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特許7162198船外機用制御装置、船外機用制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】船外機用制御装置、船外機用制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/42 20060101AFI20221021BHJP
   B63H 21/21 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
B63H25/42 B
B63H21/21
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019007330
(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公開番号】P2020116981
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-08-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】白尾 真人
(72)【発明者】
【氏名】秋田 まり乃
(72)【発明者】
【氏名】大島 隆史
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-116847(JP,A)
【文献】特許第5987624(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/42
B63H 21/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に備えられた複数の船外機を制御する船外機用制御装置であって、
前記複数の船外機のそれぞれは、前記船舶の推進力を発生する推進ユニットと、操舵アクチュエータとを備え、
前記船舶は、
前記操舵アクチュエータおよび前記推進ユニットを作動させる操作部を備え、
前記操作部は、少なくとも
前記複数の船外機が前記船舶の推進力を発生しない位置である第1位置と、
前記複数の船外機が前記船舶を左右方向に移動させる推進力を発生する位置である第2位置と、
前記複数の船外機が左右方向と鋭角をなす斜め方向に前記船舶を移動させる推進力を発生する位置である第3位置とに位置することができ、
前記操作部が前記第1位置から前記第2位置を経て前記第3位置に移動させられる場合に、前記船外機用制御装置が前記複数の船外機に発生させる斜め方向の推進力の前後方向成分は、
前記操作部が前記第1位置から前記第3位置に直接移動させられる場合に、前記船外機用制御装置が前記複数の船外機に発生させる斜め方向の推進力の前後方向成分よりも大きいか、あるいは、
前記操作部が前記第1位置から前記第2位置を経て前記第3位置に移動させられる場合に、前記船外機用制御装置が前記複数の船外機に発生させる斜め方向の推進力の左右方向成分は、
前記操作部が前記第1位置から前記第3位置に直接移動させられる場合に、前記船外機用制御装置が前記複数の船外機に発生させる斜め方向の推進力の左右方向成分よりも小さい、
船外機用制御装置。
【請求項2】
前記操作部の移動経路を算出する移動経路算出部と、
前記移動経路算出部によって算出された前記操作部の移動経路に基づいて、前記複数の船外機に発生させる推進力を算出する推進力算出部とを備える、
請求項1に記載の船外機用制御装置。
【請求項3】
前記第2位置には、前記第1位置の右側の位置であって、前記複数の船外機が前記船舶を右向きに移動させる推進力を発生する位置である右位置、および、前記第1位置の左側の位置であって、前記複数の船外機が前記船舶を左向きに移動させる推進力を発生する位置である左位置が含まれ、
前記第3位置には、前記第1位置の右前側の位置であって、前記複数の船外機が前記船舶を右前向きに移動させる推進力を発生する位置である右前位置、前記第1位置の右後側の位置であって、前記複数の船外機が前記船舶を右後向きに移動させる推進力を発生する位置である右後位置、前記第1位置の左前側の位置であって、前記複数の船外機が前記船舶を左前向きに移動させる推進力を発生する位置である左前位置、および、前記第1位置の左後側の位置であって、前記複数の船外機が前記船舶を左後向きに移動させる推進力を発生する位置である左後位置が含まれ、
前記操作部が前記第1位置から前記右位置を経て前記右前位置に移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する右前向きの推進力の前後方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記右前位置に直接移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する右前向きの推進力の前後方向成分よりも大きいか、あるいは、
前記操作部が前記第1位置から前記右位置を経て前記右前位置に移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する右前向きの推進力の左右方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記右前位置に直接移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する右前向きの推進力の左右方向成分よりも小さく、
前記操作部が前記第1位置から前記右位置を経て前記右後位置に移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する右後向きの推進力の前後方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記右後位置に直接移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する右後向きの推進力の前後方向成分よりも大きいか、あるいは、
前記操作部が前記第1位置から前記右位置を経て前記右後位置に移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する右後向きの推進力の左右方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記右後位置に直接移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する右後向きの推進力の左右方向成分よりも小さく、
前記操作部が前記第1位置から前記左位置を経て前記左前位置に移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する左前向きの推進力の前後方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記左前位置に直接移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する左前向きの推進力の前後方向成分よりも大きいか、あるいは、
前記操作部が前記第1位置から前記左位置を経て前記左前位置に移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する左前向きの推進力の左右方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記左前位置に直接移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する左前向きの推進力の左右方向成分よりも小さく、
前記操作部が前記第1位置から前記左位置を経て前記左後位置に移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する左後向きの推進力の前後方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記左後位置に直接移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する左後向きの推進力の前後方向成分よりも大きいか、あるいは、
前記操作部が前記第1位置から前記左位置を経て前記左後位置に移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する左後向きの推進力の左右方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記左後位置に直接移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する左後向きの推進力の左右方向成分よりも小さい、
請求項2に記載の船外機用制御装置。
【請求項4】
船舶に備えられた複数の船外機を制御する船外機用制御方法であって、
前記複数の船外機のそれぞれは、前記船舶の推進力を発生する推進ユニットと、操舵アクチュエータとを備え、
前記船舶は、
前記操舵アクチュエータおよび前記推進ユニットを作動させる操作部を備え、
前記操作部は、少なくとも
前記複数の船外機が前記船舶の推進力を発生しない位置である第1位置と、
前記複数の船外機が前記船舶を左右方向に移動させる推進力を発生する位置である第2位置と、
前記複数の船外機が左右方向と鋭角をなす斜め方向に前記船舶を移動させる推進力を発生する位置である第3位置とに位置することができ、
前記操作部が前記第1位置から前記第3位置に直接移動させられる場合に、前記複数の船外機が第1の斜め方向の推進力を発生する第1ステップと、
前記操作部が前記第1位置から前記第2位置を経て前記第3位置に移動させられる場合に、前記複数の船外機が第2の斜め方向の推進力を発生する第2ステップとを備え、
前記第2ステップにおいて前記複数の船外機が発生する前記第2の斜め方向の推進力の前後方向成分は、
前記第1ステップにおいて前記複数の船外機が発生する前記第1の斜め方向の推進力の前後方向成分よりも大きいか、あるいは、
前記第2ステップにおいて前記複数の船外機が発生する前記第2の斜め方向の推進力の左右方向成分は、
前記第1ステップにおいて前記複数の船外機が発生する前記第1の斜め方向の推進力の左右方向成分よりも小さい、
船外機用制御方法。
【請求項5】
船舶に備えられた複数の船外機を制御するプログラムであって、
前記複数の船外機のそれぞれは、前記船舶の推進力を発生する推進ユニットと、操舵アクチュエータとを備え、
前記船舶は、
前記操舵アクチュエータおよび前記推進ユニットを作動させる操作部を備え、
前記操作部は、少なくとも
前記複数の船外機が前記船舶の推進力を発生しない位置である第1位置と、
前記複数の船外機が前記船舶を左右方向に移動させる推進力を発生する位置である第2位置と、
前記複数の船外機が前記船舶を左右方向と鋭角をなす斜め方向に移動させる推進力を発生する位置である第3位置とに位置することができ、
前記船舶に搭載されたコンピュータに、
前記操作部が前記第1位置から前記第3位置に直接移動させられる場合に、前記複数の船外機が第1の斜め方向の推進力を発生する第1ステップと、
前記操作部が前記第1位置から前記第2位置を経て前記第3位置に移動させられる場合に、前記複数の船外機が第2の斜め方向の推進力を発生する第2ステップと
を実行させるためのプログラムであって、
前記第2ステップにおいて前記複数の船外機が発生する前記第2の斜め方向の推進力の前後方向成分は、
前記第1ステップにおいて前記複数の船外機が発生する前記第1の斜め方向の推進力の前後方向成分よりも大きいか、あるいは、
前記第2ステップにおいて前記複数の船外機が発生する前記第2の斜め方向の推進力の左右方向成分は、
前記第1ステップにおいて前記複数の船外機が発生する前記第1の斜め方向の推進力の左右方向成分よりも小さい、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機用制御装置、船外機用制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、任意の方向への移動と旋回が可能な船舶用操縦装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術では、推進力の方向と強さを任意に設定できる2基の推進器が船尾の左右に設置され、各推進器の推進力の方向と強さを制御することによって、所望の方向に移動させる合成力および所望の方向に旋回させる合成力が船体に作用する。詳細には、特許文献1には、全方向性制御器としてジョイスティックが記載されており、船体が姿勢を維持したままで真横に移動する例が記載されている。また、特許文献1には、船体がその姿勢のままで斜め前または斜め後に移動する例が記載されている。
ところで、特許文献1には、ジョイスティックのレバーの先端部が、レバーが傾倒されていないときに位置する中立位置から、レバーが右向きに傾倒されたときに位置する右傾倒位置を経て、レバーが右前向きに傾倒されたときに位置する右前傾倒位置に移動させられる場合に、2基の推進器が発生する右前向きの推進力(合成力)の前後方向成分の大きさについて記載されていない。
また、特許文献1には、ジョイスティックのレバーの先端部が、中立位置から、右前傾倒位置に直接移動させられる場合に、2基の推進器が発生する右前向きの推進力(合成力)の前後方向成分の大きさについても記載されていない。
【0003】
また従来から、中立状態から全方向に傾倒させることができるジョイスティックによる操作に応じて、船舶に取り付けられた2基の船外機を制御する制御装置が知られている(例えば特許文献2参照)。特許文献2に記載された技術では、ジョイスティックが右側に傾倒された場合に、制御装置は、船舶が右向きに平行移動する推進力を2基の船外機に発生させる。また、特許文献2に記載された技術では、ジョイスティックが右前側に傾倒された場合に、制御装置は、船舶が右前向きに平行移動する推進力を2基の船外機に発生させる。
ところで、特許文献2には、ジョイスティックのレバーの先端部が、中立位置から、右傾倒位置を経て、右前傾倒位置に移動させられる場合に、2基の船外機が発生する右前向きの推進力(合成力)の前後方向成分の大きさと、ジョイスティックのレバーの先端部が、中立位置から、右前傾倒位置に直接移動させられる場合に、2基の船外機が発生する右前向きの推進力(合成力)の前後方向成分の大きさとの関係について記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-285486号公報
【文献】特許第5987624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばジョイスティックのレバーの先端部が、中立位置から右傾倒位置に移動させられて、船舶が右向きに移動している期間中に、例えば風、潮流などによって後向きの力を船舶が受ける場合、操船者は、船舶が後向きに流されることなく船舶を右向きに移動させるために、ジョイスティックのレバーの先端部を、右傾倒位置から右前傾倒位置に移動させる。
【0006】
本発明者等は、鋭意研究において、仮に、ジョイスティックのレバーの先端部が中立位置から右傾倒位置を経て、右前傾倒位置に移動させられるときに船外機が発生する右前向きの推進力の前後方向成分および左右方向成分の大きさと、ジョイスティックのレバーの先端部が中立位置から右前傾倒位置に直接移動させられるときに船外機が発生する右前向きの推進力の前後方向成分および左右方向成分の大きさとが等しく設定されている場合には、風、潮流などによる後向きの力に抗する推進力の前後方向成分の大きさが十分ではなく、船舶が、操船者の要求どおりに右向きに移動せず、後向きに流されてしまうおそれがあることを見い出した。
【0007】
また、例えば風、潮流などによって後向きの力を船舶が受けない場合であっても、右向きに移動中に船舶の向きを右向きから右前向きに切り替える(微修正する、補正する)ために、操船者がジョイスティックのレバーの先端部を右傾倒位置から右前傾倒位置に移動させることがある。
本発明者等は、鋭意研究において、右向きに移動する船舶には、右向きの慣性力が発生するため、仮に、ジョイスティックのレバーの先端部が中立位置から右傾倒位置を経て、右前傾倒位置に移動させられるときに船外機が発生する右前向きの推進力の前後方向成分および左右方向成分の大きさと、ジョイスティックのレバーの先端部が中立位置から右前傾倒位置に直接移動させられるときに船外機が発生する右前向きの推進力の前後方向成分および左右方向成分の大きさとが等しく設定されている場合には、操船者の補正操作に対する船舶の応答動作が遅い(つまり、船舶の向きが右向きから右前向きに切り替わるのが遅い)と操船者が感じてしまうおそれがあることを見い出した。
【0008】
上述した問題点に鑑み、本発明は、船舶を左右方向に移動させる操作中に船舶が前後方向の力を受ける場合であっても、船舶が前後方向に流されることなく、船舶を左右方向に移動させることができ、左右方向に移動中の船舶の向きを迅速に斜め方向に切り替えることができる船外機用制御装置、船外機用制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意研究において、例えばジョイスティックのレバーの先端部が中立位置から右傾倒位置を経て、右前傾倒位置に移動させられるときに船外機が発生する右前向きの推進力の前後方向成分を、ジョイスティックのレバーの先端部が中立位置から右前傾倒位置に直接移動させられるときに船外機が発生する右前向きの推進力の前後方向成分よりも大きく設定した場合、あるいは、ジョイスティックのレバーの先端部が中立位置から右傾倒位置を経て、右前傾倒位置に移動させられるときに船外機が発生する右前向きの推進力の左右方向成分を、ジョイスティックのレバーの先端部が中立位置から右前傾倒位置に直接移動させられるときに船外機が発生する右前向きの推進力の左右方向成分よりも小さく設定した場合(つまり、ジョイスティックのレバーの先端部が中立位置から右傾倒位置を経て、右前傾倒位置に移動させられるときに船外機が発生する右前向きの推進力と、その推進力の前後方向成分とがなす鋭角が、ジョイスティックのレバーの先端部が中立位置から右前傾倒位置に直接移動させられるときに船外機が発生する右前向きの推進力と、その推進力の前後方向成分とがなす鋭角よりも小さい場合)に、風、潮流などによって船舶が後向きに流されることなく、操船者の要求どおりに、船舶を右向きに移動させることができることを見い出したのである。
また、本発明者等は、鋭意研究において、例えばジョイスティックのレバーの先端部が中立位置から右傾倒位置を経て、右前傾倒位置に移動させられるときに船外機が発生する右前向きの推進力の前後方向成分を、ジョイスティックのレバーの先端部が中立位置から右前傾倒位置に直接移動させられるときに船外機が発生する右前向きの推進力の前後方向成分よりも大きく設定した場合、あるいは、ジョイスティックのレバーの先端部が中立位置から右傾倒位置を経て、右前傾倒位置に移動させられるときに船外機が発生する右前向きの推進力の左右方向成分を、ジョイスティックのレバーの先端部が中立位置から右前傾倒位置に直接移動させられるときに船外機が発生する右前向きの推進力の左右方向成分よりも小さく設定した場合(つまり、ジョイスティックのレバーの先端部が中立位置から右傾倒位置を経て、右前傾倒位置に移動させられるときに船外機が発生する右前向きの推進力と、その推進力の前後方向成分とがなす鋭角が、ジョイスティックのレバーの先端部が中立位置から右前傾倒位置に直接移動させられるときに船外機が発生する右前向きの推進力と、その推進力の前後方向成分とがなす鋭角よりも小さい場合)には、右向きに移動中の船舶の向きを、操船者の要求どおりに迅速に右前向きに切り替えることができることを見い出したのである。
【0010】
本発明の一態様は、船舶に備えられた複数の船外機を制御する船外機用制御装置であって、前記複数の船外機のそれぞれは、前記船舶の推進力を発生する推進ユニットと、操舵アクチュエータとを備え、前記船舶は、前記操舵アクチュエータおよび前記推進ユニットを作動させる操作部を備え、前記操作部は、少なくとも前記複数の船外機が前記船舶の推進力を発生しない位置である第1位置と、前記複数の船外機が前記船舶を左右方向に移動させる推進力を発生する位置である第2位置と、前記複数の船外機が左右方向と鋭角をなす斜め方向に前記船舶を移動させる推進力を発生する位置である第3位置とに位置することができ、前記操作部が前記第1位置から前記第2位置を経て前記第3位置に移動させられる場合に、前記船外機用制御装置が前記複数の船外機に発生させる斜め方向の推進力の前後方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記第3位置に直接移動させられる場合に、前記船外機用制御装置が前記複数の船外機に発生させる斜め方向の推進力の前後方向成分よりも大きいか、あるいは、前記操作部が前記第1位置から前記第2位置を経て前記第3位置に移動させられる場合に、前記船外機用制御装置が前記複数の船外機に発生させる斜め方向の推進力の左右方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記第3位置に直接移動させられる場合に、前記船外機用制御装置が前記複数の船外機に発生させる斜め方向の推進力の左右方向成分よりも小さい(つまり、前記操作部が前記第1位置から前記第2位置を経て前記第3位置に移動させられるときに前記船外機用制御装置が前記複数の船外機に発生させる斜め方向の推進力と、その推進力の前後方向成分とがなす鋭角が、前記操作部が前記第1位置から前記第3位置に直接移動させられるときに前記船外機用制御装置が前記複数の船外機に発生させる斜め方向の推進力と、その推進力の前後方向成分とがなす鋭角よりも小さい)、船外機用制御装置である。
【0011】
本発明の一態様の船外機用制御装置は、前記操作部の移動経路を算出する移動経路算出部と、前記移動経路算出部によって算出された前記操作部の移動経路に基づいて、前記複数の船外機に発生させる推進力を算出する推進力算出部とを備えてもよい。
【0012】
本発明の一態様の船外機用制御装置では、前記第2位置には、前記第1位置の右側の位置であって、前記複数の船外機が前記船舶を右向きに移動させる推進力を発生する位置である右位置、および、前記第1位置の左側の位置であって、前記複数の船外機が前記船舶を左向きに移動させる推進力を発生する位置である左位置が含まれ、前記第3位置には、前記第1位置の右前側の位置であって、前記複数の船外機が前記船舶を右前向きに移動させる推進力を発生する位置である右前位置、前記第1位置の右後側の位置であって、前記複数の船外機が前記船舶を右後向きに移動させる推進力を発生する位置である右後位置、前記第1位置の左前側の位置であって、前記複数の船外機が前記船舶を左前向きに移動させる推進力を発生する位置である左前位置、および、前記第1位置の左後側の位置であって、前記複数の船外機が前記船舶を左後向きに移動させる推進力を発生する位置である左後位置が含まれ、前記操作部が前記第1位置から前記右位置を経て前記右前位置に移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する右前向きの推進力の前後方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記右前位置に直接移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する右前向きの推進力の前後方向成分よりも大きいか、あるいは、前記操作部が前記第1位置から前記右位置を経て前記右前位置に移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する右前向きの推進力の左右方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記右前位置に直接移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する右前向きの推進力の左右方向成分よりも小さく、前記操作部が前記第1位置から前記右位置を経て前記右後位置に移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する右後向きの推進力の前後方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記右後位置に直接移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する右後向きの推進力の前後方向成分よりも大きいか、あるいは、前記操作部が前記第1位置から前記右位置を経て前記右後位置に移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する右後向きの推進力の左右方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記右後位置に直接移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する右後向きの推進力の左右方向成分よりも小さく、前記操作部が前記第1位置から前記左位置を経て前記左前位置に移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する左前向きの推進力の前後方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記左前位置に直接移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する左前向きの推進力の前後方向成分よりも大きいか、あるいは、前記操作部が前記第1位置から前記左位置を経て前記左前位置に移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する左前向きの推進力の左右方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記左前位置に直接移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する左前向きの推進力の左右方向成分よりも小さく、前記操作部が前記第1位置から前記左位置を経て前記左後位置に移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する左後向きの推進力の前後方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記左後位置に直接移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する左後向きの推進力の前後方向成分よりも大きいか、あるいは、前記操作部が前記第1位置から前記左位置を経て前記左後位置に移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する左後向きの推進力の左右方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記左後位置に直接移動させられる場合に、前記推進力算出部が算出する左後向きの推進力の左右方向成分よりも小さくてもよい。
【0013】
本発明の一態様は、船舶に備えられた複数の船外機を制御する船外機用制御方法であって、前記複数の船外機のそれぞれは、前記船舶の推進力を発生する推進ユニットと、操舵アクチュエータとを備え、前記船舶は、前記操舵アクチュエータおよび前記推進ユニットを作動させる操作部を備え、前記操作部は、少なくとも前記複数の船外機が前記船舶の推進力を発生しない位置である第1位置と、前記複数の船外機が前記船舶を左右方向に移動させる推進力を発生する位置である第2位置と、前記複数の船外機が左右方向と鋭角をなす斜め方向に前記船舶を移動させる推進力を発生する位置である第3位置とに位置することができ、前記操作部が前記第1位置から前記第3位置に直接移動させられる場合に、前記複数の船外機が第1の斜め方向の推進力を発生する第1ステップと、前記操作部が前記第1位置から前記第2位置を経て前記第3位置に移動させられる場合に、前記複数の船外機が第2の斜め方向の推進力を発生する第2ステップとを備え、前記第2ステップにおいて前記複数の船外機が発生する前記第2の斜め方向の推進力の前後方向成分は、前記第1ステップにおいて前記複数の船外機が発生する前記第1の斜め方向の推進力の前後方向成分よりも大きいか、あるいは、前記第2ステップにおいて前記複数の船外機が発生する前記第2の斜め方向の推進力の左右方向成分は、前記第1ステップにおいて前記複数の船外機が発生する前記第1の斜め方向の推進力の左右方向成分よりも小さい、船外機用制御方法である。
【0014】
本発明の一態様は、船舶に備えられた複数の船外機を制御するプログラムであって、前記複数の船外機のそれぞれは、前記船舶の推進力を発生する推進ユニットと、操舵アクチュエータとを備え、前記船舶は、前記操舵アクチュエータおよび前記推進ユニットを作動させる操作部を備え、前記操作部は、少なくとも前記複数の船外機が前記船舶の推進力を発生しない位置である第1位置と、前記複数の船外機が前記船舶を左右方向に移動させる推進力を発生する位置である第2位置と、前記複数の船外機が前記船舶を左右方向と鋭角をなす斜め方向に移動させる推進力を発生する位置である第3位置とに位置することができ、前記船舶に搭載されたコンピュータに、前記操作部が前記第1位置から前記第3位置に直接移動させられる場合に、前記複数の船外機が第1の斜め方向の推進力を発生する第1ステップと、前記操作部が前記第1位置から前記第2位置を経て前記第3位置に移動させられる場合に、前記複数の船外機が第2の斜め方向の推進力を発生する第2ステップとを実行させるためのプログラムであって、前記第2ステップにおいて前記複数の船外機が発生する前記第2の斜め方向の推進力の前後方向成分は、前記第1ステップにおいて前記複数の船外機が発生する前記第1の斜め方向の推進力の前後方向成分よりも大きいか、あるいは、前記第2ステップにおいて前記複数の船外機が発生する前記第2の斜め方向の推進力の左右方向成分は、前記第1ステップにおいて前記複数の船外機が発生する前記第1の斜め方向の推進力の左右方向成分よりも小さい、プログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、船舶を左右方向に移動させる操作中に船舶が前後方向の力を受ける場合であっても、船舶が前後方向に流されることなく、船舶を左右方向に移動させることができ、左右方向に移動中の船舶の向きを迅速に斜め方向に切り替えることができる船外機用制御装置、船外機用制御方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の船外機用制御装置が適用される船舶の一例を示す図である。
図2図1に示す船舶の主要部の機能ブロック図である。
図3】第1実施形態の船舶における操作部の位置の例を説明するための図である。
図4】第1実施形態の船舶における操作部の移動経路の例を説明するための図である。
図5】第1実施形態の船舶における操作部の移動経路の例を説明するための図である。
図6図4(B)に示す例において船外機用制御装置が船外機に発生させる右前向きの推進力、図4(C)に示す例において船外機用制御装置が船外機に発生させる右前向きの推進力などを比較して示した図である。
図7図5(B)に示す例において船外機用制御装置が船外機に発生させる左前向きの推進力、図5(C)に示す例において船外機用制御装置が船外機に発生させる左前向きの推進力などを比較して示した図である。
図8】第1実施形態の船外機用制御装置によって実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図9】第2実施形態の船外機用制御装置が適用される船舶の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
以下、本発明の船外機用制御装置、船外機用制御方法およびプログラムの第1実施形態について説明する。
【0018】
図1は第1実施形態の船外機用制御装置14が適用される船舶1の一例を示す図である。図2図1に示す船舶1の主要部の機能ブロック図である。
図1および図2に示す例では、船舶1が、船体11と、船外機12と、船外機13と、船外機用制御装置14とを備えている。船外機12、13は、船舶1の推進ユニットである。
図1および図2に示す例では、船舶1が2基の船外機12、13を備えているが、他の例では、船舶1が3基以上の船外機を備えていてもよい。
【0019】
図1および図2に示す例では、船外機12が、船体11の右後部に取り付けられている。船外機12は、船外機本体12Aと、ブラケット12Bとを備えている。ブラケット12Bは、船外機12を船体11の右後部に取り付けるための機構である。船外機本体12Aは、操舵軸12AXを中心に船体11に対して回動可能に、ブラケット12Bを介して船体11の右後部に接続されている。
船外機本体12Aは、推進ユニット12A1と、操舵アクチュエータ12A2とを備えている。推進ユニット12A1は、例えばエンジン(図示せず)によって駆動されるプロペラ仕様の推進ユニットであり、船舶1の推進力を発生する。他の例では、推進ユニット12A1が、ウォータージェット仕様の推進ユニットであってもよい。
操舵アクチュエータ12A2は、操舵軸12AXを中心に、推進ユニット12A1を含む船外機本体12Aの全体を、船体11に対して回動させる。操舵アクチュエータ12A2は、舵の役目を担う。
【0020】
図1および図2に示す例では、船外機13が、船体11の左後部に取り付けられている。船外機13は、船外機本体13Aと、ブラケット13Bとを備えている。ブラケット13Bは、船外機13を船体11の左後部に取り付けるための機構である。船外機本体13Aは、操舵軸13AXを中心に船体11に対して回動可能に、ブラケット13Bを介して船体11の左後部に接続されている。
船外機本体13Aは、推進ユニット13A1と、操舵アクチュエータ13A2とを備えている。推進ユニット13A1は、推進ユニット12A1と同様に、例えばプロペラ仕様の推進ユニットであり、船舶1の推進力を発生する。他の例では、推進ユニット13A1が、ウォータージェット仕様の推進ユニットであってもよい。
操舵アクチュエータ13A2は、操舵軸13AXを中心に、推進ユニット13A1を含む船外機本体13Aの全体を、船体11に対して回動させる。操舵アクチュエータ13A2は、舵の役目を担う。
【0021】
図1および図2に示す例では、船体11が、操舵装置11Aと、リモコン装置11Bと、リモコン装置11Cと、操作部11Dとを備えている。
他の例では、船体11が、操舵装置11A、リモコン装置11Bおよびリモコン装置11Cを備えていなくてもよい。
図1および図2に示す例では、操舵装置11Aは、操舵アクチュエータ12A2、13A2を作動させる装置であり、例えばステアリングホイールを有するステアリング装置である。操船者は、操舵装置11Aを操作することによって、操舵アクチュエータ12A2、13A2を作動させ、船舶1の操舵を行うことができる。
リモコン装置11Bは、推進ユニット12A1を作動させる入力操作を受け付ける装置であり、例えばリモコンレバーを有する。操船者は、リモコン装置11Bを操作することによって、推進ユニット12A1が発生する推進力の大きさおよび向きを変更することができる。リモコン装置11Bのリモコンレバーは、推進ユニット12A1が船舶1の前向きの推進力を発生する前進領域と、推進ユニット12A1が船舶1の後向きの推進力を発生する後進領域と、推進ユニット12A1が推進力を発生しないニュートラル領域とに位置することができる。前進領域内におけるリモコンレバーの位置に応じて、推進ユニット12A1が発生する船舶1の前向きの推進力の大きさが変化する。また、後進領域内におけるリモコンレバーの位置に応じて、推進ユニット12A1が発生する船舶1の後向きの推進力の大きさが変化する。
【0022】
図1および図2に示す例では、リモコン装置11Cが、推進ユニット13A1を作動させる入力操作を受け付ける装置であり、リモコン装置11Bと同様に構成されている。つまり、操船者は、リモコン装置11Cを操作することによって、推進ユニット13A1が発生する推進力の大きさおよび向きを変更することができる。
操作部11Dは、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を作動させる装置である。詳細には、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を作動させるための入力操作を受け付ける。操作部11Dは、操舵装置11Aおよびリモコン装置11B、11Cとは別個に設けられている。
第1実施形態の船舶1では、操作部11Dが、レバーを有するジョイスティックによって構成されている。
操船者は、操舵装置11A(ステアリングホイール)およびリモコン装置11B、11C(リモコンレバー)を操作することによって、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を作動させることができるのみならず、操作部11D(ジョイスティック)を操作することによっても、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を作動させることができる。
【0023】
図1および図2に示す例では、船外機用制御装置14が、操作部11Dに対する入力操作に基づいて、船外機12の操舵アクチュエータ12A2および推進ユニット12A1と、船外機13の操舵アクチュエータ13A2および推進ユニット13A1とを制御する。詳細には、船外機用制御装置14は、操作部11Dに対する入力操作に基づいて、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生する船舶1の推進力の大きさおよび向きを制御する。
船外機用制御装置14は、移動経路算出部14Aと、推進力算出部14Bとを備えている。移動経路算出部14Aは、操作部11Dの移動経路を算出する。詳細には、移動経路算出部14Aは、例えばマイクロスイッチなどのセンサ(図示せず)によって検出されたジョイスティックのレバーの位置に基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路を算出する。
推進力算出部14Bは、移動経路算出部14Aによって算出された操作部11Dの移動経路に基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Bは、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路に基づいて、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる船舶1の推進力の大きさおよび向きを算出する。
つまり、船外機用制御装置14は、推進力算出部14Bによって算出された大きさおよび向きの推進力を操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生するように、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を制御する。
【0024】
図1および図2に示す例では、操作部11D(ジョイスティック)のレバーが傾倒可能であると共に、レバーが、レバーの中心軸線を中心に回動可能に、操作部11Dは構成されている。
操船者が、レバーの中心軸線を中心にレバーを時計回りに回動させる場合に、船外機用制御装置14は、船体11が右旋回するように、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を制御する。一方、操船者が、レバーの中心軸線を中心にレバーを反時計回りに回動させる場合に、船外機用制御装置14は、船体11が左旋回するように、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を制御する。つまり、操船者がレバーの中心軸線を中心にレバーを回動させることによって、船体11の前部の向きが変化する。
また、操船者がレバーを傾倒させる場合に、船外機用制御装置14は、船体11が姿勢を維持したまま移動するように、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を制御する。つまり、操船者がレバーを傾倒させることによって、船体11の前部と、船体11の後部とが、並進する。
【0025】
図3は第1実施形態の船舶1における操作部11Dの位置(詳細には、ジョイスティックのレバーの先端部の位置P1~P9)の例を説明するための図である。
図3(A)に示す例では、操作部11D(ジョイスティック)のレバーが傾倒されていない。そのため、操作部11D(詳細には、ジョイスティックのレバーの先端部)は、位置(中立位置)P1に位置する。操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1に位置する場合、船外機用制御装置14は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に船舶1の推進力を発生させない。
つまり、位置P1は、船外機12、13が船舶1の推進力を発生しない位置である。
【0026】
図3(B)に示す例では、ジョイスティックのレバーが右向きに傾倒されている。そのため、ジョイスティックのレバーの先端部は、位置P1の右側の位置P2に位置する。ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置する場合、船外機用制御装置14は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に、船舶1を右向きに移動させる推進力を発生させる。
つまり、位置P2は、船外機12、13が船舶1を右向きに移動(詳細には、並進移動)させる推進力を発生する位置である。
図3(C)に示す例では、ジョイスティックのレバーが右前向きに傾倒されている。そのため、ジョイスティックのレバーの先端部は、位置P1の右前側の位置P3に位置する。ジョイスティックのレバーの先端部が位置P3に位置する場合、船外機用制御装置14は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に、左右方向と鋭角θ3をなす右前向きに船舶1を移動させる推進力を発生させる。
つまり、位置P3は、船外機12、13が船舶1を右前向きに移動(並進移動)させる推進力を発生する位置である。
図3(D)に示す例では、ジョイスティックのレバーが右後向きに傾倒されている。そのため、ジョイスティックのレバーの先端部は、位置P1の右後側の位置P4に位置する。ジョイスティックのレバーの先端部が位置P4に位置する場合、船外機用制御装置14は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に、左右方向と鋭角θ4をなす右後向きに船舶1を移動させる推進力を発生させる。
つまり、位置P4は、船外機12、13が船舶1を右後向きに移動(並進移動)させる推進力を発生する位置である。
【0027】
図3(E)に示す例では、ジョイスティックのレバーが左向きに傾倒されている。そのため、ジョイスティックのレバーの先端部は、位置P1の左側の位置P5に位置する。ジョイスティックのレバーの先端部が位置P5に位置する場合、船外機用制御装置14は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に、船舶1を左向きに移動させる推進力を発生させる。
つまり、位置P5は、船外機12、13が船舶1を左向きに移動(並進移動)させる推進力を発生する位置である。
図3(F)に示す例では、ジョイスティックのレバーが左前向きに傾倒されている。そのため、ジョイスティックのレバーの先端部は、位置P1の左前側の位置P6に位置する。ジョイスティックのレバーの先端部が位置P6に位置する場合、船外機用制御装置14は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に、左右方向と鋭角θ6をなす左前向きに船舶1を移動させる推進力を発生させる。
つまり、位置P6は、船外機12、13が船舶1を左前向きに移動(並進移動)させる推進力を発生する位置である。
図3(G)に示す例では、ジョイスティックのレバーが左後向きに傾倒されている。そのため、ジョイスティックのレバーの先端部は、位置P1の左後側の位置P7に位置する。ジョイスティックのレバーの先端部が位置P7に位置する場合、船外機用制御装置14は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に、左右方向と鋭角θ7をなす左後向きに船舶1を移動させる推進力を発生させる。
つまり、位置P7は、船外機12、13が船舶1を左後向きに移動(並進移動)させる推進力を発生する位置である。
【0028】
図3(H)に示す例では、ジョイスティックのレバーが前向きに傾倒されている。そのため、ジョイスティックのレバーの先端部は、位置P1の前側の位置P8に位置する。ジョイスティックのレバーの先端部が位置P8に位置する場合、船外機用制御装置14は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に、船舶1を前向きに移動させる推進力を発生させる。
つまり、位置P8は、船外機12、13が船舶1を前向きに移動(前進)させる推進力を発生する位置である。
図3(I)に示す例では、ジョイスティックのレバーが後向きに傾倒されている。そのため、ジョイスティックのレバーの先端部は、位置P1の後側の位置P9に位置する。ジョイスティックのレバーの先端部が位置P9に位置する場合、船外機用制御装置14は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に、船舶1を後向きに移動させる推進力を発生させる。
つまり、位置P9は、船外機12、13が船舶1を後向きに移動(後進)させる推進力を発生する位置である。
【0029】
操船者が操作部11D(ジョイスティック)を操作しない場合、自動復帰機能を有するジョイスティックのレバーの先端部は、位置P1に位置する。ジョイスティックのレバーの先端部は、操船者の操作に応じて、例えば位置P1~P9などの位置に位置することができる。
【0030】
図4および図5は第1実施形態の船舶1における操作部11Dの移動経路(詳細には、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路)の例を説明するための図である。
図4(A)に示す例では、操作部11D(詳細には、ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P2に移動させられる。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置する時点のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2を算出する。
推進力算出部14Bは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2に基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Bは、船舶1を右向きに移動させる推進力の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Bによって算出された大きさの右向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
その結果、船舶1が右向きに移動(並進移動)する。
【0031】
操船者が、船舶1を右前向きに移動(並進移動)させたい場合もある。
そのような場合には、図4(B)に示す例のように、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P3に移動させられる。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P3に位置する時点のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P3を算出する。
推進力算出部14Bは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P3に基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Bは、船舶1を右前向きに移動させる推進力の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Bによって算出された大きさの右前向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
その結果、船舶1が右前向きに移動(並進移動)する。
【0032】
操船者が、船舶1を右向きに移動(並進移動)させたい場合であって、例えば風、潮流などによる後向きの力を船舶1が受ける場合もある。
そのような場合には、図4(C)に示す例のように、まず、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P2に移動させられる。風、潮流などによる後向きの力によって、船舶1が後向きに流されそうになるため、次いで、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P2から位置P3に移動させられる。
つまり、図4(C)に示す例では、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P2を経て位置P3に移動させられる。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P3に位置する時点のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2→P3を算出する。
推進力算出部14Bは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2→P3に基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Bは、例えば風、潮流などによる後向きの力に抗して船舶1を右向きに移動させる推進力(つまり、右前向きの推進力)の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Bによって算出された大きさの右前向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
【0033】
本発明者等は、鋭意研究において、仮に、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P2を経て位置P3に移動させられるとき(図4(C)に示す例)に船外機12、13が発生する右前向きの推進力の前後方向成分の大きさと、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P3に直接移動させられるとき(図4(B)に示す例)に船外機12、13が発生する右前向きの推進力の前後方向成分の大きさとが等しく設定されている場合には、例えば風、潮流などによる後向きの力に抗する推進力の前後方向成分の大きさが十分ではなく、船舶1が、操船者の要求どおりに右向きに移動(並進移動)せず、後向きに流されてしまうおそれがあることを見い出した。
【0034】
そこで、図4(C)に示す例では、船外機用制御装置14は、図4(B)に示す例よりも前後方向成分(詳細には、前向き成分)が大きい右前向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
その結果、船舶1は、操船者の要求どおりに、かつ、例えば風、潮流などによる後向きの力に抗して、右向きに移動(並進移動)する。
【0035】
図6図4(B)に示す例において船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる右前向きの推進力、図4(C)に示す例において船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる右前向きの推進力などを比較して示した図である。
図6(A)は、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P3に直接移動させられる場合に(図4(B)に示す例において)、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる(つまり、推進力算出部14Bが算出する)右前向きの推進力F11およびその前後方向成分F11Fならびにその左右方向成分F11Rを示している。
図6(B)は、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P2を経て位置P3に移動させられる場合に(図4(C)に示す例において)、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる(つまり、推進力算出部14Bが算出する)右前向きの推進力F12およびその前後方向成分F12Fならびにその左右方向成分F12Rを示している。
図6(A)および図6(B)に示す例では、右前向きの推進力F11の左右方向成分F11Rの大きさと、右前向きの推進力F12の左右方向成分F12Rの大きさとが等しく設定されている。さらに、右前向きの推進力F12の前後方向成分F12Fが、右前向きの推進力F11の前後方向成分F11Fより大きく設定されている。その結果、右前向きの推進力F12も、右前向きの推進力F11より大きい。
従って、図6(A)および図6(B)に示す例では、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P1から位置P2に移動させ、船舶1を右向きに移動させている期間中に船舶1が後向きの力を受ける場合であっても、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P2から位置P3に移動させることによって、船外機12、13は、前後方向成分F12Fが大きい右前向きの推進力F12を発生する。その結果、船舶1が後向きに流されることなく、操船者は、船舶1を右向きに移動させることができる。
【0036】
図6(A)および図6(B)に示す例では、上述したように、右前向きの推進力F11の左右方向成分F11Rの大きさと、右前向きの推進力F12の左右方向成分F12Rの大きさとが等しく設定されている。さらに、右前向きの推進力F12の前後方向成分F12Fが、右前向きの推進力F11の前後方向成分F11Fより大きく設定されている。
他の例では、右前向きの推進力F12の前後方向成分F12Fの大きさと、右前向きの推進力F11の前後方向成分F11Fの大きさとが等しく設定され、右前向きの推進力F12の左右方向成分F12Rが、右前向きの推進力F11の左右方向成分F11Rより小さく設定されている。つまり、この例では、右前向きの推進力F12が、右前向きの推進力F11より小さくなる。
従って、この例では、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P1から位置P2に移動させ、船舶1を右向きに移動させている期間中に船舶1が後向きの力を受ける場合であっても、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P2から位置P3に移動させることによって、船外機12、13は、左右方向成分F12Rが小さい右前向きの推進力F12を発生する。その結果、この例においても、船舶1が後向きに流されることなく、操船者は、船舶1を右向きに移動させることができる。
【0037】
例えば風、潮流などによって前後方向の力を船舶が受けない時に、操船者が、右向きに移動(並進移動)中の船舶1の向きを右向きから右前向きに切り替える(補正する)こともある。
そのような場合には、図4(C)に示す例のように、まず、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P2に移動させられる。右向きに移動中の船舶1の向きを右向きから右前向きに切り替えるために、次いで、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P2から位置P3に移動させられる。
つまり、図4(C)に示す例では、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P2を経て位置P3に移動させられる。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P3に位置する時点のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2→P3を算出する。
推進力算出部14Bは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2→P3に基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Bは、右向きに移動中の船舶1の向きを右向きから右前向きに切り替える推進力(つまり、右前向きの推進力)の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Bによって算出された大きさの右前向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
【0038】
本発明者等は、鋭意研究において、右向きに移動する船舶1には、右向きの慣性力が発生するため、仮に、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P2を経て位置P3に移動させられるとき(図4(C)に示す例)に船外機12、13が発生する右前向きの推進力の前後方向成分の大きさと、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P3に直接移動させられるとき(図4(B)に示す例)に船外機12、13が発生する右前向きの推進力の前後方向成分の大きさとが等しく設定されている場合には、操船者の補正操作に対する船舶1の応答動作が遅い(つまり、船舶1の向きが右向きから右前向きに切り替わるのが遅い)と操船者が感じてしまうおそれがあることを見い出した。
【0039】
そこで、図4(C)に示す例では、船外機用制御装置14は、図4(B)に示す例よりも前後方向成分が大きい(詳細には、前向き成分F12Fが前向き成分F11Fより大きい)右前向きの推進力F12を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。その結果、操船者の要求どおりに、船舶1の向きを右向きから右前向きに迅速に切り替えることができる。
他の例では、船外機用制御装置14は、図4(B)に示す例よりも左右方向成分が小さい(詳細には、前向き成分F12Fと前向き成分F11Fとが等しく、右向き成分F12Rが右向き成分F11Rより小さい)右前向きの推進力F12を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。その結果、この例においても、操船者の要求どおりに、船舶1の向きを右向きから右前向きに迅速に切り替えることができる。
【0040】
また、操船者が、船舶1を右後向きに移動(並進移動)させたい場合もある。
そのような場合には、図4(D)に示す例のように、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P4に移動させられる。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P4に位置する時点のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P4を算出する。
推進力算出部14Bは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P4に基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Bは、船舶1を右後向きに移動させる推進力の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Bによって算出された大きさの右後向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
その結果、船舶1が右後向きに移動(並進移動)する。
【0041】
操船者が、船舶1を右向きに移動(並進移動)させたい場合であって、例えば風、潮流などによる前向きの力を船舶1が受ける場合もある。
そのような場合には、図4(E)に示す例のように、まず、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P2に移動させられる。風、潮流などによる前向きの力によって、船舶1が前向きに流されそうになるため、次いで、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P2から位置P4に移動させられる。
つまり、図4(E)に示す例では、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P2を経て位置P4に移動させられる。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P4に位置する時点のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2→P4を算出する。
推進力算出部14Bは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2→P4に基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Bは、例えば風、潮流などによる前向きの力に抗して船舶1を右向きに移動させる推進力(つまり、右後向きの推進力)の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Bによって算出された大きさの右後向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
【0042】
図4(E)に示す例では、船外機用制御装置14は、図4(D)に示す例よりも前後方向成分(詳細には、後向き成分)が大きい右後向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
その結果、船舶1は、操船者の要求どおりに、かつ、例えば風、潮流などによる前向きの力に抗して、右向きに移動(並進移動)する。
【0043】
図6(C)は、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P4に直接移動させられる場合に(図4(D)に示す例において)、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる(つまり、推進力算出部14Bが算出する)右後向きの推進力F21およびその前後方向成分F21Bならびにその左右方向成分F21Rを示している。
図6(D)は、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P2を経て位置P4に移動させられる場合に(図4(E)に示す例において)、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる(つまり、推進力算出部14Bが算出する)右後向きの推進力F22およびその前後方向成分F22Bならびにその左右方向成分F22Rを示している。
図6(C)および図6(D)に示す例では、右後向きの推進力F21の左右方向成分F21Rの大きさと、右後向きの推進力F22の左右方向成分F22Rの大きさとが等しく設定されている。さらに、右後向きの推進力F22の前後方向成分F22Bが、右後向きの推進力F21の前後方向成分F21Bより大きく設定されている。その結果、右後向きの推進力F22も、右後向きの推進力F21より大きい。
従って、図6(C)および図6(D)に示す例では、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P1から位置P2に移動させ、船舶1を右向きに移動させている期間中に船舶1が前向きの力を受ける場合であっても、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P2から位置P4に移動させることによって、船外機12、13は、前後方向成分F22Bが大きい右後向きの推進力F22を発生する。その結果、船舶1が前向きに流されることなく、操船者は、船舶1を右向きに移動させることができる。
【0044】
図6(C)および図6(D)に示す例では、上述したように、右後向きの推進力F21の左右方向成分F21Rの大きさと、右後向きの推進力F22の左右方向成分F22Rの大きさとが等しく設定されている。さらに、右後向きの推進力F22の前後方向成分F22Bが、右後向きの推進力F21の前後方向成分F21Bより大きく設定されている。
他の例では、右後向きの推進力F22の前後方向成分F22Bの大きさと、右後向きの推進力F21の前後方向成分F21Bの大きさとが等しく設定され、右後向きの推進力F22の左右方向成分F22Rが、右後向きの推進力F21の左右方向成分F21Rより小さく設定されている。つまり、この例では、右後向きの推進力F22が、右後向きの推進力F21より小さくなる。
従って、この例では、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P1から位置P2に移動させ、船舶1を右向きに移動させている期間中に船舶1が前向きの力を受ける場合であっても、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P2から位置P4に移動させることによって、船外機12、13は、左右方向成分F22Rが小さい右後向きの推進力F22を発生する。その結果、この例においても、船舶1が前向きに流されることなく、操船者は、船舶1を右向きに移動させることができる。
【0045】
例えば風、潮流などによって前後方向の力を船舶が受けない時に、操船者が、右向きに移動(並進移動)中の船舶1の向きを右向きから右後向きに切り替える(補正する)こともある。
そのような場合には、図4(E)に示す例のように、まず、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P2に移動させられる。右向きに移動中の船舶1の向きを右向きから右後向きに切り替えるために、次いで、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P2から位置P4に移動させられる。
つまり、図4(E)に示す例では、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P2を経て位置P4に移動させられる。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P4に位置する時点のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2→P4を算出する。
推進力算出部14Bは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2→P4に基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Bは、右向きに移動中の船舶1の向きを右向きから右後向きに切り替える推進力(つまり、右後向きの推進力)の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Bによって算出された大きさの右後向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
【0046】
図4(E)に示す例では、船外機用制御装置14は、図4(D)に示す例よりも前後方向成分が大きい(詳細には、後向き成分F22Bが後向き成分F21Bより大きい)右後向きの推進力F22を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。その結果、操船者の要求どおりに、船舶1の向きを右向きから右後向きに迅速に切り替えることができる。
他の例では、船外機用制御装置14は、図4(D)に示す例よりも左右方向成分が小さい(詳細には、後向き成分F22Bと後向き成分F21Bとが等しく、右向き成分F22Rが右向き成分F21Rより小さい)右後向きの推進力F22を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。その結果、この例においても、操船者の要求どおりに、船舶1の向きを右向きから右後向きに迅速に切り替えることができる。
【0047】
操船者が、船舶1を左向きに移動(並進移動)させたい場合もある。
そのような場合には、図5(A)に示す例のように、操作部11D(詳細には、ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P5に移動させられる。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P5に位置する時点のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P5を算出する。
推進力算出部14Bは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P5に基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Bは、船舶1を左向きに移動させる推進力の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Bによって算出された大きさの左向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
その結果、船舶1が左向きに移動(並進移動)する。
【0048】
操船者が、船舶1を左前向きに移動(並進移動)させたい場合もある。
そのような場合には、図5(B)に示す例のように、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P6に移動させられる。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P6に位置する時点のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P6を算出する。
推進力算出部14Bは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P6に基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Bは、船舶1を左前向きに移動させる推進力の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Bによって算出された大きさの左前向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
その結果、船舶1が左前向きに移動(並進移動)する。
【0049】
操船者が、船舶1を左向きに移動(並進移動)させたい場合であって、例えば風、潮流などによる後向きの力を船舶1が受ける場合もある。
そのような場合には、図5(C)に示す例のように、まず、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P5に移動させられる。風、潮流などによる後向きの力によって、船舶1が後向きに流されそうになるため、次いで、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P5から位置P6に移動させられる。
つまり、図5(C)に示す例では、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P5を経て位置P6に移動させられる。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P5に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P6に位置する時点のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P5→P6を算出する。
推進力算出部14Bは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P5→P6に基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Bは、例えば風、潮流などによる後向きの力に抗して船舶1を左向きに移動させる推進力(つまり、左前向きの推進力)の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Bによって算出された大きさの左前向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
【0050】
図5(C)に示す例では、船外機用制御装置14は、図5(B)に示す例よりも前後方向成分(詳細には、前向き成分)が大きい左前向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
その結果、船舶1は、操船者の要求どおりに、かつ、例えば風、潮流などによる後向きの力に抗して、左向きに移動(並進移動)する。
【0051】
図7図5(B)に示す例において船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる左前向きの推進力、図5(C)に示す例において船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる左前向きの推進力などを比較して示した図である。
図7(A)は、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P6に直接移動させられる場合に(図5(B)に示す例において)、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる(つまり、推進力算出部14Bが算出する)左前向きの推進力F31およびその前後方向成分F31Fならびにその左右方向成分F31Lを示している。
図7(B)は、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P5を経て位置P6に移動させられる場合に(図5(C)に示す例において)、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる(つまり、推進力算出部14Bが算出する)左前向きの推進力F32およびその前後方向成分F32Fならびにその左右方向成分F32Lを示している。
図7(A)および図7(B)に示す例では、左前向きの推進力F31の左右方向成分F31Lの大きさと、左前向きの推進力F32の左右方向成分F32Lの大きさとが等しく設定されている。さらに、左前向きの推進力F32の前後方向成分F32Fが、左前向きの推進力F31の前後方向成分F31Fより大きく設定されている。その結果、左前向きの推進力F32も、左前向きの推進力F31より大きい。
従って、図7(A)および図7(B)に示す例では、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P1から位置P5に移動させ、船舶1を左向きに移動させている期間中に船舶1が後向きの力を受ける場合であっても、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P5から位置P6に移動させることによって、船外機12、13は、前後方向成分F32Fが大きい左前向きの推進力F32を発生する。その結果、船舶1が後向きに流されることなく、操船者は、船舶1を左向きに移動させることができる。
【0052】
図7(A)および図7(B)に示す例では、上述したように、左前向きの推進力F31の左右方向成分F31Lの大きさと、左前向きの推進力F32の左右方向成分F32Lの大きさとが等しく設定されている。さらに、左前向きの推進力F32の前後方向成分F32Fが、左前向きの推進力F31の前後方向成分F31Fより大きく設定されている。
他の例では、左前向きの推進力F32の前後方向成分F32Fの大きさと、左前向きの推進力F31の前後方向成分F31Fの大きさとが等しく設定され、左前向きの推進力F32の左右方向成分F32Lが、左前向きの推進力F31の左右方向成分F31Lより小さく設定されている。つまり、この例では、左前向きの推進力F32が、左前向きの推進力F31より小さくなる。
従って、この例では、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P1から位置P5に移動させ、船舶1を左向きに移動させている期間中に船舶1が後向きの力を受ける場合であっても、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P5から位置P6に移動させることによって、船外機12、13は、左右方向成分F32Lが小さい左前向きの推進力F32を発生する。その結果、この例においても、船舶1が後向きに流されることなく、操船者は、船舶1を左向きに移動させることができる。
【0053】
例えば風、潮流などによって前後方向の力を船舶が受けない時に、操船者が、左向きに移動(並進移動)中の船舶1の向きを左向きから左前向きに切り替える(補正する)こともある。
そのような場合には、図5(C)に示す例のように、まず、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P5に移動させられる。左向きに移動中の船舶1の向きを左向きから左前向きに切り替えるために、次いで、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P5から位置P6に移動させられる。
つまり、図5(C)に示す例では、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P5を経て位置P6に移動させられる。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P5に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P6に位置する時点のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P5→P6を算出する。
推進力算出部14Bは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P5→P6に基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Bは、左向きに移動中の船舶1の向きを左向きから左前向きに切り替える推進力(つまり、左前向きの推進力)の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Bによって算出された大きさの左前向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
【0054】
図5(C)に示す例では、船外機用制御装置14は、図5(B)に示す例よりも前後方向成分が大きい(詳細には、前向き成分F32Fが前向き成分F31Fより大きい)左前向きの推進力F32を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。その結果、操船者の要求どおりに、船舶1の向きを左向きから左前向きに迅速に切り替えることができる。
他の例では、船外機用制御装置14は、図5(B)に示す例よりも左右方向成分が小さい(詳細には、前向き成分F32Fと前向き成分F31Fとが等しく、左向き成分F32Lが左向き成分F31Lより小さい)左前向きの推進力F32を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。その結果、この例においても、操船者の要求どおりに、船舶1の向きを左向きから左前向きに迅速に切り替えることができる。
【0055】
また、操船者が、船舶1を左後向きに移動(並進移動)させたい場合もある。
そのような場合には、図5(D)に示す例のように、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P7に移動させられる。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P7に位置する時点のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P7を算出する。
推進力算出部14Bは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P7に基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Bは、船舶1を左後向きに移動させる推進力の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Bによって算出された大きさの左後向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
その結果、船舶1が左後向きに移動(並進移動)する。
【0056】
操船者が、船舶1を左向きに移動(並進移動)させたい場合であって、例えば風、潮流などによる前向きの力を船舶1が受ける場合もある。
そのような場合には、図5(E)に示す例のように、まず、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P5に移動させられる。風、潮流などによる前向きの力によって、船舶1が前向きに流されそうになるため、次いで、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P5から位置P7に移動させられる。
つまり、図5(E)に示す例では、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P5を経て位置P7に移動させられる。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P5に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P7に位置する時点のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P5→P7を算出する。
推進力算出部14Bは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P5→P7に基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Bは、例えば風、潮流などによる前向きの力に抗して船舶1を左向きに移動させる推進力(つまり、左後向きの推進力)の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Bによって算出された大きさの左後向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
【0057】
図5(E)に示す例では、船外機用制御装置14は、図5(D)に示す例よりも前後方向成分(詳細には、後向き成分)が大きい左後向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
その結果、船舶1は、操船者の要求どおりに、かつ、例えば風、潮流などによる前向きの力に抗して、左向きに移動(並進移動)する。
【0058】
図7(C)は、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P7に直接移動させられる場合に(図5(D)に示す例において)、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる(つまり、推進力算出部14Bが算出する)左後向きの推進力F41およびその前後方向成分F41Bならびにその左右方向成分F41Lを示している。
図7(D)は、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P5を経て位置P7に移動させられる場合に(図5(E)に示す例において)、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる(つまり、推進力算出部14Bが算出する)左後向きの推進力F42およびその前後方向成分F42Bならびにその左右方向成分F42Lを示している。
図7(C)および図7(D)に示す例では、左後向きの推進力F41の左右方向成分F41Lの大きさと、左後向きの推進力F42の左右方向成分F42Lの大きさとが等しく設定されている。さらに、左後向きの推進力F42の前後方向成分F42Bが、左後向きの推進力F41の前後方向成分F41Bより大きく設定されている。その結果、左後向きの推進力F42も、左後向きの推進力F41より大きい。
従って、図7(C)および図7(D)に示す例では、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P1から位置P5に移動させ、船舶1を左向きに移動させている期間中に船舶1が前向きの力を受ける場合であっても、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P5から位置P7に移動させることによって、船外機12、13は、前後方向成分F42Bが大きい左後向きの推進力F42を発生する。その結果、船舶1が前向きに流されることなく、操船者は、船舶1を左向きに移動させることができる。
【0059】
図7(C)および図7(D)に示す例では、上述したように、左後向きの推進力F41の左右方向成分F41Lの大きさと、左後向きの推進力F42の左右方向成分F42Lの大きさとが等しく設定されている。さらに、左後向きの推進力F42の前後方向成分F42Bが、左後向きの推進力F41の前後方向成分F41Bより大きく設定されている。
他の例では、左後向きの推進力F42の前後方向成分F42Bの大きさと、左後向きの推進力F41の前後方向成分F41Bの大きさとが等しく設定され、左後向きの推進力F42の左右方向成分F42Lが、左後向きの推進力F41の左右方向成分F41Lより小さく設定されている。つまり、この例では、左後向きの推進力F42が、左後向きの推進力F41より小さくなる。
従って、この例では、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P1から位置P5に移動させ、船舶1を左向きに移動させている期間中に船舶1が前向きの力を受ける場合であっても、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P5から位置P7に移動させることによって、船外機12、13は、左右方向成分F42Lが小さい左後向きの推進力F42を発生する。その結果、この例においても、船舶1が前向きに流されることなく、操船者は、船舶1を左向きに移動させることができる。
【0060】
例えば風、潮流などによって前後方向の力を船舶が受けない時に、操船者が、左向きに移動(並進移動)中の船舶1の向きを左向きから左後向きに切り替える(補正する)こともある。
そのような場合には、図5(E)に示す例のように、まず、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P5に移動させられる。左向きに移動中の船舶1の向きを左向きから左後向きに切り替えるために、次いで、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P5から位置P7に移動させられる。
つまり、図5(E)に示す例では、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P5を経て位置P7に移動させられる。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P5に位置する時点のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P7に位置する時点のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P5→P7を算出する。
推進力算出部14Bは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P5→P7に基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Bは、左向きに移動中の船舶1の向きを左向きから左後向きに切り替える推進力(つまり、左後向きの推進力)の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Bによって算出された大きさの左後向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
【0061】
図5(E)に示す例では、船外機用制御装置14は、図5(D)に示す例よりも前後方向成分が大きい(詳細には、後向き成分F42Bが後向き成分F41Bより大きい)左後向きの推進力F42を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。その結果、操船者の要求どおりに、船舶1の向きを左向きから左後向きに迅速に切り替えることができる。
他の例では、船外機用制御装置14は、図5(D)に示す例よりも左右方向成分が小さい(詳細には、後向き成分F42Bと後向き成分F41Bとが等しく、左向き成分F42Lが左向き成分F41Lより小さい)左後向きの推進力F42を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。その結果、この例においても、操船者の要求どおりに、船舶1の向きを左向きから左後向きに迅速に切り替えることができる。
【0062】
図8は第1実施形態の船外機用制御装置14によって実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図8に示す処理は、操作部11D(ジョイスティック)が、船外機12、13の操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を作動させるための入力操作を受け付けた場合に開始する。
図8に示す例では、ステップS10において、船外機用制御装置14が、例えばマイクロスイッチなどのセンサによって検出された操作部11Dの位置(ジョイスティックのレバーの位置)を取得する。
次いで、ステップS20では、船外機用制御装置14の移動経路算出部14Aが、ステップS10において取得された操作部11Dの複数の位置(ジョイスティックのレバーの複数の位置)に基づいて、操作部11Dの移動経路(ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路)を算出する。
次いで、ステップS30では、船外機用制御装置14の推進力算出部14Bは、ステップS20において算出された操作部11Dの移動経路(ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路)に基づいて、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる推進力を算出する。
次いで、ステップS40では、船外機用制御装置14は、ステップS20において算出された推進力を船外機12、13の操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生するように、船外機12、13の操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を制御する。
【0063】
詳細には、ステップS20において、移動経路算出部14Aが、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P3(図4(B)参照)を算出する場合には、ステップS30において、推進力算出部14Bが、前後方向成分F11F(図6(A)参照)および左右方向成分F11R(図6(A)参照)を有する右前向きの推進力F11(図6(A)参照)を算出し、次いで、ステップS40において、船外機用制御装置14が、船外機12、13に右前向きの推進力F11を発生させる。
一方、ステップS20において、移動経路算出部14Aが、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2→P3(図4(C)参照)を算出する場合には、ステップS30において、推進力算出部14Bが、前後方向成分F12F(図6(B)参照)(>F11F)および左右方向成分F12R(図6(B)参照)(=F11R)を有する右前向きの推進力F12(図6(B)参照)(>F11)を算出し、次いで、ステップS40において、船外機用制御装置14が、船外機12、13に右前向きの推進力F12を発生させる。
他の例では、ステップS20において、移動経路算出部14Aが、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2→P3(図4(C)参照)を算出する場合、ステップS30において、推進力算出部14Bが、前後方向成分F12F(図6(B)参照)(=F11F)および左右方向成分F12R(図6(B)参照)(<F11R)を有する右前向きの推進力F12(図6(B)参照)(<F11)を算出し、次いで、ステップS40において、船外機用制御装置14が、船外機12、13に右前向きの推進力F12を発生させる。
【0064】
また、図8に示す例では、ステップS20において、移動経路算出部14Aが、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P4(図4(D)参照)を算出する場合には、ステップS30において、推進力算出部14Bが、前後方向成分F21B(図6(C)参照)および左右方向成分F21R(図6(C)参照)を有する右後向きの推進力F21(図6(C)参照)を算出し、次いで、ステップS40において、船外機用制御装置14が、船外機12、13に右後向きの推進力F21を発生させる。
一方、ステップS20において、移動経路算出部14Aが、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2→P4(図4(E)参照)を算出する場合には、ステップS30において、推進力算出部14Bが、前後方向成分F22B(図6(D)参照)(>F21B)および左右方向成分F22R(図6(D)参照)(=F21R)を有する右後向きの推進力F22(図6(D)参照)(>F21)を算出し、次いで、ステップS40において、船外機用制御装置14が、船外機12、13に右後向きの推進力F22を発生させる。
他の例では、ステップS20において、移動経路算出部14Aが、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2→P4(図4(E)参照)を算出する場合には、ステップS30において、推進力算出部14Bが、前後方向成分F22B(図6(D)参照)(=F21B)および左右方向成分F22R(図6(D)参照)(<F21R)を有する右後向きの推進力F22(図6(D)参照)(<F21)を算出し、次いで、ステップS40において、船外機用制御装置14が、船外機12、13に右後向きの推進力F22を発生させる。
【0065】
また、図8に示す例では、ステップS20において、移動経路算出部14Aが、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P6(図5(B)参照)を算出する場合には、ステップS30において、推進力算出部14Bが、前後方向成分F31F(図7(A)参照)および左右方向成分F31L(図6(A)参照)を有する左前向きの推進力F31(図7(A)参照)を算出し、次いで、ステップS40において、船外機用制御装置14が、船外機12、13に左前向きの推進力F31を発生させる。
一方、ステップS20において、移動経路算出部14Aが、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P5→P6(図5(C)参照)を算出する場合には、ステップS30において、推進力算出部14Bが、前後方向成分F32F(図7(B)参照)(>F31F)および左右方向成分F32L(図7(B)参照)(=F31L)を有する左前向きの推進力F32(図7(B)参照)(>F31)を算出し、次いで、ステップS40において、船外機用制御装置14が、船外機12、13に左前向きの推進力F32を発生させる。
他の例では、ステップS20において、移動経路算出部14Aが、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P5→P6(図5(C)参照)を算出する場合には、ステップS30において、推進力算出部14Bが、前後方向成分F32F(図7(B)参照)(=F31F)および左右方向成分F32L(図7(B)参照)(<F31L)を有する左前向きの推進力F32(図7(B)参照)(<F31)を算出し、次いで、ステップS40において、船外機用制御装置14が、船外機12、13に左前向きの推進力F32を発生させる。
【0066】
また、図8に示す例では、ステップS20において、移動経路算出部14Aが、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P7(図5(D)参照)を算出する場合には、ステップS30において、推進力算出部14Bが、前後方向成分F41B(図7(C)参照)および左右方向成分F41L(図7(C)参照)を有する左後向きの推進力F41(図7(C)参照)を算出し、次いで、ステップS40において、船外機用制御装置14が、船外機12、13に左後向きの推進力F41を発生させる。
一方、ステップS20において、移動経路算出部14Aが、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P5→P7(図5(E)参照)を算出する場合には、ステップS30において、推進力算出部14Bが、前後方向成分F42B(図7(D)参照)(>F41B)および左右方向成分F42L(図7(D)参照)(=F41L)を有する左後向きの推進力F42(図7(D)参照)(>F41)を算出し、次いで、ステップS40において、船外機用制御装置14が、船外機12、13に左後向きの推進力F42を発生させる。
他の例では、ステップS20において、移動経路算出部14Aが、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P5→P7(図5(E)参照)を算出する場合には、ステップS30において、推進力算出部14Bが、前後方向成分F42B(図7(D)参照)(=F41B)および左右方向成分F42L(図7(D)参照)(<F41L)を有する左後向きの推進力F42(図7(D)参照)(<F41)を算出し、次いで、ステップS40において、船外機用制御装置14が、船外機12、13に左後向きの推進力F42を発生させる。
【0067】
<第2実施形態>
以下、本発明の船外機用制御装置、船外機用制御方法およびプログラムの第2実施形態について説明する。
第2実施形態の船外機用制御装置14が適用される船舶1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の船外機用制御装置14が適用される船舶1と同様に構成されている。従って、第2実施形態の船舶1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の船舶1と同様の効果を奏することができる。
【0068】
図9は第2実施形態の船外機用制御装置14が適用される船舶1の一例を示す図である。
上述したように、第1実施形態の船舶1(図1および図2に示す例)では、操作部11Dが、レバーを有するジョイスティックによって構成されている。
一方、第2実施形態の船舶1(図9に示す例)では、操作部11Dが、タッチパネルによって構成されている。操船者は、操舵装置11A(ステアリングホイール)およびリモコン装置11B、11C(リモコンレバー)を操作することによって、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を作動させることができるのみならず、操作部11D(タッチパネル)を操作することによっても、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を作動させることができる。
他の例では、船体11が、操舵装置11A、リモコン装置11Bおよびリモコン装置11Cを備えていなくてもよい。
【0069】
図9に示す例では、船外機用制御装置14が、操作部11Dに対する入力操作に基づいて、船外機12の操舵アクチュエータ12A2および推進ユニット12A1と、船外機13の操舵アクチュエータ13A2および推進ユニット13A1とを制御する。
詳細には、船外機用制御装置14は、操作部11D(タッチパネル)に対する例えばフリック入力操作に基づいて、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生する船舶1の推進力の大きさおよび向きを制御する。
フリック入力操作では、操船者は、例えば、タッチパネルを押圧しつつ、タッチパネルを押圧している指を目的の向きにスライドさせる。
移動経路算出部14Aは、操作部11Dの移動経路を算出する。詳細には、移動経路算出部14Aは、操船者がタッチパネルを押圧しながらスライドさせた指の移動経路を算出する。
推進力算出部14Bは、移動経路算出部14Aによって算出された操作部11Dの移動経路(タッチパネルを押圧しながらスライドさせられた指の移動経路)に基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。
【0070】
図9に示す例では、操作部11D(タッチパネル)に対してフリック入力操作可能であると共に、回転入力操作可能に、操作部11Dが構成されている。
操船者は、例えば、1本の指をタッチパネルに当接させて中心点として固定させた状態で、他の指を、タッチパネルを押圧しながら周方向にスライドさせることによって、回転入力操作を行う。
操船者が、操作部11D(タッチパネル)に対して時計回りの回転入力操作を行う場合に、船外機用制御装置14は、船体11が右旋回するように、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を制御する。一方、操船者が、操作部11D(タッチパネル)に対して反時計回りの回転入力操作を行う場合に、船外機用制御装置14は、船体11が左旋回するように、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を制御する。
また、操船者が操作部11D(タッチパネル)に対してフリック入力操作を行う場合に、船外機用制御装置14は、船体11が、姿勢を維持したまま、操船者の指がスライドさせられた向きに移動するように、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を制御する。つまり、操船者が操作部11D(タッチパネル)に対してフリック入力操作を行うことによって、船体11の前部と、船体11の後部とが、並進する。
【0071】
操船者が操作部11D(タッチパネル)に対してフリック入力操作を行っていない場合(つまり、操船者の指がタッチパネルに当接していない場合)、操作部11Dは、図3(A)に示す状態と同様の状態になる。その結果、船外機用制御装置14は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に船舶1の推進力を発生させない。
【0072】
第2実施形態の船舶1の第1例では、操船者が、タッチパネルを押圧しながら指を右向きにスライドさせ、かつ、指によってタッチパネルを押圧している状態を維持する。その場合、操作部11Dは、図3(B)に示す状態と同様の状態になる。
移動経路算出部14Aは、操船者の指の当接開始位置と、操船者の指の現在位置とに基づいて、操作部11Dの移動経路(当接開始位置→現在位置)を算出する。
推進力算出部14Bは、移動経路算出部14Aによって算出された操作部11Dの移動経路(当接開始位置→現在位置)に基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Bは、船舶1を右向きに移動させる推進力の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Bによって算出された大きさの右向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
【0073】
第2実施形態の船舶1の第2例では、操船者が、船舶1を右前向きに移動(並進移動)させる。
詳細には、操船者は、タッチパネルを押圧しながら指を右前向きにスライドさせ、かつ、指によってタッチパネルを押圧している状態を維持する。それにより、操作部11Dは、図3(C)に示す状態と同様の状態になる。
移動経路算出部14Aは、操船者の指の当接開始位置と、右前向きに移動させられた操船者の指の現在位置とに基づいて、操作部11Dの移動経路(当接開始位置→現在位置)を算出する。
推進力算出部14Bは、移動経路算出部14Aによって算出された操作部11Dの移動経路(当接開始位置→現在位置)に基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Bは、船舶1を右前向きに移動させる推進力の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Bによって算出された大きさの右前向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
【0074】
第2実施形態の船舶1の第3例では、操船者が、船舶1を右向きに移動(並進移動)させるときに、例えば風、潮流などによる後向きの力を船舶1が受ける。
詳細には、まず、操船者は、タッチパネルを押圧しながら指を右向きにスライドさせ、かつ、指によってタッチパネルを押圧している状態を維持する。風、潮流などによる後向きの力によって、船舶1が後向きに流されそうになるため、次いで、操船者は、タッチパネルを押圧しながら指を前向きにさらにスライドさせ、かつ、指によってタッチパネルを押圧している状態を維持する。
移動経路算出部14Aは、操船者の指の当接開始位置と、右向きに移動させられた後の操船者の指の位置と、前向きに移動させられた後の操船者の指の位置とに基づいて、操作部11Dの移動経路(当接開始位置→右向き移動終了位置→前向き移動終了位置)を算出する。
推進力算出部14Bは、移動経路算出部14Aによって算出された操作部11Dの移動経路(当接開始位置→右向き移動終了位置→前向き移動終了位置)に基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Bは、例えば風、潮流などによる後向きの力に抗して船舶1を右向きに移動させる推進力(つまり、右前向きの推進力)の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Bによって算出された大きさの右前向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
【0075】
第2実施形態の船舶1の第3例では、船外機用制御装置14は、第2実施形態の船舶1の第2例よりも前後方向成分(詳細には、前向き成分)が大きい右前向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
その結果、船舶1は、操船者の要求どおりに、かつ、例えば風、潮流などによる後向きの力に抗して、右向きに移動(並進移動)する。
【0076】
第2実施形態の船舶1の第4例では、操船者が、船舶1を右後向きに移動(並進移動)させる。
その場合に、操船者は、タッチパネルを押圧しながら指を右後向きにスライドさせ、かつ、指によってタッチパネルを押圧している状態を維持する。それにより、操作部11Dは、図3(D)に示す状態と同様の状態になる。
【0077】
第2実施形態の船舶1の第5例では、操船者が、船舶1を右向きに移動(並進移動)させるときに、例えば風、潮流などによる前向きの力を船舶1が受ける。
この例では、操船者は、まず、タッチパネルを押圧しながら指を右向きにスライドさせ、かつ、指によってタッチパネルを押圧している状態を維持する。風、潮流などによる後向きの力によって、船舶1が前向きに流されそうになるため、次いで、操船者は、タッチパネルを押圧しながら指を後向きにさらにスライドさせ、かつ、指によってタッチパネルを押圧している状態を維持する。
【0078】
第2実施形態の船舶1の第5例では、船外機用制御装置14は、第2実施形態の船舶1の第4例よりも前後方向成分(詳細には、後向き成分)が大きい右後向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
その結果、船舶1は、操船者の要求どおりに、かつ、例えば風、潮流などによる前向きの力に抗して、右向きに移動(並進移動)する。
【0079】
第2実施形態の船舶1の第6例では、操船者が、タッチパネルを押圧しながら指を左向きにスライドさせ、かつ、指によってタッチパネルを押圧している状態を維持する。その場合、操作部11Dは、図3(E)に示す状態と同様の状態になる。
移動経路算出部14Aは、操船者の指の当接開始位置と、操船者の指の現在位置とに基づいて、操作部11Dの移動経路(当接開始位置→現在位置)を算出する。
推進力算出部14Bは、移動経路算出部14Aによって算出された操作部11Dの移動経路(当接開始位置→現在位置)に基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Bは、船舶1を左向きに移動させる推進力の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Bによって算出された大きさの左向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
【0080】
第2実施形態の船舶1の第7例では、操船者が、船舶1を左前向きに移動(並進移動)させる。
その場合に、操船者は、タッチパネルを押圧しながら指を左前向きにスライドさせ、かつ、指によってタッチパネルを押圧している状態を維持する。それにより、操作部11Dは、図3(F)に示す状態と同様の状態になる。
【0081】
第2実施形態の船舶1の第8例では、操船者が、船舶1を左向きに移動(並進移動)させるときに、例えば風、潮流などによる後向きの力を船舶1が受ける。
この例では、操船者は、まず、タッチパネルを押圧しながら指を左向きにスライドさせ、かつ、指によってタッチパネルを押圧している状態を維持する。風、潮流などによる後向きの力によって、船舶1が後向きに流されそうになるため、次いで、操船者は、タッチパネルを押圧しながら指を前向きにさらにスライドさせ、かつ、指によってタッチパネルを押圧している状態を維持する。
【0082】
第2実施形態の船舶1の第8例では、船外機用制御装置14は、第2実施形態の船舶1の第7例よりも前後方向成分(詳細には、前向き成分)が大きい左前向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
その結果、船舶1は、操船者の要求どおりに、かつ、例えば風、潮流などによる後向きの力に抗して、左向きに移動(並進移動)する。
【0083】
第2実施形態の船舶1の第9例では、操船者が、船舶1を左後向きに移動(並進移動)させる。
その場合に、操船者は、タッチパネルを押圧しながら指を左後向きにスライドさせ、かつ、指によってタッチパネルを押圧している状態を維持する。それにより、操作部11Dは、図3(G)に示す状態と同様の状態になる。
【0084】
第2実施形態の船舶1の第10例では、操船者が、船舶1を左向きに移動(並進移動)させるときに、例えば風、潮流などによる前向きの力を船舶1が受ける。
この例では、操船者は、まず、タッチパネルを押圧しながら指を左向きにスライドさせ、かつ、指によってタッチパネルを押圧している状態を維持する。風、潮流などによる後向きの力によって、船舶1が前向きに流されそうになるため、次いで、操船者は、タッチパネルを押圧しながら指を後向きにさらにスライドさせ、かつ、指によってタッチパネルを押圧している状態を維持する。
【0085】
第2実施形態の船舶1の第10例では、船外機用制御装置14は、第2実施形態の船舶1の第9例よりも前後方向成分(詳細には、後向き成分)が大きい左後向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
その結果、船舶1は、操船者の要求どおりに、かつ、例えば風、潮流などによる前向きの力に抗して、左向きに移動(並進移動)する。
【0086】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。上述した各実施形態および各例に記載の構成を組み合わせてもよい。
【0087】
なお、上述した実施形態における船外機用制御装置14が備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0088】
1…船舶、11…船体、11A…操舵装置、11B…リモコン装置、11C…リモコン装置、11D…操作部、P1…位置、P2…位置、P3…位置、P4…位置、P5…位置、P6…位置、P7…位置、P8…位置、P9…位置、12…船外機、12A…船外機本体、12A1…推進ユニット、12A2…操舵アクチュエータ、12AX…操舵軸、12B…ブラケット、13…船外機、13A…船外機本体、13A1…推進ユニット、13A2…操舵アクチュエータ、13AX…操舵軸、13B…ブラケット、14…船外機用制御装置、14A…移動経路算出部、14B…推進力算出部
図1
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図7
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図9