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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】建材切断装置および建材加工システム
(51)【国際特許分類】
   B26D 5/00 20060101AFI20221021BHJP
   B26D 7/02 20060101ALI20221021BHJP
   B26D 7/00 20060101ALI20221021BHJP
   B27B 11/10 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
B26D5/00 F
B26D5/00 Z
B26D7/02 B
B26D7/00 Z
B27B11/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018137786
(22)【出願日】2018-07-23
(65)【公開番号】P2020015103
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 淳
(72)【発明者】
【氏名】眞田 拓郎
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-062033(JP,A)
【文献】特開2018-031175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 5/00
B26D 7/02
B26D 7/00
B27B 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の建築材料を切断加工する建材切断装置であって、
装置本体に設けられ、建築材料の複数の辺を固定するための固定ユニットと、
この固定ユニットに設けられ、建築材料を切断可能なように辺を把持するホルダーと、
建築材料の両表面に対向して同一軸線上に配置され、この軸線と建築材料の表面に沿って移動可能で軸線廻りに回転可能な一対のソケットと、
各ソケットに固定され、建築材料の両表面から切り込んで、小口面の一部を残して建築材料を切断可能な切断刃と、
所定の切断加工用データに基づいてホルダーおよびソケットの動作を制御する制御手段とを備え
前記ホルダーは、U字状断面の把持部を有し、前記把持部は、前記切断刃の位置に応じて前記辺の把持と把持解除とを切り換え可能であることを特徴とする建材切断装置。
【請求項2】
建築現場において板状の建築材料の切断加工作業を支援する建材加工システムであって、
建築材料を切断加工するための寸法を計測する計測部と、計測した計測値を外部に送信する送信部とを有する携帯可能な計測装置と、
計測装置の送信部から送信された計測値を受信する受信部と、予め設定した複数の切断加工形状サンプルの中からユーザにより選択された切断加工形状と、受信した計測値に基づいて切断加工用データを作成するデータ作成部と、作成した切断加工用データを外部に送信する送信部とを有するデータ作成装置と、
データ作成装置の送信部から送信された切断加工用データを受信する受信部と、受信した切断加工用データに基づいて建築材料を切断加工する切断加工部とを有する建材切断装置とを備えることを特徴とする建材加工システム。
【請求項3】
送信部は、無線で外部に送信することを特徴とする請求項2に記載の建材加工システム。
【請求項4】
建材切断装置として、請求項1に記載の建材切断装置を用いることを特徴とする請求項2または3に記載の建材加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば石膏ボードなどの板状の建築材料を施工現場で採寸し、切断加工するための建材切断装置および建材加工システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内の間仕切り壁の建築現場において、石膏ボードなどの板状の建築材料を貼り付ける大きさに切断する場合、現地で切断する大きさの寸法を計測し、加工場にてその大きさに切断していた。
【0003】
図5は、従来の石膏ボードを切断加工する手順の一例である。この図に示すように、従来は、作業員が石膏ボードの必要寸法(縦寸法、横寸法)をコンベックス等で計測して目盛を読み上げ、手帳などに計測値として記録していた。その後、手帳を持って加工場に移動し、手帳の計測値を参照して石膏ボードに切断線を書き入れ、次いで、切断線に物差しなどをあてがい、これに沿わせてカッターなどの切断具を移動させることにより、石膏ボードを所定の寸法に切断していた。
【0004】
一方、従来の建築内装材の切断装置として、例えば特許文献1に示すような装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-135712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来の作業手順では、以下のような作業ロスが生じるおそれがある。
(1)切断する大きさを計測するときの、計測値の読み間違いに起因する作業ロス
(2)計測値を手帳に書き込むときの書き間違いに起因する作業ロス
(3)加工場への移動時間に起因する作業ロス
(4)計測値通りに、石膏ボードを切断するときの計測違いに起因する作業ロス
(5)加工場での切断加工時間に起因する作業ロス
【0007】
このため、建築現場で石膏ボードのような板状の建築材料を切断加工する際に、作業ロスの発生を抑制することのできる技術が求められていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、建築現場での建築材料の切断加工において、作業ロスの発生を抑制することのできる建材切断装置および建材加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る建材切断装置は、板状の建築材料を切断加工する建材切断装置であって、装置本体に設けられ、建築材料の複数の辺を固定するための固定ユニットと、この固定ユニットに設けられ、建築材料を切断可能なように辺を把持するホルダーと、建築材料の両表面に対向して同一軸線上に配置され、この軸線と建築材料の表面に沿って移動可能で軸線廻りに回転可能な一対のソケットと、各ソケットに固定され、建築材料の両表面から切り込んで、小口面の一部を残して建築材料を切断可能な切断刃と、所定の切断加工用データに基づいてホルダーおよびソケットの動作を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る建材加工システムは、建築現場において板状の建築材料の切断加工作業を支援する建材加工システムであって、建築材料を切断加工するための寸法を計測する計測部と、計測した計測値を外部に送信する送信部とを有する携帯可能な計測装置と、計測装置の送信部から送信された計測値を受信する受信部と、受信した計測値に基づいて切断加工用データを作成するデータ作成部と、作成した切断加工用データを外部に送信する送信部とを有するデータ作成装置と、データ作成装置の送信部から送信された切断加工用データを受信する受信部と、受信した切断加工用データに基づいて建築材料を切断加工する切断加工部とを有する建材切断装置とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の建材加工システムは、上述した発明において、送信部は、無線で外部に送信することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る他の建材加工システムは、上述した発明において、建材切断装置として、上記の建材切断装置を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る建材切断装置によれば、板状の建築材料を切断加工する建材切断装置であって、装置本体に設けられ、建築材料の複数の辺を固定するための固定ユニットと、この固定ユニットに設けられ、建築材料を切断可能なように辺を把持するホルダーと、建築材料の両表面に対向して同一軸線上に配置され、この軸線と建築材料の表面に沿って移動可能で軸線廻りに回転可能な一対のソケットと、各ソケットに固定され、建築材料の両表面から切り込んで、小口面の一部を残して建築材料を切断可能な切断刃と、所定の切断加工用データに基づいてホルダーおよびソケットの動作を制御する制御手段とを備えるので、板状の建築材料を容易に切断加工することができ、建築現場での建築材料の切断加工において、作業ロスの発生を抑制することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る建材加工システムによれば、建築現場において板状の建築材料の切断加工作業を支援する建材加工システムであって、建築材料を切断加工するための寸法を計測する計測部と、計測した計測値を外部に送信する送信部とを有する携帯可能な計測装置と、計測装置の送信部から送信された計測値を受信する受信部と、受信した計測値に基づいて切断加工用データを作成するデータ作成部と、作成した切断加工用データを外部に送信する送信部とを有するデータ作成装置と、データ作成装置の送信部から送信された切断加工用データを受信する受信部と、受信した切断加工用データに基づいて建築材料を切断加工する切断加工部とを有する建材切断装置とを備えるので、計測した計測値は、データ作成装置に送信され、切断加工用データに変換されてから建材切断装置に送信され、建築材料の切断加工に利用される。このため、寸法計測時の計測値の読み間違い、記録時の間違い、切断時の計測違い、加工場への移動、切断加工などといった作業ロスが減る。したがって、建築現場での建築材料の切断加工において、作業ロスの発生を抑制することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る他の建材加工システムによれば、送信部は、無線で外部に送信するので、有線方式に比べて送受信用の信号線を配線する手間が掛からないとともに、建築現場の任意の場所からの送受信が容易となり、システムの利便性が向上するという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る他の建材加工システムによれば、建材切断装置として、上記の建材切断装置を用いるので、建築現場での建築材料の切断加工において、作業ロスの発生をより確実に抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に係る建材加工システムの実施の形態を示す概略構成図である。
図2図2は、本発明に係る建材切断装置の実施の形態を示す概略図であり、(1)は正面斜視図、(2)は背面斜視図である。
図3図3は、本実施の形態による石膏ボードの切断加工手順を示す図である。
図4図4は、メジャーによる寸法計測と、タブレット端末によるデータ作成の説明図である。
図5図5は、従来の石膏ボードの加工手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る建材切断装置および建材加工システムの実施の形態について石膏ボードの切断加工に適用する場合を例にとり、図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態に係る建材加工システム10は、建築現場において石膏ボード(建築材料)の切断加工作業を支援するシステムであって、計測装置としてのメジャー12と、データ作成装置としてのタブレット端末14と、本発明に係る建材切断装置16とを備える。メジャー12とタブレット端末14は現場作業員Pが携帯し、建材切断装置16は現場から少し離れた加工場に据え置かれる。
【0020】
メジャー12は、例えば商品名「eTape16」などのいわゆるデジタルメジャーで構成することができる。このメジャー12は、本体ケース18と、本体ケース18に設けられた計測部20と、計測値をデジタル表示する表示部22と、計測値をBluetooth(登録商標)にてタブレット端末14に送信する送信部24とを備えている。
【0021】
計測部20は、石膏ボードを切断加工するための寸法を計測するものである。この計測部20は、本体ケース18内に回転可能に取り付けられた回転リールと、回転リールに巻き付けられ、本体ケース18の引出口26から引き出し可能な寸法計測用のテープ28と、回転リールとは別個に本体ケース18内に設けられ、テープ28の引き出し量に比例した回転角で回転する計測用回転体とを備えており、計測用回転体の回転数を計測することにより寸法の計測を行うものである。
【0022】
タブレット端末14は、例えばiPad(登録商標)などの端末で構成することができる。このタブレット端末14は、メジャー12の送信部24からBluetooth(登録商標)にて送信された計測値を受信する受信部30と、受信した計測値に基づいて切断加工用データを作成するアプリケーション32(データ作成部)と、作成した切断加工用データをWi-Fi(登録商標)にて建材切断装置16に送信する送信部34とを有する。
【0023】
なお、このタブレット端末14は、図示しないCPU、フラッシュメモリ、RAM、インタフェース、ディスプレイ、タッチパネル、通信インタフェース等を備えている。CPUは、端末全体を本実施の形態に係るデータ作成装置として機能させるために、上記のハードウェア各部の動作を制御する。フラッシュメモリは、不揮発性のメモリであり、各種プログラム、データ等を記憶するための記憶領域を有し、アプリケーション32が予めインストールされている。ディスプレイは、使用者に報知すべき情報を表示するための表示デバイスであり、液晶ディスプレイ等が用いられる。タッチパネルは、使用者の操作を受付けるための入力デバイスであり、ディスプレイの前面に設けられる。通信インタフェースは、メジャー12および建材切断装置16と通信を行うためのインタフェースであり、本実施の形態の受信部30、送信部34を構成する。RAMは、CPUによって生成されたデータ、タッチパネルや通信インタフェースを通じて入力されたデータ等を一時的に記憶するためのメモリである。インタフェースは、CPUと、ディスプレイ、タッチパネル、通信インタフェースとを接続するための接続部として機能し、それぞれの間で送受されるデータの受け渡しを行う。このタブレット端末14のハードウェア構成は、一例に過ぎず、上記のものに限定されるものではない。
【0024】
建材切断装置16は、タブレット端末14の送信部34からWi-Fi(登録商標)にて送信された切断加工用データを受信する受信部36と、受信した切断加工用データに基づいて石膏ボードSを切断加工する切断加工部38とを有する。
【0025】
切断加工部38は、図2(1)に示すように、架台40(装置本体)と、架台40の一端側に立設固定された側面ボード固定ユニット42と、架台40の他端側においてX軸方向に移動可能に立設された側面ボード固定ユニット44と、架台40上面でこれら側面ボード固定ユニット42、44間に直線状に延設された下面ボード固定ユニット46とを備える。
【0026】
側面ボード固定ユニット42、44は、表面を鉛直にした長方形状の石膏ボードSの短手側辺を把持するためのものであり、Y軸方向に間隔をあけて配置された複数のホルダー48を有する。下面ボード固定ユニット46は石膏ボードSの下辺を把持するためのものであり、X軸方向に間隔をあけて配置された複数のホルダー50を有する。
【0027】
側辺を把持するホルダー48は、ユニット42、44に固定されるシリンダ48Aと、このシリンダ48AからX軸方向に出没する3本のロッド48Bと、これらロッド48Bの先端に固定されたU字状断面の把持部48Cとを有する。下辺を把持するホルダー50は、ユニット46に固定されるシリンダ50Aと、このシリンダ50AからY軸方向に出没する3本のロッド50Bと、これらロッド50Bの先端に固定されたU字状断面の把持部50Cとを有する。各把持部48C、50Cはロッド48B、50Bの進出により石膏ボードSの辺に嵌合した後、図示しない把持制御手段の制御により石膏ボードSの辺を両面から挟持する。また、各把持部48C、50Cは、後述するカッター54(切断刃)による切断動作の際に、カッター54が当たらないように、カッター54の位置に応じて各辺の把持と把持解除とを切り換え可能となっている。
【0028】
下面ボード固定ユニット46のZ軸方向両外側には、側面ボード固定ユニット44をX軸方向に移動させるためのX軸移動ユニット52のガイド52AがX軸方向に延設されている。側面ボード固定ユニット44の基部はX軸移動ユニット52に接続されており、側面ボード固定ユニット44はX軸移動ユニット52のガイド52Aに沿ってX軸方向に移動可能である。石膏ボードSのX軸方向の長さに応じて、側面ボード固定ユニット44のX軸方向の位置を調整することで、石膏ボードSを適切に把持可能である。
【0029】
また、切断加工部38は、図2(2)に示すように、カッター54(切断刃)をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向にそれぞれ移動させるためのカッターX軸移動ユニット56、カッターY軸移動ユニット58、カッターZ軸移動ユニット60をさらに備えている。
【0030】
カッターX軸移動ユニット56は、X軸移動ユニット52のZ軸方向両外側においてX軸方向に延設されたガイド56Aと、ガイド56A上に対してX軸方向に移動可能に設置された門型のカッターX軸移動ユニット本体56Bとからなる。
【0031】
カッターY軸移動ユニット58は、カッターX軸移動ユニット本体56Bに設けられている。このカッターY軸移動ユニット58は、カッターX軸移動ユニット本体56Bの内側においてY軸方向に延設されたガイド58Aと、ガイド58Aに対してY軸方向に移動可能に設置されたカッターY軸移動ユニット本体58Bとからなる。
【0032】
カッターZ軸移動ユニット60は、カッターY軸移動ユニット本体58Bに設けられている。このカッターZ軸移動ユニット60のX軸方向の側部には、カッター回転ユニット62(ソケット)が設けられる。カッター回転ユニット62は、石膏ボードSの両表面に対向してZ軸方向の同一軸線上に一対配置されており、軸線廻りに回転可能である。カッター54は、このカッター回転ユニット62の先端に取り付けられており、上記の各ユニット56、58の動作に連動して石膏ボードSの両表面に沿った移動が可能である。また、カッター54は、上記のユニット60の動作によって石膏ボードSの両表面への挿入、両表面からの抜き出しが可能である。上記の各ユニット56、58、60の動作を制御することでカッター54の動きを制御し、石膏ボードSの両表面から切り込んで、小口面の一部を残して石膏ボードSを切断することができる。また、小口面の一部を残さず切断することもできる。
【0033】
上記の各ユニット42、44、46、52、56、58、60は、架台40に設けられた制御装置64(制御手段)によって駆動が制御されるようになっている。制御装置64は、受信部36で受信した切断加工用データに基づいて、上記の各ユニットを駆動制御するための制御信号を生成し、生成した制御信号を図示しないモータ等の駆動手段に送信することで、駆動手段を介して各ユニットを駆動制御する。なお、制御装置64にユーザが切断加工用データを直接入力することもできる。本実施の形態の建材切断装置16では、このような構成を採用することで、石膏ボードSを任意の形状に容易に切断加工することができる。
【0034】
上記構成の動作および作用について説明する。
図3に示すように、建築現場において、作業員Pがメジャー12で石膏ボードの必要寸法(例えば、縦寸法および横寸法)を計測する。計測値は、直ちに表示部22に表示され、送信部24を介してタブレット端末14に送信され、タブレット端末14のRAMに記録され、アプリケーション32用の入力データとして利用される。したがって、従来のように計測した目盛を読み上げ、手帳等に記録する必要はない。
【0035】
一方、図4に示すように、作業員はタブレット端末14のアプリケーション32を起動しておき、タッチパネル14A上に入力画面を表示させておく。作業員は、この画面上部に表示された切断加工形状サンプル32Aの中から所望の切断加工形状を指で押下して選択する。図の例では、左端の長方形を選択した場合が示されている。この結果、画面中央部には、選択された長方形サンプル図が表示される。
【0036】
次に、受信した計測値に基づいて、切断加工用データを作成する。例えば、この長方形サンプル図の長辺と短辺とに、メジャー12から受信した大小2つの計測値32Bがそれぞれ表示される。これを切断加工用データとして使用するために、送信ボタン32Cを押下する。これにより、大小2つの計測値32Bが切断加工用データとして建材切断装置16に送信される。
【0037】
その後、図3に示すように、作業員が加工場に移動を開始する一方で、建材切断装置16は、タブレット端末14から切断加工用データを受信すると直ちに石膏ボードSの切断加工を開始する。このため、従来のように、手帳の計測値を参照して石膏ボードSに切断線を書き入れて、物差しなどをあてがい、これに沿わせてカッターを移動させる一連の切断加工作業を行う必要はない。
【0038】
建材切断装置16による石膏ボードSの切断加工は、受信した切断加工データに基づいて、制御装置64が上記の各ユニットを動作させ、カッター54で石膏ボードSの両表面を切り進めることにより行われる。こうして、切断加工データを受信してから所定の時間経過後に、計測値に対応する寸法の石膏ボードSが切り出される。
【0039】
本実施の形態によれば、作業員がメジャー12で計測した計測値は、タブレット端末14に送信され、端末14上のアプリケーション32で切断加工用データに変換されてから建材切断装置16に送信され、石膏ボードSの切断加工に利用される。このため、作業員による寸法計測時の計測値の読み間違い、記録時の間違い、切断時の計測違い、加工場への移動、切断加工などといった作業ロスが減る。したがって、本実施の形態によれば、建築現場での石膏ボードの切断加工において、作業ロスの発生を抑制することができる。このため、石膏ボード施工に係る労務コストを低減することができる。
【0040】
また、本実施の形態では、無線で計測値や切断加工用データを送受信する無線方式のため、有線方式に比べて送受信用の信号線を配線する手間が掛からない。このため、建築現場の任意の場所からの送受信が容易となり、システムの利便性が向上する。
【0041】
上記の実施の形態においては、装置間の無線通信規格としてBluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)を用いた場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、これ以外の無線通信規格で計測値や切断加工用データを装置間で送受信してもよい。
【0042】
また、上記の実施の形態においては、切断加工の対象となる板状の建築材料として石膏ボードの場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、板状の建築材料であればいかなるものにも適用することができ、いずれにしても上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0043】
以上説明したように、本発明に係る建材切断装置によれば、板状の建築材料を切断加工する建材切断装置であって、装置本体に設けられ、建築材料の複数の辺を固定するための固定ユニットと、この固定ユニットに設けられ、建築材料を切断可能なように辺を把持するホルダーと、建築材料の両表面に対向して同一軸線上に配置され、この軸線と建築材料の表面に沿って移動可能で軸線廻りに回転可能な一対のソケットと、各ソケットに固定され、建築材料の両表面から切り込んで、小口面の一部を残して建築材料を切断可能な切断刃と、所定の切断加工用データに基づいてホルダーおよびソケットの動作を制御する制御手段とを備えるので、板状の建築材料を容易に切断加工することができ、建築現場での建築材料の切断加工において、作業ロスの発生を抑制することができる。
【0044】
また、本発明に係る建材加工システムによれば、建築現場において板状の建築材料の切断加工作業を支援する建材加工システムであって、建築材料を切断加工するための寸法を計測する計測部と、計測した計測値を外部に送信する送信部とを有する携帯可能な計測装置と、計測装置の送信部から送信された計測値を受信する受信部と、受信した計測値に基づいて切断加工用データを作成するデータ作成部と、作成した切断加工用データを外部に送信する送信部とを有するデータ作成装置と、データ作成装置の送信部から送信された切断加工用データを受信する受信部と、受信した切断加工用データに基づいて建築材料を切断加工する切断加工部とを有する建材切断装置とを備えるので、計測した計測値は、データ作成装置に送信され、切断加工用データに変換されてから建材切断装置に送信され、建築材料の切断加工に利用される。このため、寸法計測時の計測値の読み間違い、記録時の間違い、切断時の計測違い、加工場への移動、切断加工などといった作業ロスが減る。したがって、建築現場での建築材料の切断加工において、作業ロスの発生を抑制することができる。
【0045】
また、本発明に係る他の建材加工システムによれば、送信部は、無線で外部に送信するので、有線方式に比べて送受信用の信号線を配線する手間が掛からないとともに、建築現場の任意の場所からの送受信が容易となり、システムの利便性が向上する。
【0046】
また、本発明に係る他の建材加工システムによれば、建材切断装置として、上記の建材切断装置を用いるので、建築現場での建築材料の切断加工において、作業ロスの発生をより確実に抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明に係る建材切断装置および建材加工システムは、間仕切り壁などの建築現場において、石膏ボードなどの板状の建築材料を必要な寸法に切断加工するのに有用であり、特に、寸法の計測から切断加工までに生じる作業ロスをなくして作業効率を向上するのに適している。
【符号の説明】
【0048】
10 建材加工システム
12 メジャー(計測装置)
14 タブレット端末(データ作成装置)
14A タッチパネル
16 建材切断装置
18 本体ケース
20 計測部
22 表示部
24 送信部
26 引出口
28 テープ
30 受信部
32 アプリケーション(データ作成部)
32A 切断加工形状サンプル
32B 計測値
32C 送信ボタン
34 送信部
36 受信部
38 切断加工部
40 架台(装置本体)
42,44 側面ボード固定ユニット
46 下面ボード固定ユニット
48,50 ホルダー
48A,50A シリンダ
48B,50B ロッド
48C,50C 把持部
52 X軸移動ユニット
52A ガイド
54 カッター(切断刃)
56 カッターX軸移動ユニット
56A ガイド
56B カッターX軸移動ユニット本体
58 カッターY軸移動ユニット
58A ガイド
58B カッターY軸移動ユニット本体
60 カッターZ軸移動ユニット
62 カッター回転ユニット(ソケット)
64 制御装置(制御手段)
P 現場作業員
S 石膏ボード(建築材料)
図1
図2
図3
図4
図5