(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】船外機用制御装置、船外機用制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B63H 25/42 20060101AFI20221021BHJP
B63H 21/21 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
B63H25/42 B
B63H21/21
(21)【出願番号】P 2019007331
(22)【出願日】2019-01-18
【審査請求日】2021-08-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】白尾 真人
(72)【発明者】
【氏名】秋田 まり乃
(72)【発明者】
【氏名】大島 隆史
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-334996(JP,A)
【文献】特開2004-42885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/42
B63H 21/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の船体の後部に配置された複数の船外機を制御する船外機用制御装置であって、
前記複数の船外機のそれぞれは、前記船舶の推進力を発生する推進ユニットと、操舵アクチュエータとを備え、
前記船舶は、
前記操舵アクチュエータおよび前記推進ユニットを作動させる操作部を備え、
前記操作部は、少なくとも
前記複数の船外機が前記船舶の推進力を発生しない位置である第1位置と、
前記複数の船外機が前記船舶を左右方向に移動させる推進力を発生する位置である第2位置とに位置することができ、
前記操作部が、前記第1位置から前記第2位置に移動させられて、前記第2位置に維持される場合に、
前記船外機用制御装置は、
前記操作部が前記第2位置に移動させられた第1時刻から第2時刻までの第1期間中に、第1推進力を前記複数の船外機に発生させ、
次いで、前記第2時刻以降の第2期間中に、前記第1推進力より大きい第2推進力を前記複数の船外機に発生させる、
船外機用制御装置。
【請求項2】
前記船外機用制御装置は、
前記船体の前部が、前記船体の後部に遅れることなく左右方向に移動開始するように、
前記第1期間中に、前記第2推進力より小さい前記第1推進力を前記複数の船外機に発生させる、
請求項1に記載の船外機用制御装置。
【請求項3】
前記第2位置には、前記第1位置の右側の位置であって、前記複数の船外機が前記船舶を右向きに移動させる推進力を発生する位置である右位置が含まれ、
前記操作部が、前記第1時刻に前記第1位置から前記右位置に移動させられ、前記第2期間中に前記右位置に維持される場合に、
前記船外機用制御装置は、
前記船体の前部が、前記船体の後部に遅れることなく右向きに移動開始するように、前記第1期間中に、前記第2推進力より小さい右向きの前記第1推進力を前記複数の船外機に発生させ、
次いで、前記第2期間中に、右向きの前記第2推進力を前記複数の船外機に発生させる、
請求項2に記載の船外機用制御装置。
【請求項4】
前記操作部は、更に
前記第1位置の右前側または右後側の位置であって、前記複数の船外機が前記船舶を右前向きまたは右後向きに移動させる推進力を発生する位置である右斜め位置に位置することができ、
前記操作部が、前記第2期間中の第3時刻に前記右位置から前記右斜め位置に移動させられる場合に、前記複数の船外機が発生する右前向きまたは右後向きの推進力の前後方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記右斜め位置に直接移動させられる場合に、前記複数の船外機が発生する右前向きまたは右後向きの推進力の前後方向成分よりも大きいか、あるいは、
前記操作部が、前記第3時刻に前記右位置から前記右斜め位置に移動させられる場合に、前記複数の船外機が発生する右前向きまたは右後向きの推進力の左右方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記右斜め位置に直接移動させられる場合に、前記複数の船外機が発生する右前向きまたは右後向きの推進力の左右方向成分よりも小さい、
請求項3に記載の船外機用制御装置。
【請求項5】
前記第2時刻から前記第3時刻までの時間が閾値未満である場合には、
前記第3時刻に、前記第2推進力を減少させることによって、前記複数の船外機が右前向きまたは右後向きの推進力を発生することを、前記船外機用制御装置が禁止し、
前記第2時刻から前記第3時刻までの時間が前記閾値以上である場合には、
前記第3時刻に、前記第2推進力を減少させることによって、前記複数の船外機が右前向きまたは右後向きの推進力を発生することを、前記船外機用制御装置が許可する、
請求項4に記載の船外機用制御装置。
【請求項6】
前記第2位置には、前記第1位置の左側の位置であって、前記複数の船外機が前記船舶を左向きに移動させる推進力を発生する位置である左位置が含まれ、
前記操作部が、前記第1時刻に前記第1位置から前記左位置に移動させられ、前記第2期間中に前記左位置に維持される場合に、
前記船外機用制御装置は、
前記船体の前部が、前記船体の後部に遅れることなく左向きに移動開始するように、前記第1期間中に、前記第2推進力より小さい左向きの前記第1推進力を前記複数の船外機に発生させ、
次いで、前記第2期間中に、左向きの前記第2推進力を前記複数の船外機に発生させる、
請求項2に記載の船外機用制御装置。
【請求項7】
前記操作部は、更に
前記第1位置の左前側または左後側の位置であって、前記複数の船外機が前記船舶を左前向きまたは左後向きに移動させる推進力を発生する位置である左斜め位置に位置することができ、
前記操作部が、前記第2期間中の第3時刻に前記左位置から前記左斜め位置に移動させられる場合に、前記複数の船外機が発生する左前向きまたは左後向きの推進力の前後方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記左斜め位置に直接移動させられる場合に、前記複数の船外機が発生する左前向きまたは左後向きの推進力の前後方向成分よりも大きいか、あるいは、
前記操作部が、前記第3時刻に前記左位置から前記左斜め位置に移動させられる場合に、前記複数の船外機が発生する左前向きまたは左後向きの推進力の左右方向成分は、前記操作部が前記第1位置から前記左斜め位置に直接移動させられる場合に、前記複数の船外機が発生する左前向きまたは左後向きの推進力の左右方向成分よりも小さい、
請求項6に記載の船外機用制御装置。
【請求項8】
前記第2時刻から前記第3時刻までの時間が閾値未満である場合には、
前記第3時刻に、前記第2推進力を減少させることによって、前記複数の船外機が左前向きまたは左後向きの推進力を発生することを、前記船外機用制御装置が禁止し、
前記第2時刻から前記第3時刻までの時間が前記閾値以上である場合には、
前記第3時刻に、前記第2推進力を減少させることによって、前記複数の船外機が左前向きまたは左後向きの推進力を発生することを、前記船外機用制御装置が許可する、
請求項7に記載の船外機用制御装置。
【請求項9】
船舶の船体の後部に配置された複数の船外機を制御する船外機用制御方法であって、
前記複数の船外機のそれぞれは、前記船舶の推進力を発生する推進ユニットと、操舵アクチュエータとを備え、
前記船舶は、
前記操舵アクチュエータおよび前記推進ユニットを作動させる操作部と、
前記複数の船外機を制御する船外機用制御装置とを備え、
前記操作部は、少なくとも
前記複数の船外機が前記船舶の推進力を発生しない位置である第1位置と、
前記複数の船外機が前記船舶を左右方向に移動させる推進力を発生する位置である第2位置とに位置することができ、
前記操作部が、前記第1位置から前記第2位置に移動させられて、前記第2位置に維持される場合に、前記操作部が前記第2位置に移動させられた第1時刻から第2時刻までの第1期間中、前記船外機用制御装置が第1推進力を前記複数の船外機に発生させる第1ステップと、
前記操作部が、前記第1位置から前記第2位置に移動させられて、前記第2位置に維持される場合に、前記第2時刻以降の第2期間中、前記船外機用制御装置が前記第1推進力より大きい第2推進力を前記複数の船外機に発生させる第2ステップとを備える、
船外機用制御方法。
【請求項10】
船舶の船体の後部に配置された複数の船外機を制御するプログラムであって、
前記複数の船外機のそれぞれは、前記船舶の推進力を発生する推進ユニットと、操舵アクチュエータとを備え、
前記船舶は、
前記操舵アクチュエータおよび前記推進ユニットを作動させる操作部を備え、
前記操作部は、少なくとも
前記複数の船外機が前記船舶の推進力を発生しない位置である第1位置と、
前記複数の船外機が前記船舶を左右方向に移動させる推進力を発生する位置である第2位置とに位置することができ、
前記船舶に搭載されたコンピュータに、
前記操作部が、前記第1位置から前記第2位置に移動させられて、前記第2位置に維持される場合に、前記操作部が前記第2位置に移動させられた第1時刻から第2時刻までの第1期間中、前記複数の船外機が第1推進力を発生する第1ステップと、
前記操作部が、前記第1位置から前記第2位置に移動させられて、前記第2位置に維持される場合に、前記第2時刻以降の第2期間中、前記複数の船外機が前記第1推進力より大きい第2推進力を発生する第2ステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機用制御装置、船外機用制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、任意の方向への移動と旋回が可能な船舶用操縦装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術では、推進力の方向と強さを任意に設定できる2基の推進器が船尾の左右に設置され、各推進器の推進力の方向と強さを制御することによって、所望の方向に移動させる合成力および所望の方向に旋回させる合成力が船体に作用する。詳細には、特許文献1には、全方向性制御器としてジョイスティックが記載されており、船体が姿勢を維持したままで真横に移動する例が記載されている。また、特許文献1には、船体がその姿勢のままで斜め前または斜め後に移動する例が記載されている。
ところで、特許文献1には、ジョイスティックのレバーの先端部が、レバーが傾倒されていないときに位置する中立位置から、レバーが右向きに傾倒されたときに位置する右傾倒位置に移動させられる場合に、ジョイスティックのレバーの先端部が右傾倒位置に移動させられた時刻からの経過時間と、2基の推進器が発生する右向きの推進力(合成力)の大きさとの関係について記載されていない。
【0003】
また従来から、中立状態から全方向に傾倒させることができるジョイスティックによる操作に応じて、船舶の船体の後部に取り付けられた2基の船外機を制御する制御装置が知られている(例えば特許文献2参照)。特許文献2に記載された技術では、ジョイスティックが右側に傾倒された場合に、制御装置は、船舶が右向きに平行移動する推進力を2基の船外機に発生させる。また、特許文献2に記載された技術では、ジョイスティックが右前側に傾倒された場合に、制御装置は、船舶が右前向きに平行移動する推進力を2基の船外機に発生させる。
ところで、特許文献2には、ジョイスティックのレバーの先端部が中立位置から右傾倒位置に移動させられる場合に、ジョイスティックのレバーの先端部が右傾倒位置に移動させられた時刻からの経過時間と、2基の船外機が発生する右向きの推進力(合成力)の大きさとの関係について記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-285486号公報
【文献】特許第5987624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
操船者は、停止している船舶を右向きに移動させるために、ジョイスティックのレバーの先端部を中立位置から右傾倒位置に移動させる。
船外機が船体の後部に配置されており、船体の前部には配置されていない船舶では、ジョイスティックのレバーの先端部が中立位置から右傾倒位置に移動させられた場合に、仮に船外機が右向きの大きい推進力を発生すると、船体の前部の右向きの移動開始が、船体の後部の右向きの移動開始より遅れてしまい、その結果、船舶が反時計回りに旋回してしまう(つまり、船体の姿勢が変化し、船体の前部と後部とが右向きに並進しなくなってしまう)ことを、本発明者等は、鋭意研究において見い出した。
【0006】
上述した問題点に鑑み、本発明は、停止している船舶を左右方向に移動させる場合に、船体の前部が船体の後部に遅れて移動開始することに伴って、船舶が旋回してしまうおそれを抑制することができる船外機用制御装置、船外機用制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意研究において、例えばジョイスティックのレバーの先端部が中立位置から右傾倒位置に移動させられた場合に、船外機が、最初に、右向きの小さい推進力を発生し、次いで、右向きの大きい推進力を発生することによって、船体の前部が船体の後部に遅れて移動開始することなく(つまり、船舶が旋回することなく)、右向きに並進することを見い出したのである。
【0008】
本発明の一態様は、船舶の船体の後部に配置された複数の船外機を制御する船外機用制御装置であって、前記複数の船外機のそれぞれは、前記船舶の推進力を発生する推進ユニットと、操舵アクチュエータとを備え、前記船舶は、前記操舵アクチュエータおよび前記推進ユニットを作動させる操作部を備え、前記操作部は、少なくとも前記複数の船外機が前記船舶の推進力を発生しない位置である第1位置と、前記複数の船外機が前記船舶を左右方向に移動させる推進力を発生する位置である第2位置とに位置することができ、前記操作部が、前記第1位置から前記第2位置に移動させられて、前記第2位置に維持される場合に、前記船外機用制御装置は、前記操作部が前記第2位置に移動させられた第1時刻から第2時刻までの第1期間中に、第1推進力を前記複数の船外機に発生させ、次いで、前記第2時刻以降の第2期間中に、前記第1推進力より大きい第2推進力を前記複数の船外機に発生させる、船外機用制御装置である。
【0009】
本発明の一態様は、船舶の船体の後部に配置された複数の船外機を制御する船外機用制御方法であって、前記複数の船外機のそれぞれは、前記船舶の推進力を発生する推進ユニットと、操舵アクチュエータとを備え、前記船舶は、前記操舵アクチュエータおよび前記推進ユニットを作動させる操作部と、前記複数の船外機を制御する船外機用制御装置とを備え、前記操作部は、少なくとも前記複数の船外機が前記船舶の推進力を発生しない位置である第1位置と、前記複数の船外機が前記船舶を左右方向に移動させる推進力を発生する位置である第2位置とに位置することができ、前記操作部が、前記第1位置から前記第2位置に移動させられて、前記第2位置に維持される場合に、前記操作部が前記第2位置に移動させられた第1時刻から第2時刻までの第1期間中、前記船外機用制御装置が第1推進力を前記複数の船外機に発生させる第1ステップと、前記操作部が、前記第1位置から前記第2位置に移動させられて、前記第2位置に維持される場合に、前記第2時刻以降の第2期間中、前記船外機用制御装置が前記第1推進力より大きい第2推進力を前記複数の船外機に発生させる第2ステップとを備える、船外機用制御方法である。
【0010】
本発明の一態様は、船舶の船体の後部に配置された複数の船外機を制御するプログラムであって、前記複数の船外機のそれぞれは、前記船舶の推進力を発生する推進ユニットと、操舵アクチュエータとを備え、前記船舶は、前記操舵アクチュエータおよび前記推進ユニットを作動させる操作部を備え、前記操作部は、少なくとも前記複数の船外機が前記船舶の推進力を発生しない位置である第1位置と、前記複数の船外機が前記船舶を左右方向に移動させる推進力を発生する位置である第2位置とに位置することができ、前記船舶に搭載されたコンピュータに、前記操作部が、前記第1位置から前記第2位置に移動させられて、前記第2位置に維持される場合に、前記操作部が前記第2位置に移動させられた第1時刻から第2時刻までの第1期間中、前記複数の船外機が第1推進力を発生する第1ステップと、前記操作部が、前記第1位置から前記第2位置に移動させられて、前記第2位置に維持される場合に、前記第2時刻以降の第2期間中、前記複数の船外機が前記第1推進力より大きい第2推進力を発生する第2ステップとを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、停止している船舶を左右方向に移動させる場合に、船体の前部が船体の後部に遅れて移動開始することに伴って、船舶が旋回してしまうおそれを抑制することができる船外機用制御装置、船外機用制御方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の船外機用制御装置が適用される船舶の一例を示す図である。
【
図2】
図1に示す船舶の主要部の機能ブロック図である。
【
図3】第1実施形態の船舶における操作部の位置の例を説明するための図である。
【
図4】第1実施形態の船舶における操作部の移動経路の例を説明するための図である。
【
図5】第1実施形態の船舶における操作部の移動経路の例を説明するための図である。
【
図6】操舵アクチュエータおよび推進ユニットが発生する右向きの推進力と時刻との関係を示す図である。
【
図7】
図4(B)に示す例において船外機用制御装置が船外機に発生させる右前向きの推進力、
図4(C)に示す例において船外機用制御装置が船外機に発生させる右前向きの推進力などを比較して示した図である。
【
図8】
図4(C)に示す例における操舵アクチュエータおよび推進ユニットが発生する右向きの推進力(または右前向きの推進力の左右方向成分)と時刻との関係の一例などを示す図である。
【
図9】
図4(E)に示す例における操舵アクチュエータおよび推進ユニットが発生する右向きの推進力(または右後向きの推進力の左右方向成分)と時刻との関係の一例などを示す図である。
【
図10】操舵アクチュエータおよび推進ユニットが発生する左向きの推進力と時刻との関係を示す図である。
【
図11】第1実施形態の船外機用制御装置によって実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図12】第2実施形態の船外機用制御装置が適用される船舶の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明の船外機用制御装置、船外機用制御方法およびプログラムの第1実施形態について説明する。
【0014】
図1は第1実施形態の船外機用制御装置14が適用される船舶1の一例を示す図である。
図2は
図1に示す船舶1の主要部の機能ブロック図である。
図1および
図2に示す例では、船舶1が、船体11と、船外機12と、船外機13と、船外機用制御装置14とを備えている。船外機12、13は、船舶1の推進ユニットである。
図1および
図2に示す例では、船舶1が2基の船外機12、13を備えているが、他の例では、船舶1が3基以上の船外機を備えていてもよい。
【0015】
図1および
図2に示す例では、船外機12が、船体11の後部112の右側部分に取り付けられている。船外機12は、船外機本体12Aと、ブラケット12Bとを備えている。ブラケット12Bは、船外機12を船体11の後部112の右側部分に取り付けるための機構である。船外機本体12Aは、操舵軸12AXを中心に船体11に対して回動可能に、ブラケット12Bを介して船体11の後部112の右側部分に接続されている。
船外機本体12Aは、推進ユニット12A1と、操舵アクチュエータ12A2とを備えている。推進ユニット12A1は、例えばエンジン(図示せず)によって駆動されるプロペラ仕様の推進ユニットであり、船舶1の推進力を発生する。他の例では、推進ユニット12A1が、ウォータージェット仕様の推進ユニットであってもよい。
操舵アクチュエータ12A2は、操舵軸12AXを中心に、推進ユニット12A1を含む船外機本体12Aの全体を、船体11に対して回動させる。操舵アクチュエータ12A2は、舵の役目を担う。
【0016】
図1および
図2に示す例では、船外機13が、船体11の後部112の左側部分に取り付けられている。船外機13は、船外機本体13Aと、ブラケット13Bとを備えている。ブラケット13Bは、船外機13を船体11の後部112の左側部分に取り付けるための機構である。船外機本体13Aは、操舵軸13AXを中心に船体11に対して回動可能に、ブラケット13Bを介して船体11の後部112の左側部分に接続されている。
船外機本体13Aは、推進ユニット13A1と、操舵アクチュエータ13A2とを備えている。推進ユニット13A1は、推進ユニット12A1と同様に、例えばプロペラ仕様の推進ユニットであり、船舶1の推進力を発生する。他の例では、推進ユニット13A1が、ウォータージェット仕様の推進ユニットであってもよい。
操舵アクチュエータ13A2は、操舵軸13AXを中心に、推進ユニット13A1を含む船外機本体13Aの全体を、船体11に対して回動させる。操舵アクチュエータ13A2は、舵の役目を担う。
【0017】
図1および
図2に示す例では、船体11が、操舵装置11Aと、リモコン装置11Bと、リモコン装置11Cと、操作部11Dとを備えている。
他の例では、船体11が、操舵装置11A、リモコン装置11Bおよびリモコン装置11Cを備えていなくてもよい。
【0018】
図1および
図2に示す例では、操舵装置11Aが、操舵アクチュエータ12A2、13A2を作動させる装置であり、例えばステアリングホイールを有するステアリング装置である。操船者は、操舵装置11Aを操作することによって、操舵アクチュエータ12A2、13A2を作動させ、船舶1の操舵を行うことができる。
リモコン装置11Bは、推進ユニット12A1を作動させる入力操作を受け付ける装置であり、例えばリモコンレバーを有する。操船者は、リモコン装置11Bを操作することによって、推進ユニット12A1が発生する推進力の大きさおよび向きを変更することができる。リモコン装置11Bのリモコンレバーは、推進ユニット12A1が船舶1の前向きの推進力を発生する前進領域と、推進ユニット12A1が船舶1の後向きの推進力を発生する後進領域と、推進ユニット12A1が推進力を発生しないニュートラル領域とに位置することができる。前進領域内におけるリモコンレバーの位置に応じて、推進ユニット12A1が発生する船舶1の前向きの推進力の大きさが変化する。また、後進領域内におけるリモコンレバーの位置に応じて、推進ユニット12A1が発生する船舶1の後向きの推進力の大きさが変化する。
【0019】
図1および
図2に示す例では、リモコン装置11Cが、推進ユニット13A1を作動させる入力操作を受け付ける装置であり、リモコン装置11Bと同様に構成されている。つまり、操船者は、リモコン装置11Cを操作することによって、推進ユニット13A1が発生する推進力の大きさおよび向きを変更することができる。
操作部11Dは、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を作動させる装置である。詳細には、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を作動させるための入力操作を受け付ける。操作部11Dは、操舵装置11Aおよびリモコン装置11B、11Cとは別個に設けられている。
第1実施形態の船舶1では、操作部11Dが、レバーを有するジョイスティックによって構成されている。
操船者は、操舵装置11A(ステアリングホイール)およびリモコン装置11B、11C(リモコンレバー)を操作することによって、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を作動させることができるのみならず、操作部11D(ジョイスティック)を操作することによっても、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を作動させることができる。
【0020】
図1および
図2に示す例では、船外機用制御装置14が、操作部11Dに対する入力操作に基づいて、船外機12の操舵アクチュエータ12A2および推進ユニット12A1と、船外機13の操舵アクチュエータ13A2および推進ユニット13A1とを制御する。詳細には、船外機用制御装置14は、操作部11Dに対する入力操作に基づいて、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生する船舶1の推進力の大きさおよび向きを制御する。
船外機用制御装置14は、移動経路算出部14Aと、経過時間算出部14Bと、推進力算出部14Cとを備えている。移動経路算出部14Aは、操作部11Dの移動経路を算出する。詳細には、移動経路算出部14Aは、例えばマイクロスイッチなどのセンサ(図示せず)によって検出されたジョイスティックのレバーの位置に基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路を算出する。
経過時間算出部14Bは、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)がある位置に移動させられた時刻からの経過時間を算出する。
推進力算出部14Cは、移動経路算出部14Aによって算出された操作部11Dの移動経路と、経過時間算出部14Bによって算出された経過時間とに基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Cは、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路と、ジョイスティックのレバーの先端部がある位置に位置し続けている時間(経過時間)とに基づいて、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる船舶1の推進力の大きさおよび向きを算出する。
つまり、船外機用制御装置14は、推進力算出部14Cによって算出された大きさおよび向きの推進力を操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生するように、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を制御する。
【0021】
図1および
図2に示す例では、操作部11D(ジョイスティック)のレバーが傾倒可能であると共に、レバーが、レバーの中心軸線を中心に回動可能に、操作部11Dは構成されている。
操船者が、レバーの中心軸線を中心にレバーを時計回りに回動させる場合に、船外機用制御装置14は、船体11が右旋回するように、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を制御する。一方、操船者が、レバーの中心軸線を中心にレバーを反時計回りに回動させる場合に、船外機用制御装置14は、船体11が左旋回するように、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を制御する。つまり、操船者がレバーの中心軸線を中心にレバーを回動させることによって、船体11の前部111の向きが変化する。
また、操船者がレバーを傾倒させる場合に、船外機用制御装置14は、船体11が姿勢を維持したまま移動するように、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を制御する。つまり、操船者がレバーを傾倒させることによって、船体11の前部111と、船体11の後部112とが、並進する。
【0022】
図3は第1実施形態の船舶1における操作部11Dの位置(詳細には、ジョイスティックのレバーの先端部の位置P1~P9)の例を説明するための図である。
図3(A)に示す例では、操作部11D(ジョイスティック)のレバーが傾倒されていない。そのため、操作部11D(詳細には、ジョイスティックのレバーの先端部)は、位置(中立位置)P1に位置する。操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1に位置する場合、船外機用制御装置14は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に船舶1の推進力を発生させない。
つまり、位置P1は、船外機12、13が船舶1の推進力を発生しない位置である。
【0023】
図3(B)に示す例では、ジョイスティックのレバーが右向きに傾倒されている。そのため、ジョイスティックのレバーの先端部は、位置P1の右側の位置P2に位置する。ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置する場合、船外機用制御装置14は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に、船舶1を右向きに移動させる推進力を発生させる。
つまり、位置P2は、船外機12、13が船舶1を右向きに移動(詳細には、並進移動)させる推進力を発生する位置である。
図3(C)に示す例では、ジョイスティックのレバーが右前向きに傾倒されている。そのため、ジョイスティックのレバーの先端部は、位置P1の右前側の位置P3に位置する。ジョイスティックのレバーの先端部が位置P3に位置する場合、船外機用制御装置14は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に、左右方向と鋭角θ3をなす右前向きに船舶1を移動させる推進力を発生させる。
つまり、位置P3は、船外機12、13が船舶1を右前向きに移動(並進移動)させる推進力を発生する位置である。
図3(D)に示す例では、ジョイスティックのレバーが右後向きに傾倒されている。そのため、ジョイスティックのレバーの先端部は、位置P1の右後側の位置P4に位置する。ジョイスティックのレバーの先端部が位置P4に位置する場合、船外機用制御装置14は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に、左右方向と鋭角θ4をなす右後向きに船舶1を移動させる推進力を発生させる。
つまり、位置P4は、船外機12、13が船舶1を右後向きに移動(並進移動)させる推進力を発生する位置である。
【0024】
図3(E)に示す例では、ジョイスティックのレバーが左向きに傾倒されている。そのため、ジョイスティックのレバーの先端部は、位置P1の左側の位置P5に位置する。ジョイスティックのレバーの先端部が位置P5に位置する場合、船外機用制御装置14は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に、船舶1を左向きに移動させる推進力を発生させる。
つまり、位置P5は、船外機12、13が船舶1を左向きに移動(並進移動)させる推進力を発生する位置である。
図3(F)に示す例では、ジョイスティックのレバーが左前向きに傾倒されている。そのため、ジョイスティックのレバーの先端部は、位置P1の左前側の位置P6に位置する。ジョイスティックのレバーの先端部が位置P6に位置する場合、船外機用制御装置14は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に、左右方向と鋭角θ6をなす左前向きに船舶1を移動させる推進力を発生させる。
つまり、位置P6は、船外機12、13が船舶1を左前向きに移動(並進移動)させる推進力を発生する位置である。
図3(G)に示す例では、ジョイスティックのレバーが左後向きに傾倒されている。そのため、ジョイスティックのレバーの先端部は、位置P1の左後側の位置P7に位置する。ジョイスティックのレバーの先端部が位置P7に位置する場合、船外機用制御装置14は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に、左右方向と鋭角θ7をなす左後向きに船舶1を移動させる推進力を発生させる。
つまり、位置P7は、船外機12、13が船舶1を左後向きに移動(並進移動)させる推進力を発生する位置である。
【0025】
図3(H)に示す例では、ジョイスティックのレバーが前向きに傾倒されている。そのため、ジョイスティックのレバーの先端部は、位置P1の前側の位置P8に位置する。ジョイスティックのレバーの先端部が位置P8に位置する場合、船外機用制御装置14は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に、船舶1を前向きに移動させる推進力を発生させる。
つまり、位置P8は、船外機12、13が船舶1を前向きに移動(前進)させる推進力を発生する位置である。
図3(I)に示す例では、ジョイスティックのレバーが後向きに傾倒されている。そのため、ジョイスティックのレバーの先端部は、位置P1の後側の位置P9に位置する。ジョイスティックのレバーの先端部が位置P9に位置する場合、船外機用制御装置14は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に、船舶1を後向きに移動させる推進力を発生させる。
つまり、位置P9は、船外機12、13が船舶1を後向きに移動(後進)させる推進力を発生する位置である。
【0026】
操船者が操作部11D(ジョイスティック)を操作しない場合、自動復帰機能を有するジョイスティックのレバーの先端部は、位置P1に位置する。ジョイスティックのレバーの先端部は、操船者の操作に応じて、例えば位置P1~P9などの位置に位置することができる。
【0027】
図4および
図5は第1実施形態の船舶1における操作部11Dの移動経路(詳細には、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路)の例を説明するための図である。
図4(A)に示す例では、操作部11D(詳細には、ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P2に移動させられて、位置P2に維持される。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時刻のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置する時刻のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2を算出する。
経過時間算出部14Bは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻t1(
図6参照)からの経過時間を算出する。詳細には、経過時間算出部14Bは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置し続けている時間を算出する。
推進力算出部14Cは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2と、経過時間算出部14Bによって算出された経過時間(ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置し続けている時間)とに基づいて、船外機12、13に発生させる右向きの推進力FRを算出する。詳細には、推進力算出部14Cは、船舶1を右向きに移動させる推進力の大きさを算出する。
【0028】
図6は操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生する右向きの推進力FRと時刻(例えばジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻t1など)との関係を示す図である。
図6(A)および
図6(B)の縦軸は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生する右向きの推進力FRを示している。
図6(A)および
図6(B)の横軸は、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻t1などを示している。
【0029】
図6(A)に示す例では、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻t1から時刻t2までの第1期間中に、推進力算出部14Cは、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる右向きの推進力FRとして、第1推進力FR1を算出する。つまり、時刻t1から時刻t2までの第1期間中に、船外機用制御装置14が、第1推進力FR1を船外機12、13に発生させる。
詳細には、船外機用制御装置14は、時刻t1から時刻t2までの第1期間中に、船体11の前部111が船体11の後部112に遅れることなく右向きに移動開始するように、推進力算出部14Cは、後述する第2推進力FR2より小さい第1推進力FR1を船外機12、13に発生させる。
その結果、
図6(A)に示す例では、時刻t1に、船体11の前部111が船体11の後部112に遅れて移動開始するおそれを抑制することができ、時刻t1から時刻t2までの第1期間中に、船舶1が左旋回してしまうおそれを抑制することができる。
【0030】
図6(A)に示す例では、次いで、時刻t2以降の第2期間中に、推進力算出部14Cは、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる右向きの推進力FRとして、第1推進力FR1より大きい第2推進力FR2を算出する。つまり、時刻t2以降の第2期間中に、船外機用制御装置14が、第1推進力FR1より大きい第2推進力FR2を船外機12、13に発生させる。
その結果、
図6(A)に示す例では、時刻t2以降の第2期間中に、操船者の要求どおりに、船舶1を右向きに迅速に移動させることができる。
【0031】
図6(B)に示す例では、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻t1から時刻t2までの第1期間中に、推進力算出部14Cは、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる右向きの推進力FRとして、第1推進力FR1(第1推進力FR1は、値FR1A以上、第2推進力FR2未満である。)を算出する。つまり、時刻t1から時刻t2までの第1期間中に、船外機用制御装置14が、第1推進力FR1を船外機12、13に発生させる。
詳細には、船外機用制御装置14は、時刻t1から時刻t2までの第1期間中に、船体11の前部111が船体11の後部112に遅れることなく右向きに移動開始するように、推進力算出部14Cは、第2推進力FR2より小さい第1推進力FR1を船外機12、13に発生させる。
その結果、
図6(B)に示す例では、時刻t1に、船体11の前部111が船体11の後部112に遅れて移動開始するおそれを抑制することができ、時刻t1から時刻t2までの第1期間中に、船舶1が左旋回してしまうおそれを抑制することができる。
【0032】
図6(B)に示す例では、次いで、時刻t2以降の第2期間中に、推進力算出部14Cは、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる右向きの推進力FRとして、第1推進力FR1より大きい第2推進力FR2を算出する。つまり、時刻t2以降の第2期間中に、船外機用制御装置14が、第1推進力FR1より大きい第2推進力FR2を船外機12、13に発生させる。
その結果、
図6(B)に示す例では、時刻t2以降の第2期間中に、操船者の要求どおりに、船舶1を右向きに迅速に移動させることができる。
【0033】
操船者が、船舶1を右前向きに移動(並進移動)させたい場合もある。
そのような場合には、
図4(B)に示す例のように、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P3に移動させられる。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時刻のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P3に位置する時刻のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P3を算出する。
経過時間算出部14Bは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P3に移動させられた時刻からの経過時間を算出する。詳細には、経過時間算出部14Bは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P3に位置し続けている時間を算出する。
推進力算出部14Cは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P3と、経過時間算出部14Bによって算出された経過時間(ジョイスティックのレバーの先端部が位置P3に位置し続けている時間)とに基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Cは、船舶1を右前向きに移動させる推進力の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Cによって算出された大きさの右前向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
その結果、船舶1が右前向きに移動(並進移動)する。
【0034】
操船者が、船舶1を右向きに移動(並進移動)させたい場合であって、例えば風、潮流などによる後向きの力を船舶1が受ける場合もある。
そのような場合には、
図4(C)に示す例のように、まず、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P2に移動させられる。風、潮流などによる後向きの力によって、船舶1が後向きに流されそうになるため、次いで、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P2から位置P3に移動させられる。
つまり、
図4(C)に示す例では、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P2を経て位置P3に移動させられる。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時刻のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置する時刻のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P3に位置する時刻のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2→P3を算出する。
経過時間算出部14Bは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻からの経過時間と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2から位置P3に移動させられた時刻からの経過時間とを算出する。詳細には、経過時間算出部14Bは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置し続けている時間と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P3に位置し続けている時間とを算出する。
推進力算出部14Cは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2→P3と、経過時間算出部14Bによって算出された経過時間(ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置し続けている時間およびジョイスティックのレバーの先端部が位置P3に位置し続けている時間)とに基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Cは、例えば風、潮流などによる後向きの力に抗して船舶1を右向きに移動させる推進力(つまり、右前向きの推進力)の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Cによって算出された大きさの右前向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
【0035】
本発明者等は、鋭意研究において、仮に、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P2を経て位置P3に移動させられるとき(
図4(C)に示す例)に船外機12、13が発生する右前向きの推進力の前後方向成分の大きさと、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P3に直接移動させられるとき(
図4(B)に示す例)に船外機12、13が発生する右前向きの推進力の前後方向成分の大きさとが等しく設定されている場合には、例えば風、潮流などによる後向きの力に抗する推進力の前後方向成分の大きさが十分ではなく、船舶1が、操船者の要求どおりに右向きに移動(並進移動)せず、後向きに流されてしまうおそれがあることを見い出した。
【0036】
そこで、
図4(C)に示す例では、船外機用制御装置14は、操作部11Dが位置P3に位置している期間中に、
図4(B)に示す例よりも前後方向成分(詳細には、前向き成分)が大きい右前向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
その結果、船舶1は、操船者の要求どおりに、かつ、例えば風、潮流などによる後向きの力に抗して、右向きに移動(並進移動)する。
【0037】
図7は
図4(B)に示す例において船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる右前向きの推進力、
図4(C)に示す例において船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる右前向きの推進力などを比較して示した図である。
図7(A)は、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P3に直接移動させられる場合に(
図4(B)に示す例において)、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる(つまり、推進力算出部14Cが算出する)右前向きの推進力F11およびその前後方向成分F11Fならびにその左右方向成分F11Rを示している。
図7(B)は、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P2を経て位置P3に移動させられる場合に(
図4(C)に示す例において)、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる(つまり、推進力算出部14Cが算出する)右前向きの推進力F12およびその前後方向成分F12Fならびにその左右方向成分F12Rを示している。
図7(A)および
図7(B)に示す例では、右前向きの推進力F11の左右方向成分F11Rの大きさと、右前向きの推進力F12の左右方向成分F12Rの大きさとが等しく設定されている。さらに、右前向きの推進力F12の前後方向成分F12Fが、右前向きの推進力F11の前後方向成分F11Fより大きく設定されている。その結果、右前向きの推進力F12も、右前向きの推進力F11より大きい。
従って、
図7(A)および
図7(B)に示す例では、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P1から位置P2に移動させ、船舶1を右向きに移動させている期間中に船舶1が後向きの力を受ける場合であっても、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P2から位置P3に移動させることによって、船外機12、13は、前後方向成分F12Fが前後方向成分F11Fより大きい右前向きの推進力F12を発生する。その結果、船舶1が後向きに流されることなく、操船者は、船舶1を右向きに移動させることができる。
【0038】
図8は
図4(C)に示す例における操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生する右向きの推進力(または右前向きの推進力の左右方向成分)FRと時刻(例えばジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻t11など)との関係の一例などを示す図である。詳細には、
図8(A)は
図4(C)に示す例における操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生する右向きの推進力(または右前向きの推進力の左右方向成分)FRと時刻(例えばジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻t11など)との関係の一例を示す図である。
図8(A)の縦軸は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生する右向きの推進力(または右前向きの推進力の左右方向成分)FRを示している。
図8(A)の横軸は、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻t11などを示している。
【0039】
図8(A)に示す例では、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻t11から時刻t12までの第1期間中に、推進力算出部14Cは、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる右向きの推進力FRとして、第1推進力FR1を算出する。つまり、時刻t11から時刻t12までの第1期間中に、船外機用制御装置14が、第1推進力FR1を船外機12、13に発生させる。
次いで、時刻t12から時刻t13までの第2期間中に、推進力算出部14Cは、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる右向きの推進力FRとして、第1推進力FR1より大きい第2推進力FR2を算出する。つまり、時刻t12から時刻t13までの第2期間中に、船外機用制御装置14が、第1推進力FR1より大きい第2推進力FR2を船外機12、13に発生させる。
【0040】
図8(A)に示す例では、第2期間中の時刻t13に、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2から位置P3に移動させられる。時刻t13以降に、推進力算出部14Cは、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる右前向きの推進力の左右方向成分FRとして、
図7(B)に示す左右方向成分F12Rを算出する。つまり、時刻t13以降に、船外機用制御装置14は、第2推進力FR2と同等の大きさを有する左右方向成分F12Rを含む右前向きの推進力F12(
図7(B)参照)を船外機12、13に発生させる。
【0041】
図7(A)および
図7(B)に示す例では、上述したように、右前向きの推進力F11の左右方向成分F11Rの大きさと、右前向きの推進力F12の左右方向成分F12Rの大きさとが等しく設定されている。さらに、右前向きの推進力F12の前後方向成分F12Fが、右前向きの推進力F11の前後方向成分F11Fより大きく設定されている。
他の例では、右前向きの推進力F12の前後方向成分F12Fの大きさと、右前向きの推進力F11の前後方向成分F11Fの大きさとが等しく設定され、右前向きの推進力F12の左右方向成分F12Rが、右前向きの推進力F11の左右方向成分F11Rより小さく設定されている。つまり、この例では、右前向きの推進力F12が、右前向きの推進力F11より小さくなる。
従って、この例では、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P1から位置P2に移動させ、船舶1を右向きに移動させている期間中に船舶1が後向きの力を受ける場合であっても、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P2から位置P3に移動させることによって、船外機12、13は、左右方向成分F12Rが左右方向成分F11Rより小さい右前向きの推進力F12を発生する。その結果、この例においても、船舶1が後向きに流されることなく、操船者は、船舶1を右向きに移動させることができる。
【0042】
図8(B)は上述した他の例における操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生する右向きの推進力(または右前向きの推進力の左右方向成分)FRと時刻(例えばジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻t11など)との関係の一例などを示す図である。
図8(B)の縦軸は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生する右向きの推進力(または右前向きの推進力の左右方向成分)FRを示している。
図8(B)の横軸は、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻t11などを示している。
【0043】
図8(B)に示す例では、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻t11から時刻t12までの期間中に、推進力算出部14Cは、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる右向きの推進力FRとして、第1推進力FR1を算出する。つまり、時刻t11から時刻t12までの期間中に、船外機用制御装置14が、第1推進力FR1を船外機12、13に発生させる。
次いで、時刻t12から時刻t13までの期間中に、推進力算出部14Cは、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる右向きの推進力FRとして、第1推進力FR1より大きい第2推進力FR2を算出する。つまり、時刻t12から時刻t13までの期間中に、船外機用制御装置14が、第1推進力FR1より大きい第2推進力FR2を船外機12、13に発生させる。
【0044】
図8(B)に示す例では、時刻t13に、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2から位置P3に移動させられる。時刻t13以降の期間中に、推進力算出部14Cは、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる右前向きの推進力の左右方向成分FRとして、
図7(A)に示す左右方向成分F11Rよりも小さい左右方向成分F12Rを算出する。つまり、時刻t13以降の期間中に、船外機用制御装置14が、第2推進力FR2よりも小さい左右方向成分F12Rを含む右前向きの推進力F12を船外機12、13に発生させる。
【0045】
図8(A)および
図8(B)に示す例では、右向きの推進力FRが、時刻t12にステップ状に増加するが、他の例では、
図6(B)に示す例のように、右向きの推進力FRを第1期間中にリニアに増加させてもよい。
【0046】
例えば風、潮流などによって前後方向の力を船舶が受けない時に、操船者が、右向きに移動(並進移動)中の船舶1の向きを右向きから右前向きに切り替えることもある。
そのような場合には、
図4(C)に示す例のように、まず、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P2に移動させられる。右向きに移動中の船舶1の向きを右向きから右前向きに切り替えるために、次いで、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P2から位置P3に移動させられる。
つまり、
図4(C)に示す例では、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P2を経て位置P3に移動させられる。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時刻のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置する時刻のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P3に位置する時刻のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2→P3を算出する。
経過時間算出部14Bは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻からの経過時間と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2から位置P3に移動させられた時刻からの経過時間とを算出する。詳細には、経過時間算出部14Bは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置し続けている時間と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P3に位置し続けている時間とを算出する。
推進力算出部14Cは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2→P3と、経過時間算出部14Bによって算出された経過時間(ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置し続けている時間およびジョイスティックのレバーの先端部が位置P3に位置し続けている時間)とに基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Cは、右向きに移動中の船舶1の向きを右向きから右前向きに切り替える推進力(つまり、右前向きの推進力)の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Cによって算出された大きさの右前向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
【0047】
本発明者等は、鋭意研究において、右向きに移動する船舶1には、右向きの慣性力が発生するため、仮に、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P2を経て位置P3に移動させられるとき(
図4(C)に示す例)に船外機12、13が発生する右前向きの推進力の前後方向成分の大きさと、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P3に直接移動させられるとき(
図4(B)に示す例)に船外機12、13が発生する右前向きの推進力の前後方向成分の大きさとが等しく設定されている場合には、操船者の補正操作に対する船舶1の応答動作が遅い(つまり、船舶1の向きが右向きから右前向きに切り替わるのが遅い)と操船者が感じてしまうおそれがあることを見い出した。
【0048】
そこで、
図4(C)に示す例では、船外機用制御装置14は、操作部11Dが位置P3に位置している期間中に、
図4(B)に示す例よりも前後方向成分が大きい(詳細には、前向き成分F12Fが前向き成分F11Fより大きい)右前向きの推進力F12を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。その結果、操船者の要求どおりに、船舶1の向きを右向きから右前向きに迅速に切り替えることができる。
他の例では、船外機用制御装置14は、
図4(B)に示す例よりも左右方向成分が小さい(詳細には、前向き成分F12Fと前向き成分F11Fとが等しく、右向き成分F12Rが右向き成分F11Rより小さい)右前向きの推進力F12を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。その結果、この例においても、操船者の要求どおりに、船舶1の向きを右向きから右前向きに迅速に切り替えることができる。
【0049】
ところで、仮に、上述した
図8(B)中の時刻t12から時刻t13までの時間が短い場合に
図8(B)に示すような制御が行われると、右向きの推進力(または右前向きの推進力の左右方向成分)FRを増減させることを操船者が意図していないにもかかわらず、短い時間(t12~t13)内に、右向きの推進力FRが第1推進力FR1から第2推進力FR2まで増加し、次いで、右前向きの推進力の左右方向成分FRが第2推進力FR2から左右方向成分F12Rまで減少してしまう。
そこで、第1実施形態の船舶1では、
図8(A)および
図8(B)中の時刻t12から時刻t13までの時間(t12~t13)が短い場合(時間t12~t13が閾値TH1未満である場合)に、船外機用制御装置14は、
図8(B)に示すような制御が行われることを禁止し、
図8(A)に示すような制御を実行する。
つまり、時間t12~t13が閾値TH1未満である場合に、船外機用制御装置14は、
図8(B)に示すように時刻t13に、右向きの推進力(または右前向きの推進力の左右方向成分)FRを第2推進力FR2から左右方向成分F12Rまで減少させることによって、船外機12、13が右前向きの推進力F12を発生することを禁止する。
そのため、第1実施形態の船舶1では、右向きの推進力(または右前向きの推進力の左右方向成分)FRを増減させることを操船者が意図していないにもかかわらず、短い時間(t12~t13)内に、右向きの推進力(または右前向きの推進力の左右方向成分)FRが増減してしまうおそれを抑制することができる。
【0050】
また、第1実施形態の船舶1では、
図8(A)および
図8(B)中の時刻t12から時刻t13までの時間(t12~t13)が長い場合(時間t12~t13が閾値TH1以上である場合)に、船外機用制御装置14は、
図8(B)に示すような制御が行われることを許可し、
図8(A)に示すような制御および
図8(B)に示すような制御のいずれか一方を実行する。
つまり、時間t12~t13が閾値TH1以上である場合に、船外機用制御装置14は、
図8(B)に示すように時刻t13に、右向きの推進力(または右前向きの推進力の左右方向成分)FRを第2推進力FR2から左右方向成分F12Rまで減少させることによって、船外機12、13が右前向きの推進力F12を発生することを許可する。
【0051】
また、操船者が、船舶1を右後向きに移動(並進移動)させたい場合もある。
そのような場合には、
図4(D)に示す例のように、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P4に移動させられる。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時刻のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P4に位置する時刻のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P4を算出する。
経過時間算出部14Bは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P4に移動させられた時刻からの経過時間を算出する。詳細には、経過時間算出部14Bは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P4に位置し続けている時間を算出する。
推進力算出部14Cは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P4と、経過時間算出部14Bによって算出された経過時間(ジョイスティックのレバーの先端部が位置P4に位置し続けている時間)とに基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Cは、船舶1を右後向きに移動させる推進力の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Cによって算出された大きさの右後向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
その結果、船舶1が右後向きに移動(並進移動)する。
【0052】
操船者が、船舶1を右向きに移動(並進移動)させたい場合であって、例えば風、潮流などによる前向きの力を船舶1が受ける場合もある。
そのような場合には、
図4(E)に示す例のように、まず、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P2に移動させられる。風、潮流などによる前向きの力によって、船舶1が前向きに流されそうになるため、次いで、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P2から位置P4に移動させられる。
つまり、
図4(E)に示す例では、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P2を経て位置P4に移動させられる。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時刻のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置する時刻のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P4に位置する時刻のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2→P4を算出する。
経過時間算出部14Bは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻からの経過時間と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2から位置P4に移動させられた時刻からの経過時間とを算出する。詳細には、経過時間算出部14Bは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置し続けている時間と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P4に位置し続けている時間とを算出する。
推進力算出部14Cは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2→P4と、経過時間算出部14Bによって算出された経過時間(ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置し続けている時間およびジョイスティックのレバーの先端部が位置P4に位置し続けている時間)とに基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Cは、例えば風、潮流などによる前向きの力に抗して船舶1を右向きに移動させる推進力(つまり、右後向きの推進力)の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Cによって算出された大きさの右後向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
【0053】
図4(E)に示す例では、船外機用制御装置14は、操作部11Dが位置P4に位置している期間中に、
図4(D)に示す例よりも前後方向成分(詳細には、後向き成分)が大きい右後向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
その結果、船舶1は、操船者の要求どおりに、かつ、例えば風、潮流などによる前向きの力に抗して、右向きに移動(並進移動)する。
【0054】
図7(C)は、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P4に直接移動させられる場合に(
図4(D)に示す例において)、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる(つまり、推進力算出部14Cが算出する)右後向きの推進力F21およびその前後方向成分F21Bならびにその左右方向成分F21Rを示している。
図7(D)は、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P2を経て位置P4に移動させられる場合に(
図4(E)に示す例において)、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる(つまり、推進力算出部14Cが算出する)右後向きの推進力F22およびその前後方向成分F22Bならびにその左右方向成分F22Rを示している。
図7(C)および
図7(D)に示す例では、右後向きの推進力F21の左右方向成分F21Rの大きさと、右後向きの推進力F22の左右方向成分F22Rの大きさとが等しく設定されている。さらに、右後向きの推進力F22の前後方向成分F22Bが、右後向きの推進力F21の前後方向成分F21Bより大きく設定されている。その結果、右後向きの推進力F22も、右後向きの推進力F21より大きい。
従って、
図7(C)および
図7(D)に示す例では、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P1から位置P2に移動させ、船舶1を右向きに移動させている期間中に船舶1が前向きの力を受ける場合であっても、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P2から位置P4に移動させることによって、船外機12、13は、前後方向成分F22Bが前後方向成分F21Bより大きい右後向きの推進力F22を発生する。その結果、船舶1が前向きに流されることなく、操船者は、船舶1を右向きに移動させることができる。
【0055】
図9は
図4(E)に示す例における操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生する右向きの推進力(または右後向きの推進力の左右方向成分)FRと時刻(例えばジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻t21など)との関係の一例などを示す図である。詳細には、
図9(A)は
図4(E)に示す例における操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生する右向きの推進力(または右後向きの推進力の左右方向成分)FRと時刻(例えばジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻t21など)との関係の一例を示す図である。
図9(A)の縦軸は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生する右向きの推進力(または右後向きの推進力の左右方向成分)FRを示している。
図9(A)の横軸は、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻t21などを示している。
【0056】
図9(A)に示す例では、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻t21から時刻t22までの第1期間中に、推進力算出部14Cは、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる右向きの推進力FRとして、第1推進力FR1を算出する。つまり、時刻t21から時刻t22までの第1期間中に、船外機用制御装置14が、第1推進力FR1を船外機12、13に発生させる。
次いで、時刻t22から時刻t23までの第2期間中に、推進力算出部14Cは、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる右向きの推進力FRとして、第1推進力FR1より大きい第2推進力FR2を算出する。つまり、時刻t22から時刻t23までの第2期間中に、船外機用制御装置14が、第1推進力FR1より大きい第2推進力FR2を船外機12、13に発生させる。
【0057】
図9(A)に示す例では、第2期間中の時刻t23に、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2から位置P4に移動させられる。時刻t23以降に、推進力算出部14Cは、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる右後向きの推進力の左右方向成分FRとして、
図7(D)に示す左右方向成分F22Rを算出する。つまり、時刻t23以降に、船外機用制御装置14は、第2推進力FR2と同等の大きさを有する左右方向成分F22Rを含む右後向きの推進力F22(
図7(D)参照)を船外機12、13に発生させる。
【0058】
図7(C)および
図7(D)に示す例では、上述したように、右後向きの推進力F21の左右方向成分F21Rの大きさと、右後向きの推進力F22の左右方向成分F22Rの大きさとが等しく設定されている。さらに、右後向きの推進力F22の前後方向成分F22Bが、右後向きの推進力F21の前後方向成分F21Bより大きく設定されている。
他の例では、右後向きの推進力F22の前後方向成分F22Bの大きさと、右後向きの推進力F21の前後方向成分F21Bの大きさとが等しく設定され、右後向きの推進力F22の左右方向成分F22Rが、右後向きの推進力F21の左右方向成分F21Rより小さく設定されている。つまり、この例では、右後向きの推進力F22が、右後向きの推進力F21より小さくなる。
従って、この例では、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P1から位置P2に移動させ、船舶1を右向きに移動させている期間中に船舶1が前向きの力を受ける場合であっても、操船者が操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)を位置P2から位置P4に移動させることによって、船外機12、13は、左右方向成分F22Rが左右方向成分F21Rより小さい右後向きの推進力F22を発生する。その結果、この例においても、船舶1が前向きに流されることなく、操船者は、船舶1を右向きに移動させることができる。
【0059】
図9(B)は上述した他の例における操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生する右向きの推進力(または右後向きの推進力の左右方向成分)FRと時刻(例えばジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻t21など)との関係の一例などを示す図である。
図9(B)の縦軸は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生する右向きの推進力(または右後向きの推進力の左右方向成分)FRを示している。
図9(B)の横軸は、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻t21などを示している。
【0060】
図9(B)に示す例では、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻t21から時刻t22までの期間中に、推進力算出部14Cは、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる右向きの推進力FRとして、第1推進力FR1を算出する。つまり、時刻t21から時刻t22までの期間中に、船外機用制御装置14が、第1推進力FR1を船外機12、13に発生させる。
次いで、時刻t22から時刻t23までの期間中に、推進力算出部14Cは、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる右向きの推進力FRとして、第1推進力FR1より大きい第2推進力FR2を算出する。つまり、時刻t22から時刻t23までの期間中に、船外機用制御装置14が、第1推進力FR1より大きい第2推進力FR2を船外機12、13に発生させる。
【0061】
図9(B)に示す例では、時刻t23に、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2から位置P4に移動させられる。時刻t23以降の期間中に、推進力算出部14Cは、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる右後向きの推進力の左右方向成分FRとして、
図7(C)に示す左右方向成分F21Rよりも小さい左右方向成分F22Rを算出する。つまり、時刻t23以降の期間中に、船外機用制御装置14が、第2推進力FR2よりも小さい左右方向成分F22Rを含む右後向きの推進力F22を船外機12、13に発生させる。
【0062】
図9(A)および
図9(B)に示す例では、右向きの推進力FRが、時刻t22にステップ状に増加するが、他の例では、
図6(B)に示す例のように、右向きの推進力FRを第1期間中にリニアに増加させてもよい。
【0063】
例えば風、潮流などによって前後方向の力を船舶が受けない時に、操船者が、右向きに移動(並進移動)中の船舶1の向きを右向きから右後向きに切り替えることもある。
そのような場合には、
図4(E)に示す例のように、まず、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P2に移動させられる。右向きに移動中の船舶1の向きを右向きから右後向きに切り替えるために、次いで、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P2から位置P4に移動させられる。
つまり、
図4(E)に示す例では、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P2を経て位置P4に移動させられる。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時刻のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置する時刻のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P4に位置する時刻のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2→P4を算出する。
経過時間算出部14Bは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P2に移動させられた時刻からの経過時間と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2から位置P4に移動させられた時刻からの経過時間とを算出する。詳細には、経過時間算出部14Bは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置し続けている時間と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P4に位置し続けている時間とを算出する。
推進力算出部14Cは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P2→P4と、経過時間算出部14Bによって算出された経過時間(ジョイスティックのレバーの先端部が位置P2に位置し続けている時間およびジョイスティックのレバーの先端部が位置P4に位置し続けている時間)とに基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。詳細には、推進力算出部14Cは、右向きに移動中の船舶1の向きを右向きから右後向きに切り替える推進力(つまり、右後向きの推進力)の大きさを算出する。
船外機用制御装置14は、推進力算出部14Cによって算出された大きさの右後向きの推進力を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。
【0064】
図4(E)に示す例では、船外機用制御装置14は、操作部11Dが位置P4に位置している期間中に、
図4(D)に示す例よりも前後方向成分が大きい(詳細には、後向き成分F22Bが後向き成分F21Bより大きい)右後向きの推進力F22を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。その結果、操船者の要求どおりに、船舶1の向きを右向きから右後向きに迅速に切り替えることができる。
他の例では、船外機用制御装置14は、
図4(D)に示す例よりも左右方向成分が小さい(詳細には、後向き成分F22Bと後向き成分F21Bとが等しく、右向き成分F22Rが右向き成分F21Rより小さい)右後向きの推進力F22を、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる。その結果、この例においても、操船者の要求どおりに、船舶1の向きを右向きから右後向きに迅速に切り替えることができる。
【0065】
第1実施形態の船舶1では、
図9(A)および
図9(B)中の時刻t22から時刻t23までの時間(t22~t23)が短い場合(時間t22~t23が閾値TH1未満である場合)に、船外機用制御装置14は、
図9(B)に示すような制御が行われることを禁止し、
図9(A)に示すような制御を実行する。
つまり、時間t22~t23が閾値TH1未満である場合に、船外機用制御装置14は、
図9(B)に示すように時刻t23に、右向きの推進力(または右後向きの推進力の左右方向成分)FRを第2推進力FR2から左右方向成分F22Rまで減少させることによって、船外機12、13が右後向きの推進力F22を発生することを禁止する。
そのため、第1実施形態の船舶1では、右向きの推進力(または右後向きの推進力の左右方向成分)FRを増減させることを操船者が意図していないにもかかわらず、短い時間(t22~t23)内に、右向きの推進力(または右後向きの推進力の左右方向成分)FRが増減してしまうおそれを抑制することができる。
【0066】
また、第1実施形態の船舶1では、
図9(A)および
図9(B)中の時刻t22から時刻t23までの時間(t22~t23)が長い場合(時間t22~t23が閾値TH1以上である場合)に、船外機用制御装置14は、
図9(B)に示すような制御が行われることを許可し、
図9(A)に示すような制御および
図9(B)に示すような制御のいずれか一方を実行する。
つまり、時間t22~t23が閾値TH1以上である場合に、船外機用制御装置14は、
図9(B)に示すように時刻t23に、右向きの推進力(または右後向きの推進力の左右方向成分)FRを第2推進力FR2から左右方向成分F22Rまで減少させることによって、船外機12、13が右後向きの推進力F22を発生することを許可する。
【0067】
操船者が、船舶1を左向きに移動(並進移動)させたい場合もある。
そのような場合には、
図5(A)に示す例のように、操作部11D(詳細には、ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P5に移動させられて、位置P5に維持される。
移動経路算出部14Aは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1に位置する時刻のレバーの位置と、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P5に位置する時刻のレバーの位置とに基づいて、ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P5を算出する。
経過時間算出部14Bは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P5に移動させられた時刻t31(
図10参照)からの経過時間を算出する。詳細には、経過時間算出部14Bは、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P5に位置し続けている時間を算出する。
推進力算出部14Cは、移動経路算出部14Aによって算出されたジョイスティックのレバーの先端部の移動経路P1→P5と、経過時間算出部14Bによって算出された経過時間(ジョイスティックのレバーの先端部が位置P5に位置し続けている時間)とに基づいて、船外機12、13に発生させる左向きの推進力FLを算出する。詳細には、推進力算出部14Cは、船舶1を左向きに移動させる推進力の大きさを算出する。
【0068】
図10は操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生する左向きの推進力FLと時刻(例えばジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P5に移動させられた時刻t31など)との関係を示す図である。
図10(A)および
図10(B)の縦軸は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生する左向きの推進力FLを示している。
図10(A)および
図10(B)の横軸は、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P5に移動させられた時刻t31などを示している。
【0069】
図10(A)に示す例では、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P5に移動させられた時刻t31から時刻t32までの第1期間中に、推進力算出部14Cは、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる左向きの推進力FLとして、第1推進力FL1を算出する。つまり、時刻t31から時刻t32までの第1期間中に、船外機用制御装置14が、第1推進力FL1を船外機12、13に発生させる。
詳細には、船外機用制御装置14は、時刻t31から時刻t32までの第1期間中に、船体11の前部111が船体11の後部112に遅れることなく左向きに移動開始するように、推進力算出部14Cは、後述する第2推進力FL2より小さい第1推進力FL1を船外機12、13に発生させる。
その結果、
図10(A)に示す例では、時刻t31に、船体11の前部111が船体11の後部112に遅れて移動開始するおそれを抑制することができ、時刻t31から時刻t32までの第1期間中に、船舶1が右旋回してしまうおそれを抑制することができる。
【0070】
図10(A)に示す例では、次いで、時刻t32以降の第2期間中に、推進力算出部14Cは、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる左向きの推進力FLとして、第1推進力FL1より大きい第2推進力FL2を算出する。つまり、時刻t32以降の第2期間中に、船外機用制御装置14が、第1推進力FL1より大きい第2推進力FL2を船外機12、13に発生させる。
その結果、
図10(A)に示す例では、時刻t32以降の第2期間中に、操船者の要求どおりに、船舶1を左向きに迅速に移動させることができる。
【0071】
図10(B)に示す例では、ジョイスティックのレバーの先端部が位置P1から位置P5に移動させられた時刻t31から時刻t32までの第1期間中に、推進力算出部14Cは、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる左向きの推進力FLとして、第1推進力FL1(第1推進力FL1は、値FL1A以上、第2推進力FL2未満である。)を算出する。つまり、時刻t31から時刻t32までの第1期間中に、船外機用制御装置14が、第1推進力FL1を船外機12、13に発生させる。
詳細には、船外機用制御装置14は、時刻t31から時刻t32までの第1期間中に、船体11の前部111が船体11の後部112に遅れることなく左向きに移動開始するように、推進力算出部14Cは、第2推進力FL2より小さい第1推進力FL1を船外機12、13に発生させる。
その結果、
図10(B)に示す例では、時刻t31に、船体11の前部111が船体11の後部112に遅れて移動開始するおそれを抑制することができ、時刻t31から時刻t32までの第1期間中に、船舶1が右旋回してしまうおそれを抑制することができる。
【0072】
図10(B)に示す例では、次いで、時刻t32以降の第2期間中に、推進力算出部14Cは、船外機用制御装置14が船外機12、13に発生させる左向きの推進力FLとして、第1推進力FL1より大きい第2推進力FL2を算出する。つまり、時刻t32以降の第2期間中に、船外機用制御装置14が、第1推進力FL1より大きい第2推進力FL2を船外機12、13に発生させる。
その結果、
図10(B)に示す例では、時刻t32以降の第2期間中に、操船者の要求どおりに、船舶1を左向きに迅速に移動させることができる。
【0073】
操船者が、船舶1を左前向きに移動(並進移動)させたい場合もある。
そのような場合には、
図5(B)に示す例のように、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P6に移動させられる。
船外機用制御装置14は、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P3に移動させられる場合に実行される制御を左右反転させた制御を実行する。
その結果、船舶1が左前向きに移動(並進移動)する。
【0074】
操船者が、船舶1を左向きに移動(並進移動)させたい場合であって、例えば風、潮流などによる後向きの力を船舶1が受ける場合もある。
そのような場合には、
図5(C)に示す例のように、まず、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P5に移動させられる。風、潮流などによる後向きの力によって、船舶1が後向きに流されそうになるため、次いで、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P5から位置P6に移動させられる。
つまり、
図5(C)に示す例では、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P5を経て位置P6に移動させられる。
船外機用制御装置14は、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P2を経て位置P3に移動させられる場合に実行される制御を左右反転させた制御を実行する。
その結果、船舶1は、操船者の要求どおりに、かつ、例えば風、潮流などによる後向きの力に抗して、左向きに移動(並進移動)する。
【0075】
例えば風、潮流などによって前後方向の力を船舶が受けない時に、操船者が、左向きに移動(並進移動)中の船舶1の向きを左向きから左前向きに切り替えることもある。
そのような場合には、
図5(C)に示す例のように、まず、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P5に移動させられる。左向きに移動中の船舶1の向きを左向きから左前向きに切り替えるために、次いで、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P5から位置P6に移動させられる。
つまり、
図5(C)に示す例では、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P5を経て位置P6に移動させられる。
船外機用制御装置14は、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P2を経て位置P3に移動させられる場合に実行される制御を左右反転させた制御を実行する。
その結果、操船者の要求どおりに、船舶1の向きを左向きから左前向きに迅速に切り替えることができる。
【0076】
また、操船者が、船舶1を左後向きに移動(並進移動)させたい場合もある。
そのような場合には、
図5(D)に示す例のように、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P7に移動させられる。
船外機用制御装置14は、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P4に移動させられる場合に実行される制御を左右反転させた制御を実行する。
その結果、船舶1が左後向きに移動(並進移動)する。
【0077】
操船者が、船舶1を左向きに移動(並進移動)させたい場合であって、例えば風、潮流などによる前向きの力を船舶1が受ける場合もある。
そのような場合には、
図5(E)に示す例のように、まず、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P5に移動させられる。風、潮流などによる前向きの力によって、船舶1が前向きに流されそうになるため、次いで、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P5から位置P7に移動させられる。
つまり、
図5(E)に示す例では、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P5を経て位置P7に移動させられる。
船外機用制御装置14は、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P2を経て位置P4に移動させられる場合に実行される制御を左右反転させた制御を実行する。
その結果、船舶1は、操船者の要求どおりに、かつ、例えば風、潮流などによる前向きの力に抗して、左向きに移動(並進移動)する。
【0078】
例えば風、潮流などによって前後方向の力を船舶が受けない時に、操船者が、左向きに移動(並進移動)中の船舶1の向きを左向きから左後向きに切り替えることもある。
そのような場合には、
図5(E)に示す例のように、まず、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が位置P1から位置P5に移動させられる。左向きに移動中の船舶1の向きを左向きから左後向きに切り替えるために、次いで、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P5から位置P7に移動させられる。
つまり、
図5(E)に示す例では、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P5を経て位置P7に移動させられる。
船外機用制御装置14は、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が、位置P1から位置P2を経て位置P4に移動させられる場合に実行される制御を左右反転させた制御を実行する。
その結果、操船者の要求どおりに、船舶1の向きを左向きから左後向きに迅速に切り替えることができる。
【0079】
図11は第1実施形態の船外機用制御装置14によって実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図11に示す処理は、操作部11D(ジョイスティック)が、船外機12、13の操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を作動させるための入力操作を受け付けた場合に開始する。
図11に示す例では、ステップS10において、船外機用制御装置14が、例えばマイクロスイッチなどのセンサによって検出された操作部11Dの位置(ジョイスティックのレバーの位置)を取得する。
次いで、ステップS20では、船外機用制御装置14の移動経路算出部14Aが、ステップS10において取得された操作部11Dの複数の位置(ジョイスティックのレバーの複数の位置)に基づいて、操作部11Dの移動経路(ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路)を算出する。
次いで、ステップS30では、船外機用制御装置14の経過時間算出部14Bは、操作部11D(ジョイスティックのレバーの先端部)が各位置に移動させられた時刻からの経過時間を算出する。
次いで、ステップS40では、船外機用制御装置14の推進力算出部14Cは、ステップS20において算出された操作部11Dの移動経路(ジョイスティックのレバーの先端部の移動経路)と、ステップS30において算出された経過時間とに基づいて、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に発生させる推進力を算出する。
次いで、ステップS50では、船外機用制御装置14は、ステップS20において算出された推進力を船外機12、13の操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生するように、船外機12、13の操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を制御する。
【0080】
<第2実施形態>
以下、本発明の船外機用制御装置、船外機用制御方法およびプログラムの第2実施形態について説明する。
第2実施形態の船外機用制御装置14が適用される船舶1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の船外機用制御装置14が適用される船舶1と同様に構成されている。従って、第2実施形態の船舶1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の船舶1と同様の効果を奏することができる。
【0081】
図12は第2実施形態の船外機用制御装置14が適用される船舶1の一例を示す図である。
上述したように、第1実施形態の船舶1(
図1および
図2に示す例)では、操作部11Dが、レバーを有するジョイスティックによって構成されている。
一方、第2実施形態の船舶1(
図12に示す例)では、操作部11Dが、タッチパネルによって構成されている。操船者は、操舵装置11A(ステアリングホイール)およびリモコン装置11B、11C(リモコンレバー)を操作することによって、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を作動させることができるのみならず、操作部11D(タッチパネル)を操作することによっても、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を作動させることができる。
他の例では、船体11が、操舵装置11A、リモコン装置11Bおよびリモコン装置11Cを備えていなくてもよい。
【0082】
図12に示す例では、船外機用制御装置14が、操作部11Dに対する入力操作に基づいて、船外機12の操舵アクチュエータ12A2および推進ユニット12A1と、船外機13の操舵アクチュエータ13A2および推進ユニット13A1とを制御する。
詳細には、船外機用制御装置14は、操作部11D(タッチパネル)に対する例えばフリック入力操作に基づいて、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1が発生する船舶1の推進力の大きさおよび向きを制御する。
フリック入力操作では、操船者は、例えば、タッチパネルを押圧しつつ、タッチパネルを押圧している指を目的の向きにスライドさせる。
移動経路算出部14Aは、操作部11Dの移動経路を算出する。詳細には、移動経路算出部14Aは、操船者がタッチパネルを押圧しながらスライドさせた指の移動経路を算出する。
経過時間算出部14Bは、操作部11D(タッチパネルを押圧する操船者の指)がある位置に移動させられた時刻からの経過時間を算出する。
推進力算出部14Cは、移動経路算出部14Aによって算出された操作部11Dの移動経路(タッチパネルを押圧しながらスライドさせられた指の移動経路)と、経過時間算出部14Bによって算出された経過時間とに基づいて、船外機12、13に発生させる推進力を算出する。
【0083】
図12に示す例では、操作部11D(タッチパネル)に対してフリック入力操作可能であると共に、回転入力操作可能に、操作部11Dが構成されている。
操船者は、例えば、1本の指をタッチパネルに当接させて中心点として固定させた状態で、他の指を、タッチパネルを押圧しながら周方向にスライドさせることによって、回転入力操作を行う。
操船者が、操作部11D(タッチパネル)に対して時計回りの回転入力操作を行う場合に、船外機用制御装置14は、船体11が右旋回するように、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を制御する。一方、操船者が、操作部11D(タッチパネル)に対して反時計回りの回転入力操作を行う場合に、船外機用制御装置14は、船体11が左旋回するように、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を制御する。
また、操船者が操作部11D(タッチパネル)に対してフリック入力操作を行う場合に、船外機用制御装置14は、船体11が、姿勢を維持したまま、操船者の指がスライドさせられた向きに移動するように、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1を制御する。つまり、操船者が操作部11D(タッチパネル)に対してフリック入力操作を行うことによって、船体11の前部111と、船体11の後部112とが、並進する。
【0084】
操船者が操作部11D(タッチパネル)に対してフリック入力操作を行っていない場合(つまり、操船者の指がタッチパネルに当接していない場合)、操作部11Dは、
図3(A)に示す状態と同様の状態になる。その結果、船外機用制御装置14は、操舵アクチュエータ12A2、13A2および推進ユニット12A1、13A1に船舶1の推進力を発生させない。
【0085】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。上述した各実施形態および各例に記載の構成を組み合わせてもよい。
【0086】
なお、上述した実施形態における船外機用制御装置14が備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0087】
1…船舶、111…前部、112…後部、11…船体、11A…操舵装置、11B…リモコン装置、11C…リモコン装置、11D…操作部、P1…位置、P2…位置、P3…位置、P4…位置、P5…位置、P6…位置、P7…位置、P8…位置、P9…位置、12…船外機、12A…船外機本体、12A1…推進ユニット、12A2…操舵アクチュエータ、12AX…操舵軸、12B…ブラケット、13…船外機、13A…船外機本体、13A1…推進ユニット、13A2…操舵アクチュエータ、13AX…操舵軸、13B…ブラケット、14…船外機用制御装置、14A…移動経路算出部、14B…経過時間算出部、14C…推進力算出部