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  • 特許-不燃性化粧シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】不燃性化粧シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20221021BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20221021BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20221021BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221021BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20221021BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/00 M
C09J7/20
C09J11/04
C09J11/06
C09J201/00
B32B27/18 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018003441
(22)【出願日】2018-01-12
(65)【公開番号】P2019123096
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】岡本 昌泰
(72)【発明者】
【氏名】魚住 京生
(72)【発明者】
【氏名】右近 文宜
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-182379(JP,A)
【文献】特開2010-229327(JP,A)
【文献】特表2014-534909(JP,A)
【文献】特開平09-194797(JP,A)
【文献】特表平06-511507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/18
B32B 27/00
C09J 7/20
C09J 11/04
C09J 11/06
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップフィルム層、インキ層、ベースフィルム層、及び、粘着剤層の順に積層され、
前記トップフィルム層及び前記ベースフィルム層は、塩化ビニル樹脂を含有し、
前記ベースフィルム層は、前記塩化ビニル樹脂100重量部に対して、臭素系難燃剤を0~15重量部、三酸化アンチモンを0~10重量部含有し、
前記粘着剤層は、粘着剤100重量部に対して、前記臭素系難燃剤を2~15重量部、前記三酸化アンチモンを2~15重量部含有し、
前記トップフィルム層は、前記臭素系難燃剤及び前記三酸化アンチモンを含有しないことを特徴とする不燃性化粧シート。
【請求項2】
前記臭素系難燃剤は、下記化学式(1)で表されるイソシアヌル酸化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の不燃性化粧シート。
【化1】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、Brを含む直鎖状又は環状の炭化水素基である。)
【請求項3】
前記臭素系難燃剤は、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌル酸を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の不燃性化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃性化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
不燃性化粧シートは、高い意匠性を付与する目的で、基材に貼り付けて用いられる樹脂フィルムである。不燃性化粧シートに難燃性を付与する方法としては、上記不燃性化粧シートを構成するいずれかの層に難燃剤を添加する方法が一般的である(例えば、特許文献1等)。
【0003】
特許文献1には、熱可塑性樹脂シート(ア)の下面に粘着剤層(イ)を有する不燃性化粧シートであって、前記粘着剤層(イ)が、質量平均分子量が20万~150万である(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対し、臭素系難燃剤(B)15~60質量部、三酸化アンチモン(C)5~20質量部、タッキファイヤー(D)5~30質量部およびポリイソシアネート系硬化剤(E)0.5~5質量部を配合してなり、かつ建築基準法第2条第9号および建築基準法施行令第108条の2に基づく防耐火試験方法と性能評価規格に従うコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験において、加熱開始後の最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えず、総発熱量が8MJ/m以下であることを特徴とする不燃性化粧シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-229327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、基材に意匠を付与できる不燃性化粧シートとして、印刷層、有色フィルム等を有する不燃性化粧シートが注目されている。上記不燃性化粧シートでは、上記意匠を外傷等から保護したり、上記不燃性化粧シートに光沢感を付与するために、上記印刷層、有色フィルム等の上層にトップフィルム層、コーティング層等が積層されることがある。このように、意匠性の高い不燃性化粧シートは、有機樹脂層の数が増える傾向にあり、有機樹脂層の数が増えるほど、不燃性化粧シート全体の総発熱量は高くなる傾向がある。また、難燃剤を添加する層によっては、フィルムが白濁する等の色調変化が起こり美観を損なうことがあり、難燃剤の添加量によっては、難燃剤が吹き出す(ブルームする)ことがあった。そのため、印刷層、有色フィルム等を有する不燃性化粧シートにおいて、総発熱量を抑制しつつ、意匠性を損なわずに、ブルームの発生を抑制するためには、更なる検討の余地があった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、総発熱量を低減しつつ、ブルームの発生及び色調変化を抑制した不燃性化粧シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、トップフィルム層、インキ層、ベースフィルム層、及び、粘着剤層の順に積層された不燃性化粧シートに関し、上記インキ層よりも上層に配置されたトップフィルム層に難燃剤を添加せず、上記インキ層よりも下層に配置された粘着剤層に難燃剤を添加することで、不燃性化粧シートの色調変化を抑制しつつ、総発熱量を低減できることを見出した。
【0008】
本発明者は、更に、添加する難燃剤の検討を行い、添加量に対する難燃性の効果が高い臭素系難燃剤に着目した。そして、臭素系難燃剤の添加量を増やすと総発熱量を低減できる一方で、添加量が多すぎると粘着剤層から臭素系難燃剤が吹き出し(ブルームし)粘着力が低下することを見出した。そして、臭素系難燃剤の含有量を所定量とすることで、総発熱量を低減しつつ、意匠性の高い不燃性化粧シートが得られることを見出した。更に、三酸化アンチモンを併用することで、臭化アンチモンが生成し、粘着剤層の表面に被膜を形成するため、燃焼を効果的に抑制することができることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明の不燃性化粧シートは、トップフィルム層、インキ層、ベースフィルム層、及び、粘着剤層の順に積層され、上記トップフィルム層及び上記ベースフィルム層は、塩化ビニル樹脂を含有し、上記ベースフィルム層は、上記塩化ビニル樹脂100重量部に対して、臭素系難燃剤を0~15重量部、三酸化アンチモンを0~10重量部含有し、上記粘着剤層は、粘着剤100重量部に対して、上記臭素系難燃剤を2~15重量部、上記三酸化アンチモンを2~15重量部含有し、上記トップフィルム層は、上記臭素系難燃剤及び上記三酸化アンチモンを含有しないことを特徴とする。
【0010】
上記臭素系難燃剤は、下記化学式(1)で表されるイソシアヌル酸化合物を含有することが好ましい。
【0011】
【化1】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、Brを含む直鎖状又は環状の炭化水素基である。)
【0012】
上記臭素系難燃剤は、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌル酸を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の不燃性化粧シートは、総発熱量を低減しつつ、ブルームの発生及び色調変化を抑制した不燃性化粧シートである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の不燃性化粧シートの一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の不燃性化粧シートは、トップフィルム層、インキ層、ベースフィルム層、及び、粘着剤層の順に積層され、上記トップフィルム層及び上記ベースフィルム層は、塩化ビニル樹脂を含有し、上記ベースフィルム層は、上記塩化ビニル樹脂100重量部に対して、臭素系難燃剤を0~15重量部、三酸化アンチモンを0~10重量部含有し、上記粘着剤層は、粘着剤100重量部に対して、上記臭素系難燃剤を2~15重量部、上記三酸化アンチモンを2~15重量部含有し、上記トップフィルム層は、上記臭素系難燃剤及び上記三酸化アンチモンを含有しないことを特徴とする。
【0016】
図1は、本発明の不燃性化粧シートの一例を模式的に示した断面図である。図1に示した不燃性化粧シート10は、コーティング層1、トップフィルム層2、インキ層3、ベースフィルム層4、及び、粘着剤層5の順に積層される。なお、本明細書において、「フィルム」は、「シート」と同義であり、厚さによって両者を区別していない。
【0017】
[コーティング層]
不燃性化粧シート10は、シートの最表面にコーティング層1を有してもよい。コーティング層1は、不燃性化粧シート10の表面に光沢を付与する役割を有するものである。コーティング層1は、例えば、コーティング組成物を後述するベースフィルム層2上に塗工して塗膜を形成した後、加熱乾燥、紫外線照射等により該塗膜を硬化させる方法によって形成できる。
【0018】
上記コーティング組成物は、ウレタン系樹脂等を含有することが好ましい。
【0019】
上記コーティング組成物は、更に、架橋剤(硬化剤)を含有してもよい。上記架橋剤としては、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の公知の架橋剤を用いることができる。また、紫外線吸収剤、安定剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
【0020】
コーティング層1の厚さは特に限定されないが、1~10μmであることが好ましい。上記コーティング層1の厚さは、乾燥後の厚さである。
【0021】
コーティング層1は、インキ層3の意匠性をより高めるために、透明性が高いことが好ましく、具体的には、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。なお、本明細書において、全光線透過率は、JIS K 7375に基づく値である。
【0022】
[トップフィルム層]
トップフィルム層2は、塩化ビニル樹脂を含有する。すなわち、トップフィルム層2は、ポリ塩化ビニルフィルム(PVCフィルム)と一般に呼ばれるものであってもよい。トップフィルム層2は、インキ層2の表面を保護する役割を有するものである。トップフィルム層2にPVCフィルムを用いることにより、高い透明性を得ることができる。高い透明性は、インキ層2によって得られる意匠性をより高めるために求められる。不燃性化粧シート10は、トップフィルム層2及び後述するベースフィルム層4の両方に、難燃性に優れる塩化ビニル樹脂を含有すフィルムを用いることで、総発熱量の上昇を抑制することができる。
【0023】
トップフィルム層2は、臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを含有しない。トップフィルム層2は、インキ層3よりも上層に配置されるため、トップフィルム層2に臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを添加すると、不燃性化粧シート10の色調が変化し、意匠性が低下する。そのため、不燃性化粧シート10は、インキ層3よりも上層に配置される層に、臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを含まないことが好ましい。なお、本明細書中、不燃性化粧シート10の粘着剤層5側を「下層」、粘着剤層5と反対側を「上層」という。不燃性化粧シート10が、コーティング層1を有する場合、コーティング層1についても、臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを含有しないことが好ましい。
【0024】
上記塩化ビニル樹脂としては、例えば、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルと他の単量体との共重合体を挙げることができる。
【0025】
上記他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、プロピレン、スチレン等のオレフィン;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸ジエステル;フマル酸ジブチル、フマル酸ジエチル等のフマル酸ジエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記他の単量体の共重合体における含有量は、通常、50重量%以下であり、好ましくは10重量%以下である。50重量%を超えると、トップフィルム層2の耐屈曲性が低下するおそれがある。上記塩化ビニル樹脂のなかでも、寸法安定性が得られる点から、塩化ビニルの単独重合体が好ましい。
【0027】
上記塩化ビニル樹脂の平均重合度は特に限定されず、求められるフィルムの硬さや、硬さの調整に用いられる可塑剤の量に応じて調整されるものであり、例えば、750~1300とされる。上記平均重合度の好ましい上限は1050である。上記平均重合度が750~1300の範囲内であると、比較的低温での成形性が特に良好である。本明細書において、塩化ビニル樹脂の平均重合度は、JIS K6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度を意味する。
【0028】
トップフィルム層2は、可塑剤を含有してもよい。上記可塑剤としては特に限定されず、従来から塩化ビニル樹脂に配合されているものを用いることができ、例えば、フタル酸オクチル(ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP))、フタル酸ジブチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル(DINP)等のフタル酸ジエステル;アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル等の脂肪族二塩基酸ジエステル;トリクレジルホスフエート、トリオクチルホスフエート等のリン酸トリエステル;エポキシ化大豆油、エポキシ樹脂等のエポキシ系可塑剤;高分子ポリエステル可塑剤等を挙げることができる。
【0029】
上記高分子ポリエステル可塑剤としては、例えば、フタル酸のポリエチレングリコールジエステル、ポリプロピレングリコールジエステル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジエステル等のポリアルキレングリコールジエステル;アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族二塩基酸のポリエチレングリコールジエステル、ポリプロピレングリコールジエステル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジエステル等のポリアルキレングリコールジエステルを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記可塑剤の数平均分子量は、例えば、350~3000である。
【0030】
トップフィルム層2における可塑剤の含有量は、上記塩化ビニル樹脂100重量部に対して、10~30重量部であることが好ましい。上記含有量が10重量部未満では、トップフィルム層2が硬くなり過ぎることで、成形性が低下し、成形時にフィルムが破れてしまうおそれがある。一方、30重量部を超えると、トップフィルム層2が柔らかくなり過ぎることで、強度が低下するため、基材に張り付けた後、上記基材から剥がれ易くなるおそれがある。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は、15重量部である。
【0031】
トップフィルム層2は、必要に応じて、安定剤、紫外線吸収材、着色剤、発泡剤、滑剤、改質剤、無機粒子や無機繊維等の充填剤、希釈剤等の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤としては、塩化ビニル樹脂に一般的に配合されるものを使用することができる。
【0032】
上記安定剤としては、例えば、脂肪酸カルシウム、脂肪酸亜鉛、脂肪酸バリウム等の金属石ケン;ハイドロタルサイト等が挙げられる。上記金属石ケンの脂肪酸成分としては、例えば、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸バリウム、ステアリン酸バリウム、リシノール酸バリウム等が挙げられる。また、上記安定剤としては、エポキシ系安定剤;バリウム系安定剤;カルシウム系安定剤;スズ系安定剤;亜鉛系安定剤;カルシウム-亜鉛系(Ca-Zn系)、バリウム-亜鉛系(Ba-Zn系)等の複合安定剤も使用することができる。上記安定剤を含有する場合、その含有量は、上記塩化ビニル樹脂100重量部に対して、0.3~5.0重量部が好ましい。また、上記紫外線吸収材を含有する場合、その含有量は、上記塩化ビニル樹脂100重量部に対して、0.3~2.0重量部が好ましい。
【0033】
トップフィルム層2の厚さは特に限定されないが、40~200μmであることが好ましい。上記厚さが40μm未満では、意匠性が低下するおそれがある。一方、上記厚さが200μmを超えると、不燃性化粧シート10の総発熱量が増加するおそれがある。トップフィルム層2の厚さのより好ましい下限は50μmであり、より好ましい上限は150μmである。
【0034】
トップフィルム層2の表面(インキ層3と反対側の面)には、必要に応じて、エンボス加工等の表面加工が施されていてもよい。エンボス加工によりトップフィルム層2の表面にエンボス形状(凹凸形状)を付与すれば、エンボス形状による質感の向上とインキ層3との相乗効果によって、本発明の不燃性化粧シートの意匠性を大きく高めることができる。トップフィルム層2が塩化ビニル樹脂を含有することで、エンボス加工により凹凸形状を付与でき、かつ、成形時に凹凸形状を維持できる。ここで、エンボス加工による凹凸形状の付与は、転写率が60%以上であることが好ましい。上記転写率は、エンボス加工用の型(例えば、エンボスロール)に設けられた凹凸の深度に対する、フィルムに転写された凹凸の深度の割合を示し、例えば、型の凹凸深度が100μmで、フィルムの凹凸深度が50μmの場合、転写率は50%である。また、上記凹凸深度は、JIS B 0601(1994)に規定された最大高さ(Ry)に基づく値である。
【0035】
トップフィルム層2は、インキ層3の意匠性をより高めるために、透明性が高いことが好ましく、具体的には、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0036】
[インキ層]
インキ層3は、染料又は顔料を含有する加飾層である。インキ層3を配置することで、不燃性化粧シート10の意匠性を高めることができる。インキ層3は、樹脂組成物に染料又は顔料を添加した有色フィルムであってもよいし、樹脂組成物からなるフィルムの表面の少なくとも一部に文字、図柄等が印刷された印刷層であってもよい。上記染料又は上記顔料は、特に限定されず、不燃性化粧シートの分野において通常使用されるものを用いることができる。
【0037】
インキ層3に用いられる樹脂組成物としては、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、プロピレン、スチレン等のオレフィン;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸ジエステル;フマル酸ジブチル、フマル酸ジエチル等のフマル酸ジエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらは、単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
【0038】
[ベースフィルム層]
不燃性化粧シート10の支持体としての役割を有するものであり、インキ層の下地材としての役割も有する。ベースフィルム層4は、塩化ビニル樹脂を含有する。PVCフィルムは、難燃性が高いため、不燃性化粧シート10の支持体として用いることで、総発熱量の上昇を抑制することができる。
【0039】
ベースフィルム層4は、任意で、難燃剤として、臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを含有する。ベースフィルム層4は、上記塩化ビニル樹脂100重量部に対して、臭素系難燃剤を0~15重量部、三酸化アンチモンを0~10重量部含有する。上記臭素系難燃剤の含有量が15重量部を超えても、上記三酸化アンチモンの含有量が10重量部を超えても、臭素系難燃剤がベースフィルム層4からブルームし、インキ層3及び/又は粘着剤層5との密着性が低下する。上記臭素系難燃剤の含有量の好ましい上限は10重量部である。上記三酸化アンチモンの含有量の好ましい上限は8重量部である。
【0040】
ベースフィルム層4は、上記塩化ビニル樹脂100重量部に対して、上記臭素系難燃剤を1重量部以上、上記三酸化アンチモンを1重量部以上含有することが好ましい。上記三酸化アンチモンの含有量のより好ましい下限は2.5重量部である。
【0041】
ベースフィルム層4は、インキ層3よりも下層に配置されるため、ベースフィルム層4に臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを添加しても、これらの難燃剤に起因する不燃性化粧シート10の色調変化が視認され難い。上記臭素系難燃剤としては、後述する粘着剤層5に添加する臭素系難燃剤と同様のものを用いることができる。また、ベースフィルム層4中の塩化ビニル樹脂は、組成及び平均分子量等の点で、トップフィルム層2中の塩化ビニル樹脂と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0042】
ベースフィルム層4は、可塑剤を含有していてもよい。ベースフィルム層4中の可塑剤は、組成及び数平均分子量等の点で、トップフィルム層2中の可塑剤と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0043】
ベースフィルム層4における可塑剤の含有量は、上記塩化ビニル樹脂100重量部に対して、10~30重量部であることが好ましい。上記含有量が10重量部未満では、ベースフィルム層4が硬くなり過ぎることで、成形時にフィルムが破れてしまうおそれがある。一方、30重量部を超えると、ベースフィルム層4が柔らかくなり過ぎることで、ベースフィルム層4上にインキ層3を形成し難くなるおそれがある。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は、15重量部である。なお、トップフィルム層2及びベースフィルム層4は、積層されることから、基本的には同じ硬さであることが好ましい。そのため、トップフィルム層2及びベースフィルム層4は、厚さが同じであれば、可塑剤の含有量も同じであることが好ましい。
【0044】
ベースフィルム層4は、必要に応じて、安定剤、紫外線吸収材、着色剤、発泡剤、滑剤、改質剤、無機粒子や無機繊維等の充填剤、希釈剤等の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤としては、塩化ビニル樹脂に一般的に配合されるものを使用することができ、トップフィルム層2中の添加剤と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0045】
ベースフィルム層4の厚さは特に限定されないが、40~200μmであることが好ましい。上記厚さが40μm未満では、本発明の不燃性化粧シートが柔軟になり過ぎて施工性が低下するおそれや、耐候性が低下するおそれがある。一方、上記厚さが200μmを超えると、不燃性化粧シート10の総発熱量が増加するおそれがある。ベースフィルム層4の厚さのより好ましい下限は60μmであり、より好ましい上限は150μmである。
【0046】
ベースフィルム層4の表面には、インキ層3との密着性を向上させるために表面処理が施されてもよい。表面処理の種類としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等が挙げられる。
【0047】
[粘着剤層]
粘着剤層5は、粘着剤と、難燃剤として臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを含有する。粘着剤層5は、インキ層3よりも下層に配置されるため、粘着剤層5に臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを添加しても、これらの難燃剤に起因する不燃性化粧シート10の色調変化が視認され難い。粘着剤層5は、ベースフィルム層4よりも更に下層に配置されているため、ベースフィルム層4よりも、粘着剤層5に臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを添加する方が、色調変化が視認され難い。
【0048】
臭素系難燃剤を用いることで、臭素原子が、燃焼反応において中心的な働きをするOHラジカル、Hラジカルをトラップするため、少ない添加量でも高い難燃性が得られる。臭素原子が活性OHラジカルと反応すると、下記反応式(a)によりHBrを生成する。
Sb + HBr → 2SbOBr + HO (a)
更に、臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとを併用することで、臭化アンチモン(SbOBr)が生成し、ベースフィルム層の表面に被膜を形成する。上記臭化アンチモンは、下記式(b)~(d)の反応を繰り返し、最終的にSbになるため、燃焼を効果的に抑制することができる。
5SbOBr → SbBr + SbBr(b)
4SbBr → 5SbBr + SbBr(c)
3SbBr → 4Sb + SbBr (d)
【0049】
粘着剤層5は、粘着剤100重量部に対して、上記臭素系難燃剤を2~15重量部、上記三酸化アンチモンを2~15重量部含有する。上記臭素系難燃剤の含有量が2重量部未満であっても、上記三酸化アンチモンの含有量が2重量部未満であっても、充分な難燃性が得られず、総発熱量が増加する。一方、上記臭素系難燃剤の含有量が15重量部を超えても、上記三酸化アンチモンの含有量が15重量部を超えても、臭素系難燃剤が粘着剤層5からブルームし、粘着力が低下する。また、上記臭素系難燃剤又は三酸化アンチモンの含有量が多すぎると、粘着剤の凝集力が低下し、不燃性化粧シート10を一旦基材に張り付けた後、貼り直した場合に、上記基材表面に糊残りが発生し易くなる。上記臭素系難燃剤の含有量の好ましい下限は3重量部であり、好ましい上限は10重量部であり、より好ましい上限は6重量部である。上記三酸化アンチモンの含有量の好ましい下限は3重量部であり、好ましい上限は10重量部であり、より好ましい上限は6重量部である。
【0050】
上記臭素系難燃剤は、イソシアヌル酸化合物を含有することが好ましい。上記臭素系難燃剤中のイソシアヌル酸化合物の含有量は、90重量%以上であることが好ましい。
【0051】
上記イソシアヌル酸化合物は、イソシアヌル酸に臭素原子が直接結合していないことが好ましい。臭素原子がイソシアヌル酸に直接結合していないことで、融点が低くなるため、塩化ビニル樹脂と混ざりやすく、ブルームしにくい。
【0052】
上記イソシアヌル酸化合物は、分子量が700以上であることが好ましい。一方で上記分子量が大きくなると、塩化ビニル樹脂と混ざり難くなる傾向があり、上記分子量が1100を超えると、ベースフィルム層4からブルームしやすくなり、インキ層3、粘着剤層5との密着性が低下することがある。
【0053】
上記臭素系難燃剤は、下記化学式(1)で表されるイソシアヌル酸化合物を含有することが好ましい。
【0054】
【化2】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、Brを含む直鎖状又は環状の炭化水素基である。)
【0055】
上記式(1)中のR、R及びRは、同一又は異なって、Brを含む炭素数1~5の直鎖状の炭化水素基であることが好ましい。上記式(1)で表される化合物が一分子中に含有する臭素原子の数は、1個以上であればよいが、3個以上有することが好ましく、6個以上有することがより好ましく、9個以上有することが更に好ましい。上記臭素原子の数の上限は、特に限定されないが20個であることが好ましい。上記式(1)中のR、R及びRは、同一であることが好ましい。
【0056】
上記臭素系難燃剤は、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌル酸を含有することが好ましい。トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌル酸は、上記化学式(1)で表されるイソシアヌル酸化合物の具体例であり、下記化学式(1-1)で表される(分子量:728.69、融点:110℃)。
【0057】
【化3】
【0058】
上記粘着剤は、粘着剤層5を構成する主成分である。粘着剤層5は、粘着剤組成物全体に対して、上記粘着剤を60重量%以上含有することが好ましい。上記粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤を含有するものが挙げられる。なかでも、粘着性、加工性、耐熱老化性、耐湿老化性、耐候性に優れるとともに、比較的安価である点から、アクリル系粘着剤が好適に用いられる。
【0059】
上記アクリル系粘着剤は、アクリル系重合体を含む粘着剤である。上記アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体又はその共重合体等が挙げられる。
【0060】
粘着剤層5は、例えば、粘着剤、架橋剤(硬化剤)等を含有する粘着剤組成物を支持体上に塗工して塗膜を形成した後、該塗膜を加熱乾燥することによって硬化させる方法によって形成できる。上記架橋剤(硬化剤)は、粘着剤中の官能基と化学反応又は相互作用をして架橋させる化合物である。上記架橋剤としては、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の公知の架橋剤を用いることができる。
【0061】
上記粘着剤組成物は、本発明の不燃性化粧シートに要求される特性を阻害しない範囲で、必要に応じて、安定剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、粘着付与剤、染料、顔料、無機フィラー等の各種添加剤が添加されていてもよい。
【0062】
上記粘着剤組成物の塗工量は、5~90g/m(乾燥時重量換算)であることが好ましい。言い換えれば、上記粘着剤組成物を乾燥させた粘着剤層5の塗工量が5~90g/mであることが好ましい。上記塗工量のより好ましい下限は10g/mである。上記塗工量のより好ましい上限は60g/mである。
【0063】
粘着剤層5の厚さは、10~60μmが好ましい。上記厚さが10μm未満では、充分な粘着性を得ることができない場合がある。一方、上記厚さが60μmを超えると、不燃性化粧シート10の総発熱量が増加するおそれがある。粘着剤層5の厚さのより好ましい下限は20μmであり、より好ましい上限は50μmである。上記粘着剤層5の厚さは、乾燥後の厚さである。
【0064】
[セパレーター]
不燃性化粧シート10は、粘着剤層5のベースフィルム層4と反対側にセパレーターを設けてもよい。上記セパレーターを設けることにより、本発明の不燃性化粧シートの製造、運搬、保存中に粘着剤層5が露出しないようにして、粘着剤層5の劣化防止や、本発明の不燃性化粧シートの取扱い性向上が可能となる。セパレーターは、基材への貼付の直前に剥離すればよい。
【0065】
上記セパレーターは、特に限定されず、不燃性化粧シートの分野において通常使用されるものを用いることができる。上記セパレーターは、粘着剤層5を損傷することなく容易に剥離できるものが好適であり、樹脂フィルム(離型フィルム)、紙(離型紙)、紙と被覆層との積層フィルム等が挙げられる。上記離型フィルムとしては、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の樹脂フィルムが挙げられる。上記樹脂フィルムは、粘着剤層5と接触する面にシリコーン樹脂、フッ素樹脂等を塗布することによって易剥離処理が施されることが好ましい。上記離型紙としては、上質紙、グラシン紙等が挙げられる。
【0066】
不燃性化粧シート10は、有機樹脂層の総厚が100~500μmであることが好ましい。上記総厚が100μm未満であると、施工性が低下するおそれや、耐候性が低下するおそれがある。一方、上記総厚が500μmを超えると、総発熱量を抑制することが困難となるおそれがある。上記有機樹脂層の総厚とは、コーティング層1、トップフィルム層2、インキ層3、ベースフィルム層4及び粘着剤層5の厚さの合計をいう。上記有機樹脂層の総厚には、セパレーターの厚さは含まない。上記有機樹脂層の総厚のより好ましい下限は120μmであり、より好ましい上限は300μmである。
【0067】
不燃性化粧シート10は、総有機質量が300g/m以下であることが好ましい。上記総有機質量を300g/mとすることで、不燃性化粧シート10の総発熱量を充分に抑制することができる。上記総有機質量の下限は特に限定されないが、例えば、150g/mである。上記総有機質量は、不燃性化粧シートを構成する各層中に含まれる有機質系材料の重量の和から算出される。
【0068】
不燃性化粧シート10は、総発熱量が7.2MJ/m以下であることが好ましい。上記総発熱量は、建築基準法第2条第9号および建築基準法施行令第108条の2に基づく防耐火試験方法と性能評価規格に従うコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験における総発熱量である。上記総発熱量の測定は、(財)建材試験センターの「防耐火性能試験・評価業務方法書」の「発熱性試験方法」に準じて行われる。具体的には、厚さ12mm以上の石膏ボードを下地材として、防火材料の発熱性試験装置(コーンカロリーメーター)を用いて行う。上記石膏ボードは、原紙/石膏/原紙の順に積層されており、不燃材料の中では、最も発熱量が高い。そのため、石膏ボードを用いた発熱性試験に適合すれば、他の不燃材料についても発熱性試験に適合したとみなすことができる。加熱開始後20分間の総発熱量が7.2MJ/m以下であると、防火材料としての総発熱量の基準(8MJ/m以下)を充分に満たす。なお、本発明の不燃性化粧シート10は、上記「防耐火性能試験・評価業務方法書」に記載の「加熱開始後20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がないこと」及び「加熱開始後20分間、最高発熱速度が、10秒以上継続して200kW/mを超えないこと」の基準も満たす。
【0069】
不燃性化粧シート10は、従来公知の製造方法を利用して製造することができる。コーティング層1は、例えば、トップフィルム層2上に、バーコート法、ロールコート法、ブレードコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法等を用いて、樹脂組成物を塗工し、乾燥させる方法等の従来公知の方法を用いることができる。
【0070】
トップフィルム層2及びベースフィルム層4は、例えば、カレンダー成形、押出成形、射出成形等の従来公知の成形法によって作製することができる。上記カレンダー成形に用いられるカレンダー形式としては、例えば、逆L型、Z型、直立2本型、L型、傾斜3本型等が挙げられる。
【0071】
粘着剤層5の形成方法は特に限定されず、例えば、セパレーター上に直接バーコーター等を用いて、粘着剤組成物を塗工し、乾燥させる方法等の従来公知の方法を用いることができる。この場合、セパレーター上に形成した粘着剤層5を、ベースフィルム層4に貼り合わせることで本発明の不燃性化粧シートを製造することができる。本発明の不燃性化粧シートは、更に、必要に応じて、裁断、ロール状への巻き取り等の処理が行われる。
【0072】
本発明の不燃性化粧シートは、種々の基材に貼り付けて用いることができる。上記基材の材質は特に限定されないが、樹脂成形品等のプラスチック系基材、金属板、石膏ボード、木材、コンクリート等が挙げられる。本発明の不燃性化粧シートは、総発熱量が低減されているため、家屋の内装等に好適に用いることができる。家屋の内装に用いる場合には、本発明の不燃性化粧シートから上記セパレーターを剥離し、加熱を行わずに、上記粘着剤層を介して基材に貼り付けることもできる。
【実施例
【0073】
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<実施例>
実施例では、コーティング層、トップフィルム層、インキ層、ベースフィルム層、及び、粘着剤層の順で積層された化粧シートを作製した。
【0074】
(実施例1)
トップフィルム層として、平均重合度1000のポリ塩化ビニル(PVC)100重量部に対して、可塑剤としてフタル酸ジイソノニル(DINP)を27重量部添加し、PVCコンパウンドを得た。得られたPVCコンパウンドを、バンバリーミキサーで溶融混練した後、逆L字型カレンダーにてシート状に成形し、厚さ80μmのPVCフィルムを作製した。
【0075】
ベースフィルム層として、平均重合度1000のPVC100重量部に対して、臭素系難燃剤として下記化学式(1-1)で表されるトリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌル酸を9.9重量部、三酸化アンチモンを2.6重量部、可塑剤としてフタル酸ジイソノニル(DINP)を28重量部添加し、PVCコンパウンドを得た。得られたPVCコンパウンドを、バンバリーミキサーで溶融混練した後、逆L字型カレンダーにてシート状に成形し、厚さ45μmのPVCフィルムを作製した。
【0076】
【化4】
【0077】
上記ベースフィルム層上に厚さ1μmのインキ層を形成し、上記インキ層を挟むように、上記ベースフィルム層と上記トップフィルム層とを熱ラミネートにより積層した。上記トップフィルム層上に、コンマバーコーターにて乾燥厚さが6μmとなるようにウレタン系樹脂(大日精化工業株式会社製、レザミンME3134LP)7g/mを塗工し、コーティング層を形成し、コーティング層、トップフィルム層、インキ層、及び、ベースフィルム層の順で積層された積層体を得た。
【0078】
次に、アクリル系粘着剤(綜研化学製、SK1502C)100重量部に対して、イソシアネート系硬化剤(東ソー株式会社製、L-55E)を2.0重量部、上記トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌル酸を含有する臭素系難燃剤を5.4重量部、三酸化アンチモンを4.8重量部添加し、粘着剤組成物を調製した。セパレーターとして厚さ40μmのPETフィルム(東レ社製「ルミラー(登録商標)」)を用意し、一方の面に、コンマバーコーターにて乾燥厚さが42μmとなるように、得られた粘着剤組成物を塗工し、粘着剤層を得た。次に、粘着剤層を介してセパレーターと上記積層体とを貼り合わせ、セパレーター上に形成された粘着剤層を上記積層体のベースフィルム層側に転写した。これにより、実施例1の不燃性化粧シートを得た。実施例1の不燃性化粧シートの総有機質量は263.5 g/m、総厚は174μmであった。
【0079】
(実施例2、3、及び、比較例1~5)
粘着層における、臭素系難燃剤及び/又は三酸化アンチモンの含有量を変更した点以外は、実施例1と同様にして実施例2、3、及び、比較例2~5に係る不燃性化粧シートを作製した。また、ベースフィルム層及び粘着剤層に、臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを添加しなかった点以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る不燃性化粧シートを作製した。実施例及び比較例について、ベースフィルム層の構成、粘着剤層の構成、不燃性化粧シートの総有機質量、及び、総厚を下記表1に示した。
【0080】
(評価試験)
実施例及び比較例で作製した不燃性化粧シートについて、下記の方法により、(1)総発熱量、(2)ブルームの発生、及び、(3)色調変化を評価した。結果を下記表1に示した。
【0081】
(1)総発熱量
厚さ12.5mmの石膏ボートに不燃性化粧シートを張り付けた後、(財)建材試験センターの「防耐火性能試験・評価業務方法書」及び「防火材料の発熱性試験装置(コーンカロリーメーター)」に基づきコーンカロリーメーター燃焼試験を行い、総発熱量(MJ/m)を測定した。実施例及び比較例では、総発熱量の目標値を7.2MJ/m以下とした。
【0082】
(2)ブルーム(吹き出し)の発生
測定方法60℃、常湿で1週間放置する試験と、測定方法50℃、湿度95%で1週間放置する試験とを行った。それぞれのサンプルについて、粘着剤層に添加した難燃剤が表面に吹き出していないかを、不燃性化粧シートを粘着剤層側から目視にて観察し、吹き出しが確認されなければ○、吹き出しが確認されれば×とした。
【0083】
(3)色調変化
不燃性化粧シートを上層側から目視にて観察し、白濁が確認されなければ○、白濁が確認されれば×とした。
【0084】
【表1】
【0085】
実施例1~3のいずれも、総発熱量を7.2MJ/m以下とすることができた。一方で、ベースフィルム層及び粘着剤層に、臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを添加しなかった比較例1は、総発熱量が高かった。ベースフィルム層にのみ、臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを添加した比較例2、粘着剤層に添加した臭素系難燃剤及び/又は三酸化アンチモンの含有量が少なかった比較例3~5は、比較例1よりは総発熱量を抑制できるものの不充分であった。
【符号の説明】
【0086】
1:コーティング層
2:トップフィルム層
3:インキ層
4:ベースフィルム層
5:粘着剤層
10:不燃性化粧シート
図1