(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】軸流式ターボ機械及びその翼
(51)【国際特許分類】
F01D 5/14 20060101AFI20221021BHJP
F04D 29/38 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
F01D5/14
F04D29/38 A
(21)【出願番号】P 2018230297
(22)【出願日】2018-12-07
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】武田 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】明連 千尋
(72)【発明者】
【氏名】村形 直
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02184442(EP,A1)
【文献】国際公開第2018/147162(WO,A1)
【文献】特開2011-074837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/14
F04D 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
翼プロフィル部、
前記翼プロフィル部のチップ側及びハブ側のうち少なくともハブ側に設けられ作動流体の環状流路の一部を画定する流路壁面を有するエンドウォール、及び
前記翼プロフィル部の全周に亘って前記翼プロフィル部と前記流路壁面との境界部に設けたフィレットを備えた軸流式ターボ機械の翼において、
前記流路壁面と前記翼プロフィル部の翼面とに直交する断面で見て前記フィレットの外形が半径Rの円弧状曲面であり、
前記流路壁面に対する前記翼プロフィル部の投影の外縁から前記流路壁面の外縁までの距離dが前記フィレットの半径Rの最大値よりも小さい狭小部が、前記流路壁面に存在し、
前記流路壁面から翼長方向に高さを採った場合に、前記狭小部における前記フィレットの円弧状曲面の上端部を前記狭小部以外の領域における前記フィレットの円弧状曲面の上端部
の中で最も低い部分よりも低くし、前記円弧状曲面の下端部が、前記狭小部を含めて前記翼プロフィル部の全周に亘って前記流路壁面に一致させてある軸流式ターボ機械の翼。
【請求項2】
請求項1の軸流式ターボ機械の翼において、前記翼プロフィル部の背側及び腹側のうち少なくとも前記背側に前記狭小部が存在するターボ機械の翼。
【請求項3】
請求項1の軸流式ターボ機械の翼において、前記断面における前記フィレットの半径Rが前記翼プロフィル部の全周に亘って一定であるターボ機械の翼。
【請求項4】
請求項1の軸流式ターボ機械の翼において、前記狭小部以外の領域に比べて前記狭小部における前記円弧状曲面の前記断面における半径が小さくなっているターボ機械の翼。
【請求項5】
請求項4の軸流式ターボ機械の翼において、前記狭小部における前記半径Rが前記距離dに等しいターボ機械の翼。
【請求項6】
請求項1の翼である静翼、及び前記静翼と共に1つの段落部を形成する動翼を備えた軸流式ターボ機械。
【請求項7】
請求項1の翼である動翼、及び前記動翼と共に1つの段落部を形成する静翼を備えた軸流式ターボ機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流式ターボ機械及びその翼に関する。
【背景技術】
【0002】
軸流式ターボ機械を構成する翼としては、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軸流式ターボ機械では、例えばロータの動翼の遠心応力に対する強度の向上を狙って翼プロフィル部の付け根部分(プラットフォーム等のエンドウォールとの接続部分)等にフィレットを設けている。しかし、翼プロフィル部の外周面からエンドウォールの縁までの距離dが短く、フィレットの半径Rが距離dに納まらない場合がある。
【0005】
一般にフィレットの半径Rは全周に亘って統一され、フィレットにおける翼プロフィル部側の縁部(フィレットと翼プロフィル部の境界)は翼プロフィル部の全周に亘ってエンドウォールから一定の高さに設定される。そのため、上記距離dが半径Rよりも短い領域では、フィレットが中腹で切断されたような形状となってエンドウォールの表面に対して段差になる。エンドウォールの表面は作動流体の流路壁面を構成するため、フィレットによる段差が大きいと空力性能の低下を招く。フィレットの半径Rを上記の距離dの最小値に設定すれば凸凹は抑えられるが、この場合フィレットが必要以上に小さくなり、遠心応力の集中により翼の信頼性が懸念される。
【0006】
本発明は、空力性能と翼信頼性をバランス良く両立することができる軸流式ターボ機械及びその翼を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、翼プロフィル部、前記翼プロフィル部のチップ側及びハブ側のうち少なくともハブ側に設けられ作動流体の環状流路の一部を画定する流路壁面を有するエンドウォール、及び前記翼プロフィル部の全周に亘って前記翼プロフィル部と前記流路壁面との境界部に設けたフィレットを備えた軸流式ターボ機械の翼において、前記流路壁面と前記翼プロフィル部の翼面とに直交する断面で見て前記フィレットの外形が半径Rの円弧状曲面であり、前記流路壁面に対する前記翼プロフィル部の投影の外縁から前記流路壁面の外縁までの距離dが前記フィレットの半径Rの最大値よりも小さい狭小部が、前記流路壁面に存在し、前記流路壁面から翼長方向に高さを採った場合に、前記狭小部における前記フィレットの円弧状曲面の上端部を他の場所における前記フィレットの円弧状曲面の上端部の中で最も低い部分よりも低くし、前記円弧状曲面の下端部が、前記狭小部を含めて前記翼プロフィル部の全周に亘って前記流路壁面に一致させてある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、空力性能と翼信頼性をバランス良く両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のターボ機械の一例であるガスタービンの部分断面図
【
図2】本発明の第1実施形態に係る翼の要部を抜き出して表した斜視図
【
図3】本発明の第1実施形態に係る翼を作動流体の上流側から見た図
【
図5】本発明の第1実施形態に係る翼の形状の説明図
【
図6】本発明の第2実施形態に係る翼を作動流体の上流側から見た図
【
図7】本発明の第3実施形態に係る翼を作動流体の上流側から見た図
【
図8】
図7中のVIII-VIII線による翼の断面図
【
図10】従来技術に係る翼の要部を抜き出して表した斜視図
【
図11】従来技術に係る翼を作動流体の上流側から見た図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0011】
(第1実施形態)
-ターボ機械-
図1は本発明のターボ機械の一例であるガスタービンの部分断面図である。この図に示したガスタービンは、大気A1を吸い込んで圧縮する圧縮機10、圧縮機10からの圧縮空気A2を燃料Fと共に燃焼する燃焼器20、及び燃焼器20からの燃焼ガスG1によって駆動されるタービン30を備えている。
【0012】
圧縮機10のロータ11とタービン30のロータ31は同軸上に連結されている。また、ロータ11又はロータ31には、負荷機器として例えば発電機が連結される。これによってタービン30のロータ31と共に発電機が回転し、ロータ31の回転エネルギーが電気エネルギーに変換される。ロータ31に軸動力を与えた燃焼ガスG2はガスタービンから排出され、例えば浄化装置等に導かれた後、放出される。負荷機器としてポンプが連結され、ガスタービンがポンプの原動機として用いられる場合もある。
【0013】
圧縮機10のロータ11は、ガスタービンの外郭をなすケーシング9の内部に回転自在に収容されている。ロータ11は、外周部に動翼12を周方向に複数設けたディスク13を軸方向に交互に複数積層して構成されている。また、ケーシング9の内側には、各段落において動翼12の下流側に対向するように静翼14の環状翼列が固定されている。つまり動翼12の1つの環状列とその下流側に対面する静翼14の1つの環状列とで1つの段落部が形成されている。
【0014】
燃焼器20には、燃料Fと圧縮空気A2を燃焼させる燃焼室を形成する燃焼器ライナ21や、燃焼器ライナ21をタービン30に接続する尾筒22の他、図示していないが、燃焼器ライナ21や尾筒22を包囲するアウタケーシングやバーナ等が備わっている。燃焼器ライナ21及び尾筒22とアウタケーシングの間には円筒状の空気流路が形成される。
【0015】
タービン30のロータ31は、ケーシング9の内部に回転自在に収容されている。ロータ31は、外周部に動翼32を周方向に複数設けたディスク33とスペーサ34とを軸方向に交互に複数積層して構成されている。また、ケーシング9の内側には、各段落において動翼32の上流側に対向するように静翼35の環状翼列が固定されている。つまり動翼32の1つの環状列とその上流側に対面する静翼35の1つの環状列とで1つの段落部が形成されている。
【0016】
図1のガスタービンにおいては、圧縮機10の動翼12及び静翼14、並びにタービン30の動翼32及び静翼35が、本発明に係る翼に該当し得る。また、本例ではガスタービンを例示しているが、蒸気タービンの動翼及び静翼にも本発明は適用可能である。また
図1では単軸のガスタービンを例示しているが、二軸式ガスタービンにも本発明は適用可能である。以下、本発明に係る翼の構造の代表例として、圧縮機10の動翼12について詳細を説明する。
【0017】
-翼-
図2は本発明の第1実施形態に係る翼の要部を抜き出して表した斜視図、
図3は
図2に示した翼を作動流体の上流側から見た図(
図2を矢印III方向に見た図)、
図4は
図3中のIV-IV線による翼の断面図、
図5は第1実施形態に係る翼の形状の説明図である。これらの図に示した翼1は前述した通り圧縮機10の動翼12であり、翼根部2、エンドウォール3、翼プロフィル部4及びフィレット5を有している。本実施形態の場合、翼根部2、エンドウォール3、翼プロフィル部4及びフィレット5は一体に形成されている(例えば翼1は素材から一体に削り出して形成される)。
【0018】
翼根部2は、翼1を圧縮機10のディスク13(
図1)の外周部に取付けるための部位である。
【0019】
エンドウォール3はプラットフォーム又はダブテイルとも称され、その圧縮機半径方向の外側を向いた面は作動流体が流れる環状流路(
図1の大気A1が吸い込まれ流通する流路)の一部を画定する流路壁面3aをなす。本実施形態の圧縮機10の場合、流路壁面3aは作動流体の流れ方向の下流側に向かって圧縮機半径方向の外側に傾斜している(
図2)。
【0020】
翼プロフィル部4はエンドウォール3の流路壁面3aに端部(
図2の例では根元側の端部)が支持されている。翼プロフィル部4は凹形状の腹側面(圧力面)4aと凸形状の背側面(負圧面)4bを持つ。翼長方向の任意の位置で切断した直交断面(
図4も参照)の腹側面4aと背側面4bとの中間点を通る曲面を翼中心面4cとすると、翼プロフィル部4は翼中心面4cに沿って前縁4fから翼中心にかけて厚みを増し、翼中心から後縁4rに向かって薄くなる。
【0021】
なお、本実施形態においては、翼プロフィル部4のチップ側(
図2中の上側)及びハブ側(
図2中の下側)のうちのハブ側にのみエンドウォール3が設けられていることとする。しかし、翼プロフィル部4のハブ側に加えてチップ側にエンドウォール3が存在する場合もある。動翼12の翼プロフィル部4のチップ側のエンドウォール3が存在する場合、それはインテグラルカバーとも称される。動翼12以外の翼について説明すると、タービン30の動翼32も圧縮機10の動翼12と同じく、翼プロフィル部4のチップ側及びハブ側のうちの少なくともハブ側にエンドウォール3が設けられる。圧縮機10やタービン30の静翼14,35の翼プロフィル部4にも、ハブ側(
図1中の下側)及びチップ側(同上側)にエンドウォール3が存在する。ハブ側のエンドウォール3はダイヤフラム内輪、チップ側のエンドウォール3はダイヤフラム外輪とも称される。いずれのエンドウォール3も作動流体(空気や燃焼ガス)の流路壁面(環状流路の内周側壁面又は外周側壁面)を構成する。
【0022】
-フィレット-
フィレット5は翼1の強度向上のために設けられた要素であり、翼プロフィル部4の全周に亘ってエンドウォール3の流路壁面3aと翼プロフィル部4との境界部に沿って環状に設けられている。このフィレット5の表面は凹状の曲面であり、翼プロフィル部4の翼面と流路壁面3aとを滑らかに接続している。例えば翼プロフィル部4の翼面と流路壁面3aとに直交する断面で見た場合、フィレット5の外形は流路壁面3aの端部と翼プロフィル部4の翼面に外接する半径Rの円弧で形成されている。つまりフィレット5の表面は凹状で断面が半径Rの円弧状曲面である。
図3は流路壁面3aに沿った視点から描かれているため、翼プロフィル部4の翼面と流路壁面3aとに直交する断面で見たフィレット5の外形は同図に示した形状に一致する。なお、同断面におけるフィレット5の半径Rは、本実施形態では翼プロフィル部4の全周の領域に亘って一定である。
【0023】
ここで、流路壁面3aに対する翼プロフィル部4の投影(
図4のハッチングを施した図形に相当)の外縁から流路壁面3aの外縁まで流路壁面3aに沿って翼プロフィル部4の翼面に直交する方向に採った寸法を距離dとする。流路壁面3aには、フィレット5の半径Rの最大値(本例ではR一定)よりも距離dが小さい領域が存在する。本願明細書ではR>dとなる領域を狭小部3bと称する。本発明の適用対象となる翼には翼プロフィル部の背側及び腹側のうち少なくとも背側にこの狭小部が存在することが前提となり、本実施形態においては背側及び腹側の双方に狭小部3bが存在している。
【0024】
また、流路壁面3aから翼プロフィル部4の翼長方向に高さを採った場合に、狭小部3bにおけるフィレット5の円弧状曲面の上端部の高さをh1(
図5)とする。狭小部3b以外の領域におけるフィレット5の円弧状曲面の上端部の高さは半径Rに等しい。本実施形態では、最も大きな特徴として、狭小部3bにおけるフィレット5の円弧状曲面の上端部の高さを狭小部3b以外の領域におけるフィレット5の円弧状曲面の上端部の高さよりも低くしてある(h1<R)。このようにフィレット5の上端部の高さを変化させることにより、フィレット5の円弧状曲面の下端部(流路壁面3a側の端部)を、狭小部3bを含めて翼プロフィル部4の全周の領域に亘って流路壁面3aに一致させてある。エンドウォール3の側面から見て(ロータ回転方向から見て)フィレット5の下端部は流路壁面3aに一致して段差なく作動流体の流れ方向に直線状に延びている(
図2)。
【0025】
-比較例-
図10は従来技術に係る翼の要部を抜き出して表した斜視図、
図11は従来技術に係る翼を作動流体の上流側から見た図である。
図10は
図2、
図11は
図3に対応する図である。同図に示した比較例は、距離dに関わらず(狭小部3bの有無に関わらず)流路壁面αから採ったフィレットβの上端部の高さが一定(=R)である。
図11において翼プロフィル部の背側及び腹側の距離d1,d2はいずれもフィレットβの断面の半径Rより小さい。そのためエンドウォールγの幅wが狭いとフィレットβの円弧状曲面の下端に流路壁面αからの高さh’,h”が生じ、作動流体の流れ方向に見てエンドウォールγの幅方向の両端において流路壁面αに対しフィレットβによる高さh’,h”の段差が発生する。段差の高さh’,h”は翼プロフィル部に対してエンドウォールγの幅wが狭く距離d1,d2が短いほど大きくなる。この段差は空力性能に悪影響を及ぼす。
【0026】
それに対し、本実施形態では
図5に示した通り、狭小部3bにおいてフィレット5は比較例のフィレット(破線)と同一の半径Rを維持しつつ比較例のフィレットの段差の高さh’,h”だけ流路壁面3a側に平行移動している。これによりエンドウォール3の幅方向の両端において流路壁面3aに対してフィレット5による段差のない構成となっている。
【0027】
-効果-
(1)空力性能の翼信頼性の両立
本実施形態においては、上記の通りエンドウォール3の流路壁面3a上における狭小部3bであっても、流路壁面3aの外縁部においてフィレット5による段差が生じないように構成してある。これにより、狭小部においてフィレットが流路壁面の外縁部で段差になることで生じる空力性能の低下を抑制できる。またフィレット5の高さが距離dに応じて減少するのが狭小部3bに制限されるため、全体としてフィレット5が過度に小さくなることもなく、強度的信頼性も確保できる。よって、空力性能と翼信頼性(強度)をバランス良く両立することができる。特に本実施形態では狭小部3bでもフィレット5の半径Rを不変としたことで、狭小部3bにおけるフィレット5の高さの変化が抑えられ、強度低下の抑制効果が高い。
【0028】
(2)製作容易性
フィレット5の円弧状曲面の半径R(曲率半径)が不変であるため、フィレット5の形成がし易く、製作容易性も良好である。
【0029】
(第2実施形態)
図6は本発明の第2実施形態に係る翼を作動流体の上流側から見た図であり、第1実施形態の
図3に対応している。同図において第1実施形態に係る翼と同一の又は対応する要素には既出図面と同符号を付して説明を省略する。本実施形態が第1実施形態と相違する点は、翼プロフィル部4の背側及び腹側のうちの背側(
図6中の右側)の狭小部3bのみでフィレット5の円弧状曲面の下端部を流路壁面3aに一致させるフィレット形状を採用している点である。翼プロフィル部4の翼面と流路壁面3aとに直交する断面におけるフィレット5の半径Rは、第1実施形態と同じく翼プロフィル部4の全周に亘る領域において一定である。腹側(
図6中の左側)の狭小部3bでは、フィレット5の円弧状曲面の下端部が流路壁面3aに対して比較例(
図11)と同様に高さh”の段差を生じている。他の点において本実施形態は第1実施形態と同様である。
【0030】
流路壁面の段差が空力性能に与える影響が顕著となるのは翼プロフィル部の背側であるため、段差の生じないフィレット構造を背側のみに適用しても空力性能の高い改善効果が得られる。また第1実施形態に比べて加工が簡単である。
【0031】
なお、本実施形態の特徴は後の第3-第4実施形態にも適用可能である。
【0032】
(第3実施形態)
図7は本発明の第3実施形態に係る翼を作動流体の上流側から見た図、
図8は
図7中のVIII-VIII線による翼の断面図であり、
図7は第1実施形態の
図3に対応している。同図において第1実施形態に係る翼と同一の又は対応する要素には既出図面と同符号を付して説明を省略する。本実施形態が第1実施形態と相違する点は、フィレット5の上記半径Rが変化し、狭小部3b以外の領域に比べて狭小部3bにおけるフィレット5の円弧状曲面の半径Rが小さくなっている点である。半径Rは、第1実施形態と同じく翼プロフィル部4の翼面と流路壁面3aとに直交するフィレット5の断面の円弧部分の半径である。
【0033】
本実施形態においては、半径Rは、狭小部3bにおいては距離dに等しく、狭小部3b以外の領域では距離dよりも小さい一定値に設定されている。つまりフィレット5の断面の半径Rは基本的に一定値であるが、狭小部3bにおいては距離dに応じて連続的に変化する。
図7において第1実施形態のフィレット外形線を二点鎖線で示した通り、狭小部3bではフィレット5の半径Rが距離dに等しく第1実施形態に比べて小さくなっており、その分だけ第1実施形態よりも狭小部3bにおけるフィレット5の高さが低くなっている。その一方で、翼長方向から見たフィレット5の形状は第1実施形態と同一である(
図8)。他の点において本実施形態は第1実施形態と同様である。
【0034】
このような構成であっても、狭小部3bを除く領域ではフィレット5の高さを第1実施形態と同様に十分に確保できるので、距離dの最小値に合わせて一律にフィレット5の高さを低くする構成に比べて高い強度が確保できる。また、第1実施形態と同じく流路壁面3aの縁部においてフィレット5による段差が生じず、更に狭小部3bにおいては第1実施形態に比べてフィレット5が低く小さい。加えてフィレット5が流路壁面3aに滑らかに接続している。そのため、空力抵抗の点では第1実施形態よりも良好である。但し、翼強度の観点では狭小部3bにおけるフィレット5の高さの差の分だけ本実施形態よりも第1実施形態が優れている。
【0035】
(第4実施形態)
図9は本発明の第4実施形態に係る翼の断面図であり、第3実施形態の
図8に対応している。同図において第1実施形態に係る翼と同一の又は対応する要素には既出図面と同符号を付して説明を省略する。本実施形態はフィレット5の断面の半径Rが変化する点で第3実施形態に共通するが、第3実施形態のように狭小部3bにおいて半径Rが連続的に変化するのではなく、半径Rが2段階に変化する点で本実施形態と第3実施形態は異なる。具体的には、狭小部3bを含んで2つの境界部8で挟まれた領域におけるフィレット5の半径Rは、狭小部3bを含まず2つの境界部8で挟まれた領域におけるフィレット5の半径Rに比べて小さくなっている。狭小部3bを含む領域では、距離dの最小値と同じかよれよりも若干小さい程度の一定値に半径Rが設定されている。狭小部3bを含まない領域では第1実施形態における狭小部3b以外におけるフィレット5の半径Rと同様に、距離dよりも小さな一定値(狭小部を含む領域における半径Rよりも大きな値)に設定されている。言うまでもないが、フィレット5の円弧状曲面の下端部は流路壁面3aに一致している点は、第1-第3実施形態と共通している。他の点において本実施形態は第1実施形態と同様である。
【0036】
本実施形態においても第3実施形態と概ね同様の効果が得られる。加えて、狭小部3bを含む領域においてフィレット5の円弧曲面の断面の半径Rが変化しないので、狭小部3bにおいて連続的に半径Rが変化する第3実施形態に比べて製作が容易である。
【符号の説明】
【0037】
1…翼、3…エンドウォール、3a…流路壁面、3b…狭小部、4…翼プロフィル部、5…フィレット、12…動翼(翼)、14…静翼(翼)、32…動翼(翼)、35…静翼(翼)、d…距離、h1,h2…高さ、R…半径