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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】折り返し治具及び縫製製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D05B 35/04 20060101AFI20221021BHJP
【FI】
D05B35/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018164284
(22)【出願日】2018-09-03
(65)【公開番号】P2020036673
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】510303774
【氏名又は名称】有限会社五綾貿易
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100097320
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 貞二
(74)【代理人】
【識別番号】100131820
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 俊幸
(74)【代理人】
【識別番号】100155192
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 美代子
(74)【代理人】
【識別番号】100215049
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100100398
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】谷本 修
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-047376(JP,U)
【文献】特開昭53-044253(JP,A)
【文献】特開平11-061627(JP,A)
【文献】米国特許第06003456(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫製されるシートを折り返す治具であって;
板状の部材で形成された基部材と;
前記基部材に接続された返し部材であって、板状の部材で形成された接続片と、前記接続片との間に前記シートを挟むことができる押さえ片とを有する返し部材と;
前記基部材と前記接続片とを接続する回動部材であって、広げられた前記シートを前記基部材と前記接続片とに渡って載置できる状態と、前記基部材と前記接続片とが重なった状態と、の間で前記基部材と前記接続片とが相対的に移動できるように回動可能な回動部材とを備え;
前記基部材は、主部と、前記主部から延びる一対の延在部とを有し、前記一対の延在部は相互に間隔をあけて前記主部から同じ方向に延びて構成され;
前記返し部材は、前記一対の延在部のそれぞれに接続された一対で構成された;
折り返し治具。
【請求項2】
前記返し部材は、前記接続片の端部であって前記基部材との接続端とは反対側の端部に設けられた回転軸を有し、前記押さえ片が前記回転軸まわりに前記接続片の面に沿って回動することができるように構成された;
請求項1に記載の折り返し治具。
【請求項3】
縫製されるシートを折り返す治具であって;
板状の部材で形成された基部材と;
前記基部材に接続された返し部材であって、板状の部材で形成された接続片と、前記接続片との間に前記シートを挟むことができる押さえ片とを有する返し部材と;
前記基部材と前記接続片とを接続する回動部材であって、広げられた前記シートを前記基部材と前記接続片とに渡って載置できる状態と、前記基部材と前記接続片とが重なった状態と、の間で前記基部材と前記接続片とが相対的に移動できるように回動可能な回動部材とを備え;
前記返し部材は、前記接続片の端部であって前記基部材との接続端とは反対側の端部に設けられた回転軸を有し、前記押さえ片が前記回転軸まわりに前記接続片の面に沿って回動することができるように構成された;
折り返し治具。
【請求項4】
前記返し部材は、平面視において前記接続片からずれた前記押さえ片を前記接続片と重なる位置に戻す戻り手段を有する;
請求項2又は請求項3に記載の折り返し治具。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の折り返し治具を用いて縫製製品を製造する方法であって;
前記折り返し治具を提供する治具提供工程と;
前記接続片と前記押さえ片との間に前記シートを挟み込むシート供給工程と;
前記接続片と前記押さえ片との間に前記シートを挟み込んだ状態で前記回動部材を回動させて前記返し部材を前記基部材に重ねる重ね工程と;
前記重ね工程の後に前記シートを縫製する縫製工程とを備える;
縫製製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は折り返し治具及び縫製製品の製造方法に関し、特にシートを縫製する際に好適に用いることができる折り返し治具及び縫製製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土、粉粒体、その他の収容対象物を収容するフレキシブルコンテナバッグは、筒状の胴部シートの一方の開口に、円形や四角形等の底部シートをミシンで縫製して製造されるのが一般的である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4959850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
胴部シートに底部シートを縫製する際、底部シートが縫い付けられる胴部シートの端部を、一旦折り返して縫製してから、折り返して二重になった胴部シートの端部に底部シートを縫い付けると、強度が増すこととなり好適である。しかしながら、胴部シートの端部を折り返し、これを押さえながらミシンで送るのは作業者の疲労を増幅させることとなり、生産効率が作業者の熟練度に左右されることとなっていた。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、簡便な構造で縫製時にシートを折り返した状態に維持することができる折り返し治具及び縫製製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る折り返し治具は、例えば図1に示すように、縫製されるシートP(例えば図2参照)を折り返す治具1であって;板状の部材で形成された基部材10と;基部材10に接続された返し部材20であって、板状の部材で形成された接続片21と、接続片21との間にシートPを挟むことができる(図1(B)参照)押さえ片23とを有する返し部材20と;基部材10と接続片21とを接続する回動部材30であって、広げられたシートPを基部材10と接続片21とに渡って載置できる状態と、基部材10と接続片21とが重なった状態と、の間で基部材10と接続片21とが相対的に移動できるように回動可能な回動部材30とを備える。
【0007】
このように構成すると、簡便な構造で、縫製時にシートを折り返した状態を維持することができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る折り返し治具は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様に係る折り返し治具1において、基部材10は、主部11と、主部11から延びる一対の延在部12とを有し、一対の延在部12は相互に間隔をあけて主部11から同じ方向に延びて構成され;返し部材20は、一対の延在部12のそれぞれに接続された一対で構成されている。
【0009】
このように構成すると、シートを折り返した状態を安定的に維持することができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る折り返し治具は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る折り返し治具1において、返し部材20は、接続片21の端部であって基部材10との接続端とは反対側の端部に設けられた回転軸24を有し、押さえ片23が回転軸24まわりに接続片21の面に沿って回動することができるように構成されている。
【0011】
このように構成すると、縫製時に折り返し治具内でシートを円滑に滑らせることができる。
【0012】
また、本発明の第4の態様に係る折り返し治具は、例えば図1に示すように、上記本発明の第3の態様に係る折り返し治具1において、返し部材20は、平面視において接続片21からずれた押さえ片23を接続片21と重なる位置に戻す戻り手段25を有する。
【0013】
このように構成すると、縫製するシートを差し替える際に適切にシートを接続片と押さえ片とで挟むことができる。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係る折り返し治具は、例えば図1及び図3を参照して示すと、上記本発明の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つの態様に係る折り返し治具1を用いて縫製製品を製造する方法であって;折り返し治具1を提供する治具提供工程(S1)と;接続片21と押さえ片23との間にシートPを挟み込むシート供給工程(S2)と;接続片21と押さえ片23との間にシートPを挟み込んだ状態で回動部材30を回動させて返し部材20を基部材10に重ねる重ね工程(S3)と;重ね工程(S3)の後にシートPを縫製する縫製工程(S5)とを備える。なお、提供された折り返し治具に関し、基部材10が一対の延在部12を有し、返し部材20が一対の延在部12のそれぞれに接続された一対で構成されている場合は、典型的には、縫製工程において、一対の延在部12の間及び一対の返し部材20の間でシートを縫製するとよい。
【0015】
このように構成すると、折り返したシートを簡便に縫製することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡便な構造で、縫製時にシートを折り返した状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(A)は本発明の実施の形態に係る折り返し治具の概略構成を示す斜視図、(B)は返し部材の部分側面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る折り返し治具を適用するシートを例示する図であり、(A)は収容袋を想定した分解斜視図、(B)は端部を折り返した状態のシートを例示する斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係る縫製製品の製造方法のフローチャートである。
図4】縫製製品を製造する手順を示す概略図である。
図5】(A)は本発明の実施の形態の変形例に係る折り返し治具の平面図、(B)は折り返し治具の使用態様を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0019】
まず図1(A)を参照して、本発明の実施の形態に係る折り返し治具1(以下、単に「治具1」という。)を説明する。図1(A)は、治具1の概略構成を示す斜視図である。治具1は、基部材10と、返し部材20と、ヒンジ30とを備えている。治具1は、縫製されるシートを折り返す際に主として用いられる。より詳細には、縫製されるシートの端辺を、補強等の目的で折り返して縫製する際に、折り返すと共に折り返した状態を簡便に維持するために、治具1が用いられる。
【0020】
図2は、治具1で端辺を折り返すシートPを例示する図である。本実施の形態では、シートPは、図2(A)に示すように、筒状に形成され、この筒状の一方の開口に底部Bを縫製して当該開口を塞ぐことで形成される収容袋の要素の1つを構成するものである。収容袋の分類(用途)を例示すると、フレキシブルコンテナバッグ、大型収容袋、小型収容袋が挙げられる。フレキシブルコンテナバッグは、収容対象物を収容して保管したり輸送したりするバッグである。大型収容袋には、大型土のう袋、土木用収容袋、土木用袋体が含まれる。小型収容袋には、土のう袋が含まれる。収容袋に収容される収容対象物を例示すると、粉末や粒状物を挙げることができ、具体的には小麦粉、米粒、土、切り屑等が挙げられるが、収容袋に収容可能なものであれば、廃品その他様々な物体であってもよい。
【0021】
収容袋を構成するシートPは、典型的には、化学繊維を織って作られた織物であるが不織布であってもよい。化学繊維として、典型的には、ポリエチレンやポリプロピレン等の糸が用いられるが、これら以外の合成樹脂の糸が用いられてもよい。化学繊維は、用途に応じて適切なものが用いられ、例えば収容袋がフレキシブルコンテナバッグの場合は幅広のものが用いられる。シートPを化学繊維の織物とすることによって引っ張り強度が増すこととなる。また、シートPに底部Bを取り付けて収容袋を形成する際に、底部Bが取り付けられるシートPの端辺を、図2(B)に示すように折り返すと、収容袋が形成された際の強度が増すこととなり好適である。しかしながら、シートPを形成する化学繊維の種類によっては、シートPの端辺を折り返し、折り返し部分の縫製が完了するまでその折り返した状態を維持するのに多大な労力を要する場合がある。治具1(図1(A)参照)は、このような労力を軽減するために用いることができるものである。
【0022】
再び図1(A)に戻って治具1の構成の説明をする。以下の説明において、シートPに言及しているときは適宜図2を参照することとする。基部材10は、板状の材料で形成された部材であり、主部11と、延在部12とを有している。基部材10(主部11及び延在部12)を構成する板状材料は、耐久性の観点からは金属が用いられるとよく、軽量化の観点からは合成樹脂が用いられるとよく、いずれの材料であってもシートPが接する面はシートPの送り(滑り)を円滑にすることができるように表面摩擦抵抗が小さいとよい。また、基部材10を構成する板状部材は、本実施の形態では、厚さが概ね1~2mm前後の薄板状に形成されている。
【0023】
主部11は、シートPが主に載置される部分であり、適切にシートPを載置できる大きさ及び形状であればよく、本実施の形態では概ね200mm×125mmの長方形に形成されている。延在部12は、一対で構成されており、その一対が相互に間隔をあけて、主部11から延びている。一対の延在部12は、本実施の形態では、主部11の長方形の1つの長辺から同じ方向に延びており、その延びる方向は、接続されている長辺に直角(長方形の短辺に平行)で、かつ、接続されている長辺に対向する長辺が存在する側とは逆の方向となっている。一対の延在部12のそれぞれは、本実施の形態では、概ね50mm×40mmの長方形に形成されており、延在部12の長方形の短辺が主部11の長方形の長辺に接続されており、延在部12の長方形の長辺が主部11の長方形の短辺と同一直線上で延びている。このような構成により、本実施の形態では、一対の延在部12の間に、概ね120mm×50mmの長方形の空間が形成されている。なお、主部11と延在部12とは、説明の便宜上仮想の境界線Lvを引いて区別したものであるが、実際には一体に構成されている。
【0024】
返し部材20は、基部材10の延在部12に接続された一対で構成された部材であり、接続片21と、押さえ片23と、回転軸24とを有している。一対の返し部材20は、それぞれ同じ構成となっており、以下の説明において、区別する必要がなく共通の構成あるいは性質について言及する場合は単に「返し部材20」と総称する。返し部材20を構成する各要素(接続片21等)についても同様である。接続片21は、本実施の形態では基部材10と同じ薄板状の材料で形成されているが、基部材10と異なる材料で形成されていてもよい。接続片21は、本実施の形態では長方形に形成されており、長手方向の一方の端部が折り返してある。このように構成された接続片21の各部分について、便宜上、図1(B)に示すように、延在部12に接続された下接続片21sと、平面視において下接続片21sの一部を覆う上接続片21tと、下接続片21sと上接続片21tとを接続する折り返した部分である反転部21rとに区別することとする。下接続片21sは、典型的には、延在部12に対して、幅は概ね同じかやや狭く形成され、長さはやや大きく形成されており、本実施の形態では概ね80mm×35mmの長方形状に形成されている。上接続片21tは、下接続片21sとの間に押さえ片23を配置するための回転軸24を取り付けることができる大きさを有していればよい。
【0025】
押さえ片23は、本実施の形態では基部材10と同じ薄板状の材料で形成されているが、基部材10と異なる材料で形成されていてもよい。押さえ片23は、典型的には、下接続片21sと比較して一回り小さく形成されており、本実施の形態では概ね55mm×20mmの長方形状に形成されている。押さえ片23は、長手方向の一方の端部を下接続片21sと上接続片21tとの間に入れた状態で、回転軸24によって接続片21に取り付けられている。押さえ片23は、下接続片21sと上接続片21tとに挟まれた端部とは反対側の端部の角部が、シートPの引っ掛かりを抑制するために丸みを帯びて(面取りされて)いるとよい。回転軸24は、上述したように押さえ片23を接続片21に取り付ける部材であり、下接続片21sと、押さえ片23と、上接続片21tとを貫通している。回転軸24は、下接続片21s、押さえ片23、上接続片21tのそれぞれの面に垂直に延びている。回転軸24は、下接続片21sと上接続片21tとには固定されており、押さえ片23を回動可能に支持している。押さえ片23は、回転軸24に支持されることにより、回転軸24回りに、接続片21の面に沿って、反転部21rに阻害されない範囲(反転部21rに当たらない範囲)で、回動することができるように構成されている。
【0026】
また、本実施の形態では、押さえ片23の端部と下接続片21sとに、マグネット25が取り付けられている。押さえ片23のマグネット25は、回転軸24が挿通する端部とは反対側の端部の、下接続片21sに向き合う面に取り付けられている。下接続片21sのマグネット25は、押さえ片23の長手方向を下接続片21sの長手方向と平行にしたときに押さえ片23のマグネット25に対向する位置に設けられている。下接続片21sのマグネット25は、下接続片21sと押さえ片23との間へのシートPの出し入れが阻害されることを抑制する観点から、下接続片21sに埋め込まれるか、押さえ片23に対向する面とは反対側の面に取り付けられていることが好ましい。押さえ片23のマグネット25及び下接続片21sのマグネット25は、それぞれ、相互に引き合うようなものが取り付けられている。このような構成により、平面視において押さえ片23が下接続片21sからずれた位置に回動した場合でも、押さえ片23のマグネット25と下接続片21sのマグネット25とが相互に引き合い、押さえ片23を下接続片21sに対して整列した位置に戻すことができる。マグネット25は、戻り手段に相当する。ここで説明した返し部材20の構成の理解をより容易にするために、返し部材20の部分側面図を図1(B)に示している。なお、一対の返し部材20の相互の位置関係を安定させるために、一対の返し部材20をつなぎ部材29で接続して、両者が相対的に固定されているようにするとよい。つなぎ部材29は、典型的には細長い棒状の部材を用いることができる。つなぎ部材29は、返し部材20と一体に構成されていてもよい。
【0027】
ヒンジ30は、基部材10の延在部12と返し部材20の下接続片21sとを回動可能に接続する部材であり、回動部材に相当する。ヒンジ30は、延在部12に対しては、主部11に接続された端部とは反対側の延在部12の端部に接続されている。また、ヒンジ30は、下接続片21sに対しては、反転部21rが形成された端部とは反対側の下接続片21sの端部に接続されている。延在部12と下接続片21sとがヒンジ30で接続されていることにより、治具1は、延在部12と下接続片21sとが面一になった状態と、延在部12に接続片21が重なった状態と、の間で回動することができるように構成されている。ここで、延在部12と下接続片21sとが面一になった状態は、基部材10と下接続片21sとに渡ってシートPを載置することができる状態でもある。また、延在部12に接続片21が重なった状態は、典型的には、上接続片21tが基部材10に接触することで下接続片21sは延在部12に対して若干の(上接続片21t及び反転部21rの厚さの分の)隙間が生じるところ、接続片21が延在部12を覆った状態(平面視において重なった状態)となる。なお、ヒンジ30による基部材10と返し部材20との回動によって、シートPが載置される両者の面が180度よりも大きくなってもよい。また、ヒンジ30は、延在部12及び接続片21と別体の部材ではなく、延在部12及び接続片21それぞれの端部を筒状に形成し、その両者の筒状の部分を直線上に並べて1つの棒状部材あるいはピンを並べた筒状の内部に挿通することにより構成してもよい。換言すれば、延在部12及び接続片21それぞれの端部と1つの棒状部材あるいはピンとの組み合わせによってヒンジを構成してもよい。
【0028】
次に図3及び図4を参照して、治具1を用いてシートPの一端を折り返して縫製した縫製製品の製造方法を説明する。図3は、縫製製品を製造する手順のフローチャートである。図4は、縫製製品を製造する手順を示す概略図である。以下の説明において、治具1及びシートPの構成に言及しているときは、適宜図1及び図2を参照することとする。また、以下の説明は、治具1の作用の説明を兼ねている。縫製製品を製造するのに際し、まず、図4(A)に示すように、治具1を、基部材10と下接続片21sとを開いた状態(両者が同一平面上にある状態)にして、作業台(不図示)に載置する(治具提供工程:S1)。このとき、マグネット25の作用で、押さえ片23の長手方向が下接続片21sの長手方向と平行になっている。次に、図4(B)に示すように、シートPを、端辺が折り返されていない状態(開いた状態)で、この後に折り返そうとする端辺を下接続片21sと押さえ片23との間に挟み込むようにして、治具1にセットする(シート供給工程:S2)。このとき、筒状のシートPの内側が下接続片21sの方を向き、外側が押さえ片23の方を向くようにしてセットする。シートPの端辺を下接続片21sと押さえ片23との間に挟み込むようにすると、基部材10にもシートPの一部が載置されることとなる。
【0029】
シートPを治具1にセットしたら、図4(C)に示すように、シートPの端辺を下接続片21sと押さえ片23との間に挟み込んだ状態で、ヒンジ30を回動させて、返し部材20を基部材10に重ねる(重ね工程:S3)。これにより、下接続片21sと押さえ片23に挟み込まれたシートPの端部が、基部材10に載置されているシートPに重なるように移動し、シートPの端辺が折り返されることとなる。このとき、一対の返し部材20の間及び一対の延在部12の間には、治具1に挟まれたシートPの端辺が折り返された部分が現れることとなる。次に、図4(D)に示すように、折り返した状態のシートPが挟まれた治具1をミシンMにセットする(S4)。このとき、ミシンMの台上に治具1を固定できる締結機構が設けられていると、ミシンMに対する治具1の位置を固定することができて好適である。また、基部材10の主部11を手前側(作業者側)、延在部12を奥側(ミシンM側)にして、返し部材20が基部材10よりも上にある状態で、折り返した状態のシートPが挟まれた治具1をミシンMにセットする。
【0030】
シートPが挟まれた治具1をミシンMにセットしたら、一対の返し部材20の間及び一対の延在部12の間に現れている折り返された部分のシートPの端辺を縫製する(縫製工程:S5)。このとき、縫製するシートPの部分を、治具1に対して送るようにする。換言すれば、ミシンMに対して、治具1の位置を固定したまま、シートPの縫製する部分を移動させる。本実施の形態では、図4(E)に示すように、シートPを、作業者から見て右から左へと送るようにしている。すると、縫製線PL(縫製した後の糸の跡)は、送り方向の下流側である、作業者から見て左方向に延びていくこととなる。縫製したシートPを左側に送り出すと、シートPの端部の折り返した部分に挟まれている押さえ片23のうち、送り方向の下流側(左側)の押さえ片23は、縫製した後の糸に引っ掛かり、シートPの送られる力が加わる。ここで、押さえ片23は、回転軸24回りに回動することができるので、シートPの送られる力が加わると、回転軸24を中心にして回転軸24から遠い先端が送り方向下流側に移動し、縫製線PLが延びようとするラインから外れることとなり、シートPを円滑に送ることができる。
【0031】
筒状のシートPの縫製を続けていると、縫製線PLが一周して治具1の位置に戻ってくる。すると、図4(F)に示すように、一対の押さえ片23のうちの送り方向上流側(作業者から見て右側)の押さえ片23も、縫製した後の糸に引っ掛かり、シートPの送られる力が加わって、回転軸24を中心にして回転軸24から遠い先端が送り方向下流側に移動する。これにより、縫い始めの部分(縫製線PLの先頭)が再び一対の返し部材20の間及び一対の延在部12の間に入ってくる。筒状のシートPの送りが1周して、縫製線PLが所定の長さ(典型的には数cm)だけ重ね縫いになったら、縫製を終了する。縫製が終了したら、シートPを治具1から取り出す(S6)。このとき、一対の押さえ片23が送り方向の下流側に回転軸24回りに回動していてシートPの折り返した部分から外れているので、簡便にシートPを治具1から取り出すことができる。これで、端辺を折り返した部分が縫製された縫製製品が製造されたことになる。シートPを治具1から取り出したら、治具1をミシンMから取り外す(S7)。このとき、回動していた押さえ片23は、マグネット25によって元の下接続片21sに重なる位置に戻り、次の縫製に円滑に移行することができる。なお、シートPを治具1から取り出す工程(S6)と、治具1をミシンMから取り外す工程(S7)とは、状況に応じて、順序を入れ替えてもよい。
【0032】
以上で説明したように、本実施の形態に係る治具1によれば、簡便な構造で、シートPの端辺を容易に折り返すことができると共に、縫製時にシートPの端辺を折り返した状態を維持することができる。また、押さえ片23が回転軸24回りに回動可能に構成されているので、シートPを折り返す際に利用した押さえ片23を、縫製時には移動(回動)させて縫製が阻害されることを回避することができる。また、返し部材20にマグネット25が設けられているので、回動した押さえ片23を元の位置に容易に戻すことができる。
【0033】
次に図5を参照して、本発明の実施の形態の変形例に係る治具1Aを説明する。図5(A)は治具1Aの平面図、図5(B)は、治具1Aの使用態様を例示する図である。治具1Aは、治具1(図1(A)参照)と比較して、返し部材20及びヒンジ30が一対ではなく1つで構成されていると共に、基部材10Aの形状が異なっている。基部材10Aの形状は、一対の延在部12(図1(A)参照)が形成されておらず、全体としてやや細長い長方形に形成されている。基部材10Aの大きさは、典型的には、下接続片21sが基部材10Aに重なったときに下接続片21sを包含しつつ概ね同じ大きさに形成されている。なお、基部材10Aの大きさは、長手方向には下接続片21sよりも長く形成して、安定化を図ることとしてもよい。治具1Aの上記以外の構成(単体の返し部材20及びヒンジ30の構成)は、治具1(図1(A)参照)と同様である。
【0034】
上述のように構成された治具1Aは、典型的には、ミシンMの台上に固定して用いられる。本変形例では、図5(B)に示すように、ミシンMの台に固定された鞘Cに対して基部材10Aを差し込むことで間接的に治具1AをミシンMの台に固定しているが、基部材10AをミシンMの台にねじ等の締結部材で直接固定してもよい。図5(B)に示す使用態様は、治具1(図1(A)参照)における図4(E)に示す使用態様に対応するものである。本変形例に係る治具1Aにおいても、治具1(図1(A)参照)における図4の各図に示すのと同様に、基部材10Aと下接続片21sとを開いた状態にして治具1AをミシンMの台にセットし(治具提供工程)、シートPを治具1Aにセットし(シート供給工程)、返し部材20を基部材10Aに重ねる(重ね工程)。ここで、治具1Aは、ミシンMの台に固定した状態で重ね工程まで行っているので、治具1(図1(A)参照)を用いたときに行っていた折り返した状態のシートPが挟まれた治具1をミシンMにセットする工程(図3における工程S4)は省略される。したがって、治具1Aを用いる際は、重ね工程を行ったら、折り返された部分のシートPの端辺を縫製する(縫製工程)。このとき、治具1AがシートPを押さえているのはミシンMに対して送り方向の上流側の1箇所なので、送り方向の下流側の部分を作業者(縫製を行っている者)が押さえながら縫製するとよい。その後、縫製が終了したら、シートPを治具1Aから取り出す(図3における工程S6)のは、治具1(図1(A)参照)の場合と同様である。なお、治具1Aを用いる場合は、治具1AをミシンMの台に固定したまま(基部材10Aを鞘Cに入れたまま)にしておいて差し支えないため、図3のフローチャートにおける治具をミシンから取り外す工程(S7)は省略される。以上で説明したように、本変形例に係る治具1Aによれば、治具1(図1(A)参照)よりも簡便な構成で、縫製を行う者の手を借りながら、シートPの端辺を容易に折り返すことができると共に、縫製時にシートPの端辺を折り返した状態を維持することができる。
【0035】
以上の説明では、押さえ片23が回転軸24回りに回動可能に接続片21に取り付けられているとしたが、押さえ片23が上接続片21tと一体に(押さえ片23が上接続片21tに固定されていて接続片21に対して回動しないように)構成されていてもよい。
【0036】
以上の説明では、戻り手段がマグネット25で構成されていることとしたが、マグネット25の代わりにばね等でもよい。マグネット25やばね等の戻り手段は、縫製方向の下流側だけに設けてもよく、両方とも設けなくてもよい。戻り手段を設けない場合は手動で押さえ片23を元の位置に戻せばよい。
【0037】
以上の説明では、シートPが筒状に形成されているとしたが、重なった部分がなく広がった一枚ものであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 治具
10 基部材
11 主部
12 延在部
20 返し部材
21 接続片
23 押さえ片
24 回転軸
25 マグネット
30 ヒンジ
P シート
図1
図2
図3
図4
図5