(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】揮発性物質モニタリングシステムおよび揮発性物質モニタリング方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/00 20060101AFI20221021BHJP
A61G 11/00 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
G01N33/00 C
A61G11/00 Z
(21)【出願番号】P 2022083367
(22)【出願日】2022-05-20
【審査請求日】2022-06-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中川 博司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武司
(72)【発明者】
【氏名】末廣 陽
(72)【発明者】
【氏名】藤山 聡
(72)【発明者】
【氏名】日高 大介
(72)【発明者】
【氏名】石井 亮太
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-137618(JP,A)
【文献】特表2018-534955(JP,A)
【文献】特開昭62-028653(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0222031(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0282653(US,A1)
【文献】特開2004-205470(JP,A)
【文献】HSIEH Shizuka et al.,Neonatal ethanol exposure from ethanol-based hand sanitisers in isolettes,Archives of Disease in Childhod. Fetal and Neonatal Edition,2018年01月,Vol.103, No.1,pp.F55-F58
【文献】C. Paccaud et al.,Hand-disinfectant alcoholic vapors in incubators,Journal of Neonatal-Perinatal Medicine,2011年,第4巻,第15-19頁
【文献】側島久典,手指消毒時間と保育器内アルコール濃度-早産児への影響軽減への警鐘-,NEONATAL CARE,2018年03月,Vol.31, No.3,p.272
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00,33/49,
A61B 5/145,
A61G 11/00,
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII),
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患児を収容するために内部の温度および湿度が調節可能な収容室を備えた保育器内に設置され、前記収容室内の前記患児に対する医学的介入により使用される揮発性物質の濃度を検出する複数のセンサ
と、
前記複数のセンサが検出した前記揮発性物質の濃度に基づいて、前記患児の血中における血中の揮発性物質の濃度を推定する推定手段
と、を備える揮発性物質モニタリングシステム。
【請求項2】
前記複数のセンサが、前記収容室内に設置されている、請求項1に記載の揮発性物質モニタリングシステム。
【請求項3】
患児を収容するために内部の温度および湿度が調節可能な収容室を備えた保育器
の前記収容室内に設置され、前記収容室内の前記患児に対する医学的介入により使用される揮発性物質の濃度を検出する複数のセンサと
、
前記複数のセンサが検出した前記揮発性物質の濃度と、前記複数のセンサが前記揮発性物質の濃度を検出した時刻を示す検出時刻情報と、を記録する記録手
段と、を備える揮発性物質モニタリングシステム。
【請求項4】
さらに、前記複数のセンサが検出した前記揮発性物質の濃度および前記検出時刻情報を表示する表示手段、または、前記複数のセンサが検出した前記揮発性物質の濃度および前記検出時刻情報を外部に送信する送信手段を備える、請求項3に記載の揮発性物質モニタリングシステム。
【請求項5】
前記複数のセンサは、少なくとも、前記患児の頭側に近い位置に配置される第1センサ及び前記患児の頭側から遠い位置に配置される第2センサを含むことを特徴とする請求項1または3に記載の揮発性物質モニタリングシステム。
【請求項6】
前記患児は前記収容室を構成する第1の縁と第2の縁の間に設置され、前記複数のセンサは、少なくとも、前記第1の縁の近傍に配置される第1センサ及び前記第2の縁の近傍に配置される第2センサを含むことを特徴とする請求項1または3に記載の揮発性物質モニタリングシステム。
【請求項7】
前記揮発性物質はエタノールであり、前記センサはエタノールセンサである、請求項
1または3に記載の揮発性物質モニタリングシステム。
【請求項8】
前記揮発性物質はエタノールであり、前記センサはエタノールセンサであり、
前記推定手段は、前記収容室内において前記複数のエタノールセンサが検出した前記エタノールの濃度を
、前記エタノールセンサ毎に積算し、前記複数のエタノールセンサのそれぞれについて算出した積算値に基づき、前記患児の血中における血中のエタノールの濃度を推定する、請求項
1に記載の揮発性物質モニタリングシステム。
【請求項9】
前記推定手段は、前記複数のエタノールセンサの
それぞれについて算出した前記積算値のうち、最も高いものに基づいて、前記血中のエタノールの濃度を推定する、請求項
8に記載の揮発性物質モニタリングシステム。
【請求項10】
前記推定手段は、前記複数のエタノールセンサの
それぞれについて算出した前記積算値のうち、最も低いものに基づいて、前記血中のエタノールの濃度を推定する、請求項
8に記載の揮発性物質モニタリングシステム。
【請求項11】
前記推定手段は、前記複数のエタノールセンサのそれぞれ
について算出した単位時間あたりの前記積算値のうち
、最も高いものに基づいて、前記血中のエタノールの濃度を推定する、請求項
8に記載の揮発性物質モニタリングシステム。
【請求項12】
前記推定手段は、前記複数のエタノールセンサのそれぞれ
について算出した単位時間あたりの前記積算値のうち
、最も低いものに基づいて、前記血中のエタノールの濃度を推定する、請求項
8に記載の揮発性物質モニタリングシステム。
【請求項13】
前記推定手段は、前記複数のエタノールセンサのそれぞれ
について算出した前記積算値の平均値または中央値に基づいて、前記血中のエタノールの濃度を推定する、請求項
8に記載の揮発性物質モニタリングシステム。
【請求項14】
前記揮発性物質はエタノールであり、前記センサはエタノールセンサであり、
(1)前記患児の在胎週数、(2)前記患児の日齢、および(3)前記患児に対して人工呼吸器が装着されているか否かを示す装着情報の少なくとも1つを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された情報と、
前記推定手段により推定された前記患児の血中における血中のエタノールの濃度とに基づき、前記エタノールによる前記患児の健康状態への影響を判断する判断手段とを備える、請求項
1に記載の揮発性物質モニタリングシステム。
【請求項15】
前記揮発性物質はエタノールであり、前記センサはエタノールセンサであり、
前記推定手段により推定された血中のエタノールの濃度が所定値に達する場合、報知を行う報知手段をさらに備える、請求項
1に記載の揮発性物質モニタリングシステム。
【請求項16】
患児を収容するために内部の温度および湿度が調節可能な収容室を備えた保育器内に設置された、複数のセンサによって、前記収容室内の前記患児に対する医学的介入により使用される揮発性物質の濃度を検出する検出ステップ
と、
前記複数のセンサが検出した前記揮発性物質の濃度に基づいて、前記患児の血中における血中の揮発性物質の濃度を推定する推定ステップと
、を備える揮発性物質モニタリング方法。
【請求項17】
患児を収容するために内部の温度および湿度が調節可能な収容室を備えた保育器
の前記収容室内に設置された、複数のセンサによって、前記収容室内の前記患児に対する医学的介入により使用される揮発性物質の濃度を検出する検出ステップ
と、
前
記複数のセンサが検出した前記揮発性物質の濃度と、前記複数のセンサが前記揮発性物質の濃度を検出した時刻を示す検出時刻情報と、を記録する記録ステップと
、を備える揮発性物質モニタリング方法。
【請求項18】
さらに、前記複数のセンサが検出した前記揮発性物質の濃度および前記検出時刻情報を表示する表示ステップ、または、前記複数のセンサが検出した前記揮発性物質の濃度および前記検出時刻情報を外部に送信する送信ステップを備える、請求項17に記載の揮発性物質モニタリング方法。
【請求項19】
前記複数のセンサは、少なくとも、前記患児の頭側に近い位置に配置される第1センサ及び前記患児の頭側から遠い位置に配置される第2センサを含むことを特徴とする請求項16または17に記載の揮発性物質モニタリング方法。
【請求項20】
前記患児は前記収容室を構成する第1の縁と第2の縁の間に設置され、前記複数のセンサは、少なくとも、前記第1の縁の近傍に配置される第1センサ及び前記第2の縁の近傍に配置される第2センサを含むことを特徴とする請求項16または17に記載の揮発性物質モニタリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性物質モニタリングシステムおよび揮発性物質モニタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
保育器は、未熟児および新生児等の患児を保護し、診療するための医療機器である。保育器内で患児の手や足等に対して酒精綿を用いて消毒する際、消毒時にエタノール等の揮発性物質が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エタノール等、患児に対する医学的介入により使用される揮発性物質が人体に影響を及ぼすことは知られており、人体が未熟な患児である場合、揮発性物質が未熟な患児に及ぼす影響が大きいと想定される。本開示は、保育器内におけるエタノール等の揮発性物質の濃度を正確に把握し、揮発性物質による患児の健康状態への影響を的確にモニタリングすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために、本開示の一側面に係る揮発性物質モニタリングシステムは、患児を収容するために内部の温度および湿度が調節可能な収容室を備えた保育器内に設置され、前記収容室内の前記患児に対する医学的介入により使用される揮発性物質の濃度を検出する複数のセンサを備え、前記複数のセンサが検出した前記揮発性物質の濃度に基づいて、前記患児の血中における血中の揮発性物質の濃度を推定する推定手段と、前記複数のセンサが検出した前記揮発性物質の濃度と、前記複数のセンサが前記揮発性物質の濃度を検出した時刻を示す検出時刻情報と、を記録する記録手段と、前記複数のセンサが検出した前記揮発性物質の濃度および前記検出時刻情報を表示する表示手段と、前記複数のセンサが検出した前記揮発性物質の濃度および前記検出時刻情報を外部に送信する送信手段と、の少なくとも1つを備える。
【0005】
上記構成によれば、複数のセンサを用いることにより、正確に収容室内の揮発性物質の濃度が検出される。これにより、揮発性物質モニタリングシステムが推定手段を備える場合、推定手段が、患児の血中における実際の血中の揮発性物質の濃度に近いものを推定することや血中のエタノール濃度を上昇させうるエタノールの濃度であるかの把握が可能となる。また、揮発性物質モニタリングシステムが記録手段を備える場合、検出時刻情報とともに正確な揮発性物質の濃度を記録手段に記録させることが可能となる。よって、正確な揮発性物質の濃度を管理でき、的確なモニタリングに用いることができる。
【0006】
さらに、揮発性物質モニタリングシステムが表示手段を備える場合、検出時刻情報とともに正確な揮発性物質の濃度を表示手段に表示させることが可能となる。よって、正確な揮発性物質の濃度を把握できる。その上、揮発性物質モニタリングシステムが送信手段を備える場合、検出時刻情報とともに正確な揮発性物質の濃度を送信手段に送信させることが可能となる。よって、外部の装置で正確な揮発性物質の濃度を管理でき、的確なモニタリングに用いることができる。以上により、揮発性物質による患児の健康状態への影響を的確にモニタリングすることができる。
【0007】
前記揮発性物質はエタノールであり、前記センサはエタノールセンサであってもよい。センサとしてエタノールセンサを用いることにより、正確に収納室内のエタノールの濃度が検出される。これにより、推定手段が、患児の血中における実際の血中のエタノールの濃度に近いものを推定することが可能となる。よって、エタノールによる患児の健康状態への影響を的確にモニタリングすることができる。
【0008】
前記揮発性物質モニタリングシステムは、前記推定手段を備え、前記推定手段は、前記収容室内において前記複数のエタノールセンサが検出した前記エタノールの濃度を積算した積算値に基づき、前記患児の血中における血中のエタノールの濃度を推定してもよい。上記構成によれば、積算値に基づき血中のエタノールの濃度を推定するので、短時間における突発的なエタノールの濃度の増減に左右されず、正確に血中のエタノールの濃度を推定することができる。
【0009】
前記推定手段は、前記複数のエタノールセンサのそれぞれが検出した前記エタノールの濃度のうち、最も高いものに基づいて、前記血中のエタノールの濃度を推定してもよい。上記構成によれば、複数のエタノールセンサが検出するエタノールの濃度のうち、最も高いものに基づいて血中のエタノールの濃度を推定することにより、患児の健康状態に影響を及ぼしかねない状況をいち早く検出できる。これにより、エタノールによる患児の健康状態への影響をより的確に管理することができる。
【0010】
前記推定手段は、前記複数のエタノールセンサのそれぞれが検出した前記エタノールの濃度のうち、最も低いものに基づいて、前記血中のエタノールの濃度を推定してもよい。上記構成によれば、複数のエタノールセンサが検出するエタノールの濃度のうち、最も低いものに基づいて血中のエタノールの濃度を推定する。これにより、エタノールセンサの出力の変動が大きくなるような環境に保育器が設置されている場合であっても、血中のエタノールの濃度を正確に推定することができる。よって、エタノールによる患児の健康状態への影響をより的確に管理することができる。
【0011】
前記推定手段は、前記複数のエタノールセンサのそれぞれが検出した前記エタノールの濃度のうち、単位時間あたりに検出された最も高いものに基づいて、前記血中のエタノールの濃度を推定してもよい。
【0012】
上記構成によれば、複数のエタノールセンサが検出するエタノールの濃度のうち、最も高いものに基づいて血中のエタノールの濃度を推定することにより、患児の健康状態に影響を及ぼしかねない状況をいち早く検出できる。しかも、単位時間あたりに検出されたエタノールの濃度に基づくことにより、エタノールによる患児の健康状態への影響をより的確に管理することができる。
【0013】
前記推定手段は、前記複数のエタノールセンサのそれぞれが検出した前記エタノールの濃度のうち、単位時間あたりに検出された最も低いものに基づいて、前記血中のエタノールの濃度を推定してもよい。
【0014】
上記構成によれば、複数のエタノールセンサが検出するエタノールの濃度のうち、最も低いものに基づいて血中のエタノールの濃度を推定する。これにより、エタノールセンサの出力の変動が大きくなるような環境に保育器が設置されている場合であっても、血中のエタノールの濃度を正確に推定することができる。しかも、単位時間あたりに検出されたエタノールの濃度に基づくことにより、エタノールによる患児の健康状態への影響をより的確に管理することができる。
【0015】
前記推定手段は、前記複数のエタノールセンサのそれぞれが検出した前記エタノールの濃度の平均値または中央値に基づいて、前記血中のエタノールの濃度を推定してもよい。例えば、患児から近い位置のエタノールセンサが低いエタノールの濃度を検出する一方、患児から遠い位置のエタノールセンサが高いエタノールの濃度を検出していれば、患児の健康状態に影響が及ぶ可能性がある。このような状況においても、上記構成によれば、エタノールの濃度の平均値または中央値に基づいて血中のエタノールの濃度を推定するので、エタノールによる患児の健康状態への影響を的確に管理することができる。
【0016】
前記揮発性物質モニタリングシステムは、(1)前記患児の在胎週数、(2)前記患児の日齢、および(3)前記患児に対して人工呼吸器が装着されているか否かを示す装着情報の少なくとも1つを取得する取得手段と、前記取得手段により取得された情報と、前記患児の血中における血中のエタノールの濃度とに基づき、前記エタノールによる前記患児の健康状態への影響を判断する判断手段とを備えてもよい。
【0017】
患児に影響が及びうる血中のエタノールの濃度の程度は、患児の在胎週数、患児の日齢や、患児に対して人工呼吸器が装着されているか否かによって変わり得るものである。上記構成によれば、取得手段によって患児の在胎週数、患児の日齢や装着情報を取得し、これらの情報を考慮した上で判断手段がエタノールによる患児の健康状態への影響を判断する。このため、より的確にエタノールによる患児の健康状態への影響を管理することが可能となる。
【0018】
前記揮発性物質モニタリングシステムは、前記推定手段により推定された血中のエタノールの濃度が所定値に達する場合、報知を行う報知手段をさらに備えてもよい。上記構成によれば、血中のエタノールの濃度が所定値に達する場合に報知を行うことにより、患児の健康状態に影響を及ぼしかねない状況をいち早く把握できる。
【0019】
上記の課題を解決するために、本開示の一側面に係る揮発性物質モニタリング方法は、患児を収容するために内部の温度および湿度が調節可能な収容室を備えた保育器内に設置された、複数のセンサによって、前記収容室内の前記患児に対する医学的介入により使用される揮発性物質の濃度を検出する検出ステップを備え、前記複数のセンサが検出した前記揮発性物質の濃度に基づいて、前記患児の血中における血中の揮発性物質の濃度を推定する推定ステップと、前記複数のセンサが検出した前記揮発性物質の濃度と、前記複数のセンサが前記揮発性物質の濃度を検出した時刻を示す検出時刻情報と、を記録する記録ステップと、前記複数のセンサが検出した前記揮発性物質の濃度および前記検出時刻情報を表示する表示ステップと、前記複数のセンサが検出した前記揮発性物質の濃度および前記検出時刻情報を外部に送信する送信ステップと、の少なくとも1つを備える。
【発明の効果】
【0020】
本開示の一態様によれば、保育器内におけるエタノール等の揮発性物質の濃度を正確に把握し、揮発性物質による患児の健康状態への影響を的確にモニタリングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の実施形態1に係る保育器の概略斜視図である。
【
図2】
図1に示す保育器の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】本開示の実施形態2に係る保育器の概略斜視図である。
【
図4】本開示の実施形態3に係る保育器の断面を示す断面図である。
【
図5】揮発性物質モニタリング方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔実施形態1〕
患児に対する医学的介入には、保育器内で実施されるものがある。医学的介入の一例として、保育器内の患児から採血を行ったり、患児に点滴を行ったりする場合がある。保育器内には、保育器内の空気に含まれる揮発性物質の濃度を検出するセンサが設置されている。センサによって濃度が検出される揮発性物質は、エタノールのような患児Xに対する医学的介入において使用される物質である。以下、揮発性物質としてエタノールを例に保育器の概要を説明するが、これに限定されるものではない。揮発性物質は、エタノールに代えて、例えばイソプロパノールであってもよい。
【0023】
<保育器の概要>
図1は、本開示の実施形態1に係る保育器1の概略斜視図である。
図1に示すように、保育器1は、ベッド11と、ベッドステージ13と、表示部15と、収容室101と、載置台102と、操作パネル102aと、を備える。また、保育器1は、揮発性物質除去装置110と、浄化装置120と、循環部410と、供給部420と、排出部430と、を備える。
【0024】
収容室101は患児Xを収容する。載置台102は収容室101を載置する。収容室101内には、ベッド11と、ベッド11の前後に配置された衝立部12と、が設置されている。ベッド11は、載置台102上に設けられたベッドステージ13に配置されている。
【0025】
ベッドステージ13は、ベッド11を上下方向または上下左右方向に動かすことが可能である。衝立部12は、ベッド11の表面11aから所定の高さおよび所定の幅を有する透明な樹脂で形成されており、浄化装置120を設置する設置部としても使用される。
【0026】
収容室101には、医師または看護師が患児Xに対して点滴投与等の処置を行うための処置用の開口部101aが2個設けられている。開口部101aの数については少なくとも2個であればよく、3個以上であってもよい。収容室101内で患児Xに対して何らかの処置をする場合には、必ず消毒する必要がある。
【0027】
例えば、酒精綿を用いて患児Xの手等の処置対象の部位を消毒する。収容室101内で酒精綿を使用すれば、収容室101内にエタノールが発生する。発生したエタノールを除去するために、収容室101内には、ベッド11上に揮発性物質除去装置110が配置され、ベッド11の衝立部12に2つの浄化装置120が配置されている。
【0028】
ここで、収容室101内の空気は、エタノールを発する発生源(例えば酒精綿)から離れた位置の第1空気と、当該発生源近傍の第2空気とを含む。揮発性物質除去装置110は、主に、エタノールの発生源近傍の第2空気からエタノールを除去し、浄化装置120は、主に、エタノールの発生源から離れた位置の第1空気からエタノールを除去する。
【0029】
揮発性物質除去装置110および浄化装置120を収容室101内に配置することで、保育器1を設置するスペースとは別に、揮発性物質除去装置110および浄化装置120を設置するためのスペースを確保する必要が無い。
【0030】
循環部410は、ファンを備え、当該ファンにより温度および湿度が調節された空気を収容室101に循環させる。供給部420は、空気を収容室101外から収容室101内に供給する。排出部430は、収容室101内の空気の少なくとも一部を収容室101外に排出する。循環部410、供給部420および排出部430により、収容室101内の空気が収容室101外の空気と入れ替えられるため、収容室101内のエタノールの濃度を低減することができる。
【0031】
載置台102には、保育器1の機能などを、使用者(医師または看護師等)が操作できるように操作パネル102aが設けられている。本実施形態における揮発性物質除去装置110および浄化装置120の駆動は、各装置に設けられた操作部の操作によって行われるが、操作パネル102aの操作によって行われるようにしてもよい。
【0032】
保育器1において収容室101内の空気は、循環部410によって温度および湿度が調節されている。つまり、収容室101は、患児Xを収容するために収容室101の内部の温度および湿度が調節可能に構成されている。また、揮発性物質除去装置110および浄化装置120は、収容室101内の空気を吸気して、吸気した空気に含まれるエタノールを除去し、エタノールを除去した空気を再び収容室101内に排気する。これにより、収容室101内の温度および湿度を保ったまま、収容室101からエタノールを除去することができる。なお、保育器1は温湿度に加えて、酸素濃度が調整可能であってもよい。
【0033】
また、エタノールがほとんど含まれないまたは含まれない空気を収容室101内に供給して収容室101内の空気のエタノールの濃度を低下させることができる。しかも、収容室101内のエタノールを除去するので、収容室101内のエタノールの濃度を大幅に低下させることができる。これにより、保育器1内の患児Xが、意図せずエタノールに暴露されてしまうことを回避することができる。表示部15(表示手段)は、後述する複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出したエタノールの濃度の表示や後述する血中のエタノールの濃度に関する表示等を行うモニタである。
【0034】
揮発性物質除去装置110は、ベッド11上で自由に配置して使用できるようになっている。このため、患児Xに対して消毒する場合には、消毒する部位に近い位置に揮発性物質除去装置110を配置することで、消毒時に発生するエタノールを効果的に吸着することが可能となる。
【0035】
<保育器の電気的構成>
図2は、
図1に示す保育器1の電気的構成を示すブロック図である。
図2に示すように、揮発性物質モニタリングシステム100は、保育器1と、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cと、制御装置16と、記録装置21と、送信装置22と、を備える。保育器1は、循環部410、供給部420および排出部430により構成された空調装置401を備える。
【0036】
複数のエタノールセンサ14a,14b,14cは、ベッド11上に設置されている。つまり、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cは、保育器1内に設置されている。複数のエタノールセンサ14a,14b,14cは、収容室101内のエタノールの濃度を検出する。複数のエタノールセンサ14a,14b,14cは、例えば、エタノール以外のVOC(Volatile Organic Compounds)を検出するセンサであってもよい。
【0037】
エタノールセンサ14a,14bは、ベッド11上において循環部410側の縁に設置されている。エタノールセンサ14aは、循環部410側の縁において患児Xの頭側の端に設置されており、エタノールセンサ14bは、循環部410側の縁において患児Xの足側の端に設置されている。エタノールセンサ14cは、ベッド11上において循環部410側とは反対側の縁に設置されており、かつ、患児Xの頭の近傍に設置されている。
【0038】
<制御装置>
制御装置16は、保育器1の各部を制御するものであり、推定部161と、取得部162と、判断部163と、制御部164と、を備える。推定部161(推定手段)は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出したエタノールの濃度に基づいて、患児Xの血中における血中のエタノールの濃度を推定する。
【0039】
推定部161が推定する血中のエタノールの濃度は、血中のエタノールの濃度を示す具体的な推定値であってもよく、血中のエタノールの濃度が複数の段階に分けられた場合において当該段階を示すものであってもよい。また、推定部161は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出した現在のエタノールの濃度に基づいて、現在の血中のエタノールの濃度を推定する。
【0040】
複数のエタノールセンサ14a,14b,14cを用いることにより、正確に収容室101内のエタノールの濃度が検出される。これにより、推定部161が、患児Xの血中における実際の血中のエタノールの濃度に近いものを推定することや血中のエタノール濃度を上昇させうるエタノールの濃度であるかの把握が可能となる。よって、エタノールによる患児Xの健康状態への影響を的確にモニタリングすることができる。
【0041】
また、具体的には、推定部161は、収容室101内において複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出したエタノールの濃度を積算した積算値に基づき、患児Xの血中における血中のエタノールの濃度を推定する。
【0042】
例えば、推定部161は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出したエタノールの濃度を、エタノールセンサ毎に積算することにより、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれについて積算値を算出する。そして、推定部161は、算出した積算値に基づき、血中のエタノールの濃度を推定する。よって、積算値に基づき血中のエタノールの濃度を推定するので、短時間における突発的なエタノールの濃度の増減に左右されず、正確に血中のエタノールの濃度を推定することができる。
【0043】
また、推定部161は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれが検出したエタノールの濃度のうち、最も高いものに基づいて、血中のエタノールの濃度を推定する。具体的には、推定部161は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれについて算出した積算値を比較し、これらの積算値のうち最も高い積算値に基づいて、血中のエタノールの濃度を推定する。
【0044】
複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出するエタノールの濃度のうち、最も高いものに基づいて血中のエタノールの濃度を推定することにより、患児Xの健康状態に影響を及ぼしかねない状況をいち早く検出できる。これにより、エタノールによる患児Xの健康状態への影響をより的確に管理することができる。
【0045】
取得部162(取得手段)は、(1)患児Xの在胎週数、(2)患児Xの日齢、および(3)患児Xに対して人工呼吸器が装着されているか否かを示す装着情報の少なくとも1つを取得する。具体的には、使用者による操作パネル102aの操作により、取得部162に患児Xの在胎週数が入力された場合、取得部162は、患児Xの在胎週数を取得する。
【0046】
また、使用者による操作パネル102aの操作により、取得部162に患児Xの日齢が入力された場合、取得部162は、患児Xの日齢を取得する。さらに、使用者による操作パネル102aの操作により、取得部162に上記装着情報が入力された場合、取得部162は、上記装着情報を取得する。
【0047】
判断部163(判断手段)は、取得部162により取得された情報と、推定部161によって推定された血中のエタノールの濃度とに基づき、エタノールによる患児Xの健康状態への影響を判断する。患児Xに影響が及びうる血中のエタノールの濃度の程度は、患児Xの在胎週数、患児Xの日齢や、患児Xに対して人工呼吸器が装着されているか否かによって変わり得るものである。
【0048】
上記構成によれば、取得部162によって患児Xの在胎週数、患児Xの日齢や装着情報を取得し、これらの情報を考慮した上で判断部163がエタノールによる患児Xの健康状態への影響を判断する。このため、より的確にエタノールによる患児Xの健康状態への影響を管理することが可能となる。
【0049】
また、判断部163は、推定部161により推定された血中のエタノールの濃度が所定値に達したか否かを判断する。判断部163が、血中のエタノールの濃度が上記所定値に達したと判断した場合、制御部164は、血中のエタノールの濃度が上記所定値に達したことを表示部15に表示させる。よって、表示部15は、推定部161により推定された血中のエタノールの濃度が所定値に達する場合、血中のエタノールの濃度が上記所定値に達したことの表示を行う。
【0050】
表示部15は、表示手段であるが、報知手段の一例であってもよく、血中のエタノールの濃度が上記所定値に達したことの表示を行うことにより、使用者に対して血中のエタノールの濃度が上記所定値に達したことの報知を行う。血中エタノールが上記所定値に達する場合に報知を行うことにより、患児Xの健康状態に影響を及ぼしかねない状況をいち早く把握できる。
【0051】
制御部164(制御手段)は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cにより検出されたエタノールの濃度に基づき、表示部15、送信装置22、揮発性物質除去装置110、浄化装置120、循環部410、供給部420および排出部430の少なくとも1つを制御する。表示部15、送信装置22、揮発性物質除去装置110、浄化装置120、循環部410、供給部420および排出部430はそれぞれ、所定の機器の一例であり、エタノールによる患児Xの健康状態への影響を管理するための機器である。
【0052】
ここで、揮発性物質除去装置110は、図示しない吸引部を備える。当該吸引部は、軸流ファンからなり、外気を取り込むものである。制御部164は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cにより検出されたエタノールの濃度に基づき、揮発性物質除去装置110の軸流ファンの回転数を制御する。
【0053】
また、浄化装置120は、揮発性物質除去装置110と同様に、図示しない吸引部を備える。浄化装置120の当該吸引部は、ファンからなり、外気を取り込むものである。制御部164は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cにより検出されたエタノールの濃度に基づき、浄化装置120のファンの回転数を制御する。
【0054】
さらに、制御部164は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cにより検出されたエタノールの濃度に基づき供給部420を制御して、収容室101外から収容室101内に供給される空気の量を調整する。これにより、制御部164は、収容室101内から収容室101外に排出される空気の量を調整することができる。よって、揮発性物質除去装置110および浄化装置120によるエタノールの除去が行われない場合であっても、収容室101内の空気の入れ替えを行うことができ、収容室101内のエタノールの濃度を下げることができる。
【0055】
以上のように、所定の機器をエタノールによる患児Xの健康状態への影響を管理するための機器(除去装置、吸排気装置、モニタ等)とすることにより、当該機器は揮発性物質の濃度に基づいた制御が行われる。これにより、エタノールによる患児Xの健康状態への影響を適切に管理することができる。
【0056】
<記録装置>
記録装置21(記録手段)は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出したエタノールの濃度と、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cがエタノールの濃度を検出した時刻を示す検出時刻情報と、を記録する。制御部164は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれが検出したエタノールの濃度と、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれがエタノールの濃度を検出した時刻と、を対応付けて記録装置21に記録させる。
【0057】
揮発性物質モニタリングシステム100が記録装置21を備える場合、上記検出時刻情報とともに正確なエタノールの濃度を記録装置21に記録させることが可能となる。よって、正確なエタノールの濃度を管理でき、的確なモニタリングに用いることができる。推定部161は、記録装置21に記録されたエタノールの濃度および上記検出時刻情報を参照することにより、血中のエタノールの濃度を推定してもよい。
【0058】
また、制御部164は、記録装置21に記録されたエタノールの濃度および上記検出時刻情報を表示部15に表示させる。表示部15は、記録装置21に記録されたエタノールの濃度および上記検出時刻情報を表示する。揮発性物質モニタリングシステム100が表示部15を備える場合、上記検出時刻情報とともに正確なエタノールの濃度を表示部15に表示させることが可能となる。よって、正確なエタノールの濃度を把握できる。
【0059】
<送信装置>
送信装置22(送信手段)は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出したエタノールの濃度および上記検出時刻情報を揮発性物質モニタリングシステム100の外部に送信する。制御部164は、送信装置22に対してエタノールの濃度および上記検出時刻情報を揮発性物質モニタリングシステム100外にある外部の機器に送信させる。当該外部の機器は、送信装置22からエタノールの濃度および上記検出時刻情報を受信し、エタノールの濃度および上記検出時刻情報を表示するなどしてもよい。
【0060】
揮発性物質モニタリングシステム100が送信装置22を備える場合、上記検出時刻情報とともに正確なエタノールの濃度を送信装置22に送信させることが可能となる。よって、外部の装置で正確なエタノールの濃度を管理でき、的確なモニタリングに用いることができる。
【0061】
<揮発性物質モニタリング方法>
図5は、本実施形態に係る揮発性物質モニタリング方法の流れの一例を示すフローチャートである。
図5に示すように、まず、ステップS1において、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cによって、収容室101内のエタノールの濃度を検出する(検出ステップ)。ステップS1の後、ステップS2において、推定部161は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出したエタノールの濃度に基づいて、患児Xの血中における血中のエタノールの濃度を推定する(推定ステップ)。
【0062】
ステップS2の後、ステップS3において、記録装置21は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出したエタノールの濃度と、上記検出時刻情報と、を記録する(記録ステップ)。ステップS3の後、ステップS4において、表示部15は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出したエタノールの濃度および上記検出時刻情報を表示する(表示ステップ)。
【0063】
ステップS4の後、ステップS5において、送信装置22は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出したエタノールの濃度および上記検出時刻情報を外部に送信する(送信ステップ)。ステップS5の後、ステップS6において、制御部164は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cにより検出されたエタノールの濃度に基づき、所定の機器を制御する(制御ステップ)。なお、揮発性物質モニタリング方法において、ステップS2~S6の少なくとも1つのステップを実行してもよく、ステップS2~S6が実行される順序は、入れ替わってもよい。
【0064】
(変形例1)
推定部161は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれが検出したエタノールの濃度のうち、最も低いものに基づいて、血中のエタノールの濃度を推定してもよい。具体的には、推定部161は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれについて算出した積算値を比較し、これらの積算値のうち最も低い積算値に基づいて、血中のエタノールの濃度を推定する。
【0065】
複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出するエタノールの濃度のうち、最も低いものに基づいて血中のエタノールの濃度を推定する。これにより、エタノールセンサ14a,14b,14cの出力の変動が大きくなるような環境に保育器1が設置されている場合であっても、血中のエタノールの濃度を正確に推定することができる。よって、エタノールによる患児Xの健康状態への影響をより的確に管理することができる。
【0066】
(変形例2)
推定部161は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれが検出したエタノールの濃度のうち、単位時間あたりに検出された最も高いものに基づいて、血中のエタノールの濃度を推定してもよい。具体的には、推定部161は、単位時間内において複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出したエタノールの濃度を、エタノールセンサ毎に積算する。
【0067】
これにより、推定部161は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれについて単位時間あたりの積算値を算出する。そして、推定部161は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれについて算出した積算値を比較し、これらの積算値のうち最も高い積算値に基づいて、血中のエタノールの濃度を推定する。
【0068】
複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出するエタノールの濃度のうち、最も高いものに基づいて血中のエタノールの濃度を推定することにより、患児Xの健康状態に影響を及ぼしかねない状況をいち早く検出できる。しかも、単位時間あたりに検出されたエタノールの濃度に基づくことにより、エタノールによる患児Xの健康状態への影響をより的確に管理することができる。
【0069】
(変形例3)
推定部161は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれが検出したエタノールの濃度のうち、単位時間あたりに検出された最も低いものに基づいて、血中のエタノールの濃度を推定してもよい。具体的には、推定部161は、変形例2と同様に、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれについて単位時間あたりの積算値を算出する。そして、推定部161は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれについて算出した積算値を比較し、これらの積算値のうち最も低い積算値に基づいて、血中のエタノールの濃度を推定する。
【0070】
複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出するエタノールの濃度のうち、最も低いものに基づいて血中のエタノールの濃度を推定する。これにより、エタノールセンサ14a,14b,14cの出力の変動が大きくなるような環境に保育器1が設置されている場合であっても、血中のエタノールの濃度を正確に推定することができる。しかも、単位時間あたりに検出されたエタノールの濃度に基づくことにより、エタノールによる患児Xの健康状態への影響をより的確に管理することができる。
【0071】
(変形例4)
推定部161は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれが検出したエタノールの濃度の平均値または中央値に基づいて、血中のエタノールの濃度を推定してもよい。具体的には、推定部161は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれについて算出した積算値を合計することにより合計値を算出する。
【0072】
推定部161は、算出した合計値を複数のエタノールセンサ14a,14b,14cの個数である3で割ることにより、エタノールの濃度の積算値の平均値を算出する。また、推定部161は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれについて算出した積算値のうち中央値を確定する。
【0073】
例えば、患児Xから近い位置のエタノールセンサが低いエタノールの濃度を検出する一方、患児Xから遠い位置のエタノールセンサが高いエタノールの濃度を検出していれば、患児Xの健康状態に影響が及ぶ可能性がある。このような状況においても、上記構成によれば、エタノールの濃度の平均値または中央値に基づいて血中のエタノールの濃度を推定するので、エタノールによる患児Xの健康状態への影響を的確に管理することができる。
【0074】
(変形例5)
推定部161は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれが検出したエタノールの濃度の経時的変化傾向に基づき、将来の血中のエタノールの濃度を推定してもよい。推定部161は、例えば、現在から所定時間前のエタノールの濃度と、現在のエタノールの濃度と、に基づき、エタノールの濃度の経時的変化傾向としてのエタノールの濃度の変化率または変化傾向を算出する。推定部161は、算出したエタノールの濃度の変化率に基づき、将来の血中のエタノールの濃度を推定する。
【0075】
将来の血中のエタノールの濃度を推定することにより、患児Xの健康状態に影響を及びかねない状況を、実際に影響が及ぶ前に把握することができる。これにより、的確にエタノールによる患児Xの健康状態への影響を把握することができる。
【0076】
(変形例6)
制御部164は、推定部161により推定された血中のエタノールの濃度を表示部15に表示させてもよい。この場合、表示部15は、推定部161により推定された血中のエタノールの濃度を表示する。よって、表示部15により血中のエタノールの濃度を容易に把握することができる。
【0077】
(変形例7)
制御部164は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれが検出した現在のエタノールの濃度を表示部15に表示させてもよい。この場合、表示部15は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれが検出した現在のエタノールの濃度を表示する。よって、表示部15によりエタノールの濃度を容易に把握することができる。すなわち、血中のエタノール濃度を上昇させうるエタノールの濃度であるかの把握が可能である。
【0078】
(変形例8)
判断部163が、血中のエタノールの濃度が上記所定値に達したと判断した場合、制御部164は、収容室101内からエタノールを除去する必要があることを表示部15に表示させてもよい。表示部15は、推定部161により推定された血中のエタノールの濃度が所定値に達する場合、収容室101内からエタノールを除去する必要があることの表示を行う。
【0079】
また、判断部163が、血中のエタノールの濃度が上記所定値に達していないと判断した場合、制御部164は、収容室101内からエタノールを除去する必要が無いことを表示部15に表示させてもよい。表示部15は、推定部161により推定された血中のエタノールの濃度が所定値に達する場合、収容室101内からエタノールを除去する必要がないことの表示を行う。
【0080】
(変形例9)
判断部163が、血中のエタノールの濃度が上記所定値に達したと判断した場合、または、血中のエタノールの濃度が、上記所定値に達した危険性のある保育器1内の揮発性物質の濃度であると判断した場合を考える。これらの場合、制御部164は、エタノールが患児Xに対し毒性を生じさせる可能性がある旨の警告を表示部15に表示させてもよい。表示部15は、推定部161により推定された血中のエタノールの濃度が所定値に達する場合、エタノールが患児Xに対し毒性を生じさせる可能性がある旨の警告を表示する。
【0081】
(変形例10)
制御部164は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれが検出したエタノールの濃度の推移、トレンド、積算値、分散、範囲および変動係数の少なくとも1つを表示部15に表示させてもよい。この場合、表示部15は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれが検出したエタノールの濃度の推移、トレンド、積算値、分散、範囲および変動係数の少なくとも1つを表示する。これにより、収容室101内のエタノールの濃度に関する情報を容易に確認できる。
【0082】
表示部15は、積算値を表示する場合、収容室101内のエタノールの濃度の積算値、または、収容室101内のエタノールの濃度が特定の濃度以上を推移した時間の積算値を表示する。また、制御部164は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれが検出したエタノールの濃度について、以下のものを表示部15に表示させてもよい。具体的には、制御部164は、エタノールの濃度が推移する値の範囲、積算値がとりうる値の範囲、分散の値の範囲および変動係数の値の範囲の少なくとも1つを表示部15に表示させてもよい。
【0083】
(変形例11)
制御部164は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出したエタノールの濃度に基づき、患児Xに対して処置を行う場合の安全性を複数の段階で表示部15に表示させてもよい。この場合、表示部15は、患児Xに対して処置を行う場合の安全性を複数の段階で表示する。
【0084】
(変形例12)
制御部164は、浄化装置120の稼動状況として、浄化装置120のファンの回転数を表示部15に表示させてもよい。この場合、表示部15は、浄化装置120のファンの回転数を表示する。
【0085】
(変形例13)
制御部164は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出したエタノールの濃度に基づき、収容室101内においてエタノールの飽和状態であるか、および、エタノールの脱離の発生度合いが規定範囲内かの少なくとも一方を表示部15に表示させてもよい。この場合、表示部15は、収容室101内においてエタノールの飽和状態であるか、および、エタノールの脱離の発生度合いが規定範囲内かの少なくとも一方を表示する。
【0086】
(変形例14)
取得部162は、(1)患児Xの在胎週数、(2)患児Xの日齢および(3)上記装着情報とは別に、患児Xの他の情報を取得してもよい。取得部162が取得する患児Xの他の情報は、例えば、(4)患児Xに対して実施されている呼吸管理の方法、および(5)患児Xに動脈ラインがつながれているか否かを示す動脈ラインの有無情報の少なくとも一方である。
【0087】
使用者による操作パネル102aの操作により、取得部162に患児Xの他の情報が入力された場合、取得部162は、患児Xの他の情報を取得する。判断部163は、取得部162により取得された患児Xの他の情報と、推定部161によって推定された血中のエタノールの濃度とに基づき、エタノールによる患児Xの健康状態への影響を判断する。
【0088】
(変形例15)
推定部161は、取得部162により取得された変形例14の患児Xの他の情報と、予め回帰分析により定められた回帰係数と、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出したエタノールの濃度と、に基づき、血中のエタノールの濃度を推定してもよい。
【0089】
ここで、(1)患児Xの在胎週数、(2)患児Xの日齢、(3)上記装着情報、(4)上記呼吸管理の方法および(5)上記動脈ラインの有無情報に応じて、統計の対象となる複数の患児を複数のグループに分ける。上記回帰係数は、複数のグループ毎に定められるとともに、1つのグループについて採血により得られた血中のエタノールの濃度の平均値と、エタノールセンサが検出したエタノールの濃度と、から定められる統計データである。
【0090】
上記回帰係数は、記録装置21に記録されている。推定部161は、取得部162により取得された変形例14の患児Xの他の情報に対応するグループから定められる回帰係数と、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出したエタノールの濃度と、に基づき、血中のエタノールの濃度を推定する。
【0091】
(変形例16)
制御部164は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cにより検出されたエタノールの濃度に基づき、保育器1外にあるセンサ等の外部の機器を制御してもよい。保育器1外にある外部の機器は、所定の機器の一例である。
【0092】
(変形例17)
図1に示す保育器1では、浄化装置120をベッド11の片側(患児Xの頭側)に2つ配置している例を示しているが、配置および配置される数はこれに限定されるものではない。浄化装置120を反対側(患児Xの足側)に2つ配置してもよいし、ベッド11の両側に浄化装置120を1つずつ配置してもよい。また、浄化装置120を1つまたは3つ以上配置してもよい。
【0093】
(変形例18)
複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのうち少なくとも1つのエタノールセンサは、揮発性物質除去装置110または浄化装置120に設けられていてもよい。これにより、エタノールセンサは、揮発性物質除去装置110または浄化装置120が取り込む空気または排出する空気のエタノールの濃度を検出することができる。
【0094】
(変形例19)
制御装置16は、保育器1外にある外部の機器とデータの送受信を行ってもよい。この場合、記録装置21は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cのそれぞれについて推定部161が算出した積算値を記録する。
【0095】
制御部164は、記録装置21に記録された積算値を、保育器1外にある外部の機器に送信する。取得部162は、制御装置16が保育器1外にある外部の機器から受信したデータを取得する。制御部164が積算値を保育器1外にある外部の機器に送信することにより、患児Xを保育器1から移動させる場合、積算値を保育器1外にある外部の機器に引き継ぐことができる。
【0096】
(変形例20)
報知手段としては、表示部15以外に音声出力部が挙げられる。判断部163が、血中のエタノールの濃度が上記所定値に達したと判断した場合、制御部164は、血中のエタノールの濃度が上記所定値に達したことを上記音声出力部に音声出力させる。よって、上記音声出力部は、推定部161により推定された血中のエタノールの濃度が所定値に達する場合、血中のエタノールの濃度が上記所定値に達したことについて音声出力する。
【0097】
(変形例21)
揮発性物質モニタリングシステム100は、表示部15と、記録装置21と、送信装置22と、推定部161と、取得部162と、判断部163と、の少なくとも1つを備えてもよい。揮発性物質モニタリングシステム100が推定部161を備えず、表示部15を備える場合を考える。この場合、表示部15は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cが検出したエタノールの濃度と、上記検出時刻情報と、を表示する。
【0098】
(変形例22)
揮発性物質モニタリングシステム100は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cに代えて、複数のイソプロパノールセンサを備えてもよい。この場合、実施形態1~3において複数のエタノールセンサ14a,14b,14cを複数のイソプロパノールセンサに読み換える。
【0099】
複数のイソプロパノールセンサは、イソプロパノールの濃度を検出する。複数のエタノールセンサ14a,14b,14cおよび複数のイソプロパノールセンサは、揮発性物質の濃度を検出するセンサの一例である。
【0100】
(変形例23)
本開示は、揮発性物質除去装置110および浄化装置120の一方または両方を備えない保育器1にも適用可能である。また、揮発性物質モニタリングシステム100が備えるエタノールセンサの数は、エタノールセンサ14a,14b,14cの3つに限定されるものではなく、2つまたは4つ以上であってもよい。さらに、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cの設置位置は、上述した位置以外の位置でもよい。
【0101】
(変形例24)
揮発性物質除去装置110および浄化装置120は、ベッド11の下部側に設けられていてもよい。制御部164は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cにより検出されたエタノールの濃度に基づき、循環部410が備えるファンの回転数を制御する。これにより、収容室101内を循環する空気の量を変更することができ、揮発性物質除去装置110および浄化装置120に除去させるエタノールの量を変更できる。よって、揮発性物質除去装置110および浄化装置120がベッド11の下部側に設けられている場合であっても、収容室101内のエタノールの濃度を下げることができる。
【0102】
(変形例25)
供給部420および排出部430の少なくとも一方は、ファンを備えてもよい。制御部164は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cにより検出されたエタノールの濃度に基づき、供給部420および排出部430の少なくとも一方が備えるファンの回転数を制御する。これにより、揮発性物質除去装置110および浄化装置120によるエタノールの除去が行われない場合であっても、収容室101内の空気の入れ替えを行うことができ、収容室101内のエタノールの濃度を下げることができる。
【0103】
(変形例26)
収容室101内に温度センサおよび湿度センサの少なくとも一方が設置されていてもよい。この場合、当該温度センサは収容室101内の温度を検知し、当該湿度センサは収容室101内の湿度を検知する。制御部164は、上記温度センサが検知した温度および上記湿度センサが検知した湿度の少なくとも一方に基づいて、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cの出力を補正する。
【0104】
〔実施形態2〕
本開示の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図3は、本開示の実施形態2に係る保育器2の概略斜視図である。
【0105】
図1に示す保育器1では、収容室101のベッド11の上部側で、循環部410による保育器1内の空気の循環、供給部420からの保育器1内への空気の供給、および排出部430からの保育器1外への空気の排出を行っている。つまり、
図1に示す保育器1における主な空気の循環は、収容室101のベッド11の上部側で行われる。このため、収容室101のベッド11上の患児Xに空気の流れによる温度変化の影響を与える可能性がある。
【0106】
そこで、収容室101のベッド11上の患児Xに空気の流れによる温度変化の影響を少なくするために、例えば
図3に示す保育器2の構成とすることが好ましい。保育器2では、収容室101のベッド11の下部側で、保育器1内の空気の循環、保育器1内への空気の供給、および保育器1外への空気の排出を行うようにすることが好ましい。保育器1内から保育器1外への空気の排出方向については、保育器1内の空気の循環方向を阻害しない方向(例えば循環方向と同じ方向)に排出するのが好ましい。
【0107】
図3に示す保育器2では、図示されていないが、
図1と同じ循環部410および供給部420がベッド11の下部に配置されている。保育器2では、
図1に示す排出部430のように保育器1の空気を積極的に保育器1外に排出する装置を設けない。また、保育器2では、収容室101の開口部101aと、収容室101と載置台102との間に存在する僅かな隙間等と、を通して、保育器1内の空気を保育器1外に排出させている。
【0108】
保育器2では、保育器2内の空気は、ベッド11の下部に配置された循環部410によって温度および湿度が調節された空気が、保育器1の長辺側の内壁に沿ってベッド11の下部から収容室101の上部に導かれる。また、保育器2内の空気は、保育器2の短辺側の内壁に沿ってベッド11上の空気がベッド11の下部の循環部410に導かれる。このように保育器1では、患児Xに空気の流れによる温度変化の影響が少ないようにされている。
【0109】
従って、保育器2によれば、収容室101内の患児Xに保育器2内の空気の流れの影響を少なくした状態で、保育器2内の空気を清浄に保ち、かつ空気の温度および湿度を適切に保つことが可能となる。
【0110】
〔実施形態3〕
本開示の実施形態3について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1および2にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0111】
図4は、本開示の実施形態3に係る保育器3の断面を示す断面図である。
図4に示すように、保育器1は、水槽17と、加熱部18と、ヒーター19と、ファン20と、を備える。水槽17は水を収容している。加熱部18は、水槽17内に設けられており、水槽17が収容している水を加熱することにより、蒸気を発生させる。
【0112】
加熱部18により発生した蒸気は、ファン20によって収容室101内を循環する。水槽17および加熱部18は、ボイラーを構成している。ヒーター19は、ファン20によってヒーター19に送られた空気を加熱することにより、収容室101内の温度を上昇させる。
【0113】
制御部164は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cにより検出されたエタノールの濃度に基づき、加熱部18、ヒーター19およびファン20の少なくとも1つを制御する。加熱部18、ヒーター19およびファン20はそれぞれ、所定の機器の一例である。具体的に以下に説明する。
【0114】
制御部164は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cにより検出されたエタノールの濃度に基づき、加熱部18の出力を制御する。具体的には、制御部164は、加熱部18に供給される電流の大きさを制御する。同様に、制御部164は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cにより検出されたエタノールの濃度に基づき、ヒーター19の出力を制御する。具体的には、制御部164は、ヒーター19に供給される電流の大きさを制御する。
【0115】
また、制御部164は、複数のエタノールセンサ14a,14b,14cにより検出されたエタノールの濃度に基づき、ファン20の回転数を制御する。制御部164が、加熱部18、ヒーター19およびファン20の少なくとも1つを制御することにより、収容室101内の温度および湿度を調節可能である。
【0116】
〔ソフトウェアによる実現例〕
揮発性物質モニタリングシステム100(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御装置16に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0117】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置16(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記録装置21(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置16と記録装置21により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0118】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0119】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0120】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0121】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0122】
1、2、3 保育器 11 ベッド
11a 表面 12 衝立部
13 ベッドステージ 14a、14b、14c エタノールセンサ
15 表示部 16 制御装置
17 水槽 18 加熱部
19 ヒーター 20 ファン
21 記録装置 22 送信装置
100 揮発性物質モニタリングシステム
101 収容室 101a 開口部
102 載置台 102a 操作パネル
110 揮発性物質除去装置 120 浄化装置
161 推定部 162 取得部
163 判断部 164 制御部
401 空調装置 410 循環部
420 供給部 430 排出部
【要約】
【課題】保育器内におけるエタノール等の揮発性物質の濃度を正確に把握し、揮発性物質による患児の健康状態への影響を的確にモニタリングする。
【解決手段】揮発性物質モニタリングシステム(100)は、患児を収容する収容室(101)内のエタノールの濃度を検出する複数のエタノールセンサ(14a,14b,14c)を備え、血中のエタノールの濃度を推定する推定部(161)と、エタノールの濃度および検出時刻情報について、記録を行う記録装置(21)と、表示を行う表示部(15)と、外部への送信を行う送信装置(22)と、の少なくとも1つを備える。
【選択図】
図2