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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】貯水構造
(51)【国際特許分類】
   E03B 3/03 20060101AFI20221021BHJP
   E03B 3/02 20060101ALI20221021BHJP
   E03B 11/14 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
E03B3/03 B
E03B3/02 Z
E03B11/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020130565
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026890
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】500305380
【氏名又は名称】株式会社シーマコンサルタント
(73)【特許権者】
【識別番号】517202283
【氏名又は名称】株式会社成建
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】中島 観司
(72)【発明者】
【氏名】鍔田 一治
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-016269(JP,A)
【文献】特開2013-038102(JP,A)
【文献】特開2006-225861(JP,A)
【文献】特開平09-235769(JP,A)
【文献】実開昭58-103253(JP,U)
【文献】特開2009-264098(JP,A)
【文献】特開平10-266285(JP,A)
【文献】特開2021-062909(JP,A)
【文献】特開2014-009439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 3/03
E03B 3/02
E03B 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中に埋設された貯水槽と、
前記貯水槽に下方部を連通した状態で前記貯水槽から上方に向かって立設された筒状体と、
前記筒状体の上方の開口端に開閉可能に装着された蓋体と、
前記筒状体に下流側の開口部を連通させた状態で前記地盤上に配管された暗渠管と、
前記暗渠管を埋設した状態で前記地盤上に設けられた路盤層と、
前記路盤層上に設けられた透水層と、を備え、
前記貯水槽の外面が凸曲面で構成され、
前記透水層が、真砂土に対し、セメント系固化材若しくは中性固化材と、団粒化剤と、水と、を添加・撹拌して形成された混合物を前記路盤層上に打設して固化させたものである貯水構造。
【請求項2】
地盤中に埋設された貯水槽と、
前記貯水槽に下方部を連通した状態で前記貯水槽から上方に向かって立設された筒状体と、
前記筒状体の上方の開口端に開閉可能に装着された蓋体と、
前記筒状体に下流側の開口部を連通させた状態で前記地盤上に配管された暗渠管と、
前記暗渠管を埋設した状態で前記地盤上に設けられた透水層と、
前記透水層上に設けられた舗装層と、を備え、
前記貯水槽の外面が凸曲面で構成され、
前記透水層が、真砂土に対し、セメント系固化材若しくは中性固化材と、団粒化剤と、水と、を添加・撹拌して形成された混合物を前記地盤上に打設して固化させたものである貯水構造。
【請求項3】
地盤中に埋設された貯水槽と、
前記貯水槽に下方部を連通した状態で前記貯水槽から上方に向かって立設された筒状体と、
前記筒状体の上方の開口端に開閉可能に装着された蓋体と、
前記筒状体に下流側の開口部を連通させた状態で前記地盤上に配管された暗渠管と、
前記暗渠管を埋設した状態で前記地盤上に設けられた透水層と、
前記透水層上に植設された人工芝若しくは天然芝と、を備え、
前記貯水槽の外面が凸曲面で構成され、
前記透水層が、真砂土に対し、セメント系固化材若しくは中性固化材と、団粒化剤と、水と、を添加・撹拌して形成された混合物を前記地盤上に打設して固化させたものである貯水構造。
【請求項4】
地盤中に埋設された貯水槽と、
前記貯水槽に下方部を連通した状態で前記貯水槽から上方に向かって立設された透水性を有する筒状体と、
前記筒状体の上方の開口端に開閉可能に装着された蓋体と、
前記地盤上に設けられた路盤層と、
前記路盤層上に設けられた透水層と、を備え、
前記貯水槽の外面が凸曲面で構成され、
前記透水層が、真砂土に対し、セメント系固化材若しくは中性固化材と、団粒化剤と、水と、を添加・撹拌して形成された混合物を前記路盤層上に打設して固化させたものである貯水構造。
【請求項5】
前記貯水槽内の貯留水が所定量を超えたとき前記貯水槽外へ放流するオーバーフロー管を設けた請求項1~4の何れかの項に記載の貯水構造。
【請求項6】
前記貯水槽内の貯留水を地上へ汲み上げ可能なポンプを設けた請求項1~5の何れかの項に記載の貯水構造。
【請求項7】
前記貯水槽が、鋼板の両面をFRP層で被覆した三層構造板材で形成されたものである請求項1~6の何れかの項に記載の貯水構造。
【請求項8】
前記透水層が、真砂土1立方メートルに対し、10kg~150kgのセメント系固化材若しくは中性固化材と、1L~2Lの団粒化剤と、20L~60Lの水と、を添加・撹拌して形成された混合物を打設して固化させたものである請求項1~7の何れかの項に記載の貯水構造。
【請求項9】
前記団粒化剤が、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含むものである請求項8記載の貯水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラウンド、駐車場あるいは広場などに降り注いだ雨水などを地中に浸透させて貯留するための貯水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
雨水を有効利用するため、地面に降り注いだ雨水を地中に浸透させ、地下に埋設した貯水槽に貯留する貯水構造については、従来、様々な構造、機能を有するものが提案されているが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献1に記載された「雨水地下濾過給水装置」や特許文献2に記載された「農地用地下埋設式貯留槽」などがある。
【0003】
特許文献1に記載された「雨水地下濾過給水装置」は、グランドに張った芝生を第1の濾過層とし、この芝生の下層に、砂や石を敷き詰めた第2の濾過層を形成し、この濾過層の底部に防水シートを敷き、この防水シートの一部を開口して、この開口部の下方に、上部に流入口を形成した濾過水貯水槽を設け、これとは別個に、集水した雨水を貯める原水貯水槽を設け、この原水貯水槽と前記濾過水貯水槽とから散水ポンプを介して前記濾過層に散水する散水管を、濾過層内に埋設配管すると共に、濾過水貯水槽に濾過水を利用する機器に給水する給水ポンプを設けたものである。
【0004】
特許文献2に記載された「農地用地下埋設式貯留槽」は、内外を連通させる開口部を有する樹脂製の箱部材を、縦、横、および、高さ方向に配列して、貯水空間を形成するとともに周囲からの荷重を負担する箱配列構造体と、この箱配列構造体の少なくとも底面および側面を覆う遮水保護層とよりなる農地用の地下埋設式貯留槽において、箱部材を欠落させて配置しないことにより箱配列構造体の内側を高さ方向に貫通する点検スペースを形成し、この点検スペースを地面まで延在させ、点検スペースの、箱配列構造体と地面との間の部分を箱部材で囲うとともに、この点検スペースが地面に開口する部分に開閉蓋を設けてなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-16269号公報
【文献】特開2009-150179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された「雨水地下濾過給水装置」は、雨水を循環させて濾過するので清浄な水を再利用することができ、非常時用の給水タンクとして利用することができるなどの長所を有するが、地中に空洞の貯水槽を構築しなければならないので、これを支える強固な支持構造を形成するのに多くの建設資材と多大な労力を必要とする。また、この「雨水地下濾過給水装置」は、大地震などが発生して周囲の地盤に変動(断層や地割れなど)が生じると、貯水槽や防水シートが破損して貯留水が漏出する可能性がある。
【0007】
特許文献2に記載された「農地用地下埋設式貯留槽」においては、複数のブロックを組み合わせた構造体を貯水槽内に配置するので、貯水槽自体の構造は簡略化されるが、多数のブロックが必要であり、ブロックの組立作業も煩雑である。また、大地震などが発生して周囲の地盤に変動(断層や地割れなど)が生じると、貯水槽が破損して貯留水が漏出する可能性がある。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、比較的少ない資材で容易に構築することができ、耐震性並びに耐久性に優れた貯水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る第一の貯水構造は、
地盤中に埋設された貯水槽と、
前記貯水槽に下方部を連通した状態で前記貯水槽から上方に向かって立設された筒状体と、
前記筒状体の上方の開口端に開閉可能に装着された蓋体と、
前記筒状体に下流側の開口部を連通させた状態で前記地盤上に配管された暗渠管と、
前記暗渠管を埋設した状態で前記地盤上に設けられた路盤層と、
前記路盤層上に設けられた透水層と、を備え、
前記貯水槽の外面が凸曲面で構成され、
前記透水層が、真砂土に対し、セメント系固化材若しくは中性固化材と、団粒化剤と、水と、を添加・撹拌して形成された混合物を前記路盤層上に打設して固化させたものであることを特徴とする。
【0010】
次に、本発明に係る第二の貯水構造は、
地盤中に埋設された貯水槽と、
前記貯水槽に下方部を連通した状態で前記貯水槽から上方に向かって立設された筒状体と、
前記筒状体の上方の開口端に開閉可能に装着された蓋体と、
前記筒状体に下流側の開口部を連通させた状態で前記地盤上に配管された暗渠管と、
前記暗渠管を埋設した状態で前記地盤上に設けられた透水層と、
前記透水層上に設けられた舗装層と、を備え、
前記貯水槽の外面が凸曲面で構成され、
前記透水層が、真砂土に対し、セメント系固化材若しくは中性固化材と、団粒化剤と、水と、を添加・撹拌して形成された混合物を前記地盤上に打設して固化させたものであることを特徴とする。
【0011】
次に、本発明に係る第三の貯水構造は、
地盤中に埋設された貯水槽と、
前記貯水槽に下方部を連通した状態で前記貯水槽から上方に向かって立設された筒状体と、
前記筒状体の上方の開口端に開閉可能に装着された蓋体と、
前記筒状体に下流側の開口部を連通させた状態で前記地盤上に配管された暗渠管と、
前記暗渠管を埋設した状態で前記地盤上に設けられた透水層と、
前記透水層上に植設された人工芝若しくは天然芝と、を備え、
前記貯水槽の外面が凸曲面で構成され、
前記透水層が、真砂土に対し、セメント系固化材若しくは中性固化材と、団粒化剤と、水と、を添加・撹拌して形成された混合物を前記地盤上に打設して固化させたものであることを特徴とする。
【0012】
次に、本発明に係る第四の貯水構造は、
地盤中に埋設された貯水槽と、
前記貯水槽に下方部を連通した状態で前記貯水槽から上方に向かって立設された透水性を有する筒状体と、
前記筒状体の上方の開口端に開閉可能に装着された蓋体と、
前記地盤上に設けられた路盤層と、
前記路盤層上に設けられた透水層と、を備え、
前記貯水槽の外面が凸曲面で構成され、
前記透水層が、真砂土に対し、セメント系固化材若しくは中性固化材と、団粒化剤と、水と、を添加・撹拌して形成された混合物を前記路盤層上に打設して固化させたものであることを特徴とする。
【0013】
前記貯水構造においては、前記貯水槽内の貯留水が所定量を超えたとき前記貯水槽外へ放流するオーバーフロー管を設けることができる。
【0014】
前記貯水構造においては、前記貯水槽内の貯留水を地上へ汲み上げ可能なポンプを設けることができる。
【0015】
前記貯水構造おいては、前記貯水槽が、鋼板の両面をFRP層で被覆した三層構造板材で形成されたものであることが望ましい。ここで、前記FRPとは、繊維強化プラスチックス(Fiber Reinforced Plastics)を略記したものであり、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などに、ガラス繊維や炭素繊維などの繊維を複合して強度を向上させた強化プラスチックスを意味する。
【0016】
前記貯水構造においては、前記透水層が、真砂土1立方メートルに対し、10kg~150kgのセメント系固化材若しくは中性固化材と、1L~2Lの団粒化剤と、20L~60Lの水と、を添加・撹拌して形成された混合物を打設して固化させたものであることが望ましい。
【0017】
前記貯水構造においては、前記団粒化剤が、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含むものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、比較的少ない資材で容易に構築することができ、耐震性並びに耐久性に優れた貯水構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態である貯水構造を示す一部省略垂直断面図である。
図2図1に示す貯水構造の一部拡大図である。
図3図2の一部拡大図である。
図4図1に示す貯水構造の概略構成を示す一部省略平面図である。
図5】その他の実施形態である貯水構造の一部を示す垂直断面図である。
図6】その他の実施形態である貯水構造の一部を示す垂直断面図である。
図7】その他の実施形態である貯水構造を示す一部省略垂直断面図である。
図8図7に示す貯水構造の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1図8に基づいて、本発明の実施形態である貯水構造100,200などについて説明する。
【0021】
初めに、図1図4に基づいて、グラウンドに構築された貯水構造100について説明する。図1図2に示すように、貯水構造100は、地盤G中に埋設された貯水槽10と、貯水槽10に下方開口部20bを連通した状態で貯水槽10から上方に向かって立設された筒状体20と、筒状体20の上方の開口端20aに開閉可能に装着された蓋体21と、筒状体20に下流側の開口部30aを連通させた状態で地盤G上に配管された暗渠管30と、暗渠管30を埋設した状態で地盤G上に形成された路盤層40と、路盤層40上に形成された透水層50と、を備えている。
【0022】
貯水槽10は、円筒体の両端部を半球状の壁体で閉塞した形状をなしており、貯水槽10の外面は全体的に凸曲面で構成されている。図2に示すように、貯水槽10は、鋼板10sの両面をFRP層10fで挟持した三層構造板材10pで形成されている。貯水槽10は、その中央部分を形成する円筒体の軸心が略水平をなすような姿勢で地盤G中に埋設されている。貯水槽10の上面部分に開設された複数の開口部10aにそれぞれ筒状体20の下方開口部20bが接続されている。
【0023】
貯水構造100においては、貯水槽10内の貯留水Wが所定量を超えたとき貯水槽10の外へ放流するオーバーフロー管11が設けられている。オーバーフロー管11は、その上流側の開口端11aが、筒状体20の下方開口部28寄りの部分に接続され、筒状体20並びに貯水槽10の内部と連通している。
【0024】
図3に示すように、暗渠管30は、その管壁31の全体に亘って通水性を有する多数の貫通孔32が開設されている。暗渠管30は図4に示すものに限定しないので、通水性を有する管壁で形成された管状体であれば、その他の暗渠管を使用することができる。図4に示すように、暗渠管30は、地盤G全体に水平方向に万遍なく広がるように、平面視形状が葉脈状をなすように配管されているが、これに限定するものではない。
【0025】
暗渠管30を埋設した状態で地盤G上に形成された路盤層40は、真砂土、砕石(クラッシャーランや再生クラッシャーランの少なくとも一方)及び土材に対し、セメント系固化材(若しくは中性固化材)と、団粒化剤と、水と、を添加・撹拌して形成された混合物を地盤G上に打設して固化させることによって形成されている。路盤層40を形成する際の団粒化剤は、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含む水溶液(有限会社グローバル研究所の商品名:GB-2000の希釈水溶液)を使用している。
【0026】
図3に示すように、路盤層40上に形成された透水層50は、真砂土に対し、セメント系固化材と、団粒化剤と、水と、を添加・撹拌して形成された混合物を路盤層40上に打設して固化させたものである。本実施形態において、透水層50は、真砂土1立方メートルに対し、10kgのセメント系固化材と、2Lの団粒化剤と、40Lの水と、を添加・撹拌して形成された混合物を路盤層40上に打設した後、敷き均して固化させたものである。真砂土1立方メートルに対する、セメント系固化材、団粒化剤及び水の混合量は前述した数値に限定しないので、施工現場の条件に応じて変更可能である。なお、セメント系固化材に代えて中性固化材を使用することもできる。
【0027】
本実施形態において、透水層50を形成する際の団粒化剤は、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含む水溶液(有限会社グローバル研究所の商品名:GB-2000の希釈水溶液)を使用している。
【0028】
透水層50の内部には、真砂土、セメント系固化材及び団粒化剤の相互作用によって形成された立体網目構造が形成されているので、優れた透水性及び保水性を発揮する。また、透水層50の内部に形成された立体網目構造はセメント系固化材によって強く固められているので、雨水が浸透しても細粒が流出することがなく、優れた透水性及び保水性を長期間維持することができる。
【0029】
また、路盤層40の内部にも、真砂土、砕石、土材、セメント系固化材及び団粒化剤の相互作用によって形成された立体網目構造が形成されているので、優れた透水性及び保水性を発揮し、路盤層40の内部の立体網目構造もセメント系固化材によって強く固められているので、雨水が浸透しても細粒が流出することがなく、優れた透水性及び保水性を長期間維持することができる。
【0030】
なお、路盤層40は前述したものに限定しないので、砕石(クラッシャーラン、再生クラッシャーラン、粒度調整砕石、再生粒度調整砕石、単粒砕石などのうちの1以上)及び土材に対し、セメント系固化材(若しくは中性固化材)と、水と、を添加・撹拌して形成された混合物を地盤G上に打設して固化させることによって形成することもできる。
【0031】
図1に示すように、貯水構造100においては、貯水槽10内の貯留水Wを地上へ汲み上げるためのポンプ12が設けられている。ポンプ12は手動式であるが、これに限定しないので、電動式またはエンジン駆動式のポンプを使用することもできる。
【0032】
図1図3に示すように、透水層50の表面に降り注いだ雨水は透水層50に浸透し、透水層50及び路盤層40を順次、通過して貫通孔32から暗渠管30内へ流入する。暗渠管30内へ流入した雨水は暗渠管30内を開口部30aに向かって流動していき、開口部30aから筒状体20内へ流れ込み、筒状体20内を経由して貯水槽10内へ落下し、貯水槽10内に貯留される。
【0033】
貯水槽10内に貯留された貯留水Wはポンプ12によって汲み上げることができるので、様々な用途に使用することができる。また、透水層50の表面に降り注いだ雨水は、立体網目構造を包含する透水層50を通過する過程において濾過された後、貯水槽10内へ流れ込むので、貯水槽10内の貯留水Wは比較的清浄な状態となっている。このため、ポンプ12で汲み上げた貯留水Wに適切な浄化処理(濾過処理や薬剤添加など)を施せば、自然災害などの非常時に飲料水として使用することもできる。
【0034】
貯水槽10の上面部分に立設された筒状体20及び筒状体20の開口端20aを開閉可能に閉止する蓋体21により、所謂、マンホール構造が形成されているので、必要に応じて蓋体21を開いて、筒状体20や貯水槽10の内部の点検やメンテナンスなどを行うことができる。
【0035】
図1図2に示すように、貯水槽10は、鋼板10sの両面をFRP層10fで挟持した三層構造板材10pで形成され、その外面は全体的に凸曲面で構成されているので、耐圧性、耐震性並びに耐久性に優れている。また、三層構造板材10pで形成された貯水槽10の内面はFRP層10fで被覆されているので、貯留水Wを清浄に維持する上でも有効である。さらに、貯水槽10は、予め工場で製作したものを施工現場に運び込んで地盤G中に埋設すれば良いので、資材点数の削減及び施工の容易化を図ることもできる。
【0036】
次に、図5図6に基づいて、その他の実施形態について説明する。なお、図5図6において、図1図4に示す貯水構造100の構成部分と共通する部分については、図1図4中の符号と同符号を付して説明を省略する。
【0037】
図5は、暗渠管30の上方に駐車場を形成した状態を示す一部省略垂直断面図であり、暗渠管30上に透水層50が形成され、透水層50上に透水性を有する舗装層60が形成されている。透水層50は、砕石(クラッシャーラン、再生クラッシャーランの少なくとも一方)に対し、セメント系固化材と、団粒化剤と、水と、を添加・撹拌して形成された混合物を暗渠管30上に打設して固化させたものである。舗装層60は、開粒度アスファルト混合物、ポーラスアスファルト混合物、改質アスファルト混合物のうちの1以上を透水層50上に打設することによって形成されている。
【0038】
舗装層60の表面に降り注いだ雨水は、透水性を有する舗装層60に浸透し、舗装層60中を透過して透水層50中へ浸透し、透水層50を透過していく過程において濾過された後、暗渠管30内へ流入するので、図1に示す貯水構造100と同様の作用、効果を得ることができる。
【0039】
図6は、暗渠管30の上方に、人工芝70を植設した状態を示す一部省略垂直断面図であり、暗渠管30上に透水層50が形成され、透水層50上に人工芝70が植設されている。透水層50は、真砂土、砕石(クラッシャーランや再生クラッシャーランの少なくとも一方)及び土材に対し、セメント系固化材(若しくは中性固化材)と、団粒化剤と、水と、を添加・撹拌して形成された混合物を地盤G上に打設して固化させることによって形成されている。
【0040】
人工芝70に降り注いだ雨水は透水層50に浸透し、透水層50を透過していく過程において濾過された後、暗渠管30内へ流入するので、図1に示す貯水構造100と同様の作用、効果を得ることができる。なお、人工芝70に代えて、透水層50上に天然芝(図示せず)を植設することも可能であり、その場合も、図1に示す貯水構造100と同様の作用、効果を得ることができる。
【0041】
次に、図7図8に基づいて、その他の実施形態である貯水構造200について説明する。なお、図7図8において、図1図4に示す貯水構造100の構成部分と共通する部分については、図1図4中の符号と同符号を付して説明を省略する。
【0042】
図7図8に示すように、貯水構造200においては、図1図2に示す貯水構造100における暗渠管30が省略され、筒状体20の代わりに筒状体22が立設されている。貯水槽10は地盤G中に埋設され、地盤G上に路盤層40が形成され、路盤層40上に透水層50が形成されている。筒状体22の下方部分(地盤Gと接触している部分)には多数の貫通孔23が開設されている。
【0043】
透水層50の表面に降り注いだ雨水は透水層50に浸透し、透水層50及び路盤層40を順次、通過して地盤G中へ浸透していく。地盤G中へ浸透した雨水は地盤G中を下降していき、筒状体22の貫通孔23から筒状体22内へ流れ込み、筒状体22内を経由して貯水槽10内へ落下し、貯水槽10内に貯留される。
【0044】
透水層50の表面に降り注いだ雨水は、立体網目構造を包含する透水層50を通過する過程において濾過された後、貯水槽10内へ流れ込むので、貯水槽10内の貯留水Wは比較的清浄な状態に保つことができる。
【0045】
図7図8に示す貯水構造200は、図1図2中に示す暗渠管30が省略されているので、地盤Gの面積が比較的狭い場合に好適に施工することができる。また、暗渠管30の配管が不要となるので、施工工程の簡略化を図ることもできる。その他の部分の機能並びにそれによって得られる作用効果は図1図2中に示す貯水構造100と同様である。
【0046】
図1図8に基づいて説明した貯水構造100,200などは地上に降り注ぐ雨水を比較的速やかに貯水槽10内へ貯留することができるので、近年多発するゲリラ豪雨などの際に降り注ぐ雨水は、一旦、貯留槽10へ貯留された後、放流される結果、河川への雨水流出が抑制され、減災、防災を図ることができる。また、貯留槽10は耐震性を有するので、地震発生時の破損の心配もない。さらに、前述したように、貯留槽10内の貯留水Wはポンプ12で汲み上げて様々な用途に使用可能であるため、雨水の再利用(有効活用)を図ることができる。
【0047】
なお、図1図8に基づいて説明した貯水構造100,200などは、本発明に係る貯水構造を例示するものであり、本発明に係る貯水構造は前述した貯水構造100,200などに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る貯水構造は、グラウンド、駐車場あるいは広場などにおける貯水手段として土木建設業などの産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 貯水槽
10a,30 開口部
10f FRP層
10p 三層構造板材
10s 鋼板
11 オーバーフロー管
11a,20a 開口端
12 ポンプ
20,22 筒状体
20b,28 下方開口部
21 蓋体
23,32 貫通孔
30 暗渠管
30a 開口部
31 管壁
40 路盤層
50 透水層
60 舗装層
70 人工芝
W 貯留水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8