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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】騒音評価データ収集システム
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/00 20060101AFI20221021BHJP
   G10K 15/04 20060101ALI20221021BHJP
   G01H 3/00 20060101ALI20221021BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20221021BHJP
   G09B 9/00 20060101ALN20221021BHJP
【FI】
G10K15/00 M
G10K15/04 302A
G01H3/00 A
G06Q50/08
G09B9/00 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018191895
(22)【出願日】2018-10-10
(65)【公開番号】P2020060686
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【氏名又は名称】片寄 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100088041
【氏名又は名称】阿部 龍吉
(72)【発明者】
【氏名】谷川 将規
(72)【発明者】
【氏名】宇野 昌利
(72)【発明者】
【氏名】宮瀬 文裕
【審査官】西村 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-184513(JP,A)
【文献】特開2001-051973(JP,A)
【文献】騒音対策支援のための可聴化システム,清水建設研究報告,第93号,2016年01月,pp.120-125
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 15/00-15/12
G01H 3/00- 3/14
G06Q 50/08
G09B 9/00- 9/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバーと、前記サーバーとデータ通信可能とされる複数の情報処理端末と、からなる騒音評価データ収集システムにおいて、
前記サーバーが、
地図データ上に設定された騒音源と、複数の受音点と、遮音手段と、前記遮音手段に関する第1設定と、に基づいて、それぞれの受音点における騒音レベルの再生データを生成する生成部と、
再生データを再生することで、それぞれの受音点における騒音を模擬する前記情報処理端末に対して、再生データを送信するサーバー送信部と、を有し、
複数の前記情報処理端末が、
前記サーバーから再生データを受信する端末受信部と、
前記端末受信部で受信した再生データを再生する再生部と、
前記再生部で再生した再生データに対するユーザーによる数値化された評価データを取得する評価取得部と、
前記評価取得部で取得された評価データを前記サーバーに対して送信する端末送信部と、
複数の前記情報処理端末から評価データを受信するサーバー受信部と、
前記サーバー受信部で受信した評価データに基づいて、遮音手段に関する設定を、前記第1設定から、前記第1設定とは異なる第2設定に変更する設定変更部と、を有し、
前記設定変更部が、受信した評価データのうち最低の評価データを与えたユーザーの受音点に基づいて前記第1設定から前記第2設定に変更することを特徴とする騒音評価データ収集システム。
【請求項2】
前記生成部が、
地図データ上に設定された騒音源と、複数の受音点と、遮音手段と、前記遮音手段に関する第2設定と、に基づいて、それぞれの受音点における騒音レベルの再生データを生成し、
前記サーバー送信部が、
前記情報処理端末に対して、第2設定に基づいた再生データを送信することを特徴とする請求項1に記載の騒音評価データ収集システム。
【請求項3】
前記騒音源は、工事の騒音を模擬する音源データを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の騒音評価データ収集システム。
【請求項4】
前記遮音手段は、前記騒音源から伝搬する音を阻害する物体を模擬する遮蔽物データを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の騒音評価データ収集システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅に近接した工事現場で発生する騒音が、住宅などの受音点においてどのように聞こえるかをシミュレーションすると共に、各受音点における騒音がどのように評価されるかに係るデータである騒音評価データを収集する騒音評価データ収集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅地に近接した現場で工事を行うような場合、工事を行う前に、周辺住民の理解を得るために説明会を行うことが行われる。このような説明会において、工事によって発生する騒音がX[dB]で、例えば、防音壁を用いた騒音対策を施すことで騒音をY[dB]に低減することできる、というような説明を行ったとしても、直感的な理解を得ることができない。
【0003】
そこで、実際の騒音をシミュレートして、それを聞いてもらい、騒音のレベルを把握してもらう、ということが考えられる。このための装置として、発明者らは、特許文献1(特開2015-184513号公報)において、地図データが記憶される地図データベースと、複数の騒音源データが記憶される騒音源データベースと、前記騒音源データに基づいて、再生されるシミュレーション音を発音するヘッドフォンと、を有し、前記騒音源データベースに記憶される複数の騒音源データ中から、騒音源の種別を設定する騒音源種別設定ステップと、前記地図データ上に、騒音源の位置を設定する騒音源位置設定ステップと、前記地図データ上に、受音点を設定する受音点設定ステップと、前記騒音源データと、前記騒音源データ設定ステップで設定された騒音源の位置と、前記受音点設定ステップで設定された受音点と、に基づいて、前記受音点における騒音のシミュレート音を再生するシミュレート音再生ステップと、が実行される騒音シミュレーションシステムを提案した。
【文献】特開2015-184513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の従来の騒音シミュレーションシステムによれば、簡便な構成により工事の騒音を体験することが可能で、直感的に工事の騒音レベルを把握することができるため、工事前の住民説明会で活用することができるようになる。しかしながら、当該騒音シミュレーションシステムでは、住民から、それぞれの立場における受音点で、騒音をどのように評価したかに係るデータ、すなわち、それぞれの住民による騒音評価データを効率的に収集することが難しい、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記のような問題を解決するものであって、本発明に係る騒音評価データ収集システムは、 サーバーと、前記サーバーとデータ通信可能とされる複数の情報処理端末と、からなる騒音評価データ収集システムにおいて、前記サーバーが、地図データ上に設定された騒音源と、複数の受音点と、遮音手段と、前記遮音手段に関する第1設定と、に基づいて、それぞれの受音点における騒音レベルの再生データを生成する生成部と、再生データを再生することで、それぞれの受音点における騒音を模擬する前記情報処理端末に対して、再生データを送信するサーバー送信部と、を有し、複数の前記情報処理端末が、前記サーバーから再生データを受信する端末受信部と、前記端末受信部で受信した再生データを再生する再生部と、前記再生部で再生した再生データに対するユーザーによる数値化された評価データを取得する評価取得部と、前記評価取得部で取得された評価データを前記サーバーに対して送信する端末送信部と、複数の前記情報処理端末から評価データを受信するサーバー受信部と、前記サーバー受信部で受信した評価データに基づいて、遮音手段に関する設定を、前記第1設定から、前記第1設定とは異なる第2設定に変更する設定変更部と、を有し、前記設定変更部が、受信した評価データのうち最低の評価データを与えたユーザーの受音点に基づいて前記第1設定から前記第2設定に変更することを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る騒音評価データ収集システムは、前記生成部が、地図データ上に設定された騒音源と、複数の受音点と、遮音手段と、前記遮音手段に関する第2設定と、に基づいて、それぞれの受音点における騒音レベルの再生データを生成し、前記サーバー送信部が、前記情報処理端末に対して、第2設定に基づいた再生データを送信することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る騒音評価データ収集システムは、前記騒音源は、工事の騒音を模擬する音源データを含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る騒音評価データ収集システムは、前記遮音手段は、前記騒音源から伝搬する音を阻害する物体を模擬する遮蔽物データを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る騒音評価データ収集システムは、サーバーが、それぞれの受音点における騒音レベルの再生データを生成し、これら再生データを情報処理端末に対して送信すると共に、再生データを受信した複数の情報処理端末がそれぞれ再生した再生データに対するユーザー(工事現場周辺の住民を想定)による評価データを取得し、取得された評価データをサーバーに対して送信する構成を有しており、このような本発明に係る騒音評価データ収集システムによれば、ユーザー(住民)それぞれの立場における受音点で、ユーザーが騒音をどのように評価したかに係るデータ、を効率的に収集することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る騒音評価データ収集システム1の概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る騒音評価データ収集システム1による騒音評価用提案データの作成工程の一例を示す図である。
図3】各種データのデータ構造例を示す図である。
図4】騒音評価用提案データの一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る騒音評価データ収集システム1で実行される再生データ配信処理のフローチャートを示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る騒音評価データ収集システム1で実行される騒音評価処理のフローチャートを示す図である。
図7】ユーザーが情報処理端末50で再生された再生データの音声出力をヘッドフォン52で聞いて、タッチパネル部55から評価を入力する様子を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る騒音評価データ収集システム1で実行される再提案作成処理のフローチャートを示す図である。
図9】騒音評価用提案データの第1設定と第2設定との相違例を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る騒音評価データ収集システム1における防音壁による騒音の減衰の計算例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本発明に係る騒音評価データ収集システム1は、今後実施を予定している工事の騒音を再現し、当該工事現場周辺の住民にこれを聞いてもらった上で騒音に関する評価をしてもらい、その評価を収集し、よりより工事騒音の遮音対策に資するために利用されるものである。
【0013】
工事現場周辺の住民が住む住宅は、工事現場からの距離や、工事現場との間の建築物などの有無などによって、それぞれで騒音が伝搬する条件が異なる。そこで、本発明に係る騒音評価データ収集システム1では、それぞれの住民が住む住宅(「受音点」とも言う。)において聞こえる騒音をそれぞれ再現するようになっている。
【0014】
例えば、工事の住民説明会などにおいては、それぞれの住民には、本発明に係る騒音評価データ収集システム1の一部を構成する情報処理端末50が配布され、当該情報処理端末50において、それぞれの住民が聞き得る騒音が再現(再生)されるようになっている。なお、情報処理端末50で再生される騒音は、情報処理端末50に接続されるヘッドフォン52から音声出力され、これを住民が聴く構成とされている。また、騒音を試聴する住民を、騒音評価データ収集システム1のユーザーとして表現することがある。
【0015】
なお、本実施形態では、情報処理端末50で再生される騒音のシミュレート音は、ヘッドフォン32によって聞くようにしているが、ヘッドフォン32はスピーカーなどの発音体を用いる場合に比べて、より騒音レベルを把握しやすく、本発明に係る騒音評価データ収集システム1においては、ヘッドフォン32(イヤホンなども含む)を用いることが必須の構成要件となる。
【0016】
情報処理端末50で再生される騒音の再生データの生成は、個々の情報処理端末50で行うと非効率的であり、さらに、処理負荷も重いので、本発明に係る騒音評価データ収集システム1は、騒音の再生データの生成をサーバー10で行うことも一つの特徴点となっている。また、サーバー10は、各情報処理端末50で、ユーザーによって下された再生騒音に対する評価データを収集する役目も担うようになっている。
【0017】
図1は本発明の実施形態に係る騒音評価データ収集システム1の概略構成を示す図である。図1においては、上記のようなサーバー10と、3台の情報処理端末50とが図示されている。3台の情報処理端末50としては、受音点(X)の住宅に住むユーザーが利用する情報処理端末50x、受音点(Y)の住宅に住むユーザーが利用する情報処理端末50y、受音点(Z)の住宅に住むユーザーが利用する情報処理端末50zが示されている。各情報処理端末50を区別するために、サフィックスx、y、zが用いられている。なお、図1においては、情報処理端末50が3台用いられる構成について示されているが、本発明に係る騒音評価データ収集システム1で用い得る情報処理端末50の台数がこれに限定されるわけではない。
【0018】
本発明に係る騒音評価データ収集システム1で用いられるサーバー10としては、比較的処理負荷が大きい演算も短時間で行い得る演算処理機能、比較的大容量のデータを記憶可能なデータ記憶機能、ディスプレイ、キーボード、マウスなどのユーザーインターフェイス機能、他の情報処理装置とデータ通信する通信機能などサーバーとして一般的な機能を備えるものを用いることができる。このようなサーバー10には、本発明に係る騒音評価データ収集システム1を動作させるプログラムがインストールされる。
【0019】
サーバー10の演算処理機能で実行される騒音評価データ収集システム1のプログラムは種々あるが、本発明に係る騒音評価データ収集システム1においては、特に、サーバー10が騒音計算ソルバ部11として機能するプログラムは重要なものである。騒音計算ソルバ部11は音響解析計算を行うソフトウエアであり、本発明に係る騒音評価データ収集システム1においては、地図データ上に設定された騒音源や遮音手段に基づいて、複数の受音点における騒音レベルの再生データを生成するものである。
【0020】
なお、受音点における騒音レベルの再生データ生成の具体的な手法については、谷川将規,宇野昌利,宮瀬文裕「騒音対策支援のための可聴化システム」清水建設研究報告第93号(平成28年1月)など発明者らによる提案を適宜用いることができる。
【0021】
また、上記のようなサーバー10の通信機能を実行するものとして、サーバー10自身から各情報処理端末50にデータを送信するサーバー送信部16と、各情報処理端末50からのデータを受信するサーバー受信部17とをサーバー10は有している。
【0022】
また、本発明に係る騒音評価データ収集システム1で用いられる情報処理端末50としては、例えば、iPad(登録商標)など現在普及している一般的なものを用いることができる。情報処理端末50は、演算を実行する演算処理機能、データを記憶可能なデータ記憶機能、タッチパネル部55などのユーザーインターフェイス機能、他の情報処理装置とデータ通信する通信機能など、情報処理端末として現在一般的な機能を備えるものを用いることができる。
【0023】
本発明に係る騒音評価データ収集システム1で用いる情報処理端末50としては、ユーザーインターフェイス機能の一部として、受音点における騒音レベルを聴くユーザーのための音声出力を行うヘッドフォン52を接続可能とするプラグが設けられることが必須となる。
【0024】
このような情報処理端末50には、本発明に係る騒音評価データ収集システム1を動作させるプログラムがインストールされている。
【0025】
情報処理端末50の演算処理機能で実行される騒音評価データ収集システム1のプログラムのうち重要なものとしては、サーバー10から送信される再生データを再生するものを挙げることができる。また、情報処理端末50で実行されるプログラムのうち重要なものとしては、情報処理端末50に設けられるユーザーインターフェイスであるタッチパネル部55を通じて、ユーザーに対し騒音評価データの評価付けに関する情報表示を行い、タッチパネル部55から騒音評価データを収集する機能を実行する。
【0026】
また、上記のような情報処理端末50の通信機能を実行するものとして、情報処理端末50自身からサーバー10にデータを送信する端末送信部56と、サーバー10からのデータを受信する端末受信部57とを情報処理端末50は有している。
【0027】
サーバー10と情報処理端末50との間のデータ通信において、再生データ等の送受のための通信プロトコルとしてはどのようなものを用いてもよいが、本実施形態においては、OSC(OpenSound Control)を用いることで効率的なデータ転送を図るようにしている。
【0028】
なお、本明細書においては、可搬型の情報処理装置を総称する用語として、情報処理端末50が用いられている。本明細書における情報処理端末50には、タブレット型端末、スマートフォン、可搬型のタブレット型やノート型のパーソナルコンピューターなども含まれる。
【0029】
次に、以上のように構成される本発明に係る騒音評価データ収集システム1において、情報処理端末50のユーザーである各受音点における住民に対して、防音壁や防音シートなどの遮音手段による工事騒音の低減に係る提案を行うためのデータ(「騒音評価用提案データ」)の作成について説明する。このような騒音評価用提案データの設定・作成は、サーバー10側で人の手によってなされる人為的なものである。サーバー10は、この騒音評価用提案データに基づいて、各受音点における騒音レベルの再生データを生成して、各ユーザーの情報処理端末50に送信する。
【0030】
図2は本発明の実施形態に係る騒音評価データ収集システム1による騒音評価用提案データの作成工程の一例を示す図である。また、図3は各種データのデータ構造例を示す図であり、また、図4は騒音評価用提案データの一例を示す図である。なお、図2の工程に基づいた設定を、特許請求の範囲では、「第1設定」と称している。
【0031】
図2において、ステップS100で騒音評価用提案データ作成が開始されると、続いて、ステップS101に進み、サーバー10操作者は地図データ選択ステップを実行する。
【0032】
ここで、図3(a)に地図データのデータ構造例を示す。「地図データデータ構造」には、所在地に係るデータである「住所データ」、地図データ上のそれぞれの地点における経度・緯度・標高に係るデータである「緯度経度標高データ」、及び地図データ上における道路のレイアウトを規定する「道路データ」などが含まれてなるものである。
【0033】
なお、「地図データデータ構造」には、既設の建築物のデータなどを含めるようにしてもよい。この場合、データ中には、既設建築物の階数情報など記述され、音響計算に利用されることが好ましい。
【0034】
図4(a)は、ステップS101で実行される設定の概念を示す図である。図4(a)においては、シミュレーションを行う工事現場における騒音が伝搬する範囲と、考慮されるべき住宅の位置(受音点の位置)との関係で、地図データの範囲が決定される。
【0035】
ステップS102では、サーバー10操作者によって騒音源種別選択ステップが実行される。また、ステップS103では、サーバー10操作者によって騒音源位置設定ステップが実行される。
【0036】
ここで、図3(b)に騒音源のデータ構造例を示す。「騒音源データ構造」には、例として「騒音源種別名称データ」、「音源データ(音圧、周波数特性)」、「地図上グラフィックデータ」などが含まれている。
【0037】
「騒音源種別名称データ」は、工事において騒音源となり得る発音物体の名称に係るデータである。このような「騒音源種別名称データ」には、例えば、ダンプトラック、トレーラー、ブルドーザー、バックホウ、クレーン、杭打ち機、地盤改良機、発電機などが含まれる。
【0038】
また、「音源データ(音圧、周波数特性)」は、騒音源となる発音物体の原音の音響特性に係るデータである。このような音響特性に係るデータとしては、音圧のデータや、周波数特性のデータなどが含まれる。例えば、「騒音源種別名称データ」がバックホウであれば、「音源データ(音圧、周波数特性)」には、典型的なバックホウの音圧データ、周波数特性データが記述されている。
【0039】
また、「地図上グラフィックデータ」は、騒音源を地図上で視覚的に表示するために用いられるグラフィックデータである。例えば、「騒音源種別名称データ」がバックホウであれば、「地図上グラフィックデータ」には、図3(b)の例)に示すように、アイコンのようなバックホウを示すグラフィックデータが格納されている。なお、このようなグラフィックデータは静止したグラフィックデータであっても良いし、アニメーションのグラフィックデータであっても構わない。
【0040】
図4(b)は、ステップS102、ステップS103で実行される設定の概念を示す図である。図4(b)においては、地図データ上の図示する位置に、騒音源として(A)ダンプトラックと、(B)バックホウとが設定された様子が示されている。
【0041】
続く、ステップS104では、サーバー10操作者によって受音点設定ステップが実行される。図4(c)は、ステップS104で実行される設定の概念を示す図である。図4(c)においては、地図データ上の図示する位置に、受音点として(X)、(Y)、(Z)が設定された様子が示されている。なお、地図データ上の受音点の表示には、住宅の表すグラフィックデータを適宜用いるようにすることが好ましい。
【0042】
ステップS105では、サーバー10操作者によって遮音手段(性能・形状・配置)設定ステップが実行される。
【0043】
ここで、図3(c)に遮音手段のデータ構造例を示す。「遮音手段データ構造」には、例として「遮音手段種別名称データ」、「遮音性能データ」、「地図上グラフィックデータ」などが含まれている。
【0044】
「遮音手段種別名称データ」は、工事において騒音源を遮音し得る遮音物体の名称に係るデータである。このような「遮音手段種別名称データ」には、例えば、防音壁、防音扉、防音シート、逆位相システムなどが含まれる。
【0045】
また、「遮音性能データ」は、音の透過率など遮音物体の音響特性に係るデータである。なお、ステップS105では、遮音手段として、例えば音の透過率の高低などの性能に係る設定、遮音手段の形状(厚さ、高さ)に係る設定、どの位置からどの位置にわたって遮音手段をレイアウトするかに係る配置に係る設定を行い得るようになっている。
【0046】
また、「地図上グラフィックデータ」は、遮音物体を地図上で視覚的に表示するために用いられるグラフィックデータである。例えば、「遮音手段種別名称データ」が防音壁であれば、「地図上グラフィックデータ」には、図3(c)の例)に示すように、「壁」を示すグラフィックデータが格納されている。
【0047】
ステップS106では、作成された騒音評価用提案データを不図示のサーバー10記憶手段に格納し騒音評価用提案データの作成を終了する。
【0048】
次に、以上のように作成・設定された騒音評価用提案データに基づいて、サーバー10側で各受音点における再生データを生成し、これらを、各受音点を模擬する情報処理端末50に対して送信する処理について説明する。このような処理は、サーバー10側がプログラムに基づいて実行するものであり、人為的な処理を要しない。
【0049】
図5は本発明の実施形態に係る騒音評価データ収集システム1で実行される再生データ配信処理のフローチャートを示す図である。当該フローチャートは、サーバー10によって実行されるものである。
【0050】
ステップS200で再生データ配信処理が開始されると、続いて、ステップS201では、騒音評価用提案データ作成処理で作成された騒音評価用提案データの各設定データを取得する。
【0051】
続いて、ステップS202においては、騒音計算ソルバ部11によって各受音点(本実施形態の例では((X)、(Y)、(Z)の3つの受音点)のそれぞれに対応した再生データを生成する。(本実施形態の例では、3パターンの再生データが生成されることとなる。)
次のステップS203では、先のステップで生成された各再生データを、各受音点における騒音を模擬する情報処理端末50(本実施形態の例では、50x、50y、50z)に対して送信する。
【0052】
ステップS204では、再生データ配信処理を終了する。
【0053】
次に、以上のようなサーバー10で生成された再生データを再生する情報処理端末50側における騒音評価処理について説明する。このような騒音評価処理においては、各情報処理端末50はそれぞれが模擬する受音点での騒音を音声出力で再現し、ヘッドフォン52によってユーザーに聞いてもらう。さらに、ユーザーはヘッドフォン52でシミュレートされた騒音を聞き、それに対する評価を実施することが想定されている。
【0054】
図6は本発明の実施形態に係る騒音評価データ収集システム1で実行される騒音評価処理のフローチャートを示す図である。当該フローチャートは、情報処理端末50(より詳細には本実施形態では、情報処理端末50yとする)によって実行されるものである。
【0055】
ステップS300で、騒音評価処理が開始されると、続いて、ステップS301においては、受信した再生データを再生する。このステップで再生された音声は、ヘッドフォン52から音声出力される。
【0056】
続く、ステップS302においては、タッチパネル部55からユーザーによる騒音評価データを取得する。図7は、ユーザーが情報処理端末50で再生された再生データの音声出力をヘッドフォン52で聞いて、タッチパネル部55から評価を入力する様子を示す図である。
【0057】
図7において、タッチパネル部55における(イ)の表示欄では、サーバー10側で設定された騒音評価用提案データの概要を表示するものとなっている。
【0058】
また、(ロ)の表示欄では、受音点(Y)での騒音レベルの再生データが再生され、ヘッドフォン52から受音点(Y)の模擬騒音が音声出力されている状態を表示してなる。
【0059】
また、(ハ)はユーザーによって騒音評価データが入力される欄であって、スライダー(ニ)が表示されている。このスライダー(ニ)をユーザーが操作することで、騒音の「許容度」として、(許容不可)から(許容)までの範囲の入力を、ヘッドフォン52から模擬騒音を聞いたユーザーが行うことができるようになっている。なお、タッチパネル部55(ハ)のユーザーインターフェイス画面上では表示されないが、スライダー(ニ)の指定位置に応じて、例えば、(許容不可)=0から(許容)=100まで、のような数値化が実施される。
【0060】
ステップS303では、タッチパネル部55のスライダー(ニ)から入力されたユーザーによる騒音評価データがサーバー10に送信され、ステップS304で、騒音評価処理が終了となる。
【0061】
次に、以上のような情報処理端末50から送信された各受音点におけるユーザーによる騒音評価データは、サーバー10で収集される。そして、サーバー10では、最初の騒音評価用提案データより、多くの賛同を得られる可能性がある第2の騒音評価用提案データの設定を行う。以下の、初回より後に作成される騒音評価用提案データの設定を、特許請求の範囲では「第2設定」と称している。
【0062】
図8は本発明の実施形態に係る騒音評価データ収集システム1で実行される再提案作成処理のフローチャートを示す図である。当該フローチャートは、サーバー10によって実行されるものである。なお、再提案する騒音評価用提案データの作成のために、以下の実施形態では、最低の騒音評価データを与えたユーザーを基準として、当該ユーザーにとっての騒音低減の改善を図るようなアルゴリムに基づいて説明を行うが、再提案する騒音評価用提案データの作成アルゴリズムがこのようなものに限られるものではない。
【0063】
図8において、ステップS400で、再提案作成処理が開始されると、続いて、ステップS401 各タブレット端末から各受音点におけるユーザーの騒音評価データを受信し、当該騒音評価データの収集を実施する。
【0064】
次のステップS402では、収集された騒音評価データのうち、騒音評価データが最低のユーザーの受音点を選択し、ステップS403では、当該受音点における音量レベル(騒音レベル)を低減する遮音手段(性能・形状・配置)の再設定を行う。このステップで実行される遮音手段(性能・形状・配置)の再設定としては、例えば、防音壁としてより音の透過率の小さい防音壁に変更する、防音壁の高さや長さを延長する、といったことが実行される。
【0065】
図9は騒音評価用提案データの(a)第1設定と、より騒音低減が改善された(b)第2設定との相違例を示す図である。図9の(b)第2設定においては、遮音手段(R)の防音壁の囲み部分が延長されてなる。
【0066】
続いて、ステップS404では、騒音計算ソルバ部11によって各受音点(本実施形態の例では((X)、(Y)、(Z)の3つの受音点)のそれぞれに対応した再生データを生成する。(本実施形態の例では、再び3パターンの再生データが生成されることとなる。)
次のステップS405では、先のステップで生成された各再生データを、各受音点における騒音を模擬する情報処理端末50(本実施形態の例では、50x、50y、50z)に対して送信する。
【0067】
ステップS406では、再提案作成処理を終了する。
【0068】
この図8に示すような再提案作成処理のアルゴリズムを実行することにより、より多くの住民(ユーザー)が納得するような騒音低減措置を講ずることが可能となる。なお、再提案作成処理のフローに基づく、再提案処理は複数回行ってもよい。
【0069】
以上のように、本発明に係る騒音評価データ収集システム1は、サーバー10が、それぞれの受音点における騒音レベルの再生データを生成し、これら再生データを情報処理端末50に対して送信すると共に、再生データを受信した複数の情報処理端末50がそれぞれ再生した再生データに対するユーザー(工事現場周辺の住民を想定)による評価データを取得し、取得された評価データをサーバー10に対して送信する構成を有しており、このような本発明に係る騒音評価データ収集システム1によれば、ユーザー(住民)それぞれの立場における受音点で、ユーザーが騒音をどのように評価したかに係るデータ、を効率的に収集することが可能となる。
【0070】
なお、工事騒音のシミュレート音の再生に当たっては、一般に知られている音の減衰の計算式を適宜利用することができるが、以下、計算式の一例を挙げる。図10は本発明の実施形態に係る騒音評価データ収集システム1における防音壁による騒音の減衰の計算例を説明する図である。図10を参照して、防音壁設置時の、受音点における音量レベルを演算する方法を説明する。
【0071】
騒音源と受音点との間に防音壁を設置すると、防音壁による回折現象により音が減衰する。防音壁による音の減衰量を次式に示す。なお、LWAは、音源のパワーレベルを表している。
<防音壁からの回折音の計算>
【0072】
【数1】
ただし、
ATTは防音壁の回折減衰[dB]であり、
N≧1.0のとき、ATT=10×Log(N)+13
0≦N<1.0のとき、ATT=5+8×N0.45
0.3≦N0のとき、ATT=5-8×|N|0.4
N<-0.3のとき、ATT=0
である。また、
Nはフレネル数で、N=(2×δ)/λ
であり、また、
δは経路差で、δ=(r1+r2)―r
であり、また、
λは波長で、λ=C/f (f:中心周波数[Hz])
であり、また、
Cは音の伝搬速度で、C=340[m/s]
である。
<防音壁を透過する音の計算>
【0073】
【数2】
ただし、
TLは防音壁材料の透過損失[dB]である。
<デシベルの合成>
回折音LPA1と、透過音LPA2の合成騒音レベルLPAは、下式(3)にて合成計算する。
【0074】
【数3】
以上のような計算例は、音量レベルの演算方法の一例であり、他の方法を用いてもよい。
【0075】
以上、本発明に係る騒音評価データ収集システムは、サーバーが、それぞれの受音点における騒音レベルの再生データを生成し、これら再生データを情報処理端末に対して送信すると共に、再生データを受信した複数の情報処理端末がそれぞれ再生した再生データに対するユーザー(工事現場周辺の住民を想定)による評価データを取得し、取得された評価データをサーバーに対して送信する構成を有しており、このような本発明に係る騒音評価データ収集システムによれば、ユーザー(住民)それぞれの立場における受音点で、ユーザーが騒音をどのように評価したかに係るデータ、を効率的に収集することが可能となる。
【符号の説明】
【0076】
1・・・騒音評価データ収集システム
10・・・サーバー
11・・・騒音計算ソルバ部
16・・・サーバー送信部
17・・・サーバー受信部
50・・・情報処理端末
52・・・ヘッドフォン
55・・・タッチパネル部
56・・・端末送信部
57・・・端末受信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10