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特許7162456負バイアスを用いてPEALDによって膜を堆積する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】負バイアスを用いてPEALDによって膜を堆積する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20221021BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20221021BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20221021BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20221021BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20221021BHJP
   H01L 21/316 20060101ALN20221021BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/318 B
C23C16/42
C23C16/455
H05H1/46 M
H01L21/316 X
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018122757
(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2019029652
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】15/659,631
(32)【優先日】2017-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512144771
【氏名又は名称】エーエスエム アイピー ホールディング ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 隆
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊哉
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-079327(JP,A)
【文献】特開2011-162830(JP,A)
【文献】国際公開第2010/100702(WO,A1)
【文献】特開2012-069921(JP,A)
【文献】特開2017-092475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/318
C23C 16/42
C23C 16/455
H05H 1/46
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1の電極と第2の電極とを容量結合することによって規定される反応空間においてプラズマエンハンスト原子層堆積(PEALD)によって基板上に膜を形成する方法であって、前記基板は、前記第2の電極に対向する前記第1の電極上に配置され、前記PEALDは、堆積サイクルを含み、各サイクルは、
(i)前記基板の表面上に前駆体を吸着するために、前記反応空間へ前記前駆体をパルスで供給するステップと、
(ii)前記ステップ(i)の後、前記反応空間にプラズマを生成するために、前記第2の電極にRFパワーを印加し、前記前駆体を吸着した表面が前記プラズマに露出され、それにより、前記基板上にサブレイヤーを形成するステップと、
(iii)前記ステップ(ii)においてRFパワーを印加している間に、前記第2の電極へバイアス電圧を印加するステップであって、前記バイアス電圧は、前記第1の電極の表面上の電位を基準として負である、ステップと、を備え、
前記サイクルは、前記サブレイヤーによって構成される膜が所望の厚さを有するまで、複数のサブレイヤーを堆積するように繰り返され、
前記堆積サイクルは、第1の堆積サイクルであり、前記PEALDは、前記第1の堆積サイクル後に行われ、それぞれが前記ステップ(i)及び前記ステップ(ii)を含み、前記ステップ(iii)を含まない第2の堆積サイクルを更に備え、
前記PEALDは、前記サイクルが繰り返されるときに前記バイアス電圧が次第に低減される前記ステップ(i)から前記ステップ(iii)を含む中間堆積サイクルを更に備え、前記中間堆積サイクルは、前記第1の堆積サイクル後に連続して行われ、前記第2の堆積サイクルは、前記中間堆積サイクル後に連続して行われる、方法。
【請求項2】
前記バイアス電圧は、DC電圧である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バイアス電圧は、1MHz以下の周波数を有するAC電圧であり、その平均電圧はゼロではない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の電極は、接地される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(ii)は、RFパワーを前記第1の電極へ印加するステップを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(ii)において、前記プラズマは、水素プラズマである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記バイアス電圧の平均値は、10から1000Vである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記膜は、酸化膜、窒化膜又は炭素膜である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(i)を受けた前記基板は、前記膜が直接堆積された下層膜としてポリマー膜又はアモルファスシリコン膜を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(iii)において、前記バイアス電圧は、前記サイクルが繰り返されると、次第に低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第1の堆積サイクルは、前記膜の厚さが10nm以下に到達したときに終了される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
反応ガス及びキャリアガス、反応ガス及び希釈ガス、又は、反応ガス、キャリアガス及び希釈ガスは、前記ステップ(i)から前記ステップ(iii)を通じて前記反応空間へ連続的に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記サイクルは、各ステップ(i)及び各ステップ(ii)後にパージするステップを更に備える、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、負バイアス電圧によって修正される容量結合プラズマ(capacitively coupled plasma(CCP))を用いてプラズマエンハンスト原子層堆積(plasma-enhanced atomic layer deposition(PEALD))によって基板上に膜を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマエンハンスト原子層堆積(PEALD)により堆積される誘電体膜は、約10のアスペクト比を有するトレンチに堆積されるとき、このような誘電体膜のコンフォーマリティが非常に高い、例えば100%であるため、半導体製造産業において広く用いられている。しかし、容量結合プラズマ(CCP)を用いる従来のPEALDは、以下の課題を有する。プラズマは、全体的ではない電荷が多かれ少なかれ生じる割合で陽イオン及び自由電子を含むイオン化ガスであり、CCPを用いるPEALDにおいて、イオン及びラジカルを用いて膜形成が達成される。イオン衝撃は、膜成長及び膜品質にとって重要である。しかし、基板表面上で及ぼされる強いイオン衝撃は、問題を生じる。すなわち、多くのPEALD処理において、イオン衝撃は、膜特性を悪化させる。図5は、強いイオン衝撃45によって生じた膜の堆積における課題を示す。(a)堆積された膜42と基板41との間の結合の破損を示し、(b)堆積された膜42と基板41との界面に沿ってブリスター43aの形成を示し(また、ブリスター43bは、堆積された膜の表面上に形成される)、(c)堆積された膜42と基板41との間に堆積される下層44の損傷又はエッチングを示す。
【0003】
プラズマパワーを減少及び/又は処理圧力を増加することによって強いイオン衝撃の副作用を緩和することができる場合がある。しかし、プラズマパワーが減少すると、プラズマ密度が低減され、非均等又は非均一なプラズマ分布をもたらし、処理圧力が増加すると、プラズマの点火が困難かつ不安定になる。
【0004】
上述された課題を踏まえ、本発明者らは、本発明を完成し、その少なくとも一部の実施形態は、上述された課題の一部又は全部を効果的に解消することができる。
【0005】
関連する分野に含まれる課題及び解決手段の説明は、単に本発明の文脈を提供する目的で本開示に含まれているものであり、説明のいずれか又は全てが、本発明がなされたときに既知であることを認めるものとして受け取られるべきではない。
【発明の概要】
【0006】
一部の実施形態は、互いに対向する第1の電極と第2の電極とを容量結合することによって規定される反応空間においてプラズマエンハンスト原子層堆積(PEALD)によって基板上に膜を形成する方法であって、前記基板は、前記第2の電極に対向する前記第1の電極上に配置され、前記PEALDは、堆積サイクルを含み、各サイクルは、(i)前記基板の表面上に前駆体を吸着するために、前記反応空間へ前記前駆体をパルスで供給するステップと、(ii)前記ステップ(i)の後、前記反応空間にプラズマを生成するために、前記第2の電極にRFパワーを印加し、前記前駆体を吸着した表面が前記プラズマに露出され、それにより、前記基板上にサブレイヤーを形成するステップと、(iii)前記ステップ(ii)においてRFパワーを印加している間に、前記第2の電極へバイアス電圧を印加するステップであって、前記バイアス電圧は、前記第1の電極の表面上の電位を基準として負である、ステップと、を備え、前記サイクルは、前記サブレイヤーによって構成される膜が所望の厚さを有するまで、複数のサブレイヤーを堆積するように繰り返される、方法を提供する。上記の方法は、低イオンエネルギーを有する高密度プラズマを生成するように、最小の変更により、従来の装置を含む適切なCCP型のPEALD装置を用いて行われうる。一部の実施形態は、以下の特徴によって特徴付けられうる。(1)低いプラズマ電位を有する低イオンエネルギー処理、(2)高プラズマ密度を有する高スループット、及び(3)上部電極上に発生するパーティクルが少ない。特に、基板が配置される下部領域でのイオンエネルギー制御性能が著しい。図5について上述されたように、イオン衝撃は、層間分離、ブリスター又はエッチング、及びPEALD膜特性の悪化等のような欠陥を誘発するが、一部の実施形態は、これらの課題を効果的に排除し、イオン衝撃に影響を受けやすいPEALD処理にとって特に有益であり、良好な膜特性を有する膜形成を実現する。
【0007】
本発明の態様及び関連分野に対して達成された利点を要約する目的のために、本発明の特定の目的及び利点が本開示に記載されている。もちろん、全てのこのような目的又は利点は本発明の任意の特定の実施形態に従って達成され得ることを必ずしも必要としないことは理解される。したがって、例えば、当業者は、本明細書に教示又は示唆され得るような他の目的又は利点を必ずしも達成しなくても、本明細書に教示されている一つの利点又は一群の利点を達成又は最適化するように本発明が具現化され得るか又は実施され得ることを認識するであろう。
【0008】
本発明のさらなる態様、特徴及び利点は以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明のこれら及び他の特徴を好ましい実施形態の図面を参照して記載するが、それらは本発明を例示するためであり、本発明を限定するものではない。図面は、説明の都合上、非常に簡略化されており、必ずしも縮尺通りではない。
図1図1は、本発明の実施形態に係る負のバイアス電圧を有する単一周波数RFパワーを用いて誘電体膜を堆積するPEALD(plasma-enhanced atomic layer deposition)装置の概略図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る負のバイアス電圧を有する2周波数RFパワーを用いて誘電体膜を堆積するPEALD (plasma-enhanced atomic layer deposition)装置の概略図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るバイアス電圧を決定するために、電位を構成する成分に含まれる直流電流成分を測定する回路の概略図である。
図4図4は、本発明の実施形態で使用可能なフローパスシステム(flow-pass system(FPS))を用いる前駆体供給システムの概略図であり、(a)は、前駆体を有するガス流を示し、(b)は、前駆体のないガス流を示す。
図5図5は、強いイオン衝撃により生じる膜の堆積の課題を示し、(a)は、堆積される膜と基板との結合の破損を示し、(b)は、堆積される膜と基板との界面に沿ったブリスターの形成を示し、(c)は、堆積される膜と基板との間に堆積される下層の損傷又はエッチングを示す。
図6図6は、DCバイアス電圧が、(a)におけるプロセスサイクルの進捗により変更される、つまり、イオンエネルギーが(b)におけるプロセスサイクルの進捗により変更される実施形態を示す。
図7図7は、(a)が、負のDCバイアス電圧が上部電極に印加されるとき(“w/DC バイアス”)、及び負のDCバイアス電圧が印加されないとき(“w/o DC バイアス”)の電極間の電位プロファイルを示し、(b)が、電極間のプラズマ分布の概略図である。説明の簡略化のために、反時計回りに方向が90度回転されていることを留意する。
図8図8は、本発明の実施形態に係る概略的なプロセスシーケンスを示し、ステップ-アップラインは、ON状態又は増加状態を表し、一方で、ステップ-ダウンラインは、OFF状態又は減少状態を表し、各区分の高さ及び期間は、寸法通りである必要がない。
図9図9は、本発明の実施形態に係る負のバイアス電圧量と下層有機膜への損傷との関係、及び負のバイアス電圧量と有機膜上に堆積されたSiCNO膜のウェットエッチ速度との関係を非常に簡素化して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示において、「ガス」は、状況に応じて、蒸発した固体及び/又は液体を含んでもよく、単一のガス又はガスの混合物により構成されてもよい。同様に、「一つ」の物品は、状況に応じて、一つの種類又は複数の種類を含む属性を指す。本開示では、シャワーヘッドを通じて反応チャンバへ導入される堆積用のプロセスガスは、ケイ素含有前駆体及び添加ガスを含むか、実質的にケイ素含有前駆体及び添加ガスからなるか、又はケイ素含有前駆体及び添加ガスからなってもよい。添加ガスは、前駆体を酸化、窒化及び/又は炭化するための反応ガス、並びにRFパワーが添加ガスに印加されたときに、前駆体を励起する不活性ガス(例えば、希ガス)を含んでもよい。不活性ガスは、キャリアガス及び/又は希釈ガスとして反応チャンバへ供給されてもよい。更に、一部の実施形態では、反応ガスが用いられず、(キャリアガス及び/又は希釈ガスとして)希ガスのみが用いられる。前駆体及び添加ガスは、混合ガスとして又は別々に反応空間へ導入されうる。前駆体は、希ガス等のようなキャリアガスと共に導入されうる。プロセスガス以外のガス、つまり、シャワーヘッドを通過せずに導入されるガスは、例えば、反応空間をシールするための用いられてもよく、希ガス等のようなシールガスを含む。一部の実施形態では、用語「前駆体」は、一般的に、別の化合物を生成する化学反応に関与する化合物を指し、特に、膜のマトリクス又は膜の主要骨格を構成する化合物を指す。一方で、用語「反応物質」は、前駆体と関連して用いられ、前駆体を活性化する、前駆体を改質する、又は前駆体の反応に触媒作用を及ぼす、前駆体以外の化合物を指す。反応物質は、元素(O、N及び/又はC等のような)を膜のマトリクスへ提供し、RFパワーが印加されると、膜のマトリクスの一部となる。用語「不活性ガス」は、RFパワー(又は他の電磁エネルギー)が印加されないときには、不活性であるが、RFパワー(又は他の電磁エネルギー)が印加されると、プラズマとなり、前駆体を励起又は膜を再形成するガスを指すが、反応物質とは異なり、膜のマトリクスの一部とはならない又は膜のマトリクスに組み込まれない。
【0011】
一部の実施形態では、「膜」は、ターゲットとなる表面もしくは対象となる表面全体を覆うためにピンホールを有さずに実質的に厚さ方向に垂直な方向に連続して延びる層、又はターゲットとなる表面もしくは対象となる表面を単に覆う層を指す。一部の実施形態では、「層」は、表面上に形成される特定の厚さを有する構造又は膜の同義語又は非膜構造を指す。膜又は層は、特定の性質を有する別個の単一の膜もしくは層又は複数の膜もしくは層により構成されてもよく、隣接する膜又は層の間の境界は明確であってもよく、又は明確でなくてもよく、物理的、化学的及び/もしくは任意の他の特性、形成プロセスもしくは順序、並びに/又は隣接する膜もしくは層の機能もしくは目的に基づいて規定されてもよい。更に、本開示において、任意の2つの数の変数は、その変数の実行可能な範囲を構成でき、実行可能な範囲は通常作業に基づいて決定でき、示された任意の範囲はエンドポイントを含んでいてもよく、又は除外していてもよい。更に、示された変数の任意の値(それらが「約」と共に示されているか否かに関わらず)は、正確な値又はおおよその値を指し、同値を含んでもよく、一部の実施形態において、平均値、中央値、代表値、多数値等を指してもよい。用語「構成される」及び「有する」は、独立して、一部の実施形態における「典型的に又は広義に備える」、「備える」、「実質的に~からなる」、又は「からなる」を指す。また、本開示において、任意の定義された意味は、一部の実施形態において、通常及び慣例の意味を必ずしも除外しているわけではない。
【0012】
条件及び/又は構造が特定されていない本開示において、当業者は、通常の実験として、本開示を考慮してそのような条件及び/又は構造を容易に得ることができる。開示された実施形態の全てにおいて、一実施形態において使用されている任意の要素は、意図される目的のために本明細書に明確、必然的又は本質的に開示されている要素を含む、要素と等価の任意の要素と置き換えられてもよい。更に、本発明は装置及び方法に同様に適用されてもよい。
【0013】
実施形態は、好ましい実施形態に対して説明される。しかし、本発明は、好ましい実施形態に限定されない。
【0014】
上述されたように、一部の実施形態では、互いに対向する第1の電極と第2の電極とを容量結合することによって規定される反応空間においてプラズマエンハンスト原子層堆積(PEALD)によって基板上に膜を形成する方法において、基板は、第2の電極に対向する第1の電極上に配置され、PEALDは、堆積サイクルを含み、各サイクルは、(i)基板の表面上に前駆体を吸着するために、反応空間へ前記前駆体をパルスで供給するステップと、(ii)ステップ(i)の後、反応空間にプラズマを生成するために、第2の電極にRFパワーを印加し、前駆体を吸着した表面がプラズマに露出され、それにより、基板上にサブレイヤーを形成するステップと、(iii)ステップ(ii)においてRFパワーを印加している間に、第2の電極へバイアス電圧を印加するステップであって、バイアス電圧は、第の電極の表面上の電位を基準として負である、ステップと、を備え、サイクルは、サブレイヤーによって構成される膜が所望の厚さを有するまで、複数のサブレイヤーを堆積するように繰り返される。
【0015】
一部の実施形態では、バイアス電圧は、DC電圧である。一部の実施形態では、バイアス電圧は、1MHz以下の周波数を有するAC電圧であり、その平均電圧はゼロではない。典型的には、バイアス電圧は、DC電圧であるが、イオンが電流の変化に従う限り、バイアス電圧は、1MHz以下の周波数を有するようなAC電圧又はRFパワーでありうる。
【0016】
一部の実施形態では、第1の電極は、接地され、バイアス電圧と共に、RFパワーは、第2の電極のみに印加される。一部の実施形態では、異なる周波数を有するRFパワーは、それぞれ、第1の電極及び第2の電極に印加され、バイアス電圧は、第2の電極のみに印加される。
【0017】
一部の実施形態では、ステップ(ii)において、プラズマは、水素プラズマである。一部の実施形態では、ステップ(ii)において、プラズマは、H、N、O、NH、N(x及びyは整数)、NO、NO、CO及び希ガス、並びに前述のいずれかの混合物からなる群から選択された1以上のガスのプラズマである。一部の実施形態では、負のバイアス電圧を用いるプラズマ電位の低減、つまり、イオンエネルギーの低減による効果が、ガスの種類にかかわらず、実現されるため、ステップ(ii)において、プラズマは、任意の適切なガスのプラズマである。
【0018】
一部の実施形態では、バイアス電圧の平均値は、0V超(例えば、10V以上)であるが、1000V未満であり、バイアス電圧は、バイアス電圧が、第1の電極の表面上の電位を基準として負であるように印加される(本開示では、バイアス電圧は、絶対値として表され、用語「負」は、特に言及しない限り、第1の電極と第2の電極との間の電位を低減するための印加の方向を指す)。PEALD用の処理条件が変化するため(例えば、50から1000WのRFパワー(13.56MHz)、30から3000Paの圧力)、選択された処理条件(例えば、HF溶液を用いるウェットエッチ速度)下で堆積される膜の品質及び/又は層の断面のTEM画像によって評価される下層(例えば、有機膜)への損傷度合いに基づいて、バイアス電圧の平均値は、調整されてもよい。下層(例えば、有機膜)への損傷度合いを低減するために、高いバイアス電圧が用いられ、一方で、堆積される膜の品質を改善するために、低いバイアス電圧が用いられる(これは、例えば、高圧力条件、例えば、3000Paの圧力下でのゼロ電圧を含む)。図9は、上記の関係を概略的に示すグラフであり、本発明の実施形態に係る、負のバイアス電圧量と下層有機膜への損傷との関係、及び負のバイアス電圧量と有機膜上に堆積されたSiCNO膜のウェットエッチレートとの関係を非常に簡素化して示すグラフである。上述された関係を踏まえて、一部の実施形態では、平均バイアス電圧は、10から500V、典型的には、10から300Vの範囲内にある。本開示では、膜の特性は、限定されないが、典型的には1/100から1/200の希釈比を有するDHF((diluted hydrogen fluoride)希釈フッ化水素)の溶液への膜の浸漬によって評価されることができるウェットエッチングへの耐性を含む(一部の実施形態では、HF0.05-5%のエッチング溶液を用い、10から50℃(好ましくは15から30℃)のエッチング溶液温度で、1秒から5分(好ましくは1から3分)のエッチング時間に、0.1から5nm/min(好ましくは0.5から2nm/min)のエッチング速度で)。
【0019】
一部の実施形態では、バイアス電圧の使用は、特に、対象となる膜が、酸化膜、窒化膜又は炭素膜等のイオン衝撃に影響を受けやすいときに有効である、及び/又は対象となる膜が直接堆積される下層膜が、ポリマー膜又はアモルファスシリコン膜であるときに有効である。
【0020】
一部の実施形態では、ステップ(iii)において、バイアス電圧は、サイクルが繰り返されると、次第に低減される。本開示では、用語「次第に増加(低減)される」は、連続的に増加(低減)すること、特定の(特定できる)比率で増加(低減)すること、データ点を用いて回帰式が描かれるときに連続的に増加(低減)すること、又はデータ点が曲線又はほぼ直線に沿ってプロットされる場合に増加(低減)すること、又は実施形態に係る、堆積される膜、下層、堆積処理等に応じて、データを平滑化するときに連続的に増加(低減)することを指す。図6は、DCバイアス電圧が、(a)におけるプロセスサイクルの進捗により変更される、つまり、イオンエネルギーが(b)におけるプロセスサイクルの進捗により変更される実施形態を示す。図6に示されるように、ポリマー膜等のような特定の膜上に膜を堆積するとき、イオンエネルギーは、膜の堆積が未だ薄いので下層が特にイオン衝撃に脆弱である開始時にポリマーエッチングを抑制するように、(b)に示されるように開始時には低い(つまり、バイアス電圧は、(a)に示されるように開始時には高い)。その後、処理サイクルが繰り返されると、イオン衝撃の影響が軽減されるため、バイアス電圧は、堆積膜の品質を改善するように低減されうる。開始時にバイアス電圧を供給することによって、(a)に示されるように次第に減少し、堆積する膜の品質を改善しつつ、下層への損傷を最小化することができる。
【0021】
一部の実施形態では、図6に示されるように、堆積サイクルは、第1の堆積サイクル((a)におけるステップ“a”)として行われ、PEALDは、(a)における中間又は暫定ステップ“b”を介して第1の堆積サイクル後に行われる第2の堆積サイクル((a)におけるステップ“c”)を更に備え、それぞれがステップ(i)及び(ii)を含み、かつステップ(iii)がない(又は実質的にステップ(iii)がない、つまり、バイアス電圧が実質的に又はほぼゼロ)。一部の実施形態では、中間堆積サイクルは、サイクルが繰り返されると、バイアス電圧が次第に減少される(例えば、サイクル当たり約-1から-20V、典型的にはサイクルあたり約-10V)ステップ(i)から(iii)を備え、中間堆積サイクルは、第1の堆積サイクル後に連続的に行われ、第2の堆積サイクルは、中間堆積サイクル後に連続的に行われる。本開示では、「連続的」は、実施形態に応じて、真空破壊がないこと、タイムラインとして中断をしないこと、材料介在ステップがないこと、次のステップとして、直後に、処理条件を変えないこと、又は2つの構造以外の2つの構造間の個別の物理又は化学構造を介在しないことを指す。一部の実施形態では、第1の堆積サイクルは、膜の厚さが10nm以下(例えば、5nm以下、3nm以下、少なくとも1nm、2nm以上)のときに終了される。図6に示されるシーケンスが炭素膜上のSiO膜を用いるダブルパターニング処理に適用されるとき、ステップ“a”は、(約2nmの厚さの保護膜を形成するために)約30サイクルによって構成され、ステップ“b”は、(下層、つまり炭素膜が損傷されない程度にイオンエネルギーを増加することによって約2nmの厚さを有するSiO膜を連続的に形成するために)約30サイクルによって構成され、ステップ“c”は、(膜堆積用に最適化された条件下で約16nmの厚さを有するSiO膜を連続的に形成するために)約240サイクルによって構成される。
【0022】
一部の実施形態では、反応ガス及びキャリア/希釈ガスは、ステップ(i)から(iii)を通じて反応空間へ連続的に供給される。一部の実施形態では、サイクルは、各ステップ(i)及び各ステップ(ii)後にパージするステップを更に備える。図8は、本発明の実施形態に係る概略的なプロセスシーケンスを示し、ステップ-アップラインは、ON状態又は増加状態を表し、一方で、ステップ-ダウンラインは、OFF状態又は減少状態を表し、各区分の高さ及び期間は、寸法通りである必要がない。この処理シーケンスでは、堆積処理は、Siウェーハを収容するCCP型反応チャンバ内で行われる。ステップ“供給”、“パージ1”、“RF”及び“パージ2”は、PEALDの1つのサイクルを構成する。“供給”では、前駆体(例えば、アルキルアミノシラン等のような)は、“供給”、“パージ1”、“RF”及び“パージ2”を通じて反応ガス(例えば、O)及び希釈/キャリアガス(例えば、Ar)を連続的に供給しながら、ウェーハの表面上に前駆体を化学吸着するために反応チャンバへパルスで供給される。“RF”では、RFパワーは、ウェーハの表面上にモノレイヤーを形成するように、前駆体吸着されたウェーハを反応ガスのプラズマへ露出するために反応チャンバへ印加される。“パージ1”及び“パージ2”は、基板から未反応成分及び副生成物を除去するためのパージステップであり、反応ガス及び希釈/キャリアガスの連続的な流れは、パージガスとして機能する。この実施形態では、RFパワーが“RF”において印加される間、つまり、RFパワーの“ON”のタイミング及びDCバイアス電圧の“ON”のタイミングが全体的又は実質的に同期され、プラズマにおけるイオンエネルギーが“RF”の期間全体を通じて制御されることができる間に、DCバイアス電圧は、上部電極全体に印加される。本開示では、「実質的に同一」又は「実質的に均一」又は同様のものは、10%未満、5%未満、1%未満、又は実施形態に応じたその任意の範囲のもの等のような無形の差又は当業者によって認識される差を指す。更に、用語「実質的に同期される」は、制御回路における回避不能な応答又は時間遅延を含む。それに代えて、DCバイアス電圧は、イオンエネルギーが高くないとき、RFパワーのパルスの期間中に、パルスで又は短いパルスで印加されうる。1つのサイクルは、膜の所望の厚さがウェーハ上で得られるまで繰り返される。
【0023】
一部の実施形態では、PEALDサイクルは、以下の表1に示される条件下で行われる。
【0024】
【表1】
【0025】
バイアス電圧は、第1の電極の表面上の電位を基準とする負の電圧として、RFパワーを印加する間に第2の電極に印加される。
【0026】
上述された300mmウェーハ用のRFパワーは、200mm又は450mm等のような異なる直径を有するウェーハに適用できるW/cm(ウェーハの単位面積当たりの電力)に変換されうる。
【0027】
典型的には、誘電体膜の厚さは、約50nmから約500nmの範囲にある(所望の膜厚さは、膜の用途及び目的等に応じて適切とみなされるように選択されうる)。誘電体膜は、ダブルパターニング用に用いられてもよい。
【0028】
上記のプロセスは、スペーサ・ディファインド・ダブル・パターニング(spacer- defined double patterning(SDDP))を含む様々な用途で用いられることができ、開示される実施形態又はその等価物のいずれかに係るシリコン酸化膜は、垂直スペーサとして用いられうる。
【0029】
一部の実施形態では、基板は、凹部パターンを有し、各凹部は、隣接する垂直スペーサ間に規定され、底部及び側壁によって構成され、「トレンチ」と呼ばれる。すなわち、トレンチは、垂直スペーサによって形成されるパターンを含む凹部パターンであり、これは、一部の実施形態では、約10nmから約100nm(典型的には、約14nmから約30nm)の幅(トレンチが幅と実質的に同じ長さを有するとき、ホール/ビアと呼ばれ、その直径は約10nmから約100nmである)、約30nmから約100nm(典型的には約40nmから約60nm)の深さ、及び約2から約20(典型的には約2から約5)のアスペクト比を有する。トレンチの適切な大きさは、プロセス条件、膜組成、意図する用途等に応じて変化してもよい。
【0030】
一部の実施形態では、凹部パターンに堆積される膜は、80%から100%、典型的には約90%以上のコンフォーマリティ(上面又は底面に堆積される膜の厚さに対する側壁に堆積される膜の厚さの比)を有する。
【0031】
処理サイクルは、例えば、図1に示される装置を含む適切な装置を用いて行われうる。図1は、以下に示されるシーケンスを行うようにプログラムされた制御装置と連動することが望ましい、本発明の一部の実施形態に係る、負のバイアス電圧を有する単一周波数RFパワーを用いて誘電体膜を堆積するPEALD(plasma-enhanced atomic layer deposition)装置の概略図である。
【0032】
この図では、反応チャンバ3の内部11(反応ゾーン)で互いに平行かつ対向している一対の導電性平板電極4,2を設け、HRFパワー(13.56MHz、27MHz、60MHz、100MHz、及び上記の任意の2つの間の値を含む2から100MHz)20を一方に印加し、他方12を電気的に接地することによって、電極間にプラズマを励起する。温度レギュレータが下部ステージ2(下部電極)に設けられ、その上に配置される基板1の温度は、所定の温度で一定に維持される。上部電極4は、同様に、シャワープレートとして機能し、反応ガス及び/又は希ガス、及び必要であれば、前駆体ガスは、それぞれガスライン21及びガスライン22を通じ、シャワープレート4を通じて、反応チャンバ3へ導入される。また、反応チャンバ3には、排気ライン7を有する円形ダクト13が設けられ、円形ダクト13を通じて、反応チャンバ3の内部11におけるガスを排気する。更に、反応チャンバ3の下に配置される搬送チャンバ5には、搬送チャンバ5の内部16(搬送ゾーン)を介して反応チャンバ3の内部11へシールガスを導入するためにシールガスライン24が設けられ、反応ゾーンと搬送ゾーンとを隔てるためのセパレーションプレート14が設けられる(それを通じてウェーハが搬送チャンバ5へ搬送される又は搬送チャンバ5から搬送されるゲートバルブは、この図から省略されている)。搬送チャンバには、排気ライン6も設けられる。一部の実施形態では、多元素膜の堆積及び後堆積処理は、同一の反応空間で行われ、全てのステップは、大気又は他の酸素を含む雰囲気へ基板を露出することなく、連続的に行われうる。
【0033】
この装置では、ブロッキングキャパシタ(RFカットフィルタ又はローパスフィルタ)32を通じて、DC電源31からシャワープレート4へ負のバイアス電圧が印加される。RFパワーを印加するタイミング及びバイアス電圧を印加するタイミングは、RFパワーソース20の出力側に配置されるマッチングボックス30、パワーソース20、ブロッキングキャパシタ32及びDC電源31を制御する制御ユニット34を用いて実質的に同期される。制御ユニット34は、制御ユニットが電極電位に応じて上記の構成要素を制御しうるように、電極間の電位を測定する電極電位測定ユニット33からの信号を受け付ける。上部電極に印加されるバイアス電圧の値は、DC電圧計を用いて測定されうる。図3は、本発明の実施形態に係るバイアス電圧を決定するために、電位の直流成分を測定する回路の概略図である。DC電圧計27は、電位のDC成分のみが抽出され、DC電圧計27を通過するように、チョークコイル28(ローパスフィルタ32)の後に配置される。
【0034】
上記の構成は、2周波数RFパワーシステムに適用されうる。図2は、本発明の実施形態に係る負のバイアス電圧を有する2周波数RFパワーを用いて誘電体膜を堆積するPEALD(plasma-enhanced atomic layer deposition)装置の概略図である。この装置では、第2のRF電源36は、マッチングボックス37を通じ下部電極2へ接続され、制御ユニット35は、上述された構成要素に加えて、マッチングボックス37及び第2のRF電源36を制御する。
【0035】
図7(方向が反時計回りに90°回転される)は、(a)が、負のDCバイアス電圧が上部電極に印加されるとき(“w/DC バイアス”)、及び負のDCバイアス電圧が印加されないとき(“w/o DC バイアス”)の電極間の電位プロファイルを示し、(b)が、電極間のプラズマ分布の概略図である。一般に、プラズマの電子温度がイオンのものよりも高いため、壁電位は、通常、光及び高速移動電子によりプラズマ電位を基準として負である。言い換えれば、プラズマ電位は、通常、壁電位を基準として正である。本開示では、電圧の値は、下部電極2の壁電位を基準として決定される、つまり、下部電極2の壁電位は、ゼロになるとみなされる。壁の表面上に、イオンシースが生成され、これは、電子の速度を低下する又は電子を反射し、イオンの速度を増加する空間電荷層であり、過剰なイオンは、プラズマが全体として電気的に中性に維持されるように存在する。図7の(a)に示されるように、RFパワーが上部電極4に印加されつつ、DCバイアス電圧が上部電極4に印加されない(“w/o DC バイアス”)とき、上部電極4の壁電位は、下部電極2の壁電位(ゼロ)を基準として負であるV0dcであり、プラズマ電位は、上部及び下部電極の壁に隣接する領域を除いて、正である(プラズマ電位は、最大及び最小線を用いて表される)。RFパワーが上部電極4に印加されつつ、DCバイアス電圧が上部電極4に印加される(“w/DC バイアス”)とき、上部電極4の壁電位は、下部電極2の壁電位(ゼロ)を基準として負であるVdcであり、プラズマ電位は、上部電極及び下部電極の壁に隣接する領域を除いて、正である(プラズマ電位は、上部イオンシースにおける最大及び最小線を用いて表されるが、最大と最小との差が小さく、簡素化され、ほぼ1つの線になることができるため、残りの領域における1つのラインによって表される)。Vdcは、V0dc及びΔVdc(=V1dc)の合計値であり、これは、バイアス電圧の値である。図7の(a)に示されるようにバイアス電圧を印加することによって、上部イオンシースの厚さは、厚くなり、一方で、下部イオンシースの厚さは、薄くなる。その結果、図7の(b)に示されるように、反応チャンバ3の内部11に形成される上部イオンシース53において、壁表面は、イオン45(高イオンエネルギー)によって強いイオン衝撃に曝され、これは、二次電子51の増加を誘起し、高いプラズマ密度を得る。一方で、下部電極2の近傍のプラズマ52の他方側に形成される下部イオンシース54において、下部イオンシース54の厚さは薄くなり、壁表面上の基板1は、イオンによるイオン衝撃にはあまり曝されない。
【0036】
バイアス電圧の印加の結果、下部イオンシース54が低いイオンエネルギー(低いイオン衝撃)を有するため、下層の損傷又はエッチングは、効果的に抑制又は低減されることができる。一方で、上部イオンシース53が、強いイオン衝撃により開放された二次電子によって誘起される高いプラズマ密度を有し、かつ高いプラズマ密度の状態は、プラズマ52を通じて維持されることができ、下部イオンシース54においてプラズマ密度を増加することができるため、高いスループットが得られる。下部イオンシース54において、基板表面が、イオン衝撃にあまり曝されないが、イオン密度は、高いプラズマ密度により高く、よって、RFパワーの持続期間は、短縮されることができ、高いスループットが得られる。更に、上部電極4の表面が強いイオン衝撃に曝されるため、表面上の膜成長が抑制され、パーティクルの発生が少なくなる。更に、上部イオンシース53において開放された第2の電子が増加し、かつそこから生成されるプラスマ種が上部イオンシース53を通じて消散されるため、プラズマ均一性を非常に改善することができる。
【0037】
一部の実施形態では、上部電極の表面が、強いイオン衝撃に曝されるため、金属汚染物質は、強いイオン衝撃によるスパッタリングによって表面から生成され、基板上に形成される膜の金属汚染物質の増加を生じる。この傾向は、バイアス電圧が増加されると、より明らかにされる。よって、一部の実施形態では、上部電極の表面は、基板上に形成されるものと同一の膜であるプレコートとしての膜により、先行して覆われる。
【0038】
本発明は、以下の実施例を参照して更に説明される。しかし、実施例は、本発明を限定するものではない。条件及び/又は構造が特定されていない実施例では、当業者は、通常の実験として、本開示を考慮して、このような条件及び/又は構造を明示的に提供することができる。また、特定の実施例に適用される数値は、一部の実施形態では、少なくとも±50%の範囲で変更されることができ、数値はおおよそである。
【0039】
実施例
実施例1(予測)
有機膜(ポリイミド膜)を有するSi基板(直径300mmかつ厚さ0.7mm)上に、約30nmの厚さを有するSiOCN膜が、前駆体としてアミノシラン((3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、APTMS)、反応物質としてH(Hプラズマ)、及びキャリアガスとしてArを用いる条件下で、図1、3及び4に示される装置並びに図8に示されるシーケンスを用いてPEALDによって堆積され、前駆体用のボトルの温度は、室温に設定され、Hガスの流量は、約100sccmであり、Arガスの流量は、約600sccmであり、圧力は、約4Torrであり、基板温度は、約200℃である。上部電極に印加されるRFパワー(13.56MHzの周波数)は、約200Wである。
【0040】
バイアス電圧は、それぞれ、実施例での過度なRFパワーに対して、0V、-50V、-100V、-200V及び-300Vの電圧を用いて上部電極に印加される。膜堆積の完了後、得られたSiOCN膜の品質及び下層ポリイミド膜への損傷度合いは、バイアス電圧による全体改善を判定するために評価される。SiOCN膜の品質は、DHFを用いたウェットエッチ速度によって評価され、ポリイミド膜への損傷度合いは、膜の断面のTEM(Transmission Electron Microscopy)画像に基づいて評価される。各評価点をプロットすることによって、図9に示される関係又は同様のものを得ることができ、よって、最適な条件を決定することができる。
【0041】
実施例2(予測)
約30nmの厚さを有するSiOCN膜は、バイアス電圧が図6に示されるように変更された点を除いて、実施例1のものと同様に、前駆体としてAPTMS、反応物質としてH(Hプラズマ)、及びキャリアガスとしてArを用いて300mmSiウェーハ上に形成されるポリイミド膜上に堆積される。すなわち、ステップ“a”において、堆積サイクルは、有機膜への損傷度合いが最小となる実施例1で決定されたバイアス電圧を用いて、SiOCN膜が約3nmに到達するまで繰り返され、その後、ステップ“b”において、堆積サイクルは、SiOCN膜の品質が最大(最適)である実施例1で決定されたバイアス電圧へ負の方向(例えば、約-10V/cycle)に次第に増加されるバイアス電圧を用いて、SiOCN膜が約5nmに到達するまで連続的に繰り返され(約2nm追加)、その後、ステップ“c”において、堆積サイクルは、SiOCN膜の厚さが、SiOCN膜の品質が最大(最適)となる実施例1で決定されたバイアス電圧(ゼロを含む)を用いて所望の厚さに到達するまで連続的に繰り返される。
【0042】
その結果、下層有機膜のへの損傷を最小にしつつ、高品質なSiOCN膜が堆積された。多数かつ様々な変更が本発明の趣旨から逸脱しない範囲でなされることが当業者によって理解されるであろう。よって、本発明の形態は、例示的なものであり、本発明の範囲を制限することを意図するものではないことが明確に理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9