IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハイアールアジアインターナショナル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-冷蔵庫 図1
  • 特許-冷蔵庫 図2
  • 特許-冷蔵庫 図3
  • 特許-冷蔵庫 図4
  • 特許-冷蔵庫 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 11/00 20060101AFI20221021BHJP
   F25C 1/25 20180101ALI20221021BHJP
   F25C 1/10 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
F25D11/00 101B
F25C1/25 305P
F25C1/10 302Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018233571
(22)【出願日】2018-12-13
(65)【公開番号】P2020094754
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】小田 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】大湯 英樹
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 正
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0370091(US,A1)
【文献】特開平8-54170(JP,A)
【文献】特開2000-329434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00-31/00
F25C 1/00- 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受水製氷皿を含むユニットを有する自動製氷装置と、
前記受水製氷皿を含むユニットの上方に冷気を供給する吹出口、及び前記冷気を生成するための圧縮機を有する冷却部と、
前記受水製氷皿を含むユニットの下方に配置された温度センサと、
前記温度センサの検出値が上限値に達したとき、前記圧縮機の稼働を開始し、前記温度センサの検出値が下限値に達したとき、稼働していた前記圧縮機を停止する制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記受水製氷皿を含むユニットが庫内に存在しないと判断したとき、前記下限値の値を通常設定値よりも低い特別設定値に変更することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記受水製氷皿を含むユニットが庫内に存在するか否かを検出するセンサを備え、
前記制御部は、
前記センサの検出信号に基づいて、前記下限値の値を前記通常設定値にするか、前記特別設定値にするか定めることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記制御部は、
少なくとも1つの冷却サイクルにおいて、前記圧縮機の稼働開始から前記温度センサの検出値が前記下限値に達するまでの時間が所定の時間1より短いとき、前記前記受水製氷皿を含むユニットが庫内に存在しないと判断することを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記制御部は、
前記下限値の値が前記特別設定値に設定されている状態で、
複数の冷却サイクルにおいて、前記圧縮機の稼働開始から前記温度センサの検出値が前記下限値に達するまでの時間が所定の時間2より長いとき、
前記受水製氷皿を含むユニットが庫内に存在すると判断して、前記下限値の値を前記通常設定値に変更する制御を行うことを特徴とする請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記自動製氷装置が、貯水タンクと、配管及びポンプにより前記貯水タンク内の水を前記受水製氷皿に供給する供給機構と、前記配管の外周に巻かれた凍結防止用ヒータと、を備え、
前記制御部は、
前記前記受水製氷皿を含むユニットが庫内に存在しないと判断したとき、前記ポンプ及び前記凍結防止用ヒータを稼働しないように制御を行うことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷蔵庫に関し、特に、自動製氷装置を有する冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
自動製氷装置を有する冷蔵庫では、氷を多く必要としない冬の時期等において、受水製氷皿を含むユニットを取り外して、冷凍室の容量を増やす要望がある。これに対応するため、受水製氷皿を含むユニットを容易に取り外すことができる冷蔵庫が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-301504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の冷蔵庫では、受水製氷皿及びその回転機構を有するユニットを取り外すとき、回転機構へ給電する電気配線をマグネット接続にすることにより、電気配線の切離/接続操作を容易に行えるようにしている。しかし、受水製氷皿を含むユニットを取り外した場合、冷凍室内の冷気の流れが変わるため、冷凍室内の適正な温度制御ができなくなる可能性がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記の課題を解決するものであり、自動製氷装置の受水製氷皿を含むユニットを取り外した場合でも、冷凍室内の適正な温度制御が実現可能な冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の冷蔵庫は、
受水製氷皿を含むユニットを有する自動製氷装置と、
前記受水製氷皿を含むユニットの上方に冷気を供給する吹出口、及び前記冷気を生成するための圧縮機を有する冷却部と、
前記受水製氷皿を含むユニットの下方に配置された温度センサと、
前記温度センサの検出値が上限値に達したとき、前記圧縮機の稼働を開始し、前記温度センサの検出値が下限値に達したとき、稼働していた前記圧縮機を停止する制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記受水製氷皿を含むユニットが庫内に存在しないと判断したとき、前記下限値の値を通常設定値よりも低い特別設定値に変更することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、受水製氷皿を含むユニットが庫内に存在しないと判断したとき、下限値の値を通常設定値よりも低い特別設定値に変更することにより、自動製氷装置の受水製氷皿を含むユニットを取り外した場合でも、受水製氷皿を含むユニットが庫内に存在する場合と同様に、冷凍室内の適正な温度制御が実現できる。
【0008】
また、本発明は、
前記受水製氷皿を含むユニットが庫内に存在するか否かを検出するセンサを備え、
前記制御部は、
前記センサの検出信号に基づいて、前記下限値の値を前記通常設定値にするか、前記特別設定値にするか定めることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、センサの検出信号に基づいて、確実に受水製氷皿を含むユニットの存在の有無を判別して、下限値の適正な設定を行うことができる。
【0010】
また、本発明では、
前記制御部は、
少なくとも1つの冷却サイクルにおいて、前記圧縮機の稼働開始から前記温度センサの検出値が前記下限値に達するまでの時間が所定の時間1より短いとき、前記前記受水製氷皿を含むユニットが庫内に存在しないと判断することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、圧縮機の稼働開始から温度センサの検出値が下限値に達するまでの時間に基づいて、特別なセンサを用いることなく、受水製氷皿を含むユニットの存在の有無を判別することができる。
【0012】
また、本発明では、
前記制御部は、
前記下限値の値が前記特別設定値に設定されている状態で、
複数の冷却サイクルにおいて、前記圧縮機の稼働開始から前記温度センサの検出値が前記下限値に達するまでの時間が所定の時間2より長いとき、
前記前記受水製氷皿を含むユニットが庫内に存在すると判断して、前記下限値の値を前記通常設定値に変更する制御を行うことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、圧縮機の稼働開始から温度センサの検出値が下限値に達するまでの時間に基づいて、特別なセンサを用いることなく、受水製氷皿を含むユニットが存在しない状態から存在する状態への変化を判別して、下限値の値を適確に特別設定値から通常設定値に変更することができる。
【0014】
また、本発明では、
前記自動製氷装置が、貯水タンクと、配管及びポンプにより前記貯水タンク内の水を前記受水製氷皿に供給する供給機構と、前記配管の外周に巻かれた凍結防止用ヒータと、を備え、
前記制御部は、
前記受水製氷皿を含むユニットが庫内に存在しないと判断したとき、前記ポンプ及び前記凍結防止用ヒータを稼働しないように制御を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、受水製氷皿を含むユニットが庫内に存在しないと判断したとき、ポンプ及び凍結防止用ヒータを稼働しない制御を行うので、受水製氷皿を含むユニットが存在しない状態における不具合を適切に防止し、無駄なエネルギ消費を抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明においては、自動製氷装置の受水製氷皿を含むユニットを取り外した場合でも、冷凍室内の適正な温度制御が実現可能な冷蔵庫を提供するこができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の1つの実施形態に係る自動製氷装置40を有する冷蔵庫の内部構造を模式的に示す側面断面図であって、受水製氷皿を含むユニットが庫内に存在するか場合を示す図である。
図2】本発明1つの実施形態に係る自動製氷装置40を有する冷蔵庫の内部構造を模式的に示す側面断面図であって、受水製氷皿を含むユニットが庫内に存在しない場合を示す図である。
図3】本発明1つの実施形態に係る冷蔵庫の制御装置の概要を示すブロック図である。
図4】下限値が通常設定値の場合の温度センサの検出値及び冷凍室温度を示すグラフであって、受水製氷皿を含むユニットが庫内に存在する場合と存在しない場合を比較して示したグラフである。
図5】下限値が特別設定値の場合の温度センサの検出値及び冷凍室温度を示すグラフであって、受水製氷皿を含むユニットが庫内に存在しない場合であっても、受水製氷皿を含むユニットが庫内に存在する場合と同様な適正な冷凍室温度の制御が実現できることを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。同様の機能を有する対応する部材については、全図で同じ参照番号を付す。
(本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫)
図1は、本発明1つの実施形態に係る自動製氷装置40を有する冷蔵庫の内部構造を模式的に示す側面断面図であって、受水製氷皿を含むユニットが庫内に存在するか場合を示す図である。図2は、受水製氷皿を含むユニットが庫内に存在しない場合を示す図である。図3は、本発明1つの実施形態に係る冷蔵庫の制御装置の概要を示すブロック図である。
【0019】
本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫2は、冷凍室4をはじめとする庫内を冷却する冷却部50を備える。冷却部50は、図1、2の線図に示すように、配管で接続された圧縮器52、凝縮器54及び蒸発器56を備える。圧縮器52で圧縮された冷媒(気体)は凝縮器54で液化され、液化された冷媒が蒸発器56で冷蔵庫2内の気体の熱を奪って気化し、気化した冷媒が圧縮器52で再び圧縮されるというサイクルを繰り返す。冷蔵庫2の庫内では、ファン58により気体が循環しており、蒸発器56を通過した冷気が冷蔵室や冷凍室4に供給される。冷凍室4には、吹出口8を介して冷気が供給される。供給された冷気は、冷凍室4内を循環した後、排出口9から排出され、再び蒸発器56の下側へ達して、同様な流れを繰り返す。冷蔵庫2は、冷却のための制御を行う制御部100を備える。
【0020】
本実施形態に係る冷蔵庫2は、自動的に立方体状の氷を貯氷箱30に供給する自動製氷装置40を有する。この自動製氷装置40では、冷凍室4内に受水製氷皿12を含むユニット10が配置され、ユニット10の下側に貯氷箱30が配置されている。ユニット10は、受水製氷皿12に加えて、受水製氷皿12を回転させる回転機構14、及び貯氷箱30内に所定量以上の氷があるか否かを検出する検氷レバー16を備える。
【0021】
自動製氷装置40は、更に、ユニット10が配置された冷凍室4の上方に、貯水タンク22内の水を受水製氷皿12に供給する供給機構20を備える。供給機構20は、貯水タンク22、ポンプ24及び配管26を備える。ポンプ24の駆動により、貯水タンク22内に蓄えられた水が、配管26を通って、受水製氷皿12に供給される。
供給機構20は、更に、配管26の外周に巻かれた凍結防止用ヒータ28を備える。凍結防止用ヒータ28により配管26の凍結を防いで、常に貯水タンク22内の水を受水製氷皿12に供給することができる。
受水製氷皿12を含むユニット10の下方の冷凍室4の後面4Aに、庫内の冷却制御に用いる温度センサ60が配置されている。
【0022】
本実施形態に係る冷蔵庫2では、氷を多く必要としない冬の時期等において、受水製氷皿12を含むユニット10を外に取り外せるようになっている。これにより、冷凍室4のユニット10が配置されていた領域を、冷凍食品を収納するスペースとして使用することができる。
【0023】
(制御部)
図3に示すように、冷蔵庫2の制御部100は、自動製氷装置40及び庫内の冷却制御を行う。自動製氷装置40の制御としては、検氷レバー16からの信号に基づき、回転機構14を駆動して、受水製氷皿12を180度回転させて、氷を貯氷箱30に落下させる制御を行う。また、受水製氷皿12を180度回転させて元に戻した後、ポンプ24を駆動させて、受水製氷皿12に水を供給する制御を行う。更に、貯水タンク22から受水製氷皿12へ水を供給する配管26が凍結するのを防ぐため、凍結防止用ヒータ28に通電する制御を行う。
庫内の冷却制御としては、温度センサ60からの信号に基づき、圧縮機52を稼働させ、停止する制御を行う。また、温度センサ60からの信号に基づき、ファン58の起動、停止の制御を行う。
【0024】
<自動製氷装置の制御>
本実施形態に係る冷蔵庫2では、冷凍室4に冷気を吹き込む吹出口8が、受水製氷皿12を含むユニット10の上方、特に、受水製氷皿12の上面に冷気を供給するように配置されている。これにより、受水製氷皿12内の水を冷却して製氷することができる。
このような構成の自動製氷装置40において、検氷レバー16からの信号に基づき、貯氷箱30内の氷が所定量以上はないと判断したとき、制御部100は、回転機構14のモータを駆動させて、受水製氷皿12を捻るようにしながら180度回転させる。これにより、受水製氷皿12内の氷を貯氷箱30内に落として供給することができる。回転させた受水製氷皿12を元の位置に戻した後、制御部100は、ポンプ24を駆動させて、貯水タンク22から受水製氷皿12に給水を行う。受水製氷皿12に供給された水は、吹出口8から供給された冷気により製氷される。
制御部100は、更に、貯水タンク22から受水製氷皿12へ水を供給する配管26が凍結するのを防ぐため、凍結防止用ヒータ28に電力を供給する制御を行う。
【0025】
<庫内の冷却制御>
制御部100は、温度センサ60の検出値に基づいて、庫内の冷却の制御を行う。温度センサ60の検出値が上限値に達したとき、圧縮機52の稼働を開始させる。これにより、冷凍室4内に冷気が供給されて、冷凍室4内の温度が降下する。そして、温度センサ60の検出値が下限値に達したとき、稼働していた圧縮機52を停止する制御を行う。圧縮機52の停止後、冷凍室4内の温度が上昇し、温度センサ60の検出値が上限値に達したとき、再び圧縮機52を稼働させる。このような圧縮機52の稼働が開始され停止し、次に稼働が開始されるまでの工程を、1つの冷却サイクルと称する。制御部100は、少なくとも圧縮機52が駆動している間は、ファン58が駆動するように制御する。
【0026】
受水製氷皿12を含むユニット10が庫内(冷凍室4の中)に存在する場合には、図1の太矢印に示すように、吹出口8から吹き出された冷気は、受水製氷皿12の上面に沿って流れる。そして、受水製氷皿12の左右両端と冷凍室4の両側面との間の空間を介して下方へ流れる。下方へ流れた気体は排出口9を介して、冷凍室4の外部へ排出される。このため、吹出口8から吹き出された冷気が、直接、温度センサ60の方に流れることはない。
【0027】
一方、受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在しない場合には、図2の太矢印に示すように、吹出口8から吹き出された冷気は、遮蔽物がないので、直接、温度センサ60の方に流れる。そして、気体は、下方へ流れ、排出口9を介して、冷凍室4の外部へ排出される。よって、温度センサ60の周囲の気体の温度が、受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在する場合に比べて、より早く下降することになる。これにより、制御部100が同じ冷却制御を行うと、冷凍室4内の温度を適性に制御できなくなる可能性がある。このことについて、下記に詳しく述べる。
【0028】
(下限値が通常設定値の場合の冷却サイクル)
図4は、下限値が通常の設定値(以下「通常設定値」と称する)の場合の温度センサの検出値及び冷凍室温度を示すグラフであって、受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在する場合と存在しない場合を比較して示したグラフである。上側のグラフは、冷凍室4の中の受水製氷皿12を含むユニット10の下方に配置された温度センサ60の検出値の時間的変位を示す。下側のグラフは、冷凍室4の中の実際の温度(例えば、全体の平均温度)の時間的変位を示す。何れのグラフも、横軸に時間を示し、縦軸に温度を示す。受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在する場合の温度を実線で示し、このユニット10が存在しない場合の温度を破線で示す。
【0029】
はじめに、実線で示された受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在する場合の温度変化を説明する。グラフの左端は、制御部100が、圧縮機52の稼働を開始したところを示す。圧縮機52の稼働により、冷凍室4内の温度が低下し、温度センサ60の検出値は下降していく。そして、温度センサ60の検出値が下限値TLに達したとき、制御部100は、稼働していた圧縮機52を停止する制御を行う。これにより、冷凍室4内の温度が上昇し、温度センサ60の検出値は上昇していく。そして、温度センサ60の検出値が上限値THに達したとき、制御部100は、再び圧縮機52の稼働を開始する。これにより、圧縮機52の稼働が開始され停止し、次に稼働が開始されるまでの1つの冷却サイクルが終了する。
【0030】
このような温度制御により、図4の下側のグラフに示すように、冷凍室4内の温度は、temp1からtemp3まで下降し、圧縮機52が停止した後、temp3からtemp1まで上昇する。図3では、2回の冷却サイクルが示されている。
【0031】
次に、破線で示された受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在しない場合の温度変化を説明する。圧縮機52の稼働により、冷凍室4内の温度が低下し、温度センサ60の検出値は下降していく。このとき、吹出口8から吹き出された冷気は、直接、温度センサ60の方に流れるので、実線で示す受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在する場合に比べて、温度センサ60の検出値がより速く下降する。よって、ユニット10が庫内に存在する場合に比べて、短い時間で下限値TLに達する。温度センサ60の検出値が下限値に達したとき、制御部100は、稼働していた圧縮機52を停止する制御を行う。
【0032】
このとき冷凍室4内の実際の温度は、受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在する場合のtemp3に比べて高いtemp2となっている。この高い温度の時点で圧縮機52を停止するので、冷凍室4内の温度はtemp2から下がることなく、冷凍室4内の温度が上昇し、温度センサ60の検出値も上昇していく。そして、温度センサ60の検出値が上限値THに達したとき、制御部100は、圧縮機52の稼働を再び開始する。これで、圧縮機52の稼働が開始され停止し、次に稼働が開始されるまでの1つの冷却サイクルが終了する。
【0033】
これにより、図4の下側のグラフに示すように、冷凍室4内の温度は、temp1からtemp2まで下降し、圧縮機52が停止した後、再びtemp2からtemp1まで上昇する。冷蔵室4に貯蔵された食品の適正な冷凍保存を行うためには、冷凍室4内の温度がtemp3まで下がる必要があるが、受水製氷皿12を含むユニット10が存在しない場合には、temp2までしか下がらないので、食品の適正な冷凍保存ができなくなる可能性がある。
【0034】
(下限値が特別設定値の場合の冷却サイクル)
図5は、下限値が特別設定値の場合の温度センサ60の検出値及び冷凍室温度を示すグラフであって、受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在しない場合であっても、受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在する場合と同様な適正な冷凍室温度の制御が実現できることを示したグラフである。
【0035】
下限値を通常設定値より低い特別設定値に変更することにより、受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在しない場合であっても、圧縮機52の稼働後、冷凍室4内の温度がtemp1からtemp2まで下降した後も下降を継続させることができる。圧縮機52の稼働を停止する制御を行うトリガーとなる特別設定値である下限値TLの値を適切に定めることにより、温度センサ60の検出値が下限値TL(特別設定値)に達したとき、冷凍室4内の温度がtemp3となるようにすることができる。図5の下の実線のグラフには、このようにして、図4の実線の場合と同様な適正な温度変化が得られることが示されている。
【0036】
以上のように、本実施形態では、制御部100は、温度センサ60の検出値が上限値に達したとき、圧縮機52の稼働を開始し、温度センサ60の検出値が下限値に達したとき、稼働していた圧縮機52を停止する制御を行い、特に、受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在しないと判断したとき、下限値の値を通常設定値よりも低い特別設定値に変更する制御を行う。これにより、自動製氷装置40の受水製氷皿12を含むユニット10を取り外した場合でも、冷凍室4内の適正な温度制御が実現可能な冷蔵庫2を提供することができる。
【0037】
(受水製氷皿を含むユニットの存在の有無の判断)
制御部100は、水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在するか否かの判断に基づいて、下限値として通常設定値を用いるか特別設定値を用いるか定める。よって、受水製氷皿12を含むユニット10の存在の有無をどのようにして判断するかが重要になる。受水製氷皿12を含むユニット10の存在の有無の判断方法について、以下に詳細に述べる。
【0038】
<第1の実施形態に係るユニットの存在の有無の判断方法>
本発明の第1の実施形態に係るユニット10の存在の有無の判断方法は、センサを用いて検出する方法であり、例えば、検氷レバー16を当該センサとして用いることができる。受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在する場合には、検氷レバー16により何らかの検出信号が得られるが、受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在しない場合には、検氷レバー16による検出信号が得られないので、これにより、ユニット10の存在の有無の判定することができる。また、受水製氷皿12を回転させる回転機構14のモータが電気的に接続されているか否かを検出して、ユニット10の存在の有無を判定することもできる。
更に、受水製氷皿12を含むユニット10の存在の有無を検出する、専用の接触式または非接触式センサを用いて、ユニット10の存在の有無の判定することもできる。また、例えば、ユニット10が庫内に設置されていると、スイッチ本体が押されてオンの状態になり、ユニット10が取り外されると、スイッチ本体が解放されてオフの状態になるスイッチを接触式センサとして用いることもできる。
【0039】
以上のように、受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在するか否かを検出するセンサを用いることにより、確実に受水製氷皿12を含むユニット10の存在の有無を判別して、下限値の適正な設定を行うことができる。
【0040】
<第2の実施形態に係るユニットの存在の有無の判断方法>
[ユニットが存在しないと判断する場合]
本発明の第2の実施形態に係るユニット10の存在の有無の判断方法では、センサを用いることなくユニット10の存在の有無の判断を行うことができる。
受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在する場合、温度センサ60の検出値が最も速く下降するのは、冷蔵庫2の周囲温度が低く、冷凍室4内に収納物がなく、扉6が閉じられたままの状態が維持される場合である。その場合、圧縮機52の稼働開始から温度センサ12の検出値が下限値TL(通常設定値)に達するまでの時間をS1(図1参照)とすると、受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在する限り、温度センサ60の検出値が下限値TLに達する時間がS1より短くなることはない。
【0041】
冷蔵庫2の使用時においては、冷凍室4内に様々な収納物が収納され、収納物の出し入れのため、冷凍室4の扉6が開閉される。この場合、温度センサ60の検出値が下限値TLに達する時間が長くなることはあるが、短くなることはあり得ない。
一方、受水製氷皿12を含むユニット10が取り外されて、庫内に存在しない場合には、吹出口8ら吹き出された冷気が、直接、温度センサ60の方に流れるので、圧縮機52の稼働開始から温度センサ12の検出値が下限値TLに達するまでの時間は、必ずS1よりも短くなる。
【0042】
従って、本実施形態では、制御部100は、少なくとも1つの冷却サイクルにおいて、圧縮機52の稼働開始から温度センサ60の検出値が下限値TLに達するまでの時間が、所定の時間1より短いとき、受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在しないと判断する。
これにより、圧縮機52の稼働開始から温度センサ60の検出値が下限値TLに達するまでの時間に基づいて、特別なセンサを用いることなく、受水製氷皿12を含むユニット10の存在の有無を判別することができる。
【0043】
判定に用いる所定の時間1としては、上記の受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在する場合に起こり得る最も短い時間S1を用いることもできる。ただし、これに限られるものではなく、不確定な変動要因を考慮して、その値に所定の安全係数を生じた値(S1より小さい値)を用いることもできる。
本実施形態では、1つの冷却サイクルの温度センサ60の検出値に基づいて、ユニット10の存在の有無の判断を行うことができる。ただし、これに限られるものではなく、不確定な変動要因を考慮して、複数の冷却サイクルにおいて、温度センサ60の検出値が下限値TLに達するまでの時間が所定の時間1より短いときに、受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在しないと判断することもできる。
【0044】
[ユニットが存在すると判断する場合]
一方、受水製氷皿12を含むユニット10が取り外された状態から、庫内に取り付けられた場合の判断も必要となる。つまり、下限値TLの値が特別設定値に設定されている状態から、下限値TLの値を特別設定値から通常設定値に変更するための判断処理が必要となる。
この判断処理として、例えば、複数の冷却サイクルにおいて、圧縮機52の稼働開始から温度センサ60の検出値が下限値TL(特別設定値)に達するまでの時間が所定の時間2より長いとき、受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在すると判断することが考えられる。そして、制御部100は、この判断に基づいて、下限値TLの値を特別設定値から通常設定値に変更する。
【0045】
受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在しない状態で、冷凍室4の扉6が一定時間開けられていた場合における、圧縮機52の稼働開始から温度センサ60の検出値が下限値TL(特別設定値)に達するまでの時間を計測またはシミュレーションし、その時間、またはその時間に所定の安全係数を乗じた値を所定の時間2とすることが考えられる。
また、所定の時間2として、直近のN回の冷却サイクルにおける温度センサ60の検出値が下限値TL(特別設定値)に達するまでの時間の平均値のK倍(例えば、K=1.2)とすることもできる。
【0046】
冷凍室4の扉6の開閉があった場合には、冷却サイクルの経過時間が変動する。よって、冷却サイクルが安定した状態にあると判断されたときに、圧縮機52の稼働開始から温度センサ60の検出値が下限値TLに達するまでの時間による判断を行うことが考えられる。
例えば、1つの冷却サイクルの経過時間がプラスマイナス3%の範囲内に収まったときに安定した状態にあると判断することが考えられる。また、冷蔵室及び冷凍室4の間のダンパの開閉により、冷凍室4内の温度が周期的に変動する場合には、時間が短い冷却サイクル及び時間が長い冷却サイクルのそれぞれにおいて、冷却サイクルの経過時間がプラスマイナス3%の範囲内に収まったときに安定した状態にあると判断することも考えられる。
【0047】
更に、扉6の開閉を感知できるセンサを備えている場合には、扉6が開けられることがない冷却サイクルにおける下限値TLに達するまでの時間を用いて、ユニット10が庫内に存在するか否か判断することもできる。
【0048】
以上のように、本実施形態では、下限値TLの値が特別設定値に設定されている状態で、複数の冷却サイクルにおいて、圧縮機52の稼働開始から温度センサ60の検出値が下限値TL(特別設定値)に達するまでの時間が所定の時間2より長いとき、受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在すると判断して、下限値TLの値を通常設定値に変更する制御を行う。
これにより、特別なセンサを用いることなく、受水製氷皿12を含むユニット10が存在しない状態から存在する状態への変化を判別して、下限値TLの値を適確に特別設定値から通常設定値に変更することができる。
【0049】
(自動製氷装置に関する制御)
次に、受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在しないと判断したときの自動製氷装置40の制御について説明する。仮に、受水製氷皿12が庫内に存在しない状態で、ポンプ24を駆動して貯水タンク内の水を供給した場合、水が冷凍室4内に漏れる問題が生じる。
これに対処するため、制御部100は、受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在しないと判断したとき、ポンプ24が稼働しないように制御処理を行う。更に、無駄なエネルギの消費を避けるため、配管の外周に巻かれた凍結防止用ヒータ28も稼働しないように制御を行う。
【0050】
以上のように、受水製氷皿12を含むユニット10が庫内に存在しないと判断したとき、ポンプ24及び凍結防止用ヒータ28を稼働しない制御を行うことにより、受水製氷皿12を含むユニット10が存在しない状態における不具合を適切に防止し、無駄なエネルギ消費を抑制できる。
【0051】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0052】
2 冷蔵庫
4 冷凍室
4A 後面
6 扉
8 吹出口
9 排出口
10 ユニット
12 受水製氷皿
14 回転機構
16 検氷レバー
20 供給機構
22 貯水タンク
24 ポンプ
26 配管
28 凍結防止用ヒータ
30 貯氷箱
40 自動製氷装置
50 冷却部
52 圧縮器52
54 凝縮器
56 蒸発器
58 ファン
60 温度センサ
100 制御部
図1
図2
図3
図4
図5