(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物を用いた転写フィルム、樹脂パターン製造方法、及び硬化膜パターンの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20221021BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20221021BHJP
G03F 7/033 20060101ALI20221021BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20221021BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20221021BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
G03F7/004 512
G03F7/027 502
G03F7/033
G06F3/041 650
G06F3/041 495
C08F290/06
G03F7/20
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2018102551
(22)【出願日】2018-05-29
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真由紀
【審査官】倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-240879(JP,A)
【文献】特開2013-083785(JP,A)
【文献】特開2002-220409(JP,A)
【文献】特開2016-080792(JP,A)
【文献】特開2013-061556(JP,A)
【文献】国際公開第2012/086371(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/027
G03F 7/033
G06F 3/041
C08F 290/06
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
(A)酸性基を有するアルカリ可溶性重合体、
(B)光重合性化合物、および
(C)光重合性開始剤、を含む感光性樹脂組成物であり、
前記(A)成分として、(A-i)エチレン性不飽和基及び酸性基を有し主鎖に環構造を含む重合体を含有し、
前記(B)成分として、(B-i)少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有し、繰り返し単位としてブチレンオキシドを構造内に含む化合物(但し、前記(A)成分に該当する化合物は除く)、及び、(B-ii)エチレン性不飽和基を1つ有する化合物、を含有し、
前記(A)成分は、少なくとも前記(A-i)成分に対応する重合体を含む1種以上の重合体A-1、・・・A-n(nは1以上の整数を表す。)を含み、下記式(1):
【数1】
{式中、W
A-1、・・・W
A-nは、前記重合体A-1、・・・A-nの重量平均分子量をそれぞれ表し、X
A-1、・・・X
A-nは、前記重合体A-1、・・・A-nの感光性樹脂組成物中の質量%をそれぞれ表す。}で算出される前記(A)成分の重量平均分子量が6,000~
17,462であり、
前記(B-ii)成分を前記感光性樹脂組成物の固形分全質量に対して3質量%以上含有し、かつ、
支持体上に前記感光性樹脂組成物にて30μm厚みの感光性樹脂層を積層した転写フィルムを形成し、該転写フィルムを、6mmφの開口部を有する基板上にラミネートした後に全面露光して露光膜を形成した後、該支持体を剥がし、前記開口部の中心に対応する部分を、1.5mmφの円柱で速度100mm/minで突き刺し試験を行った際の最大点荷重が35gf以上であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B-i)成分が、下記式(2):
【化1】
{式中、Y
1、Y
2はそれぞれ独立に(メタ)アクリロイル基を表し、nは2~30の整数を示す。}で表される化合物を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B-ii)成分として、1分子中に芳香環を複数有する化合物を少なくとも1種含む、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)成分として、(A-ii)酸性基を有し、エチレン性不飽和基を有さないアルカリ可溶性重合体を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B-i)成分を、前記感光性樹脂組成物の固形分全質量に対して3質量%~15質量%含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A-i)成分として、(A-iii)重量平均分子量が6,000以上であり、酸価が60~120mgKOH/gのエチレン性不飽和基及び酸性基を有し、主鎖に環構造を含む重合体を、前記(A)成分の固形分全質量に対して90質量%以上含有する、請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(A)成分として、(A-iv)重量平均分子量10,000~36,000であり、酸価130~150mgKOH/gの酸性基を有し、エチレン性不飽和基を有さないアルカリ可溶性重合体を含有)する、請求項5または6に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
(D)1分子中に少なくとも2つのメルカプト基を有するチオール化合物をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(C)成分がオキシム化合物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
支持フィルムと、該支持フィルム上に設けられた請求項1~9のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物から成る感光性樹脂層と、を備える転写フィルム。
【請求項11】
導体用保護膜に使用される、請求項10に記載の転写フィルム。
【請求項12】
基材上に、請求項11に記載の転写フィルムをラミネートし、露光し、そして現像することによりパターンを作製する、パターン製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法で得られた上記パターンを後露光処理、及び/又は加熱処理して得られた 硬化膜パターン。
【請求項14】
請求項13に記載の硬化膜パターンを有するタッチパネル表示装置又はタッチセンサを有する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、転写フィルム、転写フィルムを用いた樹脂パターン製造方法、及び硬化膜パターンの製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、液晶表示装置、有機EL表示装置、タッチパネル表示装置、集積回路素子、固体撮像素子、半導体素子等の電子部品の平坦化膜、保護膜及び層間絶縁膜の形成、又はリジッドプリント配線板、フレキシブルプリント配線板のソルダーレジスト、若しくは層間絶縁膜に好適な感光性樹脂組成物、転写フィルム及びそれを用いた樹脂パターンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化、多様化及び小型軽量化が進むに伴い、液晶等の表示素子の全面に透明タッチパネル(タッチセンサ)を装着した機器が増えてきた。透明タッチパネルを通して表示素子に表示された文字、記号、絵柄等の視認及び選択を行い、透明タッチパネルの操作によって機器の各機能の切り替えを行うことも増えている。タッチパネルは、パソコン、テレビ等の大型電子機器だけでなく、カーナビゲーション、携帯電話、電子辞書等の小型電子機器及びOA・FA機器等の表示機器にも使用されており、タッチパネルには透明導電電極材から成る電極が設けられている。透明導電電極材としては、ITO(Indium-Tin-Oxide)、酸化インジウム及び酸化スズが知られており、これらの材料は、高い可視光透過率を有することから液晶表示素子用基板等の電極材として主に使用されている。
【0003】
既存のタッチパネルの方式としては、抵抗膜方式、光学方式、圧力方式、静電容量方式、電磁波誘導方式、画像認識方式、振動検出方式、超音波方式等が挙げられ、各種の方式が実用化されている。近年、静電容量方式タッチパネルの利用が最も進んできている。静電容量方式タッチパネルでは、導電体である指先がタッチ入力面に接触すると、指先と導電膜との間で静電容量結合が起こり、コンデンサを形成する。このため、静電容量方式のタッチパネルは、指先の接触位置における電荷の変化を捉えることによって、接触位置の座標を検出する。特に、投影型静電容量方式のタッチパネルは、指先の多点検出が可能なため、複雑な指示を行うことができるという良好な操作性を備えるので、携帯電話、携帯型音楽プレーヤ等の小型表示装置を有する機器における表示面上の入力装置として利用が進んでいる。一般に、投影型静電容量方式のタッチパネルでは、X軸とY軸による2次元座標を表現するために、複数のX電極と、複数のX電極に直交する複数のY電極とが、2層構造を形成しており、かつ、電極材としてはITOが用いられる。
【0004】
タッチパネルの額縁領域はタッチ位置を検出できない領域であるから、その額縁領域の面積を狭くすることが製品価値を向上させるための重要な要素である。額縁領域には、タッチ位置の検出信号を伝えるために、金属配線が必要となるが、額縁面積の狭小化を図るためには、金属配線の幅を狭くする必要がある。ITOの導電性は充分に高くないので、一般的には金属配線には銅や合金が使用される。
【0005】
しかしながら、上述のようなタッチパネルでは、指先に接触される際に、水分、塩分等の腐食成分がセンシング領域から内部に侵入することがある。タッチパネルの内部に腐食成分が侵入すると、金属配線が腐食し、電極と駆動用回路間の電気抵抗の増加、又は断線の恐れがあり、これらを防ぐために金属配線上に防錆効果のある保護膜が必要である。一般に、保護膜の透湿度が低いほど、金属配線の防錆効果が高まる傾向がある。
【0006】
また、検出信号を伝えるための金属配線は、端子部分で他の部材へと接続するため、導通を確保する必要があり、端子部分は保護膜を除去しなければならない。そのため保護膜には良好な現像性が求められ、円孔等の各種パターンでの良好な抜け性が必要とされる。現像液として、炭酸ナトリウム水溶液のような希アルカリ水溶液が最も多く用いられており、かつ、現像液濃度の長期安定性を保つためには30℃未満の低温での現像が所望されている。
【0007】
更に、タッチパネルの製造工程においては、タッチパネル自体に負荷が掛かることがある。特に、保護膜がフレキシブルディスプレイ基板に設けられるような場合にあっては、基板の湾曲に伴い保護膜への負荷も大きくなり、亀裂や保護膜の剥離が生じ易くなる。タッチパネル上に保護膜を形成する製造工程の一例として、感光性フィルムを基材上にラミネート、露光、現像、後露光及び加熱処理の順で行う方法が挙げられる。加熱処理の工程を経た後では保護膜の密着性も向上するが、現像後や後露光後の膜は密着性や膜強度が弱く、前述した製造工程での負荷に耐えきれず現像後の保護膜の亀裂や基材からの剥離がしばしば問題となる。そのため、金属配線の腐食を抑制し、現像後の露光後膜が製造工程時の基材の湾曲や衝撃に耐えうる密着性や膜強度を有する保護膜が望まれている。
【0008】
タッチパネルに関する保護膜として特許文献1~3が挙げられる。
特許文献1には、タッチパネル用保護膜としての感光性樹脂組成物が開示されており、透湿性の評価がなされているが、密着性や膜強度及び現像性についての記載はない。
特許文献2は、タッチパネル用保護膜としてブチレンオキシドを分子内に含む光重合性化合物を用いた感光性樹脂組成物が開示されているが、防錆性及び加熱処理後の保護膜の密着性については評価しているが、露光後(現像後)膜の密着性や強度については言及しておらず、また防錆性に関しても近年の要求レベルに対しては満足するものではない。
特許文献3には、主鎖に環構造を有するエポキシアクリレート酸変性物を用いた感光性樹脂組成物について、プリント配線板の導体層の腐食防止や、導体層間の電気絶縁性を保持するソルダーレジストとして開示されているが、透湿度や密着性、強度については記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-157451号公報
【文献】国際公開第2016/047691号
【文献】特開2009-251286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1~3に記載の技術は、上記で説明されたとおり、未だ改善の余地がある。したがって、本発明が解決しようとする課題は、現像性、硬化膜としての透湿性、現像後の露光後膜の導体基材との密着性及び膜強度が良好で、電極等の導体部の保護に好適な感光性樹脂組成物、転写フィルム及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造および重量平均分子量を有するアルカリ可溶性重合体と、特定の構造を有し含有量を規定した光重合性化合物とを組み合わせた感光性樹脂組成物とすることで、前記の課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
以下の成分:
(A)酸性基を有するアルカリ可溶性重合体、
(B)光重合性化合物、および
(C)光重合性開始剤、を含む感光性樹脂組成物であり、
前記(A)成分として、(A-i)エチレン性不飽和基及び酸性基を有し主鎖に環構造を含む重合体を含有し、
前記(B)成分として、(B-i)少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有し、繰り返し単位としてブチレンオキシドを構造内に含む化合物(但し、前記(A)成分に該当する化合物は除く)、及び、(B-ii)エチレン性不飽和基を1つ有する化合物、を含有し、
前記(A)成分は、少なくとも前記(A-i)成分に対応する重合体を含む1種以上の重合体A-1、・・・A-n(nは1以上の整数を表す。)を含み、下記式(1):
【数1】
{式中、W
A-1、・・・W
A-nは、前記重合体A-1、・・・A-nの重量平均分子量をそれぞれ表し、X
A-1、・・・X
A-nは、前記重合体A-1、・・・A-nの感光性樹脂組成物中の質量%をそれぞれ表す。}で算出される前記(A)成分の重量平均分子量が6,000~20,000であり、
前記(B-ii)成分を前記感光性樹脂組成物の固形分全質量に対して3質量%以上含有し、かつ、
支持体上に前記感光性樹脂組成物にて30μm厚みの感光性樹脂層を積層した転写フィルムを形成し、該転写フィルムを、6mmφの開口部を有する基板上にラミネートした後に全面露光して露光膜を形成した後、該支持体を剥がし、前記開口部の中心に対応する部分を、1.5mmφの円柱で速度100mm/minで突き刺し試験を行った際の最大点荷重が35gf以上であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
[2]
前記(B-i)成分が、下記式(2):
【化1】
{式中、Y
1、Y
2はそれぞれ独立に(メタ)アクリロイル基を表し、nは2~30の整数を示す。}で表される化合物を含む、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]
前記(B-ii)成分として、1分子中に芳香環を複数有する化合物を少なくとも1種含む、[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]
前記(A)成分として、(A-ii)酸性基を有し、エチレン性不飽和基を有さないアルカリ可溶性重合体を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[5]
前記(B-i)成分を、前記感光性樹脂組成物の固形分全質量に対して3質量%~15質量%含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[6]
前記(A-i)成分として、(A-iii)重量平均分子量が6,000以上であり、酸価が60~120mgKOH/gのエチレン性不飽和基及び酸性基を有し、主鎖に環構造を含む重合体を、前記(A)成分の固形分全質量に対して90質量%以上含有する、[5]に記載の感光性樹脂組成物。
[7]
前記(A)成分として、(A-iv)重量平均分子量10,000~36,000であり、酸価130~150mgKOH/gの酸性基を有し、エチレン性不飽和基を有さないアルカリ可溶性重合体を含有する、[5]または[6]に記載の感光性樹脂組成物。
[8]
(D)1分子中に少なくとも2つのメルカプト基を有するチオール化合物をさらに含む、[1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[9]
前記(C)成分がオキシム化合物である、[1]~[8]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[10]
支持フィルムと、該支持フィルム上に設けられた[1]~[9]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物から成る感光性樹脂層と、を備える転写フィルム。
[11]
導体用保護膜に使用される、[10]に記載の転写フィルム。
[12]
基材上に、[11]に記載の転写フィルムをラミネートし、露光し、そして現像することによりパターンを作製する、パターン製造方法。
[13]
[12]に記載の方法で得られた上記パターンを後露光処理、及び/又は加熱処理して得られた 硬化膜パターン。
[14]
[13]に記載の硬化膜パターンを有するタッチパネル表示装置又はタッチセンサを有する装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、現像性、硬化膜としての透湿性、現像後の露光膜と導体基材との密着性及び膜強度が全て良好な感光性樹脂組成物及び転写フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例で用いたマスクパターンを示す図である。
【
図2】実施例で用いた、開口部を有する銅張り積層板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<(A)酸性基を有するアルカリ可溶性重合体>
本実施の形態に係るアルカリ可溶性重合体は、酸性基を有する重合体であれば特に制限はなく、酸性基としてはカルボキシル基が好ましい。
【0015】
(A-i)エチレン性不飽和基及び酸性基を有し主鎖に環構造を含む重合体
本実施の形態に係る(A-i)は、1つ以上のエチレン性不飽和基と1つ以上の酸性基を有し、主鎖に環構造を有する重合体であれば特に制限はないが、例えばエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物を好適に用いることができる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを示し、(メタ)アクリルを含めて以下同様である。
【0016】
主鎖に入る環構造の例としては、クレゾール骨格、フェノール骨格、ビフェニル骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、トリシクロデカン骨格、トリスフェノールメタン骨格、テトラキスフェノールエタン骨格などが挙げられる。
【0017】
クレゾール骨格を含有するエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物の市販品としては、CCR-1171H、CCR-1307H、CCR-1309H(日本化薬社(株)製)、PR-300(昭和電工(株)製)等が挙げられる。
フェノール骨格を含有するエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物の市販品としては、PCR-1222H、PCR-1173H、PCR-1221H、PCR-1220H(日本化薬社(株)製)等が挙げられる。
ビフェニル骨格を含有するエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物の市販品としては、ZCR-1569H、ZCR-1761H、ZCR-1797H、ZCR-1798H(日本化薬社(株)製)等が挙げられる。
【0018】
ナフタレン骨格を含有するエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物の市販品としては、ZCR-1809H、ZCR-1835H、ZCR-1834H(日本化薬社(株)製)等が挙げられる。
フルオレニル骨格を含有するエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物の市販品としては、FCA-954、FCA-293、FCA-506(ナガセケムテックス社製)又はTR-B201、TR-B202(常州強力電子材料社製)等が挙げられる。
ビスフェノールA骨格を含有するエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物の市販品としては、ZAR-1494H、ZAR-2001H(日本化薬社(株)製)等が挙げられる。
ビスフェノールF骨格を含有するエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物の市販品としては、ZFR-1491H(日本化薬社(株)製)等が挙げられる。
【0019】
トリシクロデカン骨格を含有するエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物の市販品としては、ZXR-1807H、ZXR-1816H、ZXR-1810H(日本化薬社(株)製)等が挙げられる。
トリスフェノールメタン骨格を含有するエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物の市販品としては、TCR-1348H、TCR-1323H、TCR-1347H、TCR-1338H(日本化薬社(株)製)等が挙げられる。
テトラキスフェノールエタン骨格を含有するエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物の市販品としては、ZGR-1678H、ZGR-1844H(日本化薬社(株)製)等が挙げられる。
【0020】
(A-i)エチレン性不飽和基及び酸性基を有し主鎖に環構造を含む重合体の酸価(mgKOH/g)は、50~200であることが好ましい。酸価は、感光性樹脂組成物の硬化膜の透湿度低減及び導体の防錆性向上の観点から、200以下であることが好ましく、感光性樹脂組成物層の現像性向上の観点から50以上であり、両性能のバランスの観点から、60~120であることがより好ましい。
酸価の測定は、平沼産業(株)製の平沼自動滴定装置(COM-555)を使用し、0.1mol/Lの水酸化カリウムを用いて電位差滴定法により行われる。
【0021】
(A-i)エチレン性不飽和基及び酸性基を有し主鎖に環構造を含む重合体の重量平均分子量は、1,000以上9,500以下であることが好ましい。(A-i)の重量平均分子量は、転写フィルムとした際のタック性、エッジフューズ性、カットチップ性等の未露光膜の性状の観点及び現像後の露光膜の強度の観点から1,000以上が好ましく、感光性樹脂組成物の現像性及び(A-ii)酸性基を有しエチレン性不飽和基を有さないアルカリ可溶性重合体等、他の重合性化合物との相溶性の観点から9,500以下が好ましく、より好ましくは、6,000以上8,000以下である。ここで、タック性とは感光性樹脂組成物を転写フィルムとした場合の粘着性を示し、タック性が大きすぎるとカバーフィルムや支持体の剥離不良となり、弱すぎるとカバーフィルムが貼れない、支持体が意図しない工程で剥離するなどの不具合が生じる。エッジフューズ性とは、転写フィルムとしてロール状に巻き取った場合にロールの端面から感光性樹脂組成物層がはみ出す現象である。カットチップ性とは、未露光膜をカッターで切断した場合にチップが飛ぶ現象のことである。飛散したチップが転写フィルムの上面等に付着すると、後の露光工程等でマスクに転写して不良の原因となる。
【0022】
重量平均分子量の測定は、以下の条件に設定された日本分光(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて行う。得られた重量平均分子量はポリスチレン換算値となる。
ポンプ:Gulliver、PU-1580型
カラム:昭和電工(株)製Shodex(登録商標)(KF-807、KF-806M、KF-806M、KF-802.5)4本直列、
移動層溶媒:テトラヒドロフラン
検量線:ポリスチレン標準サンプルを用いて規定された検量線{ポリスチレン標準サンプル(昭和電工(株)製Shodex STANDARD SM-105)による検量線使用}
【0023】
(A-ii)酸性基を有しエチレン性不飽和基を有さないアルカリ可溶性重合体
本実施の形態に係る(A-ii)はエチレン性不飽和基不含であり1つ以上の酸性基を有した重合体であれば特に制限は無いが、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等のアクリル系共重合体、ポリイミド前駆体、カルボキシル基含有ポリイミド、カルボキシル基含有ウレタン樹脂などが挙げられる。後述する(B)光重合性化合物との相溶性や、透明性からアクリル系共重合体が好ましい。
【0024】
・アクリル系共重合体
(A-ii)成分に含まれるアクリル系共重合体は、分子中に酸性基を含有する単量体を少なくとも1種重合して得られ、後述される他の酸性基を有さない単量体の少なくとも1種と共に共重合することにより得られるものが好ましい。
酸性基を含有する単量体の例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸エステル等が挙げられる。
【0025】
酸性基を有さない単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類;ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸芳香族エステル;スチレン及びその重合可能な誘導体等が挙げられる。
【0026】
これらの共重合体の中でも、透湿度の低減及び導体の防錆性向上の観点から、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位と(メタ)アクリル酸芳香族エステル又はスチレン及びその誘導体に由来する構成単位とを含有する共重合体がより好ましい。
芳香族基を有するユニットを共重合することにより、アクリル系共重合体の疎水性が高くなり、防錆性が向上する。また、アクリル系共重合体が芳香族基を有することで、感光性樹脂組成物の硬化後の膜密度が高くなり、導体の防錆性が向上すると考えられる。現像性と透湿度低減を両立できる点でアクリル系共重合体として、(メタ)アクリル酸由来の構造を7.7質量%以上30質量%以下、及びスチレン又はその誘導体由来の構造を30質量%以上80質量%以下で含むものがより好ましい。
【0027】
・ポリイミド前駆体
(A-ii)成分に含まれるポリイミド前駆体とは、ポリアミド酸のみを意味するものではなく、ポリアミド酸の一部がイミド化したものも含む。
【0028】
ポリイミド前駆体は、例えば、有機溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンとをモル比で0.8:1~1.2:1で混合して反応させることによって得ることができる。使用するテトラカルボン酸二無水物に制限はなく、従来公知のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族テトラカルボン酸、脂肪族テトラカルボン酸二無水物などを適用することができる。また、使用するジアミンに制限はなく、従来公知のジアミンを用いることができる。
【0029】
テトラカルボン酸二無水物としては、ビフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p-ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、m-フェニレンビス(トメリット酸モノエステル酸無水物)、o-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ペンタンジオールビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、デカンジオールビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、無水ピロメリット酸、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、メタ-ターフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、1-カルボキシメチル-2,3,5-シクロペンタトリカルボン酸-2,6:3,5-二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、及び、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、などが挙げられる。上述したテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
ジアミンとしては、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)アルカン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)アルカン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)アルカン、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、2,4-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,7-ジアミノ-ジメチルジベンゾチオフェン-5,5-ジオキシド、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン、1,2-ビス[2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、5-アミノ-1-(4-アミノメチル)-1,3,3-トリメチルインダン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4、4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン、トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾエ-ト)、4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエ-ト、2-メチル-4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエート、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,5-ジアミノ安息香酸、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、及び、1,3-ビス(4-アミノフェノキシベンゼン)などが挙げられる。また、ポリイミド前駆体に適度な柔軟性、耐折性を付与する目的で、シロキサン骨格を有するジアミン及び/又はポリアルキレンオキシド骨格を有するジアミンを組み合わせて使用してもよい。
【0031】
ポリイミド前駆体の主鎖末端は、性能に影響を与えない構造であれば、特に制限はなく、ポリイミド前駆体を製造する際に用いる酸二無水物、又は、ジアミンに由来する末端の構造でもよく、その他の酸無水物、又は、アミン化合物などにより末端を封止した構造でもよい。
【0032】
ポリイミド構造及びポリアミド酸構造をそれぞれ繰り返し単位として有するポリイミド前駆体は、酸二無水物とジアミンを非等モル量で反応させて1段階目のポリイミド部分を合成する工程(工程1)、続いて2段階目のポリアミド酸部分を合成する工程(工程2)により作製することができる。ポリイミド前駆体の製造方法として、工程1は必ずしも含まなくともよい。以下、それぞれの工程について説明する。
【0033】
(工程1)
1段階目のポリイミド部分を合成する工程について説明する。1段階目のポリイミド部分を合成する工程としては、特に限定されず公知の方法を適用することができる。より具体的には、以下の方法によりポリイミド部分を合成できる。まず、ジアミンを重合溶媒に溶解及び/又は分散し、これに酸二無水物粉末を添加する。そして、水と共沸する溶媒を加え、メカニカルスターラーを用い、副生する水を共沸除去しながら、0.5時間~96時間、より好ましくは0.5時間~30時間加熱撹拌する。
【0034】
ポリイミド部分は、公知のイミド化触媒を添加することによっても、無触媒によっても、合成することができる。イミド化触媒としては、特に制限されないが、無水酢酸のような酸無水物、γ-バレロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-テトロン酸、γ-フタリド、γ-クマリン、及び、γ-フタリド酸のようなラクトン化合物、並びに、ピリジン、キノリン、N-メチルモルホリン、及び、トリエチルアミンのような三級アミンなどが挙げられる。また、必要に応じて1種、又は2種以上のこれらの混合物を用いてもよい。これらの中でも、反応性の高さ及び次反応への影響を低減する観点から、γ-バレロラクトンとピリジンとの混合系及び無触媒が特に好ましい。
【0035】
ポリイミド部分の合成の際に使用される反応溶媒としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、及び、トリエチレングリコールジメチルエーテルのような炭素数2以上炭素数9以下のエーテル化合物;アセトン、及び、メチルエチルケトンのような炭素数2以上炭素数6以下のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、及び、デカリンのような炭素数5以上炭素数10以下の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、及び、テトラリンのような炭素数6以上炭素数10以下の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、及び、安息香酸メチルのような炭素数3以上炭素数12以下のエステル化合物;クロロホルム、塩化メチレン、及び、1,2-ジクロロエタンのような炭素数1以上炭素数10以下の含ハロゲン化合物;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及び、N-メチル-2-ピロリドンのような炭素数2以上炭素数10以下の含窒素化合物;ジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物が挙げられる。これらは必要に応じて単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。特に好ましい溶媒としては、炭素数2以上炭素数9以下のエーテル化合物、炭素数3以上炭素数12以下のエステル化合物、炭素数6以上炭素数10以下の芳香族炭化水素化合物、及び、炭素数2以上炭素数10以下の含窒素化合物が挙げられる。これらは工業的な生産性、及び、次反応への影響などを考慮して任意に選択可能である。
【0036】
ポリイミド部分の合成においては、反応温度は100℃以上250℃以下であることが好ましい。
【0037】
(工程2)
次に、2段階目のポリアミド酸部分を合成する工程について説明する。2段階目のポリアミド酸部分の合成は、工程1で得られたポリイミド部分を出発原料として用い、ジアミン及び/又は酸二無水物を追添して重合させることで実施できる。2段階目のポリアミド酸部分の合成の際の重合温度としては、0℃以上80℃以下が好ましい。反応に要する時間は、目的又は反応条件によって異なるが、通常は30分から30時間までの範囲である。
【0038】
工程1を行わずに工程2を行う場合においては、まず、ジアミンを重合溶媒に溶解及び/又は分散し、これに酸二無水物粉末を添加する。重合溶媒としては、工程1で例示したものと同様である。重合温度は0℃以上80℃以下が好ましい。反応に要する時間は通常30分から30時間までである。
【0039】
・カルボキシル基含有ポリイミド
カルボキシル基含有ポリイミドは有機溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンとをモル比で0.8:1~1.2:1で混合して反応させることによって合成され、イミド化した後にもカルボキシル基を骨格中に含むことを特徴とするが、部分的にポリアミド酸構造が残っていてもよい。
【0040】
カルボキシル基含有ポリイミドは、通常カルボキシル基含有ジアミンを用いて合成される。有機溶媒への溶解性の観点又は入手性の観点から、カルボキシル基含有ジアミンとしては、3,5-ジアミノ安息香酸、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタンなどを用いることができる。これらのジアミンは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
テトラカルボン酸二無水物、カルボキシル基含有ジアミンと組み合わせて使用するジアミン、合成に用いる溶媒、及びイミド化触媒の例としては、ポリイミド前駆体で前述した例と同様である。
【0042】
・カルボキシル基含有ポリウレタン
本実施の形態に係るカルボキシル基含有ポリウレタンは、ジイソシアネート化合物及びカルボキシル基含有ジオール化合物及びその他のジオール化合物を非プロトン性溶媒中、それぞれの反応性に応じた活性の公知な触媒を添加し、加熱することにより合成される。使用するジイソシアネート及びジオール化合物のモル比は、0.8:1~1.2:1が好ましく、ポリマー末端にイソシアネート基が残存した場合、アルコール類又はアミン類等で処理することにより、最絡的にイソシアネート基が残存しない形態で合成される。
【0043】
ジイソシアネート化合物としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートの二量体、2,6-トリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート等の如き芳香族ジイソシアネート化合物:ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマ-酸ジイソシアネート等の如き脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン-2,4-(又は2,6)ジイソシアネート、1,3-(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の如き脂環族ジイソシアネート化合物;1,3-ブチレングリコール1モルとトリレンジイソシアネート2モルとの付加体等の如きジオールとジイソシアネートとの反応物であるジイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0044】
カルボキシル基含有ジオールとしては、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(2-ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2-ビス(3-ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4-ヒドロキジフェニル)酢酸、4,4-ビス(4-ヒドロキジフェニル)ペンタン酸、酒石酸、N,N-ジヒドロキシエチルグリシン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-カルボキシ-プロピオンアミド等が挙げられる。
【0045】
カルボキシル基含有ジオール化合物と組み合わせて使用するその他のジオール化合物としては、ポリテトラメチレンジオール、ポリブタジエンジオール、水添ポリブタジエンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオールなどの高分子量ジオール;又はエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、2,2’-ジメチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタメチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、2-ブテン-1,4-ジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、キシリレングリコール、1,4-ビス-β-ヒドロキシエトキシシクロヘキサン、トリジクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ヒドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、p-キシリレングリコール、ジヒドロキシエチルスルホン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-2,4-トリレンジカルバメ-ト、2,4-トリレン-ビス(2-ヒドロキシエチルカルバミド)、ビス(2-ヒドロキシエチル)-m-キシリレンジカルバメート、ビス(2-ヒドロキシエチル)イソフタレート、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレートなどの低分子量ジオールなどが挙げられる。
【0046】
(A-ii)の酸価(mgKOH/g)は、60~200であることが好ましい。酸価は、透湿度低減及び導体の防錆性向上の観点から、200以下であることが好ましく、現像性向上の観点から60以上であり、導体の防錆性と低温現像性のバランスの観点から、80~180であることがより好ましく、90~160であることが更に好ましい。また、(A)酸性基を有するアルカリ可溶性重合体の重量平均分子量は、塗布性、転写フィルムのタック性、露光後(現像後)膜の強度及び現像性の観点から、11,000~50,000であることが好ましい。酸性基を有するアルカリ可溶性重合体の重量平均分子量は、転写フィルムとした際のタック性、エッジフューズ性、カットチップ性等の未露光膜の性状の観点及び露光後(現像後)膜の強度の観点から11,000以上であり、現像性及び(A-i)エチレン性不飽和基及び酸性基を有し主鎖に環構造を含む重合体との相溶性の観点から50,000以下であることが好ましい。より好ましくは、15,000以上30,000以下である。相溶性が良化することで、強度や現像性及び透湿度の性能が発現しやすくなる。
【0047】
また、上記で述べた(A-i)、(A-ii)に該当しない(A)酸性基を有するアルカリ可溶性重合体も必要に応じて、用いることができる。1つ以上のエチレン性不飽和基と1つ以上の酸性基を有し、主鎖に環構造を有さない重合体も用いることが出来、例えばアクリル系共重合体の説明で述べた、カルボキシル基を有する単量体と酸性基不含の単量体を共重合させた、主鎖に環構造を有さないアクリル系共重合体にグリシジルメタクリレートを付加させることで、側鎖にエチレン性不飽和基を導入することができ、上述した1つ以上のエチレン性不飽和基と1つ以上の酸性基を有し、主鎖に環構造を有さない重合体を得ることができる。
【0048】
一方で、上述した(A)酸性基を有するアルカリ可溶性重合体は、少なくとも前記(A-i)成分に対応する重合体を含む1種以上の重合体A-1、・・・A-n(nは1以上の整数を表す。)を含有し、下記式(1):
【数2】
{式中、W
A-1、・・・W
A-nは、(A)成分に該当する各重合体A-1、・・・A-nの重量平均分子量を表し、X
A-1、・・・X
A-nは(A)成分に該当する各重合体A-1、・・・A-nの感光性樹脂組成物中の質量%を表す。}で算出した重量平均分子量が6,000~20,000である。転写フィルムとした際のタック性、エッジフューズ性、カットチップ性等の未露光膜の性状の観点、現像後の露光膜の強度及び密着性の観点から6,000以上であり、現像性の観点から20,000以下である。より好ましくは、10,000以上15,000以上である。
【0049】
<(B)光重合性化合物>
本実施の形態に係る(B)光重合性化合物は、その構造中にエチレン性不飽和基を有することによって重合性を有する化合物である。
(B-i)少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有し、繰り返し単位としてブチレンオキシドを構造内に含む化合物(但し、(A)に該当する化合物は除く)
本実施の形態に係る(B-i)は2つ以上のエチレン性不飽和基を有し、繰り返し単位としてブチレンオキシドを1分子中に含む化合物であれば特に制限は無いが、更に1つ以上の酸性基を有する重合体である場合は(A)成分とし、更に重合体の主鎖に環構造を有する場合は(A-i)成分とする。
【0050】
(B-i)としては、1分子中にエチレン性不飽和基を2つ有する化合物として例えばポリブチレンオキシド鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物、又はポリブチレンオキシド鎖とポリエチレンオキシド鎖又は/及びポリプロピレンオキシド鎖とがランダム若しくはブロックで結合したアルキレンオキシド鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物、またはビスフェノールA、ビスフェノールF、トリシクロデカンをポリブチレンオキシドで変性し、かつ、両末端に(メタ)アクリロイル基を有している化合物などが挙げられる。その他にもジイソシアネート化合物とポリブチレングリコールと1分子中にヒドロキシル基及び(メタ)アクリル基を有する化合物との反応生成物であるウレタン化合物等が挙げられる。
【0051】
更に、1分子中に2個を超えるエチレン性不飽和基を有する(B-i)成分としては、中心骨格として分子内にアルキレンオキシド基を付加させることができる基を3モル以上有し、この基にブチレンオキシド基を付加させて得られたアルコールを(メタ)アクリレートに変換することで得られる。中心骨格になることができる化合物としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、イソシアヌレート環等が挙げられる。(B-i)成分を有し、架橋構造の中にブチレンオキシド鎖が組み込まれることで、露光後の膜強度が上がる。
【0052】
一方で、(B-i)成分としては、下記式(2):
【化2】
{式中、Y
1、Y
2はそれぞれ独立に(メタ)アクリロイル基を表し、nは2~30の整数を示す。}で表される化合物が、透湿度、基材との密着性及び現像後の露光膜の強度の観点で好ましい。nが大きいほど膜強度と密着性は向上するが、透湿度が悪化し、それらのバランスの観点から、より好ましくは、nは8以上28以下である。
【0053】
市販の式(2)の製品としては、FA-PTG9M(日立化成(株)製、ブチレンオキシド単位が平均9モル付加したジメタクリレート)、FA-PTG28M(日立化成(株)製、ブチレンオキシド単位が平均28モル付加したジメタクリレート)、A-PTMG-65(新中村化学工業(株)製、ブチレンオキシド単位が平均9モル付加したジアクリレート)等が挙げられる。
【0054】
また、(B-i)成分の添加量としては、感光性樹脂組成物の固形分全質量に対して3質量%~15質量%が好ましい。現像後の露光膜強度の観点から3質量%以上が好ましく、透湿度及び現像性の観点から15質量%以下が好ましい。
【0055】
(B-ii)エチレン性不飽和基を1つ有する化合物
本実施の形態では、1分子中にエチレン性不飽和基を11つ有する化合物である(B-ii)成分を感光性樹脂組成物の固形分全量に対して3%以上含有する。(B-ii)成分を添加することで、露光後膜の硬化収縮を低減させることができ、基材との密着性が向上すると考える。密着性の観点から3%以上が好ましく、適度な架橋密度を保ち透湿度を悪化させない点から15%以下が好ましい。より好ましくは、4%以上10%以下である。
【0056】
(B-ii)成分としては、ポリアルキレンオキシドの片末端に(メタ)アクリル酸を付加した化合物、片末端に(メタ)アクリル酸を付加し、かつ、他方の末端をアルキルエーテル又はアリルエーテル化した化合物、等が挙げられる。例えば、イソステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、エトキシ化ノニルフェニルアクリレート、イソボニルアクリレート、4-ノニルフェニルヘプタエチレングリコールジプロピレングリコールアクリレートなどが挙げられ、更に、透湿度の観点から1分子中に芳香環を複数有する化合物が好ましい。芳香環を複数含むことで、組成物の疎水性やTgが上がるため、透湿度が向上すると考えている。複数のベンゼン環が縮合している、例えばナフタレン、アントラセンなどの構造を1分子中に含む場合も、複数の芳香環を含んでいるものとして数える。1分子中に芳香環を複数有する化合物としては、m-フェノキシベンジルアクリレート(共栄社化学(株)製POB-A、製品名)、o-フェニルフェノキシエチルアクリレート(日本化薬(株)製OPP-1製品名)、4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、1-ナフチルアクリレートなどが挙げられる。
【0057】
また、上記で述べた(B-i)、(B-ii)に該当しない光重合性化合物も必要に応じて用いることができる。例えば、(B-i)ではブチレンオキシド鎖を有する光重合性化合物を挙げたが、ブチレンオキシドではなく他のポリアルキレンオキシド鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物や、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、イソシアヌレート環等にポリアルキレンオキシド基を付加させて得られたアルコールを(メタ)アクリレートに変換することで得られる化合物や、それらをアルキレンオキシド基で変性せず、直接(メタ)アクリル酸を反応させた化合物も使用できる。
【0058】
<(C)光重合性開始剤>
本実施の形態に係る(C)光重合性開始剤は、活性光線によりラジカルを発生し、エチレン性不飽和基含有化合物などを重合することができる化合物である。(C)光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン(ミヒラ-ケトン)、N,N,N’,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパノン-1、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等の芳香族ケトン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;
ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-3-シクロペンチルプロパン-1,2-ジオン-2-(o-ベンゾイルオキシム)、1,2-プロパンジオン,3-シクロヘキシル-1-[9-エチル-6-(2-フラニルカルボニル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,2-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N-フェニルグリシン等のN-フェニルグリシン誘導体;クマリン化合物;オキサゾール化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。光重合開始剤は、単独で、又は2種以上混合して用いることもできる。
【0059】
これらの中でも、導体の防錆性向上、硬化膜の透湿性低減、及び耐薬品性向上の観点から、オキシムエステル化合物が好ましく、更に365nmのモル吸光係数が高い化合物がより好ましい。波長365nmにて高い吸光係数を有するオキシム開始剤を用いることで、i線露光によって高感度な保護膜を得ることが出来る。これにより、高い表面硬化性が得られ、現像工程でのナトリウムイオンの侵入を抑制でき、その結果として導体の高い防錆性が得られると推察される。
【0060】
具体的なオキシムエステル化合物としては、1,2-オクタンジオン,1-[(4-フェニルチオ)フェニル-,2-(O-ベンゾイルオキシム)](BASFジャパン(株)製、Irgacure Oxe01、製品名)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(BASFジャパン(株)製、Irgacure Oxe02)、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-3-シクロペンチルプロパン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(常州強力電子新材料社製TR-PBG-305、製品名)、及び1,2-プロパンジオン,3-シクロヘキシル-1-[9-エチル-6-(2-フラニルカルボニル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,2-(O-アセチルオキシム)(常州強力電子新材料社製TR-PBG-326、製品名)、(7-ニトロ-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル)(オルトトリル)メタノン O-アセチルオキシム(ダイトーケミックス(株)製DFI-020)、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-(2-エチルヘキシル)-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)、3-シクロヘキシル-1-(6-(2-(ベンゾイルオキシイミノ)オクタノイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル)-プロパン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(常州強力電子新材料社製TR-PBG-371、製品名)、3-シクロヘキシル-1-(6-(2-(ベンゾイルオキシイミノ)ヘキサノイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル)-プロパン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(常州強力電子新材料社製TR-PBG-391、製品名)等を挙げることができる。
【0061】
(C)光重合開始剤の、感光性樹脂組成物中の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全質量を基準として、0.1質量%~10質量%であり、感度と解像性の観点から、0.3質量%~5質量%であることがより好ましい。光重合開始剤の含有量が0.1質量%~10質量%の範囲内であれば、光感度が充分となるとともに、活性光線を照射する際に組成物の表面での吸収が増大して内部の光硬化が不充分となること、可視光透過率が低下すること等の不具合を抑制することができる。
【0062】
<(D)1分子中に少なくとも2つのメルカプト基を有するチオール化合物>
感光性樹脂組成物には、より高い膜強度及び密着性を発現させるという観点から、(D)1分子中に少なくとも2つのメルカプト基を有するチオール化合物を更に配合することが好ましい。
そのような化合物としては、例えば、1,10-デカンジチオール、1,4-ビス(メルカプトアセトキシ)ブタン、テトラエチレングリコール ビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスメルカプトプロピオネート、トリメチロールエタントリスメルカプトプロピオネート、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)等の脂肪鎖上にメルカプト基が結合した一級チオール化合物や、1,4-(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)等の脂肪鎖上にメルカプト基が結合した2級チオール化合物;6-(ジブチルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-アニリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、1,3,4-チアジアゾール-2,5-ジチオール等の複素環上にメルカプト基が結合した化合物;1,2-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,4-ベンゼンジチオール、トルエン-3,4-ジチオール、4,4’-ビフェニルジチオール、1,5-ナフタレンジチオール等の芳香環上にメルカプト基が結合した化合物が挙げられる。(D)成分であるチオール化合物は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。チオール化合物を添加することで、露光後(現像後)膜の強度が上がり、密着性が向上する。膜強度及び密着性の観点から、脂肪鎖上にメルカプト基が結合しているものが好ましい。更に、臭気や保存安定性の観点から2級チオールが好ましく、市販品では、カレンズMT PE1、NR1、BD1(昭和電工(株)製)等が挙げられる。
【0063】
<(E)熱架橋剤>
感光性樹脂組成物には、より高い防錆性能を発現させるという観点から、(E)熱架橋剤を更に配合することが好ましい。(E)熱架橋剤とは、熱により(A)酸性基を有するアルカリ可溶性重合体、未反応のエチレン性不飽和二重結合を有する(B)光重合性化合物、並びに同時に添加する(E)熱架橋剤と付加反応、又は縮合重合反応を起こす化合物を意味する。付加反応又は縮合重合反応を起こす温度としては、100℃~150℃が好ましい。付加反応又は縮合反応は、現像によりパターン形成をした後の加熱処理の際に生じる。
【0064】
具体的な熱架橋剤としては、ブロックイソシアネート化合物、ジオール化合物、エポキシ化合物、及び国際公開第2016/047691号の段落[0054]以降に記載の熱架橋剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
ブロックイソシアネート化合物とは、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物にブロック剤を反応させることにより得られる化合物である。
【0066】
イソシアネート化合物としては、例えば、1,6-ヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’-水酸化ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,6-フェニレンジイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、及び、ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0067】
ブロック剤としては、例えば、アルコール類、フェノール類、ε-カプロラクタム、オキシム類、活性メチレン類、メルカプタン類、アミン類、イミド類、酸アミド類、イミダゾール類、尿素類、カルバミン酸塩類、イミン類、及び亜硫酸塩類が挙げられる。
【0068】
ブロックイソシアネート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート系ブロックイソシアネート(例えば、旭化成(株)製デュラネートSBN-70D、SBB-70P、SBF-70E、TPA-B80E、17B-60P、MF-B60B、E402-B80B、MF-K60B、及びWM44-L70G、三井化学(株)製タケネートB-882N、Baxenden社製7960、7961、7982、7991、及び7992など)、トリレンジイソシアネート系ブロックイソシアネート(例えば、三井化学(株)製タケネートB-830など)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート系ブロックイソシアネート(例えば、三井化学(株)製タケネートB-815N、大榮産業(株)製ブロネートPMD-OA01、及びPMD-MA01など)、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン系ブロックイソシアネート(例えば、三井化学(株)製タケネートB-846N、東ソー(株)製コロネートBI-301、2507、及び2554など)、イソホロンジイソシアネート系ブロックイソシアネート(例えば、Baxenden社製7950、7951、及び7990など)が挙げられる。これらのブロックイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
ジオール化合物とは、分子鎖一本に対して2つの水酸基を含むものを指す。骨格中には、脂肪族、芳香族、脂環基等の炭化水素基を含むものが挙げられる。
ジオール化合物の具体例としては、ポリテトラメチレンジオール(例えば、三菱ケミカル(株)製P4TMG650、PTMG850、PTMG1000、PTMG1300、PTMG1500、PTMG1800、PTMG2000、及びPTMG3000など)、ポリブタジエンジオール(例えば、日本曹達(株)製G-1000、G-2000、及びG-3000など)、水添ポリブタジエンジオール(例えば、日本曹達(株)製GI-1000、GI-2000、及びGO-3000など)、ポリカーボネートジオール(例えば、旭化成(株)製デュラノールT5651、デュラノールT5652、デュラノールT4671、デュラノールG4672、デュラノールG3452、及びデュラノールG3450J、並びにクラレ(株)製クラレポリオールC-590、クラレポリオールC-1090、クラレポリオールC-2090、及びクラレポリオールC-3090など)、ポリカプロラクトンジオール(例えば、ダイセル(株)製プラクセル205PL、プラクセル210、プラクセル220、及びプラクセル220PLなど)、ポリエステルジオール(例えば、クラレ(株)製クラレポリオールP-530、クラレポリオールP-2030、及びクラレポリオールP-2050、並びに豊国製油(株)製HS2N-220Sなど)、ビスフェノール類(例えば、三菱ケミカル(株)製ビスフェノールAなど)、及び水添ビスフェノール類(例えば、新日本理化(株)製リカビノールHBなど)が挙げられる。これらのジオール化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
(E)熱架橋剤は、転写フィルムの保存安定性及び硬化膜の透湿性低減の観点からブロックイソシアネート化合物が好ましく、更に、感光性樹脂組成物層の現像性の観点からジオール化合物と併用することがより好ましい。
【0071】
(E)熱架橋剤の感光性樹脂組成物中の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全質量を基準として、0.2質量%~40質量%であり、現像性と低透水性の観点から、1質量%~30質量%であることがより好ましく、2質量%~20質量%であることが更に好ましい。
【0072】
ブロックイソシアネート化合物は、現像によりパターン形成をした後の加熱処理において(A)アルカリ可溶性重合体又は併用したジオール化合物の水酸基と反応するため、硬化膜の透湿度が低くなり、基材、電極等を保護するための防錆性が良好となる。更に、多官能のブロックイソシアネート化合物を介して、(A)アルカリ可溶性重合体同士で架橋することで硬化膜の架橋密度が上がり、水の拡散性が低下するため硬化膜の透湿度が低くなり、導体の防錆性が向上すると考えられる。また、ブロックイソシアネートは、イソシアネート基がブロック剤により封止されているため、室温での(A)アルカリ可溶性樹脂又はジオール化合物との反応が抑制され、感光性樹脂組成物及び転写フィルムの安定性が保たれる。
【0073】
ジオール化合物は、親水性の水酸基を有するため現像性が良好となる。また、現像によりパターン形成をした後の加熱処理において、ジオール化合物の水酸基はブロックイソシアネート化合物と反応するため、優れた導体の防錆性が保たれる。ジオール化合物の分子量は、現像性の観点から300~3,000のものが好ましく、分子量が500~2,000のものがより好ましい。一方で、熱硬化後に未反応の水酸基が残存していると硬化膜の透湿度が悪化し、導体の防錆性能を損なう要因となる場合がある。従って、ジオール化合物は、感光性樹脂組成物としての水酸基価が20mgKOH/g以下になるように添加することが好ましく、15mgKOH/g以下になるように添加することがより好ましい。感光性樹脂組成物の水酸基価が20以下であることで、感光性樹脂組成物の硬化物の透湿度を下げることができるため、導体の防錆性が向上する。
【0074】
<(F)ロジンエステル化合物>
感光性樹脂組成物には、より低透水性を発現させるという観点から、(F)ロジンエステル化合物を更に配合することが好ましい。本実施の形態に係る(F)ロジンエステル化合物とは、松脂の不揮発性分である炭素数20の三環式ジテルペノイドであるロジン酸、ロジン酸の二量体、ロジン酸の水素添加物、及びロジン酸の不均化物から成る群から選ばれる化合物(以下、総称として「ロジン酸誘導体」と呼ぶ)とヒドロキシル化合物、フェノール化合物、グリシジル化合物のいずれかを反応させたことによりエステル結合を有する化合物、ロジン酸誘導体をグリシジル化し、カルボキシル化合物、フェノール化合物のいずれかを反応させたことによりエステル結合を有する化合物である。
【0075】
(F)ロジンエステル化合物の具体例としては、例えば、荒川化学(株)社の製品としては、エステルガムシリーズ、パインクリスタルシリーズ、スーパーエステルシリーズ、ペンセルシリーズ、ビームセット101等、ハリマ化成(株)社の製品としては、ハリエスターシリーズ、ネオトールシリーズ、ハリタックシリーズが挙げられる。
【0076】
(F)ロジンエステル化合物は脂環式構造とエステル構造を有することで、疎水性が高くなる化合物であるが、感光性樹脂組成物中の(A)アルカリ可溶性重合体及び(B)光重合性化合物、(C)光重合性開始剤との相溶性が良いため、組成物としての現像性を阻害することがなく、そのため、転写フィルムの現像性、硬化膜の透湿度、導体の防錆性の各性能バランスに優れる。
【0077】
導体の防錆性の観点から、(F)ロジンエステル化合物は酸価が20mgKOH/g以下であることがより好ましく、上記、荒川化学(株)社製品、ハリマ化成(株)社の製品では、例えば、パインクリスタルKE-100、エステルガム105、スーパーエステルA-115、スーパーエステルA-125、ペンセルA、ペンセルC、ペンセルD-125、ペンセルD-135、ペンセルD-160、ビームセット101、ハリエスターS、ネオトール125HK、ハリタックF105、ハリタックFK125、ハリタックPCJ等が挙げられる。
【0078】
さらに硬化膜の透湿度低減の観点から、(F)ロジンエステル化合物は軟化点が100℃以上であることがより好ましく、これらの条件に該当する具体的な化合物としては、例えば、エステルガム105、スーパーエステルA-115、スーパーエステルA-125、ペンセルA、ペンセルC、ペンセルD-125、ペンセルD-135、ペンセルD-160、ネオトール125HK等が挙げられ、軟化点が110℃以上であることが特に好ましく、これらの条件に該当する具体的な化合物としては、スーパーエステルA-115、スーパーエステルA-125、ペンセルA、ペンセルC、ペンセルD-125、ペンセルD-135、ペンセルD-160、ネオトール125HKが挙げられる。(F)ロジンエステル化合物は、単独、又は2種以上混合して用いることもできる。
【0079】
(F)ロジンエステル化合物の感光性樹脂組成物中の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分質量に対し、1質量%~20質量%であり、透湿度と現像性の観点から、5質量%~20質量%であることがより好ましく、基材への密着性の観点から、5質量%~15質量%であることが更に好ましい。(F)ロジンエステル化合物の含有量が1質量%~20質量%の範囲内であれば、転写フィルムの低温現像性と硬化膜の透湿度の性能バランスが良好である。
【0080】
<(G)防錆剤>
本実施の形態に係る防錆剤とは、防錆効果を有する化合物をいい、例えば、金属表面に被膜を形成して金属の腐食又は錆を防止する物質等である。
【0081】
防錆剤としては、本実施の形態に係る感光性樹脂組成物への相溶性及び感度の観点から、N、S、O等を含む複素環化合物が好ましく、例えば、テトラゾール及びその誘導体、トリアゾール及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体、インダゾール及びその誘導体、ピラゾール及びその誘導体、イミダゾリン及びその誘導体、オキサゾール及びその誘導体、イソオキサゾール及びその誘導体、オキサジアゾール及びその誘導体、チアゾール及びその誘導体、イソチアゾール及びその誘導体、チアジアゾール及びその誘導体、チオフェン及びその誘導体等が挙げられる。ここで記載した誘導体には、母体となる構造に置換基を導入した化合物が含まれる。例えば、テトラゾール誘導体であれば、テトラゾールに置換基を導入した化合物が含まれる。置換基としては、特に制限はないが、例えば、炭化水素基(飽和でも不飽和でもよく、直鎖型でも分岐型でもよく、構造中に環状構造を含んでもよい)、又はヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基及びハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)基等のヘテロ原子を有する官能基を1つ以上含む置換基が挙げられる。
【0082】
さらに、防錆性の観点から、複素環化合物としては、CとN及び/又はSとで構成される複素環を有し、かつ、同一複素環中、N原子数が3以下であるか、S原子数が3以下であるか、又はN原子とS原子の合計数が3以下である化合物が好ましい。より好ましい複素環化合物は、トリアゾール及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体、イミダゾリン及びその誘導体、チアゾール及びその誘導体、イソチアゾール及びその誘導体、チアジアゾール及びその誘導体、並びにチオフェン及びその誘導体等である。防錆性及び現像性の観点から、該化合物として、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、並びにイミダゾール及びその誘導体がさらに好ましい。
【0083】
CとN及び/又はSとで構成される複素環を有し、かつ、同一複素環中、N原子数が3以下であるか、S原子数が3以下であるか、又はN原子とS原子の合計数が3以下である化合物の具体例を以下に示す:
トリアゾール、例えば、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール等;
トリアゾール誘導体、例えば、3-メルカプトトリアゾール、3-アミノ-5-メルカプトトリアゾール、ベンゾトリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール-1-アセトニトリル、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1-(2-ジ-n-ブチルアミノメチル)-5-カルボキシベンゾトリアゾール、1-(2-ジ-n-ブチルアミノメチル)-6-カルボキシベンゾトリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール-1-メタノール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、5-カルボキシベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、5-クロロベンゾトリアゾール、5-ニトロベンゾトリアゾール等;
【0084】
イミダゾール;イミダゾール誘導体、例えば、ウンデシルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、5-カルボキシベンゾイミダゾール、6-ブロモベンゾイミダゾール、5-クロロベンゾイミダゾール、2-ヒドロキシベンゾイミダゾール、2-(1-ヒドロキシメチル)ベンゾイミダゾール、2-メチルベンゾイミダゾール、5-ニトロベンゾイミダゾール、2-フェニルベンゾイミダゾール、2-アミノベンゾイミダゾール、5-アミノベンゾイミダゾール、5-アミノ-2-メルカプトベンゾイミダゾール等;
イミダゾリン;イミダゾリン誘導体、例えば、2-ウンデシルイミダゾリン、2-プロピル-2-イミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等;
チアゾール;チアゾール誘導体、例えば、2-アミノ-4-メチルチアゾール、5-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルチアゾール、ベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-アミノベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メチルベンゾチアゾール、(2-ベンゾチアゾリルチオ)酢酸、3-(2-ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸等;
【0085】
イソチアゾール;イソチアゾール誘導体、例えば、3-クロロ-1,2-ベンゾイソチアゾール等;
チアジアゾール、例えば、1,2,3-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール等;
チアジアゾール誘導体、例えば、4-アミノ-2,1,3-ベンゾチアジアゾール、2-アミノ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-アミノ-5-メチル-1,3,4-チアジアゾール、2-アミノ-1,3,4-チアジアゾール、5-アミノ-1,2,3-チアジアゾール、2-メルカプト-5-メチル-1,3,4-チアジアゾール等; チオフェン;チオフェン誘導体、例えば、2-チオフェンカルボン酸、3-アミノ-2-チオフェンカルボン酸メチル、3-メチルベンゾチオフェン等。
【0086】
上記防錆剤の中でも、導体の防錆性及び現像性の観点から、ベンゾトリアゾール、5-カルボキシベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、及び5-クロロベンゾトリアゾールが特に好ましい。
一方で、(G)成分として導体の防錆性と硬化膜の基材との密着性の観点から、テトラゾール及びその誘導体、トリアゾール及びその誘導体、インダゾール及びその誘導体並びにチアジアゾール及びその誘導体が好ましい。
【0087】
テトラゾールの具体例としては、1H-テトラゾールが挙げられる。テトラゾール誘導体の具体例としては、5-アミノ-1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、1-メチル-5-エチル-1H-テトラゾール、1-メチル-5-メルカプト-1H-テトラゾール、1-フェニル-5-メルカプト-1H-テトラゾール、1-(ジメチルアミノエチル)-5-メルカプト-1H-テトラゾール及び5-フェニル-1H-テトラゾール等が挙げられる。
【0088】
インダゾールの具体例としては、1H-インダゾールが挙げられる。インダゾール誘導体としては、5-アミノインダゾール、6-アミノインダゾール、1-ベンジル-3-ヒドロキシ-1H-インダゾール、5-ブロモインダゾール、6-ブロモインダゾール、6-ヒドロキシインダゾール、3-カルボキシインダゾール及び5-ニトロインダゾール等が挙げられる。
【0089】
トリアゾール及びその誘導体並びにチアジアゾール及びその誘導体の具体例は、上記で既に説明したとおりである。
それらの中でも、導体の防錆性と硬化膜の基材との密着性の観点から、5-アミノ-1H-テトラゾール、5-カルボキシベンゾトリアゾール、5-アミノインダゾール及び5-アミノ-1,2,3-チアジアゾールが特に好ましい。
本実施の形態では、上記で説明された防錆剤の1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
感光性樹脂組成物中の防錆剤の含有量は、導体の防錆性又は転写フィルムの低温現像性の観点から、感光性樹脂組成物の固形分全質量を基準として、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%、さらに好ましくは0.2質量%~3質量%である。
【0091】
<その他の成分>
本実施の形態において、成分(A)~(G)に加えて、その他の成分(H)として、ニトロソフェニルヒドロキシルアミンが3モル付加したアルミニウム塩等の重合禁止剤、酸化防止剤、密着助剤、レベリング剤、充填剤、消泡剤、及び難燃剤等も感光性樹脂組成物に含有させることが出来、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0092】
<突き刺し強度>
本発明の感光性樹脂組成物は、感光層が30μmの厚みの転写フィルムを作製し、該フィルムにて6mmφの開口部を有する基板上に露光膜を形成した後、テンシロンにて突き刺し試験を行った際の最大点荷重が35gf以上である。
具体的には、支持体上に感光性樹脂組成物を塗布して、厚さ30μmの感光性樹脂層を積層した転写フィルムを形成し、該転写フィルムを、6mmφの開口部を有する基板上にラミネートした後に、全面露光して露光膜を形成した後、該支持体を剥がし、前記開口部の中心に対応する部分を、1.5mmφの円柱状冶具を取り付けたテンシロンを用いて、速度100mm/minで突き刺し試験を行った際の最大点荷重が35gf以上である。
突き刺し試験による最大点荷重のより具体的な測定法については、後述する実施例にて詳細を説明する。
【0093】
該感光性樹脂組成物は、突き刺し試験時の最大点荷重が35gf以上であることで、基材への良好な密着性を示す。
保護膜をフレキシブル基材へ適用する場合、フレキシブル基材はロールtoロールで生産されることが多く、基材の歪み・たわみや搬送ロールとの接触により、脆弱な保護膜ではクラックや保護膜の基材からの剥離が生じる。一方で、後述する実施例のクロスカット試験では、硬化膜にカッター刃で碁盤目状に切り目を入れたのち、テープ剥離を行い密着性の評価を行うが、脆い組成ではカッター刃により切り込みを入れた時点で、保護膜の割れや基材からの剥離が生じるが、突き刺し試験時の最大点荷重が35gf以上ある保護膜ではそれが生じず、密着性と突き刺し試験時の最大点荷重(露光膜の強さ)に相関があると発明者らは考えた。よって、前述したロールtoロールでのクラックや保護膜の剥離を解消するためには、突き刺し試験時の最大点荷重が35gf以上である強度の強い保護膜であれば、それらの不良が改善すると発明者らは考える。
【0094】
一方で、本発明の感光性樹脂組成物は(A-i)エチレン性不飽和基及び酸性基を有し主鎖に環構造を含むアルカリ可溶性重合体や剛直な構造を有する化合物を使用することで、高Tgや高い架橋密度が得られ低い透湿度が得られるが、強さが足りず脆弱になる傾向があり、密着性が悪化する。突き刺し試験時の最大点荷重が35gf以上になれば、強さを上げる手法に制限はないが、(B-i)ブチレンオキシドを構造内に含む光重合性化合物の添加や、式(1)で算出した(A)成分の重量平均分子量を6,000以上とすることで、最大点荷重を35gf以上とすることができる。(B-i)成分が式(2)であることでより露光膜の強さが発現しやすい。架橋構造にブチレンオキシド鎖が組み込まれることで、架橋体の柔軟さが付与され強さが向上し、更に重量平均分子量を大きくすることで、小さいものを使用した場合に比べ相対的にクラックやワレの起点となる部分が減少し、露光膜の強さが増すと考える。
【0095】
更に、下記に限定されないが、重合体の相溶性が良く膜強度が出やすいとの観点から、(A)成分については下記条件1及び/または条件2を満たし、(B)成分については下記条件3を満たすことが露光膜の強度を得るためにはより好ましい。
条件1:(A-i)成分として、(A-iii)重量平均分子量が6,000以上であり酸価が60~120mgKOH/gのエチレン性不飽和基及び酸性基を有し主鎖に環構造を含む重合体を(A)成分の固形分全質量に対して90質量%以上含有する。
条件2:(A)成分として(A-i)及び(A-iv)重量平均分子量10,000~36,000(より好ましくは25,000以下)であり酸価130~150mgKOH/gの酸性基を有しエチレン性不飽和基を有さないアルカリ可溶性重合体を含有する。
条件3:(B-i)成分を感光性樹脂組成物の固形分全質量に対して3質量%~15質量%含有する。
【0096】
<転写フィルム>
本実施の形態に係る感光性樹脂層は、厚みが15μm以下であり、かつ、感光性樹脂層の波長365nmでの吸光度が、感光性樹脂層の厚み1μm当たり0.01~0.05であることが好ましい。感光性樹脂層の膜厚が厚過ぎると柔軟性が悪化するため、感光性樹脂層の厚みは15μm以下が好ましく、配線の凹凸に追従するという観点、及び防錆性を確保するという観点から、3μm以上が好ましい。
【0097】
転写フィルムは、感光性樹脂組成物より成る感光性樹脂層と、支持フィルムとを含む。具体的には、支持フィルム上に、上述の感光性樹脂組成物より成る層が積層されている。転写フィルムは、必要により、感光性樹脂層の支持フィルム側とは反対側の表面に保護フィルムを有してもよい。
【0098】
本実施の形態に用いられる支持フィルムとしては、露光光源から放射される光を透過する透明なものが望ましい。このような支持フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合体フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、セルロース及びその誘導体から成るフィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、必要に応じて、延伸されたものも使用可能である。支持フィルムのヘーズは、5以下であることが好ましい。支持フィルムの厚みは、小さいほど解像性及び経済性の面で有利であるが、強度を維持するために10μm~30μmであることが好ましい。
【0099】
転写フィルムのために用いられる保護フィルムの重要な特性は、感光性樹脂層との密着力が、支持フィルムよりも保護フィルムの方が充分小さく、容易に剥離できることである。保護層としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が好ましく使用できる。
【0100】
転写フィルムの作製方法は、支持体(例えば、支持フィルム)上に塗布液を塗布して、乾燥する工程を含み、更に必要に応じて感光性樹脂層上に保護フィルムをラミネートする工程を含む。塗布液は、上記で説明された感光性樹脂組成物を溶媒に均一に溶解することにより得られることができる。
【0101】
感光性樹脂組成物を溶解する溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)に代表されるケトン類;メタノール、エタノール又はイソプロパノールに代表されるアルコール類等が挙げられる。
溶剤は、支持体上に塗布する感光性樹脂組成物の溶液の粘度が、25℃で10mPa・s~800mPa・sとなるように、感光性樹脂組成物に添加することが好ましい。
【0102】
塗布方法としては、例えば、ドクターブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ロールコーティング法、スクリーンコーティング法、スピナーコーティング法、インクジェットコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、グラビアコーティング法、カーテンコーティング法、ダイコーティング法等が挙げられる。塗布液の乾燥条件に特に制限はないが、乾燥温度は、50℃~130℃であることが好ましく、乾燥時間は、30秒~30分であることが好ましい。
【0103】
本実施の形態では、転写フィルムは、導体部の保護膜を形成するために使用されることが好ましく、その場合には、導体部は、銅電極、ニッケル、パラジウム、銀、チタン、モリブデン等と銅との合金電極又は透明電極であることがより好ましい。より詳細には、転写フィルムは、タッチパネル(タッチセンサ又はフォースセンサ)の額縁領域における引き出し配線のための保護膜、センシング領域における銅や合金電極のための保護膜として、使用されることができる。また、ひずみゲージにより抵抗値の変化にてセンシングを行うひずみセンサの電極保護膜、AI関連の電子機器の配線保護膜や表示素子の保護膜としても使用できる。
【0104】
[樹脂パターン、硬化膜パターン及びそれらの製造方法]
転写フィルムを用いた樹脂パターンの形成は、以下の工程:
基材上に、上記で説明された転写フィルムをラミネートするラミネート工程;
該ラミネートされた感光性樹脂積積層体に露光する露光工程;及び
該露光された転写フィルムを現像する現像工程;
を含む樹脂パターンの製造方法によって行うことができる。更に、樹脂パターンを導体部の保護膜として用いるために、現像工程後に、樹脂パターンを後露光処理及び/又は加熱処理に供して、硬化膜パターンを形成する工程を樹脂パターンの製造方法として含むことが好ましい。
【0105】
以下、具体的な方法の一例を示す。基材としては、銅張積層板に銅配線が形成された基材、ガラス基材、透明樹脂基材に透明電極(例えば、ITO、Agナノワイヤー基材等)、又は金属電極(例えば、Cu、Al、Ag、Ni、Mo及びこれらの少なくとも2種の合金等)が形成されたタッチパネル基材又はタッチセンサ基材(例えばフォースセンサ等)等を使用することができる。フレキシブル銅張積層板、タッチパネル電極形成用基材、又はタッチセンサ電極形成用基材は、フレキシブルなフィルム上に、銅層、銅とニッケルの合金層若しくは透明電極、又は金属電極の原料となる金属層が形成されて成る基材である。
【0106】
上記フィルムとしては、例えば、ポリイミド、ポリエステル(PET、PEN)、シクロオレフィンポリマー(COP)等のフィルム原料から成るフィルムが挙げられる。上記フィルムの厚みは、10μm~100μmであることが好ましい。
【0107】
上記のような基材に対して転写フィルムをラミネートする工程を行うことにより、基材の銅層上に感光性樹脂層を形成する。転写フィルムが保護層を有する場合には、好ましくは該保護層を剥離した後、ラミネーターで転写フィルムを基材表面に加熱圧着して積層する。この場合、転写フィルムを基材表面の片面だけに積層してもよいし、両面に積層してもよい。加熱温度は、一般に約40℃~160℃である。加熱圧着は、二連のロールを備えた二段式ラミネーターを使用して行われてもよいし、転写フィルムと基材とを複数回に亘って繰り返してロールに通すことにより行われてもよい。また、真空ロールラミネーターを用いると、基材上の配線等による凹凸への保護膜の追従性が良好であり、転写フィルムと基材の間にエアーが混入する欠点を防ぐことが出来る。一方で、真空ロールラミネーターを用いた場合、ラジカル重合を抑制する酸素濃度が著しく低いため、光重合開始剤が開裂し、暗反応が進行し易くなる。従って、ロールの温度は、40℃~100℃が好ましく、40℃~80℃がより好ましい。
【0108】
次に、露光機を用いて露光工程を行う。必要ならば転写フィルムから支持フィルムを剥離し、フォトマスクを通して活性光により感光性樹脂層を露光する。露光量は、光源照度及び露光時間により決定される。露光量は、光量計を用いて測定してもよい。露光機としては、超高圧水銀灯を光源とした散乱光露光機、平行度を調整した平行光露光機、マスクとワークの間にギャップを設けるプロキシミティ露光機等を挙げることができる。更に、露光機としては、マスクと画像のサイズ比が1:1の投影型露光機、高照度のステッパー(登録商標)といわれる縮小投影露光機、又はミラープロジェクションアライナ(登録商標)と呼ばれる凹面鏡を利用した露光機を挙げることができる。
【0109】
また、露光工程においては、直接描画露光方法を用いてもよい。直接描画露光とは、フォトマスクを使用せず、基板上に直接描画して露光する方式である。光源としては、例えば、波長350nm~410nmの固体レーザー、半導体レーザー又は超高圧水銀灯が用いられる。描画パターンはコンピューターによって制御される。この場合の露光量は、光源照度と基板の移動速度によって決定される。
【0110】
次に、現像装置を用いて現像工程を行う。露光後、感光性樹脂層上に支持フィルムがある場合には、必要に応じて支持フィルムを除き、続いてアルカリ水溶液の現像液を用いて未露光部を現像除去して、樹脂パターンを得る。アルカリ水溶液としては、Na2CO3又はK2CO3の水溶液(アルカリ水溶液)を用いることが好ましい。アルカリ水溶液は、感光性樹脂層の特性に合わせて適宜選択されるが、約0.2質量%~2質量%の濃度、約20℃~40℃のNa2CO3水溶液が一般的である。現像液の温度が高い場合、臭気対策としての排気等による陰圧環境下では水分が揮発し易くなり、経時で現像液が濃縮され、安定生産性が損なわれる傾向がある。そのため、現像液温度は30℃未満であることが好ましい。また、アルカリ水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。基材への影響を考慮して、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液等のアミン系アルカリ水溶液を用いることもできる。現像速度に応じて、水溶液中のアルカリ化合物の濃度を適宜選択することができる。現像液の臭気が少なく、取扱い性に優れ、かつ、管理及び後処理が簡便であるという観点から、特に1質量%、25℃~30℃のNa2CO3水溶液が好ましい。現像方法としては、アルカリ水スプレー、シャワー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の既知の方法が挙げられる。
【0111】
現像後、樹脂パターンに残存したアルカリ水溶液の塩基を、有機酸、無機酸又はこれらの酸水溶液を用いて、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の既知の方法により酸処理(中和処理)することができる。更に、酸処理(中和処理)の後、水洗する工程を行うこともできる。
【0112】
上記の各工程を経て樹脂パターンを得ることができるが、更に後露光工程及び/又は加熱工程を実施してもよい。後露光工程及び/又は加熱工程を実施することにより、更に防錆性が向上する。後露光処理での露光量としては、200mJ/cm2~1,000mJ/cm2が好ましく、加熱工程では40℃~200℃での処理を行うことが好ましく、製造プロセスの観点から、加熱処理時間は60分以下が好ましい。加熱処理の方式としては、熱風、赤外線、遠赤外線等の適宜の方式の加熱炉を用いることができ、加熱処理の雰囲気としては、N2雰囲気下、又はN2/O2雰囲気下が挙げられる。
【0113】
本実施の形態によれば、転写フィルムの導体基材への密着性、現像性、露光膜の強度及び硬化膜の透湿度がいずれも良好であり、配線、電極等の導体部の保護に好適な感光性樹脂組成物及び転写フィルムを提供し得る。このような転写フィルムは、例えば、タッチパネル、タッチセンサ、フォースセンサ、ひずみセンサ又はAI関連の電子機器用途の配線、電極等の保護膜又はプリント配線板のソルダーレジストとして好適である。
【0114】
[タッチパネル表示装置、タッチセンサ又はフォースセンサを有する装置]
本実施の形態に係る転写フィルムの硬化膜をタッチパネル用基材に形成することで、転写フィルムの硬化膜を有するタッチパネル表示装置、及び転写フィルムの硬化膜とタッチセンサ及び/又はフォースセンサとを有する装置を提供することができる。
タッチパネル用基材としては、一般に、タッチパネル、タッチセンサ又はフォースセンサのために用いられる基材、例えば、ガラス板、プラスチック板、プラスチックフィルム、セラミック板等が挙げられる。この基材上には、保護膜を形成する対象となるITO、Cu、Al、Ag、Ni、Mo及びこれらの少なくとも2種を含む合金等のタッチパネル用電極又は金属配線が設けられ、基材と電極との間に絶縁層が設けられていてもよい。
【0115】
タッチパネル用電極を有するタッチパネル用基材は、例えば、以下の手順で得ることができる。ポリエステル、COPフィルム等のタッチパネル用基材上に、銅とニッケルの合金をスパッタ法により金属膜を形成した後、金属膜上にエッチング用感光性フィルムを貼り付け、所望のレジストパターンを形成し、不要な合金を塩化鉄水溶液等のエッチング液で除去し、更にレジストパターンを剥離・除去する。
【0116】
タッチパネル用基材上に保護膜としての硬化膜を形成する方法は、本実施の形態に係る転写フィルムをタッチパネル用基材上にラミネートする第1工程、保護膜の所定部分を活性光線の照射により硬化させる第2工程、保護膜の所定部分以外(保護膜の活性光線が照射されていない部分)を除去して、パターニングされた保護膜の硬化物を形成する第3工程、及びパターニングされた保護膜を露光及び/又は熱処理する第4工程を、この順に含むことが好ましい。
【0117】
上述のように転写フィルムの硬化膜パターンを有するタッチパネル用基材を作製することによって、転写フィルムの硬化膜を有するタッチパネル表示装置、又は転写フィルムの硬化膜とタッチセンサ及び/又はフォースセンサとを有する装置を好適に提供することができる。
【実施例】
【0118】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0119】
1.(A)成分について
(A-i)エチレン性不飽和基及び酸性基を有し主鎖に環構造を含むアルカリ可溶性重合体としては、市販されている下記の溶液を使用した。
【0120】
A-1 ZCR-1797H(ビフェニル骨格を有するエポキシアクリレートの酸変性物;日本化薬社製)
A-2 ZCR-1569H(ビフェニル骨格を有するエポキシアクリレートの酸変性物;日本化薬社製)
A-3 ZXR-1807H(トリシクロデカン骨格を有するエポキシアクリレートの酸変性物;日本化薬社製)
A-4 ZXR-1810H(トリシクロデカン骨格を有するエポキシアクリレートの酸変性物;日本化薬社製)
A-5 FCA-954(フルオレニル骨格を有するエポキシアクリレートの酸変性物、ナガセケムテックス社製)
【0121】
上記のエチレン性不飽和基及び酸性基を有し主鎖に環構造を含むアルカリ可溶性重合体の重量平均分子量及び酸価については表1に示す。なお、重量平均分子量及び酸価の測定は上記の<(A)酸性基を有するアルカリ可溶性重合体>の詳細に記載されている方法で行った。
【0122】
次に、(A-ii)酸性基を有しエチレン性不飽和基を有さないアルカリ可溶性重合体の作製について説明する。
<(A-6)の作製>
撹拌機、還流冷却器、不活性ガス導入口及び温度計を備えたフラスコに、メチルエチルケトンを100質量%仕込み、窒素ガス雰囲気下で75℃に昇温した。メタクリル酸(MAA)20質量%、メタクリル酸メチル(MMA)25質量%、スチレン(St)55質量%、及びアゾ系重合開始剤(和光純薬社製、V-601)を、2時間掛けて均一に滴下した。滴下後、75℃で10時間反応系の撹拌を続け、反応終了後に、メチルエチルケトンを用いて、得られた樹脂溶液を希釈し、固形分酸価が130mgKOH/g、重量平均分子量が約13,000であるアルカリ可溶性重合体溶液(固形分50質量%)(A-6)を得た。
【0123】
<(A-7)の作製>
上記アルカリ可溶性重合体溶液(A-6)と同様の方法で、MAA20質量%、MMA25質量%、St55質量%を用いて、固形分酸価が130mgKOH/g、重量平均分子量が約35,000であるアルカリ可溶性重合体溶液(固形分50質量%)(A-7)を得た。
【0124】
<(A-8)の作製>
上記アルカリ可溶性重合体溶液(A-6)と同様の方法で、MAA22.5質量%、MMA12.5質量%、St60質量%、アクリル酸ブチル(BA)5質量%を用いて、固形分酸価が147mgKOH/g、重量平均分子量が約22,500であるアルカリ可溶性重合体溶液(固形分54質量%)(A-8)を得た。
【0125】
<(A-9)の作製>
上記アルカリ可溶性重合体溶液(A-6)と同様の方法で、MAA29質量%、MMA19質量%、St52質量%を用いて、固形分酸価が189mgKOH/g、重量平均分子量が約50,000であるアルカリ可溶性重合体溶液(固形分38質量%)(A-7)を得た。
【0126】
得られた酸性基を有しエチレン性不飽和基を有さないアルカリ可溶性重合体の共重合組成、重量平均分子量及び酸価について表2に示す。なお、アルカリ可溶性重合体の重量平均分子量、及び酸価の測定は、上記の<(A)酸性基を有するアルカリ可溶性重合体>の詳細に記載されている方法で行った。
【0127】
2.評価用転写フィルムの作製
実施例及び比較例における評価用転写フィルムは、次のようにして作製した。
<転写フィルムの作製>
下記表4~表6に示す組成(但し、各成分の数字は固形分としての配合量(質量部)を示す。)に従って、各成分をそれぞれ250mlのプラスチックボトルに量り取り、固形分濃度が53質量%となるようにメチルエチルケトンを投入し、攪拌機を用いて5時間に亘って溶解・混合を行って、感光性樹脂組成物を得た。その後、感光性樹脂組成物を3μmのフィルターに通し、感光性樹脂組成物調合液(実施例1~23、及び比較例1~11)を調製した。
【0128】
感光性樹脂組成物調合液を、支持体である16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、FB40)の表面に、ブレードコーターを用いて均一に塗布し、乾燥して支持体上に均一な感光性樹脂層を形成した。感光性樹脂層の厚みは8μm及び30μmとしたが、前記乾燥条件を8μmは95℃の乾燥機中で7分間、30μmは95℃の乾燥機中で9分間とした。次いで、感光性樹脂層の表面上に、保護フィルムとして33μm厚のポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製、GF-858)を貼り合わせることにより、評価用転写フィルムを得た。
また、以下の評価結果を表4~表6に示す。なお、表4~表6における略語で表した感光性樹脂組成物調合液中の材料成分の名称等は表3に示す。
【0129】
3.現像性
<サンプル作製法>
現像性評価用のサンプルは以下のようにして作製した。
感光性樹脂層の厚みが8μmの転写フィルムの保護フィルムを剥がしながら、樹脂上に銅ニッケル合金がスパッタされた基板の合金表面(サイズ:5cm×10cm)上に、ホットロールラミネーター(大成ラミネーター(株)製、VA-400III)を用いてロール温度80℃の条件にてラミネートした。エアー圧力は0.2MPaとし、ラミネート速度は2m/分として設定した。(ただし、80℃の条件で転写しない組成に関しては100℃にロール温度を上げてラミネートした。)15分静置後、支持フィルムの上にPETマスクとストゥーファー21段ステップタブレット(光学密度0.00を1段目とし、1段毎に光学密度が0.15ずつ増加するステップタブレット)を並べて置き、PETマスク及びステップタブレット側から各組成の最適露光量を、平行光露光機((株)オーク製作所社製、HMW-801)により露光した。PETマスクとしては、
図1に示すようなパターンを有するものを使用した。
図1中、影をつけた部分は遮光部分を表し、白い部分は光を透過する部分を表す。また、図中の矢印と数値は寸法を表し、実際のマスクパターンではない。
【0130】
次いで15分以上静置した後、支持体を剥がし、(株)フジ機工製現像装置を用い、フルコーンタイプのノズルにて現像スプレー圧0.12MPaで、28℃~30℃の1質量%Na2CO3水溶液を45秒間スプレーして現像し感光性樹脂層の未露光部分を溶解除去した。現像工程を経たのち、エアーブローにて乾燥し、次いで水洗を行ったが、水洗工程は、フラットタイプのノズルにて水洗スプレー圧0.12MPaで、現像工程と同時間に亘って行い、水洗されたサンプルをエアーブローにより乾燥させて、現像性評価用のサンプルを作製した。上記最適露光量とは、ストゥーファー21段ステップタブレットを介して露光した場合に残膜する段数が7~8段となるような露光量と定義する。
【0131】
<評価方法>
作製した保護膜付き基板の感光層を除去した部分の基材表面状態を顕微鏡で観察し、以下のように判定した。
A:28℃の現像条件において基材の合金上に現像残渣なし。
B:28℃の現像条件においては、基材の合金上に現像残渣があるが、30℃の現像条件においては基材の合金上に現像残渣なし。
C:30℃の現像条件においても現像残渣が発生する。
現像性評価においては、Bランクまでが導体の保護膜として実用上良好な結果であると考えられる。
【0132】
4.透湿度試験
<サンプル作製法>
感光性樹脂層の厚みが30μmの転写フィルムの保護フィルムを剥がしながら、No.4ろ紙(アドバンテック製)にホットロールラミネーター(大成ラミネーター(株)製、VA-400III)を用いてラミネートした。ロール温度は60℃、エアー圧力は0.2MPaとし、ラミネート速度は1.0m/分として設定した。(ただし、60℃の条件で転写しない組成に関しては100℃にロール温度を上げてラミネートした。)15分静置後、保護膜の支持フィルム側から散乱光露光機((株)オーク製作所社製、HMW-201KB)によって350mJ/cm2の露光量で全面露光した。30分静置後、支持フィルムを剥離し、熱風循環式オーブンにて150℃で30分間処理して、サンプルを作製した。
【0133】
<評価方法>
透湿度の測定は、JIS Z0208のカップ法に準じて行い、透湿条件は温度65℃/湿度90%で実施した。
A・・・透湿度200g/(m2・day)以上、265g/(m2・day)未満
B・・・透湿度265g/(m2・day)以上、330g/(m2・day)未満
C・・・透湿度330g/(m2・day)以上、400g/(m2・day)未満
D・・・透湿度400g/(m2・day)以上
透湿度試験においては、Cランクまでが導体の保護膜として実用上良好な結果であると考えられる。
【0134】
5.密着性評価(クロスカット試験)
<サンプル作製法>
感光性樹脂層の厚みが8μmの転写フィルムの保護フィルムを剥がしながら、樹脂上に銅ニッケル合金がスパッタされた基板の合金表面(サイズ:4cm×4cm)上にホットロールラミネーター(大成ラミネーター(株)製、VA-400III)を用いてラミネートした。ロール温度は80℃、エアー圧力は0.2MPaとし、ラミネート速度は2m/分とした。(ただし、80℃の条件で転写しない組成に関しては100℃にロール温度を上げてラミネートした。)15分静置後、保護膜の支持フィルム側から散乱光露光機によって<3.現像性>の項目で評価した各組成の最適露光量を全面露光した。
【0135】
次いで15分以上静置した後、支持体を剥がし、(株)フジ機工製現像装置を用い、フルコーンタイプのノズルにて現像スプレー圧0.12MPaで、30℃の1質量%Na2CO3水溶液を45秒間スプレーして現像し感光性樹脂層の未露光部分を溶解除去した。現像工程を経たのち、エアーブローにて乾燥し、次いで水洗を行ったが、水洗工程は、フラットタイプのノズルにて水洗スプレー圧0.12MPaで、現像工程と同時間に亘って行い、水洗されたサンプルをエアーブローにより乾燥させた。
現像後のサンプルを散乱光露光機にて感光性樹脂層側から300mJ/cm2の露光量で露光し、密着性評価用サンプルを作製した。
【0136】
<評価方法>
上記処理後のサンプルを、JIS規格 K5400を参考に、100マスのクロスカット試験を実施した。保護フィルムが積層されている方の面にカッターナイフを用いて、1mm×1mm四方の碁盤目の切り傷を入れ、碁盤目部分に15mm幅の粘着テープ(ニチバン(株)製セロテープ(登録商標)、製品名)を強く圧着させ、テープの端をほぼ0°の角度で緩やかに引き剥がした後、碁盤目の状態を光学顕微鏡にて観察し、以下のように判定した。
A:全面積中、剥がれは5%未満である。
B:全面積中、5~15%の剥がれがある。
C:全面積中、15%以上の剥がれがある
クロスカット試験においては、Bランクまでが実用上、導体の保護膜として良好な結果であると考えられる。
【0137】
6.最大点荷重測定(突き刺し試験)
<サンプル作製法>
感光性樹脂層の厚みが30μmの転写フィルムの保護フィルムを剥がしながら、60℃のオーブンで10分間予熱した、
図2に示す6mmφの開口部を有する1.6mm厚の銅張り積層板の一方の面に、ホットロールラミネーター(大成ラミネーター(株)製、VA-400III)を用いてラミネートした。ロール温度は80℃、エアー圧力は0.2MPaとし、ラミネート速度は2m/分とした。(ただし、80℃の条件で転写しない組成に関しては100℃にロール温度を上げてラミネートした。)15分静置後、保護膜の支持フィルム側から散乱光露光機によって<3.現像性>の項目で評価した各組成の最適露光量を全面露光した。
【0138】
次いで、30分以上放置した後支持体を剥がし、6mmφの開口部の中心を、支持体を剥がした面から、1.5mmφの円柱を速度100mm/minで突き刺し、テンシロン(オリエンテック社製RTM-500)により最大点荷重を測定した。10か所測定し上位5点の平均値を突き刺し試験の最大点荷重とした。
35gf以上が実用上、導体の保護膜として良好な結果であると考えられる。
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
表4~表6に示した結果から、実施例1~22は本発明で規定された要件を満たすことで、現像性、硬化膜の透湿度及び露光膜の基材との密着性に優れていることが示されている。一方、比較例1~11においては、本発明で規定される要件の何れかを満たしていないため、現像性、硬化膜の透湿度及び露光膜の基材との密着性のいずれかが劣ることが示されている。
【0146】
比較例1は実施例1と比較し、(B-i)成分を含まない組成であるが、突き刺し試験における最大点荷重が35gf未満であり、透湿度は良好であるが、密着性の性能は許容範囲外であり性能バランスが劣る。更に比較例2を見ると、(B-i)成分を含むが、最大点荷重35gfの規定を満たさないため、これも密着性が劣る結果である。また、比較例3は実施例18の(B-i)成分を、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを付加したポリアルキレングリコールのジメタクリレートに置き換えたものであるが、最大点荷重は35gf以上あり密着性は良好であるが、透湿度が悪化しており性能バランスが悪い。
【0147】
続いて、比較例4は実施例2の(B-ii)成分を他の重合性化合物に振り替え、(B-ii)成分不含としたものだが最大点荷重は35gf以上あるものの密着性が悪い。これは、(B-ii)成分不含のため、露光後の架橋が密になりすぎ硬化収縮が起こることで、基材との間に応力が発生し密着力が低下、露光膜の強度はあるものの密着性が悪い結果になったと、発明者らは考える。比較例5も実施例2と比較すると、(B-ii)成分の一部を他の重合性化合物に振り替えた組成であるが、(B-ii)成分を組成物の全固形分中3%以上含むという規定を満たさないため、比較例4と同様の理由で密着性が悪い結果だと考える。
【0148】
一方、比較例8は実施例11の組成に対し、(A-i)成分を(A-ii)成分に振り分け、(A-i)成分不含としただけの組成であるが、(A-i)成分、(A)成分の重量平均分子量及び最大点荷重の規定を満たさないため現像性、透湿度及び密着性の全てが劣る。また、比較例7は、比較例8に対し(A)成分の重量平均分子量は満たすが、やはり(A-i)成分及び最大点荷重の規定を満たさないため現像性、透湿度及び密着性の全てが許容範囲外の性能である。更に、比較例6は(A-i)成分不含であること以外は規定を満たすが、全ての規定を満たしていないので現像性及び透湿度が劣る。これらの結果から、(A-i)成分は透湿度、現像性を向上させる効果があることが分かる。また、比較例9は実施例1に対し、(A-i)成分は同様に含有するが(A)成分の重量平均分子量が2500と、規定を下回るため最大点荷重が低く、密着性が劣る結果となっている。比較例10も同様である。比較例11は比較例9や実施例1に対し重量平均分子量を大きくしたものであるが、既定の重量平均分子量を超えるため、現像性が悪化する結果となっている。これらより、(A)成分の重量平均分子量を調整することは、膜の強度、密着性及び現像性の性能をバランスよく発現させるうえで有用であることが分かる。
【0149】
また、実施例同士を比較する。実施例1~3は(B-i)成分の量違いであるが、(B-i)成分の含有量が多くなることで最大点荷重は増加し、密着性が向上していることが分かる。一方で、(B-i)成分を増量することで透湿度は悪化する傾向があることが分かる。また、実施例4をみると、(B-i)成分を組成物の全固形分中3.2%しか含まないが、最大点荷重は35gfを超え、密着性も良好であり、少量添加でも効果があることが分かる。一方で、実施例20は(B-i)成分を更に減量し、添加量が3%を下回った組成であるが、透湿度が実施例5に比べ劣り(B-i)成分含有量が3~15%の範囲に無いため性能バランスが取りにくくなっていることが分かる。実施例2は(B-i)成分を含み更にその構造が式(2)を満たすものであるため、式(2)ではない(B-i)成分を使用している実施例5に比べ透湿度の性能が向上している。続いて、実施例6及び8は(B-ii)成分を含み更にその構造が、1分子中に芳香環を複数有する化合物を使用しているため、1分子中に1つの芳香環しか有さない(B-ii)成分のみ使用している実施例7と比較し、透湿度が向上している。
【0150】
続いて、実施例9と10は実施例1に更に、(D)1分子中に少なくとも2つのメルカプト基を有するチオール化合物を添加したものであるが、最大点荷重が大きく、実施例1と比較し、密着性が向上しており(D)成分が密着性向上に有用であることが分かる。
【0151】
実施例13は実施例12の(A-i)成分を(A-ii)成分に振り分け、(A-ii)成分含有組成としたものだが、膜の強さはやや低下しているものの、現像性が向上しており、現像性、透湿度及び密着性のバランスが取れている。(A-ii)成分を用いることで性能のバランスが取りやすくなる。
【0152】
実施例14~18は、(A-i)成分以外はほぼ同じ組成で、種々の構造の(A-i)成分を使用した組成であるが、既定の条件を全て満たしているため、いずれも現像性、透湿度及び密着性を満足するものである。
【0153】
実施例22は実施例2と比較し、(C)成分としてオキシム化合物ではない光重合性開始剤を用いたものだが、実施例2の方が透湿度の点で優れており、オキシム開始剤は透湿度向上に効果があることが分かる。
【0154】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明による感光性樹脂組成物及び転写フィルムを用いることで、防錆性、現像性及び密着性がともに良好である、配線、電極等の導体部の保護に好適なものとなり、タッチパネル、タッチセンサ又はフォ-スセンサ用途及びプリント配線板のソルダ-レジスト用途などの配線、電極等の保護膜として広く利用することができる。