(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】機能部品、機能部品のタイヤへの取り付け構造及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 23/04 20060101AFI20221021BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
B60C23/04 110A
B60C19/00 B
(21)【出願番号】P 2018186736
(22)【出願日】2018-10-01
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】山口 滋
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-226853(JP,A)
【文献】特開2009-198505(JP,A)
【文献】特開2014-054959(JP,A)
【文献】国際公開第2013/005639(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/064902(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/04
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ内の情報を取得可能な電子部品が収容され、タイヤの内周面に取り付け可能な機能部品であって、
前記電子部品の収容部と、前記タイヤの内周面と対向する底面を有する筐体と、
前記底面の周縁から前記内周面に向けて延長する筒状部と
を備え、
前記底面に先端が前記筒状部の端部よりも前記底面側に位置する凸部、又は凹部が形成されたことを特徴とする機能部品。
【請求項2】
前記底面が前記内周面に向けて膨出することを特徴とする請求項1に記載の機能部品。
【請求項3】
タイヤ内の情報を取得可能な電子部品が収容され、タイヤの内周面に取り付け可能な機能部品であって、
前記電子部品の収容部と、前記タイヤの内周面と対向する底面を有する筐体と、
前記底面の周縁から前記内周面に向けて延長する筒状部とを備え、
前記底面が前記内周面に向けて膨出することを特徴とする機能部品。
【請求項4】
前記底面に凸部又は凹部が形成されたことを特徴とする請求項3に記載の機能部品。
【請求項5】
前記凸部の先端が前記筒状部の端部よりも前記底面側に位置することを特徴とする
請求項4に記載の機能部品。
【請求項6】
前記筒状部は、前記底面の周縁から前記内周面に向けて拡径して延長することを特徴とする請求項1乃至請求項5いずれかに記載の機能部品。
【請求項7】
前記底面にタイヤのひずみを検出するひずみ検出手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項
6いずれかに記載の機能部品。
【請求項8】
タイヤと、
前記請求項1乃至請求項
7いずれかに記載の機能部品との取り付け構造であって、
前記筒状部の端部を前記タイヤの内周面に当接させ、前記筒状部の内周面、前記筐体の底面、及び前記タイヤの内周面により囲まれる充填空間に接着剤が充填されたことを特徴とする取り付け構造。
【請求項9】
前記請求項
8に記載の取付構造により、前記機能部品がタイヤの内周面に取り付けられたことを特徴とするタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに取り付け可能な機能部品等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの使用状態を取得するための電子部品をケース(筐体)に収容した機能部品を、タイヤ内面に設けたパッチ部品に嵌め込む取付構造が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の取付構造では、機能部品がタイヤから分離できる構造であるため、例えば、RFID等のようなタイヤの個体の情報を記録した管理用タグとして活用することができない。また、機能部品の総重量は、筐体の重量とパッチ部品の重量との合算値であるため、パッチ部品の大きさ、形状、内部構造等による重量がかさむ傾向にある。また、機能部品の製作コストは、筐体の製作コストとパッチ部品の製作コストの合計値である。特にパッチ部品は、ゴムを加硫成型して作られたベース部材に接着層と呼ばれる薄いゴム層を接着面に設けてタイヤ内面に加硫接着する必要があり、作業工数の増加によりコスト高となる傾向にある。これらの問題を解決するための対応として、パッチ部品を省略し、タイヤ内面に筐体を接着剤により直接接着する方策が考えられる。しかし、タイヤは、路面との接地時に変形が繰り返されるため、単に筐体を接着してもタイヤ内面から外れてしまったり、接地時の衝撃により筐体が割れたり、内部の電子部品が故障する虞がある。よって、これらを防ぐためには、接着剤に十分な厚みを持たせた状態でタイヤ内面に接着する必要がある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、機能部品のタイヤへの取り付けに際し、接着剤の厚みを十分確保するとともに、接着強度を向上可能な機能部品等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための機能部品の構成として、タイヤ内の情報を取得可能な電子部品が収容され、タイヤの内周面に取り付け可能な機能部品であって、電子部品の収容部と、タイヤの内周面と対向する底面を有する筐体と、底面の周縁から内周面に向けて延長する筒状部とを備え、底面に先端が筒状部の端部よりも前記底面側に位置する凸部、又は凹部が形成された構成とした。
本構成によれば、筐体と、筐体の底面の周縁からタイヤの内周面に向けて延長する筒状部で形成される一方開口の容器に接着剤を充填し、筒状体側をタイヤ表面に置いた後、接着剤を硬化させることにより、接着剤の厚みを確保しつつ機能部品をタイヤ内面に接着することができる。
また、タイヤ内の情報を取得可能な電子部品が収容され、タイヤの内周面に取り付け可能な機能部品であって、電子部品の収容部と、タイヤの内周面と対向する底面を有する筐体と、底面の周縁から前記内周面に向けて延長する筒状部とを備え、底面が内周面に向けて膨出するように形成しても良い。また、機能部品の他の構成として、前述の筒状部を底面の周縁から内周面に向けて拡径して延長するようにしたりしても良い。また、底面にタイヤのひずみを検出するひずみ検出手段を備える構成としても良い。
また、上記課題を解決するための機能部品の取付構造として、タイヤと、上記いずれかに記載の機能部品との取り付け構造であって、筒状部の端部をタイヤの内周面に当接させ、筒状部の内周面、筐体の底面、及びタイヤの内周面により囲まれる充填空間に接着剤が充填された構成とすると良い。また、上記課題を解決するためのタイヤの構成として、上記取付構造により、機能部品がタイヤの内周面に取り付けられた構成とすると良い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】タイヤに取り付けられた機能部品を示す図である。
【
図10】機能部品の他の実施形態に係る外観斜視図及び断面図である。
【
図11】ひずみセンサの概略構成図及び出力を示す図である。
【
図14】タイヤの回転時の機能部品の位置を示す図である。
【
図15】タイヤの回転時にひずみセンサにより検出されたひずみの一例を示す図である。
【0007】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、タイヤ10に取り付けられた機能部品1の取付状態を示す図である。
図1(a)に示すように、タイヤ10は、ホイールリム15に組み付けられており、タイヤ10の内側空間には、空気などの気体が充填される。
【0009】
図1(a),(b)に示すように、機能部品1は、タイヤ10の内面(内周面10s)に対して接着剤Bにより固定され、タイヤ10の路面と接するトレッド11の裏側である内周面10sの幅方向中央に配置される。
【0010】
機能部品1は、筐体(筐体部)2と、スカート(筒状部)4と、モジュール6とを備える。なお、機能部品1が装着されるタイヤ10の種類は、特に限定されないが、主に通常の舗装路(一般道及び高速道)を走行する乗用自動車、トラック、バスなどの自動車、航空機等のタイヤに装着される。
【0011】
図2は、筐体2の斜視図である。
図3は、筐体2の収容ケース20の平面図及び部分断面図である。
図2に示すように、筐体2は、モジュール6の収容空間S(収容部)を有する収容ケース20と、収容ケース20に対する蓋体として機能するキャップ30とを備え、収容ケース20とキャップ30とを組み合わせることで概ね円盤状に形成される。収容ケース20及びキャップ30は、例えば、機能部品1の軽量化及び強度の観点から合成樹脂等が採用される。
【0012】
図2に示すように、収容ケース20は、円形の底部21と、底部21の外周縁からの外周に沿って延長し、底部21から環状に立ち上がる周壁部22とで形成された一方開口の有底円筒状に形成される。収容ケース20には、底部21の内底面20c及び周壁部22の内周面20aとでモジュール6を収容可能な収容空間Sが形成される。なお、以下の説明では、周壁部22の軸Oを基準として軸方向、周方向、径方向等の用語を用いてとして説明する。
【0013】
図3に示すように、周壁部22の外周面20bには、後述のスカート4を取り付け可能なスカート取付部26が形成される。スカート取付部26は、周壁部22の下側半部に形成される複数の環状凸部23により構成される。環状凸部23は、外周面20bの円周方向に亘って延長する環状体であって、軸方向に所定の間隔で複数(本例では3本)設けられる。なお、環状凸部23は、一周に亘り延長することなく円周方向に断続的に延長する構成であっても良い。
【0014】
底部21の内底面20cには、該内底面20cにモジュール6が直接接触することを防止するための図外の突起等の支持手段が形成される。
図3(b)に示すように、底部21の外底面20dは、該外底面20dの外周縁側よりも中央部分が軸方向外側に凸となる凸面状に形成される。外底面20dは、タイヤ10の内周面10sへの取り付け時において、内周面10sと対向する面である。より詳細には、外底面20dは、軸O上に曲率中心が設けられ、所定の曲率半径に設定された球面状に形成される。なお、外底面20dの膨出する形状は、球面状に限定されない。例えば、頂点の位置を軸O上に設定した円錐、四角錐等の多角錐形や、錐台形等、楕円球の一部で形成された他の曲面状であっても良い。また、外底面20dの全体に亘り膨出させる必要はなく、部分的に上述のような曲面状に膨出させても良い。例えば、タイヤ外径が大きい場合には、外底面20dを平坦状に形成しても良い。
【0015】
外底面20dには、該外底面20dからタイヤ10の内周面10sに向けて突出する複数の凸部24が設けられる。
図3(b)に示すように、複数の凸部24は、外底面20dにおいて当該外底面20dを貫く軸Oを中心とする直径の異なる2つの同心円C1;C2と、軸Oから半径方向に延長する複数の放射線L1乃至L3とが交差する位置に設けられる。また、
図3(c)に示すように、凸部24は、各位置において外底面20dの法線方向に突出して形成される。即ち、凸部24は、外底面20dの軸Oに対して放射状に、かつ、円周方向に均等な間隔(軸O周りに均等な間隔)で形成されている。凸部24が外底面20dから延長する長さは、適宜設定すれば良いが、収容ケース20に後述のスカート4を装着したときに、スカート4の先端部44Aよりも突出しない長さであれば良い。また、本実施形態では、凸部24を円柱状に形成したが、凸部24の形状は円柱状に限定されない。また、外底面20dから突出する凸部24に代えて、外底面20dから内底面20c側に窪む凹部としても良い。また、凸部と凹部を組み合わせて形成しても良い。
また、凹部は、例えば、ゴルフボールのディンプルのように形成しても良い。
【0016】
図2に示すように、キャップ30は、円形の天井部32と、天井部32の外周縁に沿って延長する周壁部34とを備える。天井部32の外側面32aには、機能部品1をタイヤ10に装着する時の方向を示す取付マークMが形成される。取付マークMは、例えば、刻印や印刷等により表示される。
図1(b)に示すように、取付マークMは、矢印がタイヤ円周方向を向けて、機能部品1をタイヤ10の内周面10sに取り付けることを示している。なお、取付マークMが示す方向は、モジュール6の検出方向に対応して適宜設定すれば良い。また、天井部32には、軸O方向に貫通する孔33が形成される。孔33は、キャップ30により収容ケース20の開口を閉鎖したときに、収容ケース20の収容空間Sと外部との連通を可能とする。周壁部34は、周壁部22の外周面20bの外周を囲繞可能な内径を有する。上記構成からなるキャップ30は、収容ケース20に対して外側面32aに設けられた取付マークMが所定の方向を向いた状態で図外のはめ込み固定手段等により収容ケース20と一体化される。
【0017】
図4は、スカート4の斜視図及び軸Oを含む断面図である。
図1(a)に示すように、スカート4は、収容ケース20に形成された前述のスカート取付部26に装着され、筐体2の外底面20dからタイヤ10の内周面10s側に延長する。換言すれば、筐体2の外底面20dを基点として外底面20dから離間する方向に延長する。
【0018】
図4に示すように、スカート4は、円環状の筒部40と、当該筒部40から内周面10s側に延長する拡大部42とを備える。筒部40は、スカート取付部26を囲繞する円筒状に形成される。筒部40の内周面40aには、円周方向に沿って延長し、径方向に窪む環状凹部43が形成される。環状凹部43は、複数(本例では3本)設けられ、内周面40aを一周に亘り延長し、収容ケース20に設けられた環状凸部23と嵌合可能に形成される。つまり、環状凹部43は、環状凸部23に対応する間隔及び数量設けられる。
【0019】
拡大部42は、筒部40から連続する末広がり状に形成される。拡大部42の内周面42aは、軸断面において収容ケース20の外底面20dの外周縁からタイヤ10の内周面10s側に向けて徐々に拡径する曲面として形成される。また、外周面42bは、例えば、筒部40の外周面40bと滑らかに連続し、タイヤ10の内周面10sに向けて徐々に拡径する曲面として形成される。即ち、拡大部42は、収容ケース20の外底面20dから内周面10s側に向けて拡径して延長する概ねラッパ状に形成される。
【0020】
また、拡大部42を形成する内周面42a及び外周面42bの厚みは、内周面10s側の軸方向端部に向かうに従い、徐々に薄くなるように先細り状に設定される。内周面42aの先端部44A及び外周面42bの先端部44Bは、平坦面42cを介して接続される。つまり、平坦面42cは、内周面42aの先端部44Aと、外周面42bの先端部44Bと、軸Oと直交する平面により囲まれる環状面である。
【0021】
スカート4は、例えば、ゴム、またはエラストマー等からなる弾性素材や可撓性を有する材料が好ましい。ゴムの種類は、特に限定されず、天然ゴムやジエン系ゴムまたは非ジエン系ゴムなどの合成ゴム等が挙げられる。また、スカート4は、例えば、ゴムを素材として用いた場合、加硫済みの状態にあり、安定した形状に形成される。つまり、スカート4は、一つの部品として完成した状態とされる。
【0022】
図5は、収容ケース20にモジュール6を収容した機能部品1の断面図である。
図5に示すように、モジュール6は、上述の収容ケース20の収容空間Sに収容可能に構成される。モジュール6は、電子部品が実装された回路基板60と、電池70とを備える。回路基板60は、例えば、タイヤ内の状態を取得する状態取得手段として機能する温度センサ62、圧力センサ64及び加速度センサ66等の複数のセンサや、各センサ62;64;66により検出された検出値をタイヤの外部に出力するための図外の送信手段、複数のセンサ62;64;66及び送信手段の動作を制御する制御手段、各センサ62;64;66により検出された検出値の履歴を記憶する記憶手段等の電子部品と、これらの部品に電池70からの電力を供給する金属製の端子69A;69Bを備える。なお、回路基板60の構成については、これに限定されない。
【0023】
電池70は、いわゆる円盤状のボタン電池であって、回路基板60に設けられた金属製の端子69A;69B間で各電極を挟むことにより回路基板60と接続される。なお、電池70はボタン電池に限らず筒状の電池であっても良く、その形態は特に限定されない。
【0024】
回路基板60と収容ケース20には、互いに嵌り合う図外の位置決め手段が設けられる。これにより、収容ケース20に対する加速度センサ66の計測方向が規定される。
【0025】
温度センサ62及び圧力センサ64は、それぞれの計測部がキャップ30に設けられた孔33を介してタイヤ気室内と連通することで、タイヤ気室内の温度及び圧力を計測する。
加速度センサ66は、例えば、タイヤ幅方向、半径方向及び周方向(回転接線方向)の3軸方向の加速度を計測可能とするセンサであって、回路基板60に対して各計測方向が所定の向きを向くように取り付けられる。加速度センサ66は、回路基板60を収容ケース20内に収容したときに、軸O上に、位置するように回路基板60に取り付けられていることが好ましい。
【0026】
送信手段は、送信回路として回路基板に実装され、図外のアンテナを介して計測された温度、圧力、加速度をタイヤ外に送信する。送信手段から無線により送信された温度、圧力及び加速度等の信号は、例えば、図外の車両に設けられた本体ユニットの無線回路により受信され、車内に設けられた表示器にタイヤの状態(温度、圧力、又は、異常の有り・無し)に関する情報が表示される。
【0027】
制御手段は、送信回路として回路基板60に実装され、例えば、加速度センサ66がタイヤ10の回転(遠心力)を検出したことに基づいて所定のプログラムを実行し、温度センサ62、圧力センサ64及び加速度センサ66により検出されたタイヤ10内の温度、圧力、加速度を送信手段の動作を制御する。記憶手段は、温度センサ62、圧力センサ64及び加速度センサ66により検出されたタイヤ10内の温度、圧力、加速度の履歴やタイヤの製造情報や品質情報を記録する。
【0028】
上記構成からなるモジュール6は、回路基板60に電池70を接続し、電池70を収容空間Sの内底面20cに向け、回路基板60に実装された加速度センサ66の計測方向が収容ケース20に対して所定の向きを向くように位置決めされて収容される。
【0029】
図5に示すように、収容空間S内には、モジュール6と、収容空間Sを形成する内底面20c及び内周面20aとの隙間がなくなるようにポッティング材50が充填される。これにより、モジュール6の全体がポッティング材50により覆われる。なお、ポッティング材50が充填された状態であっても温度センサ62及び圧力センサ64の各計測部とタイヤ気室内との連通状態は維持される。ポッティング材50の素材としては、ウレタンシリコン系樹脂、或いは、エポキシ系樹脂が好ましい。このような素材をポッティング材50に適用することにより、タイヤ10の回転時、特に高速回転したときであってもポッティング材50が電池70や回路基板60から受ける力に対して十分な耐性を維持できる。
【0030】
図6は、機能部品1をタイヤ10に取り付ける工程を示す作業工程図である。
図6(a)に示すように、機能部品1をタイヤ10に取り付ける工程は大きく分けて、タイヤ10に前処理をする工程(タイヤ前処理工程)と、機能部品1側の準備工程(機能部品準備工程)、装着工程とで構成される。
【0031】
図6(b)に示すように、タイヤ前処理工程は、離型剤除去工程、リッジ処理工程、洗浄工程とを含む。離型剤除去工程は、加硫成型後のタイヤの内周面に付着する離型剤を除去するための工程であって、例えば、スプレー式の脱脂剤をタイヤ10の内周面10sの所定の位置に吹き付け、離型剤をふき取る。
【0032】
リッジ処理工程は、加硫成型時にブラダーによってタイヤ10の内周面10sに形成されたリッジ(凸部)を周囲の高さに合わせる(平坦化する)ための工程であって、例えば、リューター等の回転工具を利用しバフ掛け等により研削する。なお、実施できない場合には、省略しても良い。洗浄工程は、洗浄スプレーを吹き付け、バフかす等を除去した後ドライヤー等により乾燥させる。
【0033】
図7に示すように、機能部品準備工程は、筐体2の外底面20d及びスカート4の内周面42aにより形成される凹状の充填部100内が接着剤Bに満たされるように充填する。この際、接着剤Bの量は、スカート4の内周面42aの先端部44Aと面一、或いは先端部44Aを過ぎる程度の量が好ましい。
【0034】
図8に示すように、装着工程は、充填部100内に接着剤Bが充填されたスカート4の端部である先端部44Aや先端部44Bをタイヤ10の内周面10sに向け、当接させた状態で所定の力Pで押し付けた後に、例えばドライヤーにより100°程度の熱風を所定時間吹き付けて乾燥させる。これにより機能部品1は、タイヤ10の内周面10sに接着される。押し付けの際は、押し付け力が強すぎて接着剤が必要以上あふれないように注意する。接着剤が必要以上あふれると接着高さが保持できない。
【0035】
このように、機能部品1は、タイヤ10の内周面10sと対向する外底面20dと、当該外底面20dの周縁から内周面10s側に向けて拡径して筒状に延長するスカート4の内周面42aと、タイヤ10の内周面10sとにより囲まれる充填空間Rに接着剤Bに密に充填された状態で取り付けられる構造である。
【0036】
なお、接着剤Bには、例えば、以下の物性(特性)を有するものが好ましい。ゴム系の材料からなるタイヤ10に、プラスッチック樹脂等の材料からなる筐体2を固定するためには、両方の材料に対して必要な剥離強度を有する必要がある。本実施形態では、剥離強度の目安を機能部品1の重量の500倍に設定した。具体的には、機能部品1の重量を30gとした場合、30g×500倍=15000g、15kg以上を設定している。また、タイヤ10は弾性体であり、筐体2は非弾性体であるため、走行によるタイヤ10の変形によって、接着剤Bとタイヤ10との接着面及び接着剤Bと筐体2との接着面が剥離しないように、タイヤ10の変形に追従可能に変形する弾性を有する接着剤Bが好ましい。
このような弾性を有するために接着剤Bの硬度は、例えば、タイヤ10を形成するゴムと同様な硬度が40~70(無次元の数値)程度が適当である。
【0037】
また、接着剤Bの硬化時間は、生産性を考慮した場合、なるべく短時間であることが望ましい。具体的にはドライヤーによる加熱温度60℃以上で、1分以上の加熱により硬化するものが好ましい。例えば、市販されている接着剤を例示すると、スリーボンド社製のの品番TB1530B 硬さ:A48(デュロメータタイプA硬さ)が適用できる。タイヤ10のゴムの硬度は、HS50~80(ショア硬さ)程度であり、デュロメータ硬さ試験値とショア硬さ試験地との換算表によれば、A48≒HS48であるので、タイヤ10のゴムの硬度に近い硬度であり、好適である。なお、上述のような物性を有する専用の接着剤を用いても良い。
【0038】
接着剤Bの特性として、硬化後の弾性がタイヤ10の硬度に近い弾性を有することが好適であることを説明した。それに加え、接着剤Bには、タイヤ10の変形に追従して、圧縮・伸び等の変形を許容するための体積(容積)が要求される。そこで、上述のように上記物性を有する接着剤Bを、充填空間R内に漏れなく留め置いた状態で固化させることにより、硬化後の接着剤Bに十分な厚みを確保することができる。
【0039】
固化後の接着剤Bの厚みとしては、タイヤ10のサイズにもよるが、接着剤Bの厚みが最も薄いところで1mm以上3mm以下程度となるように、筐体2の外底面20dの膨出度合いや、外底面20dの周縁から延長するスカート4の先端部44Aまでの軸O方向の長さを設定すると良い。本実施形態によれば、充填部100の形状によって接着剤Bの厚みを自由に設定することができるが、接着剤Bの厚みを厚くし過ぎると接着剤Bの材料コストがかさむとともに、重量増加の要因となるため、タイヤ10のアンバランスの要因にもなり得るため、上記範囲で厚みを設定すると良い。
【0040】
また、
図9に示すように、筐体2の外底面20dには、複数の凸部24が放射状に周方向に均等な間隔で設けられているため、図中矢印で示すように、タイヤ10内において左右方向や斜め上下方向の力が筐体2に作用しても、凸部24がスパイクとして機能し、筐体2と接着剤Bとを剥離させる力が接着界面に直接作用することを防止でき、接着剥離強度を向上させることができる。
【0041】
上述のように、機能部品1は、充填空間R内に充填された接着剤Bによりタイヤ10に固定されることにより、タイヤ10から容易に分離せずに一体化されるため、モジュール6によって計測されたタイヤ10使用時の各種の履歴を個体情報として利用することができる。
【0042】
上記実施形態では、スカート4を内周面10sに向かって拡径するようにラッパ状或いは末広がりとなるよう形成したがこれに限定されず、例えば、円筒状や円錐状等に形成しても良い。また、筐体2と、スカート4とを別体に形成し、一体化するものとしたが、筐体2を形成する収容ケース20及びスカート4とを一体化しても良い。
【0043】
図10は、機能部品1の他の実施形態に係る外観斜視図及び断面図である。上記実施形態では、機能部品1が、温度センサ62、圧力センサ64及び加速度センサ66を備えるものとして説明したが、例えば、
図10に示すように、タイヤ10の変形を計測可能とするひずみセンサ68を備える構成としても良い。
【0044】
図10(a),(b)に示すように、ひずみセンサ68は、筐体2の外底面20dに取り付けられる。同図に示すように、外底面20dを球面状とした場合、ひずみセンサ68をタイヤ10の内周面10sに対して最も近接する位置となる軸O上にすると良い。このようにひずみセンサ68を取り付けることにより、タイヤ10が周方向や幅方向等に変形したときのひずみを等方的に検出することができる。ひずみセンサ68は、例えば、収容ケース20の底部21に設けられた貫通孔29を介して配線88が回路基板60と接続される。
また、
図10(b)の拡大図に示すように、外底面20dにおいてひずみセンサ68が取り付けられるセンサ取付部28は、部分的に平坦状に形成すると良い。平坦状とする範囲は、ひずみセンサ68の大きさ程度が好ましい。
【0045】
図11は、ひずみセンサの概略構成図を示す図である。
図11に示すように、ひずみセンサ68は、例えば、ひずみゲージ80、ブリッジ回路82、ストレインアンプ84等を備える。ひずみゲージ80は、ブリッジ回路82の一部を構成する。ブリッジ回路82には、例えば、ストレインアンプ84から電圧が印加され、ひずみゲージ80がひずみを検出したときの抵抗値の変化に伴う電圧値の差分を信号としてストレインアンプ84に出力する。
【0046】
ストレインアンプ84は、信号増幅回路、A/D変換器、電力供給部とを備え、ブリッジ回路82から入力される信号を信号増幅回路で増幅し、増幅された信号をA/D変換器によりデジタル信号に変換して回路基板60に出力する。つまり、ストレインアンプ84によって、ひずみゲージ80により検出されたひずみ量に応じた電圧値が回路基板60にデジタル信号として出力される。
【0047】
本実施形態では、ひずみセンサ68には、例えば、ひずみゲージ80、ブリッジ回路82、ストレインアンプ84の機能を一つのチップに集積し、矩形状の所謂ピエゾ抵抗式半導体として構成されたセンサチップを適用した。ひずみセンサ68は、例えば、計測面68aが規定され、この計測面68aがタイヤ10の内周面10sと対向するように、筐体2の外底面20dに取り付けられる。
このようにひずみセンサ68を半導体とすることにより、消費電力を少なくすることができるとともに、他のセンサ62等との電源を共用化することができる。また、計測の信頼性、及び耐久性を向上させることができる。
【0048】
図12は、機能部品1をタイヤ10の内周面10sに接着した状態を示す図である。
機能部品1は、ひずみセンサ68を外底面20dに取り付けた状態で、外底面20d及びスカート4の内周面42aで形成された充填空間R(充填部100)に接着剤Bを充填してタイヤ10の内周面10sに接着される。つまり、ひずみセンサ68は、接着剤Bに埋設した状態でタイヤ10の内周面10sに接着される。
【0049】
このように、ひずみセンサ68が、接着剤Bにより形成された接着層を介してタイヤ10に取り付けられることにより、タイヤ10の変形に伴なうひずみを好適に検出することができる。回転するタイヤ10のひずみを測定するためには、直接ひずみセンサをタイヤ10に取り付けることが望ましい。ところが、タイヤ10のひずみは、タイヤ10の部位やタイヤ内圧や温度等の状態によって広い範囲で変化するが、一般的にタイヤ10のひずみ量(変形量)はひずみセンサ68の測定可能な測定レンジよりも大きい。
【0050】
例えば、タイヤ10のひずみ量は、元の形状に対し、1%以上、即ち、長さ100mmの材料が1mm以上の変形量に相当する。一方、ひずみセンサ68は、ひずみゲージの内部構造が金属体で構成されているため大きな変形を測定することは困難であり、ひずみセンサ68の測定可能なひずみ量は、0.1%以下、即ち、長さ100mmの材料が0.1mmの変形量に相当する。したがって、ひずみセンサ68をタイヤ10の内周面10s等のタイヤ表面に直接貼り付け、タイヤ10の変形を測定しようとしても、タイヤ10の変形量にひずみセンサ68の測定レンジが合致しないため、測定することができない。
【0051】
本実施形態では、ひずみセンサ68が装着された充填空間Rに、機能部品1を固定するための弾性を有する接着剤Bが充填されている。つまり、ひずみセンサ68は、接着剤Bの介在によりタイヤ10の内周面(表面)10sから約1mm~3mm離れた高さに固定されていることになる。これにより、例えば、接着剤Bが、タイヤ10が路面と接触するたびに生じるタイヤ10の変形ひずみを1/10以下に緩和し、ひずみセンサ68にタイヤ10の変形ひずみを適切に伝達することができる。
即ち、本実施形態のように、ひずみセンサ68とタイヤ10の内周面10sとの間に接着剤Bを介して設けたことにより、接着剤Bが測定レンジを調整するための緩衝部分として機能し、タイヤ10の変形をひずみセンサ68によって、適切に計測可能としている。
【0052】
図13は、ひずみセンサ68の出力を示す図である。
図14は、タイヤ10の回転時の機能部品1の位置を示す図である。
図13に示すように、ひずみセンサ68は、計測面68aを撓ませるような曲げ力Fbを検出した場合には、正値の電圧値を出力し、計測面68aに垂直な垂直力Fvを検出した場合には、負値の電圧値を出力する。
図14に示すように、タイヤ10の回転時における曲げ力Fbは、タイヤ10が路面に接地する踏込位置k1や路面から離れる蹴出位置k2の近傍で検出される。また、垂直力Fvは、踏込位置k1から蹴出位置k2までのタイヤ10が路面に接地している間において、曲げ力Fvが作用しない範囲、例えば、
図15に示す垂直力検出時間tv等として検出される。
【0053】
図15は、タイヤの回転時にひずみセンサ68により検出されたひずみの一例を示す図である。
図16は、ひずみセンサ68により検出されたひずみに基づいて算出された車両の積載状態の変化を示す図である。
図15に示すように、ひずみセンサ68は、タイヤ10が回転することにより、その位置がタイヤ円周方向に移動し、タイヤ10の変形状態を検出し、その変形を示す時系列の信号を出力する。
【0054】
得られた信号は、あらかじめ回路基板60に設けた図外の処理手段により処理することにより、例えば、タイヤ10に掛かる荷重を算出し、その履歴を記録することができる。
【0055】
そして、車両に装着されたタイヤの各輪において算出された荷重値を、各タイヤに取り付けられた機能部品1から図外の車両に設けられた本体ユニットに送信し、その合算値を算出することにより、
図16に示すような、車両の総重量の変化を取得することができる。
なお、ひずみセンサ68により直接的に得られる曲げ力Fbや垂直力Fvの利用は、これに限定されず、例えば、タイヤの摩耗などにも利用することができる。
【0056】
そして、このような構成によれば、曲げ力Fbや垂直力Fvを直接的に取得し、例えば、曲げ力Fbのピークを検出することで踏込位置k1や蹴出位置k2を簡単に検出でき、また、踏込位置k1及び蹴出位置k2に基づいて検出される接地時間txや、垂直力Fvの検出された時間等を簡単な計算処理により取得できるため、電池の寿命を向上させ、電池の寿命をタイヤが使用限界に達するまでの寿命よりも長くすることができる。
即ち、加速度センサ66により検出された加速度情報に基づいて、タイヤの摩耗、タイヤにかかる荷重等を推定する方法にあっては、タイヤの摩耗や荷重の変化を生じさせる物理現象を間接的に取得するものであるため、信頼し得るできるだけ高精度な結果を得るには、膨大な加速度情報と膨大な処理が必要とされ、機能部品1の電力となる電池の消耗が激しく、機能部品1としての寿命が短くなり易いという懸念がある。
一方で、上記構成によれば、膨大な処理を必要とすることなくタイヤの摩耗や荷重を算出できるため、電池の寿命を向上させることが可能となる。
【0057】
なお、機能部品1に設けられるセンサーは、温度センサ62、圧力センサ64及び加速度センサ66、ひずみセンサ68は、選択的に基板上に設ければ良い。
【符号の説明】
【0058】
1 機能部品、2 筐体、4 スカート、6 モジュール、10 タイヤ、
48 ポッティング材、60 回路基板、70 電池、B 接着剤、S 収容空間。