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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】桂皮酸誘導体の吸収促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/10 20060101AFI20221021BHJP
   A61K 31/12 20060101ALI20221021BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20221021BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20221021BHJP
   A61K 31/216 20060101ALI20221021BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20221021BHJP
   A61K 35/644 20150101ALI20221021BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20221021BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20221021BHJP
【FI】
A61K47/10
A61K31/12
A61P3/02
A61K31/352
A61K31/216
A61K31/192
A61K35/644
A23L33/10
A23L33/105
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020167641
(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公開番号】P2022059811
(43)【公開日】2022-04-14
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】598162665
【氏名又は名称】株式会社山田養蜂場本社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100206944
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 絵美
(72)【発明者】
【氏名】山家 雅之
(72)【発明者】
【氏名】谷 央子
【審査官】小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-199481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/10
A61K 31/12
A61P 3/02
A61K 31/352
A61K 31/216
A61K 31/192
A61K 35/644
A23L 33/10
A23L 33/105
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クルクミンを有効成分として含む、プロポリス中の桂皮酸誘導体の体内への吸収促進剤であって、該桂皮酸誘導体が下記一般式(1)又は(2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である、吸収促進剤。
【化1】

[式(1)中、Rは、水素原子、水酸基、ジメチルアリル基、3-ホルミル-2-ブテニル基、又は(E)-3-メチル-4-ヒドロキシ-2-ブテニル基を示し、Rは、水素原子、水酸基、又はジヒドロシンナモイルオキシ基を示し、Rは水素原子、水酸基、又はジメチルアリル基を示す。]
【化2】

[式(2)中、Rは、水素原子又はジメチルアリル基を示す。]
【請求項2】
前記桂皮酸誘導体が、アルテピリンC、ドルパニン、p-クマル酸、クリフォリン、カピラルテミシンA、3,4-ジヒドロキシ-5-プレニル-(E)-桂皮酸、及び2,2-ジメチルクロメン-6-(E)-プロペン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項に記載の吸収促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、桂皮酸誘導体の吸収促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルテピリンC等の桂皮酸誘導体は、種々の生理活性を有することが知られており、サプリメント等の食品に配合されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Paulino, et al., Anti-inflammatoryeffects of a bioavailable compound, Artepillin C, in Brazilian propolis, EuropeanJournal of Pharmacology, 587 (2008) 296-301
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サプリメントにおいては、含まれる有効成分による生理活性を有効に発揮するために、特定の摂取量が推奨されている。しかしながら、消費者がサプリメントの摂取を日常的に継続するためには、サプリメントの必要摂取量が少ないほど好ましい。そこで、桂皮酸誘導体を少ない摂取量であってもより効率よく体内に吸収できることが望まれる。
【0005】
本発明は、特定の構造を有する桂皮酸誘導体の体内への吸収を促進することができる剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、クルクミンを有効成分として含む、桂皮酸誘導体の吸収促進剤であって、該桂皮酸誘導体が下記一般式(1)又は(2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である吸収促進剤を提供する。
【0007】
【化1】

[式(1)中、Rは、水素原子、水酸基、ジメチルアリル基、3-ホルミル-2-ブテニル基、又は(E)-3-メチル4-ヒドロキシ-2-ブテニル基を示し、Rは、水素原子、水酸基、又はジヒドロシンナモイルオキシ基を示し、Rは水素原子、水酸基、又はジメチルアリル基を示す。]
【0008】
【化2】

[式(2)中、Rは、水素原子又はジメチルアリル基を示す。]
【0009】
上記桂皮酸誘導体はプロポリス由来であってよい。
【0010】
上記桂皮酸誘導体は、アルテピリンC、ドルパニン、p-クマル酸、クリフォリン、カピラルテミシンA、3,4-ジヒドロキシ-5-プレニル-(E)-桂皮酸、及び2,2-ジメチルクロメン-6-(E)-プロペン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種であってよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、特定の構造を有する桂皮酸誘導体の体内への吸収を促進することができる剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本実施形態に係る桂皮酸誘導体の吸収促進剤は、クルクミンを有効成分として含む。該桂皮酸誘導体は、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0014】
【化3】

[式(1)中、Rは、水素原子、水酸基、ジメチルアリル基、3-ホルミル-2-ブテニル基、又は(E)-3-メチル4-ヒドロキシ-2-ブテニル基を示し、Rは、水素原子、水酸基、又はジヒドロシンナモイルオキシ基を示し、Rは水素原子、水酸基、又はジメチルアリル基を示す。]
【0015】
【化4】

[式(2)中、Rは、水素原子又はジメチルアリル基を示す。]
【0016】
クルクミンは、ウコン(Curcuma longa)等の植物に含まれる色素成分である。クルクミンは、例えばウコン根茎から公知の方法によって抽出することができる。ウコン抽出物としては、例えばウコン根茎から水、熱水、エタノール等の有機溶媒、又はこれらの混合液を抽出溶媒として得たものであってよい。本実施形態に係る吸収促進剤は、クルクミン源として、例えば、ウコンの根茎又はその抽出物を含んでいてもよい。吸収促進剤は、クルクミン以外のウコン由来成分を含んでいてもよい。クルクミンは、微粒子化等の公知の方法により吸収性が高められたものであってもよい。クルクミンは公知の方法により合成されたものであってもよい。
【0017】
本実施形態に係る吸収促進剤中のクルクミンの含有量は、固形分量として、吸収促進剤全量に対して、例えば、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上又は17質量%以上であってよく、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下又は23質量%以下であってよい。
【0018】
本実施形態に係る吸収促進剤は、クルクミンの固形分量として、例えば体重60kgの成人に一日当たり1mg~1000mgの用量で用いることができ、10~500mgの用量で用いることが好ましく、100~350mgの用量で用いることがより好ましい。
【0019】
本実施形態に係る吸収促進剤は、クルクミンを有効成分として含むため、上記一般式(1)又は(2)で表される桂皮酸誘導体(以下、単に「桂皮酸誘導体」ともいう。)の体内への吸収を促進することができる。
【0020】
上記桂皮酸誘導体の具体例としては、アルテピリンC、ドルパニン、p-クマル酸、クリフォリン、カピラルテミシンA、3,4-ジヒドロキシ-5-プレニル-(E)-桂皮酸、2,2-ジメチルクロメン-6-(E)-プロペン酸、桂皮酸、p-クマル酸、カフェ酸、ドルパナール等が挙げられる。上記桂皮酸誘導体は、合成品であってもよく、プロポリス由来等の天然由来であってもよい。各化合物における一般式(1)又は(2)中の置換基を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
桂皮酸誘導体は、アルテピリンC、ドルパニン、p-クマル酸、クリフォリン、カピラルテミシンA、3,4-ジヒドロキシ-5-プレニル-(E)-桂皮酸、及び2,2-ジメチルクロメン-6-(E)-プロペン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。本実施形態に係る吸収促進剤は、これらの桂皮酸誘導体に対して特に吸収促進作用を有する。
【0023】
吸収促進剤は、上記桂皮酸誘導体とともに摂取されてもよく、吸収促進剤を摂取してから一定時間以内、例えば1時間以内、又は30分以内に上記桂皮酸誘導体を摂取してもよい。
【0024】
本実施形態に係る吸収促進剤は、有効成分としてのクルクミンに加えて、上記一般式(1)又は(2)で表される桂皮酸誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を更に含んでいてもよい。吸収促進剤がクルクミンと上記桂皮酸誘導体とを併せて含むことにより、クルクミンと桂皮酸誘導体とを同時に、かつ適切な比率で摂取することが容易であるため好ましい。
【0025】
吸収促進剤が上記桂皮酸誘導体を含む場合、吸収促進剤に含まれる上記一般式(1)又は(2)で表される各桂皮酸誘導体の量、又はその合計量は、固形分量として、吸収促進剤の全量に対して、例えば、例えば、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、4質量%以上又は5質量%以上であってよく、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下であってよい。
【0026】
吸収促進剤に含まれる桂皮酸誘導体源は、例えばプロポリスであってよい。吸収促進剤がクルクミン及びプロポリスを含む場合、吸収促進剤に含まれるクルクミンとプロポリスとの含有量の比は、例えば、1~10:1、2~8:1、2~6:1、3~5:1であってよい。
【0027】
吸収促進剤がクルクミン及びプロポリスを含む場合、吸収促進剤に含まれるプロポリスの量は、固形分量として、吸収促進剤の全量に対して、例えば、1質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、10質量%以上又は15質量%以上であってよく、70質量%以下、50質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、又は5質量%以下であってよい。
【0028】
吸収促進剤に用いることができるプロポリスは、例えば、常法に従い養蜂産品として入手することができる。プロポリスは、アレクリン由来、ユーカリ由来、ポプラ由来、クルシア属植物由来等、いずれの植物由来であってもよい。アレクリンはキク科バッカリス属のバッカリス・ドゥラクンクリフォリアである。
【0029】
プロポリスは、例えば、日本産、ブラジル産、中国産、ヨーロッパ諸国産、オセアニア産、アメリカ産、アルゼンチン産、ウルグアイ産、パラグアイ産、ロシア産、ハワイ産、台湾産、オーストラリア産、ニュージーランド産、トルコ産、インドネシア産等であってよい。ブラジル産プロポリスは、主にアレクリンを由来とする。ブラジル産プロポリスは桂皮酸誘導体含有量が高いという特徴を有する。本実施形態に係る吸収促進剤は、ブラジル産プロポリスを含むことが好ましい。
【0030】
プロポリスは、ブラウン、レッド、イエロー、グリーン、スーパーグリーン、ウルトラグリーン等のいずれのランクであってもよく、これらの中でもグリーン、スーパーグリーン又はウルトラグリーンランクのプロポリスが好ましい。これらのランクはプロポリス中のアルテピリンC含有量によって定められる。アルテピリンCが3質量%以上であるものをグリーンプロポリスと称する。
【0031】
プロポリスは、ミツバチ科ミツバチ属に属する蜂由来のものであることが好ましく、ミツバチ属の中でもセイヨウミツバチ由来のものであることが好ましい。セイヨウミツバチには、24~28の亜種があるとされており、いずれの亜種由来のプロポリスを用いてもよい。特に、セイヨウミツバチの亜種の1つであるアフリカミツバチ(A.mellifera scutellata)と他のセイヨウミツバチのヨーロッパ産亜種との交雑種であるアフリカ蜂化ミツバチ由来のプロポリスを用いることが好ましい。
【0032】
プロポリスは、例えば、プロポリス原塊であってもよく、プロポリス原塊に何らかの処理を施したプロポリス処理物であってもよい。プロポリス処理物は、例えば、プロポリス原塊に、粉砕、抽出、抽出物の濃縮又は粉末化、粉末の造粒等の処理が施されたものであってよく、抽出後に残る抽出残渣であってもよい。すなわちプロポリス処理物は、例えば、プロポリスの粉砕物、抽出物、濃縮抽出物、抽出物粉末、抽出物顆粒、抽出残渣等であってよい。抽出は、例えば、水抽出、親水性有機溶媒抽出、超臨界抽出等であってよい。親水性有機溶媒としては、例えばエタノール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。プロポリス抽出物は、プロポリス原塊から抽出して得られたものであってもよく、抽出後の残渣から更に抽出して得られたものであってもよい。処理方法は1つであってよく、2つ以上を組み合わせてもよい。プロポリス処理物としては、プロポリス親水性有機溶媒抽出物が、短時間で効率的にバランスよくプロポリスの有効成分が抽出されたものであるため好ましい。プロポリス処理物はプロポリスエタノール抽出物であることが好ましい。
【0033】
プロポリスとしては、市販品を用いてもよい。プロポリスを含む市販品は、例えば、山田養蜂場社のプロポリス300、プロポリス液30(ブラジル産)、プロポリス粒、プロポリス顆粒APC、プロポリスマイルド、プロポリスドリンク、森川健康堂社のネオプロポリス粒、プロポリス粒、プロポリス液、プロポリスマイルド液、ユーカリポリス、ラベイユ社のラベイユプロポリス(液タイプ)、ラベイユプロポリス(カプセルタイプ)、ラベイユプロポリスはちみつ等が挙げられる。
【0034】
本実施形態に係る吸収促進剤は、経口投与に適している。吸収促進剤は、一日一回投与されてもよく、一日二回、一日三回等、複数回に分けて投与されてもよい。
【0035】
本実施形態に係る吸収促進剤の投与対象者は、例えば、上記一般式(1)又は(2)で表される桂皮酸誘導体、又は該桂皮酸誘導体を含む組成物若しくは食品(例えばプロポリス)を摂取してその生理活性を享受しようとする者であってよい。本実施形態に係る吸収促進剤を摂取することによって、上記桂皮酸誘導体の摂取量が少なくても効率的に体内に吸収することができ、所望の生理活性を得るために必要な桂皮酸誘導体の摂取量を低減することができる。桂皮酸誘導体の必要摂取量を低減することによって、日々の継続的な摂取が容易になる。
【0036】
上記吸収促進剤は、医薬品、医薬部外品又は食品組成物そのものとして使用することができ、医薬品、医薬部外品又は食品組成物中の成分として使用することもできる。
【0037】
本実施形態に係る吸収促進剤は、クルクミン及び上記桂皮酸誘導体に加え、さらにその他の生理活性成分を含んでいてもよい。その他の生理活性成分としては、例えば、イチョウ葉抽出物、ホスファチジルセリン、コーヒー果実抽出物、ゴツコラ抽出物が挙げられる。その他の生理活性成分は、1種を含んでいてもよく、複数種を組み合わせて含んでいてもよい。これらの各生理活性成分の量又はその合計量は、吸収促進剤全量に対して固形分で、例えば1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、8質量%以上又は10質量%以上であってよく、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下又は3質量%以下であってもよい。
【0038】
本実施形態に係る吸収促進剤は、さらに、例えば、薬学的に許容される成分(例えば、賦形剤、結合材、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤)、食品として許容される成分(例えば、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、湿潤剤)を含んでいてもよい。
【0039】
本実施形態に係る吸収促進剤は、固体、液体、ペースト等のいずれの形状であってもよく、タブレット(素錠、糖衣錠、発泡錠、フィルムコート錠、チュアブル錠、トローチ剤等を含む)、カプセル剤、丸剤、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、液剤、懸濁液、乳濁液、シロップ、ペースト、注射剤(使用時に、蒸留水又はアミノ酸輸液若しくは電解質輸液等の輸液に配合して液剤として調製する場合を含む)等の剤形であってもよい。これらの各種製剤は、例えば、上述の方法により得られた吸収促進剤と、必要に応じて他の成分とを混合して上記剤形に成形することによって調製することができる。
【0040】
食品組成物として又は食品組成物の一成分として用いる場合、該食品組成物は、食品の3次機能、すなわち体調調節機能が強調されたものであることが好ましい。食品の3次機能が強調された製品としては、例えば、健康食品、機能性表示食品、栄養機能食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品を挙げることができる。
【0041】
本実施形態に係る吸収促進剤からなる医薬品、医薬部外品若しくは食品組成物、又は該吸収促進剤を含む医薬品、医薬部外品若しくは食品組成物は、上記桂皮酸誘導体の吸収促進用であってよい。これらの製品には、例えば、上記一般式(1)又は(2)で表される桂皮酸誘導体の吸収を促進する旨、プロポリス中の有効成分の吸収を促進する旨、プロポリスを高効率で吸収する旨、プロポリスの体内への吸収を促進する旨、プロポリス中の有効成分の血中移行を促進する旨等が表示されていてもよい。
【実施例
【0042】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
<被験物質投与液>
以下の投与液を用意した。
10%プロピレングリコール:プロピレングリコールを蒸留水で希釈することにより10%濃度のプロピレングリコール液を調製した。
プロポリス溶液:プロポリス粉末(ブラジル産グリーンプロポリス)を必要量秤量して乳鉢上ですりつぶし、上記10%プロピレングリコールを加えて溶解させ、プロポリス濃度として25mg/mL濃度のプロポリス溶液を調製した。
クルクミン懸濁液:クルクミン粉末(ウコン抽出物(酢酸エチル抽出物粉末、クルクミン含有量95質量%))を必要量秤量して乳鉢上ですりつぶし、上記10%プロピレングリコールを加えて懸濁させ、クルクミン濃度として100mg/mLのクルクミン懸濁液を調製した。
【0044】
<試験動物>
7週齢の雄ラット(Slc:Wistar/ST、SPF、日本エスエルシー株式会社)18匹を7日間馴化飼育した。固形飼料CRF-1(オリエンタル酵母工業株式会社)をラットに自由に摂取させた。上記の投与液投与の8~10時間前からラットを絶食させた。各群の体重が均等になるように、EXSUS(Version10.0.0、株式会社CACクロア)を用いて層別割付法でラットを6匹ずつの3群に分けた。
【0045】
<投与>
プロポリス群には、10%プロピレングリコールを投与した直後にプロポリス溶液を投与した。プロポリス+クルクミンA群には、クルクミン懸濁液を投与した直後にプロポリス溶液を投与した。プロポリス+クルクミンB群には、クルクミン懸濁液を投与してから約30分後にプロポリス溶液を投与した。投与は各投与液について2mL/kgラット体重の容量で行った。すなわちラット体重1kg当たりプロポリスは50mg、クルクミンは200mg投与した。投与は、シリンジ(株式会社テルモ)及びラット用経口ゾンデ(有限会社フチガミ器械)を用いて無麻酔下で行った。
【0046】
<採血>
ラットの採血は、プロポリス溶液投与30分前(ただし、クルクミン懸濁液投与を行う群では、クルクミン懸濁液投与前)に1回、プロポリス溶液投与の0.5、1、1.5、2、3、6、9及び24時間後に行った。各採血時間に、無麻酔下でラットの尾部を70%エタノールで消毒した後、尾部先端をカミソリで切断し、漏出してくる血液をヘマトクリットチューブ(Fisher Scientific 22-362-566)を用いて約150μL採取した。プロポリス溶液投与9時間後に、絶食をしていた全ての動物に給餌を再開した。
【0047】
採取後に氷中保管しておいた血液について、微量高速冷却遠心機(型式MX-100:株式会社トミー精工)により遠心分離(1600×g、10min、4℃)を行って、血液から血漿を採取した。血漿は-80℃フリーザー内で凍結保管した。
【0048】
得られた血漿中の、p-クマル酸、アルテピリンC、ドルパニン、クリフォリン、カピラルテミシンA、3,4-ジヒドロキシ-5-プレニル-(E)-桂皮酸、及び2,2-ジメチルクロメン-6-(E)-プロペン酸、ケンペリド、6-メトキシケンペリド及びジヒドロケンペリドの濃度をLCMSにて定量した。
【0049】
各成分について、得られた濃度から最高血中濃度(Cmax)及び曲線下面積(AUC)を算出した。AUCは体内に吸収された各成分の全量の指標となる。プロポリス群及びプロポリス+クルクミンA群における、桂皮酸誘導体吸収の結果を表2に示す。表中の比は、プロポリス群に対するプロポリス+クルクミンA群の平均値の比を示す。統計はt検定により行った。
【0050】
【表2】
【0051】
表2中のいずれの桂皮酸誘導体においても、プロポリス単独投与と比較して、クルクミンとプロポリスとを組み合わせて投与した場合に、Cmax及びAUCの少なくとも一方が有意差(p値0.05未満又は0.01未満)をもって増加したことが確認された。また、クルクミン懸濁液投与から30分後にプロポリス液を投与したプロポリス+クルクミンB群においても、A群と同様に、プロポリス単独投与群に対してCmax及びAUCの少なくとも一方において有意差をもって増加が確認された。一方、ケンペリド、6-メトキシケンペリド及びジヒドロケンペリドについては、プロポリス+クルクミンA群及びB群ともに、プロポリス群に対する有意な吸収の増加は確認されなかった。