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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】おから処理システム
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/60 20220101AFI20221021BHJP
   A01K 67/033 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
B09B3/60
A01K67/033 502
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019001739
(22)【出願日】2019-01-09
(65)【公開番号】P2020110751
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(73)【特許権者】
【識別番号】519008810
【氏名又は名称】株式会社フライハイ
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義孝
(72)【発明者】
【氏名】木下 敬介
(72)【発明者】
【氏名】山口 竜
【審査官】岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-116664(JP,A)
【文献】特開2012-232858(JP,A)
【文献】特開2002-011440(JP,A)
【文献】特開2003-190920(JP,A)
【文献】特開2002-020190(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0168133(US,A1)
【文献】特開2010-215476(JP,A)
【文献】特開2012-116665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B3
A01K67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハエの幼虫を利用しておからを処理するおから処理システムにおいて、
前記おから処理システムが、所定量の前記おから及び所定量の農産廃棄物を殺菌処理するとともに、所定容積の餌食収容容器を殺菌処理する殺菌処理手段と、前記所定量のおからに前記所定量の農産廃棄物を混入させ、該所定量のおからの内部に該所定量の農産廃棄物を分散させることによって前記ハエの幼虫の餌食を作る餌食作成手段と、前記餌食を前記所定容積の餌食収容容器に収容し、前記餌食収容容器に収容された餌食に前記ハエの卵の複数個を接種し、又は、該餌食収容容器に収容された餌食に前記ハエの幼虫を接種する卵・幼虫接種手段と、前記卵から孵化した複数の幼虫又は餌食に接種された幼虫に前記餌食を食させて該餌食を分解させる餌食分解手段とを有することを特徴とするおから処理システム。
【請求項2】
ハエの幼虫を利用しておからを処理するおから処理システムにおいて、
前記おから処理システムが、所定量の前記おからに所定量の農産廃棄物を混入させ、所定量のおからの内部に所定量の農産廃棄物を分散させることによって前記ハエの幼虫の餌食を作る餌食作成手段と、前記餌食を所定容積の餌食収容容器に収容し、前記餌食収容容器に収容された餌食に前記ハエの卵の複数個を接種し、又は、餌食収容容器に収容された餌食に前記ハエの幼虫を接種する卵・幼虫接種手段と、前記卵から孵化した複数の幼虫又は餌食に接種された幼虫に前記餌食を食させて餌食を分解させる餌食分解手段と、前記卵から孵化した3齢幼虫群の中から一部の3齢幼虫を採取し、採取した3齢幼虫を飼育して蛹から成虫に変態させるとともに前記成虫から前記ハエの卵を採取することでハエの世代交代を行うハエ飼育手段と、前記ハエの3齢幼虫群から採取した前記一部の3齢幼虫を除く残余の3齢幼虫を採取し、前記残余の3齢幼虫から食用に用いる昆虫食原料を作る昆虫食原料作成手段とを有することを特徴とするおから処理システム。
【請求項3】
前記おから処理システムが、前記ハエの3齢幼虫群から採取した前記一部の3齢幼虫を除く残余の3齢幼虫を採取し、前記残余の3齢幼虫から飼養動物用の飼料原料を作る飼料原料作成手段を含む請求項2に記載の おから処理システム。
【請求項4】
ハエの幼虫を利用しておからを処理するおから処理システムにおいて、
前記おから処理システムが、所定量の前記おからに所定量の二糖及び所定量の農産廃棄物を混入させ、所定量のおからの内部に所定量の農産廃棄物を分散させることによって前記ハエの幼虫の餌食を作る餌食作成手段と、前記餌食を所定容積の餌食収容容器に収容し、前記餌食収容容器に収容された餌食に前記ハエの卵の複数個を接種し、又は、餌食収容容器に収容された餌食に前記ハエの幼虫を接種する卵・幼虫接種手段と、前記卵から孵化した複数の幼虫又は餌食に接種された幼虫に前記餌食を食させて餌食を分解させる餌食分解手段とを有することを特徴とするおから処理システム。
【請求項5】
前記二糖が、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオースのうちの少なくとも1つである請求項4に記載の おから処理システム。
【請求項6】
前記おから処理システムでは、前記餌食を収容した複数個の前記餌食収容容器を上下方向へ積み重ねて飼育床を作り、前記飼育床を所定容積の処理スペースに収納する請求項1ないし 請求項5いずれかに記載のおから処理システム。
【請求項7】
前記おから処理システムでは、前記餌食に前記ハエの卵を接種した後、前記卵から幼虫に孵化するまでの間において前記処理スペースの温度を20~50℃の範囲に保持するとともに、前記処理スペースの湿度を60~100%に保持し、前記卵から幼虫に孵化した後又は前記幼虫を接種した後に前記処理スペースの温度を20~50℃の範囲に保持し、前記処理スペースの湿度を65~80%の範囲に保持す 請求項6に記載のおから処理システム。
【請求項8】
前記餌食作成手段では、前記ハエの幼虫に食させる前記おからの水分が60~80%の範囲に調節される 請求項1ないし請求項7いずれかに記載のおから処理システム。
【請求項9】
前記卵・幼虫接種手段では、前記ハエの複数個の卵を前記餌食収容容器に収容された餌食の表面に等間隔離間させて山盛りに接種し、前記餌食分解手段では、前記卵から孵化した直後の1齢幼虫に前記餌食を食させる請求項1ないし請求項8いずれか に記載のおから処理システム。
【請求項10】
前記おから処理システムが、前記卵から孵化した3齢幼虫の蠕動離散習性を利用して該3齢幼虫と前記餌食の分解物とを分別する分別手段を含む請求項1ないし 請求項9いずれかに記載のおから処理システム。
【請求項11】
前記農産廃棄物が、もみ殻と野菜クズとのうちの少なくとももみ殻であり、前記餌食の全重量に対する前記農産廃棄物の重量比が、5~10重量%の範囲にある 請求項1ないし請求項10いずれかに記載のおから処理システム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハエの幼虫を利用しておからを処理するおから処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
イエバエ、センチニクバエ、水アブ等のハエ目に属する昆虫の幼虫又は卵から孵化した幼虫に家畜の排泄物を食させ、家畜の排泄物から有機肥料を製造するとともに、成長した幼虫を養殖魚や養鶏の飼料として利用する有機肥料及び飼料製造システムが開示されている(特許文献1参照)。この有機肥料及び飼料製造システムは、幼虫を育成する育成処理収納部を複数設け、幼虫の育成にともない別の育成処理収納部に順次移動させるに際し、幼虫だけを強制的に移動させる移動手段を用いて幼虫自ら移動させる。有機肥料及び飼料製造システムは、家畜の排泄物がイエバエ、センチニクバエ、水アブ等のハエ目に属する昆虫の幼虫に排泄物を食させ、幼虫から分泌される消化液によって排泄物を酵素分解するから、幼虫の食性を利用して排泄物を安全に処理することができるとともに、幼虫の成長にともなってそれに合う育成処理収納部を小分けに分割しているから、満遍なく均一に排泄物を処理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-83025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示の有機肥料及び飼料製造システムは、家畜の排泄物の処理を目的としてイエバエ、センチニクバエ、水アブ等のハエ目に属する昆虫の幼虫を利用しているが、家畜の排泄物の養生条件によって、ハエ目に属する昆虫の卵から幼虫への孵化率が低下する場合や幼虫の食欲が低下する場合、幼虫の生存率が低下する場合、幼虫の成長が遅れる場合があり、家畜の排泄物を効率よく処理することができない場合がある。また、有機肥料及び飼料製造システムには、ハエ目に属する昆虫の幼虫を利用したおからの処理は開示されていない。
【0005】
なお、豆腐の製造過程で大量のおからが発生するが、食用に利用されるおからはわずかであり、残余のおからは回収処理業者に回収費用や処理費用を支払って廃棄処理を依頼しているのが現状であり、その処理に多額の費用がかかり、おからを廉価に処理することができない。また、おからを廃棄することなくおからから食用に用いる昆虫食原料や飼養動物用の飼料原料を作ることができず、おからを無駄なく有効に利用することができない。
【0006】
本発明の目的は、ハエの幼虫を利用しておからを廉価に処理することができ、おからを短期間に効率よく処理することができるおから処理システムを提供することにある。本発明の他の目的は、おからを食させることで、ハエの幼虫を食用に用いる昆虫食原料や飼養動物用の飼料原料に変えることができ、おからを無駄なく有効に利用することができるおから処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の前提は、ハエ(蠅)の幼虫を利用しておからを処理するおから処理システムである。
【0008】
前記前提における本発明の第1の特徴としては、おから処理システムが、所定量のおから及び所定量の農産廃棄物を殺菌処理するとともに、所定容積の餌食収容容器を殺菌処理する殺菌処理手段と、所定量のおからに所定量の農産廃棄物を混入させ、所定量のおからの内部に所定量の農産廃棄物を分散させることによってハエの幼虫の餌食を作る餌食作成手段と、餌食を所定容積の餌食収容容器に収容し、餌食収容容器に収容された餌食にハエの卵の複数個を接種し、又は、餌食収容容器に収容された餌食にハエの幼虫を接種する卵・幼虫接種手段と、卵から孵化した複数の幼虫又は餌食に接種された幼虫に餌食を食させて餌食を分解させる餌食分解手段とを有することにある。
【0009】
前記前提における本発明の第2の特徴としては、おから処理システムが、所定量のおからに所定量の農産廃棄物を混入させ、所定量のおからの内部に所定量の農産廃棄物を分散させることによってハエの幼虫の餌食を作る餌食作成手段と、餌食を所定容積の餌食収容容器に収容し、餌食収容容器に収容された餌食にハエの卵の複数個を接種し、又は、餌食収容容器に収容された餌食にハエの幼虫を接種する卵・幼虫接種手段と、卵から孵化した複数の幼虫又は餌食に接種された幼虫に餌食を食させて餌食を分解させる餌食分解手段と、卵から孵化した3齢幼虫群の中から一部の3齢幼虫を採取し、採取した3齢幼虫を飼育して蛹から成虫に変態させるとともに成虫からハエの卵を採取することでハエの世代交代を行うハエ飼育手段と、ハエの3齢幼虫群から採取した一部の3齢幼虫を除く残余の3齢幼虫を採取し、残余の3齢幼虫から食用に用いる昆虫食原料を作る昆虫食原料作成手段とを有することにある。
【0010】
前記第2の特徴を有する本発明の一例としては、おから処理システムが、ハエの3齢幼虫群から採取した一部の3齢幼虫を除く残余の3齢幼虫を採取し、残余の3齢幼虫から飼養動物用の飼料原料を作る飼料原料作成手段を含む
【0011】
前記前提における本発明の第3の特徴としては、おから処理システムが、所定量のおからに所定量の二糖及び所定量の農産廃棄物を混入させ、所定量のおからの内部に所定量の農産廃棄物を分散させることによってハエの幼虫の餌食を作る餌食作成手段と、餌食を所定容積の餌食収容容器に収容し、餌食収容容器に収容された餌食にハエの卵の複数個を接種し、又は、餌食収容容器に収容された餌食にハエの幼虫を接種する卵・幼虫接種手段と、卵から孵化した複数の幼虫又は餌食に接種された幼虫に餌食を食させて餌を分解させる餌食分解手段とを有することにある。
【0012】
前記第3の特徴を有する本発明の一例としては、二糖が、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオースのうちの少なくとも1つである
【0013】
前記第1~第3の特徴を有する本発明の一例として、おから処理システムでは、餌食を収容した複数個の餌食収容容器を上下方向へ積み重ねて飼育床を作り、飼育床を所定容積の処理スペースに収納する
【0014】
前記第1~第3の特徴を有する本発明の他の一例として、おから処理システムでは、餌食にハエの卵を接種した後、卵から幼虫に孵化するまでの間において処理スペースの温度を20~50℃の範囲に保持するとともに、処理スペースの湿度を60~100%に保持し、卵から幼虫に孵化した後又は幼虫を接種した後に処理スペースの温度を20~50℃の範囲に保持し、処理スペースの湿度を65~80%の範囲に保持する
【0015】
前記第1~第3の特徴を有する本発明の他の一例として、餌食作成手段では、ハエの幼虫に食させるおからの水分が60~80%の範囲に調節される
【0016】
前記第1~第3の特徴を有する本発明の他の一例として、卵・幼虫接種手段では、ハエの複数個の卵を餌食収容容器に収容された餌食の表面に等間隔離間させて山盛りに接種し、餌食分解手段では、卵から孵化した直後の1齢幼虫に餌食を食させる
【0017】
前記第1~第3の特徴を有する本発明の他の一例としては、おから処理システムが、卵から孵化した3齢幼虫の蠕動離散習性を利用して3齢幼虫と餌食の分解物とを分別する分別手段を含む
【0018】
前記第1~第3の特徴を有する本発明の他の一例としては、農産廃棄物が、もみ殻と野菜クズとのうちの少なくとももみ殻であり、餌食の全重量に対する農産廃棄物の重量比が、5~10重量%の範囲にある
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るおから処理システムによれば、所定量のおからに所定量の農産廃棄物を混入させ、所定量のおからの内部に所定量の農産廃棄物を分散させることによってハエの幼虫が蠕動容易な空隙を形成した所定量の餌食を作り、餌食収容容器に収容された餌食にハエの卵の複数個を接種し、又は、餌食収容容器に収容された餌食にハエの幼虫を接種し、卵から孵化した複数の幼虫又は餌食に接種された幼虫に餌食収容容器に収容された餌食の空隙を蠕動させつつ、それら幼虫に餌食を食させて幼虫を成長させ、それら幼虫の成長過程において餌食が幼虫の体内で酵素分解されるから、最初に食した餌食を好んで食するハエの幼虫の食性を利用し、幼虫の食欲(食性)を増進させつつ、大量なおから(餌食)を短期間に効率よく処理することができる。おから処理システムは、農産廃棄物によって餌食に空隙を形成し、卵から孵化した複数の幼虫又は餌食に接種された幼虫がその空隙を蠕動するから、幼虫が餌食内部を容易に蠕動することができ、ハエの幼虫の蠕動習性を活性化させて幼虫の食欲を増進させることができ、短期間に大量のおから(餌食)を幼虫に食させることができる。おから処理システムは、おから(餌食)がハエの幼虫の体内で酵素分解されるから、ハエの幼虫の食性を利用して大量のおから(餌食)を安全かつ廉価に処理することができる。
【0020】
所定量のおから及び所定量の農産廃棄物を殺菌処理するとともに、餌食収容容器を殺菌処理する殺菌処理手段を含むおから処理システムは、おからや農産廃棄物、餌食収容容器を殺菌処理することで、おからや農産廃棄物、餌食収容容器における雑菌の繁殖を防ぐことができ、おから(餌食)の処理において悪臭の発生や病原菌の繁殖がなく、病原菌を含まない幼虫に成長させることができ、清潔な幼虫の食性を利用しておから(餌食)を安全に処理することができる。おから処理システムは、幼虫における病気の発生を防ぐことができ、幼虫の生存率を向上させることができる。
【0021】
餌食を収容した複数個の餌食収容容器を上下方向へ積み重ねて飼育床を作り、飼育床を所定容積の処理スペースに収納するおから処理システムは、複数個の餌食収容容器を利用するとともに、飼育床を利用することで、一度に大量のハエの幼虫を飼育しつつ、一度に大量のおから(餌食)を短期間に効率よく処理することができ、大量のおから(餌食)を安全に処理することができる。
【0022】
餌食にハエの卵を接種した後、卵から幼虫に孵化するまでの間において処理スペースの温度を20~50℃(好ましくは、20~40℃)の範囲に保持するとともに、処理スペースの湿度を60~100%(好ましくは、60~90%)に保持し、卵から幼虫に孵化した後又は幼虫を接種した後に処理スペースの温度を20~50℃(好ましくは、20~40℃)の範囲に保持し、処理スペースの湿度を65~80%の範囲に保持するおから処理システムは、卵から幼虫に孵化するまでの間において処理スペースの温度を30~50℃(好ましくは、20~40℃)の範囲に保持するとともに、処理スペースの湿度を60~100%(好ましくは、60~90%)に保持することで、卵から孵化する幼虫の孵化率を向上させることができ、ハエの幼虫の生存率を向上させることができる。おから処理システムは、卵から幼虫に孵化した後又は幼虫を接種した後に処理スペースの温度を20~50℃(好ましくは、20~40℃)の範囲に保持し、処理スペースの湿度を65~80%の範囲に保持することで、ハエの幼虫の生存率を向上させることができ、幼虫の成長を促進させることができるとともに、それら幼虫の旺盛な食欲(食性)を利用して大量のおから(餌食)を短期間に効率よく処理することができる。おから処理システムは、卵や幼虫に対する生育環境を最適にすることができ、環境悪化による卵や幼虫の死亡を防いで孵化率や生存率を向上させることができる。
【0023】
餌食作成手段において、ハエの幼虫に食させるおからの水分が60~80%の範囲に調節されるおから処理システムは、おからの水分が不足すると、おからが硬化し、おから(餌食)における幼虫の蠕動が制限され、おからの水分が必要以上に多いと、餌食におけるおからの密度が低下するとともに、幼虫に対する生育環境が悪化し、幼虫の食欲(食性)が低下しておから(餌食)を効率よく処理することができないが、おからの水分が前記範囲にあるから、おから(餌食)における幼虫の蠕動が妨げられることはなく、餌食におけるおからの密度が最適となり、ハエの幼虫の活発な蠕動と幼虫の旺盛な食欲(食性)とによって大量のおから(餌食)を短期間に効率よく処理することができる。おから処理システムは、おからの水分を前記範囲にすることで、卵や幼虫に対する生育環境を最適にすることができ、環境悪化による卵や幼虫の死亡を防いで孵化率や生存率を向上させることができる。
【0024】
卵・幼虫接種手段において、ハエの複数個の卵を餌食収容容器に収容された餌食の表面に等間隔離間させて山盛りに接種し、餌食分解手段において、卵から孵化した直後の1齢幼虫に餌食を食させておからに食性を示す幼虫に成長させるおから処理システムは、自然界に存在するハエが培地に複数個の卵を山盛り状態に産卵し、それによって卵からの孵化率を高め、種の生存率を向上させていることから、同様に、卵の複数個を餌食の表面に山盛りに接種し、接種した卵から孵化する幼虫の孵化率を向上させることができ、ハエの幼虫の生存率を向上させることができる。おから処理システムは、最初に食した餌食を好んで食するハエの幼虫の性質を利用し、卵から孵化した直後の1齢幼虫に餌食を食させておからに食性を示す幼虫に成長させることができ、幼虫の食欲(食性)を増進させつつ、幼虫の旺盛な食欲(食性)を利用して大量なおから(餌食)を短期間に効率よく処理することができる。
【0025】
卵から孵化した直後の1齢幼虫から2回脱皮後の蛹変態期を迎えた3齢幼虫の活発な蠕動離散習性を利用して3齢幼虫と餌食の分解物とを分別するおから処理システムは、蛹変態期を迎えた3齢幼虫の活発な蠕動離散習性を利用して3齢幼虫とおから(餌食)の分解物とを分別するから、幼虫が蛹変態する時に分解物から蠕動離散する習性を利用することで、ハエの幼虫と分解物との人手を介した分別作業を省くことができ、手間と時間とをかけることなく、3齢幼虫とおから(餌食)の分解物とを分離することができる。おから処理システムは、おから(餌食)の分解物にハエの3齢幼虫が残存することはなく、おから(餌食)の分解物からのハエの成虫の発生を防ぐことができる。
【0026】
卵から孵化した1齢幼虫から2回脱皮後の3齢幼虫群の中から一部の3齢幼虫を採取し、採取した3齢幼虫を飼育して蛹から成虫に変態させるとともに成虫からハエの卵を採取することでハエの世代交代を行うおから処理システムは、3齢幼虫群の一部を成長させた成虫に次世代の卵を産ませ、その卵から孵化した幼虫を利用しておから(餌食)を処理するから、ハエの卵を外部から新たに調達する必要はなく、半永久的なサイクルでハエを利用することができ、おから(餌食)を廉価に処理することができる。
【0027】
ハエの3齢幼虫群から世代交代に利用した3齢幼虫を除く残余の3齢幼虫を採取し、残余の3齢幼虫から食用に用いる昆虫食原料を作るおから処理システムは、ハエの幼虫に清潔なおからを食させることで、ハエの幼虫を食用に用いる昆虫食原料に変えることができ、おからを無駄なく有効に利用することができる。おから処理システムは、これまで廃棄されてきたおからを利用して昆虫食原料を作ることができるから、廃棄されるおからから昆虫食に利用する昆虫食原料を得ることができ、将来発生する食糧不足をハエの幼虫及びおからによって補うことができる。なお、昆虫食原料が高タンパクかつ豊富なキトサンを含み、昆虫食原料から作られた昆虫食を食すことで、免疫力や自然治癒力を高めることができる。
【0028】
ハエの3齢幼虫群から世代交代に利用した3齢幼虫を除く残余の3齢幼虫を採取し、残余の3齢幼虫から飼養動物用の飼料原料を作るおから処理システムは、ハエの幼虫におからを食させることで、ハエの幼虫を飼養動物用の飼料原料に変えることができ、おからを無駄なく有効に利用することができる。おから処理システムは、これまで廃棄されてきたおからを利用して飼養動物用の飼料原料を作ることができるから、廃棄されるおからから飼養動物に食させる飼料原料を得ることができ、将来発生する飼養動物用の飼料原料の不足をハエの幼虫及びおからによって補うことができる。なお、飼料原料が高タンパクかつ豊富なキトサンを含み、飼料原料を与えた飼養動物の免疫力や自然治癒力を高めることができる。
【0029】
餌食作成手段において、所定量のおからに所定量の二糖を混入させて餌食を作るおから処理システムは、おからに二糖を混入させることで、おから(餌食)に適度な糖質を加えることができ、おから(餌食)を食した幼虫が糖質を含み、ハエの幼虫を糖質を含んだ食用に用いる昆虫食原料に変えることができ、ハエの幼虫を糖質を含んだ飼養動物用の飼料原料に変えることができる。なお、昆虫食原料が糖質や豊富なキトサンを含むから、高タンパクかつ栄養価の高い昆虫食を作ることができ、飼料原料が糖質や豊富なキトサンを含むから、高タンパクかつ栄養価の高い飼料原料を作ることができる。
【0030】
二糖がスクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオースのうちの少なくとも1つであるおから処理システムは、おからにスクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオースのうちの少なくとも1つを混入させることで、おから(餌食)に適度な糖質を加えることができ、おから(餌食)を食した幼虫が糖質を含み、ハエの幼虫を糖質を含んだ食用に用いる昆虫食原料に変えることができ、ハエの幼虫を糖質を含んだ飼養動物用の飼料原料に変えることができる。なお、昆虫食原料が糖質や豊富なキトサンを含むから、高タンパクかつ栄養価の高い昆虫食を作ることができ、飼料原料が糖質や豊富なキトサンを含むから、高タンパクかつ栄養価の高い飼料原料を作ることができる。
【0031】
農産廃棄物がもみ殻と野菜クズとのうちの少なくとももみ殻であり、餌食の全重量に対する前記農産廃棄物の重量比が5~10重量%の範囲にあるおから処理システムは、おからに前記重量比のもみ殻や野菜クズを加えることで、餌食に適度な間隙を作ることができるから、幼虫が餌食内部を容易に蠕動することができ、ハエの幼虫の蠕動習性を活性化させることができるとともに、野菜クズが幼虫の食欲(食性)を増進させる食欲(食性)増進物となり、幼虫の食欲を増進させることができ、ハエの幼虫の活発な蠕動と幼虫の旺盛な食欲(食性)とによって大量のおから(餌食)を短期間に効率よく処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】一例として示すおから処理システムの概略構成図。
図2】複数の飼育床を収容した一例として示す飼育室の側面図。
図3】一例として示す餌食収容トレーの斜視図。
図4図3の収容トレーの部分拡大図。
図5】システムにおいて実施される手順の一例を示すフロー図。
図6】飼育室の照度の変化を表す図。
図7】複数個の餌食収容トレーを上下方向へ積み重ねた飼育床の側面図。
図8図7の飼育床における餌食収容トレーの上面図。
図9】1齢幼虫又は2齢幼虫が餌食を食している状態の飼育床の側面図。
図10図9の飼育床における餌食収容トレーの上面図。
図11】3齢幼虫が採集箱に落下する状態を示す飼育床の側面図。
図12図11の飼育床における餌食収容トレーの上面図。
図13】他の一例として示すおから処理システムの概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
一例として示すおから処理システム10Aの概略構成図である図1等の添付の図面を参照し、本発明に係るおから処理システムの詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、複数の飼育床15を収容した一例として示す飼育室16の側面図であり、図3は、一例として示す餌食収容トレーの斜視図である。図4は、図3の収容トレーの部分拡大図である。図3では、前後方向を矢印X、横方向を矢印Yで示し、上下方向を矢印Zで示す。
【0034】
おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、ハエの幼虫50(図9参照)を利用し、豆腐製造工場の豆腐の製造工程によって発生したおから17(豆腐を絞った後に残る絞りかす)を処理する。おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、おから17から食用に用いる昆虫食原料を作るとともに、飼養動物用の飼料原料を作る。以下の説明では、ハエ(蠅)としてイエバエを例に説明するが、ハエには、イエバエの他に、センチニクバエや水アブ等のハエ目に属する昆虫を利用することができる。
【0035】
おから処理システム10Aは、おから一時貯蔵ボックス(図示せず)、攪拌機11、定量切出機12、ベルトコンベアー13、昇降リフター14、飼育床15、飼育室16(所定容積の処理スペース)を利用し、殺菌処理手段(殺菌処理工程)、餌食作成手段(餌食作成工程)、餌食収容手段(餌食収容工程)、卵・幼虫接種手段(卵・幼虫接種工程)、餌食分解手段(幼虫飼育手段)(餌食分解工程)、分別手段(分別工程)、ハエ飼育手段(ハエ飼育工程)、昆虫食原料作成手段(昆虫食原料作成工程)、飼料原料作成手段(飼料原料作成工程)の各手段(各工程)を実施する。おから一時貯蔵ボックスや攪拌機11、定量切出機12、ベルトコンベアー13、昇降リフター14、飼育室15(おから処理システム10A)は、おから処理工場(図示せず)の建家の内部(工場内)に設置・施設されている。おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)(おから処理工場)は、豆腐製造工場に隣接して施設され、又は、豆腐製造工場の近辺(周辺地域)に施設される。
【0036】
おから一時貯蔵ボックスは、搬送された大量のおから17を一時的に保管する保管設備であり、図示なしていないが、臭気の放出を防止するため、シャッターが設置されている。攪拌機11は、おから一時貯蔵ボックスの下流側に配置され、おから17と農産廃棄物18とを攪拌混合して餌食を作る。定量切出機12は、餌食19を計量し、設定量の餌食19を餌食収容トレー20(餌食収容容器)に載せる。昇降リフター14は、餌食収容トレー20の上下方向へ積み上げ、飼育床15の組み立てに使用する。農産廃棄物18としては、もみ殻18a及び野菜クズ18bが使用され、それらのうちの少なくとも1つがおから17に混入される。
【0037】
飼育室16(所定容積の処理スペース)は、天井と周壁とに囲繞された所定容積の内部気密空間21と、内部気密空間21の温度および湿度を調節可能な空調設備(図示せず)と、内部気密空間21の明るさを調光可能な照明設備(図示せず)とから形成されている。攪拌機11や定量切出機12、ベルトコンベアー13、昇降リフター14、飼育床15、飼育室16は、殺菌処理が行われ、内部気密空間21が無菌状態になっている。飼育室16の内部気密空間21には、温度センサ(図示せず)と湿度センサ(図示せず)と照度センサ(図示せず)と室圧センサ(図示せず)が設置されている。
【0038】
飼育室16は、その内部気密空間21に複数の飼育床15を挿脱可能に収容可能であり、施解錠可能な開閉扉(図示せず)を備えている。飼育室16には、給気ファン22が設置された給気ダクト23と、排気ファン24が設置された排気ダクト25が施設されている。給気ダクト23や排気ダクト25には、中性能フィルタ及びHEPAフィルタ(図示せず)が着脱可能に取り付けられている。飼育室16には給気ダクト23から空気が給気され、飼育室16の空気が排気ダクト25から外部(大気)に排気される。給気ファン22及び排気ファン24は、その制御部がインターフェイスを介してコントローラ(制御装置)(図示せず)に接続されている。
【0039】
空調設備や照明設備、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、室圧センサは、インターフェイスを介してコントローラに接続されている。コントローラは、中央処理部(CPUまたはMPU)とメモリとを有するコンピュータである。コントローラには、テンキーユニットやタッチパネル、ディスプレイ等の入出力装置がインターフェイスを介して接続されている。コントローラのメモリには、飼育室の内部気密空間の設定温度や設定湿度、時間毎の設定照度、時間毎の設定室圧が格納されている。設定温度や設定湿度、設定照度、設定室圧は、テンキーユニットやタッチパネルによって自由に設定・変更することができる。なお、スマートフォン等の携帯端末による遠隔操作によって設定温度、設定湿度、設定照度、設定室圧を設定・変更することもできる。
【0040】
温度センサは、飼育室16の内部気密空間21の温度を計測し、計測した測定温度(温度信号)をコントローラに送信する。湿度センサは、飼育室16の内部気密空間21の湿度を計測し、計測した測定湿度(湿度信号)をコントローラに送信する。照度センサは、飼育室16の内部気密空間21の照度を計測し、計測した測定照度(照度信号)をコントローラに送信する。室圧センサは、飼育室16の内部気密空間21の室圧を計測し、計測した測定室圧(室圧信号)をコントローラに送信する。空調設備は、コントローラからの指示にしたがって、気密空間21の温度を上昇または下降させるとともに、気密空間21の湿度を上昇または下降させ、飼育室16の内部気密空間21の温度を設定温度に保持するとともに、内部気密空間16の湿度を設定湿度に保持する。
【0041】
照明設備の発光装置26には、蛍光灯やLED照明が使用されている。蛍光灯やLED照明は、飼育室16の天井近傍の内部気密空間21に設置され、コントローラの指令にしたがって、気密空間21の時間毎の明るさを調節(調光)し、気密空間21を暗闇状態(夜間状態)、気密空間21を薄明かり状態、気密空間21を日照状態(昼間状態)にする。飼育室16では、給気ダクト23から外気が給気され、排気ダクト25によって室内空気が外部に排気され、給気ダクト23(給気ファン22)及び排気ダクト25(排気ファン24)によって換気が行われる。
【0042】
コントローラは、温度センサから送信された測定温度(温度信号)とあらかじめ設定された設定温度とを比較し、測定温度が設定温度の範囲内に入るように、制御を行う。その一例としては、測定温度が設定温度の範囲外にある場合、測定温度と設定温度との誤差を解消するフィードバック信号を空調設備に出力し、空調設備をフィードバック制御して内部気密空間21の温度を設定温度に維持する。
【0043】
コントローラは、湿度センサから出力された測定湿度(湿度信号)とあらかじめ設定された設定湿度とを比較し、測定湿度が設定湿度の範囲内に入るように、制御を行う。その一例としては、測定湿度が設定湿度の範囲外にある場合、測定湿度と設定湿度との誤差を解消するためのフィードバック信号を空調装置に出力し、空調装置をフィードバック制御して内部気密空間21の湿度を設定湿度に維持する。
【0044】
コントローラは、照度センサから出力された測定照度(照度信号)とあらかじめ設定された設定照度とを比較し、測定照度が設定照度になるように、照明設備の照度を制御し、内部気密空間21の照度を設定照度に維持する。コントローラは、室圧センサから出力された測定室圧(室圧信号)とあらかじめ設定された設定室圧とを比較し、測定室圧が設定室圧になるように、給気ファン及び排気ファンを制御し、内部気密空間21の室圧を設定室圧に維持する。
【0045】
飼育床15は、採集容器27と、複数の餌食収容トレー20と、採集容器27およびそれら収容トレー20を着脱可能に固定支持する固定フレーム28とから形成されている(図7参照)。採集容器27は、固定フレーム28の内側に配置され、最下位に配置された餌食収容トレー20の下方に位置している。採集容器27は、平面形状が矩形の収容凹部29と、収容凹部29の周縁につながる傾斜壁30とを有する。傾斜壁30は、収容凹部29から径方向外方へ向かって上下方向上方へ上り勾配に傾斜している。餌食収容トレー20は、固定フレーム28の内側に配置され、上下方向へ等間隔離間して並んでいる。採集容器27やそれら餌食収容トレー20は、熱硬化性合成樹脂や熱可塑性合成樹脂等のプラスチック、アルミやジュラルミン、合金等の腐植に難い金属から作られている。
【0046】
餌食収容トレー20は、図3に示すように、平面形状が矩形の底板31と、底板31の両側縁から上下方向へ垂直に起立する両側板32とを有する。底板31は、水平に延びる中央部33と、中央部33から前方へ延びる前部34と、中央部33から後方へ延びる後部35とを有する。前部34は、中央部33の側に位置する基端部分36が中央部33につながり、基端部分36の反対側に位置する先端部分37が両側板32の上部につながっている。前部34は、基端部分36から先端部分37に向かって上方へ所定角度で傾斜している。前部34には、その基端部分36から先端部分37に向かって上方へ所定角度で上り勾配に傾斜する斜面38が形成されている。前部34の先端部分37には、横方向へ等間隔離間して並ぶ複数の凸部39が形成されている。それら凸部39の間には、斜面38が位置している。
【0047】
後部35は、中央部33の側に位置する基端部分40が中央部33につながり、基端部分40の反対側に位置する先端部分41が両側板32の上部につながっている。後部35は、基端部分40から先端部分41に向かって上方へ所定角度で傾斜している。後部35には、基端部分40から先端部分41に向かって上下方向上方へ所定角度で上り勾配に傾斜する斜面42が形成されている。後部35の先端部分41には、横方向へ等間隔離間して並ぶ複数の凸部43が形成されている。それら凸部43の間には、斜面42が位置している。
【0048】
両側板32の上部には、上下方向上方へ凸となる位置決め凸部44が形成されている。両側板32の下部には、上下方向上方へ凹んでいて位置決め凸部44を挿脱可能に挿入させる位置決め凹部45が形成されている。餌食収容トレー20では、底板31とそれら側板32とから所定容積の餌食収容凹部46が画成されている。餌食収容トレー20の餌食収容凹部46には、そこに餌食19を敷き詰めるときの目安となる目安線47が表示されている。
【0049】
餌食収容凹部46には、横方向へ等間隔離間して前後方向へ直状に延びる3枚の仕切板48が設置されている。一方の仕切板48は、底板31の前部34の先端部分37から中央部33に向かって延び、中央部33の中央に達している。他方の仕切板48は、底板31の後部35の先端部分41から中央部33に向かって延び、中央部33の中央に達している。なお、仕切板48の枚数を図示の3枚に限定するものではなく、4枚以上の仕切板48が餌食収容凹部46に設置されていてもよい。
【0050】
餌食収容トレー20は、固定フレーム28の内側に設置固定された状態で、6個のそれらが上下方向へ等間隔離間した状態で積み重なっている。なお、飼育床15における餌食収容トレー20の個数に特に限定はなく、7個以上の収容トレー20が積み重なっていてもよい。餌食収容トレー20では、上方に位置する収容トレー20の位置決め凸部44が下方に位置する収容トレー20の位置決め凹部45に嵌入し、それら収容トレー20どうしが上下方向へ整列した状態で固定されている。
【0051】
図5は、システム10Aにおいて実施される手順の一例を示すフロー図であり、図6は、飼育室16の照度の変化を表す図である。図7は、複数個の餌食収容トレー20を上下方向へ積み重ねた飼育床15の側面図であり、図8は、図7の飼育床15における餌食収容トレー20の上面図である。図9は、1齢幼虫50a又は2齢幼虫50bが餌食19を食している状態の飼育床15の側面図であり、図10は、図9の飼育床15における餌食収容トレー20の上面図である。図11は、3齢幼虫50cが採集容器27に落下する状態を示す飼育床15の側面図であり、図12は、図11の飼育床15における餌食収容トレー20の上面図である。図7,8では、餌食収容トレー20に餌食19が収容され、その餌食19の表面に卵49が接種されている。図11,12は、幼虫50によって食された餌食19の一部が分解物51(低濃度有機分解物)(肥料基材)に変わっている。なお、図7,9,11では、仕切板48の図示を省略している。
【0052】
図1の有機肥料製造システム10Aにおいて実施される各手段を説明すると、以下のとおりである。豆腐製造工場において発生した所定量のおから17は、所定の輸送手段(搬送車やベルトコンベアー、搬送台車等)(図示せず)によって豆腐製造工場からおから処理工場(おから処理システム10A)に搬送され、おから処理工場のおから一時貯蔵ボックスに一時的に保管(プール)される。おから一時貯蔵ボックスに保管されたおから17は、豆腐製造工場から引き取ったその日のうちに処理され、または、おから処理工場に受け入れられた時から24時間以内に処理される。おから17に混入されるもみ殻18a(農産廃棄物18)や野菜クズ18b(農産廃棄物18)は、農家や農協、産廃業者等から引き取られた後、おから処理工場内部の保管庫に保管される。
【0053】
おから一時貯蔵ボックスに保管されたおから17には、殺菌処理(加熱水蒸気殺菌)が施される(殺菌処理手段(殺菌処理工程))。おから17に混入されるもみ殻18a(農産廃棄物18)には、その使用前に熱湯消毒や熱風消毒、次亜塩素酸水による洗浄が行われ(殺菌処理手段(殺菌処理工程))、おから17に混入される野菜クズ18b(農産廃棄物18)には、次亜塩素酸水による洗浄が行われる(殺菌処理手段(殺菌処理工程))。殺菌処理が完了した野菜クズ18bは、粉砕機によって粉砕され、野菜クズ粉砕物18bに加工される。採集容器27やそれら餌食収容トレー20には、その使用前に熱湯消毒や熱風消毒、次亜塩素酸水による洗浄が行われる(殺菌処理手段(殺菌処理工程))。なお、殺菌処理手段(殺菌処理工程)を省くこともできる。
【0054】
おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、おから17や農産廃棄物18、餌食収容トレー20(餌食収容容器)、採集容器27を殺菌処理することで、おから17や農産廃棄物18、餌食収容トレー20、採集容器27おける雑菌の繁殖を防ぐことができ、おから17(餌食19)の処理において悪臭の発生や病原菌の繁殖がなく、病原菌を含まない幼虫50に成長させることができ、清潔な幼虫50の食性を利用しておから17(餌食19)を安全に処理することができる。おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、幼虫50における病気の発生を防ぐことができ、幼虫50の生存率を向上させることができる。
【0055】
殺菌処理が完了したおから17やもみ殻18a、野菜クズ粉砕物18bは、殺菌処理所や粉砕機からベルトコンベアー(図示せず)によって攪拌機11に投入される(水を投入する場合がある)。おから17やもみ殻18a、野菜クズ粉砕物18bは、攪拌機11において攪拌混合されて餌食19が作られる(餌食作成手段(餌食作成工程))。餌食作成手段(餌食作成工程)では、所定量のおから17の内部に所定量のもみ殻18aや野菜クズ粉砕物18b(農産廃棄物)を混合・分散させることによってイエバエの幼虫50が蠕動容易な空隙が形成される。なお、野菜クズ粉砕物18bを除くおから17及びもみ殻18bのみが攪拌機11に投入され(水を投入する場合がある)、攪拌機11においておから17及びもみ殻18aが攪拌混合されて餌食19が作られる場合がある(餌食作成手段(餌食作成工程))。また、おから17、もみ殻18a、野菜クズ粉砕物18bとともに、酒粕や踏込粕、みりん粕、コーヒー粕、焼酎粕、ビール粕、菜種粕、パイン粕、紅茶粕、ワイン粕、デンプン粕のうちの少なくとも1つが攪拌機11に投入され(水を投入する場合がある)、攪拌機11においてそれらが攪拌混合されて餌食19が作られる場合がある(餌食作成手段(餌食作成工程))。
【0056】
農産廃棄物18(もみ殻18aや野菜クズ粉砕物18b、粕)は、イエバエの幼虫50の食欲(食性)を増進させる他、おから17(餌食19)の水分調節材としても機能する。おから17が水分を多く含む場合、もみ殻18aの投入量(混合量)を多くする。おから17の水分が不足している場合は、野菜クズ粉砕物18bや粕の投入量(混合量)を多くする。それでも水分が不足する場合は、おから17に水を加える。おらか処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)では、おから17に農産廃棄物18(もみ殻18aや野菜クズ粉砕物18b、粕)や水を混入することで、餌食19(おから17)の水分含有量を調節し、餌食19の水分(粘度)を調節している。
【0057】
餌食19の全重量に対する農産廃棄物18の重量比は、5重量%~10重量%の範囲にある。餌食19の全重量に対する農産廃棄物18の重量比が5重量%未満では、餌食19に適度な間隙を作ることができず、イエバエの幼虫50の蠕動習性を活性化させることができないとともに、イエバエの幼虫50の食欲(食性)を増進させることができない。餌食19の全重量に対する農産廃棄物18の重量比が10重量%を超過すると、餌食19に対するおから17の量が少なくなり、大量のおから17を短時間に効率よく処理することができない。
【0058】
おらか処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、おから17に前記重量比(5重量%~10重量%)のもみ殻18aや野菜クズ粉砕物18b、粕を加えることで、餌食19に適度な間隙を作ることができるから、幼虫50が餌食19内部を容易に蠕動することができ、イエバエの幼虫50の蠕動習性を活性化させることができるとともに、野菜クズ粉砕物18bや粕が幼虫50の食欲(食性)を増進させる食欲(食性)増進物となり、幼虫50の食欲を増進させることができ、イエバエの幼虫50の活発な蠕動と幼虫50の旺盛な食欲(食性)とによって大量のおから17(餌食19)を短期間に効率よく処理することができる。
【0059】
イエバエの幼虫50に食させるおから17の水分は、それら農産廃棄物18によって60%~80%の範囲に調節される。おから17の水分が60%未満では、おから17の水分が不足して餌食19の粘度が増加し、餌食19(おから17)が硬化しておから17(餌食19)における幼虫50の蠕動が制限され、幼虫50が餌食19内を活発に動き回ることができず、幼虫50が餌食19(おから17)を円滑に食することができない。おから17の水分が80%を超過すると、おから17の水分が必要以上に多くなり、餌食19におけるおから17の密度が低下するとともに、幼虫50に対する生育環境が悪化し、幼虫50の食欲(食性)が低下して大量のおから17(餌食19)を効率よく処理することができない。
【0060】
おらか処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、おから17(餌食19)の水分を前記範囲(60%~80%)にすることで、餌食19(おから17)の粘度を適度のそれにすることができるから、おから17(餌食19)における幼虫50の蠕動が妨げられることはなく、餌食19におけるおから17の密度が最適となり、イエバエの幼虫50の蠕動習性を活性化させることができ、幼虫50が餌食19(おから17)を円滑に食することができ、イエバエの幼虫50の活発な蠕動と幼虫50の旺盛な食欲(食性)とによって大量のおから17(餌食19)を短期間に効率よく処理することができる。おらか処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、おから17の水分を前記範囲にすることで、卵49や幼虫50に対する生育環境を最適にすることができ、環境悪化による卵49や幼虫50の死亡を防いで孵化率や生存率を向上させることができる。
【0061】
餌食作成手段によって餌食19を作った後、餌食19が攪拌機11から定量切出機12に移される。定量切出機12では、餌食19が計量され、設定量の餌食19がその排出口から排出される。定量切出機12の排出口から排出された設定量の餌食19は、切出機12の下方に位置する餌食収容トレー20に落下し、ベルトコンベアー13に載置された餌食収容トレー20の餌食収容凹部46に収容される(餌食収容手段(餌食収容工程))。餌食19は、餌食収容トレー20の目安線47に合わせて略平坦に均される。おらか処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、複数個の餌食収容トレー20(餌食収容容器)を利用するとともに、複数の飼育床15を利用することで、一度に大量のイエバエの幼虫50を飼育することができ、一度に大量のおから17(餌食19)を処理することができる。
【0062】
餌食19が収容された餌食収容トレー20は、ベルトコンベアー13によって定量切出機12から昇降リフター14に向かって移動する。餌食収容トレー20がベルトコンベアー13上を定量切出機12から昇降リフター14に移動する過程において、所定量のイエバエの卵49の複数個が餌食19の表面に接種(供給)される(卵・幼虫接種手段(卵・幼虫接種工程))。また、餌食収容トレー20がベルトコンベアー13上を定量切出機12から昇降リフター14に移動する過程において、卵49から孵化した直後のイエバエの複数の1齢幼虫50a又は1齢幼虫50aを成長させた2齢幼虫50bが餌食19全域に満遍なく均一に接種(供給)される(卵・幼虫接種手段(卵・幼虫接種工程))。
【0063】
卵・幼虫接種手段(卵・幼虫接種工程)では、卵49を餌食19の表面全域に均一に散布するのではなく、卵49の複数個を餌食19の表面であって底板31の中央部33や前後部34,35に横方向へ等間隔離間させた状態で山盛りに接種する(図7参照)。自然界に存在するイエバエが培地に複数個の卵を山盛り状態に産卵し、それによって卵からの孵化率を高め、種の生存率を向上させていることから、同様に、卵49の複数個を餌食19の表面に山盛りに接種する。これにより、接種した卵49から孵化する幼虫50の孵化率を向上させることができ、幼虫50の生存率を向上させることができる。
【0064】
卵・幼虫接種手段(卵・幼虫接種工程)では、イエバエの複数個の卵49を所定の培地の表面に等間隔離間させた状態で山盛りに接種し、卵49から孵化した直後の1齢幼虫50aを採取し、その1齢幼虫50aを餌食19に接種する。又は、イエバエの複数個の卵49を所定の培地の表面に等間隔離間させた状態で山盛りに接種し、卵49から孵化した直後の1齢幼虫50aに餌食作成手段(餌食作成工程)によって作られた餌食19を食させ、餌食作成手段(餌食作成工程)によって作られた餌食19に食性を示す幼虫に成長させ、1齢幼虫50aから1回脱皮後の2齢幼虫50bを採取し、その2齢幼虫50bを餌食19に接種する。
【0065】
卵・幼虫接種手段(卵・幼虫接種工程)では、餌食19の全重量に対する卵49の重量比(餌食19に接種する卵49の接種量)が0.002重量%~0.005重量%の範囲にある。卵49の重量比(接種量)が0.002重量%未満では、卵49から孵化した幼虫50の数が少なく、幼虫50が餌食19の大部分を食すことができず、餌食19が残存し、大量のおから17(餌食19)を短期間に効率よく処理することができない。卵49の重量比(接種量)が0.005重量%を超過すると、卵49から孵化した幼虫50の数が多すぎ、餌食19不足となって幼虫50の成長が遅れ、大量のおから17(餌食19)を短期間に効率よく処理することができない。おらか処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)では、餌食19の全重量に対する卵49の重量比が前記範囲にあるから、餌食19と卵49から孵化した幼虫50の数とのバランスがとれ、卵49から孵化した幼虫50が餌食19不足にならず、卵49を無駄にすることなく、卵49から孵化した幼虫50を利用して餌食19の全てを短期間に食させることができ、餌食19が残存することなく、大量のおから17(餌食19)を短期間に効率よく処理することができる。
【0066】
卵・幼虫接種手段(卵・幼虫接種工程)では、餌食19の1kgに対する幼虫50の接種数が20匹~50匹の範囲にある。餌食19の1kgに対する幼虫50の接種数が20匹未満では、餌食19に対する幼虫50の数が少なく、幼虫50が餌食19の大部分を食すことができず、餌食19が残存し、大量のおから17(餌食19)を短期間に効率よく処理することができない。幼虫50の接種数が50匹を超過すると、幼虫50が供給過多となり、餌食19不足となって幼虫50の成長が遅れ、大量のおから17(餌食19)を短期間に効率よく処理することができない。おらか処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)では、餌食19の1kgに対する幼虫50の接種数が前記範囲にあるから、餌食19と幼虫50の数とのバランスがとれ、幼虫50が餌食不足にならず、幼虫50を利用して餌食19の全てを短期間に食させることができ、餌食19が残存することなく、大量のおから17(餌食19)を短期間に効率よく処理することができる。
【0067】
卵49を餌食19に接種した後、又は、幼虫50a,50bを餌食19に接種した後、餌食収容トレー20が昇降リフター14によって上下方向へ積み重ねられ、階層構造の飼育床15が作られる。飼育床15は、図2に示すように、その複数が飼育室16(所定容積の処理スペース)の内部気密空間21に収容される。飼育室16にはレール(図示せず)が敷設されており、そのレールに飼育床15の車輪が嵌合し、飼育室16に飼育床15が走行可能に固定される。
【0068】
飼育床15を飼育室16の内部気密空間21に収容すると、照明設備の発光装置26が飼育床15の上方であって、最上部に位置する餌食収容トレー20の前後部34,35の先端部分37,41近傍に位置する。図2では3つの飼育床15が飼育室16に収容されているが、飼育床15の数に特に制限はなく、4つ以上の飼育床15が飼育室16に収容される場合もある。飼育床15を飼育室16に収容した後、扉が閉められ、その扉が施錠される。飼育床15の飼育室16への収容時では、空調設備や照明設備、コントローラ、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、室圧センサが稼動している。
【0069】
コントローラは、温度センサから出力された測定温度(温度信号)と設定温度とを比較しつつ、空調設備を介して飼育室16の内部気密空間21の温度を設定温度に維持し、湿度センサから出力された測定湿度(湿度信号)と設定湿度とを比較しつつ、空調設備を介して気密空間21の湿度を設定湿度に維持する。さらに、照度センサから出力された側低照度(照度信号)と設定照度とを比較しつつ、照明設備を介して気密空間21の照度を設定照度に維持する。なお、コントローラは、1日24時間の日の出と日没との時間に合わせて内部気密空間21の明るさを調節し、気密空間21を暗闇(夜間)または日照(昼間)に切り替える。
【0070】
イエバエの卵49の餌食19への接種時(餌食19にイエバエの卵49を接種した後、卵49から幼虫50に孵化するまでの間)では、コントローラが飼育室16の内部気密空間21(処理スペース)の温度を20~50℃(好ましくは、20~40℃)の範囲に保持するとともに、内部気密空間21(処理スペース)の湿度を60~100%(好ましくは、60~90%)に保持する。内部気密空間21の温度が20℃未満であって湿度が60%未満では、卵49の孵化が遅れ、大量のおから17(餌食19)を短期間に効率よく処理することができない。内部気密空間21の温度が50℃を超過すると、暑さで卵49の孵化率が低下して幼虫50の数が少なくなるとともに、幼虫50の食欲(食性)が低下し、大量のおから17(餌食19)を短期間に効率よく処理することができない。
【0071】
おらか処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、イエバエの卵49の餌食19への接種時(餌食19にイエバエの卵49を接種した後、卵49から幼虫50に孵化するまでの間)に飼育室16の内部気密空間21(処理スペース)の温度を20~50℃(好ましくは、20~40℃)の範囲に保持するとともに、湿度を60~100%(好ましくは、60~90%)の範囲に保持することで、イエバエの卵49にとって最適な孵化環境を作ることができるから、接種した卵49から孵化する幼虫50の孵化率を向上させることができ、環境悪化による孵化率の低下を防ぐことができる。おらか処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、イエバエの卵49の孵化過程において卵49を確実に生存させることができ、卵49の孵化率を向上させることができるのみならず、幼虫50を利用して大量のおから17(餌食19)を短期間に効率よく処理することができる。
【0072】
卵49から幼虫50(1齢幼虫50a)に孵化した直後、又は、幼虫50(1齢幼虫50a又は2齢幼虫50b)の餌食19への接種時(幼虫50の飼育過程)では、コントローラが飼育室16の内部気密空間21(処理スペース)の温度を20~50℃(好ましくは、20~40℃)の範囲に保持し、内部気密空間21(処理スペース)の湿度を65~80%の範囲に保持する。内部気密空間21の温度が20℃未満であって湿度が65%未満では、幼虫50の成長のための最適な環境を作ることができず、幼虫50の食欲(食性)が低下し、幼虫50の成長が遅れ、大量のおから17(餌食19)を短期間に効率よく処理することができない。内部気密空間21の温度が50℃を超過するとともに湿度が80%を超過すると、幼虫50の成長のための最適な環境を作ることができず、幼虫50の食欲(食性)が低下し、幼虫50の成長が遅れ、大量のおから17(餌食19)を短期間に効率よく処理することができない。
【0073】
おらか処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、卵49から幼虫50(1齢幼虫50a)に孵化した直後、又は、幼虫50(1齢幼虫50a又は2齢幼虫50b)の餌食19への接種時に内部気密空間21(処理スペース)の温度を20~50℃(好ましくは、20~40℃)の範囲に保持し、湿度を65~80%の範囲に保持することで、イエバエの幼虫50にとって最適な飼育環境を作ることができるから、環境悪化による幼虫50の死亡を防いで幼虫50の生存率を向上させることができ、幼虫50の食欲(食性)を増進させることができるとともに、幼虫50の成長を促進することができる。おらか処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、イエバエの幼虫50の成長過程において幼虫50を確実に生存させることができ、幼虫50の生存率を向上させることができるのみならず、幼虫50を利用して大量のおから17(餌食19)を短期間に効率よく処理することができる。
【0074】
飼育室16の内部気密空間21(処理スペース)に収容された餌食収容トレー20では、卵49を餌食19(おから17)に接種して1日目に卵40から幼虫50が孵化する。卵49から孵化した幼虫50は、孵化直後の1齢幼虫50a、1齢幼虫50aから1回の脱皮後の2齢幼虫50b、1齢幼虫50aから2回の脱皮後(2齢幼虫50bから1回の脱皮後)の蛹変態前の3齢幼虫50cに区分される。1齢幼虫50aは、卵49を餌食19に接種してから2日目までの幼虫50であり、2齢幼虫50bは、卵49を餌食19に接種してから2日目の後の1日目まで(卵49を餌食19に接種してから3日目)の幼虫50である。3齢幼虫50cは、卵49を餌食19に接種してから3日目の後の1日目から3日目まで(卵49を餌食19に接種してから4日目~7日目)の幼虫50である。それら幼虫50a~50cは、餌食収容トレー20に収容された餌食19(おから17やもみ殻18a、野菜クズ粉砕物18b)を餌として短期間に成長する。
【0075】
おから処理システム10Aでは、餌食19(おから17)を幼虫50a~50cに食させて幼虫50a~50cを飼育し、幼虫50a~50cが餌食19を餌として成長する飼育過程において、餌食19が幼虫50a~50cの体内で酵素分解されてその幼虫50a~50cから排泄されることで、餌食19(おから17)が餌食19の分解物51(低濃度有機分解物)に変わる(餌食分解手段(餌食分解工程)),(幼虫飼育手段(幼虫飼育工程))。餌食19の分解物51は、有機肥料の肥料基材として使用される。餌食分解手段(餌食分解工程)では、給気ファン23によって飼育室16の内部気密空間21(処理スペース)に空気(酸素)が給気され、内部気密空間21(処理スペース)の空気が排気ファン25によって外部(大気)に排気される。なお、中性能フィルタ及びHEPAフィルタによって空気に含まれる不純物や雑菌、ウイルスが捕集され、飼育室16の内部気密空間21に清浄な空気が給気される。
【0076】
餌食分解手段(餌食分解工程)の一例では、図6に示すように、暗闇の飼育室16(内部気密空間21)において1齢幼虫50aを暗中で飼育し(第1飼育手段(第1飼育工程))、薄明かりの飼育室16(内部気密空間21)において2齢幼虫50bを薄明かり中で飼育するとともに(第2飼育手段(第2飼育工程))、明るい飼育室16(内部気密空間21)において3齢幼虫50cを明かり中で飼育する(第3飼育手段(第3飼育工程))。
【0077】
第1飼育手段(第1飼育工程)においてコントローラは、卵49を接種してから2日目(2日経過)までの間、照明設備を点灯させることなく、又は、卵49から孵化した直後の1齢幼虫50aを接種してから1日目(1日経過)までの間、照明設備を点灯させることなく、飼育室16a(内部気密空間21)を暗闇にし、卵49から1齢幼虫50aまでを暗闇(夜間状態)で飼育する。なお、飼育室16は外部から光が差し込まない構造に作られている。第1飼育手段(第1飼育工程)においてコントローラは、飼育室16の内部気密空間21の室圧が第1設定室圧(大気圧と略同圧)になるように、給気ファン22及び排気ファン24の出力を調節し、給気ファン22によって飼育室16の内部気密空間21(処理スペース)に空気(酸素)を給気し、排気ファン24によって空気を内部気密空間21から外部(大気)に排気しつつ、飼育室16の内部気密空間21の室圧を大気圧と略同圧(±0Pa)に保持する。
【0078】
おらか処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、第1飼育手段(第1飼育工程)において、1齢幼虫50aを暗中(暗闇)(夜間状態)で飼育するとともに、1齢幼虫50aを大気圧と略同圧で飼育することで、1齢幼虫50aを光によって刺激することがなく、1齢幼虫50aの成長に必要な酸素を供給し、1齢幼虫50aが餌食19の下方へ潜り込むことや餌食19の内部に隠れてしまうことを防ぐことができ、1齢幼虫50aに餌食19の表面からそれを食させることができるとともに、1齢幼虫50aを予定(期限)どおりに2齢幼虫50bに飼育することができる。
【0079】
第2飼育手段(第2飼育工程)においてコントローラは、卵49を接種してから2日目の後の1日目(1日経過)まで(卵49を接種してから3日目)の間、又は、2齢幼虫50bを接種してから1日目(1日経過)までの間、照明設備の照度を調節しつつ照明設備を点灯させて飼育室16bを薄明かりにし、2齢幼虫50bを薄明かり中で飼育する。第2飼育手段(第2飼育工程)においてコントローラは、飼育室16の内部気密空間21の室圧が第2設定室圧(微陽圧)になるように、給気ファン22及び排気ファン24の出力を調節し、給気ファン22によって飼育室16の内部気密空間21(処理スペース)に空気(酸素)を給気し、排気ファン24によって空気を内部気密空間21から外部(大気)に排気しつつ、飼育室16の内部気密空間21の室圧を微陽圧(+0.1Pa~+0.5Pa)に保持する。おらか処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、2齢幼虫50bを薄明かり中(日の出、日の入り状態)で飼育するとともに、2齢幼虫50bを微陽圧で飼育することで、2齢幼虫50bの蠕動を活発化させ、2齢幼虫50bの成長に必要な酸素を供給して2齢幼虫50bの成長を促進し、2齢幼虫50bに餌食19(おから17)を確実に食させることができ、2齢幼虫50bを予定(期限)どおりに3齢幼虫50cに飼育することができる。
【0080】
第3飼育手段(第3飼育工程)においてコントローラは、卵49を接種してから3日目の後の1日目(1日経過)から3日目(3日経過)まで(卵49を接種してから4日目~7日目)の間、照明設備の照度を調整しつつ照明設備を点灯させて飼育室16c(内部気密空間21)を明るく(昼間状態)し、3齢幼虫50cを明かり中で飼育する。照明設備からの光は、餌食収容トレー20の前後部34,35の先端部分37,41を照らし、3齢幼虫50cの収容トレー20の前後部34,35の先端部分37,41への移動を促進する。
【0081】
第3飼育手段(第3飼育工程)においてコントローラは、飼育室16の内部気密空間21の室圧が第3設定室圧(陽圧)になるように、給気ファン22及び排気ファン24の出力を調節し、給気ファン22によって飼育室16の内部気密空間21(処理スペース)に空気(酸素)を給気し、排気ファン24によって空気を内部気密空間21から外部(大気)に排気しつつ、飼育室16の内部気密空間21の室圧を陽圧(+1Pa~+3Pa)に保持するとともに、飼育室16の内部気密空間21を好気性雰囲気(酸素過多雰囲気)に保持する。
【0082】
餌食19(おから17)を幼虫50が食べた後、幼虫50が3齢幼虫50cとなり、蛹変態時期を迎える。3齢幼虫50cは、それが蛹変態する時に離散習性(蠕動離散習性)を有し、蛹になる場所を求めて活発に蠕動する。おらか処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、3齢幼虫50cを明かり中(昼間状態)で飼育するとともに、3齢幼虫50cを陽圧(好気性雰囲気)で飼育することで、3齢幼虫50cの蠕動を活発化させ、3齢幼虫50cの成長に必要な酸素を供給して3齢幼虫50cの成長を促進し、3齢幼虫50cに餌食19(おから17)を確実に食させることができる。
【0083】
餌食分解手段(餌食分解工程)の他の一例では、自然の1日(24時間)のサイクル(日の出(薄明かり)→昼間(明かり)→日の入り(薄明かり)→夜間(暗闇))において1齢幼虫50a~3齢幼虫50cを飼育する。コントローラは、卵49を接種してから2日目(2日経過)までの間、又は、卵49から孵化した直後の1齢幼虫50aを接種してから1日目(1日経過)までの間、自然の1日(24時間)のサイクルにあわせて照明設備(発行装置26)の照度を調整しつつ照明設備を点灯させるとともに、照明設備を消灯させ、自然の1日(24時間)のサイクル(日の出(薄明かり)→昼間(明かり)→日の入り(薄明かり)→夜間(暗闇))で1齢幼虫50aを飼育する(第1飼育手段(第1飼育工程))。
【0084】
第1飼育手段(第1飼育工程)においてコントローラは、飼育室16の内部気密空間21の室圧が第1設定室圧(大気圧と略同圧)になるように、給気ファン22及び排気ファン24の出力を調節し、給気ファン22によって飼育室16の内部気密空間21(処理スペース)に空気(酸素)を給気し、排気ファン24によって空気を内部気密空間21から外部(大気)に排気(換気)しつつ、飼育室16の内部気密空間21の室圧を大気圧と略同圧(±0Pa)に保持する。
【0085】
おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、第1飼育手段(第1飼育工程)において、1齢幼虫50aを1日(24時間)のサイクルで飼育するとともに、1齢幼虫50aを大気圧と略同圧で飼育することで、1齢幼虫50aを自然環境と同一の環境で飼育しつつ、1齢幼虫50aの成長に必要な酸素を供給し、1齢幼虫50aの成長を促進し、1齢幼虫50aに餌食19(おから17)を確実に食させることができ、1齢幼虫50aを予定(期限)どおりに2齢幼虫50bに飼育することができる。
【0086】
コントローラは、卵49を接種してから2日目の後の1日目(1日経過)まで(卵49を接種してから3日目)の間、又は、2齢幼虫50bを接種してから1日目(1日経過)までの間、自然の1日(24時間)のサイクルにあわせて照明設備(発光装置26)の照度を調整しつつ照明設備を点灯させるとともに、照明設備を消灯させ、自然の1日(24時間)のサイクル(日の出(薄明かり)→昼間(明かり)→日の入り(薄明かり)→夜間(暗闇))で2齢幼虫50bを飼育する(第2飼育手段(第2飼育工程))。
【0087】
第2飼育手段(第2飼育工程)においてコントローラは、飼育室16の内部気密空間21の室圧が第2設定室圧(微陽圧)になるように、給気ファン22及び排気ファン24の出力を調節し、給気ファン22によって飼育室16の内部気密空間21(処理スペース)に空気(酸素)を給気し、排気ファン24によって空気を内部気密空間21から外部(大気)に排気(換気)しつつ、飼育室16の内部気密空間21の室圧を微陽圧(+0.1~+0.5Pa)に保持する。
【0088】
おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、第2飼育手段(第2飼育工程)において、2齢幼虫50bを1日(24時間)のサイクルで飼育するとともに、2齢幼虫50bを微陽圧で飼育することで、2齢幼虫50bを自然環境と同一の環境で飼育しつつ、2齢幼虫50bの成長に必要な酸素を供給し、2齢幼虫50bの蠕動を活発化させるとともに2齢幼虫50bの成長を促進し、2齢幼虫50bに餌食19(おから17)を確実に食させることができ、2齢幼虫50bを予定(期限)どおりに3齢幼虫50cに飼育することができる。
【0089】
コントローラは、卵49を接種してから3日目の後の1日目(1日経過)から3日目(3日経過)まで(卵49を接種してから4日目~7日目)の間、自然の1日(24時間)のサイクルにあわせて照明設備(発光装置26)の照度を調整しつつ照明設備を点灯させるとともに、照明設備を消灯させ、自然の1日(24時間)のサイクル(日の出(薄明かり)→昼間(明かり)→日の入り(薄明かり)→夜間(暗闇))で3齢幼虫50cを飼育する(第3飼育手段(第3飼育工程))。
【0090】
第3飼育手段(第3飼育工程)においてコントローラは、飼育室16の内部気密空間21の室圧が第3設定室圧(陽圧)になるように、給気ファン22及び排気ファン24の出力を調節し、給気ファン22によって飼育室16の内部気密空間21(処理スペース)に空気(酸素)を給気し、排気ファン24によって空気を内部気密空間21から外部(大気)に排気(換気)しつつ、飼育室16の内部気密空間21の室圧を陽圧(+1Pa~+3Pa)に保持するとともに、飼育室16の内部気密空間21を好気性雰囲気(酸素過多雰囲気)に保持する。餌食19(おから17)を幼虫50が食べた後、幼虫50が3齢幼虫50cとなり、蛹変態時期を迎える。3齢幼虫50cは、それが蛹変態する時に離散習性(蠕動離散習性)を有し、蛹になる場所を求めて活発に蠕動する。
【0091】
おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、第3飼育手段(第3飼育工程)において、3齢幼虫50cを1日(24時間)のサイクルで飼育するとともに、3齢幼虫50cを陽圧(好気性雰囲気)で飼育することで、3齢幼虫50cを自然環境と同一の環境で飼育しつつ、3齢幼虫50cの成長に必要な酸素を供給し、3齢幼虫50cの蠕動を活発化させるとともに3齢幼虫50cの成長を促進し、3齢幼虫50cに餌食19(おから17)を確実に食させることができる。
【0092】
おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、所定量のおから17に所定量の農産廃棄物18(もみ殻18a、野菜クズ粉砕物18b)を混入させ、所定量のおから17の内部に所定量の農産廃棄物18を分散させることによってイエバエの幼虫50が蠕動容易な空隙を形成した所定量の餌食19を作り、餌食収容トレー20(餌食収容容器)に収容された餌食19にイエバエの卵49の複数個を接種し、又は、餌食収容トレー20に収容された餌食19にイエバエの幼虫50a,50bを接種し、卵49から孵化した複数の幼虫50a又は餌食に接種された幼虫50a,50bに餌食収容トレー20に収容された餌食19の空隙を蠕動させつつ、それら幼虫50a~50cに餌食19を食させて幼虫50a~50cを成長させ、それら幼虫50a~50cの成長過程において餌食19が幼虫50a~50cの体内で酵素分解されるから、最初に食した餌食19を好んで食するイエバエの幼虫50a~50cの食性を利用し、幼虫50a~50cの食欲(食性)を増進させつつ、大量なおから17(餌食19)を短期間に効率よく処理することができる。
【0093】
おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、農産廃棄物18(もみ殻18a、野菜クズ粉砕物18b)によって餌食19に空隙を形成し、卵49から孵化した複数の幼虫50a又は餌食19に接種された幼虫50bがその空隙を蠕動するから、幼虫50a~50cが餌食19内部を容易に蠕動することができ、イエバエの幼虫50a~50cの蠕動習性を活性化させて幼虫50a~50cの食欲(食性)を増進させることができ、短期間に大量のおから17(餌食19)を幼虫50a~50cに食させることができる。おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、おから17(餌食19)がイエバエの幼虫50a~50cの体内で酵素分解されるから、イエバエの幼虫50a~50cの食性を利用して大量のおから17(餌食19)を安全かつ廉価に処理することができる。
【0094】
おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、おから17に前記重量比のもみ殻18aや野菜クズ18bを加えることで、餌食19に適度な間隙を作ることができるから、幼虫50a~50cが餌食19内部を容易に蠕動することができ、イエバエの幼虫50a~50cの蠕動習性を活性化させることができるとともに、野菜クズ18bが幼虫50a~50cの食欲(食性)を増進させる食欲(食性)増進物となり、幼虫50a~50cの食欲を増進させることができ、イエバエの幼虫50a~50cの活発な蠕動と幼虫50a~50cの旺盛な食欲(食性)とによって大量のおから17(餌食19)を短期間に効率よく処理することができる。
【0095】
餌食19が幼虫50によって食されて幼虫50が成長し、幼虫が3齢幼虫50cとなって蛹変態時期を迎える。3齢幼虫50cは、それが蛹変態する時(蛹変態時期を迎えた3齢幼虫50c)に離散習性(蠕動離散習性)を有する。蛹変態時期を迎えた3齢幼虫50cには、照明設備(蛍光灯26、LED照明26)から明かりが当てられている。蛹変態時期を迎えた3齢幼虫50cは、蛹になる場所を求めて活発に蠕動離散し、餌食収容トレー20の底板31を動き回りながら、その走光性によって照明設備(蛍光灯26、LED照明26)に導かれ、底板31の中央部33から斜面38,42を這い上がり、中央部33から前後部34,35の先端部分37,41に向かって移動する。餌食収容トレー20の前後部34,35の先端部分37,41に移動した3齢幼虫50cは、先端部分37,41に形成された凸部39,43の間の斜面38,42に入り、その斜面38,42をさらに這い上がって先端部分37,41の先端を乗り越えて、図11に示すように、先端から採集容器27に向かって落下する。
【0096】
なお、底板31の中央部33から両側板32に向かった3齢幼虫50cは、仕切板48に突き当たり、仕切板48に沿って底板31の中央部33から斜面38,42を這い上がり、中央部33から前後部34,35の先端部分37,41に向かって移動し、先端部分37,41の先端を乗り越えて採集容器27に向かって落下する。又は、両側板32に突き当たり、両側板32に沿って底板31の中央部33から斜面38,42を這い上がり、中央部33から前後部34,35の先端部分37,41に向かって移動し、先端部分37,41の先端を乗り越えて採集容器27に向かって落下する。
【0097】
おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)では、蛹変態時期を迎えた3齢幼虫50cが餌食収容トレー20の前後部34,35の先端部分37,41の先端から採集容器27に落下するから、3齢幼虫50cの離散習性(蠕動離散習性)を利用して幼虫50cと分解物51とが分別される(分別手段(分別工程))。おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、3齢幼虫50cの離散習性(蠕動離散習性)を利用することで、人手を介すことなく幼虫50cと分解物51とを分離することができる。また、蛹変態時期を迎えた3齢幼虫50cに照明設備(蛍光灯26、LED照明26)から明かりを当てることで、3齢幼虫50cの走光性を利用し、幼虫50cと分解物51とを確実に分別することができる。
【0098】
おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)では、3齢幼虫50cと分解物51(低濃度有機分解物)との分別が餌食19に卵49を接種してから4日目に始まって7日目に終了し、1齢幼虫50aを接種してから3日目に始まって6日目に終了する。又は、餌食19に2齢幼虫50bを接種してから2日目に始まって5日目に終了する。したがって、最長7日で卵49から蛹変態前の3齢幼虫50cに育つ。おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)では、分解物51から分別された3齢幼虫50cのグループ(3齢幼虫群)から昆虫食原料を作る(昆虫食原料作成手段(昆虫食原料作成工程))。又は、分解物51から分別された3齢幼虫50cのグループ(3齢幼虫群)から飼養動物用の飼料原料を作る(飼料原料作成手段(飼料原料作成工程))。
【0099】
昆虫食原料作成手段(昆虫食原料作成工程)や飼料原料作成手段(飼料原料作成工程)では、それら3齢幼虫50cを湯煎処理(ボイル処理)した後、脱水処理して冷凍保存する。又は、それら3齢幼虫50cを湯煎処理(ボイル処理)した後、脱水処理して真空パックする。又は、それら3齢幼虫50cを湯煎処理(ボイル処理)した後、脱水処理、乾燥処理し、常温保存する。あるいは、それら3齢幼虫50cを湯煎処理(ボイル処理)した後、脱水処理、乾燥処理、粉末処理し、常温保存する。昆虫食原料作成手段(昆虫食原料作成工程)によって作られた昆虫食原料は、昆虫食の食材となる。飼料原料作成手段(飼料原料作成工程)によって作られた飼料原料は、飼養動物用の飼料の原料となる。
【0100】
おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、イエバエの幼虫50に清潔なおから17を食させることで、イエバエの幼虫50を食用に用いる昆虫食原料に変えることができ、おから17を無駄なく有効に利用することができる。おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、これまで廃棄されてきたおから17を利用して昆虫食原料を作ることができるから、廃棄されるおから17から昆虫食に利用する昆虫食原料を得ることができ、将来発生する食糧不足をイエバエの幼虫50及びおから17によって補うことができる。なお、昆虫食原料が高タンパクかつ豊富なキトサンを含み、昆虫食原料から作られた昆虫食を食すことで、免疫力や自然治癒力を高めることができる。
【0101】
おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、イエバエの幼虫50におから17を食させることで、イエバエの幼虫50を飼養動物用の飼料原料に変えることができ、おから17を無駄なく有効に利用することができる。おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、これまで廃棄されてきたおから17を利用して飼養動物用の飼料原料を作ることができるから、廃棄されるおから17から飼養動物に食させる飼料原料を得ることができ、将来発生する飼養動物用の飼料原料の不足をイエバエの幼虫50及びおから17によって補うことができる。なお、飼料原料が高タンパクかつ豊富なキトサンを含み、飼料原料を与えた飼養動物の免疫力や自然治癒力を高めることができる。
【0102】
おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)では、餌食17に卵49を接種してから5日目以降、餌食17に1齢幼虫50aを接種してから4日目以降、餌食17に2齢幼虫50bを接種してから3日目以降に分解物51から分別された3齢幼虫50cのグループ(3齢幼虫群)のうちの1%~5%、好ましくは2%~3%の3齢幼虫50cを採取し、採取した3齢幼虫50cを飼育して蛹から成虫に変態させるとともに、その成虫に次世代の卵を産ませ、その卵を採取することでイエバエの世代交代を行う(イエバエ飼育手段(イエバエ飼育工程))。
【0103】
イエバエ飼育手段(イエバエ飼育工程)では、採集容器27から採取した3齢幼虫50cをおから処理工場の建家の内部(工場内)に施設された飼育施設(図示せず)に設置された蛹回収容器(図示せず)に移し、飼育施設に設置された空調設備を利用して蛹回収容器の温度を設定温度(20~50℃(好ましくは、20~40℃))に維持しつつ、蛹回収容器の湿度を設定湿度(65~80%)に維持し、3齢幼虫50cを蛹に変態させる。
【0104】
次に、蛹回収容器から蛹を回収し、その蛹を飼育施設に設置された飼育ゲージ(図示せず)に移し、空調設備を利用して飼育ゲージの温度を設定温度(20~50℃(好ましくは、20~40℃))に維持しつつ、飼育ゲージの湿度を設定湿度(65~80%)に維持し、蛹をイエバエの成虫に孵化させる。イエバエ飼育手段(イエバエ飼育工程)では、孵化した後のイエバエの成虫に餌(ミルク)を与え、イエバエを飼育しつつ、その成虫の雌に産卵させ、次世代の卵を採取する。次世代の卵49やその卵49から孵化した幼虫50を餌食19(おから17)に接種することで、次世代の卵49から孵化した幼虫50におから17を処理させる。
【0105】
おから処理システム10A(おから処理システム10Bを含む)は、3齢幼虫50cのグループ(3齢幼虫群)の一部を成長させた雌の成虫に次世代の卵を産ませ、その卵から孵化した幼虫50を利用して餌食19(おから17)を処理するから、イエバエの卵を外部から新たに調達する必要はなく、半永久的なサイクルでイエバエを利用することができ、おから17を廉価に処理することができるとともに、低いコストで昆虫食原料や飼料原料を作ることができる。
【0106】
図13は、他の一例として示すおから処理システム10Bの概略構成図である。図13のおから処理システム10Bが図1のそれと異なるところは、餌食作成手段(餌食作成工程)において、餌食19に二糖が混入される点にあり、その他の構成は図1のおから処理システム10Aと同一であるから、図1と同一の符号を付すとともに、図1の説明を援用し、このシステム10Bのその他の構成の詳細な説明は省略する。
【0107】
図13のおから処理システム10Bは、おから一時貯蔵ボックス、攪拌機11、定量切出機12、ベルトコンベアー13、昇降リフター14、飼育床15、飼育室16を利用し、図1のおから処理システム10Aと同様に、殺菌処理手段(殺菌処理工程)、餌食作成手段(餌食作成工程)、餌食収容手段(餌食収容工程)、卵・幼虫接種手段(卵・幼虫接種工程)、餌食分解手段(幼虫飼育手段)(餌食分解工程)、分別手段(分別工程)、イエバエ飼育手段(イエバエ飼育工程)、昆虫食原料作成手段(昆虫食原料作成工程)、飼料原料作成手段(飼料原料作成工程)の各手段(各工程)を実施する。殺菌処理手段(殺菌処理工程)や餌食収容手段(餌食収容工程)、卵・幼虫接種手段(卵・幼虫接種工程)、餌食分解手段(幼虫飼育手段)(餌食分解工程)、分別手段(分別工程)、イエバエ飼育手段(イエバエ飼育工程)、昆虫食原料作成手段(昆虫食原料作成工程)、飼料原料作成手段(飼料原料作成工程)は、図1のおから処理システム10Aの各手段(各工程)と同一である。
【0108】
殺菌処理手段(殺菌処理工程)が完了したおから17やもみ殻18a、野菜クズ粉砕物18bが殺菌処理所や粉砕機からベルトコンベアー(図示せず)によって攪拌機11に投入されるとともに、所定量の二糖52が攪拌機11に投入される(水を投入する場合がある)。おから17、もみ殻18a、野菜クズ粉砕物18b、二糖52は、攪拌機11において攪拌混合されて餌食19が作られる(餌食作成手段(餌食作成工程))。餌食作成手段(餌食作成工程)では、所定量のおから17の内部に所定量のもみ殻18aや野菜クズ粉砕物18b(農産廃棄物)を混合・分散させることによってイエバエの幼虫50が蠕動容易な空隙が形成される。二糖52には、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオースのうちの少なくとも1つが利用される(好ましくは、トレハロース)。
【0109】
なお、野菜クズ粉砕物18bを除くおから17、もみ殻18a、二糖52が攪拌機11に投入され(水を投入する場合がある)、攪拌機11においておから17、もみ殻18a、二糖42が攪拌混合されて餌食19が作られる場合がある(餌食作成手段(餌食作成工程))。また、おから17、もみ殻18a、野菜クズ粉砕物18b、二糖52とともに、酒粕や踏込粕、みりん粕、コーヒー粕、焼酎粕、ビール粕、菜種粕、パイン粕、紅茶粕、ワイン粕、デンプン粕のうちの少なくとも1つが攪拌機11に投入され(水を投入する場合がある)、攪拌機11においてそれらが攪拌混合されて餌食19が作られる場合がある(餌食作成手段(餌食作成工程))。
【0110】
餌食19の全重量に対する農産廃棄物18の重量比は、図1のおから処理システム10Aと同様に、5重量%~10重量%の範囲にある。イエバエの幼虫50に食させるおから17の水分は、図1のおから処理システム10Aと同様に、それら農産廃棄物18によって60%~80%の範囲に調節される。餌食19の全重量に対する二糖52の重量比は、1重量%~3重量%の範囲にある。二糖52の重量比が1重量%未満では、餌食19(おから17)に含まれる糖質が少なく、おから17(餌食19)に適度な糖質を加えることができず、おから17(餌食19)を食した幼虫50に適度な糖質を含ませることができない。二糖52の重量比が3重量%を超過すると、おから17(餌食19)に含まれる糖質が多くなり過ぎ、おから17(餌食19)を食した幼虫50に過度な糖質が含まれてしまう。
【0111】
図13のおから処理システム10Bは、図1のおから処理システム10Aが有する効果に加え、以下の効果を有する。おから処理システム10Bは、おから17に二糖52(スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオースのうちの少なくとも1つ、好ましくは、トレハロース)を混入させることで、おから17(餌食19)に適度な糖質を加えることができ、おから17(餌食19)を食した幼虫50が糖質を含み、イエバエの幼虫50cを糖質を含んだ食用に用いる昆虫食原料に変えることができ、イエバエの幼虫50cを糖質を含んだ飼養動物用の飼料原料に変えることができる。なお、昆虫食原料が糖質や豊富なキトサンを含むから、高タンパクかつ栄養価の高い昆虫食を作ることができ、飼料原料が糖質や豊富なキトサンを含むから、高タンパクかつ栄養価の高い飼料原料を作ることができる。
【符号の説明】
【0112】
10A おから処理システム
10B おから処理システム
11 攪拌機
12 定量切出機
13 ベルトコンベアー
14 昇降リフター
15 飼育床
16 飼育室
16a 暗闇の飼育室
16b 薄明かりの飼育室
16c 昼間状態の飼育室
17 おから
18 農産廃棄物
18a もみ殻
18b 野菜クズ
19 餌食
20 餌食収容トレー(餌食収容容器)
21 内部気密空間
22 給気ファン
23 給気ダクト
24 排気ファン
25 排気ダクト
26 発光装置(蛍光灯、LED照明)
27 採集容器
28 固定フレーム
29 収容凹部
30 傾斜壁
31 底板
32 両側板
33 中央部
34 前部
35 後部
36 基端部分
37 先端部分
38 斜面
39 凸部
40 基端部分
41 先端部分
42 斜面
43 凸部
44 位置決め凸部
45 位置決め凹部
46 収容凹部
47 目安線
48 仕切板
49 卵
50 幼虫
50a 1齢幼虫
50b 2齢幼虫
50c 3齢幼虫
51 分解物
52 二糖
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13