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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】食品の冷凍方法及び食品の冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/36 20060101AFI20221021BHJP
   A23B 4/06 20060101ALI20221021BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20221021BHJP
   A23L 17/40 20160101ALI20221021BHJP
【FI】
A23L3/36 A
A23B4/06 501C
A23B4/06 501G
A23L17/00 B
A23L17/40 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018148619
(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2020022390
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】504139846
【氏名又は名称】下田 一喜
(73)【特許権者】
【識別番号】501376338
【氏名又は名称】株式会社エイディーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】下田 一喜
【審査官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-091154(JP,A)
【文献】国際公開第2017/085946(WO,A1)
【文献】特開昭60-192578(JP,A)
【文献】特開昭61-166352(JP,A)
【文献】特開2007-244275(JP,A)
【文献】特開2009-183157(JP,A)
【文献】特開昭59-213355(JP,A)
【文献】特開2017-026197(JP,A)
【文献】MgCl2 Magnesium Chloride,Technical Manual,North American Salt Company,2013年,[検索日:2022.04.05],https://freezgard.com/sites/default/files/mgcl2_technical_manual.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/36
A23L 17/00
F25D 8/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を塩分濃度が5%以上かつ温度が-18℃以下の塩水に直接に浸して凍結させ
前記食品が、閉状態の二枚貝、又は、さばかれておらず、鱗が付いた状態の魚類であり、
前記塩水を貯留している容器に冷媒を供給して前記塩水の温度を-18℃以下にし、
前記容器は、当該容器の底面に開口する排出口と、当該排出口を開閉可能な開閉部材とを有しており、
圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び前記容器に設けられた冷却流路を順に含む循環路に前記冷媒を循環させて前記塩水の温度を-18℃以下にし、
前記冷却流路は、前記容器の壁部の全周に亘って設けられており、
前記凝縮器と前記膨張弁との間と、前記冷却流路と前記圧縮機との間とを接続しており、前記冷媒を貯留する冷媒貯留部を有している圧力流路が設けられており、
前記圧力流路に対して並列に、前記凝縮器と前記膨張弁との間と、前記冷却流路と前記圧縮機との間とを接続しており、第2の膨張弁を有している自冷流路が設けられており、
前記圧縮機と前記凝縮器との間と、前記膨張弁と前記冷却流路との間とを接続しており、前記冷媒の流量を調整するホット弁を有しているホット流路が設けられており、
前記容器内の前記塩水の温度を検出する温度センサが設けられており、
前記温度センサの検出値に基づいて前記冷媒の温度を制御する
食品の冷凍方法。
【請求項2】
前記塩水は、NaClの濃度が20%以上25%以下であり、温度が-22℃以上-18℃以下である
請求項に記載の食品の冷凍方法。
【請求項3】
前記塩水は、MgClの濃度が15%以上40%以下であり、温度が-35℃以上-18℃以下である
請求項に記載の食品の冷凍方法。
【請求項4】
前記塩水は、CaClの濃度が19%以上36%以下であり、温度が-49℃以上-18℃以下である
請求項に記載の食品の冷凍方法。
【請求項5】
ポンプにより、前記容器の内壁面に開口する回収口から前記容器内の塩水を取り出して、前記容器の内壁面に開口するとともに前記回収口とは鉛直方向の位置が異なる供給口から前記容器内へ塩水を戻す
請求項1~4のいずれか1項に記載の食品の冷凍方法。
【請求項6】
前記回収口及び前記供給口は、前記容器の底面から離れている
請求項5に記載の食品の冷凍方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、食品の冷凍方法及び食品の冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の保存及び/又は輸送等のために食品を凍結させる方法が知られている(例えば特許文献1及び2)。
【0003】
特許文献1では、従来技術として、魚類を-20℃以下の冷媒液に浸漬させる方法を挙げている。この冷媒液としては、プロピレングリコール、食塩水溶液、塩化カルシウム水溶液が挙げられている。そして、特許文献1では、従来の凍結方法では、冷媒液が魚類の組織中に侵入し、魚類の風味が損なわれることを課題として、多価金属塩とゾル溶液とからなる被膜で食品を被覆した状態で食品を冷媒液に浸漬させる方法を提案している。
【0004】
特許文献2では、真空パックした食品を-5℃~-20℃の不凍流体に浸漬させる方法を開示している。不凍流体としては、エタノール水溶液、塩水、糖水溶液若しくはこれらの混合溶液又は二酸化炭素が挙げられている。また、NaCl水溶液について、濃度と凝結温度との関係が図示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭59-34876号公報
【文献】特開2016-39787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
食品をフィルムなどで包装してから凍結させる場合、その包装が手間となる。また、食品を凍結させるための不凍流体としてアルコールを用いた場合においては、アルコールが作業員に及ぼす影響に配慮しなければならず、例えば、換気を行う必要がある。これらの結果、食品の保存及び/又は輸送のコストが増大する。従って、簡便に食品を冷凍できる冷凍方法及び冷凍装置が提供されることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る食品の冷凍方法は、食品を塩分濃度が5%以上かつ温度が-18℃以下の塩水に直接に浸して凍結させる。
【0008】
一例において、前記食品が、閉状態の二枚貝である。
【0009】
一例において、前記食品が、さばかれておらず、鱗が付いた状態の魚類である。
【0010】
一例において、前記塩水は、NaClの濃度が20%以上25%以下であり、温度が-22℃以上-18℃以下である。
【0011】
一例において、MgClの濃度が15%以上であり、温度が-35℃以上-18℃以下である。
【0012】
一例において、CaClの濃度が19%以上36%以下であり、温度が-49℃以上-18℃以下である。
【0013】
一例において、前記塩水を貯留している容器に冷媒を供給して前記塩水の温度を-18℃以下にする。
【0014】
一例において、圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び前記容器に設けられた冷却流路を順に含む循環路に前記冷媒を循環させる。
【0015】
一例において、前記容器は、当該容器の底面に開口する排出口と、当該排出口を開閉可能な開閉部材とを有している。
【0016】
一例において、ポンプにより、前記容器の内壁面に開口する回収口から前記容器内の塩水を取り出して、前記容器の内壁面に開口するとともに前記回収口とは鉛直方向の位置が異なる供給口から前記容器内へ塩水を戻す。
【0017】
本開示の一態様に係る食品の冷凍装置は、塩水を貯留する容器と、前記塩水を冷却する冷媒を前記容器に供給する冷媒供給部と、を有している。
【発明の効果】
【0018】
上記の手順又は構成によれば、簡便に食品を冷凍できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の実施形態に係る食品の冷凍装置の全体構成を示す模式図。
図2図1の冷凍装置の冷媒供給部の構成を示す模式図。
図3図3(a)は図1のIIIa-IIIa線における断面図、図3(b)は変形例を示す断面図。
図4】NaClに関して塩分濃度と凝固点との関係を示す図。
図5】冷凍対象の食品としての二枚貝を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[冷凍装置の全体構成]
図1は、本開示の実施形態に係る冷凍装置1の全体構成を示す模式図である。
【0021】
冷凍装置1は、食品101を-18℃以下の塩水103に直接に浸漬させることによって食品101を凍結させる。このような冷凍方法を実現するために、冷凍装置1は、例えば、主要な構成要素として、塩水103を貯留する容器3と、塩水103を冷却するための冷媒を容器3へ供給する冷媒供給部5とを有している。さらに、冷凍装置1は、冷媒供給部5からの冷媒が流れる冷却流路7と、容器3内で塩水103を循環させるポンプ9と、塩水103の温度を検出する温度センサ11と、冷媒供給部5を制御する制御部13とを有している。
【0022】
[食品]
冷凍の対象とされる食品(食材を含む。)は、種々のものとされてよい。ただし、食品101は、塩水103に直接に触れることから、この接触によって品質が著しく低下しないものとされる。例えば、食品は、魚介類及び/又は生鮮食品とされてよい。生鮮食品としては、例えば、鮮魚、精肉及び青果を挙げることができる。
【0023】
図1及び後述の図5では、食品101の一例として、殻を有したままの二枚貝が例示されている。確認的に記載すると、二枚貝は、2枚の殻を開閉可能に有している。そして、生きている二枚貝を人が扱うときには、通常、二枚貝は閉状態になる。また、後述する図3(b)では、鮮魚が例示されている。この鮮魚は、さばかれておらず、また、鱗が付いたままの状態とされている。
【0024】
[塩水]
塩水103は、確認的に記載すると、塩が水(HO)に溶解した液体(水溶液)である。塩は、例えば、食塩(食用塩)とされてよい。一般に、食塩の代表的な成分はNaClであり、例えば、NaClは、食塩に97%以上含まれている。また、塩は、化学でいう塩、すなわち、酸由来の陰イオン(アニオン)と塩基由来の陽イオン(カチオン)とがイオン結合した化合物であってもよい。このような塩としては、例えば、酸性塩(例えば、NaHCO、NaHSO、NaHPO又はNaHPO)、塩基性塩(例えば、MgCl(OH)又はMgCl・Mg(OH))、正塩(例えば、NaCl、CaCl、NHCl、CHCOONa又はCuSO)を挙げることができる。
【0025】
また、塩は、海水に含まれる塩から選択されてもよい。海水に含まれる塩としては、例えば、NaCl、MgCl(にがり)、MgSO、CaSO、KCl及びCaClを挙げることができる。なお、上述した種々の塩の混合物が塩として用いられてもよい。これらの塩は、過剰摂取は別として、食品衛生法において健康を損なうおそれのない添加物として挙げられている。
【0026】
塩水103の塩分濃度は、例えば、海水の塩分濃度(約3.5%)よりも高くされている。例えば、上述した種々の塩を用いた場合において、塩水103の塩分濃度は、5%以上である。これにより、塩水103の凝固点を降下させて、食品101に含まれる水分の凝固点よりも低い温度の塩水103を流動させることができる。
【0027】
なお、塩水103は、意図せずに含まれてしまう、又は意図的に添加された微量(例えば1%以下)の塩以外の成分を含んでいてもよい。塩水103の塩分濃度が本開示において例示した範囲の値であるか否かを調べる場合において、そのような塩以外の成分の存在を無視できないときは、塩分濃度は、例えば、塩以外の成分を除いて特定した濃度とされてよい。すなわち、塩分濃度は、HO及び塩の合計質量に対する塩の質量%とされてよい。
【0028】
また、食品101を塩水103に浸漬させると、食品101の水分又は食品101に付着している物質等によって容器3内の塩水103の塩分濃度は変化する。塩水103の塩分濃度が上記に例示した範囲の値であるか否かを判定する場合において、このような食品101の浸漬の影響を無視できないときは、例えば、食品101を浸漬させる前の塩分濃度について判定されてよい。
【0029】
塩水103の温度は、既述のように-18℃以下とされる。この温度であれば、食品101の急速凍結が容易になる。また、塩水103の温度は、例えば、-22℃以上とされてよい。この温度であれば、塩水103の凝固を抑制することが容易である。
【0030】
容器3内の塩水103は、例えば、基本的に凍結しておらず、全部又は大部分(例えば90質量%以上)が液状である。別の観点では、塩水103は、流動性を有している。ただし、塩水103は、一部が凍結していても構わない。例えば、容器3のうち冷媒供給部5の冷媒に近い位置(図示の例では側面)に塩水103の氷からなる被膜が形成されてもよいし、塩水103が、比較的微細な氷の粒が混合されたアイススラリー状となっていてもよい。
【0031】
塩水101に用いられる塩の種類、塩水101の塩分濃度及び塩水103の温度の組み合わせの一例を挙げる。
【0032】
例えば、食塩又はNaClを用いた場合において、塩分濃度は、5%以上26%以下、20%以上26%以下、20%以上25%以下、又は23.5%以上24.5%以下である。上記のいずれかの塩分濃度において、塩水103の温度は、-24℃以上-18℃以下、-22℃以上-18℃以下、又は-22℃以上-19℃以下である。
【0033】
また、例えば、MgClを用いた場合において、塩分濃度は、5%以上40%以下、10%以上40%以下又は15%以上である。上記のいずれかの塩分濃度において、塩水103の温度は、-37℃以上-18℃以下、-35℃以上-18℃以下、-37℃以上-27℃以下(-32℃±5℃)、又は-35℃以上-29℃以下(-32℃±3℃)である。
【0034】
また、例えば、CaClを用いた場合において、塩分濃度は、5%以上36%以下、10%以上36%以下又は19%以上36%以下である。上記のいずれかの塩分濃度において、塩水103の温度は、-51℃以上-18℃以下、-49℃以上-18℃以下、-51℃以上-41℃以下(-46℃±5℃)、又は-49℃以上-43℃以下(-46℃±3℃)である。
【0035】
[食品の浸漬方法]
食品101の塩水103への浸漬方法は、食品101の種類、大きさ、及び同時に浸漬される食品101の数等の種々の事情に応じて適宜な方法とされてよい。図示の例では、複数の食品101が籠105に収容された状態で、籠105ごと食品101が容器3内へ浸漬される態様が例示されている。
【0036】
籠105は、例えば、金網によって構成されている。籠105は、例えば、6面を有しており、そのうち一面は食品101を出し入れ可能に開閉する。なお、籠105は、上面を有していないものであってもよい。そして、籠105は、例えば、その底面が容器3の底面から浮いた状態で保持される。なお、籠105の上面は、塩水103に沈められてもよいし、沈められなくてもよい。食品101の冷凍後、籠105は引き揚げられる。
【0037】
この他、例えば、食品101を保持する器具を用いずに、直接に食品101を容器3へ投入してもよい。また、例えば、籠105に代えて、食品101の一部を把持する器具が用いられてもよいし、食品101が載置される金網又は複数の孔を有する板状部材が用いられてもよい。
【0038】
食品101を塩水103に浸漬する時間は、食品101の種類及び塩水103の温度等に応じて適宜に設定されてよい。例えば、本願発明者の実験では、食品101としてのカキ(二枚貝の一例)は、10分未満で凍結が完了した。なお、本願発明者の調べでは、一般的な瞬間凍結は25分~70分とされている。すなわち、-18℃以下の塩水103に食品101を直接に浸漬させる方法は、短時間での凍結が可能である。
【0039】
[容器]
容器3は、塩水103を貯留するとともに、貯留している塩水103に食品101を浸漬可能である限り、適宜な形状及び大きさで、適宜な材料により構成されてよい。図1では、容器3の形状として、上方が開放された概ね直方体状を示しているが、これは一例に過ぎない。また、容器3は、2層構造(後述する図3(b)参照)とされたりしてもよい。容器3の深さ及び平面視における径等の各種寸法は適宜に設定されてよい。
【0040】
容器3の材料も適宜なものとされてよい。例えば、後述するように、本実施形態では、容器3の外側から容器3内の塩水103を冷却することから、容器3の材料として、伝熱性が高い材料を用いてよい。このような材料としては、例えば、金属を挙げることができる。逆に、特に図示しないが、例えば、容器3内の塩水103を直接に冷却するような場合においては、容器3の材料として、断熱性が高い材料を用いてよい。このような材料としては、例えば、セラミック又は発泡プラスチック(例えば発泡スチロール)を挙げることができる。また、容器3の内側と外側とで伝熱性が異なる材料が用いられてもよい(後述する図3(b)参照)。
【0041】
[冷媒供給部]
図2は、冷媒供給部5の構成を示す模式図である。なお、この図では、冷媒の流れる方向を二等辺三角形で示している。
【0042】
冷媒供給部5は、例えば、冷却流路7の一方の端部7aから流入した冷媒を冷却して冷却流路7の他方の端部7bへ流出させる。別の観点では、冷媒供給部5は、冷媒が循環する循環路6を冷却流路7と構成する主流路15を有している。また、冷媒供給部5は、例えば、主流路15の一部に対して並列になるように両端が主流路15に接続されたホット流路17、自冷流路19及び圧力流路21を有している。さらに、冷媒供給部5は、冷媒供給部5の各部を制御するためのサーモスタット47を有している。
【0043】
冷媒供給部5が冷却流路7に供給する冷媒の温度及び流量は、塩水103の目標温度、容器3の構成、冷却流路7の構成及び冷凍装置1の環境温度等に応じて適宜に設定及び制御されてよい。冷媒の温度及び/又は流量は、例えば、冷凍装置1の作業者及び/又は製造者によって設定された値に制御されてもよいし、塩水103の検出温度が目標値に収束するようにフィードバック制御されてもよい。なお、本実施形態では、後者を例に取る。また、作業者等による冷媒の温度及び/又は流量の設定可能な範囲、又は塩水103の検出温度及び目標温度の偏差に応じて冷媒の温度及び/又は流量が取り得る目標値の範囲も適宜に設定されてよい。例えば、冷媒の温度は、-40℃以上-20℃以下(ただし、塩水103の目標温度以下)の範囲で変動するように設定又は制御されてよい。
【0044】
冷媒の種類は冷媒供給部5(冷凍装置1)に要求される冷却能力等に応じて適宜に設定されてよい。例えば、冷媒として、複数種類(例えば5種類)のフロン、アルゴン及びクリプトンを適宜な混合比で混合したものを利用してよい。このような冷媒を用いると、例えば、冷媒の温度を-40℃以上-20℃以下とすることが容易である。
【0045】
(主流路の構成)
主流路15は、冷媒の冷却を直接に担う部分である。主流路15は、例えば、冷媒が流入する端部7aから冷媒を流出させる端部7bへ順に、アキュムレータ23、圧縮機25、凝縮器27、温度センサ29、ドライヤー31、サイトグラス33及び膨張弁35を有している。
【0046】
アキュムレータ23は、例えば、流入した冷媒から液状の冷媒を分離し、気体状の冷媒のみを圧縮機25へ供給する。なお、圧縮機25及びアキュムレータ23の組み合わせを圧縮機と捉えてもよい。
【0047】
圧縮機25は、気体状となっている冷媒を圧縮する。圧縮機25の能力(最高吐出圧力等)は適宜に設定されてよい。
【0048】
凝縮器27は、圧縮機25によって圧縮された冷媒を冷却して凝縮させる。図2では、凝縮器27として空冷式のものが示されている。具体的には、例えば、凝縮器27は、冷媒が流れるラジエータ27aと、ラジエータ27aへ送風を行うファン27bとを有している。
【0049】
温度センサ29は、冷媒の温度を検出する。
【0050】
ドライヤー31は、凝縮器27によって液状とされた冷媒から水分を除去する。
【0051】
サイトグラス33は、液状の冷媒を視認可能とするための窓を構成する。
【0052】
膨張弁35は、凝縮器27によって液状とされた冷媒の流量を調整して冷却流路7(端部7b)へ流れる冷媒の圧力を低下させる(冷媒を膨張させる。)。なお、膨張弁35に代えて、又は加えて、キャピラリーチューブ(広義の膨張弁の一種)が設けられてもよい。
【0053】
(ホット流路の構成)
ホット流路17は、例えば、一端が圧縮機25と凝縮器27との間に接続され、他端が膨張弁35と冷却流路7との間に接続されている。ホット流路17は、例えば、凝縮器27によって冷却される前の冷媒を冷却及び膨張がなされた冷媒に混ぜることにより、冷却流路7に供給される冷媒の温度を調節することに寄与する。
【0054】
ホット流路17は、例えば、ホット流路17を流れる冷媒の流量を調整可能なホット弁37を有している。ホット弁37によって冷媒の流量を調整することによって、冷却流路7に供給される冷媒の温度を調節することができる。
【0055】
(自冷流路の構成)
自冷流路19は、例えば、一端が凝縮器27と膨張弁35との間(より具体的には、例えば、サイトグラス33と膨張弁35との間)に接続され、他端が冷却流路7と圧縮機25との間(より具体的には、例えば、端部7aとアキュムレータ23との間)に接続されている。自冷流路19は、例えば、凝縮器27によって冷却されつつも膨張弁35から排出されずに滞留している冷媒を更に冷却すること、及び/又は主流路15の圧力を低減して機器(例えば圧縮機25)の負荷を低減することに寄与する。
【0056】
自冷流路19は、例えば、膨張弁35側から順に、自冷弁39と、自冷膨張弁41とを有している。自冷弁39の開閉によって自冷流路19への冷媒の流れが許容又は禁止される。自冷膨張弁41によって冷媒の流量を調整することによって、主流路15及び/又は自冷流路19の温度及び/又は圧力が調整される。
【0057】
(圧力流路の構成)
圧力流路21は、例えば、一端が凝縮器27と膨張弁35との間(より具体的には、例えば、温度センサ29とドライヤー31との間)に接続され、他端が冷却流路7と圧縮機25との間(より具体的には、例えば、自冷流路19の接続位置とアキュムレータ23との間)に接続されている。圧力流路21は、例えば、主流路15の圧力を低減して機器(例えば圧縮機25)の負荷を低減することに寄与する。
【0058】
圧力流路21は、例えば、冷媒貯留部43と、圧力計45とを有している。冷媒貯留部43は、特に図示しないが、例えば、冷媒を貯留するアキュムレータと、アキュムレータの上流にて冷媒の流れを許容及び禁止するバルブと、アキュムレータの下流にて冷媒の流れを許容及び禁止するバルブとを有している。圧力計45は、冷媒貯留部43の上流側の圧力と、下流側の圧力とを検出する。そして、例えば、両圧力の差が閾値を超えると、凝縮器27の下流の冷媒がアキュムレータに貯留されて主流路15の圧力が低減され、両圧力の差が閾値を下回ると、アキュムレータへの冷媒の貯留が禁止され、また、アキュムレータの冷媒が圧縮機25の上流へ戻される。
【0059】
(サーモスタット)
サーモスタット47は、例えば、冷却流路7へ供給される冷媒の温度が目標値に収束するように冷媒供給部5の各部の動作を制御する。具体的には、例えば、サーモスタット47は、温度センサ29の検出した冷媒の温度に基づいて、膨張弁35及び/又はホット弁37等の開度を制御する。冷媒の温度の目標値は、例えば、制御部13によって入力される。なお、図示の例では、サーモスタット47と制御部13とを別個のものとして図示しているが、両者は区別できない構成であってもよい。
【0060】
[冷却流路]
冷却流路7は、例えば、容器3の外側(図1の例)、容器3の板厚内(後述する図3(b)参照)、及び容器3の内側(塩水103が貯留されている空間)の少なくともいずれかに位置する。冷却流路7は、容器3の内側に位置する場合、容器3を介さずに塩水103を直接に冷却できるから、容器3の内面(底面及び/又は壁面)に隣接していてもよいし、離れていてもよい。また、冷却流路7は、容器3を構成する部材とは別の部材によって構成されていてもよいし(図1の例)、容器3と一体的に形成されていてもよい(後述する図3(b)参照)。なお、本開示において、冷却流路7が容器3に設けられていると表現する場合には、上記に例示した態様のいずれの態様又はその組み合わせであってもよいものとする。
【0061】
冷却流路7の形状(経路)は適宜に設定されてよい。例えば、冷却流路7は、容器3の側面及び/又は底面に沿って、螺旋状、ミアンダ状又は渦巻状に延びていてもよい。また、冷却流路7は、例えば、容器3の側面と同一の広さを有する薄型直方体状(板状)に形成され、その対角線上に流入口と流出口とが設けられるなど、細長く延びる概念に合致しない態様であってもよい。
【0062】
図1に示す例では、冷却流路7は、容器3の外側に位置するパイプによって構成されている。このパイプは、容器3を囲むように鉛直軸回りに螺旋状に延びており、容器3の側面部の外面に隣接している。ここでいう隣接は、容器3に対して当接した状態であってもよいし、容器3と比較的小さな隙間(例えば冷却流路7の半径以下)を介して離れている状態であってもよい。
【0063】
別の観点では、冷却流路7は、例えば、一端(端部7b)から他端(端部7a)へ、全体として下方へ延びていくように延びている。端部7bは、例えば、冷媒供給部5から冷媒が供給される端部である。この場合、例えば、容器3の上部ほど塩水103の温度は高くなりやすいことから、冷媒供給部5によって冷却された直後の冷媒を容器3の上部へ供給することによって、効率的に冷却を行うことができる。ただし、冷媒が供給される端部の上下関係は、上記とは逆であってもよいし、同一の高さであってもよい。
【0064】
冷却流路7を構成する部材(例えばパイプ)の材料は、適宜に設定されてよい。図示の例のようにパイプを介して冷媒の温度を容器3(塩水103)に伝える態様においては、パイプは、伝熱性が高い材料(例えば金属)によって構成される。また、冷却流路7の断面積及び冷却流路7の密度(例えば螺旋のピッチ)等の各種寸法も適宜に設定されてよい。
【0065】
[ポンプ]
ポンプ9(図1)は、例えば、塩水103の攪拌に寄与する。この攪拌は、例えば、食品101の周囲における塩水103の流れを積極的に生じさせること、及び/又は容器3内の塩水103の温度を均一化させることに寄与する。
【0066】
ポンプ9は、容器3の内面に開口する回収口3a(図3(a)参照)から容器3内の塩水103を取り出し、容器3の内面に開口する供給口3b(図3(a)参照)から容器3内へ塩水103を戻す。回収口3a及び供給口3bの開口位置及び開口面積は適宜に設定されてよい。
【0067】
図示の例では、回収口3a及び供給口3bは、容器3の互いに同一の側面(内壁面)において、水平方向の互いに同一の位置、かつ鉛直方向の互いに異なる位置に開口している。より具体的には、例えば、回収口3aは、容器3の側面の下側部分(例えば容器3の底面から容器3の深さの1/3までの範囲)に位置している。ただし、回収口3aは、例えば、容器3の底面から一定距離(例えば回収口3aの半径以上)で離れている。また、供給口3bは、容器3の側面の上側部分(例えば容器3の上縁から容器3の深さの1/3までの範囲)に位置している。換言すれば、供給口3bは、回収口3aよりも上方に位置している。
【0068】
なお、回収口3a及び供給口3bは、図示の例とは異なり、互いに異なる側面に開口していてもよいし、水平方向の位置が互いに異なっていてもよいし、互いに同一の高さに位置していてもよい。また、回収口3a及び/又は供給口3bは、複数設けられていてもよいし、容器3の側面に代えて、又は加えて、容器3の底面に設けられていてもよい。供給口3bは、塩水103の液面よりも上に位置してもよく、さらには、容器3とは別個に設けられてもよい。回収口3a及び/又は供給口3bの数と、ポンプ9の数(1つとは限らない。)とは異なっていてもよい。
【0069】
ポンプ9の方式は適宜なものとされてよい。例えば、ポンプ9は、ロータリポンプであってもよいし、プランジャポンプであってもよいし、定容量ポンプであってもよいし、可変容量ポンプであってもよい。ポンプ9の吐出能力等は適宜に設定されてよい。また、ポンプ9を駆動する電動機は、直流モータ、交流モータ、誘導モータ、同期モータ、サーボモータ等の適宜な方式のものとされてよい。ポンプ9は、冷凍装置1の稼働中において常時駆動されてもよいし、必要なときだけ駆動されてもよい。
【0070】
[温度センサ]
温度センサ11は、塩水103の温度に応じた信号を制御部13へ出力する。温度センサ11の方式は適宜なものとされてよい。例えば、温度センサ11は、測定対象物(ここでは塩水103)に接する接触式のものであってもよいし(図示の例)、測定対象物に接しない非接触式のものであってもよい。前者としては、例えば、サーミスタ、熱電対及び測温抵抗体が挙げられる。後者としては、例えば、赤外線式のものが挙げられる。温度センサ11の位置、別の観点では、温度が測定される位置は適宜に設定されてよい。ここでいう位置は、例えば、容器3の深さ方向の位置、容器3の内面からの距離、回収口3a及び供給口3bに対する位置等である。また、温度センサ11は、複数位置に設けられ、その平均値等が利用されてもよい。
【0071】
[制御部]
制御部13は、例えば、特に図示しないが、CPU、RAM、ROM及び外部記憶装置を含むコンピュータによって構成されている。CPUがROM及び外部記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、種々の制御乃至は演算を担う複数の機能部が構成される。
【0072】
制御部13は、例えば、不図示の入力装置を介して塩水103の目標温度を受け付ける。そして、制御部13は、例えば、温度センサ11の検出温度が目標温度に収束するように冷媒供給部5のフィードバック制御を行う。具体的には、例えば、制御部13は、塩水103の検出温度が塩水103の目標温度よりも高い場合は、その差に応じた適宜なゲインで、サーモスタット47に指示する冷媒の目標温度を低くする。逆に、制御部13は、塩水103の検出温度が塩水103の目標温度よりも低い場合は、その差に応じた適宜なゲインで、サーモスタット47に指示する冷媒の目標温度を高くする。
【0073】
なお、単純な比例制御ではなく、PI(Proportional-Integral)制御、PD(Proportional-Differential)制御、PID制御が行われてもよい。また、例えば、温度差が所定の閾値を上回ったときに冷媒供給部5の目標温度を変化させるようなファジー制御が行われてもよい。上記では、制御部13によるメインループ内に、サーモスタット47によるマイナーループが形成されているが、マイナーループが廃されて、塩水103の検出温度と塩水103の目標温度との偏差に基づいて直接に冷媒供給部5の構成要素(例えば膨張弁35及び/又はホット弁37等)が制御されてもよい。逆に、制御部13が設けられずに、作業者が冷媒供給部5に対して冷媒の目標温度等を設定することによって、塩水103の温度が目標値に維持されてもよい。
【0074】
[容器の底部]
図3(a)は、図1のIIIa-IIIa線における断面図である。
【0075】
容器3は、例えば、当該容器3の底面に開口する排出口3cと、当該排出口3cを開閉可能な開閉部材3dとを有している。排出口3cは、例えば、使用済みの塩水103及び容器3の底部に沈んだ塵107の排出に寄与する。
【0076】
排出口3cの位置及び開口面積は適宜に設定されてよい。例えば、排出口3cは、容器3の底面の角部に位置していてもよいし、容器3の底面の中央に位置していてもよいし、回収口3a及び/又は供給口3bと比較的離れていてもよいし、比較的近くてもよい。また、容器3の底面は、排出口3cの位置が最も低くなるように傾斜を有していてもよい。なお、本実施形態では、底面に排出口3cを設けているが、側面下部に排出口3cを設けてもよいし、容器3が上下を逆さにすることが容易な程度に小型であれば、排出口3cを設けなくてもよい。
【0077】
開閉部材3dの形状及び開閉方式は適宜なものとされてよい。例えば、開閉部材3dは、蓋又は栓のように脱着によって排出口3cを開閉するものであってもよいし、ポペット式又はスライド式の弁体のように容器3に対して移動することによって排出口3cを開閉するものであってもよい。着脱される開閉部材3dは、容器3の外側から着脱されてもよいし、容器3の内側から着脱されてもよい。また、着脱は適宜な方法によってなされてよく、例えば、螺合によってなされたり、内側から排出口3cに対して挿入かつ係合されることによってなされたりしてよい。弁体のように駆動される開閉部材3dは、人力によって駆動されてもよいし、アクチュエータによって駆動されてもよい。
【0078】
[変形例]
図3(b)は、変形例に係る冷凍装置の構成を示す模式図であり、図3(a)に相当している。ここで示す変形は、具体的には、以下のとおりである。
【0079】
(食品)
既述のように、食品101は適宜なものとされてよく、図1では二枚貝が例示されていたのに対して、図3(b)では鮮魚が例示されている。
【0080】
(容器及び冷却流路)
この変形例では、容器203は、内層203eと外層203fとを有している。容器203では、内層203eと外層203fとの間に冷却流路7が形成されている。換言すれば、冷却流路7は、容器203の板厚内に設けられている。また、別の観点では、冷却流路7の内面は、内層203eの外面及び外層203fの内面等によって構成されている。すなわち、冷却流路7は、容器203と一体的に形成されている。
【0081】
内層203eは、例えば、当該内層203eの外面から突出して、内層203eの外面と外層203fとの間の空間に位置しているフィン203eaを有している。フィン203eaは、例えば、螺旋状に延びて図1と同様に螺旋状の冷却流路7を構成していてもよいし(図示の例)、螺旋状以外の経路の冷却流路7を構成していてもよいし、冷却流路7内に挿入されているだけであってもよい。
【0082】
内層203eは、例えば、伝熱性が比較的高い材料により構成されている。外層203fは、例えば、断熱性が比較的高い材料により構成されている。換言すれば、内層203eの伝熱性は、外層203fの伝熱性よりも高い。内層203eの材料としては、例えば、金属を挙げることができる。外層203fの材料としては、例えば、セラミック又は発泡プラスチック(例えば発泡スチロール)を挙げることができる。内層203e及び外層203fは、互いに固定されていてもよいし、互いに簡単に取り外し可能であってもよい。
【0083】
なお、図示の例とは異なり、冷却流路7を構成するパイプを内層203eと外層203fとの間に配置することも可能である。また、外観上、内層203eが容器に見え、外層203fは断熱性を向上させるために容器に付加された断熱材に見えてよい。
【0084】
(攪拌機構)
図1では、塩水103を攪拌する攪拌機構として、ポンプ9が例示された。図3(b)では、攪拌機構として、塩水103内に配置されたファン209が例示されている。ファン209の大きさ、位置、向き、数及び回転数等は適宜に設定されてよい。
【0085】
[作用]
以上のとおり、本実施形態(及び変形例)に係る食品101の冷凍方法は、食品101を塩分濃度が5%以上かつ温度が-18℃以下の塩水103に直接に浸して凍結させる。
【0086】
従って、食品101を包装する手間は不要である。また、塩水103を用いていることから、食品101をアルコールに浸す態様のようにアルコールが作業員に及ぼす影響に配慮する必要は無い。食品101を冷却するための液体が-18℃以下と比較的低温であることから、比較的短時間で食品101を凍結させることができる。例えば、食品101がカキである場合、10分程度で凍結させることができる。食品101が凍結される過程で、0℃~-6℃の温度領域を通過する時間を短くすることにより、細胞破壊を低減し、食品101の品質を保つことができる。
【0087】
ここで、図4は、NaClに関して、塩分濃度と凝固点との関係を示す図である。横軸は塩の質量%を示し、縦軸は温度t(℃)を示し、線L1は凝固点を示している。線L1の右上側においては、塩水103は液状であり、線L1の左下側においては塩水103の氷が生じる。この図に示すように、塩分濃度が高いほど、凝固点は低くなる。
【0088】
そして、上述のように、本実施形態では、塩分濃度が5%以上という塩分濃度が比較的高い塩水103を用いている。従って、塩水103の温度を比較的低温の-18℃以下としつつも、塩水103の凍結を抑制して塩水103の流動性を維持することが容易である。不凍液として特別な液体を用いるのではなく、単に塩分濃度を高くした塩水103を用いることから、不凍液の準備及び扱いが簡便であるとともに安全であり、また、コスト削減も期待される。ここでは、NaClのみを例示しているが、他の塩(MgCl又はCaCl等)についても同様である。
【0089】
特に、食塩又はNaClの塩分濃度が20%以上25%以下であれば、凝固点が概略-22℃以上-18℃以下となることから、塩水103を液状(又は液体と固体との混合状態)に保ったまま塩水103の温度を-18℃以下にすることが容易である。また、食塩又はNaClの塩分濃度が25%以下であれば、限界まで塩分濃度を高くする必要は無く、コスト削減が図られる。同様に、MgClの塩分濃度が15%以上40%以下であれば、凝固点を概略-35℃以上-18℃以下とすることができ、CaClの濃度が19%以上36%以下であれば、凝固点を概略-49℃以上-18℃以下とすることができる。その結果、塩水103を液状(又は液体と固体との混合状態)に保ったまま塩水103の温度を-18℃以下にすることが容易である。
【0090】
塩水103の塩分濃度を高くすると、塩水103の食品101への浸入によって、食品101内の塩分が高くなってしまうおそれがある。すなわち、食品101の味が塩辛くなってしまうおそれがある。しかし、本願発明者の実験によれば、実際には、そのような不都合は殆ど生じない。具体的には、食品101を-18℃以下の塩水に浸すと、食品101の表面の水分が急激に凍結し、塩水103の食品101の内部への浸入を抑制する遮蔽膜として機能する。その結果、食品101の内部の味は殆ど変化しない。なお、遮蔽膜を構成する水分は、食品101自体に含まれる水分であってもよいし、食品101に付着している水分(例えば魚介類に付着している海水又は淡水)であってもよい。
【0091】
上記の塩分濃度が高い塩水103の食品101への浸入が抑制される効果は、二枚貝及び鮮魚において顕著となる。
【0092】
図5は、食品101としての二枚貝を示す模式図である。二枚貝は、通常、図示に示すように閉状態となっている。そして、二枚貝を-18℃以下の塩水103に浸すと、2枚貝の合わせ目101aに存在する水分が急激に凍結する。これにより、塩分濃度が比較的高い塩水103の浸入が抑制される。塩水103の浸入抑制のために早期の凍結が望まれる部位が合わせ目101aだけであることから、二枚貝の身の味は全く又は殆ど塩辛くならない。
【0093】
さばかれておらず、鱗が付いたままの魚類(鮮魚)も同様である。すなわち、塩水103の浸入抑制のために早期の凍結が望まれる部位は、鱗の隙間に限定されることから、魚類の身の味は全く又は殆ど塩辛くならない。
【0094】
また、本実施形態では、塩水103を貯留している容器3に冷媒を供給して塩水103の温度を-18℃以下にする。
【0095】
従って、例えば、冷却された塩水103を容器3に供給する構成(当該構成も本開示に係る技術に含まれる)に比較して、汎用の、又は比較的汎用性が高い冷媒供給装置(フリーザ、チラー)の利用が容易である。その結果、例えば、冷凍装置1のコスト削減が期待される。
【0096】
また、本実施形態では、圧縮機25、凝縮器27、膨張弁35、及び容器3に設けられた冷却流路7を順に含む循環路6に冷媒を循環させる。
【0097】
従って、例えば、圧縮機25、凝縮器27及び膨張弁35を経た冷媒(一次冷媒)によって蒸発器を介して他の冷媒(二次冷媒)を冷却し、この他の冷媒を容器3へ供給する構成(当該構成も本開示に係る技術に含まれる)に比較して、塩水103がより直接的に冷却されることになり、冷却の効率性が向上する。また、冷凍装置1の構成も簡素化される。
【0098】
また、本実施形態では、容器3は、当該容器3の底面に開口する排出口3cと、当該排出口3cを開閉可能な開閉部材3dとを有している。
【0099】
従って、例えば、塵107が容器3の底面に堆積しても、塩水103の一部又は全部を排出することによって、塵107を容器3の外部へ流すことができる。その結果、例えば、食品101に塵107が付着するおそれを低減したり、冷凍装置1の管理を容易化したりするこができる。
【0100】
また、本実施形態では、ポンプ9により、容器3の内壁面に開口する回収口3aから容器3内の塩水を取り出して、容器3の内壁面に開口するとともに回収口3aとは鉛直方向の位置が異なる供給口3bから容器3内へ塩水103を戻す。
【0101】
従って、例えば、食品101の周囲における塩水103の流れを積極的に生じさせ、及び/又は容器3内の塩水103の温度の均一化させ、食品101を安定的かつ迅速に冷却化することができる。また、回収口3a及び供給口3bが容器3の内壁面に開口していることから、これらのいずれか一方が容器3の底面に開口している態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれる。)に比較して、例えば、容器3の底面に堆積している塵107がポンプ9に吸入されたり、塵107が舞い上がって食品101に付着したりするおそれが低減される。さらに、回収口3a及び供給口3bの高さが異なることから、相対的に温度が低くなりやすい容器3の下方の塩水103を容器3の上方へ送る(図示の例)、又は相対的に温度が高くなりやすい容器3の上方の塩水103を容器3の下方へ送ることになる。その結果、温度の均一化が効率的になされる。
【0102】
本開示に係る技術は、上述した実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0103】
塩水を-18℃以下とする方法は、塩水を貯留している容器に冷媒を供給する方法に限定されない。例えば、既に触れたように、容器外にて塩水を冷却し、その冷却した塩水を容器に供給してもよい。また、例えば、塩水を貯留した容器を冷凍室に収容することによって塩水の温度を-18℃以下としてもよい。
【0104】
また、容器に冷媒が供給される場合において、既に述べたように、二次冷媒が用いられてもよい。二次冷媒は、気体であってもよいし、液体であってもよい。また、二次冷媒は、容器に設けられた冷却流路を含む循環路を循環してもよいし、終端が大気に開放された冷却流路を流れて容器を冷却してもよいし、容器に吹き付けられてもよい。
【0105】
冷媒供給部としての圧縮式の冷凍装置の構成は、実施形態に例示したものに限定されない。例えば、圧縮式の冷凍装置は、圧縮機、凝縮器及び膨張弁(並びに蒸発器)が主要な構成であり、実施形態に例示した他の構成要素は適宜に省略されてよい。また、例えば、凝縮器は、空冷式に限定されず、他の圧縮式の冷凍装置の蒸発器として構成されて冷媒を冷却してもよいし、冷却塔によって冷却された冷却水によって冷却される水冷式とされてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1…冷凍装置、3…容器、5…冷媒供給部、101…食品、103…塩水。
図1
図2
図3
図4
図5