(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 9/04 20060101AFI20221021BHJP
A46B 13/08 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
A46B9/04
A46B13/08
(21)【出願番号】P 2016102298
(22)【出願日】2016-05-23
【審査請求日】2019-02-26
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】木本 雄也
(72)【発明者】
【氏名】阿部 徹弥
(72)【発明者】
【氏名】高橋 純
【合議体】
【審判長】佐々木 芳枝
【審判官】関口 哲生
【審判官】柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-34845(JP,A)
【文献】特開2013-42776(JP,A)
【文献】特開2012-217692(JP,A)
【文献】特開2016-13240(JP,A)
【文献】国際公開第2015/056528(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にヘッド部が設けられたハンドル体を備え、前記ヘッド部の植毛面に形成された複数の植毛穴に用毛の毛束が植設された歯ブラシにおいて、
前記植毛面は、前記ハンドル体の軸線方向に並設され前記軸線と直交する幅方向の略中央に複数の内側毛束が植毛された内側植毛領域と、
前記幅方向で前記内側毛束を挟んで複数の外側毛束が植毛された外側植毛領域とを有し、
前記外側植毛領域は、第一の外側毛束群が設けられた領域を示す第一の外側植毛領域と、第二の外側毛束群が設けられた領域を示す第二の外側植毛領域とを有し、
前記第一の外側毛束群と前記第二の外側毛束群とは、それぞれが前記幅方向に2列以上の前記外側毛束を有し、
前記幅方向における前記複数の内側毛束および前記複数の外側毛束が植毛された全植毛領域の最大長さは、12.0mm以上、16.0mm以下であり、
前記ヘッド部の前記幅方向における前記第一の外側植毛領域の最大長さと、前記幅方向における前記第二の外側植毛領域の最大長さの和は、6.5mm以上、9.5mm以下であり、
前記幅方向における前記内側植毛領域の最大長さは、4.0mm以上、5.5mm以下であり、
前記外側毛束の毛束径は、1.4mm以上、1.8mm未満であり、
前記内側毛束の毛束径は、1.0mm以上、1.4mm以下であり、
前記複数の外側毛束を構成する用毛の総本数を前記外側植毛領域の面積で除した値を外側植毛密度とし、
前記複数の内側毛束を構成する用毛の総本数を前記内側植毛領域の面積で除した値を内側植毛密度とし、
外側植毛密度/内側植毛密度で表される植毛密度比が、1.4以上、
1.59以下であることを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記内側毛束は、前記植毛面上の長さが、前記外側毛束の前記植毛面上の長さより長いことを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記内側毛束及び前記外側毛束の少なくともいずれか一方には、毛先に向かって漸次その径が小さくなる用毛が含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記内側毛束及び前記外側毛束は、それぞれ前記軸線方向で隣り合う毛束同士の位置が前記幅方向にずれた千鳥状に配置されており、
前記幅方向における前記全植毛領域の最大長さは、12.0mm以上、15.0mm以下であり、
前記ヘッド部の前記幅方向における前記第一の外側植毛領域の最大長さと、前記幅方向における前記第二の外側植毛領域の最大長さの和は、7.0mm以上、9.5mm以下であり、
前記複数の外側毛束を構成する用毛の総本数を前記外側植毛領域の面積で除した値を外側植毛密度とし、前記複数の内側毛束を構成する用毛の総本数を前記内側植毛領域の面積で除した値を内側植毛密度とし、
外側植毛密度/内側植毛密度で表される植毛密度比が、1.4以上、
1.59以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記第一の外側毛束群と前記第二の外側毛束群とは、それぞれが前記軸線方向に間隔をあけて並ぶ複数の前記外側毛束を含む列を有し、
前記列同士で前記軸線方向の位置が同一である前記外側毛束を含む列を前記幅方向に2列以上有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯周病予防を重視する生活者に対しては、できるだけ歯茎を傷つけない優しい当たり心地を有し、かつ歯頸部の清掃力が高い歯ブラシが好ましい。さらに、近年「歯茎に優しいマッサージ感」も生活者が重要視していることが明らかになった。しかし、従来の歯周病予防歯ブラシはコンパクトヘッドが中心であり、通常のブラッシングでは歯茎に当たる毛の量が少ないため十分なマッサージ効果が得られない。そこで、広範囲の歯ぐきに毛束が当たり、かつ高い歯頸部清掃力を有する歯ブラシが求められている。
【0003】
従来、優しい当たり心地と歯頸部清掃力を両立するための技術として、外側部が大きな穴径で、且つ高植毛密度であり、外側と内側の植毛密度比が非常に大きい歯ブラシ(特許文献1参照)や、非常に細い毛束で外周植毛領域が構成された歯ブラシ(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-034845号公報
【文献】特開2011-103952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
広範囲の歯茎に毛束が当たるためには、ヘッドをワイドサイズにする必要があるが、特許文献1に記載された歯ブラシは植毛部の外側が太い毛束で構成されているため、ワイドサイズにすると、毛束の干渉が大きく毛が撓まなくなる。従って、毛先のみが歯茎に触れることになり効率の良いマッサージが難しくなる。また、穴径の大きな植毛穴に毛束を植毛した場合、毛束の先がペンシル状(山形状)になるため歯茎に触れる毛が少なくなりマッサージの非効率化に繋がる。
【0006】
一方、特許文献2に記載された歯ブラシは、外周植毛領域が非常に小さい毛束で構成されているため撓みやすく、歯周ポケット清掃性に寄与する中央植毛領域の毛束のしなりを抑制できず毛先剛性が確保できないという問題がある。また、特許文献2に記載された歯ブラシは、外周植毛領域に対して中央植毛領域の比率が小さく、歯と歯茎を同時にブラッシングする時の歯頸部の清掃力が乏しいという問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、広範囲の歯ぐきに優しいマッサージ感を有しながら、歯頸部の高い清掃性を確保した歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に従えば、先端にヘッド部が設けられたハンドル体を備え、前記ヘッド部の植毛面に形成された複数の植毛穴に用毛の毛束が植設された歯ブラシにおいて、前記植毛面は、前記ハンドル体の軸線方向に並設され前記軸線と直交する幅方向の略中央に複数の内側毛束が植毛された内側植毛領域と、前記幅方向で前記内側毛束を挟んで複数の外側毛束が植毛された外側植毛領域とを有し、前記幅方向における前記複数の内側毛束および前記複数の外側毛束が植毛された全植毛領域の最大長さは、12.0mm以上、16.0mm以下であり、前記幅方向における前記外側植毛領域の最大長さは、6.5mm以上、9.5mm以下であり、前記幅方向における前記内側植毛領域の最大長さは、4.0mm以上、5.5mm以下であり、前記外側毛束の毛束径は、1.4mm以上、1.8mm以下であり、前記内側毛束の毛束径は、1.0mm以上、1.4mm以下である歯ブラシが提供される。
【0009】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記複数の外側毛束を構成する用毛の総本数を前記外側植毛領域の面積で除した値を外側植毛密度とし、前記複数の内側毛束を構成する用毛の総本数を前記内側植毛領域の面積で除した値を内側植毛密度とし、外側植毛密度/内側植毛密度で表される植毛密度比が、1.4以上、2.5以下であることを特徴とする。
【0010】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記内側毛束は、前記植毛面上の長さが、前記外側毛束の前記植毛面上の長さより長いことを特徴とする。
【0011】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記内側毛束及び前記外側毛束の少なくともいずれか一方には、毛先に向かって漸次その径が小さくなる用毛が含まれることを特徴とする。
【0012】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記内側毛束及び前記外側毛束は、それぞれ前記軸線方向で隣り合う毛束同士の位置が前記幅方向にずれた千鳥状に配置されており、前記幅方向における前記全植毛領域の最大長さは、12.0mm以上、15.0mm以下であり、前記幅方向における前記外側植毛領域の最大長さは、7.0mm以上、9.5mm以下であり、前記複数の外側毛束を構成する用毛の総本数を前記外側植毛領域の面積で除した値を外側植毛密度とし、前記複数の内側毛束を構成する用毛の総本数を前記内側植毛領域の面積で除した値を内側植毛密度とし、外側植毛密度/内側植毛密度で表される植毛密度比が、1.4以上、2.0以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、広範囲の歯ぐきに優しいマッサージ感を有しながら、歯頸部の高い清掃性を確保した歯ブラシを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる歯ブラシのヘッド部を示す平面図である。
【
図2】
図1に示した歯ブラシ1のヘッド部の左側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかる歯ブラシのヘッド部を示す平面図である。
【
図4】実施例及び比較例の仕様と評価を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の歯ブラシの実施の形態を、
図1ないし
図4を参照して説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0016】
本発明の歯ブラシについて、以下に図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる歯ブラシ1のヘッド部を示す平面図であり、
図2は、
図1に示した歯ブラシ1のヘッド部の左側面図である。
【0017】
図1に示すように、歯ブラシ1は、ハンドル体2を備えるものであり、ハンドル体2は、長尺状の把持部(不図示)と、該把持部の先端に設けられたヘッド部4とで概略構成されるものである。
図1中、符号Oは、ハンドル体2の軸線、即ち、ハンドル体2の長さ方向で、且つ、ハンドル体2の中心を通る線である。
【0018】
ヘッド部4は、軸線O方向を長手とする平面視略矩形状とされ、任意の面が、毛束を植毛する植毛面5とされたものである。植毛面5には、軸線O上及び軸線Oに沿って、
図1では有底円筒状の複数(
図1では、一例として27個)の内側植毛穴10が形成されている。複数の内側植毛穴10は、軸線O方向で隣り合う内側植毛穴10同士の位置が軸線O方向と直交する方向であるヘッド部4の幅方向にずれた千鳥状に配置されている。複数の内側植毛穴10には、複数の内側用毛13を略円柱状に束ねた内側毛束12がそれぞれ植設されて内側毛束群14が構成されている。従って、複数の内側毛束12は、軸線方向で隣り合う内側毛束12同士の位置がヘッド部4の幅方向にずれた千鳥状に配置されている。
【0019】
また、植毛面5には、その幅方向で内側植毛穴10を挟み、軸線Oに沿って有底円筒状の複数(
図1では、一例として30個)の外側植毛穴20が形成され、この外側植毛穴20に複数の外側用毛23を略円柱状に束ねた外側毛束22が植設されている。そして、植毛面5には、ヘッド部4の側縁6に沿って設けられた15個の外側毛束22により、第一の外側毛束群24aが構成され、ヘッド部4の側縁7に沿って設けられた15個の外側毛束22により第二の外側毛束群24bが構成されている。複数の外側植毛穴20は、軸線O方向で隣り合う外側植毛穴20同士の位置がヘッド部4の幅方向にずれた千鳥状に配置されている。従って、複数の外側毛束22は、軸線O方向で隣り合う外側毛束22同士の位置がヘッド部4の幅方向にずれた千鳥状に配置されている。内側毛束12の植毛面5上の長さである毛丈t1は、外側毛束22の植毛面5上の長さである毛丈t2よりも長く形成されている。
【0020】
植毛面5には、内側毛束群14が設けられた領域を示す内側植毛領域11が形成されている。内側植毛領域11は、内側毛束群14の最外周に位置する内側毛束12が植設された内側植毛穴10の外縁を結ぶ環状線で囲われた領域である。なお、この環状線は、隣接する内側植毛穴10同士の共通接線を構成する。
【0021】
植毛面5には、第一の外側毛束群24aが設けられた領域を示す第一の外側植毛領域21aが形成されている。第一の外側植毛領域21aは、第一の外側毛束群24aを構成する外側毛束22が植設された外側植毛穴20の外縁を結ぶ環状線で囲われた領域である。なお、この環状線は、第一の外側毛束群24a内で隣接する外側植毛穴20同士の共通接線を構成する。
【0022】
また、植毛面5には、第二の外側毛束群24bが設けられた領域を示す第二の外側植毛領域21bが形成されている。第二の外側植毛領域21bは、第二の外側毛束群24bを構成する外側毛束22が植設された外側植毛穴20の外縁を結ぶ環状線で囲われた領域である。なお、この環状線は、第二の外側毛束群24b内で隣接する外側植毛穴20同士の共通接線を構成する。第一の外側植毛領域21a及び第二の外側植毛領域21bによって、ヘッド部4の幅方向で内側毛束12を挟んで複数の外側毛束22が植毛された外側植毛領域21を構成する。
【0023】
ハンドル体2の材質は、歯ブラシ1に求める剛性や機械特性等を勘案して決定でき、例えば、曲げ弾性率(JIS K7203)が500~3000MPaの範囲にある高硬度樹脂を用いることによって、歯ブラシ1に必要とされる機械特性が得られる。このような高硬度樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、セルロースプロピオネート(CP)、ポリアリレート、ポリカーボネート、アクリロニトリルスチレン(AS)等が挙げられ、これらを1種又は複数種用いることができる。
【0024】
ヘッド部4の大きさは、ヘッド部4の幅方向における内側植毛領域11及び外側植毛領域21の最大長さや、口腔内での操作性等を勘案して決定でき、例えば、幅(最大幅)Wが14mm以上とされ、例えば、14~18mmとされ、厚さTが4~8mmとされる。
【0025】
内側植毛領域11および外側植毛領域21を含む全植毛領域のヘッド部4の幅方向における最大長さLは、12.0mm以上、16.0mm以下であることが好ましい。全植毛領域の最大長さLが12.0mm未満であれば、十分なマッサージ効果が得られない可能性がある。全植毛領域の最大長さLが16.0mm超であると、ヘッド部4を口腔内に進入させる際の抵抗が大きくなり操作性が低下する可能性がある。
【0026】
また、
図1に示す歯ブラシ1のように、内側毛束12及び外側毛束22がそれぞれ千鳥状に配置されている場合には、内側植毛領域11および外側植毛領域21を含む全植毛領域のヘッド部4の幅方向における最大長さLは、12.0mm以上、15.0mm以下であることがさらに好ましい。内側毛束12及び外側毛束22がそれぞれ千鳥状に配置されている場合には、内側毛束12及び外側毛束22をそれぞれヘッド部4に高密度に設けることができるため、最大長さが15.0mm以下であっても歯茎へのマッサージ効果、及び歯頸部に対する良好な清掃性を確保することができる。
【0027】
ヘッド部4の幅方向における内側植毛領域11の最大長さは、4.0mm以上、5.5mm以下であることが好ましい。幅方向における内側植毛領域11の最大長さが、4.0mm未満であれば歯頸部に対する良好な清掃性が十分に得られなくなるとともに、ヘッド部4を歯頸部に進入させる際の実感が希薄になる可能性がある。幅方向における内側植毛領域11の最大長さが、5.5mm超であると、外側毛束22の長さが確保しづらくなり、歯茎へのマッサージ効果が十分に確保できない可能性がある。
【0028】
ヘッド部4の幅方向における外側植毛領域21の最大長さ、すなわち、 ヘッド部4の幅方向における第一の外側植毛領域21aの最大長さと、第二の外側植毛領域21bの最大長さとの和は、6.5mm以上、9.5mm以下であることが好ましい。幅方向における外側植毛領域21の最大長さが6.5mm未満であれば歯茎へのマッサージ効果、歯頸部への良好な清掃性が十分に確保できない可能性がある。幅方向における外側植毛領域21の最大長さが9.5mm超であると、外側毛束22の歯茎への当たりが強くなり優しい当たりが損なわれる可能性がある。
【0029】
また、内側毛束12及び外側毛束22がそれぞれ千鳥状に配置されている場合には、ヘッド部4の幅方向における外側植毛領域21の最大長さは、7.0mm以上、9.5mm以下であることが好ましい。内側毛束12及び外側毛束22がそれぞれ千鳥状に配置されている場合には、内側毛束12及び外側毛束22をそれぞれヘッド部4に高密度に設けることができるため、外側植毛領域21の最大長さを7.0mm以上設けることができ、歯茎へのマッサージ効果、及び歯頸部に対する良好な清掃性を向上させることができる。
【0030】
内側植毛穴10の直径D1は、内側毛束12の直径、即ち、内側毛束12の長さ方向に直交する断面の直径に応じて決定でき、例えば、1.0~1.4mmとされる。本実施形態においては、全ての内側植毛穴10の直径D1が略同等とされている。略同等とは、全ての直径D1が±5%の範囲に含まれていることをいう。
【0031】
また、外側植毛穴20の直径D2は、外側毛束22の直径に応じて決定でき、例えば、1.4~1.8mmとされる。本実施形態においては、全ての外側植毛穴20の直径D2が略同等とされている。略同等とは、全ての直径D2が±5%の範囲に含まれていることをいう。
【0032】
内側毛束12の毛丈t1は、内側用毛13の材質、太さ等を勘案して決定でき、例えば、6~15mmとされる。内側毛束12の毛束径d1、即ち、内側毛束12の長さ方向に直交する断面の直径は、1.0mm以上、1.4mm以下が好ましい。内側毛束12の毛束径d1が1.0mm未満であると、内側毛束12としての毛腰が低くなりすぎて、歯頸部の清掃性が低くなるとともに、ヘッド部4を歯頸部に進入させる際の実感が希薄になる。内側毛束12の毛束径d1が1.4mm超であると、内側毛束12の先端部が歯周ポケットや歯間部等の微細部分へ進入しにくくなって清掃性が低下するとともに、ヘッド部4を歯頸部に進入させる際の当たりが強すぎることになる。内側毛束12の毛束径d1が1.0mm以上、1.4mm以下であれば、ヘッド部4を歯頸部に進入させる際の実感を向上させることができる。
【0033】
本実施形態では、全ての内側毛束12の毛束径d1が、略同等とされている。略同等とは、全ての直径d1が±5%の範囲に含まれていることをいう。
1個の内側毛束12当たりの内側用毛13の本数は、内側用毛13の用毛径等を勘案して決定でき、例えば、10~40本とされる。
なお、内側毛束12の毛束径d1は、植毛面5との境界部における直径であり、内側植毛穴10の直径D1と略同等である。略同等とは、±5%内の差異をいう。
【0034】
内側毛束群14の植毛密度、即ち、内側毛束群14を構成する内側用毛13の総本数を内側植毛領域11の面積で除した値(内側植毛密度)は、特に限定されないが、例えば、4~11本/mm2が好ましく、6~9本/mm2がさらに好ましい。内側植毛密度が4本/mm2未満であると、刷掃時において内側毛束12同士が相互に支えられず、低い毛腰となって歯頸部の清掃性が低下する。内側植毛密度が11本/mm2超であると、刷掃時に、隣接する内側毛束12同士の干渉が大きくなり、内側毛束12の撓み等の動きが過度に抑制され、歯頸部への内側用毛13の進入が阻害される。
【0035】
内側用毛13は、毛先が先細とされたST毛(スーパーテーパード毛)である。内側用毛13の用毛径は、内側用毛13の材質等を勘案して決定でき、例えば、6~9mil(1mil=1/1000inch=0.025mm)とされる。6mil以上であれば、歯頸部を良好に清掃できる毛腰が確保され、9mil以下であれば、歯茎等への刺激を緩和できる柔軟性が確保される。なお、ST毛における用毛径は、基部における直径である。
【0036】
外側毛束22の植毛面5上の長さ、即ち毛丈t2は、外側用毛23の材質、太さ等を勘案して決定でき、例えば、6~13mmとされる。
内側毛束12の毛丈t1と外側毛束22の毛丈t2との毛丈差t3は、2.0mm以下が好ましく、0.5~1.5mmがより好ましい。t1>t2であれば、すなわち、内側毛束12の毛丈t1が外側毛束22の毛丈t2が大きい場合には、歯頸部の清掃性、歯茎への当たり心地のさらなる向上が図れる。また、内側毛束12の植毛面5上の長さが外側毛束22の植毛面5上の長さよりも長いことにより、ヘッド部4を歯頸部に進入させる際の実感を向上させることができる。
【0037】
外側毛束22の毛束径d2、即ち、外側毛束22の長さ方向に直交する断面の直径は、1.4mm以上、1.8mm以下が好ましい。外側毛束22の毛束径d2が1.4mm未満であると、歯茎への接触面積が少なく十分なマッサージ効果が得られない可能性がある。外側毛束22の毛束径d2が1.8mm超であると、特にヘッド部4をワイド化すると、外側毛束22の干渉が大きく毛が撓まなくなる。従って、外側毛束22の毛先のみが歯茎に触れることになり効率の良いマッサージが難しくなる。また、外側毛束22の毛束径d2が1.8mm超であると、毛束中心の毛丈に対して毛束の外周側の毛丈が低くなって山形状の毛束になり、毛束中心付近の用毛の毛先しか歯茎に触れずマッサージの非効率化に繋がる可能性がある。
【0038】
また、外側毛束22の毛束径d2が1.8mm超であると、刷掃時において、外側毛束22の先端から歯茎にかかる圧力を分散できず、歯茎への刺激が強くなり、歯茎への当たり心地が低下する。外側毛束22の毛束径d2が1.8mm超であると、外側用毛23は、同じ外側毛束22を構成する他の外側用毛23との干渉が大きくなりすぎ、動きの自由度が損なわれて、優しい当たり心地を低下させる。
【0039】
本実施形態では、全ての外側毛束22の毛束径d2が、略同等とされている。略同等とは、全ての直径d2が±5%の範囲に含まれていることをいう。1個の外側毛束22当たりの外側用毛23の本数は、外側用毛23の用毛径等を勘案して決定でき、例えば、40~100本とされる。
なお、外側毛束22の毛束径d2は、植毛面5との境界部における直径であり、外側植毛穴20の直径D2と略同等である。
【0040】
第一の外側毛束群24aの植毛密度、即ち、第一の外側毛束群24aを構成する外側用毛23の総本数を第一の外側植毛領域21aの面積で除した値は、10本/mm2以上が好ましく、12本/mm2以上がより好ましい。第一の外側毛束群24aの植毛密度が10本/mm2未満であると、刷掃時において外側毛束22の先端から歯茎にかかる圧力を分散しにくくなる。
【0041】
第二の外側毛束群24bの植毛密度、即ち、第二の外側毛束群24bを構成する外側用毛23総本数を第二の外側植毛領域21bの面積で除した値は、第一の外側毛束群24aの植毛密度と同様である。
【0042】
第一の外側毛束群24aの植毛密度と第二の外側毛束群24bの植毛密度とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし、刷掃時において、口腔内の上下左右のいずれの歯茎に対しても優しい当たり心地を確保する観点から、第一の外側毛束群24aの植毛密度と第二の外側毛束群24bの植毛密度とは、略同等であることが好ましい。なお、略同等とは、[第一の外側毛束群の植毛密度]/[第二の外側毛束群の植毛密度]で表される比が、0.95~1.05であることを意味する。
【0043】
第二の外側毛束群24bを構成する外側用毛23の総本数は、第一の外側毛束群24aを構成する外側用毛23の総本数と同様である。第一の外側毛束群24aを構成する外側用毛23の総本数と、第二の外側毛束群24bを構成する外側用毛23の総本数とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし、刷掃時において、口腔内の上下左右のいずれの歯茎に対しても優しい当たり心地を確保する観点から、第一の外側毛束群24aを構成する外側用毛23の総本数と、第二の外側毛束群24bを構成する外側用毛23の総本数とは、略同等であることが好ましい。なお、略同等とは、[第一の外側毛束群を構成する外側用毛の総本数]/[第二の外側毛束群を構成する外側用毛の総本数]で表される比が、0.95~1.05であることを意味する。
【0044】
第一の外側毛束群24aを構成する外側用毛23の総本数と第二の外側毛束群24bを構成する外側用毛23の総本数との和を、第一の外側植毛領域21aの面積と第二の外側植毛領域21bとの面積の和で除した値(外側植毛密度)は、例えば、10本/mm2以上が好ましく、12本/mm2以上がより好ましい。外側植毛密度が10本/mm2未満であると、刷掃時において外側毛束22の先端から歯茎にかかる圧力を分散しにくくなる。
【0045】
[外側植毛密度]/[内側植毛密度]で表される植毛密度比は、1.4以上、2.5以下であることが好ましい。植毛密度比が1.4未満であると、外側毛束群の圧力分散低下により優しい当たり心地が低下したり、内側毛束の密度過多により歯頸部の清掃性が低下したりするおそれがある。植毛密度比が2.5超であると、内側毛束群14の毛腰が低くなって、歯頸部の清掃性が低下する。即ち、上記範囲内であれば、歯茎への優しい当たり心地と、歯頸部の良好な清掃性との両立が図れる。
【0046】
また、内側毛束12及び外側毛束22がそれぞれ千鳥状に配置されている場合には、[外側植毛密度]/[内側植毛密度]で表される植毛密度比は、1.4以上、2.0以下であることが好ましい。内側毛束12及び外側毛束22がそれぞれ千鳥状に配置されている場合には、内側毛束12及び外側毛束22をそれぞれヘッド部4に高密度に設けることができるため、植毛密度比が2.0以下であっても優しい当たり心地および歯頸部の良好な清掃性を十分に確保できる。
【0047】
外側用毛23は、内側用毛13と同様に、毛先が先細とされたST毛(スーパーテーパード毛)である。外側用毛23の用毛径は、外側用毛23の材質等を勘案して決定でき、例えば、4~7mil(1mil=1/1000inch=0.025mm)とされる。4mil以上であれば、十分な自立性が得られ、7mil以下であれば、歯茎への刺激を十分に緩和できる。加えて、外側用毛23の用毛径は、内側用毛13の用毛径よりも小さいことが好ましい。かかる構成とすることで、刷掃中において歯茎に接触しやすい外側用毛23により、歯茎への刺激を緩和しつつ、内側用毛13により歯頸部の清掃性を向上できる。
【0048】
本実施形態によれば、ヘッド部4の幅方向における植毛面5の略中央に幅方向の最大長さが4.0mm以上、5.5mm以下の内側植毛領域11が設けられると共に、ヘッド部4の幅方向の内側植毛領域11の両側に幅方向の最大長さが6.5mm以上、9.5mm以下の外側植毛領域21が設けられ、幅方向における全植毛領域の最大長さが12.0mm以上、16.0mm以下であり、外側毛束22の毛束径d2が1.4mm以上、1.8mm以下であり、内側毛束12の毛束径d1が、1.0mm以上、1.4mm以下であるため、広範囲に配置された内側毛束12及び外側毛束22によって、歯茎に柔らかな当たり心地の優しいマッサージ感を与えるとともに、ヘッド部4の歯頸部への進入実感と良好な清掃性を確保することができる。
【0049】
本実施形態によれば、外側植毛密度と内側植毛密度との比で表される植毛密度比が1.4以上、2.5以下であるため、刷掃時に歯茎に接触しやすい外側毛束群24a、24bが高い植毛密度となり、外側毛束22の先端から歯茎にかかる圧力が分散され、歯茎への刺激が緩和されることから、柔らかで優しい当たり心地が得られるとともに、植毛密度の低い内側毛束群14を構成する内側用毛13により、良好に歯頸部を清掃することができる。
【0050】
本実施形態によれば、内側毛束12は、外側毛束22よりも長い毛丈とされているため、ヘッド部4を歯頸部に進入させる際の実感を向上させることができるとともに、内側用毛13が歯周ポケットや歯間部に入りやすくなり、歯頸部の清掃性をさらに向上できる。
【0051】
本実施形態によれば、内側毛束12及び外側毛束22がそれぞれ千鳥状に配置されている場合には、内側毛束12及び外側毛束22がそれぞれ軸線O方向で隣り合う毛束同士の位置がヘッド部4の幅方向で同一の格子状に配置された場合と比較して植毛面5に高密度に設けることができるため、内側毛束12及び外側毛束22がそれぞれ格子状に配置された歯ブラシよりも、全植毛領域の最大長さが小さくても歯茎に柔らかな当たり心地の優しいマッサージ感、ヘッド部4の歯頸部への進入実感と良好な清掃性を得ることができる。
【0052】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。上述の実施形態では、内側毛束が略円柱状とされているが、例えば、平面視楕円形の楕円柱状でもよいし、平面視三角形、四角形、五角形等の多角柱状でもよい。なお、内側毛束の形状を略円柱状以外とした場合、その毛束径は平面視の形状に外接する真円の直径とされる。
また、外側毛束は、内側毛束と同様に、平面視楕円形の楕円柱状でもよいし、平面視三角形、四角形、五角形等の多角柱状でもよい。
【0053】
上述の実施形態では、内側植毛穴が有底円筒状とされているが、内側植毛穴の形状は、内側毛束の形状に応じて決定でき、例えば、内側植毛穴を平面視楕円形の有底筒状でもよいし、平面視三角形、四角形、五角形等の有底多角筒状等でもよい。また、外側植毛穴は、内側植毛穴と同様に、平面視楕円形の有底筒状でもよいし、平面視三角形、四角形、五角形等の有底多角筒状等でもよい。
【0054】
上述の実施形態では、全ての内側植毛穴の直径が略同等とされているが、本発明はこれに限定されず、全ての内側植毛穴の直径は、相互に異なっていてもよいし、一部の内側植毛穴の直径と他の内側植毛穴の直径とが異なっていてもよい。また、上述の実施形態では、全ての外側植毛穴の直径が略同等をされているが、本発明はこれに限定されず、全ての外側植毛穴の直径は、相互に異なっていてもよいし、一部の外側植毛穴の直径と他の外側植毛穴の直径とが異なっていてもよい。
【0055】
上述の実施形態では、内側用毛がST毛とされているが、本発明はこれに限られず、例えば、内側用毛は、その長さ方向にわたって均一な直径のものであってもよいし、先端が半球面又は植毛面に平行な面とされていてもよい。ただし、歯周ポケット又は歯間部へ入りやすくさせる観点から、内側毛束の一部の内側用毛がST毛、あるいはテーパー毛であることが好ましく、内側毛束の全ての内側用毛がST毛、あるいはテーパー毛であることがより好ましい。また、外側用毛は、内側用毛と同様に、その長さ方向にわたって均一な直径のものであってもよいし、先端が半球面又は植毛面に平行な面とされていてもよい。ただし、歯茎への当たり心地を優しいものとする観点から、外側毛束の一部の外側用毛がST毛、あるいはテーパー毛であることが好ましく、外側毛束の全ての外側用毛がST毛、あるいはテーパー毛であることがより好ましい。加えて、内側用毛又は外側用毛のいずれか一方のみをST毛、あるいはテーパー毛で構成してもよい。
【0056】
上述の実施形態では、内側用毛及び外側用毛が、略円柱状のテーパー毛とされているが、内側用毛及び外側用毛は、平面視楕円形の楕円柱状、平面視三角形、四角形、五角形等の多角柱状等であってもよい。なお、内側用毛又は外側用毛が略円柱状以外の形状である場合、その用毛径は、その平面視の形状に外接する真円の直径とされる。
【0057】
上述の実施形態では、内側毛束の毛丈が外側毛束の毛丈より長いものとされているが、例えば、内側毛束の毛丈と外側毛束の毛丈とが同じ、即ち毛丈差が0mmであってもよいし、内側毛束の毛丈が外側毛束の毛丈より短くてもよい。また、本毛束の先端を連ねた形状がハンドル体の軸線方向に山部と谷部とを繰り返す凹凸面となるように、内側毛束及び外側毛束の毛丈を設定してもよい。
ただし、歯頸部の清掃を良好に行う観点から、内側毛束の毛丈が外側毛束の毛丈より長いことが好ましい。
【0058】
上述の実施形態では、内側毛束群は27個の内側毛束から構成されるが、内側毛束群を構成する内側毛束の数は26個以下であってもよいし、28個以上であってもよい。
【0059】
上述の実施形態では、第一又は第二の外側毛束群は、15個の外側毛束により構成されているが、例えば、第一又は第二の外側毛束群を構成する外側毛束は14個以下であってもよいし、16個以上であってもよい。
また、第一の外側毛束群を構成する外側毛束の数と、第二の外側毛束群を構成する外側毛束の数とは、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0060】
上述の実施形態では、内側毛束及び外側毛束をハンドル体の軸線方向にそれぞれ千鳥状に並設したものであるが、本発明はこれに限定されず、例えば、
図3に示す歯ブラシ1Aのように、内側毛束12及び外側毛束22を格子状に配置する構成であってもよい。
【0061】
上述の実施形態では、内側植毛領域の外側に外側毛束が植設されているが、外側毛束は、内側毛束を挟んで植設されていればよく、例えば、その一部が内側植毛領域内に位置していてもよい。
【0062】
上述の実施形態では、全ての内側毛束の毛束径が略同等とされているが、例えば、内側毛束の毛束径が相互に異なっていてもよい。ただし、内側毛束の毛腰を適切に制御する観点から、全ての内側毛束の毛束径は略同等であることが好ましい。また、上述の実施形態では、全ての外側毛束の毛束径が略同等とされているが、例えば、外側毛束の毛束径が相互に異なっていてもよい。ただし、外側毛束の先端から歯茎にかかる圧力を各外側毛束で均一とし、外側毛束群全体の当たり心地を優しいものとする観点から、全ての外側毛束の毛束径は略同等であることが好ましい。
【実施例】
【0063】
(評価方法)
各例の歯ブラシについて、下記の方法で「マッサージ実感」(当たり心地)と歯頸部の清掃性を評価した。なお、歯頸部の清掃性は、「歯頸部進入実感」「歯頸部清掃力」により評価した。
【0064】
<マッサージ実感の評価>
マッサージ実感は、モニター10人が各例の歯ブラシを使用し、歯茎のマッサージ実感を下記評価基準にて評価した。モニター10人の平均点が2.5点以上を「◎」、平均点2.0点以上2.5点未満を「○」、平均点1.5点以上2.0点未満を「△」、平均点1.5点未満を「×」とした。
【0065】
≪評価基準≫
3点:歯茎のマッサージ感を非常に感じる。
2点:歯茎のマッサージ感を感じる。
1点:歯茎のマッサージ感をあまり感じない。
0点:歯茎のマッサージ感を感じない。
【0066】
<歯頸部進入実感の評価>
歯頸部進入実感は、モニター10人が各例の歯ブラシを使用し、歯頸部への進入実感を下記評価基準にて評価した。モニター10人の平均点が2.5点以上を「◎」、平均点2.0点以上2.5点未満を「○」、平均点1.5点以上2.0点未満を「△」、平均点1.5点未満を「×」とした。
【0067】
≪評価基準≫
3点:歯と歯茎との隙間に毛先が届く感触を非常に感じる。
2点:歯と歯茎との隙間に毛先が届く感触を感じる。
1点:歯と歯茎との隙間に毛先が届く感触をあまり感じない。
0点:歯と歯茎との隙間に毛先が届く感触を感じない。
【0068】
<歯頸部清掃力の評価>
歯頸部清掃力は、各実施例および各比較例の歯ブラシを用いて、以下のモデル清掃力試験を実施した。まず、成人上顎模型(500AU、株式会社ニッシン製)の右側頬側第一大臼歯の歯頸部にモデル歯垢として赤色ペイント(サクラ白板マーカー#19赤、株式会社サクラクレパス製)を塗布したものを用意した。モデル歯垢の形成した歯牙に対し、45度に200gの荷重で歯ブラシを押し当てながら、ヘッド部先端とヘッド部基端とを結ぶ方向にストローク20mmで10回往復動して清掃した。清掃後、下記の方法により歯垢除去率を測定した。
【0069】
≪歯垢除去率の算出≫
清掃力試験前に第一大臼歯の歯頸部のモデル歯垢占有面積を画像解析により測定し、清掃力試験後に再度同部位のモデル歯垢占有面積を測定し、下記(1)式により算出した。算出した歯垢除去率を下記判断基準に分類し、歯頸部清掃力を評価した。70%以上を「◎」、50%以上70%未満を「○」、30%以上50%未満を「△」、30%未満を「×」とした。
歯垢除去率(%)=((清掃力試験前の歯垢占有面積-清掃力試験後の歯垢占有面積)/(清掃力試験前の歯垢占有面積))×100 …(1)
【0070】
(実施例1~3、比較例1~6)
図4に示す仕様に従い、
図1の歯ブラシ1と同様に、ST毛(PBT製)を植設した歯ブラシを作製した。この歯ブラシ1は、千鳥状に植設された内側毛束からなる内側毛束群と、内側毛束群を挟み、それぞれが千鳥状に植設された外側毛束からなる一対の外側毛束群とを備えるものである。第一の外側毛束群と第二の外側毛束群とは、各々同数の外側毛束で構成されたものである。
表中、「内側毛束当たりの内側用毛数」とは、1個の内側毛束を構成する内側用毛の数であり、「外側毛束当たりの外側用毛数」とは、1個の外側毛束を構成する外側用毛の数である。外側毛束群に関する仕様は、第一の外側毛束群及び第二の外側毛束群を合わせたものとして記載した。得られた各例の歯ブラシについて、マッサージ実感、歯頸部進入実感、歯頸部清掃力を評価した。
【0071】
(実施例4~6)
図4に示す仕様に従い、
図3の歯ブラシ1Aと同様に、ST毛(PBT製)を植設した歯ブラシを作製した。この歯ブラシ1Aは、格子状に植設された内側毛束からなる内側毛束群と、内側毛束群を挟み、それぞれが格子状に植設された外側毛束からなる一対の外側毛束群とを備えるものである。第一の外側毛束群と第二の外側毛束群とは、各々同数の外側毛束で構成されたものである。得られた各例の歯ブラシについて、マッサージ実感、歯頸部進入実感、歯頸部清掃力を評価した。
なお、実施例2、3、5、6は参考例である。
【0072】
図4に示すように、本発明を適用した実施例1~6は、いずれもマッサージ実感、歯頸部進入実感、歯頸部清掃力の評価が「◎」又は「○」であった。
【0073】
一方、外側毛束の毛束径が2.0mmであり、外側植毛領域の最大長さが9.9mmであった比較例1は、歯頸部進入実感が「○」、歯頸部清掃力が「◎」であるものの、マッサージ実感が「×」であった。
【0074】
外側毛束の毛束径が1.1mmであり、外側植毛領域の最大長さが6.3mmであった比較例2は、歯頸部進入実感が「◎」、歯頸部清掃力が「○」であるものの、マッサージ実感が「×」であった。
【0075】
内側毛束の毛束径が1.5mmであり、内側植毛領域の最大長さが5.6mmであった比較例3は、マッサージ実感が「○」であるものの、歯頸部進入実感及び歯頸部清掃力が「△」であった。
【0076】
内側毛束の毛束径が0.9mmであり、内側植毛領域の最大長さが3.8mmであった比較例4は、マッサージ実感及び歯頸部進入実感が「○」であるものの、歯頸部清掃力が「×」であった。
【0077】
植毛密度比が3.03である比較例5は、マッサージ実感が「◎」であるものの、歯頸部進入実感及び歯頸部清掃力が「×」であった。
【0078】
植毛密度比が1.25である比較例5は、マッサージ実感、歯頸部進入実感及び歯頸部清掃力のいずれも「△」であった。
【0079】
この結果から、本発明を適用することで、歯茎への優しい当たり心地を伴うマッサージ感、歯頸部進入実感及び歯頸部の清掃性のいずれも満足する歯ブラシが得られることが判った。
【0080】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0081】
1、1A…歯ブラシ、 2…ハンドル体、 4…ヘッド部、 5…植毛面、 11…内側植毛領域、 12…内側毛束、 21…外側植毛領域、 22…外側毛束、 O…軸線