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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】検眼装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/028 20060101AFI20221021BHJP
【FI】
A61B3/028
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018180379
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020048788
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳 英一
【審査官】鷲崎 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-089078(JP,A)
【文献】特開2006-187430(JP,A)
【文献】特開2004-229769(JP,A)
【文献】特開平05-168595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学素子を被検眼の眼前に選択的に配置することで前記被検眼の視機能を矯正可能とする検眼ユニットを備えた検眼装置において、
前記検眼ユニットは、前記被検眼の角膜からの光束を前方に反射し、装置基準位置に対する前記被検眼の位置を前記被検眼に対向する方向から観察可能に構成されると共に、前記光束を偏向する光束偏向部材が着脱可能に取り付けられ、
前記検眼ユニットに前記光束偏向部材を取り付けたとき、前記装置基準位置に対する前記被検眼の位置を、前記被検眼に対向する方向以外の方向から観察可能とする
ことを特徴とする検眼装置。
【請求項2】
前記光束偏向部材は、前記光束の偏向方向を変更可能に前記検眼ユニットに取り付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載された検眼装置。
【請求項3】
前記光束偏向部材は、前記光束を複数回偏向して被検者の背後に向けて反射する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された検眼装置。
【請求項4】
前記被検眼と前記装置基準位置との位置は、前記被検眼の角膜頂点と前記装置基準位置との前後方向の位置である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された検眼装置。
【請求項5】
前記被検眼と前記装置基準位置との位置は、前記被検眼の角膜頂点と前記装置基準位置との対向方向に直交する平面内の位置である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された検眼装置。
【請求項6】
前記光束偏向部材は、特定波長の光を反射し、その他の波長の光を透過する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載された検眼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検眼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被検者に視標を呈示し、その見え方に関する被検者からの応答に基づいて被検眼の視機能を検査する自覚式検査を行う際、複数の光学素子を被検眼の眼前に選択的に配置することで被検眼の視機能を矯正可能な検眼装置が知られている。ここで、検眼装置は、視標呈示装置と被検眼との間に配置されるが、一般的に被検眼と検眼装置の位置関係の調整は検眼装置の前方、すなわち被検眼と対向する方向から観察して行われる。しかし、省スペースタイプの検眼装置のように、検眼装置が視標呈示装置に近接している場合、例えば、被検眼の角膜頂点からレンズ装用基準位置までの距離(以下「角膜頂点位置」という)を被検者の正面から観察することが困難になる。そこで、正面以外の方向から角膜頂点位置を観察するため、角膜頂点位置を確認する角膜視準系に導光部を設け、被検者の側方からの観察を可能にする検眼装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、角膜視準系にカメラを取り付け、カメラで撮影した画像データをモニタに表示することで角膜頂点位置を観察可能にした検眼装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-089078号公報
【文献】特開2006-187430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の検眼装置は、視標呈示装置に取り付けられて一体となっている。しかしながら、検眼装置と視標呈示装置とは別体であることが一般的である。この場合、視標呈示装置のタイプや設定に応じて検眼装置との距離が異なるため、必ずしも近接させる必要はない。
【0005】
すなわち、検眼装置と視標呈示装置とが別体の場合において、特許文献1に記載の検眼装置のように被検者の側方から角膜頂点位置を観察する構造にしてしまうと、検眼装置と視標呈示装置とを離間させて配置する場合であっても、被検者の正面から角膜頂点位置を観察できず不便になる。しかしながら、被検者の正面からでしか角膜頂点位置を観察することができない構造であると、検眼装置と視標呈示装置とを近接配置した場合に角膜頂点位置を観察することができず、精度の高い検眼ができない。
【0006】
さらに、特許文献2に記載の検眼装置のように、カメラで撮影した画像データをモニタに表示する場合では、カメラとモニタ及びこれらを制御するためのソフトウェアが必要になる。そのため、構造が複雑化する上、現在使用している検眼装置をそのまま流用することができない。
【0007】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、検眼装置によらず、検眼中の被検眼を被検者に対する任意の方向から観察することができる検眼装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の検眼装置は、複数の光学素子を被検眼の眼前に選択的に配置することで被検眼の視機能を矯正可能とする検眼ユニットを備えている。
検眼ユニットは、被検眼の角膜からの光束を前方に反射し、装置基準位置に対する被検眼の位置を被検眼に対向する方向から観察可能に構成されると共に、この被検眼の角膜からの光束を偏向する光束偏向部材が着脱可能に取り付けられている。そして、検眼ユニットに光束偏向部材を取り付けたとき、装置基準位置に対する被検眼の位置を、被検眼に対向する方向以外の方向から観察可能とする。
【発明の効果】
【0009】
このように構成された検眼装置では、検眼ユニットにおいて、被検眼の角膜からの光束をこの検眼ユニットの前方に反射する。ここで、検眼ユニットに光束偏向部材を取り付けた場合、光束偏向部材によって角膜からの光束が偏向される。そのため、この光束偏向部材を介して被検眼を観察することで、被検者の側方等の被検眼に対向する方向以外の方向から被検眼を観察することができる。一方、光束偏向部材を検眼ユニットから取り外した場合には、従来通り、被検者の正面から被検眼を観察できる。よって、測定者は、被検眼の検眼ユニットに対する位置を被検者に対する任意の方向から確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】実施例1の検眼装置の全体構成を示す斜視図である。
図1B図1Aの要部を拡大して示す斜視図である。
図2】実施例1の検眼装置の検眼ユニット及び偏向ユニットを示す断面図である。
図3】角膜位置確認機構における縦線目盛と三角目盛と被検眼とを説明する説明図である。
図4】実施例1の検眼装置において、偏向ユニットを取り外したときの検眼ユニットを示す断面図である。
図5】実施例1の検眼装置において、第1観察窓に対して第2ユニット窓が臨む方向を変更して取り付けた説明図であり、(a)は第1観察窓に対して水平方向に臨む状態を示し、(b)は第1観察窓に対して斜め上方に臨む状態を示す。
図6】実施例1の検眼装置において、左右の被検眼に対応する偏向ユニットの第2ユニット窓が臨む方向を被検者の一方の側方に向けて設定した状態を示す説明図である。
図7】実施例1の検眼装置において、偏向部材の反射角度を変更したときの説明図であり、(a)は斜め背後に反射させた状態を示し、(b)は斜め前方に反射させた状態を示す。
図8】実施例1の検眼装置の第1変形例を示す断面図である。
図9】実施例1の検眼装置の第2変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の検眼装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0012】
(実施例1)
実施例1の検眼装置10の構成を、図1A図3に基づいて説明する。
【0013】
図1Aに示す検眼装置10は、被検者1に各種の視標を呈示し、呈示された視標を視認した被検者1の応答を得て行う自覚検査を実行する際、屈折力の異なる複数の光学素子22を被検眼2(図2参照)の眼前に選択的に配置することで、被検眼2の視機能の矯正を可能とするものである。
【0014】
実施例1の検眼装置10は、図1Aに示すように、検眼ユニット20と、偏向ユニット30と、コントロールユニット40と、を備えている。
【0015】
検眼ユニット20は、被検者1の左右方向に並んで一対配置され、図示しない視標呈示装置と被検者1との間に配置された検眼テーブル11から起立する支柱12に、アーム13を介して吊り下げ支持されている。
【0016】
アーム13は、コントロールユニット40から入力される駆動指令に基づいて駆動する駆動部13aを有している。アーム13は、この駆動部13aによって、支柱12を中心に回動すると共に、支柱12に沿って上下方向に移動する。なお、アーム13を回動又は上下動させるための駆動部13aは、モータやソレノイド等を用いた駆動源を有する。駆動部13aの機構としては、周知の構成が用いられる。さらに、アーム13の回動や上下動は、手動によって行うようにしてもよい。
【0017】
検眼ユニット20は、図2に示すように、中空のハウジング21と、複数の光学素子22と、角膜位置確認機構23と、を有している。なお、図2には、一方(被検者1から見て左側)の検眼ユニット20を示す。
【0018】
ハウジング21は、図示しない視標呈示装置に臨む第1側面21aに、この第1側面21aを貫通する第1検眼窓24a及び第1観察窓25aが設けられている。第1検眼窓24aは、図1Aに示すような円形の開口であり、被検眼2は、第1検眼窓24aを介して検眼ユニット20の前方に呈示される視標を視認する。また、第1観察窓25aは、図1Bに示すような円形の開口であり、測定者(不図示)が被検者1の正面から被検眼2の角膜頂点2aの位置を確認するための窓部である。ここで、第1検眼窓24aと第1観察窓25aは、互いの光軸高さが一致する位置に設けられ、水平方向に並んでいる。なお、第1検眼窓24a及び第1観察窓25aには、それぞれ透明なカバーが嵌め込まれている。
【0019】
また、ハウジング21は、被検者1に臨む第2側面21bに、この第2側面21bを貫通する第2検眼窓24bと、被検眼2の側方に突出した突出面21cが形成されている。突出面21cには、この突出面21cを貫通する第2観察窓25bが設けられている。第2検眼窓24bは、被検者1が視標を視認するための窓部であり、この第2検眼窓24bは、第1検眼窓24aに正対する位置に設けられている。すなわち、被検者1は、第2検眼窓24b及び第1検眼窓24aを介して視標呈示装置を視認することになる。また、第2観察窓25bに隣接する位置には、被検眼2を照明するための光源25cが設けられている。光源25cは、LED(Light Emitting Diode)等が用いられる。なお、第2検眼窓24b及び第2観察窓25bには、透明なカバーが嵌め込まれている。
【0020】
複数の光学素子22は、球面レンズ、円柱レンズ、プリズム等であり、ハウジング21に収納されている。この複数の光学素子22は、ハウジング21内に回転可能に設けられた円盤状のレンズディスク22aに取り付けられ、レンズディスク22aの周方向に沿って並んでいる。そして、複数の光学素子22は、レンズディスク22aが駆動部22bによって回転することで、周方向に並んだうちの一つが第1、第2検眼窓24a、24bの間に位置する。これにより、検眼ユニット20では、複数の光学素子22が被検眼2の眼前に選択的に配置され、被検眼2の視機能を矯正可能とする。なお、レンズディスク22aを回転させる駆動部22bは、モータやソレノイド等を用いた駆動源を有し、この駆動源は、コントロールユニット40を介して入力したプリズム度数や球面度数等を設定するための設定指令に基づいて駆動する。また、駆動部22bの機構としては、周知の構成が用いられる。
【0021】
角膜位置確認機構23は、被検眼2の角膜頂点2aから検眼ユニット20の基準位置(装置基準位置)までの距離(以下「角膜頂点位置」という)を確認するために用いる機構であり、ハウジング21に収納されている。この角膜位置確認機構23は、第1スケール23aと、反射ミラー23b(光学部材)と、第2スケール23cと、を有し、角膜頂点位置を被検眼2に対向する方向から観察可能に構成されている。ここで、「角膜頂点位置」は、装置基準位置に対する被検眼2の位置であり、被検眼2の角膜頂点2aと装置基準位置との前後方向の位置を意味する。なお、「装置基準位置」は任意に設定することができる。
【0022】
第1スケール23aは、位置合わせ用の基準線を含む複数の縦線目盛26a~26c(図3参照)が描画された透明な板材である。なお、縦線目盛26a~26cは、順に眼鏡処方時の頂点間距離VD=12mm、13.75mm、16mmに対応している。また、基準線となる縦線目盛26bは破線で示されている。この第1スケール23aは、角膜視準系の光軸B上に配置されている。
【0023】
反射ミラー23bは、角膜視準系の光軸B上にあって、光軸Bをハウジング21の第2側面21bに向けて偏向する。つまり、検眼ユニット20では、この反射ミラー23bによって、被検眼2の角膜からの光束を検眼ユニット20の前方に反射する。
【0024】
第2スケール23cは、先端27aが上下方向に対向した一対の三角目盛27、27(図3参照)が描画された透明な板材である。この第2スケール23cは、反射ミラー23bによって偏向された光軸B上に配置される。
【0025】
偏向ユニット30(光束偏向部材)は、第1観察窓25aを透過した後の光軸B(角膜からの光束)を任意の方向に反射して偏向するものであり、検眼ユニット20のハウジング21に着脱可能に取り付けられる。この偏向ユニット30は、立方体形状の中空筐体であるユニットケース31と、第1ユニット窓32と、偏向部材33と、第2ユニット窓34と、取付手段35と、を有している。
【0026】
第1ユニット窓32は、ユニットケース31に設けられた円形の開口(図1B参照)であり、ユニットケース31の側面の一つを貫通している。この第1ユニット窓32は、第1観察窓25aに対向して取り付けられている。なお、第1ユニット窓32には、透明なカバーが嵌め込まれている。
【0027】
偏向部材33は、ユニットケース31に収納された鏡である。この偏向部材33は、第1ユニット窓32を介して光軸B上に配置され、反射により光軸Bを任意の方向に偏向する。また、偏向部材33は、ユニットケース31内に設けられたあおり機構36によって保持されている。あおり機構36は、偏向部材33を反射面33aによる反射角度を変更可能に保持する保持部36aと、保持部36aに角度指令を出力する角度制御部36bと、を有する。ここで、角度制御部36bは、コントロールユニット40から入力された指示に基づいて保持部36aに対して角度指令を出力する。
【0028】
第2ユニット窓34は、ユニットケース31に設けられた円形の開口(図1B参照)であり、ユニットケース31の側面のうち、第1ユニット窓32が設けられた側面に直交する側面を貫通している。この第2ユニット窓34は、偏向部材33により偏向した光軸B上に配置されて観察光を透過させる。なお、第2ユニット窓34には、透明なカバーが嵌め込まれている。
【0029】
取付手段35は、ハウジング21とユニットケース31の間に設けられ、第1ユニット窓32を第1観察窓25aに対向させた状態で、ユニットケース31をハウジング21に着脱可能に取り付けるものである。ここでは、ハウジング21に設けられた磁性体部材35aと、ユニットケース31に設けられたマグネット板35bと、を有している。
【0030】
ここで、ハウジング21が磁性体によって形成されている場合には、磁性体部材35aは省略可能であるが、樹脂等の被磁性体によって形成されている場合は、接着剤等を用いて磁性体部材35aを取り付ける。また、磁性体部材35aは、第1観察窓25aの周囲を取り囲むリング形状を呈している。これにより、取付手段35は、第2ユニット窓34が臨む方向を変更可能にハウジング21に対してユニットケース31を取り付け可能とする。
【0031】
コントロールユニット40は、測定者(不図示)による操作を受け付け、この操作に応じた指令(制御信号)を駆動部13aや、駆動部22b、あおり機構36の角度制御部36bへ適宜出力することで、検眼装置10を操作する。ここで、コントロールユニット40と駆動部13a、駆動部22b、角度制御部36bとは、それぞれ一般的な通信インターフェースによって、通信可能に接続されている。コントロールユニット40は、この通信インターフェースを介して各種の指令を出力する。なお、一般的な通信インターフェースは、有線であってもよいし、無線LAN、ブルートゥース(登録商標)等の無線であってもよい。
【0032】
コントロールユニット40は、検眼装置10の全体の動作を統括的に制御するメイン制御部41と、測定者によって操作される操作部42と、メイン制御部41から出力された各種の情報を表示するモニタ43と、を備えている(図1A参照)。ここで、コントロールユニット40は、操作部42やモニタ43を備えたノート型パーソナルコンピュータによって構成され、検眼テーブル11に載置される。なお、コントロールユニット40は、ノート型パーソナルコンピュータに限定されるものではなく、タブレット型端末、スマートフォン等の携帯端末(情報処理装置)で構成することもできるし、検眼専用のコントローラであってもよい。
【0033】
操作部42は、例えばキーボードやマウス、各種のスイッチやボタン、ダイアル、トラックボール等を有する操作パネル等から構成される。測定者によって操作部42が操作されことで、アーム13の回転角度や高さの設定指令、検眼ユニット20におけるプリズム度数、球面度数、円柱度数、軸角度、瞳孔間距離、加入度等の設定指令、偏向ユニット30における偏向部材33の角度指令等が、メイン制御部41に入力される。
【0034】
モニタ43は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の電子表示デバイス等により構成され、測定者から視認可能となっている。このモニタ43には、検眼パラメータや、検査情報、検査結果等の情報が表示される。
【0035】
メイン制御部41は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶部と、を有して構成される。このメイン制御部41には、操作部42を介して各種の指令が入力される。そして、このメイン制御部41は、操作部42を介して入力された各種の指令に基づいて、検眼装置10の各部の動作を統括的に制御する。
【0036】
すなわち、メイン制御部41は、アーム13を駆動する駆動部13aに駆動指令を出力し、アーム13の位置を制御する。これにより、被検者1に対する検眼ユニット20の位置が調節される。また、メイン制御部41は、検眼ユニット20のレンズディスク22aを回転制御する駆動部22bに設定指令を出力し、レンズディスク22aの回転角度を制御する。これにより、第1、第2検眼窓24a、24bの間に配置される光学素子22が切り替えられ、レンズ度数等が変更される。
【0037】
さらに、メイン制御部41では、操作部42を介して指示された偏向部材33の角度指令に基づいて角度制御部36bに角度指令を出力する。これにより、保持部36aは、角度制御部36bからの指令に基づいて角膜視準系の光軸Bに対する偏向部材33の反射面33aの反射角度を制御する。
【0038】
以下、実施例1の検眼装置10の作用効果を説明する。
【0039】
実施例1の検眼装置10において、角膜位置確認機構23を使用して角膜頂点位置を調節するには、測定者は、第1観察窓25aから角膜視準系を観察する。角膜視準系内には、第1観察窓25a越しに第2スケール23cの三角目盛27と、第1スケール23aの基準線となる縦線目盛26b、被検眼2の角膜頂点2aが観察される。ここで、測定者は第2スケール23cの三角目盛27との先端27aと、第1スケール23aの基準線となる縦線目盛26bとが重なって見える位置へ測定者眼3を移動する。この状態のとき、測定者眼3の視線は角膜視準系の光軸Bと一致する。そして、検眼ユニット20に設けられた額当て28の位置を変更して被検者1の顔を前後させ、被検眼2の角膜頂点2aを第1スケール23aのいずれかの縦線目盛26a~26cに合わせることで、角膜頂点位置を眼鏡の処方状態に一致させることができる。例えば、角膜頂点2aを縦線目盛26aに合わせると、眼鏡処方として頂点間距離VDは12mmの状態に一致する。
【0040】
すなわち、角膜頂点位置を確認する際、測定者は第1観察窓25aから被検眼2を視認する必要がある。
【0041】
これに対し、図示しない視標呈示装置と検眼ユニット20が近接して配置され、測定者が検眼ユニット20の正面から観察が困難である場合には、図2に示すように、検眼ユニット20のハウジング21に偏向ユニット30を取り付ける。このとき、磁性体部材35aとマグネット板35bを介して、第1観察窓25aと第1ユニット窓32とが対向した状態で、ハウジング21に対して偏向ユニット30が取り付けられる。
【0042】
ハウジング21に偏向ユニット30を取り付けると、第1観察窓25aを透過した角膜視準系の光軸Bは、第1観察窓25aに対向した第1ユニット窓32からユニットケース31内に入射する。ユニットケース31内には偏向部材33が設けられており、光軸Bは、この偏向部材33に反射し、略反射方向に配置された第2ユニット窓34より射出する。
【0043】
このように、第1観察窓25aから被検者1の正面側に射出した角膜視準系の光軸Bは、被検者1の正面方向に対して略直交する方向へと偏向される。これにより、測定者が偏向ユニット30の第2ユニット窓34を覗くことで、偏向ユニット30による光軸Bの偏向方向から被検者1の角膜頂点位置を観察でき、視標呈示装置と検眼ユニット20が近接して配置された場合であっても、検眼ユニット20の正面以外の方向から角膜頂点位置の確認をすることができる。
【0044】
一方、図示しない視標呈示装置と検眼ユニット20との距離が十分に確保でき、測定者が視標呈示装置と検眼ユニット20の間に入り込める場合には、図4に示すように、検眼ユニット20のハウジング21から偏向ユニット30を取り外すことができる。これにより、偏向ユニット30が取り外され、第1観察窓25aが露出する。
【0045】
これにより、測定者が第1観察窓25aを直接覗くことで、従来通り、測定者は、被検者1の正面側から被検眼2の角膜頂点位置を確認することができる。
【0046】
このように、偏向ユニット30を必要に応じて着脱することで、測定者は角膜頂点位置の確認を、従来の通り被検者1の正面側からもしくは、これ以外の方向から行うことができる。また、偏向ユニット30は、検眼ユニット20のハウジング21に対して後付することができる。そのため、検眼ユニット20の構造変更を不要とし、現在使用している検眼ユニット20をそのまま流用することができる。
【0047】
また、偏向ユニット30をハウジング21に着脱可能に取り付ける取付手段35は、第1観察窓25aの周囲を取り囲むリング形状の磁性体部材35aと、第1ユニット窓32の周囲を取り囲むリング形状のマグネット板35bと、を有している。そのため、第1観察窓25aの中心と第1ユニット窓32の中心を一致させたまま、偏向ユニット30を角膜視準系の光軸Bに対して回転させることができる。
【0048】
そして、偏向ユニット30を回転させることで、角膜頂点位置の観察方向を変更することができる。つまり、偏向ユニット30は、光軸Bの偏向方向を変更可能に検眼ユニット20に取り付けられる。これにより、図5(a)に示すように、第2ユニット窓34を水平方向に向けた場合には、第1観察窓25aに対して水平となる方向から角膜頂点位置を観察することができる。また、図5(b)に示すように、第2ユニット窓34を第1観察窓25aの斜め上方に向けた場合には、第1観察窓25aよりも上方から角膜頂点位置を観察することができる。すなわち、第1観察窓25aよりも高い位置からの観察が可能になり、被検者1が座位であって、測定者が立位のときであっても、測定者は無理のない姿勢で角膜頂点位置の確認をすることができる。
【0049】
さらに、図6に示すように、左被検眼2Aの眼前の検眼ユニット20Aに取り付けられた偏向ユニット30Aの第2ユニット窓34が臨む方向と、右被検眼2Bの眼前の検眼ユニット20Bに取り付けられた偏向ユニット30Bの第2ユニット窓34が臨む方向とを、被検者1の一方の側方(図6では左側)に向けて設定する。この場合では、測定者は、被検者1の一方の側方から左被検眼2Aの角膜頂点位置と、右被検眼2Bの角膜頂点位置をそれぞれ同じ方向から確認することができる。そのため、測定者が被検者1の左右の側方にそれぞれ回り込んで観察する必要がなく、確認を容易に行うことができる。
【0050】
また、偏向ユニット30の偏向部材33は、あおり機構36によって保持されている。そのため、このあおり機構36を介して偏向部材33の反射面33aによる反射角度を変更することで、偏向ユニット30が光軸Bの偏向方向を変更可能に検眼ユニット20に取り付けられることになり、第2ユニット窓34を透過する角膜視準系の光軸Bの反射方向を偏向ユニット30の真横以外の方向に変更することができる。
【0051】
つまり、図7(a)に示すように、ユニットケース31への角膜視準系の光軸Bの入射方向と、偏向部材33による光軸Bの反射方向とがなす角度θが90°未満になるように反射角度を変更したときには、偏向ユニット30の斜め後方から観察することができる。また、図7(b)に示すように、ユニットケース31への光軸Bの入射方向と、偏向部材33による光軸Bの反射方向とがなす角度θが90°より大きくなるように反射角度を変更したときには、偏向ユニット30の斜め前方から観察することができる。
【0052】
これにより、角膜頂点位置の観察方向の設定自由度が増し、さらに適切な角度からの観察を可能とすることができる。また、被検者1が気にならない位置から頂点間距離VDを観察することも可能となる。
【0053】
以上、本発明の検眼装置を実施例1に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0054】
実施例1では、偏向ユニット30が有する偏向部材33は一つだけであり、偏向ユニット30のユニットケース31に入射した角膜視準系の光軸Bを一回だけ反射する例を示した。しかしながら、これに限らない。例えば、図8に示す偏向ユニット50のように、ユニットケース51内に二つの偏向部材(第1偏向部材53a、第2偏向部材53b)を設けてもよい。
【0055】
この場合、ユニットケース51に形成された第1ユニット窓52から入射した角膜視準系の光軸Bは、第1偏向部材53aに反射して被検者1の側方へ向かう。さらに、この光軸Bは、第2偏向部材53bに反射して被検者1の背後に向かう。ここで、第2ユニット窓54は、ユニットケース51の側面のうち、第1ユニット窓52が設けられた側面と同一の側面に設けられている。そのため、この第2ユニット窓54は、第1ユニット窓52を介して入射した角膜視準系の光軸Bを、入射方向に対して平行にオフセットした方向に透過することができる。なお、取付手段35については、実施例1の偏向ユニット30と同一の構成とする。
【0056】
このように、二つの偏向部材(第1偏向部材53a、第2偏向部材53b)を用いることで角膜視準系の光軸Bを複数回偏向して被検者1の背後に向けて反射することができる。そして、被検者1の背後に向けて角膜視準系の光軸Bを反射することで、測定者は、被検者1の背後から角膜頂点位置を観察することが可能になる。よって、測定者は、左右の被検眼における角膜頂点位置を観察する際、被検者1の周りを大きく回り込む必要がなくなり、角膜頂点位置の確認を容易化することができる。なお、この場合、偏向部材の数は二つに限らず、三つ以上を用いてもよい。
【0057】
また、実施例1では、角膜頂点位置を観察するための第1観察窓25aに第1ユニット窓32を対向させて、偏向ユニット30をハウジング21に取り付ける例を示した。しかしながら、これに限らない。図9に示すように、被検者1が視標を視認するための第1検眼窓24aに第1ユニット窓32を対向させた状態で偏向ユニット30をハウジング21に取り付けてもよい。この場合では、被検者1の側方から、第1、第2検眼窓24a、24bに対する被検眼2の位置を確認することができる。これにより、視標呈示装置と検眼ユニット20との距離が少ない場合であっても、左右の被検眼2の双方が第1、第2検眼窓24a、24bの中央に一致するように、一対の検眼ユニット20の距離を調節することができる。また、この場合には、角膜位置確認機構23を備えていない検眼ユニット20であっても、偏向ユニット30を適用することができる。
【0058】
また、このとき、偏向部材33を特定波長の光を反射し、その他の波長の光を透過するハーフミラーや、ダイクロイックミラーによって構成し、ユニットケース31には、偏向部材33の反射方向に位置する第2ユニット窓34と、偏向部材33の透過方向に位置する第3ユニット窓37を設けてもよい。この場合には、被検者1は、偏向部材33を介して視標呈示装置によって呈示された視標を視認することができる。被検者1が視標を視認している状態で、第1、第2検眼窓24a、24bに対する被検眼2の位置を確認することができる。つまり、被検者1に視標を視認させた状態で測定者による第1、第2検眼窓24a、24bに対する被検眼2の位置の確認を行うことができる。なお、第1、第2検眼窓24a、24bに対する被検眼2の位置は、装置基準位置に対する被検眼2の位置であり、被検眼2の角膜頂点2aと装置基準位置との対向方向に直交する平面内の位置を意味する。
【0059】
さらに、偏向ユニット30がハウジング21に対して着脱自在であることから、偏向部材33を全反射する鏡によって構成した場合であっても、この偏向ユニット30を取り外すことで、偏向部材33が被検眼2による視標の視認を邪魔することがなくなり、被検者1は呈示された視標を視認することができる。
【0060】
また、実施例1では、測定者が測定者眼3によって角膜視準系の光軸Bを直接確認する例を示したが、これに限らず、カメラによって観察するようにしてもよい。この場合、第2ユニット窓34の外側にカメラのレンズを対向させて固定し、ユニットケース31にカメラを一体化してもよい。さらに、このとき、偏向部材33をダイクロイックミラーによって構成し、赤外光で角膜視準系の光軸Bを観察するようにすると、光量のロスも軽減することができる。
【0061】
そして、実施例1では、ユニットケース31をハウジング21に対して着脱可能に取り付けるための取付手段35として、磁性体部材35aとマグネット板35bとを有する例を示した。しかしながら、これに限らない。例えば、接着剤や両面テープ、面ファスナによって取付手段35を構成してもよい。さらに、ハウジング21に窪み形状を形成し、このハウジング21側の窪み形状に噛み合う突起形状をユニットケース31に形成し、これらの形状によって取付手段35を構成してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 被検者
2 被検眼
2a 角膜頂点
10 検眼装置
20 検眼ユニット
21 ハウジング
22 光学素子
23 角膜位置確認機構
23a 第1スケール
23b 反射ミラー
23c 第2スケール
24a 第1検眼窓
24b 第2検眼窓
25a 第1観察窓
25b 第2観察窓
30 偏向ユニット(光束偏向部材)
30A 偏向ユニット(光束偏向部材)
31 ユニットケース
32 第1ユニット窓
33 偏向部材
33a 反射面
34 第2ユニット窓
35 取付手段
35a 磁性体部材
35b マグネット板
36 あおり機構
B 角膜視準系の光軸(被検眼の角膜からの光束)
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9