(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】障害物探知システム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/82 20060101AFI20221021BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20221021BHJP
G01S 13/87 20060101ALI20221021BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20221021BHJP
【FI】
G01S13/82
G08G1/16 C
G01S13/87
G01S13/931
(21)【出願番号】P 2017113466
(22)【出願日】2017-06-08
【審査請求日】2020-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】川西 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山本 直克
(72)【発明者】
【氏名】菅野 敦史
(72)【発明者】
【氏名】福光 賢
(72)【発明者】
【氏名】須藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】和田 亮
(72)【発明者】
【氏名】國立 忠秀
(72)【発明者】
【氏名】中川 雄太
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-021644(JP,A)
【文献】特表2014-515112(JP,A)
【文献】特開2015-191583(JP,A)
【文献】特表2016-530512(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1144043(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
G08G 1/16
B60R 21/00-21/017
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(3)に搭載され,
周期Tで時間変化する第1の電波を出力する電波発生装置(5)と,
対象物(7)に取り付けられ,前記電波発生装置(5)から出力された第1の電波を受信し,第2の電波を出力する電波源(9)と,
前記車両(3)に搭載され,第2の電波を受信する受信部(11)と,
前記受信部(11)が受け取った第2の電波の周波数,及び前記電波発生装置(5)から出力された第1の電波の周波数を用い,前記車両(3)と,前記対象物(7)との距離を求める距離算定部(13)とを有し,
前記電波源(9)は,第1の電波を受信してから第2の電波を出力するまでの時間遅延τに応じた分の周波数を第1の電波に加算し,第2の電波として出力する,
障害物検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の障害物検知システムであって,前記第1の電波の周波数が,三角波,又はのこぎり波状に時間変化する,システム。
【請求項3】
請求項1に記載の障害物検知システムであって,
電波源(9)は,第1の電波の強度を増幅して第2の電波として出力する,システム。
【請求項4】
請求項1に記載の障害物検知システムであって,
前記電波源(9)は,第1の電波を受信してから第2の電波を出力するまでの時間遅延τに応じた分の周波数を第1の電波に加算し,第2の電波として出力する代わりに,前記時間遅延τに応じた分の周波数を第1の電波の周波数から減算し,第2の電波として出力する,システム。
【請求項5】
請求項1に記載の障害物検知システムであって,
前記電波源(9)は,
第1の電波を受信してから第2の電波を出力するまでの時間遅延τに応じた分の周波数を第1の電波に加算した第2の電波と,時間遅延τに応じた分の周波数を第1の電波から減算した第3の電波とを,出力するシステム。
【請求項6】
請求項1に記載の障害物検知システムであって,
前記電波源が第1の電波を受信してから第2の電波を出力するまでの時間遅延をτ[s],
第1の電波の速度,周期及び周波数変動をそれぞれc[m/s],T[s],Δf[Hz]としたときに,
前記電波源(9)は,2Δfτ/Tに相当する周波数補償周波数を第1の電波に加算又は減算した第2の電波を出力する,システム。
【請求項7】
請求項1に記載の障害物検知システムであって,
前記車両(3)に搭載され,外界の障害物を検知する1又は複数の外界センサ(19)をさらに,有し,
前記受信部(11)が,前記対象物(7)からの電波を受信した場合であって,前記外界センサ(19)が前記対象物(7)を検知しなかったときに,第1の警報を発生させる警報発生部(21)を有する,システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,車の運転手に対して,建物の陰に存在する人であっても,その存在を通知できるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2015-191583号公報(特許文献1)には,自己車両を他車両が認識していることを確認する認知通報装置が記載されている。
次に,特開2011-118483号公報(特許文献2)には,自己車両の周辺映像を撮影するとともに,自己車両に近接する物体を抽出し,運転手に注意を促す車載装置が記載されている。
また,特開2011-037318号公報(特許文献3)には,障害物の有無を検知するとともに,運転手が障害物を認識した場合に車の移動を許可する走行安全装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-191583号公報
【文献】特開2011-118483号公報
【文献】特開2011-037318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2015-191583号公報(特許文献1)に記載された発明は,車両同士がお互いに認知していることを確認するものである。したがって,この発明は,車両以外の認知には用いられない。
【0005】
特開2011-118483号公報(特許文献2)に記載された発明は,車両の周辺を認識するものである。このため,この発明は,視認できない対象物を認識できない。
【0006】
特開2011-037318号公報(特許文献3)に記載された発明は,障害物を運転手が認識したことを確認し,車両の移動を許可するものである。このため,この発明は,視認できない対象物を認識できない。
【0007】
従来の車両用障害物認知装置は,視認できる物体を障害物として認知していた。これでは,例えば,こどもの飛び出しといった,視認できない障害物を認知できない。そこで,視認できない障害物をも把握できる障害物探知システムが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで,本発明は,例えば子供に電波源を持たせるなどして,車両と子供との距離を求めることができるようにすることで,障害物に隠れて見えない子供を把握することができるようになるという知見に基づく。
【0009】
本発明は,障害物検知システムに関する。
このシステムは,電波発生装置5と,電波源9と,受信部11と,距離算定部13とを有する。
電波発生装置5は,車両3に搭載され,電波を発生させるための装置である。
電波源9は,対象物7に取り付けられ,電波発生装置5から出力された第1の電波を受信し,第2の電波を出力するものである。電波源9は,第1の電波を受信してから第2の電波を出力するまでの時間遅延τに応じた分の周波数を第1の電波に加算し,第2の電波として出力する。
受信部11は,車両3に搭載され,第2の電波を受信する装置である。
距離算定部13は,受信部11が受け取った第2の電波の周波数,及び電波発生装置5から出力された第1の電波の周波数を用い,車両3と対象物7との距離を求める要素である。
【0010】
このシステムの例は,第1の電波の周波数が,三角波,又はのこぎり波状に時間変化するものである。第1の電波の周波数が,三角波,又はのこぎり波状に時間変化する場合,第2の電波を,第1の電波に時間遅延に相当する周波数を足したものとすることで,時間遅延を補償することができる。このようにすることで,対象物と車両との距離をより正確に求めることができることとなる。
【0011】
このシステムの例は,電波源9は,第1の電波の強度を増幅して第2の電波として出力するものである。この場合,τが0であってもよい。
【0012】
このシステムの例は,電波源9が,第1の電波を受信してから第2の電波を出力するまでの時間遅延τに応じた分の周波数を第1の電波の周波数に加算または減算した第2の電波を出力する。これにより,トランスポンダーによる遅延を考慮し,対象物と車両との正確な距離を求めることができる。なお,第2の電波は,時間遅延τに応じた分の周波数を加える(又は引く)ばかりでなく,それ以外の要素を加味した周波数をさらに加えるか引くかしても構わない。
【0013】
このシステムの例は,電波源9が,
第1の電波を受信してから第2の電波を出力するまでの時間遅延τに応じた分の周波数を第1の電波に加算した第2の電波と,時間遅延τに応じた分の周波数を第1の電波から減算した第3の電波とを,出力する。
電波源9が第2の電波だけを出力する場合,車両側では,RとR+cτの2つが求められることとなる。すると,いずれの信号が,対象物と車両との距離を示すものか判別しにくいことが起こりうる。一方,電波源9が,第2の電波に加えて第3の電波も出力するので,車両側で観測されるR,R+cτ,R-cτに対応した成分の比が2:1:1となる。すると,対象物と車両との距離を適切に求めることができることとなる。
【0014】
このシステムの例は,電波源9が,2Δfτ/Tに相当する周波数補償周波数を第1の電波に加算又は減算した第2の電波を出力するものである。
ただし,電波源が第1の電波を受信してから第2の電波を出力するまでの時間遅延をτ[s],第1の電波の速度,周期及び周波数変動をそれぞれc[m/s],T[s],Δf[Hz]とした。以下同様である。周波数変動とは,時間と共に周波数が変化する信号のある周期を取り出した場合における最大周波数と最小周波数の差を意味する。
【0015】
このシステムの例は,電波源9が,2αΔfτ/T(0<α<1)に相当する周波数補償周波数を第1の電波に加算又は減算した第2の電波を出力するものである。
【0016】
このシステムの例は,電波源9が,2αΔfτ/T(1<α<∞)に相当する周波数補償周波数を第1の電波に加算又は減算した第2の電波を出力するものである。
【0017】
このシステムの上記とは別の例は,車両3に搭載され,外界の障害物を検知する1又は複数の外界センサ19をさらに,有するものである。
このシステムの好ましいものは,受信部11が,対象物7からの電波を受信した場合であって,外界センサ19が対象物7を検知しなかったときに,第1の警報を発生させる警報発生部21を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は,視認できない障害物をも把握できる障害物探知システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は,本発明のシステムを説明するための概念図である。
【
図2】
図2は,このシステムの原理を説明するための図である。
【
図3】
図3は,第2の電波と第3の電波を説明するための図面である。
【
図4】
図4は,このシステムのうち車両側のもののブロック図である。
【
図5】
図5は,カーナビゲーション画像の例を示す図である。
【
図6】
図6は,警報表示がなされたカーナビゲーション画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0021】
本発明は,障害物検知システムに関する。障害物検知システムは,主に車両の運転手に対し,例えば,子供やお年寄りといった対象物の存在を知らせ,注意を喚起するためのシステムである。
図1は,本発明のシステムを説明するための概念図である。
図1に示されるように,このシステムは,電波発生装置5と,電波源9と,受信部11と,距離算定部13とを有する。
【0022】
電波発生装置5は,車両3に搭載され,電波を発生させるための装置である。電波発生装置5は,携帯端末であってもよい。車両3の例は,自動車,作業用車両,及び自転車である。例えば,車の運転手が電波発生装置5としての携帯電話を有している場合も,電波発生装置5が車両と共に移動するものであるから,車両3に搭載されていることとなる。また,電波発生装置5は,電波を送信(好ましくは及び受信)できる装置であり,車両に固定されている又は車両に搭載されているものであってもよい。電波発生装置5が発生する第1の電波は,マイクロ波帯以下の周波数を有する電波であることが好ましい。この電波の例は,ISMバンドであり,2.4GHz,5GHz,及び27MHzといったマイクロ波帯以下の電波であることが好ましい。後述するように,電波源9は,対象物7に取り付けられ,電波発生装置5から出力された第1の電波を受信し,第2の電波を出力するものである。そして,電波源9が第1の電波を受信してから,第2の電波を出力するまでの期間が,時間遅延τである。
【0023】
このシステムの例は,第1の電波の周波数が,三角波,又はのこぎり波状に時間変化するものである。第1の電波の周波数が,三角波,又はのこぎり波状に時間変化する場合,第2の電波を,第1の電波の周波数変動に時間遅延に相当する周波数を足したものとすることで,時間遅延を補償することができる。周波数がのこぎり波状に時間変化するとは,周波数が初期値から一定の割合で増える(又は減る)期間と,周波数が所定期間内に初期値又は初期値付近の値に戻る期間(時間)とを繰り返す(周期的に周波数が増減する)ことを意味する。また,周波数が初期値から一定の割合で増える(又は減る)期間があり,所定時間内に,再び周波数から一定の割合で増える(又は減る)期間を繰り返す(間欠的な三角波)であってもよい。このようにすることで,対象物と車両との距離をより正確に求めることができることとなる。また,電波源9によって,遅延時間τが異なる場合,車両と対象物との距離を正確に比較できない事態が起こりうる。このシステムは,遅延時間τを補償するので,電波源9によらず,対象物が近いか遠いかを正確に評価できることとなる。
【0024】
図2は,このシステムの原理を説明するための図である。送信波(第1の電波)の周波数が
図2に示されるように時間変化するとする。この場合,送信波の周期は,T[s]であり,送信波の周波数変動(最大周波数と最小周波数の差)は,Δf[Hz]である。対象までの距離をRとすると,送信波と受信波との時間差tは,c[m/s]の速度の電波が2R(往復)[m]進む時間であるから,t=2R/cの関係がある。ある時間における第1の電波と第2の電波の周波数の差に相当するf
B[Hz]は,相似比の関係を用いると,f
B:t=Δf/2:T/4であるから,f
B=4RΔf/cTとなる。つまり,Rは,R=cTf
B/4Δfとなる。
図2中の受信波は,電波源が受信した受信波に対し遅延等を与えず反射させた場合に受信部が受信する電波の波形である。
【0025】
一方,受信波(第2の電波)について,受信から出力までにτ[s]の時間遅延がある場合,fB=4RΔf/cT+2Δfτ/Tとなる。これをもとに距離R’を求めると,R’=R+cτ/2となる。つまり,遅延時間τを考慮しなければ,実際の距離よりもcτ/2分だけ離れていると判断されることとなる。このため,電波源9で,第1の電波の周波数変動に対し,cτ/2だけ周波数を加算したものを第2の電波として出力した場合,R’=Rとなり,遅延時間τに相当する時間差が補償されることとなる(周波数が時間と共に増加している間)。なお,第1の電波の周波数変動に対し,cτ/2だけ周波数を減算したものを第2の電波として出力した場合,周波数が時間と共に減少している間について,遅延時間τに相当する時間差が補償される。
【0026】
電波源9は,対象物7に取り付けられ,電波発生装置5から出力された第1の電波を受信し,第2の電波を出力するものである。電波源9は,第1の電波を受信してから第2の電波を出力するまでの時間遅延τに応じた分の周波数を第1の電波に加算し,第2の電波として出力する。電波源9の例は,(FM)CW2次レーダーである。電波源9の別の例は,携帯電話であり,靴やかばん(例えばランドセル)に付着した(例えばステッカー状の)装置,及びストラップ状の装置である。電波源9は,第1の電波の強度を増幅して第2の電波として出力するものであってもよい。この場合,τが0であってもよい。電波源9は,例えば携帯端末のアプリケーションにより実装してもよい。つまり,このアプリケーションは,携帯端末の受信部が,電波源9からの電波を受信した場合に,携帯端末の記憶部から情報を読み出して,携帯端末の出力部に所定の信号を発信するように制御するものであればよい。
【0027】
電波源9の例は,第1の電波を受信してから第2の電波を出力するまでの時間遅延τに応じた分の周波数を第1の電波の周波数に加算または減算した第2の電波を出力するものである。例えば,電波源9は,第1の電波を受信する受信部と,第1の電波の周波数の挙動(周波数がどのように時間変化するか,周期や周波数変動)を分析する分析部と,分析部が分析した第1の電波の周波数変動に対し,あらかじめ設定した周波数(例えば,遅延時間τに対応する周波数)を加算した周波数の挙動を有する第2の電波を作成する周波数加算部と,第2の電波を出力するアンテナなどの出力部とを有するものであればよい。なお,この場合,あらかじめ設定された周波数は記憶部に記憶されており,電波源9の制御部が,記憶部から第1の電波の周波数の挙動を読み出すとともに,加算する周波数を読み出し,演算部に対し第1の電波に所定の周波数を付加した電波を求めるように指示すればよい。このようにすれば,第2の電波を求めることができる。これにより,トランスポンダーによる遅延を考慮し,対象物と車両との正確な距離を求めることができる。なお,第2の電波は,時間遅延τに応じた分の周波数を加える(又は引く)ばかりでなく,それ以外の要素を加味した周波数をさらに加えるか引くかしても構わない。
【0028】
電波源9の別の例は,第1の電波を受信してから第2の電波を出力するまでの時間遅延τに応じた分の周波数を第1の電波に加算した第2の電波と,時間遅延τに応じた分の周波数を第1の電波から減算した第3の電波とを,出力するものである。周波数の加算及び減算は,上記と同様に行うことができる。
図3は,第2の電波と第3の電波を説明するための図面である。電波源9が第2の電波だけを出力する場合,車両側では,RとR+cτの2つが求められることとなる。ここで,cは,第1の電波の速度c[m/s]である。すると,いずれの信号が,対象物と車両との距離を示すものか判別しにくいことが起こりうる。一方,電波源9が,第2の電波に加えて第3の電波も出力するので,車両側で観測されるR,R+cτ,R-cτに対応した成分の比が2:1:1となる。車両側では,強度の最も強い信号がRに対応したものであることがわかるので,対象物と車両との距離を適切に求めることができることとなる。
【0029】
このシステムの例は,電波源9が,2Δfτ/Tに相当する周波数補償周波数を第1の電波に加算又は減算した第2の電波を出力するものである。第1の電波に加算又は減算した第2の電波とは,先に説明したとおり,ある時刻の第1の電波の周波数に対し,周波数補償周波数を加算又は減算した周波数を有するものである。ただし,電波源が第1の電波を受信してから第2の電波を出力するまでの時間遅延をτ[s],第1の電波の速度,周期及び周波数変動をそれぞれc[m/s],T[s],Δf[Hz]とした。以下同様である。この場合,第2の電波は,周波数補償周波数以外の周波数分を,第1の電波にさらに加算又は減算してもよい。
【0030】
このシステムの例は,電波源9が,2αΔfτ/T(ここで,0<α<1)に相当する周波数補償周波数を第1の電波に加算又は減算した第2の電波を出力するものである。この場合,第2の電波は,周波数補償周波数以外の周波数分を,第1の電波にさらに加算又は減算してもよい。
【0031】
このシステムの例は,電波源9が,2αΔfτ/T(ここで,1<α<∞)に相当する周波数補償周波数を第1の電波に加算又は減算した第2の電波を出力するものである。この場合,第2の電波は,周波数補償周波数以外の周波数分を,第1の電波にさらに加算又は減算してもよい。
【0032】
対象物7の例は,車,ベビーカー,自転車,人及びペットである。対象物の具体的な例は,人であり,好ましい対象物は,子供,障害者又は老人である。
【0033】
受信部11は,車両3に搭載され,第2の電波を受信する装置である。受信部11の例はアンテナである。距離算定部13は,受信部11が受け取った第2の電波の周波数,及び電波発生装置5から出力された第1の電波の周波数を用い,車両3と対象物7との距離を求める要素である。
【0034】
出力された電波と受信された電波から対象物との距離を求める方法は,先に説明した原理に基づけばよい。つまり,距離算定部13は,例えば記憶部を有している。記憶部には,第1の電波の時間と周波数の関係が記憶されている。一方,受信部11が,第2の電波を受信した場合,記憶部は,第2の電波の時間と周波数の関係を記憶する。制御部は,記憶部が記憶した第1の電波及び第2の電波の情報を読み出して,演算部に周波数差fBを求める演算をさせる。記憶部は,第1の電波の速度(c[m/s]),周期(T[s])及び周波数変動(Δf[Hz])に関する情報を記憶している。すると,制御部は,演算部が求めた(適宜記憶部に記憶し,読み出した)周波数差fBと,記憶部から読み出した第1の電波の速度(c[m/s]),周期(T[s])及び周波数変動(Δf[Hz])に関する情報を用いて,演算部にR=cTfB/4Δfについての演算を行わせ,距離Rを求めることができる。なお,記憶部はcT/4Δfに関する値を記憶しておいてもよい。この場合,制御部は,演算部に,周波数差fBとcT/4Δfとを掛け合わせる演算を行うことで,距離Rを求めることができる。また,記憶部は,ルックアップテーブルのような記憶領域を有しており,周波数差fBに応じてRを読み出すことができるようにされていてもよい。
【0035】
このシステムの例は,車両3に搭載され,外界の障害物を検知する1又は複数の外界センサ19をさらに,有するものである。
このシステムは,例えば,受信部11が,対象物7からの電波を受信した場合であって,外界センサ19が対象物7を検知しなかったときに,第1の警報を発生させる警報発生部25を有する。この場合,このシステムの制御部は,対象物7から第2の電波を受信したことに関する情報や距離に関する情報を記憶部に記憶させる。一方,外界センサ19は,車両3から撮影できる対象物及びその対象物の距離に関する情報を記憶部に記憶させる。例えば,制御部は,第2の電波を受信した場合に,その第2の電波を発した対象物と車両との距離情報を読み出す。一方,制御部は,記憶部から,外界センサ19がセンシングした対象物とその距離に関する情報を読み出す。そして,制御部は,演算部に対し,第2の電波を発した対象物の車両からの距離と,外界センサ19がセンシングした対象物の距離とを比較させる。そして,第2の電波を発した対象物の車両からの距離と一定範囲の対象物が,外界センサ19がセンシングした対象物に存在しない場合,制御部は,対象物7からの電波を受信した場合であって,外界センサ19が対象物7を検知しなかったと判断する。この場合,制御部は,記憶部に記憶された第1の警報を読み出して,スピーカなどの出力部から,第1の警報を出力すればよい。このようにして,車両の運転手の注意を喚起できる。
【0036】
外界センサ19の例は,車装カメラ,撮影装置及び解析装置,障害物センサ,車両検知センサである。車装カメラ,撮影装置及び解析装置の例は,車両3の前方の視野を撮影するものである。1又は複数の外界センサ19は,電波源9又は電波発生装置5が放出する電波の周波数の5倍以上の周波数を有する電波を用いるものが好ましい。外界センサ19がセンシングに用いる電波の例は,赤外線などの光や,60GHz帯などのミリ波である。
【0037】
このシステムの好ましい例は,車両3に取り付けられた運転手の視野方向を選出する視野方向選出装置25をさらに有するものである。視野方向選出装置25の例は,JINS MEMEなどのウェアラブルデバイスであってもよい。このウェアラブルデバイスは,運転手のジャイロセンサ等で視野方向を解析し,制御部へ伝える。制御部は,ウェアラブルデバイスからの情報をもとに,運転手の視野方向を決定する。そして,制御部は,外界センサ19のアクチュエータを制御し,下界センサが撮影等する方向を制御する。このようにして,1又は複数の外界センサ19が,運転手の視野方向の視野を撮影できる。
【0038】
図4は,このシステムのうち車両側のもののブロック図である。
図4に示されるように,このシステムは,例えば,電波発生装置5,受信部11,距離算定部13,外界センサ19,警報発生部21,視野方向選出装置25を有し,それぞれ情報の授受を行うことができるように接続されている。また,上記以外の要素と情報の授受を行うことができるようにされていてもよい。これらは,コンピュータにより制御され,コンピュータは,入出力部,制御部,演算部及び記憶部を有する。そして,入出力部から情報が入力された場合,制御プログラムの指令に基づいて,適宜記憶部から情報を読み出し,演算部に演算処理を行わせ,記憶部に適宜記憶させるほか,入出力部から所定の信号を出力できるようにされている。
【0039】
以下,
図4を用いて,視野外障害物検知システムの動作例を説明する。1又は複数の外界センサ19が所定方向の画像を撮影する。この場合,先に説明したように,運転手の視野方向の視野を撮影してもよい。下界センサ19が撮影した画像は,解析部31に伝えられる。解析部31は,例えば,カーナビゲーションシステムや対象物認証装置(例えば,人認証装置)における記憶部,演算部及び制御部を有していてもよい。なお,先に説明した距離算定部13は,解析部31の一要素であってもよい。すると,解析部31は,外界センサ19が撮影した画像データと,記憶部が記憶する対象物に関するデータとを照合して,外界センサ19が撮影した画像に,人が含まれるか検知する。また,カーナビゲーションシステムの記憶部のデータを読み出して,外界センサ19による撮影画像が,周囲環境と一致しているか否かの判定を行ってもよい。このようにして外界センサ19は,対象物(例えば人)を特定する。また解析部31は,撮影画像に基づいて,対象物の位置を推測する。そのうえで解析部31は,対象物とその位置情報を記憶する。この対象物は,ひとつとは限らない。この対象物を視認による対象物とする。
【0040】
一方,受信部11が対象物からの電波を受信する。この電波は,対象物7の電波源9が発生する第2の電波(及び第3の電波)である。解析部31は,受信部11が受信した電波を解析し,受信した電波を発した対象物の位置を特定する。例えば,受信した電波の周波数変化(送信した第1の電波と受信した第2の電波の周波数差),受信した電波の方角,及び電波を送信した時間と受信した時間の差を用いて,対象物の位置を特定できる。そのうえで,対象物7とその位置情報を記憶部に記憶させる。この対象物を電波による対象物とする。
【0041】
解析部31は,記憶部から,視認による対象物及びその位置,電波による対象物及びその位置を読み出す。解析部31は,そのうえで,各対象について,電波による対象物であり視認による対象物でないものを求める。解析部31は,視認による対象物でもあり,かつ電波による対象物でもあるものを求めてもよい。さらに,解析部31は,視認による対象物でなく,かつ電波による対象物であるものを求めてもよい。また,所定のルールに従った対象物の存在を求めてもよい。そのうえで,解析部31は,警報発生部21へ所定の制御信号を出力する。警報発生部21は,警報信号を出力部33へ出力する。すると,出力部33は,警報を出力する。
【0042】
次に,カーナビゲーションシステムを併用した例を示す。
図5は,カーナビゲーション画像の例を示す図である。
【0043】
車両3に取り付けられた電波発生装置5が電波を放出する。この電波は,例えば,常に送信され続けていてもよい。一方,カーナビゲーションシステムの記憶部に電波放出地点(及び進行方向)を記憶しておき,GPSなどで電波放出地点に到達したと判断した際に電波発生装置5が電波を放出するようにしてもよい。また,電波放出地点に到達し,さらに所定方向に車両3が進行している場合に,電波発生装置5が電波を放出するようにしてもよい。電波放出地点は,例えば,過去一定以上の事故が発生している個所へ向かう地点や,壁12が存在するなど,視界が遮られる位置に向かう地点である。電波放出地点は,幼稚園や小学校の通学路であってもよい。
【0044】
警報発生部21は,所定の条件を満たす場合に,運転手に警告音を鳴らすか,振動や光により,注意を促すものであってもよいし,車内の画面に警告を示す文字,アイコン,キャラクタを表示させるものであってもよい。社内の画面の例は,カーナビゲーション端末である。
【0045】
図6は,警報表示がなされたカーナビゲーション画像の例を示す図である。
図6中の矢印は,カーナビゲーションにより示された車両の進行方向である。また,
図6では,人を示すアイコンが,対象物の位置に点灯している。この例では,対象物7は,壁12に隠れて,車両からは視認できない。このように,警報発生部21は,カーナビゲーション画像に,壁の背後に,子供などの対象が存在することを示し,運転手に注意を促すことができる。
【0046】
以下に,警報発生例を説明する。
【0047】
この例は,警報発生部21は,受信部11が対象物7からの電波を受信した場合であって,外界センサ19が対象物7を検知しなかったときに,第1の警報を発生させるものである。
【0048】
この例は,外界センサ19が撮影した情報を解析部31へ送る。すると,解析部31は,外界センサからの情報に基づいて,建物の情報を再現する。一方,解析部31は,例えば,車両3の位置や進行方向に関する情報からカーナビゲーションシステムの記憶部の情報を読み出し,カーナビゲーション画像における建物の情報と一致するか検討する。また,解析部31は,外界センサ19の撮影情報に基づいて,人,子供,幼児,ベビーカー,老人など,注意すべき対象が存在すること,及びその位置を分析する。画像に基づいて,対象やその位置を分析する方法は公知である。例えば,対象を記憶部に記憶させておき,撮影画像とパターンマッチングすることで,対象を把握できる。また,車両の進行方向や,外界センサの方向と,撮影画像中の方向,位置情報を用いることで,対象の位置を分析できる。解析部31は,外界センサ19の情報に基づいて解析した対象の種類や対象の位置情報を記憶部に記憶する。
【0049】
一方,電波受信部11は,電波発生装置5が第1の電波を放出し,対象物7の電波源9から出力された第2の電波(及び第3の電波)を受信する。電波受信部11は,対象物7の電波源9が放出した電波を受信してもよい。電波受信部11は,電波発生装置5が放出した電波と受信した電波の周波数変動を用いて,対象物7と車両との距離を把握してもよい。また,受信した電波の方向や強度から,対象物7の位置や距離を把握してもよい。
【0050】
次に,解析部31は,記憶部に記憶された外界センサ19に基づく対象物と,電波受信部11が受信した電波に基づく対象物とを比較する。そのうえで,電波受信部11が受信した電波に基づく対象物のうち,外界センサ19に基づく対象物に存在しないものがあった場合に,警報発生部21へ第1の警報を出力するように指令を出す。すると,警報発生部21は,出力部33に第1の警報を出力する。このようにして,電波受信部11が対象物7からの電波を受信した場合であって,外界センサ19が対象物7を検知しなかったときに,警報を出力することができる。
【0051】
なお,警報発生部21は,さらに,電波受信部11が,対象物7からの電波を受信した場合であって,外界センサ19が対象物7を検知したときに,第2の警報を発生させるようにしてもよい。この場合,視認できる対象物7が存在する場合にも警報を発生させることができるとともに,視認できない対象物7が存在する場合に,これと異なる警報を発生できるので,運転手に注意を促すことができる。
【0052】
なお,この例は,カーナビゲーションシステムに目的地が入力され,目的地までのルートが求められている場合に,目的地までの進行方向に,対象物7が存在する場合にのみ第1の警報又は第2の警報を出力するようにしてもよい。この場合,進行方向以外の位置に対象物7が存在した場合に,運転手が警報に驚き,進行方向以外の方向へ進路を変更させてしまい,かえって対象物を危険にさらすという事態を防止できる。
【0053】
警報発生部21の上記とは別の例は,電波受信部11が,対象物7からの電波を受信し,かつ,外界センサ19が対象物7を検知した場合であって,車両3と対象物7との距離が所定の距離以上と判断したときにも第1の警報を発生させるものである。運転手が近視であるなど,比較的遠方の対象物7に気づかない場合,外界センサ19で把握され,しかも所定以上の距離にある対象物が存在する場合に,警報を発するようにすることで,事故を防止できる。
【0054】
また,解析部31は,電波受信部11が受信した電波に基づく対象物であって,外界センサ19に基づく対象物にも存在するものであっても,これらの対象物についての測定距離(位置情報)に所定以上の相違がある場合は,第1又は第2の警報又は第3の警報を出力するようにしてもよい。これは閾値を記憶部に記憶させ,対象物の位置の差を求め,閾値と対象物の位置の差を比較することより実行できる。
【0055】
視野外障害物検知システムの別の例は,警報発生部21は,電波受信部11が受信した電波の周波数と,電波発生装置5が発生した電波の周波数との差を求め,求めた周波数差が所定の値以下であれば,第1の警報を発生させないものである。この周波数差が小さい場合は,対象物7が車両の近傍に存在することがあり,この場合に警報を発生させると,かえって運転手を驚かせ,冷静な判断を失わせる恐れがあるからである。これは,記憶部が,電波受信部11が受信した電波の周波数と,電波発生装置5が発生した電波の周波数とを記憶し,演算部がそれらの周波数差を求め,記憶部が記憶した閾値を読み出すとともに,演算部が閾値と周波数差とを比較すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は,自動車産業などにおいて利用されうる。
【符号の説明】
【0057】
3.車両 5.電波発生装置 7.対象物 9.電波源
11.受信部 13.距離算定部
19.外界センサ 21.警報発生部
31.解析部 33.出力部