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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】アクチュエータ及び触感呈示装置
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/06 20060101AFI20221021BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
B06B1/06
B06B1/04 S
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018222017
(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公開番号】P2020081989
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139491
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 隆慶
(72)【発明者】
【氏名】服部 成人
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-175805(JP,A)
【文献】特開2017-174220(JP,A)
【文献】特開2010-233334(JP,A)
【文献】特開2010-233333(JP,A)
【文献】特開2017-175875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/06
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合面を有する圧電素子と、
前記圧電素子の前記接合面が接合され、前記圧電素子の変形又は変位に応じて振動する振動板と、
を備え、
前記圧電素子の前記接合面の中心は、前記振動板において振動伝達部が配置される領域内の位置になるように接合され
前記振動板は、前記圧電素子の前記接合面を位置付けるロケータを備え、
前記振動板は、前記ロケータとして、前記圧電素子の前記接合面を位置付けるための凹部を備え、
前記凹部の深さは、前記振動板の厚さの半分よりも小さい、アクチュエータ。
【請求項2】
前記圧電素子は直方体の形状を有し、
前記圧電素子の長手方向及び短手方向のサイズは、前記圧電素子の厚さ方向のサイズよりも大きい、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記圧電素子の前記接合面の中心は、前記圧電素子の長手方向の長さを2等分する点とする、請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記圧電素子の前記接合面の中心は、前記振動板において前記振動伝達部が配置される領域の中心の位置になるように接合される、請求項1から3のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記振動板において前記振動伝達部が配置される領域の中心は、前記振動板において前記振動伝達部が配置される領域の重心となる点とする、請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記振動板は、第1面及び前記第1面と反対側の第2面を有し、
前記第1面において前記圧電素子が接合され、
前記第2面において前記振動伝達部が配置される、請求項1から5のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載のアクチュエータと、
前記振動板の振動が伝達され、ユーザに対して触感を呈示する振動対象と、
前記振動板の振動を前記振動対象に伝達する振動伝達部と、
を備える、触感呈示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクチュエータ及び触感呈示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動を発生させるアクチュエータがタッチセンサ等に配設されるような構造が知られている。アクチュエータは、例えばユニモルフ等の圧電素子とすることができる。例えば、特許文献1は、振動を発生させるアクチュエータがタッチセンサ等の振動対象(以下、単に振動対象ともいう)に配設された構造を開示している。このような構造において、アクチュエータは、振動対象を振動させることにより、振動対象にタッチするユーザの指先などに対して触感を呈示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-175874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザに対して十分な触感を呈示するためには、振動対象を良好に振動させる必要がある。そのためには、アクチュエータによって発生される振動が、振動対象へ効率よく伝達されることが求められる。
【0005】
本開示の目的は、良好な振動を効率良く発生させるアクチュエータ及び触感呈示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係るアクチュエータは、圧電素子と、振動板と、を備えている。
前記圧電素子は、接合面を有する。
前記振動板は、前記圧電素子の前記接合面が接合され、前記圧電素子の変形又は変位に応じて振動する。
前記圧電素子の前記接合面の中心は、前記振動板において振動伝達部が配置される領域内の位置になるように接合される。
前記振動板は、前記圧電素子の前記接合面を位置付けるロケータを備える。
前記振動板は、前記ロケータとして、前記圧電素子の前記接合面を位置付けるための凹部を備える。
前記凹部の深さは、前記振動板の厚さの半分よりも小さい。
【0007】
一実施形態に係る触感呈示装置は、上述の記載のアクチュエータと、振動対象と、振動伝達部と、を備える。
前記振動対象は、前記振動板の振動が伝達され、ユーザに対して触感を呈示する。
前記振動伝達部は、前記振動板の振動を前記振動対象に伝達する。
【発明の効果】
【0008】
一実施形態に係るアクチュエータ及び触感呈示装置によれば、良好な振動を効率良く発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る触感呈示装置の構成例を示す要部断面図である。
図2】アクチュエータの構成例を示す斜視図である。
図3】アクチュエータの構成を説明する分解斜視図である。
図4】圧電素子を位置付けるロケータの一例を示す図である。
図5】圧電素子を位置付けるロケータの一例を示す図である。
図6】圧電素子を位置付けるロケータの一例を示す図である。
図7】圧電素子を位置付けるロケータの一例を示す図である。
図8】第1実施形態に係る触感呈示装置の機能ブロックの一例である。
図9】第2実施形態に係る触感呈示装置の構成例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、一実施形態に係るアクチュエータ及び触感呈示装置について、図面を参照して説明する。本実施形態に係るアクチュエータは、種々の機器に用いられ得る。本実施形態に係る触感呈示装置は、カーナビゲーションシステム、又は、ステアリング若しくはパワーウィンドウのスイッチ等の車載機器とすることができる。触感呈示装置は、携帯電話、スマートフォン、タブレット型PC(Personal Computer)、ノートPC等とすることができる。触感呈示装置はこれらに限定されるものではなく、デスクトップPC、家電製品、産業用機器(FA(Factory Automation)機器)、専用端末等、種々の電子機器とすることもできる。以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
【0011】
[触感呈示装置の構成例]
図1は、第1実施形態に係る触感呈示装置1の構成例を示す要部断面図である。図1に示されるように、本実施形態に係る触感呈示装置1は、アクチュエータ10と、振動伝達部15と、筐体20と、振動対象30とを備える。
【0012】
アクチュエータ10は、圧電素子11と、振動板12とを備える。また、アクチュエータ10は、支持部13を備えてもよい。アクチュエータ10は、支持部13を介して筐体20に接合される。アクチュエータ10には、振動伝達部15を介して、振動対象30が接合される。
【0013】
図2は、アクチュエータ10の構成例を示す斜視図である。図2は、図1に示されるアクチュエータ10を天地逆にした状態を示している。図3は、図2に示されるアクチュエータ10を分解した状態を示している。以下、図1乃至図3を参照して、アクチュエータ10の各部について説明していく。
【0014】
圧電素子11は、印加される電圧信号に応じて長手方向に種々のパターンで伸縮変位する。圧電素子11は、圧電フィルムであってもよいし、圧電セラミックであってもよい。圧電セラミックは、圧電フィルムよりも、より大きい振動エネルギーを有する振動を発生させることができる。
【0015】
圧電素子11は、磁歪素子に置換されてもよい。磁歪素子は、印加される磁界に応じて伸縮する。磁歪素子が用いられる場合、印加される電圧信号を磁界に変換するコイル等があわせて用いられる。
【0016】
圧電素子11は、例えば長方形状としてよい。より詳細には、圧電素子11は、直方体の形状を有してよい。図2及び図3に示されるように、圧電素子11は、薄型の短冊形としてよい。すなわち、圧電素子11の長手方向(X軸方向)及び短手方向(Y軸方向)のサイズは、圧電素子11の厚さ方向(Z軸方向)のサイズよりも大きくてよい。
【0017】
振動板12は、所定の厚みを有する長方形の板状の部材である。振動板12は、例えば、弾性を有する薄板である。振動板12は、金属、樹脂、又は、金属及び樹脂等の複合材料等からなる。振動板12は、金属薄板(シム板ともいう)であってもよい。以下、筐体20の側に対向する面を第1面12aという。振動対象30の側に対向する面を第2面12bという。すなわち、振動板12は、第1面12a、及び、第1面12aと反対側の第2面12bを有してよい。
【0018】
振動板12の第1面12aには、圧電素子11が設けられる。圧電素子11は、圧電素子11の長手方向が振動板12の長手方向と一致するように設けられる。振動板12の第2面12bには、振動伝達部15が配置される。圧電素子11及び振動伝達部15の少なくとも一方は、例えば接着等の方法で振動板12に接合されてよい。
【0019】
振動板12の第1面12aに圧電素子11が設けられた構造は、いわゆるモノモルフである。モノモルフにおいては、圧電素子11の伸縮変位が、振動板12の屈曲振動を引き起こす。振動板12の一方の端部のみが筐体20に支持されている場合には、振動板12の他方の端部における第1面12aの法線方向(Z軸方向)の振幅が最大になるように振動する。図1に示されるように、振動板12の両端が筐体20に支持されている場合には、振動板12の中央付近における第1面12aの法線方向(Z軸方向)の振幅が最大になるように振動する。
【0020】
支持部13は、樹脂材料から構成してよい。樹脂材料は、例えばシリコンゴム等のゴム材料であってもよいし、硬質スポンジ等のスポンジ材料であってもよい。支持部13は、振動板12の振動の減衰を低減するように弾性変形するように構成される。図1に示されるように、振動板12の長手方向の両端にはそれぞれ、支持部13が設けられる。支持部13は、圧電素子11の変形又は変位に応じて振動板12が振動しても圧電素子11が筐体20に衝突しないように、圧電素子11と筐体20との間のクリアランスを保つ。支持部13は、振動板12と同様に、例えば弾性を有する薄板としてよい。支持部13は、振動板12と同一の材料からなってもよいし、異なる材料からなってもよい。上述の通り、振動板12の両端が支持されている場合、圧電素子11の変位に応じて、振動板12の中央付近における振幅が最大になるように振動する。
【0021】
図1に示されるように、支持部13の一方の端部は、振動板12に接続される。より詳細には、支持部13の一方の端部は、振動板12の第1面12aに接続される。支持部13の他方の端部は、筐体20に接続される。支持部13は、例えば、ねじ止め又は接着等により、筐体20に固定される。
【0022】
振動伝達部15は、例えばゴム材料等からなる。振動伝達部15は、ゴム材料等に限られず、金属等の他の材料からなってもよい。振動伝達部15は、振動板12の第2面12bの側に配置される。振動伝達部15は、例えば接着等の方法を用いて振動板12に接合されてもよい。振動伝達部15は、第2面12bの側の中央付近に設けられる。振動伝達部15が設けられる位置は中央付近に限られない。振動伝達部15は、振動板12の最大の振幅となる部分に設けられることが好ましい。振動伝達部15には、例えば接着等の方法を用いて振動対象30が接合される。
【0023】
振動伝達部15は、振動板12の振動が振動対象30に効率よく伝達されるように、振動板12の振動方向、つまり第1面12aの法線方向(Z軸方向)に大きい弾性係数を有することが好ましい。一方、振動伝達部15は、振動板12の第1面12aに平行な方向(X軸方向又はY軸方向)に小さい弾性係数を有することが好ましい。このようにすることで、外力による触感呈示装置1の破損の可能性を低減できる。弾性係数は、部材にかかる外力と部材の変位量との関係を示す定数であり、変位量と弾性係数との積が外力となる。つまり同じ外力に対する変位量は、弾性係数が小さいほど大きくなる。
【0024】
筐体20には、支持部13によってアクチュエータ10が接合される。筐体20は、アクチュエータ10と比較して質量が大きく、剛性も高い。よって本実施形態において、筐体20は剛体とみなされる。振動対象30は、例えば機器に備えられるタッチセンサ50(図8参照)又はスイッチ等であってよい。振動対象30には、振動伝達部15によってアクチュエータ10が接合される。上述のように、筐体20が剛体とみなされる場合、アクチュエータ10が発生する振動は、主に振動対象30に伝達される。よって振動対象30は、タッチしたユーザに触感を呈示することができる。
【0025】
次に、本実施形態において圧電素子11が振動板12に接合される位置について、さらに説明する。
【0026】
図2及び図3に示されるように、圧電素子11は、振動板12に接合される。圧電素子11は、振動板12に接合される接合面11aを有している。図3に示されるように、圧電素子11の接合面11aは、振動板12の第1面12aに接合される。図3に示されるように、圧電素子11の接合面11aは、振動板12の第1面12aにおける領域R1の位置に配置される。また、図3に示されるように、振動板12の第2面12bにおいて、振動伝達部15が配置される。振動伝達部15の配置面15aは、振動板12の第2面12bにおける領域R2の位置に配置される。
【0027】
本実施形態において、圧電素子11を振動板12に接合する際に、圧電素子11の接合面11aの中心が、振動板12において振動伝達部15が配置される領域R2の内部の位置になるように位置付ける。ここで、圧電素子11の接合面11aの中心とは、例えば図3に示される圧電素子11の接合面11aの中心C1としてよい。ここで、中心C1は、例えば圧電素子11の長手方向(X軸方向)の長さを表す2点鎖線M1を2等分する点としてもよい。このように、圧電素子11の長手方向の中央に相当する位置は、圧電素子11の振動(Z軸方向の変位)が最大になる。さらに、中心C1は、例えば圧電素子11の短手方向(Y軸方向)の長さを示す2点鎖線M2と、上述の2点鎖線M1との交点としてもよい。このように、本実施形態において、圧電素子11の接合面11aの中心C1は、振動板12において振動伝達部15が配置される領域R2内の位置になるように接合される。
【0028】
本実施形態において、圧電素子11の接合面11aの中心C1は、振動板12において振動伝達部15が配置される領域R2内の位置として、領域R2の中心の位置になるようにしてもよい。領域R2の中心は、例えば図3における点C2としてもよい。すなわち、本実施形態において、圧電素子11の接合面11aの中心C1は、振動板12において振動伝達部15が配置される領域R2の中心C2の位置になるように接合されてもよい。領域R2の中心C2とは、振動板12において振動伝達部15が配置される領域R2の重心に位置する点としてもよい。振動板12に振動伝達部15を配置すると、領域R2の中心C2の位置は、振動伝達部15における配置面15aの重心C3の位置と同じになる。したがって、領域R2の中心C2とは、振動伝達部15における配置面15aの重心C3に対応する位置としてよい。
【0029】
以上のようにして、本実施形態では、重心C3を中心C2の位置に対応させて振動伝達部15を振動板12に配置する。さらに、本実施形態では、中心C1を領域R2内(又は中心C2)の位置に対応させて圧電素子11を振動板12に接合する。すなわち、本実施形態において、圧電素子11の接合面11aの中心C1は、振動板12において振動伝達部15が配置される領域R2内(又は領域R2の中心(重心))の位置になるように接合される。
【0030】
このような構成によれば、圧電素子11の振動(Z軸方向の変位)が最大になる位置に、振動伝達部15が配置される。したがって、本実施形態に係る触感呈示装置によれば、アクチュエータ10によって発生される振動が、振動対象30へ効率よく伝達される。このため、本実施形態に係るアクチュエータ10によれば、振動対象30を良好に振動させて、ユーザに対して十分な触感を呈示することができる。したがって、本実施形態に係るアクチュエータ10によれば、良好な振動を効率良く発生させることができる。
【0031】
また、本実施形態に係る触感呈示装置は、上述したアクチュエータ10と、振動対象30と、振動伝達部15とを備える。振動対象30は、振動板12の振動が伝達され、ユーザに対して触感を呈示する。振動伝達部15は、振動板12の振動を振動対象30に伝達する。本実施形態に係る触感呈示装置によれば、アクチュエータ10によって発生される振動が、振動対象30へ効率よく伝達される。このため、本実施形態に係る触感呈示装置によれば、振動対象30を良好に振動させて、ユーザに対して十分な触感を呈示することができる。したがって、本実施形態に係る触感呈示装置によれば、良好な振動を効率良く発生させることができる。
【0032】
また、本実施形態に係る触感呈示装置によれば、圧電素子11及び振動伝達部15は、振動板12に対して構造的に適切な位置に配置される。したがって、本実施形態に係る触感呈示装置は構造的に適切な強度を有する。そのため、ユーザが振動対象30を押圧した際に、圧電素子11及び/又は振動板12は破損しにくい。
【0033】
次に、本実施形態において振動板12に備えられるロケータについて、さらに説明する。
【0034】
上述のように、圧電素子11は、例えば接着等の方法で振動板12に接合されてよい。また、振動伝達部15も、例えば接着等の方法で振動板12に接合されてよい。例えば、重心C3を中心C2の位置に適切に対応させて、振動伝達部15を振動板12に配置したとする。このような場合でも、圧電素子11の中心C1を、振動板12の領域R2内(又は中心C2)の位置に適切に対応させて接合しないと、アクチュエータ10によって発生される振動が、振動対象30へ効率よく伝達されない。しかしながら、振動板12の適切な位置に圧電素子11を接合することは、必ずしも容易でないことも想定される。そこで、本実施形態において、振動板12は、圧電素子11を位置付けるためのロケータ(Locator)を備えてもよい。
【0035】
図4は、一実施形態において圧電素子11を位置付けるロケータの一例を示す図である。
【0036】
図4に示されるように、振動板12Aは、第1面12aにおいて、圧電素子11を位置付けるための凹部形状のロケータL1を備えてもよい。ロケータL1のように例えば溝状に形成された凹部を備えることにより、圧電素子11が振動板12Aの第1面12aに接合される際の適切な位置決めを、容易かつ確実に行うことができる。
【0037】
また、ロケータL1のように溝状に形成された凹部を有することで、圧電素子11を振動板12Aに接合する際に、適量の接着剤を容易に塗布することができる。例えば、振動板12AのロケータL1のように溝状に形成された凹部がちょうど満たされる程度に接着剤を塗布してから圧電素子11を接合してもよい。このような接合によれば、圧電素子11と振動板12との接着面において、適量な接着剤が均一に塗布される。
【0038】
ロケータL1のように溝状の凹部を形成する場合、振動板12の十分な強度が維持されるように、比較的浅い凹部を形成してもよい。例えば、振動板12の厚さ(Z軸方向のサイズ)を1mm程度として、圧電素子11の厚さ(Z軸方向のサイズ)を0.7mm程度とする場合、ロケータL1の深さ(Z軸方向のサイズ)は0.3~0.4mm程度としてもよい。
【0039】
このように、振動板12は、圧電素子11の接合面11aを位置付けるロケータを備えてもよい。例えば、振動板12は、圧電素子11の接合面11aを位置付けるための凹部L1をロケータとしてもよい。このようなロケータによれば、圧電素子11を、振動板12の適切な位置に容易に接合することができる。
【0040】
図5は、一実施形態において圧電素子11を位置付けるロケータの他の例を示す図である。
【0041】
図5に示されるように、振動板12Bは、第1面12aにおいて、圧電素子11を位置付けるための凸部形状のロケータL2乃至L5を備えてもよい。ロケータL2乃至L5のように例えば突起状に形成された凸部を備えることにより、圧電素子11が振動板12Bの第1面12aに接合される際の適切な位置決めを、容易かつ確実に行うことができる。図5に示す振動板12Bを簡素化した例として、例えば、ロケータL2及びL5のみ、又はロケータL3及びL4のみを備えてもよい。
【0042】
図6は、一実施形態において圧電素子11を位置付けるロケータの他の例を示す図である。
【0043】
図6に示されるように、振動板12Cは、第1面12aにおいて、圧電素子11を位置付けるための凸部形状のロケータL6及びL7を備えてもよい。ロケータL6及びL7のように例えば突起状に形成された凸部を備えることにより、圧電素子11が振動板12Cの第1面12aに接合される際の適切な位置決めを、容易かつ確実に行うことができる。図6に示す振動板12Cを簡素化した例として、例えば、ロケータL6及びL7のいずれか一方のみを備えてもよい。
【0044】
このように、振動板12は、圧電素子11の接合面11aを位置付けるための凸部(例えばL2乃至L5、又はL6及びL7など)をロケータとしてもよい。このようなロケータによっても、圧電素子11を、振動板12の適切な位置に容易に接合することができる。
【0045】
図7は、一実施形態において圧電素子11を位置付けるロケータの他の例を示す図である。
【0046】
図7に示されるように、振動板12Dは、第1面12aにおいて、圧電素子11を位置付けるための指標のロケータL8及びL9を備えてもよい。ロケータL8及びL9のように例えば第1面12aに描かれた線のような指標を備えることにより、圧電素子11が振動板12Dの第1面12aに接合される際の適切な位置決めを、容易かつ確実に行うことができる。ロケータL8及びL9は、第1面12aにおいて例えば塗料を用いてペイントしてもよい。また、ロケータL8及びL9は、第1面12aにおいて例えばけがき針などを用いて罫書いてもよい。図7に示す振動板12Dを簡素化した例として、例えば、ロケータL8及びL9のいずれか一方のみを備えてもよい。
【0047】
このように、振動板12は、圧電素子11の接合面11aを位置付けるための指標L及びL9をロケータとしてもよい。このようなロケータによっても、圧電素子11を、振動板12の適切な位置に容易に接合することができる。
【0048】
[触感呈示装置の動作例]
図8は、本実施形態に係る触感呈示装置1の機能ブロックの一例である。図8に示されるように、触感呈示装置1は、コントローラ40をさらに備える。コントローラ40は、アプリケーションソフトウェアを実行可能なプロセッサまたはマイクロコンピュータ等により構成することができる。コントローラ40は、必要に応じて各種情報を記憶することができるメモリ等によって構成される記憶部等も適宜含み得る。
【0049】
図8に示されるように、コントローラ40は、アクチュエータ10に接続される。コントローラ40は、アクチュエータ10に駆動信号を出力する。駆動信号は、アクチュエータ10の圧電素子11に対して印加される電圧信号である。
【0050】
圧電素子11は、コントローラ40から取得した駆動信号に応じて、長手方向に伸縮変位する。図1及び図2に例示されるアクチュエータ10の振動板12は、圧電素子11の変形又は変位に応じて屈曲する。つまり、圧電素子11が振動板12の長手方向に縮む方向に変形又は変位した場合、振動板12は第2面12bの側が凸になるように屈曲する。また、圧電素子11が振動板12の長手方向に伸びる方向に変形又は変位した場合、振動板12は第1面12aの側が凸になるように屈曲する。このように、圧電素子11の変形又は変位が、振動板12の第1面12aの法線方向(Z軸方向)の振動に変換される。
【0051】
本実施形態においては、圧電素子11は、電圧信号の印加に応じて縮む方向にのみ変位する。この場合、振動板12は、第2面12bの側が凸になるように屈曲した状態と、通常のまっすぐな状態との間で振動する。圧電素子11の変位は、電圧信号の印加に応じて縮む方向に限られるものではない。圧電素子11は、電圧信号の印加に応じて伸びる方向に変位するように構成されてもよいし、伸びる方向及び縮む方向のいずれにも変位するように構成されてもよい。
【0052】
以上のようにして、コントローラ40は、アクチュエータ10を駆動し、振動板12を振動させる。振動板12の振動は、振動伝達部15を介して振動対象30に伝達される。そして、振動対象30にタッチしたユーザに対して触感が呈示される。
【0053】
コントローラ40は、例えば図8に示されるように、タッチセンサ50に接続されてもよい。この場合、コントローラ40は、タッチセンサ50から取得した信号に応じて、アクチュエータ10に駆動信号を出力してもよい。タッチセンサ50は、触感呈示装置1の振動対象30であってもよい。この場合、ユーザが振動対象30にタッチしていることがタッチセンサ50により検出される。コントローラ40は、ユーザが振動対象30にタッチしているときに振動対象30を振動させる。このようにすることで、触感呈示装置1は、振動対象30にタッチしたユーザに対して触感を呈示することができる。タッチセンサ50は、触感呈示装置1の振動対象30とは別個の構成として設けられてもよい。
【0054】
(第2実施形態)
第1実施形態では、振動板12と支持部13とは別部材として構成されるものとして説明した。第2実施形態では、振動板12と支持部13とが一体として構成される場合について説明する。図9は、第2実施形態に係る触感呈示装置2の構成例を示す要部断面図である。以下、図1等に示した第1実施形態に係る触感呈示装置1との相違点について説明する。
【0055】
本実施形態において、振動板12と支持部13とは一体成型される。例えば、金属の振動板12の周りに支持部13となる樹脂を成型することにより、振動板12と支持部13とは一体成型され得る。あるいは、金属の振動板12に嵌合部を設け、樹脂からなる支持部13を嵌合することにより、振動板12と支持部13とは一体成型され得る。あるいは、金属の振動板12の表面にプライマーを塗布した接合面を設け、当該接合面に樹脂を成型することにより、振動板12と支持部13とは一体成型され得る。あるいは、金属の振動板12の表面に微細加工を施した接合面を設け、当該接合面に樹脂を成型することにより、振動板12と支持部13とは一体成型されてもよい。
【0056】
図9に示されるように、本実施形態に係るアクチュエータ10において、支持部13の端部には、アクチュエータ10を筐体20に固定する固定部14が設けられてもよい。固定部14は、例えば、ねじ止め又は接着等により筐体20に固定される。固定部14は、例えば振動板12と同様に、弾性を有する薄板である。固定部14は、振動板12と同一の材料からなってもよいし、異なる材料からなってもよい。
【0057】
本実施形態に係るアクチュエータ10において、振動板12と支持部13と固定部14とは、一体成型されてもよい。振動板12と支持部13と固定部14とが一体成型された部材は、アクチュエータ10のフレームとしてもよい。本実施形態に係るフレームは、同一の材料から構成してもよい。本実施形態に係るフレームは、例えば、一枚の金属の薄板を板金加工により折り曲げることにより一体成型されてもよい。本実施形態に係るフレームは、振動板12と支持部13と固定部14とがそれぞれ溶接されて一体に成型されてもよい。本実施形態に係るフレームは、樹脂の一体成型によって作られてもよい。
【0058】
第2実施形態に係るアクチュエータ10によれば、材料が互いに異なる振動板12と支持部13とが一体成型される。
振動板12と支持部13とが別個の部品として構成される場合と比較して、圧電素子11の伸縮変位に応じて発生する振動板12の振動の減衰が支持部13によって低減されつつ、部品点数及び組み立て工数が削減される。また、振動板12と支持部13との間に接着剤を用いないことにより、平均故障間隔(MTBF:Mean Time Between Failure)が延びたり、組み立て時の歩留まりが向上する。
【0059】
(他の実施形態)
第2実施形態において、アクチュエータ10は、固定部14を備えない構成としてもよい。この場合、支持部13の端部が、接着等により筐体20に接合される。支持部13の端部は、接合された部分を中心に揺動可能に構成されてもよい。
【0060】
本発明に係る実施形態について諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形及び/又は修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【符号の説明】
【0061】
1 触感呈示装置
10 アクチュエータ
11 圧電素子
12 振動板
13 支持部
14 固定部
15 振動伝達部
20 筐体
30 振動対象
40 コントローラ
50 タッチセンサ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9