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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】発熱判定ラベルおよび発熱判定マスク
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/01 20060101AFI20221021BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
A61B5/01 200
A41D13/11 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021541250
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2021008604
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】514146748
【氏名又は名称】株式会社トライアンドイー
(74)【代理人】
【識別番号】100167416
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 佳男
(72)【発明者】
【氏名】藤井 敬博
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0125011(US,A1)
【文献】中国実用新案第203219954(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0245707(US,A1)
【文献】特表平11-513272(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110718(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0115294(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00 -13/12
A41D 20/00
A61B 5/00 - 5/398
G01J 5/00 - 5/90
G01K 1/00 -19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の体温に反応する体温熱変色領域と、環境の温度に反応する環境熱変色領域と、をそれぞれ複数設けて、該体温熱変色領域の発色・変色を示す位置と該環境熱変色領域の発色・変色を示す位置とを比較することにより、前記装着者の体温の状態を判定する発熱判定ラベルまたは発熱判定マスク。
【請求項2】
前記体温熱変色領域および前記環境熱変色領域は、温度によって変色するインク又は顔料が塗布されて形成されることを特徴とする請求項1に記載の発熱判定ラベルまたは発熱判定マスク。
【請求項3】
前記体温熱変色領域および前記環境熱変色領域は、インク又は顔料で印刷されたシールが装着されて形成されることを特徴とする請求項1に記載の発熱判定ラベルまたは発熱判定マスク。
【請求項4】
前記体温熱変色領域および前記環境熱変色領域は、感熱液晶を使用した示温フィルムが装着されて形成されることを特徴とする請求項1に記載の発熱判定ラベルまたは発熱判定マスク。
【請求項5】
前記発熱判定マスクのマスク本体の前記体温熱変色領域の位置に、所望の一又は複数の孔を穿設されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の発熱判定マスク。
【請求項6】
前記環境熱変色領域が前記発熱判定ラベルまたは前記発熱判定マスクの熱変色領域から分離され、前記体温熱変色領域が前記発熱判定ラベルまたは前記発熱判定マスクの熱変色領域に備えられ、前記環境熱変色領域が前記発熱判定ラベルまたは前記発熱判定マスクの装着者と同じ環境温度下の観測者の目視できる位置に備えられるようにすることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の発熱判定ラベルまたは発熱判定マスク。
【請求項7】
前記環境熱変色領域は、環境温度を計測する温度計測部と、環境温度にしたがって発色変色させた画像を生成する画像生成部と、前記画像生成部から出力される画像を表示する表示部と、を備えることを特徴とする請求項6に記載の発熱判定ラベルまたは発熱判定マスク。
【請求項8】
前記体温熱変色領域および前記環境熱変色領域に、発色・変色している位置を示すラベル付け表示されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の発熱判定ラベルまたは発熱判定マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着することにより、装着者の体温の状態を表示するラベルおよびマスク、またはこれらを利用した発熱判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インフルエンザや新型コロナ等のウィルス感染症の流行が、人々の生活を脅かしており、病院、学校、企業等では、発熱した感染者の入所を何らかの形で判定することは重要な課題である。
発熱した人であるかを遠隔で判定する従来の技術としては、特許文献1の赤外線サーモグラフィ装置、非特許文献1の示温材を用いたデジタルサーモテープなどが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5399737号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】https://www.nichigi.co.jp/products/samo/digital_thermotape.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る赤外線サーモグラフィ装置は機構が複雑であり、利用者にとって高価となる。非特許文献1に係るデジタルサーモテープは、直接肌に貼ったり、マスクのような肌に密着する薄地のものの上に貼ったりすることにより、装着者の体温に反応する熱変色領域を観測することで、発熱状態を判定するものである。特許文献1の赤外線サーモグラフィ装置よりもはるかに安価であるが、観測される温度は、体温だけではなく、環境の気温に多大に影響される。あらかじめ適用されている液晶、示温染料、示温顔料等の反応温度は固定な値であり、環境の気温によっては、装着者が平熱(健常者)のときに熱変色領域で発熱判定の変色が生じる場合や、発熱者でも熱変色領域において発熱と判定されない変色が生じる場合があり、正しく発熱の判定を行うことができない。
本願発明者は、非特許文献1にあるような示温材の性質を利用した発熱判定ラベルに対し、環境の気温の影響があったとしても、より正しい発熱判定を行うことができる、発熱判定ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、装着者の体温に反応する体温熱変色領域と、環境の温度に反応する環境熱変色領域と、を設け、該体温熱変色領域の変色と、該環境熱変色領域の変色を比較することにより、装着者の体温の状態を判定する発熱判定ラベルまたは発熱判定マスクであることを特徴とする。
なお、前記体温熱変色領域および前記環境熱変色領域は、温度によって変色するインク若しくは顔料が塗布されて形成されるようにしてもよいし、インク又は顔料で印刷されたシールや、感熱液晶を使用した示温フィルムが装着されて形成されるようにしてもよい。
また、発熱判定マスクのマスク本体の体温熱変色領域の位置に、所望の一又は複数の孔を穿設することができる。
【0007】
本発明に係る発熱判定ラベルまたは発熱判定マスクは、環境熱変色領域が発熱判定ラベルまたは発熱判定マスクの熱変色領域から分離され、体温熱変色領域が発熱判定ラベルまたは発熱判定マスクの熱変色領域に備えられ、環境熱変色領域が発熱判定ラベルまたは発熱判定マスクの装着者と同じ環境温度下の観測者の目視できる位置に備えられるようにすると好適である。
前記環境熱変色領域は、環境温度を計測する温度計測部と、環境温度にしたがって発色変色させた画像を生成する画像生成部と、前記画像生成部から出力される画像を表示する表示部と、を備えるようにすると好適である。また、前記体温熱変色領域および前記環境熱変色領域に、発色・変色している位置を示すラベル付け表示されるようにしてもよい。
【0008】
さらに、発熱判定ラベルは、装着者の肌に直接貼って使用することもできるし、マスク等に貼って使用することもできる。さらに、示温インクを直接マスク等に印刷した構成にすることもできる。
【0009】
また、本発明は、装着者の体温に反応する体温熱変色領域と、環境の温度に反応する環境熱変色領域と、を設けた発熱判定ラベルまたは発熱判定マスクにおいて、体温熱変色領域および環境熱変色領域が、温度によって変色するインク若しくは顔料が塗布され若しくはシールとして装着されて形成され、又は、感熱液晶を使用した示温フィルムが装着されて形成されて、該体温熱変色領域の変色と該環境熱変色領域の変色とを比較することにより、装着者の体温の状態を判定する発熱判定方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る発熱判定ラベルおよび発熱判定マスクによれば、体温に反応する体温熱変色領域の色変化や表示変化と、環境の温度に反応する環境熱変色領域の色変化や表示変化とを比較することにより、環境の温度の影響があったとしてもより正しく、被検者の体温が健常者の体温(平熱)よりも高いどうかを視覚的にかつ容易に判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る発熱判定ラベルの一例(発熱判定ラベル。額に貼り付ける例)を示す図である。
図2】実際に観測される発色・変色の様子を模式的に表したものの一例を示す図である。
図3】実際に観測される発色・変色の様子を模式的に表したものの別の例を示す図である。
図4】体温熱変色領域や環境熱変色領域を円状に配置した一例を示す図である。
図5】環境熱変色領域を支持する部分を設けたことを示す図である。
図6】本発明に係る発熱判定マスクの一例(発熱判定マスク。呼気の部分に備える例)を示す図である。
図7】本発明に係る発熱判定マスクの別例(発熱判定マスク。肌に密着する部分に備える例)を示す図である。
図8】本発明に係る発熱判定マスクの別例(発熱判定マスク。肌に密着する部分に備える例)を示す図である。
図9】本発明に係る発熱判定ラベルの別形態を示す図である。
図10】本発明に係る発熱判定ラベルの別形態を示す図である。
図11】本発明に係る発熱判定ラベルの別形態を示す図である。
図12】実施例5における実際に観測される発色・変色の様子を模式的に表したものの一例である。
図13】実施例5における実際に観測される発色・変色の様子を模式的に表したものの別の例である。
図14】実施例5における実際に観測される発色・変色の様子を模式的に表したもののさらに別の例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。各図において、同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は、本発明を理解するために誇張して表現している場合もあり、必ずしも精緻に表したものではないことに留意されたい。なお、本発明の技術的範囲は以下の実施形態に示した具体的な用途や形状・寸法などには限定されるものではない。以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0013】
実施例1を図1~5を参照しながら、説明する。図1は、本発明に係る発熱判定ラベルの一例(発熱判定ラベル。額に貼り付ける例)を示す図である。図1の発熱判定ラベル1を装着者の額に貼ることで、発熱しているかどうかを判定する。実施例1では、額に貼る例を挙げているが、頬や腕等、額以外でも肌の露出する部分に貼ることも可能である。
【0014】
図1を参照する。本発明に係る発熱判定ラベル1は、体温に反応して発色・変色する体温熱変色領域10と環境の温度に反応して発色・変色する環境熱変色領域11で構成されている。発熱判定ラベル1を装着者の額に貼る。
環境熱変色領域11部分は、体温による影響をできるだけ少なくさせるため、装着者との間に断熱材115を備えるようにすると好適である。断熱材115は発泡スチロールのような固体の物質であってもよいし、形成を工夫して装着者から離れて備えるようにした、空気の層であってもよい。なお、図5は、環境熱変色領域11を支持する部分116を設けることで、断熱材115を空気の層としている。
【0015】
体温熱変色領域10の100~104および環境熱変色領域11の110~114はそれぞれ、温度によって発色・変色する示温材で構成される。例えば、コレステロール誘導体液晶を用いることで可能となる。融点の異なる複数のコレステロール誘導体物質を配合することによって、常温域の所望の温度域で、赤・緑・青の発色・変色を示すよう設計することができる。設計した温度域外では黒に変色させる。
【0016】
体温熱変色領域10の100~104は、温度幅2℃で赤・緑・青の発色・変色を示すような物質を用い、それぞれ、25℃~27℃、27℃~29℃、29℃~31℃、31℃~33℃、33℃~35℃の温度域で赤・緑・青の発色・変色を示すように構成する。例えば、発熱判定ラベル1の装着者の額の表面温度が30℃の場合、図1の102部分が緑になる(それ以外の100、101、103、104は黒になる)。ここでの温度域は、観測されうる額の表面温度に合わせるべきであり、ここで挙げた具体例に限らない。
【0017】
環境熱変色領域11の110~114は、次のように構成する。体温熱変色領域10の100~104において、健常者の額の表面温度で緑に発色・変色する部分のすぐ下に、その時の環境の温度で緑に発色・変色を示すように、温度域を設計されたコレステロール誘導体液晶を配置する。例えば、環境の温度が12℃のときの健常者の額の表面温度が26℃、環境の温度が18℃のときの健常者の額の表面温度が28℃、環境の温度が24℃のときの健常者の額の表面温度が30℃、環境の温度が30℃のときの健常者の額の表面温度が32℃、環境の温度が36℃のときの健常者の額の表面温度が34℃、と観測される場合には、環境熱変色領域11の110~114を、8℃~14℃、14℃~20℃、20℃~26℃、26℃~32℃、32℃~38℃の温度域(温度幅6℃)で赤・緑・青の発色・変色を示すように配置する。すなわち、装着者が平熱(健常者)の場合、発熱判定ラベル1を観測すると、体温熱変色領域10の発色・変色の状態と環境熱変色領域11の発色・変色の状態が、ほぼ同じように観測されるように設計することになる。
【0018】
図2は、実際に観測される発色・変色の様子を模式的に表したものの一例である。この場合、体温熱変色領域10の発色・変色の状態と環境熱変色領域11の発色・変色の状態が、ほぼ同じであるため、装着者は発熱していないと判定することができる。具体的には、環境の温度が24℃で、装着者の額の表面温度が30℃の場合を表しているわけであるが、あらかじめの観測結果として、「環境の温度が24℃のときの健常者の額の表面温度が30℃」の場合を踏まえて設計されているため、図2の場合は、健常者の体温の状態を表示している例である。
【0019】
図3は、実際に観測される発色・変色の様子を模式的に表したものの別の例である。この場合、体温熱変色領域10の発色・変色を示す位置が、環境熱変色領域11の発色・変色を示す位置よりも温度が高い部分(右側)となっているため、装着者は発熱していると判定することができる。具体的には、環境の温度が24℃で、装着者の額の表面温度が32℃の場合を表しているわけであるが、あらかじめの観測結果として、「環境の温度が24℃のときの健常者の額の表面温度が30℃」の場合を踏まえて設計されているため、図3の場合は、装着者の額の表面温度が健常者よりも2℃高く観測され、発熱している人の体温の状態を表示している例である。
【0020】
実施例1では、示温材として、コレステロール誘導体液晶を取り上げたが、指定する温度によって発色・変色するようなものであれば、採用することが可能である。
また、発熱判定ラベル1は、体温熱変色領域10や環境熱変色領域11を横長に配置して、それらを上下に配置したが、図4のように、円状に配置することも可能である。環境熱変色領域11の110~114とマスク本体の間には、断熱材115を備えることで、装着者の体温の状態を、より正しく判定することができる。図5と同様に、樹脂等で構造を作ることで、断熱材115を空気の隙間でもよい。また、図1の体温熱変色領域10と環境熱変色領域11の上下関係を逆にすることもできるし、図4の体温熱変色領域10と環境熱変色領域11の内側外側を逆にすることもできる。
【実施例2】
【0021】
実施例2を図6を参照しながら、説明する。図6は、本発明に係る発熱判定マスクの一例(発熱判定マスク。呼気の部分に備える例)を示す図である。
【0022】
図6を参照する。本発明に係る発熱判定マスク2は、少なくとも装着者の鼻孔及び口を覆うことができる大きさを有する柔軟性素材からなるマスク本体20と、マスク本体の両側縁部にそれぞれ取り付けられ、側縁部の上下方向の異なる位置に両端がそれぞれ固定された伸縮性を有する一対の支持紐21とを備える。そして、発熱判定マスク2のマスク本体20の外側表面の中央近傍に、熱変色領域22を設けている。
【0023】
熱変色領域22は、発熱判定マスク2のマスク本体20の外側表面の中央近傍に設けられているため、装着者が鼻呼吸と口呼吸のどちらで呼吸をしたとしても、装着者の呼気が熱変色領域22に伝わり、その呼気に反応した該熱変色領域22の変色により装着者の体温の状態を表示することになる。
熱変色領域22は、実施例1の発熱判定ラベル1と同じ構成であり図1のようにあらわすことができる。体温熱変色領域10は、実施例1では装着者の額の表面温度を観測するものであったが、実施例2では、装着者の呼気の温度を観測する。例えば、環境の温度が12℃のときの健常者の呼気温が22℃、環境の温度が18℃のときの健常者の呼気温が24℃、環境の温度が24℃のときの健常者の呼気温が26℃、環境の温度が30℃のときの健常者の呼気温が28℃、環境の温度が36℃のときの健常者の呼気温が30℃、と観測される場合には、体温熱変色領域10の100~104は、それぞれ、21℃~23℃、23℃~25℃、25℃~27℃、27℃~29℃、29℃~31℃の温度域で赤・緑・青の発色・変色を示すように構成し、環境熱変色領域11の110~114は、8℃~14℃、14℃~20℃、20℃~26℃、26℃~32℃、32℃~38℃の温度域(温度幅6℃)で赤・緑・青の発色・変色を示すように配置する。
【0024】
なお、体温熱変色領域10の100~104には、発熱判定マスク2のマスク本体20の、熱変色領域22を備える部分に、所望の一又は複数の孔を穿設して、その孔を覆うようにしてインク又は顔料で印刷されたシールや示温フィルムが装着されて形成されるようにしてもよい。このような孔を設けることにより、装着者の呼気の温度に反応しやすくするためである。
また、実施例1と同様に、体温熱変色領域10と環境熱変温領域11を横長に配置して、それらを上下に配置したが、図4のように、円状に配置することも可能である。環境熱変色領域11の110~114とマスク本体の間には、断熱材(空気の隙間でもよい)を備えることで、装着者の体温の状態を、より正しく判定することができる。また、実施例1と同様に、図1の体温熱変色領域10と環境熱変色領域11の上下関係が逆にすることもできるし、図4の体温熱変色領域10と環境熱変色領域11の内側外側を逆にすることもできる。
【0025】
実施例2では、実施例1と同様に、示温材として、コレステロール誘導体液晶を取り上げたが、指定する温度によって発色・変色するようなものであれば、採用することが可能である。採用する示温材によって、マスク上に直接印刷したり、シール状の発熱判定ラベルを貼り付けたりすることで構成することが可能である。
【実施例3】
【0026】
実施例3を図7及び8を参照しながら、説明する。図7、8はそれぞれ、本発明に係る発熱判定マスクの別例(発熱判定マスク3。肌に密着する部分に備える例)を示す図である。実施例2では、熱変色領域22は、呼気に反応するように構成していたが、実施例3では、マスク本体のうち、比較的肌に密着する部分に熱変色領域32(または42)を備えることにより、呼気に反応するのではなく、肌の表面温度に反応するように構成する。
マスク本体のうち、比較的肌に密着する部分は、上部頬の部分、または、下部顎の部分である。さらに、マスク本体だけではなく、支持紐31(または41)の部分も肌に密着する部分であり、シール化もしくはフィルム化された熱変色領域32(または42)を該支持紐31(または41)に備えることも可能である。
【0027】
図7を参照する。本発明に係る発熱判定マスク3は、少なくとも装着者の鼻孔及び口を覆うことができる大きさを有する柔軟性素材からなるマスク本体30と、マスク本体の両側縁部にそれぞれ取り付けられ、側縁部の上下方向の異なる位置に両端がそれぞれ固定された伸縮性を有する一対の支持紐31とを備える。そして、発熱判定マスク3のマスク本体30の外側表面の上部右端に、熱変色領域32を設けている。図7の場合は、上部右端であるが、上部左端であっても実施可能である。
熱変色領域32は、実施例1の発熱判定ラベル1と同じ構成であり、図1のように表すことができる。
【0028】
図8を参照する。本発明に係る発熱判定マスク4は、少なくとも装着者の鼻孔及び口を覆うことができる大きさを有する柔軟性素材からなるマスク本体40と、マスク本体の両側縁部にそれぞれ取り付けられ、側縁部の上下方向の異なる位置に両端がそれぞれ固定された伸縮性を有する一対の支持紐41とを備える。そして、発熱判定マスク4のマスク本体40の外側表面の下部右端に、熱変色領域42を設けている。図8の場合は、熱変色領域42は下部右端にあるが、下部左端にあっても実施可能である。
熱変色領域42は、実施例1の発熱判定ラベル1と同じ構成であり、図1のように表すことができる。
【0029】
なお、体温熱変色領域10の100~104には、発熱判定マスク3(または4)のマスク本体30(または40)の、熱変色領域32(または42)を備える部分に、所望の一又は複数の孔を穿設して、その孔を覆うようにしてインク又は顔料で印刷されたシールや示温フィルムが装着されて形成されるようにしてもよい。このような孔を設けることにより、装着者の肌の表面温度に反応しやすくするためである。
【0030】
また、実施例2と同様に、体温熱変色領域10と環境熱変温領域11を横長に配置して、それらを上下に配置したが、図4のように、円状に配置することも可能である。環境熱変色領域11の110~114とマスク本体の間には、断熱材(空気の隙間でもよい)を備えることで、装着者の体温の状態を、より正しく判定することができる。また、実施例2と同様に、図1の体温熱変色領域10と環境熱変色領域11の上下関係を逆にすることもできるし、図4の体温熱変色領域10と環境熱変色領域11の内側外側を逆にすることもできる。
【0031】
実施例3では、実施例2と同様に、示温材として、コレステロール誘導体液晶を取り上げたが、指定する温度によって発色・変色するようなものであれば、採用することが可能である。採用する示温材によって、マスク上に直接印刷したり、シール状の発熱判定ラベルを貼り付けたりすることで構成することが可能である。
【実施例4】
【0032】
実施例4を図9及び10を参照しながら、説明する。実施例1の発熱判定ラベル1、実施例2または3の熱変色領域22または32(または42)は、呼気または表面温度に反応する体温熱変色領域10と、環境の温度に反応する環境熱変色領域11との両方を備えているように構成していたが、実施例4では、図9のように、環境の温度に反応する環境熱変色領域51を分離させ、装着者と同じ環境の温度、かつ、観測者が目視できる部分に配置する。装着者の呼気や肌表面温度に影響が及ばないので、実施例1から3のように、マスク本体との間の断熱材は、省略することができる。
実施例4においては、実施例1と同様、発熱判定ラベルについて記述するが、実施例2または3のような発熱判定マスクについても実施できる。
【0033】
図9を用いて実施例4の発熱判定ラベル5を説明する。図9の発熱判定ラベル5を装着者の額に貼ることで、発熱判定を行う。
例えば、環境の温度が12℃のときの健常者の額の表面温度が26℃、環境の温度が18℃のときの健常者の額の表面温度が28℃、環境の温度が24℃のときの健常者の額の表面温度が30℃、環境の温度が30℃のときの健常者の額の表面温度が32℃、環境の温度が36℃のときの健常者の額の表面温度が34℃、と観測される場合には、体温熱変色領域50の500~504は、それぞれ、25℃~27℃、27℃~29℃、29℃~31℃、31℃~33℃、33℃~35℃の温度域で赤・緑・青の発色・変色を示すように構成し、環境熱変色領域51の510~514は、8℃~14℃、14℃~20℃、20℃~26℃、26℃~32℃、32℃~38℃の温度域(温度幅6℃)で赤・緑・青の発色・変色を示すように配置する。ここでの温度域は、観測されうる額の表面温度に合わせるべきであり、ここで挙げた具体例に限らない。
【0034】
実施例4において、装着者が平熱(健常者)の場合、発熱判定ラベル5の体温熱変色領域50および、分離した環境の温度に反応する環境熱変色領域51を観測すると、体温熱変温領域50の発色・変色の状態と環境熱変色領域51の発色・変色の状態が、ほぼ同じように観測される。装着者が発熱している場合、体温熱変色領域50の発色・変色を示す位置が、環境熱変色領域51の発色・変色を示す位置よりも温度が高い部分(右側)となるため、発熱者だと判定することができる。
【0035】
実施例4では、示温材として、コレステロール誘導体液晶を取り上げたが、指定する温度によって発色・変色するようなものであれば、採用することが可能である。
【0036】
また、実施例1と同様に、体温熱変色領域50や環境熱変色領域51を横長に配置したが、図10のように、円状に配置することも可能である。
【実施例5】
【0037】
図11、12、13、14を参照しながら、実施例5を説明する。実施例4では、呼気または表面温度に反応する体温熱変色領域50と環境の温度に反応する環境熱変色領域51を分離させ、装着者と同じ環境の温度、かつ、観測者が目視できる部分に配置することにより、マスク本体との間の断熱材は、省略することができる。このとき、環境の温度に反応する環境熱変色領域51は、実施例1~4のように示温材を用いずに、同等の情報(画像)を表示するように実施することが可能である。
実施例5においては、実施例1と同様、発熱判定ラベルについて記述するが、実施例2または3のような発熱判定マスクについても実施できる。
【0038】
図11を用いて実施例5の発熱判定ラベル5を説明する。図11の発熱判定ラベル5は、実施例4の図9の発熱判定ラベル5と同じ構成である。図11の発熱判定ラベル5を装着者の額に貼ることで、発熱判定を行う。実施例5では、図9の環境熱変色領域51の代わりに、図11の環境熱変色領域61を用いる。環境熱変色領域61は、表示部610と画像生成部611と温度計測部612から成る。
例えば、環境の温度が12℃のときの健常者の額の表面温度が26℃、環境の温度が18℃のときの健常者の額の表面温度が28℃、環境の温度が24℃のときの健常者の額の表面温度が30℃、環境の温度が30℃のときの健常者の額の表面温度が32℃、環境の温度が36℃のときの健常者の額の表面温度が34℃、と観測される場合を考える。
温度計測部612では、装着者と同じ環境の温度を測定する。画像生成部611では、温度計測部612で計測された温度をもとに、画像を生成する。生成される画像は、次のように示温材を用いて構成された、図9の環境熱変色領域51の510~514が発色・変色様子を推測したものとなるようにする。図9の環境熱変色領域51の510~514は、8℃~14℃、14℃~20℃、20℃~26℃、26℃~32℃、32℃~38℃の温度域(温度幅6℃)で赤・緑・青の発色・変色を示すように配置する。画像生成部611では、温度計測部612からの環境温度における、環境熱変色領域51の510~514の黒・赤・緑・青の発色・変色状態を再現する画像を生成する。表示部610は、画像生成部611からの画像を表示する。
【0039】
図12は、実施例5における実際に観測される発色・変色の様子を模式的に表したものの一例である。この場合、体温熱変色領域50の発色・変色の状態と環境熱変色領域61の発色・変色の状態が、ほぼ同じであるため(真ん中が緑色に発色)、装着者は発熱していないと判定することができる。具体的には、環境の温度が24℃で、装着者の額の表面温度が30℃の場合を表しているわけであるが、あらかじめの観測結果として、「環境の温度が24℃のときの健常者の額の表面温度が30℃」の場合を踏まえて設計されているため、図12の場合は、健常者の体温の状態を表示している例である。
【0040】
図13は、実施例5における実際に観測される発色・変色の様子を模式的に表したものの別の例である。この場合、体温熱変色領域50の発色・変色を示す位置が、環境熱変色領域61の発色・変色を示す位置よりも温度が高い部分(右側)となっているため、装着者は発熱していると判定することができる。具体的には、環境の温度が24℃で、装着者の額の表面温度が32℃の場合を表しているわけであるが、あらかじめの観測結果として、「環境の温度が24℃のときの健常者の額の表面温度が30℃」の場合を踏まえて設計されているため、図13の場合は、装着者の額の表面温度が健常者よりも2℃高く観測され、発熱している人の体温の状態を表示している例である。
【0041】
図12図13のように、体温熱変色領域50の発色・変色を示す位置や環境熱変色領域61の発色・変色を示す位置を比較することから、分離されて離れたところにある場合には、見間違いが生じやすい。図14のように、各ブロックにA、B、C、D、Eと、発色・変色している位置を示すようなラベル付けをして表示するようにし、位置の比較を容易くなるよう構成することもできる。ラベル付けは、図14のようにアルファベットでも良いし、数字を用いることもできる。
【0042】
実施例5では、示温材として、コレステロール誘導体液晶を取り上げたが、指定する温度によって発色・変色するようなものであれば、採用することが可能である。
【0043】
また、実施例4と同様に、体温熱変色領域50や画像生成部611の出力画像の各ブロックを横長に配置したが、図10のように、円状に配置することも可能である。
【0044】
以上、本発明に係る発熱判定ラベルおよび発熱判定マスクの実施例を説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る発熱判定ラベルまたは発熱判定マスクによれば、発熱判定ラベルまたは発熱判定マスク上の熱変色領域の変化により、装着者の発熱判定を視覚的にかつ容易に判断することが可能となるので、学校、病院等医療施設や行政機関での多人数を被験者とする場合のみならず、感染症等拡大懸念に対応するための家庭用としても広く利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 発熱判定ラベル
10 体温熱変色領域
11 環境熱変色領域
115 断熱材
2 発熱判定マスク
20 マスク本体
21 支持紐
22 熱変色領域
3 発熱判定マスク
30 マスク本体
31 41 支持紐
32 42 熱変色領域
4 発熱判定ラベル
50 体温熱変色領域
51 環境熱変色領域
【要約】
【課題】本発明は、温度測定を目的とせず、装着者の発熱の状態を目に見える形で判定できる、発熱判定ラベルまたは発熱判定マスクを安価に提供することを目的とする。
【解決手段】
上記目的を達成するため、本発明は、装着者の体温に反応する体温熱変色領域と、環境の温度に反応する環境熱変色領域と、を設け、装着者の体温に反応した該体温熱変色領域の変化と、環境の温度に反応する該環境熱変色領域の変化を比較することにより装着者の体温の状態を表示することを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14