(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】遠心ファン
(51)【国際特許分類】
F04D 29/58 20060101AFI20221021BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20221021BHJP
F04D 29/28 20060101ALI20221021BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
F04D29/58 P
F04D29/42 M
F04D29/28 J
F04D29/58 S
H02K7/14 A
(21)【出願番号】P 2018227090
(22)【出願日】2018-12-04
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】瀧 啓東志
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-100798(JP,A)
【文献】特開平10-191595(JP,A)
【文献】特開平07-305699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/58
F04D 29/42
F04D 29/28
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容空間を区画する蝸牛形状であり、開口部が貫設されたモータ支持壁を有するケーシングと、
前記モータ支持壁に対して前記収容空間とは反対側に配置され、前記モータ支持壁に支持されるモータ壁と、前記モータ壁の中央に形成され、前記開口部を通過して前記収容空間内に突出するボス部と、前記収容空間内で前記ボス部から突出する駆動軸と、を有するモータと、
前記収容空間内に配置され、前記駆動軸に一体回転可能に固定される主板と、前記主板の外周縁に沿って並ぶ複数の羽根と、を有する羽根車と、を備え、
前記モータ支持壁と前記モータ壁との間には、前記モータ支持壁の少なくとも一部が前記モータ壁の外周縁から前記ボス部までの範囲に亘って、前記モータ壁から前記駆動軸の軸方向に離間してなる第1空隙部が形成され、
前記開口部と前記ボス部との間には、前記開口部の内周縁の少なくとも一部が前記ボス部から前記駆動軸の径方向に離間してなる第2空隙部が形成され
、
前記モータ支持壁と前記主板との間には、隙間領域が形成され、
前記隙間領域は、前記第1空隙部及び前記第2空隙部に連通し、
前記モータ支持壁における前記開口部を囲む領域は、前記モータ壁から前記駆動軸の軸方向に離間するように略円錐台形状に形成された凹部とされ、
前記第1空隙部は、前記凹部が前記モータ壁の前記外周縁から前記ボス部までの範囲に亘って、前記モータ壁から前記駆動軸の軸方向に離間してなり、
前記モータ支持壁における前記凹部よりも前記駆動軸の径方向の外側に位置する領域は外側領域とされ、
前記凹部及び前記外側領域は、前記主板に対面して前記隙間領域の一部を区画し、
前記羽根車には、各前記羽根の一部が前記主板を貫通して前記モータ支持壁に向かって突出してなる複数の補助羽根が形成され、
各前記補助羽根は、前記凹部よりも前記駆動軸の径方向の外側において前記隙間領域内に突出していることを特徴とする遠心ファン。
【請求項2】
前記ケーシングは、前記モータ支持壁と、前記モータ支持壁の外周縁に接合される周壁と、を有し、
前記モータ支持壁は、
前記モータ支持壁の前記外周縁を含むモータ支持壁本体と、
前記モータ支持壁本体に組み付けら
れたモータ取付板と、を有し
、
前記モータ取付板には、前記開口部と、前記凹部と、前記モータ壁が取り付けられる取付部と、が形成されている請求項
1記載の遠心ファン。
【請求項3】
前記凹部は、前記外側領域の内周縁から前記収容空間に食い込むように傾斜する傾斜部と、
前記傾斜部の内周縁に接続して前記駆動軸に接近するように延びて前記開口部に至る平坦部と、を含む請求項1又は2記載の遠心ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠心ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の遠心ファンの一例である給気ファン装置が開示されている。この給気ファン装置は、燃焼室壁、ファンモータ、給気ファン及びファンモータ冷却用ファンを備えている。
【0003】
燃焼室壁は、燃焼室の一部を区画している。燃焼室壁には、通気孔が貫設されている。ファンモータは、燃焼室壁に対して燃焼室とは反対側に配置されている。ファンモータは、モータ壁、ボス部及び回転軸を有している。モータ壁は、取り付け板を介在させた状態で燃焼室壁に支持されている。ボス部は、モータ壁の中央に形成されている。回転軸は、ボス部から通気孔を通過して燃焼室内に突出している。モータ壁及びボス部の全体は、燃焼室壁から回転軸の軸方向に離間している。
【0004】
給気ファンは、燃焼室内に配置されている。給気ファンは、主板及び複数の羽根を有している。主板は、回転軸に一体回転可能に固定されている。各羽根は、主板の外周縁に沿って並んでいる。
【0005】
回転軸には、給気ファンの他、ファンモータ冷却用ファンが2つのストッパ及びバネと共に組み付けられている。ファンモータ冷却用ファンは、ボス部と燃焼室壁との間に配置されている。
【0006】
この給気ファン装置では、ファンモータが作動して回転軸及び給気ファンと共にファンモータ冷却用ファンが回転することで、ファンモータ周辺の空気がボス部と燃焼室壁との間を通過し、さらに通気孔を通過して燃焼室内に流れる。この空気の流れによって、ファンモータが冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の遠心ファンでは、回転軸にファンモータ冷却用ファン等が組み付けられているので、部品点数を削減し難く、また回転軸及びその周辺を簡素化し難い。
【0009】
また、この遠心ファンでは、回転軸にファンモータ冷却用ファン等が組み付けられた構成と、回転軸がファンモータのボス部から通気孔を通過して収容空間内に突出することで回転軸の突出長さが長くなる構成とにより、回転軸に動的アンバランスが発生し易く、回転軸及び給気ファンが回転によって振動し易い。
【0010】
その結果、この遠心ファンでは、製造コストの低廉化と、作動時の振動の抑制とを実現しつつ、モータを効果的に冷却することが難しいという問題がある。
【0011】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、製造コストの低廉化と、作動時の振動の抑制とを実現しつつ、モータを効果的に冷却できる遠心ファンを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の遠心ファンは、収容空間を区画する蝸牛形状であり、開口部が貫設されたモータ支持壁を有するケーシングと、
前記モータ支持壁に対して前記収容空間とは反対側に配置され、前記モータ支持壁に支持されるモータ壁と、前記モータ壁の中央に形成され、前記開口部を通過して前記収容空間内に突出するボス部と、前記収容空間内で前記ボス部から突出する駆動軸と、を有するモータと、
前記収容空間内に配置され、前記駆動軸に一体回転可能に固定される主板と、前記主板の外周縁に沿って並ぶ複数の羽根と、を有する羽根車と、を備え、
前記モータ支持壁と前記モータ壁との間には、前記モータ支持壁の少なくとも一部が前記モータ壁の外周縁から前記ボス部までの範囲に亘って、前記モータ壁から前記駆動軸の軸方向に離間してなる第1空隙部が形成され、
前記開口部と前記ボス部との間には、前記開口部の内周縁の少なくとも一部が前記ボス部から前記駆動軸の径方向に離間してなる第2空隙部が形成され、
前記モータ支持壁と前記主板との間には、隙間領域が形成され、
前記隙間領域は、前記第1空隙部及び前記第2空隙部に連通し、
前記モータ支持壁における前記開口部を囲む領域は、前記モータ壁から前記駆動軸の軸方向に離間するように略円錐台形状に形成された凹部とされ、
前記第1空隙部は、前記凹部が前記モータ壁の前記外周縁から前記ボス部までの範囲に亘って、前記モータ壁から前記駆動軸の軸方向に離間してなり、
前記モータ支持壁における前記凹部よりも前記駆動軸の径方向の外側に位置する領域は外側領域とされ、
前記凹部及び前記外側領域は、前記主板に対面して前記隙間領域の一部を区画し、
前記羽根車には、各前記羽根の一部が前記主板を貫通して前記モータ支持壁に向かって突出してなる複数の補助羽根が形成され、
各前記補助羽根は、前記凹部よりも前記駆動軸の径方向の外側において前記隙間領域内に突出していることを特徴とする。
【0013】
本発明の遠心ファンでは、モータの駆動軸にモータ冷却用ファンを設けていないので、部品点数の削減や、駆動軸及びその周辺の簡素化を実現できる。
【0014】
また、この遠心ファンでは、駆動軸にモータ冷却用ファンを設けない構成と、モータのボス部がモータ支持壁の開口部を通過して収容空間内に突出することで駆動軸の突出長さを短くできる構成とにより、駆動軸の動的アンバランスが発生し難く、駆動軸及び羽根車が回転によって振動し難い。
【0015】
さらに、この遠心ファンでは、モータが作動して駆動軸及び羽根車が回転すると、収容空間内において、羽根車の各羽根よりも駆動軸の径方向の内側に位置する内側領域と比較して、羽根車の各羽根よりも駆動軸の径方向の外側に位置する外側領域の圧力が高くなる。そして、その圧力が高くなった空気が収容空間から吐出される。ここで、発明者が鋭意研究した結果によれば、静止したモータ支持壁と、回転する羽根車の主板との間の隙間領域で発生する空気の流れによって、その隙間領域の圧力が低くなる。そして、モータ周辺の空気が第1空隙部及び第2空隙部を経由してその隙間領域に流れ、さらに収容空間内の上記外側領域の空気に合流して、収容空間から吐出されるようになる。この際、モータ周辺の空気が第1空隙部を流れながらモータ壁に接触し、さらに第2空隙部を流れながらボス部に接触することにより、モータの熱を効果的に奪うことができる。
また、補助羽根が駆動軸及び羽根車と共に回転することで、上記隙間領域での空気の流れを一層促進できる。その結果、この遠心ファンでは、モータ周辺の空気が第1空隙部及び第2空隙部を経由してその隙間領域に一層流れ易くなるので、モータの熱を一層効果的に奪うことができる。
【0016】
したがって、本発明の遠心ファンでは、製造コストの低廉化と、作動時の振動の抑制とを実現しつつ、モータを効果的に冷却できる。
【0017】
モータ支持壁における開口部を囲む領域は、モータ壁から駆動軸の軸方向に離間するように略円錐台形状に形成された凹部とされている。そして、第1空隙部は、凹部がモータ壁の外周縁からボス部までの範囲に亘って、モータ壁から駆動軸の軸方向に離間してなる。
【0018】
この場合、第1空隙部を絞り加工によって容易に形成できるので、製造コストの一層の低廉化を実現できる。また、この場合、モータ支持壁が立体的形状に絞り加工されることにより、モータ支持壁の剛性を向上させることができる。
【0019】
ケーシングは、モータ支持壁と、モータ支持壁の外周縁に接合される周壁と、を有していることが望ましい。モータ支持壁は、モータ支持壁の外周縁を含むモータ支持壁本体と、モータ支持壁本体に組み付けられたモータ取付板と、を有していることが望ましい。そして、モータ取付板には、開口部と、凹部と、モータ壁が取り付けられる取付部と、が形成されていることが望ましい。
【0020】
この場合、モータ支持壁本体とは別体であるモータ取付板を例えば、プレス加工、打ち抜き加工、絞り加工等の加工方法を用いて容易に製造できるので、製造コストを低廉化できる。また、モータ取付板について、第1空隙部及び第2空隙部を好適に形成できる形状に容易に加工できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の遠心ファンによれば、製造コストの低廉化と、作動時の振動の抑制とを実現しつつ、モータを効果的に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施例の遠心ファンが適用される給湯器の模式図である。
【
図2】
図2は、実施例の遠心ファンの正面図である。
【
図4】
図4は、実施例の遠心ファンの分解斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3の要部拡大断面図であって、第1空隙部及び第2空隙部を通過する空気の流れを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0026】
(実施例)
図1に示すように、実施例の遠心ファン1は、本発明の遠心ファンの具体的態様の一例であり、給湯器8に適用されている。給湯器8の概略構成について説明した後、遠心ファン1の具体的構成を説明する。
【0027】
<給湯器の概略構成>
給湯器8は、強制給排気式の給湯器である。給湯器8は、ハウジング80、燃焼室82及び二重管89を備えている。燃焼室82は、ハウジング80の内部に収容されている。ハウジング80の内壁面と燃焼室82との間には、給気空間81が形成されている。
【0028】
二重管89は、給気管87と、給気管87の内部に収容された排気管88とを有している。給気管87の下端は、ハウジング80の上部に接続されて、給気空間81に連通している。排気管88の下端は、ハウジング80の上部を通過して、燃焼室82に連通している。二重管89は、ハウジング80から上方に延びた後に屈曲して壁W1を通過し、屋外に突出している。
【0029】
また、給湯器8は、遠心ファン1を備えている。遠心ファン1の具体的構成は後で詳しく説明するが、遠心ファン1は、燃焼室82の下部に接続されている。遠心ファン1は、ケーシング9、モータ3及び羽根車50を備えている。
【0030】
ケーシング9は、側壁92及びモータ支持壁93等によって収容空間90を区画している。側壁92には、給気空間81と収容空間90とを連通させる吸入口9Aが形成されている。ケーシング9の上部には、収容空間90と燃焼室82と連通させる吐出口9Bが形成されている。
【0031】
モータ3は、モータ支持壁93に対して収容空間90とは反対側に配置されている。 羽根車50は、収容空間90内に配置されて、モータ3の駆動軸35に連結されている。
【0032】
さらに、給湯器8は、燃焼室82にそれぞれ収容されたバーナ83及び熱交換器84を備えている。バーナ83には、図示しないガス供給配管が接続されている。熱交換器84は、バーナ83よりも上方に配置されている。熱交換器84には、ハウジング80の外部から水を供給する図示しない給水配管と、ハウジング80の外部に湯を排出する図示しない出湯配管とが接続されている。
【0033】
<給湯器の給湯動作>
このような構成である給湯器8では、給湯動作を開始すると、遠心ファン1のモータ3が作動して羽根車50を回転させる。これにより、屋外の空気が給気管87、給気空間81及び吸入口9Aを経由して遠心ファン1の収容空間90に吸入され、吐出口9Bを経由して燃焼室82に強制的に給気される。
【0034】
バーナ83は、燃焼室82に給気される空気と、図示しないガス供給配管から供給される燃料ガスとを混合させて着火させることで、燃焼排ガスを生成する。熱交換器84は、図示しない給水配管から供給される水と、バーナ83の燃焼排ガスとの熱交換を行わせて、その水を加熱する。こうして、熱交換器84で所望の温度になった湯は、図示しない出湯配管を経由してハウジング80の外部に排出され、出湯先に供給される。
【0035】
熱交換器84において熱交換に利用された燃焼排ガスは、排気管88を経由して屋外に排出される。この際、給気管87を流れる空気と、排気管88を流れる燃焼排ガスとの間で熱交換が行われる。このため、排気管88を流れる燃焼排ガスが冷却されて低温となってから屋外に排出されるので、環境負荷を低減できる。また、給気管87を流れる空気が加熱されて高温となってから給気空間81に導入されるので、熱効率を向上させることができる。
【0036】
<遠心ファンの具体的構成>
次に、
図2~
図5を参照しつつ、遠心ファン1について詳しく説明する。以下の説明では、モータ3の駆動軸35の軸心を駆動軸心X35として
図2~
図5に図示し、駆動軸心X35方向と、駆動軸心X35の径方向とを基準として、形状等を説明する。駆動軸心X35方向は、本発明の「駆動軸の軸方向」の一例である。駆動軸心X35の径方向は、本発明の「駆動軸の径方向」の一例である。
【0037】
<ケーシング>
図3及び
図4等に示すように、遠心ファン1において、ケーシング9は、それぞれ鋼板製である周壁91、側壁92及びモータ支持壁93を有している。ケーシング9は、側壁92とモータ支持壁93とが駆動軸心X35方向において所定の間隔を有して対向する状態で、周壁91が側壁92の外周縁とモータ支持壁93の外周縁とに接合されることによって収容空間90を区画する蝸牛形状である。
【0038】
図4に示すように、吸入口9Aは、駆動軸心X35を中心として側壁92に貫設された丸穴である。周壁91は、駆動軸心X35方向にそれぞれ延びる一端縁91E及び他端縁91Fを有している。吐出口9Bは、周壁91の一端縁91Eと他端縁91Fとの間に形成された矩形穴である。
【0039】
モータ支持壁93は、モータ支持壁本体94及びモータ取付板95を有している。モータ支持壁本体94は、モータ支持壁93における周壁91が接合される外周縁を含み、その中央に羽根車挿通穴94Hが貫設されている。
【0040】
羽根車挿通穴94Hは、駆動軸心X35を中心とする大径の丸穴である。羽根車挿通穴94Hは、羽根車50を収容空間90内に配置するときに、モータ支持壁本体94が羽根車50に干渉しない程度の大きさに設定されている。
【0041】
モータ取付板95は、駆動軸心X35を中心とする略円盤形状であり、その中央に開口部97が貫設されている。開口部97は、駆動軸心X35を中心とする丸穴である。開口部97は、後述するボス部33の外周面との間に充分な隙間を確保する程度の大きさに設定されている。
【0042】
モータ取付板95は、その外周縁の複数個所に貫設された図示しないネジ穴に止めネジ95Fが挿入され、止めネジ95Fがモータ支持壁本体94にねじ込まれることにより、
図2及び
図3に示すように、モータ支持壁本体94に組み付けられて、羽根車挿通穴94Hを塞ぐ。
【0043】
図4に示すように、モータ取付板95には、凹部98及び取付部96が形成されている。
【0044】
凹部98は、モータ支持壁93のモータ取付板95における開口部97を囲む領域が駆動軸心X35方向において側壁92に接近するように略円錐台形状に絞り加工されてなる。
【0045】
凹部98は、傾斜部98A及び平坦部98Bを含んでいる。傾斜部98Aは、凹部98の外周縁から収容空間90に食い込むように傾斜している。平坦部98Bは、傾斜部98Aの内周縁に接続して駆動軸心X35に接近するように延びて開口部97に至る。
【0046】
モータ取付板95における傾斜部98Aよりも駆動軸心X35の径方向の外側に位置する領域を外側領域95Dとする。平坦部98Bは、外側領域95Dよりも側壁92に近い位置にあって、外側領域95Dと平行に延びている。
【0047】
取付部96は、外側領域95Dの内周縁に接続し、駆動軸心X35に接近するように膨出して、凹部98の傾斜部98Aを3つの円弧部分に区分けする3つの膨出部である。取付部96は、外側領域95Dと平行に延びている。取付部96には、ネジ穴96Fが形成されている。
【0048】
<モータ>
図3に示すように、モータ3は、モータハウジング32、モータ壁31及びボス部33を有している。モータハウジング32は鋼板製であり、駆動軸心X35を中心とする略有底円筒形状である。モータハウジング32の底部には、軸受32Tが組み付けられている。
【0049】
モータ壁31及びボス部33は、鋼板が絞り加工や切削加工等されることによって一体に形成されている。モータ壁31は、駆動軸心X35を中心とする略円盤形状であり、その中央にボス部33が形成されている。ボス部33は、駆動軸心X35を中心とする略円筒形状である。ボス部33内には、軸受33Tが組み付けられている。
【0050】
モータハウジング32の開口縁と、モータ壁31の外周縁31Eとが接合されることにより、モータハウジング32、モータ壁31及びボス部33とに囲まれたモータ室3Aが形成されている。
【0051】
駆動軸35は、軸受32T、33Tを介して、モータハウジング32、モータ壁31及びボス部33に支持されることにより、駆動軸心X35周りに回転可能となっている。
【0052】
モータハウジング32の内周面には、ステータ3Sが固定されている。駆動軸35におけるモータ室3A内に位置する部分には、ロータ3Rが一体回転可能に固定されている。ロータ3Rは、ステータ3S内に配置されている。モータ壁31におけるモータ室3A側の面には、制御基板3Cが固定されている。制御基板3Cは、制御IC、パワートランジスタ及び抵抗等を含んでいる。モータ3は、制御基板3Cを経由してステータ3Sに給電することにより、ロータ3R及び駆動軸35を駆動軸心X35周りに回転させる。
【0053】
図2及び
図4に示すように、モータ壁31には、その外周縁31Eから駆動軸心X35の径方向の外側に突出する3つの小片31Fが形成されている。小片31Fに貫設された図示しないネジ穴に止めネジ3Fが挿通され、止めネジ3Fがモータ取付板95の取付部96に形成されたネジ穴96Fにねじ込まれることにより、モータ壁31が取付部96に取り付けられ、モータ支持壁93のモータ取付板95に支持されている。こうして、モータ3は、モータ支持壁93に対して収容空間90とは反対側に配置される。
【0054】
図3に示すように、モータ壁31がモータ取付板95に支持された状態で、ボス部33は、モータ取付板95の開口部97を通過して収容空間90内に突出している。駆動軸35は、収容空間90内でボス部33から突出している。
【0055】
<第1空隙部及び第2空隙部>
図3及び
図5に示すように、モータ支持壁93のモータ取付板95とモータ壁31との間には、第1空隙部S1が形成されている。
【0056】
第1空隙部S1は、モータ取付板95に形成された凹部98の傾斜部98A及び平坦部98Bがモータ壁31の外周縁31Eからボス部33の外周面までの範囲に亘って、モータ壁31から駆動軸心X35方向に離間してなる。
【0057】
第1空隙部S1は、モータ取付板95における開口部97を囲む領域、すなわち凹部98がモータ壁31から駆動軸心X35方向に離間するように絞られることによって形成されている。
【0058】
モータ取付板95の開口部97とボス部33との間には、第2空隙部S2が形成されている。
【0059】
第2空隙部S2は、モータ取付板95の開口部97の内周縁97Eの全周がボス部33の外周面から駆動軸心X35の径方向に離間してなる。
【0060】
<羽根車>
図3及び
図4に示すように、羽根車50は、主板51、対向板52及び複数の羽根53を有している。本実施例では、主板51、対向板52及び複数の羽根53は、鋼板製である。
【0061】
主板51は、駆動軸心X35を中心とする略円盤形状であり、その中央に軸穴51Hが貫設されている。
【0062】
図3に示すように、対向板52は、駆動軸心X35を中心とする略円環形状であり、その中央に大径穴52Hが貫設されている。大径穴52Hは、側壁92の吸入口9Aよりも大径である。対向板52は、駆動軸心X35方向において主板51と対向している。
【0063】
図3及び
図4に示すように、各羽根53は、主板51の外周縁51Eに沿って並ぶように配置されている。羽根車50は、各羽根53の駆動軸心X35方向の一端側が主板51に接合されるとともに、各羽根53の駆動軸心X35方向の他端側が対向板52に接合されることによって構成されている。
【0064】
羽根車50には、複数の補助羽根54が形成されている。各補助羽根54は、各羽根53の一部が主板51を貫通して対向板52とは反対側に向かって突出してなる。補助羽根54の断面形状は、羽根53の断面形状における駆動軸心X35の径方向の内側に位置する部分が除かれているだけであって、その他の部分は羽根53と同じである。
【0065】
図3に示すように、羽根車50が収容空間90内に配置された状態で、主板51の軸穴51Hに駆動軸35が挿入され、駆動軸35の先端にナット35Fがワッシャ等を介在させた状態でねじ込まれることにより、主板51が駆動軸35に一体回転可能に固定されている。この状態で、主板51とモータ支持壁93のモータ取付板95とが対向し、対向板52と側壁92とが対向し、各補助羽根54がモータ取付板95に向かって突出している。
【0066】
図3及び
図4に示すように、主板51には、逃げ部51Aが形成されている。逃げ部51Aは、主板51における軸穴51Hを囲む領域が駆動軸心X35方向においてボス部33から逃げるように略円錐台形状に絞り加工されてなる。
【0067】
このような構成である遠心ファン1では、モータ3が作動することにより、羽根車50が
図4に示す回転方向R1に回転する。各羽根53は、駆動軸心X35の径方向の外側に向かうにつれて回転方向R1に傾斜している。つまり、羽根車50は、シロッコファンである。各補助羽根54も、各羽根53と同様に、駆動軸心X35の径方向の外側に向かうにつれて回転方向R1に傾斜している。
【0068】
遠心ファン1は、羽根車50の回転によって吸入口9Aから収容空間90に空気を吸入する。そして、吸入された空気は、羽根車50の各羽根53と共に回転することによって遠心力を受けて収容空間90内の周壁91側に寄せられて圧縮され、吐出口9Bから吐出される。
【0069】
<作用効果>
実施例の遠心ファン1では、モータ3の駆動軸35にモータ冷却用ファンを設けていないので、部品点数の削減や、駆動軸35及びその周辺の簡素化を実現できる。
【0070】
また、この遠心ファン1では、駆動軸35にモータ冷却用ファンを設けない構成と、モータ3のボス部33がモータ支持壁93のモータ取付板95に貫設された開口部97を通過して収容空間90内に突出することで駆動軸35の突出長さを短くできる構成とにより、駆動軸35の動的アンバランスが発生し難く、駆動軸35及び羽根車50が回転によって振動し難い。
【0071】
さらに、発明者は、遠心ファン1におけるモータ壁31、ボス部33、モータ支持壁93及び羽根車50等の周辺の空気の流れについて解析を行うとともに、遠心ファン1を所定の運転条件で所定の時間運転した場合における制御基板3C及び軸受32T、33T等の温度変化を計測する実験を行うことにより、第1空隙部S1及び第2空隙部S2の作用効果を以下のように確認した。上述した流れの解析結果を
図5に複数の矢印で模式化して図示する。
【0072】
この遠心ファン1では、モータ3が作動して駆動軸35及び羽根車50が回転すると、収容空間90内において、羽根車50の各羽根53よりも駆動軸心X35の径方向の内側に位置する内側領域E1と比較して、羽根車50の各羽根53よりも駆動軸心X35の径方向の外側に位置する外側領域E2の圧力が高くなる。そして、外側領域E2で圧力が高くなった空気が収容空間90から吐出口9Bを経由して吐出される。
【0073】
ここで、静止したモータ支持壁93のモータ取付板95と、回転する羽根車50の主板51との間の隙間領域E3で発生する空気の流れによって、隙間領域E3の圧力が低くなる。そして、モータ3周辺の空気が第1空隙部S1及び第2空隙部S2を経由して隙間領域E3に流れ、さらに収容空間90内の外側領域E2の空気に合流して、収容空間90から吐出されるようになる。この際、モータ3周辺の空気が第1空隙部S1を流れながらモータ壁31に接触し、さらに第2空隙部S2を流れながらボス部33に接触することにより、モータ3の熱を効果的に奪うことができる。
【0074】
したがって、実施例の遠心ファン1では、製造コストの低廉化と、作動時の振動の抑制とを実現しつつ、モータ3を効果的に冷却できる。ひいては、モータ3の制御基板3C及び軸受32T、33T等の異常過熱を抑制して、モータ3の安定性及び耐久性の向上を実現できる。
【0075】
また、この遠心ファン1では、
図3及び
図4等に示すように、第1空隙部S1は、モータ支持壁93のモータ取付板95における開口部97を囲む領域、すなわち凹部98がモータ壁31から駆動軸心X35方向に離間するように絞られることによって形成されている。つまり、第1空隙部S1を絞り加工によって容易に形成できるので、製造コストの一層の低廉化を実現できる。また、モータ取付板95が立体的形状に絞り加工されることにより、モータ取付板95の剛性を向上させることができるので、モータ取付板95がモータ壁31を確実に支持できる。
【0076】
さらに、この遠心ファン1では、モータ支持壁93がモータ支持壁本体94と、モータ支持壁本体94とは別体であるモータ取付板95とを有している。このため、モータ取付板95を例えば、プレス加工、打ち抜き加工、絞り加工等の加工方法を用いて容易に製造できるので、製造コストを低廉化できる。また、モータ取付板95について、第1空隙部S1及び第2空隙部S2を好適に形成できる形状に容易に加工できる。
【0077】
また、この遠心ファン1では、
図5に示すように、補助羽根54が駆動軸35及び羽根車50と共に回転することで、隙間領域E3での空気の流れを一層促進できる。その結果、この遠心ファン1では、モータ3周辺の空気が第1空隙部S1及び第2空隙部S2を経由して隙間領域E3に一層流れ易くなるので、モータ3の熱を一層効果的に奪うことができる。
【0078】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0079】
例えば、実施例では1つの凹部98によって1つの第1空隙部S1が形成されているがこの構成には限定されない。例えば、凹部98を複数の凹部に変更し、それらの凹部によって複数の第1空隙部が形成されてもよい。また、第1空隙部は、駆動軸周りで不均一であってもよい。さらに、実施例では、第1空隙部S1は、モータ支持壁93の一部であるモータ取付板95の凹部98がモータ壁31の外周縁31Eからボス部33までの範囲に亘って、モータ壁31から駆動軸心X35方向に離間するように形成されているが、この構成には限定されない。例えば、第1空隙部は、モータ支持壁の全部がモータ壁の外周縁からボス部までの範囲に亘って、モータ壁から駆動軸の軸方向に離間するように形成されてもよい。
【0080】
実施例では、第2空隙部S2は、開口部97の内周縁97Eの全周がボス部33の外周面から駆動軸心X35の径方向に離間してなるがこの構成には限定されない。例えば、開口部97の内周縁97Eの一部を駆動軸心X35の径方向の内側に突出させて、ボス部33の外周面に当接させてもよい。
【0081】
モータ支持壁とモータ壁との間にスペーサを介在させたり、モータ支持壁及びモータ壁の少なくとも一方に足を設けたりして、第1空隙部を形成する構成を採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は例えば、強制給気式燃焼装置、給湯器又は暖房用熱源機等に利用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1…遠心ファン
90…収容空間
97…開口部
93…モータ支持壁
9…ケーシング
31…モータ壁
33…ボス部
35…駆動軸
3…モータ
51…主板
51E…主板の外周縁
53…複数の羽根
50…羽根車
31E…モータ壁の外周縁
S1…第1空隙部
97E…開口部の内周縁
S2…第2空隙部
94…モータ支持壁本体
96…取付部
95…モータ取付板
54…複数の補助羽根