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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】解反装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 16/06 20060101AFI20221021BHJP
   B65H 23/188 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
B65H16/06 B
B65H23/188
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018164903
(22)【出願日】2018-09-03
(65)【公開番号】P2019202885
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2018097459
(32)【優先日】2018-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100101638
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 峰太郎
(72)【発明者】
【氏名】中井 健司
(72)【発明者】
【氏名】有北 礼治
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-316369(JP,A)
【文献】実開昭56-154952(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 16/06
B65H 23/188
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地が芯に巻回される原反ロールを、外周の周囲に空間を設けるように芯で支持し、原反ロールから繰出した生地を後工程に供給する解反装置において、
原反ロールの芯を支持し、回転駆動が可能な回転支持機構と、
回転支持機構で支持される原反ロールのロール径を計測可能な計測センサーと、
後工程側に原反ロールから間隔をあけて設けられる基端側から、基端側の回りに揺動する遊端側にベルトが掛け渡され、回転支持機構で支持される原反ロールの下方に遊端側が進出して、原反ロールから繰出される生地をベルトで基端側に搬送可能な進出状態、または遊端側が原反ロールの下方から退避する退避状態を切替え可能な繰出しベルト機構と、
原反ロールが回転支持機構で支持されると、計測センサーが計測するロール径に基づき、繰出しベルト機構のベルトが原反ロールの下方で外周に対して予め定める間隔以上あけるように制御して、繰出しベルト機構を進出状態に切替え、原反ロールから繰出す生地をベルトで基端側に搬送させる制御手段とを
含むことを特徴とする解反装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記繰出しベルト機構の前記遊端側が前記基端側の回りに揺動する角度である揺動角度を、前記ロール径について予め定める複数段階の範囲に応じて切替え、前記ベルトと前記原反ロールの外周との間隔が予め定める範囲内となるように制御する
ことを特徴とする請求項1記載の解反装置。
【請求項3】
前記回転支持機構の下方に配置され、前記繰出しベルト機構の退避状態で、前記制御手段の制御による昇降移動が可能であり、下降位置で前記原反ロールを載置可能で、原反ロールが載置されて上昇すれば上昇位置で芯が回転支持機構による支持可能となり、芯が支持されれば原反ロールから離れて下降する載置台をさらに含み、
前記制御手段は、載置台の上昇位置を、前記ロール径に応じて決定する
ことを特徴とする請求項1または2記載の解反装置。
【請求項4】
前記原反ロールの芯は、軸線方向の両端部が中空管状であり、
前記回転支持機構は、
芯の端部の内径よりも先端側が小径で基端側が大径となるテーパを有する栓を、の軸線方向の両側に備え、
前記原反ロールの支持を、両栓の間隔を芯の長さよりも大の状態から狭めて行う
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の
解反装置。
【請求項5】
前記回転支持機構で支持される前記原反ロールの下方で、原反ロールから繰出される前記生地の先端を検出する先端検出センサーをさらに含み、
前記制御手段は、先端検出センサーの検出結果および前記計測センサーが計測する前記ロール径に基づき、回転支持機構および前記繰出しベルト機構を制御して、回転支持機構で支持される原反ロールから繰出す生地の先端を進出状態のベルトで受けて基端側に搬送するように制御する
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の解反装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記進出状態で前記生地の先端を前記後工程に送り出してから、前記繰出しベルト機構を前記退避状態に切替えて、前記原反ロールと繰出しベルト機構の基端側との間で生地を放反させながら、基端側から生地を前記後工程に供給するように制御する
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の解反装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生地が巻回される原反ロールから生地を繰出し、後工程に供給する解反装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、裁断装置で裁断するための生地を準備するために、延反装置が用いられている。延反装置は、シート状の生地が巻かれた原反ロールから生地を繰出して平坦な状態で積層させる(たとえば、特許文献1、2参照)。特許文献1は、原反ロール(反物)の支持を両側方に延長させた中心軸に対して行い、巻き解いた生地の表面に当てる繰出しローラーで引張りながら生地を繰出す構成を開示している。特許文献1では、延反された生地の先頭部分におもりを自動的に載せる機能が開示されている。特許文献2は、原反ロールを側面視でV字状となる原反受けベルト上に載置し、主として中表延反を行う構成を開示している。この構成は、生地を繰出しながら放反する解反装置と、生地を延反テーブル上に繰出す原反繰出し装置とを有する。特許文献2は、解反装置で巻き解いた生地を原反繰出し装置に導入する際の自動化も開示している。
【0003】
原反ロールと同様な巻物については、巻き方向とシート状の素材の先端を自動的に検出する技術が開示されている(たとえば、特許文献3参照)。特許文献3の制御は、ポリライナーと呼称される薄いポリエチレンシートの巻物を、ポリライナー供給センターの巻物整理収納機構の所定位置に収容する際に、端末部を一定にした状態にする。この制御の目的は、ポリライナーを未加硫ゴムシート等の帯状材料間に介在させながら巻取る巻取り機へ巻物を容易に自動セットするためである旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-187175号公報
【文献】特開平6-316369号公報
【文献】特開平2-291340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、裁断装置で裁断する対象となる生地は、アパレル分野の布帛ばかりではなく、インテリアや自動車内装品の素材などにも拡大している。生地となる布帛や素材には、強く引張ることや押圧することで負担が増すと、品質を損なうものがある。
【0006】
特許文献1は、原反ロールを回転させるための駆動源が用いられず、生地の表面に当てる繰出しローラーで生地を繰出すように引張るので、生地に負担がかかる。また、繰出した生地を放反させることなく延反することは、生地に巻き癖などを残すおそれがある。さらに、原反ロールを支持してから、生地を繰出しローラーまで繰出す作業は自動化されていない。
【0007】
特許文献2の構成は、解反装置で放反を行ってから生地を繰出すので、生地に巻き癖などを生じることはない。しかしながら、原反受けベルトに原反ロールの自重が掛った状態で接触しながら生地が引出されるので、生地に負担が掛ることは避けられない。特許文献3に開示されている制御は、ポリライナーが巻物から垂れ下がるだけなので、ポリライナーには負担が掛らないと考えられる。しかしながら、巻取り機に巻物がセットされた後でポリライナーの先端を後工程に繰出す過程については何も開示されておらず、ポリライナーに負担が掛るか否かは不明である。
【0008】
本発明の目的は、原反ロールを支持してから、生地に負担を掛けないで、後工程に生地を繰出す作業を自動化することができる解反装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、生地が芯に巻回される原反ロールを、外周の周囲に空間を設けるように芯で支持し、原反ロールから繰出した生地を後工程に供給する解反装置において、
原反ロールの芯を支持し、回転駆動が可能な回転支持機構と、
回転支持機構で支持される原反ロールのロール径を計測可能な計測センサーと、
後工程側に原反ロールから間隔をあけて設けられる基端側から、基端側の回りに揺動する遊端側にベルトが掛け渡され、回転支持機構で支持される原反ロールの下方に遊端側が進出して、原反ロールから繰出される生地をベルトで基端側に搬送可能な進出状態、または遊端側が原反ロールの下方から退避する退避状態を切替え可能な繰出しベルト機構と、
原反ロールが回転支持機構で支持されると、計測センサーが計測するロール径に基づき、繰出しベルト機構のベルトが原反ロールの下方で外周に対して予め定める間隔以上あけるように制御して、繰出しベルト機構を進出状態に切替え、原反ロールから繰出す生地をベルトで基端側に搬送させる制御手段とを
含むことを特徴とする解反装置である。
【0010】
また本発明の前記制御手段は、前記繰出しベルト機構の前記遊端側が前記基端側の回りに揺動する角度である揺動角度を、前記ロール径について予め定める複数段階の範囲に応じて切替え、前記ベルトと前記原反ロールの外周との間隔が予め定める範囲内となるように制御する
ことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記回転支持機構の下方に配置され、前記繰出しベルト機構の退避状態で、前記制御手段の制御による昇降移動が可能であり、下降位置で前記原反ロールを載置可能で、原反ロールが載置されて上昇すれば上昇位置で芯が回転支持機構による支持可能となり、芯が支持されれば原反ロールから離れて下降する載置台をさらに含み、
前記制御手段は、載置台の上昇位置を、前記ロール径に応じて決定することを特徴とする。
【0012】
また本発明で、前記原反ロールの芯は、少なくとも軸線方向の両端部が中空管状であり、
前記回転支持機構は、
芯の端部の内径よりも先端側が小径で基端側が大径となるテーパを有する栓を、の軸線方向の両側に備え、
前記原反ロールの支持を、両栓の間隔を芯の長さよりも大の状態から狭めて行う
ことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記回転支持機構で支持される前記原反ロールの下方で、原反ロールから繰出される前記生地の先端を検出する先端検出センサーをさらに含み、
前記制御手段は、先端検出センサーの検出結果および前記計測センサーが計測する前記ロール径に基づき、回転支持機構および前記繰出しベルト機構を制御して、回転支持機構で支持される原反ロールから繰出す生地の先端を進出状態のベルトで受けて基端側に搬送するように制御する
ことを特徴とする。
【0014】
また本発明の前記制御手段は、前記進出状態で前記生地の先端を前記後工程に送り出してから、前記繰出しベルト機構を前記退避状態に切替えて、前記原反ロールと繰出しベルト機構の基端側との間で生地を放反させながら、基端側から生地を前記後工程に供給するように制御する
ことを特徴とする。

【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、原反ロールを芯で支持し、繰出しベルト機構による搬送と回転支持機構による原反ロールの回転駆動で生地を繰出すので、生地に負担を掛けない。繰出しベルト機構は進出状態と退避状態とを切替え可能である。進出状態の遊端側は、制御手段によるロール径に基づく制御で、ベルトが原反ロールの下方に進出し、外周に対して予め定める間隔以上あける。ベルトは、原反ロールの外周に触れることなく、原反ロールから垂れ下がる生地を受けて、後工程に繰出す作業を自動的に行うことができる。
【0016】
また本発明によれば、進出状態での繰出しベルト機構の揺動角度を原反ロールのロール径についての複数段階の範囲に応じて切替える。ベルトと原反ロールの外周との間隔は、予め定める範囲内となるように制御される。間隔を制御することで、間隔が大きくなり過ぎることがなく、原反ロールから垂れる生地に巻き癖があっても先端を受けて、生地を基端側に搬送しやすくすることができる。
【0017】
また本発明によれば、原反ロールを下降位置の載置台に載置すれば、自動的にロール径に応じた上昇位置まで上昇し、回転支持機構に支持させることができる。
【0018】
また本発明によれば、テーパを有する栓で原反ロールの芯の中空管状の両端部を軸線方向の両側からそれぞれ挟むので、芯に巻回される生地に負担を掛けないように支持することができる。
【0019】
また本発明によれば、原反ロールが回転支持機構で支持されれば、先端検出センサーで生地の先端が検出される。原反ロールから繰出す生地の先端は、進出状態の繰出しベルト機構のベルトで受けて基端側に搬送され、自動的に繰出される。
【0020】
また本発明によれば、原反ロールから生地を繰出す生地を、原反ロールと退避状態の繰出しベルト機構の基端側との間で放反させてから、後工程に供給するように、自動的に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施例である解反装置1の概略的な構成を示す左側面図である。
図2図2は、図1の繰出しベルト機構6の揺動角度の変化を示す左側面図である。
図3図3は、図1の解反装置1の動作の一段階を示す簡略化した左側面図である。
図4図4は、図1の解反装置1の動作の一段階を示す簡略化した左側面図である。
図5図5は、図1の解反装置1の動作の一段階を示す簡略化した左側面図である。
図6図6は、図1の解反装置1の動作の一段階を示す簡略化した左側面図である。
図7図7は、図1の解反装置1の動作の一段階を示す簡略化した左側面図である。
図8図8は、図1の解反装置1の概略的な構成を示す正面図である。
図9図9は、図1の解反装置1に用いる移動側の栓4bに対する移動機構15の概略的な構成を示す正面図、底面図および右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1から図9で、本発明の一実施例である解反装置1の概略的な構成と、動作の各段階について説明する。解反装置1は、稼働時の作業者に直面する側を正面側とする。説明の便宜上、左側面図では、フレーム7の左側板7aを除去した状態を示す。また、説明対象の図には記載されていない部分について、他の図に記載される参照符を付して言及する場合がある。
【実施例
【0023】
図1は、本発明の一実施例である解反装置1の概略的な構成を示す。本実施例の解反装置1は、生地2を原反ロール3から繰出して後工程の装置に供給するために使用する。後工程の装置には、裁断機で裁断するための生地2を準備する延反装置、あるいは搬送機能付きの裁断テーブルを有する裁断装置を使用することができる。
【0024】
生地2が芯3aに巻回される原反ロール3は、外周の周囲に空間を設けるように芯3aで支持される。原反ロール3から繰出した生地2は、放反させてから後工程に供給される。解反装置1は、回転支持機構4と、先端検出センサー5と、繰出しベルト機構6と、制御手段10とを含む。回転支持機構4は、原反ロール3の芯3aを支持し、回転駆動が可能である。先端検出センサー5は、回転支持機構4で支持される原反ロール3の下方に設けられ、原反ロール3から繰出される生地2の先端を検出する。繰出しベルト機構6は、後工程側に原反ロール3から間隔をあけて設けられる基端側6aから、基端側6aの回りに揺動する遊端側6bにベルト6cが掛け渡される。遊端側6bは、基端側6a回りに揺動する揺動フレーム6dの先端で回転可能に支持される。ベルト6cは、制御手段10による制御で、進出状態と退避状態とを切替え可能である。進出状態は、回転支持機構4で支持される原反ロール3の下方に遊端側6bが進出して、原反ロール3から繰出される生地2をベルト6cで基端側6aに搬送可能である。退避状態は、遊端側6bが原反ロール3の下方から退避して、原反ロール3と基端側6aとの間で生地2の放反が可能である。図1で、繰出しベルト機構6のベルト6cは退避状態になっている。ベルト6cの駆動は、基端側6aを駆動用モーター6eで回転駆動して行う。駆動用モーター6eと基端側6aとの間の駆動力の伝達は、プーリーとベルトとを介して行う。
【0025】
解反装置1の主要部分は、フレーム7内に収容される。フレーム7は、架台8に搭載され、下部には移動ローラー7cを有する。架台8は、紙面に垂直な方向に延びる軌道9を有する。移動ローラー7cは軌道9に載って案内される。
【0026】
解反装置1は、載置台11と計測センサー17をさらに含む。載置台11は、回転支持機構4の下方に配置され、繰出しベルト機構6の退避状態で、制御手段10の制御による昇降移動が可能である。図1は載置台11が下降位置にある状態を示す。下降位置の載置台11は、二点鎖線で示すように原反ロール3を載置可能である。原反ロール3が下降位置の載置台11に載置されれば、載置台11とともに原反ロール3は上昇可能となる。載置台11の上昇位置では、原反ロール3の芯3aが回転支持機構4によって支持可能となる。芯3aが回転支持機構4で支持されれば、載置台11は原反ロール3から離れて下降する。載置台11の表面には、載置ローラー11aが並べられている。原反ロール3は、載置ローラー11a上に載置され、紙面に垂直な方向への移動が容易である。原反ロール3の紙面に垂直な方向への移動は、後述するように、回転支持機構4で芯3aの両側方から栓4a,4bを装着する際に必要となる。原反ロール3が移動する際に、載置ローラー11aが転動して、載置台11の表面に擦れることがないので、載置部分の生地2に負担が掛らない。なお、先端検出センサー5も載置台11に設けられている。
【0027】
解反装置1は、載置台11の昇降のために、昇降機構12および案内機構13を有する。昇降機構12は、チェーン12aと、チェーン12aが上下で掛けられるスプロケット12b,12cを含む。案内機構13は、上下に延びるガイド13aと、ガイド13aに沿って案内され、載置台11とチェーン12aとに結合される結合部材13bと、上下に設けられるストッパー13c,13dを含む。載置台11の下降位置は、下側のストッパー13dに結合部材13bが当接することで決定される。上側のストッパー13cは、載置台11の上限位置を決定する。
【0028】
計測センサー17は、載置台11に載置された原反ロール3の中心の上方に設けられ、原反ロール3の外周までの距離を計測する。計測センサー17の計測結果は、制御手段10に入力させる。下降位置の載置台11の表面までの距離は一定Zmであるから、下降位置の載置台11に載置された原反ロール3の外周の上端までの距離Z1を計測すると、ロール径DはD=Zm-Z1となる。載置台11の上昇位置は、載置した原反ロール3の芯3aを回転支持機構4で支持可能な位置であり、ロール径Dに応じて変化する。計測センサー17から上昇位置での芯3aまでの距離をZnとすると、載置台11を下降位置から上昇位置まで上昇させるために必要なリフト量Lは、L=Z1+D/2―Znとなる。制御手段10は、載置台11の上昇位置を、計測センサー17で計測したロール径Dに応じて決定する。
【0029】
繰出しベルト機構6は、揺動部14を有する。揺動部14は、揺動用モーター14a、揺動アーム14b、連結アーム14cを含む。揺動アーム14bは、軸14dを基端側として、軸14d回りに遊端側が揺動し、その角度がベルト6cの揺動角度となる。揺動用モーター14aおよび軸14dの端部は、取付板14eを介してフレーム7の後工程側で支持される。図8で後述するように、揺動アーム14bおよび連結アーム14cは、左側板7aおよび右側板7bにそれぞれ設けられる。軸14dは、両側の揺動アーム14bの基端側を連結する。揺動アーム14bを揺動させる駆動力は、揺動用モーター14aからプーリーおよびベルトを介して伝達される。揺動アーム14bの遊端側は、連結アーム14cの一端に連結される。連結アーム14cの他端は、揺動フレーム6dに連結される。
【0030】
図1に示す退避状態から、揺動用モーター14aを時計回り方向に回すと、揺動アーム14bおよび連結アーム14cを介してベルト6cは揺動方向14fに揺動し、繰出しベルト機構6を進出状態に切替えることができる。揺動部14は、揺動用モーター14aを駆動源として、ベルト6cの退避状態と進出状態との間での揺動角度を多段階に変えられる。制御手段10は、ロール径Dの大小に応じて揺動角度を小大に変えて、ベルト6cと原反ロール3の下方で外周に対して予め定める間隔以上あけるように、繰出しベルト機構6を制御する。以上のような揺動部14の構成は、一例であり、ベルト6cの遊端側6bを基端側6a回りに揺動させることができれば、他の構成でもよい。
【0031】
図8で後述するように、回転支持機構4は、紙面に垂直な軸方向に移動しないで、軸回りに回転駆動される固定側の栓4aと、軸方向に移動する移動側の栓4bとを有する。移動側の栓4bは、アーム4cで支持され、アーム4cの移動は、移動機構15で行う。移動機構15についての説明は、図9で後述する。回転支持機構4で支持される原反ロール3は、回転機構16で回転駆動される。回転機構16は、駆動源としてのモーター16aと、モーター16aの回転を、プーリーを介して固定側の栓4aに伝達するベルト16b、を含む。
【0032】
退避状態の繰出しベルト機構6と原反ロール3の間では、生地2の放反が可能であり、放反状態の監視は、放反センサー18で行う。放反センサー18は、放反される生地2の表面までの距離を検出し、検出結果を制御手段10に入力させる。繰出しベルト機構6の基端側6aから後工程側に繰出される生地2は、後工程側に設置するカメラ19で撮像し、撮像結果も制御手段10に入力させる。生地2を放反させる必要が無ければ、繰出しベルト機構6を進出状態として、ベルト6cで生地2の搬送を続けるようにしてもよい。
【0033】
先端検出センサー5、計測センサー17および放反センサー18は、出射した光に対する一定角度での反射光を受光し、受光位置のずれから対象までの距離を算出する反射型の距離センサーを使用している。先端検出センサー5は、生地2の有無を検出すればよいので、透過光の有無を検出するようなセンサーを用いることや、接触して生地2を検知するセンサーを用いることもできる。計測センサー17は、原反ロール3の側方に設け、上下方向の移動式にして、最大径部分を計測するようにしてもよい。ただし、本実施例のように原反ロール3の真上に設ける計測センサー17は、固定式で最大径部分を計測することができる。さらに反射型の計測センサー17に替えて、上方から原反ロール3を撮像し、前端側と後端側との幅としてロール径Dを計測するような計測センサーを用いることもできる。また撮像する計測センサーは、原反ロール3の側方に配置し、上端側と下端側との幅としてロール径Dを計測することもできる。
【0034】
図2は、原反ロール3のロール径Dについて、予め定める複数段階の範囲に応じてベルト6cの揺動角度を切替える制御の例を示す。繰出しベルト機構6の待機状態を破線で、想定される最大範囲のロール径D1と最小範囲のロール径D2とに応じる進出状態を実線と二点鎖線とでそれぞれ示す。待機状態から、ロール径D1,D2に応じた進出状態への揺動は、遊端側6b0から遊端側6b1,6b2への位置変化を生じる。ロール径D1、D2は、たとえば600~700mm,200mm以下であり、この間を500~600mm、400~500mm、300~400mm、200~300mmの範囲に分ける。ロール径D1,D2に対してベルト6cの進出状態での待機状態からの揺動角度θ1,θ2は、たとえば約35度、約60度であり、揺動アーム14bの揺動角度φ1,φ2は、約35度、約65度である。このように、ロール径Dについて100mm毎の複数段階の範囲で揺動角度を変化させるように制御すれば、ベルト6cと原反ロール3の外周との間隔δ1,δ2を、一定範囲、たとえば30mm以上で80mm未満の範囲に制御することができる。なお、ロール径として200~700mmの範囲と、ロール径として200mm以下の範囲との二段階の切替えでも、ベルト6cを原反ロール3の下方に進出させで、外周との間隔を予め定める30mm程度以上あけるように制御することができる。以上のようなロール径Dに基づく揺動角度の制御は、生地2の性状に応じて予め作成されるテーブルなどに従って複数段階で切替えるように行えばよい。揺動部14の駆動源として、電動シリンダーや多段ストローク型の流体圧シリンダーを用いることもできる。また、原反ロール3の外周とベルト6cの間隔が一定になるように、揺動角度を無段階に制御してもよい。
【0035】
繰出しベルト機構6の進出状態は、ベルト6cの遊端側6bが原反ロール3の左側端から下方に延びる垂線3vよりも芯3a側の下方になればよい。原反ロール3の左側端から生地2があまり曲らずに垂れ下がれば、先端をベルト6cで受けることができる。このような進出状態のベルト6cは、原反ロール3が載置台11に載置されて上下動する際の支障となるので、繰出しベルト機構6の退避状態では、垂線3vにベルト6cが掛らない位置まで離れるようにする。
【0036】
図3は、(a)で載置台11をリフト量Lだけ上昇させた動作段階、(b)で回転支持機構4に原反ロール3を支持させて、載置台11を間隔ΔZに相当する距離だけ下降させ、生地2の先端を検出する段階をそれぞれ示す。下降位置の載置台11には、人手でも容易に原反ロール3を載置可能である。ロボット装置などを用いれば、原反ロール3の搬入も自動化可能である。
【0037】
図3(b)では、繰出しベルト機構6が退避状態にあり、原反ロール3の外周の下端から下方に予め定める間隔ΔZだけ離れた検出位置で、載置台11に設けられる先端検出センサー5が生地2の先端通過を検出する。生地2の先端が先端検出センサー5よりも図の右方に延びる状態から、原反ロール3を時計回り方向に回転させ、生地2は、先端検出センサー5に接触する状態または近接した非接触状態で原反ロール3に巻取られるようにする。生地2の検出から非検出に切替る時点が先端通過として検出される。原反ロール3の回転開始時に生地2の先端が先端検出センサー5の左方にあっても、時計回り方向の回転で上端を越えれば、先端は原反ロール3の右方に落下し、一回転するまでに、生地2を検出可能になる。生地2の先端が検出されると、原反ロール3を時計回り方向に約90°回転させ、生地2の先端が原反ロール3の左側方に来るまで生地2を巻取る。
【0038】
なお、先端検出センサー5は、載置台11とは別に設けることもできる。その場合、この動作段階で、載置台11は下降位置まで下降させることができる。先端検出センサー5は、繰出しベルト機構6や載置台11の移動に支障が生じないように進退させればよい。また、特許文献3のように、原反ロール3の下方の左右両側にセンサーを設けて、原反ロール3の左側端または右側端から垂れ下がる生地2の先端を検出するようにしてもよい。
【0039】
図4は、(a)で載置台11を下降位置まで下降させ、繰出しベルト機構6を進出状態に揺動させた動作段階、(b)で生地2の先端を原反ロール3の反時計回り方向への回転と繰出しベルト機構6での搬送で後工程側に送り出す動作段階をそれぞれ示す。繰出しベルト機構6は、載置台11による原反ロール3の上昇時には退避状態にあるので、載置台11や原反ロール3と干渉しない。制御手段10は、図3(a)に示すように原反ロール3が回転支持機構4で支持されると、載置台11を下降させて、繰出しベルト機構6を進出状態に切替えることができる。さらに制御手段10は、図4(b)に示すような進出状態で、原反ロール3から繰出して垂れ下がる生地2をベルト6cで受けて基端側6aに搬送するように制御する。生地2の先端が基端側6aを越えて後工程側に移行すると、カメラ19が撮像する画像から先端を検出し、原反ロール3の回転とベルト6cの搬送とを停止させる。フレーム7は、軌道9に沿って移動可能であるので、カメラ19が生地2の側縁付近の画像を撮像して耳を検出すれば、耳揃えを行わせることもできる。
【0040】
図5は、(a)で繰出しベルト機構6を退避状態まで揺動させた動作段階、(b)で生地2を放反させながら繰出す動作段階をそれぞれ示す。生地2の先端が繰出しベルト機構6の基端側6aから後工程側に送り出された後で、繰出しベルト機構6を退避状態にすると、生地2は原反ロール3と基端側6aの間で弛む状態となる。生地2の弛み量は、放反センサー18で検出される。繰出しベルト機構6による搬送を、後工程の搬送に同期させながら行い、原反ロール3の反時計回り方向への回転を搬送よりも速くすれば弛み量が大きくなり、遅くすれば弛み量が小さくなる。原反ロール3の回転を制御して弛み量を適正な範囲に抑えれば、放反で巻き癖を減少させた状態の生地2を後工程に送り出すことができる。
【0041】
解反装置1では、原反ロール3を芯3aで支持し、繰出しベルト機構6による搬送と回転支持機構4による回転駆動で生地2を繰出すので、繰出す生地2に負担を掛けない。制御手段10による制御で、繰出しベルト機構6は進出状態と退避状態とを切替え可能である。進出状態で遊端側6bを原反ロール3の下方に進出させて原反ロール3から繰出された生地2の先端を基端側6aに搬送する。退避状態で基端側6aと原反ロール3との間で生地2を放反させながら繰出すので、生地2の先端を後工程まで導く作業の自動化が可能となる。なお、生地2は、繰出しベルト機構6を図4(b)に示す進出状態に保ち、放反しないで後工程に供給することもできる。
【0042】
図6は、原反ロール3のロール径Dが小さいときに、繰出しベルト機構6のベルト6cの揺動角度を大きくすることが好ましい理由を示す。解反装置1は、図4(a)に示す繰出しベルト機構6の進出状態で、原反ロール3のロール径Dが小さい場合、図6(a)に示すように揺動角度を大きくする。図6(b)に示すように、揺動角度を大きくしないと、繰出しベルト機構6のベルト6cと原反ロール3の外周との間隔が大きく空いてしまう。原反ロール3が小径になると、生地2の先端の巻き癖も顕著になり、原反ロール3から繰出される生地2の先端がベルト6cの表面に届かないおそれがある。図6(a)のように揺動角度を大きくすることで、繰出しベルト機構6のベルト6cと原反ロール3の外周との間隔が大きくなり過ぎずに小さく保たれるので、原反ロール3から垂れる生地2の先端をベルト6cで確実に受けて、基端側6aに搬送することができる。なお、巻き癖が生じにくい生地2では、図6(b)のように原反ロール3が小径になっても、原反ロール3の左側端から垂れ下がる生地2の先端をベルト6cで受けることができるので、一つの進出状態を広い範囲のロール径Dに対応させることができる。
【0043】
原反ロール3は、載置台11の上昇位置の高さで回転支持機構4に直接搬入したり、搬出したりすることもできる。搬出や搬入にロボットなどを用いれば、載置台11を用いないでも自動化することができる。本実施例の載置台11を用いない場合でも、原反ロール3を搬入する前にベルト6cを退避状態にしておき、搬入後に計測するロール径Dに基づく揺動角度でベルト6cを進出状態にすることができる。なお、載置台11を用いない場合の退避状態は、最大のロール径Dに対応する進出状態と兼用することもできる。載置台11を用いる場合、原反ロール3を下降位置の載置台11に載置すれば、自動的にロール径に応じた上昇位置まで上昇し、回転支持機構4に支持させることができる。
【0044】
なお、解反装置1は、繰出した生地2を原反ロール3に巻取って、原反ロール3に対する回転支持機構4の支持を解除して、原反ロール3を下降させることも自動化可能である。図5(b)の状態で、繰出しベルト機構6を繰出し時の搬送方向とは逆方向に駆動し、原反ロール3も時計回り方向に回転させる。生地2が原反ロール3に巻取られると、先端が繰出しベルト機構6の基端側6aを越えて戻り、原反ロール3の左側端から垂れ下がる状態となる。放反センサー18は、弛んだ生地2の底を検出する状態から、検出しない状態に移行するので、巻き終り検出と判断する。巻き終りと判断された原反ロール3の外周の上端までの距離を計測センサー17で計測し、計測値に応じたリフト量Lで載置台11を上昇させると、図3(a)に相当する状態となる。回転支持機構4による原反ロール3の支持を、移動側の栓4bの外側方への移動で解除し、原反ロール3を載置台11に載せて、載置台11を下降位置まで下降させればよい。
【0045】
また以上の説明で、繰出す生地2は原反ロール3の外周側が表側となる外表延反の状態となっている。しかしながら、原反ロール33の内周側が表側となる中表延反の状態で生地を繰出すこともできる。図7(a)に示すように、図3(b)に対して中表延反用の原反ロール33を反時計回り方向に回転させれば、逆方向に巻かれた生地2の先端を先端検出センサー5で検出することができる。図7(b)に示すように繰出しベルト機構6を進出状態にして、ベルト6cで生地2を受けることも、先端の検出後に原反ロール33を反時計回り方向に半回転以上させて先端を原反ロール33の左側端から垂れ下がらせれば可能になる。ベルト6cで生地2の先端を受けると、原反ロール33を時計回り方向に回転させ、生地2をベルト6c上に送り込むことができる。生地2の先端が繰出しベルト機構6の基端側6aを越えると、繰出しベルト機構6を退避状態に切替え、生地2が基端側6aと原反ロール33の右側端との間で弛んで放反領域を形成する状態にすることができる。先端検出センサー5は、原反ロール33の外周の下端よりも下方で生地2の先端を検出するので、先端検出センサー5を一つしか設けなくても、生地2の巻き方向の両方で先端を検出することができる。
【0046】
図8は、図1の解反装置1の概略的な構成を、正面図として示す。フレーム7には、左側板7aと右側板7bを含む。左側板7aおよび右側板7bは、昇降機構12のスプロケット12b,12cを支持する。スプロケット12b,12c間にはチェーン12aが掛けられるけれども、図示を省略する。左側板7aおよび右側板7bは、ガイド13aも支持する。右側板7b側のスプロケット12cは、昇降用モーター12dで回転駆動される。回転駆動用の軸は、左側板7a側のスプロケット12cまで延長されて、駆動力を伝達する。架台8に対してフレーム7を図の横方向に移動させるための駆動源として、移動用モーター8aが設けられ、軌道9に取付けられるラックと噛合うピニオンを回転駆動する。
【0047】
図9は、回転支持機構4で移動側となる栓4bを移動させる移動機構15に関する構成を、簡略化して示す。(a)は移動機構15としての正面図、(b)は底面図、(c)は右側面図に相当する。移動機構15は、駆動源として移動用シリンダー15aを含む。移動用シリンダー15aは、ロッド15bの伸長ストロークが大きく、実線で示す最大伸長状態から、二点鎖線で示す最小伸長状態まで、栓4bを移動させることができる。移動用シリンダー15aは、取付板15cを介して、フレーム7の上部に取付けられる。取付板15cには、計測センサー17および放反センサー18も取付けられる。
【0048】
原反ロール3は、芯3aの少なくとも両端部に中空管である紙管を使用する場合を想定している。回転支持機構4は、芯3aの中空管状の内径よりも先端側が小径で基端側が大径となるテーパを有する栓4a,4bを、3aの軸線方向の両側に備える。回転支持機構4による原反ロール3の支持は、両栓4a,4bの間隔を芯3aの長さよりも大の状態から狭めて行う。本実施例では、固定側の栓4aに対して、移動機構15で移動側の栓4bを接近させることで、間隔を狭める。原反ロール3は、載置台11上の載置ローラー11aに載っているので、移動側の栓4bが芯3aに嵌合すれば、栓4bとともに原反ロール3を容易に固定側の栓4aに接近させることができる。両側の栓4a,4bを同時に移動し、一方が芯3aに嵌合したら他方のみを芯3aに嵌合するまで移動するような機構を設ければ、原反ロール3を移動させなくてもよい。いずれにしても、テーパを有する栓4a,4bで原反ロール3の芯3aとなる中空管を軸線方向の両側から挟むので、芯3aに巻回される生地2に負担を掛けないように支持することができる。


【符号の説明】
【0049】
1 解反装置
2 生地
3,33 原反ロール
3a 芯
4 回転支持機構
4a,4b 栓
5 先端検出センサー
6 繰出しベルト機構
6a 基端側
6b 遊端側
6c ベルト
7 フレーム
7b 右側板
8 架台
10 制御手段
11 載置台
11a 載置ローラー
12 昇降機構
13 案内機構
14 揺動部
15 移動機構
16 回転機構
17 計測センサー
18 放反センサー
19 カメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9