(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】混合用容器、混合用容器キット、混合用容器又は混合用容器キットの使用方法、及び混合用容器の補助器具
(51)【国際特許分類】
B65D 81/32 20060101AFI20221021BHJP
【FI】
B65D81/32 J
(21)【出願番号】P 2018033370
(22)【出願日】2018-02-27
【審査請求日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2017048869
(32)【優先日】2017-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(73)【特許権者】
【識別番号】503056964
【氏名又は名称】トラストメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】北田 直也
(72)【発明者】
【氏名】山本 健蔵
(72)【発明者】
【氏名】柿本 正広
(72)【発明者】
【氏名】溝口 義行
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄太
(72)【発明者】
【氏名】村主 弘和
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/025501(WO,A2)
【文献】英国特許出願公開第02530800(GB,A)
【文献】実開昭58-041376(JP,U)
【文献】中国実用新案第203544553(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の材料を混合するための混合用容器
の補助器具であって、
前記混合用容器は、
前記材料を収容する収容部を備え、前記収容部には、前記収容部を形成する内壁面の一部が収容空間側に隆起した少なくとも一つの隔壁が形成されており、前記隔壁により前記材料を各別に収容可能な複数の収容室が前記収容部内に形成されている容器本体と、
前記収容部の周縁とともに前記複数の収容室の間を仕切る前記隔壁の上縁をシールして、前記複数の収容室を各別に密閉する状態で前記容器本体に取り付けられる蓋部材と、
前記隔壁に連結される連結部と、ユーザによる操作が行われる操作部と、を有するハンドル部と、を備え、
前記隔壁のうち、前記隔壁の上縁部分の肉厚が、前記上縁部分より外側の壁面部分の肉厚に比べ、厚く形成されており、
前記収容部の周縁部分の肉厚が、前記隔壁の外側の壁面部分の肉厚に比べ、厚く形成されており、
前記操作部が前記容器本体に対して前記蓋部材から前記容器本体に向かう方向に相対移動するに伴い、前記連結部とともに、
前記隔壁は、前記収容部の周縁が前記蓋部材にシールされた状態で、前記蓋部材から前記容器本体に向かう方向に移動することによって、前記隔壁の移動方向に窪む凹部へと変形可能に構成され、
前記隔壁が前記凹部へと変形したとき、当該隔壁により形成される前記複数の収容室が一の収容室へと変形した状態とな
る混合用容器であり、
前記補助器具は、
ベースと、
前記ベースに設けられ、且つ、前記混合用容器の前記ハンドル部の一端と係合するフック部と、
前記ベースに設けられ、且つ、前記フック部よりも前記ベースの厚み方向に離れた位置で前記混合用容器の前記容器本体の一部を支持する凸部と、
を備え、
前記凸部には、前記容器本体の前記隔壁が移動可能な溝が設けられており、
前記凸部は、前記ハンドル部の前記一端を前記フック部に係合した状態で前記容器本体の前記一部を支持することによって、前記ハンドル部の他端を前記ベースから離して保持可能であり、
前記凸部によって前記容器本体の前記一部を支持した状態で、前記ハンドル部の前記他端を前記ベースに向かう方向に移動させることによって、前記溝内において、前記隔壁が、前記容器本体の前記一部に対して、前記蓋部材から前記容器本体に向かう方向に相対移動する、
補助器具。
【請求項2】
前記混合用容器において、
前記隔壁の上縁と前記収容部の周縁とは連結されておらず、
前記隔壁の上縁より内側の空間に少なくとも一つの前記収容室が形成され、且つ、前記隔壁の上縁と前記収容部の周縁との間の空間に少なくとも一つの前記収容室が形成されている請求項1に記載の
補助器具。
【請求項3】
前記混合用容器において、
前記隔壁は、前記収容部を形成する壁面の一部がドーム状に隆起したものであり、
前記隔壁には、前記複数の収容室の少なくとも一つとして、前記隔壁の一部が凹状に窪んだ凹溝部が少なくとも一つ形成されており、
前記蓋部材は、前記隔壁の上縁として、前記凹溝部の周縁をシールする請求項2に記載の
補助器具。
【請求項4】
前記混合用容器において、
前記隔壁及び前記凹溝部は、それぞれ前記収容部の中央部分に同心状に形成されている請求項3に記載の
補助器具。
【請求項5】
前記混合用容器において、
前記隔壁の上縁と前記収容部の周縁との間の空間に形成される前記収容室の容積が、前記隔壁の上縁より内側の空間に形成される前記収容室の容積に比べ、大きくなるように形成されている請求項2~4のいずれか一項に記載の
補助器具。
【請求項6】
前記混合用容器において、
前記操作部は、前記連結部から互いに反対側に延びる一対の部材で構成されている請求項
1~5のいずれか一項に記載の
補助器具。
【請求項7】
前記混合用容器において、
前記連結部は、前記隔壁が前記凹部へと変形していないときは外部に露出されず、前記隔壁が前記凹部へと変形したときに外部に露出されることになる隠蔽部分を備え、
前記隠蔽部分が、前記連結部の他の部分と識別可能な外観を備えている請求項
1~6のいずれか一項に記載の
補助器具。
【請求項8】
前記混合用容器において、
前記ハンドル部は、前記連結部に連結された前記容器本体の少なくとも一部を受け入れる受入部を備えており、
前記受入部は、前記容器本体を受け入れたときに、前記受入部の周縁と前記容器本体とが面一となるように構成されている請求項
1~7のいずれか一項に記載の
補助器具。
【請求項9】
前記混合用容器において、
前記蓋部材がタブを備えており、
前記タブは、前記ハンドル部に沿う状態で設けられている請求項
8に記載の
補助器具。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の混合用容器
の補助器具の使用方法であって、
前記収容部の周縁が前記蓋部材にシールされた状態で、
前記補助器具を用いて、前記混合用容器の前記容器本体の前記隔壁を前記蓋部材から前記容器本体に向かう方向に移動させることによって、前記隔壁を前記隔壁の移動方向に窪む前記凹部へと変形させるステップ、
を含む、使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の材料を混合するための混合用容器、当該混合用容器を備える混合用容器キット、当該混合用容器又は当該混合用容器キットの使用方法、及び混合用容器の補助器具に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の材料を混合するための混合用容器として、例えば、特開2002-104417号公報(特許文献1)や特開2001-136943号公報(特許文献2)には、仕切り部により2つの収容室が形成された状態から、仕切り部を変形させることで2つの収容室が1つの収容室に変形した状態とに切替可能な容器が開示されている。これらの容器によれば、2つの収容室が形成された状態で各収容室に材料を収容し、その後に蓋をすることで、2つの材料が各別に保存される。そして、使用時には蓋を剥がし、その後に仕切り部を変形させることで収容室が1つになって、2つの材料を混合させることができる。
【0003】
また、実開平5-22374号公報(特許文献3)には、2つの収容室を有する容器の各収容室に各別に材料を収容した状態で蓋をし、一方の収容室に押圧を加えることで一方の収容室と他方の収容室との間のシールのみが剥がれるようにして、一方の収容室中の材料を他方の収容室に流入させることで、蓋がなされた状態で各材料を混合できるようにした容器が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、特許文献1,2に記載の容器は蓋を剥がしてからでなくては仕切り部を変形させることができず、また、仕切り部の変形のためには多少の衝撃が容器に加えられることになる。そのため、仕切り部の変形の際に材料が外側にこぼれる虞があった。また、材料がこぼれるのを防ぐために慎重に操作を行わねばならず、操作が困難という問題もあった。
【0005】
また、特許文献3の容器では、混合時に材料が外側へこぼれることを防ぐことはできるが、収容室に加えた押圧で剥がれる程度のシールとしなければならず、そうすると流通過程等に何らかの衝撃でシールが剥がれる虞がある。また、一方の収容室中の材料を他方の収容室に流入させるときに、一方の収容室中に材料が残存する場合もあり、また、他方の収容室への流出に適した材料を用いなければならない等の制約もあり、改善が必要であった。
【0006】
そこで、円滑且つ安全に各材料を混合可能な状態にできる混合用容器、混合用容器キット、混合用容器又は混合用容器キットの使用方法、及び、混合用容器の補助器具の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る混合用容器は、
複数の材料を混合するための混合用容器であって、
前記材料を収容する収容部を備え、前記収容部には、前記収容部を形成する内壁面の一部が収容空間側に隆起した少なくとも一つの隔壁が形成されており、前記隔壁により前記材料を各別に収容可能な複数の収容室が前記収容部内に形成されている容器本体と、
前記収容部の周縁とともに前記複数の収容室の間を仕切る前記隔壁の上縁をシールして、前記複数の収容室を各別に密閉する状態で前記容器本体に取り付けられる蓋部材と、を備え、
前記隔壁は、前記収容部の周縁が前記蓋部材にシールされた状態で、前記蓋部材から前記容器本体に向かう方向に移動することによって前記隔壁の移動方向に窪む凹部へと変形可能に構成され、
前記隔壁が前記凹部へと変形したとき、当該隔壁により形成される前記複数の収容室が一の収容室へと変形した状態となる。
【0008】
この構成によれば、複数の収容室を形成する隔壁を蓋部材から容器本体に向かう方向に移動させることによって、凹部へと変形させることができる。これにより、複数の収容室を一の収容室へと変形させて、各収容室に収容した各材料を一の収容室で混合させることが可能になる。その結果、一方の収容室中に材料が残存することを効果的に抑制できる。そして、この構成では、収容部の周縁が前記蓋部材にシールされた状態を保って、隔壁を凹部へと変形させることができるようになっている。つまり、材料が外側へこぼれることを確実に防ぎながら円滑且つ安全に各材料を混合可能な状態にできる。
【0009】
以下、本発明に係る混合用容器の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0010】
1つの態様として、前記隔壁の上縁と前記収容部の周縁とは連結されておらず、前記隔壁の上縁より内側の空間に少なくとも一つの前記収容室が形成され、且つ、前記隔壁の上縁と前記収容部の周縁との間の空間に少なくとも一つの前記収容室が形成されていると好適である。
【0011】
この構成によれば、隔壁の上縁の内側と外側とにそれぞれ収容室を好適に形成することができる。
【0012】
1つの態様として、前記隔壁は、前記収容部を形成する壁面の一部がドーム状に隆起したものであり、前記隔壁には、前記複数の収容室の少なくとも一つとして、前記隔壁の一部が凹状に窪んだ凹溝部が少なくとも一つ形成されており、前記蓋部材は、前記隔壁上縁として、前記凹溝部の周縁をシールすると好適である。
【0013】
この構成によれば、隔壁が蓋部材から容器本体に向かう方向へと移動させ易いドーム状であるので、ドーム状の形状を利用して凹溝部により複数の収容室を形成しながら、隔壁を凹部へと円滑に変形させることができる。
【0014】
1つの態様として、前記隔壁及び前記凹溝部は、それぞれ前記収容部の中央部分に同心状に形成されていると好適である。
【0015】
この構成によれば、隔壁が凹部へと変形した後、凹溝部が一の収容室の中心且つ最深部に位置することになる。これにより、凹部への変形後、凹溝部に各材料が集まることになり、各材料を無駄なく且つ効率的に混合させることが可能になる。
【0016】
1つの態様として、前記隔壁の上縁と前記収容部の周縁との間の空間に形成される前記収容室の容積が、前記隔壁の上縁より内側の空間に形成される前記収容室の容積に比べ、大きくなるように形成されていると好適である。
【0017】
収容室の容積をこのようなバランスにすることによって、隔壁が凹部へと変形したときの容積変化を抑えやすく、変形後に生じる陰圧を効果的に抑制できる。
【0018】
1つの態様として、前記隔壁のうち、前記隔壁の上縁部分の肉厚が、前記上縁部分より外側の壁面部分の肉厚に比べ、厚く形成されていると好適である。
【0019】
このようなバランスの肉厚にすることによって、隔壁が凹部へと変形した状態を保持させやすい。
【0020】
1つの態様として、前記収容部の周縁部分の肉厚が、前記隔壁の外側の壁面部分の肉厚に比べ、厚く形成されていると好適である。
【0021】
この構成によれば、前記収容部の周縁部分の肉厚の強度を高めることができるので、隔壁の変形に伴い収容部の外周部分も変形することを効果的に抑制できる。
【0022】
1つの態様として、前記蓋部材は、伸長可能なシート材から形成され、前記蓋部材は、前記容器本体に向かう方向に押圧されたとき、前記蓋部材の伸長に伴い前記隔壁を前記蓋部材から前記容器本体に向かう方向に押圧可能であり、且つ、前記蓋部材の押圧に伴い、前記隔壁が前記蓋部材から前記容器本体に向かう前記方向へと移動するように構成されていると好適である。
【0023】
この構成によれば、蓋部材を伸長可能なシート材としてあるので、蓋部材ごと隔壁を押圧することができ、収容部の周縁が蓋部材にシールされた状態で、隔壁を凹部へと変形させることができる。
【0024】
1つの態様として、前記隔壁が前記凹部へと変形するに伴い前記蓋部材が前記隔壁上縁から剥がれる力で、前記隔壁上縁が前記蓋部材にシールされていると好適である。
【0025】
蓋部材のシールする力を本構成のようにすることで、隔壁を凹部へと変形させるに伴い蓋部材が隔壁上縁から剥がれるので、収容部の周縁が蓋部材にシールされた状態で確度高く一の収容室を形成させることができる。
【0026】
1つの態様として、前記蓋部材は、少なくとも塑性変形により伸長可能であると好適である。
【0027】
蓋部材が弾性変形のみを起こす場合、蓋部材を押圧しても蓋部材が元の位置に戻ろうとするため、隔壁を凹部へと変形させたとしても蓋部材が元の位置に戻るに伴い凹部が再び隔壁へと戻る虞がある。これに対し、この構成では、蓋部材は、少なくとも塑性変形により伸長するので、蓋部材が元の位置に戻ることを抑制又は防ぐことができ、凹部が再び隔壁へと戻ることを効果的に抑制できる。
【0028】
1つの態様として、前記容器本体に取り付けられた前記蓋部材の塑性変形による最大伸長量は、前記隔壁上縁をシールする部分の塑性変形後の位置が、前記隔壁が前記凹部へと変形した後の前記隔壁上縁に対応する部分の位置よりも上方となる量であると好適である。
【0029】
この構成によれば、蓋部材が塑性変形したとしても、蓋部材の位置が、隔壁が凹部へと変形した後の隔壁上縁に対応する部分(即ち、蓋部材がシールされている部分)の位置よりも上方であるので、隔壁が凹部へと変形した後も隔壁上縁に対応する部分が蓋部材にシールされることを効果的に抑制できる。
【0030】
1つの態様として、前記隔壁に連結される連結部と、ユーザによる操作が行われる操作部と、を有するハンドル部を備え、前記操作部が前記容器本体に対して前記蓋部材から前記容器本体に向かう方向に相対移動するに伴い、前記連結部とともに、前記隔壁が前記蓋部材から前記容器本体に向かう前記方向へと移動するように構成されていると好適である。
【0031】
この構成によれば、操作部の操作により、連結部を介して隔壁に直接作用して、容器本体とは独立して隔壁のみを蓋部材から容器本体に向かう方向へと移動させることができるので、収容部の周縁が蓋部材にシールされた状態で、隔壁を凹部へと変形させることができる。
【0032】
1つの態様として、前記操作部は、前記連結部から互いに反対側に延びる一対の部材で構成されていると好適である。
【0033】
この構成によれば、連結部から互いに反対側に延びる一対の操作部により、混合用容器を床面等に安定的に設置でき、また、容器本体の両側から作用力を加えることができて、安定的に操作を行える。
【0034】
1つの態様として、前記連結部は、前記隔壁が前記凹部へと変形していないときは外部に露出されず、前記隔壁が前記凹部へと変形したときに外部に露出されることになる隠蔽部分を備え、前記隠蔽部分が、前記連結部の他の部分と識別可能な外観を備えていると好適である。
【0035】
収容部の周縁が蓋部材にシールされた状態で隔壁を凹部へと変形させる場合、内部の様子を目視することはできないので、隔壁の移動量が不十分で、凹部への変形が不完全であることもあり得るが、この構成によれば、隠蔽部分が外部に露出したときに、隔壁が凹部へと変形したことを確認することができるので、隔壁の変形が不完全である場合を効果的に抑制できる。
【0036】
1つの態様として、前記ハンドル部は、前記連結部に連結された前記容器本体の少なくとも一部を受け入れる受入部を備えており、前記受入部は、前記容器本体を受け入れたときに、前記受入部の周縁と前記容器本体とが面一となるように構成されていると好適である。
【0037】
この構成によれば、受入部により容器本体が受け入れられることにより、容器本体が受入部に支持されて、容器本体がハンドル部に対して傾くなどの容器本体の相対移動を抑制することができ、不用意に、隔壁の上縁のシールが剥がれることを抑制できる。
【0038】
1つの態様として、前記蓋部材がタブを備えており、前記タブは、前記ハンドル部に沿う状態で設けられていると好適である。
【0039】
この構成では、タブが作用部に沿う状態にあるので通常時には邪魔にならず、隔壁を凹部へと変形させたときには、操作部の相対移動に伴い、タブが作用部から離れた状態となって、タブをつかみやすい状態となる。このように、この構成によれば、タブを必要時にのみ利用しやすい状態に置くことができる。
【0040】
本発明に係る混合用容器キットは、
本発明に係る混合用容器と、
前記混合用容器の前記収容部を受け入れる中空の受入部と、前記混合用容器の周縁を設置する設置部と、を有する設置部材と、を備える。
【0041】
混合用容器単体では、混合用容器の周縁を支持しながら蓋部材ごと隔壁を押圧する操作が必要となり、基本的には両手での作業が必要になる。これに対し、この構成によれば、設置部により混合用容器の周縁を支持する作業が不要になり、中空の受入部に向かって蓋部材ごと隔壁を押圧すれば足りることになる。そのため片手での作業で足りることになり、操作が容易になる。
【0042】
以下、本発明に係る混合用容器キットの好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0043】
1つの態様として、前記隔壁が前記凹部へと変形したときに、前記凹部をその位置に保持する保持機構を備えると好適である。
【0044】
この構成によれば、隔壁が凹部へと変形した状態を維持できる。
【0045】
1つの態様として、前記保持機構として、前記収容部における、前記隔壁が前記凹部へと変形したときの前記凹部となる部分の収容空間外側に被係合部が形成され、且つ、前記設置部材における前記受入部の下方には、前記隔壁が前記凹部へと変形したときに前記被係合部と係合可能な係合部が形成されていると好適である。
【0046】
この構成によれば、被係合部と係合部との係合により隔壁が凹部へと変形した状態を確度高く維持できる。また、係合の際に生じ得る音により、凹部が保持されているかを判断することができる。
【0047】
本発明に係る混合用容器、又は、混合用容器キットの使用方法は、
前記収容部の周縁が前記蓋部材にシールされた状態で、前記混合用容器の前記容器本体の前記隔壁を前記蓋部材から前記容器本体に向かう方向に移動させることによって、前記隔壁を前記隔壁の移動方向に窪む前記凹部へと変形させるステップ、
を含む。
【0048】
この構成によれば、収容部の周縁が蓋部材にシールされた状態で、隔壁を凹部へと変形させるので、材料が外側へこぼれることを確実に防ぎながら円滑且つ安全に各材料を混合可能な状態にできる。
【0049】
本発明に係る補助器具は、
前記混合用容器の補助器具であって、
ベースと、
前記ベースに設けられ、且つ、前記混合用容器の前記ハンドル部の一端と係合するフック部と、
前記ベースに設けられ、且つ、前記フック部よりも前記ベースの厚み方向に離れた位置で前記混合用容器の前記容器本体の一部を支持する凸部と、
を備え、
前記凸部には、前記容器本体の前記隔壁が移動可能な溝が設けられており、
前記凸部は、前記ハンドル部の前記一端を前記フック部に係合した状態で前記容器本体の前記一部を支持することによって、前記ハンドル部の他端を前記ベースから離して保持可能であり、
前記凸部によって前記容器本体の前記一部を支持した状態で、前記ハンドル部の前記他端を前記ベースに向かう方向に移動させることによって、前記溝内において、前記隔壁が、前記容器本体の前記一部に対して、前記蓋部材から前記容器本体に向かう方向に相対移動する。
【0050】
この構成によれば、混合用容器の容器本体の一部を凸部によって支持して、溝内において隔壁を凸部で支持される容器本体の一部に対して、蓋部材から容器本体に向かう方向に相対移動させることができる。これにより、隔壁を容易に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】第一の実施形態に係る混合用容器キットの斜視図
【
図2】第一の実施形態に係る混合用容器キットの分解図
【
図3B】第一の実施形態に係る混合用容器の正面断面図
【
図4】第一の実施形態に係る混合用容器の隔壁を凹部に変形させた状態を示す図
【
図5B】第一の実施形態に係る設置部材の正面断面図
【
図6】第一の実施形態に係る混合用容器キットにより複数の材料を各別に収容している状態を示す図
【
図7】
図6に示す混合用容器キットにおいて、蓋部材ごと隔壁を押圧した状態を示す図
【
図8】
図7に示す混合用容器キットにおいて、蓋部材ごと隔壁を押圧した後の状態を示す図
【
図9】
図8に示す混合用容器キットにおいて、蓋部材を剥がした後の状態を示す図
【
図12A】第二の実施形態に係るハンドル部の平面図
【
図12B】第二の実施形態に係るハンドル部の正面図
【
図13A】第二の実施形態に係る混合用容器の平面図
【
図13B】第二の実施形態に係る混合用容器の正面図
【
図13C】第二の実施形態に係る混合用容器の正面断面図
【
図14A】第二の実施形態に係る隔壁を混合用容器の隔壁を凹部に変形させた状態を示す正面図
【
図14B】第二の実施形態に係る隔壁を混合用容器の隔壁を凹部に変形させた状態を示す正面断面図
【
図15】第二の実施形態に係る混合用容器により複数の材料を各別に収容している状態を示す図
【
図16】
図15に示す混合用容器において、ハンドル部を容器本体に対して反対方向に相対移動させた状態を示す図
【
図17】
図16に示す混合用容器において、蓋部材を剥がした後の状態を示す図
【
図20】第三の実施形態に係る補助器具の使用方法を示す図
【
図21】第三の実施形態に係る補助器具の使用方法を示す図
【
図22】第三の実施形態に係る補助器具の使用方法を示す図
【
図23】第三の実施形態に係る補助器具の使用方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0052】
〔第一の実施形態〕
本発明に係る混合用容器、混合用容器キット、及び、混合用容器又は混合用容器キットの使用方法の第一の実施形態について、
図1~9を参照して説明する。
【0053】
図1,2は、第一の実施形態に係る混合用容器キット1を示す。混合用容器キット1は、複数の材料を混合するための混合用容器2と、混合用容器2を設置するための設置部材3と、を備える。そして、混合用容器2は、蓋部材4と、材料を収容する収容部51を備える容器本体5と、を備える。具体的には、容器本体5は、材料を各別に収容可能な複数(本実施形態では2つ)の収容室52,53が収容部51内に形成されており、蓋部材4は、収容部51の周縁51aとともに複数の収容室52,53の間を仕切る部分(後述する隔壁54の上縁54a)をシールして、複数の収容室52,53を各別に密閉する状態で容器本体5に取り付けられる。混合用容器2はこのような構造であるので、各収容室52,53にそれぞれ材料を収容させて蓋部材4で蓋をすることで、混合用容器2により複数の材料を各別に収容することができる。
【0054】
容器本体5についてより詳しく説明すると、
図3A,3B,3Cに示すように、収容部51には、収容部51を形成する壁面の一部が収容空間側に隆起した一つの隔壁54が形成されており、隔壁54により材料を各別に収容可能な複数の収容室52,53が収容部51内に形成されている。言い換えれば、隔壁54により各収容室52,53の間が仕切られている。具体的には、本実施形態では、隔壁上縁54aと収容部周縁51aとは連結されておらず、隔壁上縁54aより内側(収容部51の中心側)の空間に少なくとも一つの収容室が形成され、且つ、隔壁上縁54aと収容部周縁51aとの間の空間に少なくとも一つの収容室が形成されるようになっている。より詳しくは、隔壁54は、収容部51を形成する壁面の一部が、蓋部材4に向かってドーム状に隆起したものである。隔壁54には、収容室52として、隔壁54の一部が凹状に窪んだ凹溝部が一つ形成されている。そのため、蓋部材4は、隔壁上縁54aとしての凹溝部の周縁をシールするようになっている。そして、隔壁54及び収容室52(凹溝部)は、それぞれ収容部51の中央部分に同心状に形成されている。これにより、収容室53は円環状の収容室となっている。
【0055】
本実施形態では、隔壁54は、収容部51を形成する壁面の一部が蓋部材4に向かってドーム状に隆起したものである例について説明したが、これに限定されない。隔壁54は、収容部51を形成する壁面の一部が蓋部材4に向かって凸状に隆起した形状であってもよい。これにより、隔壁54と蓋部材4とが接触する隔壁上縁54aをフラットにすることができる。その結果、蓋部材4と隔壁上縁54aとの接触面積を増やし、シール性を向上させることができる。
【0056】
また、収容部51における、収容室52(後述する隔壁54が凹部57へと変形したときの凹部57となる部分の一例)の収容空間外側に被係合部55が形成されている。より具体的には被係合部55は、鉛直方向下向きに延びる円柱状で形成されており、外周面に後述の設置部材3における係合部33と係合させるための係合凸部55aが設けられている。また、被係合部55は先端が円形にくり抜かれており、これにより先端が変形し易くなり係合部33に先端が突入させ易くなっている。その他、容器本体5には、設置部材3に差し込むための円環状の差込部56が容器本体5の周縁59下部に設けられている。そして、差込部56の外周面には係合凸部56aが設けられている。係合凸部56aが設置部材3の係合凹部34と係合することで、混合用容器2と設置部材3とがしっかりと連結される。
【0057】
そして、本実施形態における容器本体5では隔壁54が変形可能になっている。具体的には、
図4に示すように、隔壁54は、内壁面の残りの部分に対して、隆起した方向と反対方向(収容空間外側の方向)に相対移動可能で、且つ、反対方向に相対移動したときに、内壁面の残りの部分から反対方向側に窪む凹部57へと変形可能に構成されている。なお、内壁面の残りの部分とは、収容部51の周縁51aを含む部分である。
【0058】
つまり、隔壁54は、収容部51の周縁51aが蓋部材4にシールされた状態で、蓋部材4から容器本体5に向かう方向D1に移動することによって、隔壁54の移動方向(蓋部材4から容器本体5に向かう方向D1)に窪む凹部57へと変形可能に構成されている。
【0059】
特に、本実施形態では、隔壁54は、隆起した方向と反対方向、即ち蓋部材4から容器本体5に向かう方向D1に押圧されたときに凹部57へと変形可能になっている。そして、隔壁54が凹部57へと変形したとき、当該隔壁54により形成される複数の収容室52,53が一の統合収容室58へと変形した状態となる。これにより、各収容室52,53に収容した各材料を統合収容室58で混合させることが可能になる。なお、本実施形態の凹部57に対して収容空間内側方向(容器本体5から蓋部材4に向かう方向)の力を加えることにより、凹部57を再度隔壁54へと変形させることが可能となっている。
【0060】
このとき、隔壁54が隆起方向とは反対方向(方向D1)へと押圧し易いドーム状であるので、ドーム状の形状を利用して凹溝部により収容室52を形成しながら、隔壁54を凹部57へと円滑に変形させることができる。また、隔壁54及び凹溝部(収容室52)がそれぞれ収容部51の中央部分に同心状に形成されているので、隔壁54が凹部57へと変形した後、凹溝部が統合収容室58の中心且つ最深部に位置することになる。これにより、凹部57への変形後、凹溝部に各材料が集まることになり、各材料を無駄なく且つ効率的に混合させることが可能になる。
【0061】
次に、設置部材3について説明すると、
図5A,5B,5Cに示すように、設置部材3は、混合用容器2の収容部51を受け入れる中空の受入部31と、容器本体5の周縁59を設置する設置部32と、を有する。受入部31は少なくとも隔壁54が凹部57へと変形して統合収容室58が形成されている状態の収容部51を受け入れることができる容積を備えている。これにより、受入部31内で収容部51の変形を行うことができる。また、設置部32は容器本体5の周縁59を支持できるのであればどのような形状でもよいが、本実施形態では容器本体5の周縁59に対応する形状であり、円環状になっている。
【0062】
また、設置部材3における受入部31の下方には、隔壁54が凹部57へと変形したときに被係合部55と係合可能な係合部33が形成されている。具体的には、係合部33は、被係合部55と対応する形状の挿通孔33aが形成されている。挿通孔33aに被係合部55を挿通させて、係合部33(より詳しくは挿通孔33aの周縁)と係合凸部55aとを係合させることで、凹部57を変形した後の位置に保持するようになっている。つまり、容器本体5の被係合部55と設置部材3の係合部33とが、隔壁54が凹部57へと変形したときに、凹部57をその位置に保持する保持機構として機能する。このように、被係合部55と係合部33とからなる保持機構により、隔壁54が凹部57へと変形した状態を維持できる。特に、被係合部55と係合部33との係合により隔壁54が凹部57へと変形した状態を確度高く維持できる。また、係合の際に生じ得る音により、凹部57が保持機構により保持されているかを判断することができる。
【0063】
その他、設置部材3における受入部31の内周面には、差込部56における係合凸部56aと係合させるための係合凹部34が設けられている。混合用容器2の差込部56を設置部材3の収容部51に差し込むに伴い、差込部56における係合凸部56aと係合凹部34とが係合して、混合用容器2と設置部材3とがしっかりと連結される。
【0064】
次に本実施形態における蓋部材4について説明する。本実施形態では、蓋部材4は、
図7,8に示すように、伸長可能なシート材から形成されている。そして、蓋部材4は、ユーザからの作用が加えられる作用部として機能し、ユーザからの作用に応じて、収容部51の周縁51aが蓋部材4にシールされた状態を保って、隔壁54を、内壁面の残りの部分に対して、隆起方向と反対方向へと相対移動させることができるようになっている。具体的には、隔壁54が隆起している方向と反対方向(蓋部材4からみれば、容器本体5の内部へ向かう方向)に蓋部材4が押圧されるとき、蓋部材4の伸長に伴い隔壁54も反対方向に押圧可能になっている。そして、蓋部材4の押圧に伴い、少なくとも収容部51の周縁51aが蓋部材4にシールされた状態で、隔壁54を凹部57へと変形可能になっている。
【0065】
つまり、蓋部材4が、容器本体5に向かう方向に押圧されたとき、蓋部材4の伸長に伴い隔壁54を蓋部材4から容器本体5に向かう方向D1に押圧する。これにより、収容部51の周縁51aが蓋部材4にシールされた状態で、隔壁54が、蓋部材4から容器本体5に向かう方向D1へと移動する。その結果、隔壁54が隔壁54の移動方向、即ち、蓋部材4から容器本体5に向かう方向D1に窪む凹部57へと変形する。
【0066】
そして、隔壁54が凹部57へと変形するに伴い蓋部材4が隔壁上縁54aから剥がれる力で、収容部51の周縁51aが蓋部材4にシールされるようにしてある。これにより、隔壁54を凹部57へと変形させるに伴い蓋部材4が隔壁上縁54aから剥がれるので、収容部51の周縁51aが蓋部材4にシールされた状態で確度高く統合収容室58を形成させることができる。また、このようなシールの力とするのに、隔壁上縁54aだけシール力を弱めてもよいし、収容部51の周縁51aも含めて同じシール力としてもよい。その他、蓋部材の接着力を調整するのみならず、蓋部材4にシールされる隔壁上縁54aの形状に丸みを持たせたり、また、接着面積を小さくする等、隔壁上縁54aの構成を調整することで、蓋部材4が隔壁上縁54aをシールする力を調整するようにしてもよい。このように、本実施形態に係るシールの力を実現する方法は特に限定されず、目的に応じて適宜変更可能である。
【0067】
また、蓋部材4は、少なくとも塑性変形により伸長可能にしてある。つまり、蓋部材4は、塑性変形のみを起こすか、塑性変形だけでなく弾性変形もある程度起こすものである(本実施形態の蓋部材4は後者である)。このため、蓋部材4を伸長させると、伸長させた状態が完全に又はある程度の量だけ残るようにしてある。蓋部材4が弾性変形のみを起こす場合、蓋部材4を押圧しても蓋部材4が元の位置に戻ろうとするため、隔壁54を凹部57へと変形させたとしても蓋部材4が元の位置に戻るに伴い凹部57が再び隔壁54へと戻る虞がある。これに対し、本実施形態では、蓋部材4が少なくとも塑性変形により伸長するので、蓋部材4が元の位置に戻ることを抑制又は防ぐことができ、凹部57が再び隔壁54へと戻ることが抑制される。
【0068】
さらに、蓋部材4の塑性変形による最大伸長量は、隔壁上縁54aをシールする部分の塑性変形後の位置が、隔壁54が凹部57へと変形した後の隔壁上縁54aに対応する部分の位置よりも上方となる量としてある。これにより、蓋部材4が塑性変形したとしても、蓋部材4の位置が、隔壁54が凹部57へと変形した後の隔壁上縁54aに対応する部分(即ち、蓋部材4がシールされている部分)の位置よりも上方となるので、隔壁54が凹部57へと変形した後も隔壁上縁54aに対応する部分が蓋部材4にシールされたままとなることを効果的に抑制できる。
【0069】
上記のような蓋部材4を実現するため、本実施形態では、樹脂製シートにアルミニウムの膜を形成させたアルミ蒸着フィルムを蓋部材4として用いている。アルミ蒸着フィルムは水蒸気やガスに対する高いバリア性を有し、保香性及び遮光性を有しているので、材料の保管に適している。また、熱を加えることにより、容器本体5に対し、相当程度の接着力により接着させることもできる。本実施形態では、アルミ蒸着による接着力と蓋部材4を接着させる隔壁上縁54aの面積との両者が相俟って、隔壁上縁54aをシールする力が、隔壁54が凹部57へと変形するに伴い蓋部材4が隔壁上縁54aから剥がれる力となっている。また、アルミ蒸着フィルムに用いる樹脂製シートとしては、種々の一層又は複数層の樹脂製シートを用いることができるが、例えばCPP(キャストポリプロピレン)、VMCP(アルミ蒸着のCPPフィルム)及び、EP(イージーピールフィルム)の3層からなる樹脂製シートが挙げられる。樹脂製シートは一般に塑性変形を起こすものであり、また、厚みや樹脂素材を変えることで強度も適宜変更可能である。特に、本実施形態の蓋部材4は、塑性変形し過ぎたり、また、容易に塑性変形してしまうのでは、容器本体5の変形の際に隔壁上縁54aに対応する部分のシールがはがれにくくなるので、ある程度の強度(引張強さやヤング率等)を持ったものが望ましい。その強度は取り付ける容器の大きさや変形量等によって適宜設定することが望ましいが、例えば、熱溶着により容器本体5に接着させる場合、温度:120℃、時間:2.0秒、圧力:0.4mpsといった条件で熱溶着を行えば所望の強度とでき、幅広い容器に対して適用できる蓋部材4とできる。なお、これらはあくまでも例示であり、蓋部材4としては、少なくとも伸長可能なシート材から形成されるのであれば、どのようなものを用いてもよく、目的に応じて適宜変更可能である。
【0070】
また、容器本体5に用いる素材としては、成形性が高く、所定の形状を保持できる程度の強度(硬度)を有しているものを用いることが好ましく、例えば樹脂素材を用いた容器が好ましく、一例としてLDPE(低密度ポリエチレン)が挙げられる。軟らかく、容易に形状が変化してしまう場合には、隔壁上縁54aのみを蓋部材4から剥がし難くなるし、また、出荷時等の衝撃で形状が変化したときに、変形に伴って蓋部材4と容器本体5とのシールが剥がれる虞もあるためである。また、ある程度の弾性を備えたものであると、蓋部材4とともに隔壁54を押圧する際に、容器本体5全体が弓状にしなって、蓋部材4をそこまで伸長させなくても隔壁54を押し込んで凹部57へと変形させることが可能になるので、操作が容易になる。
【0071】
本実施形態に係る混合用容器2及び混合用容器キット1は上記のような構成であるが、最後に、本実施形態に係る混合用容器2及び混合用容器キット1の使用状態について説明する。まず、
図6に示すように、本実施形態に係る混合用容器2によれば、隔壁54により複数の収容室52,53が形成された状態で各収容室52,53に2種の材料X,Yを収容し、その後に蓋部材4を容器本体5に取り付けることで、2種の材料X,Yが各別に保存された状態となる。このように2種の材料X,Yが各別に保存された状態で混合用容器2をユーザは購入等し、2種の材料X,Yを混合させるときには、設置部材3に混合用容器2を設置して、
図6に示す状態とする。
【0072】
そして、ユーザは、
図7に示すように、少なくとも収容部51の周縁51aが蓋部材4にシールされた状態で、蓋部材4とともに隔壁54を隆起した方向と反対方向(方向D1)に押圧し、隔壁54を凹部57へと変形させる。このとき、蓋部材4とともに隔壁54を押圧するに伴い、収容室52の下側に設けた被係合部55が設置部材3の係合部33と係合して隔壁54が凹部57へと変形した状態を保持できる。また、係合の際に生じ得る音により、凹部57が保持されているかも判断することができる。複数の収容室52,53が統合収容室58へと変形したとき、
図7に示すように、隔壁上縁54aに対応する部分が蓋部材4から剥がれているので、各収容室52,53に収容した2種の材料X,Yが統合収容室58に混合状態で収容される(混合された材料は符号Zで示す)。そして、蓋部材4はこのとき塑性変形を起こしているので、指を蓋部材4から離した後も、
図8に示すように、ある程度伸長した状態となっている。このとき、上記したように、隔壁54及び収容室52(凹溝部)がそれぞれ収容部51の中央部分に同心状に形成されているため、凹溝部に混合材料Zが集まっている。
【0073】
また、本実施形態では、設置部材3を用いることにより、ユーザは、
図7で示すように、この押圧操作を指一本で行うことが可能になっている。つまり、混合用容器2単体では、容器周縁59を支持しながら蓋部材4とともに隔壁54を押圧する操作が必要となり、基本的には両手での作業が必要になる。これに対し、設置部材3を用いることにより容器周縁59を支持する作業が不要になり、中空の受入部31に向かって蓋部材4とともに隔壁54を押圧すればよくなる。そのため片手(さらに言えば指一本)での作業で足りることになり、操作が容易になっている。
【0074】
最後に、
図9に示すように、蓋部材4を剥がして、上記したように凹溝部に集まった混合材料Zをかき混ぜて混合材料Zを完全に混合させて使用状態にできる。このときも凹溝部に混合材料Zが集められているので混ぜやすくなっている。
【0075】
以上のように、本実施形態の混合用容器2及び混合用容器キット1によれば、まず、隔壁54を隆起した方向と反対方向(方向D1)に押圧して凹部57へと変形させることで複数の収容室52,53を一の統合収容室58へと変形させるので、各収容室52,53に収容した各材料X,Yを一の統合収容室58で混合させることが可能になる。そして、このような方式であれば、一方の収容室中に材料が残存することを抑制できる。そして、蓋部材4を伸長可能なシート材としてあるので、蓋部材4ごと隔壁54を押圧して、収容部51の周縁51aが蓋部材4にシールされた状態で、隔壁54を凹部57へと変形させることができ、材料X,Yが外側へこぼれることを確実に防ぎながら円滑且つ安全に各材料X,Yを混合可能な状態にできる。
【0076】
なお、本実施形態の混合用容器2に収容させる材料X,Yは特に限定されず、液体はもちろんのこと、固体(粉状体や、ゲル状の物体、一粒の塊など特に限定されない)であってもよく、また、密閉状態で混合が行えるので、気体を用いてもよい。そして、本実施形態の混合用容器2及び混合用容器キット1は、例えば、粉成分と硬化液とを混合させて歯科用セメントとして用いるなど、歯科用材料の混合に好適に用いることができるが、これに限定されず、化学薬品や、医薬品、化粧品、食品等、種々の用途で用いることができる。その際、混合用容器2の形状や寸法も目的に応じて変更することが可能である。
【0077】
〔第二の実施形態〕
次に、本発明に係る混合用容器、混合用容器キット、及び、混合用容器又は混合用容器キットの使用方法の第二の実施形態について、
図10~17を参照して説明する。
図10,11は、第二の実施形態に係る混合用容器6を示し、混合用容器6は、容器本体7と、ハンドル部(作用部に相当)8と、蓋部材9とを備えている。そして、第一の実施形態では、隔壁54を押圧することにより隔壁54を凹部57へと変形させる構成を示したが、本実施形態の混合用容器6では、隔壁74を引っ張ることにより隔壁74を凹部76へと変形させる構成となっている。以下、各部の構成について説明する。
【0078】
まず、容器本体7は、第一の実施形態の容器本体5と同様の構成を有している。具体的には、容器本体7は、材料を収容する収容部71を備えている。収容部71には、収容部71を形成する壁面の一部が収容空間側に隆起した一つの隔壁74が形成されている。隔壁74により材料を各別に収容可能な複数の収容室72,73が収容部71内に形成されている。そして、隔壁74は、内壁面の残りの部分に対して、隆起した方向と反対方向(収容空間外側の方向)に相対移動可能で、且つ、反対方向に相対移動したときに、内壁面の残りの部分から反対方向側に窪む凹部76へと変形可能に構成されている。なお、内壁面の残りの部分とは、収容部71の周縁71aを含む部分である。
【0079】
つまり、隔壁74は、収容部71の周縁71aが蓋部材9にシールされた状態で、蓋部材9から容器本体7に向かう方向D2に移動することによって、隔壁74の移動方向、即ち、蓋部材9から容器本体7に向かう方向D2に窪む凹部76へと変形可能に構成されている。
【0080】
そして、隔壁74が凹部76へと変形したとき、当該隔壁74により形成される複数の収容室72,73が一の統合収容室77へと変形した状態となる。なお、第一の実施形態の容器本体5と同様に、隔壁74は、収容部71を形成する壁面の一部が蓋部材9に向かってドーム状に隆起したものである。隔壁74には、収容室72として、隔壁74の一部が凹状に窪んだ凹溝部が一つ形成されている。そして、隔壁74及び収容室72(凹溝部)は、それぞれ収容部71の中央部分に同心状に形成されている。これにより、収容室73は円環状の収容室となっている。また、隔壁74における、収容室72の外壁面を構成する部分75は円柱状で形成されており、ハンドル部8と係合させる被係合部として機能するようになっている。
【0081】
そして、本実施形態では、隔壁上縁74aと収容部周縁71aとの間の空間に形成される収容室73の容積が、隔壁上縁74aより内側の空間に形成される収容室72の容積に比べ、大きくなるように形成されている。収容室72,73の容積をこのようなバランスにすることによって、隔壁74が凹部76へと変形したときの容積変化を抑えやすくなっており、変形後に生じる陰圧を抑制できるようになっている。また、隔壁74のうち、隔壁74の上縁部分74aの肉厚が、上縁部分74aより外側の壁面部分74bの肉厚に比べ、厚く形成されている。このようなバランスの肉厚にすることによって、凹部76に変形した後の壁面部分74bを支持する上縁部分74aの強度が高まり、隔壁74が凹部76へと変形した状態を保持させやすくなっている。そして、収容部71の周縁部分71aの肉厚が、隔壁74の外側の壁面部分74bの肉厚に比べ、厚く形成されている。これにより、収容部71の周縁部分71aの肉厚の強度を高めることができるので、隔壁74の変形に伴い収容部71の外周部分も変形してしまうことを抑制できる。また、後述のように、収容部71の外周部分を指でつまむ場合も、収容部71が変形しにくく、操作を行い易くなっている。
【0082】
ハンドル部8は、
図11,12A,12Bに示すように、隔壁74(具体的には被係合部75)に連結される連結部81と、ユーザによる操作が行われる操作部82と、を備えている。操作部82が容器本体7に対して、隔壁74が隆起した方向と反対方向に相対移動するに伴い、連結部81とともに、隔壁74が内壁面の残りの部分に対して、隆起した方向と反対方向へと相対移動するように構成されている。
【0083】
言い換えると、操作部82が容器本体7に対して、蓋部材9から容器本体7に向かう方向D2に相対移動するに伴い、連結部81とともに、隔壁74が蓋部材9から容器本体7に向かう方向D2へと移動するように構成されている(
図14A参照)。
【0084】
つまり、操作部82を容器本体7に対して隔壁74が隆起した方向と反対方向、即ち蓋部材9から容器本体7に向かう方向D2に引っ張ることにより、連結部81に連結された隔壁74が隆起した方向と反対方向、即ち蓋部材9から容器本体7に向かう方向D2へ引っ張られる。これにより、隔壁74を隔壁74の移動方向、即ち、蓋部材9から容器本体7に向かう方向D2に窪む凹部76へと変形させることが可能になっている。
【0085】
連結部81は、容器本体7の被係合部75に比べてわずかに内径の小さい円筒状で形成されている。連結部81の内部に被係合部75を通すことにより、連結部81に被係合部75が強固に連結されることになる。また、連結部81は、
図11~14に示すように、隔壁74が凹部76へと変形していないときは外部に露出されず(
図13A,13B,13C参照)、隔壁74が凹部76へと変形したときに外部に露出されることになる隠蔽部分81a(本実施形態では、連結部81の先端の部位)を備えている(
図14A、14B参照)。そして、隠蔽部分81aが、連結部81の他の部分と識別可能な外観を備えており、その外観としては、着色されていたり、特徴的な形状を有しているなど他の部分と識別可能であれば特に限定されないが、本実施形態では、隠蔽部分81aは、ギザギザの形状になっている。
【0086】
操作部82は、連結部81から互いに反対側に延びる一対の部材で構成されており、互いに反対側に延びる一対の操作部82,82により、混合用容器6を床面等に安定的に設置でき、また、容器本体7の両側から作用力を加えることができて、安定的に操作を行える。より具体的には、本実施形態では、操作部82は、連結部81を中心として点対称に延び且つ連結部81から離れるにつれて幅広になる形状になっていて、平面視でリボン状の形状を呈している。操作部82が連結部81を中心として点対称で延びることにより、連結部81に対して操作部82の延在方向と垂直な方向には操作部82が存在せず、
図16に示すように、操作部82の延在方向と垂直な方向から容器本体7をつかむことができる。このため、操作の際に操作部82が邪魔になることなく、操作を行い易い。また、操作部82が、連結部81から離れるにつれて幅広になる形状であることにより、操作部82の端部側が幅広になり力を加えやすくなる。
【0087】
また、ハンドル部8は、操作部82における容器本体7と対向する部分に、容器本体7の一部(平面視において操作部82と重なる部分)に対応する形状で形成され、連結部81に連結された容器本体7を受け入れる受入部83を備えている。受入部83は、容器本体7を受け入れたときに、受入部83の周縁83aと容器本体7とが面一となるように構成されている。これにより、容器本体7が受入部83に支持されて、揺動などのハンドル部8に対する容器本体7の相対移動を抑制することができ、不用意に、隔壁74の上縁74aのシールが剥がれることが抑制される。
【0088】
蓋部材9は、収容部71の周縁71aとともに複数の収容室72,73の間を仕切る隔壁74の上縁74aをシールして、複数の収容室72,73を各別に密閉する状態で容器本体7に取り付けられる。なお、後述するように、本実施形態では、ハンドル部8を用いて、収容部71の周縁71aが蓋部材9にシールされた状態を保って、隔壁74を内壁面の残りの部分に対して、隆起する方向と反対方向(方向D2)へと相対移動させることが可能になっているので、第一の実施形態と違い、蓋部材9を伸長させる必要がない。そのため、本実施形態では、蓋部材9は伸長しない又は伸長しにくい素材を用いることができる。また、蓋部材9はタブ91を備えている。タブ91は、ハンドル部8(より具体的には操作部82)に沿う状態で設けられている。これにより、通常時(
図13A、13B、13C,15の状態)にはタブ92は邪魔にならず、隔壁74を凹部76へと変形させたとき(
図14A,14B,16の状態)には、操作部82の相対移動に伴い、タブ92がハンドル部8から離れた状態となって、タブ92をつかみやすい状態となる。このように、本実施形態では、タブ92を必要時にのみ利用しやすい状態に置くことができる。
【0089】
次に、本実施形態に係る混合用容器6の使用状態について説明する。まず、本実施形態に係る混合用容器6では、第一の実施形態と同様に、
図15に示すように、各収容室72,73に2種の材料X,Yを収容し、その後に蓋部材9を容器本体7に取り付けることで、2種の材料X,Yを各別に保存した状態とすることができるようになっている。そして、本実施形態では、ユーザは、
図16に示すように、容器本体7をつかんだ状態で、一対の操作部82を指で持って操作部82(ハンドル部8)を下方に引っ張って、又は、一対の操作部82をつかんだ状態で、容器本体7を指で持って上方に引っ張って、操作部82を容器本体7に対して下方に相対移動させる。これにより、容器本体7のうち、隔壁74のみを独立して、収容部71の内壁面の残りの部分に対して、隔壁74が隆起した方向と反対方向(方向D2)に相対移動させることができる。
【0090】
つまり、操作部82を下方に引っ張ることによって、隔壁74に連結される連結部81が下方に移動する。このとき、連結部81は、隔壁74を下方に引っ張る。これにより、隔壁74は、内壁面の残りの部分に対して、下方に相対移動する。
【0091】
このような隔壁74の移動によって、収容部71の周縁71aが蓋部材9にシールされた状態で、隔壁74を凹部76へと変形させることができる。これにより、各収容室72,73に収容した2種の材料X,Yが統合収容室77に混合状態で収容されて混合材料Zとなる。そして、
図17に示すように、蓋部材9を剥がして、混合材料Zをかき混ぜて混合材料Zを完全に混合させる。
【0092】
以上のように、本実施形態の混合用容器6によれば、第一の実施形態と同様に、収容部71の周縁71aが蓋部材9にシールされた状態で、隔壁74を凹部76へと変形させることができ、材料X,Yが外側へこぼれることを確実に防ぎながら円滑且つ安全に各材料X,Yを混合可能な状態にできる。
【0093】
なお、本実施形態では、上記した構成のほか、第一の実施形態で記載した構成(例えば)を採用することもできる。また、反対に、第一の実施形態でも、本実施形態で記載した構成(例えば収容室72,73間の容積の関係や、容器本体7の各部の肉厚の関係など)を採用することができる。
【0094】
〔第三の実施形態〕
次に、第三の実施形態として、本発明に係る混合用容器の補助器具について
図18及び
図19を参照して説明する。
図18及び
図19は、第三の実施形態に係る補助器具10を示す。補助器具10は、第二の実施形態の混合用容器6の容器本体7の隔壁74を、蓋部材9から容器本体7に向かう方向に移動させるための器具である。
【0095】
図18及び
図19に示すように、補助器具10は、ベース11と、フック部12と、凸部13と、を備える。以下、各部の構成について説明する。
【0096】
ベース11は、補助器具10のベースとなる部分であり、板状の部材で形成されている。ベース11の上面側には、ベース凹部11aが設けられている。ベース凹部11aは、混合用容器6のハンドル部8が収容可能な形状に形成されている。ベース凹部11aは、フック部12に接続される。
【0097】
本実施形態では、ベース凹部11aは、混合用容器6のハンドル部8の形状に沿って形成されている。これにより、混合用容器6を補助器具10に取り付けるときに、ベース凹部11aによって混合用容器6の位置決めを容易に行うことができる。
【0098】
フック部12は、ベース11に設けられ、且つ、混合用容器6のハンドル部8の一端と係合する部分である。具体的には、フック部12は、ベース11の一端で、ベース11の上面側に向かって延び、且つベース11の中央側に向かって屈曲して形成される。つまり、フック部12は、断面形状が逆L字状に形成されている。また、フック部12の内部の空間とベース凹部11aは、連通している。フック部12の内部には、ベース11を貫通する貫通孔12aが形成されている。
【0099】
混合用容器6のハンドル部8の一端を、フック部12の内部を通って貫通孔12a内に配置することによって、混合用容器6のハンドル部8の一端をフック部12に係合することができる。これにより、ハンドル部8の一端がフック部12に固定される。
【0100】
凸部13は、ベース11に設けられ、且つフック部12よりもベース11の厚み方向に離れた位置で混合用容器6の容器本体7の一部を支持する部分である。具体的には、凸部13は、ベース11の上面側に突設して設けられる。本実施形態では、凸部13は、容器本体7の一部として、ハンドル部8から露出した容器本体7の部分を支持している。ハンドル部8から露出した容器本体7の部分とは、混合用容器6を下面側からみて、ハンドル部8から露出した容器本体7の部分である。
【0101】
凸部13には、混合用容器6の容器本体7の隔壁74が移動可能な溝13aが設けられている。具体的には、凸部13は、ベース11の下面から上面に向かう方向に突設する一対の部材で形成されており、溝13aによって分割されている。一対の部材は、溝13aを間に挟んで対称に形成されている。溝13aは、ベース凹部11aと接続されている。
【0102】
凸部13は、上面13bと、上面13bからフック部12側に向かって傾斜した傾斜面13cと、を有する。凸部13の上面13b及び傾斜面13cは、フック部12よりも高い位置に形成されている。凸部13の上面13b及び傾斜面13cは、混合用容器6の容器本体7の一部(ハンドル部8から露出した部分)と接触する。凸部13は、上面13b及び傾斜面13cに容器本体7の一部を接触させることによって、容器本体7の一部を支持することができる。
【0103】
また、混合用容器6のハンドル部8の一端をフック部12に係合した状態で、容器本体7の一部を凸部13で支持することによって、ハンドル部8の他端をベース11から離れた位置に保持することができる。即ち、ハンドル部8を補助器具10に対して斜めに取り付けることができる。
【0104】
このような構成により、ハンドル部8の他端をベース11に向かう方向に移動させることによって、凸部13の溝13a内において、容器本体7の隔壁74を、容器本体7の一部に対して、蓋部材9から容器本体7に向かう方向に相対移動させることができる。
【0105】
補助器具10の使用方法について、
図20~23を用いて詳細に説明する。
図20~23は、補助器具10の使用方法を示す。なお、
図20~23は、説明を容易にするため、混合用容器6を構成する部品のいくつかを省略及び簡略化して図示している。
【0106】
図20に示すように、混合用容器6のハンドル部8の一端8aを、フック部12の内部に向けて斜めに挿入することによって、混合用容器6を補助器具10に取り付ける。このとき、混合用容器6は、ベース凹部11aによって位置決めされる。具体的には、混合用容器6のハンドル部8がベース凹部11a内に配置される。これにより、ベース凹部11aを形成する側壁によって、混合用容器6のハンドル部8が位置決めされる。
【0107】
図21に示すように、混合用容器6が補助器具10に取り付けられると、混合用容器6のハンドル部8の一端8aが貫通孔12aに配置されると共にフック部12に係合する。また、混合用容器6の容器本体7の一部(ハンドル部8から露出した容器本体7の部分)は、フック部12よりも高い位置で凸部13に接触する。これにより、ハンドル部8の一端8aがフック部12で固定されると共に、ハンドル部8から露出した容器本体7の部分が凸部13によって支持される。このとき、ハンドル部8の一端8aと反対側の他端8bは、ベース11から離れた位置に保持される。また、ハンドル部8及び容器本体7の隔壁74は、凸部13によって支持されず、凸部13の溝13a内に配置される。
【0108】
図22に示すように、混合用容器6のハンドル部8の他端8bをベース11に向かう方向D3、即ち下方に移動させる。これにより、容器本体7の一部は、凸部13の傾斜面13cで支持される。容器本体7の一部が傾斜面13cで支持された状態でハンドル部8の他端8bを方向D3に移動させると、隔壁74に連結されている連結部81が、凸部13の溝13a内において方向D3に向かって移動する。連結部81の移動に伴い、ハンドル部8の他端8b側に位置する隔壁74の第1部分74cが、収容部71の周縁71aに対して、蓋部材9から容器本体7に向かう方向に相対移動する。
【0109】
つまり、凸部13の傾斜面13cで容器本体7の一部を支持した状態で、ハンドル部8の他端8bを方向D3に移動させることによって、凸部13の傾斜面13cによって支持される容器本体7の一部に対して、隔壁74の第1部分74cを、蓋部材9から容器本体7に向かう方向に相対移動させることができる。
【0110】
図23に示すように、ハンドル部8の他端8bをベース11に向かう方向D3に更に移動させる。隔壁74の第1部分74cが方向D3へ移動した後、容器本体7の一部は、凸部13の上面13bで支持されるようになる。これにより、ハンドル部8の一端8a側に位置する隔壁74の第2部分74dが、収容部71の周縁71aに対して、蓋部材9から容器本体7に向かう方向に相対移動する。
【0111】
つまり、凸部13の上面13bで容器本体7の一部を支持した状態で、ハンドル部8の他端8bを方向D3に更に移動させることによって、凸部13の上面13bによって支持される容器本体7の一部に対して、隔壁74の第2部分74dを、蓋部材9から容器本体7に向かう方向に相対移動させることができる。
【0112】
本実施形態の補助器具10によれば、混合用容器6の容器本体7の隔壁74を容易に移動させることができる。例えば、混合用容器6を補助器具10に取り付けた後、ユーザの指一本で混合用容器6のハンドル部8の他端8bを、ベース11に向かう方向D3に移動させる。これにより、凸部13によって支持される容器本体7の一部に対して、隔壁74を蓋部材9から容器本体7に向かう方向に相対移動させることができる。このように、補助器具10を用いれば、簡単な操作によって、隔壁74を容易に移動させることができる。
【0113】
また、補助器具10は、凸部13の上面13b及び傾斜面13cを利用して、ハンドル部8の他端8b側に位置する隔壁74の第1部分74cからハンドル部8の一端8a側に位置する隔壁74の第2部分74dにかけて、徐々に隔壁74を引っ張っている。このため、隔壁74全体を一度に引っ張る場合と比べて小さい力で隔壁74を移動させることができる。
【0114】
また、フック部12に向かって傾斜した傾斜面13cで容器本体7を支持することによって、隔壁74をベース11に向かう方向D3に対して斜め方向に引っ張ることができる。このため、隔壁74を単純に方向D3に引っ張る場合に比べて小さい力で、隔壁74を移動させることができる。
【0115】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る混合用容器、混合用容器キット、及び、混合用容器又は混合用容器キットの使用方法、補助器具のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0116】
(1)上記の実施形態では、作用部として伸長可能なシート材から形成された蓋部材4を用い、蓋部材4とともに隔壁54を押圧して、隔壁54を反対方向へと相対移動させる構成、及び、作用部として連結部81と操作部82を備えたハンドル部8を用い、操作部82を容器本体7に対して反対方向へ相対移動させるに伴い、連結部81とともに、隔壁74を、収容部71の内壁面の残りの部分に対して、隆起する方向と反対方向へと相対移動させる構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されず、ユーザからの作用に応じて、収容部51,71の周縁51a,71aが蓋部材4,9にシールされた状態を保って、隔壁54,74を、収容部51,71を形成する内壁面の残りの部分に対して、隆起する方向と反対方向へと相対移動させることができるもの、即ち隔壁54,74を蓋部材4,9から容器本体5,7に向かう方向D1,D2に移動させることができるものであれば、作用部として種々のものを用いることができる。
【0117】
(2)上記の実施形態では、収容室を2つ設けた構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されず、隔壁54,74により3以上の収容室を形成するようにしてもよい。例えば、その方法としては、上記の実施形態における凹溝部を設けた隔壁54,74等、隔壁を複数形成するようにしたり、収容室52,72としての凹溝部の外側に1又は複数の円環状の凹溝部を隔壁54,74に設けるようにし、各凹溝部を収容室として利用することで、隔壁54,74により3以上の収容室を形成することが考えられる。その他、ドーム状の隔壁54,74に円周上に並ぶ3以上の凹溝部を設けて、各凹溝部を収容室として利用することも考えられる。ただし、隔壁54,74により3以上の収容室を形成する方法はこれらに限定されず、目的に応じて適宜種々の方法を用いることができる。
【0118】
(3)上記の実施形態では、隔壁54,74の上縁54a,74aと収容部51,71の周縁51a,71aとは連結されておらず、隔壁54,74の上縁54a,74aより内側の空間に少なくとも一つの収容室が形成され、且つ、隔壁54,74の上縁54a,74aと収容部51,71の周縁51a,71aとの間の空間に少なくとも一つの収容室が形成されている構成の例を説明した。より具体的には、隔壁54,74をドーム状に隆起させたものとし、隔壁54,74に収容室の一つとして凹溝部を設け、隔壁54,74及び凹溝部をそれぞれ収容部51,71の中央部分に同心状に形成した構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。隔壁54,74及び凹溝部は収容部51,71の中央部分に設けなくてもよいし、同心状に設けなくてもよい。また、隔壁54,74はドーム状でなくてもよいし、隔壁54,74に収容室の一つとして凹溝部を設けることなく隔壁54,74で収容部51,71を複数の収容空間に仕切るようにしてもよい。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、隔壁54,74の上縁54a,74aと収容部51,71の周縁51a,71aとが連結されたものとしてもよい。
【0119】
(4)第一の実施形態では、設置部材3にセットした混合用容器2を用いて蓋部材4とともに隔壁54を押圧する構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されず、混合用容器2のみを使用するようにしてもよく、混合用容器2単体で蓋部材4とともに隔壁54を押圧するようにしてもよい。
【0120】
(5)第一の実施形態では、隔壁54が凹部57へと変形したときに、凹部57をその位置に保持する保持機構として、容器本体5の収容室52の下側に被係合部55を設けるとともに設置部材3に係合部33を設けた構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、保持機構として、被係合部55や係合部33に代えて、凹部57をその位置に保持可能な他の構成を設けてもよい。また、収容室52の下側に限らず他の位置に被係合部55や他の保持機構としての構成を設けてもよく、それに合わせた位置に設置部材3に対して係合部33や他の保持機構としての構成を設けてもよい。その他、混合用容器2や設置部材3に保持機構を設けなくてもよい。
【0121】
(6)第二の実施形態で示したハンドル部8の構成・形状はあくまでも例示であり、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、ハンドル部8は受入部83を備えなくてもよいし、連結部81は隠蔽部分81aを備えなくてもよいなど、ハンドル部8の構成・形状は適宜変更可能である。
【0122】
(7)第二の実施形態で示した収容室72,73間の容積の関係や、容器本体7の各部の肉厚の関係はあくまでも例示であり、本発明の実施形態はこれに限定されず適宜変更可能である。
【0123】
(8)第二の実施形態で示した収容室72,73間の容積の関係や、容器本体7の各部の肉厚の関係はあくまでも例示であり、本発明の実施形態はこれに限定されず適宜変更可能である。
【0124】
(9)第二の実施形態では、蓋部材9がタブ91を備え、タブ91がハンドル部8に沿う状態で設けられている構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されず、蓋部材9はタブ91を備えなくてもよいし、タブ91はハンドル部8に沿う状態で設けられなくてもよい。
【0125】
(10)第三の実施形態では、ベース11がベース凹部11aを備え、ベース凹部11aが混合用容器6のハンドル部8の形状に沿うように形成されている構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されず、ベース凹部11aは備えなくてもよいし、ベース凹部11aは混合用容器6のハンドル部8の形状に沿うように形成されていなくてもよい。
【0126】
(11)第三の実施形態では、凸部13が傾斜面13cを有する構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されず、凸部13は傾斜面13cを備えなくてもよい。
【0127】
(12)第三の実施形態では、凸部13が溝13aを間に挟んで対称に形成される一対の部材で構成される例を説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されず、凸部13は一対の部材でなくてもよいし、溝13aを間に挟んで対称に形成されていなくてもよい。凸部13は、容器本体7を支持しつつ、隔壁74が移動可能な溝13aを有していればよい。
【0128】
(13)なお、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。従って、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、例えば複数の材料を混合するのに利用することができる。
【符号の説明】
【0130】
1 混合用容器キット
2 混合用容器
3 設置部材
31 受入部
32 設置部
33 係合部
4 蓋部材(作用部)
5 容器本体
51 収容部
51a 収容部の周縁
52,53 収容室
54 隔壁
54a 隔壁の上縁
55 被係合部
57 凹部
58 統合収容室(一の収容室)
59 容器本体の周縁(混合用容器の周縁)
6 混合用容器
7 容器本体
71 収容部
71a 周縁
72,73 収容室
74 隔壁
74a 隔壁の上縁
74b 隔壁の壁面部分
74c 隔壁の第1部分
74d 隔壁の第2部分
75 被係合部
76 凹部
77 統合収容室(一の収容室)
8 ハンドル部(作用部)
8a 一端
8b 他端
81 連結部
82 操作部
83 受入部
83a 周縁
9 蓋部材
91 タブ
10 補助器具
11 ベース
11a ベース凹部
12 フック部
12a 貫通孔
13 凸部
13a 溝
13b 上面
13c 傾斜面
D1,D2,D3 方向
X,Y 材料
Z 混合材料