(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】RFIDタグ及びこれが貼り付けられた帳票
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20221021BHJP
【FI】
G06K19/077 144
G06K19/077 280
G06K19/077 224
G06K19/077 248
(21)【出願番号】P 2018084866
(22)【出願日】2018-04-26
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】トッパン・フォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】水流 慶太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴見 哲
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-299053(JP,A)
【文献】特開2010-262091(JP,A)
【文献】特開2007-233528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00-19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミからなる非接触通信用のアンテナを有するRFIDタグであって、
前記アンテナを挟み込むポリエチレンテレフタレートからなる第1及び第2のPET層と、
前記第1及び第2のPET層と同一の外形を具備し、前記第1のPET層の前記アンテナとは反対側に積層されて前記RFIDタグの最表面を構成するポリプロピレンからなる表面シートとを有
し、
前記アンテナは、前記第1のPET層の一方の面に形成され、
前記第2のPET層は、表裏に粘着層が積層され、
前記粘着層のうち、前記第2のPET層の前記第1のPET層とは反対側の面に積層された粘着層のみによって繊維質系シートに貼着される、RFIDタグ。
【請求項2】
請求項
1に記載のRFIDタグにおいて、
前記表面シートは、前記アンテナが透視困難に着色されている、RFIDタグ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のRFIDタグが貼着された帳票であって、
前記繊維質系シートからなり、
前記RFIDタグが貼着された面とは反対側に設けられ、情報が印字される管理情報表示領域と、
前記RFIDタグが貼着された面において、前記管理情報表示領域に情報を印字する際における当該帳票の搬送方向の先端側に設けられたタイミングマークとを有し、
前記RFIDタグは、前記タイミングマークに沿う領域に貼着され、
前記
RFIDタグが有するICチップに対するデータの書き込み及び前記管理情報表示領域に対する情報の印字が、前記タイミングマークが読み取られたタイミングに基づくタイミングで行われる、帳票。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース基材上にアンテナが形成され、非接触通信が可能なRFIDタグ及びこれが貼り付けられた帳票に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、情報化社会の進展に伴って、商品等に貼付されるタグに情報を記録し、このタグを用いて商品等の管理が行われている。このようなタグを用いた商品等の管理においては、タグに対して非接触状態にて情報の書き込みや読み出しを行うことが可能なICチップが搭載されたRFIDタグがその優れた利便性から急速な普及が進みつつある。
【0003】
RFIDタグは一般的に、ベース基材上にアンテナが形成されるとともにICチップが搭載され、外部に設けられたリーダライタとICチップとの間にてアンテナを介して非接触通信が行われる。このようなアンテナとしては、従来、銅箔をベース基材上に積層し、この銅箔をエッチング等によって所定の形状に加工することで構成されたものが一般的であったが、近年では、アルミからなるものが用いられている(例えば、特許文献1参照)。このようにアンテナをアルミから構成することにより、コストダウンを図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなRFIDタグは、上質紙等の繊維質系シートに貼着されて利用される場合が多い。その場合、繊維質系シートは、周囲の温度や湿度等の環境の変化によって伸縮しやすいため、繊維質系シートが伸縮した場合、アンテナがアルミから構成されていると、アンテナが繊維質系シートの影響を受け、RFIDタグの通信距離が短くなってしまうという問題点がある。
【0006】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、非接触通信用のアンテナがアルミからなるものであっても、繊維質系シートに貼着された場合に通信距離が短くなってしまうことを回避できるRFIDタグ及びこれが貼り付けられた帳票を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、
アルミからなる非接触通信用のアンテナを有するRFIDタグであって、
前記アンテナを挟み込むポリエチレンテレフタレートからなる第1及び第2のPET層と、
前記第1及び第2のPET層と同一の外形を具備し、前記第1のPET層の前記アンテナとは反対側に積層されて前記RFIDタグの最表面を構成するポリプロピレンからなる表面シートとを有し、
前記アンテナは、前記第1のPET層の一方の面に形成され、
前記第2のPET層は、表裏に粘着層が積層され、
前記粘着層のうち、前記第2のPET層の前記第1のPET層とは反対側の面に積層された粘着層のみによって繊維質系シートに貼着される。
【0008】
上記のように構成された本発明においては、アルミからなる非接触通信用のアンテナが、ポリエチレンテレフタレートからなる第1及び第2のPET層に挟み込まれており、さらに、第1のPET層のアンテナとは反対側にRFIDタグの最表面を構成するポリプロピレンからなる表面シートが積層されていることで、表面シートとは反対側を貼着面として繊維質系シートに貼着された場合、繊維質系シートが周囲の温度や湿度等の環境の変化によって伸縮したとしても、第1及び第2のPET層、並びに表面シートがこの伸縮に追従しないため、第1及び第2のPET層に挟み込まれたアンテナが繊維質系シートの伸縮の影響を受けなくなり、通信距離が短くなってしまうことが回避される。
【0009】
また、アンテナが、第1のPET層の一方の面に形成され、第2のPET層が、表裏に粘着層が積層されていることで、RFIDタグ単体でラベルとして使用できる。
【0010】
また、表面シートが、アンテナを透視困難に着色されていれば、被着体に貼着された状態において、被着体に表示された情報が読み取られる際に、アンテナを読み取り対象の情報として誤って読み取ってしまうことが回避される。
【0011】
また、上述したRFIDタグが貼着された帳票として、表面シートとは反対側を貼着面としてRFIDタグが貼着され、繊維質系シートからなるものが考えられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アルミからなる非接触通信用のアンテナが、ポリエチレンテレフタレートからなる第1及び第2のPET層に挟み込まれているとともに、第1のPET層のアンテナとは反対側にRFIDタグの最表面を構成するポリプロピレンからなる表面シートが積層されているため、表面シートとは反対側を貼着面として繊維質系シートに貼着された場合、繊維質系シートが周囲の温度や湿度等の環境の変化によって伸縮したとしても、アンテナが繊維質系シートの伸縮の影響を受けなくなり、通信距離が短くなってしまうことを回避できる。
【0013】
また、アンテナが、第1のPET層の一方の面に形成され、第2のPET層が、表裏に粘着層が積層されていることにより、RFIDタグ単体でラベルとして使用できる。
【0014】
また、表面シートが、アンテナを透視困難に着色されているものにおいては、被着体に貼着された状態において、被着体に表示された情報が読み取られる際に、アンテナを読み取り対象の情報として誤って読み取ってしまうことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のRFIDタグの実施の一形態を示す図であり、(a)は表面図、(b)は(a)に示したA-A’断面図、(c)は(b)に示した断面図を部材ごとに分解して示した図、(d)はインレイの貼着層との積層面の構成を示す図である。
【
図2】
図1に示した管理タグの使用方法を説明するための図であり、(a)は管理タグが貼着される管理用シートの表面の構成を示す図、(b)は管理タグが貼着された管理用シートの裏面の構成を示す図である。
【
図3】
図1に示した管理タグが
図2に示したように管理用シートに貼着された場合の効果を説明するための図である。
【
図4】本発明のRFIDタグの他の実施の形態を示す図であり、(a)は表面図、(b)は(a)に示したA-A’断面図、(c)は(b)に示した断面図を部材ごとに分解して示した図、(d)はインレイの貼着層との積層面の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明のRFIDタグの実施の一形態を示す図であり、(a)は表面図、(b)は(a)に示したA-A’断面図、(c)は(b)に示した断面図を部材ごとに分解して示した図、(d)はインレイ10の貼着層30との積層面の構成を示す図である。
【0018】
本形態は
図1に示すように、タック紙20と、インレイ10と、貼着層30と、剥離紙40とが積層されて構成されたラベル形態の管理タグ1である。
【0019】
タック紙20は、PP(polypropylene:ポリプロピレン)からなる表面シート21の一方の面の全面に粘着剤が塗工されることで粘着層21が積層されて構成されている。表面シート21は、白色に着色されており、それにより、一方の面から他方の面が透視困難となっている。
【0020】
インレイ10は、PET(polyethyleneterephthalate:ポリエチレンテレフタレート)からなる第1のPET層となるシート状のベース基材11の一方の面に、アルミからなる非接触通信用のアンテナ13が形成されるとともに、このアンテナ13に接続され、アンテナ13を介して非接触通信を行うICチップ12が搭載されている。このように構成されたインレイ10は、ベース基材11のアンテナ13が形成されていない面が、表面シート21の粘着層22が積層された面に向かい合うようにしてタック紙20に積層され、粘着層22によってタック紙20に貼着されている。
【0021】
貼着層30は、PETからなる第2のPET層となるシート状のコア基材31の表裏のそれぞれに粘着剤が塗工されることで粘着層32a,32bが積層されて構成されている。このように構成された貼着層30は、コア基材31の粘着層32aが積層された面が、ベース基材11のアンテナ13が形成された面に向かい合うようにしてインレイ10に積層され、粘着層32aによってインレイ10に貼着されている。これにより、貼着層30は、ベース基材11に形成されたアンテナ13を覆って積層されたものとなっている。
【0022】
このようにインレイ10と貼着層30とが積層されることで、アルミからなるアンテナ13が、PETからなるベース基材11と、貼着層30を構成するPETからなるコア基材31とによって挟み込まれたものとなっている。
【0023】
貼着層30の粘着層32b側には、粘着層32bによって剥離紙40が剥離可能に貼着されている。
【0024】
以下に、上記のように構成された管理タグ1の使用方法及びその際の効果について説明する。
【0025】
図2は、
図1に示した管理タグ1の使用方法を説明するための図であり、(a)は管理タグ1が貼着される管理用シートの表面の構成を示す図、(b)は管理タグ1が貼着された管理用シートの裏面の構成を示す図である。
【0026】
図1に示した管理タグ1は、剥離紙40が剥離され、表出した粘着層32bによって、
図2に示すように帳票となる管理用シート2の裏面に貼着されて使用される。管理用シート2は、上質紙等の繊維質系シートからなり、その表面に、可変情報となる管理情報が印字される管理情報表示領域2aが設けられているとともに、その裏面には、管理情報表示領域2aに管理情報が印字される際における搬送方向先端側に、管理用シート2の搬送方向に直交する方向に延びた直線状のタイミングマーク2bが表示されている。管理タグ1は、このタイミングマーク2bに沿う領域に貼着される。
【0027】
上記のように構成されて管理タグ1が貼着された管理用シート2は、管理情報表示領域2aに管理情報を印字するためにタイミングマーク2bが表示された側を先端として搬送されていく。
【0028】
そして、タイミングマーク2bが認識されると、まず、外部に設けられたリーダライタによって、管理タグ1のICチップ12と非接触通信が行われ、ICチップ12に管理情報に応じたデータが書き込まれる。
【0029】
ICチップ12に対するデータの書き込みが完了すると、管理情報表示領域2aに管理情報が印字される。また、ICチップ12に対するデータの書き込みに失敗した場合は、管理情報表示領域2aに不良マークが印字されることになる。
【0030】
このような管理タグ1のICチップ12に対するデータの書き込みや管理情報表示領域2aに対する管理情報の印字のタイミングは、タイミングマーク2bと管理タグ1及び管理情報表示領域2aとの間隔、並びに管理用シート2の搬送速度に応じて設定されており、タイミングマーク2bが読み取られてから、設定されたタイミングによる時間が経過した後に行われることになる。
【0031】
その際、管理タグ1が、タイミングマーク2bに沿う領域に貼着されていることで、管理用シート2が搬送途中において歪んだり、ずれたりした場合でも、管理タグ1のICチップ12に対するデータの書き込みのタイミングがずれにくくなる。また、管理タグ1には、アンテナ13が内蔵されているが、アンテナ13が表面シート21で覆われており、表面シート21が白色に着色されていることでアンテナ13が透視困難となっているため、アンテナ13をタイミングマーク2bとして誤って読み取ってしまうことを回避できる。なお、表面シート21は、白色に着色されているものに限らず、一方の面から他方の面が透視困難となるように着色されていればよい。
【0032】
図3は、
図1に示した管理タグ1が
図2に示したように管理用シート2に貼着された場合の効果を説明するための図である。
【0033】
図2に示したような管理用シート2は、繊維質系シートからなるため、周囲の温度や湿度等の環境の変化によって伸縮しやすい。そのため、上述したように管理用シート2に管理タグ1が貼着された場合、ベース基材11やコア基材31が管理用シート2の伸縮に追従してしまう虞がある。ベース基材11やコア基材31が管理用シート2の伸縮に追従して伸縮した場合、ベース基材11上に形成されたアンテナ13がアルミからなるものであることで、アンテナ13がその影響を受けて管理タグ1の通信距離が短くなってしまう。
【0034】
ところが、
図1に示した管理タグ1においては、上述したように、アンテナ13を挟み込んでいるベース基材11とコア部材31がそれぞれPETからなり、さらに、ベース基材11のアンテナ13とは反対側に、PPからなる表面シート21が積層されているため、貼着層30によって繊維質系シートからなる管理用シート2に貼着された場合に、管理用シート2が周囲の温度や湿度等の環境の変化によって
図3に示すように伸縮したとしても、PETからなるベース基材11及びコア基材31、並びにPPからなる表面シート21がこの伸縮に追従せず、それにより、これらベース基材11、コア基材31及び表面シート21に挟み込まれたアンテナ13が管理用シート2の伸縮の影響を受けなくなり、アンテナ13がアルミからなるものであっても、通信距離が短くなってしまうことを回避できる。
【0035】
なお、上述したような効果は、管理タグ1を
図2に示したような管理用シート2に貼着した場合に限らず、管理タグ1を繊維質系シートからなる帳票に貼着した場合に得ることができる。
【0036】
また、本形態においては、インレイ10のタック紙20とは反対側の面に、コア基材31の表裏に粘着層32a,32bが積層されてなる貼着層30が積層されたものを例に挙げて説明したが、PETからなるコア基材31がインレイ10に積層されていれば、コア基材31のインレイ10とは反対側の面には、粘着層32bは積層されていなくてもよい。ただしその場合は、繊維質系シートからなる帳票に貼着する際に、粘着剤を別途用意してコ1基材31を繊維質系シートからなる帳票に貼着する必要が生じ、本形態のように、コア基材31の表裏に粘着層32a,32bが積層されていれば、管理タグ1単体でラベルとして使用できる。
【0037】
(他の実施の形態)
図4は、本発明のRFIDタグの他の実施の形態を示す図であり、(a)は表面図、(b)は(a)に示したA-A’断面図、(c)は(b)に示した断面図を部材ごとに分解して示した図、(d)はインレイ110の貼着層130との積層面の構成を示す図である。
【0038】
本形態は
図4に示すように、
図1に示したものに対して、貼着層130のインレイ110との積層面とは反対側の面に、剥離紙40の代わりに裏面シート140が積層されて構成されている点が異なる管理タグ101である。すなわち、本形態の管理タグ101は、
図1に示した管理タグ1とは異なり、ラベル形態のものではない。
【0039】
裏面シート140は、上質紙等の繊維質系シートからなるものであって、貼着層130の粘着層132b側に粘着層132bによって貼着されている。
【0040】
上記のように構成された管理タグ101においては、裏面シート140が、繊維質系シートからなることで周囲の温度や湿度等の環境の変化によって伸縮しやすいが、
図1に示したものと同様に、アンテナ113を挟み込んでいるベース基材111とコア部材131がそれぞれPETからなり、さらに、ベース基材111のアンテナ113とは反対側に、PPからなる表面シート121が積層されているため、裏面シート140が周囲の温度や湿度等の環境の変化によって伸縮したとしても、PETからなるベース基材111及びコア基材131、並びにPPからなる表面シート121がこの伸縮に追従せず、それにより、これらベース基材111、コア基材131及び表面シート121に挟み込まれたアンテナ113が裏面シート140の伸縮の影響を受けなくなり、アンテナ113がアルミからなるものであっても、通信距離が短くなってしまうことを回避できる。
【符号の説明】
【0041】
1,101 管理タグ
2 管理用シート
2a 管理情報表示領域
2b タイミングマーク
10,110 インレイ
11,111 ベース基材
12,112 ICチップ
13,113 アンテナ
20,120 タック紙
21,121 表面シート
22,32a,32b,122,132a,132b 粘着層
30,130 貼着層
31,131 コア基材
40 剥離紙
140 裏面シート