(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】ダイヤフラム式制御弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/126 20060101AFI20221021BHJP
【FI】
F16K31/126 Z
(21)【出願番号】P 2018187892
(22)【出願日】2018-10-03
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000101514
【氏名又は名称】アドバンス電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117503
【氏名又は名称】間瀬 ▲けい▼一郎
(72)【発明者】
【氏名】松沢 広宣
(72)【発明者】
【氏名】藤川 伸之
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3219318(JP,U)
【文献】特開2010-164130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/12 - 31/165
F16K 31/31 - 31/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入側に流
入して流出側へ流出する高純度薬液や超純
水の液体の流量を制御するようにしたダイヤフラム式制御弁において、
筒状周壁と、当該筒状周壁をその軸方向両端開口部から閉塞するように互いに対向してなる両対向壁と、前記筒状周壁の内部を、前記両対向壁の一方の対向壁との間にて第1収容室を形成するとともに他方の対向壁との間にて第2収容室を形成するように区画する区画壁とを有するハウジングと、
前記第1収容室内に収容されてPFA製のフィルム状の第1ダイヤフラムとフッ素樹脂製の軸状連結部材とを有する第1ダイヤフラム部材と、
前記第2収容室内に収容されてPFA製のフィルム状の第2ダイヤフラムとフッ素樹脂製の軸状弁体部材とを有する第2ダイヤフラム部材とを備えており、
前記第1ダイヤフラム部材において、
前記第1ダイヤフラムは、その外周部にて、前記筒状周壁のうちの前記第1収容室
側の周壁部の軸方向中間部位内に支持されて、前記第1収容室の内部を、前記一方の対向壁側にて第1調圧室を形成するとともに前記区画壁側にて第1液体室を形成するように区画してなり
、
前記第1ダイヤフラムの両面のうち、前記第1調圧室側の面を一側面とし、前記第1液体室側の面を他側面として、前
記軸状連結部材は、その基部にて、前記第1ダイヤフラム
の前記他側面側にて当該第1ダイヤフラムの中央部にレーザー溶接により接合されて、前記第1ダイヤフラムの前記中央部から前記第1液体室内へ延出されており、
前記第2ダイヤフラム部材において、
前記第2ダイヤフラムは、その外周部にて、前記筒状周壁のうちの前記第2収容室
側の周壁部の軸方向中間部位内に支持され
て、前記第2収容室の内部を、前記他方の対向壁側にて第2調圧室を形成するとともに前記区画壁側にて第2液体室を形成するように区画してなり
、
前記第2ダイヤフラムの両面のうち、前記第2液体室側の面を一側面とし、前記第2調圧室側の面を他側面として、前
記軸状弁体部材は、前記第2ダイヤフラム
の前記一側面側にて当該第2ダイヤフラムの中央部にレーザー溶接により接合される基体と、当該基体から前記第2液体室及び前記区画壁の中央部に形成してなる中央連通路を通り前記軸状連結部材の延出端部に結合されるロッドとを有してなり、
前記区画壁は、前記中央連通路の前記第2液体室
側の開孔部にて、前記軸状弁体部材の弁体部に対向して当該弁体部と共に弁部を構成する環状弁座部を有してなり、
前記筒状周壁は、前記液体を前記流入側から前記
第2液体室内に流入させる流入路及び前記
第2液体室内の前記液体を前記環状弁座部、前記中央連通路及び前記第1液体室を通り前記流出側へ流出させる流出路を設けてなり、
前記第1ダイヤフラムが前記第1調圧室内に生ずる設定圧を受けるとともに前記第2ダイヤフラムが前記第2調圧室内に生ずる設定圧を受ける状態にて、前記第1ダイヤフラム及び前記第2ダイヤフラムが、前記流入側の液体の液圧の変動に応じて、互いに結合してなる前記軸状連結部材及び前記軸状弁体部材を介して、前記弁体部の前記環状弁座部との開度を一定の開度に制御することで、前記一定の開度に応じた一定の流量にて、前記流入側の液体を、前記流入路、前記第2液体室、前記環状弁座部、前記中央連通路、前記第1液体室及び前記流出路を通り前記流出側へ流出するようにしたことを特徴とするダイヤフラム式制御弁。
【請求項2】
流入側に流
入して流出側へ流出する高純度薬液や超純
水の液体の流量を制御するようにしたダイヤフラム式制御弁において、
筒状周壁と、当該筒状周壁をその軸方向両端開口部から閉塞するように互いに対向してなる両対向壁と、前記筒状周壁の内部を、前記両対向壁の一方の対向壁との間にて第1収容室を形成するとともに他方の対向壁との間にて第2収容室を形成するように区画する区画壁とを有するハウジングと、
前記第1収容室内に収容されてPFA製のフィルム状の第1ダイヤフラムとフッ素樹脂製の軸状連結部材とを有する第1ダイヤフラム部材と、
前記第2収容室内に収容されてPFA製のフィルム状の第2ダイヤフラムとフッ素樹脂製の軸状弁体部材とを有する第2ダイヤフラム部材とを備えており、
前記第1ダイヤフラム部材において、
前記第1ダイヤフラムは、その外周部にて、前記筒状周壁のうちの前記第1収容室
側の周壁部の軸方向中間部位内に支持されて、前記第1収容室の内部を、前記一方の対向壁側にて第1調圧室を形成するとともに前記区画壁側にて第1液体室を形成するように区画してなり
、
前記第1ダイヤフラムの両面のうち、前記第1調圧室側の面を一側面とし、前記第1液体室側の面を他側面として、前
記軸状連結部材は、その基部にて、前記第1ダイヤフラム
の前記他側面側にて当該第1ダイヤフラムの中央部にレーザー溶接により接合されて、前記第1ダイヤフラムの前記中央部から前記第1液体室内へ延出されており、
前記第2ダイヤフラム部材において、
前記第2ダイヤフラムは、その外周部にて、前記筒状周壁のうちの前記第2収容室
側の周壁部の軸方向中間部位内に支持され
て、前記第2収容室の内部を、前記他方の対向壁側にて第2調圧室を形成するとともに前記区画壁側にて第2液体室を形成するように区画してなり
、
前記第2ダイヤフラムの両面のうち、前記第2液体室側の面を一側面とし、前記第2調圧室側の面を他側面として、前
記軸状弁体部材は、前記第2ダイヤフラム
の前記一側面側にて当該第2ダイヤフラムの中央部にレーザー溶接により接合される基体と、当該基体から前記第2液体室及び前記区画壁の中央部に形成してなる中央連通路を通り前記軸状連結部材の延出端部に互いに分離可能に連結されるロッドとを有してなり、
前記区画壁は、前記中央連通路の前記第2液体室
側の開孔部にて、前記軸状弁体部材の弁体部に対向して当該弁体部と共に弁部を構成する環状弁座部を有してなり、
前記筒状周壁は、前記液体を前記流入側から前記
第2液体室内に流入させる流入路及び前記
第2液体室内の前記液体を前記環状弁座部、前記中央連通路及び前記第1液体室を通り前記流出側へ流出させる流出路を設けてなり、
前記第1ダイヤフラムが前記第1調圧室内に生ずる設定圧を受けるとともに前記第2ダイヤフラムが前記第2調圧室内に生ずる設定圧を受ける状態にて、前記第1ダイヤフラム及び前記第2ダイヤフラムが、前記流入側の液体の液圧の変動に応じて、互いに分離可能に連結してなる前記軸状連結部材及び前記軸状弁体部材を介して、前記弁体部の前記環状弁座部との開度を一定の開度に制御することで、前記一定の開度に応じた一定の流量にて、前記流入側の液体を、前記流入路、前記第2液体室、前記環状弁座部、前記中央連通路、前記第1液体室及び前記流出路を通り前記流出側へ流出するようにしたことを特徴とするダイヤフラム式制御弁。
【請求項3】
前記第1ダイヤフラム部材は、前記第1ダイヤフラム
の前記他側面或いは前
記一側面にその外周部に沿うようにレーザー溶接により接合されるフッ素樹脂製補強用環状体を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のダイヤフラム式制御弁。
【請求項4】
前記第1ダイヤフラム部材は、前記第1ダイヤフラムの撓みを抑制して当該第1ダイヤフラムの可動領域を規制し得るように、当該第1ダイヤフラムにそ
の前記一側面側からレーザー溶接により同軸的に接合してなる板状補助部材を具備することを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載のダイヤフラム式制御弁。
【請求項5】
前記第1ダイヤフラムは、前記第2ダイヤフラムと共に、PFAを押し出し成形或いは圧縮成形することにより、フィルム状に形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載のダイヤフラム式制御弁。
【請求項6】
前記第1ダイヤフラムは、前記第2ダイヤフラムと共に、0.1(mm)以上で0.6(mm)以下の範囲以内の厚さを有することを特徴とする請求項5に記載のダイヤフラム式制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置において高純度薬液や超純水の液体を流動させるにあたり採用するに適したダイヤフラム式制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の制御弁は、底側ハウジング部材と、上側ハウジング部材と、これら底側ハウジング部材及び上側ハウジング部材の間に組み付けられる中側ハウジング部材とを備えて、上側ハウジング部材と中側ハウジング部材との間に一側収容室を形成するとともに中側ハウジング部材と底側ハウジング部材との間に他側収容室を形成してなるハウジングと、上側ハウジング部材側にて第1調圧室を形成するとともに中側ハウジング側にて第1液体室を形成するように一側収容室の内部を区画する第1ダイヤフラムと、底側ハウジング部材側にて第2調圧室を形成するとともに中側ハウジング側にて第2液体室を形成するように他側収容室の内部を区画する第2ダイヤフラムと、第1液体室の中央部から第2液体室の中央部にかけて設けてなる中央連通路内に第1ダイヤフラムの中央部から延出する軸状連結部材と、第2ダイヤフラムの中央部から中央連通路内に延出して軸状連結部材と連結される軸状弁体部材とを備えている。
【0003】
しかして、このように構成してなる当該制御弁において、その流入側から流入する液体が第1液体室及び第2液体室内に流入すると、第1液体室内内に流入する液体の液圧が第1ダイヤフラムに対し第1調圧室側から作用する設定圧に対向して作用するとともに、第2液体室内に流入する液体の液圧が第2ダイヤフラムに対し第2調圧室側から作用する設定圧に対向して作用する。
【0004】
これに伴い、第1ダイヤフラム、第2ダイヤフラム及び互いに結合或いは分離可能に連結する軸状連結部材及び軸状弁体部材からなる構成体が、第1ダイヤフラムを介し互いに対向して作用する第1調圧室内の設定圧と第1液体室内の液圧及び第2ダイヤフラムを介し互いに対向して作用する第2調圧室内の設定圧と第2液体室内の液圧に応じて変位して、中央連通路の第1液体室側開孔端部に設けてなる環状弁座部と第2液体室内側から当該環状弁座部に対向するように軸状弁体部材に設けてなる弁体部との間隔を一定の間隔に制御する。
【0005】
このことは、当該制御弁は、その流入側から流入する液体を、両設定圧のもとに、当該液体の流量に応じた構成体の変位に伴い、軸状弁体部材の弁体部と中央連通路の環状弁座部との一定の間隔に対応する一定の流量でもって、流出側へ流出するように制御することを意味する。
【0006】
このような構成からなる制御弁が半導体製造装置に用いられる場合、当該半導体製造装置における洗浄工程や剥離工程では、強酸・強アルカリ等の腐食性の高い薬液からなる高純度薬液が、上述の液体として使用されることから、制御弁内のダイヤフラムの形成材料としては、耐酸性や耐アルカリ性等の耐薬品性に優れるフッ素樹脂を採用することが望ましい。
【0007】
また、半導体製造装置においては、制御弁からの金属成分や有機物成分の溶出は許されないことから、ダイヤフラムの形成材料としては、低溶出性を有するフッ素樹脂を採用することが望ましい。
【0008】
また、上述のような制御弁としての構成上、屈曲性に優れ長寿命を維持し得るフッ素樹脂を採用することが望ましい。
【0009】
以上のようなことから、ダイヤフラムの形成材料としては、耐薬品性、低溶出性を有し、かつ屈曲性に優れ長寿命を維持し得るフッ素樹脂を採用することが要請される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上述のような構成を有する制御弁では、さらに、半導体製造装置において制御弁からのパーティクルによる液体の汚染は許されないことから、制御弁内の流路系統に流れる液体を、ダイヤフラムでもって、一方の室から隔離することが必要で、そのためには、当該ダイヤフラムを、外周部、湾曲変位部及び中央部でもって一体的に構成することが要請される。
【0012】
ここで、ダイヤフラムの形成材料として、PTFEを採用する場合、PTFEは、メルトフローレートが低いため、射出成形や押出成形では、良好な品質のダイヤフラムを形成することはできない。従って、ダイヤフラムは、PTFEの圧縮成形丸棒を切削加工することで形成される。
【0013】
このように切削加工により形成されるPTFE製ダイヤフラムの寿命は長いものの、このようなダイヤフラムを用いた制御弁においては、その動作に伴い、切削加工してなる湾曲変位部がその表面にて伸延或いは圧縮することから、当該湾曲変位部から微少ではあるが発塵する。但し、このような発塵は、例えば、半導体製造装置で製造されるシリコンウエハの配線ピッチが10(nm)より大きい場合は、許容範囲以内にある。
【0014】
また、ダイヤフラムの形成材料として、PTFEに代えて、PFAを採用する場合、ダイヤフラムは、射出成形丸棒、圧縮成形丸棒或いは押し出し成形丸棒を切削加工することで形成される。
【0015】
このように切削加工により形成されるPFA製ダイヤフラムの寿命は短い。また、このように切削加工により形成してなるPFA製ダイヤフラムを用いた制御弁は、その動作に伴い、切削加工してなる湾曲変位部の表面にて、切削加工により形成されるPTFE製ダイヤフラムの湾曲変位部と同様に、伸延或いは圧縮することから、湾曲変位部から微少ではあるが発塵する。
【0016】
ここで、ダイヤフラムの形成材料として、PFAを採用し、当該PFAを用いて射出成形により湾曲変位部の厚いものを成形するとともに切削加工することでダイヤフラムを形成する場合、射出成形や圧縮成形で厚肉形状に成形すると、湾曲変位部における結晶化が均一には起こらず、その界面が破壊の起点となるとともに寿命が短くなるため、このような湾曲変位部を有するダイヤフラムは、殆ど採用されていない。
【0017】
一方、近年、半導体製造装置による半導体素子、例えば、シリコンウエハの製造にあたり、さらなる微細化が要請されている。例えば、シリコンウエハにおける配線ピッチを10(nm)以下にしたいという要請がある。従って、制御弁からの発塵は、数nmサイズのパーティクルの発塵さえも許されない状況となっている。
【0018】
しかるに、上述したごとく、切削加工により形成したダイヤフラムを用いた制御弁は、その動作に伴い、切削加工してなる湾曲変位部の表面にて伸延や圧縮を生じ、これに伴い、湾曲変位部から微少ではあるが、発塵する。
【0019】
このようなことでは、上述した制御弁からの数nmサイズのパーティクルの発塵さえも許されない状況には対応し得ず、切削加工してなる湾曲変位部を有するダイヤフラムに対して、さらなる改良が要請される。
【0020】
これに対しては、PFA製のフィルムは、薄肉であるため、結晶化を均一にし得ることから、当該PFA製のフィルムを、押出成形や圧縮成形により形成して、少なくともダイヤフラムの湾曲変位部として採用すれば、上述したダイヤフラムの改良につながる。
【0021】
ところで、上記制御弁において、第1ダイヤフラムは、その中央部にて、軸状連結部材と連結される。しかしながら、上記制御弁の第1ダイヤフラムとして、上述のようにフィルム状であって非常に薄いダイヤフラムが採用されると、当該ダイヤフラムの中央部において、軸状連結部材と連結するに要する連結部を形成することはできない。このことは、当該連結部なくして、フィルム状の第1ダイヤフラムの中央部を軸状連結部材と連結することは極めて困難であることを意味する。
【0022】
これに対しては、上記特許文献1に記載の樹脂ダイヤフラムのシール方法によるレーザー溶接を適用してなるダイヤフラム弁の構成を利用することが考えられる。
【0023】
当該特許文献1にいうダイヤフラム弁においては、シール目的ではあるが、ダイヤフラムが、そのフランジ部にて、弁体室を密封するように、下ハウジングのフランジ部とレーザー溶接されている。このようなことに着目して、レーザー溶接を、PFA製のフィルム状のダイヤフラムの中央部と軸状連結部材との連結に利用することは可能であろうという着想に至った。
【0024】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、屈曲性や長寿命性を確保し得るようなフィルム状のPFAを、数nm程度の発塵をも最少に抑制し得るダイヤフラムの形成材料として選択するとともに、当該ダイヤフラムの中央部との連結し易さを考慮して適宜なフッ素樹脂製軸状連結部材を活用し、ダイヤフラムがフィルムのように薄くても、当該弁体とダイヤフラムの中央部との連結にレーザー溶接を適用したダイヤフラム構造として構成してなるダイヤフラム部材を用いる制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題の解決にあたり、本発明に係るダイヤフラム式制御弁は、請求項1の記載によれば、
流入側に流入して流出側へ流出する高純度薬液や超純水の液体の液圧の変動に応じて、当該液体の流量を制御するものである。
【0026】
当該制御弁において、
筒状周壁(140、150)と、当該筒状周壁をその軸方向両端開口部から閉塞するように互いに対向してなる両対向壁(110、180)と、筒状周壁の内部を、両対向壁の一方の対向壁(180)との間にて第1収容室(S)を形成するとともに他方の対向壁(110)との間にて第2収容室(R)を形成するように区画する区画壁(130)とを有するハウジング(100)と、
第1収容室内に収容されてPFA製のフィルム状の第1ダイヤフラム(200a)とフッ素樹脂製の軸状連結部材(200c)とを有する第1ダイヤフラム部材(200)と、
第2収容室内に収容されてPFA製のフィルム状の第2ダイヤフラム(300a)とフッ素樹脂製の軸状弁体部材(300c)とを有する第2ダイヤフラム部材(300)とを備えており、
第1ダイヤフラム部材において、
第1ダイヤフラムは、その外周部(210)にて、筒状周壁のうちの第1収容室側の周壁部の軸方向中間部位内に支持されて、第1収容室の内部を、上記一方の対向壁側にて第1調圧室(Sa)を形成するとともに区画壁側にて第1液体室(Sb)を形成するように区画してなり、
第1ダイヤフラムの両面のうち、第1調圧室側の面を一側面とし、第1液体室側の面を他側面として、軸状連結部材は、その基部にて、第1ダイヤフラムの上記他側面側にて当該第1ダイヤフラムの中央部にレーザー溶接により接合されて、第1ダイヤフラムの上記中央部から第1液体室内へ延出されており、
第2ダイヤフラム部材において、
第2ダイヤフラムは、その外周部(310)にて、筒状周壁のうちの第2収容室側の周壁部の軸方向中間部位内に支持されて、第2収容室の内部を、上記他方の対向壁側にて第2調圧室(Ra)を形成するとともに区画壁側にて第2液体室(Rb)を形成するように区画してなり、
第2ダイヤフラムの両面のうち、第2液体室側の面を一側面とし、第2調圧室側の面を他側面として、軸状弁体部材は、第2ダイヤフラムの上記一側面側にて当該第2ダイヤフラムの中央部にレーザー溶接により接合される基体(360)と、当該基体から第2液体室及び区画壁の中央部に形成してなる中央連通路(133)を通り軸状連結部材の延出端部に結合されるロッド(370)とを有してなり、
区画壁は、上記中央連通路の第2液体室側の開孔部にて、軸状弁体部材の弁体部(370b)に対向して当該弁体部と共に弁部を構成する環状弁座部(133a)を有してなり、
筒状周壁は、液体を上記流入側から第2液体室内に流入させる流入路(160、131)及び第2液体室内の液体を上記環状弁座部、上記中央連通路及び第1液体室を通り上記流出側へ流出させる流出路(132、170)を設けてなり、
第1ダイヤフラムが第1調圧室内に生ずる設定圧を受けるとともに第2ダイヤフラムが第2調圧室内に生ずる設定を受ける状態にて、第1ダイヤフラム及び第2ダイヤフラムが、上記流入側の液体の液圧の変動に応じて、互いに結合してなる軸状連結部材及び軸状弁体部材を介して、上記弁体部の上記環状弁座部との開度を一定の開度に制御することで、上記一定の開度に応じた一定の流量にて、上記流入側の液体を、流入路、第2液体室、上記環状弁座部、上記中央連通路、第1液体室及び流出路を通り上記流出側へ流出するようにしたことを特徴とする。
【0027】
これによれば、当該制御弁においては、第1ダイヤフラム、互いに結合してなる軸状連結部材及び軸状弁体部材及び第2ダイヤフラムからなる一体的構成体が、両設定圧のもと、流入側から流入する液体の液圧の変動に応じて弁体部の環状弁座部に対する開度を一定の開度にするように変位して、液体の流量を一定の流量にする制御がなされる。
【0028】
ここで、第1ダイヤフラム部材が、PFA製の第1ダイヤフラムと、当該第1ダイヤフラムの中央部に同軸的にレーザー溶接により接合されて当該中央部から延出するフッ素樹脂製軸状連結部材との双方により構成されている。
【0029】
従って、第1ダイヤフラムが薄くて取扱いにくくても、第1ダイヤフラムの中央部が上述のごとく軸状連結部材の基部とレーザー溶接済みであるから、軸状連結部材が、第1ダイヤフラムの補強的役割を果たし、第1ダイヤフラムを筒状周壁の軸方向中間部位内に容易に支持し得る。
【0030】
また、第2ダイヤフラム部材が、PFA製の第2ダイヤフラムと、当該第2ダイヤフラムの中央部に同軸的にレーザー溶接により接合されて当該中央部から延出するフッ素樹脂製軸状弁体部材との双方により構成されている。
【0031】
これによれば、第2ダイヤフラムの中央部と軸状弁体部材との連結は、レーザー溶接によりなされるので、軸状弁体部材と第2ダイヤフラムの中央部とが良好に接合連結され得る。
【0032】
また、第1ダイヤフラムは、第2ダイヤフラムと共に、PFAでもってフィルム状のダイヤフラムとして形成される。従って、第1ダイヤフラムや第2ダイヤフラムは、フィルム状であっても、屈曲性や長寿命性に優れたダイヤフラムであって発塵性を最少(最小限)に抑制し得るダイヤフラムとして形成され得る。
【0033】
また、上述したフィルム状の第1ダイヤフラムは非常に薄いものの、第1ダイヤフラムがその中央部にて軸状連結部材とレーザー溶接により接合されているため、当該第1ダイヤフラムがその中央部にて軸状連結部材との連結に要する連結部を有さなくても、軸状連結部材をダイヤフラムの中央部にレーザー溶接により容易に連結することができる。
【0034】
また、本発明に係るダイヤフラム式制御弁は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載のダイヤフラム式制御弁とは、第1ダイヤフラムが第1調圧室内に生ずる設定圧を受けるとともに第2ダイヤフラムが第2調圧室内に生ずる設定圧を受ける状態にて、第1ダイヤフラム及び第2ダイヤフラムが、上記流入側の液体の液圧の変動に応じて、互いに分離可能に連結してなる軸状連結部材及び軸状弁体部材を介して、上記弁体部の上記環状弁座部との開度を一定の開度に制御することで、上記一定の開度に応じた一定の流量にて、上記流入側の液体を、流入路、第2液体室、上記環状弁座部、上記中央連通路、第1液体室及び流出路を通り上記流出側へ流出する点において相違する。
【0035】
このような構成によれば、制御弁が、請求項1に記載の発明とは異なり、第1ダイヤフラム、互いに分離可能に連結してなる軸状連結部材及び軸状弁体部材並びに第2ダイヤフラムでもって分離可能構成体を構成していても、当該制御弁は、両設定圧のもと、流入側から流入する液体の液圧の変動に応じた分離可能構成体の変位に伴い、弁体部の環状弁座部に対する開度を一定の開度、換言すれば、流入側からの液体の流量を一定の流量に制御し得る。その他の作用効果は請求項1に記載の発明と同様である。
【0036】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1または2に記載のダイヤフラム式制御弁において、
第1ダイヤフラム部材は、第1ダイヤフラムの上記他側面或いは上記一側面にその外周部に沿うようにレーザー溶接により接合されるフッ素樹脂製補強用環状体(200b)を備えることを特徴とする。
【0037】
これによれば、第1ダイヤフラムがフィルムのように薄いために取扱いにくくても、上述のような第1ダイヤフラムの外周部と補強用環状体とのレーザー溶接による接合構成でもって、補強用環状体が、第1ダイヤフラムに対し補強機能を良好に発揮し得る。従って、請求項1に記載の発明の作用効果とともに、ダイヤフラムが薄くても曲がったりすることなく容易に取り扱われ得るという作用効果が達成され得る。
【0038】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1~3のいずれか1つに記載のダイヤフラム式制御弁において、
第1ダイヤフラム部材は、第1ダイヤフラムの撓みを抑制して当該第1ダイヤフラムの可動範囲を規制し得るように、当該第1ダイヤフラムにその上記一側面側からレーザー溶接により同軸的に接合してなる板状補助部材(290)を具備することを特徴とする。
【0039】
これによれば、板状補助部材は、その第1ダイヤフラム側の面にて、当該第1ダイヤフラムにその上記一側面側からレーザー溶接により同軸的に接合されている。これにより、第1ダイヤフラムは、撓むことなく、良好に湾曲変位し得る。その結果、請求項1~3のいずれか1つに記載の発明がより一層良好に達成され得る。
【0040】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項1~4のいずれか1つに記載のダイヤフラム式制御弁において、
第1ダイヤフラムは、第2ダイヤフラムと共に、PFAを押し出し成形或いは圧縮成形することにより、フィルム状に形成されていることを特徴とする。
【0041】
これによれば、このように第1ダイヤフラムや第2ダイヤフラムを、PFAを押し出し成形或いは圧縮成形することにより、フィルム状に形成することで、切削加工により第1ダイヤフラムや第2ダイヤフラムを形成するのに比べて発塵はより一層少なく、特に数nmサイズのパーティクル等の発塵さえも最少(最小限)に抑制し得るような平滑度の高い面を有する第1ダイヤフラムや第2ダイヤフラムであって耐薬品性、低溶出性、屈曲性や長寿命性に優れた第1ダイヤフラムや第2ダイヤフラムを形成することができる。
【0042】
また、上述のように、第1ダイヤフラムや第2ダイヤフラムを、PFAを押し出し成形或いは圧縮成形することにより、フィルム状に形成するので、第1ダイヤフラムや第2ダイヤフラムは、その湾曲変位部を中心として結晶化を均一にすることができ、第1ダイヤフラムや第2ダイヤフラムの寿命をより一層長くし得る。以上により、請求項1~4のいずれか1つに記載の発明の作用効果がより一層向上され得る。
【0043】
また、本発明は、請求項6の記載によれば、請求項5に記載のダイヤフラム式制御弁において、
第1ダイヤフラムは、第2ダイヤフラムと共に、0.1(mm)以上で0.6(mm)以下の範囲以内の厚さを有することを特徴とする。
【0044】
これにより、請求項5に記載の発明の作用効果がより一層確実に達成され得る。ここで、第1ダイヤフラムや第2ダイヤフラムの厚さを0.1(mm)以上としたのは、0.1(mm)未満では、第1ダイヤフラムや第2ダイヤフラムが薄過ぎて破れ易いためである。また、0.6(mm)以下としたのは、第1ダイヤフラムや第2ダイヤフラムは、0.6(mm)よりも厚いと、第1ダイヤフラムや第2ダイヤフラムの湾曲変位部が硬すぎて敏感には変位しにくくなるとともに、第1ダイヤフラムや第2ダイヤフラムにクラック等の破壊が生じ易いためである。
【0045】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明に係るダイヤフラム式制御弁の第1実施形態を示す縦断面図である。
【
図2】上記第1実施形態における第1ダイヤフラム部材の断面図である。
【
図3】上記第1実施形態における第2ダイヤフラム部材の断面図である。
【
図4】本発明に係るダイヤフラム式制御弁の第2実施形態の要部を示す断面図である。
【
図5】本発明に係るダイヤフラム式制御弁の第3実施形態を示す縦断面図である。
【
図6】上記第3実施形態における第1ダイヤフラム部材の断面図である。
【
図7】本発明に係るダイヤフラム式制御弁の第4実施形態の要部を示す断面図である。
【
図8】本発明に係るダイヤフラム式制御弁の第5実施形態を示す縦断面図である。
【
図9】本発明に係るダイヤフラム式制御弁の第6実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。
【0048】
(第1実施形態)
図1は、本発明を適用してなるダイヤフラム式制御弁の第1実施形態を示す。当該制御弁は、半導体素子を製造する半導体製造装置に適用されるものである。当該半導体製造装置は、液体供給源(図示しない)からポンプ(図示しない)を介し配管経路に供給される液体を利用して半導体ウェハーや当該半導体ウェハーを利用した半導体素子を製造する。ここで、上記ポンプは、上記液体供給源からの液体を上記配管経路内に吐出する。また、上記液体は、高純度薬液や超純
水の液体をいい、上記半導体製造装置としての性格上、清浄であることが要請される。
【0049】
当該制御弁は、例えば、上記ポンプの吐出側にて上記配管経路内に介装されており、当該制御弁は、当該ポンプから吐出される液体を一定の流量に制御して流出する役割を果たす。
【0050】
当該制御弁は、
図1にて示すごとく、筒状ハウジング100と、当該筒状ハウジング100内に組み付けられる第1ダイヤフラム部材200及び第2ダイヤフラム部材300とを備えるように構成されている。
【0051】
筒状ハウジング100は、底側ハウジング部材100aと、中側ハウジング部材100bと、上側ハウジング部材100cとによって構成されている。
【0052】
底側ハウジング部材100aは、底壁110と、周壁120とにより構成されており、底壁110は、横断面矩形状に形成されている。底壁110は、給気通路部111及び排気孔部112を有しており、給気通路部111は、周壁120の内部を底壁110の外部に連通させるように、底壁110内にてその上面中央開孔部から
図1に図示左側へL字状に延出するように形成されている。排気孔部112は、給気通路部111の右側にて周壁120の内部を底壁110の外部に連通させるように当該底壁110にその厚さ方向に貫通状に形成されている。
【0053】
本第1実施形態において、給気通路部111は、圧縮空気流供給源(以下、第2圧縮空気流供給源ともいう)(図示しない)からの圧縮空気流を第2調圧室Ra(後述する)内に供給し、一方、排気孔部112は、第2調圧室Ra内に供給された圧縮空気流を外部に排気する役割を果たす。
【0054】
周壁120は、横断面矩形状に形成されており、当該周壁120は、底壁110から
図1にて図示上方へ同軸的に延出されている。当該周壁120は開口壁部120aを有しており、当該開口壁部120aは、内側環状壁部121及び外側環状壁部122でもって形成されている。内側環状壁部121は、開口壁部120aの内周側部位にて環状に形成されており、一方、外側環状壁部122は、開口壁部120aの外周側部位にて内側環状壁部121よりも上方へ環状に突出するように形成されている。
【0055】
中側ハウジング部材100bは、
図1にて示すごとく、底側ハウジング部材100aにその上方から同軸的に組み付けられており、当該中側ハウジング部材100bは、中側壁130、下側周壁140、上側周壁150、流入筒160及び流出筒170でもって、構成されている。
【0056】
中側壁130は、横断面矩形状に形成されており、当該中側壁130は、流入側連通路131及び流出側連通路132を備えている。流入側連通路131は、中側壁130の左側部位内にて流入筒160を下側周壁140(後述する)の内部に連通させるようにL字状に形成されている。一方、流出側連通路132は、上側周壁150の内部を流出筒170内に連通させるように中側壁130の右側部位内にてL字状に形成されている。
【0057】
また、当該中側壁130は、中央連通路133を有しており、当該中央連通路133は、中側壁130の中央部に同軸的に貫通形成されている。当該中央連通路133は、上側周壁150の内部を下側周壁140(後述する)の内部に連通するようになっており、当該中央連通路133は、その下側周壁140側の開孔端部にて、環状弁座部133aを形成する。
【0058】
下側周壁140は、中側壁130の外周部から下方へ同軸的に延出されており、当該下側周壁140は、その開口壁部140aにて、底側ハウジング部材100aの周壁120の開口壁部120aに同軸的に組み付けられている。具体的には、下側周壁140の開口壁部140aは、内側環状壁部141及び外側環状壁部142を有しており、内側環状壁部141は、外側環状壁部142よりも下方へ突出するように、開口壁部140aの内周側部位にて周壁120の内側環状壁部121に対向して環状に形成されている。外側環状壁部142は、開口壁部140aの外周側部位にて、周壁120の外側環状壁部122に対向するように環状に形成されている。
【0059】
しかして、下側周壁140は、その内側環状壁部141にて、周壁120の外側環状壁部122内に同軸的に嵌装されて、第2ダイヤフラム部材300の外周部を介し周壁120の内側環状壁部121に係合するとともに、外側環状壁部142にて、周壁120の外側環状壁部122上に係合することで、下側周壁140は、周壁120に組み付けられている。これにより、下側周壁140及び周壁120は、その各内部に第2ダイヤフラム300を収容する収容室R(以下、第2収容室Rともいう)を形成する。
【0060】
流入筒160は、流入側連通路131の外端開孔部から中側壁130の外方へ延出されており、当該流入筒160は、上記配管経路の上流側へ流入側連通路131を連通させる役割を果たす。流出筒170は、流出側連通路132の外端開孔部から外方へ延出されており、当該流出筒170は、流出側連通路132を上記配管経路の下流側に連通させる役割を果たす。
【0061】
上側周壁150は、横断面矩形状に形成されており、当該上側周壁150は、中側壁130から
図1にて図示上方へ同軸的に延出されている。当該上側周壁150は開口壁部150aを有しており、当該開口壁部150aは、内側環状壁部151及び外側環状壁部152でもって形成されている。内側環状壁部151は、開口壁部150aの内周側部位にて環状に形成されており、一方、外側環状壁部152は、開口壁部150aの外周側部位にて内側環状壁部151よりも上方へ環状に突出するように形成されている。
【0062】
上側ハウジング部材100cは、上壁180及び周壁190により構成されている。上壁180は、横断面矩形板状に形成されており、当該上壁180には、給気孔部181及び排気孔部182が、
図1にて示すごとく、形成されている。
【0063】
本第1実施形態において、給気孔部181は、圧縮空気流供給源(以下、第1圧縮空気流供給源ともいう)(図示しない)からの圧縮空気流を第1調圧室Sa(後述する)内に供給し、一方、排気孔部182は、第1調圧室Sa内に供給された圧縮空気流を外部に排気する役割を果たす。
【0064】
周壁190は、上壁180の外周部から下方に向け同軸的に延出するように形成されており、当該周壁190は、中側ハウジング部材100bの上側周壁150の開口壁部150aに対向する開口壁部190aを有するように形成されている。当該開口壁部190aは、上側周壁150の開口壁部150aの内側環状壁部151及び外側環状壁部152に対向する内側環状壁部191及び外側環状壁部192を有する。
【0065】
内側環状壁部191は、開口壁部190aの内周側部位にて、外側環状壁部192よりも下方へ環状に突出するように形成されており、当該内側環状壁部191は、第1ダイヤフラム部材200の外周部を介し、上側周壁150の内側環状壁部151に対向するようになっている。一方、外側環状壁部192は、開口壁部190aの外周側部位にて、上側周壁150の外側環状壁部152に対向するように下方へ突出して形成されている。
【0066】
しかして、上側ハウジング部材100cは、周壁190の開口壁部190aにて、第1ダイヤフラム部材200を介し、上側周壁150の開口壁部150aに係合するようにして、中側ハウジング部材100bに組み付けられている。ここで、上側ハウジング部材100cは、周壁190の内側環状壁部191にて、上側周壁150の内側環状壁部151に第1ダイヤフラム部材200の外周部を介し対向するように、周壁190の外側環状壁部192にて、上側周壁150の外側環状壁部152に係合することで、中側ハウジング部材100bに組み付けられている。これにより、上側ハウジング部材100cは、中側ハウジング部材100bと共に、上側周壁150及び周壁190の各内部にて、第1ダイヤフラム部材200を収容する収容室S(以下、第1収容室Sともいう)を構成する。
【0067】
第1ダイヤフラム部材200は、
図1及び
図2のいずれかにて示すごとく、ダイヤフラム200a(以下、第1ダイヤフラム200aともいう)、補強用環状体200b及び軸状連結部材200cでもって構成されている。第1ダイヤフラム200aは、外周部210、中央部220及び湾曲変位部230でもって、一体的に形成されている。ここで、湾曲変位部230は、外周部210と中央部220との間にて環状に同芯的に形成されている。
【0068】
しかして、当該第1ダイヤフラム200aは、その外周部210にて、補強用環状体200bとともに、中側ハウジング部材100bの上側周壁150の開口壁部150aのうち外側環状壁部152の内周側に嵌装されて、補強用環状体200bを下側に位置させる状態にて、上側周壁150の開口壁部150aのうち内側環状壁部151上に係合し、上側ハウジング部材100cの周壁190の開口壁部190aの内側環状壁部191と、上側周壁150の開口壁部150aの内側環状壁部151との間に挟持されている。
【0069】
これにより、当該第1ダイヤフラム200aは、その中央部220及び湾曲変位部230にて、第1収容室Sの内部に位置し、上壁180側にて調圧室Sa(以下、第1調圧室Saともいう)を形成するとともに中側壁130側にて液体室Sb(以下、第1液体室Sbともいう)を形成するように、第1収容室Sの内部を区画する。これに伴い、第1調圧室Saは、その内部にて、給気孔部181を通し上記第1圧縮空気流供給源から一定の圧力にて供給される圧縮空気流に基づき、設定圧に維持されるようになっている。このことは、当該設定圧が、第1ダイヤフラム200aの上面240に作用することを意味する。
【0070】
また、第1液体室Sbには、上記ポンプから吐出される液体が上記配管経路の上流側を介し流入筒160及び中側壁130の流入側連通路131を通り流入する。これにより、当該液体が第1液体室Sb内にて第1ダイヤフラム200aの下面250に作用する液圧を発生する。
【0071】
第1ダイヤフラム200aは、上述した外周部210、中央部220及び湾曲変位部230を一体的に有するように、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)でもって押し出し成形方法による成形により、円板状かつフィルム状のダイヤフラムとして形成されている。
【0072】
本第1実施形態において、第1ダイヤフラム200aの形成材料としてPFAを採用する根拠について説明する。
【0073】
第1ダイヤフラム200aは、制御弁としての構成上、上記配管経路を流動する液体のうちの強酸・強アルカリ等の腐食性の高い薬液等の高純度薬液と接触するから、当該第1ダイヤフラム200aは、耐酸性や耐アルカリ性等の耐薬品性に優れることが望ましい。
【0074】
また、制御弁の第1ダイヤフラム200aやその他の構成部材からの金属成分や有機物成分の溶出は許されないことから、少なくともダイヤフラムの形成材料としては、低溶出性を有するフッ素樹脂を採用することが望ましい。
【0075】
また、第1ダイヤフラム200aは、制御弁の開閉毎に湾曲変位を繰り返すことから、少なくとも屈曲性や長寿命性に優れることが望ましい。
【0076】
そこで、本第1実施形態では、PFAが、耐薬品性、低溶出性、耐熱性や耐食性に優れ、かつ、屈曲性や長寿命性を確保し得ることから、第1ダイヤフラム200aの形成材料として採用されている。なお、本第1実施形態においては、筒状ハウジング100の形成材料としても、PFAが採用されている。
【0077】
また、当該第1ダイヤフラム200aは、フィルム状のダイヤフラムとして、所定の厚さ範囲以内の厚さ、例えば、0.5(mm)を有するようにPFAでもって形成されている。本第1実施形態において、上記所定の厚さ範囲は、0.1(mm)以上で0.6(mm)以下の厚さ範囲をいう。ここで、0.1(mm)以上としたのは、0.1(mm)未満では、第1ダイヤフラム200aが薄過ぎて破れ易いためである。また、0.6(mm)以下としたのは、第1ダイヤフラム200aは、0.6(mm)よりも厚いと、第1ダイヤフラム200aの湾曲変位部が硬すぎて敏感には変位しにくくなるとともに、第1ダイヤフラム200aにクラック等の破壊が生じ易いためである。
【0078】
また、上述のように第1ダイヤフラム200aの形成にあたり、PFAを用いた押し出し成形方法を採用したのは、以下の根拠に基づく。
【0079】
例えば、PFAからなる材料を切削加工することでダイヤフラムを形成すると、当該ダイヤフラムの面には切削痕が形成される。従って、このような切削加工によるダイヤフラムが制御弁の第1液体室Sbにおいて流動する液体と接触する場合、ダイヤフラムの切削痕に起因して、パーティクル、例えば、数nmサイズの微小なパーティクル等が微少ではあるがダイヤフラムから剥がれて発塵し液体内に混入すると、当該液体は清浄には維持され得ない。引いては、当該液体が、上述のごとく、上記第1液体供給源に還流されると、上記ポンプから上記配管経路内に吐出される液体が、清浄には維持され得ない。
【0080】
これでは、半導体製造装置による製造品、例えば、配線ピッチが10(nm)以下であるようなシリコンウエハの品質不良を招く。このため、制御弁内の液体に対するパーティクルの混入、例えば、数nmサイズのパーティクルの液体に対する混入さえも確実に防止しなければならない。
【0081】
また、ダイヤフラムをPFAの射出成形でもってフィルム状に形成することは困難であるのは勿論のこと、フィルム状に形成できたとしても、屈曲性に優れた長寿命のダイヤフラムを形成することは困難である。
【0082】
そこで、本第1実施形態においては、第1ダイヤフラム200aをPFAの押し出し成形方法による成形でもってフィルム状に形成することとした。これにより、押し出し成形機により押し出し成形されたフィルム状のダイヤフラムは、その各面にて、非常に良好な平滑面、所謂、つるつるの滑らかな面を有するように形成された数nmサイズのパーティクルの発塵をも最少に抑制し得るダイヤフラムであって、耐薬品性、低溶出性や屈曲性に優れた長寿命を有するダイヤフラムとして形成され得る。
【0083】
補強用環状体200bは、フィルム状のダイヤフラム200aを補強するためのもので、当該補強用環状体200bは、ダイヤフラム200aの外周部210に沿い当該ダイヤフラム200aの下面250側からレーザー溶接により接合されている。これにより、補強用環状体200bは、ダイヤフラム200aの外周部210と一体的に形成されて、当該外周部210の下側に位置して、当該外周部210と共に、中側ハウジング部材100bの上側周壁150の外側環状壁部152の内周側に嵌装されることで、上側周壁150の内側環状壁部151と、上側ハウジング部材100cの周壁190の内側環状壁部191との間に挟持されている。
【0084】
この場合、第1ダイヤフラム200aが薄いために取扱いにくくても、上述のような第1ダイヤフラム200aの外周部210と補強用環状体200bとのレーザー溶着による接合構成でもって、補強用環状体200bが、第1ダイヤフラム200aに対しその外周部210側から補強機能を良好に発揮して、当該第1ダイヤフラム200aを中側ハウジング部材100bの上側周壁150の外側環状壁部152の内周側に容易に嵌装され得る。これに伴い、第1ダイヤフラム200aは、内側環状壁部151上に補強用環状体200bと共に良好に係合して、上述のように挟持され得る。
【0085】
本第1実施形態では、当該補強用環状体200bは、PFAを用いて円柱状に射出成形した後環状に切削することで、形成されている。ここで、補強用環状体200bは、第1ダイヤフラム200aの外径に等しい外径を有しており、当該補強用環状体200bの軸方向幅及び厚さは、フィルム状の第1ダイヤフラム200aを補強して取り扱い易くするに適した各値に設定されている。
【0086】
軸状連結部材200cは、
図1及び
図2のいずれかにて示すごとく、第1ダイヤフラム200aの中央部220から軸状弁体部材300c(後述する)に向け同軸的に延出されている。当該軸状連結部材200cは、
図2にて示すごとく、円板状基部260、円錐台部270及び連結軸部280を一体的に有するように、PFAを用いて射出成形により形成されている。
【0087】
当該軸状連結部材200cにおいて、円板状基部260は、第1ダイヤフラム200aの下面250側にて当該第1ダイヤフラム200aの中央部220にレーザー溶接により接合されている。本第1実施形態では、軸状連結部材200cが、その円板状基部260にて、上述のごとく、第1ダイヤフラム200aの中央部220にレーザー溶接により接合されているので、当該軸状連結部材200cが、その円板状基部260にて、第1ダイヤフラム200aをその中央部220側から良好に補強する役割を果たす。これにより、上述のように第1ダイヤフラム200aを中側ハウジング部材100bの上側周壁150の外側環状壁部152の内周側に嵌装することが、軸状連結部材200cにより、その円板状基部260でもって、補強用環状体200bと相俟って、より一層容易に達成され得る。
【0088】
円錐台部270は、円板状基部260の中央部から軸状弁体部材300cに同軸的に対向するように末すぼまり状に延出されている。連結軸部280は、円錐台部270の延出端部271の中央部から軸状弁体部材300cに同軸的に対向するように軸状に延出されており、当該連結軸部280には、雌ねじ孔部281が形成されている。本第1実施形態では、雌ねじ孔部281は、連結軸部280内にその延出端部から同軸的に形成されている。このように構成してなる軸状連結部材200cは、ダイヤフラム200a及び補強用環状体200bと一体的となって第1ダイヤフラム部材200を構成する。
【0089】
第2ダイヤフラム部材300は、
図1及び
図3にて示すごとく、ダイヤフラム300a(以下、第2ダイヤフラム300aともいう)、補強用環状体300b及び軸状弁体部材300cでもって構成されている。第2ダイヤフラム300aは、外周部310、中央部320及び湾曲変位部330でもって、一体的に形成されている。ここで、湾曲変位部330は、外周部310と中央部320との間に環状にかつ同芯的に形成されている。
【0090】
しかして、当該第2ダイヤフラム300aは、その外周部310にて、補強用環状体300bとともに、底側ハウジング部材100aの周壁120の開口壁部120aのうちの外側環状壁部122の内周側に嵌装されて、補強用環状体300bを上側に位置させる状態にて、周壁120の開口壁部120aのうち内側環状壁部121上に係合し、下側周壁140の開口壁部140aのうち内側環状壁部141と、周壁120の開口壁部120aのうち内側環状壁部121との間に挟持されている。
【0091】
これにより、当該第2ダイヤフラム300aは、その中央部320及び湾曲変位部330にて、第2収容室Rの内部に位置し、底壁110側にて調圧室Ra(以下、第2調圧室Raともいう)を形成するとともに中側壁130側にて液体室Rb(以下、第2液体室Rbともいう)を形成するように、第2収容室Rの内部を区画する。これに伴い、第2調圧室Raは、その内部にて、給気連通路111を通し上記第2圧縮空気流供給源(図示しない)から一定の圧力にて供給される圧縮空気流に基づき、設定圧に維持されるようになっている。このことは、当該設定圧は、ダイヤフラム300aの下面350に作用することを意味する。
【0092】
また、第2液体室Rbは、中側壁130の環状弁座部133a及び中央連通路133を介して第1液体室Sb内に連通し得るようになっている。これに伴い、第2液体室Rb内の液体が、軸状弁体部材300cの弁体部370bの着座部373a(後術する)と環状弁座部133aとの間から中央連通路133を通り第1液体室Sb内に流動可能となっている。
【0093】
これにより、当該液体は、第2液体室Rb内にてダイヤフラム300aの上面340に作用する液圧を発生するとともに、軸状弁体部材300cの着座部373aと環状弁座部133aとの間から中央連通路133、第1液体室Sb、流出側連通路132及び流出筒170を通り上記配管経路の下流側に流出する。ここで、第2ダイヤフラム300aは、上述の第1ダイヤフラム200aの場合と同様の根拠に基づき、当該第1ダイヤフラム200aと同様の構成にて、PFAの押し出し成形によりフィルム状に形成されている。
【0094】
補強用環状体300bは、フィルム状の第2ダイヤフラム300aをその外周部側から補強するためのもので、当該補強用環状体300bは、第2ダイヤフラム300aの外周部310に沿い当該第2ダイヤフラム300aの上面340側からレーザー溶接により接合されている。
【0095】
これに伴い、補強用環状体300bは、第2ダイヤフラム300aの外周部310と一体的に形成されて、当該外周部310の上側に位置して、当該外周部310と共に、底側ハウジング部材100aの周壁120の外側環状壁部122の内周側に嵌装されている。ここで、補強用環状体300bは、その外周部側から第2ダイヤフラム300aを良好に補強する役割を果たす。従って、第2ダイヤフラム300aが薄くて取り扱いにくくても、当該第2ダイヤフラム300aは、上述のような補強用環状体300bによる補強機能のもと、補強用環状体300bと共に、底側ハウジング部材100aの周壁120の外側環状壁部122の内周側に容易に嵌装され得る。
【0096】
従って、このような嵌装のもと、第2ダイヤフラム300aは、その外周部310にて、補強用環状体300bと共に、下側周壁140の内側環状壁部141と、底側ハウジング部材100aの周壁120の内側環状壁部121との間に挟持されている。なお、本第1実施形態では、補強用環状体300bの径方向幅は、上述した補強用環状体200bの径方向幅よりも広く設定されている。また、補強用環状体300bは、補強用環状体200bと同様にPFAでもって形成されている。
【0097】
軸状弁体部材300cは、
図3にて示すごとく、円形基板360及びロッド370を備えている。本第1実施形態では、軸状弁体部材300cは、PFAでもって形成されている。
【0098】
円形基板360は、第2ダイヤフラム300aの中央部320に当該第2ダイヤフラム300aの上面340側からレーザー溶接により接合されている。本第1実施形態では、軸状弁体部材300cが、その円形基板360にて、上述のごとく、第2ダイヤフラム300aの中央部320にレーザー溶接により接合されているので、当該軸状弁体部材300cが、その円形基板360にて、第2ダイヤフラム300aをその中央部320側から補強する役割を果たす。これにより、上述のように第2ダイヤフラム300aを底側ハウジング部材100aの周壁120の外側環状壁部122の内周側に嵌装することが、軸状弁体部材300cにより、その円形基板360でもって、補強用環状体3200bと相俟って、より一層容易に達成され得る。
【0099】
また、ロッド370は、円形基板360の中央部から軸状連結部材200cに対向するように、中側壁130の中央連通路133内に同軸的に延出されており、当該ロッド370は、基端側ロッド部370aと、弁体部370bと、先端側ロッド部370cとでもって、一体的に構成されている。
【0100】
基端側ロッド部370aは、円形基板360の中央部から軸状連結部材200c に対向するように同軸的に延出されている。弁体部370bは、
図3にて示すごとく、円柱部371と、当該円柱部371の軸方向下側端部から下方へ同軸的にかつ末すぼまり状に延出する下側円錐台部372と、円柱部371の軸方向上側端部から上方へ同軸的にかつ末すぼまり状に延出する上側円錐台部373でもって、一体的に形成されている。
【0101】
しかして、弁体部370bは、上側円錐台部373の円柱部371からの延出基端部373a(以下、着座部373aともいう)にて、環状弁座部133a(後述する)と.共に弁部を構成する。これに伴い、当該弁部は、上側円錐台部373の着座部373aの環状弁座部133aへの着座により閉じる。このことは、制御弁が閉弁することを意味する。また、当該弁部は、上側円錐台部373の着座部373aの環状弁座部133aからの分離により開く。このことは、当該制御弁が開弁することを意味する。ここで、中側壁130の中央連通路133の下側開口端部133aが、環状弁座部133aとして形成されている。
【0102】
先端側ロッド部370cは、大径軸部374及び雄ねじ部375でもって一体的に構成されており、大径軸部374は、弁体部370bの上側円錐台部373の末すぼまり端部から上方へ同軸的に延出する。また、雄ねじ部375は、大径軸部374の中央部から軸状連結部材200cに向けて同軸的に延出されており、当該雄ねじ部375は、軸状連結部材200cの連結軸部280の雌ねじ孔部281内に同軸的に締着される。これに伴い、大径軸部374は、その外周部にて、連結軸部280の外周部に係合する。これにより、軸状弁体部材300cは、軸状連結部材200cと一体的に連結或いは結合されている。
【0103】
以上のように構成した本第1実施形態において、半導体素子を上記半導体製造装置により製造するにあたり、圧縮空気流が上記第1圧縮空気流供給源から上記一定の圧力にて第1調圧室Sa内に上側ハウジング部材100cの給気孔部181を通り供給されると、上記設定圧(以下、第1設定圧ともいう)が、第1調圧室Sa内に発生する。一方、圧縮空気流が上記第2圧縮空気流供給源から上記一定の圧力にて第2調圧室Ra内に底側ハウジング部材100aの連通路部111を通り供給されると、上記設定圧(以下、第2設定圧ともいう)が、第2調圧室Ra内に発生する。
【0104】
ここで、第2ダイヤフラム部材300の軸状弁体部材300cは、その雄ねじ部375にて、第1ダイヤフラム部材200の軸状連結部材200cの連結軸部280の雌ねじ孔部281内に同軸的に締着されている。このことは、第1ダイヤフラム200a及び第2ダイヤフラム300aは、軸状連結部材200c及び軸状弁体部材300cの相互の結合により、軸状連結部材200c及び軸状弁体部材300cとともに、一体的構成体となっていることを意味する。
【0105】
このような構成のもと、本第1実施形態においては、上記第1圧縮空気流の上記一定の圧力及び上記第2圧縮空気流の上記一定の圧力は、制御弁において、上記ポンプからの吐出液体の液圧の変動に伴う上記一体的構成体の変位に応じて弁体部370bの環状弁座部133aとの開度(弁部の開度)を一定の間隔に制御して一定の流量の液体として流出するように、選定されている。これに伴い、第1調圧室Sa内の主設定圧及び第2調圧室Ra内の副設定圧は、それぞれ、上記第1圧縮空気流の上記一定の圧力及び上記第2圧縮空気流の上記一定の圧力でもって、設定されている。
【0106】
しかして、上述のように、液体が第2液体室Rb及び第1液体室Sb内に流入すると、当該液体の液圧が第2ダイヤフラム300aに第2液体室Rb側から作用するとともに第1ダイヤフラム200aに第1液体室Sb側から作用する。
【0107】
これに伴い、当該制御弁は、上記一体的構成体にて、互いに向き合うように作用する第1調圧室Sa内の設定圧及び第2調圧室Ra内の設定圧のもとに、これら設定圧に対向するように作用する第1液体室Sb内の液圧及び第2液体室Rb内の液圧に応じて、弁体部370bの着座部373aの環状弁座部133aに対する間隔(弁部の開度)を一定の間隔に制御する。このことは、当該制御弁が、上記ポンプからの吐出液体を、弁体部370bの着座部373aの環状弁座部133aに対する一定の間隔に対応する一定の流量に制御して、流入側連通路131、第2液体室Rb、中央連通路133、第1液体室Sb及び流出側連通路132を通り流出筒170から流出させることを意味する。
【0108】
このような状態において、上記ポンプから吐出される液体の液圧が変動すると、この変動に応じて、当該制御弁が、上記一体的構成体を、上記両設定圧のもと、弁体部370bの着座部373aの環状弁座部133aに対する開度を上記一定の開度に維持すべく変位させるように制御する。換言すれば、当該制御弁は、上記両設定圧のもと、上記ポンプの吐出液体の液圧の変動に応じて上記一体的構成体を変位させて、吐出液体を一定の流量にて流出側へ流出するように制御する。
【0109】
ここで、各ダイヤフラム200a、300aは、上述のごとく、PFAの押し出し成形でもって形成されたフィルム状のダイヤフラムである。このため、当該ダイヤフラム200a、300aは、その各両面にて、良好な平滑面となっている。
【0110】
従って、当該制御弁が作動状態にあっても、切削痕に起因するようなパーティクルが、第1ダイヤフラム200aや第2ダイヤフラム300aの液体との接触により当該第1ダイヤフラム200aや第2ダイヤフラム300aから剥離されて液体内に混入するという事態を生じないのは勿論のこと、数nmサイズの微小なパーティクルの液体内への混入さえも最少(最小限)に抑制し得る。また、このようなことは、当該制御弁の作動状態において、軸状連結部材200cが環状弁座部133aに着座したり当該環状弁座部133aから離れたりしても、同様に成立する。
【0111】
以上のようなことから、制御弁において、その第1液体室Sb内や第2液体室Rb内にて流動する液体は、上述のように数nmサイズの微小なパーティクルの混入さえも最少に抑制することで、実質的に清浄に維持されて、環状弁座部133a、中央連通路133、第1液体室Sb、流出側連通路132及び流出筒170を通り上記配管経路の下流側に流出する。
【0112】
従って、半導体素子の製造にあたり、上述のように配管経路の下流側に流出した液体が、例えば10(nm)以下の配線ピッチを有する半導体ウェハーの表面に沿い流動しても、数nmサイズのパーティクルが当該半導体ウェハーの表面に付着して配線間の短絡その他の異常を招くことはない。その結果、製造された半導体素子の品質が良好に維持され得る。
【0113】
また、フィルム状の第1ダイヤフラム200aや第2ダイヤフラム300aは、上述のごとく、PFAの押し出し成形により形成されているから、数nmサイズのパーティクルの発塵をも最少に抑制し得るとともに屈曲性に優れ長寿命を維持し得るダイヤフラムとして形成され得る。従って、このような第1ダイヤフラム200aや第2ダイヤフラム300aを有する制御弁が半導体製造装置に適用されても、第1ダイヤフラム200aや第2ダイヤフラム300aが長期に亘り屈曲作動を良好に維持することから、当該制御弁は、半導体製造装置に適用されて長期に亘り良好な機能を維持し得る。
【0114】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態の要部を示している。当該第2実施形態において、上記第1実施形態にて述べた第1ダイヤフラム部材200が、ダイヤフラム200a、補強用環状体200b及び軸状連結部材200cに加えて、円板状補助部材290を備えている。
【0115】
補助部材290は、PFAにより円板状に形成されており、当該補助部材290は、ダイヤフラム200aの湾曲変位部230の可動範囲を規制する役割を果たすものである。当該補助部材290は、その下面にて、第1ダイヤフラム200aにその上面240側からレーザー溶接により同軸的に接合されている。なお、補助部材290は、その外径及び厚さにおいて、第1ダイヤフラム200aの撓みを抑制して当該第1ダイヤフラム200aの可動範囲を規制するように設定されている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0116】
このように構成してなる本第2実施形態においては、補助部材290が、上述のように第1ダイヤフラム200aにレーザー溶接により接合されているから、第1ダイヤフラム部材200において、第1ダイヤフラム200aは、湾曲変位部230にて、撓むことなく、良好に湾曲変位し得る。当該制御弁としてのその他の構成、作動及び作用効果は上記第1実施形態と同様である。
【0117】
(第3実施形態)
図5は、本発明に係るダイヤフラム式制御弁の第3実施形態を示している。当該第3実施形態では、ダイヤフラム式制御弁が、
図5及び
図6のいずれかにて示すごとく、補強用環状体200bを第1ダイヤフラム200aの外周部210にその上面240側からレーザー溶接により接合してなる第1ダイヤフラム部材を、上記第1実施形態にて述べた第1ダイヤフラム部材200に代えて採用してなるものである。なお、本第3実施形態にいう第1ダイヤフラム部材も、上記第1実施形態と同様に、符号200により示す。
【0118】
本第3実施形態にいう制御弁において、第1ダイヤフラム部材200は、上記第1実施形態と同様に、第1ダイヤフラム200a、補強用環状体200b及び軸状連結部材200cでもって構成されている。本第3実施形態においても、軸状連結部材200cは、その円板状基部260にて、上記第1実施形態と同様に、第1ダイヤフラム200aの中央部220にその下面250側からレーザー溶接により接合されている(
図6参照)。また、補強用環状体200bは、上記第1実施形態とは異なり、ダイヤフラム200aの外周部210にて、上面240側からレーザー溶接により接合されている(
図6参照)。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0119】
以上のように構成した本第3実施形態においては、上述のように構成してなる第1ダイヤフラム部材200では、第1ダイヤフラム200aが、補強用環状体200bを上側に位置させる状態にて、外周部210にて、補強用環状体200bとともに中側ハウジング部材100bの上側周壁150の開口壁部150aのうち外側環状壁部152の内周側に嵌装されて、中側ハウジング部材100bの上側周壁150の開口壁部150aのうち内側環状壁部151と、上側ハウジング部材100cの周壁190の開口壁部190aのうち内側環状壁部191との間に挟持されている。
【0120】
この場合、上述のように、補強用環状体200bが第1ダイヤフラム200aにその上面240側からレーザー溶接により接合されていても、このような接合構成でもって、第1ダイヤフラム200aが薄いために取扱いにくくても、補強用環状体200bが、第1ダイヤフラム200aに対し補強機能を良好に発揮して、第1ダイヤフラム200aを中側ハウジング部材100bの上側周壁150の外側環状壁部152の内周側に容易に嵌装し得る。これに伴い、第1ダイヤフラム200aは、内側環状壁部151上に補強用環状体200bと共に良好に着座して、上述のように挟持され得る。その他の当該制御弁の構成、作動及び作用効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0121】
(第4実施形態)
図7は、本発明の第4実施形態の要部を示している。当該第4実施形態において、上記第3実施形態にて述べた第1ダイヤフラム部材200が、第1ダイヤフラム200a、補強用環状体200b及び軸状連結部材200cに加えて、上記第2実施形態にて述べた円板状補助部材290を備えている。
【0122】
当該補助部材290は、上記第2実施形態とは異なり、その下面にて、補強用環状体200bの内周側において、第1ダイヤフラム200aにその上面240側からレーザー溶接により同軸的に接合されている。その他の構成は上記第2或いは第3の実施形態と同様である。
【0123】
このように構成した本第4実施形態においては、補助部材290が、上記第2実施形態とは異なり、補強用環状体200bの内周側にて、第1ダイヤフラム200aにその上面240側からレーザー溶接により接合されていても、第1ダイヤフラム部材200において、第1ダイヤフラム200aは、湾曲変位部230にて、撓むことなく、良好に湾曲変位し得る。制御弁としてのその他の構成、作動及び作用効果は上記第2或いは第3の実施形態と同様である。
【0124】
(第5実施形態)
図8は、本発明に係るダイヤフラム式制御弁の第5実施形態を示している。当該第5実施形態においては、上記第1実施形態にて述べた第1ダイヤフラム部材200の軸状連結部材200cが、その連結軸部280において、雌ねじ孔部281に代えて、縦断面台形形状の凹部282を備えるとともに、第2ダイヤフラム部材300が、その軸状弁体部材300cの先端側ロッド部370cにおいて、雄ねじ部375に代えて、縦断面台形形状の突出部370dを備えている。
【0125】
凹部282は、連結軸部280内にその延出端部側から縦断面台形凹状に同軸的に形成されており、当該凹部282は、連結軸部280内に向け末すぼまり状に形成されている。また、突出部370dは、軸状弁体部材300cの大径軸部374から軸状連結部材200cに向けて同軸的にかつ末すぼまり状に延出するように縦断面台形形状に形成されている。
【0126】
このように構成してなる軸状弁体部材300cは、その突出部370dにて、連結軸部280の凹部282内に相互に分離可能に係合している。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0127】
以上のように構成してなる本第5実施形態においては、上記第1実施形態における制御弁の一体的構成体とは異なり、第2ダイヤフラム部材300の軸状弁体部材300cが、その突出部370dにて、第1ダイヤフラム部材200の軸状連結部材200cの凹部282内に分離可能に係合するようになっている。このことは、第1ダイヤフラム200a及び第2ダイヤフラム300aは、軸状連結部材200c及び軸状弁体部材300cの相互の分離可能な連結により、軸状連結部材200c及び軸状弁体部材300cとともに、上記一体的構成体とは異なり、分離可能構成体となっていることを意味する。
【0128】
これに伴い、当該制御弁が、上記第1実施形態と同様に上記ポンプからの吐出液体を一定の流量の液体として流出するように制御している状態において、当該制御弁の流出側の液圧負荷が突然増大することで、流出筒160及び第1液体室Sb内の液圧が突然増圧されると、第1ダイヤフラム200aに対する第1調圧室Sa側への液圧が増圧される。
【0129】
このため、第1ダイヤフラム200aが第1調圧室Sa側へ湾曲変位することで、当該第1ダイヤフラム200aが軸状連結部材200cに対し第1調圧室Sa側への引張り力を作用させる。
【0130】
しかしながら、上述のごとく、分離可能構成体において、軸状連結部材200c及び軸状弁体部材300cは相互に分離可能となっているので、軸状連結部材200cが、軸状弁体部材300cから分離して第1調圧室Sa側へ移動するのみであって、軸状弁体部材300cは、そのままの位置に維持され得る。従って、上述した引張り力が弁体部370bにも作用した場合に生じがちな着座部373bの環状弁座部133aとの摩擦係合が生ずることがなく、当該摩擦係合による着座部373bや環状弁座部133aからのパーティクルの発生が起こるという事態を招くことがない。
【0131】
このような作用効果のもとに、上記第1実施形態にて述べた第1ダイヤフラム部材200aや第2ダイヤフラム部材300に基づく制御弁としての作動及び作用効果が達成され得る。
【0132】
(第6実施形態)
図9は、本発明に係るダイヤフラム式制御弁の第6実施形態を示している。当該第6実施形態においては、上記第5実施形態とは、第1ダイヤフラム部材200の構成において、上記第3実施形態と同様に環状体200bがダイヤフラム200aの上面140にレーザー溶接により接合されている点において、相違するのみで、その他の構成は、上記第5実施形態と同様である。
【0133】
従って、このように構成した本第6実施形態においては、上記第5実施形態にて述べた分離可能一体構成に基づく制御弁としての動作や作用効果が、同様に達成され得る。
【0134】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
【0135】
(1)本発明の実施にあたり、上記実施形態にて述べたダイヤフラム200aは、PFAの押し出し成形によりフィルム状に成形することで形成されるダイヤフラムに限ることなく、PFAの圧縮成形方法によりフィルム状に圧縮成形することで形成されるダイヤフラムであってもよい。
【0136】
当該圧縮成形方法は、PFAを型内に充填してフィルム状に圧縮する方法をいい、ダイヤフラム200aを、押し出し成形方法により成形する場合と同様に、耐薬品性、低溶出性、屈曲性や長寿命性に優れた平滑度の高いフィルム状のダイヤフラムであって数nmサイズのパーティクルの発塵性をも最小限に抑制し得るダイヤフラムとして形成され得る。これによっても、上記実施形態と同様の作用効果が達成され得る。
【0137】
(2)また、本発明の実施にあたり、ダイヤフラム部材200は、ダイヤフラム200a、補強用環状体200b及び軸状連結部材200cのうち、軸状連結部材200cを含まない構成として把握してもよい。
【0138】
(3)また、本発明の実施にあたり、補強用環状体200bは、必要に応じて廃止してもよい。この場合には、軸状連結部材200cがダイヤフラム200aに対する補強部材として役割を果たすことで、ダイヤフラム200aは、その外周部210にて、中側ハウジング部材100bの周壁120の外側環状壁部122の内周側において、中側ハウジング部材100bの周壁120の内側環状壁部121と、上側ハウジング部材100cの周壁160の内側環状壁部161との間に容易に挟持され得る。
【0139】
(4)本発明の実施にあたり、ハウジング100において中側ハウジング部材100bは、中側壁130を、上下両側周壁150,140からなる筒状周壁の軸方向中間部位に設けて、当該筒状周壁の内部を、底側ハウジング部材100a側にて収容室Rを形成するとともに上側ハウジング部材100c側にて収容室Sを形成するに区画する区画壁として把握するようにしてもよい。
【0140】
(5)本発明の実施にあたり、軸状連結部材200cや軸状弁体部材300cの形成材料は、PFAに限ることなく、フッ素樹脂であればよい。
【符号の説明】
【0141】
100…ハウジング、100a…底側ハウジング部材、
100b…中側ハウジング部材、100c…上側ハウジング部材、110…底壁、
130…中側壁、131…流入側連通路、132…流出側連通路、
133…中央連通路、133a…環状弁座部、120、160…周壁、
140、150…筒状周壁、180…上壁、160…流入筒、170…流出筒、
200…ダイヤフラム部材、200a、300a…ダイヤフラム、
200b、300b…補強用環状体、200c…軸状連結部材、
210、310…外周部、282…凹部、290…板状補助部材、
300c…軸状弁体部材、360…円形基板、370…ロッド、
370b…弁体部、370d…突出部、Ra、Sa…調圧室、
Rb、Sb…液体室。