(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】版胴洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B41F 35/02 20060101AFI20221021BHJP
B41F 9/00 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
B41F35/02
B41F9/00 B
(21)【出願番号】P 2019167687
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 亮
(72)【発明者】
【氏名】大宮 利信
(72)【発明者】
【氏名】石橋 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】村上 徹
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 誠
(72)【発明者】
【氏名】鷹野 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】篠原 博人
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-063141(JP,U)
【文献】特開2010-260196(JP,A)
【文献】特開平08-025617(JP,A)
【文献】特開昭63-295262(JP,A)
【文献】特開平08-244213(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0266249(US,A1)
【文献】実開昭62-080634(JP,U)
【文献】特開2005-028706(JP,A)
【文献】特開2000-117948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 31/00 - 35/06
B41F 5/00 - 13/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
版胴と圧胴とがウエブを挟持した状態で回転するとともに、ファニッシャロールからの供給によって前記版胴の外周面に付着する過剰なインキをドクターブレードで掻き取った後、挟持位置で、連続搬送される前記ウエブに適量のインキを転写して印刷する印刷機に付設される、版胴洗浄装置であって、
前記印刷機は、印刷時に、前記挟持位置の両側に有る上流側狭窄空間および下流側狭窄空間のうち、前記ウエブの搬送方向の上流側に位置する前記上流側狭窄空間に、前記版胴に沿って延びるように配置されるとともに、洗浄時に、前記版胴に向けて溶剤を散布する散布パイプに兼用される保護バーを備え、
前記保護バーは、長手方向に間隔を隔てて複数の散布孔が下端部に開口する中空のパイプを有し、前記溶剤
、または、高圧のエアが供給可能に構成されており、
前記ファニッシャロールおよび前記ドクターブレードを、印刷時と同じ印刷位置にセットした状態で、前記版胴および前記ファニッシャロールを回転させながら前記散布孔から前記溶剤を散布した後、前記ファニッシャロールおよび前記ドクターブレードを、前記印刷位置から離れた
退避位置に変位させ、所定時間、前記散布孔から前記エアを噴射させる、版胴洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の版胴洗浄装置において、
前記印刷機の上部に配置されて溶剤を貯留する溶剤タンクと、
前記溶剤タンクと前記保護バーとの間に接続されて溶剤を流下させる送液配管と、
前記送液配管に設置されて溶剤の流路を開閉する切替バルブと、
を有している、版胴洗浄装置。
【請求項3】
請求項2に記載の版胴洗浄装置において、
前記溶剤タンクに接続されて下方に延びる給液配管と、
前記給液配管を通じて前記溶剤タンクへ溶剤を揚げる送液ポンプと、
を更に備える、版胴洗浄装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の版胴洗浄装置において、
前記溶剤タンクの内部が外部と連通するように構成されていて、前記溶剤タンクの所定の液位に、ドレン配管に連通する液流出口が形成されている、版胴洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、印刷の切替時にグラビア印刷機が備える版胴を洗浄する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷機では、回転する版胴の外周面に形成されている版面にインキを付着させ、ドクターブレードで版面から過剰なインキを掻き取った後、連続搬送されるウエブに版面を圧着させる。そうすることにより、適量のインキをウエブに転写し、印刷が行われる。
【0003】
近年、この種の印刷機では、多品種少量生産が増加傾向にあることから、生産効率向上のため、印刷の切替時間の短縮が要望されている。印刷の切替時には、版胴やインキなどの交換が行われるが、その際、印刷時に版胴やファニッシャロールなどに付着したインキを除去する洗浄作業も行われる。
【0004】
通常、この洗浄作業は、版胴やファニッシャロールを低速で回転させながら、オペレータが、溶剤を含ませたウエスでインキを拭き取ることで行われている。しかしながら、このような手作業は非効率である。そのため、特許文献1には、これら洗浄作業を自動化できる装置が提案されている。
【0005】
その装置では、洗浄液を散布する2つの洗浄ノズルが、版胴の長手方向に間隔を隔てて配置されていて、これら洗浄ノズルが、エアシリンダ等で構成された装置により、版胴に向かって進退するとともに版胴に沿ってスライドするように構成されている。更に、版胴に沿って延びるゴム板からなる版面スキージが、エアシリンダ等で構成された装置により、版胴に向かって進退可能に構成されている。
【0006】
洗浄時には、所定の速度で回転する版胴に対して、洗浄ノズルが前進し、その後、スライドしながら洗浄液を散布する。洗浄液の散布が終わると、版面スキージが、前進し、版面に押し当てられることで、洗浄液が拭き取られる。従って、特許文献1の装置によれば、人手を介することなく版胴を洗浄できる。
【0007】
開示する技術に関し、特許文献2には、保護バーと同様の目的で、グラビア印刷機に設置される安全バーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平8-244213号公報
【文献】特許第6202460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の装置によれば、自動的に版胴を洗浄できるので、効率的である。しかし、洗浄作業だけのために、エアシリンダ等、多数の部材を印刷機に組み付ける必要がある。それにより、印刷機の製造コストが高くなるし、印刷機が複雑化する。従って、特許文献1の装置の実用化は難しい。
【0010】
そこで、開示する技術の主たる目的は、比較的簡単な構成で、版胴等の洗浄作業を効率化でき、実用化も容易な版胴洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示する技術は、グラビア印刷機に付設される版胴洗浄装置に関する。
【0012】
具体的には、前記版胴洗浄装置は、版胴と圧胴とがウエブを挟持した状態で回転するとともに、ファニッシャロールからの供給によって前記版胴の外周面に付着する過剰なインキをドクターブレードで掻き取った後、挟持位置で、連続搬送される前記ウエブに適量のインキを転写して印刷する印刷機に付設される。
【0013】
前記印刷機は、印刷時に、前記挟持位置の両側に有る上流側狭窄空間および下流側狭窄空間のうち、前記ウエブの搬送方向の上流側に位置する前記上流側狭窄空間に、前記版胴に沿って延びるように配置される保護バーを備える。そして、前記保護バーを、洗浄時に前記版胴に向けて溶剤を散布する散布パイプに兼用している。
【0014】
すなわち、この版胴洗浄装置は、印刷時に、回転する版胴と圧胴とがウエブを挟持している挟持位置よりもウエブの搬送方向の上流側に位置している狭い空間(上流側狭窄空間)に、保護バーを備えるグラビア印刷機が前提となっている。
【0015】
通常、保護バーは、棒状の部材であり、版胴に沿って延びるように配置されている。この版胴洗浄装置では、その保護バーを、洗浄時に版胴に向けて溶剤を散布する散布パイプに兼用する。保護バーを散布パイプに兼用することで、既存の設備が活用でき、部材点数を削減できる。実用化も容易である。
【0016】
しかも、保護バーは、版胴の上方の、回転方向の上流側に配置されているので、版胴を回転させた状態で溶剤を散布すれば、版胴の外周面の全体を溶剤で濡らすことができ、付着したインキを効果的に洗い落とすことができる。版胴だけでなく、これに接するドクターブレードやファニッシャロールに付着したインキも、洗い落とすことができる。オペレータは、溶剤で濡れた版胴の外周面をウエスで拭き取るだけでよい。従って、洗浄作業の工数が削減でき、洗浄効果も優れるので、版胴等の洗浄作業を効率化できる。
【0017】
より具体的には、前記保護バーは、長手方向に間隔を隔てて複数の散布孔が形成された中空のパイプを有し、前記印刷機の上部に配置されて溶剤を貯留する溶剤タンクと、前記溶剤タンクと前記保護バーとの間に接続されて溶剤を流下させる送液配管と、前記送液配管に設置されて溶剤の流路を開閉する切替バルブと、を有しているようにすればよい。
【0018】
この場合、切替バルブを閉じた状態で溶剤タンクに溶剤を溜めた後、切替バルブを開けば、その溶剤が保護バーに流入して散布される。従って、少数の部材で構成された簡素な構造でありながら、効果的な溶剤の散布が行える。実用化も容易である。
【0019】
前記版胴洗浄装置はまた、前記溶剤タンクに接続されて下方に延びる給液配管と、前記給液配管を通じて前記溶剤タンクへ溶剤を揚げる送液ポンプと、を更に備えるようにしてもよい。
【0020】
溶剤タンクが印刷機の上部に配置されていると、そこに溶剤を投入するには、溶剤の入った一斗缶などを印刷機の上まで持ち上げる必要がある。そのため、作業負担は大きいが、この版胴洗浄装置によれば、送液ポンプで給液配管を通じて溶剤タンクへ溶剤を揚げることができるので、溶剤タンクが高位置にあっても、簡単確実に溶剤を溶剤タンクに投入できる。
【0021】
前記版胴洗浄装置はまた、前記溶剤タンクの内部が外部と連通するように構成されていて、前記溶剤タンクの所定の液位に、ドレン配管に連通する液流出口が形成されている、としてもよい。
【0022】
この版胴洗浄装置によれば、溶剤タンクの内部は、いわゆる大気開放された状態になっているので、自由落下により溶剤を流下させることができる。しかも、溶剤タンクの所定の液位に、ドレン配管に連通する液流出口が形成されているので、溶剤タンクに過剰な溶剤が送液されても、液流出口およびドレン配管を通じて排出できる。
【0023】
従って、頭上にある溶剤タンクから溶剤が溢れ出るおそれはない。安心して洗浄作業が行える。
【発明の効果】
【0024】
開示する技術を適用した版胴洗浄装置によれば、比較的簡単な構成で、版胴等の洗浄作業を効率化できるので、容易に実用化できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】印刷時における印刷機の要部を下流側から見た概略図である。
【
図2】
図1における矢印Y-Y線での概略断面図である。
【
図3】切替時(交換時)における
図2相当図である。
【
図4】切替時(交換時)における印刷機の要部を上流側から見た概略図である。
【
図5】溶剤タンクおよびその周辺構造を示す概略図である。
【
図6】印刷切替時における主な動作や作業の流れを表したフローチャートである。
【
図7】洗浄準備作業における主な動作や操作の流れを表したフローチャートである。
【
図8】洗浄作業における主な動作や操作の流れを表したフローチャートである。
【
図9】切替時(洗浄時)における
図2相当図である。
【
図10A】溶剤散布時における印刷機の要部を上流側から見た概略図である。
【
図10B】溶剤散布時の状態を簡略化して表した図である。
【
図11】エア乾燥時の状態を簡略化して表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、開示する技術の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0027】
なお、以下の説明では、ウエブWが搬送される方向を「MD方向」といい、ウエブWの幅方向を「TD方向」という。そして、MD方向のうち、印刷前のウエブWが位置する側を「上流側」、印刷後のウエブWが位置する側を「下流側」ともいい、TD方向のうち、版胴駆動装置13が有る側を「駆動側」、版胴駆動装置13が無い側を「操作側」ともいう。
【0028】
<印刷機>
図1、
図2に、開示する技術を適用した版胴洗浄装置30が備えられている印刷機1(グラビア印刷機)を例示する。版胴洗浄装置30については、後述する。
【0029】
印刷機1は、連続して搬送される帯状のウエブWに、連続的にインキを転写して印刷を行う。印刷機1は、大略、インキパン2、版胴4、ファニッシャロール3、圧胴5、ドクターブレード6などの部材で構成されている。
【0030】
印刷機1には、印刷の切替作業を容易にするために、ファニッシャロール3を変位させるFR変位装置10、圧胴5を変位させる圧胴変位装置11なども備えられている。印刷機1は、床面上に対向配置された一対のサイドフレーム1a,1aを備え、これらの間に、これら各部材や装置が設けられている。印刷機1を制御する操作盤の操作や、監視、切替等の作業は、主に操作側で行われる。
【0031】
この印刷機1ではまた、版胴4およびファニッシャロール3の交換や、インキの入れ替え等の作業が容易に行えるように構成されている。そのため、この印刷機1には更に、版胴4およびファニッシャロール3の各々を着脱してサイドフレーム1a,1aの外に移送可能にする装置や機構、版胴4およびファニッシャロール3の着脱時にインキパン2を変位または着脱する装置や機構などからなる切替ユニット1bも設けられている。本来の印刷機能に付随した切替ユニット1bは簡略化して図示し、その具体的な説明は省略する。
【0032】
(インキパン2)
インキパン2は、TD方向が長い矩形の、上面が開放されたトレイ状の容器からなる。ファニッシャロール3および版胴4から滴下するインキが回収できるように、インキパン2の縦横は、これらよりも大きく形成されている。
【0033】
印刷時のインキパン2は、これらの直下の位置(印刷位置)に配置される。切替時(切替時)のインキパン2は、
図3に示すように、印刷位置から降下した位置(退避位置)に配置される。
図2に示すように、印刷時のインキパン2には、常に所定量のインキが貯留される。
【0034】
図1に示すように、インキ循環供給装置9は、粘度コントローラ90、インキ用の台車91、インキ吸込ホース92、インキ供給ホース93、インキ戻し経路94などで構成されている。台車91には、インキを収容した一斗缶(インキ缶82I)が配置される。そのインキ缶82Iの高さは、オペレータが扱い易いように、印刷位置のインキパン2よりも低く設定されている。
【0035】
粘度コントローラ90の吸込口に、インキ吸込ホース92が接続されている。インキ吸込ホース92がインキ缶82Iの内部に挿入されている。粘度コントローラ90の吐出口には、インキパン2に給液するインキ供給ホース93が接続されている。インキパン2の所定部位には、インキ戻し経路94が設けられている。インキ戻し経路94を通じて、インキパン2に溜まるインキがインキ缶82Iに戻される。
【0036】
粘度コントローラ90は、印刷機1の制御によって駆動する。印刷時には、粘度コントローラ90は、常時作動し、インキの粘度を調整する。粘度コントローラ90によるインキの循環により、インキパン2にインキが供給される。過量のインキはオーバーフローするので、インキパン2のインキ量は一定に保持される。
【0037】
印刷機1には、インキ循環供給装置9とは別に、溶剤供給装置8が付設されている。溶剤供給装置8は、床面上を移動可能な台車80と、サイドフレーム1aにブラケットを介して取り付けられた送液ポンプ81とを有している。溶剤供給装置8の高さは、オペレータが扱い易いように、印刷位置のインキパン2よりも低く設定されている。台車80の上には、溶剤を収容した一斗缶(溶剤缶82S)が配置される。
【0038】
図4に示すように、送液ポンプ81の吸込口81aには、レバー操作によって開閉するバルブが設置された吸込配管83が接続されている。その吸込配管83には、短寸の吸引ホース84が接続されていて、その吸引ホース84が溶剤缶82Sの内部に挿入されている。印刷時には、粘度コントローラ90に溶剤を供給するために、吸込配管83および吸引ホース84と同様の構成からなる配管が、溶剤缶82Sに設置される(
図1参照)。
【0039】
(ファニッシャロール3)
ファニッシャロール3は、細長い円柱状の部材からなる。ファニッシャロール3は、両端に設けられたシャフト3aを介してFR変位装置10に回転可能に支持されている。
【0040】
FR変位装置10は、サイドフレーム1a,1aの間に揺動可能に支持された一対の支持アーム10a,10aを有している。各支持アーム10aは、細長い板形状を有し、互いに対向するように配置されている。ファニッシャロール3は、これら支持アーム10a,10aの下端部に、シャフト3aを介して回転自在に架設されている。図示は省略するが、ファニッシャロール3は、各支持アーム10a,10aに着脱可能に軸支されていて、印刷機1の制御によって回転駆動される。
【0041】
ファニッシャロール3は、印刷機1の制御によって両支持アーム10a,10aが揺動することにより、
図1、
図2に示すような、下流側の斜め下方から版胴4の下部に圧接する印刷位置と、
図3に示すような、印刷位置から下流側に離れた退避位置とに変位する。
【0042】
印刷時のファニッシャロール3は印刷位置に位置し、そのファニッシャロール3の下部はインキパン2に溜まるインキに浸漬された状態になる。切替時(版胴交換時)のファニッシャロール3は退避位置に位置し、インキパン2の上方かつ版胴4の斜め下方に配置された状態になる。
【0043】
(版胴4)
版胴4は、ファニッシャロール3よりも大径の細長い円柱状の部材からなる。この印刷機1で用いられる版胴4は、シャフトレスタイプであり、版胴4の各端面4dの中央には軸支孔4aが形成されている。
【0044】
両サイドフレーム1a,1aの上下方向の中間部分には、各々の対向面から向かい合って突出する一対の支持軸12,12が設けられている。これら支持軸12,12に、軸支孔4aを介して、版胴4が着脱可能に軸支されている。
【0045】
サイドフレーム1a,1aの一方には、支持軸12を回転駆動する版胴駆動装置13が設置されている。この版胴駆動装置13により、一方の支持軸12は、印刷機1の制御によって回転駆動するように構成されている。それにより、印刷時の版胴4は、
図2に矢印で示す方向(図例では時計回り)に、TD方向に延びる軸を中心に所定の速度で回転する。
【0046】
ファニッシャロール3は、版胴4から独立して回転駆動される。ファニッシャロール3の回転速度は、適量のインキを飛散させることなくインキ溜まり(版胴4とファニッシャロール3との接触部位に形成されるインキの溜まりip)に供給するため、版胴4の回転数よりも所定量小さく設定されるのが一般的である。
【0047】
(圧胴5)
図示の圧胴5は、版胴4より小径で、版胴4よりも長い細長い円柱状の部材からなる。圧胴5の両端部の各端面には、支持シャフト5aが、圧胴5と同軸に取り付けられている。そして、これら支持シャフト5a,5aを介して、圧胴変位装置11に変位可能に支持されている。なお、仕様によっては圧胴5は版胴4よりも大径の場合もある。
【0048】
圧胴変位装置11は、両サイドフレーム1a,1aの間に対向して配置された一対の支持体11a,11aを有しており、圧胴5は、これら支持体11a,11aに、支持シャフト5a,5aを介して回転自在に架設されている。一対の支持体11a,11aは、印刷機1の制御によって昇降するように構成されている。
【0049】
印刷機1に搬送されるウエブWは、複数のガイドロール(不図示)により、上方から圧胴5の下側に誘導されるように構成されている。従って、圧胴5は、圧胴変位装置11の駆動により、そのウエブWを下面で受け止めた状態で昇降する。
【0050】
それにより、圧胴5は、
図1、
図2に示すように、版胴4の上部に圧接し、版胴4とでウエブWを挟持する位置(印刷位置)と、
図3、
図4に示すように、印刷位置から上方に離れた位置(退避位置)とに変位する。更に、洗浄時には、これらの中間の位置(洗浄位置)に変位するが、これについては後述する。また、圧胴5の変位に連動して昇降する保護バー20が、圧胴変位装置11に併設されているが、これについても後述する。
【0051】
(ドクターブレード6)
図2に示すように、ドクターブレード6は、帯板形状を有する刃物状の部材からなる。ドクターブレード6は、版胴4に沿って延びるように、ブレードホルダー7に支持されている。
【0052】
印刷時のドクターブレード6は、版胴4の上流側に配置されている。すなわち、印刷時のドクターブレード6は、版胴4の外周面のうち、ファニッシャロール3との圧接部位から、圧胴5との圧接部位(挟持位置NP)に向かって回転している側の所定部位に、所定の角度で、その刃先が圧接するように位置決めされる。
【0053】
印刷時には、ウエブWの搬送に合わせて版胴4が回転駆動される。それに連動して、ファニッシャロール3および圧胴5も回転する。それにより、形成されるインキ溜まりipを介して版胴4の印刷面に付着された過剰なインキは、ドクターブレード6によって掻き取られる。そうして、適量になったインキが挟持位置NPに運ばれることで、連続搬送されるウエブWに、版胴4の印刷面からインキが転写されて印刷が行われる。
【0054】
切替時(版胴交換時)のドクターブレード6およびブレードホルダー7は、印刷時の位置から変位し、版胴4から離れた位置(退避位置)に退避する。
【0055】
(保護部材としての保護バー20)
図2に矢印で示すように、印刷時には、版胴4および圧胴5は、挟持位置NPに向かって上流側から下流側に高速で回転している。そして、挟持位置NPの両側、つまりその上流側と下流側のそれぞれには、版胴4と圧胴5とによって区画されることにより、挟持位置NPに向かって窄む狭い空間(上流側狭窄空間TsUおよび下流側狭窄空間TsD)が存在している。
【0056】
版胴4および圧胴5の上流側では、印刷中に印刷状態のチェックや、ドクターブレード6の接触状態の調整などの作業が行われる場合がある。その際、誤って上流側狭窄空間TsUの奥方に工具や指等が入り込むことがないように、上流側狭窄空間TsUには、挟持位置NPをその上流側から覆う保護バー20が配置されるのが一般的である。通常、保護バー20は、TD方向に延びる細長い棒状の部材からなり、印刷時に、上流側狭窄空間TsUに配置される。
【0057】
図4に示すように、この印刷機1の保護バー20は、版胴4および圧胴5よりも長い、細長い棒状の部材で構成されている。保護バー20の両端部分は、バー変位機構25に架設されている。バー変位機構25は、一対の支持体11a,11aの昇降に連動して昇降する一対の支持部材25a,25aを有しており、圧胴変位装置11に連動して動作するように構成されている。
【0058】
それにより、保護バー20は、印刷位置および退避位置への圧胴5の変位に連動して変位し、
図1、
図2に示す、上流側狭窄空間TsUで挟持部位を覆う位置(保護位置)と、版胴4とともに上昇して、
図3、
図4に示す、保護位置の上方に離れた位置(非保護位置)とに変位する。それにより、非保護位置の保護バー20は、比較的大きな間隔を隔てて版胴4の上流側の部位の上方に位置している。
【0059】
保護バー20は、本来の保護部材としての機能だけでなく、版胴洗浄装置30を構成する洗浄部材としても機能するように工夫されている(詳細は後述)。それにより、この保護バー20は、洗浄時に、保護位置と非保護位置との間の位置(洗浄位置)にも変位するように構成されている。
【0060】
(版胴洗浄装置30)
印刷の切替時には、版胴4やインキなどの交換が行われる。その際、これらを交換する前に、印刷時に版胴4やファニッシャロール3などに付着したインキを除去する洗浄作業が行われる。
【0061】
冒頭で述べたように、通常、その洗浄作業は、版胴4やファニッシャロール3を低速で回転させながら、オペレータが、溶剤を含ませたウエスで、版胴4等の外周面に付着したインキを拭き取ることで行われている。しかしながら、このような手作業は非効率であるため、この印刷機1には、その洗浄作業を補完する版胴洗浄装置30が設置されている。
【0062】
図1、
図4に示すように、版胴洗浄装置30は、上述した溶剤供給装置8に加え、溶剤タンク31、給液配管32、ドレン配管33、送液配管34、散布パイプ(保護バー20)、切替バルブ36などで構成されている。この版胴洗浄装置30では、給液配管32、ドレン配管33、および送液配管34の主体は、溶剤耐性に優れたホースで構成されている。
【0063】
溶剤タンク31は、
図1、
図4に示すように、印刷機1の上部(操作側に位置するサイドフレーム1aの上部)の外側に取り付けられている。溶剤タンク31は、
図5に示すように、比較的小容量の有底円筒状の容器からなり、その上面は開閉可能な蓋37で密閉されている。
【0064】
その蓋37には、溶剤タンク31の内部を外部と連通させる通気管38が取り付けられている。従って、溶剤タンク31の内部は常に、大気圧に保持される。その蓋37にはまた、液取入口37aが設けられていて、その液取入口37aに逆U形状をした液導入管39が取り付けられている。
【0065】
その液導入管39に、給液配管32の上端が接続されている。給液配管32は、垂れ下げられていて、その下端部が、コネクタ86を介して送液ポンプ81の吐出口81bに接続されている。
【0066】
溶剤タンク31の下端部には液取出口31aが設けられていて、その液取出口31aに、送液配管34を中継する液導出管40が取り付けられている。液導出管40は、液取出口31aから下方に延びていて、その下端部は、後述する垂下管部42bに接続されている。液導出管40には、レバーで開閉操作する液止バルブ41が設けられている。
【0067】
通常、液止バルブ41は閉止されている。溶剤タンク31の溶剤を洗浄に用いないで排出する時に、液止バルブ41は開かれる。液導出管40における液止バルブ41よりも上方の部位には、チューブ下接続部40aと、配管接続部40bとが、上から順に設けられている。
【0068】
溶剤タンク31の側部の上側には液流出口31bが設けられている。液流出口31bは、所定の液位(上限液位)に達すると液流出口31bから溶剤が流出する位置に形成されている。
【0069】
液流出口31bには、ドレン配管33を中継する液流出管42が取り付けられている。液流出管42は、液流出口31bから略水平に突出する突出管部42aと、突出管部42aから下方に延出された垂下管部42bと、チューブ上接続部42cとを有している。
【0070】
チューブ下接続部40aの接続部位は、チューブ上接続部42cの下方まで延びており、これらチューブ上接続部42cとチューブ下接続部40aとに、略垂直に延びた状態で透明のチューブ43が接続されている。このチューブ43に導入される溶剤を目視することにより、溶剤タンク31に溜まる溶剤の液位が判断できる。
【0071】
垂下管部42bの下端にドレン配管33の上端が接続されている。ドレン配管33は、垂れ下げられて、その下端部が溶剤缶82Sに挿入されている。従って、溶剤タンク31に過剰に溶剤が供給されても、過剰な溶剤は、液流出口31b、液流出管42、ドレン配管33を通じて、溶剤缶82Sに回収される。
【0072】
配管接続部40bには、送液配管34が接続されている。送液配管34は、上流側送液配管34Uと下流側送液配管34Dとで構成されていて、その上流側送液配管34Uの上流側の端部が、配管接続部40bに接続されている。
【0073】
上流側送液配管34Uは、駆動側に位置するサイドフレーム1aの上部に設置された切替バルブ36に向かって、印刷機1の上部を横切るように配索されている。切替バルブ36は、配管接続部40bよりも低位置に配置されており、上流側送液配管34Uは、途中に溶剤が溜まらないように、その全長にわたって下り傾斜している(下流に向かうほど低い)。
【0074】
切替バルブ36は、いわゆる三方弁である。切替バルブ36には、制御可能な開閉弁36aを介してエア配管36bが接続されている。そのエア配管36bを通じて、図外のエア供給装置から切替バルブ36に圧縮空気が供給可能になっている。切替バルブ36は、その流路の切り替えにより、エア配管36bおよび上流側送液配管34Uのいずれか一方と、下流側送液配管34Dとを連通させる。
【0075】
すなわち、切替バルブ36の上流側の一方の流路に、上流側送液配管34Uの下流側の端部が接続され、切替バルブ36の上流側の他方の流路にエア配管36bが接続されている。そして、切替バルブ36の下流側の流路に下流側送液配管34Dの上流側の端部が接続されている。
【0076】
切替バルブ36は、例えば空圧で作動し、印刷機1の制御によって上流側の流路を切り替える。通常、切替バルブ36の上流側の流路は、エア配管36bの側に設定されていて、開閉弁36aが閉じられた状態になっている。
【0077】
(洗浄部材としての保護バー20)
図4に示すように、保護バー20は、長手方向に間隔を隔てて複数の散布孔21aが形成された中空のパイプ21と、一対の丸棒22,22と、連通口を有する継手23とを有している。パイプ21の一端には丸棒22が着脱可能に接続されていて、パイプ21の他端には、継手23を介して丸棒22が着脱可能に接続されている。
【0078】
保護バー20は、継手23の有る側を駆動側に配置し、連通口を上方に向けた状態で、両端の丸棒22,22を介して一対の支持部材25a,25aに架設されている。下流側送液配管34Dの下流側の端部は連通口に接続されており、連通口を介してパイプ21の内部と連通している。
【0079】
保護バー20は、保護位置および非保護位置のいずれの位置でも、切替バルブ36よりも低く、下流側送液配管34Dは、保護バー20の変位に合わせて適度に撓む長さに設定されている。下流側送液配管34Dもまた、途中に溶剤が溜まらないように、その全長にわたって下り傾斜している。従って、溶剤タンク31から送液配管34に溶剤が流入すると、その溶剤は、滞留することなく保護バー20まで流下する。
【0080】
各散布孔21aは、パイプ21の下端部に開口する細孔からなり、保護バー20の長手方向のうち、版胴4、ファニッシャロール3、およびインキパン2の長さに対応した範囲に形成されている。具体的には、インキパン2の上方に位置する範囲であって、版胴4およびファニッシャロール3と略同等の長さの範囲に、複数の散布孔21aが略等間隔で形成されている。そして、保護バー20のその範囲に相当する部分がパイプ21で構成されている。従って、保護バー20に溶剤が残留するのを抑制できる。
【0081】
<印刷切替時の洗浄作業>
図6、
図7、
図8のフローチャートを参照しながら、洗浄作業等、印刷の切替時に行われる主な作業の流れについて説明する。
【0082】
図6に示すように、印刷の切替に先立ち、印刷中に、洗浄準備作業が行われる(ステップS1)。印刷中に、洗浄作業の一部が行えるので、印刷切替時の洗浄作業の時間を短縮できる。
【0083】
洗浄準備作業では、
図7に示すように、先ず、溶剤の準備が行われる(ステップS10)。すなわち、
図1、
図4に示すように、溶剤缶82Sを溶剤供給装置8にセットする。そして、送液ポンプ81を駆動させる(ステップS11)。それにより、溶剤缶82Sの溶剤は、給液配管32を通じて揚げられ、溶剤タンク31に溜まっていく。
【0084】
送液ポンプ81の駆動時間は、予め所定時間tsに設定されており、所定時間tsが経過すると(ステップS12でYes)、送液ポンプ81は停止する(ステップS13)。それにより、1回の洗浄に適した量の溶剤が溶剤タンク31に貯留される。溶剤タンク31に溜まる溶剤の液位は、チューブ43によって判断できる。
【0085】
このとき、溶剤タンク31に送る溶剤は少量なので、極めて短時間で送液できる。従って、作業負担を軽減できる。洗浄の状態によっては、手動で溶剤を追加送液してもよい。誤って過量の溶剤が揚げられても、溶剤タンク31から溶剤が溢れ出るおそれはない。従って、安心して作業できる。
【0086】
そうして、
図6に示すように、印刷が終了し、印刷機1が停止すると(ステップS2でYes)、オペレータは、版胴4、ファニッシャロール3、インキ等を交換するために、印刷機1を操作する。それにより、洗浄作業が開始する(ステップS3)。
【0087】
洗浄作業では、
図8に示すように、先ず、インキの回収準備が行われる(ステップS20)。すなわち、印刷機1は、インキ溜まりipのインキを流下させるため、ファニッシャロール3を、版胴4から一時的に離す処理を実行する。それと並行して、印刷機1は、インキパン2を退避位置に変位させる。
【0088】
インキパン2の片隅には流出口2aが設けられている(
図10B参照)。洗浄時に、インキパン2に溜まる溶剤(インキが混ざった溶剤)をインキ缶82Iに回収するため、インキパン2は、更に、その流出口2aの有る片隅が下がるように傾いた状態に保持される。
【0089】
インキ回収準備と並行して、印刷機1は、圧胴5等を、洗浄時に配置すべき所定位置(洗浄位置)にセットする(ステップS21)。
図9に、圧胴5等が洗浄位置にセットされた状態を示す。ファニッシャロール3およびドクターブレード6の洗浄位置は、印刷位置と同じである。圧胴5の洗浄位置は、版胴4から僅かに上方に離れた位置であり、版胴4と圧胴5とは非接触の状態となる。保護バー20の洗浄位置は、保護位置から僅かに上方に離れた位置であり、最大径の版胴4に対する保護位置に相当する。
【0090】
洗浄位置にセットされると、版胴4およびファニッシャロール3が所定の低速で回転駆動される(ステップS22)。そして、切替バルブ36は、溶剤側に切り替えられる(ステップS23)。それにより、溶剤タンク31に溜まる溶剤は、自由落下により、送液配管34を流下し、保護バー20に流入する。
【0091】
図10A、
図10Bに示すように、保護バー20に流入した溶剤は、各散布孔21aを通じて版胴4の上部に向けて散布される。すなわち、印刷時の保護バー20は、洗浄時に、散布パイプとして兼用される。洗浄位置の保護バー20であれば、版胴4の上流側の近傍に位置するため、散水パイプ21として最適である。兼用することで、既存の設備が活用できるし、部材点数を削減できる。
【0092】
版胴4の上部の上流側に散布された溶剤は、更に、回転する版胴4により、ファニッシャロール3の外周面にも行き渡る。それにより、版胴4およびファニッシャロール3の双方の外周面を溶剤で満遍なく濡らすことができ、これらに付着したインキを効果的に溶剤で洗い落とすことができる。版胴4に付着した溶剤は、ドクターブレード6が掻き取るため、ドクターブレード6に付着したインキも、溶剤で効果的に洗い落とすことができる。
【0093】
溶剤で洗い落とされたインキはインキパン2を介してインキ缶82Iに回収される。溶剤の総量は、インキの総量に比べると僅かであるため、回収されたインキおよび溶剤は再利用できる。
【0094】
溶剤タンク31、送液配管34、および保護バー20の内部の溶剤が無くなる所定時間t1が予め設定されており、その時間t1が経過すれば、散布は終了する(ステップS24でYes)。散布が終了すれば、印刷機1は、ファニッシャロール3およびドクターブレード6を、退避位置へ変位させる(ステップS25)。
【0095】
そうして、印刷機1は、切替バルブ36をエアー側(エア配管36bの側)に切り替えて、開閉弁36aを開く(ステップS26)。それにより、保護バー20に高圧のエアが供給され、
図11に示すように、各散布孔21aを通じてエアが噴射される。
【0096】
その結果、保護バー20の内部は乾燥されるので、保護バー20の内部に溶剤が残存し、印刷時に垂れ落ちるのを防止できる。保護バー20の両端部は、丸棒22で構成されているので、保護バー20の両端部に溶剤が残存するおそれもない。
【0097】
更に、噴射されるエアにより、版胴4に付着した溶剤の乾燥を促進できる。このとき、下流側では、オペレータが作業している場合が多い。ドクターブレード6が印刷位置にあると、噴射されたエアによって吹き飛ばされた溶剤が下流側に飛散し、オペレータに付着するおそれがある。それに対し、この印刷機1では、ドクターブレード6が退避位置に変位しているので、噴射されたエアによって吹き飛ばされる溶剤は、上流側に向かう。従って、そのような不具合も防止できる。
【0098】
エアによる乾燥処理を行う所定時間t2が予め設定されており、その時間t2が経過すれば、乾燥処理は終了する(ステップS27でYes)。印刷機1は、開閉弁36aを閉じる(ステップS28)。その後、オペレータは、版胴4およびファニッシャロール3の外周面に残存した溶剤をウエスで拭き取る(ステップS29)。
【0099】
このとき、版胴4およびファニッシャロール3は回転しているので、これらの外周面にウエスを押し当てて左右にスライドさせるだけで、簡単かつ短時間で拭き取ることができる。特に、版胴4は、先だってエアによる乾燥が行われているので、より短時間で処理できる。拭き取りが終われば、版胴4およびファニッシャロール3の回転を停止して洗浄作業を終了する(ステップS30)。
【0100】
洗浄作業が終了すると、版胴4およびファニッシャロール3の交換が可能になるので、
図6に示すように、版胴4、ファニッシャロール3、インキの交換が行われる(ステップS4)。この印刷機1の場合、切替ユニット1bにより、これら版胴4およびファニッシャロール3が印刷機1から取り外されて、新しい版胴4およびファニッシャロール3が印刷機1に取り付けられる。その後、所定の開始操作が行われ、印刷が開始される。
【0101】
このように、この版胴洗浄装置30によれば、既設の保護バー20が効果的に活用されている。従って、印刷機1の構造の複雑化を招くことがないし、安価で実現できる。実用化も容易である。更に、洗浄作業が簡略化され、インキを効果的に洗い落とせるので、効率的である。切替時間も短縮できる。少ない溶剤で洗浄できるので、残ったインキに溶剤が混ざっても、粘度低下は小さい。従って、残存インキを容易に再利用できる。
【0102】
なお、開示する技術にかかる版胴洗浄装置は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0103】
溶剤タンク31、切替バルブ36、継手23等のTD方向における位置関係は、仕様に応じて適宜変更できる。例えば、切替バルブ36および継手23も操作側に配置してもよい。そうすれば、上流側送液配管34Uが短くなり、より簡略化できる。
【0104】
保護バー20は、丸棒22を省略して、中空のパイプ21のみで構成してもよい。液流出管42等の構造も仕様に応じて変更できる。例えば、目視用のチューブ43等は省略してもよい。切替バルブ36や開閉弁36aの操作は手動であってもよい。
【0105】
溶剤タンク31からの溶剤の送液は、自然落下ではなく、空気圧を利用して圧送してもよい。例えば、溶剤タンク31を密閉可能にするとともに、開閉バルブを介してエアー配管36bを接続する。洗浄時に、開閉バルブを開いてエアーを溶剤タンク31に供給すれば、溶剤を安定して散布することができる。溶剤タンク31を高位置に配置する必要が無くなる利点がある。溶剤タンク31を密閉できるので、溶剤の拡散も抑制できる。
【0106】
版胴4またはパイプ21は、TD方向に揺動可能な構造としてもよい。そうすれば、例えば、散布孔21aの間隔を20mm以上とした場合でも、TD方向に均一に散布することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 印刷機
2 インキパン
3 ファニッシャロール
4 版胴
5 圧胴
6 ドクターブレード
8 インキ供給装置
10 FR変位装置
11 圧胴変位装置
20 保護バー
21 パイプ
21a 散布孔
25 バー変位機構
30 版胴洗浄装置
31 溶剤タンク
32 給液配管
33 ドレン配管
34 送液配管
W ウエブ
Np 挟持位置
TsU 上流側狭窄空間
TsD 下流側狭窄空間