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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】投影露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20221021BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018033114
(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公開番号】P2019148693
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(72)【発明者】
【氏名】六川 裕樹
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-178347(JP,A)
【文献】特開2005-303303(JP,A)
【文献】特開2005-045160(JP,A)
【文献】特開2011-233781(JP,A)
【文献】特開2013-069986(JP,A)
【文献】特開2007-318121(JP,A)
【文献】特開2005-286062(JP,A)
【文献】特開2009-239018(JP,A)
【文献】特開2005-209706(JP,A)
【文献】特開2017-010067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源の出射光の照度を照明光均一化手段により均一化してレチクルに照射する照明光学系と、
前記照明光均一化手段の光束が通過する開口を有し、前記照明光均一化手段の出口面の近傍において前記照明光均一化手段の光軸を中心として回転し、前記光軸と垂直の取り付け面を有する回転体と、
前記取り付け面に対して取り付けられ、前記光軸に接近又は離間するように移動する直動部を有する直動機構と、
前記直動部に着脱自在に取り付けられた支持板と、
前記支持板に設けられた駆動手段と、
前記取り付け面上に位置し、前記駆動手段によって回動される遮光板とを備え、
前記遮光板が、前記照明光学系の光束の一部を遮光するための異なる曲率の複数のエッジを有し、前記複数のエッジのうちで前記駆動手段によって一つのエッジが選択され、
選択されたエッジを用いて前記照明光学系の光束の一部を遮光するようにした投影露光装置。
【請求項2】
前記レチクルと共役位置又は該共役位置の近傍に前記出口面及び前記遮光板が配置されるようにした請求項1に記載の投影露光装置。
【請求項3】
前記遮光板は、外周側に前記複数のエッジを有し、内周側に円弧状切欠きが形成された請求項1又は2に記載の投影露光装置。
【請求項4】
前記遮光板の外周側に前記複数のエッジが少なくとも3つ設けられている請求項3に記載の投影露光装置。
【請求項5】
前記遮光板の前記内周側の円弧状切欠きの内側に、前記駆動手段の回転軸が位置する請求項3に記載の投影露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステップアンドリピートによってウエハにパターンを露光する投影露光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投影露光装置は、半導体デバイスや液晶表示装置などの製造工程に含まれるリソグラフィー工程において、原版としてのレチクルのパターンを、投影光学系を介して感光性の基板(表面にレジスト層が形成されたウエハ)に転写する装置である。ウエハを移動させて順次パターンを露光するステップアンドリピート方式では、ウエハのステップ移動と露光とが交互に繰り返される。露光位置がウエハエッジ(周辺部)にきた際に、エッジ端から所定の範囲を露光しない機能が存在する。このようなウエハ周辺非露光機能は、WEM(ウエハエッジマスキング)と称する。
【0003】
WEMは、例えば、ネガ型フォトレジストの場合は、周辺部を露光しないことによって、現像時にウエハエッジの余分なフォトレジストが除去される。あるいは、ポジ型フォトレジストの場合は、別途周辺露光装置を用いてウエハエッジを露光する際の、ウエハエッジの露光ムラ(投影露光装置と周辺露光装置とによる部分的な二重露光)を防ぐためにWEMが使用される。
【0004】
WEMの技術としては、ウエハ上に遮光板を設ける機構と、レチクル共役位置に遮光板を設ける機構とが知られている。例えば特許文献1には、ワークチャック上にリング状遮光板を搬入・搬出する機構が記載されている。また、特許文献2には、ウエハの上方に遮光帯を設けることが記載されている。遮光帯が複数の曲率を有し、遮光帯を回転及び移動させることが特許文献2に記載されている。さらに、特許文献3には、レチクル共役位置に遮光板を設ける機構が記載されている。
【0005】
ウエハ上で遮光するWEMは、構造が比較的簡単であり、複雑な制御を必要としない。その反面、ウエハ上に設けられ、遮光体を動かすための可動部からのパーティクルによるウエハの汚染、あるいは遮光部とウエハの接触等によるウエハ損傷に対して、部品選定、メンテナンス等に関して注意が必要であった。また、ウエハに離間して遮光板を設けるので、その分、遮光境界にボケが発生する問題があった。
【0006】
レチクル共役位置で遮光するWEMは、リレーレンズ等の光学要素が増えることによって、光量が低下し、また、遮光板の移動機構や制御が複雑であるという問題があった。その反面、ウエハの汚染やダメージの心配がなく、遮光境界のボケも少ない利点がある。これらの二つの方式の特徴を考慮すると、高精度な露光を要求される投影露光装置になるほど、レチクル共役位置でのWEMを採用するメリットが大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2005-505147号公報
【文献】特開2005-045160号公報
【文献】特開2011-233781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ウエハの非露光領域の幅を変更する場合、又は非露光領域の幅は変わらないが、ウエハの径が変わる場合には、非露光領域の境界線の曲率を変更する必要がある。すなわち、境界線と一致したエッジを有する遮光板へ交換する必要がある。しかしながら、照明光学系の照明光均一化のためのレンズの出口部のスペースが狭く、この狭いスペースにおいて、遮光板の交換作業を行うことは、照明光均一化用のレンズを傷つけるおそれがあり、また、遮光板の取り付け精度を交換の都度調整することが面倒であった。
【0009】
すなわち、光学設計上は、遮光板とロッドレンズ出口は、どちらもレチクル共役位置に設置するのが理想である。しかしながら、可動部の干渉を避けるために、両者の間にギャップを設ける必要があり、このギャップは、狭い方が望ましい。ギャップを広げた場合には、以下のようなデメリットが生じる。
【0010】
ロッドレンズ出口がレチクル共役位置から遠ざかるほど、レチクルを照射する光の照度分布が悪くなる。
遮光板がレチクル共役位置から遠ざかるほど、遮光板の投影像のエッジ部にボケが生じ、現像した時にボケの部分でフォトレジスト断面が斜めの形状となる。
【0011】
このような理由で、レンズ出口部の遮光板の取り付けスペースが狭いものとなり、上述したような問題が生じる。特許文献2には、遮光帯を回転及び移動させる機構についての開示がなく、狭いスペースに遮光帯を設けることについての考慮が何ら払われていない。
【0012】
したがって、本発明の目的は、照明光均一化手段の出口に近接した狭いスペースに遮光板を含む遮光機構を配置可能な投影露光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、光源の出射光の照度を照明光均一化手段により均一化してレチクルに照射する照明光学系と、
照明光均一化手段の光束が通過する開口を有し、照明光均一化手段の出口面の近傍において照明光均一化手段の光軸を中心として回転し、光軸と垂直の取り付け面を有する回転体と、
取り付け面に対して取り付けられ、光軸に接近又は離間するように移動する直動部を有する直動機構と、
直動部に着脱自在に取り付けられた支持板と、
支持板に設けられた駆動手段と、
取り付け面上に位置し、駆動手段によって回動される遮光板とを備え、
遮光板が、照明光学系の光束の一部を遮光するための異なる曲率の複数のエッジを有し、複数のエッジのうちで駆動手段によって一つのエッジが選択され、
選択されたエッジを用いて照明光学系の光束の一部を遮光するようにした投影露光装置である。
【発明の効果】
【0014】
少なくとも一つの実施形態によれば、遮光板が異なる曲率の複数のエッジを有するので、エッジを切り替えることによって、非露光領域の幅の変更、ウエハの径の変更に対応することができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本発明中に記載されたいずれかの効果又はそれらと異質な効果であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る露光装置の構成を示す図である。
図2図2は、一実施の形態における遮光板の正面図、平面図及び側面図である。
図3図3は、一実施の形態における遮光機構の断面図である。
図4図4は、一実施の形態における遮光板移動機構を示す図である。
図5図5は、露光動作の説明に使用するウエハの平面図である。
図6図6は、遮光板の他の例の正面図である。
図7A図7A及び図7Bは、本発明の一実施の形態の処理の流れを示すフローチャートである。
図7B図7A及び図7Bは、本発明の一実施の形態の処理の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、遮光板移動機構の他の構成例を示す図である。
図9図9は、遮光板移動機構のさらに他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態等について図面を参照しながら説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
<1.一実施の形態>
<2.変形例>
以下に説明する実施の形態等は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容がこれらの実施形態等に限定されるものではない。
【0017】
<1.一実施の形態>
「装置構成」
図1は本発明の投影露光装置の一実施の形態の概略構成図である。投影露光装置は、光源1と、光源1の出射光を均一な照度の照明光とする照明光学系4を有する。照明光学系4からの照明光がパターンの原版であるレチクル(フォトマスク)8に照射される。レチクル8の像が投影光学系12によってウエハ13に投影される。
【0018】
ウエハ13は、露光ステージ(ワークチャック)14上に載置されている。露光ステージ14は、ステージ移動機構15によって移動される。ステージ移動機構15及び光学系(光源1、照明光学系4、投影光学系12)が架台16によって支持される。なお、図1において、各要素は主要な光軸に沿った断面図で表示されており、その際のハッチングは省略されている。
【0019】
光源1は、g、h、i線を含むブロードバンドな光を放射するUVランプである。また、集光ミラーとして楕円ミラー2が設けられている。光源1の光をミラー3によって反射して照明光学系4のロッドレンズ5の入口に向けて集光する。ロッドレンズ5は、ロッドレンズ支持部6によって支持されている。光源1として水銀ランプ、レーザなどを使用してもよい。
【0020】
照明光学系4は、ロッドレンズ5と、クリティカル照明レンズ群7を備える。ロッドレンズ5は、多角形の断面を有する透明体であり、内面反射によって照明光均一化手段として機能する。照明光均一化手段としては、ロッドレンズに限らず、内面反射鏡(複数の鏡を内向きに貼り合せたような多角形の筒)を使用してもよい。
【0021】
クリティカル照明レンズ群7は、ロッドレンズ5の出口面の像を所定の倍率(例えば2倍)で拡大してレチクル8に照射する。なお、図ではクリティカル照明レンズ群7を四角形で省略しているが、複数のレンズ(例えば10枚のレンズ)で構成されている。また、照明光学系4は、後述する遮光機構(WEM機構)11を備えている。
【0022】
レチクル8は、例えば石英ガラス製のもので、転写されるべき所定のパターン(例えば回路パターン)が描画された透過型のフォトマスクである。レチクル8は、レチクルステージ9によって支持されている。また、アライメントカメラ10が設けられ、アライメントカメラ10によってレチクル8に設けられたアライメントマークを撮像可能となっている。
【0023】
投影光学系12は、例えばダイソン光学系であり、入口及び出口の平面ミラーと、レンズ群と、折り返しの凹面ミラーとを備えている。一実施の形態では、投影光学系12の倍率は等倍である。図1ではレンズ群を省略して1つのレンズのみを示しているが、実際は複数のレンズから構成されている。なお、一実施の形態においては、ダイソン光学系を例にとっているが、投影光学系12の種類や構成、倍率等は問わない。
【0024】
ウエハ13は、例えば単結晶シリコンの表面上にフォトレジスト(感光剤)が塗布されたシリコンウエハである。単結晶シリコン製のもの以外にも、ガラス、サファイヤ、又は化合物からなる場合もある。ウエハ13の形状は円形で、直径は例えば300mmである。
【0025】
パターン露光領域のみならず、ウエハ13の周辺部の少なくとも一部にもフォトレジストが塗布されている。フォトレジストは、紫外線を用いてパターンを形成する感光材料である。フォトレジストとしては、ポジ型、ネガ型のいずれであってもよい。ウエハ13の周辺部には所定の非露光領域が設定されている。例えばウエハ13のエッジ全周にわたって幅5mmが非露光領域とされる。ウエハ13の周辺に、ウエハの角度アライメントのためのノッチやオリフラを設けてもよい。
【0026】
露光ステージ14がウエハ13を吸着保持する。不図示のロボットハンドを用いて、ウエハ13がプリアライナー(不図示)から搬送され、基板搬送位置に待機する露光ステージ14上に載置される。図1において、基板搬送位置を2点鎖線で示す。また、同じく基板搬送位置にて露光ステージ14上からウエハ13が搬出され、ウエハカセット(不図示)へ搬送される。なお、露光ステージ14に、ロボットハンドとウエハの受け渡しを行うためのリフトピン等を設けても良い。
【0027】
露光ステージ14がステージ移動機構15によって、X,Y,θ方向に移動される。ウエハ13の表面(二次元平面)をX方向及びY方向で規定し、回転方向をθで規定する。ステージ移動機構15は、ステップ露光のための移動と、ウエハアライメントの微小な移動とを行なう。また、ウエハ13の焦点合わせのため、Z方向の移動及び露光ステージの傾き調整を行う機構を備える。また、ステージ移動機構15は、ウエハ搬送位置と、アライメント位置(不図示)、露光位置の各ポジション間の移動を行う。
【0028】
投影露光装置は、露光ステージ14と光学系を設置するための架台16を備える。アライメントカメラ10が架台16に取り付けられている。投影露光装置は、ウエハカセット、ウエハ搬送ロボット、プリアライナー等を備えているが(いずれも不図示)、これらは架台16に設置されてもよく、あるいは架台16とは別に設置してもよい。また、投影露光装置は、装置全体を覆う空調チャンバーを有しても良い。
【0029】
「遮光板」
一実施の形態では、照明光学系4のウエハ13の共役面に遮光板17が設置されている。また、遮光板17はロッドレンズ5の出口部に位置する。具体的には、遮光板17に近接した位置にロッドレンズ5の出口面が位置するようになされる。このように、ロッドレンズ5の出口面から僅かに離間した位置までをロッドレンズ5の出口部と称する。離間距離は、例えば遮光板17に対して3mmの間隔でロッドレンズ5の出口面が位置する。なお、3mm以外の間隔でもよいが、なるべく狭い間隔が望ましい。また、ロッドレンズ5の出口面を共役面と一致させてもよい。図2はウエハ13の周辺非露光領域に沿って光を遮光するための遮光板17の一例の正面図、平面図及び側面図を示し、図3は、遮光機構11を拡大して示し、図4は、出射面から見た遮光機構11を示す。
【0030】
遮光板17は、レチクル8と同様の材質例えば石英ガラスの板に対して黒色の遮光剤を被着させたものである。遮光板17は、内周側に円弧状切欠きR0を有し、外周側に半径が異なる(すなわち、曲率が異なる)4個の円弧状のエッジR1,R2,R3及びR4を有する形状である。また、取付穴18a,18b及び18cが形成され、取付穴18a,18b及び18cによって図4に示すように、リング状ホルダ19が取り付けられる。リング状ホルダ19は、例えば金属からなり、遮光板17が補強されている。
【0031】
さらに、遮光板17の円弧状のエッジ部分は、照明光学系のNA(開口率)に応じたテーパ形状の断面を有する。テーパ形状は、非露光領域以外では出射光の光量の減少を防止するためである。なお、実施例での遮光板の円弧状のエッジは4つあるが、これに限定する必要は無い。例えば2つの円弧状エッジを持つ遮光板としても良い。異なる曲率のエッジを遮光板17が有するので、異なる半径のウエハ13の非露光領域に対応することができ、遮光板17をウエハ13の非露光領域の半径に応じて交換する必要がない利点がある。
【0032】
「遮光板移動機構」
遮光板17は、遮光板移動機構によってその位置が変位される。遮光板移動機構は、直動機構23と第1θ軸機構と第2θ軸機構とを備えている。そして、遮光板17及び遮光板移動機構によって可変遮光手段が構成されている。図4に示すように、遮光板17の内側の円弧状切欠きR0又はリング状ホルダ19の内側の円弧が円弧切替モータ20の回転軸に取り付けられている。円弧切替モータ20がベースプレート21に対して固定されている。ベースプレート21が着脱用ネジ22a及び22bによって直動機構23に対して装着される。すなわち、遮光板17及び円弧切替モータ20が予め取り付けられているベースプレート21が直動機構23に対して着脱自在とされている。したがって、円弧切替モータ20及びベースプレート21と一体に遮光板17が交換される。なお、円弧切替モータ20によって遮光板17を回転させるための機構を第2θ軸機構と称する。
【0033】
直動機構23は、ボールネジ等の単軸アクチュエータであり、遮光板17及び円弧切替モータ20を直線的に変位させる機構である。直動機構23によって、照明光学系4の光軸に対して遮光板17のエッジを接近又は離間される。直動機構23は、非露光領域の幅に対応して遮光板17のエッジの位置を設定するものである。
【0034】
第1θ軸機構は、照明光学系の光軸を中心にして遮光板17を回転させる回転機構である。図3に示すように、中空モータ24が設けられ、中空モータ24によって中空シャフト25が回転される。中空モータ24は、スリップリング等の回転ケーブル部26を備えている。
【0035】
中空シャフト25内にロッドレンズ5を有するロッドレンズ支持部6が設置される。例えば中空シャフト25の中心とロッドレンズ5の光軸が一致するようになされる。ロッドレンズ支持部6は、ロッドレンズ5の入口側が筐体に固定され、出口側は中空シャフト25内に設けられたベアリング27によって支持される。但し、ベアリング27によってロッドレンズ5の出口側を支持せずに、入口側のみでロッドレンズ5及びロッドレンズ支持部6を支持する片持ち構成であってもよい。
【0036】
ロッドレンズ支持部6は、ロッドレンズ支持部6に設けた導路(不図示)に冷媒を流すことでロッドレンズ5を冷却するロッドレンズ冷却機構を備える。また、ロッドレンズ支持部6に設けた別の導路(不図示)を通じて気体を遮光板17に噴射することで遮光板17を冷却する遮光板冷却機構を備えている。
【0037】
中空シャフト25のロッドレンズ5の出口側に回転ステージ28が取り付けられている。回転ステージ28は、円板状でその中心位置に中空シャフト25の先端が固着される。回転ステージ28には、取付部を介して直動機構23が取り付けられている。例えば回転ステージ28の径方向と直動機構23の直線運動の方向が一致するようにされている。上述したように、直動機構23に対しては、遮光板17及び円弧切替モータ20を有する第2θ軸機構が取り付けられている。したがって、中空シャフト25が中空モータ24によって回転されると、回転ステージ28、直動機構23及び第2θ軸機構が一体に回転する。
【0038】
さらに、遮光板移動機構には、光軸を挟んで遮光板17と対向する位置に、遮光板17の位置検出センサ29が設けられている。位置検出センサ29は、遮光板17と一緒に回転するように、回転ステージ28に取り付けられており、常に遮光板17と対向する位置を保持し、遮光板17が目標位置に対して正しい位置にあるか(例えば遮光板17の突出量が設定値通りであるか)は、都度、位置検出センサ29によって確認されている。位置検出センサ29としては、レーザを用いた位置計測センサや、カメラを用いた画像認識センサ等が用いられる。
【0039】
位置検出センサ29の検出出力が制御部(不図示)に対して供給される。制御部が直動機構23の駆動モータなどを制御して遮光板17が目標位置に対して正しい位置となるようにされる。この制御によって非露光領域MAの境界と遮光板17のエッジの位置が一致される。さらに、制御部によって、投影露光装置の各構成要素の動作及び調整などを制御し得る。制御部は、例えばコンピュータなどで構成され、各構成要素に伝送路を介して接続され、プログラムなどにしたがって各構成要素の制御を実行し得る。また、制御部に対して遮光板17の目標位置と関連するパラメータ(曲率、遮光幅、ウエハサイズ、露光範囲のサイズ等)は、予め制御部に対して設定され、また、レシピによって、制御データが露光範囲の位置に関連づけて管理されている。
【0040】
「遮光動作」
図5はウエハ13に対するステップアンドリピート露光動作を示す図である。図5の例では、41回の露光を行う。1回の露光範囲(以下ショットと適宜称する)を矩形で示しており、十字はショットの中心(光軸の位置)を示している。1回のショットの矩形は、基本的にはレチクル8によって定められる。ショットを規定するためのブラインド等を設置してもよい。
【0041】
ウエハ13の外周から内側の境界までの所定の幅の非露光領域MAが設定される。遮光板17によって非露光領域MAに対して光が入射しないようになされる。非露光領域MAが含まれる周辺のショットにおいて遮光がなされる。ショットが非露光領域MAにかからない位置の露光動作の際には、遮光板17がロッドレンズ5から退避する位置に後退している。
【0042】
図5においては、ウエハ13の左上の部分の例に関して、遮光板17による遮光領域をSAで表し、非露光領域MAがかかるショットをEA1及びEA2で表している。露光エリアが非露光領域MAに掛かるショット(EA1、EA2)においては、遮光板17が非露光領域MAを遮光する分だけロッドレンズ5の光軸に向かって接近し、照明光の一部を遮光する。また、ショットEA1、EA2における非露光領域MAの角度に応じて、第1θ軸機構(中空モータ24、回転ステージ28を有する)が回転する。すなわち、遮光板17のエッジが非露光領域MAを規定する内側の境界の円弧と一致するようになされる。その結果、遮光領域SAが露光領域(EA1、EA2)と非露光領域MAに応じて位置決めされる。
【0043】
ウエハ13の非露光領域MAの幅を変更する場合、又は非露光領域MAの幅を変えずにウエハ13を異なる半径のものに交換する場合には、遮光領域SAの曲率を変更する必要が生じる。これらの場合は、円弧切替モータ20を有する第2θ軸機構(円弧切替モータ20を有する)によって遮光板17を回転させ、遮光板17の円弧状エッジを切り替えることで、対応することが可能である。遮光板17が複数の曲率のエッジを有することによって、遮光板17を交換しないで、非露光領域を規定する境界の曲率を変更することができる。
【0044】
「遮光板の形状の他の例」
図6に示すように、二つの曲率R5及びR6のエッジを有し、内側に円弧状切欠きR0を有する遮光板17' を使用してもよい。すなわち、遮光板は、2以上の異なる曲率のエッジを持つことが必要である。
【0045】
「投影露光装置の動作」
図7A及び図7Bのフローチャートを参照して、制御部の制御によってなされる投影露光装置の動作について説明する。図7A及び図7Bは、図面の作図スペースの制約上、一連の処理の流れを二つの図面に分割して示すものである。また、図7A及び図7Bに向かって左側に示す処理の流れは、露光ステージ14及びウエハ搬送装置の動作を示しており、右側に示す処理の流れは、遮光機構の動作を示す。さらに、図7A及び図7Bにおいては、作図スペースの制約上、各構成要素に関する参照符号を省略している。
【0046】
ステップS0:処理が開始される。
ステップS1:露光ステージ14をウエハ搬送位置に移動する。
ステップS2:搬送アームが所定方向からウエハ13を露光ステージ14まで搬送する。
ステップS3:露光ステージ14がウエハ13を吸着する。
ステップS4:露光ステージ14をアライメント位置に移動する。
ステップS5:アライメントカメラ10がウエハ13のアライメントマークを検出し、ウエハ13の位置を検出する。
ステップS6:露光ステージ14を最初の露光位置に移動する。
【0047】
露光ステージ14及びウエハ搬送装置によるステップS1~S6の処理と並行して遮光機構がステップS101及びS102の処理を行う。
ステップS101:第1θ軸機構と直動機構23が遮光板17を原点に移動させる。
ステップS102:第1θ軸機構と直動機構がショット開始位置まで遮光板17を移動させる。
【0048】
露光ステージ14及びウエハ搬送装置により、次の判定がなされる。
ステップS7:ウエハ13のショット中心に対して遮光板17がレシピ通りの位置に止まっているかどうかの判定がなされる。
ステップS8:ステップS7の判定結果が肯定の場合、露光シャッタを動作させ,露光がなされる。
ステップS103:ステップS7の判定結果が否定の場合、遮光板17の位置調整を行い、ステップS7の判定が再度なされる。ステップS7の判定結果に応じてステップS8又はS103がなされる。
【0049】
続いて図7Bに示す処理がなされる。
ステップS9:露光ステージ14が次のショットエリアに移動する。
ステップS104:ステップS9の処理と並行して第1θ軸機構と直動機構23が次ショットの遮光位置まで遮光板17を移動する。
【0050】
露光ステージ14及びウエハ搬送装置により、次の判定がなされる。
ステップS10:ウエハ13のショット中心に対して遮光板17がレシピ通りの位置に止まっているかどうかの判定がなされる。
ステップS11:ステップS10の判定結果が肯定の場合、露光シャッタを動作させ,露光がなされる。
ステップS105:ステップS10の判定結果が否定の場合、遮光板17の位置調整を行い、ステップS10の判定が再度なされる。ステップS10の判定結果に応じてステップS11又はS105がなされる。
ステップS12:以下、繰り返してステップS9,S10,S11,S105の処理がなされる。
【0051】
ステップS13:最後のショットを露光する。
ステップS14:露光ステージ14をウエハ13搬送位置に移動する。
ステップS15:露光ステージ14のウエハ13吸着を解除する。
ステップS16:搬送アームで露光ステージ14からウエハ13を搬送する。
【0052】
露光ステージ14及びウエハ搬送装置によるステップS13~S16の処理と並行して遮光機構がステップS106の処理を行う。
ステップS106:遮光板17を原点位置に移動させる。
ステップS17:処理が終了する。
【0053】
「直動機構の他の例」
図8に示すように、直動機構の軸(変位方向)を光軸と垂直に交わらないように、直動機構を斜めに配置してもよい。上述した直動機構を示す図4と同様の参照符号を付して示す。このような配置によって遮光板移動機構の高さを低くすることができる。
【0054】
「直動機構のさらに他の例」
図9に示すように、アーム30の一端側に遮光板17、リング状ホルダ19及び円弧切替モータ20を取り付け、アーム30の他端側を直動機構31に取り付ける。アーム30の延長方向と直動機構31の軸方向(変位方向)が直交するようになされる。かかる構成によって直動機構及び第2θ軸機構の形状を小型化することができる。
【0055】
<2.変形例>
以上、本技術の一実施の形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の一実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。また、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料及び数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料及び数値などを用いてもよい。
【0056】
以上、本発明によれば、所望の非露光領域を形成する可変遮光手段を省スペースな構成とすることができる。したがって、照明光均一化手段の出口部に可変遮光手段を設けることができ、光量の低下を防止することができる。
【0057】
また本発明によれば、エッジの切替部を含むユニット単位で遮光板の交換を可能とすることによって、交換作業が容易となり、ロッドレンズ等の光学素子を傷つけることを防止でき、取り付け精度を高くすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1・・・光源、4・・・照明光学系、5・・・ロッドレンズ、
6・・・ロッドレンズ支持部、8・・・レチクル、10・・・アライメントカメラ、
11・・・遮光機構、12・・・投影光学系、13・・・ウエハ、
14・・・露光ステージ、15・・・ステージ移動機構、17・・・遮光板、
19・・・リング状ホルダ、20・・・円弧切替モータ、23・・・直動機構、
24・・・中空モータ、25・・・中空シャフト、28・・・回転ステージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9