(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】生体情報推定用探触子及び生体情報推定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/08 20060101AFI20221021BHJP
【FI】
A61B8/08
(21)【出願番号】P 2021549031
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2020036218
(87)【国際公開番号】W WO2021060452
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2019173757
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515134863
【氏名又は名称】トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】正森 良輔
(72)【発明者】
【氏名】上杉 悠気
(72)【発明者】
【氏名】村木 洋介
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/187755(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/027508(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/199182(WO,A1)
【文献】特開平8-24259(JP,A)
【文献】特開2007-282058(JP,A)
【文献】特開2008-48276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1底壁と、前記第1底壁よりも凹んだ位置に配置された第2底壁と、前記第1底壁と前記第2底壁とを連結する側壁とを有し、前記第2底壁及び前記側壁によって凹部が形成された筐体と、
前記凹部の内部に配置され、超音波の送信及び/又は超音波の反射波の受信を行う少なくとも1つのセンサと、
少なくとも1つの前記センサを被覆するバッキング材とを備え
、
前記バッキング材は、前記第1底壁を超えない高さで形成されている生体情報推定用探触子。
【請求項2】
第1底壁と、前記第1底壁よりも凹んだ位置に配置された第2底壁と、前記第1底壁と前記第2底壁とを連結する側壁とを有し、前記第2底壁及び前記側壁によって凹部が形成された筐体と、
前記凹部の内部に配置され、超音波の送信及び/又は超音波の反射波の受信を行う少なくとも1つのセンサと、
少なくとも1つの前記センサを被覆するバッキング材とを備え、
前記少なくとも1つのセンサは、複数のセンサを含み、
前記生体情報推定用探触子を対象者の体表に装着した場合において、
前記複数のセンサは、上下方向に並設されてい
る生体情報推定用探触子。
【請求項3】
前記バッキング材は、前記凹部を少なくとも部分的に埋めることによって、少なくとも1つの前記センサを被覆する、請求項1
又は2に記載の生体情報推定用探触子。
【請求項4】
前記少なくとも1つのセンサは、超音波の送信を行う複数のセンサを含み、
前記超音波の送信を行う複数のセンサは、超音波の送信角度が互いに異なる、請求項1から
3のいずれか一項に記載の生体情報推定用探触子。
【請求項5】
第1底壁と、前記第1底壁よりも凹んだ位置に配置された第2底壁と、前記第1底壁と前記第2底壁とを連結する側壁とを有し、前記第2底壁及び前記側壁によって凹部が形成された筐体と、
前記凹部の内部に配置され、超音波の送信及び/又は超音波の反射波の受信を行う少なくとも1つのセンサと、
少なくとも1つの前記センサを被覆するバッキング材とを備え、
前記筐体は、前記側壁の内表面から内側に突出した突出部を有す
る生体情報推定用探触子。
【請求項6】
前記少なくとも1つのセンサは、所定の並設方向に並設された複数のセンサを含み、
前記突出部は、前記側壁の内表面上を前記並設方向に延びている、請求項
5に記載の生体情報推定用探触子。
【請求項7】
前記バッキング材の表面は、前記第2底壁に対して傾斜している、請求項1から
6のいずれか一項に記載の生体情報推定用探触子。
【請求項8】
前記生体情報推定用探触子は、尿量推定用探触子、蠕動運動推定用探触子、便量推定用探触子、心拍検知用探触子、呼吸検知用探触子、肺機能検知用探触子、肝臓機能検知用探触子又は骨異常検知用探触子である、請求項1から
7のいずれか一項に記載の生体情報推定用探触子。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載の生体情報推定用探触子と、
前記探触子と有線又は無線により接続される本体装置部と、を備える、生体情報推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、生体情報推定用探触子及び生体情報推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波センサを搭載した探触子を身体の膀胱に対応する位置に当て、センサから得られる情報をもとに膀胱内の尿量を推定する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、体内に超音波を送信し、該超音波の反射波を検出するセンサと、上記センサにより検出される膀胱からの反射波の有無及び/又は大きさに基づいて膀胱の尿量を推定する推定部とを備える尿量推定装置が開示されている。特許文献2には、超音波振動子による複数のセンサからなり、各センサが膀胱形状を検出できるような配列と超音波出射角度に設定されたセンサ群を有する非侵襲尿量推定センサユニットが開示されている。特許文献3には、膀胱の実質部分を包含するように体の中に少なくとも1つの超音波ビームを送信するための1または2以上のトランスデューサと、膀胱からの超音波エコー信号を受信し、上記受信信号中の上記第1の周波数の高調波成分の大きさを決定する手段と、を備える、膀胱内の尿の体積を測定する装置が開示されている。
【0003】
また、超音波センサは、尿量以外の生体情報を推定する技術にも用いられている。例えば、特許文献4には、超音波センサを通じて収集された超音波測定情報に基づいて生体情報を推定する生体情報推定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/199182号
【文献】特開2011-183142号公報
【文献】特開2009-279435号公報
【文献】特開2019-72467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超音波の反射波を利用した生体情報推定技術は種々提案されているが、推定精度の更なる向上が求められている。このため、超音波の反射波を高精度で受信可能な技術が必要とされている。
【0006】
そこで、ここに開示された技術は、超音波の反射波を精度良く受信可能な生体情報推定用探触子を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、ここに開示された生体情報推定用探触子は、第1底壁と、前記第1底壁よりも凹んだ位置に配置された第2底壁と、前記第1底壁と前記第2底壁とを連結する側壁とを有し、前記第2底壁及び前記側壁によって凹部が形成された筐体と、前記凹部の内部に配置され、超音波の送信及び/又は超音波の反射波の受信を行う少なくとも1つのセンサと、少なくとも1つの前記センサを被覆するバッキング材とを備えている。
【0008】
また、ここに開示された生体情報推定装置は、前記生体情報推定用探触子と、前記探触子と有線又は無線により接続される本体装置部とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
ここに開示された技術によれば、超音波の反射波を精度良く受信可能な生体情報推定用探触子を提供することが可能である。なお、ここに開示された技術の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】第1実施形態に係る筐体11の内部を示す平面図である。
【
図3】
図2に示す筐体11のA-A線矢視方向断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る筐体11の内部を示す斜視図である。
【
図5】
図2に示す筐体11のB-B線矢視方向断面図である。
【
図6】従来既知のバッキング材913の一例を示す断面図である。
【
図7】第2実施形態に係る筐体21の内部を示す平面図である。
【
図8】
図7に示す筐体21のA-A線矢視方向断面図である。
【
図9】
図7に示す筐体21のB-B線矢視方向断面図である。
【
図10】
図9に示す筐体21にバッキング材213を形成した状態を示す断面図である。
【
図11】生体情報推定用探触子1と本体装置部5とを備える生体情報推定装置10の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、ここに開示された技術を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、ここに開示された技術の代表的な実施形態を示したものであり、これによりここに開示された技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0012】
<1.第1実施形態>
第1実施形態に係る生体情報推定用探触子について説明する。当該探触子は、生体情報を推定するために用いられる。生体情報は、生体から得られる情報であれば特に限定されず、例えば、尿量、消化管の蠕動運動、便量、心拍、呼吸、肺機能(水のたまり具合)、肝臓機能、骨異常などが挙げられる。したがって、上記探触子は、尿量推定用探触子、蠕動運動推定用探触子、便量推定用探触子、心拍検知用探触子、呼吸検知用探触子、肺機能検知用探触子、肝臓機能検知用探触子又は骨異常検知用探触子でありうる。これらの中でも、尿量又は蠕動運動を推定する用途に好適であることから、本実施形態の生体情報推定用探触子は、好ましくは、尿量推定用探触子又は蠕動運動推定用探触子である。以下、本実施形態の探触子について、尿量推定用探触子を例に挙げて説明する。ただし、生体情報推定用探触子は尿量推定用探触子に限られるものではない。
【0013】
尿量推定用探触子は、超音波の送信及び当該超音波の反射波の受信を行うセンサを少なくとも1つ備えており、受信した反射波の情報に基づいて対象者の膀胱内の尿量を推定するために用いられる。対象者は、特に限定されないが、例えば、排尿障害もしくは尿失禁の患者、又は自力でトイレに行くことが困難な高齢者などである。尿量推定用探触子は、テープ及びベルトなどの固定手段により、対象者の腹部の皮膚上であって膀胱に対応する部分(例えば、下腹部)に固定される。尿量推定用探触子と腹部との間には、超音波の腹部への透過性を向上させるためのジェルなどが塗布されてもよい。
【0014】
(1)全体構成
尿量推定用探触子の全体構成について説明する。
【0015】
図1は、尿量推定用探触子1を示す斜視図である。
図1に示すように、尿量推定用探触子1(以下、単に「探触子1」ともいう。)は、筐体11と、蓋体12と、を備える。
【0016】
筐体11は、開口部を有する箱形の容器である。筐体11の内部には、超音波の送信及び当該超音波の反射波の受信を行う少なくとも1つのセンサが配置されている。筐体11の構成については後段で詳述する。
【0017】
蓋体12は、筐体11の開口部を覆うように筐体11に組み合わせられている。蓋体12は、探触子1と、後述する本体装置部と、を接続するために用いられるケーブルを挿入するための挿入口121を備えていてもよい。蓋体12は、その表面に、探触子1を対象者の腹部に装着する際の探触子1の向きを示す矢印122を備えていてもよい。
【0018】
(2)筐体
筐体の構成について説明する。
【0019】
図2は、第1実施形態に係る筐体11の内部を示す平面図である。
図3は、
図2に示す筐体11のA-A線矢視方向断面図である。
【0020】
図3に示すように、筐体11は、底面部(以下、第2底壁という)111aと側面部(以下、側壁という)111bとを有する凹部111と、側壁111bから外側に突き出して設けられた段差部(以下、第1底壁)112と、を備える。すなわち、筐体11は、第1底壁112と、第1底壁112よりも凹んだ位置に配置された第2底壁111aと、第1底壁112と第2底壁111aとを連結する側壁111bとを有し、第2底壁111a及び側壁111bによって凹部111が形成されている。上述したセンサ13は、筐体11の凹部111の内部に配置されている。
図3に示す第1底壁112、112は、それぞれ、筐体11の左右方向に突き出して設けられている。ここで、筐体11の左右方向とは、尿量推定用探触子が対象者の体表に装着されたときの左右方向を意味する。
【0021】
尿量推定用探触子を対象者の体表に装着した場合において、凹部111と第1底壁112の外側表面が、対象者の体表への接触面となる。接触面を平坦とせずに
図3に示すような第1底壁112を備える形状とすることで、探触子の単位面積あたりの体表への力を高めることができる。これにより、筐体11の体表への密着性を向上させることができる。
【0022】
(3)センサ
筐体の内部に配置されるセンサについて説明する。
【0023】
図4は、第1実施形態に係る筐体11の内部を示す斜視図である。
図2及び4に示すように、筐体11の内部にセンサ13が設けられている。センサ13は、圧電素子を有しており、超音波の送信及び当該超音波の反射波の受信を行う。圧電素子は、駆動電圧に応じて振動し超音波を発生させる一方で、超音波を受信するとその振動に応じた電気信号を発生させる。
【0024】
センサ13の形状は、特に限定されず、例えば円板状、矩形板状など任意の形状でありうる。
【0025】
センサ13の数は、特に限定されず、少なくとも1つであればよく、複数であってもよい。
図2及び4では、一例として、センサ13が4つ配置された筐体11を示している。詳細には、
図2及び4では、第1センサ13A、第2センサ13B、第3センサ13C及び第4センサ13Dが配置された筐体11を示している。センサ13の数が複数であると、対象者の生体情報をより広範囲で取得することが可能となる。尚、第1センサ13A、第2センサ13B、第3センサ13C及び第4センサ14Dのそれぞれを区別しない場合には、単に「センサ13」と称する。各センサ13は、一の表面を第2底壁111aの内表面と直接的に又は接着剤等を介して間接的に接触するようにして、第2底壁111a上に配置されている。
【0026】
複数のセンサ13は、所定の並設方向に並設されている。例えば、複数のセンサ13は、筐体11の上下方向における異なる位置に配置されていることが好ましい。ここで、筐体11の上下方向とは、尿量推定用探触子が対象者の体表に装着されたときの上下方向を意味する。つまり、上記複数のセンサ13は、尿量推定用探触子を対象者の体表に装着した場合において、上下方向に並設されていることが好ましい。
図2及び4に示す筐体11においては、下から、第1センサ13A、第2センサ13B、第3センサ13C、第4センサ13Dの順で配置されている。複数のセンサ13をこのような配置とすることで、超音波の送信範囲を上下方向に拡大させ、対象者の生体情報を上下方向に広く取得することが可能となる。
【0027】
一般的に、膀胱は、蓄尿量の増加に伴って三次元に膨張し、特に上下方向に大きく膨張する。上述のように複数のセンサが上下方向に並設された構成は、上下方向に膨張する膀胱をより正確に検出するために好適である。上記構成により、膀胱内の尿量の推定精度を向上させることが可能である。
【0028】
上記複数のセンサ13の超音波の送信角度は、全て同一でもよく、一部が同一でもよく、全てが互いに異なっていてもよい。対象者の生体情報をより広範囲に取得する観点からは、複数のセンサ13は、超音波の送信角度が互いに異なることが好ましい。膀胱を検出する場合など、生体情報を上下方向に広く検出したい場合には、複数のセンサ13は、上下方向における超音波の送信角度が互いに異なることが好ましい。
【0029】
(4)バッキング材
センサ13を被覆するバッキング材について説明する。
【0030】
図5は、
図2に示す筐体11のB-B線矢視方向断面図である。
図5に示すように、本実施形態の尿量推定用探触子は、筐体11の内部に、センサ13A~13Dを被覆するバッキング材113を備える。なお、上述した
図2~4では、バッキング材の図示を省略している。
【0031】
本明細書において、「センサの表面を被覆するバッキング材」とは、センサの表面を全て覆い尽くすように設けられたバッキング材であることを意味する。
【0032】
バッキング材113は、センサ13を完全に覆うように、凹部111を埋めている。この例では、バッキング材113は、凹部111のうち第2底壁11aから部分的に充填されている。センサ13は、超音波の送信と超音波の反射波の受信とを担う。センサ13は、超音波送信時に振動するが、余分な振動が大きいと超音波の受信精度が低下する場合がある。
図5に示すバッキング材113は、センサ13の余分な振動を抑えるために設けられている。これにより、超音波の反射波を精度良く受信することができる。
【0033】
図6は、従来既知のバッキング材913の一例を示す断面図である。
図6に示すように、センサ93の上部表面93aのみにバッキング材913を設ける構成は、従来既知である。上記構成においては、センサ93の側部表面93b、93bにバッキング材が設けられておらず、側面方向への振動を抑制することができない。このため、
図6に示すセンサ93は、超音波の反射波の受信精度が劣る場合がある。これに対して、本実施形態では、
図5に示すように、センサ13の上部表面だけではなく側部表面も覆い尽くすようにバッキング材113が設けられているため、従来よりも超音波の反射波の受信精度を向上させることが可能である。
【0034】
図5に示すバッキング材113の形成方法は、特に限定されないが、原料を筐体11の内部に流し込みその後硬化させることにより形成されることが好ましい。
【0035】
従来既知の
図6に示す構成において、センサ93が複数存在する場合、バッキング材913をセンサ93ごとに1つずつ形成する必要があるため、バッキング材913の形成に手間と時間がかかる。これに対して、
図5に示すバッキング材113は、原料を流し込むことにより形成可能であるため、センサが複数存在する場合であっても容易に形成可能である。
【0036】
流し込んだ原料を硬化させることでバッキング材113を形成する場合、
図5に示すように、バッキング材113の表面が筐体11の第2底壁111aに対して水平になるようにバッキング材113を形成することができる。
【0037】
バッキング材113を形成する際には、第1底壁112(
図3参照)を高さの目安として、第1底壁112を超えないように原料を流し込んでもよい。つまり、バッキング材113は、第1底壁112を超えない高さで形成されていてもよい。これにより、バッキング材113の入れ過ぎを防止することができる。
【0038】
図5に示すバッキング材113は、センサ13A~13Dの全ての表面を被覆するように形成されている。ここで、センサ13の全ての表面とは、センサ13の表面のうち外側に露出する(即ち、バッキング材113で被覆することが可能な)全ての表面を意味する。詳しくは、センサ13の一の表面は、第2底壁111aの内表面と接触している。そのため、センサ13の、該一の表面を除く全ての表面をバッキング材113が被覆している。尚、バッキング材113は、全てのセンサ13の表面を被覆しなくてもよく、少なくとも1つのセンサ13の表面を被覆すればよい。バッキング材によって表面を被覆されないセンサは、被覆されたセンサと比較して出力が高くなる。このため、例えば、体格が大きい対象者向けの探触子の場合には、バッキング材によって被覆されないセンサを備える構成とし、高いセンサ出力を確保してもよい。
【0039】
バッキング材113の原料は、センサ13の余分な振動を抑制可能であれば特に限定されない。筐体11の内部に原料を流し込みその後硬化させることによりバッキング材113を形成する場合は、流し込み時は低粘度性を有し、硬化後は高密度且つ高硬度となる原料を用いることが好ましい。このような原料としては、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、二液混合型樹脂などが挙げられる。
【0040】
本実施形態では、前述のとおり、センサとして超音波の送信及び当該超音波の受信を行うセンサ(超音波送受信用センサ)を例示した。しかしながら、本実施形態で用いられるセンサはこれに限定されない。当該センサは、例えば、超音波の送信のみを行うセンサ(超音波送信用センサ)又は超音波の反射波の受信のみを行うセンサ(超音波受信用センサ)であってもよい。つまり、上記センサは、超音波送受信用センサ、超音波送信用センサ及び超音波受信用センサからなる群より選択される少なくとも1つでありうる。
【0041】
超音波の送信及び当該超音波の反射波の受信を1つのセンサが行う場合、筐体の凹部の内部には、少なくとも1つの超音波送受信用センサが配置されていればよい。超音波の送信と超音波の反射波の受信とを別々のセンサが行う場合、筐体11の凹部の内部には、少なくとも1つの超音波送信用センサと、少なくとも1つの超音波受信用センサと、が配置されていればよい。
【0042】
すなわち、本実施形態の生体情報推定用探触子において、筐体の凹部の内部に配置された少なくとも1つのセンサは、超音波の送信及び当該超音波の反射波の受信を1つのセンサが行う場合においては超音波送受信用センサであり、超音波の送信と超音波の反射波の受信とを別々のセンサが行う場合においては超音波送信用センサ又は超音波受信用センサである。
【0043】
<2.第2実施形態>
第2実施形態に係る生体情報推定用探触子について説明する。
【0044】
図7は、第2実施形態に係る筐体21の内部を示す平面図である。
図8は、
図7に示す筐体21のA-A線矢視方向断面図である。
図9は、
図7に示す筐体21のB-B線矢視方向断面図である。第2実施形態は、筐体21が、側壁211bの内表面上に内側に突出した突出部214を備える点で、第1実施形態と相違する。以下、
図7~9を参照して第1実施形態と異なる点を中心に説明し、共通する点については一部説明を省略する。
【0045】
第2実施形態の筐体21は、第2底壁211aと側壁211bとを有する凹部211と、側壁211bから外側に突き出して設けられた第1底壁212、212と、を備える。すなわち、筐体21は、第1底壁212と、第1底壁212よりも凹んだ位置に配置された第2底壁211aと、第1底壁212と第2底壁211aとを連結する側壁211bとを有し、第2底壁211a及び側壁211bによって凹部211が形成されている。筐体21の凹部211の内部には、4つのセンサ13A~13Dが上下方向に並設されている。
【0046】
筐体21は、側壁211bの内表面上に、筐体21の内側に突出した突出部214を備える。
図9に示すように、突出部214は、第1センサ13A側すなわち筐体21の下側が高く、第4センサ13D側すなわち筐体21の上側が低くなるように傾斜している。
【0047】
突出部214は、
図7及び9に示すように、側壁211bの上下方向、即ち、複数のセンサ13の並設方向に沿って設けられることが好ましい。これにより、凹部211の高さ方向(即ち、深さ方向)において突出部214を越えない範囲で且つ並設方向に並んだ複数のセンサ13を被覆するようにバッキング材213を設けることが容易となる。また、突出部214は、
図8に示すように、第1底壁212よりも低い位置、すなわち第1底壁212と第2底壁211aとの間に設けられることが好ましい。これにより、凹部211の高さ方向においてバッキング材213を第1底壁212を越えない高さまで設けることが容易となる。
【0048】
図10は、
図9に示す筐体21にバッキング材213を形成した状態を示す断面図である。
図10に示すバッキング材213は、センサ13A~13Dの表面を被覆する点では第1実施形態のバッキング材113(
図5参照)と同様である。しかしながら、バッキング材213は、第2底壁211aから突出部214まで設けられている。それに加えて、バッキング材213の表面は第2底壁211aに対して傾斜している。
図10に示すセンサ13A~13Dのように複数のセンサの表面に高低差がある場合、バッキング材213の表面を第2底壁211aに対して傾斜させることで、表面を水平、即ち、第2底壁211aに対して略平行にする場合よりもバッキング材を減量できる。これにより、バッキング材のコスト削減、並びに、筐体21の軽量化及び小型化を図ることが可能である。
【0049】
バッキング材213は、筐体21の内部に突出部214の高さまで原料を流し込みその後硬化させることにより形成される。つまり、バッキング材213は、突出部214を超えない高さで形成されている。このように突出部214を備える構成とすることで、バッキング材213の原料を流し込む際の高さの目安を設けることができる。また、突出部214を備えることで、バッキング材213の原料を適量よりも多少入れ過ぎた場合であっても、突出部214に発生する表面張力により上記原料が溢れ出すのを防止することができる。また、突出部214を設けることによって、第2底壁211aからのバッキング材213の高さを制限することによって、第1側壁212へのバッキング材213の流入を防止することができる。その結果、第1側壁212上にスペースを確保することができる。例えば、このスペースに、各センサ13の配線及び各センサ13を動作させるための基板等を配置することができる。
【0050】
なお、第1実施形態で説明したように、第2実施形態のバッキング材213も、全てのセンサ13の表面を被覆しなくてもよく、少なくとも1つのセンサ13の表面を被覆すればよい。バッキング材によって表面を被覆されないセンサは、被覆されたセンサと比較して出力が高くなる。このため、例えば、体格が大きい対象者向けの探触子の場合には、バッキング材によって被覆されないセンサを備える構成とし、高いセンサ出力を確保してもよい。
【0051】
なお、
図9に示す突出部214は、第2底壁211aに対して傾斜して設けられているが、突出部214の形状はこれに限定されない。例えば、突出部214は、第2底壁211aに対して略平行に設けられてもよい。その場合、バッキング材213の表面が第2底壁211aに対して略平行になり得る。
【0052】
<3.第3実施形態>
第3実施形態に係る生体情報推定装置について説明する。
【0053】
本実施形態の生体情報推定装置は、上記生体情報推定用探触子と、当該探触子と有線又は無線により接続される本体装置部と、を備える。
【0054】
図11は、生体情報推定用探触子1と本体装置部5とを備える生体情報推定装置10の構成を示すブロック図である。
【0055】
本実施形態に係る本体装置部5は、センサ13(センサ13A~13D)へ駆動電圧を出力する送信部51と、センサ13から電気信号を受信する受信部52と、送信部51及び受信部52に接続されるセンサ13を切り替えるスイッチ53と、外部に種々の情報を報知するための報知部54と、外部との通信を行う通信部55と、各種データを記憶する記憶部56と、本体装置部5の全体的な制御を行う制御部57と、各種パラメータを格納するメモリ58と、を有している。
【0056】
送信部51は、センサ13に駆動電圧を供給する。送信部51は、パルス発生器51aと増幅部51bとを有している。パルス発生器51aは、所定のパルス幅及び電圧値のパルス信号を発生させる。パルス発生器51aは、パルス幅、パルス数、及び周波数を変更可能に構成されていてもよい。増幅部51bは、パルス発生器51aからのパルス信号を増幅し、駆動電圧としてセンサ13へ出力する。
【0057】
受信部52は、センサ13からの電気信号を受信する。受信部52は、増幅部52aと、検波部52bと、A/D変換部52cとを有している。増幅部52aは、センサ13からの受信信号を増幅して、検波部52bへ出力する。検波部52bは、増幅部52aから受け取った受信信号(例えば、振幅変調波)を、包絡線検波等の方法で復調し、処理後の信号をA/D変換部52cへ出力する。A/D変換部52cは、検波部52bからの受信信号をA/D変換して、制御部57へ出力する。
【0058】
スイッチ53は、センサ13A~13Dの中から送信部51及び受信部52に接続されるセンサを選択する。
【0059】
報知部54は、例えばバイブレータやLEDランプ、アラーム等である。バイブレータの振動や、LEDランプの点灯態様、アラームの音等によって、対象者に種々の情報(例えば、膀胱に対する探触子の位置や、排尿タイミングの到来等)を報知する。
【0060】
通信部55は、外部の通信装置と通信を行う。例えば、通信部55は、Bluetooth(登録商標)規格の通信を行う。
【0061】
記憶部56は、受信部52から受け取った受信信号を一時的に保存する。
【0062】
制御部57は、1又は複数のプロセッサを有し、送信部51、受信部52、スイッチ53、報知部54、通信部55を制御する。
【0063】
具体的には、制御部57は、スイッチ53を制御して、送信部51及び受信部52に接続されるセンサ13を切り替える。制御部57は、送信部51を制御して、駆動電圧をセンサ13へ出力させる。また、制御部57は、受信部52を制御して、センサ13の受信信号をデジタル信号に変換させ、受信部52からの受信信号に平均化処理等の信号処理を行う。さらに、制御部57は、受信部52からの受信信号に基づいて膀胱に対する探触子1の位置や、膀胱内の尿量、排尿タイミングの到来等を判定し、その解析結果に応じた処理を行う(例えば、報知部54を作動させる)。また、制御部57は、通信部55を制御して、受信部52からの受信信号に関する情報を外部に送信する。また、制御部57は、通信部55を介して外部からの信号を受信し、その信号に応じた処理を行う(例えば、報知部54を作動させる)。
【0064】
メモリ58は、超音波の周波数、出力、パルス数、ゲイン(増幅率)、待機時間等のパラメータを格納する。
【0065】
図11では、探触子1と本体装置部5とが物理的に分離された構成例を示している。しかしながら、探触子1及び本体装置部5の構成はこれに限定されず、両者は一体的に構成されてもよい。
【0066】
以上の実施形態をまとめると、ここに開示された技術は、
底面部と側面部とを有する凹部と、前記側面部から外側に突き出して設けられた段差部と、を備える筐体と、
前記凹部の内部に配置され、超音波の送信及び/又は超音波の反射波の受信を行う少なくとも1つのセンサと、
少なくとも1つの前記センサの表面を被覆するバッキング材と、を備える、生体情報推定用探触子を提供する。
【0067】
前記バッキング材は、前記段差部の表面を超えない高さで形成されていてもよい。
【0068】
前記生体情報推定用探触子は、複数の前記センサを備え、前記探触子を対象者の体表に装着した場合において、前記複数のセンサは、上下方向に並設されていてもよい。
【0069】
前記生体情報推定用探触子は、超音波の送信を行うセンサを複数備える場合、前記超音波の送信を行うセンサは、超音波の送信角度が互いに異なっていてもよい。
【0070】
前記筐体は、前記側面部の内部表面上に、内側に突起した突起部を備えてもよい。
【0071】
前記バッキング材は、表面が前記底面部に対して傾斜していてもよい。
【0072】
前記生体情報推定用探触子は、尿量推定用探触子、蠕動運動推定用探触子、心拍検知用探触子、呼吸検知用探触子、肺機能検知用探触子、肝臓機能検知用探触子又は骨異常検知用探触子であってもよい。
【0073】
また、ここに開示された技術は、前記生体情報推定用探触子と、前記探触子と有線又は無線により接続される本体装置部と、を備える、生体情報推定装置を提供する。
【0074】
ここに開示された技術によれば、超音波の反射波を精度良く受信可能な生体情報推定用探触子を提供することが可能である。なお、ここに開示された技術の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【実施例】
【0075】
以下、実施例に基づいてここに開示された技術について更に説明する。
【0076】
生体情報推定用探触子がバッキング材を備える場合と備えない場合とで、超音波の反射波の受信精度に与える影響を比較する試験を行った。実施例として第1実施形態の生体情報推定用探触子を用い、比較例としてバッキング材を備えない生体情報推定用探触子を用いて、超音波の反射波を受信した。実施例の結果を
図12に、比較例の結果を
図13に示す。
【0077】
図12及び13において、横軸目盛20~100の間に表されている波形はノイズを示している。
図12に示す実施例では、
図13に示す比較例と比較してノイズが低減されていた。横軸目盛110付近に表されている信号は、ターゲットである反射波の信号である。
図12に示す実施例では、
図13に示す比較例と比較して反射波の信号が小さくなっていたが、ノイズが低減された分、SN比は比較例よりも向上していた。これらの結果から、バッキング材を備える構成とすることで、超音波の反射波の受信精度を向できることが確認された。
【符号の説明】
【0078】
1 尿量推定用探触子
11,21 筐体
12 蓋体
13 センサ
111,211 凹部
111a,211a 第2底壁
111b,211b 側壁
112,212 第1底壁
113,213 バッキング材
214 突出部