(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】ゴルフシャフト
(51)【国際特許分類】
A63B 53/12 20150101AFI20221021BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20221021BHJP
【FI】
A63B53/12 Z
A63B102:32
(21)【出願番号】P 2022113436
(22)【出願日】2022-07-14
(62)【分割の表示】P 2021115758の分割
【原出願日】2021-07-13
【審査請求日】2022-07-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤原 甲介
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-33831(JP,A)
【文献】登録実用新案第3033320(JP,U)
【文献】特開2013-116209(JP,A)
【文献】特開2011-212284(JP,A)
【文献】特開2011-92319(JP,A)
【文献】特開2007-117109(JP,A)
【文献】特開2005-152613(JP,A)
【文献】特開平10-5380(JP,A)
【文献】特開平10-127838(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0065860(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/10-53/12
A63B 102/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部から基端部にわたって漸次剛性が増加する剛性分布を有し、
前記剛性分布において、前記先端部及び前記基端部間の中間部に傾きが変わる中間点を有し、前記先端部と前記中間点との間の剛性の差が3.00kgf・m
2~5.00kgf・m
2であり、前記中間点と前記基端部との間の剛性の差が2.00kgf・m
2以下であ
り、
前記先端部と前記基端部との間で漸次外径が大きくなる段付き形状であり、
前記段付き形状は、前記先端部から前記中間点までの隣接する段部間の外径の差よりも前記中間点から前記基端部までの隣接する段部間の外径の差が小さく、
前記中間点を中心とした先端側の前記剛性分布の傾きは、前記中間点を中心とした基端側の前記剛性分布の傾きよりも大きい
、
ゴルフシャフト。
【請求項2】
請求項1記載のゴルフシャフトであって、
前記中間点は、先端からの距離が全長の40%~60%までの範囲に位置する、
ゴルフシャフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低弾道且つ低スピンを実現するゴルフシャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフにおいては、高弾道且つ低スピンであることによってボールの飛距離が伸びることが知られている。こうした高弾道且つ低スピンのボールは、例えば特許文献1のように、ゴルフクラブのシャフト(ゴルフシャフト)の剛性分布を調整することで実現可能である。
【0003】
かかる高弾道且つ低スピンのボールは、風の影響を受けやすく、飛距離が伸びないことがある。この場合、より弾道を低くした低弾道且つ低スピンのボールとすることが有利である。
【0004】
この低弾道且つ低スピンのボールは、一般にゴルフシャフトの先端の剛性を向上すれば実現できるとされているが、単に先端の剛性を向上させるだけでは不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、十分な低弾道且つ低スピンを得られなかった点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、先端部から基端部にわたって漸次剛性が増加する剛性分布を有し、前記剛性分布において、前記先端部及び前記基端部間の中間部に傾きが変わる中間点を有し、前記先端部と前記中間点との間の剛性の差が3.00kgf・m2~5.00kgf・m2であり、前記中間点と前記基端部との間の剛性の差が2.00kgf・m2以下であり、前記先端部と前記基端部との間で漸次外径が大きくなる段付き形状であり、前記段付き形状は、前記先端部から前記中間点までの隣接する段部間の外径の差よりも前記中間点から前記基端部までの隣接する段部間の外径の差が小さく、前記中間点を中心とした先端側の前記剛性分布の傾きは、前記中間点を中心とした基端側の前記剛性分布の傾きよりも大きい、ゴルフシャフトを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のゴルフシャフトでは、中間点との関係において先端部及び基端部の剛性を適切に設定し、十分な低弾道且つ低スピンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1に係るゴルフシャフトの側面図である。
【
図2】
図2は、
図1のゴルフシャフトの剛性分布を示すグラフである。
【
図3】
図3は、
図1のゴルフシャフトの打ち出し角度とスピン量を比較例と共に示す図表である。
【
図4】
図4は、
図2の剛性分布を比較例の剛性分布と共に示すグラフである。
【
図5】
図5は、本発明の実施例1に係るゴルフシャフトの製造方法に用いられる基本形状のゴルフシャフトを示す側面図である。
【
図6】
図6(A)~(D)は、フレックスの異なるゴルフシャフトを示す側面図である。
【
図7】
図7(A)及び(B)は、
図6(A)~(D)のゴルフシャフトの先端部、中間点、基端部の剛性を比較例の対応する剛性と共に示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
十分な低弾道且つ低スピンを得るという目的を、ゴルフシャフトの剛性分布によって実現した。
【0011】
すなわち、ゴルフシャフト(1)は、先端部(5)から基端部(7)にわたって漸次剛性が増加する剛性分布を有する。この剛性分布において、先端部(5)及び基端部(7)間の中間部(9)に傾きが変わる中間点(P)を有し、先端部(5)と中間点(P)との間の剛性の差が3.00kgf・m2~5.00kgf・m2であり、中間点(P)と基端部(7)との間の剛性の差が2.00kgf・m2以下となっている。
【0012】
中間点(P)は、ゴルフシャフト(1)の先端からの距離が全長の40%~60%までの範囲に位置させてもよい。
【0013】
ゴルフシャフト(1)は、先端部(5)と基端部(7)との間で漸次外径が大きくなる段付き形状であり、この段付き形状は、先端部(5)から中間点(P)までの隣接する段部(17)間の外径の差よりも中間点(P)から基端部(7)までの隣接する段部(17)間の外径の差が小さい。
【0014】
ゴルフシャフトの製造方法は、先端部(5)から基端部(7)にわたって漸次剛性が増加する剛性分布を有するゴルフシャフト(1)を製造する方法である。この製造方法は、先端部(5)と基端部(7)との間の中間部(9)が、本体部(11)と、この本体部(11)に対して先端側に位置する外径の異なる複数の調整段部(13)と、この調整段部(13)に対して先端側に位置する外径が一定のストレート部(15)とを有した基本形状に対し、一又は複数の調整段部(13)の分だけ基端部(7)の長さを軸方向に伸ばし、且つ基端部(7)の長さの伸ばし量に対応する調整段部(13)を無くす。
【0015】
この製造方法では、ストレート部(15)の外径を、無くした調整段部(13)の内の最も大きい外径と同一にしてもよい。
【実施例1】
【0016】
[ゴルフシャフトの構造]
図1は、本発明の実施例1に係るゴルフシャフトの側面図である。
【0017】
本実施例のゴルフシャフト1は、金属シャフトであり、金属製の中空管体からなる。このゴルフシャフト1は、全体として段付き形状の漸次増加する外径を有している。ゴルフシャフト1の横断面における断面形状は円形となっている。なお、ゴルフシャフト1の外径は、段付き形状ではなく、全体又は一部がテーパー状等のように他の形状であってもよい。また、ゴルフシャフト1の横断面形状は、楕円等の他の形状としてもよい。
【0018】
ゴルフシャフト1の長さは、37~41inch(約93.98~104.14cm)となっている。ただし、ゴルフシャフト1は、37inchより短く、或いは41inchより長く設定することも可能である。また、ゴルフシャフト1の材質は、スチールであるが、他の材質であってもよい。他の材質としては、他の金属、例えばアルミニウムやチタン並びにそれらの合金、若しくはCFRP等の非金属、或いは金属と非金属とを組み合わせたコンポジット材等がある。
【0019】
かかるゴルフシャフト1は、先端部5と、基端部7と、中間部9とで構成されている。
【0020】
先端部5は、軸方向の先端部であり、軸方向でのゴルフシャフト1の先端から所定範囲の領域をいう。本実施例の先端部5は、ゴルフクラブのヘッドが取り付けられる部分である。この先端部5は、ゴルフシャフト1の基端側へ向けて漸次僅かに外径が増加するテーパー状に形成されている。ただし、先端部5は、外径を一定にしたストレート状に形成してもよい。
【0021】
基端部7は、ゴルフシャフト1の軸方向の基端部であり、軸方向でのゴルフシャフト1の基端から所定範囲の領域をいう。本実施例の基端部7は、ゴルフクラブのグリップが取り付けられる部分である。この基端部7は、外径を一定にしたストレート状に形成されているが、基端側へ向けて漸次僅かに外径が変化するテーパー状としてもよい。
【0022】
中間部9は、先端部5と基端部7との間に位置する部分であり、本体部11と、複数の調整段部13と、ストレート部15と、テーパー部16とで構成されている。
【0023】
本体部11は、全体として段付き形状に形成された部分であり、複数の段部17によって構成されている。複数の段部17は、基端側に向けて漸次外径が大きくなっている。各段部17においては、外径が一定となっているが、外径を基端側に向けて漸次増加させてもよい。
【0024】
本体部11の段付き形状は、先端部5から後述する中間点P(
図2参照)までの隣接する段部17間の外径の差よりも中間点Pから基端部7までの隣接する段部17間の外径の差が小さい。なお、中間点Pが段部17の途中に位置する場合は、その段部17と直前又は直後に位置する段部17との外径の差から、それまでの段部17間の外径の差よりも小さくすればよい。また、中間点Pから基端部7までの段部17は、先端部5から中間点Pまでの段部17よりも軸方向の寸法が長く設定されている。
【0025】
この本体部11は、ゴルフシャフト1のフレックスのバリエーションに拘わらず形状が変化しない部分である。ゴルフシャフト1のフレックスとは、ゴルフシャフト1の硬さのことであり、同一のゴルフシャフト1であっても、複数のバリエーションが展開されることが一般的である。
【0026】
複数の調整段部13は、ゴルフシャフト1のフレックスを調整するための段部である。これら調整段部13の数は、後述するようにフレックスが硬くなるに従って減少する。このため、フレックスによっては、ゴルフシャフト1が調整段部13を有していないこともある。なお、調整段部13は、フレックスに拘わらず、全く備えない構成とすることも可能である。
【0027】
複数の調整段部13は、本体部11に対して先端側に位置し、異なる外径を有する。本実施例において、調整段部13は、全体として本体部11に隣接する段付き形状であり、本体部11の段付き形状に連続する。これら調整段部13は、本体部11の段部17と同様に、基端側に向けて漸次外径が大きくなっている。
【0028】
なお、調整段部13は、本体部11に隣接する必要はなく、調整段部13と本体部11との間には、テーパー部や段部等を介在させてもよい。
【0029】
各調整段部13の外径は、一定となっている。ただし、調整段部13の外径は、基端側に向けて漸次増加させてもよい。複数の調整段部13は、同一の軸方向の長さを有している。ただし、複数の調整段部13の軸方向の長さは、フレックス展開に応じて異ならせることも可能である。
【0030】
ストレート部15は、調整段部13に対して先端側に位置する外径が一定の部分である。なお、ストレート部15は、調整段部13が省略される場合、先端部5と中間部9の本体部11との間に介設すればよい。
【0031】
本実施例のストレート部15は、先端部5と調整段部13との間に介在し、外径が調整段部13の最も小さいものよりも小さく、先端部5よりも大きい。このストレート部15の外径は、後述するように、フレックスが硬くなるに従って大きく設定される。なお、ストレート部15は、調整段部13に隣接しているが、調整段部13とストレート部15との間には、テーパー部や段部等を介在させてもよい。
【0032】
テーパー部16は、ストレート部15と先端部5との間に配置されたテーパー状の部分であり、ストレート部15と先端部5との間の径の差を吸収する。
【0033】
かかる構成のゴルフシャフト1は、先端部5から基端部7にわたって漸次剛性が増加する剛性分布を有している。なお、漸次剛性が増加するとは、剛性分布において、先端部5から基端部7に至る線分の近似直線の傾き、先端部5と基端部7とを結ぶ線の傾き、或いは先端部5から基端部7に至る線分の傾きの平均値等が正であることをいう。この限りにおいて、先端部5から基端部7に至るまでに剛性が僅かに下がるような場合も漸次剛性が増加するものに含まれる。
【0034】
剛性が下がる場合において、許容される剛性の低下量は、十分な低弾道且つ低スピンを得るために、先端部5と基端部7との間の剛性の差の10%以下とする。低下量とは、剛性分布上で隣接する先端側の山部と基端側の谷部との間の剛性の差をいう。
【0035】
図2は、ゴルフシャフト1の剛性分布を示す。なお、
図2では、ゴルフシャフト1の長さが41inch、重量が110gとなっており、一般的な同一長さのゴルフシャフトよりも軽い。
【0036】
図2の剛性分布のように、本実施例のゴルフシャフト1では、先端部5及び基端部7の剛性が一定となっており、先端部5から基端部7にわたる部分としての中間部9の剛性が漸次増加している。この剛性分布は、ゴルフシャフト1の段付き形状及び肉厚により設定され、後述するように基端部7の軸方向の長さ、調整段部13の数、並びにストレート部15の外径の設定により調整される。
【0037】
かかる剛性分布において、中間部9は、傾きが変わる中間点Pを有している。ここでの傾きとは、中間点Pを中心とした先端側の傾きと基端側の傾きを意味する。なお、本明細書において、中間点Pは、剛性分布上の傾きが変わる点だけでなく、これに対応するゴルフシャフト1の軸方向での部位を意味する。
【0038】
先端側の傾きは、先端部5から中間点Pに至る線分の近似直線の傾き、先端部5と中間点Pとを結ぶ線の傾き、或いは先端部5から中間部9に至る線分の傾きの平均値等である。基端側の傾きは、中間点Pから基端部7に至る線分の近似直線の傾き、中間点Pと基端部7とを結ぶ線の傾き、或いは中間部9から基端部7に至る線分の傾きの平均値等である。
【0039】
先端側の傾きは、基端側の傾きよりも大きい。これは、段付き形状の隣接する段部17間の外径の差及び軸方向の寸法の差により調整可能である。
【0040】
かかる剛性分布において、先端部5と中間点Pとの間の剛性の差は、3.00kgf・m2~5.00kgf・m2であり、中間点Pと基端部7との間の剛性の差が2.00kgf・m2以下となっている。先端部5の剛性は、本実施例において、先端から50mmの位置の剛性であるが、先端部5の剛性が変動する場合は、先端部5の平均値、最大値、最小値等とすることが可能である。基端部7の剛性は、基端部7の何れかの部位における剛性をいう。ただし、基端部7の剛性が軸方向で変動する場合は、平均値、最大値、最小値等とすることが可能である。
【0041】
中間点Pは、好ましくはゴルフシャフト1の先端からの距離がゴルフシャフト1の全長の40%~60%までの範囲に位置する。中間点Pの剛性は、好ましくは5.40kgf・m2~8.00kgf・m2とする。さらに好ましくは、先端部5の剛性は、2.20kgf・m2以上、基端部7の剛性は、9.00kgf・m2以下とする。本実施例において、中間点Pの位置は、全長の50%の位置であり、中間点Pの剛性は、6.06kgf・m2となっている。先端部5の剛性は、2.30kgf・m2、基端部7の剛性は、7.39kgf・m2となっている。なお、中間点Pの位置及び剛性、先端部5及び基端部7の剛性は、上記以外も適用可能である。
【0042】
また、本実施例では、先端から全長の20%の位置に至るまでに、剛性が4.00kgf・m2を越えないように設定されている。
【0043】
この剛性分布により、本実施例のゴルフシャフト1では、中間点Pとの関係において、先端部5の剛性を高く且つ基端部7の剛性を低くすることで、しなりが遅くなり、打ち出し角度を小さくすることができる。また、中間点Pの剛性が高いことで、スピン量を減少させることができる。結果として、本実施例のゴルフシャフト1では、十分な低弾道且つ低スピンを得ることができる。
【0044】
図3は、本実施例のゴルフシャフト1の打ち出し角度とスピン量を比較例と共に示す図表であり、
図4は、
図2の剛性分布を比較例の剛性分布と共に示すグラフである。なお、比較例3のみ、ゴルフクラブとしての番手を実施例及び他の比較例と合わせるために長さが39インチとなっている。
【0045】
比較例1は、低弾道且つ非低スピン、比較例2は、高弾道且つ低スピン、比較例3は、弾道及びスピン量が共に一般的なものである。
【0046】
比較例1は、比較例3に対して先端部側の剛性が高く設定されると共に基端部の剛性が低く設定されている。比較例2は、比較例3に対して中間部から基端部にわたる全域で剛性が高く設定されている。
【0047】
これに対し、本実施例では、比較例3に対し、先端部から中間部にかけて剛性が高く設定され、中間部から基端部にかけて剛性が低く設定されている。また、本実施例は、中間部9の剛性が、比較例1及び2間に位置する。
【0048】
かかる相違より、本実施例では、単に先端部側の剛性を向上させた比較例1に対して、同等の打ち出し角度としながら、スピン量を少なくすることができている。また、スピン量については、低スピンの比較例2よりも更に少なくできている。
【0049】
[ゴルフシャフトの製造方法]
本実施例のゴルフシャフト1の製造方法では、例えば板材を丸めて内外径が一定の管体を形成する。この管体に対し、段付け加工すると共に肉厚を設定する。
【0050】
このとき、本実施例では、基端部7の軸方向の長さ、調整段部13の数、並びにストレート部15の外径の設定によってフレックスが調整される。
【0051】
フレックスの調整は、
図5の基本形状に対して行われる。
図5は、本実施例のゴルフシャフト1の製造方法のための基本形状を示す側面図である。
【0052】
基本形状は、中間部9が、本体部11、複数の調整段部13、及びストレート部15を有している。本実施例において、基本形状は、3つの調整段部13を有し、その分、
図1のゴルフシャフト1よりも基端部7が短く設定されている。また、基本形状は、テーパー部16を有していない。その他は、
図1のゴルフシャフト1と同一である。なお、基本形状において、調整段部13の数や各部の寸法等はゴルフシャフト1の特性に応じて変更可能である。
【0053】
フレックスの調整は、基本形状に対し、一又は複数の調整段部13の分だけ基端部7の長さを軸方向に伸ばし、且つ基端部7の長さの伸ばし量に対応する調整段部13を無くすことで行われる。これにより、本体部11の剛性分布を変更することなく、フレックスを調整することができる。
【0054】
さらに、ストレート部15の外径を、無くした調整段部13の内の最も大きい外径と同一にする。これにより、先端側の剛性を向上させて先端部5から中間点Pまでの剛性分布の傾きの上昇を抑制している。このとき、先端部5とストレート部5との外径の差を吸収するために、テーパー部16が形成される。
【0055】
なお、本実施例のフレックスの調整(製造方法)は、低弾道且つ低スピンのためのゴルフシャフト1以外の他のゴルフシャフトにも適用可能である。その他のゴルフシャフトでは、フレックス調整時に先端部5から中間点Pにわたる剛性分布の傾きの上昇を抑制しなくてもよいことがある。この場合、ストレート部15の外径は、フレックスの調整時に変動させる必要はなく、基本形状のままとしてもよい。
【0056】
図6(A)~
図6(D)は、フレックスの異なる低弾道且つ低スピンのためのゴルフシャフト1を示す。
図6(A)~
図6(D)のゴルフシャフト1は、この順序でフレックスが硬くなり、それぞれR、S、X、TXとなっている。
【0057】
図6(A)のゴルフシャフト1は、
図5の基本形状と同一である。
図6(B)のゴルフシャフト1は、
図5のゴルフシャフト1と同一であり、基本形状に対して最も径の小さい調整段部13を無くしたものである。
図6(C)のゴルフシャフト1は、径の小さい方から調整段部13を二つ無くしたものであり、
図6(D)のゴルフシャフト1は、調整段部13を全て無くしたものである。
【0058】
図6(B)~
図6(D)のゴルフシャフト1は、それぞれ調整段部13の一つ、二つ、三つ分だけ、基端部7の長さを軸方向に伸ばしている。また、
図6(B)~
図6(D)のゴルフシャフト1は、ストレート部15の外径が、それぞれ調整段部13の一段目、二段目、三段目の外径と同一に設定されている。
【0059】
この外径の設定により、
図6(B)~
図6(D)のゴルフシャフト1では、ストレート部15と先端部5との外径の差が大きくなるため、テーパー部16がストレート部15と先端部5との間に介設されている。本実施例では、ストレート部15と先端部5との外径の差が大きくなるほど、テーパー部16が軸方向に長く設定されている。これにより、テーパー部16のテーパー角度が大きくなることが抑制されている。
【0060】
図7(A)及び
図7(B)は、
図6(A)~
図6(D)のゴルフシャフト1の先端部、中間点、基端部の剛性を比較例の対応する剛性と共に示し、
図7(A)は41インチ、
図7(B)は37インチの場合である。
図7において、
図6(A)~(D)のゴルフシャフト1は、それぞれR、S、X、TXとして示している。中間-先端は、中間点Pと先端部5との間の剛性の差を示し、基端-中間は、基端部7と中間点Pとの間の剛性の差を示す。
図7中の数値は、単位がkgf・m
2である。
【0061】
図7のように、本実施例のゴルフシャフト1は、何れも中間-先端が3.00~5.00kgf・m
2であり、且つ基端-中間が2.00kgf・m
2以下にできている。これに対し、比較例1及び2は、中間-先端が3.00~5.00kgf・m
2及び基端-中間が2.00kgf・m
2以下を同時に満たすことはできていない。結果として、比較例1及び2では、
図3のように低弾道且つ低スピンが得られないものとなっている。
【0062】
[実施例1の効果]
以上説明したように、本実施例のゴルフシャフト1は、先端部5から基端部7にわたって漸次増加する剛性分布において、先端部5及び基端部7間の中間部9に傾きが変わる中間点Pを有し、先端部5と中間部9の中間点Pとの間の剛性の差が3.00kgf・m2~5.00kgf・m2であり、中間部9の中間点Pと基端部7との間の剛性の差が2.00kgf・m2以下である。
【0063】
このため、本実施例のゴルフシャフト1では、中間点Pとの関係において、先端部5の剛性を高く且つ基端部7の剛性を低くすることで、確実に打ち出し角度を小さくし、且つ確実にスピン量を減少させることができる。結果として、本実施例のゴルフシャフト1では、十分な低弾道且つ低スピンを得ることができる。
【0064】
また、ゴルフシャフト1では、中間点Pがゴルフシャフト1の先端からの距離がゴルフシャフト1の全長の40%~60%までの範囲に位置するので、より確実に低弾道且つ低スピンを得ることができる。
【0065】
ゴルフシャフト1は、先端部5と基端部7との間で漸次外径が大きくなる段付き形状であり、この段付き形状は、先端部5から中間点Pまでの隣接する段部17間の外径の差よりも中間点Pから基端部7までの隣接する段部17間の外径の差が小さい。
【0066】
このため、容易且つ確実に低弾道且つ低スピンを実現可能なゴルフシャフト1を得ることができる。
【0067】
本実施例のゴルフシャフト1の製造方法は、基本形状に対し、一又は複数の調整段部13の分だけ基端部7の長さを軸方向に伸ばし、且つ基端部7の長さの伸ばし量に対応する調整段部を無くすことで、フレックスの異なるゴルフシャフト1を製造する。
【0068】
これにより、本実施例では、本体部11の剛性分布を変更することなく、フレックス展開することができる。また、本実施例では、製造されたゴルフシャフト1の調整段部13の数によりフレックスを外観上から判別することができる。さらに、調整段部13の長さ及び径の設定により、狙ったフレックス展開を容易に行うことができる。
【0069】
また、本実施例では、ストレート部15の外径を無くした調整段部13の内の最も大きい外径と同一にする。従って、低弾道且つ低スピンのゴルフシャフト1において、フレックス展開を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0070】
1 ゴルフシャフト
5 先端部
7 基端部
9 中間部
11 本体部
13 調整段部
15 ストレート部
P 中間点
【要約】
【課題】十分な低弾道且つ低スピンを得ることが可能なゴルフシャフトを提供する。
【解決手段】先端部5から基端部7にわたって漸次剛性が増加する剛性分布を有し、この剛性分布において、先端部5及び基端部7間の中間部9に傾きが変わる中間点Pを有し、先端部5と中間点Pとの間の剛性の差が3.00kgf・m
2~5.00kgf・m
2であり、中間点Pと基端部7との間の剛性の差が2.00kgf・m
2以下である。
【選択図】
図1