(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】細胞皮膜化用アルギン酸塩微細カプセル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/22 20060101AFI20221021BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20221021BHJP
A61K 35/39 20150101ALI20221021BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221021BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20221021BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20221021BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20221021BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20221021BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20221021BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20221021BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20221021BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20221021BHJP
A61K 31/353 20060101ALN20221021BHJP
【FI】
A61K47/22
A61K9/50
A61K35/39
A61K47/36
A61L27/18
A61L27/20
A61L27/38 100
A61L27/52
A61L27/54
A61L27/58
A61P1/18
A61P3/10
A61K31/353
(21)【出願番号】P 2020553599
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(86)【国際出願番号】 KR2019003885
(87)【国際公開番号】W WO2019194543
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】10-2018-0038205
(32)【優先日】2018-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515266164
【氏名又は名称】オプティファーム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ,ドンユン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジェビン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,キミョン
(72)【発明者】
【氏名】シム,ジュヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジェキョン
【審査官】薄井 慎矢
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-519079(JP,A)
【文献】特表2002-538194(JP,A)
【文献】特開2014-074005(JP,A)
【文献】特開2015-208369(JP,A)
【文献】特表2017-515834(JP,A)
【文献】特表2016-534136(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0133692(KR,A)
【文献】Acta Biomater.,2018年,Vol.65,pp.53-65 (page 1-31)
【文献】Journal of Biomedical Materials Research B: Applied Biomaterials,2013年,Vol.101B, ISSUE 2,pp.258-268
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K A61P A61L
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアが流動床のアルギン酸塩であり、
シェルがエピガロカテキンガレート二量体で架橋されたアルギン酸塩ハイドロゲル
であり、前記エピガロカテキンガレート二量体は、下記化学式1~4から選択される1つ以上である、コア-シェル構造の表面改質アルギン酸塩微細カプセル。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【請求項2】
前記シェルのエピガロカテキンガレート二量体の一部は、他のエピガロカテキンガレート二量体と酸化によって互いに結合されたものであることを特徴とする請求項1に記載の微細カプセル。
【請求項3】
前記シェルは、アルギン酸塩コーティング層をさらに含むものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の微細カプセル。
【請求項4】
前記アルギン酸塩コーティング層は、シェルのエピガロカテキンガレート二量体と共にアミド結合を形成したものであることを特徴とする請求項3に記載の微細カプセル。
【請求項5】
前記シェルは、3次元的に連結された多数個の中空を含むものであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の微細カプセル。
【請求項6】
前記コアは、液状のアルギン酸または液状のアルギン酸とアルギン酸ハイドロゲルとの混合物であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の微細カプセル。
【請求項7】
細胞皮膜用であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の微細カプセル。
【請求項8】
(1)カルシウム-アルギン酸塩微細カプセルを製造するコア製造段階と、
(2)カルシウム-アルギン酸塩微細カプセル及びエピガロカテキンガレート二量体を反応させて前記カルシウム-アルギン酸塩微細カプセルの表面にアルギン酸塩-エピガロカテキンガレート二量体架橋物を形成されるシェルの製造段階と、及び
(3)カルシウム-アルギン酸塩のカルシウムイオンをエピガロカテキンガレート二量体にキレートさせるコア液化段階と、を含み、
前記コアは、流動床のアルギン酸塩であり、シェルがエピガロカテキンガレート二量体で架橋されたアルギン酸塩ハイドロゲル
であり、前記エピガロカテキンガレート二量体は、下記化学式1~4から選択される1つ以上である、表面改質アルギン酸塩微細カプセルの製造方法。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【請求項9】
前記製造されたシェルのエピガロカテキンガレート二量体を、隣接するエピガロカテキンガレート二量体と酸化結合させる段階をさらに含むものであることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記製造されたシェルをアルギン酸塩でコーティングさせる段階をさらに含むものであることを特徴とする請求項8又は9に記載の製造方法
【請求項11】
前記製造された表面改質アルギン酸塩微細カプセルを、カルシウムイオンキレート剤と反応させて中空を形成させる段階をさらに含むものであることを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
(a)細胞をカルシウム-アルギン酸塩ハイドロゲル微細カプセル
で皮膜化するコアの製造段階と、
(b)細胞を皮膜化したカルシウム-アルギン酸塩ハイドロゲル微細カプセルをエピガロカテキンガレート二量体と反応させ、カルシウム-アルギン酸塩微細カプセルの表面に
アルギン酸塩-エピガロカテキンガレート二量体架橋物を形成させるシェルの製造段階と、及び
(c)前記カルシウム-アルギン酸塩のカルシウムイオンをエピガロカテキンガレート二量体にキレートさせ、前記細胞周辺のハイドロゲルを液化させる段階と、を含
み、前記エピガロカテキンガレート二量体は、下記化学式1~4から選択される1つ以上である、コア-シェル構造の表面改質アルギン酸塩微細カプセルを用いた細胞皮膜化方法。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【請求項13】
前記製造されたシェルのエピガロカテキンガレート二量体を、隣接するエピガロカテキンガレート二量体と酸化結合させる段階をさらに含むものであることを特徴とする請求項12に記載の細胞皮膜化方法。
【請求項14】
前記製造されたシェルをアルギン酸塩でコーティングさせる段階をさらに含むものであることを特徴とする請求項12又は13に記載の細胞皮膜化方法。
【請求項15】
前記製造された表面改質アルギン酸塩微細カプセルを、カルシウムイオンキレート剤と反応させて中空を形成させる段階をさらに含むものであることを特徴とする請求項12~14のいずれか一項に記載の細胞皮膜化方法。
【請求項16】
前記細胞は、膵島細胞であることを特徴とする請求項12~15のいずれか一項に記載の細胞皮膜化方法。
【請求項17】
糖尿病の予防または治療に使用するための請求項1~7のいずれか一項によるカプセル
を含む組成物。
【請求項18】
糖尿病の予防または治療用の薬剤を製造するための請求項1~7のいずれか一項によるカプセルを含む組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質アルギン酸塩微細カプセル、その製造方法及びこれを用いた細胞皮膜化方法に関するものであって、より詳しくは、細胞移植において外部環境から細胞を保護するために、細胞皮膜化に用いられることができ、細胞生存能が改善された表面改質アルギン酸塩微細カプセル、その製造方法及びこれを用いた細胞皮膜化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルギン酸塩は、生体適合性に優れ、生体不活性であるため、組織工学、細胞治療、人工臓器の制作など、様々な分野で生体材料として活用されている。
【0003】
1型糖尿病の治療において膵島細胞移植(islet cell transplantation)は、効果的な治療法として提示された。しかし、同種移植は、需要に比べて供給が非常に不足しているため、異種移植が求められている。異種移植は、移植対象の免疫反応によって移植された細胞が破壊される可能性があるため、これを抑制することが重要である。移植される異種細胞を保護するために、生体材料を用いた皮膜化に関する研究が進められており、アルギン酸塩は糖尿病治療のための膵島細胞移植(islet cell transplantation)において、膵島が免疫反応に露出されることを防ぐための皮膜化材料として提示された[Desai et al.Nature reviews Drug discovery 16.5(2017)、338]。
【0004】
膵島皮膜化に用いられる代表的な材料は、アルギン酸塩ハイドロゲルである。アルギン酸塩ハイドロゲルは、アルギン酸ナトリウムをCa2+のような2価陽イオンを用いて架橋させることによって迅速で、且つ、容易に製造することができる。しかし、Na+のような1価陽イオンが多量に存在する環境では、1価陽イオンが架橋に用いられた2価陽イオンと交換され、ハイドロゲルを溶液状態でゾル-ゲル相転移(sol-gel phase transition)することができる。一方、体内にはNa+が多量に存在する環境である。したがって、体内移植の際、皮膜化に用いられたアルギン酸塩ハイドロゲルは、Ca2+が体内のNa+と交換される、又は自然に拡散(diffusion)されるため、体内で徐々に融解される問題がある。こうした融解は、微細カプセルの寿命を短縮させ、内部の細胞を外部の免疫システムから保護できない原因となるので、微細カプセル化膵島の商用化において限界として作用する。そればかりでなく、形成されたハイドロゲルは、細胞が完全に生着することを妨げ、細胞に低酸素症(hypoxia)などを誘発させる。そればかりでなく、カプセルそのものの体積に比べて酸素または栄養素の拡散量が少ないという限界がある。
【0005】
これらの限界点を克服するために、最近ではCa2+非依存的にハイドロゲルを形成するアルギン酸塩(alginate)接合体、中空カプセル(hollow capsule)、表面改質細胞(surface modified cell)などの開発に多くの研究が進められている。Ca2+非依存的にハイドロゲルを形成するアルギン酸塩(alginate)接合体として、アルギン酸塩-ドーパミン接合体及びヒアルロン酸(hyaluronic acid)-EGCG接合体が開発された。アルギン酸塩-ドーパミン接合体の場合、ドーパミン(dopamine)の酸化によって互いに結合させることができるが、結合にはH2O2とHRP酵素が必要であり、結合が強くなく、抗-増殖効果(antiproliferative effect)、ラジカル消去能(radical scavenging)のような機能性が多少劣るという限界がある。ヒアルロン酸(hyaluronic acid)-EGCG接合体の場合、ヒアルロン酸が体内で自然に分解が起こり得る物質であるため、製造された接合体が生体内で分解される
ことができ、EGCG結合によるハイドロゲル形成反応は速度が遅く、物性が強くないので、微細皮膜化に適用するのは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、細胞皮膜化用表面改質アルギン酸塩微細カプセルを提供することにある。
【0007】
本発明が解決しようとするもう一つの課題は、細胞皮膜化用表面改質アルギン酸塩微細カプセルの製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明が解決しようとするもう一つの課題は、前記表面改質アルギン酸塩微細カプセルを用いた細胞皮膜化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決すべく本発明は、コアが流動床のアルギン酸塩であり、シェルがエピガロカテキンガレート二量体で架橋されたアルギン酸塩ハイドロゲルである、コア-シェル構造の表面改質アルギン酸塩微細カプセルを提供する。
【0010】
本発明によれば、前記シェルのエピガロカテキンガレート二量体の一部は、他のエピガロカテキンガレート二量体と酸化によって互いに結合されたものであることができる。
【0011】
本発明によれば、前記シェルは、アルギン酸塩コーティング層をさらに含むものであることができる。
【0012】
本発明によれば、前記アルギン酸塩コーティング層は、シェルのエピガロカテキンガレート二量体と共にアミド結合を形成したものであってもよい。
【0013】
本発明によれば、前記シェルは、3次元的に連結された多数個の中空を含むものであることができる。
【0014】
本発明によれば、前記コアは、液状のアルギン酸塩または液状のアルギン酸塩とアルギン酸塩ハイドロゲルとの混合物であってもよい。
【0015】
本発明によれば、前記微細カプセルは、細胞皮膜用であってもよく、好ましくは、膵島細胞皮膜化用であってもよい。
【0016】
また、本発明は、(1)カルシウム-アルギン酸塩微細カプセルを製造するコアの製造段階と、(2)カルシウム-アルギン酸塩微細カプセル及びエピガロカテキンガレート二量体を反応させ、前記カルシウム-アルギン酸塩微細カプセルの表面にアルギン酸塩-エピガロカテキンガレート二量体架橋物を形成させるシェル製造段階と、及び(3)カルシウム-アルギン酸塩のカルシウムイオンをエピガロカテキンガレート二量体にキレートさせるコア液化段階と、を含み、前記コアは、流動床のアルギン酸塩であり、シェルがエピガロカテキンガレート二量体で架橋されたアルギン酸塩ハイドロゲルである、表面改質アルギン酸塩微細カプセルの製造方法を提供する。
【0017】
本発明によれば、前記製造されたシェルのエピガロカテキンガレート二量体を、隣接するエピガロカテキンガレート二量体と酸化結合させる段階をさらに含むことができる。
本発明によれば、前記製造されたシェルをアルギン酸塩でコーティングさせる段階と、をさらに含むことができる。
【0018】
本発明によれば、前記製造された表面改質アルギン酸塩微細カプセルを、カルシウムイオンキレート剤と反応させて中空を形成させる段階をさらに含むことができる。
【0019】
また、本発明は、(a)細胞をカルシウム-アルギン酸塩ハイドロゲル微細カプセルで皮膜化するコア製造段階と、(b)細胞を皮膜化したカルシウム-アルギン酸塩ハイドロゲル微細カプセルをエピガロカテキンガレート二量体と反応させ、カルシウム-アルギン酸塩微細カプセルの表面にアルギン酸塩-エピガロカテキンガレート二量体架橋物を形成させるシェル製造段階と、及び(c)前記カルシウム-アルギン酸塩のカルシウムイオンをエピガロカテキンガレート二量体にキレートさせ、前記細胞周辺のハイドロゲルを液化させる段階と、を含むコア-シェル構造の表面改質アルギン酸塩微細カプセルを用いた細胞皮膜化方法を提供する。
【0020】
本発明によれば、前記製造されたシェルのエピガロカテキンガレート二量体を、隣接するエピガロカテキンガレート二量体と酸化結合させる段階をさらに含むことができる。
【0021】
本発明によれば、前記製造されたシェルをアルギン酸塩でコーティングさせる段階と、をさらに含むことができる。
【0022】
本発明によれば、前記製造された表面改質アルギン酸塩微細カプセルを、カルシウムイオンキレート剤と反応させて中空を形成させる段階をさらに含むことができる。
【0023】
本発明によれば、前記細胞は、生体内に移植のための細胞であってもよく、好ましくは、膵島細胞であってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るアルギン酸塩微細カプセルは、EGCGの酸化によってアルギン酸塩を架橋することができるので、Ca2+非依存的にハイドロゲルを形成することができる。そればかりでなく、本発明のアルギン酸塩微細カプセルは、EGCGがアルギン酸塩ハイドロゲルのCa2+をキレートすることにより、生体内でハイドロゲルが容易に分解される問題を解決し、内部アルギン酸塩コアが部分的に溶解されるため、酸素又は栄養素が拡散され、内部の皮膜化細胞に伝達され易くなるので、細胞生存度を向上させるだけでなく、物性に優れ、生体内で容易に分解される問題を解決した。したがって、外部の物理的刺激から内部細胞を保護する性能が向上され、免疫反応を最小化した。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明により製造されたエピガロカテキンガレート(EGCG)二量体を高速液体クロマトグラフィーで分析した結果である。
【
図2】本発明により製造されたエピガロカテキンガレート(EGCG)二量体を質量分析計で分析した結果である。
【
図3】本発明によりEGCG二量体99mgを使用して製造されたアルギン酸塩-EGCG(di)接合体のカルシウムイオン(Ca
2+)非依存性ハイドロゲルが形成されたか否かを時間の流れに沿って確認したものである。
【
図4】本発明により製造されたアルギン酸塩-EGCG(di)接合体のレオロジー物性測定結果である。
【
図5】本発明によりEGCG二量体4mgを使用して製造されたアルギン酸塩-EGCG(di)接合体のカルシウムイオン(Ca
2+)非依存性ハイドロゲルが形成されたか否かを時間の流れに沿って確認したものである。
【
図6】本発明の比較例3に係るアルギン酸塩-EGCG(di)微細カプセルの製造結果である。
【
図7】本発明の比較例4に係るアルギン酸塩/アルギン酸塩-EGCG(di)微細カプセルの製造結果である。
【
図8】比較例1及び比較例4に係る微細カプセルを、カルシウムイオンキレート剤で5分間処理し、分解度を評価したものである(a:比較例1、b:比較例4)。
【
図9】本発明の反応時間による実施例1の微細カプセルの製造結果である。
【
図10】HRP処理の有無、様々な反応時間及びEGCG二量体の濃度による実施例1の微細カプセルの製造結果である。
【
図11】HRP処理の有無による表面改質アルギン酸塩微細カプセルの色の変化を確認した結果である(左:HRP添加X、右:HRP添加O)
【
図12】EGCGが結合されたアルギン酸塩ビーズ、アルギン酸塩ビーズ及びアルギン酸塩-EGCGビーズを、HRPを添加したか否か、およびACアルギン酸塩コーティングしたか否かによって区別したものである。
【
図13】比較例1、実施例1、実施例2の微細カプセルの走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図14】EGCGが結合されたアルギン酸塩ビーズに、HRPを添加していない微細カプセル(左)、HRPを添加した微細カプセル(右)、の光学顕微鏡画像である。
【
図15】膵島を、実施例1または2による表面改質アルギン酸塩微細カプセルに皮膜化する過程を模式化して示したものである。
【
図16】比較例1のカルシウム-アルギン酸塩微細カプセルを、カルシウムイオンキレート剤として知られたEDTA(100mM)を20分間処理し、形態変化を確認したものである。
【
図17】実施例1の微細カプセルを、カルシウムイオンキレート剤として知られたEDTA(100mM)を10分または20分間処理し、形態変化を確認したものである。
【
図18】比較例1、比較例3及び実施例1による微細カプセルのレオロジー(Rheology)測定結果である。
【
図19】比較例1、比較例3及び実施例1による微細カプセルの粘弾性測定結果である。(a)比較例1、(b)比較例3、(c)実施例1、HRP添加O、(d)実施例1、HRP添加X。
【
図20】実施例1による微細カプセルが製造されてから2週間後の粘弾性測定結果である。(a)HRP添加O、(b)HRP添加X。
【
図21】比較例1、比較例3及び実施例1による微細カプセルの粘弾性を測定した結果を示したものである。
【
図22】
図22の上段は、HRP未添加の膵島カプセル化表面改質アルギン酸塩微細カプセルの光学顕微鏡画像であり、
図22の下段は、HRP添加された膵島カプセル化表面改質アルギン酸塩微細カプセルの光学顕微鏡画像である。
【
図23】EGCG使用量による表面改質微細カプセルの分解抵抗性を濃度別に区別して光学顕微鏡画像で示したものである。
【
図24】EGCG使用量による表面改質微細カプセルの外部EGCG層を形成するか否かを光学顕微鏡で確認したものである。
【
図25】微細カプセル内部の膵島に対するインスリン分泌能をグラフで示したものである。
【
図26】EGCGが84mg使用されたときの表面改質微細カプセル内の膵島の血中当たりの濃度をグラフで示したものである。
【
図27】アルギン酸塩微細カプセル及び表面改質アルギン酸塩微細カプセルの血中当たりの濃度及び重量をグラフで示したものである。
【
図28】表面改質微細カプセル化膵島及びアルギン酸塩微細カプセル化膵島の形態を光学顕微鏡で示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0027】
本発明は、コアが流動床のアルギン酸塩であり、シェルがエピガロカテキンガレート二量体で架橋されたアルギン酸塩ハイドロゲルである、コア-シェル構造の表面改質アルギン酸塩微細カプセルを提供する。
【0028】
本発明によれば、前記コアは、流動床であってもよく、前記流動床は、液状または液状とハイドロゲルとの混合物であってもよい。前記コアが流動床であれば、酸素及び物質を内部の細胞に容易に伝達することができ、細胞生存能を向上させることができるので、好ましい。
【0029】
本発明によれば、前記エピガロカテキンガレート二量体は、エピガロカテキン単量体の6、8炭素がアルデヒドと反応して形成されたものであってもよい。前記エピガロカテキンガレート二量体は、8-8異性体、6-8異性体(2種類)及び6-6異性体の中から選択される1種以上であることができ、好ましくは、これらの4種の混合物であることができる。
【0030】
前記エピガロカテキンガレート8-8二量体は、下記化学式1で定義された通りである。
【0031】
【0032】
前記一対のエピガロカテキンガレート6-8二量体、下記化2および3に定義された通りである。
【0033】
【0034】
【0035】
前記エピガロカテキンガレート6-6二量体は、下記化4で定義された通りである。
【0036】
【0037】
本発明によれば、前記シェルのエピガロカテキンガレート二量体の一部は、他のエピガ
ロカテキンガレート二量体と酸化によって互いに結合されたものであってもよい。前記エピガロカテキンガレート二量体間の酸化結合は、シェルを厚く形成させるためのものであってもよい。前記エピガロカテキンガレート二量体間の酸化結合は、本発明による微細カプセルの物理的特性を向上させ、被膜化する細胞を物理的な衝撃から保護するのに効果的であることができる。酸化結合されたエピガロカテキンガレート二量体を、下記化5に示した。
【0038】
【0039】
本発明によれば、前記シェルは、アルギン酸塩コーティング層をさらに含むことができ
るものである。
【0040】
本発明によれば、前記アルギン酸塩コーティング層は、シェルのエピガロカテキンガレート二量体と一緒にアミド結合を形成したものであることができる。
【0041】
前記化5に示すように、エピガロカテキンガレート二量体は、アミン基を含むので、正電荷を持つ。従来の研究によれば、正電荷を持つ生体材料は、中性または負電荷を持つ生体材料に比べて免疫反応及び炎症がよく誘発され得る。前記アルギン酸塩コーティング層は、エピガロカテキンガレート二量体の前記アミン基とアルギン酸塩の-COOH基アミド結合を形成しているので、正電荷を持たないようにし、好ましい。
【0042】
本発明によれば、前記シェルは、3次元的に連結された多数個の中空を含むものであることができる。該中空は、酸素及び物質を内部の細胞に容易に伝達することができるので、好ましい。前記中空は、本発明に係るコア-シェル構造の表面改質アルギン酸塩微細カプセルを、カルシウムイオンキレート剤で処理することにより、容易に形成させることができる。
【0043】
本発明によれば、前記微細カプセルは、細胞皮膜用であってもよい。前記細胞の種類は制限されることなく、生体内移植のための細胞であってもよく、好ましくは、膵島細胞であってもよい。
【0044】
本発明において、用語「膵島」とは、ランゲルハンス島(Langerhans islets)を意味し、膵島移植は1型糖尿病の改善のための実用的な治療法である。これは膵島がインスリンを分泌するβ細胞が含まれているため、膵島の移植を介してインスリン依存型である1型糖尿病を治療することができるからである。
【0045】
また、本発明は、(1)カルシウム-アルギン酸塩微細カプセルを製造するコア製造段階と、(2)カルシウム-アルギン酸塩微細カプセル及びエピガロカテキンガレート二量体を反応させ、前記カルシウム-アルギン酸塩微細カプセルの表面にアルギン酸塩-エピガロカテキンガレート二量体架橋物を形成させるシェルの製造段階と、及び(3)カルシウム-アルギン酸塩のカルシウムイオンをエピガロカテキンガレート二量体にキレートさせるコア液化段階と、を含み、前記コアは、流動床のアルギン酸塩であり、シェルがエピガロカテキンガレート二量体で架橋されたアルギン酸塩ハイドロゲルである、表面改質アルギン酸塩微細カプセルの製造方法を提供する。
【0046】
まず、カルシウム-アルギン酸塩微細カプセルを製造する。
【0047】
次に、カルシウム-アルギン酸塩微細カプセル及びエピガロカテキンガレート二量体を反応させる。前記反応によりカルシウム-アルギン酸塩ハイドロゲルのアルギン酸塩は、エピガロカテキンガレート二量体によって架橋されながら、外郭(シェル)にハイドロゲルを形成するようになり、内部のカルシウム-アルギン酸のカルシウムイオンの一部または全部は、エピガロカテキンガレート二量体にキレートされる。カルシウムイオンが全部エピガロカテキンガレート二量体にキレートされた場合には、内部はアルギン酸が液状に変わり、カルシウムイオンが一部エピガロカテキンガレート二量体にキレートされた場合には、内部は液状のアルギン酸とカルシウム-アルギン酸塩ハイドロゲルが共存しながら、流動床のスラリーを形成する。
【0048】
前記微細カプセルは、膵島細胞を含む膵島細胞のカプセルであってもよい。
【0049】
本発明において、用語「膵島細胞カプセル」とは、膵島細胞を生体適合性高分子で囲み
、カプセルの形を形成することを意味する。このような膵島細胞のカプセルは、免疫細胞の透過を防止し、異種個体から分離された膵島または同種の個体から分離された膵島によって起こる免疫拒否反応を抑制することができるようにする。
【0050】
本発明によれば、前記製造されたシェルのエピガロカテキンガレート二量体を、隣接するエピガロカテキンガレート二量体と酸化結合させる段階をさらに含むことができる。前記酸化は、エピガロカテキンガレート二量体の酸化に通常、使用される方法であれば特に制限はないが、基質を脱水素化する触媒反応に関与するHRP(horseradish
peroxidase)酵素がより好ましい。
【0051】
本発明によれば、前記製造されたシェルをアルギン酸塩でコーティングさせる段階と、をさらに含むことができる。前記コーティングは、純粋なアルギン酸塩溶液を添加して反応させることによって行うことができる。
【0052】
本発明によれば、前記製造された表面改質アルギン酸塩微細カプセルを、カルシウムイオンキレート剤と反応させて中空を形成させる段階をさらに含むことができる。前記カルシウムイオンキレート剤は、例えば、EDTAであってもよい。
【0053】
また、本発明は、(a)細胞をカルシウム-アルギン酸塩ハイドロゲル微細カプセルで皮膜化するコア製造段階と、(b)細胞を皮膜化したカルシウム-アルギン酸塩ハイドロゲル微細カプセルをエピガロカテキンガレート二量体と反応させ、カルシウム-アルギン酸塩微細カプセルの表面に、アルギン酸塩-エピガロカテキンガレート二量体架橋物を形成させるシェルの製造段階と、及び(c)前記カルシウム-アルギン酸塩のカルシウムイオンをエピガロカテキンガレート二量体にキレートさせ、前記細胞周辺のハイドロゲルを液化させる段階と、を含むコア-シェル構造の表面改質アルギン酸塩微細カプセルを用いた細胞皮膜化方法を提供する。
【0054】
本発明によれば、前記製造されたシェルのエピガロカテキンガレート二量体を、隣接するエピガロカテキンガレート二量体と酸化結合させる段階をさらに含むことができる。
【0055】
本発明によれば、前記製造されたシェルをアルギン酸塩でコーティングさせる段階と、をさらに含むことができる。
【0056】
本発明によれば、前記製造された表面改質アルギン酸塩微細カプセルを、カルシウムイオンキレート剤と反応させて中空を形成させる段階をさらに含むことができる。
【0057】
本発明によれば、前記細胞は、生体内移植のための細胞であってもよく、好ましくは、膵島細胞であってもよい。
【0058】
本発明によれば、前記微細カプセルの製造に使用されるエピガロカテキンガレートの濃度は、アルギン酸塩5mg当たり、好ましくは42mg~167mgであってもよく、より好ましくは63~167mgであってもよく、さらに好ましくは84~167mgであってもよい。本発明によれば、最も好ましい一実施例は、アルギン酸塩5mg当たり、エピガロカテキンガレートの濃度が84mgである。
【0059】
本発明の一つの様態として、本発明は、糖尿病の予防または治療に使用するために、前記膵島細胞のカプセルを含む糖尿病の治療用組成物を提供する。
【0060】
前記糖尿病の治療は、好ましくは前記カプセルを生体に移植して行うことができる。本発明者らは、本発明の膵島細胞のカプセルの生存能が高く、グルコースに反応するインス
リン分泌能が高く、代謝物質は透過させるが、免疫細胞は透過させないことを確認し、免疫抑制剤の投与がなくても、小部位に移植して、インスリンを分泌して、糖尿病を治療することができることを確認した。
【0061】
本発明において、用語「治療」とは、本発明の膵島細胞カプセルを含む組成物の投与によって、糖尿病の症状が好転したり、有利に変更するすべての行為を意味する。前記糖尿病の治療は、糖尿病が発病する可能性のある任意の哺乳動物に適用することができ、その例として、ヒトと霊長類に加えて、牛、豚、羊、馬、犬および猫などの家畜を制限なく含むが、好ましくは、ヒトであってもよい。
【0062】
本発明に係る膵島細胞のカプセルは、糖尿病の治療を必要とする患者に移植することができ、移植部位としては、腹腔、皮下、筋肉内、臓器、臓器の動脈/静脈の血管質、脳-脊髄液またはリンパ液などが好ましい。また、本発明による膵島細胞のカプセルは、免疫抑制剤の投与がなくてもよいが、好ましくは、免疫抑制剤または抗炎症剤と組み合わせて糖尿病の治療を必要とする患者に投与することができる。前記免疫抑制剤は、シクロスポリン(cyclosporine)、シロリムス(sirolimus)、ラパマイシン(rapamycin)とオルタクロリムス(ortacrolimus)からなる群から選択されることができるが、これに限定されるものでない。
【0063】
前記抗炎症剤は、アスピリン、イブプロフェン、ステロイド及び非ステロイド性抗炎症剤からなる群から選択されることができるが、これに限定されるものではない。前記免疫抑制剤または抗炎症は、膵島のカプセルの移植後6ヶ月の間、好ましくは、1ヶ月の間に投与するのがよい。
【0064】
前記組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むことができ、担体と共に製剤化することができる。本発明において、用語、「薬学的に許容可能な担体」とは、生物体を刺激せずに投与カプセルの生物学的活性及び特性を阻害しない担体または希釈剤をいう。液状溶液に製剤化する組成物において許容される薬剤学的担体としては、滅菌および生体に適したものであり、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、およびこれらの成分のうち1成分以上を混合して使用することができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など、他の通常の添加剤を添加することができる。また希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加して、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形で製剤化することができる。
【0065】
本発明による膵島細胞のカプセルをレシピエントに移植するためには、移植される膵島のカプセルの量は、マウスの場合、4,000~10,000 IEQ/kg、非ヒト霊長類の場合、10,000~15,000 IEQ/kgが好ましく、ドナーの種類、性別および膵臓の状態、レシピエントの体重、年齢、性別、健康状態、食物、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度などによってその範囲が様々である。
【0066】
もう一つの様態として、本発明は、前記組成物を、糖尿病にかかった個体または糖尿病にかかる危険性がある個体に投与する段階を含む、糖尿病治療方法を提供する。
【0067】
本発明で使用される用語、「投与」は、如何なる適切な方法で患者に所定の物質を導入することを意味し、組成物の投与経路は、目的組織に到達することができる限り、いかなる一般的な経路を通じて投与することができる。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与することができるが、これに限定されるものではない。また、組成物は、標的部位に移動することができる任意の装置によって投与することができる。
【0068】
もう一つの様態として、本発明は、糖尿病の予防または治療用薬剤を製造するために、前記微細カプセルを含む組成物の用途を提供する。
【0069】
以下、好ましい実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれによって限定されないことは、当業界の通常の知識を有する者にとって自明である。
【実施例】
【0070】
合成例1.エピガロカテキンガレート(EGCG)二量体の製造
2,2-ジエトキシエチルアミン(2,2-diethoxyethylamine、DA)は、酸性環境でアルデヒドとして存在する。メタンスルホン酸(methanesulfonic acid、MSA)下でエピガロカテキンガレート(EGCG)とDAを反応させ、アルデヒド媒介重合反応をさせてEGCG二量体を製造した。
【0071】
具体的には、10mlバイアルにテトラヒドロフラン3.8ml及びメタンスルホン酸7μlを混合した上、暗室条件及び窒素気流下においてEGCG 2.29g(5mmol)を添加してから、1~2時間攪拌した。次に、冷却した10mlバイアルにテトラヒドロフラン1mlとメタンスルホン酸0.2mlとの混合溶媒に、2,2-ジエトキシエチルアミン145μlを添加し、20分~30分間攪拌して、2,2-ジエトキシエチルアミンのエトキシ基を除去し、アルデヒド基を露出させた。エトキシ基が除去された2,2-ジエトキシエチルアミンの溶液を事前に製造したEGCG溶液にゆっくりと滴下(drop wise)し、常温の暗室条件で一夜(overnight)反応させた。反応終了後、反応混合物をフラスコに移してから、減圧して溶媒を除去し、次にフラスコ内部を窒素気流に作成した後、密閉した。暗条件下で、前記密閉した容器にシリンジを利用して、脱イオン水10mlを添加して攪拌した。反応終了後、暗条件下で反応混合物に酢酸エチルおよび蒸留水を添加し、分別漏斗を使用して有機層と水層に分離した。水層を急速冷凍した後、凍結乾燥して、目的とするEGCG二量体を得た。製造されたEGCG二量体は、使用する前に、超低温冷凍庫に保管した。
【0072】
下記反応式1で確認できるように、6、8炭素がアルデヒドと反応して二量体を形成する。このとき、結合態様に応じて製造されたEGCG二量体は、8-8異性体、6-8異性体(2種類)と6-6異性体との混合物から得られる。これを確認するために、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)および質量分析計(Mass spectrometry)を使用して製造されたEGCG二量体を分析した。
図1は、HPLCの結果であり、
図2は、質量分析結果である。
図1に示すように、4種類のEGCG二量体の合成が観察された。一方、EGCG二量体が正常に合成されず、凝集体が形成された際には、6~6.4分台でピークが現れた。
HRMS-ESI:C
46H
40NO
22 [M+H]+の計算値958.2036、実験値958.2062
【0073】
【0074】
合成例2.アルギン酸塩-EGCG接合体の製造
反応式2の方法でカルボジイミド媒介カップリング反応を利用して、カルボン酸基を有する高分子にEGCG二量体を接合させる。アルギン酸塩(Alginate)をN-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N′-エチルカルボジイミド(EDC)存在下、酸性条件(pH 4.7)においてEGCG二量体と一晩反応させ、EGCGのアミン基とHAのカルボン酸がアミド結合させ、アルギン酸塩-EGCG接合体を製造する。
【0075】
【0076】
具体的には、暗室条件では、三口フラスコに0.4M MES緩衝液(pH 5.2)20.2mlとN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)2.5mlとの混合溶液にアルギン酸塩202mgを添加し、攪拌した。アルギン酸塩が完全に溶解されると、フラスコの内部を窒素雰囲気に交替して密閉した。0.4M MES緩衝液(pH 5.2)3mlにNHS 89mg(0.78mmol)を溶解させた後、シリンジを用いて添加した。脱イオン水2.33mlに、前記合成例1で製造したEGCG二量体4mg(0.08
2mol)を溶解させた後、シリンジを用いて添加した。次に、0.4M MES緩衝液(pH 5.2)3mlにEDC 66mg(0.78mmol)を溶解させた後、シリンジを用いて添加した。すべての反応は、窒素雰囲気下、暗室条件で攪拌させた。
【0077】
次に、反応混合物をエタノール沈殿法で沈殿させ、未反応物(EDC、NHS、未反応EGCG二量体)を除去した。具体的には、窒素雰囲気下、脱イオン水125mlに反応混合物を溶解させ、5M塩化ナトリウム水溶液16.7mlを添加した後、pHを3に調整した。エタノール310mlを添加した後、混合物を遠心分離用容器に移し入れ、超遠心分離(ultracentrifugation)して沈殿させた。上澄み液を除去し、沈殿物を脱イオン水250mlに溶解させ、5M塩化ナトリウム水溶液33mlを添加した後、pHを3に調整した。エタノール620mlを添加した後、混合物を遠心分離用容器に移し入れ、超遠心分離(ultracentrifugation)して沈殿させた。上澄み液を除去し、沈殿物を500mlに溶解させ、5M塩化ナトリウム水溶液67mlを添加した後、pHを3に調整した。エタノール1,240mlを添加した後、混合物を遠心分離用容器に移し入れ、超遠心分離(ultracentrifugation)して沈殿させた。上澄み液を除去し、沈殿物を脱イオン水300mlに溶解させた。
【0078】
得られた溶解物を350Da透析膜を使用して、窒素雰囲気下で24時間透析した。透析した溶液を急冷させ、凍結乾燥して、目的とするアルギン酸塩-EGCG(di)接合体を得た。製造されたアルギン酸塩-EGCG(di)接合体は、使用する前に、超低温冷凍庫に保管した。
【0079】
合成例3.EGCG二量体の酸化
EGCGは、大きく二つの方向に変性されることができ、そのうちの一つは、酸化であり、もう一つは、エピマー化である。前記変性は、EGCGの濃度、pH、温度、酸素分圧などの様々な条件に応じて、その態様と速度が変わる。EGCGが、マイクロモル濃度レベルで存在する場合には、速く酸化が進み、ミリモル濃度レベルで存在する場合には、それぞれのEGCG分子が互いに酸化防止することにより、酸化速度が遅くなる。また、EGCGは、pH 2~5.5の弱酸性条件では、酸化が抑制され、エピマー化が進むが、強酸または塩基性条件下では、酸化が速く進み、50℃以上の温度条件では、EGCGのエピマー化が起こるが、それより低い温度では酸化が進む。特に、極低温条件下でEGCGの変性が非常にゆっくりと進むことが確認された。一方、酸素分圧が低いほどEGCGの酸化が抑制され、エピマー化が進み、pHまたは濃度の条件が整っていない環境のEGCGは、空気中に露出された場合に速く酸化が起こり凝集体が形成されることができる。
【0080】
したがって、凝集体が形成されていないEGCG二量体の酸化のためにEGCGの濃度、pH、温度、酸素分圧の調整を行った。
【0081】
アルギン酸塩-EGCG(di)接合体の酸化を下記に示した。
【0082】
【0083】
製造例
アルギン酸塩対EGCG二量体の割合の確立
アルギン酸塩-EGCG接合体のハイドロゲル形成の有無を確認
最適化された細胞皮膜用微細カプセルを製造するためには、アルギン酸塩-EGCG接合体が空気中に露出されてもゲル化が進んでいない溶液の状態で存在しなければならない。これを確立するためにアルギン酸塩に接合されるEGCGの種類と量を変化させながら、アルギン酸塩対比EGCGの量を最適化した。
【0084】
1.EGCG単量体の使用
従来の方法に基づいてEGCG単量体202mgを使用してアルギン酸塩に接合させた。アルギン酸塩のEGCGが多量に接合されたが、酵素がない環境でも、空気にさらされ
たときに速くゲル化された。
【0085】
2.EGCG二量体9~99mg使用
EGCG二量体99mgを使用して合成例2の方法でアルギン酸-EGCG接合体を製造した。しかし、
図3に示すように、接合体は、空気中の酸素にさらされて、すぐにハイドロゲルを形成した。形成されたハイドロゲルのレオロジー物性を測定し、これを
図4に示した。形成されたハイドロゲルの物性は、微細カプセルに適用可能なレベルであったが、空気にさらされるとすぐに、ゲル化が起こるので、微細カプセルの工程に適用することは困難であった。したがって、アルギン酸塩に接合されるEGCG二量体の量を減らす必要性があった。
【0086】
3.EGCG二量体4mgを使用
EGCG二量体4mgを使用して合成例2の方法でアルギン酸-EGCG接合体を製造した。製造された接合体は、空気中でゲル化されなかった。これに
図5に示した。
【0087】
微細カプセルの製造
比較例1カルシウム-アルギン酸塩カプセルの製造
公知の製造方法に基づいてカルシウム-アルギン酸塩カプセルを製造した。
【0088】
比較例2.アルギン酸塩-EGCG(mono)微細カプセルの製造
EGCG単量体202mgを使用してアルギン酸塩-EGCG(mono)微細カプセルを製造した。
【0089】
比較例3.アルギン酸塩-EGCG(di)微細カプセルの製造
EGCG二量体4mg使用して製造されたアルギン酸塩-EGCG(di)接合を用いて微細カプセルを製造した。カプセル製造時のカルシウムイオンの濃度は、100mMまたは1Mであった。
【0090】
図6に示すように、カプセルが正常に形成されなかった。カプセル化工程のうち、このような形態は、一般的にアルギン酸塩の濃度が適正な範囲を外れたり、またはカルシウムイオンの濃度が低いとき現れる。本発明では、EGCGの抗酸化特性がカルシウムイオン媒介されたアルギン酸塩架橋を阻害することを把握した。一般的に、EGCGのようなカテキンは、金属陽イオンと結合し、キレートすることができる。反応物内に存在していた少量のカルシウムイオンがEGCGと結合してEGCGの構造を変化させ、EGCGの抗酸化能を減少させると予測される。
【0091】
比較例4.アルギン酸塩/アルギン酸塩-EGCG(di)微細カプセルの製造
EGCGによる架橋阻害の問題を解消すべく純粋なアルギン酸溶液とアルギン酸塩-EGCG(di)接合を混合した混合物を使用してカプセル化を行った。反応は、EGCGの酸化を防止するために、窒素雰囲気下、暗室条件で実施した。
【0092】
まず、アルギン酸対アルギン酸-EGCG接合体の混合比の最適化のために、アルギン酸対アルギン酸-EGCG接合体の混合比がそれぞれ1:1、2:1及び3:1重量部である混合物を製造し、カプセル化した。
図7に示すように、アルギン酸-EGCG接合体1重量部に対してアルギン酸塩の混合比が2重量部以上である場合に正常に微細カプセルが形成された。
【0093】
カルシウムイオン依存性及び分解度の評価
比較例1及び比較例4(アルギン酸塩及びアルギン酸塩-EGCG接合体の混合微細カプセル)により製造された微細カプセルのカルシウムイオン依存性及び分解度を評価した
。具体的には、カルシウムイオンキレート剤EDTAで処理した後、微細カプセルの形態を確認し、これを
図8に示した。
【0094】
比較例4の微細カプセルは、比較例1の微細カプセルに比べてカルシウムイオンキレート剤に抵抗性を持つことが確認された。しかし、分解度においては大きな差異を示さなかったことが見られ、分解度の改善効果が大きくないことが確認された。一方、HRP酵素を処理した場合には、比較例4の微細カプセルは、比較例1の微細カプセルに比べて速く分解されたが、これは残存したHRPのEDTA触媒作用によるものと判断された。
【0095】
実施例1.表面改質アルギン酸塩微細カプセルの製造
カルシウム-アルギン酸塩微細カプセルをEGCG二量体で表面改質した。最適化のために、様々な反応時間、EGCG二量体の濃度及び酸化処理の有無の条件で微細カプセルを製造した。
【0096】
反応時間
ゲル化の傾向を増加させることなく、EGCGの接合量を増加させるために、カルシウム-アルギン酸塩カプセルを製造した後、EGCG二量体を接合させた。
【0097】
公知の方法で、カルシウム-アルギン酸塩カプセルを製造した。製造されたカプセルをHEPES緩衝液(pH 7.4)で4回洗浄し、次にMES緩衝液(pH 6.0)で2回洗浄し、MES緩衝液50mlで洗浄されたカプセルを保管した。暗室条件下で、カプセルが存在するMES緩衝液にMES緩衝液2mlに溶解させたNHS 40mg(0.347mmol)を添加して撹拌した。次に、EGCG二量体を複数の濃度(0.347mmolと0.174mmol)に添加して撹拌した。次に、MES緩衝液2mlに溶解させたEDC 66mg(0.0347mmol)を添加した。反応混合物を時間帯別(10分、20分、30分、及び60分)に確認して、表面改質の状態をチェックした。すべての反応は暗室条件下で行われた。
【0098】
また、酸化処理による影響を確認するために、反応時間0分でHRP 1 U/mlを添加して30分間攪拌した。
【0099】
この時、反応に使用されたEDC、NHSの量は、アルギン酸の単量体モル数を基準にモル比がEDC:NHS:アルギン酸塩=1:1:1となるように処理した。
【0100】
図9に示すように、反応時間10分、20分、30分、及び60分ですべてのアルギン酸塩カプセルの表面改質が正常に行われた。反応時間が増加するほどEGCGの凝集が多く形成されており、微細カプセルの表面に接合されたEGCG二量体に他のEGCG二量体が結合され、EGCGが微細カプセルの内部に浸透された形態を有することが観察された。
【0101】
追加実験では、細胞の損傷を最小化するために、反応時間は10分~20分に設定して実施した。
【0102】
反応時間、EGCG二量体の濃度及びHRP処理
微細カプセルをHRP処理の有無、様々な反応時間及びEGCG二量体の濃度で改質し、この画像を
図10に示した。
【0103】
EGCGの結合度は、反応時間よりは処理されたEGCG二量体の濃度に大きく影響されることが確認された。
【0104】
また、光学顕微鏡では、酸化するか否かが有意に観測されなかったが、肉眼では色の変化を通じて容易に観測された。
図11及び
図12は、HRP処理の有無による表面改質アルギン酸塩微細カプセルの色の変化を確認した結果である。
図11は、左側はHRP処理が施されておらず、右側はHRP処理が施されたものである。HRPによって微細カプセル表面のEGCGは、酸化されることによってEGCGは、互いに凝集され、赤色に変わった。
【0105】
実施例2.表面改質されたアルギン酸塩カプセルの製造工程及びアルギン酸塩コーティングされた表面改質アルギン酸塩微細カプセルの製造
EGCG二量体は、アミン基を含む。アルギン酸塩と直接接合されたEGCG二量体の場合には、アミン基がアルギン酸塩とアミド結合を形成するので、量で荷電されないが、EGCG間の酸化によって結合されたEGCG二量体の場合には、アミン基を有しているので正電荷を持つ。従来の研究によると、正電荷を持つ生体材料は、中性または負電荷を持つ生体材料に比べて免疫反応と炎症が多く誘発される。
【0106】
不要な免疫反応の発生を防ぐために、実施例1の表面改質アルギン酸塩微細カプセルの外側をアルギン酸でコーティングした。
【0107】
公知の方法で、カルシウム-アルギン酸塩カプセルを製造した。製造されたカプセルをHEPES緩衝液(pH 7.4)で4回洗浄し、次にMES緩衝液(pH 6.0)で2回洗浄し、MES緩衝液50mlで洗浄されたカプセルを保管した。暗室条件下で、カプセルが存在するMES緩衝液にMES緩衝液2mlに溶解させたNHS 40mg(0.347mmol)を添加して撹拌した。次に、EGCG二量体を複数の濃度(0.347mmol及び0.174mmol)に添加して撹拌した。次に、MES緩衝液2mlに溶解させたEDC 66mg(0.0347mmol)を添加した。反応混合物を時間帯別(10分、20分、30分、及び60分)に確認して、表面改質の状態をチェックした。すべての反応は暗室条件下で行った。
また、酸化処理による影響を確認するために、HRP処理/非処理した。
【0108】
実施例3.EDTA処理表面改質アルギン酸塩微細カプセルの製造
実施例1及び実施例2の微細カプセルを100mM EDTAで処理(10分及び20分)して微細カプセルに中空を形成した。
【0109】
試験例1.構造分析
表面分析
図13は、比較例1、実施例1、実施例2の微細カプセルを走査電子顕微鏡(SEM)で観測したものである。SEM画像は、それぞれ×70、×10,000、×50,000、×100,000の倍率で撮影した。比較例1と比較して、実施例1の微細カプセルは、表面から特異的形態が示されたことが観測された。一方、実施例2の微細カプセル表面では、実施例1で示されたような特異な形態が消えたことが確認された。これにより、EGCG二量体で改質されたアルギン酸塩微小カプセルの表面がアルギン酸塩でコーティングされたことが確認された。
【0110】
内部構造の分析
走査電子顕微鏡(SEM)で実施例1及び実施例2の微細カプセル内部構造を分析し、
図14に示した。
【0111】
SEM画像からも、コア-シェル構造が形成されたことが確認できる。外膜の厚みの場合、HRP処理を施した微細カプセルの方がHRP未処理の微細カプセルよりもより厚く形成されており、気孔発達に優れていた。
【0112】
図15は、膵島を、実施例1または2による表面改質アルギン酸塩微細カプセルに皮膜化する過程を模式化して示したものである。
【0113】
まず、膵島をカルシウム-アルギン酸塩微細カプセルに皮膜化する。次に、カルシウム-アルギン酸塩微細カプセルの表面にEGCG二量体を接合させる。アルギン酸塩と結合したEGCG二量体は、内部のカルシウムをキレートするため、カルシウム-アルギン酸ハイドロゲルは、溶解される。このような過程を通じて内部アルギン酸塩が一部溶解され、アルギン酸塩コア/アルギン酸塩-EGCG二量体シェル構造の微細カプセルが形成される。この時、前記カルシウム-ハイドロゲルの溶解は、全部または一部のみ起こり得る。
【0114】
このような構造は、従来技術による微細カプセルに比べて酸素及び栄養素の拡散が容易なため、カプセル化した膵島の生存度を向上させることができる。
【0115】
カルシウムイオン依存性及び分解度の評価
EGCG二量体の使用量、反応時間、およびHRP処理による比較例1及び実施例1の微細カプセルのカルシウムイオン依存性及び分解度を評価した。比較例1及び実施例1の微細カプセルを、カルシウムイオンキレート剤として知られたEDTA(100mM)を処理し、形態変化を確認した。
【0116】
図16に開示されたように、比較例1のカルシウム-アルギン酸塩微細カプセルは、100mM EDTAで20分間処理した条件で完全に分解され、溶液の状態に変わった。一方、
図17に示すように、実施例1の微細カプセルは、EDTA処理にも微細カプセルが崩壊されず、形態が維持された。これは、本発明による微細カプセルがEDTAによるカルシウムイオンキレート作用抵抗性を持つことを意味する。EDTA処理はむしろ、実施例1の微細カプセルに中空(hollow)を形成させ、カプセル内部に物質拡散及び酸素供給に利点を供することが確認された。物性(物理的な損傷に対する安定性)は、EDTA非処理の微細カプセルがEDTA処理された微細カプセルよりも優れていた。
【0117】
一方、微細カプセル製造時に使用されたEGCG二量体の量が多ければ多いほど、反応時間が長いほど分解度が増加する傾向を示したが、有意なレベルではなかった。また、HRP処理された実施例1の微細カプセルの場合、分解度が増加したが、これは残存するHRPがEDTAの活性を増加させることに起因したものと思われる。
【0118】
したがって、EDTAの処理時間及び処理濃度を調節して微細カプセルの形を最適化することにより、皮膜化された膵島の生存をさらに向上させ、物理的な損傷から保護することができる。
【0119】
レオロジー特性評価
比較例1、比較例3及び実施例1による微細カプセルの物性を確認するためにレオロジー特性を測定し、これを下記
図18~
図21に示した。
【0120】
図18は、レオロジー(Rheology)測定結果であり、
図19~
図21は、粘弾性測定結果である。
【0121】
図19を参考にすれば、比較例1に比べて比較例3の微細カプセルは、低物性を示したが、これはEGCGのカルシウムイオンキレート作用によるものと推定される。実施例1の微細カプセルは、HRPの添加の有無とは無関係に、比較例1の微細カプセルよりも高い物性を示した。一方、HRP処理された微細カプセルは、HRP未処理の微細カプセル
よりも低い物性を示したが、これはHRP処理により、より厚いEGCGシェルが形成されたにもかかわらず、HRP処理によりEGCGのカルシウムイオンキレート作用がより活発に行われ、コアの物性が低下したものと予想される。
【0122】
実施例1の微細カプセルを製造してから2週間保管した後、粘弾性の変化を確認した(
図21)。HRP処理された微細カプセルの場合、粘弾性が減少したが、HRP処理された微細カプセルは、粘弾性がほとんど維持された。これは、HRP処理された微細カプセルは、コアのアルギン酸の溶解が促進され、物性が一部減少したが、HRPを介してEGCG間、安定した結合が形成されているからである。一方、HRP未処理微細カプセルの場合には、製造時点では完全に溶解されなかったコアのアルギン酸による高物性が示されたが、保管中にコアのアルギン酸が溶解され、物性の減少が生じたと推定された。
【0123】
実施例4.膵島のカプセル化
実施例1による微細カプセルの製造方法を使用して膵島をカプセル化した。微細カプセル製造時、HRP処理の有無による特性を光学顕微鏡で確認し、これを
図22に示した。
【0124】
図22の上段は、HRP未添加の膵島のカプセル化表面改質アルギン酸塩微細カプセルの光学顕微鏡画像であり、
図22の下段は、HRP添加された膵島のカプセル化表面改質アルギン酸塩微細カプセルの光学顕微鏡画像である。コアのアルギン酸塩は、一部は溶液の形態で溶解され、一部はハイドロゲルの状態を有するスラリーの形態で観測された。物理的な損傷から細胞を保護しながら、生存度を向上させるに適するように膵島の皮膜化がよくなることが確認された。
【0125】
実施例5.EGCG量による表面改質微細カプセルの分解抵抗性を確認
EGCG使用量による表面改質微細カプセルの分解抵抗性を確認するために、アルギン酸塩5ml当たりEGCG添加量が10.5、21、42、および84mgのときの微細カプセルの形態を光学顕微鏡で確認して、
図23に示した。EDTAを介したCa
2+除去時に発生する分解に対する抵抗性を測定し、EGCGの使用量がアルギン酸塩(alginate)5ml当たり84mg以上の時から抵抗性が現れることを確認した。
【0126】
実施例6.EGCG量による表面改質微細カプセルの外部EGCG層形成の有無を確認
EGCG量による表面改質微細カプセルの外部EGCG層が形成されるか否かを確認するために、EGCG添加量が10.5、21、42、および84mgのときの外部層の形態を共焦点光学顕微鏡で確認して、
図24に示した。分解抵抗性は、コアアルギン酸塩(alginate)の外部に形成されるEGCG層によって示され、EGCG層内部の結合は、Ca
2+とは無関係にEGCG自体の自動酸化(autooxidation)によって形成されるので、一般的なアルギン酸塩の溶解過程とは相違した。
【0127】
前記実施例からEGCG層の形成は、表面改質微細カプセルの製造時に使用されるEGCGの量がアルギン酸(alginate)5ml当たり84mg以上の場合、明らかに形成されることを確認した。
【0128】
実施例7.微細カプセル内部膵島のグルコース反応性及びインスリン分泌能を確認
一般膵島、アルギン酸塩微細カプセル内部膵島及び表面改質微細カプセル内部膵島のグルコース反応性インスリン分泌能を確認するため、GSIS(Glucose-stimulated insulin secretion)分析を行った結果を
図25に示した、その結果、微細カプセル内部の膵島は一般膵島に比べてグルコース反応性が低いことを確認した。これは微細カプセル構造によりインスリンの拡散が滞っていることに起因した結果である。しかし、アルギン酸塩、微細カプセルの内部膵島と表面改質微細カプセル内部膵島の場合、グルコース反応性で有意な差を示さなかった。これは、表面改質工程が
内部膵島の機能に影響を及ぼさないことを意味する。
【0129】
実施例8.糖尿疾患のマウス動物モデルにおいて、表面改質微細カプセル化膵島の移植を通じた効能、持続期間の評価及び回収された微細カプセルの効能、持続期間および形態の分析
EGCG dimer 84mgを用いて製造した表面改質された微細カプセルの血中当たり濃度を
図26に示し、表面改質された微細カプセル及びアルギン酸塩微細カプセルの効果及び形態を分析するために膵島移植による糖尿病疾患のマウスの血糖濃度及び体重を
図27に示し、移植後67日目と85日目に移植された微細カプセルを回収してこれの形態を光学顕微鏡で観察して、
図28に示した。
【0130】
まず、血糖調節期間の場合、表面改質微細カプセル及びアルギン酸塩微細カプセルなど統計的非有効性で、約60日内外で効能が持続された。回収された微細カプセルの形態の場合には、表面改質微細カプセルがアルギン酸塩微細カプセルに比べて、より安定的に維持されたことが確認された。表面改質微細カプセルの場合、表面に細胞吸着が示されたもの以外の免疫反応が発生しないのに対し、アルギン酸塩微細カプセルの場合、内部に組織が形成されたことを確認した。このような結果を総合して見たとき、EGCGを通じたアルギン酸塩(alginate)微細カプセルの表面改質は、微細カプセルの構造安定性を改善する効果的な方法であることを確認できた。