(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】毛髪脱色・脱染剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/365 20060101AFI20221021BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20221021BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20221021BHJP
A61K 8/22 20060101ALI20221021BHJP
A61K 8/23 20060101ALI20221021BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20221021BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20221021BHJP
A61Q 5/08 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
A61K8/365
A61K8/02
A61K8/19
A61K8/22
A61K8/23
A61K8/41
A61K8/73
A61Q5/08
(21)【出願番号】P 2018186724
(22)【出願日】2018-10-01
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2018124580
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年10月15日付けで提出された発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書に記載の別紙一覧先に、毛髪脱色・脱染剤組成物を公開した(公開日:平成30年7月25日)。
(73)【特許権者】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】乾 昭裕
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/047913(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/015785(WO,A1)
【文献】特開2005-239627(JP,A)
【文献】特開2004-262855(JP,A)
【文献】特開2018-048091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤を含有する第1剤、酸化剤を含有する第2剤、(A)過硫酸塩、並びに(B)増粘性ポリマーとしてノニオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーから選ばれる少なくとも一種を含有する第3剤を含む毛髪脱色・脱染剤組成物であって、
前記第3剤は、水に1質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHが7~9であ
り、前記第3剤は、さらに(C)酸を含有することを特徴とする毛髪脱色・脱染剤組成物。
【請求項2】
前記第3剤中における(C)酸の含有量が0.1~10質量%であることを特徴とする請求項
1に記載の毛髪脱色・脱染剤組成物。
【請求項3】
前記第3剤を水に1質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHに対する、前記第1剤を水に1質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHの比率が1~1.5であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の毛髪脱色・脱染剤組成物。
【請求項4】
前記毛髪脱色・脱染剤組成物の使用時において、水に1質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHが8.5~10であることを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載の毛髪脱色・脱染剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過硫酸塩を含有する毛髪脱色・脱染剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数の薬剤を混合することにより効果を発揮する毛髪脱色・脱染剤組成物が知られている。そのような毛髪脱色・脱染剤組成物としては、例えば、アルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤、例えば過酸化水素を含有する第2剤とから構成される毛髪脱色・脱染剤組成物が知られている。アルカリ剤は、第2剤に含有される酸化剤の作用を促進するとともに、毛髪を膨潤させて毛髪の脱色・脱染性を向上させる。
【0003】
従来より、脱色・脱染性向上の観点から酸化剤として過硫酸塩を併用する毛髪脱色・脱染剤組成物が知られている。例えば、特許文献1は、アルカリ剤としてアンモニア等、酸化剤として過酸化水素を使用する他、さらに酸化助剤として過硫酸ナトリウム等を併用する毛髪脱色・脱染剤組成物について開示する。過硫酸塩は、アルカリ剤を含有する剤及び過酸化水素等の酸化剤を含有する剤の保存安定性向上の観点から、それらの剤とは別の剤に配合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、使用特性を向上する観点から増粘性ポリマーを過硫酸塩が含有される剤に配合した場合、過硫酸塩と水滴等の水が反応した際に生ずる発熱を保持するとともに、保持された熱により過硫酸塩と水滴等の発熱がさらに加速してしまうという問題があった。その一方、過硫酸塩の配合量を少なくすると脱色・脱染性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、過硫酸塩を配合する毛髪脱色・脱染剤組成物において、毛髪の脱色・脱染性に優れ、さらに発熱を抑制できる毛髪脱色・脱染剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、過硫酸塩及び増粘性ポリマーを第3剤に配合する毛髪脱色・脱染剤組成物において、第3剤のpHを所定の範囲に規定することにより、発熱を抑制できることを見出したことに基づくものである。尚、成分の含有量を示す質量%の数値は、水等の可溶化剤を使用する場合、それらも含めた剤型中における数値である。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様では、アルカリ剤を含有する第1剤、酸化剤を含有する第2剤、(A)過硫酸塩、並びに(B)増粘性ポリマーとしてノニオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーから選ばれる少なくとも一種を含有する第3剤を含む毛髪脱色・脱染剤組成物であって、前記第3剤は、水に1質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHが7~9であることを特徴とする。
【0009】
前記第3剤は、さらに(C)酸を含有してもよい。
前記第3剤中における(C)酸の含有量が0.1~10質量%であってもよい。
前記第3剤を水に1質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHに対する、前記第1剤を水に1質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHの比率が1~1.5であってもよい。
【0010】
前記毛髪脱色・脱染剤組成物の使用時において、水に1質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHが8.5~10であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、毛髪の脱色・脱染性に優れ、さらに発熱を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の毛髪脱色・脱染剤組成物を具体化した一実施形態を説明する。毛髪脱色・脱染剤組成物の具体例としては、例えばアルカリ剤及び酸化剤を含有する3剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物、4剤式以上の毛髪脱色・脱染剤組成物等が挙げられる。以下、各毛髪脱色・脱染剤組成物の成分について例示する。
【0013】
<3剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物>
3剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物は、例えば、少なくともアルカリ剤を含有する第1剤と、少なくとも酸化剤を含有する第2剤、少なくとも(A)過硫酸塩、並びに(B)増粘性ポリマーとしてノニオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーから選ばれる少なくとも一種を含有する第3剤とから構成される。
【0014】
(3剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物の第3剤)
第3剤は、上述した(A)過硫酸塩及び(B)増粘性ポリマーの他、好ましくは(C)酸を含有する。(A)過硫酸塩は、酸化作用を向上させ、毛髪処理後の毛髪の脱色・脱染性をより向上させる。(A)過硫酸塩の具体例としては、例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。これらの具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で発熱抑制の観点から過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが好ましく、過硫酸アンモニウムがより好ましい。
【0015】
第3剤中における(A)成分の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは43質量%以上である。かかる(A)成分の含有量が30質量%以上であると、脱色・脱染性をより向上させることができる。
【0016】
第3剤中における(A)成分の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下である。かかる(A)成分の含有量が70質量%以下であると、水滴等によって生ずる発熱をより抑制することができる。
【0017】
使用時における毛髪脱色・脱染剤組成物中、すなわち第1剤~第3剤の混合物中における(A)成分の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上である。(A)成分の含有量が0.5質量%以上であると、脱色・脱染性をより向上させることができる。
【0018】
混合物中における(A)成分の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。(A)成分の含有量が20質量%以下であると、毛髪の感触の低下を抑制することができる。
【0019】
(B)成分としてノニオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーから選ばれる少なくとも一種の増粘性ポリマーは、使用特性、特に粘度を上昇させ、垂れ落ち抑制効果を発揮する。また、使用時における混合物の経時的な粘度安定性を向上させる。これらの中で、アニオン性ポリマーよりも感触に優れる観点からノニオン性ポリマーが好ましい。ノニオン性ポリマーは、公知のノニオン性の増粘性ポリマーを使用することができ、天然又は合成ポリマーのいずれも使用することができる。ノニオン性ポリマーの具体例としては、例えばポリビニルカプロラクタム、ポリビニルピロリドン(PVP)、(PVP/VA)コポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレングリコール、高重合ポリエチレングリコール、デキストリン、グアーガム、デンプン、プルラン等が挙げられる。これらの中で垂れ落ち抑制の観点からヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体が好ましく、原料コスト、垂れ落ち抑制効果に優れる観点からヒドロキシエチルセルロースがより好ましい。
【0020】
アニオン性ポリマーは、公知のアニオン性の増粘性ポリマーを使用することができ、天然又は合成ポリマーのいずれも使用することができる。天然のアニオン性ポリマーの具体例としては、例えばキサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、ファーセラン、アラビアガム、ガッチガム、カラヤガム、トラガントガム、カンテン粉末等が挙げられる。半合成ポリマーの具体例としては、例えばセルロースをカルボキシメチル化したカルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0021】
合成のアニオン性ポリマーの具体例は、例えば酸性ビニル単量体又はその塩を重合することによって得られる重合体又は共重合体を挙げることができる。酸性ビニル単量体の具体的として、酸性基、例えばカルボキシル基、スルホン酸基、及びリン酸基と、重合可能なビニル基とを有する化合物等が挙げられる。かかる化合物として、例えば不飽和一塩基酸、不飽和二塩基酸、及びこれらのモノエステルを挙げることができる。
【0022】
上述した増粘性ポリマーの具体例は、一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
第3剤中における(B)成分の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、特に好ましくは4質量%以上である。(B)成分の含有量が0.1質量%以上の場合には、使用特性、特に垂れ落ち抑制効果を発揮することができる。一方、(B)成分の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは12質量%以下である。(B)成分の含有量が30質量%以下の場合には、過硫酸塩が水と接触した際の発熱をより抑制することができる。また、使用時における各剤との混合性を向上させることができる。
【0023】
混合物中における(B)成分の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上である。(B)成分の含有量が0.01質量%以上の場合には、使用特性、特に垂れ落ち抑制効果を発揮することができる。一方、(B)成分の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である。(B)成分の含有量が3質量%以下の場合には、使用時の粘度安定性をより向上させることができる。
【0024】
(C)酸は、過硫酸塩が水と接触した際に生ずる発熱をより抑制する。また、毛髪処理後の感触をより向上させる。(C)酸は、無機酸、有機酸のいずれであってもよい。無機酸の具体例としては、例えばリン酸、塩酸、硝酸、硫酸、ホウ酸等が挙げられる。さらにリン酸の具体例としては、例えばオルトリン酸、ポリリン酸、ピロリン酸、メタリン酸等が含まれる。有機酸の具体例としては、例えばクエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸、グルクロン酸、安息香酸、酸性アミノ酸等が挙げられる。酸性アミノ酸の具体例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸、ピロリドンカルボン酸等が挙げられる。これらの具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、発熱抑制効果及び感触の向上効果に優れる観点から2価以上の酸が好ましく、クエン酸、酒石酸、リン酸がより好ましく、クエン酸、酒石酸がさらに好ましい。
【0025】
第3剤中における(C)成分の含有量の下限は、pH調整の観点から適宜設定されるが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、特に好ましくは2質量%以上、特に一層好ましくは3質量%以上、最も好ましくは4質量%以上である。かかる含有量が0.1質量%以上であると、発熱抑制効果及び感触をより向上させることができる。第3剤中における(C)成分の含有量の上限は、pH調整の観点から適宜設定されるが、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。かかる含有量が10質量%以下であると、混合物のpHを適正な範囲に調整し、脱色・脱染性をより向上させることができる。
【0026】
混合物中における(C)成分の含有量の下限は、pH調整の観点から適宜設定されるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。かかる含有量が0.01質量%以上であると、感触をより向上させる。混合物中における(C)成分の含有量の上限は、pH調整の観点から適宜設定されるが、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.9質量%以下、さらに好ましくは0.8質量%以下である。かかる含有量が1質量%以下であると、混合物のpHを適正な範囲に調整し、脱色・脱染性をより向上させる。
【0027】
第3剤中における(C)成分の価数×含有量(質量%)の値((C)成分が複数の場合は、各値の合計)の下限は、pH調整の観点から適宜設定されるが、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上である。かかる値が2以上であると、発熱抑制効果及び感触をより向上させることができる。第3剤中における(C)成分の価数×含有量(質量%)の値の上限は、pH調整の観点から適宜設定されるが、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下である。かかる値が30以下であると、混合物のpHを適正な範囲に調整し、脱色・脱染性をより向上させることができる。
【0028】
第3剤は、配合成分である過硫酸塩が水と接触した際の発熱抑制効果、毛髪処理後の感触及び脱色・脱染性を向上させるために、所定のpH範囲に規定される。第3剤は、水に1質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHが7~9、好ましくは7.2~8.8、より好ましく7.5~8.5、特に好ましくは7.6~8.2である。かかるpHが7以上の場合、脱色・脱染性を向上させることができる。また、かかるpHが9以下であると発熱抑制効果及び感触を向上させることができる。
【0029】
第3剤の剤型は、過硫酸塩の安定性の観点から、25℃における剤型が、固形状が好ましい。固形状としては、粉末状、粒状、タブレット状等が挙げられる。なお、本発明の効果及び配合成分の保存安定性を阻害しない範囲内において、25℃における剤型が、液状、例えば実質的に水分を含有しない液状に調製してもよい。なお、本実施形態における「実質的に水を含有しない」とは、「別途、水を含有させることはしない」という意味であり、各配合成分に含まれる微量の水の配合まで除外するものではない。また、固形状の剤型の場合、分散剤、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩、硫酸ナトリウム、タルク、乳糖、及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを配合してもよい。これらの具体例の内、一種のみを使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
第3剤は、必要に応じて、前述した成分以外の成分、例えばアルカリ剤、水溶性ポリマー、油性成分、多価アルコール、界面活性剤、上記以外のpH調整剤、糖、防腐剤、安定剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、酸化防止剤、キレート化剤、紫外線吸収剤等をさらに含有してもよい。
【0031】
アルカリ剤は、第3剤のpHを調整する観点から配合される。アルカリ剤は、25℃で固体状のものが適用され、その具体例としては、例えばアンモニウム塩、ケイ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、メタケイ酸塩、硫酸塩、塩化物、リン酸塩、有機アミン、塩基性アミノ酸、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。ケイ酸塩の具体例としては、例えばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。炭酸塩の具体例としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。炭酸水素塩の具体例としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。メタケイ酸塩の具体例としては、例えばメタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム等が挙げられる。硫酸塩の具体例としては、例えば硫酸アンモニウム等が挙げられる。塩化物の具体例としては、例えば塩化アンモニウム等が挙げられる。リン酸塩の具体例としては、例えばリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム等が挙げられる。有機アミンの具体例としては、例えばグアニジン等が挙げられる。塩基性アミノ酸の具体例としては、例えばアルギニン、リジン等が挙げられる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。これらのアルカリ剤のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、毛髪の明度を向上させる効果に優れる観点から炭酸塩、アンモニウム塩が好ましく、アンモニウム塩が特に好ましく適用される。第3剤中におけるアルカリ剤の含有量は、上述した第3剤を水に1質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHが7~9の範囲となる量で配合されることが好ましい。
【0032】
水溶性ポリマーとしては、例えばカチオン性、及び両性の、天然又は合成ポリマーのいずれも使用可能である。かかる水溶性ポリマーは、増粘効果を有しないが、毛髪の感触を向上させる観点から毛髪脱色・脱染剤組成物に所定量配合することを妨げるものではない。
【0033】
カチオン性ポリマーの具体例としては、例えば塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース等のカチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、4級化ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0034】
両性ポリマーの具体例としては、例えばアクリルアミド/アクリル酸/塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体、アクリル酸/塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム/メチルアクリレート共重合体、アクリル酸/アクリル酸/塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム共重合体等が挙げられる。これらは、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて使用されてもよい。
【0035】
油性成分は、毛髪にうるおい感を付与する。そのため、毛髪脱色・脱染剤組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において油性成分を含有してもよい。油性成分としては、例えば油脂、ロウ類、炭化水素、エステル油、高級アルコール、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、シリコーン等が挙げられる。
【0036】
油脂の具体例としては、例えばアルガニアスピノサ核油、オリーブ油(オリブ油)、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、月見草油、杏仁油、パーシック油、桃仁油、パーム油、卵黄油等が挙げられる。ロウ類の具体例としては、例えばラノリン、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油等が挙げられる。炭化水素の具体例としては、例えばパラフィン、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル、スクワラン、ポリブテン、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、合成スクワラン等が挙げられる。
【0037】
エステル油の具体例としては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2-エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10~30の炭素数を有する脂肪酸コレステリル/ラノステリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル、2-エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0038】
高級アルコールの具体例としては、例えばセチルアルコール(セタノール)、2-ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2-オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、デシルテトラデカノール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0039】
高級脂肪酸の具体例としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。アルキルグリセリルエーテルの具体例としては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0040】
シリコーンの具体例としては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、高重合シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン(例えば、(PEG/PPG/ブチレン/ジメチコン)コポリマー)、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。これらの油性成分のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0041】
多価アルコールとしては、例えばグリコール、グリセリン等が挙げられる。グリコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。グリセリンとしては、例えばグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。これらの多価アルコールのうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0042】
界面活性剤は、乳化剤又は各成分を可溶化させるための成分として毛髪脱色・脱染剤組成物を使用時に乳化又は可溶化させ、粘度を調整したり、粘度安定性を向上させたりする。そのため、毛髪脱色・脱染剤組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0043】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、例えばアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル、N-アルキロイルメチルタウリン塩、及びそれらの誘導体等が挙げられる。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンの具体例としては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエタノールアミン等が挙げられる。より具体的には、アルキルエーテル硫酸エステル塩としては、例えばポリオキシエチレン(以下、POEという)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。アルキル硫酸塩の具体例として、例えばラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等が挙げられる。アルキル硫酸塩の誘導体の具体例として、例えばPOEラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。スルホコハク酸エステルの具体例として、例えばスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム等が挙げられる。N-アルキロイルメチルタウリン塩の具体例として、例えばN-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウム等が挙げられる。
【0044】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、ベヘニルジメチルアミン、ベヘニン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノエチルアミド、ステアリルジメチルアミン、パルミトキシプロピルジメチルアミン、ステアロキシプロピルジメチルアミン、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド等が挙げられる。塩化アルキルトリメチルアンモニウムの具体例としては、例えば塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化アラキルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0045】
両性界面活性剤の具体例としては、例えばココベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホ酢酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0046】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばエーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤、アルキルグルコシド等が挙げられる。エーテル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばPOEセチルエーテル(セテス)、POEステアリルエーテル(ステアレス)、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル(オレス)、POEラウリルエーテル(ラウレス)、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル、POEポリオキシプロピレンセチルエーテル、POEポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル等が挙げられる。
【0047】
エステル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばモノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、POE還元ラノリン等が挙げられる。
【0048】
アルキルグルコシドの具体例として、例えばアルキル(炭素数8~16)グルコシド、POEメチルグルコシド、POEジオレイン酸メチルグルコシド等が挙げられる。これらの界面活性剤の具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0049】
pH調整剤は、使用時における混合物のpHを調整するために配合してもよい。pH調整剤としては、無機酸の塩、有機酸の塩等が挙げられる。塩の具体例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。糖の具体例としては、例えばグルコース、ガラクトース等の単糖、マルトース、スクロース、フルクトース、トレハロース等の二糖、糖アルコール等が挙げられる。防腐剤の具体例としては、例えばパラベン、メチルパラベン、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。安定剤の具体例としては、例えばフェナセチン、8-ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等が挙げられる。酸化防止剤の具体例としては、例えばアスコルビン酸類及び亜硫酸塩等が挙げられる。
【0050】
キレート化剤は、添加量によっては第3剤を水に1質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHを変動させる。そのため、上述した(C)酸、pH調整剤の代わりに、又はそれらの成分とともに使用してもよい。キレート化剤の具体例としては、例えばエデト酸(エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩類、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸及びその塩類、並びにヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)及びその塩類等が挙げられる。
【0051】
(3剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物の第1剤)
第1剤は、アルカリ剤を含有する。第1剤に含有されるアルカリ剤は、第2剤に含有される酸化剤及び/又は第3剤に含有される過硫酸塩の作用を促進させ、毛髪の脱色・脱染性を向上する働きをする。アルカリ剤としては、第3剤の欄で列挙した25℃で固体状のものの他、25℃で液状のもの、例えばアンモニア、アルカノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1-アミノ-2-プロパノール(MIPA)等を使用することができる。アルカノールアミンの具体例としては、例えばモノエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。アルカリ剤の中で、毛髪の脱色・脱染性を向上させる効果に優れる観点からアンモニア、アンモニウム塩が好ましく適用される。
【0052】
混合物中におけるアルカリ剤の含有量は、混合物のpHが8.5~10の範囲となる量が好ましく、pH9~9.5の範囲となる量がより好ましい。混合物のpHを8.5以上とすることにより、第2剤に含まれる酸化剤及び/又は第3剤に含まれる過硫酸塩の作用を促進することができる。それにより、脱色・脱染性をより向上させる。混合物のpHを10以下とすることにより、混合物の塗布による毛髪のダメージを抑制することができる。それにより、毛髪の感触をより向上させる。なお、混合物のpHは、混合物を水に1質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHを測定するものとする。
【0053】
第1剤のpHは、特に限定されないが、発熱抑制効果、毛髪処理後の感触及び脱色・脱染性の各効果の両立を図る観点から、第3剤のpHに対して所定の関係を有することが好ましい。第3剤を水に1質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHに対する、第1剤を水に1質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHの比率(第1剤pH/第3剤pH)は、好ましくは1~1.5、より好ましくは1.1~1.5、さらに好ましくは1.2~1.3である。なお、第1剤の剤型が水等の可溶化剤を使用する場合、それらも含めた剤型の1質量%の濃度のpHを測定するものとする。かかる範囲に規定することにより、配合成分である過硫酸塩が水と接触した際の発熱抑制効果、毛髪処理後の感触及び脱色・脱染性の各効果の両立を図ることができる。
【0054】
第1剤は、上述した増粘性ポリマー又は水溶性ポリマーを配合することができる。これらの中で増粘性ポリマーは、使用特性、特に粘度を上昇させ、垂れ落ち抑制効果を発揮する。また、ノニオン性ポリマーは、アニオン性ポリマーに比べ毛髪の感触に優れる。しかしながら、第1剤の剤型が液状の場合、第1剤の粘度が上昇し、他剤との混合性が低下するおそれがあるため、粘度上昇を抑制する観点から、第1剤中において増粘性ポリマーは、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。第1剤は、毛髪脱色・脱染剤組成物に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。例えば、前述した第3剤に含有される成分を本発明の効果を阻害しない範囲内において適宜含有してもよい。
【0055】
第1剤の剤型は特に限定されず、具体例として、25℃における剤型が、例えば水溶液や乳液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状、固形状等が挙げられる。また、固形状の剤型の場合、分散剤を配合してもよい。また、液状の剤型の場合、可溶化剤を配合してもよい。可溶化剤の具体例としては、例えば有機溶媒(溶剤)が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、例えばエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、γ-フェニルプロピルアルコール、ケイ皮アルコール、アニスアルコール、p-メチルベンジルアルコール、α-ジメチルフェネチルアルコール、α-フェニルエタノール、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、フェノキシイソプロパノール、2-ベンジルオキシエタノール、N-アルキルピロリドン、炭酸アルキレン、アルキルエーテル等が挙げられる。これらの可溶化剤のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。また、エアゾール、ノンエアゾール等とすることもでき、ノンエアゾールの場合、更にスクイズフォーマー式及びポンプフォーマー式等の種々の形態をとることができる。また、エアゾールの場合、公知の噴射剤及び発泡剤を適用することができる。噴射剤又は発泡剤の具体例としては、例えば液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、窒素ガス、炭酸ガス等が挙げられる。
【0056】
(3剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物の第2剤)
第2剤は、酸化剤の他、上述した可溶化剤等を配合することもできる。酸化剤は、毛髪に含まれるメラニンの脱色性を向上させる。酸化剤としては、保存安定性向上の観点から、好ましくは第3剤に配合される過硫酸塩以外の酸化剤が適用される。酸化剤の具体例としては、例えば過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物等が挙げられる。これらの酸化剤の具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0057】
第2剤中における酸化剤の含有量は、適宜設定されるが、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは2.0質量%以上であり、さらに好ましくは3.0質量%以上である。酸化剤の含有量が0.1質量%以上の場合、メラニンの脱色性をより向上することができる。また、第2剤中における酸化剤の含有量は、好ましくは15.0質量%以下であり、より好ましくは9.0質量%以下であり、さらに好ましくは6.0質量%以下である。酸化剤の含有量が15.0質量%以下の場合、毛髪のダメージ等を抑制することができる。
【0058】
酸化剤として過酸化水素を第2剤に配合する場合、過酸化水素の安定性を向上させるために、好ましくは、第2剤は、安定化剤、例えばスズ酸ナトリウム、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、ヒドロキシエタンジホスホン酸、又はその塩を含有する。ヒドロキシエタンジホスホン酸塩としては、例えばヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム、及びヒドロキシエタンジホスホン酸二ナトリウムが挙げられる。第2剤は、毛髪脱色・脱染剤組成物に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。例えば、前述した第1,3剤に含有される成分を本発明の効果を阻害しない範囲内において適宜含有してもよい。
【0059】
第2剤の剤型は特に限定されず、具体例として、25℃における剤型が、例えば水溶液や乳液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状、固形状等が挙げられる。また、エアゾール、ノンエアゾール等とすることもでき、ノンエアゾールの場合、更にスクイズフォーマー式及びポンプフォーマー式等の種々の形態をとることができる。また、エアゾールの場合、公知の噴射剤及び発泡剤を適用することができる。また、固形状の剤型の場合、分散剤を配合してもよい。
【0060】
3剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物の第1剤~第3剤の混合比は、混合物中の各成分の濃度、混合性等を考慮して適宜設定されるが、好ましくは1:0.5:0.1~1:6:3で、より好ましくは1:1:0.1~1:4:2であり、更に好ましくは1:2:0.1~1:3:1である。
【0061】
<4剤式以上の毛髪脱色・脱染剤組成物>
本実施形態の毛髪脱色・脱染剤組成物は、少なくともアルカリ剤を含有する剤、酸化剤を含有する剤、過硫酸塩を含有する剤の3種類の剤が存在すればよく、上述した毛髪脱色・脱染剤組成物を構成する各剤に含有される各成分の一部を別剤として構成し、4剤式以上の毛髪脱色・脱染剤組成物としてもよい。
【0062】
例えば、4剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物は、3剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物の第1剤中の成分を別剤とすることにより構成できる。例えば、アルカリ剤を含有する第1剤と、上述した3剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物の第2剤と同じ組成を有する第2剤と、3剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物の第3剤と同じ組成を有する第3剤と、上述した3剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物の第1剤に配合される成分を含有する第4剤とから構成される。このようにして構成される4剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物は良好な保存安定性を有する。なお、4剤式以上の毛髪脱色・脱染剤組成物の各剤の混合比は、混合物中の各成分の濃度、混合性等を考慮して適宜設定される。
【0063】
次に、本実施形態の毛髪脱色・脱染剤組成物の使用方法を以下に説明する。
まず、上述した複数剤からなる毛髪脱色・脱染剤組成物の各剤が混合されることにより、アルカリ剤、酸化剤、及び過硫酸塩等を含有する毛髪脱色・脱染剤組成物の混合物が調製された後、毛髪に塗布される。混合方法は、特に限定されず、例えば撹拌棒又は刷毛等を使用し、手で撹拌してもよく、撹拌子及び電動式撹拌機等を使用してもよい。毛髪脱色・脱染剤組成物の混合物の毛髪への塗布は、公知の方法、例えば薄手の手袋をした手、コーム(櫛)又は刷毛に付着されて毛髪に塗布する方法を適用することができる。混合物が毛髪に塗布された後、所定時間経過後、常法に従い毛髪に塗布した混合物を水ですすぐ工程が行われる。次に、好ましくは常法に従いシャンプー用組成物を使用して、毛髪を洗浄し、水で洗い流す工程が行われる。シャンプー用組成物は、毛髪の洗浄用に適用されるものであれば特に限定されず、公知のシャンプー用組成物を適用することができる。シャンプー用組成物には、例えば、洗髪剤(ヘアシャンプー)の他、リンスインシャンプー、スキャルプシャンプー等が含まれるものとする。次に、好ましくは常法に従いリンス用組成物を使用して、毛髪をリンス処理し、水で洗い流す工程が行われる。リンス用組成物は、毛髪のリンス用に適用されるものであれば特に限定されず、公知のリンス用組成物を適用することができる。リンス用組成物には、例えば、ヘアリンス、カラーリンス、クリームリンス、酸性リンス、テンポラリーリンス、コンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアパック、ヘアマスク等が含まれるものとする。リンス用組成物を用いた処理工程は、公知のリンス用組成物を適用することができる。次に、好ましくは常法に従い毛髪を乾燥する工程が行われる。
【0064】
本実施形態の毛髪脱色・脱染剤組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態は、(A)過硫酸塩、並びに(B)増粘性ポリマーとしてノニオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーから選ばれる少なくとも一種を含有する第3剤を含む毛髪脱色・脱染剤組成物において、第3剤を水に1質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHを7~9に調整した。したがって、毛髪処理後の脱色・脱染性に優れ、さらに過硫酸塩が水と接触した際に生ずる発熱を抑制することができる。
【0065】
(2)本実施形態の毛髪脱色・脱染剤組成物において、さらに第3剤が(C)酸を含有する場合、過硫酸塩が水と接触した際に生ずる発熱をより抑制することができる。また、毛髪処理後の感触をより向上させることができる。
【0066】
(3)本実施形態の毛髪脱色・脱染剤組成物において、第3剤を水に1質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHに対する、第1剤を水に1質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHの比率が1~1.5である場合、発熱抑制効果、毛髪処理後の感触及び脱色・脱染性の各効果の両立を図ることができる。
【0067】
(4)本実施形態の毛髪脱色・脱染剤組成物において、毛髪脱色・脱染剤組成物の使用時において、水に1質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHが8.5~10である場合、脱色・脱染性をより向上させることができる。また、毛髪の感触をより向上させることができる。
【0068】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、製剤の安定性を低下させない範囲において、過硫酸塩を酸化剤が配合される第2剤に配合してもよい。
【0069】
・上記実施形態において、各剤が混合された混合物の剤型は、特に限定されず、具体例として、25℃における剤型が、例えば乳化物、水溶液や乳液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等が挙げられる。
【実施例】
【0070】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。尚、本発明は、実施例欄記載の構成に限定されるものではない。以下、実施例5は、参考例5に置き換えるものとする。
表1~6に示す各成分を含有する、毛髪脱色・脱染剤組成物として第1剤、第2剤、及び第3剤をそれぞれ調製した。なお、各表における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。表中「成分」欄における(A)~(C)の表記は、本願請求項記載の各成分に対応する化合物を示す。化合物名POEの括弧中の数値はE.O.の付加モル数を示す。また、各剤のpHは、調製した各剤を水に1質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHを示す。
【0071】
得られた毛髪脱色・脱染剤組成物としての第1剤、第2剤、及び第3剤を用いて、下記に示す発熱、脱色・脱染力、及び感触の各評価を行った。
(発熱)
各例の第3剤20gと水(40℃)5gを混合し、10回撹拌棒で混合した。25℃環境下にて経時温度変化を測定した。最高到達温度が45℃以下の場合を5点、45℃を超え且つ50℃以下の場合を4点、50℃を超え且つ60℃以下の場合を3点、60℃を超え且つ70℃以下の場合を2点、70℃を超える場合を1点として評価した。
【0072】
(脱色・脱染力)
脱染処理は、白色毛束(ビューラックス社製)に対して酸化染毛剤で前処理した毛束に対して行った。前処理するための酸化染毛剤は、ホーユー社製プロステップ(グレイカラーGS-6)を使用した。第1剤と第2剤(クリームオキシダン(6%))を1:1で混合し、常法に従い上記白色毛束に対して染毛処理を施した。次に、毛束に付着した酸化染毛剤を水ですすいだ後、毛束にシャンプー(シャンプー用組成物としてホーユー社製のビゲントリートメントシャンプー)を2回、リンス(リンス用組成物としてホーユー社製のビゲントリートメントリンス)を1回施した。なお、シャンプー用組成物及びリンス用組成物は、それぞれ処理毎に水で洗い流している。続いて、毛束を温風で乾燥した後、一日間放置した。
【0073】
次に、毛髪脱色・脱染剤組成物としての第1剤と第2剤と第3剤とを1:2:0.3の質量比で混合して各例の毛髪脱色・脱染剤組成物の混合物を調製した。なお、比較例3は第1剤を、比較例4は第2剤をそれぞれ使用せず、混合物を調製した。前処理した毛束に対して刷毛を用いて塗布し、30℃にて30分間放置した。次に、毛束に付着した混合物を水ですすいだ後、毛束にシャンプー(シャンプー用組成物としてホーユー社製のビゲントリートメントシャンプー)を2回、及びリンス(リンス用組成物としてホーユー社製のビゲントリートメントリンス)を1回施した。なお、シャンプー用組成物及びリンス用組成物は、それぞれ処理毎に水で洗い流している。続いて、毛束を温風で乾燥した後、一日間放置することにより、脱染処理された毛束を得た。
【0074】
脱色処理は、黒色毛束(ビューラックス社製)に対して行った。脱染処理と同様の方法にて、各例の毛髪脱色・脱染剤組成物の混合物を調製した。黒色毛束に対して刷毛を用いて塗布し、30℃にて30分間放置した。以降は、脱染処理と同様の方法によりシャンプー、リンス、乾燥処理を行うことにより、脱色処理された毛束を得た。
【0075】
各例の脱染処理された毛束及び脱色処理された毛束を使用して、標準光源下においてパネラー10名が目視で下記に示す方法に従い脱色・脱染力について評価を行った。
脱色力及び脱染力が共に非常に優れる場合(5点)、脱色力及び脱染力のどちらか一方が非常に優れ、他方が優れる場合(4点)、脱色力及び脱染力が共に優れる場合(3点)、脱色力又は脱染力のどちらか一方が劣る場合(2点)、脱色力及び脱染力が共に劣る場合(1点)として評価した。各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を下記表に示す。
【0076】
(感触(仕上がり))
毛束の感触(仕上がり)について、上記脱色処理された毛束を使用してパネラー10名が以下の基準で評価した。毛束の感触が、優れる(5点)、良好(4点)、可(3点)、やや不良(2点)、及び不良(1点)の5段階で採点した。各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を下記表に示す。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【表6】
各表に示されるように、各実施例は、各評価について可以上の結果であることが確認された。表3に示されるように、第3剤のpHが9を超える比較例1は、各実施例に対して、発熱及び感触の評価が劣ることが確認された。第3剤のpHが7未満の比較例2は、各実施例に対して、脱色・脱染力の評価が劣ることが確認された。第1剤を使用しない比較例3は、各実施例に対して、脱色・脱染力及び感触の評価が劣ることが確認された。第2剤を使用しない比較例4は、各実施例に対して、脱色・脱染力及び感触の評価が劣ることが確認された。