(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】小型船舶用空間集約的LNG燃料供給システム
(51)【国際特許分類】
F02M 21/02 20060101AFI20221021BHJP
F02M 31/16 20060101ALI20221021BHJP
B63H 21/38 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
F02M21/02 L
F02M21/02 U
F02M21/02 301B
F02M31/16 E
B63H21/38 C
(21)【出願番号】P 2021541649
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(86)【国際出願番号】 KR2020012412
(87)【国際公開番号】W WO2021096049
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】10-2019-0145619
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513007413
【氏名又は名称】ドンファ エンテク シーオー.,エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】DONGHWA ENTEC CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】7,Noksansandan 261-ro Gangseo-gu Busan 46573 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】イ、ユンヒョク
(72)【発明者】
【氏名】キム、クンウン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ワンテ
(72)【発明者】
【氏名】コン、テウ
(72)【発明者】
【氏名】キム、チャンス
(72)【発明者】
【氏名】ク、ビョンス
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-210148(JP,A)
【文献】特開平06-336193(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0219044(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0061798(KR,A)
【文献】特開2017-172603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 21/00 , 25/00
F02D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LNG燃料タンク上部の蒸発空間の気体燃料を燃料消費先に供給することができるように案内する第1フリーガスラインと、
前記第1フリーガスラインから供給される気体燃料を加熱するヒーターと、
前記ヒーターから加熱された気体燃料を燃料消費先に供給するガスラインと、
LNG燃料タンク下部の液体燃料を燃料消費先に供給することができるように案内する液体ラインと、
前記液体ラインから供給される液体燃料を気体燃料に気化させる蒸発器と、
前記蒸発器から供給される気体燃料を第1フリーガスラインに合流させる第2フリーガスラインと、を含み、
前記第1フリーガスライン及び前記第2フリーガスライン上の配管は、前記ガスライン上の配管の断面積よりも相対的にさらに大きく形成され、
前記LNG燃料タンク、前記第1フリーガスライン及び前記第2フリーガスライン上の気体燃料の圧力を同一に維持させるが、前記ガスライン上の圧力よりも相対的にさらに大きく維持させることにより、
前記LNG燃料タンクの蒸発空間と共に前記第1フリーガスライン及び前記第2フリーガスラインがバッファ機能を実行することができ、
前記第1フリーガスライン上には、
前記ヒーターに供給される気体燃料を減圧させる減圧弁が設置され、
前記減圧弁の前段には、減圧されてヒーターを通過した気体燃料の逆流を防止する逆止弁が設置されることを特徴とする、小型船舶用空間集約的LNG燃料供給システム。
【請求項2】
前記液体ライン上には、前記燃料タンクの圧力を一定に維持させるための圧力制御弁が設置されることを特徴とする、請求項1に記載の小型船舶用空間集約的LNG燃料供給システム。
【請求項3】
前記
蒸発器及び前記ヒーターの熱源は、グリコール供給ラインを介して供給され、
前記熱源は、燃料需要先のジャケットウォーターによって加熱される中間熱媒体であり、
前記グリコール供給ライン上には電気ヒーターが設置されることにより、中間熱媒体の適正温度を維持することができることを特徴とする、請求項1に記載の小型船舶用空間集約的LNG燃料供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNG燃料推進船舶の中でも、特に小型船舶に最適化され、燃料供給システムの占有空間を集約することができる小型船舶用空間集約的LNG燃料供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
小型船舶のLNG燃料供給システム(FGSS)は、LNGを燃料として供給するために、ポンプ及び熱交換器を経て、エンジンに必要な一定の温度及び圧力を満足させた後、気体状態の天然ガスとしてエンジンに供給される。つまり、小型船舶の場合は、燃料として供給される天然ガスの一定の圧力を満足させるために、LNG燃料タンクの内部にLNG FEED PUMPを設置してエンジンに必要な圧力を供給するポンプ加圧方式と、ポンプなしにタンク内のLNGをエンジンに必要な圧力に増加させた後、熱交換器を経てエンジンに供給する方式が使用された。
【0003】
そして、従来では、LNG燃料タンクの加圧ライン、及び加圧されたLNGを気化させてエンジンに供給するラインがそれぞれ別々に構成されており、LNG燃料タンクから発生する蒸発ガス(Boil Off Gas)を処理することが可能なラインが別途構成されないため、蒸発ガス発生量の増加によるLNG燃料タンクの圧力が増加すると、大気中に放出させるのが実情である。
【0004】
これと共に、小型船舶の場合は、経済性と運用の利便性を目的として非ポンプ式で構成し、LNG燃料タンクの圧力を生成するための圧力生成用熱交換器と、エンジンに必要な温度を満足させるための加熱用熱交換器を含むことで、LNG燃料供給システムが構成されている。ここで、熱交換器の熱源としては、加熱されたエチレングリコールが使用され、これを加熱するための熱源としては、エンジンに流入して循環する冷却水を使用する。
【0005】
このような小型船舶用LNG燃料供給システムは、荒天航海及びエンジンの急激な出力変化にも、エンジンに必要な一定の圧力及び温度で天然ガスを持続的に供給しなければならない。
【0006】
従来では、エンジンの急激な出力変化の際に、エンジンに必要な圧力及び温度条件を満足させていないため、エンジン効率が低下するとともに、ディーゼルモードに転換される状況が頻繁に起こった。これは、エンジンに必要な適正圧力がLNG燃料タンクの圧力によって決定されるが、荒天航海又は急加速の際に、エンジンに供給される天然ガスの流量が増加すると同時に、瞬間圧力が低くなる現象が発生するためである。この時、低くなった天然ガスの圧力に対する補償を、LNG燃料タンクの内部圧力を加圧して適正圧力を維持するが、このようにLNG燃料タンクの内部圧力を維持するための時間に比べて、エンジンの出力増加による天然ガスの流入流量の増加に伴うLNG燃料タンクの圧力低下時間がより速いので、エンジン効率が低下するとともにディーゼルモードに転換されるのである。
【0007】
これを防止するために、近年では、LNG燃料供給システムにおいてエンジンの前端部に一定量の天然ガスを貯蔵することができるバッファタンクを設置して、エンジンの要求条件に対応するバッファタンク内の天然ガスをエンジンに供給する方式でバッファ機能を与えている。
【0008】
しかし、空間的な制約が大きい小型船の特性上、上述したバッファタンクがさらに配置されることにより、さらに空間を割愛しなければならないという問題点があり、これを改善することができる技術の開発が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる問題点を解決するためのもので、荒天航海及び急激なエンジンの出力変化にも対応しつつ、従来のバッファタンクが占めていた空間を大幅に減らして小型船舶の空間活用度を極大化させることができる小型船舶空間集約的LNG燃料供給システムを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、LNGを気化させてエンジンに供給するラインと、LNG燃料タンク内の圧力を制御するラインとを統合させてLNG燃料タンクの圧力を一定に制御し、エンジンに供給されるガス燃料の圧力を適切に制御することができる小型船舶用空間集約的LNG燃料供給システムを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、エンジンに供給される天然ガスの気化のための熱源をエンジンジャケットウォーター(Jacket Water)の中間熱媒体(エチレングリコール)から供給される構成において、エンジンの負荷変動に応じて、中間熱媒体の流量及び温度変化の偏差が大きく発生するが、特にエンジンの負荷が低い場合でも、中間熱媒体を適正温度に加熱することができる小型船舶用空間集約的LNG燃料供給システムを提供することを目的とする。
【0012】
本発明のその他の目的及び利点は後述される。これは、本発明の請求の範囲に記載された事項及びその実施形態の開示内容だけでなく、これらから容易に推考することが可能な範囲内の手段及び組み合わせによってさらに広い範囲で包摂されることを付け加える。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明による小型船舶用空間集約的LNG燃料供給システムは、LNG燃料タンク上部の蒸発空間の気体燃料を燃料消費先に供給することができるように案内する第1フリーガスラインと、前記第1フリーガスラインから供給される気体燃料を加熱するヒーターと、前記ヒーターから加熱された気体燃料を燃料消費先に供給するガスラインと、LNG燃料タンク下部の液体燃料を燃料消費先に供給することができるように案内する液体ラインと、前記液体ラインから供給される液体燃料を気体燃料に気化させる蒸発器と、前記蒸発器から供給される気体燃料を第1フリーガスラインに合流させる第2フリーガスラインと、を含み、前記第1フリーガスライン及び前記第2フリーガスライン上の配管は、前記ガスライン上の配管の断面積よりも相対的にさらに大きく形成され、前記LNG燃料タンク、前記第1フリーガスライン及び前記第2フリーガスライン上の気体燃料の圧力を同一に維持させるが、前記ガスラインの圧力より相対的にさらに大きく維持させることにより、前記LNG燃料タンクの蒸発空間と共に第1フリーガスライン及び第2フリーガスラインがバッファ機能を実行することができることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の好適な実施形態によれば、前記液体ライン上には、前記燃料タンクの圧力を一定に維持させるための圧力制御弁が設置されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の好適な実施形態によれば、前記第1フリーガスライン上には、前記ヒーターに供給される気体燃料を減圧させる減圧弁が設置され、前記減圧弁の前段には、減圧されてヒーターを通過した気体燃料の逆流を防止する逆止弁が設置されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の好適な実施形態によれば、前記熱交換器及びヒーターの熱源は、グリコール供給ラインを介して供給され、前記熱源は、燃料需要先のジャケットウォーターによって加熱される中間熱媒体であり、前記グリコール供給ライン上には電気ヒーターが設置されることにより、中間熱媒体の適正温度を維持することができることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上述したように、本発明によれば、次の効果が期待できるだろう。
本発明は、LNG推進小型船舶の燃料供給システムに最適化され、安定した燃料供給、運用の利便性及び空間集約性を全て満たすことができるものであって、従来のバッファタンクを排除することができ、LNG気化及び圧力制御のためのラインを統合させてダウンサイジングを介して燃料供給システムの占有空間を集約的に活用することができる利点と共に、製作費も減少する効果がある。
【0018】
これに加えて、本発明の他の効果は、上述した実施形態、及び本発明の請求の範囲に記載された事項だけでなく、これらから容易に推考することができる範囲内で発生しうる効果、及び産業の発展に貢献する暫定的な利点の可能性によって、より広い範囲で包摂されることを付け加える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る小型船舶用空間集約的LNG燃料供給システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。説明に先立ち、本発明の利点及び特徴と、それらを達成する方法は、添付図面と共に詳細に後述されている実施形態を参照すると明確になるだろう。そして、本明細書で使用されている用語は、実施形態を説明するためのもので、本発明を限定しようとするものではない。これらの用語のうち、単数形は、特に言及しない限り、複数形も含むものであり、説明上に方向を指す単語は、説明の理解を助けるためのもので、時点に応じて変更可能である。
【0021】
本発明の最も主な技術思想は、LNG推進小型船舶の燃料供給システムに最適化され、安定した燃料供給、運用の利便性及び空間集約性を全て満たすことができるものであって、従来のバッファタンクを排除することができ、LNG気化及び圧力制御のためのラインを統合させてダウンサイジングを介して燃料供給システムの占有空間を集約的に活用することができる小型船舶用空間集約的LNG燃料供給システムを提供するためのものである。
【0022】
次に、これを達成するための本発明に係る好適な実施形態を詳細に説明する。
【0023】
図1に示すように、本発明は、第1フリーガスライン100、ヒーター200、ガスライン300、液体ライン400、蒸発器500及び第2フリーガスライン600を含んでなる。
【0024】
第1フリーガスライン100は、LNG燃料タンク上部の蒸発空間に発生する蒸発ガス(BOG、以下「気体燃料」と表記する)を4ストローク二重燃料エンジン又はガスエンジンなどの燃料消費先に供給することができるように案内するラインである。そして、ヒーター200は、第1フリーガスライン100から供給される気体燃料を、燃料消費先で要求する適正温度に加熱し、ガスライン300は、ヒーター200から加熱された気体燃料を燃料消費先に供給するラインである。
【0025】
続いて、液体ライン400は、LNG燃料タンク下部の貯蔵されたLNG(以下、「液体燃料」と表記する)を燃料消費先へ供給することができるように案内するラインである。そして、蒸発器500は、液体ライン400から供給される液体燃料を気体燃料に気化させ、第2フリーガスライン600は、蒸発器500から供給される気体燃料を第1フリーガスライン100に合流させるラインである。
【0026】
詳しくは、第1フリーガスライン100、ヒーター200及びガスライン300は、LNG燃料タンクの蒸発空間から気体燃料をエンジンに供給するためのラインであり、液体ライン400、蒸発器500及び第2フリーガスライン600は、第1フリーガスライン100と連結されることにより、液体燃料を気化させて、エンジンへの供給と共に、蒸発空間と気体燃料が流動するラインの圧力制御によってバッファ機能を実行するラインである。
【0027】
LNG燃料タンクから約-160℃の液体燃料が自体の水頭圧で液体ライン400に供給され、液体燃料は、液体ライン400上に設置されてLNG燃料タンクの圧力を一定に維持させる圧力制御弁410(Pressure Control Valve)を経て一定の圧力及び流量で蒸発器500(PBU Vaporizer)に供給される。そして、蒸発器500を介して、液体燃料は、気化して約-130℃~50℃の低温気体燃料となって第2フリーガスライン600に供給されることにより、LNG燃料タンクの蒸発空間及びガスライン300への供給が可能となる。
【0028】
このとき、第1フリーガスライン100及び第2フリーガスライン600上の低温気体燃料の圧力を同等に保つように制御されるが、ガスライン300上の気体燃料の圧力よりも相対的にさらに大きく維持させ、第1フリーガスライン100及び第2フリーガスライン600上の配管は、ガスライン300上の配管の断面積よりも相対的にさらに大きく形成され、蒸発空間と共にバッファ機能を実行することができる。
【0029】
そして、第1フリーガスライン100を介して供給される低温の気体燃料は、ヒーター200を介して適正温度に加熱されることで、燃料消費先で要求する温度を満足させてガスライン300に供給される
【0030】
ここで、上述したように蒸発空間、第1フリーガスライン100及び第2フリーガスライン600上の低温気体燃料の圧力は同一であり、ガスライン300上の高温気体燃料の圧力よりも1bar~1.5bar程度高い圧力を保つように制御される。
【0031】
これは、ガスライン300上の圧力センサの設定値を蒸発空間、第1フリーガスライン100及び第2フリーガスライン600上の圧力よりも相対的に小さく設定し、第1フリーガスライン100上でヒーター200方向の端部に設置される減圧弁110を介して供給される気体燃料を減圧させる構成により達成できる。これと共に、第1フリーガスライン100上における減圧弁110の前段には逆止弁が設置されることにより、減圧されてヒーター200を通過した気体燃料の逆流を防止することが好ましい。
【0032】
一方、ヒーター200及び蒸発器500の熱源は、グリコール供給ライン700を介して供給される。このようなグリコール供給ライン700は、エンジンなどの燃料需要先の中間熱媒体であるエチレングリコールを適用し、中間熱媒体は、グリコール供給ライン700上のグリコールウォーターヒーターでジャケットウォーター(冷却水)によって加熱される。
【0033】
ここで、燃料需要先の負荷変動に応じて中間熱媒体の流量及び温度変化の偏差が大きく発生するが、特にエンジンの負荷が低い場合でも、中間熱媒体を適正温度に維持し難いことを勘案して、グリコール供給ライン700上でグリコールウォーターヒーターと蒸発器500との間に電気ヒーター710を設置することで中間熱媒体の適正温度を維持することができるようにする。
【0034】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱することなく、多様な修正、変更及び置換が可能である。そして、上述したように、本発明に開示された実施形態及び添付図面は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであり、これらの実施形態及び添付図面によって本発明の技術思想の範囲が限定されない。本発明の保護範囲は下記の請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内にある全ての技術思想は本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。