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特許7162521多段式ハンドおよびこれを備える搬送ロボット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】多段式ハンドおよびこれを備える搬送ロボット
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20221021BHJP
   B65G 49/07 20060101ALI20221021BHJP
   B25J 15/00 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B65G49/07 F
B25J15/00 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018239742
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020102531
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】笠原 公博
(72)【発明者】
【氏名】福間 邦夫
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-179420(JP,A)
【文献】特開2018-192599(JP,A)
【文献】特開2013-135099(JP,A)
【文献】特開2006-054455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B65G 49/07
B25J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に並ぶ複数のハンドを有し、各ハンドのハンド間ピッチ間隔を変更可能であり、各ハンドはワークのクランプおよびクランプ解除を行うクランプ部材を有する多段式ハンドにおいて、
上記クランプ部材は、上記各ハンドに対し、前後方向に移動可能に支持されており、
上記クランプ部材はさらに、前方側に形成された固定ばね受け部材と、後方側に前後方向に相対移動可能に設けた移動ばね受け部材との間に介装した圧縮型ばね部材を有し、
上記移動ばね受け部材は、前後方向に駆動され、後方移動時に上記クランプ部材に係合する移動体の前面に対し、上下方向に低抵抗で相対移動可能に弾性接触させられていることを特徴とする、多段式ハンド。
【請求項2】
上記クランプ部材は、前後方向に延びるロッドと、当該ロッドの先端に形成され、クランプ時にワークを押圧するクランプ体とを含み、上記ハンドに設けたホルダにより上記ロッドの上記固定ばね受け部材よりも前方の部位が前後方向移動可能に支持されており、上記圧縮型ばね部材は、上記ロッドに套挿した圧縮コイルばねである、請求項1に記載の多段式ハンド。
【請求項3】
上記移動ばね受け部材は、上記移動体の前面に接触して転動するローラを含む、請求項2に記載の多段式ハンド。
【請求項4】
上記各ハンドは、上記クランプ部材のクランプ作動時、上記クランプ体がワークを適正に押圧していないことを光学的に検出する光学検出手段を有する、請求項3に記載の多段式ハンド。
【請求項5】
上記光学検出手段は、上記ハンドの適部に設けた受発光素子と、上記クランプ体に形成した反射状態変更部とを含む、請求項4に記載の多段式ハンド。
【請求項6】
上記反射状態変更部は、上記クランプ体に上下貫通状に設けた貫通孔である、請求項5に記載の多段式ハンド。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の多段式ハンドを備える、搬送ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の板状ワークを搬送できる多段式ハンドおよびこれを備える搬送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの板状ワークの複数枚を一度に搬送できる多段式ハンドが例えば特許文献1に記載されている。これらの文献に記載された多段式ハンドは、ピッチの異なるカセット間でのワークの一括搬送を可能とするために、ハンド間ピッチを変更できるように構成されている。
【0003】
特許文献1にはまた、多段式ハンドにおいて、各ハンドに搭載されるワークを各別に保持するためのクランプ機構が記載されている。このクランプ機構は、各ハンド上でクランプ部材を常時前方(クランプ方向)に向けて付勢するバネを有するとともに、各クランプ部材をバネの付勢力に抗して一斉に後方に引き戻すための移動部材を有している。この移動部材はアクチュエータによって前後方向(クランプ方向とクランプ解除方向)に移動させられる。ワークをクランプしないときには移動部材は後方(クランプ解除方向)に移動して各クランプ部材を上記付勢力に抗して後方に引き戻している。ワークをクランプするときは、移動部材が前方に移動するが、このとき、クランプ部材がワークに当接した後にも移動部材はなお所定距離前方に移動し、当該移動部材は各クランプ部材に対して前方に離間した状態となる。これは、各ハンドにおいてワークを保持したままハンド間ピッチを変更するとき、移動部材と各クランプ部材が相互に擦れ動くことを回避するためである。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された構成では、クランプ解除状態において、各ハンドでクランプ部材を前方に付勢するバネの付勢力の総和に抗して移動部材を後方移動状態に保持する必要がある。
【0005】
このことは、移動部材を前後方向に移動させるためのアクチュエータの高出力化を必要とし、移動部材を後方に引き戻した状態を維持するためのエネルギが必要となることを意味し、アクチュエータに求められる機能に無駄が多いという問題がある。一斉に作動させるハンドの数が増えると、このような問題は尚更となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-135099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、ハンド間ピッチを変更可能な多段式ハンドにおいて、より効率的にワークのクランプおよびクランプ解除を行えるようにすることをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0009】
すなわち、本発明の第1の側面によって提供される多段式ハンドは、上下方向に並ぶ複数のハンドを有し、各ハンドのハンド間ピッチ間隔を変更可能であり、各ハンドはワークのクランプおよびクランプ解除を行うクランプ部材を有する多段式ハンドにおいて、上記クランプ部材は、上記各ハンドに対し、前後方向に移動可能に支持されており、上記クランプ部材はさらに、前方側に形成された固定ばね受け部材と、後方側に前後方向に相対移動可能に設けた移動ばね受け部材との間に介装した圧縮型ばね部材を有し、上記移動ばね受け部材は、前後方向に駆動され、後方移動時に上記クランプ部材に係合する移動体の前面に対し、上下方向に低抵抗で相対移動可能に弾性接触させられていることを特徴とする。
【0010】
好ましい実施の形態では、上記クランプ部材は、前後方向に延びるロッドと、当該ロッドの先端に形成され、クランプ時にワークを押圧するクランプ体とを含み、上記ハンドに設けたホルダにより上記ロッドの上記固定ばね受け部材よりも前方の部位が前後方向移動可能に支持されており、上記圧縮型ばね部材は、上記ロッドに套挿した圧縮コイルばねである。
【0011】
好ましい実施の形態では、上記移動ばね受け部材は、上記移動体の前面に接触して転動するローラを含む。
【0012】
好ましい実施の形態では、上記各ハンドは、上記クランプ部材のクランプ作動時、上記クランプ体がワークを適正に押圧していないことを光学的に検出する光学検出手段を有する。
【0013】
好ましい実施の形態では、上記光学検出手段は、上記ハンドの適部に設けた受発光素子と、上記クランプ体に形成した反射状態変更部とを含む。
【0014】
好ましい実施の形態では、上記反射状態変更部は、上記クランプ体に上下貫通状に設けた貫通孔である。
【0015】
本発明の第2の側面によって提供される搬送ロボットは、上記第1の側面に係る多段式ハンドを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
クランプ時、移動体が前方に向けて移動させられると、この移動体は移動ばね受け部材を前方に押す。これにより、固定ばね受け部材およびクランプ部材は圧縮型ばね部材を介して前方への弾性押動力を受けながら前方へ移動する。やがてクランプ部材はワークに当接し、それ以上の前方移動が阻止される。この状態では、クランプ部材はワークを弾性的に押圧しており、ハンド上でのワークのクランプ状態が現出する。
【0017】
クランプ解除時、移動体は後方へ移動させられ、これに伴い移動体と係合するクランプ部材も後方へ移動させられ、ワークのクランプが解除される。このとき、移動ばね受け部材はクランプ部材に係合する移動体に弾性接触しているので、移動ばね受け部材と固定ばね受け部材との間の圧縮型ばね部材が圧縮されることはない。すなわち、クランプ解除時、移動体は各ハンドのクランプ部材に付属する圧縮型ばね部材の影響を受けることが実質的になく、また、移動体の後方移動時、各圧縮型ばね部材を圧縮することもない。したがって、クランプ解除時、特許文献1の構成のように、クランプ部材を前方に付勢するバネの付勢力の総和に抗して移動体を後方移動状態に保持する必要はなく、移動体を駆動するアクチュエータの高出力化が不要となる。
【0018】
クランプ時、移動体は移動ばね受け部材を介して圧縮型ばね部材の弾性力を受けるが、移動ばね受け部材は低抵抗で上下方向に相対移動可能に移動体の前面に当接しているので、クランプ状態において各ハンドのハンド間ピッチ間隔を変更することに問題は生じない。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、図面を参照して以下に行う詳細な説明から、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る多段式ハンドを搭載した搬送ロボットの一例の全体構成図である。
図2】本発明に係る多段式ハンドの一例の全体斜視図である。
図3図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図5】クランプ機構の後方部の説明図である。
図6】クランプ機構の前方部の説明図である。
図7】クランプ機構の平面図である。
図8】ハンドの前方部(ハンド体)の平面図である。
図9図4のIX-IX線に沿う断面図である。
図10】ハンドピッチ規制手段の作用説明図であり、図4のIX-IX線に沿う断面図に相当する図である。
図11】ハンドピッチ規制手段の作用説明図であり、図4のIX-IX線に沿う断面図に相当する図である。
図12】ハンドピッチ規制手段の作用説明図であり、図4のIX-IX線に沿う断面図に相当する図である。
図13】ハンドピッチ規制手段の作用説明図であり、図4のIX-IX線に沿う断面図に相当する図である。
図14】クランプ機構およびクランプセンサの作用説明図である。
図15】クランプ機構およびクランプセンサの作用説明図である。
図16】クランプ機構およびクランプセンサの作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1に示すように、本発明に係る多段式ハンドA1は、たとえば多関節ロボットB1のエフェクタ装着アームBaに搭載されて搬送ロボットBを構成する。搬送ロボットBは、エフェクタ装着アームBaの先端を姿勢制御しつつ三次元的に移動させることができる、あらゆる構成を有するものを採用することができる。
【0023】
図2図9は、本発明の一実施形態に係る多段式ハンドA1を示す。この多段式ハンドA1は、収容ボックス10と、上下に重なるように配置された複数のハンド20と、それら姿勢を維持しつつ上下方向に移動可能にガイドするガイド手段70(図4図9)と、複数のハンド20の最大ハンド間ピッチを規制するハンド間ピッチ規制手段50(図9)と、最上位のハンド(第1ハンド20a)を昇降させる昇降機構60と、を有する。
【0024】
ハンド20は、本実施形態では、半導体製造のための円形シリコンウエハを板状ワークWとして載置・搬送するように構成されており、先端側の二股フォーク状のハンド体210(図8)と、その基部が連結された支持体220とを有する。ハンド体210は、その主要部をたとえば炭素繊維強化プラスチックなどの軽量硬質材料により形成され、支持体220は金属または硬質樹脂などで形成される。ハンド20は、複数のものが上下方向に重なるようにして配置されている。具体的には、収容ボックス10内に各ハンド20の支持体220がガイド手段70により、水平姿勢を維持しつつ上下方向に自由移動可能にガイドされているとともに、収容ボックス10の前面開口101から各ハンド体210が延出させられている(図3図4)。実施形態では、収容ボックス10の底部に支持体220が固定された最下位のハンド(第11ハンド)20kの上位に、上記のようにガイド手段70によりガイドされる10個のハンド(最上位から、第1ハンド20a~第10ハンド20j)が設けられている(図3図9)。
【0025】
各ハンド20には、ハンド体210に設けた爪211(図8)と協働してハンド体210に載置されたワークWを保持するクランプ機構80がそれぞれ設けられ、各ハンド20のクランプ機構80を一斉に作動させるクランプ駆動機構82が設けられるが、これについては後述する。
【0026】
図9図13によく表れているように、ハンド間ピッチ規制手段50は、合計11個のハンド20a~20kを、最上位の第1ハンド20aを含め、1つおきに位置する奇数番目の第1群のハンド(第1、第3、第5、第7、第9および固定ハンド20a,20c,20e,20g,20i,20k)と、それ以外の偶数番目の第2群のハンド(第2、第4、第6、第8、第10ハンド20b,20d,20f,20h,20j)の2つのグループに分け、上位に位置する第1群のハンド20a,20c,20e,20g,20i,20kとその直ぐ下位に位置する第2群のハンド20b,20d,20f,20h,20j間は、当該第1群のハンド20a,20c,20e,20g,20i,20kに設けた上向き当接部221a(図9)と、当該第2群のハンド20b,20d,20f,20h,20jに設けた下向き当接部233a(図9)とが相互に当接することにより両者間の最大ピッチ間隔が規制され(図13)、上位に位置する第2群のハンド20b,20d,20f,20h,20jとその直ぐ下位に位置する第1群のハンド20a,20c,20e,20g,20i,20k間は、当該第2群のハンド20b,20d,20f,20h,20jに設けた上向き当接部221aと、当該第1群のハンド20a,20c,20e,20g,20i,20kに設けた下向き当接部233aとが相互に当接することにより両者間の最大ピッチ間隔が規定されるように構成されている(図13)。
【0027】
実施形態では、上向き当接部221aは、各ハンド20の支持体220の側方に延出する規制片221の上面によって構成されている。また、下向き当接部233aは、各ハンド20の支持体220の側方に延出する側方延出部231と、当該側方延出部231の先端から上方に延出する上方延出部232と、当該上方延出部232の上部からハンド20の支持体220に近づくように延びる折り返し延出部233とを有する略コ字状ブロック230における上記折り返し延出部233の下面によって構成されている。
【0028】
実施形態ではまた、第1群のハンド20a,20c,20e,20g,20i,20kの上向き当接部221aと第2群のハンド20b,20d,20f,20h,20jの下向き当接部233aの組は、第1の平面位置において、上下方向に重なって位置しており(以下、これを第1組の当接関係部R1(図4)という)、第2群のハンド20b,20d,20f,20h,20jの上向き当接部221aと第1群のハンド20a,20c,20e,20g,20i,20kの下向き当接部233aの組は、第1の平面位置とは異なる第2の平面位置において、上下方向に重なって位置している(以下、これを第2組の当接関係部R2(図4)という)。より具体的には、図4に表れているように、各ハンド20の支持体220は、平面視において略矩形仮想領域Sを有しており、上記第1組の当接関係部R1は略矩形仮想領域Sの一方の対角線D1上に2か所設けられており、上記第2組の当接関係部R2は他方の対角線D2上に2か所設けられている。換言すると、上記略矩形仮想領域Sの前方側と後方側のそれぞれにおいて、上記第1組の当接関係部R1と第2組の当接関係部R2とがハンド20の支持体220の幅方向に対向して位置しており、前方部と後方部とで第1組の当接関係部R1と第2組の当接関係部R2の左右関係が逆になっている。
【0029】
ガイド手段70は、第1組の当接関係部R1(2か所)および第2組の当接関係部R2(2か所)において、上下方向に積み重なるように並ぶ複数のブロック230を上下方向の軌道を有するリニアガイド71によりガイドすることにより構成されている。
【0030】
ところで、各ハンド20(第1ハンド20aを除く)の支持体220には、厚さ方向に貫通する貫通孔222が形成されており、これにより、昇降機構60およびクランプ駆動機構82を配置するための空間が形成されている。
【0031】
昇降機構60は、収容ボックス10の底部にエアシリンダ610を上向きに設置するとともに、そのピストンロッド611の先端を最上位の第1ハンド20aの支持体220に連結することにより構成されている。この昇降機構60としては、エアシリンダのほか、その他の直線型アクチュエータを採用することができる。
【0032】
各ハンド20には、ハンド体210に形成した爪211と協働してハンド体210に載置されたワークWを保持するためのクランプ機構80が設けられている。このクランプ機構80は、各ハンド20のピッチ間隔が変更されても、一斉にクランプ動およびクランプ解除動するように構成されている。さらに、各クランプ機構80には、ワークWが適正に保持されていないことを検出するクランプセンサ(光学検出手段)83(図6図7)が設けられている。以下、順次説明する。
【0033】
クランプ機構80は、各ハンド20の支持体220上に設置されたホルダ801により軸方向移動可能かつ軸転不能に保持されたロッド802の先端にクランプ体805を取付けたクランプ部材80aを有し、ロッド802を一斉に進退動させるように構成されている。
【0034】
図4図6に表れているように、ロッド802に設けたフランジ(固定ばね受け部材)803とその後方側においてロッド802に対してその軸方向に摺動可能かつロッド802の軸周り回転不能に付属させたばね受け部材(移動ばね受け部材)81との間に、圧縮型ばね部材としての圧縮コイルばね804が套挿され、ロッド802は常時進出方向に付勢されている。ロッド802はまた、ばね受け部材81よりも後方側が、後記するクランプ駆動機構82としての横置きエアシリンダ821により進退動させられる、上下方向に長いヘッド部材(移動体)822に形成された上下方向に延びるスリット823に通されている。ロッド802の後端には、上記スリット823を通過できないフランジ806が形成されている。ばね受け部材81には、上記ヘッド部材822の前面に当接して回転可能なローラ811が、ロッド802の軸方向にみて左右1対設けられている。上下に隣接するハンド20のローラ811が干渉しないように、第1群のハンド20a,20c,20e,20g,20i,20kに設けられるローラ811に対し、第2群のハンド20b,20d,20f,20h,20jに設けられるローラ811は、左右方向に変位させられている。
【0035】
クランプセンサ83は、ハンド体210に限定反射型センサ(受発光素子)831を設けるとともに、クランプ体805に上下方向に貫通する貫通孔(反射状態変更部)832を設け、ワークWが適正に保持されているときには上記貫通孔832に光が入り込んで反射光が検出されずに限定反射型センサ831がオフになり、ワークWが適正に保持されていないときにはクランプ体805の下面で反射する反射光が検出されて限定反射型センサ831がオンになるように構成されている。
【0036】
次に、上記構成の多段式ハンドA1の作用について、説明する。
【0037】
まず、複数のハンド20のハンド間ピッチ間隔の変更に係る作用について説明する。図9は、ハンド間ピッチ間隔が最小となった状態を図4のIX―IX線に沿う断面において示す。昇降機構60のピストンロッド611は最も下動位置にある。この状態では、第1組の当接関係部R1(図4)においては第1群のハンド20a,20c,20e,20g,20i,20kに設けたブロック230が、第2組の当接関係部R2(図4)においては第2群のハンド20b,20d,20f,20h,20jに設けたブロック230が、それぞれ上下方向に積み重なっている。こうして各ブロック230が上下に積み重なることにより、各ハンド20の最小ピッチ間隔が規定されることになる。なおこの状態において、上位にあるハンド20の上向き当接部221aとその直ぐ下にあるハンド20の下向き当接部233aは、当接することなく離間している。このときのハンド間ピッチ間隔は、たとえば7.0mmとされる。このように構成することにより、ハンド間ピッチを最小間隔に規定する別途の構成が不要となる。
【0038】
図9に示した状態から昇降機構60のピストンロッド611が上昇を始めると、まず、第1組の当接関係部R1において、最上位の第1ハンド20aの上向き当接部221aが第2ハンド20bの下向き当接部233aに当接し、その後は第2ハンド20bは第1ハンド20bとともに上昇する(図10)。次いで、第2組の当接関係部R2において、第2ハンド20bの上向き当接部221aが第3ハンド20cの下向き当接部233aに当接し、その後は第3ハンド20cは上記第1ハンド20aおよび第2ハンド20bとともに上昇する(図11)。以後同様に、上昇する上位のハンド20の上向き当接部221aがその下位のハンド20の下向き当接部233aに当接して当該下位のハンド20を引き上げていき、最終的には図13に示すように、すべての上位のハンド20の上向き当接部221aがその下位のハンド20の下向き当接部233aに当接することになる。図13に示した状態では、昇降機構60のピストンロッド611はそれ以上上昇できなくなる。図9に示した状態では、上位にあるハンド20の上向き当接部221aとその直ぐ下にあるハンド20の下向き当接部233aは、当接することなく所定距離Lだけ離間していたが、すべての上位のハンド20の上向き当接部221aがそのすぐ下位のハンド20の下向き当接部233aに当接する図13に示した状態では、ハンド間ピッチ間隔は、図9に示した状態に比較して距離Lだけ拡大したことになる。このときのハンド間ピッチ間隔は、たとえば10.0mmとされる。
【0039】
このようにして、実施形態の多段式ハンドA1は、昇降機構60のピストンロッド611を昇降させることにより、ハンド間ピッチ間隔を最大ピッチ間隔と最小ピッチ間隔の2段階に変更することができる。上記から理解されるように、実施形態の多段式ハンドA1は、ハンド間ピッチ間隔を変更するための構成をほぼハンド20のとくに支持体220の平面占有面積内で構成できるので、ハンド20の数がさらに増えても多段式ハンドA1としての平面占有面積が拡大することはない。
【0040】
しかも、複数のハンド20を1つおきに位置する第1群のハンド20a,20c,20e,20g,20i,20kとそれ以外の第2群のハンド20b,20d,20f,20h,20jとにグループ分けしているので、第1群のハンド20a,20c,20e,20g,20i,20kの上向き当接部221aと第2群のハンド20b,20d,20f,20h,20jの下向き当接部233aの組(第1組の当接関係部R1)と、第2群のハンド20b,20d,20f,20h,20jの上向き当接部221aと第1群のハンド20a,20c,20e,20g,20i,20kの下向き当接部233aの組(第2組の当接関係部R2)を異なる平面位置に配置することができる。これにより、ハンド間最小間隔を短縮して、よりピッチ間隔が小さいカセットへの複数のワークの一括入出搬送が可能となる。
【0041】
次に、クランプ機構80の作用について説明する。
【0042】
クランプ駆動機構82としてのエアシリンダ821のピストンロッド824を進出動させることにより、各ハンド20におけるクランプ体805は一斉に進出動し、ハンド体210の爪211と協働してハンド体210に載置されたワークWを保持してその脱落を防止する。逆に、上記ピストンロッド824を退避動せることにより、各ハンド20におけるクランプ体805は一斉に退避動し、ワークWの保持状態を解除することができる。なお、クランプ移動機構82としては、エアシリンダのほか、直線駆動型のどのようなアクチュエータをも採用することができる。
【0043】
図14図16に示すように、各ハンド20のクランプ機構80によりワークWをクランプする場合において、各ロッド802はピストンロッド824の先端に取り付けられたヘッド部材(移動体)822を介してクランプ駆動機構82の進出駆動力を受ける。より詳しくは、ヘッド部材822の前面に当接するローラ811を介して移動ばね受け部材81が前方に押動され、ロッド802はバネ受け部材81とフランジ(固定ばね受け部材)803間に套挿された圧縮コイルばね804を介して前方への弾性進出力を受ける(図14)。クランプ体805と爪211との間にワークWが挟持された状態が現出すると、ヘッド部材822が進出してもロッド802およびクランプ体805はそれ以上進出せず、圧縮コイルばね804が圧縮される(図15)。こうしてワークWはクランプ体805による弾性的な押圧力によって保持されるので、クランプ体805による保持において衝撃を受けて破損を招くといったことがない。
【0044】
なお、このようなクランプ機構82によるワークWの保持状態、すなわち、クランプ体805が進出動した状態において、ワークWが適正に保持されていない場合には、圧縮コイルばね804の作用により、クランプ体805は爪211との間にワークWを挟持する適正位置よりさらに前進させられる(図16)。このようなクランプ体805の位置の不適正状態はクランプセンサ83としての限定反射型センサ831がオンになることにより検出される。このようなクランプ体805の不適正位置検出信号により、たとえば、搬送ロボットBを緊急停止させるなどしてその後に起こりうる不具合を回避することができる。
【0045】
クランプ体805によるワークWの保持を解除する場合には、ヘッド部材822が退避動するとき、ロッド802の後端のフランジ806が係合してヘッド部材822がロッド802を後方に押すことにより、ロッド802およびクランプ体805が退避動し、ワークWの保持状態が解除される。
【0046】
このとき、移動ばね受け部材81はロッド802の後端のフランジ806に係合するヘッド部材822に弾性接触しているので、移動ばね受け部材81とフランジ(固定ばね受け部材)803との間の圧縮コイルばね804が圧縮されることはない。すなわち、クランプ解除時、ヘッド部材822は各ハンドのクランプ部材80aに付属する圧縮コイルばね804の影響を受けることが実質的になく、また、ヘッド部材822の後方移動時、各圧縮コイルばね804を圧縮することもない。したがって、クランプ解除時、クランプ体805を前方に付勢するバネの付勢力の総和に抗して移動体を後方移動状態に保持する必要はない。
【0047】
各ハンド20のクランプ機構82におけるロッド802は、ヘッド部材(移動体)822のスリット823を通っており、かつバネ受け部材81のローラ811がヘッド部材822の前面に当接して転動可能であるので、各ロッド802はヘッド部材822に対して低抵抗で上下方向に相対移動可能である。したがって、各ハンド20がワークWをクランプした状態において、各ハンド20のハンド間ピッチ間隔が最大の状態から最小の状態に変更するとき、および、ハンド間ピッチ間隔が最小の状態から最大の状態に変更するとき、昇降機構610や各ハンド20に上下方向に無理な力が作用するといった問題は生じない。また、ハンド間ピッチ間隔が最大の状態においても、最小の状態においても、各ハンド20のクランプ機構82は一斉に作動してワークWを保持し、または保持を解除することができる。
【0048】
もちろん、本発明の範囲は上述した実施形態に限定されることはなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に含まれる。とくに、ハンド間ピッチ間隔を変更するための機構は、実施例の構成に限定されない。移動ばね受け部材81とヘッド部材(822)とを低抵抗で上下方向に相対移動可能に接触させるための構成についても、実施例のようにローラ811による転がり摩擦を利用した構成を採用するほか、接触面をテフロン(登録商標)樹脂でコーティングするなど、低抵抗のすべり摩擦を適用したものとすることもできる。
【符号の説明】
【0049】
A1:多段式ハンド,B:搬送ロボット,W:ワーク,20:ハンド,80:クランプ機構,802:ロッド,803:フランジ(固定ばね受け部材),804:圧縮型ばね部材(圧縮コイルばね),805:クランプ体,81:移動ばね受け部材,811:ローラ,822:ヘッド部材(移動体),83:クランプセンサ(光学検出手段),831:限定反射型センサ(受発光素子)
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