(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】異常卵検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/85 20060101AFI20221021BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20221021BHJP
A01K 43/00 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
G01N21/85 A
G01N21/27 Z
A01K43/00
(21)【出願番号】P 2018049940
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000162238
【氏名又は名称】共和機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】友末 琢磨
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-242190(JP,A)
【文献】特開2002-122418(JP,A)
【文献】特許第2812466(JP,B2)
【文献】特開2003-232741(JP,A)
【文献】特開2016-170150(JP,A)
【文献】特開2011-237251(JP,A)
【文献】特開2002-139426(JP,A)
【文献】特開平03-103129(JP,A)
【文献】特開2001-139426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - 21/958
G01N 21/00 - 21/01
G01N 21/17 - 21/61
G01N 33/08
A01K 43/00
B07C 5/342
B65G 43/00 - 43/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に開口部を有する
卵トレイに載置されて搬送される、または
下方に開放部を有する卵保持搬送部に保持されて搬送される卵の一方に配置され、卵に光を照射する少なくとも1つの照射部と、
前記卵トレイに載置されて搬送される、または卵保持搬送部に保持されて搬送される卵の他方に配置され、卵を通過した透過光を受光する少なくとも1つの受光部と、
卵の下方に配置される前記照射部または卵の下方に配置される前記受光部の近位から圧縮ガスを卵に向かって吹き出す圧縮ガス吹出部と、を有する異常卵検出装置。
【請求項2】
前記照射部および前記受光部の位置に至る前の搬送位置にある卵に対して、卵の下方あるいは卵の液だれ形成面に向かって、圧縮ガスを噴射する液だれ清掃部(85)と、を有する、
請求項1に記載の異常卵検出装置。
【請求項3】
前記圧縮ガスを連続吹き出しまたはパルス吹き出すように圧縮ガス供給部を制御する圧縮ガス供給制御部を有する、
請求項1または2に記載の異常卵検出装置。
【請求項4】
前記照射部は、搬送される卵の上方に配置され、かつ下方の卵に向かって光を照射し、
前記受光部は、搬送される卵の下方に配置され、かつ卵を通過した透過光を受光する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の異常卵検出装置。
【請求項5】
前記照射部は、搬送される卵の下方に配置され、かつ上方の卵に向かって光を照射し、
前記受光部は、搬送される卵の上方に配置され、かつ卵を通過した透過光を受光する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の異常卵検出装置。
【請求項6】
前記圧縮ガス吹出部が、内部空間と、前記内部空間から圧縮空気を吹き出すための開口部とを有し、卵の下方に配置される前記受光部の先端部あるいは卵の下方に配置される前記照射部の投光面が前記開口部と、前記先端部あるいは前記投光面の径方向において間隔を設けて配置される、請求項1に記載の異常卵検出装置。
【請求項7】
前記圧縮ガス吹出部は、少なくとも1つのノズルを有し、ノズルから圧縮ガスを吹き出す、請求項1に記載の異常卵検出装置。
【請求項8】
少なくとも1つの前記照射部と少なくとも1つの前記受光部とが一対のユニットを構成し、
複数列に搬送される複数の卵のそれぞれに対し、前記一対のユニットを配置する、請求項1から7のいずれか1項に記載の異常卵検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常卵を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、卵の自動検査装置であって、搬送される卵の下方から上方に向かって照明光を卵にあて、卵の上方から下方に向かって透過光を撮像する構成を開示している。
特許文献2は、卵の下方から光源灯で光を照射し、フォトダイオードアレイに可撓性の光ファイバを接続した受光部を卵の上方に配置して透過光を撮像し、かつ卵の斜め下方に配置して反射光を撮像する構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-118722号公報
【文献】特許第4201237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および2では、透過光を卵の上方から撮像する構成となっている。これは受光部が下方に配置された場合、割れ卵からの液だれや洗浄後の洗浄液だれが受光部に接触するとたちまち検査精度が低下するからである。特許文献2において反射光を撮像するに受光部が卵の鉛直下方に配置されないように斜め下方に配置されているのも液だれを回避するためである。一方で、このように斜めにする場合には、卵の下方における装置空間を大きくとる必要がある。
【0005】
そして、複数列に配置された隣り合う複数の卵同士を検査させたいとの要望や、コンベア搬送用の卵トレイに載置された状態で複数の卵を検査したいとの要望がある。すなわち、狭い空間に受光部、照射部を配置させたいとの要望がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、液だれの問題を低減しつつ、小空間でも検査可能な異常卵検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一発明の異常卵検出装置は、
搬送される卵の一方に配置され、卵に光を照射する少なくとも1つの照射部と、
搬送される卵の他方に配置され、卵を通過した透過光を受光する少なくとも1つの受光部と、
卵の下方に配置される前記照射部または卵の下方に配置される前記受光部の近位から圧縮ガスを卵に向かって吹き出す圧縮ガス吹出部と、を有する。
【0008】
前記受光部は、連続的に搬送されている状態の卵を通過した透過光を受光してもよい。
前記照射部は、1または2以上であってもよい。
本発明において、照射部は1つまたは2つであってもよい。
第一照射部と第二照射部は、卵中心を通る鉛直線(Z)を基準に所定の傾斜角度(θ1、θ2)で卵を照射してもよい。
第一照射部と第二照射部は、卵中心を通る鉛直線(Z)を基準に対称配置(θ1=θ2)されていてもよい。
【0009】
一実施形態として、前記照射部は、搬送される卵の上方に配置され、かつ下方の卵に向かって光を照射してもよい。この場合に、前記受光部は、搬送される卵の下方に配置され、かつ卵を通過した透過光を受光してもよい。前記圧縮ガス吹出部は、前記受光部の近位に配置されていてもよい。
【0010】
他の一実施形態として、前記照射部は、搬送される卵の下方に配置され、かつ上方の卵に向かって光を照射してもよい。この場合に、前記受光部は、搬送される卵の上方に配置され、かつ卵を通過した透過光を受光してもよい。前記圧縮ガス吹出部は、前記照射部の近位に配置されてもよい。
照射部を搬送される卵の下方に配置することで大破卵の検査を精度良く行える。
【0011】
また、照射部、卵、受光部を例えば、側面視で一直線上に配置してもよい。これにより、小空間でも照射部と受光部を配置可能にできる。照射部からの光の照射角は垂直でなくともよい。
また、少なくとも受光部を光ファイバで構成してもよい。光ファイバにすることで、小径の受光部を形成できる。
前記受光部は単一で構成してもよく、2以上で構成してもよい。
【0012】
また、異常卵検出装置は、卵の透過光を受ける受光部(光ファイバ)、光ファイバで伝送された光を分光する分光素子と波長別に電気信号に変換するフォトダイオードアレイ、電気信号を分光スペクトルに変換して数学的処理を施す演算部を有して構成されていてもよい。
【0013】
前記圧縮ガス吹出部は、前記受光部の少なくとも周囲に配置されていてもよい。
前記圧縮ガス吹出部は、前記受光部を中心にしたドーナツ状に配置されていてもよい。
前記圧縮ガス吹出部が、内部空間と、前記内部空間から圧縮空気を吹き出すための開口部とを有し、卵の下方に配置される少なくとも前記受光部の先端部あるいは卵の下方に配置される前記照射部の投光面が前記受光開口部と径方向(横方向)において間隔を設けて配置されていてもよい。前記間隔から圧縮ガスが吹きだし、受光部の受光面あるいは照射部の投光面に液だれが接触しないように構成される。
前記圧縮ガス吹出部は、圧縮ガス供給部と接続され、少なくとも1つのノズルを有し、ノズルから圧縮ガスを吹き出す構成であってもよい。
圧縮ガス吹出部から吹き出される圧縮ガスは、連続吹き出しでもよく、パルス吹き出しでもよい。パルス吹き出しにすることで、圧縮ガスの消費を節約できる。
圧縮ガス吹出部は、圧縮ガスの吹き出しを停止、始動させるための開閉部(あるいは弁)を有していてもよく、上記機能を圧縮ガス供給部側の機能(例えば、制御弁)が実行してもよい。
【0014】
圧縮ガス吹出部から連続して吹き出す圧縮ガスの圧力は、大気圧の1.02倍以上から3.0倍程度が例示される。圧縮ガスにより卵が浮いたり、他の装置に悪影響がないように設定される。
圧縮ガス吹出部からパルスで吹き出す圧縮ガスの圧力は、大気圧の2倍以上から6倍程度が例示される。
また、圧縮ガス吹出部から吹き出す圧縮ガスの圧力として、5kPa~30kPa程度が例示される。
圧縮ガスの吹出は、少なくとも卵が受光部あるいは照射部の上方を搬送されている間、検査中などに行われる。
連続吹き出しの場合において、圧縮ガスの吐出量は、例えばレギュレータによって単位時間あたり一定量に制御されることが好ましいが、特に制限されない。
【0015】
上記の異常卵検出装置は、さらに、卵の下方に配置される前記照射部の照射面または卵の下方に配置される前記受光部の受光面に向かって、圧縮ガスを噴射する第一液だれ清掃部を有していてもよい。
上記の異常卵検出装置は、さらに、卵の下方(あるいは卵の液だれ形成面)に向かって、圧縮ガスを噴射する第二液だれ清掃部を有していてもよい。
【0016】
また、第二発明の異常卵検出装置は、
搬送される卵の一方に配置され、卵に光を照射する少なくとも1つの照射部と、
搬送される卵の他方に配置され、卵を通過した透過光を受光する少なくとも1つの受光部と、
卵の下方に配置される前記照射部の照射面または卵の下方に配置される前記受光部の受光面に向かって、圧縮ガスを噴射する第一液だれ清掃部を有する。
【0017】
また、第三発明の異常卵検出装置は、
搬送される卵の一方に配置され、卵に光を照射する少なくとも1つの照射部と、
搬送される卵の他方に配置され、卵を通過した透過光を受光する少なくとも1つの受光部と、
卵の下方あるいは卵の液だれ形成面に向かって、圧縮ガスを噴射する第二液だれ清掃部を有する。
【0018】
上記第一、第二、第三発明の異常卵検出装置において、第一、第二液だれ清掃部は、圧縮ガス供給部と接続される少なくとも1つの噴射ノズルで構成させていてもよい。
また、第一、第二液だれ清掃部は、圧縮ガスの噴射を停止、始動させるための開閉部(あるいは弁)を有していてもよく、上記機能を圧縮ガス供給部側の機能(例えば、制御弁)が実行してもよい。
第一、第二液だれ清掃部は、予め設定される一定間隔で圧縮ガスを噴射してもよい。
汚れを清掃するために、第一、第二液だれ清掃部から噴射される圧縮ガスの圧力は、大気圧の2倍以上から6倍程度が例示される。
第一液だれ清掃部は、照射面と受光面が液だれなどで汚れた場合に、連続噴射またはパルス噴射してもよい。
第一液だれ清掃部は、圧縮ガスが照射面あるいは受光面にあたる角度が、照射面あるいは受光面に対し垂直(90°)、または、所定角度となるように配置されていてもよい。
「所定角度」は、0°以上89°以下、好ましくは、0°以上30°以下、より好ましくは0°以上、15°以下である。他の装置部位や卵への飛び移りがないように設定されることが好ましい。
【0019】
第一、第二、第三発明の異常卵検出装置は、さらに、受光部で受光される受光量が低下あるいは予め設定されている閾値以下か否かを判定する受光量判定部をさらに有し、
前記受光量判定部が前記受光量が低下あるいは予め設定されている閾値以下であると判定した場合に、前記第一液だれ清掃部が圧縮ガス噴射をする構成であってもよい。
【0020】
上記異常卵検出装置において、卵の下方に配置される前記照射部または卵の下方に配置される前記受光部と前記卵との間に、空気以外の物理的構造物は存在しない構成でもよい。
【0021】
「下方」は、卵に向かって垂直下方でもよい。
「上方」は、卵に向かって垂直上方でもよい。
照射部、卵、受光部は、一直線上に配置されることが好ましい。
受光部は、照射部と卵との一直線上に対し傾斜する角度であってもよい。
【0022】
前記受光部の外径が、最大で5mm~15mmでもよい。
前記受光部が断面円状である場合に、最大直径が5mm~15mmでもよい。
【0023】
「異常卵」は、例えば、ひび割れ、大破卵、血卵、内部異常などである。
「圧縮ガス」は、例えば、空気、フィルター通過後の清浄空気、不活性ガスなどが挙げられる。
【0024】
「卵トレイ」は、卵受の底面に小さな開口部を有していてもよい。
本発明において、この開口部から透過光を受光するように受光部が配置されていてもよい。小径の受光部で構成されていることで、透過光を好適に受光できる。
また、他の本発明において、照射部は、卵トレイの開口部あるいは卵保持搬送部の開放部に向かって照射光を照射する照射部が配置されていてもよい。卵保持搬送部は、1個の卵を保持しながら搬送する機能を有する。
【0025】
上記各発明の異常卵検出装置は、少なくとも1つの前記照射部と少なくとも1つの前記受光部とが一対のユニットを構成し、複数列に搬送される複数の卵のそれぞれに対し、前記一対のユニットを配置していてもよい。卵トレイに配置された複数列の卵を同時に検出することができる。
【発明の効果】
【0026】
上記発明によれば、圧縮ガス吹出部から吹き出された圧縮ガスによって、卵からの液だれが卵の下方に配置された受光部あるいは照射部に接触しないように構成できる。
また、液だれなどでよごれた受光面または照射面を圧縮ガスで清掃できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態1に係る異常卵検出装置の機能を説明する図である。
【
図2】実施形態2に係る受光部と照射部の配置の一例を説明する図である。
【
図3】実施形態3に係る異常卵検出装置の機能を説明する図である。
【
図4】実施形態4に係る異常卵検出装置の機能を説明する図である。
【
図5】実施形態5に係る異常卵検出装置の機能を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施形態1)
図1は、異常卵検出装置1の機能を説明する図である。異常卵検出装置1は、搬送される卵Eの上方に配置され、卵Eに光を照射する第一、第二照射部21、22と、搬送される卵Eの下方に配置され、卵を通過した透過光を受光する単一の受光部10と、受光部10の周囲から圧縮ガスを卵Eに向かって吹き出す圧縮ガス吹出部30とを有する。
【0029】
第一照射部21と、第二照射部22は、光ファイバで構成され、光源40と接続される。
第一照射部21と第二照射部22は、卵中心を通る鉛直線Zを基準に所定の傾斜角度(θ1、θ2)で卵を照射する。傾斜角度θ1=θ2であり、θ1とθ2は、10°~60°の範囲で設定できる。
光ファイバで構成された第一照射部21と、第二照射部22の外径が8mm~15mmであり、小空間でも配置可能となり、多数列の卵に対しても配置可能となる。
【0030】
受光部10は、光ファイバで構成され、本実施形態では受光部10の外径が8mm~15mmが例示される。受光部10は、卵中心を通る鉛直線Zのライン状に配置される。
受光部の外径を8mm~15mにできることで、小空間でも配置可能となり、多数列の卵に対しても配置可能となる。
【0031】
圧縮ガス吹出部30は、内部空間32と、圧縮空気を吹き出すためでかつ透過光を受光するため開口部31とを有する。受光部10の受光面(先端位置)が開口部31と径方向(横方向)において間隔を設けて配置されている。この間隔(例えば1mmから5mm)から圧縮ガスが吹き出し、卵Eからの液だれが受光部10の受光面に接触しないようにできる。
また、本実施形態において、受光部10と卵Eとの間に、空気以外の物理的構造物は存在しないが、圧縮ガスを受光部10の近位から卵Eに向かって吹き出させることにより、液だれが受光部10に接触しないようにできる。
【0032】
圧縮ガス吹出部30は、圧縮ガス供給部60と接続される。圧縮ガス供給部60は、高圧ガスボンベあるいは圧縮機、圧力調整弁、流量調整弁、制御弁などを有し、一定圧力の圧縮ガスを、圧縮ガス吹出部30の内部空間32へ供給する。
圧縮ガス供給制御部55は、圧縮ガス吹出部30から連続的に吹き出す圧縮ガスの圧力としては、例えば、5kPa~10kPa程度になるように、圧縮ガス供給部60を制御してもよい。
また、圧縮ガス供給制御部55は、圧縮ガス吹出部30からパルスとして吹き出す圧縮ガスの圧力としては、例えば、大気圧の2倍以上から6倍程度になるように圧縮ガス供給部60を制御してもよい。圧縮ガス供給制御部55は、所定動作を実行するプログラムと、そのプログラムを実行するプロセッサーとで構成されうる。
【0033】
卵Eは、卵保持搬送部70によってX方向に連続的に搬送されている。
図1において卵Eは一列搬送である。卵保持搬送部70は、下方に開放部701を有し、この開放部701により、透過光を受光部10で受光できる。
また、複数列搬送の場合は、
図1の紙面垂直方向に卵が配置され、同様に照射部、受光部、圧縮ガス吹出部の一対のユニットが配置される。
【0034】
異常卵検出装置1は、光ファイバの受光部10から伝送された光を分光する分光素子51と、波長別に電気信号に変換するフォトダイオードアレイ52と、電気信号を分光スペクトルに変換して数学的処理を施す演算部53とを有する。
演算部53は、所定動作を実行するプログラムと、そのプログラムを実行するプロセッサーとで構成されうる。本実施形態では、予め測定された卵殻色毎の正常卵の分光スペクトルのデータをメモリ54に記憶しておく。検査卵の卵殻色を判別し、検査卵の分光スペクトルとメモリ54に記憶されている正常卵の分光スペクトルについて、パターンの類似度を分級し、血卵であるか否かを判別する。スペクトルパターンの類似度は種々のパターン認識法を用いてもよい。詳細は後述する。
【0035】
メモリ54は、血液を含まない正常卵を透過した光の分光スペクトルパターン(正常卵スペクトルパターン)と、血液の吸光が観測される560nm~590nmの波長領域のパターンとを、複数の卵殻色のそれぞれにおいて予め測定した血卵判定データを記憶する。
演算部53は、搬送される卵E(検査卵)の透過光の分光透過スペクトルパターンを前記560nm~590nmの波長領域において測定する。
演算部53は、検査卵の透過光の640nm~650nmの波長領域における卵殻色素の吸光度で検査卵の卵殻色を判別する。
演算部53は、測定された検査卵の分光透過スペクトルパターンと、メモリ54に記憶されている決卵判定データ(正常卵のスペクトルパターンにおける前記560nm~590nmの波長領域)とのパターンの類似度によって、検査卵が血卵であるか否かを判別する。
【0036】
演算部53は、卵Eの透過光の分光透過スペクトルを、卵殻色素のプロトポルフィリンが吸光しない波長領域における吸光度で規格化してもよい。
演算部53は、卵殻色の判別において、スペクトルの2次微分曲線における色素のピーク強度によって、卵殻色を判別してもよい。
演算部53は、血卵の判別において、血液のヘモグロビン類に基づく吸光が観測される560nm~590nmの波長領域において、卵の前記分光透過スペクトルパターンと、正常卵の分光透過スペクトルパターンとの類似度を相関係数で示すことによって、血卵であるか否かを判別してもよい。
【0037】
(実施形態2)
図2に示す実施形態は、受光部10が上方で、第一、第二照射部21、22が下方に配置された一例である。第一、第二照射部21、22のそれぞれに圧縮ガス吹出部30が配置される。各照射部からの光は開放部701から卵Eに投光され、卵Eの上方の受光部10によって、透過光が受光される。
圧縮ガス吹出部30は、第一、第二照射部21、22のそれぞれに別体として構成しているが、これに制限されず、一体として構成してもよい。
圧縮ガス供給制御部55によって、圧縮ガス供給部60が制御されている。
【0038】
(実施形態3)
図3に示す実施形態は、受光部10が下方で、第一、第二照射部21、22が上方に配置された一例である。圧縮ガス吹出部30の替わりに、第一液だれ清掃部81が、受光部10の受光面に対し、所定角度に配置されている。第一液だれ清掃部81は、圧縮ガス供給部60と接続された少なくとも1つの噴射ノズルとして構成されている。
本実施形態は、液だれが受光面に付着することで、受光量が低下するという着想に基づいている。
受光量判定部56は、受光部10で受光される受光量が例えば10%低下したか否かを判定する。判定結果が受光量が例えば10%低下したとの場合に、圧縮ガスを噴射する指示を圧縮ガス供給制御部55に行う。圧縮ガス供給制御部55は、その指示に応じて、圧縮ガス供給部60を制御し、圧縮ガスを第一液だれ清掃部81(噴射ノズル)に送り、噴射ノズルから圧縮ガスを受光部10の受光面に噴射させる。圧縮ガスの噴射により、液だれが除去されれば受光量が回復する。受光量判定部56は、受光部10で受光される受光量の低下分が回復したか否かあるいは所定の閾値に達したか否かを判定する。その判定結果が、受光量の低下分が回復したあるいは所定の閾値に達したとの場合に、圧縮ガスの噴射を停止する指示を圧縮ガス供給制御部55に行う。圧縮ガス供給制御部55は、その指示に応じて、圧縮ガス供給部60を制御し、圧縮ガスの供給を停止する。
なお、別実施形態として、受光量の回復を判定することなく、一定期間圧縮ガスを噴射するように制御してもよい。
受光量判定部56は、所定動作を実行するプログラムと、そのプログラムを実行するプロセッサーとで構成されうる。
【0039】
(実施形態4)
図4に示す実施形態は、受光部10が上方で、第一、第二照射部21、22が下方に配置された一例である。圧縮ガス吹出部30の替わりに、第一液だれ清掃部82a、82bが、第一照射部21、第二照射部22の照射面に対し、所定角度に配置されている。第一液だれ清掃部82a、82bは、圧縮ガス供給部60と接続された少なくとも1つの噴射ノズルとして構成されている。
本実施形態は、液だれが照射面に付着することで、投光量が停止し、よって受光量も低下するという着想に基づいている。
受光量判定部56は、受光部10で受光される受光量が例えば10%低下したか否かを判定する。判定結果が受光量が例えば10%低下したとの場合に、圧縮ガスを噴射する指示を圧縮ガス供給制御部55に行う。圧縮ガス供給制御部55は、その指示に応じて、圧縮ガス供給部60を制御し、圧縮ガスを第一液だれ清掃部82a、82b(噴射ノズル)に送り、噴射ノズルから圧縮ガスを第一、第二照射部21、22の照射面に噴射させる。圧縮ガスの噴射により、液だれが除去されれば受光量が回復する。受光量判定部56は、受光部10で受光される受光量の低下分が回復したか否かあるいは所定の閾値に達したか否かを判定する。その判定結果が、受光量の低下分が回復したあるいは所定の閾値に達したとの場合に、圧縮ガスの噴射を停止する指示を圧縮ガス供給制御部55に行う。圧縮ガス供給制御部55は、その指示に応じて、圧縮ガス供給部60を制御し、圧縮ガスの供給を停止する。
なお、別実施形態として、受光量の回復を判定することなく、一定期間圧縮ガスを噴射するように制御してもよい。
受光量判定部56は、所定動作を実行するプログラムと、そのプログラムを実行するプロセッサーとで構成されうる。
【0040】
(実施形態5)
図5に示す実施形態は、受光部10が下方で、第一、第二照射部21、22が上方に配置された一例である。圧縮ガス吹出部30の替わりに、第二液だれ清掃部85が、搬送される卵の下方あるいは卵の液だれ形成面に向かって、圧縮ガスを噴射する。第二液だれ清掃部85は、圧縮ガス供給部60と接続された少なくとも1つの噴射ノズルとして構成されている。
本実施形態では、第二液だれ清掃部85は、受光部10の上方に至る前の搬送位置にある卵に対して圧縮ガスを噴射することが好ましい。なお、これに制限されず、受光部10の上方位置にある卵に対して圧縮ガスを噴射してもよい。
また、搬送方向とは異なる方向に圧縮ガスを噴射することが好ましい。
図5において、受光部10が下方で、第一、第二照射部21、22が上方に配置されているが、受光部10が上方で、第一、第二照射部21、22が下方に配置されていてもよい。
【0041】
(実施例)
図1、2の実施形態1、2において、圧縮ガスの吐出量を調整することで、液だれが下方の受光部あるいは照明部に接触しないことを確認できた。
図3、4の実施形態3、4において、液だれ付着して受光量が低下した場合に、受光面または照射面に圧縮ガスを噴射して除去し、受光量が戻ったことを確認できた。
図5の実施形態5において、卵に形成された液だれが受光部10に接触することなく、事前に排除できたことを確認した。
【0042】
(別実施形態)
実施形態1,2の別実施形態として、圧縮ガス吹出部は、少なくとも1つのノズルを有し、ノズルから圧縮ガスを吹き出す構成であってもよい。
また、実施形態1、2の圧縮ガス吹出部に追加して、実施形態3または4の第一液だれ清掃部81、82a、82bを、さらには実施形態5の第二液だれ清掃装置84を設置してもよい。
また、実施形態3または4の第一液だれ清掃部80、82a、82bに追加して、実施形態5の第二液だれ清掃部85を設置してもよい。
また、異常卵を検出するための構成として、実施形態1の演算部の構成に限定されない。
実施形態1のようなスペクトルパターンの類似度で異常卵を判断する方法に限定されず、例えば、演算部は、所定の波長域の強度が予め設定された閾値以上または未満の時に異常卵であると判断する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 異常卵検出装置
10 受光部
21 第一照射部
22 第二照射部
30 圧縮ガス吹出部
51 分光素子
52 フォトダイオードアレイ
53 演算部
54 メモリ
55 圧縮ガス供給制御部
56 受光量判定部
60 圧縮ガス供給部
81、82a、82b 第一液だれ清掃部
85 第二液だれ清掃部