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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】可動防護柵
(51)【国際特許分類】
   E01F 15/04 20060101AFI20221021BHJP
【FI】
E01F15/04 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018218897
(22)【出願日】2018-11-22
(65)【公開番号】P2020084519
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000192615
【氏名又は名称】日鉄神鋼建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 篤徳
(72)【発明者】
【氏名】石井 麻貴
(72)【発明者】
【氏名】仲岡 重治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】柴田 公茂
(72)【発明者】
【氏名】大封 貴昭
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特許第6014782(JP,B1)
【文献】特開2002-002209(JP,A)
【文献】特開2004-168120(JP,A)
【文献】特開2016-055665(JP,A)
【文献】特開2017-040138(JP,A)
【文献】国際公開第02/097196(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 13/00-15/14
E01F 1/00
B60B 33/00-33/08
E04H 17/00-17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路及びその道路に隣接する所定の場所に設置される可動防護柵であって、
前記所定の場所に前記可動防護柵が設置されたときに前記道路に沿って延びるように配置されるビームと、
地面から上方へ離間した位置で地面に沿って配置されたベースプレートと、
前記ベースプレート上に立設されて前記ビームを支える支柱と、
前記ベースプレートから下方へ突出するように前記ベースプレートに取り付けられ、地面に沿って移動可能に構成されたキャスタと、を備え、
前記キャスタは、地面に接触して転動する車輪及び前記車輪が水平軸回りに回転可能となるように当該車輪を支持する車輪支持部を有するキャスタ本体と、前記ベースプレートに取り付けられて前記ベースプレートから下方へ延びる取付軸と、前記車輪支持部が前記取付軸の軸心を中心として前記取付軸に対して旋回可能となるように前記取付軸と前記車輪支持部との間に介装された軸受装置と、を含み、
前記軸受装置は、前記取付軸と同軸となるように前記取付軸に固定された内輪部材と、前記内輪部材に対して前記取付軸の軸心を中心として回転可能となるように前記内輪部材に取り付けられた外輪部材と、を有し、
前記車輪支持部は、前記外輪部材の周りを囲む周縁部を有していて、この周縁部が前記外輪部材と圧着されることによって前記車輪支持部が前記外輪部材に固定され、
前記可動防護柵は、前記車輪支持部が前記外輪部材とともに前記取付軸及び前記内輪部材に対して旋回するのを許容しつつ、前記取付軸からの前記キャスタ本体の飛散を抑止するように前記車輪支持部と前記取付軸とを繋ぐ飛散抑止部材をさらに備え
前記飛散抑止部材は、前記取付軸に装着される取付軸装着部を有し、前記取付軸装着部は、前記取付軸が挿通される挿通孔を有していて、その挿通孔に挿通された前記取付軸の周りを囲むことによって前記取付軸に装着されている、可動防護柵。
【請求項2】
前記飛散抑止部材は、前記キャスタ本体の前記車輪支持部に取り付けられた車輪支持部取付部と、前記取付軸装着部と前記車輪支持部取付部とを繋ぐ中間連結部とをさらに有し、
前記取付軸装着部、前記車輪支持部取付部及び前記中間連結部は、単一の金属板から形成され、
前記挿通孔は、前記金属板の板厚方向に前記取付軸装着部を貫通し、
前記取付軸装着部は、前記取付軸の軸心を中心として前記取付軸に対して回転可能に装着されている、請求項に記載の可動防護柵。
【請求項3】
前記車輪支持部は、前記車輪が回転可能となるように前記車輪を貫通して支持する車軸と、前記車軸が水平方向に延びる姿勢を取るように前記車軸を保持する車軸保持部とを有し、
前記車軸保持部は、前記車輪の軸方向に沿う方向において当該車輪の両側に配置された一対の側壁部を有し、
前記車軸は、前記一対の側壁部のうちの一方の側壁部を貫通して外側へ突出した突出部を有し、
前記車輪支持部取付部は、前記車軸の前記突出部に取り付けられている、請求項に記載の可動防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路に沿って設置される防護柵として、例えば道路の中央分離帯や車道と歩道との間の境界等に設置される様々な防護柵が知られている。
【0003】
下記特許文献1には、地面に沿って移動することが可能な可動防護柵が開示されている。当該可動防護柵は、通常の使用時には道路の中央分離帯等に設置されるが、緊急時にはその設置場所から移動することが可能である。具体的に、この可動防護柵は、地面に沿って移動可能であって上下方向に延びる筒状の支柱をそれぞれ有する複数の可動側部材と、当該複数の可動側部材の支柱を横切る方向に延びるとともにそれらの支柱を繋ぐビームと、地面に固定された複数の固定管と、上下方向に移動可能に各可動側部材の支柱内に収容された複数の連結部材とを備えている。
【0004】
可動防護柵の通常の使用時には、その設置場所において各連結部材が支柱内の空間と対応する固定管内の空間とに跨るように配置されてその連結部材により支柱と対応する固定管とが連結されることで可動側部材が移動しないように固定される。一方、緊急時には、各連結部材が固定管から離脱するように引き上げられて、当該各連結部材による各可動側部材の支柱と対応する固定管との連結が解除される。これにより、各可動側部材が移動可能となり、それによって可動防護柵が設置場所から移動可能となる。
【0005】
可動側部材は、略水平に配置されて前記支柱が立設される支持台と、その支持台から下方へ突出するように当該支持台に取り付けられた複数のキャスタとを有する。各キャスタは、地面上をあらゆる方向に自在に転動可能に構成されており、このキャスタの機能により可動側部材が移動可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6014782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のようなキャスタは、一般的に、地面に接触して転動する車輪及びその車輪が水平軸回りに回転可能となるように当該車輪を支持する車輪支持部を有するキャスタ本体と、前記支持台に取り付けられて前記支持台から下方へ延びる取付軸と、車輪支持部が取付軸の軸心を中心として取付軸に対して旋回可能となるように取付軸と車輪支持部との間に介装された軸受装置とを有する。
【0008】
軸受装置は、取付軸と同軸となるようにその取付軸に固定された内輪部材と、内輪部材に対して取付軸の軸心を中心として回転可能となるように内輪部材に取り付けられた外輪部材と、を有する。キャスタ本体の車輪支持部は、前記外輪部材の周りを囲むように配置されて前記外輪部材に圧着された周縁部を有する。このように車輪支持部の周縁部が外輪部材に圧着されることによって車輪支持部が外輪部材に固定され、その結果、キャスタ本体が外輪部材とともに前記内輪部材及び前記取付軸に対して旋回可能となっている。
【0009】
ところで、このようなキャスタを有する可動防護柵に車両が衝突したときには、その衝突に起因する非常に大きな力がキャスタに作用することによってキャスタ本体が取付軸及び軸受装置から外れて大きく飛散する虞がある。
【0010】
具体的に、車両が可動防護柵に衝突すると、可動防護柵の支柱を車両が走行していた道路と反対側へ傾かせるような大きな力が当該支柱に作用する。このとき、支柱とともに支持台及びその支持台に取り付けられたキャスタの取付軸及び軸受装置が傾き、その結果、軸受装置の外輪部材が斜めに倒れながら当該外輪部材を車輪支持部の周縁部から引き抜くような力が作用してその周縁部と軸受装置の外輪部材との圧着が外れる。その結果、キャスタ本体が取付軸及び軸受装置から離脱する。同時に、キャスタ本体は、斜めに傾いた支持台と地面との間で挟み込まれて圧迫され、その圧迫力により、支持台と地面との間の間隔が大きい方、すなわち可動防護柵に衝突した車両が走行していた道路側へ弾き出される。
【0011】
本発明の目的は、可動防護柵に車両が衝突した場合にキャスタ本体が大きく飛散するのを抑止可能な可動防護柵を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するためには、例えば、キャスタ本体の車輪支持部をベースプレートに対して溶接したりボルトとナットで締結したりすることによって車輪支持部が車両衝突時にキャスタに作用する力でベースプレートから分離しないようにその車輪支持部をベースプレートに固定することが考えられる。しかしながら、この場合には、キャスタ本体が鉛直軸回りに旋回できなくなるため、可動防護柵が地面に沿って自在に方向転換できるという機能が失われる。そこで、本願発明者は、このような課題を解決するため、以下のような可動防護柵を発明した。
【0013】
本発明により提供される可動防護柵は、道路及びその道路に隣接する所定の場所に設置される可動防護柵であり、この可動防護柵は、前記所定の場所に前記可動防護柵が設置されたときに前記道路に沿って延びるように配置されるビームと、地面から上方へ離間した位置で地面に沿って配置されたベースプレートと、前記ベースプレート上に立設されて前記ビームを支える支柱と、前記ベースプレートから下方へ突出するように前記ベースプレートに取り付けられ、地面に沿って移動可能に構成されたキャスタと、を備える。前記キャスタは、地面に接触して転動する車輪及び前記車輪が水平軸回りに回転可能となるように当該車輪を支持する車輪支持部を有するキャスタ本体と、前記ベースプレートに取り付けられて前記ベースプレートから下方へ延びる取付軸と、前記車輪支持部が前記取付軸の軸心を中心として前記取付軸に対して旋回可能となるように前記取付軸と前記車輪支持部との間に介装された軸受装置と、を含む。前記軸受装置は、前記取付軸と同軸となるように前記取付軸に固定された内輪部材と、前記内輪部材に対して前記取付軸の軸心を中心として回転可能となるように前記内輪部材に取り付けられた外輪部材と、を有する。前記車輪支持部は、前記外輪部材の周りを囲む周縁部を有していて、この周縁部が前記外輪部材と圧着されることによって前記車輪支持部が前記外輪部材に固定されている。前記可動防護柵は、前記車輪支持部が前記外輪部材とともに前記取付軸及び前記内輪部材に対して旋回するのを許容しつつ、前記取付軸からの前記キャスタ本体の飛散を抑止するように前記車輪支持部と前記取付軸とを繋ぐ飛散抑止部材をさらに備える。
【0014】
この可動防護柵では、前記飛散抑止部材が、キャスタ本体の車輪支持部が軸受装置の外輪部材とともに取付軸及び内輪部材に対して旋回するのを許容しつつ、取付軸からのキャスタ本体の飛散を抑止するように車輪支持部と取付軸とを繋いでいるので、可動防護柵が地面に沿ってキャスタにより自在に方向転換できるという機能を維持しつつ、可動防護柵に車両が衝突した場合にキャスタ本体が大きく飛散するのを抑止できる。
【0015】
具体的に、この可動防護柵では、当該可動防護柵に車両が衝突し、そのときにキャスタに作用する力により軸受装置の外輪部材に対する車輪支持部の周縁部の圧着が外れてキャスタ本体が取付軸及び軸受装置から離脱した場合であっても、キャスタ本体の車輪支持部とベースプレートに取り付けられた取付軸とを繋ぐ前記飛散抑止部材により、キャスタ本体が取付軸及び軸受装置から大きく飛散するのを抑止できる。
【0016】
また、この可動防護柵では、キャスタ本体の車輪支持部とベースプレートに取り付けられた取付軸とを繋ぐ前記飛散抑止部材が、キャスタ本体の車輪支持部が軸受装置の外輪部材とともに取付軸及び内輪部材に対して旋回するのを許容するので、キャスタ本体が旋回できるというキャスタの機能を維持でき、その結果、可動防護柵が地面に沿って自在に方向転換できるという機能を維持できる。
【0017】
前記飛散抑止部材は、前記取付軸に装着される取付軸装着部を有し、前記取付軸装着部は、前記取付軸が挿通される挿通孔を有していて、その挿通孔に挿通された前記取付軸の周りを囲むことによって前記取付軸に装着されていることが好ましい。
【0018】
この構成では、飛散抑止部材の取付軸装着部がその挿通孔に挿通された取付軸の周りを囲むことによって取付軸に装着されているので、飛散抑止部材がキャスタ本体の飛散を抑止する際に大きな力が当該飛散抑止部材にかかったとしても、取付軸装着部が取付軸から外れるのを防ぐことができる。
【0019】
前記飛散抑止部材は、前記キャスタ本体の前記車輪支持部に取り付けられた車輪支持部取付部と、前記取付軸装着部と前記車輪支持部取付部とを繋ぐ中間連結部とをさらに有し、前記取付軸装着部、前記車輪支持部取付部及び前記中間連結部は、単一の金属板から形成され、前記挿通孔は、前記金属板の板厚方向に前記取付軸装着部を貫通し、前記取付軸装着部は、前記取付軸の軸心を中心として前記取付軸に対して回転可能に装着されていることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、単一の金属板から形成された飛散抑止部材の取付軸装着部、車輪支持部取付部及び中間連結部によって取付軸とキャスタ本体の車輪支持部とが繋がれているため、例えば可撓性を有する索状体によって取付軸とキャスタ本体の車輪支持部とが繋がれる場合に比べて、キャスタ本体の車輪支持部をより強固に取付軸に繋ぎ止めることができる。このため、キャスタ本体の飛散をより確実に抑止できる。また、前記索状体によって取付軸と車輪支持部とが繋がれる場合にはキャスタ本体が何周も旋回するうちに索状体がキャスタ本体に巻き付いてキャスタ本体の旋回が阻害される虞があるが、本構成では、飛散抑止部材の取付軸装着部、車輪支持部取付部及び中間連結部が単一の金属板から形成されているとともに、当該飛散抑止部材の取付軸装着部が取付軸の軸心を中心として取付軸に対して回転可能に装着されているため、キャスタ本体が取付軸に対して旋回するときには、飛散抑止部材は、そのキャスタ本体の旋回を阻害することなく当該キャスタ本体とともに取付軸に対して旋回できる。従って、本構成では、キャスタ本体が何周も旋回する場合であっても、飛散抑止部材によってそのキャスタ本体の旋回が阻害されることはない。
【0021】
前記車輪支持部は、前記車輪が回転可能となるように前記車輪を貫通して支持する車軸と、前記車軸が水平方向に延びる姿勢を取るように前記車軸を保持する車軸保持部とを有し、前記車軸保持部は、前記車輪の軸方向に沿う方向において当該車輪の両側に配置された一対の側壁部を有し、前記車軸は、前記一対の側壁部のうちの一方の側壁部を貫通して外側へ突出した突出部を有し、前記車輪支持部取付部は、前記車軸の前記突出部に取り付けられていることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、車軸を利用して飛散抑止部材の車輪支持部取付部を車輪支持部に取り付けることができるため、飛散抑止部材の車輪支持部取付部を取り付けるための部位を車輪支持部に別途設ける場合に比べて、キャスタの構成が複雑化するのを抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、可動防護柵が地面に沿って自在に方向転換できるという機能を維持しつつ、可動防護柵に車両が衝突した場合にキャスタ本体が大きく飛散するのを抑止可能な可動防護柵を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態による可動防護柵が複数並んで設置された状態における当該複数の可動防護柵の正面図である。
図2図1中のII-II線に沿った可動防護柵の断面図である。
図3】前記可動防護柵のキャスタとベースプレートのうちそのキャスタが取り付けられた部分をキャスタの車輪の軸方向に沿って見た状態で示す図である。
図4図3に示したキャスタ及びベースプレートを図3中のIV方向から見た図である。
図5図4に示したキャスタ及びベースプレートを、取付軸に対するキャスタ本体の車輪支持部の接続箇所近傍を部分的に取付軸の軸心に沿って破断させて示す図である。
図6図4中のVI-VI線に沿った断面図である。
図7】前記キャスタに用いられる飛散抑止部材の正面図である。
図8】前記飛散抑止部材を図7中のVIII方向から見た図である。
図9】前記飛散抑止部材を図7中のIX方向から見た図である。
図10】可動防護柵に車両が衝突したときにベースプレート及びキャスタに作用する力によってキャスタ本体の車輪支持部と軸受装置の外輪部材との結合が外れる過程を説明するための図である。
図11】可動防護柵に車両が衝突したときにベースプレート及びキャスタに作用する力によってキャスタ本体の車輪支持部と軸受装置の外輪部材との結合が外れる過程を説明するための図である。
図12】本発明の一変形例による飛散抑止部材及びそれが装着されたキャスタを示す図3相当図である。
図13図12に示した変形例による飛散抑止部材及びキャスタをその飛散抑止部材の中間連結部が取り外された状態で図12中のXIII方向から見た図である。
図14】本発明の別の変形例による飛散抑止部材及びそれが装着されたキャスタを示す図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0026】
本発明の一実施形態による可動防護柵1は、道路上や、道路に隣接する場所、歩道と車道との間の境界上などの様々な場所に設置される。例えば、本実施形態による可動防護柵1は、高速道路やその他の道路の中央分離帯上に設置される。その際、図1に示すように、複数の可動防護柵1が並んで設置される。これらの複数の可動防護柵1は、道路に沿って並ぶとともに各可動防護柵1が道路に沿って延びるように配置され、中央分離帯の両側の道路間を仕切って一方の道路から反対車線の道路への車両の進入を防止する。また、各可動防護柵1は、緊急時には、その設置場所から移動させることができるように構成されている。
【0027】
具体的に、可動防護柵1は、複数のベースプレート2と、複数の支柱4と、複数の挿入管6と、複数のビーム8と、複数のビーム連結部材9と、複数のキャスタ10と、を備えている。
【0028】
複数のベースプレート2は、可動防護柵1の基台となるものである。各ベースプレート2は、略水平に配置された平板状をなし、地面Gから上方へ離間した位置で地面Gに沿って配置されている。
【0029】
複数の支柱4は、ビーム連結部材9を介してビーム8を支えるものである。この複数の支柱4は、それぞれ、対応するベースプレート2を貫通し、そのベースプレート2から上方へ延びる姿勢で当該ベースプレート2に立設されて固定されている。各支柱4は、中空の円筒状をなしている。
【0030】
複数の挿入管6は、それぞれ、対応する支柱4に対してその支柱4の軸方向(上下方向)に相対移動可能となるように当該支柱4内に挿入されている。この挿入管6は、可動防護柵1が設置場所に設置されるときに、その設置場所の地中に埋め込まれた固定管100内の空間と支柱4内の空間とに跨るように配置されて固定管100と支柱4とを連結し、それによって可動防護柵1をその設置場所で固定する。また、可動防護柵1をその設置場所から移動させるときには、当該挿入管6は固定管100内の空間から上方へ引き抜かれて、当該挿入管6による固定管100と支柱4との連結が解除され、それによって設置場所からの可動防護柵1の移動が許容されるようになっている。
【0031】
複数のビーム8は、それぞれ、波板状をなし、可動防護柵1の長手方向(可動防護柵1が延びる方向)に沿って延びている。各ビーム8は、可動防護柵1がその設置場所に設置されたときに道路に沿って延びるように配置される。ビーム8は、可動防護柵1の長手方向に直交する水平方向における当該可動防護柵1の一方の側面と他方の側面を構成するものであり、可動防護柵1の長手方向に直交する水平方向において前記ベースプレート2及び前記支柱4に対して一方側とその反対側とにそれぞれ配置されている(図2参照)。ベースプレート2及び支柱4に対して一方側に配置されたビーム8と反対側に配置されたビーム8は、可動防護柵1が中央分離帯上に設置された状態で中央分離帯に対して一方側の道路と反対車線の道路とにそれぞれ面する。
【0032】
複数のビーム連結部材9は、図2に示すように、前記ベースプレート2及び前記支柱4に対して一方側とその反対側とに配置されたビーム8同士を連結するものである。具体的には、複数のビーム連結部材9は、前記ベースプレート2及び前記支柱4に対して一方側に配置されたビーム8と反対側に配置されたビーム8との間でビーム8の長手方向と直交する水平方向にそれぞれ延びている。そして、各ビーム連結部材9の長手方向の両端部がそれぞれ対応するビーム8に結合され、それによって、各ビーム連結部材9は前記ベースプレート2及び前記支柱4に対して一方側とその反対側とに配置されたビーム8同士を連結している。また、ビーム連結部材9は、図1に示すように、ビーム8の長手方向の両端近傍の位置と各支柱4に近接した位置とにそれぞれ配置されている。各支柱4に近接した位置に配置されたビーム連結部材9は、その支柱4に結合されている。これにより、各支柱4と各ビーム8がそれらに結合したビーム連結部材9を介して連結されている。
【0033】
複数のキャスタ10は、可動防護柵1が地面G上を移動でき且つ自在に方向転換できるようにするものである。各キャスタ10は、地面Gに沿って当該地面G上を移動可能に構成されている。各キャスタ10は、前記ベースプレート2から下方へ突出するように前記ベースプレート2に取り付けられている。本実施形態では、1つのベースプレート2に4つのキャスタ10が取り付けられ、その4つのキャスタ10は、支柱4の位置を中心として四方に分かれて配置されている。各キャスタ10は、取付軸12(図3参照)と、軸受装置14(図5参照)と、被せカバー16と、キャスタ本体18と、フレームカバー20と、を有する。
【0034】
取付軸12は、キャスタ10のうちベースプレート2に取り付けられる(固定される)部分であり、ベースプレート2を上下方向に貫通するとともに、ベースプレート2から下方へ延びている。この取付軸12の軸心は上下方向(鉛直方向)に延びている。当該取付軸12は、軸部材22と、ナット24と、ワッシャ25とを有する。
【0035】
軸部材22は、上下方向に延びている。この軸部材22は、図5に示すように、ボルト軸部26と、六角のボルト頭部28と、軸受装置取付部30と、抜止部32と、を有する。ボルト軸部26、ボルト頭部28、軸受装置取付部30及び抜止部32は、同軸に配置され、一体に形成されている。
【0036】
ボルト軸部26は、ベースプレート2を上下に貫通している。当該ボルト軸部26は、その外周面に形成された螺子溝を有する。
【0037】
ボルト頭部28は、ボルト軸部26の下端に設けられ、ベースプレート2の下側に配置されている。
【0038】
軸受装置取付部30は、軸受装置14が取り付けられる部分である。この軸受装置取付部30は、円柱状であり、ボルト頭部28から下方へ延びている。
【0039】
抜止部32は、軸受装置取付部30の下端に設けられており、軸受装置取付部30に取り付けられた軸受装置14が脱落するのを阻止するための部分である。抜止部32は、軸受装置取付部30の下端からその軸受装置取付部30の径方向外側へ広がる形状を有する。
【0040】
前記ナット24は、ボルト軸部26のうちベースプレート2から上方へ突出した部分に螺合している。前記ワッシャ25は、ボルト軸部26に外嵌した状態でナット24とベースプレート2の上面との間に挟み込まれている。ナット24は、ワッシャ25を介してベースプレート2側へ締め付けられ、それによって前記ボルト頭部28との間でベースプレート2を挟み込むようにして軸部材22をベースプレート2に締結している。
【0041】
前記軸受装置14は、取付軸12の軸心を中心とした取付軸12に対するキャスタ本体18の車輪支持部54(後述)の旋回を許容するように取付軸12の軸部材22と車輪支持部54との間に介装されている。この軸受装置14は、図5に示すように、内輪部材34と、外輪部材36と、複数のボール37を有する。
【0042】
内輪部材34は、前記取付軸12と同軸となるようにその取付軸12の軸部材22の軸受装置取付部30に固定されている。具体的には、内輪部材34は、円筒状をなし、その内側に軸受装置取付部30が圧入されることによってその軸受装置取付部30に対して外嵌して固定されている。軸受装置取付部30が内輪部材34の内側に圧入される際には、軸部材22の抜止部32から内輪部材34の内側に圧入され、その抜止部32が内輪部材34の内側を通り抜けて軸受装置取付部30が内輪部材34の内側に圧入される。内輪部材34は、軸受装置取付部30と同軸に、すなわち軸部材22と同軸に配置されている。
【0043】
外輪部材36は、内輪部材34と同軸で且つ内輪部材34を囲むようにその内輪部材34の径方向外側に配置されており、内輪部材34に対して前記取付軸12の軸心を中心として回転可能に取り付けられている。この外輪部材36は、外輪部材本体38と、受けカバー42とを有する。
【0044】
外輪部材本体38は、内輪部材34の外径よりも大きい内径を有する円筒状をなし、内輪部材34の径方向外側に内輪部材34の周りを囲むように配置されている。この外輪部材本体38と内輪部材34との間に複数のボール37が当該外輪部材本体38及び内輪部材34の周方向に並ぶように配置され、当該複数のボール37は外輪部材本体38と内輪部材34との間で保持されている。この外輪部材本体38と内輪部材34と複数のボール37によってボールベアリングが構成されている。
【0045】
受けカバー42は、内輪部材34及び外輪部材本体38の下面から外輪部材本体38の外周面にかけての領域を覆っており、それによって内輪部材34と外輪部材本体38との間のスペースに下側から塵埃等の異物が入り込むのを防いでいる。当該受けカバー42は、外輪部材本体38と密着するように嵌合されており、外輪部材本体38と一体となって前記取付軸12及び前記内輪部材34に対して前記取付軸12の軸心を中心として回転するようになっている。また、受けカバー42は、キャスタ本体18の車輪支持部54のうち後述するキャスタフレーム58の周縁部62bに圧着された圧着部42aを有する。この圧着部42aは、受けカバー42のうち外輪部材本体38の外周面を覆う部分から外輪部材本体38の上端よりも上側へ突出するように延び、外輪部材本体38の径方向外側から下側へ向かって折り返された形状を有する。
【0046】
前記被せカバー16は、軸受装置14を上から覆うように軸受装置14上に被せられ、それによって内輪部材34と外輪部材本体38との間のスペースに上側から塵埃等の異物が入り込むのを防いでいる。被せカバー16の中央には、軸部材22の軸受装置取付部30が挿通される貫通孔が設けられている。この貫通孔に軸受装置取付部30が挿通された状態で、被せカバー16は、軸部材22のボルト頭部28の下面と内輪部材34の上面との間で挟み込まれ、それによって軸部材22及び内輪部材34に固定されている。また、被せカバー16は、受けカバー42の圧着部42aの上面に接触しているが、取付軸12の軸心を中心とした外輪部材36の回転を許容している。すなわち、外輪部材36は、その受けカバー42の圧着部42aが被せカバー16に対して摺接しながら取付軸12の軸心を中心として取付軸12、内輪部材34及び被せカバー16に対して回転するようになっている。
【0047】
前記キャスタ本体18は、図3に示すように車輪52と車輪支持部54を有し、車輪52により地面G上を転動可能に構成されている。また、このキャスタ本体18は、前記軸受装置14を介して取付軸12に接続されていることによって取付軸12の軸心を中心としてその取付軸12に対して旋回可能であり、それによって地面Gに沿ってあらゆる方向に転動可能となっている。
【0048】
車輪52は、金属製の円盤からなり、その中央に貫通孔52a(図4参照)が設けられている。この車輪52は、その軸心が水平方向に延びる姿勢、換言すればその軸心が取付軸12の軸心と直交する方向に延びる姿勢で地面Gに接触し、その軸心回りに回転することにより地面G上を転動するものである。
【0049】
車輪支持部54は、車輪52がその軸心回り(水平軸回り)に回転可能となるように当該車輪52を支持するものである。この車輪支持部54は、図4に示すように、車軸56と、キャスタフレーム58と、ナット59とを有する。
【0050】
車軸56は、車輪52が回転可能となるように当該車輪52を貫通して支持する部分である。この車軸56は、車輪52の貫通孔52aに挿通される軸部56aと、軸部56aの長手方向の一端に設けられたボルト頭56bと、軸部56aのうちボルト頭56bと反対側の端部(先端部)に形成された螺子部56cと、を有する。前記螺子部56cは、本発明における突出部の一例である。車輪52は、軸部56aによって支えられ、この軸部56aを中心として回転するようになっている。
【0051】
キャスタフレーム58は、図4に示すように車輪52の軸方向の両側と当該車輪52の上側とを囲むように配置され、車軸56が水平方向に延びる姿勢を取るようにその車軸56を保持している。このキャスタフレーム58は、本発明における車軸保持部の一例である。キャスタフレーム58は、車輪52の軸方向に沿う方向においてその車輪52の両側に配置された一対の側壁部60,61と、車輪52の上方に位置する天壁部62とを有する。
【0052】
一対の側壁部60,61の各々は、取付軸12の周辺及びその下方に位置し、車輪52の軸方向に沿う方向において外側へ膨らむように湾曲した湾曲部60a,61aと、その湾曲部60a,61aから取付軸12の軸心方向及び車輪52の軸方向の両方に直交する方向において一方側へ延出した平板状の延出部60b,61bとを有する。延出部60b,61bの下端近傍の部位には、それらの部位を水平方向に貫通する貫通孔が設けられ、その貫通孔に車軸56の前記軸部56aが挿通されている。この状態で、車軸56のボルト頭56bは一方の側壁部60の延出部60bの外側に配置され、車軸56の螺子部56cは他方の側壁部61の延出部61bから外側へ突出している。すなわち、螺子部56cは、側壁部61の延出部61bを貫通して外側へ突出している。そして、前記ナット59が前記他方の側壁部61の延出部61bの外側で螺子部56cに螺合され、このナット59と前記ボルト頭56bにより一対の側壁部60,61の延出部60b,61bの貫通孔から軸部56aが抜けないように車軸56が一対の側壁部60,61に対して固定されている。
【0053】
天壁部62は、取付軸12の軸心に対して直交するように、すなわち水平に配置されている。この天壁部62には当該天壁部62を上下方向に貫通する嵌合孔62aが設けられ、当該天壁部62は、この嵌合孔62aの周縁部62bを有する。軸受装置14の外輪部材36は、天壁部62の嵌合孔62aに嵌め込まれ、天壁部62の周縁部62bは、外輪部材36の周りを囲み、外輪部材36の受けカバー42の圧着部42aに圧着されている。具体的には、周縁部62bは、嵌合孔62aの径方向内側へ向かうにつれて上方へ向かうようなテーパー状をなしている。この周縁部62bが受けカバー42の折り返された圧着部42aの内側に挿し込まれ、その圧着部42aが周縁部62bを内外から挟み込む状態でかしめられることによって当該周縁部62bと前記圧着部42aとが圧着されている。
【0054】
前記フレームカバー20は、キャスタフレーム58の上端部及び被せカバー16を覆い隠すものであり、そのキャスタフレーム58の上端部及び被せカバー16に上から被せられている。このフレームカバー20には、軸部材22のボルト頭部28の形状と対応する六角形の貫通孔20aが設けられている。フレームカバー20は、その貫通孔20aに軸部材22のボルト頭部28が挿通された状態でキャスタフレーム58の上端部及び被せカバー16に被せられている。フレームカバー20は、六角形の貫通孔20aと六角のボルト頭部28との嵌合により、軸部材22の軸心回りにボルト頭部28に対して回転しないようになっている。
【0055】
そして、本実施形態による可動防護柵1は、当該可動防護柵1に車両が衝突したときに各キャスタ10に作用する力によって各キャスタ10のキャスタ本体18が取付軸12から飛散するのを抑止するための複数の飛散抑止部材63をさらに備える。
【0056】
飛散抑止部材63は、各キャスタ10にそれぞれ装着されている。この飛散抑止部材63は、前記車輪支持部54が外輪部材36とともに取付軸12及び内輪部材34に対して旋回するのを許容しつつ、取付軸12からのキャスタ本体18の飛散を抑止するように車輪支持部54と取付軸12とを繋いでいる。
【0057】
具体的に、飛散抑止部材63は、キャスタ本体18の車輪支持部54に固定されているとともに、取付軸12に対してその取付軸12の軸心回りに回転可能に装着されている。飛散抑止部材63は、単一の金属板から形成される取付軸装着部64、車輪支持部取付部66及び中間連結部68を有する。
【0058】
取付軸装着部64は、取付軸12に装着される部分である。この取付軸装着部64は、略水平に配置される平板状をなし、当該取付軸装着部64をその板厚方向(上下方向)に貫通する円形の挿通孔64a(図9参照)を有する。図5及び図6に示すように、この挿通孔64aに取付軸12の軸部材22のボルト頭部28が挿通され、取付軸装着部64は、挿通孔64aに挿通された取付軸12のボルト頭部28の周りを囲むことによって取付軸12に装着されている。挿通孔64aの内径は、当該挿通孔64aの内周面の全体に亘って、当該挿通孔64aに挿通されたボルト頭部28の外面との間に隙間が形成されるような寸法に設定されている。これにより、取付軸装着部64は、取付軸12の軸心を中心として取付軸12のボルト頭部28に対して回転可能に装着されている。
【0059】
車輪支持部取付部66は、車輪支持部54に取り付けられる部分であり、具体的には車輪支持部54のうちの車軸56の螺子部56cに装着されてナット59により当該螺子部56cに固定される。この車軸56の螺子部56cへの車輪支持部取付部66の固定により、飛散抑止部材63が車輪支持部54に固定されている。この車輪支持部取付部66は、キャスタフレーム58の前記他方の側壁部61の延出部61bの外面に沿うように配置される平板状をなす。この車輪支持部取付部66は、当該車輪支持部取付部66をその板厚方向(水平方向)に貫通する車軸挿通孔66a(図7参照)を有する。この車軸挿通孔66aに車軸56の螺子部56cが挿通され、その状態で、車輪支持部取付部66は、螺子部56cに螺合したナット59と前記他方の側壁部61の延出部61bとの間で挟み込まれることによって車輪支持部54の車軸56に固定されている。
【0060】
中間連結部68は、取付軸装着部64と車輪支持部取付部66との間でそれらを繋ぐ部分である。この中間連結部68は、上側水平部68aと、垂下部68bと、下側水平部68bとを有する。
【0061】
上側水平部68aは、取付軸装着部64のうち前記車輪52の軸方向に沿う方向において前記他方の側壁部61の延出部61bよりも外側に位置し且つ前記延出部61bが前記湾曲部61aから延出された側を向く端部から連続するように水平に突出する平板状をなしている。
【0062】
垂下部68bは、上側水平部68aのうち前記車輪52の軸方向に沿う方向における外側の端縁から下方へ延び、前記車輪52の軸方向と直交するように配置される細長い平板状をなしている。当該垂下部68bは、前記取付軸装着部64及び上側水平部68aに対して垂直に配置されている。
【0063】
下側水平部68bは、垂下部68bの下端から前記他方の側壁部61の延出部61bへ向かって水平に延び、車輪支持部取付部66の上端と繋がっている。当該下側水平部68bは、垂下部68bに対して垂直に配置されている。
【0064】
キャスタフレーム58の前記湾曲部61aは取付軸装着部64の直下に位置してそのキャスタフレーム58の前記延出部61bよりも車輪52の軸方向において外側へ膨らんでいるとともに、車軸56は取付軸12の軸心に対して直交する水平方向において取付軸12から離れた位置に配置されているが、飛散抑止部材63の中間連結部68が以上のように構成されていることにより、キャスタフレーム58の前記湾曲部61aに対する当該中間連結部68の干渉を回避しつつ、上記のように配置された取付軸12と車軸56の螺子部56cとを当該飛散抑止部材63によって連結できるようになっている。
【0065】
可動防護柵1に車両が衝突して車輪支持部54のキャスタフレーム58の前記周縁部62bと外輪部材36の受けカバー42の圧着部42aとの圧着が外れてキャスタ本体18が取付軸12から離脱したときには、飛散抑止部材63の中間連結部68が塑性変形することによってキャスタ本体18の運動エネルギを低減させるとともに、当該飛散抑止部材63がキャスタ本体18を取付軸12に繋ぎ止めることによってキャスタ本体18が飛散するのを抑止する。また、非常に激しい勢いでキャスタ本体18が取付軸12から離脱したときには、中間連結部68が破断することがあるかもしれないが、そのような場合であっても、飛散抑止部材63は、中間連結部68が破断するまではキャスタ本体18を繋ぎ止めるため、キャスタ本体18の飛散距離が低減する。
【0066】
本実施形態による可動防護柵1では、上述のように、飛散抑止部材63が、キャスタ本体18の車輪支持部54が軸受装置14の外輪部材36とともに取付軸12及び内輪部材34に対して旋回するのを許容しつつ、取付軸12からのキャスタ本体18の飛散を抑止するように車輪支持部54と取付軸12とを繋いでいるので、可動防護柵1が地面Gに沿ってキャスタ10により自在に方向転換できるという機能を維持しつつ、可動防護柵1に車両が衝突した場合にキャスタ本体18が大きく飛散するのを抑止できる。
【0067】
具体的に、可動防護柵1に車両が衝突するときには、その車両はビーム8に衝突し、その衝突によりビーム8からビーム連結部材9を介して支柱4に当該支柱4を衝突車両が走行していた車線と反対の車線側へ傾かせるような外力が作用する。この外力がある程度の大きさまでは、支柱4内及び固定管100内に跨って挿入された挿入管6が対抗することにより、支柱4が傾かずに耐えられるが、この外力があまりにも大きい場合には、支柱4が傾き、それと共にベースプレート2及びそのベースプレート2に取り付けられたキャスタ10の取付軸12及び軸受装置14が傾く。その結果、外輪部材36の受けカバー42の圧着部42aとキャスタフレーム58の周縁部62bとの圧着が外れる。このときの挙動が図10及び図11に示されている。なお、図10及び図11では、前記圧着部42aと前記周縁部62bとの圧着が外れる挙動を判りやすく示すためにフレームカバー20及び飛散抑止部材63の図示を省略している。以下、その挙動を具体的に説明する。
【0068】
可動防護柵1に車両が衝突するときには、図10に示すF方向の外力が作用し、前記したようにその外力があまりにも大きい場合には、支柱4が傾くとともに当該図10に示すようにベースプレート2、取付軸12及び軸受装置14が一体となって傾く。この際、被せカバー16のうち衝突車両側の部分16aが浮き上がるように当該被せカバー16が変形するとともに、キャスタフレーム58の周縁部62bのうち衝突車両側の部分62cが起き上がるように変形しつつ圧着部42aから引き抜かれて圧着が外れる。
【0069】
その後、前記外力により図11に示すようにベースプレート2、取付軸12及び軸受装置14の傾きが進行し、軸受装置14の衝突車両側の部分がキャスタフレーム58の天壁部62の嵌合孔62aから離脱する。その後、前記外力によりベースプレート2の傾きがさらに進行すると、軸受装置14全体がキャスタフレーム58から離脱し、その結果、キャスタ本体18が取付軸12及び軸受装置14から完全に離脱する。
【0070】
このとき、仮にキャスタ本体18と取付軸12とが飛散抑止部材63によって繋がれていなければ、傾いたベースプレート2と地面Gとの間で圧迫されたキャスタ本体18がその圧迫力によって弾き出されて飛散する。具体的には、可動防護柵1が設置場所に設置された状態では、通常、車輪52が可動防護柵1の長手方向を向くようにキャスタ本体18が配置されているが、傾いたベースプレート2と地面Gとの間でキャスタ本体18が挟み込まれると、そのベースプレート2と地面Gとの間でキャスタ本体18が圧迫されるとともに車輪52を側方に倒すような向きの力がキャスタ本体18に作用する。その結果、キャスタ本体18が、ベースプレート2と地面Gとの間の間隔が大きい方、すなわち衝突車両が走行していた道路側へ向かって飛散する。
【0071】
これに対し、本実施形態では、可動防護柵1に車両が衝突したときにキャスタ10に作用する外力により軸受装置14の外輪部材36に対する車輪支持部54のキャスタフレーム58の周縁部62bの圧着が外れてキャスタ本体18が取付軸12及び軸受装置14から離脱した場合であっても、飛散抑止部材63がキャスタ本体18の車輪支持部54とベースプレート2に取り付けられた取付軸12とを繋いでいるので、キャスタ本体18が取付軸12及び軸受装置14から大きく飛散するのを抑止できる。
【0072】
また、キャスタ本体18が飛散するのを防止するだけであれば、例えば車輪支持部54のキャスタフレーム58をベースプレート2に対して溶接したりボルトとナットで締結したりすることによって車輪支持部54が車両衝突時に作用する外力でベースプレート2から分離しないようにその車輪支持部54をベースプレート2に固定することも考えられる。しかしながら、この場合には、キャスタ本体18が旋回できなくなるため、可動防護柵1が地面Gに沿って自在に方向転換できるという機能が失われる。これに対し、本実施形態では、飛散抑止部材63の取付軸装着部64が取付軸12の軸心を中心として当該取付軸12の軸部材22に対して回転可能となるように装着されていることにより、車輪支持部54と取付軸12とを繋ぐ飛散抑止部材63が、車輪支持部54が軸受装置14の外輪部材36とともに取付軸12及び内輪部材34に対して旋回するのを許容しているので、キャスタ本体18が旋回できるというキャスタ10の機能を維持できる。このため、可動防護柵1が地面Gに沿って自在に方向転換できるという機能を維持できる。
【0073】
また、本実施形態では、飛散抑止部材63の取付軸装着部64が、当該取付軸装着部64に設けられた挿通孔64aに挿通された取付軸12の周りを囲むことによってその取付軸12に装着されている。このため、飛散抑止部材63がキャスタ本体18の飛散を抑止する際に大きな力が当該飛散抑止部材63にかかったとしても、取付軸装着部64が取付軸12から外れるのを防ぐことができる。
【0074】
また、本実施形態では、単一の金属板から形成された飛散抑止部材63の取付軸装着部64、車輪支持部取付部66及び中間連結部68によって取付軸12とキャスタ本体18の車輪支持部54とが繋がれているため、例えば可撓性を有する索状体によって取付軸12とキャスタ本体18の車輪支持部54とが繋がれる場合に比べて、キャスタ本体18の車輪支持部54をより強固に取付軸12に繋ぎ止めることができる。このため、キャスタ本体18の飛散をより確実に抑止できる。
【0075】
また、前記索状体によって取付軸12と車輪支持部54とが繋がれる場合にはキャスタ本体18が何周も旋回するうちに索状体がキャスタ本体18に巻き付いてキャスタ本体18の旋回が阻害される虞があるが、本実施形態では、飛散抑止部材63の取付軸装着部64、車輪支持部取付部66及び中間連結部68が単一の金属板から形成されているとともに、当該飛散抑止部材63の取付軸装着部64が取付軸12の軸心を中心として取付軸12に対して回転可能に装着されているため、キャスタ本体18が取付軸12に対して旋回するときには、飛散抑止部材63は、そのキャスタ本体18の旋回を阻害することなく当該キャスタ本体18とともに取付軸12に対して旋回する。従って、本実施形態では、キャスタ本体18が何周も旋回する場合であっても、飛散抑止部材63によってそのキャスタ本体18の旋回が阻害されることはない。
【0076】
また、本実施形態では、車軸56はキャスタフレーム58の側壁部61の延出部61bを貫通して外側へ突出した螺子部56cを有し、飛散抑止部材63の車輪支持部取付部66は、車軸56の螺子部56cに取り付けられている。従って、本実施形態では、車軸56を利用して飛散抑止部材63の車輪支持部取付部66をキャスタ10の車輪支持部54に取り付けることができる。このため、飛散抑止部材63の車輪支持部取付部66を取り付けるための部位を車輪支持部54の例えばキャスタフレーム58に別途設けるような場合に比べて、キャスタ10の構成が複雑化するのを抑制できる。
【0077】
本発明による可動防護柵は、前記のような構成のものに必ずしも限定されない。例えば、本発明による可動防護柵に以下のような構成を採用可能である。
【0078】
飛散抑止部材は、取付軸装着部と車輪支持部取付部と中間連結部とが単一の金属板から形成されたものに必ずしも限定されない。例えば、図12に示す変形例のように、飛散抑止部材63は、それぞれ別体に構成された取付軸装着部74と車輪支持部取付部76と中間連結部78を有し、中間連結部78が、取付軸装着部74と車輪支持部取付部76とを連結していて、取付軸12に固定された取付軸装着部74に対して車輪支持部54に固定された車輪支持部取付部76の旋回を許容するような可撓性及び弛みを有するものであってもよい。
【0079】
具体的に、この変形例では、取付軸装着部74は、金属板を曲げ加工することによって形成され、取付軸12に固定された平板状の被固定部74aと、その被固定部74aに対して垂直になるように当該被固定部74aから曲げ起こされた平板状のワイヤ部材取付部74bとを有する。
【0080】
被固定部74aは、軸部材22の軸部26が挿通される図略の貫通孔を有し、その貫通孔に軸部材22の軸部26が挿通された状態でベースプレート2の上面とワッシャ25との間に挟み込まれてナット24によって締め付けられることにより軸部材22に固定されている。
【0081】
ワイヤ部材取付部74bは、中間連結部78のワイヤ部材80が取り付けられる部分である。このワイヤ部材取付部74bは、当該ワイヤ部材取付部74bを貫通する取付孔74c(図13参照)を有し、この取付孔74cを利用してワイヤ部材80の一端部が当該ワイヤ部材取付部74bに取り付けられている。また、このワイヤ部材取付部74bには、当該ワイヤ部材取付部74bを貫通するフック部係止孔74d(図13参照)を有する。
【0082】
車輪支持部取付部76は、金属板を曲げ加工することによって形成され、キャスタ本体18の車輪支持部54に固定された平板状の被固定部76aと、その被固定部76aに対して垂直になるように当該被固定部76aから曲げ起こされた接続金具接続部76bとを有する。
【0083】
被固定部76aは、車軸56の螺子部56cが挿通される図略の車軸挿通孔を有し、その車軸挿通孔に螺子部56cが挿通された状態で、前記実施形態の車輪支持部取付部66と同様にして車軸56の螺子部56cに固定されている。
【0084】
接続金具接続部76bは、中間連結部78の後述する接続金具82が接続される部分である。この接続金具接続部76bは、当該接続金具接続部76bを貫通する接続孔76c(図13参照)を有する。
【0085】
中間連結部78は、取付軸装着部74のワイヤ部材取付部74bに一端部が接続されたワイヤ部材80と、そのワイヤ部材80の他端部に取り付けられて車輪支持部取付部76の接続金具接続部76bに接続される接続金具82とを有する。
【0086】
ワイヤ部材80は、可撓性を有するワイヤからなり、その一端部がワイヤ部材取付部74bの取付孔74cを通って輪状にされることによりワイヤ部材取付部74bに接続されている。また、このワイヤ部材80は、中間連結部78が取付軸装着部74と車輪支持部取付部76とを連結している状態で弛みを生じるような長さを有し、このワイヤ部材80の弛みの範囲内でキャスタ本体18が取付軸12に対して旋回可能となっている。
【0087】
接続金具82は、車輪支持部取付部76の接続金具接続部76bに接続される部分であるフック部82aと、ワイヤ部材80の前記一端部と反対側の端部に連結されたワイヤ部材連結部82bとを有する。
【0088】
フック部82aは、前記接続孔76cを通して接続金具接続部76bに引っ掛けられることにより接続金具接続部76bに接続される。このフック部82aは、接続金具接続部76bに対して着脱可能となっている。ワイヤ部材連結部82bは、フック部82aに対して相対的に回転可能となるように当該フック部82aに結合されている。これにより、ワイヤ部材80に捩れが生じるのが軽減されている。
【0089】
この変形例において、可動防護柵1を地面Gに沿って移動させる際にキャスタ本体18がワイヤ部材80の弛みの範囲を超えて旋回する可能性がある場合には、フック部82aを接続金具接続部76bから外すことにより、キャスタ本体18がワイヤ部材80の延びる範囲内での制限を受けることなく自由に旋回できるようにする。この場合、接続金具接続部76bから外したフック部82aはフック部係止孔74dを通してワイヤ部材取付部74bに引っ掛けて保持することができ、それによって可動防護柵1の移動時に接続金具82やワイヤ部材80が地面Gに引きずって邪魔になるのを防止できるようになっている。
【0090】
また、別の変形例として、取付軸装着部と車輪支持部取付部と中間連結部が単一の金属板から形成されている飛散抑止部材において、中間連結部の垂下部は、その板幅方向が車輪の軸方向に沿う方向に一致するように構成されてもよい。このような変形例による飛散抑止部材が用いられた可動防護柵のキャスタが図14に示されている。
【0091】
この変形例では、飛散抑止部材63の中間連結部68の垂下部68bが上側水平部68aのうち車輪52の軸方向と直交する水平方向における端縁(先端)から下方へ延び、その板幅方向が車輪52の軸方向に沿う方向になるように配置される細長い平板状をなしている。この変形例によれば、キャスタ本体18の飛散方向に対する飛散抑止部材63の剛性を高めることができる。このため、キャスタ本体18の飛散を抑止する効果を高めることができる。
【0092】
また、飛散抑止部材の車輪支持部取付部は、前記実施形態のように車軸を利用してキャスタ本体の車輪支持部に取り付けられるものに必ずしも限定されない。例えば、キャスタ本体のうち車軸とは別の任意の箇所(例えばキャスタフレームの側壁部)に別途設けられた被取付部に車輪支持部取付部が取り付けられてもよい。
【0093】
また、飛散抑止部材は、その中間連結部及び車輪支持部取付部がキャスタフレームのうち車軸のボルト頭側の側壁部の外側に配置され、車輪支持部取付部がその側壁部と車軸のボルト頭との間に挟み込まれて固定されるものであってもよい。また、このような飛散抑止部材と、中間連結部及び車輪支持部取付部がキャスタフレームの車軸の螺子部側の側壁部の外側に配置され、車輪支持部取付部が前記側壁部と車軸の螺子部に螺合したナットとの間に挟み込まれて固定される飛散抑止部材との2つの飛散抑止部材が設けられてもよい。
【0094】
また、取付軸の軸部材に装着される取付軸装着部が共通でその取付軸装着部からキャスタフレームの車軸の螺子部側の側壁部の外側に配置されて固定される一方の中間連結部及び車輪支持部取付部と、キャスタフレームの車軸のボルト頭側の側壁部の外側に配置されて固定される他方の中間連結部及び車輪支持部取付部の両方を備えるものであってもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 可動防護柵
2 ベースプレート
4 支柱
8 ビーム
10 キャスタ
12 取付軸
14 軸受装置
34 内輪部材
36 外輪部材
52 車輪
54 車輪支持部
56 車軸
56c 螺子部(突出部)
58 キャスタフレーム(車軸保持部)
62b 周縁部
63 飛散抑止部材
64 取付軸装着部
64a 挿通孔
66 車輪支持部取付部
68 中間連結部
図1
図2
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図5
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図14