(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】床束材
(51)【国際特許分類】
E04F 15/00 20060101AFI20221021BHJP
【FI】
E04F15/00 L
E04F15/00 101G
(21)【出願番号】P 2018175961
(22)【出願日】2018-09-20
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593207787
【氏名又は名称】ツカ・カナモノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藤山 晴司
(72)【発明者】
【氏名】宇野 友嗣
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-168984(JP,A)
【文献】実開昭48-035921(JP,U)
【文献】特開2011-069136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00
E04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物が完成した後の一階床下の空間に設置されて床材を支持する床束材であって、
基盤に載置されるベースと、
前記ベースに対して上下方向に高さ調整自在な支柱と、
前記支柱に載置されて前記床材を支持する支持プレートと、を有し、
前記支柱は、上方螺子棒と、下方螺子棒と、それらが直接的もしくは間接的に螺合しているパイプと、を有し、
前記ベースに下方ナットが遊嵌され、該下方ナットに前記下方螺子棒が一体に固定されており、
前記パイプが回転されることにより、該パイプに対して前記上方螺子棒と前記下方螺子棒の双方が上下に移動して前記支持プレートの高さが調整される、第一高さ調整機構と、
前記一階床下の空間に設置されている状態で前記下方ナットが回転されることにより、前記下方螺子棒に対して前記パイプが上下に移動して前記支持プレートの高さが調整される、第二高さ調整機構と、を有することを特徴とする、床束材。
【請求項2】
前記下方螺子棒に下方袋ロックナットが螺合しており、
前記下方袋ロックナットを締め付けることにより、該下方袋ロックナットの有する袋部材が前記下方ナットを収容してロックすることを特徴とする、請求項1に記載の床束材。
【請求項3】
前記上方螺子棒に上方ナットが螺合し、該上方ナットに前記支持プレートに開設されている開口が遊嵌して支持されており、
前記上方ナットを回転させることにより、前記上方螺子棒に対して該上方ナットが上下に移動して前記支持プレートの高さが調整される、第三高さ調整機構をさらに有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の床束材。
【請求項4】
前記上方螺子棒に上方袋ロックナットが螺合しており、
前記上方袋ロックナットを締め付けることにより、該上方袋ロックナットの有する袋部材が前記上方ナットを収容してロックすることを特徴とする、請求項3に記載の床束材。
【請求項5】
前記上方螺子棒に上方保持ナットが螺合し、前記下方螺子棒に下方保持ナットが螺合しており、
前記上方保持ナットと前記下方保持ナットを締め付けることにより、前記パイプに対する前記上方螺子棒と前記下方螺子棒の位置決め固定が図られ、前記支柱の長さが固定されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の床束材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床束材に関する。
【背景技術】
【0002】
戸建住宅等の建物の一階の床材(床パネル、大引や根太等の床梁が含まれる)は、土間コンクリート等の基盤に固定された高さ調整自在な床束材(床束)に支持され、床束材の高さを調整することにより所望の高さにて床材の載置固定が図られている。
【0003】
上記する床束材に関し、例えば、床下地パネルの高さを広い範囲で調整可能な床束が提案されている。具体的には、基盤面上に設置され、床下地パネルを支持する床束であり、基盤面に固定されるベースと、ベースから上方に延びて設けられ、上下方向の中間にその長さを調整可能な第一調整部を有する支柱部と、支柱部の第一調整部よりも上部において、上下方向に移動可能に設けられる第二調整部と、第二調整部に外挿するとともに、床下地パネルを保持する保持板とを有している。第一調整部は水平方向から操作可能であり、第二調整部は上方から操作可能である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の床束は、その構成部材である支柱部の中間において長さを調整可能な第一調整部と、支柱部の第一調整部よりも上方において上下方向に移動可能に設けられる第二調整部と、の二つの高さ調整部を有することにより、複数の高さ調整部による床材の高さ調整を可能にしている。特に、支柱部の第一調整部よりも上方に第二調整部を有することから、第一調整部にて支柱部の高さを調整して支柱部の長さを固定した後は、床束の上方から第二調整部の高さ調整を行うことにより、支柱部の長さを固定した状態で床材の高さの微調整を行うことができる。尚、高さが調整された支柱部の第一調整部の上下に固定ナットが締め込まれることにより、支柱部の長さの固定が図られる構成となっている。
【0006】
このように床束の上方からその高さ調整を行うに当たり、建物が新築施工の場合は、広い作業スペースが存在していることから、床束の上方からの高さ調整を容易に行うことができる。従って、特許文献1に記載の床束の高さ調整においては、第一調整部と第二調整部のいずれを適用しても床束の高さを容易に調整することができる。一方、建物が完成した後のメンテナンス時に床材の高さを調整するべく床束の高さ調整を行う場合は、作業員が一階床下の狭い空間に入り込み、この狭い空間の中で上向き作業にて高さ調整を行う必要が生じる。この1階床下空間の高さは様々あるが、例えば40cm乃至60cm程度が一般的である。既述するように、第一調整部は、上下に固定ナットが締め込まれることにより支柱部の長さの固定が図られていることから、固定ナットを緩めて第一調整部の高さ調整を行うことになるが、上方の固定ナットを緩める際にこの上向き作業を必要とする場合が生じ得る。また、第一調整部の上方にある第二調整部で高さ調整を行う場合は、上向き作業が必然といってよい。しかしながら、このように狭い一階床下空間での上向き作業は作業性が極めて悪く、高さ調整が容易でない。
【0007】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、床材の高さ調整を行うメンテナンス時において、一階床下の狭い空間でも高さ調整を容易に行うことのできる床束材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による床束材の一態様は、
床材を支持する床束材であって、
基盤に載置されるベースと、
前記ベースに対して上下方向に高さ調整自在な支柱と、
前記支柱に載置されて前記床材を支持する支持プレートと、を有し、
前記支柱は、上方螺子棒と、下方螺子棒と、それらが直接的もしくは間接的に螺合しているパイプと、を有し、
前記ベースに下方ナットが遊嵌され、該下方ナットに前記下方螺子棒が一体に固定されており、
前記パイプが回転されることにより、該パイプに対して前記上方螺子棒と前記下方螺子棒の双方が上下に移動して前記支持プレートの高さが調整される、第一高さ調整機構と、
前記下方ナットが回転されることにより、前記下方螺子棒に対して前記パイプが上下に移動して前記支持プレートの高さが調整される、第二高さ調整機構と、を有することを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、パイプに対して上方螺子棒と下方螺子棒を上下に移動させることにより支持プレートの高さ調整を行う第一高さ調整機構に加えて、下方螺子棒に対してパイプを上下に移動させることにより支持プレートの高さ調整を行う第二高さ調整機構を床束材が備えていることにより、特に床材の高さ調整を行うメンテナンス時において、一階床下の狭い空間にて高さ調整を容易に行うことができる。これは、基盤に固定されるベースに近接した位置にある、下方螺子棒に一体に固定された下方ナットを回転させることから、一階床下の狭い空間であっても、作業員は下向き作業にて支持プレートの高さ調整を行うことができるためである。本態様において、「第一高さ調整機構」は、回転させることにより支柱の長さを変化させるパイプである。また、「第二高さ調整機構」は、回転させることによりパイプを上下に移動させる、相互に一体化された下方螺子棒及び下方ナットであり、この下方ナットを回転させることにより、下方螺子棒が下方ナットに同期して回転しながらパイプを上下に移動させ、メンテナンス時の床材の高さの微調整を行うことができる。例えば、ベースに対して下方ナットが空転自在に保持され、この下方ナットに下方螺子棒が一体に固定されている。下方ナットと下方螺子棒の固定態様としては、溶接による固定や、下方ナットの有する螺子溝に下方螺子棒が螺合されることによる固定などが挙げられる。メンテナンス時には、床束材の全体に建物荷重が載荷された状態となっている。このように建物荷重が載荷された状態の床束材に対して、ベースに遊嵌されている(空転自在に保持されている)下方ナットを回転させると、下方螺子棒が同期して回転し、下方螺子棒が回転することにより、下方螺子棒に螺合しているパイプが上下に移動する。また、支柱に関し、「上方螺子棒と、下方螺子棒と、それらが直接的もしくは間接的に螺合しているパイプ」とは、上方螺子棒と下方螺子棒がいずれもパイプに対して直接螺合している形態の他、上方螺子棒と下方螺子棒が例えばブッシュナット等を介してパイプに螺合している形態(上方螺子棒等が固定されているブッシュナットとパイプが螺合している形態)を含んでいる。
【0010】
また、本発明による床束材の他の態様は、前記下方螺子棒に下方袋ロックナットが螺合しており、
前記下方袋ロックナットを締め付けることにより、該下方袋ロックナットの有する袋部材が前記下方ナットを収容してロックすることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、建物の新築施工時においてもメンテナンス時においても、高さ調整が行われた後の下方ナットの上方から、下方螺子棒に螺合している下方袋ロックナットを回し、その袋部材にて下方ナットを収容してロックすることにより、下方ナットに対する下方螺子棒の回転を抑止して、調整された高さを保持することができる。尚、メンテナンス時の床材の高さの微調整を行う際には、下方袋ロックナットによる下方ナットのロック状態を解除した後に下方ナットを回転させる。
【0012】
また、本発明による床束材の他の態様は、前記上方螺子棒に上方ナットが螺合し、該上方ナットに前記支持プレートに開設されている開口が遊嵌して支持されており、
前記上方ナットを回転させることにより、前記上方螺子棒に対して該上方ナットが上下に移動して前記支持プレートの高さが調整される、第三高さ調整機構をさらに有していることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、例えば新築施工時において、作業員が上方から上方ナットを回転させることにより、上方螺子棒に対して上方ナットを上下に移動させることで支持プレートの高さを容易に調整することができる。本態様において、「第三高さ調整機構」は、回転させることにより自身が上方螺子棒に対して上下に相対移動して支持プレートの高さを調整する上方ナットである。新築施工時においては、第一高さ調整機構により支柱の長さを調整して、支持プレートの高さを床パネルが計画上の一階床高さに近い高さとなるように粗く設定し、次いで、第三高さ調整機構により上方ナットを回転させて支持プレートの高さの微調整を行い、支持プレートの高さを床パネルが計画上の一階床高さとなるように設定するのが効率的である。
【0014】
既述するように、支柱はパイプの上下に上方螺子棒と下方螺子棒が上下に移動自在に螺合していることから、第一高さ調整機構であるパイプを回転させることにより、上下の螺子棒が同期して伸縮することから支柱の伸縮効率(長さの変化効率)が高い。一方、第二高さ調整機構は、下方ナットを回転させることにより下方螺子棒が回転してパイプを上下に移動させるものであり、第三高さ調整機構は、上方ナットを回転させることにより上方螺子棒に対して上方ナット自身を上下に移動させるものであることから、いずれも支持プレート(もしくは床材)の高さの微調整に好適である。
【0015】
このように、第一高さ調整機構と第三高さ調整機構は、建物の新築施工時において床束材の高さを調整する際に主として操作され、第一高さ調整機構により床束材の高さを例えば載置される床材の高さが設計高さとなるように粗く設定した後、第三高さ調整機構により床材の高さが設計高さとなるように床束材の高さが微調整される。一方、第二高さ調整機構は、建物のメンテナンス時において床束材の高さを調整する際に主として操作され、第二高さ調整機構により床束材の高さが設計高さに戻るように微調整される。既述するように、メンテナンス時においては、第二高さ調整機構にて床束材の高さを調整することにより、狭い一階床下の空間において作業員が下向き作業を行うことができるからである。
【0016】
また、本発明による床束材の他の態様は、前記上方螺子棒に上方袋ロックナットが螺合しており、
前記上方袋ロックナットを締め付けることにより、該上方袋ロックナットの有する袋部材が前記上方ナットを収容してロックすることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、例えば建物の新築施工時において、高さ調整が行われた後の上方ナットの上方から、上方螺子棒に螺合している上方袋ロックナットを回してその袋部材にて上方ナットを収容してロックすることにより、上方螺子棒に対する上方ナットの回転を抑止して、調整された高さを保持することができる。
【0018】
また、本発明による床束材の他の態様は、前記上方螺子棒に上方保持ナットが螺合し、前記下方螺子棒に下方保持ナットが螺合しており、
前記上方保持ナットと前記下方保持ナットを締め付けることにより、前記パイプに対する前記上方螺子棒と前記下方螺子棒の位置決め固定が図られ、前記支柱の長さが固定されることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、例えば建物の新築施工時において、高さ調整が行われた後のパイプに対する上方螺子棒に対して上方保持ナットを締付け、同様にパイプに対する下方螺子棒に対して下方保持ナットを締付けることにより、高さ調整された支柱の長さを保持することができる。そのため、第一高さ調整機構により支柱の高さを例えば粗く調整した後、第三高さ調整機構により床束材の高さを微調整する際に、高さ調整済みの支柱の長さが変化することを効果的に抑制することができる。また、メンテナンス時においては、下方袋ロックナットと下方保持ナットを緩めて下方螺子棒とパイプの相対移動を可能にした後、下方ナットを回転させ、下方螺子棒が回転してパイプを上下に移動させる。
【発明の効果】
【0020】
以上の説明から理解できるように、本発明の床束材によれば、床材の高さ調整を行うメンテナンス時において、一階床下の狭い空間でも高さ調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係る床束材の一例の斜視図である。
【
図2】実施形態に係る床束材の一例の縦断面図である。
【
図3】ベース、下方ナット、下方螺子棒及び下方袋ロックナットの相互の関連構成を説明する縦断面図である。
【
図4】建物の新築施工時において床束材の高さを調整する工程図である。
【
図5】
図4に続いて、建物の新築施工時において床束材の高さを調整する工程図である。
【
図6】
図5に続いて、高さが調整された床束材に床材を載置した状態を説明する工程図である。
【
図7】建物のメンテナンス時における、床束材の高さを調整する施工図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る床束材の一例と、建物の新築施工時とメンテナンス時において床束材の高さを調整する施工方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0023】
[実施形態に係る床束材]
はじめに、
図1乃至
図3を参照して、実施形態に係る床束材の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る床束材の一例の斜視図であり、
図2は、床束材の一例の縦断面図である。また、
図3は、ベース、下方ナット、下方螺子棒及び下方袋ロックナットの相互の関連構成を説明する縦断面図である。
【0024】
図示する床束材100は、基盤K(
図3参照)に載置されるベース10と、ベース10に対して上下方向に高さ調整自在な支柱20と、支柱20に載置されて床材(図示せず)を支持する支持プレート40と、を有する。図示例の床束材100は、鋼製束であってもよいし、所謂プラ束であってもよい。
【0025】
ベース10は、平面視矩形のフラットプレート11を有し、フラットプレート11の中央には、
図2に示すように中央開口14が開設されている。また、
図1に示すように、フラットプレート11の隅角部の近傍には、ベース10を基盤Kに固定するためのピン(もしくは釘)が挿通されるピン孔15が開設されている。中央開口14の周囲にはフラットプレート11を湾曲状に変形(膨出)させてなる環状リブ12が形成され、環状リブ12から径方向には、同様にフラットプレート11を湾曲状に変形(膨出)させてなる複数の放射リブ13が形成され、環状リブ12と放射リブ13によりベース10が補剛されている。
【0026】
支柱20は、パイプ21と、上方螺子棒22と、下方螺子棒23とを有する。パイプ21は中空を有し、中空の上下位置には、ブッシュナット33,34がかしめられることにより固定されている。また、ブッシュナット33,34はそれぞれ中空螺子33a、34aを有しており、上方螺子棒22及び下方螺子棒23がそれぞれ中空螺子33a、34aに螺合されている。ここで、パイプ21の上方にあるブッシュナット33の中空螺子33aと上方螺子棒22は例えば右螺子を有しており、パイプ21の下方にあるブッシュナット34の中空螺子34aと下方螺子棒23は反対の左螺子を有している(双方の螺子方向が逆であってもよい)。そのため、
図2に示すように、パイプ21を半時計周りであるX1方向に回転させた際には、例えば上方螺子棒22と下方螺子棒23がそれぞれパイプ21から上下にY1方向に張り出すように移動し、支柱20の長さが一気に長くなる。一方、パイプ21を時計周りであるX2方向に回転させた際には、例えば上方螺子棒22と下方螺子棒23がそれぞれパイプ21の内部にY2方向に進入するように移動し、支柱20の長さが一気に短くなる。
【0027】
パイプ21の高さ方向の略中央位置には、円柱状のパイプ21がプレス加工等されてなる四面角付け21aが設けられており、この四面角付け21aにレンチ等の工具(図示せず)を嵌め込むことにより、パイプ21を容易に回転できるようになっている。
【0028】
このように、パイプ21を回転させることにより支柱20の長さを調整できることから、床束材100において、パイプ21は支柱20の構成部材であるとともに、高さ調整機構(第一高さ調整機構)でもある。
【0029】
図1及び
図2において、支柱20の長さが調整された状態において、パイプ21と上方螺子棒22及び下方螺子棒23の相対位置を保持するべく、上方螺子棒22には上方保持ナット31が螺合し、下方螺子棒23には下方保持ナット32が螺合している。上方保持ナット31とパイプ21の上端の間にはブッシュナット33が介在し、下方保持ナット32とパイプ21の下端の間にもブッシュナット34が介在している。上方保持ナット31と下方保持ナット32をパイプ21側に締め付けることにより、パイプ21に対する上方螺子棒22と下方螺子棒23の位置決め固定が図られる。
【0030】
図1及び
図2は、上方保持ナット31と下方保持ナット32が締め付けられた状態を示しているが、第一高さ調整機構であるパイプ21を回転させて支柱20の長さを調整する際には、上方保持ナット31と下方保持ナット32を締付け方向と反対方向に回転させ、締付けが解除された状態にて支柱20の長さ調整が行われる。
【0031】
図3に示すように、ベース10の中央開口14には下方ナット50がベース10に対して空転自在に遊嵌している。下方ナット50は、
図1にて外形が明りょうに示される六角ナット51と、六角ナット51と連続するかしめ保持部52とを有し、六角ナット51の上端は下方螺子棒23の下端に一体に固定されている。尚、下方ナット50に螺子溝(図示せず)が設けられていて、この螺子溝に対して下方螺子棒23が螺合することにより双方が固定される形態であってもよい。
【0032】
かしめ保持部52は、ベース10の中央開口14に下方ナット50を形成する六角ナットを位置決めし、六角ナットの下方をかしめることにより形成される。六角ナットにおいてかしめられた箇所は、中央開口14を挟むように膨出し、
図3に示すように一対の環状フランジを成すかしめ保持部52が形成される。かしめ保持部52が形成されることにより、ベース10の中央開口14に遊嵌するかしめ保持部52と、かしめ保持部52に連続する六角ナット51とを有する下方ナット50が、ベース10に対して空転自在に保持される。
【0033】
図3に示すように、基盤Kにベース10が固定され、建物荷重Nが上方から床束材100の全体に作用している状態において、六角ナット51を六角レンチ等の工具(図示せず)にてX4方向に回転させると、六角ナット51に対して一体に固定されている下方螺子棒23が同様にX4方向に回転する。この下方螺子棒23の回転により、下方螺子棒23に螺合しているブッシュナット34に固定されているパイプ21が、
図2に示すように上下方向であるY2方向もしくはY1方向に移動する。
【0034】
このように、下方ナット50及び下方螺子棒23は、ベース10と支柱20を繋ぐ部材であると同時に、パイプ21を上下移動させることにより支持プレート40の高さを調整する高さ調整機構(第二高さ調整機構)でもある。ここで、
図2に示す第一高さ調整機構であるパイプ21を回転させた際の支持プレート40の高さ調整と、
図2及び
図3に示す第二高さ調整機構である下方ナット50を回転させた際の支持プレート40の高さ調整とでは、パイプ21と下方ナット50の一回転当たりの高さの変化の程度が倍半分異なる。第一高さ調整機構であるパイプ21を回転させた際には、上方螺子棒22及び下方螺子棒23が同期して伸縮するためである。以下で詳説するが、第一高さ調整機構21は、例えば建物の新築施工時において支持プレート40の高さ調整をはじめに粗く行う際に適用される。一方、第二高さ調整機構50は、例えば建物のメンテナンス時において、狭い床下空間にて支持プレート40の高さの微調整を下向き作業にて行う際に適用される。
【0035】
下方螺子棒23には、下方袋ロックナット60が螺合している。下方袋ロックナット60は、袋部材61と、袋部材61に連続する六角ナット63とを有する。袋部材61は、下方ナット50を収容する中空62を備えている。また、六角ナット63は、下方螺子棒23に螺合する中空螺子64を備えている。
【0036】
下方ナット50を回転させて支持プレート40の高さを調整した後、下方袋ロックナット60を下方ナット50側に締め付けることにより、袋部材61の中空62が下方ナット50を収容してロックし、下方ナット50と下方螺子棒23の螺合姿勢を保持することができる。従って、第二高さ調整機構である下方ナット50を回転させて支持プレート40の高さ調整を行う際には、下方袋ロックナット60を締付け方向と反対方向に回転させてロック解除を行い、下方袋ロックナット60を下方螺子棒23に沿って上方に退避させる。さらに、下方保持ナット32を緩めて下方に退避させた後に、下方ナット50を回転させることにより、下方螺子棒23が回転してパイプ21を上下移動させて高さ調整を行う。
【0037】
支持プレート40は、平面視矩形のフラットプレート41と、フラットプレート41の対向する一組の端辺から上方に傾斜するテーパー片42と、中央開口45(開口の一例)とを有する。また、中央開口45の周囲にはフラットプレート41を湾曲状に変形(膨出)させてなる環状リブ43が形成され、環状リブ43から径方向には、同様にフラットプレート41を湾曲状に変形(膨出)させてなる複数の放射リブ44が形成され、環状リブ43と放射リブ44により支持プレート40が補剛されている。フラットプレート41の側方にある一対のテーパー片42により、フラットプレート41上に載置される大引や床パネルといった床材の位置決めを図ることができる。
【0038】
支持プレート40の中央開口45には、上方ナット70が支持プレート40に対して空転自在に遊嵌している。上方ナット70は、
図1にて外形が明りょうに示されている六角ナット71と、六角ナット71と連続するかしめ保持部73とを有し、六角ナット71の内部には中空螺子72が設けられている。かしめ保持部53と同様、かしめ保持部73も、支持プレート40の中央開口45に上方ナット70を形成する六角ナットを位置決めし、六角ナットの下方をかしめることにより形成される。六角ナットにおいてかしめられた箇所は、中央開口45を挟むように膨出し、
図2に示すように一対の環状フランジを成すかしめ保持部73が形成される。かしめ保持部73が形成されることにより、支持プレート40の中央開口45に遊嵌するかしめ保持部73と、かしめ保持部73に連続する六角ナット71とを有する上方ナット70が、支持プレート40に対して空転自在に保持される。
【0039】
図2に示すように、六角ナット71の中空螺子72に上方螺子棒22が螺合しながら貫通している。
図2は、六角ナット71を上方袋ロックナット80でロックした状態を示しているが、この上方袋ロックナット80によるロックを
図1に示すように解除した後、プラグソケットレンチ等の工具(図示せず)で上方からX3方向に回転させることにより、上方螺子棒22に対して上方ナット70を上下にY4方向に移動させることができる。この上方ナット70の上下方向への移動により、上方ナット70に対して空転自在に保持されている支持プレート40も同期して上下方向へ移動され、支持プレート40の高さが調整される。
【0040】
このように、上方ナット70は、支持プレート40と支柱20の上方螺子棒22を繋ぐ部材であると同時に、上方螺子棒22に対して上方ナット70自身を上下移動させることにより支持プレート40の高さを調整する高さ調整機構(第三高さ調整機構)でもある。
【0041】
ここで、
図2に示す第一高さ調整機構であるパイプ21を回転させた際の支持プレート40の高さ調整と、第三高さ調整機構である上方ナット70を回転させた際の支持プレート40の高さ調整とでは、パイプ21と上方ナット70の一回転当たりの高さの変化の程度が倍半分異なる。以下で詳説するが、第一高さ調整機構は、例えば建物の新築施工時において支持プレート40の高さ調整をはじめに粗く行う際に適用される。一方、第三高さ調整機構は、同様に建物の新築施工時において、第一高さ調整機構にて調整された支持プレート40の高さの微調整を行う際に適用される。
【0042】
上方螺子棒22には、
図2に示すように上方袋ロックナット80が螺合している。上方袋ロックナット80は、袋部材81と、袋部材81に連続する六角ナット83とを有する。袋部材81は、上方ナット70を収容する中空82を備えている。また、六角ナット83は、上方螺子棒22に螺合する中空螺子84を備えている。上方ナット70を回転させて支持プレート40の高さを調整した後、上方袋ロックナット80を締め付けることにより、袋部材81の中空82が上方ナット70を収容してロックし、上方ナット70と上方螺子棒22の螺合姿勢を保持することができる。
【0043】
[床束材の使用例]
次に、
図4乃至
図7を参照して、実施形態に係る床束材を使用して床材を所定の高さレベルにて敷設する方法を説明する。ここで、
図4乃至
図6はその順に、建物の新築施工時において床束材の高さを調整する工程図である。一方、
図7は、建物のメンテナンス時における、床束材の高さを調整する施工図である。
【0044】
図4に示すように、建物の新築施工時には、土間コンクリートや基礎スラブ等の基盤Kの所定位置に対して、例えば長さが予め粗く調整されている複数の床束材100の各ベース10を載置し、コンクリートピンP等を介して基盤Kに固定する。尚、「粗く設定」とは、精緻に設計高さに設定されていないことを意味しており、およそ設計高さに設定されていること等を意味する。従って、粗く設定した場合でも結果的に設計高さに設定されることもあり得る。床束材100の長さの粗い調整は、基盤Kに固定された後に行ってもよい。
【0045】
床束材100の長さの粗い調整の際は、上方保持ナット31と下方保持ナット32をパイプ21からそれぞれ上下に退避させておき、第一高さ調整機構であるパイプ21の四面角付け21aにレンチ等の工具(図示せず)を嵌め込み、反時計周りであるX1方向、もしくは時計周りであるX2方向のいずれか一方に回転させる。このパイプ21の回転により、上方螺子棒22と下方螺子棒23が同期して伸縮する(Y1方向への伸長、Y2方向への短縮)。支柱20の長さを粗く調整することにより、床束材100の高さがおよそ設計高さに調整される。パイプ21を一回転させた際に、上方螺子棒22と下方螺子棒23が同期して伸縮することから、床束材100の長さを効率的に粗く調整する際に第一高さ調整機構を適用するのがよい。
図4に示すように、床束材100の長さが粗く調整された状態において、基盤Kからの支持プレート40(のフラットプレート41)の高さはt1である。尚、第一高さ調整機構による高さの調整のみで、支持プレート40の高さt1が設計高さに調整されている場合は、以後の高さの微調整は不要となる。
【0046】
床束材100の高さが粗く調整されたら、
図5に示すように、上下に退避させていた上方保持ナット31と下方保持ナット32をパイプ21側にY3方向に締付け、パイプ21に対する上方螺子棒22と下方螺子棒23の位置決め固定を図る。尚、下方ナット50に対して下方袋ロックナット60が締付けられており、下方ナット50と下方螺子棒23の姿勢保持が図られている。
【0047】
支柱20の長さを固定した後、第三高さ調整機構である上方ナット70の六角ナット71を上方からプラグソケットレンチ等の工具(図示せず)にてX3方向に回転させることにより、上方螺子棒22に対して上方ナット70を上下にY4方向に移動させる。この上方ナット70の上下方向への移動により、上方ナット70に対して空転自在に保持されている支持プレート40も同期して上下方向へ移動され、支持プレート40の高さの微調整を図る。
図5に示すように、床束材100の高さの微調整が行われた状態において、基盤Kからの支持プレート40(のフラットプレート41)の高さ(設計高さ)はt2である。
【0048】
床束材100の高さが設計高さに設定されたら、
図6に示すように、上方袋ロックナット80の六角ナット83をプラグソケットレンチ等の工具(図示せず)を使用して回転させて締め付けることにより、上方ナット70を上方袋ロックナット80にて収容してロックし、上方ナット70と上方螺子棒22の螺合姿勢を保持する。次に、支持プレート40のフラットプレート41に対して床材の一例である大引Bを載置する。大引Bには、フラットプレート41から上方に突出する上方螺子棒22の上端や上方袋ロックナット80と干渉しないように、貫通孔B1が開設されている。図示例は、敷設された大引Bの上に床パネルFが敷設されることにより、床束材100による所定レベルでの床材の支持が図られる。尚、図示例のように一本の大引Bを支持プレート40の上に載置する形態の他に、図示する大引Bよりも幅狭の二本の大引を上方袋ロックナット80と干渉しないように支持プレート40の上に載置する形態であってもよい。また、床材は、貫通孔を備えた床パネルのみであってもよいし、大引の上に根太が相互に直交する態様で配設され、根太の上に床パネルが敷設される形態であってもよい。
【0049】
このように、建物の新築施工時においては、第一高さ調整機構であるパイプ21を回転させて床束材100の高さを効率的に粗く調整した後、第三高さ調整機構である上方ナット70を回転させて床束材100の高さを微調整することにより、効率的でかつ高精度に床束材100の高さの調整を行うことができる。
【0050】
一方、
図7に示すように、建物のメンテナンス時において床束材100の高さを調整する際には、高さt3が例えば40cm乃至60cm程度の狭い床下空間UF内に作業員が入り込み、床束材100の高さを調整する必要があり、作業スペースの広い新築施工時とは状況が異なる。また、建物のメンテナンス時においては、床束材100には建物荷重が載荷されている。
【0051】
そこで、建物のメンテナンス時においては、第一高さ調整機構21と第三高さ調整機構70の調整は行わず、第二高さ調整機構50の調整のみにより床束材100の高さ調整を行い、床材である大引Bや床パネルFの高さのメンテナンスを行うのが好ましい。
【0052】
メンテナンス時に第一高さ調整機構21による床束材100の高さ調整を行わない理由は、メンテナンス時は一般に高さの微調整でよいことから、第一高さ調整機構21による一度に大きな支柱20の伸縮の必要性はなく、第一高さ調整機構21が高さの微調整に不向きであることに依拠する。また、狭い床下空間UFにおいて、上方保持ナット31を回転させ、退避させた後にパイプ21を回転させる際に、上方保持ナット31を回転させる作業が狭い床下空間UFにおいて作業性の悪い上向き作業となるためである。
【0053】
そこで、下方ナット50を回転させて床束材100の高さ調整を行うに当たり、まず、下方袋ロックナット60を回転させて上方のX6方向に退避させ、下方保持ナット32を緩めて下方のY3'方向に退避させる。次に、下方ナット50の六角ナット51を六角レンチ等の工具(図示せず)にてX4方向に回転させることにより、下方ナット50に一体に固定されている下方螺子棒23が同期してX4方向に回転し、下方螺子棒23に螺合しているブッシュナット34がパイプ21を上下方向であるY7方向に移動させることにより、床束材100の高さの微調整(メンテナンス)が行われる。メンテナンス終了後は、下方保持ナット32をパイプ21の下端に締付け、下方袋ロックナット60を締付けて下方ナット50をロックする。
【0054】
このように、建物のメンテナンス時においては、第二高さ調整機構である下方ナット50を回転させて床束材100の高さを微調整することにより、狭い床下空間UFにおいても、効率的でかつ上向き作業をすることなく床束材100の高さの調整を行うことができる。
【0055】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0056】
10:ベース、11:フラットプレート、12:環状リブ、13:放射リブ、14:中央開口、15:ピン孔、20:支柱、21:パイプ(第一高さ調整機構)、21a:四面角付け、22:上方螺子棒、23:下方螺子棒(第二高さ調整機構)、31:上方保持ナット、32:下方保持ナット、33,34:ブッシュナット、33a、34a:中空螺子、40:支持プレート、41:フラットプレート、42:テーパー片、43:環状リブ、44:放射リブ、45:中央開口(開口)、50:下方ナット(第二高さ調整機構)、51:六角ナット、52:かしめ保持部、60:下方袋ロックナット、61:袋部材、62:中空、63:六角ナット、64:中空螺子、70:上方ナット(第三高さ調整機構)、71:六角ナット、72:中空螺子、73:かしめ保持部、80:上方袋ロックナット、81:袋部材、82:中空、83:六角ナット、84:中空螺子、100:床束材、K:基盤、P:コンクリートピン、B:大引、F:床パネル、UF:床下空間