(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】圧力計の検査方法、および圧力計の検査装置
(51)【国際特許分類】
G01L 27/00 20060101AFI20221021BHJP
【FI】
G01L27/00
(21)【出願番号】P 2018215440
(22)【出願日】2018-11-16
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】503063168
【氏名又は名称】東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505186614
【氏名又は名称】株式会社エイムテック
(73)【特許権者】
【識別番号】000222657
【氏名又は名称】東洋計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安部 健
(72)【発明者】
【氏名】有馬 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】山西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 優
(72)【発明者】
【氏名】土田 泰秀
(72)【発明者】
【氏名】上原 基彦
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6370113(JP,B2)
【文献】特開2002-286576(JP,A)
【文献】特許第4950603(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の圧力計が所定の基準器と同じ圧力を計測するかどうかを検査する圧力計の検査方法であって、
上記圧力計と上記基準器とを連通させるように接続する接続工程と、
上記連通の内部空間に、大気圧または所定の圧力を印加して封止する圧力印加工程と、
恒温槽外の環境中で、
上記圧力計および上記基準器によって計測される圧力の差が所定の許容範囲内であることを確認する計測圧力確認工程と、
上記圧力計測より前の時点から後の時点までの間の期間内に含まれる所定の温度確認期間における上記圧力計および基準器の少なくとも一方の温度、またはこれらの周囲の雰囲気の温度の変動が所定の許容範囲内であることを確認する温度確認工程と、
を有することを特徴とする圧力計の検査方法。
【請求項2】
請求項1の圧力計の検査方法であって、
上記計測圧力確認工程、および温度確認工程を管理装置に行わせることを特徴とする圧力計の検査方法。
【請求項3】
請求項2の圧力計の検査方法であって、
上記圧力の差が上記所定の許容範囲内にないか、または上記温度の変動が上記所定の許容範囲内にない場合に、上記管理装置によって、上記検査対象の圧力計に計測動作を停止させ、または検査結果を報知させることを特徴とする圧力計の検査方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうち何れか1項の圧力計の検査方法であって、
上記温度確認工程は、上記計測圧力確認工程が行われる際の所定の温度確認期間に、上記内部空間内、または別途設けられた圧力計または基準器の内部空間内の圧力を所定の圧力、または大気圧にして封止した状態で、上記圧力計または基準器によって計測される圧力の変動が所定の許容変動範囲内であることを確認することにより行われることを特徴とする圧力計の検査方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうち何れか1項の圧力計の検査方法であって、
1台の基準器に対して、複数台の圧力計を同時に検査することを特徴とする圧力計の検査方法。
【請求項6】
検査対象の圧力計が所定の基準器と同じ圧力を計測するかどうかを検査する圧力計の検査装置であって、
上記圧力計と上記基準器とを連通させるように接続し、上記連通の内部空間に、大気圧または所定の圧力を印加して封止した状態で、
上記圧力計および基準器によって計測される圧力に応じた圧力信号、ならびに上記圧力計および基準器の温度、またはこれらの周囲の雰囲気の温度に応じた温度信号が入力される管理装置を有し、
上記管理装置は、
恒温槽外の環境中で、
上記圧力計および上記基準器によって計測される圧力の差が所定の許容範囲内であることを確認するとともに、
上記圧力計測より前の時点から後の時点までの間の期間内に含まれる所定の温度確認期間における上記圧力計および上記基準器の少なくとも一方の温度、またはこれらの周囲の雰囲気の温度の変動が所定の許容範囲内であることを確認することを特徴とする圧力計の検査装置。
【請求項7】
請求項6の圧力計の検査装置であって、
上記管理装置は、
上記圧力の差が上記所定の許容範囲内にないか、または上記温度の変動が上記所定の許容範囲内にない場合に、上記検査対象の圧力計に計測動作を停止させ、または検査結果を報知させることを特徴とする圧力計の検査装置。
【請求項8】
請求項6から請求項7のうち何れか1項の圧力計の検査装置であって、
上記管理装置は、
圧力の差が確認される際の所定の温度確認期間に、上記内部空間内、または別途設けられた圧力計または基準器の内部空間内の圧力を所定の圧力、または大気圧にして封止した状態で、上記圧力計または基準器によって計測される圧力の変動が所定の許容変動範囲内であることを確認することにより、上記温度の変動の確認を行うことを特徴とする圧力計の検査装置。
【請求項9】
請求項6から請求項8のうち何れか1項の圧力計の検査装置であって、
上記管理装置は、1台の基準器に対して、複数台の圧力計を同時に検査することを特徴とする圧力計の検査装置。
【請求項10】
請求項6から請求項9のうち何れか1項の圧力計の検査装置であって、
上記管理装置が、上記検査対象の圧力計、および上記基準器の少なくとも一方に設けられて成ることを特徴とする圧力計の検査装置。
【請求項11】
請求項6から請求項10のうち何れか1項の圧力計の検査装置であって、
上記管理装置は、
上記圧力の差が上記所定の許容範囲内にあり、かつ、上記温度の変動が上記所定の許容範囲内にある場合に、その旨を示す情報、および上記検査対象の圧力計を特定する情報を所定のサーバ装置に送信することを特徴とする圧力計の検査装置。
【請求項12】
請求項6から請求項10のうち何れか1項の圧力計の検査装置であって、
上記管理装置は、
上記圧力計および基準器によって計測される圧力に応じた圧力信号、上記圧力計および基準器の温度、またはこれらの周囲の雰囲気の温度に応じた温度信号、並びに上記検査対象の圧力計を特定する情報を所定のサーバ装置に送信することを特徴とする圧力計の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力計を検査する検査方法および検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス配管等の気密漏洩試験を行う圧力計などの計測精度の検査・校正は、例えば、検査対象となる圧力計と、基準器となる圧力計とを恒温槽内に設置して一定の温度に保った状態で、両者の計測圧力を比較することによって行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような検査方法では、恒温槽を必要とするため、圧力計のユーザなどが行うことは容易でない。そこで、通常、第三者の検査機関などに検査を依頼することが行われている。このため、検査に要する時間や費用が掛かるものとなっていた。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、圧力計のユーザなどでも、圧力計の検査を容易に行えるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、
検査対象の圧力計が所定の基準器と同じ圧力を計測するかどうかを検査する圧力計の検査方法であって、
上記圧力計と上記基準器とを連通させるように接続する接続工程と、
上記連通の内部空間に、大気圧または所定の圧力を印加して封止する圧力印加工程と、
上記圧力計および上記基準器によって計測される圧力の差が所定の許容範囲内であることを確認する計測圧力確認工程と、
上記圧力計測より前の時点から後の時点までの間の期間内に含まれる所定の温度確認期間における上記圧力計および基準器の少なくとも一方の温度、またはこれらの周囲の雰囲気の温度の変動が所定の許容範囲内であることを確認する温度確認工程と、
を有することを特徴とする。
【0007】
また、
検査対象の圧力計が所定の基準器と同じ圧力を計測するかどうかを検査する圧力計の検査装置であって、
上記圧力計と上記基準器とを連通させるように接続し、上記連通の内部空間に、大気圧または所定の圧力を印加して封止した状態で、
上記圧力計および基準器によって計測される圧力に応じた圧力信号、ならびに上記圧力計および基準器の温度、またはこれらの周囲の雰囲気の温度に応じた温度信号が入力される管理装置を有し、
上記管理装置は、
上記圧力計および上記基準器によって計測される圧力の差が所定の許容範囲内であることを確認するとともに、
上記圧力計測より前の時点から後の時点までの間の期間内に含まれる所定の温度確認期間における上記圧力計および上記基準器の少なくとも一方の温度、またはこれらの周囲の雰囲気の温度の変動が所定の許容範囲内であることを確認することを特徴とする。
【0008】
これらにより、結果的に雰囲気温度等の変化が所定の許容範囲内にあることが確認できれば、検査結果は適正と判定することができるので、恒温槽を設けなくても、圧力計の検査を行うことが容易にできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、圧力計のユーザなどでも、圧力計の検査を容易に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1の圧力計および基準器の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態2の圧力計および基準器の構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態3の圧力計および基準器の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態4の圧力計および基準器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
(実施形態1)
ユーザ等によって、
図1に示すような検査対象の圧力計100の検査が基準器200を用いて行われる例を説明する。上記圧力計100は、例えばダイヤフラム式の圧力センサ101と、圧力計100全体の動作を制御する制御部102と、計測結果等を表示する表示部103とを備えている。また、基準器200は、その計測精度がメーカ等の検査によって確認されていることを除き、圧力計100と同様に、圧力センサ201、制御部202、および表示部203を備えて構成されている。
【0013】
上記圧力計100の検査は、次のようにして行われる。まず、圧力計100と基準器200とを、配管301を介して連通するように接続する(接続工程)。なお、配管301を介して接続するのに限らず、密閉可能な容器等を介して接続したり、直接接続したりするなど、連通の内部空間を介して接続されればよい。上記配管301は、バルブ302を介して圧力源303に接続されるとともに、バルブ304を介して大気に開放され得るようになっている。また、圧力計100および基準器200の近傍に、温度計151を配置する。なお、温度計151は、圧力計100および基準器200の内部や近傍にそれぞれ設けられたりしてもよい。
【0014】
次に、バルブ302・304の一方を閉じ、他方を開いて、配管301内を所定の圧力、または大気圧にした後、両方のバルブ302・304を閉じ、必要に応じて断熱膨張や圧縮に伴う温度変化が安定するまで放置する(圧力印加工程)。その後、圧力計100および基準器200による圧力の計測を行う(計測圧力確認工程)。また、上記圧力計測の前、後、または前後に亘る所定の温度確認期間の前後において、温度計151により、圧力計100および基準器200の温度、またはこれらの周囲の雰囲気の温度を計測する(温度確認工程)。
【0015】
ここで、上記温度や圧力の計測、確認は、その場で行われるのに限らず、カメラや記録装置によって計測画像(写真や動画)の撮影や、計測信号の記録等がなされて、後に、これらに基づいて確認されるようにしたりしてもよい。また、例えば圧力計の計測画像が撮影されるタイミングで、基準器の計測信号が取得されて記録されるようにしてもよい。
【0016】
上記計測の結果によって、上記温度確認期間の前後における計測温度の差が所定の許容範囲にあって、かつ、圧力計100と基準器200との計測圧力の差が所定の許容範囲内にある場合に、圧力計100の計測精度は適正と判定する。すなわち、恒温槽などを用いなくても、気流や対流、放射熱などの影響が少ない環境を整えることは必ずしも困難とは限らない。そこで、そのような環境に圧力計100および基準器200を置いて検査を行うことによって、結果的に雰囲気温度等の変化が所定の許容範囲内にあることが確認できれば、検査結果は適正と判定することができる。それゆえ、恒温槽を設けることや検査機関などに検査を依頼することなく、圧力計の検査を行うことが容易にできる。
【0017】
なお、上記のような温度計測のタイミングに関しては、圧力計測に影響するような温度変動がないことを確認できれば、圧力計測のタイミングと温度確認期間との間に多少時間差があったりしてもよい。すなわち、一般的には、圧力計測よりも十分に前のタイミングから、圧力計測が行われるまでの間に温度変動が所定の範囲内であることを確認できれば直接的な確認をしやすい点で好ましいが、通常は、特に温度変動の要因がなければ、例えば圧力計測に先立つ所定期間や、圧力計測後の所定期間などに温度変動が所定の範囲内であることを確認できれば、圧力計測が適切であることを推定できると考えられる。ここで、温度変動の確認をするめには、上記のように温度確認期間の前後の温度差を求めるのに限らず、温度確認期間中の最高温度と最低温度との差や温度の変化率などを求めたりしてもよい。
【0018】
また、圧力計と基準器との計測圧力の比較は、瞬間の圧力に限らず、所定期間内における圧力の平均値や最高、最低となどの代表値などによって行うなどしてもよい。
【0019】
(実施形態2)
上記実施形態1と同様の検査が自動的に行われる例を説明する。
【0020】
本実施形態2の圧力計100および基準器200は、
図2に示すように、実施形態1の構成に加えて、温度センサ104・204、および通信部105・205を有している。温度センサ104・204は、圧力計100および基準器200の内部や近傍の雰囲気の温度を検出するようになっている。通信部105・205は、別途設けられた管理装置400との間で通信を行うようになっている。
【0021】
上記管理装置400は、圧力センサ101・201や温度センサ104・204で検出された圧力や温度に応じた信号を受信して、実施形態1と同様に圧力計100の検査を行うようになっている。すなわち、温度確認期間の前後における計測温度の差が所定の許容範囲にあって、かつ、圧力計100と基準器200との計測圧力の差が所定の許容範囲内にある場合に、圧力計100の計測精度は適正と判定するようになっている。なお、上記のように圧力や温度に応じた信号を受信するのに限らず、ユーザの操作などによってこれらの信号が入力されるようにしてもよい。
【0022】
また、管理装置400は、さらに、計測精度が適正でないと判定した場合、すなわち、上記圧力の差が上記所定の許容範囲内にないか、または上記温度の差が上記所定の許容範囲内にない場合には、圧力計100に計測動作を停止させたり、検査の結果、計測精度が適正でないと判定されたことを表示部103への表示やアラーム音などによって報知させ得るようになっている。これによって、不適切な計測が行われることを容易に防止することなどができる。
【0023】
なお、管理装置400は、上記のように圧力計100や基準器200とは別個に設けられるのに限らず、圧力計100または基準器200の内部に設けられたり、管理装置400の機能が圧力計100および基準器200に分散して設けられたりしてもよい。また、管理装置400によって、バルブ302・304や圧力源303の動作も制御できるようにしてもよい。
【0024】
(実施形態3)
圧力計100と基準器200とは、上記のように1台ずつが組にして用いられるのに限らず、
図3に示すように、1台の基準器200を用いて複数台の圧力計100の検査を行い得るようにしてもよい。すなわち、複数台の圧力計100が配管301に接続されるとともに、例えば、製造番号などの機器ID(識別情報)等によって管理装置400が各圧力計100を識別可能にすることによって、複数台の圧力計100の検査を同時に行うことが容易にできる。これによって、検査の手間や時間を低減することが容易にできる。
【0025】
(実施形態4)
管理装置400は、
図4に示すように、インターネット500等を介して、例えばメーカサーバ600と通信可能に構成し、上記のような検査による判定結果が製造番号などとともにメーカサーバ600に送られるようにしてもよい。これによって、計測精度が適正と判定された圧力計100に対する校正証書の発行や、計測精度が適正でないと判定された圧力計100に対する修理対応を自動的に行わせたりすることができる。また、メーカ等において、各圧力計100の状態等を一元的に把握、管理したりすることなども容易にできる。
【0026】
なお、上記のように検査による判定結果がメーカサーバ600等に送られるのに限らず、圧力センサ101・201や温度センサ104・204による計測結果自体がメーカサーバ600に送られるようにして、上記管理装置400と同様の処理がメーカサーバ600によって行われるようにしてもよい。その場合、通信部105・205が直接、インターネット500等に接続できるようにすれば、管理装置400を省略することもできる。
【0027】
また、圧力センサ101・201等の計測結果や管理装置400による判定結果などが、一旦、ユーザのサーバ等に保存され、必要に応じてメーカサーバ600に送られるようにしたりしてもよい。
【0028】
(変形例)
なお、上記のように温度計151や温度センサ104・204を用いるのに変えて、圧力センサ101・201による圧力の計測によって、実質的(間接的)に温度が計測されるようにしてもよい。すなわち、配管301にリークがなければ、温度変化があれば圧力変化が生じることになるので、圧力の計測によって温度変動の有無等を確認することができる。具体的には、例えば、上記検査のための圧力計測前後の少なくとも一方の所定時間内に、配管301内の圧力を所定の圧力、または大気圧にして封止した状態で、計測される圧力の変動が所定の許容範囲内であれば、検査のための圧力計測の際の温度変動も所定以下であることが推定される。それゆえ、上記のように圧力の計測によって温度変動の有無等を確認することができることになる。なお、上記圧力の計測による温度変動の有無等の確認は、別途設けられた圧力計や基準器を用いて行うようにしてもよい。この場合には、検査のための圧力の計測中、または計測中にかかる期間にも、温度変動の確認のための計測を行うことが容易にできる。また、配管301内の圧力等が大気圧にされる場合には、多少のリークがあったとしても、配管301内外への空気の移動はほとんど生じないので、やはり、温度変動の有無等を確認することができる。
【0029】
なお、上記各実施形態や変形例で説明した構成要素等は、論理的に可能な範囲で種々組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0030】
100 圧力計
101 圧力センサ
102 制御部
103 表示部
104 温度センサ
105 通信部
151 温度計
200 基準器
201 圧力センサ
202 制御部
203 表示部
204 温度センサ
205 通信部
301 配管
302 バルブ
303 圧力源
304 バルブ
400 管理装置
500 インターネット
600 メーカサーバ