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特許7162413アルミニウム合金製車載用バスバー及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】アルミニウム合金製車載用バスバー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/30 20060101AFI20221021BHJP
   C25D 3/12 20060101ALI20221021BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20221021BHJP
   C25D 5/44 20060101ALN20221021BHJP
【FI】
C25D5/30
C25D3/12 102
C25D7/00 G
C25D5/44
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017064464
(22)【出願日】2017-03-29
(65)【公開番号】P2018168396
(43)【公開日】2018-11-01
【審査請求日】2019-07-19
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西川 洋介
(72)【発明者】
【氏名】清水 さゆり
(72)【発明者】
【氏名】大竹 富美雄
(72)【発明者】
【氏名】桜田 賢人
【合議体】
【審判長】池渕 立
【審判官】粟野 正明
【審判官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/056731(WO,A1)
【文献】特開昭60-35477(JP,A)
【文献】特開2000-207940(JP,A)
【文献】特開2017-51962(JP,A)
【文献】特開2005-251673(JP,A)
【文献】特開平10-60680(JP,A)
【文献】国際公開第2016/148084(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D
H01B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の算術平均粗さSaが20nm以上であり、かつ、押し込み硬さH IT が5000N/mm以下であるNiめっき層を表面に有し、Niめっき層が、アルミニウム合金基材上に設けられたZn層の上に形成されており、耐力が155MPa以上であり、少なくとも1以上のフラットワイズ曲げ部及び少なくとも1以上のエッジワイズ曲げ部を有することを特徴とする、アルミニウム合金製車載用バスバー。
【請求項2】
少なくとも2以上の曲げ部を有し、且つ少なくとも2以上の曲げ部を挟むバスバー端部の平坦部の圧延面のそれぞれが、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に対して、ずれていることを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウム合金製車載用バスバー。
【請求項3】
曲げ部を挟むバスバーの平坦部の同一の圧延面が平行であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアルミニウム合金製車載用バスバー。
【請求項4】
曲げ部を挟むバスバーの平坦部の同一の圧延面が平行であることを特徴とする、請求項2に記載のアルミニウム合金製車載用バスバー。
【請求項5】
帯状の長尺板体であるアルミニウム合金基材から形成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のアルミニウム合金製車載用バスバー。
【請求項6】
少なくとも1以上の曲げ部が、10°以上の曲げ角を有することを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のアルミニウム合金製車載用バスバー。
【請求項7】
Niめっき層の膜厚が0.1~10μmであることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のアルミニウム合金製車載用バスバー。
【請求項8】
Niめっき層中の硫黄の含有量が、0.1質量%未満である、請求項1からのいずれか一項に記載のアルミニウム合金製車載用バスバー。
【請求項9】
接点部以外の表面に樹脂層が形成されていることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のアルミニウム合金製車載用バスバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金製車載用バスバー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載用バスバー等の導電部材の基材には、導電性の良い銅が使用されてきた。近年は、銅地金の高騰等の理由から、アルミニウム又はアルミニウム合金が使用される場合が多い。しかし、アルミニウム又はアルミニウム合金は、その表面に絶縁性の酸化物や水和物の皮膜が生じやすく、経時的に接触抵抗が増加するという問題があった。そこで、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材を用いた導電部材では、導電性を向上させるために、被導電部材と通電させる接点部にSnめっき層が設けられている。
【0003】
Snめっき層が設けられる際に、アルミニウム又はアルミニウム合金は難めっき素材であるため、まず、その表面にジンケート処理を行ってZn層が設けられる。このZn層は、強酸性浴であるSnめっき浴によって溶解してしまう場合があるので、通常は、Zn層の上にさらに下地層として、弱酸性浴で形成可能なNiめっき層が設けられ、その上にSnめっき層が設けられている(特許文献1、2)。
【文献】特開2013-227630号公報
【文献】特開2006-291340号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、Niめっき層を設けた後にSnめっき層を設ける場合、めっき処理の工程が多くコストがかかるという問題があった。加えて、めっき層が設けられた後の導電部材は、接点部以外での通電を防ぐ目的で、接点部以外の表面が絶縁性の樹脂等で被覆されていることが多い。樹脂による被覆をするために導電部材を樹脂と一体成形する場合、溶融した樹脂の熱によって、樹脂で被覆される接点部以外の表面だけでなく、Snめっき層が設けられている接点部も高温となる。すると、Snの融点は232℃と低いので、Snめっき層が部分的に溶融してめっきが欠損してしまい、接触抵抗の増大を抑制する効果が十分に得られない場合がある。
【0005】
こうした問題を解決する目的で、Snめっき層を設けずに、融点が高いNiめっき層を下地層ではなく最表面層とする導電部材が考えられる。しかし、Niめっき層は、高温高湿潤環境下ではSnめっき層よりも酸化物や水和物を生じる傾向が強く、その結果、接触抵抗が増大してしまう場合がある。そのため、車両のエンジンルーム内のような高温高湿潤環境下で用いられる車載用バスバーとしては、基材上にNiめっき層及びSnめっき層をこの順で有する導電部材が依然として用いられている。
【0006】
車載用のバスバーには、車載用として一定以上の耐力が求められる。車載用バスバーには耐力に優れるT6材を用いることが一般的であるが、T6材は伸びが小さいため、エッジワイズ曲げ等の成形加工により破断してしまい、プレス加工のように切断加工と成形加工とを同時に行うことにより製造することになり、歩留りが低い。このため、上記問題を解決できる車載用バスバーが望まれている。
【0007】
本発明は、接触抵抗の増大を抑制することができるアルミニウム合金製車載用バスバー及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
本発明者は、上記の課題を達成するべく種々の研究を行った結果、Niめっき層の表面を粗くすることで、高温高湿潤環境下でもNiめっき層の表面に酸化物や水和物が形成されることを防ぐことができることを見出した。そして、表面が粗いNiめっき層を最表面層として形成することで、Snめっき層を設けずかつ接触抵抗の増大を十分に抑制することができることを見出した。また、めっき処理を施したアルミニウム合金基材を長尺状に切断し、エッジワイズ曲げ等の成形加工を施した後に時効処理を施すことにより、高い歩留りで、車載用として利用可能な耐力を有するバスバーが得られるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、表面の算術平均粗さSaが20nm以上であり、かつ、押し込み硬さHITが5000N/mm以下であるNiめっき層を表面に有し、耐力が155MPa以上であることを特徴とする、アルミニウム合金製車載用バスバーである。
【0010】
本発明は、以下の態様を採用することができる。すなわち、本発明の一態様としては、前記アルミニウム合金製車載用バスバーは、帯状の長尺板体であるアルミニウム合金基材から形成されている。また、アルミニウム合金製車載用バスバーは、少なくとも1以上の曲げ部を有する。また、少なくとも1以上の曲げ部は、エッジワイズ曲げ部である。また、少なくとも1以上の曲げ部は、10°以上の曲げ角を有し、且つ曲げ部を挟むバスバーの平坦部の同一の圧延面が平行である。
【0011】
また、本発明の一態様としては、Niめっき層の膜厚は、0.1~10μmである。また、Niめっき層中の硫黄の含有量は、0.1質量%未満であることが好ましい。また、接点部以外の表面に樹脂層が形成されているように構成することができる。
【0012】
また、本発明は、コイル状に巻かれたアルミニウム合金圧延材を引き出し、硫黄を含有する光沢剤を含まないNiめっき処理液で前記圧延材をめっき処理する工程と、めっき処理された圧延材をコイル状に巻き上げる工程と、めっき処理された圧延材を切断加工する工程と、切断された圧延材を成形加工する工程と、を含むことを特徴とする、上記いずれかに記載のアルミニウム合金製車載用バスバーの製造方法である。
【0013】
また、本発明の一態様としては、切断加工する工程は、圧延材から一方向に延びる帯状の長尺板体であるアルミニウム合金基材を打ち抜く工程であり、また、成形加工する工程は、エッジワイズ曲げ加工を含む。また、成形加工する工程の後に、熱処理工程を含む。また、めっき処理工程は、pHが3.5~4.8のスルファミン酸浴を用いて電解めっき処理を行うことが好ましい。また、めっき処理する工程後に、接点部以外の部分に樹脂層を設ける工程を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接触抵抗の増大を抑制することができるアルミニウム合金製車載用バスバーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のアルミニウム合金製車載用バスバーの一実施形態を示す斜視図である。
図2】成形加工前のアルミニウム合金基材を示す斜視図である。
図3図2におけるアルミニウム合金基材の断面図である。
図4】面の算術平均粗さSaについての説明図である。
図5】硫黄を含む光沢剤を含むめっき処理液で形成したNiめっき層の表面の走査電子顕微鏡画像である。
図6】光沢剤を含まないめっき処理液で形成したNiめっき層の表面の走査電子顕微鏡画像である。
図7】本発明のアルミニウム合金製車載用バスバーの製造方法のフロー図である。
図8】成形加工の一例であるエッジワイズ曲げを例示する模式図であって(a)は、平面図、(b)は、側面図である。
図9】成形加工の一例であるフラットワイズ曲げを例示する模式図であって(a)は、平面図、(b)は、側面図である。
図10】成形加工の一例であるヘム曲げを例示する模式図であって(a)は、平面図、(b)は、側面図である。
図11】接触抵抗の測定方法を示す模式図である。
図12】温湿度サイクル試験についての説明図である。
図13】接触抵抗とNiめっき層表面の算術平均粗さSaとの関係を示すグラフである。
図14】接触抵抗とNiめっき層の押し込み硬さHITとの関係を示すグラフである。
図15】熱処理前後のNiめっき材の接触抵抗を示すグラフである。
図16】歩留り評価のためのバスバーの形状を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0017】
[車載用バスバー]
図1は、本発明に係るアルミニウム合金製車載用バスバーの一実施形態を示す図である。この図に示すように、アルミニウム合金製車載用バスバー(以下バスバーと称す)1は、帯状の長尺板体であるアルミニウム合金基材から形成された、アルミニウム合金基材の成形体であって、一方向(二点鎖線xで示す方向)に延びる一方の基端部2の先端2aに、前記一方向から側方に折り曲げられて前記一方向に直交する方向に延びる中間部3が形成され、該中間部3の先端3aに、該先端3aから前記二点鎖線x側に折り曲げられて前記一方向側へ延びる中間部4が形成され、該中間部4の先端4aに、その上面5から斜め上方に立ち上がる立上り部6が形成され、該立上り部6の上端6aに、該上端6aから上面を前記一方の端部2の上面と平行に位置させて、前記一方向側へ延びる他方の端部7が形成されている。
【0018】
この場合、一方の端部2と他方の端部7とは、被導電部材と導通するための接点部を構成している。なお、一方の端部2と、中間部3との間の曲げ部8は、いわゆるエッジワイズ曲げ加工により折曲されているエッジワイズ曲げ部である。また、立上り部6と、端部7の間は、フラットワイズ曲げ加工により折曲されているフラットワイズ曲げ部である。一方の端部2及び他方の端部7には、各々バスバー1をボルト等で被導電部材に接合するための貫通孔9、10が形成されている。このバスバー1は、接点部以外の表面に絶縁皮膜としての樹脂層を形成する構成としてもよい。
【0019】
(耐力)
本発明に係るアルミニウム合金製車載用バスバー1は、155MPa以上、好ましくは160MPa以上の耐力を有することが好ましい。耐力が155MPa以上であるので、車載用バスバーとして使用することができる。なお、耐力は、JISZ2241に準拠し、JIS14B号試験片を用いて測定した値である。
【0020】
本発明に係るアルミニウム合金製車載用バスバー1は、図2に例示されるアルミニウム合金基材11から形成される。
【0021】
(基材11)
基材11は、アルミニウム合金からなる。基材11は、アルミニウム合金圧延材から、切断加工、例えば、プレス加工により形成される。貫通穴9、10も基材11と同時に切断加工により形成される。基材11の厚さは、特に限定されず、0.1mm以上、好ましくは1mm以上とすることができ、50mm以下、好ましくは20mm以下とすることができる。
【0022】
基材11は、後述するNiめっき層13が設けられる前にジンケート処理され、Zn層12が設けられる。この場合、図3に示すように、バスバー1には、基材11、Zn層12、Niめっき層13がこの順で積層されている。Zn層12の厚さは、特に限定されず、例えば、0.01μm以上、1μm以下とすることができる。
【0023】
(Niめっき層13)
次に、Niめっき層13について説明する。Niの融点は約1450℃であり、Snの融点(232℃)よりもはるかに高温であるので、バスバー1の表面に絶縁皮膜として樹脂層が設けられる場合でも、溶融した樹脂の熱によってNiめっき層13が欠損してしまうことがない。Niめっき層の厚さは、基材の表面を十分に被覆するため、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましい。また、めっき後のプレス成形時にNiめっきが厚膜であると基材の変形に追随せずめっきが割れやすいので、成形性の観点から、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。
【0024】
(表面の算術平均粗さSa)
Niめっき層13は、表面の算術平均粗さSa(以下、単に「平均粗さSa」ということがある。)が、20nm以上であり、好ましくは、40nm以上であり、さらに好ましくは、150nm以上である。なお、面の算術平均粗さSaは、線の算術平均粗さRaを面に拡張したパラメーターであり、光干渉顕微鏡を使用して、図4に示すように、平均面に対する各点の高さH,H’の差の絶対値から算出した平均値を表す。測定は、ISO25178に準拠して行うことができる。
【0025】
Niめっき層13は、平均粗さSaが20nm以上であるので、表面が粗い。従来、Niめっき層は、最表面層として用いられる場合は、外観を良くする目的や汚れ防止の目的で、平滑で均一に形成されることが好ましいとされていた。しかしながら、本発明者が鋭意研究を行ったところ、高温高湿潤環境下で使用される場合は、逆に、めっき面の表面粗さが粗いほど、接触抵抗の経時的な増加が少ないことがわかった。後述する実施例で実証されているように、Niめっき層13の表面の算術平均粗さSaが20nm以上の場合に、導電部材の高温高湿潤環境下での接触抵抗の経時的な増大が抑制された。Niめっき層13は、導電部材の最表面層とすることができるので、従来のようにNiめっき層上にさらにSnめっき層を設ける必要がなく、コストを抑制することもできる。
【0026】
Niめっき層13の表面の算術平均粗さSaは、大きければ大きい程よく上限値は限定されないが、めっき膜厚よりも粗さが大きいと凹部が基材にまで達してしまい、被覆層の欠陥となるので、被覆性を十分に確保する観点からは、上限値をめっき膜厚と同等以下、好ましくはめっき膜厚の半分以下とすることができる。
【0027】
(押し込み硬さHIT
Niめっき層13は、押し込み硬さHITが、5000N/mm以下であることが好ましい。押し込み硬さHITを5000N/mm以下とすることで、バスバー1を被導電部材に締結するときに凸部(Niの新生面)が押しつぶされて変形し、バスバー1の接点部(端部2、7)と被導電部材の接点部との接触面積が増大する。その結果、接触抵抗を小さくすることができる。具体的には、固体同士が表面で真に接触している面積(真実接触面積)Arは、以下の式(1)で表される。
【0028】
Ar=P/pm (1)
(但し、P:荷重、pm:柔らかい方の材料の降伏応力を表す。)
上記式(1)からも明らかなように、めっきの硬さが小さい(柔らかい方の材料の降伏応力Pmが小さい)ほど、真実接触面積Arが大きくなり電気的接触を確立しやすいといえる。
【0029】
押し込み硬さHITの下限値は、特に限定されず、100N/mm以上とすることができる。なお、一般に、硬さの定量評価にはビッカース試験等が用いられるが、Niめっき層13の厚さは数μm程度と薄いため、マイクロビッカース試験では圧痕の深さが基材11にまで達し、測定結果が基材1の硬さに影響を受けてしまう場合がある。そのため、ここでは、押し込み硬さHITは、ナノインデンターを用いて測定した押し込み硬さである。
【0030】
(Niめっき層13の形成方法)
Niめっき層13の形成方法は、特に限定されず、電解めっき又は無電解めっきによって形成することができるが、表面が粗いめっき層を形成しやすい点で、電解めっきが好ましい。Niめっき層13を形成する前に、必要に応じて、脱脂、酸洗、水洗等の前処理を行ってもよい。Niめっき処理液は、ワット浴やスルファミン酸浴など工業的に用いられているめっき処理液を用いることができる。中でも、基材11上にZn層12が設けられている場合にZn層12が溶解するのを防ぎ、さらに内部応力が小さく、めっき後の成形性が優れる点から、pHが3.5~4.8のスルファミン酸浴が好ましい。
【0031】
一般的に、Niめっき処理液には、得られるNiめっき層に光沢を持たせるために、光沢剤を添加することがある。光沢剤としては、サッカリン等の硫黄が含まれるものが用いられることが多い。硫黄を含む光沢剤は、めっき層を構成する結晶粒径を微細化する作用を呈する。例えば、図5に、硫黄を含む光沢剤を含むめっき処理液で形成されたNiめっき層の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。このNiめっき層の表面は、結晶粒が微細でSEM写真では結晶粒が確認できない。その結果、このNiめっき層の表面は、平滑になっている。一方、図6に、光沢剤を含まないめっき処理液(無光沢めっき)で形成されたNiめっき層の表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。このNiめっき層の表面は、数100nmオーダーの粗大なNiの結晶粒を確認することができる。その結果、このNiめっき層の表面は、粗くなっている。
【0032】
よって、結晶粒径が大きく表面粗さが粗いNiめっき層13を得るために、めっき処理液中に、硫黄を含有する光沢剤を含まないことが好ましい。例えば、めっき処理液中に、光沢剤を含有しないか、又は、硫黄を含まない光沢剤を含有することで、Niめっき層13の結晶粒径を大きくすることができる。その結果、Niめっき層13の表面粗さを粗くして、高温高湿潤環境下でも酸化物や水和物の形成を抑制し、経時的に接触抵抗が増大することを抑制することができる。
【0033】
この場合、形成されたNiめっき層13は、実質的に硫黄を含有しない。Niめっき層中の硫黄の含有量は、例えば、0.1質量%未満、好ましくは0.05質量%未満である。
【0034】
結晶粒径の大きいNiめっき層13とするための他の方法としては、めっき処理時の電流密度を、2A/dm~10A/dm、好ましくは2A/dm~5A/dmに低く抑えたり、めっき浴中のNiイオン濃度高めるため、例えばスルファミン酸Niめっき浴であれば、処理液中のスルファミン酸ニッケルの濃度を400g/L~500g/L、好ましくは450g/L~500g/Lに高めたりすること等によって形成することもできる。
【0035】
一方、Niめっき層13を形成後に、サンドブラストやヤスリ等によって機械的に表面粗さSaを20nm以上とすることもできる。この場合は、結晶粒径の大きさに関係なくNiめっき層13を形成し、その後、機械的に表面を粗くすればよい。
【0036】
(樹脂層)
バスバー1は、接点部(端部2、7)以外の表面に絶縁皮膜としての樹脂層が形成されていてもよい。樹脂層を設けることで、接点部以外での通電を防ぐことができる。樹脂層を形成する樹脂は、基材11上にコーティング可能な樹脂であれば特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、汎用プラスチック、汎用エンプラ(エンジニアリング・プラスチック)、スーパーエンプラ等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。汎用プラスチックとしては、ポリプロピレン、ABS樹脂等を挙げることができる。汎用エンプラとしては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート等を挙げることができる。スーパーエンプラとしては、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド等を挙げることができる。樹脂層の厚さは、特に限定されず、10μm以上5000μm以下とすることができる。
【0037】
樹脂層の形成方法は、特に限定されない。例えば、基材上にNiめっき層13を形成した後、射出成形、溶融押出成形、圧縮成形、又はトランスファー成形等によって基材11と一体的に成形することができる。基材11上の接点部(端部2,7)の表面に設けられているNiめっき層13は、融点が高いので、溶融した樹脂の熱によって溶融してめっきが欠損することがない。その結果、バスバー1に樹脂層が設けられ絶縁被覆されている場合でも、接触抵抗の増大を抑制する効果を十分に得ることができる。
【0038】
[アルミニウム合金製車載用バスバー1の製造方法]
次に、上述したアルミニウム合金製車載用バスバー1の製造方法について、図7を参照して説明する。バスバー1の製造方法は、基材11を準備する工程(以下、基材準備工程(S1)という)と、基材11をNiめっき処理液に接触させるめっき処理工程(以下、「めっき処理工程(S2)」という。)と、めっき処理した後、基材11を再びコイル状に巻き上げる工程(以下、「巻き上げ工程(S3)」と、切断加工及び成形加工する工程(S4)と、を有する。本発明のアルミニウム合金製車載用バスバー1の製造方法の一態様では、さらに、熱処理工程(S5)を有する。本発明のめっき処理工程では、Niめっき処理液が、硫黄を含有する光沢剤を含まないことを特徴とする。Niめっき処理液が、硫黄を含有する光沢剤を含まないので、Niめっき層13の表面が粗くなり、接触抵抗が経時的に増大することを抑制できるバスバー1を得ることができる。また、バスバー1は、従来の導電部材のように、Niめっき層及びSnめっき層の多層のめっき層を有していないので、めっき処理工程が少なく済む。そのため、バスバー1の製造方法は、コイル状に巻かれた基材を解いてめっき処理した後、再びコイル状に巻き上げる、いわゆるコイルトゥコイルでNiめっき層13を形成し、切断加工及び成形加工して製造することができる。
【0039】
(基材準備工程)
基材準備工程は、コイル状に巻かれたアルミニウム合金圧延材(基材11)を、解いて引き出す工程とすることができる。引き出し速度は、Niめっき処理工程でめっき処理する時間や速度に合わせて適宜調整することができる。基材準備工程は、基材11をジンケート処理して基材11上にZn層12を形成する工程を有していてもよい。
【0040】
(Niめっき処理工程)
Niめっき処理工程は、基材11をNiめっき処理液に接触させて、基材11上にNiめっき層13を形成する工程である。Niめっき処理方法、及びめっき処理液については、上述のとおりである。めっき処理工程は、必要に応じて、脱脂、酸洗、水洗等の前処理工程を有していてもよい。形成される結晶粒径を大きくしてNiめっき層13の表面粗さSaを20nm以上とする目的で、Niめっき処理液が、硫黄を含有する光沢剤を含まないことが好ましい。硫黄を含有する光沢剤としては、サッカリン、1,3,6-トリナフタレンスルフォン酸ナトリウム、ナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸ナトリウム等を挙げることができる。めっき処理液は、好ましくは、光沢剤を含有しないか、又は、硫黄を含まない光沢剤を含有する。硫黄を含有しない光沢剤としては、2次光沢剤に分類される光沢剤等を挙げることができる。2次光沢剤に分類される光沢剤としては、例えば、クマリン、2-ブチン-1,4-ジオール、エチレンシアンヒドリン、プロパルギルアルコール、ホルムアルデヒド、キノリン又はピリジン等を挙げることができる。
【0041】
めっき処理工程において、pHが3.5~4.8のスルファミン酸浴またはpH4.0~5.5のワット浴を用いて電解めっき処理を行うことが好ましいが、前述のとおりめっき後の成形性に優れることからスルファミン酸浴がさらに好ましい。電解めっき処理でNiめっき層を形成する際の電流密度は、2A/dm以上10A/dm以下で行うことが好ましい。さらに好ましい電流密度は、2A/dm以上5A/dm以下である。さらに、Niめっき処理液中のNiイオン濃度を高めるため、例えばスルファミン酸Niめっき浴であれば、処理液中のスルファミン酸ニッケルの濃度を400g/L以上500g/L以下、又は450g/L以上500g/L以下とすることも好ましい。
【0042】
なお、切断工程後にNiめっき処理するよりも、切断工程前にNiめっき処理を行った方が、製造コストをより低くすることができる。よって、基材準備工程、Niめっき処理工程、巻き上げ工程、切断加工する工程、成形加工する工程をこの順で有することが好ましい。バスバーの耐力を向上させるため、成形加工する工程の後に、熱処理工程を有することができる。樹脂層形成工程は、成形加工する工程の後に有することが好ましい。また、Snめっき層を形成する工程が不要なので、コストを抑えるために、基材準備工程、Niめっき処理工程、巻き上げ工程、加工工程、及び樹脂層形成工程からなる最小限の工程で製造することもできる。
【0043】
(巻き上げ工程)
巻き上げ工程は、Niめっき処理された基材を、再びコイル状に巻きあげる工程である。巻き上げ速度は、Niめっき処理工程でめっき処理する時間や速度に合わせて適宜調整することができる。従来の導電部材のように、Niめっき層及びSnめっき層の多層のめっき層を形成する必要がなく、めっき処理工程が少なく済むので、このように、コイル状の基材をめっき処理後に再びコイル状に巻きあげる、いわゆるコイルトゥコイルでNiめっき層13を形成することができる。
【0044】
(切断加工及び成形加工する工程)
切断加工及び成形加工する工程は、Niめっき層13が形成された基材11を所望の大きさに切断し、所望の形状に成形加工してバスバー1を得る工程である。この工程では、切断加工と成形加工とを別の工程としてもよいし、プレス加工のように切断加工と成形加工とを同時に行ってもよい。歩留りの観点から、基材を長尺状に切断した後に、成形加工を行うことが好ましい。成形加工は、バスバー1に求められる形状に応じて各種曲げ加工を採用することができる。
【0045】
図8から10は、成形加工する工程で採用することができる各種曲げ加工方法を示す図である。
【0046】
図8の(a)、(b)は、エッジワイズ曲げ加工を示す図である。この図に示されるように、一端から延在する板の中央部において、他端部が板の延在する方向に対して直交ように曲げる加工である。
【0047】
図9の(a)、(b)フラットワイズ曲げ加工を示す図である。この図に示されるように、板を基材の厚さ方向に屈曲する加工である。
【0048】
図10の(a)、(b)は、上述する実施の形態には、記載されていないが、ヘム曲げ加工を示す図である。ヘム曲げ加工は、広く折り曲げ加工を指すが、この図に示されるように、例えば、一端から延在する板の中央部において、他端部が板の延在する方向に対して直交するように曲げる加工であるが、板に垂直な立上げ部を設けるように曲げる加工である。ヘム曲げ加工により折曲されているヘム曲げ部は、10°以上の曲げ角を有し、且つ曲げ部を挟む平坦部の同一の圧延面が平行である。
【0049】
本発明のアルミニウム合金製車載用バスバーは、上記の各曲げ加工及びそれらを組合せることにより、長尺状のアルミニウム合金基材から所望の形状に形成される。
【0050】
(熱処理工程)
熱処理工程は、成形加工後のバスバー1に熱処理を施し、所望の機械的性質を得る工程である。この工程では、例えば、T4材である成形加工後のバスバー1に時効処理を施し、T6材にし、耐力を向上させることができる。
【0051】
(樹脂層形成工程)
樹脂層形成工程は、接点部(端部2、7)以外の表面に樹脂層を設けて絶縁被覆する工程である。バスバー1は、接点部(端部2、7)の表面にNiめっき層13を有するので、樹脂層を形成する際に溶融した樹脂の熱によって接点部(端部2、7)が高温になったとしても、めっきの欠損が発生せず、接触抵抗の増大を抑制する効果を十分に得ることができる。用いる樹脂及び形成方法については、上述のとおりである。
【実施例
【0052】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
【0053】
[実施例1]
アルミニウム合金6101-T6材の圧延品(100mm×340mm×厚み3mm)を基材11とした。基材11の両面に、前処理として、以下に示す(1)アルカリエッジング及びデスマット並びに(2)二段ジンケート処理を行った後、(3)電解Niめっきを行ってNiめっき層13を形成した。これを20mm×340mm×厚み3mmに切断した後、島津製作所製万能油圧式試験機 形式REH―30と横曲げ加工用治具を用いて、エッジワイズ曲げ加工を採用して図16に示す形状に形成し、実施例1のバスバー1を得た。なお、図16に示す寸法の単位はmmである。
【0054】
(1)アルカリエッチング及びデスマットは、以下のように行った。すなわち、基材11を、50℃、50g/LのNaOH水溶液中に30秒間浸漬してアルカリエッチングし、室温の水道水で30秒間水洗した。その後、基材11を、60質量%の硝酸を500ml/Lの濃度にイオン交換水で希釈し室温に保持したデスマット液に30秒間浸漬し、さらに室温の水道水で30秒間水洗した。
【0055】
(2)二段ジンケート処理は、以下のように行った。すなわち、奥野製薬工業株式会社製のジンケート液「サブスターZN-111」をイオン交換水で500ml/Lの濃度に希釈し、室温に保持したジンケート処理液に、デスマット後の基材11を60秒間浸漬した。室温の水道水で30秒間水洗した後、基材11を、60質量%の硝酸を100m/Lの濃度にイオン交換水で希釈し室温に保持した亜鉛剥離液に30秒間浸漬して亜鉛層を剥離した。さらに水洗した後、上述のジンケート処理液に30秒間浸漬して、基材上にち密な亜鉛置換層を形成した。これを水洗し、前処理材とした。
【0056】
(3)電解Niめっきは、ワット浴を用いて以下のように行った。すなわち、硫酸ニッケル6水和物を240g/L、ほう酸を35g/L含むめっき浴(ワット浴)を浴温45℃に保持し、前処理材を浸漬してカソードとし、4A/dmのカソード電流密度でめっきし、Niめっき層3を形成した。めっき時間は、Niめっき層13の厚みが約3μmとなるよう、任意の時間とした。
【0057】
[実施例2]
スルファミン酸浴を用いて以下のようにNiめっき層13を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のバスバー1を得た。Niめっき層13は、スルファミン酸Ni4水和物を450g/L、塩化ニッケル6水和物を10g/L、ほう酸を35g/L含むめっき浴(スルファミン酸浴)中で、5A/dmのカソード電流密度でめっきし形成した。
【0058】
[実施例3]
スルファミン酸浴に、硫黄を含まない光沢剤として株式会社ムラタ製のSN-20を4ml/Lの濃度で添加した以外は、実施例2と同様にして、実施例3のバスバー1を得た。
【0059】
[実施例4]
実施例2と同様の方法でNiめっき層13を形成し、かつエッジワイズ曲げ加工を行わずプレス加工で図16に示す形状に形成した他は、実施例1と同様にして、実施例4のバスバー1を得た。
【0060】
[実施例5]
実施例3と同様の方法でNiめっき層13を形成し、かつエッジワイズ曲げ加工を行わずプレス加工で図16に示す形状に形成した他は、実施例1と同様にして、実施例5のバスバー1を得た。
【0061】
[比較例1]
ワット浴に、光沢剤として3g/Lの濃度でサッカリンを添加した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の導電部材を得た。
【0062】
[比較例2]
スルファミン酸浴に、光沢剤として3g/Lの濃度でサッカリンを添加した以外は、実施例2と同様にして、比較例2の導電部材を得た。
なお、上記実施例及び比較例におけるめっき浴のpHは、いずれも、4.0とした。
【0063】
[算術平均粗さSa]
Niめっき層を形成した後の試料を20mm角に切断し、ブルカー・エイエックスエス株式会社製の光干渉顕微鏡(GT-1)を使用して、115倍の対物レンズで試料の表面からおよそ20μm×40μmの視野を選出した。その測定視野内の面の算術平均粗さSaをISO25178に準拠して算出し、Niめっき層の表面の算術平均粗さSaとした。結果を表1に示す。
【0064】
[押し込み硬さHIT
Niめっき層を形成した後の試料を20mm角に切断し、株式会社エリオニクス製ナノインデンター ENT-1100aを用い、バーコビッチ型のダイヤモンド圧子 記号6170を20mNの荷重で押し込んで、ISO 14577で定められる押し込み硬さHITを算出した。結果を表1に示す。
【0065】
[接触抵抗測定]
Niめっき層を形成した後の試料を、室温のイオン交換水中で30秒間水洗し、ドライヤーを用いて熱風乾燥した後、試料の接触抵抗を測定した。その後、試料について温湿度サイクル試験を行い、再度、試料の接触抵抗を測定した。
【0066】
接触抵抗は、図11に示すように、AuめっきしたAl板14で片面4cmの面積が接触するよう試料を挟み、1MPaの面圧をかけながら1Aの電流を流し、Auめっき板間の電圧降下Vを測定し、R=(V/I)から算出した。但し、R:接触抵抗(mΩcm)、I:電流(A)である。
【0067】
温湿度サイクル試験は、エスペック株式会社製恒温恒湿試験機PR-4Jを用いて、JIS C60068-2-38(試験記号:Z/AD)に準じて、湿度93%で、図12に示す温湿度サイクル試験のサイクル模式図に沿って10サイクル行った。すなわち、2時間かけて25℃から65℃まで昇温し、3.5時間65℃を維持した後、2時間かけて65℃から25℃まで降温した。さらに0.5時間25℃に保持し、これを2サイクル行った。その後0.5時間かけて25℃から-10℃まで降温し、3時間-10℃を維持した後、1.5時間かけて-10℃から25℃まで昇温し、試験開始から24時間経過時まで25℃を維持した。結果を表1に示す。
【0068】
温湿度サイクル試験後の接触抵抗値が0.75mΩを下回っていると、接触抵抗値の増大が抑制されていることを示している。一方、接触抵抗値が0.75mΩを上回っていると、接触抵抗が増大してしまっていることを示している。表1から明らかなように、実施例1~5の導電部材は、いずれも、接触抵抗が0.75mΩを下回っており、接触抵抗値の増大が抑制されている。
【0069】
[S含有量測定]
Niめっき層を形成した後の試料について、Niめっき層中の硫黄の含有量(S分率)を、電子線マイクロアナライザ(EPMA:株式会社島津製作所社製、型番EPMA―1610 分析下限値0.1質量%)を用いて測定した。結果を、表1中に示す。実施例1~5の導電部材のNiめっき層からは硫黄は検出されなかった。
【0070】
【表1】
【0071】
図13及び14に、表1の数値に基づいて、接触抵抗と、算術平均粗さSa(図13)、又は押し込み硬さHIT図14)との関係を示した。図13及び14において、四角は温湿度サイクル前の値を示し、黒丸は温湿度サイクル試験後の値を示す。温湿度サイクル試験後(黒丸で示す)の接触抵抗値が0.75mΩ以下の場合に、高温高湿潤環境下でも接触抵抗の増大が抑制できるといえる。図13及び14から明らかなように、Niめっき層の算術平均粗さSaが20nm以上である実施例1から5の導電部材は、温湿度サイクル試験後の接触抵抗が0.75mΩ以下となり、接触抵抗の増大を抑制することができた。
【0072】
図15に、実施例2及び3のバスバーを、200℃で5時間の熱処理前後の接触抵抗の変化を示す。図15から明らかなように、無光沢Niめっきを用いたバスバーは、熱処理後であっても、接触抵抗の変化が小さい。例えば、T4材のアルミニウム合金コイル材を、バスバーに形成した後に、熱処理し、T6材とする製造方法も可能である。
【0073】
[加工方法の比較]
表1にプレス加工のみで製造した場合と、エッジワイズ曲げ加工で製造した場合とのプレス歩留りの差を示す。表1から明らかなように、本発明に係るアルミニウム合金製バスバーの製造方法を用いた場合、100%に近い歩留りでバスバーを製造することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 アルミニウム合金製車載用バスバー
x 方向を示す二点鎖線
2、7 端部(接点部)
2a、3a、4a、5a、6a 先端
3、4 中間部
5 上面
6 立上り部
8 曲げ部
9、10 貫通孔
11 アルミニウム合金基材
12 Zn層
13 Niめっき層
14 AuめっきしたAl板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16