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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】回転減速伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20221021BHJP
【FI】
F16H1/32 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021078730
(22)【出願日】2021-05-06
(62)【分割の表示】P 2017100885の分割
【原出願日】2017-05-22
(65)【公開番号】P2021169862
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】516272490
【氏名又は名称】SKG株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今川 豊
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-169256(JP,A)
【文献】国際公開第2007/125800(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
前記フレックスギア部は、内周面に、フレキシブル性を確保する切込部を形成するとともに、各切込部間に、前記伝達ピン本体を配したことを特徴とする請求項1記載の回転減速伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット等に内蔵することにより、入力する回転運動を減速して出力する回転減速伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、量産性が要求される生産工場の生産ラインでは、複数のアーム部を関節機構により連結して構成した産業用ロボットが設置される。関節機構は、任意のアーム部の端部と他のアーム部の端部を回動可能に連結するとともに、任意のアーム部に内蔵する駆動モータの回転を、1/100~1/200程度に減速し、減速した回転出力により他のアーム部を回転駆動可能な回転減速伝達装置を備えている。したがって、この種の回転減速伝達装置には、高精度の、位置決め制御,角度制御,速度制御等が要求される。
【0003】
従来、このような要求に応える回転減速伝達装置としては、通称、ハーモニックドライブ(登録商標)と呼ばれる波動歯車機構による減速機が広く用いられており、この波動歯車機構を備えるロボット或いはロボット関連装置としては、例えば、特許文献1で開示される原動装置、特許文献2で開示される産業用ロボットの手首機構、特許文献3で開示される多関節ロボットなどが知られている。
【0004】
この場合、特許文献1で開示される原動装置は、カップ状のハウジングと、このハウジングの内周にリング状のサーキュラ・スプラインを回転可能に支承させるとともに、このサーキュラ・スプラインの内側に配設され、ウェーブジェネレータに付勢されて、サーキュラ・スプラインに噛合するカップ状のフレクスプラインをハウジングに固定してなるハーモニック減速機と、ハウジングに支軸の一端を固着するとともに、この支軸回りに回転するケーシングをフレクスプラインの内部に配設し、このケーシングにウェーブジェネレータを設けてなる液圧モータとを具備し、回転出力をサーキュラ・スプラインから取り出し得るように構成されたものである。
【0005】
また、特許文献2で開示される産業用ロボットの手首機構は、アームに支持されたアーム軸を中心として回転自在に支承された手首全体を回転させる第3軸と、この第3軸に支持され、第3軸に直角な軸を中心として回転自在に支承された手首先端部を傾動させる第2軸と、第2軸に支持され、第2軸に直角な軸を中心として回軸自在に支承された手首先端部の加工具把持部を回転させる第1軸を設け、第1軸および第2軸は、同一中心軸に重ね合わせて配置された減速機にて手首内において減速させ、第3軸は、手首外においてあらかじめ減速させるように構成されたものである。
【0006】
さらに、特許文献3で開示される多関節ロボットは、少くとも2つの制御アームと、両制御アームの関節部に設けられた同一軸上で相対する2つの減速機とを有する多関節ロボットにおいて、2つの減速機が一方の制御アームの関節部に固定された共通のサーキュラスプラインと、該共通のサーキュラスプラインの一端に該サーキュラスプラインと相対的に回動するように取付けられ、かつ他方の制御アームの関節部に連結されたブラケットとを備えた第1および第2のハーモニックドライブ減速磯から構成されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭60-098246号公報
【文献】特開昭61-146490号公報
【文献】特開昭64-011777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した従来における波動歯車機構を備える回転減速伝達装置は、次のような問題点があった。
【0009】
第一に、主要構成部品として、フレクスプライン、ウェーブジェネレータ、サーキュラスプラインを備えており、フレクスプラインは、薄肉の金属弾性プレートにより全体をカップ状に形成するとともに、楕円状に変形する開口部の外周に形成した歯車部を、位置を固定したサーキュラスプラインの内周に形成した歯車部に噛合させている。したがって、カップ状に一体形成するフレクスプラインは、高度の精密部品として製造する必要があるため、その製造が容易でなく、高コスト化が避けられない。しかも、フレクスプラインは、使用による金属疲労や動作不良を生じ易く、耐久性にも難がある。結局、従来の波動歯車機構は、イニシャルコスト及びランニングコストの双方において大幅なコストアップを招いてしまう。
【0010】
第二に、カップ状に形成するフレクスプラインにおける開口部の外周に歯車部を形成し、この歯車部を、楕円状のウェーブジェネレータにより波動変形させるとともに、底部の中心に、減速回転を出力する出力軸を結合するため、フレクスプラインを機能させるためには、当該フレクスプラインの軸方向長さをある程度確保する必要があり、減速伝達装置における全体構造の薄型化(小型化)を図るには限界があった
【0011】
第三に、フレクスプラインの全体形状をカップ状に形成し、一端を閉塞する底部の中心に出力軸を結合するため、接続ケーブルを引き回すための空間確保が容易でない。特に、ロボットの場合、多数の関節機構を備え、多彩な動きを実現するための多数の駆動モータを内蔵するため、この駆動モータとロボットコントローラを接続する接続ケーブルの本数は少なくとも駆動モータの数だけ必要になるとともに、この本数を備える接続ケーブルを引き回す必要がある。したがって、多数の接続ケーブルを引き回すことができる空間を確保する観点からも更なる改善の余地があった。
【0012】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した回転減速伝達装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る回転減速伝達装置1は、上述した課題を解決するため、ロボットRを構成する任意のアーム部15と他のアーム部16を連結する関節機構Mjに設けることにより入力する回転運動を減速して出力する回転減速伝達装置であって、内周面11iの内方を、ケーブル類Ka,Kb…の配線空間Sに形成するとともに、筒形の入力回転体11により構成した回転運動が入力する回転入力部2と、入力回転体11の外周面11oに設けることにより回転入力部2と一体に回転するカム本体部3c及びこのカム本体部3cの外周に沿って設けた内輪3biとフレキシブルな外輪3bo間に複数の転動体3bm…を介在させたオーバルシャフト部3と、インナギア5gを内周に形成し、かつ位置を固定したインターナルギア部5と、外周の周方向Ffに沿って形成し、かつインナギア5gに対して歯数を少なくして、オーバルシャフト部3の外周に付設した際に、周方向Ffにおける180〔°〕の位置関係となる二個所の位置T,Tで噛合するアウタギア4gを有するフレックスギア部4と、このフレックスギア部4の側面から突出した伝達ピン本体4pm…及びこの伝達ピン本体4pm…を軸にして中心位置が回動自在に支持された伝達ローラ4pr…により構成するとともに、当該フレックスギア部4の周方向Ffに沿って所定間隔置きに設けた複数の伝達ピン部4p…と、各伝達ピン部4P…が係合し、かつ周方向Ffに沿って所定間隔置きに設けるとともに、回転伝達時に伝達ピン部4p…の周方向Ff及び/又は放射方向Fdの変位を許容する係合孔7sh…を形成した係合部7s…を設けたリング形の出力プレート部7を有する回転出力機構6とを備え、係合部7s…を、伝達ピン部4p…の周面が常時当接し、かつ当該出力プレート部7の周方向Ff及び放射方向Fdへの当該伝達ピン部4p…の変位を許容する複方向係合孔7sm…により構成したことを特徴とする。
【0014】
この場合、発明の好適な態様により、フレックスギア部4は、内周面に、フレキシブル性を確保する切込部4c…を形成するとともに、各切込部4c,4c…間に、伝達ピン本体4pm…を配して構成できる。
【発明の効果】
【0015】
このような構成を有する本発明に係る回転減速伝達装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0016】
(1) 薄肉の金属弾性プレート材を用いて全体形状をカップ状に形成する従来のフレクスプラインは不要になるため、容易に製造可能となり、製造コストの大幅な削減を図れるとともに、金属疲労や動作不良等も大幅に低減できるため、耐久性及び信頼性の向上を図ることができるなど、イニシャルコスト及びランニングコストの双方における大幅なコストダウンを実現できる。
【0017】
(2) 従来のフレクスプラインが不要になるため、軸方向Fsにおける配設スペースのサイズダウンを図ることができる。したがって、全体構造における薄型化が可能になり、小型化に限界のあった、特に産業用ロボット等の更なる小型化を容易に実現できる。
【0018】
(3) 係合部7s…を構成するに際し、出力プレート部7に形成し、伝達ピン部4p…の周面が常時当接するとともに、当該出力プレート部7の周方向Ff及び放射方向Fdへの当該伝達ピン部4p…の変位を許容する複方向係合孔7sm…により構成したため、周方向Ffの異なる位置で生じる係合孔7sh…に対する伝達ピン部4p…の周方向Ff及び放射方向Fdの変位を、いわばカム方式により吸収できる。この結果、係合孔7sh…と伝達ピン部4p…を係合させた際に生じる無用な応力を排除し、伝達ピン部4p…から出力プレート部7に対する安定かつ円滑な回転伝達を行うことができるとともに、特に、剛性が高まることによる精度の高い回転伝達を行うことができる。
【0019】
(4) 伝達ピン部4p…を構成するに際し、フレックスギア部4から突出した伝達ピン本体4pm…と、この伝達ピン本体4pm…を軸にして中心位置が回動自在に支持された伝達ローラ4pr…により構成したため、伝達ピン部4p…が係合孔7sh…に係合する際における伝達ピン部4p…と係合孔7sh…間の接触摩擦を低減できる。これにより、フレックスギア部4から出力プレート部7への回転伝達を効率的かつ安定に行うことができるとともに、無用な発熱や減耗を排除して長期使用における信頼性を高めることができる。
【0020】
(5) 出力プレート部7は、リング形に形成したため、ケーブル類Ka,Kb…の配線空間を確保可能になるとともに、特に、筒形に形成する入力回転体11と組合わせることにより、全体構造のシンプル化及び高剛性化に寄与できる。
【0021】
(6) 回転入力部2を構成するに際し、内周面11iの内方を、ケーブル類Ka,Kb…の配線空間Sにするとともに、外周面11oに、少なくともオーバルシャフト部3のカム本体部3cを設けてなる筒形の入力回転体11を用いて構成したため、ケーブル類Ka,Kb…の配線空間を確保できる。この結果、ケーブル類Ka…の本数が多くなった場合であっても、他の周辺構造と併せて全体の煩雑化を回避できる。
【0022】
(7) フレックスギア部4を、インターナルギア部5のインナギア5gに対して180〔°〕の位置関係となる二個所の噛合位置T,Tで噛合させたため、フレックスギア部4を、最も、単純な形状となる楕円形状とすることができる。これにより、例えば、三個所以上の噛合位置T…で噛合させる場合に要求される精度に対してより低く抑えることが可能となり、製造容易性及び加工容易性を高めることができるとともに、耐久性,静音性及び信頼性の向上にも寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る回転減速伝達装置の原理を説明するための基本形態に係る回転減速伝達装置の一部を破断した全体を示す斜視図、
図2】同回転減速伝達装置の全体を示す断面側面図、
図3】同回転減速伝達装置の要部の分解斜視図、
図4】同回転減速伝達装置のフレックスギア部とインターナルギア部の関係を示す部分抽出拡大図を含む正面図、
図5】同回転減速伝達装置のフレックスギア部の一部を示す作用説明図、
図6】同回転減速伝達装置のオーバルシャフト部を含む軸直角方向の原理的断面構成図、
図7】同回転減速伝達装置の出力プレート部と伝達ピン部の関係を示す部分抽出拡大図を含む正面図、
図8】同回転減速伝達装置の要部の一部を示す軸方向断面図、
図9】同回転減速伝達装置を用いた産業用ロボットの外観図、
図10】同回転減速伝達装置の動作説明図、
図11】本発明の好適実施形態に係る回転減速伝達装置の伝達ピン部が係合した状態を示す出力プレート部の正面図、
図12】同回転減速伝達装置の伝達ピン部が係合した状態を示す一部抽出拡大図を含む出力プレート部の断面側面図、
図13】同回転減速伝達装置の伝達ピン部が係合した状態を示す出力プレート部の作用説明図、
図14】同回転減速伝達装置のフレックスギア部の一部分のみを抽出して示す正面図、
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0025】
最初に、同好適実施形態に係る回転減速伝達装置1の理解を容易にするため、基本形態に係る回転減速伝達装置100の構成及び動作について、図1図10を参照して説明する。
【0026】
この種の回転減速伝達装置100,1は、図9に示すような産業用ロボットRの関節機構Mjに用いることができる。例示の産業用ロボットRは、垂直多関節ロボットRvであり、機台21の上面に設置したロボット本体部22と、この機台21の下方スペースに収容することによりロボット本体部22を駆動制御するロボットコントローラ23を備える。ロボット本体部22は、第1アーム部(任意のアーム部)15と第2アーム部(他のアーム部)16を備えており、この第1アーム部15と第2アーム部16が関節機構Mjを介して連結される。即ち、第1アーム部15の先端部15sに、回転減速伝達装置100,1を内蔵し、この回転減速伝達装置100,1により第2アーム部16の後端部16rを回転駆動する。これにより、第2アーム部16の位置決め制御,角度制御及び速度制御等を行うことができる。
【0027】
図1及び図2に、回転減速伝達装置100の全体構造を示す。なお、図2において、図9に示した産業用ロボットRにおける第1アーム部15の先端部15s及び第2アーム部16の後端部16rを、それぞれ仮想線で示している。図1及び図2に示すように、回転減速伝達装置100は、大別して、回転の伝達方向上流側から、回転入力部2,オーバルシャフト部3,フレックスギア部4,インターナルギア部5及び回転出力機構6(出力プレート部7)を備える。これにより、回転入力部2に入力する回転運動は、予め設定した1/100~1/200レベルで減速され、減速された回転運動は、回転出力機構6から出力する。
【0028】
以下、各部の構成について具体的に説明する。回転入力部2は、全体を筒形に形成した入力回転体11により構成する。この入力回転体11はベアリング(ボールベアリング等)31により回動自在に支持される。この場合、ベアリング31は、外輪を第1アーム部15の内面に取付けた支持筒32に固定するとともに、内輪を入力回転体11の外周面に固定する。入力回転体11は、図2に示すように、内周面11iの内方がケーブル類Ka,Kb…の配線空間Sとなる。このため、確保する配線空間Sの広さを考慮して内径等を選定することができる。また、入力回転体11の外周面11oにおける軸方向Fsの中間部位には、オーバルシャフト部3を構成するカム本体部3cを一体形成する。
【0029】
したがって、このような筒形の入力回転体11を用いれば、ケーブル類Ka,Kb…の配線空間Sを確保できるため、ケーブル類Ka,Kb…の本数が多くなった場合であっても、他の周辺構造と併せて全体の煩雑化を回避できる利点がある。なお、符号33は、入力回転体11の端面に固定した入力ギアリングである。
【0030】
オーバルシャフト部3は、図6に示すように、入力回転体11に一体形成したカム本体部3cと、このカム本体部3cの外周面に沿って設けた内輪3biと、フレキシブルな外輪3boと、この内輪3biと外輪3bo間に介在させた複数の転動体3bm…を備える。例示の転動体3bm…はボールである。なお、内輪3biは、カム本体部3cの外周面に兼用させることも可能である。これにより、カム本体部3cにおける内周面11iの軸直角方向の断面形状は円形状になるとともに、カム本体部3cにおける外周面11oの軸直角方向の断面形状は楕円形状(オーバル形状)になる(図6参照)。
【0031】
一方、第1アーム部15の内面には、サーボモータ等の駆動モータ34を固定し、この駆動モータ34の回転シャフトに取付けた駆動ギア34gを入力ギアリング33に噛合させる。これにより、回動自在に支持される入力回転体11に、駆動モータ34からの回転運動が入力する。このように、回転入力部2(入力回転体11)に、駆動モータ34の回転運動を入力させるようにすれば、回転減速伝達装置100は、駆動モータ34を含めた駆動部として構成できるため、例えば、産業用ロボットのアーム部に内蔵する駆動部の小型化、更には耐久性向上及び信頼性向上に寄与できる利点がある。なお、駆動モータ34から回転入力部2に対する回転伝達方式として、ギア伝達機構を例示したが、タイミングベルトとプーリを利用したベルト伝達機構等の他の回転伝達方式を用いてもよい。
【0032】
フレックスギア部4は、全体を金属素材(特殊鋼等)によりフレキシブル性を有する無端ベルト状に構成し、図6に示すように、オーバルシャフト部3の外輪3boの外周面に沿って付設する。図4に、フレックスギア部4の全体形状を示すとともに、図5に、フレックスギア部4の一部の拡大形状を示す。フレックスギア部4は、外周面に、周方向Ffに沿ったアウタギア4gを形成する。
【0033】
また、アウタギア4gを構成する各歯部(山部)4gs…の一つ置きに伝達ピン本体4pm…を埋設(穴に圧入)する。この場合、各歯部(山部)4gs…は、各伝達ピン本体4pm…を支持する機能を有するため、支持強度を確保できる厚さ及び形状を選定する。なお、伝達ピン本体4pm…は、各歯部(山部)4gs…の一つ置きに配した例を示したが、各伝達ピン本体4pm…の間隔は任意に設定できる。各伝達ピン本体4pm…は、剛性の高い耐摩耗性を有する金属素材を使用し、図3図5に示すように、断面が円形となる丸棒状に形成し、図8に示すように、一端側を、各歯部(山部)4gs…に埋設するとともに、他端側を、フレックスギア部4の側面から横側方(図8では上方)に突出させる。これにより、各伝達ピン本体4pm…は、フレックスギア部4の周方向Ffに沿って一定間隔置きに配される。
【0034】
さらに、フレックスギア部4の横側方から突出する各伝達ピン本体4pm…の他端側には伝達ローラ4pr…の偏心位置を回動自在に取付ける。これにより、各伝達ローラ4pr…の偏心位置が各伝達ピン本体4pm…により回動自在に支持される。このように、フレックスギア部4から突出した伝達ピン本体4pm…と、この伝達ピン本体4pm…を軸にして偏心位置が回動自在に支持される伝達ローラ4pr…により伝達ピン部4p…が構成される。なお、伝達ピン部4p…はこのような伝達ピン本体4pm…と伝達ローラ4pr…により構成することが望ましいが、伝達ローラ4pr…を使用することなく伝達ピン本体4pm…の形状を選定した一体化した伝達ピン部4p…であってもよい。
【0035】
他方、フレックスギア部4の内周面であって、各歯部(山部)4gs…間の谷部4gd…に対応するそれぞれの位置には、図5に示すように、U形形状となる切込部4c…を放射方向Fdに形成する。これにより、各谷部4gd…と各切込部4c…間の厚さは、オーバルシャフト部3の回転に対して円滑かつ安定に追従可能なフレキシブル性(弾性)が確保される。図5における実線部分が、図4に示すフレックスギア部4がインターナルギア部5から最離間したときの形状を示すとともに、図5における仮想線部分が、図4に示すフレックスギア部4がインターナルギア部5に最接近したときの形状を示している。
【0036】
インターナルギア部5は、全体を金属素材により剛性を有するリング状に形成し、図3に示すように、内周面には、周方向Ffに沿ったインナギア5gを形成する。そして、図2に示すように、インターナルギア部5の外周面を第1アーム部15の内面に取付けて固定するとともに、インナギア5gに、上述したフレックスギア部4のアウタギア4gを噛合させる。この際、インターナルギア部5に形成するインナギア5gの一周の歯数は、フレックスギア部4に形成するアウタギア4gの一周の歯数に対して、多くなるように設定する。例示の場合、アウタギア4gの歯数を「N」に設定し、インナギア5gの歯数は「N+2」に設定した。
【0037】
この場合、フレックスギア部4の全体の外周形状は楕円形となるため、フレックスギア部4は、インナギア5gに対して180〔°〕の位置関係となる二個所の噛合位置T,Tで噛合する。このように、フレックスギア部4を、インナギア5gに対して180〔°〕の位置関係となる二個所の噛合位置T,Tで噛合させるようにすれば、フレックスギア部4を、最も、単純な形状となる楕円形状を選定できるため、例えば、三個所以上の噛合位置T…で噛合させる場合に要求される精度に対してより低く抑えることが可能となり、製造容易性及び加工容易性を高めることができるとともに、耐久性,静音性及び信頼性の向上にも寄与できる利点がある。
【0038】
回転出力機構6は、リング状に形成した出力プレート保持体12を備え、この出力プレート保持体12は、この内周面と入力回転体11の外周面間に配したベアリング(ローラベアリング)36により内周面側が支持されるとともに、この出力プレート保持体12の外周面と第1アーム部15の内面間に配したクロスローラベアリング37により外周面側が支持される。出力プレート保持体12におけるフレックスギア部4に対向する端面12sには、出力プレート部7を嵌合させるリング凹部12hを形成し、このリング凹部12hに、図2に示す出力プレート部7を嵌合させる。一方、出力プレート保持体12におけるリング凹部12hを有する端面12sに対して反対側の端面12tには、出力接続プレート38を固定する。
【0039】
また、出力プレート部7はリング形(リング板状)に形成するとともに、伝達ローラ4pr…が係合可能な複数の係合孔7sh…を形成する。係合孔7sh…は、出力プレート部7の周方向Ffに沿って所定間隔置きに形成するとともに、出力プレート部7が回転したときの伝達ローラ4pr…の変位を許容できるように、放射方向Fdに沿ったスリット状の長孔として形成する。なお、出力プレート部7をリング形に形成すれば、ケーブル類Ka,Kb…の配線空間を確保可能になるとともに、特に、筒形に形成する入力回転体11と組合わせることにより、全体構造のシンプル化及び高剛性化に寄与できる利点がある。その他、図1及び図2において、符号40…は、シールリングを示す。
【0040】
このように、回転出力機構6を構成するに際し、伝達ピン本体4pm…を軸にして偏心位置が支持される伝達ローラ4pr…,及びこの伝達ローラ4pr…が係合し、かつ周方向Ffに沿って所定間隔置きに形成するとともに、回転伝達時に伝達ローラ4pr…の変位を許容する複数の係合孔7sh…を放射方向Fdに設けたリング形の出力プレート部7を用いて構成すれば、周方向Ffの異なる位置で生じる係合孔7sh…に対する伝達ピン部4p…の変位を有効に吸収することができる。したがって、係合孔7sh…と伝達ピン本体4pm…を直接係合させた際に生じる無用な応力を排除し、伝達ピン部4p…から回転出力機構6への回転伝達を安定かつ円滑に行うことができるとともに、無用なロス分を排除して回転伝達効率をより向上させることができる。
【0041】
よって、このような基本形態に係る回転減速伝達装置100によれば、回転運動が入力する回転入力部2と、この回転入力部2と一体に回転するカム本体部3c,及びこのカム本体部3cの外周に沿って設けた内輪3biとフレキシブルな外輪3bo間に複数の転動体3bm…を介在させたオーバルシャフト部3と、インナギア5gを内周に形成し、かつ位置を固定したインターナルギア部5と、外周の周方向Ffに沿って形成し、かつインナギア5gに対して歯数を少なくして、オーバルシャフト部3の外周に付設した際に、周方向Ffにおける二個所(一般的には複数個所)の噛合位置T…でインナギア5gに噛合するアウタギア4gを有するとともに、側面から突出し、かつ周方向Ffに沿って所定間隔置きに設けた複数の伝達ピン本体4pm…及びこの伝達ピン本体4pm…を軸にして偏心位置が回動自在に支持される伝達ローラ4pr…により構成した伝達ピン部4p…を有するフレックスギア部4と、この伝達ピン部4p…が係合し、かつ周方向Ffに沿って所定間隔置きに設けるとともに、回転伝達時に伝達ピン部4p…の変位を許容する複数の係合孔7sh…を放射方向Fdに設けた出力プレート部7を有する回転出力機構6とを備えるため、薄肉の金属弾性プレート材を用いて全体形状をカップ状に形成する従来のフレクスプラインは不要になる。
【0042】
この結果、容易に製造可能となり、製造コストの大幅な削減を図れるとともに、金属疲労や動作不良等も大幅に低減できるため、耐久性及び信頼性の向上を図ることができるなど、イニシャルコスト及びランニングコストの双方における大幅なコストダウンを実現できる。しかも、従来のフレクスプラインが不要になることから、軸方向Fsにおける配設スペースのサイズダウンを図ることができ、全体構造における薄型化が可能になる。したがって、小型化に限界のあった、特に産業用ロボット等の更なる小型化を容易に実現することができる。
【0043】
また、回転減速伝達装置100を、ロボットRを構成する任意のアーム部15と他のアーム部16を連結する関節機構Mjに用いれば、関節機構Mjの薄型化(小型化)、耐久性及び信頼性の向上に寄与できるため、特に、生産ラインに設置するための最適な産業用ロボット(垂直多関節ロボットRv,水平多関節ロボット,デルタ型ロボット等)を構築できる利点がある。
【0044】
次に、このような基本形態を有する回転減速伝達装置100の動作について、図1図9を参照し、主に図10(a)~(d)に従って説明する。なお、図10(a)~(d)は原理図のため、カム本体部3cの楕円形状は誇張した細長形状で描いている。
【0045】
まず、ロボットコントローラ23により駆動モータ34をON制御すれば、駆動モータ34が作動し、駆動ギア34gが回転する。この回転運動は入力ギアリング33に伝達されるとともに、さらに、カム本体部3cを含む入力回転体11に伝達される。これにより、カム本体部3cは比較的高速で回転する。
【0046】
図10(a)は、カム本体部3cの回転が開始する前の状態を示している。この状態では、カム本体部3cが位置Psで停止し、カム本体部3cの長手方向(楕円直径の最大方向)は上下方向となる。したがって、フレックスギア部4における始点は符号Xsの位置にありインターナルギア部5の基準点Xoに一致する。図10(a)の状態では、フレックスギア部4のアウタギア4gがインターナルギア部5のインナギア5gに対して上下二個所の噛合位置T,Tで噛合する。
【0047】
次いで、カム本体部3cが、図10(a)の位置Psから矢印Dr方向に90°回転した状態を想定する。この状態を図10(b)に示す。この場合、カム本体部3cは、位置Psから時計方向へ90°回転した位置P1まで変位する。これにより、カム本体部3cの長手方向は、図10(b)に示すように左右方向となる。したがって、カム本体部3cの回転時には、アウタギア4gがインナギア5gに噛合する上側の噛合位置T(下側の噛合位置Tも同じ)が時計方向に噛み合いつつ90°移動することになる。この際、アウタギア4gの歯数はN、インナギア5gの歯数はN+2のため、フレックスギア部4の始点は、基準点Xoに対して、角度Q1=(360°/N)×2)/4だけ、反時計方向となる位置X1へ変位する。
【0048】
さらに、カム本体部3cが図10(b)の位置P1から矢印Dr方向に90°回転した状態を想定する。この状態を図10(c)に示す。この場合、カム本体部3cは位置P1から時計方向へ90°回転した位置P2まで変位する。これにより、カム本体部3cの長手方向は、図10(c)に示すように上下方向となる。したがって、フレックスギア部4の始点は、基準点Xoに対して、角度Q2=(360°/N)×2)/2だけ反時計方向となる位置X2へ変位する。
【0049】
次いで、カム本体部3cが図10(c)の状態から矢印Dr方向に180°回転した状態を想定する。この状態を図10(d)に示す。この場合、カム本体部3cは位置P2から180°回転した位置P3まで変位する。これにより、カム本体部3cの長手方向は、上下方向となり、図10(c)の位置に対して上下反転する。したがって、フレックスギア部4の始点は、基準点Xoに対して、角度Q3=(360°/N)×2)だけ反時計方向となる位置X3へ変位する。以上により、カム本体部3cは、時計方向へ1回転するとともに、フレックスギア部4は、歯数「2」だけ反時計方向へ移動する減速処理が行われる。
【0050】
さらに、減速されたフレックスギア部4の回転運動は、回転出力機構6に伝達される。即ち、フレックスギア部4から突出する伝達ピン部4p…は、出力プレート部7の係合孔7sh…に係合する偏心位置が支持される伝達ローラ4pr…を備えるため、出力プレート部7はフレックスギア部4の回転運動に完全に同調して回転する。この場合、伝達ピン部4p…は、カム本体部3cの外周面の軌跡に従って放射方向Ddに反復変位するが、この変位は、長孔により形成した係合孔7sh…により吸収される。
【0051】
そして、図2に示すように、出力プレート部7の回転運動は、入力した回転運動に対して大きく減速されるとともに、出力プレート保持体12,出力接続プレート38を含む出力プレート部7以外の回転出力機構6を介して第2アーム部16に伝達され、第2アーム部16が回転変位する。即ち、第1アーム部15を支点に高精度で回転制御される。
【0052】
次に、このような基本形態を踏まえ、本発明の好適実施形態に係る回転減速伝達装置1について、図11図14を参照して詳細に説明する。
【0053】
本実施形態は、前述した基本形態における、特に、伝達ピン部4p…と出力プレート部7を変更した点が異なる。即ち、本実施形態は、図11図14に示すように、側面から突出し、かつ周方向Ffに沿って所定間隔置きに設けた複数の伝達ピン部4p…を有するフレックスギア部4を備えるとともに、各伝達ピン部4p…が係合し、かつ周方向Ffに沿って所定間隔置きに設けるとともに、回転伝達時に、伝達ピン部4p…の変位を許容する係合孔7sh…を形成した係合部7s…を設けた出力プレート部7を有する基本構成は基本形態と同じであるが次の点が異なる。
【0054】
第一に、伝達ピン部4pを構成するに際し、基本形態では、伝達ピン本体4pmにより伝達ローラ4prの偏心位置を支持する構成を採用したが、第一実施形態では、伝達ピン部4pを構成するに際し、フレックスギア部4から突出した伝達ピン本体4pmと、この伝達ピン本体4pmを軸にして中心位置が回動自在に支持される伝達ローラ4prにより構成した。したがって、伝達ピン部4p…が係合孔7sh…に係合する際における伝達ピン部4p…と係合孔7sh…間の接触摩擦を低減できるため、フレックスギア部4から出力プレート部7への回転伝達を効率的かつ安定に行えるとともに、無用な発熱や減耗を排除して長期使用における信頼性を高めることができる点は基本形態と同様である。
【0055】
第二に、リング板状に形成した出力プレート部7の周方向Ffに沿って所定間隔置きに形成する複数の係合孔7sh…を設けるに際し、基本形態では、出力プレート部7が回転したときの伝達ローラ4pr…の変位を許容できるように、放射方向Fdに沿ったスリット状の長孔により形成したが、第一実施形態では、図11図13に示すように、伝達ピン部4p…の周面(伝達ローラ4pr…の周面)が常時当接し、かつ出力プレート部7の周方向Ff及び放射方向Fdへの当該伝達ピン部4p…の変位を許容する複方向係合孔7sm…により形成した。
【0056】
即ち、図13に示すように、各複方向係合孔7sm…は、出力プレート部7の周方向Ffに沿って、Qs〔°〕(例示は、14.4〔°〕)間隔毎に形成するため、例えば、約1/4周の範囲Zsでは、七つの複方向係合孔7sm…が形成される。したがって、今、図13に示すように、最上部に位置する複方向係合孔7smにおいて、伝達ローラ4prの上端位置が当該複方向係合孔7smの内面上端となる当接位置X1で当接しているものとする。そして、出力プレート部7の回転方向が時計回りであるとすれば、カム本体部3cがQs〔°〕だけ回転することにより、伝達ローラ4prと複方向係合孔7smの当接位置X2は、伝達ローラ4prから見て反時計方向へQs〔°〕だけ角度変位する。同様に、カム本体部3cが、Qs〔°〕×2だけ回転することにより、伝達ローラ4prと複方向係合孔7smの当接位置X3は、伝達ローラ4prから見て反時計方向へQs〔°〕×2だけ変位するとともに、さらに、カム本体部3cが、Qs〔°〕×3だけ回転することにより、伝達ローラ4prと複方向係合孔7smの当接位置X4は、伝達ローラ4prから見て反時計方向へQs〔°〕×3だけ変位する。そして、カム本体部3cが、Qs〔°〕×6だけ回転すれば、伝達ローラ4prと複方向係合孔7smの当接位置X7は、伝達ローラ4prから見て反時計方向へQs〔°〕×6だけ変位し、約1/4周する。なお、X5,X6も途中の当接位置を示している。
【0057】
したがって、複方向係合孔7smの形状は、カム本体部3cが回転する360〔°〕のいずれの角度位置においても、伝達ローラ4prの外周面が複方向係合孔7smの内周面に当接、特に、均一な圧力により常時当接するように形成すればよい。このため、複方向係合孔7smを形成するに際しては、高い加工精度(形状精度)が要求されるが、周方向Ffの異なる位置で生じる係合孔7sh…に対する伝達ピン部4p…の周方向Ff及び放射方向Fdの変位を、いわばカム方式により吸収できるため、係合孔7sh…と伝達ピン部4p…を係合させた際に生じる無用な応力を排除し、伝達ピン部4p…から出力プレート部7に対する安定かつ円滑な回転伝達を行うことができるとともに、特に、剛性が高まることによる精度の高い回転伝達を行うことができる利点がある。
【0058】
また、図14は、本実施形態において使用するフレックスギア部4を示しているが、基本形態に対して、各切込部4c…を、より広く形成するとともに、各切込部4c…間に、各伝達ピン本体4pm…を配した点を異ならせた変更例として示している。その他、図11図14において、図1図10と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0059】
よって、このような本実施形態に係る回転減速伝達装置1によれば、特に、基本構成として、回転運動が入力する回転入力部2と、この回転入力部2と一体に回転するカム本体部3c,及びこのカム本体部3cの外周に沿って設けた内輪3biとフレキシブルな外輪3bo間に複数の転動体3bm…を介在させたオーバルシャフト部3と、インナギア5gを内周に形成し、かつ位置を固定したインターナルギア部5と、外周の周方向Ffに沿って形成し、かつインナギア5gに対して歯数を少なくして、オーバルシャフト部3の外周に付設した際に、周方向Ffにおける複数の噛合位置T…でインナギア5gに噛合するアウタギア4gを有するとともに、側面から突出し、かつ周方向Ffに沿って所定間隔置きに設けた複数の伝達ピン部4p…を有するフレックスギア部4と、各伝達ピン部4p…が係合し、かつ周方向Ffに沿って所定間隔置きに設けるとともに、回転伝達時に伝達ピン部4p…の周方向Ff及び/又は放射方向Fdの変位を許容する係合孔7sh…を形成した係合部7s…を設けた出力プレート部7を有する回転出力機構6とを備えてなるため、前述した基本形態に係る回転減速伝達装置100と同様の作用効果を享受することができる。
【0060】
即ち、薄肉の金属弾性プレート材を用いて全体形状をカップ状に形成する従来のフレクスプラインは不要になるため、容易に製造可能となり、製造コストの大幅な削減を図れるとともに、金属疲労や動作不良等も大幅に低減できるため、耐久性及び信頼性の向上を図ることができるなど、イニシャルコスト及びランニングコストの双方における大幅なコストダウンを実現できる。また、従来のフレクスプラインが不要になるため、軸方向Fsにおける配設スペースのサイズダウンを図ることができる。したがって、全体構造における薄型化が可能になり、小型化に限界のあった、特に産業用ロボット等の更なる小型化を容易に実現できる。
【0061】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0062】
例えば、回転出力機構6には、回動自在に支持され、かつ端面12sに、出力プレート部7を保持するリング凹部12hを形成したリング形の出力プレート保持体12を設けた形態を例示したが、同一の機能を発揮できる他の構成により置換する場合を排除するものではない。また、各伝達ピン4p…は、アウタギア4gにおける各歯部(山部)4gsの位置に対応して設けた場合を例示したが、必ずしも位置を対応させる必要はないとともに、各伝達ピン4p…の数量及び間隔は、各歯部(山部)4gs…の数量と間隔に一致させる必要はない。一方、入力する回転運動として駆動モータ34の回転運動を例示したが、他の各種の回転運動源を適用できる。さらに、各部の形成素材として金属素材を例示したが合成樹脂素材や繊維強化複合素材等であってもよいし、弾性が不要となる部品についてはセラミックス素材等であってもよく、素材の種類は限定されない。なお、フレックスギア部4の内周面であって、各歯部(山部)4gs…間の谷部4gd…に対応するそれぞれの位置に、U形形状となる切込部4c…を放射方向Fdに形成した場合を例示したが、切込部4c…の形状や位置(間隔)は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る回転減速伝達装置は、産業用ロボットのアーム部を連結する関節機構をはじめ、入力する回転運動を減速して出力する機能を必要とする各種回転減速伝達装置として利用できる。
【符号の説明】
【0064】
100:回転減速伝達装置,1:回転減速伝達装置,2:回転入力部,3:オーバルシャフト部,3c:カム本体部,3bi:内輪,3bo:外輪,3bm…:転動体,4:フレックスギア部,4g:アウタギア,4p…:伝達ピン部,4pm…:伝達ピン本体,4pr…:伝達ローラ,5:インターナルギア部,5g:インナギア,6:回転出力機構,7:出力プレート部,7s…:係合部,7sh…:係合孔,7sm…:複方向係合孔,11:入力回転体,11i:内周面,11o:外周面,15:任意のアーム,16:他のアーム.Ff:周方向,Fd:放射方向,Fs:軸方向,T…:噛合位置,Ka:ケーブル類,Kb:ケーブル類,S:配線空間,R:ロボット,Mj:関節機構
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