(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】心拍分類装置及び入浴者見守りシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/346 20210101AFI20221021BHJP
【FI】
A61B5/346
(21)【出願番号】P 2022125488
(22)【出願日】2022-08-05
【審査請求日】2022-08-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506301140
【氏名又は名称】公立大学法人会津大学
(73)【特許権者】
【識別番号】510050557
【氏名又は名称】株式会社 情報システムエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】セネヴィラッナ ムディヤンセラゲ イスル ニロシャナ
(72)【発明者】
【氏名】陳 文西
(72)【発明者】
【氏名】黒田 聡
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-62202(JP,U)
【文献】国際公開第2013/114596(WO,A1)
【文献】特開2009-240661(JP,A)
【文献】特開2002-269654(JP,A)
【文献】特開2019-201997(JP,A)
【文献】Md. Rashed-Al-Mahfuz et al.,Deep convolutional neural networks based ECG beats classification to diagnose cardiovascular conditi,Biomedical Engineering letters,Vol.11,2021年,p.147-162,https://doi.org/10.1007/s13534-021-00185-w
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/318-5/367
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電信号に基づいて、心電信号の各心拍の分類を示す所属分類を推定する心拍分類装置において、
前記心電信号から前記心電信号の一部を含む部分信号を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された部分信号が心電信号のピークを含む参照用部分信号である確率を算出する確率算出手段と、
前記確率算出手段により算出された確率が閾値以上となる部分信号に基づいて、1周期分の心電信号を示す心電ビート信号を分離する分離手段と、
前記分離手段により分離された心電ビート信号に基づいて、前記所属分類を推定する所属分類推定手段とを備えること
を特徴とする心拍分類装置。
【請求項2】
前記確率算出手段は、前記参照用部分信号に基づく入力データ、及び前記入力データに紐づく確率を一対の確率学習用データとして、複数の前記確率学習用データを用いて機械学習により生成された確率モデルを参照し、前記抽出手段により抽出された部分信号に基づく確率を算出すること
を特徴とする請求項1に記載の心拍分類装置。
【請求項3】
前記抽出手段は、心拍に関する心拍情報に基づいて、前記部分信号を抽出すること
を特徴とする請求項1に記載の心拍分類装置。
【請求項4】
前記抽出手段は、前記分離手段により分離された心電ビート信号に基づいて、新たに部分信号を抽出すること
を特徴とする請求項1に記載の心拍分類装置。
【請求項5】
前記分離手段は、前記心電信号における複数のピーク間の距離に基づいて、前記心電ビート信号の1周期分の長さを算出すること
を特徴とする請求項1に記載の心拍分類装置。
【請求項6】
前記所属分類推定手段は、前記分離手段により分離された心電ビート信号をスカログラム画像に変換し、予め取得された学習用スカログラム画像に基づく入力データ、及び前記入力データに紐づく所属分類を一対の学習用データとして、複数の前記学習用データを用いて生成されたニューラルネットワークモデルを参照し、変換した前記スカログラム画像を入力として、所属分類を推定すること
を特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の心拍分類装置。
【請求項7】
浴室内に設けられる温度、湿度、照度、響度、香り又は気圧のうちの何れか1以上を示す環境データを計測する浴室環境センサと、
前記浴室に入浴する入浴者の健康データを取得する入浴者情報取得手段と、
請求項6に記載された心拍分類装置により推定された1又は複数の所属分類と、前記浴室環境センサにより計測された環境データ及び前記入浴者情報取得手段により取得された健康データを組み合わせた入浴情報とに基づいて、予め取得された所属分類と入浴情報とに対する入浴者の状態を示す状態データを記録した状態データベースを参照し、前記入浴者の状態データを判定する状態判定手段と、
予め取得された状態データと状態データに対する処置の方法を示す処置データとを1対の判断用学習データとし、複数の判断用学習データが記録された処置情報データベースを参照し、前記状態判定手段によって判定された状態データに対する処置データを判断する処置判断手段と、を備えること
を特徴とする入浴者見守りシステム。
【請求項8】
前記処置判断手段により判断された処置データを外部機器に送信する送信手段と、
前記処置判断手段により判断された処置データを入浴者に提示する提示手段と、をさらに備えること
を特徴とする請求項7に記載の入浴者見守りシステム。
【請求項9】
前記処置判断手段により判断された処置データに基づき、前記浴室に設けられた浴槽を排水する排水手段をさらに備えること
を特徴とする請求項7に記載の入浴者見守りシステム。
【請求項10】
前記処置判断手段により判断された処置データに対する処置結果を示す結果データを取得する処置結果取得手段と、
前記処置結果取得手段により取得された結果データに応じて、前記状態判定手段によって判定された状態データと、前記処置判断手段により判断された処置データとを1対の判断用学習データとし、新たに前記処置情報データベースに記録する記録手段とを備えること
を特徴とする請求項7に記載の入浴者見守りシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心拍分類装置及び入浴者見守りシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザの心拍を分類する技術が注目されている。また、これに伴い、ユーザの心拍を分類するためのユーザの心拍の1周期分の心電信号を示す心電ビート信号を分離する技術が必要とされている。心電ビート信号を分離する技術として、例えば特許文献1のような技術が提案されている。
【0003】
特許文献1では、ユーザが選択した固定サイズの抽出ウィンドウにより抽出された部分信号に基づいて、心電ビート信号を分離する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら心電信号等の非決定論的信号の場合、心拍の間隔が常に変化するため、心電信号から最適な心電ビート信号を分離するには、心拍の間隔の変化に対応した心電ビート信号の分離が必要とされている。しかしながら、特許文献1に開示されている心電ビート信号を分離する技術では、ユーザが選択した固定サイズの抽出ウィンドウにより抽出された部分信号に基づいて、心電ビート信号を分離する。このため、心拍の間隔の変化に対応した心電ビート信号の分離ができないという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、心拍の間隔の変化に対応した心電ビート信号の分離ができる心拍分類装置及び入浴者見守りシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る心拍分類装置は、心電信号に基づいて、心電信号の各心拍の分類を示す所属分類を推定する心拍分類装置において、前記心電信号から前記心電信号の一部を含む部分信号を抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された部分信号と心電信号のピークを含む参照用部分信号との確率を算出する確率算出手段と、前記確率算出手段により算出された確率が閾値以上となる部分信号に基づいて、1周期分の心電信号を示す心電ビート信号を分離する分離手段と、前記分離手段により分離された心電ビート信号に基づいて、前記所属分類を推定する所属分類推定手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る心拍分類装置は、第1発明において、前記参照用部分信号に基づく入力データ、及び前記入力データに紐づく確率を一対の確率学習用データとして、複数の前記確率学習用データを用いて機械学習により生成された確率モデルを参照し、前記抽出手段により抽出された部分信号に基づく確率を算出することを特徴とする。
【0009】
第3発明に係る心拍分類装置は、第1発明において、前記抽出手段は、心拍に関する心拍情報に基づいて、前記部分信号を抽出することを特徴とする。
【0010】
第4発明に係る心拍分類装置は、第1発明において、前記抽出手段は、前記分離手段により分離された心電ビート信号に基づいて、新たに部分信号を抽出することを特徴とする。
【0011】
第5発明に係る心拍分類装置は、第1発明において、前記分離手段は、前記心電信号における複数のピーク間の距離に基づいて、前記心電ビート信号の1周期分の長さを算出することを特徴とする。
【0012】
第6発明に係る心拍分類装置は、第1発明~第5発明の何れかにおいて、前記所属分類推定手段は、前記分離手段により分離された心電ビート信号をスカログラム画像に変換し、予め取得された学習用スカログラム画像に基づく入力データ、及び前記入力データに紐づく所属分類を一対の学習用データとして、複数の前記学習用データを用いて生成されたニューラルネットワークモデルを参照し、変換した前記スカログラム画像を入力として、所属分類を推定することを特徴とする。
【0013】
第7発明に係る入浴者見守りシステムは、浴室内に設けられる温度、湿度、照度、響度、香り又は気圧のうちの何れか1以上を示す環境データを計測する浴室環境センサと、前記浴室に入浴する入浴者の健康データを取得する入浴者情報取得手段と、第6発明に記載された心拍分類装置により推定された1又は複数の所属分類と、前記浴室環境センサにより計測された環境データ及び前記入浴者情報取得手段により取得された健康データを組み合わせた入浴情報とに基づいて、予め取得された所属分類と入浴情報とに対する入浴者の状態を示す状態データを記録した状態データベースを参照し、前記入浴者の状態データを判定する状態判定手段と、予め取得された状態データと状態データに対する処置の方法を示す処置データとを1対の判断用学習データとし、複数の判断用学習データが記録された処置情報データベースを参照し、前記状態判定手段によって判定された状態データに対する処置データを判断する処置判断手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
第8発明に係る入浴者見守りシステムは、第7発明において、前記処置判断手段により判断された処置データを外部機器に送信する送信手段と、前記処置判断手段により判断された処置データを入浴者に提示する提示手段と、をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
第9発明に係る入浴者見守りシステムは、第7発明において、前記処置判断手段により判断された処置データに基づき、前記浴室に設けられた浴槽を排水する排水手段をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
第10発明に係る入浴者見守りシステムは、第7発明において、前記処置判断手段により判断された処置データに対する処置結果を示す結果データを取得する処置結果取得手段と、前記処置結果取得手段により取得された結果データに応じて、前記状態判定手段によって判定された状態データと、前記処置判断手段により判断された処置データとを1対の判断用学習データとし、新たに前記処置情報データベースに記録する記録手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1発明~第10発明によれば、分離手段は、確率が閾値以上となる部分信号に基づいて、1周期分の心電信号を示す心電ビート信号を分離する。このため、心電信号のピークを含む参照用部分信号との確率が高い部分信号に基づいて心電ビート信号を分離することができる。これにより、心拍の間隔の変化に対応した心電ビート信号の分離が可能となる。
【0018】
特に、第2発明によれば、確率算出手段は、確率モデルを参照し、部分信号に基づく確率を算出する。このため、より高精度に確率を算出することが可能となる。
【0019】
特に、第3発明によれば、心拍に関する心拍情報に基づいて、部分信号を抽出する。これにより、例えばユーザの心拍数に基づいて、ユーザ毎に適したウィンドウの幅を有する部分信号を抽出することが可能となる。これにより、精度の良い心電ビート信号の分離が可能となる。
【0020】
特に、第4発明によれば、抽出手段は、心電ビート信号に基づいて、新たに部分信号を抽出する。これにより、ユーザの心拍の変化に伴い、適切な位置の部分信号を抽出することが可能となるため、より高速かつ効率的に心電ビート信号を分離することができ、かつ同一のピークを含む部分信号の抽出を防ぐことが可能となる。
【0021】
特に、第5発明によれば、分離手段は、複数のピーク間の距離に基づいて、心電ビート信号の1周期分の長さを算出する。これにより、例えば心拍の間隔が変化した場合においても、適切な周期の心電ビート信号の分離が可能となる。
【0022】
特に、第6発明によれば、所属分類推定手段は、ニューラルネットワークモデルを参照し、変換したスカログラム画像を入力として、所属分類を推定する。このため、スカログラム画像を入力データとして使用することにより、CNNモデルのサイズを縮小することができ、低コスト且つ高速で心拍分類が可能となる。
【0023】
第7発明~第10発明によれば、所属分類と入浴情報とに基づいて、状態データベースを参照し、入浴者の状態データを判定する。これにより、入浴者の状態を高精度に判定することが可能となる。また、処置判断手段は、状態判定手段によって判定された状態データに対する処置データを判断する。これにより、入浴者に対する適切な処置を高精度に判断することができる。
【0024】
特に、第8発明によれば、処置データを外部機器に送信し、処置データを入浴者に提示する。これにより、入浴者及び外部端末を所有する入浴者の家族又は介護者に適切な処置方法を提示することが可能となる。
【0025】
特に、第9発明によれば、排水手段は、処置データに基づき、浴室に設けられた浴槽を排水する。これにより、入浴者の状態に応じて、自動的に排水を行うことが可能となる。
【0026】
特に、第10発明によれば、記録手段は、結果データに応じて、状態データと処置データとを1対の判断用学習データとし、新たに処置情報データベースに記録する。これにより、結果に応じて、適切な学習データをフィードバックすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本実施形態における入浴者見守りシステムの一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態における浴槽の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3(a)は、本実施形態における心拍分類装置の構成の一例を示す模式図である。
図3(b)は、本実施形態における心拍分類装置の機能の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における心拍分類装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5(a)は、心電信号の一例を示す模式図である。
図5(b)は、心電ビート信号の三例を示す模式図である。
図5(c)は、(b)に対応するスカログラム画像の三例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、所属分類の七例を示す模式図である。
図6は、左側は心電信号を示し、右側はそれぞれの対応するスカログラム画像を示す。
【
図7】
図7は、心電ビート信号の分類に用いるニューラルネットワークモデルの一例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、心電信号から心電ビート信号を抽出する動作の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、心電信号から部分信号を抽出し、心電ビート信号の境界を決定するためのウィンドウ移動の適応プロセスを示す模式図である。
【
図10】
図10は、ウィンドウのパラメータの計算の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、確率モデルの学習データである参照用部分信号を生成するための心電信号のトリプレットの一例を示す模式図である。
【
図12】ECGトリプレットセグメントおよびクリティカルcpl、cpm、cprを用いて、1の確率が割り当てられる12個の参照用部分信号を生成する方法を示す模式図である。
【
図13】
図13は、ECGトリプレットセグメントおよびクリティカルcpl、cpm、cprを用いて、0の確率が割り当てられる12個の参照用部分信号を生成する方法を示す模式図である。
【
図14】
図14は、確率評価モデルの一例を示す模式図である。
【
図15】
図15は、本実施形態における入浴者見守りシステムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態における入浴者見守りシステムの一例について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、本実施形態における入浴者見守りシステム100の一例を示す模式図である。
【0030】
入浴者見守りシステム100は、入浴者の状態を管理するために用いられる。
【0031】
入浴者見守りシステム100は、例えば
図1に示すように、通信網4を介して接続される心拍分類装置1と、端末2と、サーバ3と浴室5とを備える。
【0032】
端末2は、例えば入浴者見守りシステム100により状態を管理される入浴者の家族、又は介護者等が保有し、通信網4を介して心拍分類装置1と接続される。端末2は、例えばパーソナルコンピュータや、タブレット端末等の電子機器が用いられる。端末2は、例えば心拍分類装置1の備える機能のうち、少なくとも一部の機能を備えてもよい。
【0033】
サーバ3は、通信網4を介して心拍分類装置1等に接続される。サーバ3は、過去の各種データ等が記憶され、必要に応じて心拍分類装置1及び浴室5から各種データが送信される。サーバ3は、例えば心拍分類装置1の備える機能のうち、少なくとも一部の機能を備えてもよく、例えば心拍分類装置1の代わりに少なくとも一部の処理を行ってもよい。
【0034】
通信網4は、例えば心拍分類装置1が通信回路を介して接続されるインターネット網等である。通信網4は、いわゆる光ファイバ通信網で構成されてもよい。また、通信網4は、有線通信網のほか、無線通信網等の公知の通信技術で実現してもよい。また、通信網4は、LAN(Local Area Network)であってもよい。
【0035】
浴室5は、入浴者が入浴するための閉空間である。浴室5は、
図2に示すように、浴室5内に設置された浴槽51と、浴室5内に設けられたセンサ53と、モニタ54と、換気扇56と、浴槽51に設けられた排水装置52と、電極55とを備える。また、浴室5は、2個又は2個以上の電極55が備えられてもよい。また、浴室5は、図示しない空調機、照明器具、音響機器、香り発生器等を備えてもよい。また、センサ53と、換気扇56と、排水装置52と、モニタ54と、電極55とは、通信網4を介して心拍分類装置1に接続される。
【0036】
排水装置52は、心拍分類装置1の指令により、浴槽51内を排水するための装置である。排水装置52は、例えば後付けが可能な任意の排水機能を有する装置であるが、この限りではなく、任意の装置を用いてもよい。排水装置52は、例えば心拍分類装置1の指令により、バネ等を用いて浴槽51の水栓を開栓することにより浴槽51内を排水する装置であってもよい。
【0037】
センサ53は、浴室5内の温度、湿度、気圧、照度、響度(音楽等)、又は香りのうちの何れか1以上を示す環境データを計測するセンサであり、温度センサ、湿度センサ、気圧センサ等の各種センサが用いられる。センサ53は、通信網4を介して各種機器に環境データを送信する。
【0038】
モニタ54は、心拍分類装置1の指令に応じて、入浴者に対する処置の方法を示す処置データを提示するためのモニタである。
【0039】
電極55は、入浴者の心電信号を測定するための電極である。電極55は、例えば入浴者の手足や胸部等に近い複数の箇所の電位差を測定することにより、入浴者の心電信号を測定する。電極55は、複数があり、浴槽51に埋め込まれてもよい。また、電極55は、浴槽51の壁に取り付けられてもよい。なお、入浴者は電極55に接触することなく心電波形を測定できる。
【0040】
心拍分類装置1として、例えばラップトップ(ノート)PC又はデスクトップPC等の電子機器が用いられる。心拍分類装置1は、例えば
図3(a)に示すように、筐体10と、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、保存部104と、I/F105~107とを備える。各構成101~107は、内部バス110により接続される。
【0041】
CPU101は、心拍分類装置1全体を制御する。ROM102は、CPU101の動作コードを格納する。RAM103は、CPU101の動作時に使用される作業領域である。保存部104は、データベースや学習対象データ等の各種情報が記憶される。保存部104として、例えばHDD(Hard Disk Drive)のほか、SSD(Solid State Drive)等のデータ保存装置が用いられる。なお、例えば心拍分類装置1は、図示しないGPU(Graphics Processing Unit)を有してもよい。
【0042】
I/F105は、通信網4を介して、必要に応じて端末2、サーバ3、ウェブサイト等との各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。I/F106は、入力部108との情報の送受信を行うためのインターフェースである。入力部108として、例えばキーボードが用いられ、心拍分類装置1の使用者等は、入力部108を介して、各種情報、又は心拍分類装置1の制御コマンド等を入力する。I/F107は、表示部109との各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。表示部109は、保存部104に保存された各種情報、又はコンテンツ等を表示する。表示部109として、ディスプレイが用いられ、例えばタッチパネル式の場合、入力部108と一体に設けられる。また、表示部109は、スピーカが用いられてもよい。
【0043】
図3(b)は、心拍分類装置1の機能の一例を示す模式図である。心拍分類装置1は、取得部11と、変換部12と、所属分類推定部13と、記憶部14と、出力部15と、処置判断部16と、状態判定部17と、抽出部18、分離部19とを備える。なお、
図3(b)に示した各機能は、CPU101が、RAM103を作業領域として、保存部104等に記憶されたプログラムを実行することにより実現され、例えば人工知能等により制御されてもよい。
【0044】
取得部11は、環境データ、心電信号、入浴者の健康データ等の各種データを取得する。取得部11は、例えば入力部108から入力された健康データを取得するほか、例えば通信網4を介して、浴室5等から環境データと、心電信号とを取得してもよい。
【0045】
抽出部18は、取得部11により取得された心電信号から心電信号の一部を含む部分信号を抽出する。
【0046】
分離部19は、抽出部18により抽出された部分信号が心電信号のクリティカルポイントを含む参照用部分信号である確率を算出する。また、分離部19は、算出した確率が閾値以上となる部分信号に基づいて、1周期分の心電信号を示す心電ビート信号を分離する。
【0047】
変換部12は、分離部19により分離された心電ビート信号をスカログラム画像に変換する。
【0048】
所属分類推定部13は、予め取得された学習用スカログラム画像に基づく入力データ、及び入力データに紐づく所属分類の一対を学習用データとして、複数の学習用データを用いて生成されたニューラルネットワークモデルを参照し、変換部12により変換されたスカログラム画像を入力として、所属分類を推定する。
【0049】
状態判定部17は、所属分類推定部13により推定された1又は複数の所属分類と、環境データ及び健康データを組み合わせた入浴情報とに基づいて、予め取得された所属分類と入浴情報とに対する入浴者の状態を示す状態データを記録した状態データベースを参照し、入浴者の状態データを判定する。
【0050】
処置判断部16は、予め取得された状態データと当該状態データに対する処置の方法を示す処置データとを1対の判断用学習データとし、複数の判断用学習データが記録された処置情報データベースを参照し、状態判定部17により判定された状態データに対する処置データを判断する。
【0051】
記憶部14は、保存部104に保存されたデータベース等の各種データを必要に応じて取り出す。記憶部14は、各構成により取得又は生成された各種データを、必要に応じて保存部104に保存する。
【0052】
出力部15は、各種データを出力する。出力部15は、I/F107を介して表示部109に各種データを出力するほか、例えばI/F105を介して、複数の端末2等に各種データを出力する。
【0053】
次に、本実施形態における入浴者見守りシステム100の動作の一例について説明する。
【0054】
入浴者見守りシステム100は、例えば心拍分類装置1内にインストールされたプログラムを介して実行する。即ち、心拍分類装置1にインストールされているプログラムを通じて、入浴者の状態を管理する。
【0055】
図4は、本実施形態における心拍分類装置1の動作の一例を示すフローチャートである。入浴者見守りシステム100の動作は、まず
図4に示す各ステップにより、所属分類を推定する。
【0056】
まずステップS110において、入浴者の心電信号を測定する。例えば浴室5の電極55は、入浴者の心電信号を測定する。かかる場合、電極55は、全入浴時間又は予め設定された時間に亘り、心電信号を測定する。電極55は、例えば10分間に亘り、入浴者の心電信号を測定する。または、入浴者の入浴と出浴タイミングを自動的に検出し、入浴者の入浴から出浴までの全入浴時間に亘り、入浴者の心電信号を測定する。浴室5は、通信網4を介して、測定したデータを心拍分類装置1へ送信する。
【0057】
心電信号は、
図5(a)に示すような、時間(s)に対する心臓の電位変化(mVオーダー)を示す信号であり、心房の興奮を示すP波、心室の興奮を示すQRS波、心室の興奮がさめるT波等を含む。また、心電信号の1周期は、これら特定の信号が再び観察されるまでの期間であり、例えばP波から次のP波の期間を示す。また、心電信号の1周期は、一定の時間毎に区切られた心電信号であってもよい。
【0058】
ステップS110において、心電信号を1周期分の心電信号を示す心電ビート信号に分離する。心電ビート信号は、心電信号のクリティカルポイントを含む。心電信号のクリティカルポイントは、例えばQRS波であるが、これに限らず、他の信号の最大値又は最小値を示すピーク、臨界点、極値であってもよい。心電信号のクリティカルポイントは、閾値に対する絶対値の大きさで判断してもよい。心電ビート信号は、例えば
図5(b)に示すように、一つのQRS波が含まれる。このステップS110における心電ビート信号の分離方法の詳細は後述する。
【0059】
次に、ステップS120において、心電ビート信号をスカログラム画像に変換する。スカログラム画像は、
図5(c)に示すように、心電ビート信号のスカログラムを示す画像である。ステップS160において、例えば変換部12は、心電ビート信号をスカログラム画像、またはスペクトルグラム画像に変換してもよい。
【0060】
次にステップS130において、スカログラム画像を入力として、所属分類を推定する。かかる場合、所属分類推定部13は、予め取得された学習用スカログラム画像に基づく入力データ、及び入力データに紐づく所属分類の一対を学習用データとして、複数の学習用データを用いて生成されたニューラルネットワークモデルを参照し、変換処理により変換されたスカログラム画像を入力として、所属分類を推定する。また、所属分類の推定において、上記のステップS120及びS130に記載された方法を用いる必要はなく、任意の方法を用いて、ステップS110により分離された心電ビート信号の所属分類を推定してもよい。
【0061】
所属分類は、心電信号の心拍分類を示すデータである。所属分類は、例えば表1に示すような分類を示すデータである。
【0062】
【表1】
ニューラルネットワークモデルは、例えば複数の学習用データを用いた機械学習により生成された、学習済みモデルを含んでもよい。学習済みモデルは、例えばCNN(Convolutional Neural Network)等のニューラルネットワークモデルを示すほか、SVM(Support Vector Machine)等を示す。また、機械学習として、例えば深層学習を用いることができる。
図6は、学習用データの一例を示す模式図である。学習用データは、例えば
図6に示すように、学習用スカログラム画像と、所属分類とが紐づけられる。
【0063】
ニューラルネットワークモデルには、例えばスカログラム画像又は心電ビート信号(入力データ)と所属分類(出力データ)との間における連関度を有する連関性が記憶される。連関度は、入力データと出力データとの繋がりの度合いを示しており、例えば連関度が高いほど各データの繋がりが強いと判断することができる。連関度は、例えば百分率等で示されるほか、数段階で示されてもよい。
【0064】
例えば連関性は、多対多の情報(複数の入力データ、対、複数の出力データ)の間における繋がりの度合いにより構築される。連関性は、機械学習の過程で適宜更新され、例えば複数の入力データ、及び複数の出力データに基づいて最適化された関数(分類器)を示す。なお、連関性は、例えば各データの間における繋がりの度合いを示す複数の連関度を有してもよい。連関度は、例えばデータベースがニューラルネットワークで構築される場合、重み変数に対応させることができる。
【0065】
このため、心拍分類装置1では、例えば分類器の判定した結果を全て踏まえた連関性を用いて、入力データに適した出力データを選択する。これにより、入力データが、学習用入力データと同一又は類似である場合のほか、非類似である場合においても、入力データに適した出力データを定量的に選択することができる。
【0066】
連関性は、例えば、複数の出力データと、複数の入力データとの間における繋がりの度合いを示してもよい。この場合、連関性を用いることで、複数の出力データ(「所属分類A」~「所属分類C」)のそれぞれに対し、複数の入力データ(「スカログラム画像A」~「スカログラム画像C」)の関係の度合いを紐づけて記憶させることができる。このため、例えば連関性を介して、1つの入力データに対して、特有な連関度で、複数の出力データを紐づけることができる。これにより、スカログラム画像に対して所属分類を取得することができる。
【0067】
連関性は、例えば各出力データと、各入力データとをそれぞれ紐づける複数の連関度を有する。連関度は、例えば百分率、10段階、又は5段階等の3段階以上で示され、例えば線の特徴(例えば太さ等)で示される。例えば、入力データに含まれる「スカログラム画像A」は、出力データに含まれる「所属分類A」との間の連関度AA「73%」を示し、出力データに含まれる「所属分類B」との間の連関度AB「12%」、出力データに含まれる「所属分類C」との間の連関度AC「15%」を示す。すなわち、「連関度」は、各データ間における繋がりの度合いを示しており、例えば連関度が高いほど、各データの繋がりが強いことを示す。
【0068】
また、ニューラルネットワークモデルは、入力データと出力データとの間に少なくとも1以上の隠れ層が設けられ、機械学習させるようにしてもよい。入力データ又は隠れ層データの何れか一方又は両方において上述した連関度が設定され、これが各データの重み付けとなり、これに基づいて出力の選択が行われる。そして、この連関度がある閾値を超えた場合に、その出力を選択するようにしてもよい。
【0069】
また、ステップS110において、分離した心電ビート信号を上述したステップS120及びステップS130の方法も用いることなく分類する場合、例えば
図7に示すような学習データを用いて生成されたニューラルネットワークを用いて、ステップS110により分離された心電ビート信号に基づいて、所属分類を推定してもよい。かかる場合、学習データは入力を参照用心電ビート信号とし、出力を所属分類としてもよい。参照用心電ビート信号は、学習データとして用いるために予め取得された心電ビート信号である。この場合、連関性を用いることで、複数の出力データ(「所属分類A」~「所属分類C」)のそれぞれに対し、複数の入力データ(「心電ビート信号A」~「心電ビート信号C」)の関係の度合いを紐づけて記憶させることができる。
【0070】
所属分類推定部13は、上述したニューラルネットワークモデルを用いて、ステップS160により変換されたスカログラム画像を入力として、所属分類を出力する。
【0071】
また、所属分類推定部13は、複数の学習用スカログラム画像を入力データとする学習用データを用いて生成されたニューラルネットワークモデルを参照し、ステップS160により変換された複数のスカログラム画像を入力として、所属分類を推定してもよい。このニューラルネットワークモデルは、入力データに複数のスカログラム画像が含まれる点で、上述したニューラルネットワークモデルと異なる。
【0072】
この入力データは、2以上のスカログラム画像が含まれる。また、入力データは、時系列的に連続している複数のスカログラム画像を含んでもよい。これにより、例えば時系列的に連続した複数のスカログラム画像を入力とすることにより、心電図の時間的な変化のパターンから特徴を判断することが可能となる。これによって、所属分類を推定する際の精度向上を図ることが可能となる。また、入力データは、電極55による測定部位毎に分けられた複数のチャネルを用いて取得された複数の心電信号に基づく複数のスカログラム画像を含んでもよい。
【0073】
また、ステップS130において、所属分類推定部13は、複数のスカログラム画像を入力として、複数の推定用所属分類を推定し、推定した複数の推定用所属分類に基づいて、所属分類を推定してもよい。推定用所属分類は、複数の所属分類から1つの所属分類を推定するための所属分類である。かかる場合、所属分類推定部13は、例えば電極55による測定部位毎に分けられた複数のチャネルを用いて取得された複数の心電信号に基づく複数のスカログラム画像から複数の推定用所属分類を推定し、複数の推定用所属分類の中から最も数の多い所属分類を選択してもよい。これにより、例えば複数のチャネルを用いて取得した複数のスカログラム画像から総合的に所属分類を推定することが可能となる。このため、所属分類を高精度に推定することができる。
【0074】
また、ステップS130において、所属分類推定部13は、1のスカログラム画像を入力として、複数の推定用所属分類を推定し、推定した複数の推定用所属分類に基づいて、所属分類を推定してもよい。かかる場合、例えば入力をスカログラム画像、出力を推定用所属分類とする任意の学習済みモデルを用いて、入力したスカログラム画像と連関性がある、又は連関度が予め設定された閾値以上である複数の推定用所属分類を推定してもよい。
【0075】
また、ステップS130において、所属分類推定部13は、変換部12により変換された複数のスカログラム画像と予め取得された参照用スカログラム画像との類似度を算出し、算出した類似度が所定の閾値以上となる場合、所属分類の推定を行うようにしてもよい。
【0076】
参照用スカログラム画像は、例えば推定の対象となる入浴者の心電信号の基づくスカログラム画像であってもよい。この参照用スカログラム画像との類似度を比較することにより、ステップS110において、測定した心電信号が推定の対象となる入浴者の心電信号に基づくスカログラム画像であるか否かを推定することができる。このため、判定の対象となる入浴者が入浴をしているときのみ、推定を自動で行うことができるため、低コスト且つ高速で推定することができる。
【0077】
また、参照用スカログラム画像は、例えば推定の対象となる入浴者が入浴しているときの心電信号の基づくスカログラム画像であってもよい。この参照用スカログラム画像との類似度を比較することにより、ステップS110において、測定した心電信号が推定の対象となる入浴者が入浴しているときの心電信号に基づくスカログラム画像であるか否かを推定することができる。このため、判定の対象となる入浴者が入浴をしているときのみ、推定を自動で行うことができるため、低コスト且つ高速で推定することができる。
【0078】
上述した各ステップを行うことにより、入浴者見守りシステム100の所属分類を推定する動作が完了する。これにより、スカログラム画像を入力データとして使用することにより、CNNモデルのサイズを縮小することができ、低コスト且つ高速で心拍分類が可能となる。
【0079】
次に、ステップS110において、心電信号から心電ビート信号を抽出する動作の詳細について説明する。
図8は、心電信号から心電ビート信号を抽出する動作の一例を示すフローチャートである。
【0080】
まず、ステップS20において、抽出部18は、心電信号から部分信号を抽出する。
図9は、心電信号から部分信号を抽出し、心電ビート信号の境界を決定するためのウィンドウの適応プロセスを示す模式図である。まずステップS20において、抽出部18は、幅w
nのウィンドウに含まれる心電信号を部分信号として抽出する。
【0081】
次に、ステップS21において、抽出部18は、ウィンドウのパラメータを再計算及び更新する。ウィンドウのパラメータは、例えばウィンドウの幅wn、ウィンドウのステップ幅sn、推定される将来のRR間隔の最大値(maxRRI)、推定される将来のRR間隔の最小値(minRRI)、過去のcp(cpn-2、cpn-1)と現在のcpn、スモールステップフォワード(fwd)、ウィンドウの位置(wposition)、オフセット値等である。wnは、ウィンドウの幅を示し、例えば過去に取得された心電信号から抽出した事前に決定された複数(例えば、16心拍)のRR間隔から算出されたRR間隔の平均、又はユーザの平均心拍数(例えば、過去最新の16心拍を用いる)により算出される。ステップ幅snは、部分信号を抽出するたびにウィンドウが移動する距離を示す。RR間隔の最大値(maxRRI)は、予想される最大RRIリミットを示し、例えば過去に取得された心電信号から抽出した複数の部分信号から算出したRR間隔の平均値とある定数との積により算出される。また、RR間隔の最大値(maxRRI)は、心電ビート信号が分離されるたびに更新されてもよい。RR間隔の最小値(minRRI)は、予想される最小RRIリミットを示し、例えば過去に取得された心電信号から抽出した複数(例えば、16心拍)のRR間隔から算出したRR間隔の平均とある定数との積により算出される。また、RR間隔の最小値(minRRI)は、心電ビート信号が分離されるたびに更新されてもよい。スモールステップフォワード(fwd)は、必要に応じて、ウィンドウを細かく移動させるためのパラメータである。オフセット値は、次のウィンドウの開始位置を示し、現在検出された部分信号にすでに含まれている心電信号のクリティカルポイントを除外するために使用される。これで、次の部分信号を検出するためのステップ数を最小限に抑えることが可能となる。オフセット値は、新しく自適応調整されたウィンドウの幅、現在のcp、および事前設定した定数を使用して計算される。RR間隔は、心電信号において、隣接するクリティカルポイントの間の距離である。
【0082】
次に、ステップS22は、S21で計算された有効または無効な心電ビート信号であるかを部分信号の状態に基づいて評価する。評価結果が有効な心電ビート信号である場合、プロセスはステップS23に移行する。評価結果が無効な心電ビート信号である場合、プロセスはステップS35に移行する。この評価結果は、例えば部分信号が心電信号のクリティカルポイントを含む参照用部分信号である確率を評価値として、評価値が予め設定された閾値との比較に基づいて決定してもよい。例えば、確率が0.9よりも大きい場合、部分信号を有効な心電ビート信号とし、確率が0.9よりも小さい場合、部分信号を無効な心電ビート信号としてもよい。
【0083】
ステップS22において、抽出部18は、例えば部分信号が心電信号のクリティカルポイントを含む参照用部分信号である確率を算出する。参照用部分信号は、予め取得された心電信号のクリティカルポイントを含む部分信号である。
図8は、適応ウィンドウをスライドさせながら一連の部分信号を処理して、有効な心電ビート信号を抽出する。
図10は、ウィンドウパラメータを計算し、部分信号と参照部分信号の類似性を計算した上、
図8でさらに使用される。
【0084】
ステップS23において、抽出部18は、ステップS22により評価した確率が閾値以上な部分信号の数が16より多いか判断する。16よりも多い場合、ステップS24に移行し、16以下ならステップS35に移行する。これにより、ステップS23により検出された16以上の部分信号に基づいて、ウィンドウのパラメータの初期設定を決定する。また、この16の値は一例であり、任意の値を用いてもよい。
【0085】
ステップS35において、抽出部18は、次の部分信号を抽出するためにウィンドウを移動させ、再びステップS20により部分信号を抽出する。かかる場合、例えばステップS21により更新したウィンドウのパラメータのウィンドウの位置からウィンドウのステップ幅snだけウィンドウを移動させる。
【0086】
ステップS36において、抽出部18は、S22により評価した部分信号のクリティカルポイントの横にウィンドウを移動させ、再びステップS20により部分信号を抽出する。かかる場合、オフセット値をクリティカルポイントに基づいて算出する。抽出部18は、例えばクリティカルポイントと定数との和をオフセット値としてもよい。これにより、クリティカルポイントよりも前の不必要な個所にウィンドウを移動させずに次の部分信号を抽出できるため、より効率よく部分信号を抽出でき、かつ同一のクリティカルポイントを含む部分信号の抽出を防ぐことが可能となる。
【0087】
また、ステップS37において、ステップS20~ステップS23によりウィンドウのパラメータの初期設定を決定する代わりに、ウィンドウのパラメータの初期設定を見積もってもよい。
【0088】
次に、ステップS24において、抽出部18は、心拍に関する心拍情報に基づいて、実際に心電ビート信号を分離するための部分信号を抽出する。心拍情報は、例えばウィンドウのパラメータである。また、心拍情報は、ユーザの心拍数等の生体情報であってもよい。ステップS24において、抽出部18は、例えばステップS23により決定したウィンドウのパラメータの初期設定を用いて、実際に心電ビート信号を分離するための部分信号を抽出する。また、ステップS24において、ステップS37により見積もったウィンドウのパラメータを用いて部分信号を抽出してもよい。
【0089】
次に、ステップS25において、ウィンドウのパラメータを再計算及び更新する。
【0090】
次に、ステップS26において、ステップS24により抽出した部分信号の評価を行う。ステップS26において、ステップS24により抽出した部分信号の確率が閾値以上ならステップS27又はステップS30に移行し、確率が閾値以下ならステップS38に移行する。また、ステップS26において、確率が閾値以上かつ心電ビート信号の出力パターンBを用いる場合、ステップS27に移行し、確率が閾値以上かつ心電ビート信号の出力パターンAを用いる場合、ステップS30に移行してもよい。この心電ビート信号の出力パターンは必要に応じて、変更してもよい。また、心電ビート信号の出力パターンを複数用いて、それぞれの心電ビート信号を出力してもよい。これにより、複数の出力パターンを用いて出力した心電ビート信号を分類することにより、さらに分類の精度を向上させることが可能となる。また、ステップS26において、評価値が閾値以上となる部分信号を心電ビート信号として分離してもよい。
【0091】
ステップS38において、抽出部18は、次の部分信号を抽出するためにウィンドウを移動させ、再びステップS24により部分信号を抽出する。かかる場合、抽出部18は、例えばステップS25により更新したウィンドウのパラメータのウィンドウの位置からウィンドウのステップ幅snだけウィンドウを移動させる。
【0092】
心電ビート信号の出力パターンBを用いる場合、ステップS27において、抽出部18は、ステップS25により更新したウィンドウのパラメータに基づいて、クリッピングポイントを再配置する。かかる場合、抽出部18は、例えばクリティカルポイント、RR間隔、過去のRR間隔の平均値等に基づいて、クリッピングポイントのスタート位置と終わりの位置を決定する。
【0093】
ステップS28において、抽出部18は、ステップS27により再配置したクリティカルポイントのスタート位置と終わりの位置とに基づいて、心電ビート信号を抽出する。また、次の部分信号を抽出するために、ステップS38に移行してもよい。
【0094】
ステップS29において、抽出部18は、抽出した心電ビート信号の確率を予測する。抽出部18は、例えば心電ビート信号と心電信号のクリティカルポイントを含む参照用部分信号との確率を評価値として算出する。抽出部18は、確率が閾値以上なら抽出した心電ビート信号を出力する。
【0095】
心電ビート信号の出力パターンAを用いる場合、ステップS30において、抽出部18は、分離された心電ビート信号に基づいて、新たに部分信号を抽出する。抽出部18は、例えばステップS25により更新したウィンドウのパラメータに基づいて、新たに部分信号を抽出するためのクリッピングポイントのスタート位置を計算する。かかる場合、抽出部18は、例えばスタート位置を過去のクリティカルポイント及び一つまたは二つ事前設定した定数から計算してもよい。また、抽出部18は、例えばステップS26又はS29において、出力された心電ビート信号に基づいて、新たに部分信号を抽出するためのクリッピングポイントのスタート位置を計算してもよい。抽出部18は、例えば過去に分離された心電ビート信号のクリティカルポイントとオフセット値に基づいて、クリッピングポイントのスタート位置を算出する。
【0096】
ステップS31において、抽出部18は、ステップS30により計算したスタート位置が、クリティカルポイントよりも小さいかを判断する。抽出部18は、クリティカルポイントよりも小さい場合、ステップS32に移行する。抽出部18は、クリティカルポイント以上の場合、ステップS33に移行する。
【0097】
ステップS32において、抽出部18は、ステップS30により計算したスタート位置を調整する。かかる場合、抽出部18は、クリティカルポイントに基づいて、スタート位置を調整する。
【0098】
ステップS33において、抽出部18は、クリティカルポイントの終わりの位置を計算する。抽出部18は、例えばRR間隔とスタートの位置とに基づいて、終わりの位置を計算する。
【0099】
ステップS34において、分離部19は、ステップS30により計算したクリッピングポイントのスタート位置、又はステップS32により調整したクリッピングポイントのスタート位置とステップS33により計算したクリッピングポイントの終わりの位置とに基づいて、心電ビート信号を抽出する。また、分離部19は、抽出した心電ビート信号を出力してもよい。また、抽出部18は、次の部分信号を抽出するために、ステップS38に移行してもよい。
【0100】
上述した各ステップを行うことにより、心電信号から心電ビート信号を抽出する動作を終了する。これにより、心電信号のクリティカルポイントを含む参照用部分信号である確率が高い部分信号に基づいて心電ビート信号を分離することができる。このため、心拍の間隔の変化に対応した心電ビート信号の分離が可能となる。また、心電ビート信号の出力パターンAを用いることにより、ウィンドウの境界の計算は、適合されたウィンドウ、最新のクリティカルポイントの位置、および所定の定数に基づいて行われる。つまり、境界の計算は、隣接するクリティカルポイントを考慮せずに、最新のクリティカルポイントを参照して計算される。これにより、リアルタイムの心電ビート信号の分離が可能となる。また、心電ビート信号の出力パターンBを用いることにより、ウィンドウの境界の計算は、隣接するクリティカルポイントに基づいて計算されます。これにより、より正確なウィンドウの境界の計算が可能となります。
【0101】
次に、ウィンドウのパラメータの計算方法について説明する。
図10は、ウィンドウのパラメータの計算のフローを示す図である。
【0102】
まずステップS1において、抽出部18は、抽出した部分信号のノイズ除去と正規化とを行う。かかる場合、心電ビート信号の中心にQRS波が揃うようにしてもよい。また、このとき心電ビート信号のクリティカルポイントを中心として、中心から一定時間前から後までの心電信号を含めるものを心電ビート信号としてもよい。また、必ずしもクリティカルポイントを中心とする必要はなく、中心が一定の位置となるように揃えてもよい。
【0103】
次に、ステップS2において、抽出部18は、ステップS1によりノイズ除去と正規化とを行った部分信号のクリティカルポイントを中心に配置する。ノイズ除去は任意のフィルタを用いて行ってもよい。また、正規化は、例えば心電ビート信号の最大値を1、最小値を0として、正規化を行ってもよい。
【0104】
次に、ステップS3において、抽出部18は、ステップS2によりクリティカルポイントを中心に配置した部分信がと心電信号のクリティカルポイントを含む参照用部分信号である確率を算出する。参照用部分信号は、予め取得された心電信号のクリティカルポイントを含む部分信号である。また、参照用部分信号は、ステップS1及びステップS2と同様にノイズ除去と正規化とを行い、クリティカルポイントを中心に配置した部分信号であってもよい。
【0105】
また、ステップS3において、抽出部18は、参照用部分信号に基づく入力データ、及び入力データに紐づく確率を一対の確率学習用データとして、複数の確率学習用データを用いて機械学習により生成された確率モデルを参照し、ステップS2によりクリティカルポイントを中心に配置した部分信号に基づく確率を算出してもよい。
【0106】
図11は、確率モデルの学習データである参照用部分信号を生成するための心電信号のトリプレットの一例を示す模式図である。参照用部分信号は、例えば
図11に示すような心電信号のトリプレットを用いて、学習データセットのサンプル数を増やすための処理により取得されてもよい。ECGトリプレットセグメントおよびクリティカルcpl、cpm、cprを用いて、1の確率が割り当てられる12個の参照用部分信号(1個典型的標準的な有効な参照用部分信号+11個の代替的等価的な有効部分信号)を生成する方法を示す模式図である。
図13は、ECGトリプレットセグメントおよびクリティカルcpl、cpm、cprを用いて、0の確率が割り当てられる12個の参照用部分信号(無効な参照用部分信号)を生成する方法を示す模式図である。
図13において、slは、選択された心電信号のトリプレットの左端を示し、srは選択された心電信号のトリプレットの右端を示す。d1とd2は、心電信号の複数のクリティカルポイント間のRR間隔である。心電信号のトリプレットには、
図13に示すように、クリティカルポイント(cp)やクリッピングポイント等の情報が含まれている。cpは、心電信号のクリティカルポイント等の特徴点であり、具体的な位置は心電信号の形態に依存する。ほとんどの場合は、QRS群のクリティカルポイント位置だが、必ずしもクリティカルポイントである必要はない。cpmは中央のcp、cplはcpmの左側のcp、cprはcpmの右側のcpである。blとbrとは、部分信号の両端の座標の位置を示す。
図13に示すように、RR間隔、d1、d2の値と、予め設定された任意の定数とに基づいて、自動的に部分信号を抽出することが可能となり、これにより抽出した部分信号を確率0の無効な心電ビート信号として学習データとして用いてもよい。
図12におけるこの参照用部分信号は、学習用のデータを拡張するセットを生成するための各心電信号のトリプレットの一例である。たとえば、blは部分信号の左端を示し、brは部分信号の右端を示す。d1とd2を使用して、事前設定したセンタリング比に基づいてblとbrを計算する。これにより、生成した部分信号を確率1の有効な参照用部分信号として、学習データに用いてもよい。上記のクリティカルポイント(cp)やクリッピングポイントは、
図12および
図13で説明されているように、左・右シフトを実行するための参照ポイント、およびサンプルサイズを増やすための拡張手順及び他の操作として使用されてもよい。これにより抽出された信号を参照用部分信号として確率モデルの学習に用いる。これにより、自動的に参照用部分信号の拡張が可能となる。
【0107】
分割処理過程において、新しく計算されたウィンドウの長さ(更新されたウィンドウパラメータ)、クリティカルポイント、および事前設定した中心比に基づいて、2つのクリッピングポイントが決定される。これらの2つのクリッピングポイントは、有効な信号セグメントが検出された後に心電ビート信号を抽出するのに使う。そのため、主要な心電信号の特徴(正常なQRSまたは異常なQRSのような波形など)は、分割された心電ビート信号のほぼ中央に配置される。
【0108】
確率モデルは、例えば複数の学習用データを用いた機械学習により生成された、学習済みモデルを含んでもよい。学習済みモデルは、例えばCNN(Convolutional Neural Network)等のニューラルネットワークモデルを示すほか、SVM(Support Vector Machine)等を示す。学習済みモデルは、例えばk分割交差検定等を用いて学習を行ってもよい。また、機械学習として、例えば深層学習を用いることができる。また、確率モデルは、複数の参照用部分信号を用いた教師無し学習により生成されたモデルであってもよい。学習用データは、例えば参照用部分信号と、確率とが紐づけられる。
【0109】
確率モデルには、例えば参照用部分信号(入力データ)と確率(出力データ)との間における連関度を有する連関性が記憶される。このため、心拍分類装置1では、例えば分類器の判定した結果を全て踏まえた連関性を用いて、入力データに適した出力データを選択する。これにより、入力データが、学習用入力データと同一又は類似である場合のほか、非類似である場合においても、入力データに適した出力データを定量的に選択することができる。
【0110】
連関性は、例えば複数の出力データと、複数の入力データとの間における繋がりの度合いを示してもよい。かかる場合、連関度A1は、有効な参照用部分信号との連関度を示し、連関度A0は、無効な心電ビート信号との連関度を示す。この場合、連関性を用いることで、複数の出力データのそれぞれに対し、複数の入力データの関係の度合いを紐づけて記憶させることができる。このため、例えば連関性を介して、1つの出力データに対して、複数の入力データを紐づけることができる。これにより、参照用部分信号に対して確率を取得することができる。また、出力データとして用いる確率は、例えば確率1と確率0との2種類だけでもよいがこの限りではなく、任意の値に設定された3以上の確率が用いられてもよい。
【0111】
また、確率モデルは、入力データと出力データとの間に少なくとも1以上の隠れ層が設けられ、機械学習させるようにしてもよい。入力データ又は隠れ層データの何れか一方又は両方において上述した連関度が設定され、これが各データの重み付けとなり、これに基づいて出力の選択が行われる。そして、この連関度がある閾値を超えた場合に、その出力を選択するようにしてもよい。
図14に示すように、この確率モデルに部分信号を入力し、出力された確率と閾値との比較により、部分信号が有効な心電ビート信号か、無効な心電ビート信号かを判断することが可能となる。
【0112】
また、確率モデルの学習データとしてクリティカルポイントが含まれない確率0の無効な心電ビート信号を参照用部分信号として用いてもよい。かかる場合、
図13に示すようなクリティカルポイントが含まれない部分信号を参照用部分信号として用いてもよい。この場合、確率モデルを用いて、参照用部分信号との乖離度を算出するようにしてもよい。
【0113】
抽出部18は、上述した確率モデルを用いて、ステップS2によりクリティカルポイントを中心に配置した部分信号を入力として、確率を出力する。
【0114】
次に、ステップS4において、抽出部18は、ステップS3により算出した確率が閾値を超えているかを判断する。抽出部18は、確率が閾値を超えている場合、ステップS5に移行する。抽出部18は、確率が閾値以下の場合、ステップS9に移行する。
【0115】
次に、ステップS5において、抽出部18は、ステップS3により確率を計算した部分信号のcpを計算する。抽出部18は、例えば部分信号において閾値に対する差の絶対値が最も大きいポイントをcpとしてもよい。
【0116】
次に、ステップS6において、抽出部18は、ステップS5により計算したcpと、当該cpと隣接するcpとの間の距離であるRR間隔とRR間隔の予想最小値とを比較する。抽出部18は、RR間隔がRR間隔の予想最小値より大きい場合、ステップS10に移行する。抽出部18は、RR間隔がRR間隔の予想最小値以下の場合、ステップS7に移行する。
【0117】
ステップS7において、抽出部18は、ステップS5により計算したcpと、当該cpと隣接するcpとの間の距離であるRR間隔とRR間隔の予想最大値とを比較する。抽出部18は、RR間隔がRR間隔の予想最大値より大きい場合、ステップS8に移行する。抽出部18は、RR間隔がRR間隔の予想最大値以下の場合、ステップS11に移行する。
【0118】
ステップS8において、抽出部18は、ウィンドウのパラメータのcpをステップS5において計算したcpを更新する。また、ステップS8において、過去のcpも順次更新してもよい。
【0119】
ステップS9において、抽出部18は、次のウィンドウの位置を計算する。ステップS9において、抽出部18は、ウィンドウのパラメータを計算したウィンドウの位置に更新する。
【0120】
ステップS10において、抽出部18は、オフセット値を計算する。抽出部18は、例えばクリティカルポイントとfwdとの和に基づいてオフセット値を計算する。また、抽出部18は、ウィンドウのパラメータを計算したオフセット値に更新してもよい。
【0121】
ステップS11において、抽出部18は、ウィンドウのパラメータの更新を行う。ステップS11において、例えばRR間隔、RR間隔の予想最大値及び予想最小値、ウィンドウ幅wn、ステップ幅snを計算する。
【0122】
ステップS12において、抽出部18は、fwdをリセットする。
【0123】
ステップS13において、抽出部18は、ウィンドウのパラメータのcpをステップS5において計算したcpを更新する。また、ステップS13において、過去のcpも順次更新してもよい。
【0124】
ステップS14において、抽出部18は、オフセット値を計算する。抽出部18は、例えばクリティカルポイントに基づいてオフセット値を計算する。また、ウィンドウのパラメータを計算したオフセット値に更新してもよい。
【0125】
上述した各ステップを行うことにより、ウィンドウのパラメータの計算の動作を終了する。
【0126】
次に、入浴者見守りシステム100は、分類した所属分類に基づいて、入浴者の状態を管理する。
図15は、入浴者の状態を管理する動作の一例を示すフローチャートである。
【0127】
まず、ステップS210において、取得部11は、各種データを取得する。かかる場合、取得部11は、センサ53により測定された浴室5の環境データ、入浴者の健康データ等を取得する。
【0128】
次に、ステップS220において、状態判定部17は、ステップS170により分類された1又は複数の所属分類と、環境データ及び健康データを組み合わせた入浴情報とに基づいて、予め取得された所属分類と入浴情報とに対する入浴者の状態を示す状態データを記録した状態データベースを参照し、入浴者の状態データを判定する。また、状態判定部17は、入浴情報を用いることなく、所属分類のみに基づいて、状態データを判定してもよい。
【0129】
状態データベースは、所属分類と入浴情報とに対する状態データを記録したデータベースである。状態データベースは、入力データを所属分類と入浴情報とし、出力データを状態データとして、一対の入力データと出力データとを学習用データとして、複数の学習用データを用いて生成された状態モデルを記録してもよい。かかる場合、この状態モデルは、入力データを所属分類と入浴情報とし、出力データを状態データとする点で上述したニューラルネットワークモデルと異なる。
【0130】
状態データは、入浴者の状態を示すデータであり、例えば「正常」、「異常」、「熱中症」、「心筋梗塞」、「失神」等の状態を示す。
【0131】
また、ステップS220において、状態判定部17は、ステップS170により分類された複数の所属分類に基づいて、状態データベースを参照し、入浴者の状態データを判定してもよい。かかる場合、状態判定部17は、時系列的に連続した複数のスカログラム画像からそれぞれ推定された複数の所属分類を入力として、状態データを判定する。かかる場合、例えば状態判定部17は、時系列的に連続した所属分類のうち、心室期外収縮が一定数観測されたとき、「異常」の状態データを出力してもよい。
【0132】
次にステップS230において、処置判断部16は、状態データに対する処置データを判断する。処置データは、状態データに対する処置の方法を示すデータであり、例えば「浴槽51を排水する」、「救急車を呼ぶ」、「家族に通知する」等の処置を示すデータである。
【0133】
処置判断部16は、例えば予め取得された状態データと当該状態データに対する処置の方法を示す処置データとを1対の判断用学習データとし、複数の判断用学習データが記録された処置情報データベースを参照し、ステップS220により判定された状態データに対する処置データを判断する。
【0134】
処置情報データベースは、状態データに対する処置データを記録したデータベースである。処置情報データベースは、入力データを状態データとし、出力データを処置データとして、一対の入力データと出力データとを判断用学習データとして、複数の判断用学習データを用いて生成された処置モデルを記録してもよい。かかる場合、この処置モデルは、入力データを状態データとし、出力データを処置データとする点で上述したニューラルネットワークモデルと異なる。
【0135】
次に、ステップS240において、出力部15は、ステップS230により判断された処置データを送信する。かかる場合、出力部15は、例えば端末2、又はモニタ54等に処置データを送信し、入浴者の家族、介護者、又は入浴者に処置データを提示させる。これにより、入浴者の家族、介護者、又は入浴者に適切な処置方法を提示することが可能となる。
【0136】
次に、ステップS250において、ステップS240により送信された処置データに応じて、排水装置52は、浴槽51を排水する。かかる場合、排水装置52は、予め各処置データに対して排水を行うか行わないかが設定されていてもよい。また、処置データに応じて、換気扇56は、浴室5内を換気してもよい。かかる場合、予め各処置データに対して換気を行うか行わないかが設定されていてもよい。
【0137】
次に、ステップS260において、取得部11は、ステップS230により判断された処置データに対する処置結果を示す結果データを取得する。結果データは、入浴者に処置を施した結果を示すデータであり、例えば「問題なし」、又は「問題あり」等のデータを含む。取得部11は、例えば端末2から送信された結果データを取得してもよい。
【0138】
次に、ステップS270において、記憶部14は、ステップS260により取得された結果データに応じて、ステップS220により判定された状態データと、ステップS230により判断された処置データとを1対の判断用学習データとし、新たに処置情報データベースに記録する。記憶部14は、例えば結果データが「問題なし」であった場合に、判断用学習データを新たに処置情報データベースに記録し、「問題あり」であった場合、判断用学習データを新たに処置情報データベースに記録しないようにしてもよい。また、例えば結果データが「問題なし」であった場合、状態データと処置データとの連関度が高くなるように設定してもよい。これにより、結果をフィードバックさせることが可能となるため、より精度を向上させることができる。
【0139】
上述した各ステップを行うことにより、入浴者見守りシステム100の入浴者の状態を管理する動作が終了する。これにより、入浴者の状態を高精度に判定することが可能となる。
【0140】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。このような新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0141】
1 :心拍分類装置
2 :端末
3 :サーバ
4 :通信網
5 :浴室
10 :筐体
11 :取得部
12 :変換部
13 :所属分類推定部
14 :記憶部
15 :出力部
16 :処置判断部
17 :状態判定部
18 :抽出部
19 :分離部
51 :浴槽
52 :排水装置
53 :センサ
54 :モニタ
55 :電極
56 :換気扇
100 :入浴者見守りシステム
101 :CPU
102 :ROM
103 :RAM
104 :保存部
105 :I/F
106 :I/F
107 :I/F
108 :入力部
109 :表示部
110 :内部バス
【要約】
【課題】心拍の間隔の変化に対応した心電ビート信号の分離ができる心拍分類装置及び入浴者見守りシステムを提供する。
【解決手段】心拍分類装置は、心電信号に基づいて、心電信号の各心拍の分類を示す所属分類を推定する心拍分類装置において、前記心電信号から前記心電信号の一部を含む部分信号を抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された部分信号が心電信号のピークを含む参照用部分信号である確率を算出する確率算出手段と、前記確率算出手段により算出された確率が閾値以上となる部分信号に基づいて、1周期分の心電信号を示す心電ビート信号を分離する分離手段と、前記分離手段により分離された心電ビート信号に基づいて、前記所属分類を推定する所属分類推定手段とを備えることを特徴とする。
【選択図】
図1