地板支持体6に固定手段10によって固定された接地板3、及びこの接地板3に固定されたアース線取付部12は、固定手段10を取り外すことにより、各接地板支持体6から分離する(
図2参照)。
【0021】
(第2の工程)
次に、例えば、第1接地端子部5のいずれか一つに対応する架空送電線のメガー検相及び絶縁抵抗の測定を行う場合には、第1接地端子部5に固定された第1の接地板支持体6のアース線接続軸11からアース線が取り外され、第1接地端子部5に固定された第1の接地板支持体6のアース線接続軸11に絶縁抵抗器のリード線が取り付けられる。この際、他の2箇所の接地板支持体6,6のアース線接続軸11,11は、アース線が接続され、他の2箇所の接地端子部5,5を接地(アース)する。
【0022】
また、例えば、第2接地端子部5に対応する第2の架空送電線のメガー検相及び絶縁抵抗の測定を行う場合には、第2接地端子部5に固定された第2の接地板支持体6のアース線接続軸11からアース線が取り外され、第2接地端子部5に固定された第2の接地板支持体6のアース線接続軸11に絶縁抵抗器のリード線が取り付けられる。この際、他の2箇所の接地板支持体6,6のアース線接続軸11,11は、アース線が接続され、他の2箇所の接地端子部5,5を接地(アース)する。
【0023】
また、例えば、第3接地端子部5に対応する第3の架空送電線のメガー検相及び絶縁抵抗の測定を行う場合には、第3接地端子部5に固定された第3の接地板支持体6のアース線接続軸11からアース線が取り外され、第3接地端子部5に固定された第3の接地板支持体6のアース線接続軸11に絶縁抵抗器のリード線が取り付けられる。この際、他の2箇所の接地板支持体6,6のアース線接続軸11,11は、アース線が接続され、他の2箇所の接地端子部5,5を接地(アース)する。
【0024】
以上のように、本実施例に係るガス絶縁開閉装置1の外部接地端子構造によれば、架空送電線の張替工事等の後に、架空送電線のメガー検相及び絶縁抵抗の測定を行う場合、接地板支持体6を接地端子部5に固定するボルト7が脱着されることなく、接地板3を接地板支持体6に固定する固定手段10が取り外されるだけで、接地板3及びアース線取付部12が各接地板支持体6から分離される。したがって、本実施例に係るガス絶縁開閉装置1の外部接地端子構造は、ボルト7を第1乃至第3接地端子部5に脱着することに起因するシール材8の損傷、及びシール材8の損傷に起因する容器4内のガスの漏出を防止できる。
【0025】
また、本実施例に係るガス絶縁開閉装置1の外部接地端子構造は、第1乃至第3の接地板支持体6にアース線取付軸11が固定されているため、接地板3及びアース線取付部12を取り外す際に、アース線取付軸11にアース線を接続するだけで、第1乃至第3の接地板支持体6が固定された第1乃至第3接地端子部5を接地することができ、アース線の接続作業が容易である。このような本実施例に対し、従来のガス絶縁開閉装置100の外部接地端子構造は、接地板103を接地端子部102に固定するボルト104が接地端子部102から取り外され、接地板103が接地端子部102から取り除かれた後、ボルト104を接地端子部102に螺合し、そのボルト104でアース線を接地端子部102に固定して、接地端子部102を接地するようになっているため、アース線の接続作業が面倒であった。
【0026】
また、本実施例に係るガス絶縁開閉装置1の外部接地端子構造は、アース線接続軸11の軸部11aの先端に鍔部11bが設けられているため、アース線接続軸11の軸部11aに取り付けられたアース線がアース線接続軸11の先端から抜け落ちる(脱落する)のを防止でき、アース線の脱落に起因する感電事故を防止できる。
【符号の説明】
【0027】
1……ガス絶縁開閉装置、3……接地板、4……容器、5……接地端子部、6……接地板支持体、7……ボルト、8……シール材、10……固定手段