(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】マイクロニードルアレイを用いたボツリヌス菌の送達
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20221021BHJP
【FI】
A61M37/00 514
A61M37/00 530
(21)【出願番号】P 2018557298
(86)(22)【出願日】2017-01-23
(86)【国際出願番号】 US2017014628
(87)【国際公開番号】W WO2017127840
(87)【国際公開日】2017-07-27
【審査請求日】2019-12-19
(32)【優先日】2016-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518258076
【氏名又は名称】トランスダーム、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】カスパー、ロジャー エル.
(72)【発明者】
【氏名】スピーカー、ティコ
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-504120(JP,A)
【文献】特表2008-509723(JP,A)
【文献】特開2010-240281(JP,A)
【文献】特開2015-151380(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190098(WO,A1)
【文献】特表2005-538082(JP,A)
【文献】特表2012-514003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者において疾患、疾病、または病態を治療する治療用毒素投与形態であって、
その表面から突出したマイクロニードルを有する基底部を有するマイクロニードルアレイであって、前記基底部表面に対して垂直な位置で側面から見たときに、前記マイクロニードルのそれぞれは、前記基底部表面と前記マイクロニードルの先端部との間に介在する円筒部を有し、前記先端部は、対向する複合曲線によって形成される形状で、前記円筒部から先細りするものであり、前記円筒部から先細りする前記先端部は、皮膚への貫通を容易にするものである、マイクロニードルアレイと、
前記被験者に投与するための前記マイクロニードルアレイに充填される治療有効量の治療用毒素と
を有する、治療用毒素投与形態。
【請求項2】
請求項1記載の治療用毒素投与形態において、前記マイクロニードルが前記基底部と組成的に均質である、治療用毒素投与形態。
【請求項3】
請求項1記載の治療用毒素投与形態において、前記マイクロニードルが複数の縦通路を有する、治療用毒素投与形態。
【請求項4】
請求項1記載の治療用毒素投与形態において、前記マイクロニードルが生分解性/生体吸収性材料で作成される、治療用毒素投与形態。
【請求項5】
請求項4記載の治療用毒素投与形態において、前記生分解性/生体吸収性材料が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボマー、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマー、他のコポリマー、アルブミン、カゼイン、ゼイン、コラーゲン、他のタンパク質、グルコース、スクロース、マルトース、トレハロース、アミロース、デキストロース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、他の糖類、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトール、他の糖アルコール、コンドロイチンおよび/または他のグリコサミノグリカン、イヌリン、デンプン、アカシアガム、寒天、カルボメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギネート、カラゲナン、カッシアガム、セルロースガム、キチン、キトサン、カードラン、ゼラチン、デキストラン、フィブリン、ファーセレラン、ジェランガム、ガティガム、グアーガム、トラガカント、カラヤガム、ローカストビーンガム、ペクチン、デンプン、タラガム、キサンタンガム、及び他のポリサッカライド、並びに上記のいずれかの機能性誘導体、そのコポリマー、またはその混合物から成る群から選択される、治療用毒素投与形態。
【請求項6】
請求項1記載の治療用毒素投与形態において、ボツリヌス毒素を即時送達し、前記基底部を除いた後もボツリヌス毒素を持続的に送達し、またはその組み合わせを提供するために、前記マイクロニードルが前記被験者の皮膚表面に残るように構成される、治療用毒素投与形態。
【請求項7】
請求項1記載の治療用毒素投与形態において、前記マイクロニードルが10μm~10,000μmの長さを有する、治療用毒素投与形態。
【請求項8】
請求項1記載の治療用毒素投与形態において、前記マイクロニードルが鋭利な先端を有するように整えられる、治療用毒素投与形態。
【請求項9】
請求項1記載の治療用毒素投与形態において、前記マイクロニードルアレイが1本~25,000,000本のマイクロニードルを有する、治療用毒素投与形態。
【請求項10】
請求項1記載の治療用毒素投与形態において、前記マイクロニードルが、1平方センチメートル(cm
2)あたり1本~1cm
2あたり2500本のマイクロニードルの密度で基底部に配置される、治療用毒素投与形態。
【請求項11】
請求項1記載の治療用毒素投与形態において、前記治療用毒素が前記マイクロニードルに含まれる、治療用毒素投与形態。
【請求項12】
請求項1記載の治療用毒素投与形態において、前記治療用毒素が前記マイクロニードルの先端に局在する、治療用毒素投与形態。
【請求項13】
請求項1記載の治療用毒素投与形態において、前記治療用毒素が前記基底部に含まれる、治療用毒素投与形態。
【請求項14】
請求項1記載の治療用毒素投与形態において、前記治療有効量が0.001単位~3,000,000単位の量である、治療用毒素投与形態。
【請求項15】
請求項1記載の治療用毒素投与形態において、前記治療用毒素がボツリヌス毒素である、治療用毒素投与形態。
【請求項16】
請求項15記載の治療用毒素投与形態において、ボツリヌス毒素が、A型ボツリヌス毒素、B型ボツリヌス毒素、C1型ボツリヌス毒素、C2型ボツリヌス毒素、D型ボツリヌス毒素、E型ボツリヌス毒素、F型ボツリヌス毒素、G型ボツリヌス毒素、シナプトソーム関連タンパク質25(SNAP-25)開裂剤、またはその組み合わせから成る群から選択される、治療用毒素投与形態。
【請求項17】
請求項15記載の治療用毒素投与形態において、ボツリヌス毒素がA型ボツリヌス毒素を有する、治療用毒素投与形態。
【請求項18】
請求項15記載の治療用毒素投与形態において、ボツリヌス毒素がB型ボツリヌス毒素を有する、治療用毒素投与形態。
【請求項19】
請求項1記載の治療用毒素投与形態であって、さらに、第2の活性剤を有する、治療用毒素投与形態。
【請求項20】
被験者の疾患、疾病、または病態を治療するための薬物の組み合わせを製造する
方法であって、当該製造は、治療有効量の治療用毒素
を含む前記薬物をマイクロニードルアレイ
に充填する工程を含み、
前記マイクロニードルアレイは、
その表面から突出したマイクロニードルを有する基底部であって、前記基底部表面に対して垂直な位置で側面から見たときに、前記マイクロニードルのそれぞれは、前記基底部表面と前記マイクロニードルの先端部との間に介在する円筒部を有し、前記先端部は、対向する複合曲線によって形成される形状で、前記円筒部から先細りするものであり、前記円筒部から先細りする前記先端部は、皮膚への貫通を容易にするものである、基底部と、
前記マイクロニードルアレイに充填される治療有効量の治療用毒素と
を有し、
前記治療
には、前記マイクロニードルアレイによって前記被験者に前記治療有効量の治療用毒素を投与する工程
が含まれることを特徴とする、
薬物の組み合わせを製造する方法。
【請求項21】
請求項20記載の
方法において、前記疾患、疾病、または病態が、先天性爪肥厚症、多汗症、遺伝性皮膚症、表皮水疱症、痙性疾患、顔面けいれん、酒さ、プラーク乾癬、逆乾癬、フレイ症候群、糖尿病性神経障害、頭痛、皮膚のしわ、またはその組み合わせを有する、
方法。
【請求項22】
請求項20記載の
方法において、前記被験者がヒトである、
方法。
【請求項23】
請求項20記載の
方法において、投与する工程が、5秒~24時間にわたって前記被験者の皮膚表面に前記マイクロニードルアレイを適用する工程を有する、
方法。
【請求項24】
請求項20記載の
方法において、投与する工程が、前記マイクロニードルが皮膚に埋め込まれたまま前記被験者の皮膚表面から基底部を取り除く工程を有する、
方法。
【請求項25】
請求項20記載の
方法において、前記治療有効量が有効な投与計画で投与される、
方法。
【請求項26】
請求項25記載の
方法において、前記有効な投与計画が、1日1~100回、5秒~24時間にわたって被験者にボツリヌス毒素を投与する工程を有する、
方法。
【請求項27】
請求項25記載の
方法において、前記有効な投与計画が、0.001単位~3,000,000単位の前記治療用毒素を24時間にわたって提供する、
方法。
【請求項28】
請求項25記載の
方法において、前記治療有効量が、治療を行わない場合の発汗量と比較して、治療部位の発汗量を減少させる、
方法。
【請求項29】
請求項25記載の
方法において、前記治療有効量が、投与36時間以内に1以上のDASを生じる、
方法。
【請求項30】
請求項20記載の
方法において、前記治療有効量が、治療を行わない場合の疼痛と比較して、前記疾患、疾病、または病態と関連した疼痛症状を軽減する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年10月21日に提出された米国特許出願第15/331,469号および2016年1月22日に提出された米国仮特許出願第62/286,255号明細書の利益を請求するものであり、それぞれがこの参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ケラチン(K)の優性突然変異により先天性爪肥厚症(PC)などの様々な皮膚病態が生じ、これは誘導ケラチンK6a、K6b、K6c、K16、およびK17の突然変異により引き起こされる。日常生活に支障を来し、痛みを伴う足底角皮症はPC患者の生活の質に影響する主な症状として一般に受け入れられているが、多汗症が水疱形成および疼痛に寄与しているとみられる。場合によっては、ボツリヌス毒素(BTX)を数回皮内注射することで、多汗症を効果的に治療し、疼痛および水疱形成を大幅に軽減することができる。しかし、この治療プロトコールに関連した皮膚注射の回数のために、本処置はコストが嵩み、患者にとって困難なものとなっている。例えば、BTXの皮内注射は、止血帯を用いた静脈内局所(IVR)麻酔または全身麻酔によって疼痛をコントロールした場合にのみ可能である。さらに、典型的には約1.5cm間隔の格子で注射を行い(足1本で約50~150回の注射に相当する)、症状軽減の持続期間はわずか1.5~6ヵ月であるため、通常の維持注射での治療負担はかなり高くなっている。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許第6,565,532号明細書
(特許文献2) 米国特許出願公開第2006/0100584号明細書
(特許文献3) 米国特許出願公開第2004/0049150号明細書
(特許文献4) 米国特許出願公開第2014/0276362号明細書
(特許文献5) 米国特許出願公開第2004/0009180号明細書
(特許文献6) 米国特許出願公開第2006/0057165号明細書
(特許文献7) 米国特許出願公開第2015/0297688号明細書
(特許文献8) 米国特許第7,226,439号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】
図1Aは、年齢および性別をマッチさせたPC(先天性爪肥厚症)患者と健常対照ボランティアの足底部の汗管分布を示した顕微鏡写真を示す。合成写真はAdobe Photoshop CS2により作成した。画像はCaliber ID VivaScope 1500により取得した。
図1Bは、非PCボランティアの手掌汗腺の拡大像を示す(VivaStackによりAmira 5.2.0で3D構造とした)。
【
図2】
図2Aは、ポリマーニードル構造がどのように典型的には50~100ミクロンの深さでヒトの皮膚に貫通することができるかを図示し、ここで、埋め込まれた先端は水分を含んだ表皮および真皮環境で急速に含水し、一過性のデポーを形成する。
図2Bは、典型的な代わりの吸収性マイクロニードルに隣接した26ゲージの皮下針の先端を図示する。斜めの先端および
複合曲線が厚い皮膚への貫通を助ける。
図2Cは、皮膚投与前のマイクロニードルに充填し、突出させた際の走査電子顕微鏡写真を図示する。
図2Dは、皮膚投与後のマイクロニードルに充填し、突出させた際の走査電子顕微鏡写真を図示する。
【
図3】
図3Aは、ピンテンプレート(上、左図)およびガラススライド(下、左図)が粘性(20%)ポリビニルアルコール(PVA)溶液の薄いフィルムで覆われた、マイクロニードルアレイの製造法に関する一実施形態の概略図を示す。前記ピンテンプレートはPVA溶液と接触するように配置される(中央図)。マイクロニードルはフィルムの乾燥と同時にピンを引き抜くことで生成し、繊維様構造を形成する(右図)。
図3Bは、
図3Aで示した繊維の拡大図を図示する。
図3Cは、後で望みの長さおよび先端の形状または斜めに整える突出部を示す。
図3Dは、スケールを示すペニーと共に、ガラス基質で支持したマイクロニードルアレイを図示する。
図3Eは、1mm長に整えた後のマイクロニードル1本の顕微鏡写真を示し、スケールを示すヒトの毛髪(直径約100μm)とともに皮膚への貫通を促す斜めの構造を示す。
図3Fは、フルオレセインまたはR-フィコエリトリンを代わりに充填したマイクロニードルアレイを図示する。
【
図4】
図4Aは、ヨウ素処理したヒト手掌皮膚と接触したフィルムを示し、汗孔を黒い点で示している。
図4Bは、皮膚から剥がしたPVAフィルムを示し、薄く全体的に染色が見えるが、汗孔に対応して明確な点状の濃いスポットを示している。
図4Cは、定量的測定で活発な腺の閾値検出例を図示している。
図4Dは、孔のサイズに合わせ、紙を基本としたデンプン-ヨウ素フィルムの水分濃度に応じた反応を示し、約8~10pLの水で測定可能な反応が得られることを示している。
【
図5】
図5Aは、1回の操作で広範囲(例えば、足底全体)の発汗量を記録するこのアプローチの可能性を示した足跡を図示する。
図5Bは、フィルムに記録された詳細なクローズアップ像を図示し、足底面の皮膚隆線内で個々の孔が容易に識別可能である。この健常ボランティアではすべての孔が活発ではなく、薄い部分はPVAフィルムと接触せず、汗管の開口部が乾燥していることに対応する。水分含有量のため隆線が見えるが、孔の発色の方が強いため、これらは容易に識別できる。スケールバー=500μm。
【
図6】
図6は、水分曝露の前に貼った支持接着フィルム片と対になった、2つのデンプン含有フィルムを図示する。接着フィルムの上にかかるフィルム部分は、皮膚表面との接触により沈着した水分含有量の検出感度が上昇したことを示している。
【
図7】
図7Aは、投与なしで陰性対照の足蹠に曝露したフィルムを図示し、各足の染色強度が同等であることを示している。
図7Bは、食塩水の陰性対照(左)と50単位のBTA食塩水液(右)を皮内注射後24時間で観察可能となった足蹠に曝露したフィルムを図示する。BTA処理した足は軽度に染色され、発汗量の減少と一致している。
図7Cは、ブランクのマイクロニードルアレイ(左足)を適用後およびBTAを充填したマイクロニードルアレイ(約50単位のBTAを送達、右足)を適用後4日で分析した、足蹠に曝露したフィルムを図示する。マイクロニードルアレイでBTAを送達した足(右)は、BTAによる発汗量の減少と一致した軽度の染色を示している。
【
図8】
図8Aは、各DAS値での麻痺レベルの上昇を示した指外転スコア(digit abduction score:DAS)を図示する。
図8Bは、Flex-PAD BTX投与後(右後肢)にDAS=4の反応、Flex-PAD対照投与後(左後肢)にDAS=0の反応を示したマウスの写真を図示する。
図8Cは、BTXを含むFlex-PADsを処理し、BTXを筋肉内注射したマウスのDAS読み出し値を示した棒グラフを示す。説明は用量(ng)を示す。
【0005】
今回は図示した典型的実施形態を参照し、これを説明するために本明細書では特定の言語を使用する。それにもかかわらず、これによって本発明の範囲を制限する意図はないことは理解される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の特定の実施形態について開示および説明する前に、本発明は開示された特定の工程および材料はある程度変化する可能性があるため、本発明はこれに限定されないことは理解されるものとする。本明細書で使用される専門用語は特定の実施形態のみを説明するために使用されるもので、制限する意図はないことも理解される。
【0007】
この説明に使用されるとおり、単数系の「a」、「an」、および「the」は、内容が明らかにそうでないことを示していない限り、複数の言及への支持を表明することも含む。したがって、例えば、「マイクロニードル」の言及は1本若しくはそれ以上のマイクロニードルの言及を含み、「前記ポリマー」の言及は1若しくはそれ以上の材料の言及を含む。
【0008】
本明細書に用いるとおり、「約」の用語は、特定の値がエンドポイントより「少し上」または「少し下」であることを示すことで、数値範囲のエンドポイントに柔軟性を持たせるために使用される。
【0009】
「被験者」の用語は、本発明の経皮的装置または方法を使用した投与により利益を受ける哺乳類を指す。被験者の例にはヒト、およびウマ、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、ウサギ、および水生哺乳動物などの他の動物を含む。
【0010】
本明細書に用いるとおり、「活性剤」または「薬物」の用語は同義的に使用され、薬理学的に活性な物質または組成物を指す。一実施形態では、活性剤がボツリヌス毒素を有する、またはこれから成ることができる。
【0011】
本明細書に用いるとおり、「外部縦通路」は前記マイクロニードルの縦軸の少なくとも一部に沿って走り、その長さの少なくとも一部に沿って前記マイクロニードルの外側に開く通路または溝と定義される。
【0012】
本明細書に用いるとおり、「実質的に」の用語は、作用、特徴、特性、状態、構造、項目、または結果の完全またはほぼ完全な程度を指す。
【0013】
本明細書に用いるとおり、配列、化合物、製剤、送達機序、または他の項目は、簡便にするため、一般的なリストで提示してもよい。ただし、これらのリストはリストの各数が別個および独特の数として個別に同定されるものと解釈する必要がある。したがって、そのようなリストの個々の内容は、共通の群の提示に基づき、同じリストの他の内容と事実上同等であると解釈すべきではなく、それと反対を示すこともない。
【0014】
本明細書に用いるとおり、「毒素」の用語は、生物学的および非生物学的原料を含む有用な毒素を意味するために使用され、さらに生物系の混乱または機能障害を引き起こす物質を説明する。そのような物質は十分な高用量では生物に有害であると考えられるが、所定の用量で送達した場合に有用な治療効果を生じてもよい。一部の実施例では、毒素が具体的に、生物の少なくとも1種類の細胞に破壊的または抑制的効果を生じる小分子、ペプチド、またはタンパク質を指し、それによって前記生物に望みのまたは有用な結果として生じる変化を誘導してもよい。「生体毒素」の用語は、さらに生物由来の毒素を明確にし、これはイオンチャネルまたは受容体などの特異的細胞小器官または細胞構造を標的とし、または特異的タンパク質を酵素的または非酵素的に開裂し、特定の細胞機能が崩壊するようにする。
【0015】
本明細書に用いるとおり、「ボツリヌス毒素」(BTX)の用語はボツリヌス菌および関連種が産生する急性神経毒性タンパク質ファミリーを指し、ジスルフィド結合で結合した100kDaの重鎖ポリペプチドと50kDaの軽鎖ポリペプチドの2つのタンパク質鎖を有する。大きく異なる配列と三次元構造を示す、血清学的に異なる7種類の毒素タイプが存在し、同様に作用するが、異なる種特異的作用強度と薬力学/薬物動態を示すことができるA型~G型が指定されている。
【0016】
本明細書に用いるとおり、「誘導体」は、酸化、水素化、アルキル化、エステル化、ハロゲン化など、1若しくはそれ以上の官能基を変換する単一の化学的工程により、原料化合物、類似体、ホモローグ、互変異性型、立体異性体、多形、水和物、薬学的に許容される塩または薬学的に許容されるその溶媒から得られる化合物である。「類似体」の用語は、別の化合物と類似の構造を有するが、特定の成分がそれと異なる化合物を指す。前記化合物は1若しくはそれ以上の原子、官能基、または下部構造が異なり、別の原子、基、または下部構造と置換されてもよい。一態様では、そのような構造が、特定の適応症について少なくとも同様または類似の治療効果を有する。「互変異性体」または「互変異性型」の用語は、低エネルギーのバリアを介して相互交換可能な異なるエネルギーの構造異性体を指す。「立体異性体」の用語は、分子数が同じで互いに結合した原子の種類が同じであるが、これらの原子の空間での配置方法が異なる異性体セットの1つを指す。「多形」の用語は、結晶学的に異なる基質形態を指す。さらに、薬物は、植物、真菌、細菌、または他の生物など、多くの化合物または薬物を含む原料に「由来する」と言うこともできる。これに関連して、前記薬物はそれ自体の特性、特徴、名称、または特質それ自体よりもその原料について説明、またはそうではない場合は言及することができる。例えば、植物から得た抽出物は、前記植物「由来」と説明してもよい。さらに、一部の実施例では、前記誘導体は原料化合物と作用強度が同等、および/または前記原料化合物と毒性が同等とすることができる。一部の特殊な実施形態では、前記誘導体の作用強度および/または毒性を前記原料化合物よりも低くすることができる。
【0017】
「治療する」、「治療している」、または「治療」の用語は、本明細書に用いるとおり、また当該分野で十分理解されるとおり、これに限定されるものではないが、治療される被験者における臨床結果を含む、有益または望みの結果を得るためのアプローチを意味する。有益または望みの結果には、これに限定されるものではないが、検出可能であるか否かによらず、病態の1若しくはそれ以上の徴候または症状の軽減または回復、疾患程度の縮小、疾患または病態の状態安定化(すなわち、悪化していない)、疾患進行の遅延または鈍化、前記疾患状態の回復または寛解、疾患再発の減少、および寛解(部分または完全)を含むことができる。「治療する」、「治療している」、または「治療」は、治療を受けていない場合に予想される生存期間と比較し、生存期間が延長したことを意味することもでき、予防的である可能性もある。そのような予防的治療は、疾患または病態の予防または予防法として言及することもできる。前記予防法は部分的であっても、完全であってもよい。部分的予防法では、生理的状態の発症が遅延してもよい。
【0018】
本明細書に用いるとおり、「有する」、「有している」、「含有している」、および「保持している」などは米国特許法で割り当てられた意味を有することができ、「含む」、「含んでいる」などを意味することができ、一般に制約のない用語と解釈される。「~成っている」または「~成る」の用語は制限のある用語であり、かかる用語と同時に具体的に列挙され、米国特許法に従う、成分、構造、工程などのみを含む。「基本的に~成っている」または「基本的に~成る」は、米国特許法により一般に帰する意味を有する。特に、そのような用語は一般に制限のある用語であるが、これと関連して使用される項目の基本的および新規の特徴または機能に物質的に影響しない追加項目、材料、成分、工程、または元素を含める場合は除く。例えば、微量元素は組成物中に存在するが、そのような専門用語に続く項目リストで明確に列挙されていない場合でも、前記組成物の性質または特徴は「基本的に~成る」の言語下に存在する場合は許容される。「有している」または「含んでいる」など、記述に制限のない用語で使用する場合、明示的に記載されているおよび逆の場合、「基本的に~成る」の言語および「~成る」の言語に直接的支持を与える必要もある。
【0019】
「投与単位」または「投与量」の用語は、治療効果を達成する、またそうでない場合は治療効果に寄与するため、被験者への投与に適した活性剤の量を意味すると理解される。一部の実施形態では、投与単位が被験者または患者に投与可能であり、容易に取り扱い、充填することができ、物理的および化学的に安定な単位用量として残る、単回投与量を指すことができる。
【0020】
活性成分の「有効量」、「治療有効量」、または「治療有効率」の表現は、前記薬物が送達される疾患または病態の治療において治療結果を達成するため、活性成分の非毒性であるが、十分な量または送達速度を指す。様々な生物学的因子が、物質が意図する作業を実行する能力に影響する可能性があることは理解される。したがって、「有効量」、「治療有効量」、または「治療有効率」は、場合によっては、そのような生物学的因子に依存する。さらに、治療効果の達成は医師または他の有資格医療スタッフが当該分野で既知の評価により測定してもよいが、治療に対する個人の変動および反応は治療効果の達成を被験者の決定としてもよいと認識されている。治療有効量または送達率の決定は、薬学および医学分野の当業者に周知である。
【0021】
「抽出物」の用語は、溶媒、例えば、エタノール、水、蒸気、過熱水、メタノール、ヘキサン、クロロホルム液、液体CO2、液体N2、プロパン、超臨界CO2など、またはそのいずれかの組み合わせにより調製された物質を指す。本明細書に用いるとおり、抽出物は液体形態の抽出物を指すことができ、または乾燥粉末または他の固体形態など、前記液体形態をさらに処理することで得られた生成物を指すこともできる。抽出物は、これに限定されるものではないが、固体、液体、粒子、細断物、留出物などを含む多くの形態をとることができ、切断、粉砕、微粉砕、煮沸、蒸気処理、浸水、浸漬、注入、ガス注入など、多数の手技またはプロトコールにより行うことができ、水、アルコール、蒸気、または他の有機材料など、適切な試薬を利用してもよい。抽出物は、典型的には特定の純度パーセンテージを有し、比較的高純度である可能性がある。一部の実施形態では、抽出物が、皮膚、パルプ、葉、花、植物果実などの原料の特定部分からできた植物抽出物(phytoextract)である可能性があり、または原料全体からできている可能性もある。一部の態様では、抽出物が1若しくはそれ以上の活性分画または活性薬物を含んでもよい。一部の抽出物では、追加成分を担体として追加することができる。一部の態様では、抽出物の純度および/または活性を特定の細菌原料株、培養方法、抽出工程、または前記抽出物の生成時に従ったプロトコールによりコントロールする、またはその関数とすることができる特定のボツリヌス毒素を生成、抽出、および精製する方法は既知であり、この参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7189541号明細書などの文献で説明されている。例えば、十分確立されたSchantzの工程を利用し、Schantz, E. J., et al, Properties and use of Botulinum toxin and Other Microbial Neurotoxins in Medicine, Microbiol Rev. 56: 80-99 (1992)に説明される、結晶A型ボツリヌス毒素を得るために使用することができる。典型的方法には、適切な株の嫌気的発酵後、培地の溶解およびろ過、および硫酸による前記毒素の沈殿が必要である。塩化カルシウム溶液中の前記沈殿物の溶解およびエタノールによる再沈殿後、リン酸緩衝液で再懸濁し、遠心分離した上清を乾燥させると、高作用強度の結晶A型ボツリヌス毒素が得られる。この方法などの適切な方法を採用することで、他の治療用毒素の精製抽出物を得てもよい。
【0022】
本明細書に用いるとおり、「製剤」および「組成物」は同義的に使用され、少なくとも2つの成分の組み合わせを指すことができる。一部の実施形態では、少なくとも1つの成分が活性剤であるか、そうでない場合は、被験者に投与したときに生理作用を示す特性を有してもよい。
【0023】
濃度、量、および他の数値データは、本明細書では範囲の形式で表現または提示されてもよい。そのような範囲は単に簡便に、また簡潔にするために使用されるものであるため、範囲の限界値として明記された数値だけでなく、各数値および部分的範囲が明記されているものとして、その範囲内に含まれるすべての個々の数値または部分的範囲を含むことは理解されるものとする。説明として、「約0.5~10g」の数値範囲は、約0.5g~約10.0gの明記された値だけでなく、前記示された範囲内の個々の値および部分的範囲を含むものと解釈する必要がある。したがって、この数値範囲に含まれるものは、2、5、および7などの個々の値、および2~8、4~6などの部分的範囲である。これと同じ原則が1つのみの数値を示した範囲にも当てはまる。さらに、そのような解釈は、範囲の大きさまたは説明された特徴にかかわらず当てはまる。
【0024】
それ以外に規定のない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者の1人に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に説明したものと同様または同等の方法、装置、および材料は本発明の実践または検査で使用することができるが、代表的な方法、装置、および材料を以下に説明する。
【0025】
前記装置、システム、および関連する方法について考察する場合、その実施形態の文脈で明示されているか否かによらず、これらの考察それぞれはこれらの各実施形態に当てはまると考えることができることに注意する。したがって、例えば、治療用毒素の形態について考察する際、そのような投与形態も疾患、疾病または病態の治療法に使用することができ、逆もまた同様である。
【0026】
総括として、様々な皮膚状態、特に先天性爪肥厚症(PC)は、K6a、K6b、K16、およびK17などの誘導ケラチン(K)の優性突然変異により生じる可能性がある。日常生活に支障を来し、痛みを伴う足底角皮症はPC患者の生活の質に影響する主な症状として一般に受け入れられているが、多汗症が水疱形成および疼痛に寄与しているとみられる。場合によっては、ボツリヌス毒素(BTX)として知られる治療用毒素を数回皮内注射することで、多汗症を効果的に治療し、疼痛および水疱形成を大幅に軽減することができる。しかし、この治療プロトコールに関連した皮膚注射の回数のために、本処置はコストが嵩み、患者にとって困難なものとなっている(局所神経ブロックまたは全身麻酔が使用される)。例えば、BTXの皮内注射は、止血帯を用いた静脈内局所(IVR)麻酔または全身麻酔によって疼痛をコントロールした場合にのみ可能である。さらに、典型的には約1.5cm間隔の格子で注射を行い(足1本で約50~150回の注射に相当する)、症状軽減の持続期間はわずか1.5~6ヵ月であるため、通常の維持注射での治療負担はかなり高くなっている。そのため、改善された治療法が必要である。
【0027】
したがって、本開示は突出配列装置(protrusion array devices:PADs)とも呼ばれるマイクロニードルアレイを含み、ヒト皮膚への治療関連(μg/cm2)用量送達能力を有する。典型的なマイクロニードルアレイは、出願者の同時係属特許出願である米国特許出願第14/788,439号および第14/963,137号明細書に見ることができ、この参照により本明細書に組み込まれる。例えば、フルオレセインを充填したPADsを用い、これらのPADsが、仮骨領域でも比較的無痛で有効なポリマーおよびモデル薬物の皮内デポーとなる可能性があることを証明できる。反復皮内注射が不快であることとは対照的に、PADsは軽く圧迫またはたたくか、それ以外の方法で皮膚に導入し、例えば1.5mm間隔で同時に数百回の注射を行うことができる。柔軟な支持層が皮膚の弯曲に合い、貫通の均一性と注射しやすさがいずれも改善する。BTXなどの治療用毒素を複数の皮膚タイプに投与することができ、患者にやさしい治療用毒素投与形態により、先天性爪肥厚症、多汗症、遺伝性皮膚症、表皮水疱症、痙性疾患、顔面けいれん、酒さ、プラークおよび逆乾癬、フレイ症候群、糖尿病性神経障害、頭痛、および偏頭痛を含む、複数の疾患、疾病、または病態を治療することができるが、その多くは現在もボツリヌス毒素治療のため数回の標準的皮内注射が必要である。さらに、筋組織にBTXを正確に投与することで、斜視、眼振、眼瞼痙攣、片側顔面けいれん、筋緊張異常、斜頚、脳性麻痺、アカラシア、痙攣性発声障害、脳卒中関連痙攣性疾患、胃腸および泌尿生殖器痙攣性疾患、乳児内斜視、および他の疾患を含む様々な疾患の治療、および顔のしわおよび表出性疾患を軽減する美容手技で治療用の局所麻痺を行うことができる。さらに、神経伝達のBTX抑制は、発汗現象に関与する汗腺神経の発火に拡大適用することができる。BTX活性も末梢侵害受容性神経伝達物質の抑制に適用拡大することができ、ヘルペス後神経痛、糖尿病性神経障害、および三叉神経痛、および可能性としては他の慢性または神経因性疼痛が関与する他の病態など、神経障害性の要素を持つ慢性偏頭痛、慢性開胸後痛、および他の疼痛疾患に有効な治療を提供することができる。まださらに、本明細書に説明されるマイクロニードルアレイは、充填済み投与単位の形態およびより一般的には薬物未投入の充填可能な装置として販売することができる、高度に耐容性のある送達プラットフォームを提供することができる。
【0028】
治療用毒素または治療用神経毒については、本明細書に記載の組成物、投与形態、および方法で使用することができるそのような毒素の1つの一般的実施例として、簡潔及び明解にするため、ボツリヌス毒素(BTX)が本開示に参照されることが多い。これは制限の意図はなく、本明細書で明示された毒素および他の適切な治療用毒素など、前記開示を他の治療用毒素に拡大適用することができることは、当業者に明らかとなるだろう。これを念頭に置くと、BTXは、一部は交感神経の汗腺運動ニューロンでアセチルコリンの開口分泌を阻害することができるため、多汗症などの様々な病態の治療に有効である可能性がある。しかし、疼痛プロセスにおけるその役割は非常に複雑である。一部の症例では、BTXを抗侵害薬として、神経性発赤の軽減に使用することができる。しかし、その抗侵害受容作用にもかかわらず、すべての疼痛がBTXに反応するわけではない。したがって、PC痛は神経原性および侵害受容性の要素を示すが、BTXがPCにおける発汗過多症状の抑制に有効であるだけでなく、さらに、通常は非常に治療抵抗性で重度の足底痛がみられるこの疾患で疼痛を著しく軽減することができる。そのため、一部の態様では、BTXが発汗運動の抑制により疼痛を軽減してもよい。
図1A~1Bは、共焦点顕微鏡によりin vivoで観察したPC足底皮膚の汗管の分布および物理的構造の異常を図示し、本疾患と関連した皮膚構造の分布の副作用として見ることができる。しかし、BTX療法による疼痛軽減により、構造的に欠陥がある汗管に流れる発汗過多の発汗量が治療により停止または軽減されることもあり、これが疼痛または疼痛関連現象を引き起こす可能性がある。PCが原因であるケラチンが汗腺で発現されることにも注意する必要がある。BTX療法が簡単で耐容性がある手技で提供される道を示すことで、この痛みを伴う消耗性疾患に罹患する患者に、現実的で達成可能な緩和の見通しを示し、はるかに患者集団が多い他の適応症に拡大できる可能性を秘めている。
【0029】
マイクロニードルによる皮膚貫通の動態は複雑である可能性があり、このプロセスの一部の要素はニードルアレイのデザインおよび適応法の影響を受けやすいこともある。例えば、ヒト皮膚の一般的粘弾性液体の挙動は、適用速度が貫通の深さに強く影響し、皮膚を貫通するマイクロニードルパッチを貼付するために必要な力は単位面積当たりの針の数に比例する可能性がある。針の構造も、正常な皮膚の貫通効率と疼痛反応に重要な因子である可能性がある。したがって、本明細書で説明されるマイクロニードルアレイは鋭い先端と複合曲線を有することができ、これによりこれらのマイクロニードルアレイは正常な皮膚と角化性皮膚をいずれも貫通し、耐容性および送達をいずれも最大限にすることができる。
【0030】
さらに、本明細書に開示されるマイクロニードルアレイは、選択した積荷(例えば、治療用毒素、プラスミド、抗原など)が事前に充填され、乾燥保存して失活を防ぎ、ポリビニルアルコール(PVA)または他のポリマー基質により安定化することができる。また、現在のマイクロニードルアレイは柔軟性があり、製造コストが低く、1回の適用で治療関連用量を送達することができる。前記マイクロニードルアレイが生分解性/生体内分解性である場合、自己鈍化し、医療廃棄物(sharps waste)の負荷および事故関連リスクを軽減することもできる。マイクロニードル技術は皮下注射と比較して積荷能力が比較的低いことが多いが、BXのケースでは薬物カーゴ(drug cargo)の可能性のためこの制限が打ち消されている。例えば、PCは1.3単位/cm2のBTX用量密度に反応する可能性があり、これは現在のマイクロニードルアレイの最大積載量を下回る桁数である。
【0031】
したがって、本発明は、様々な治療薬の送達に使用可能なマイクロニードルアレイ、関連システム、および方法を提供する。また、本明細書では、ボツリヌス毒素またはボツリヌス神経毒について具体的に参照しているが、他の治療用毒素および薬物も使用することができる。一部の実施例では、前記治療用毒素または薬物を生物学的に生成された治療用毒素または薬物とすることができる。生物学的に生成された治療用薬物は、一般に、植物、細菌、真菌など、天然または生物原料から生成した、またはそれに由来する、これらの毒素、タンパク質、核酸などとすることができる。そのような生物学的に生成した治療用毒素または薬物も使用することができ、本開示の範囲内と考えられる。
【0032】
治療用毒素、ペプチド、タンパク質、核酸などは、細菌、珊瑚、藻類、真菌、ヘビ、クモ、サソリ、クラゲ、有毒魚、軟体動物、両生類、トカゲなど、またはその組み合わせなど、様々な原料から得ることができる。治療用毒素、ペプチド、タンパク質、および/または他の薬物の限定されない例には、アナトキシン-a、リングビアトキシン-a、アプリシアトキシン、およびシアノバクテリアにより生成される他の毒素などのシアノトキシン;サキシトキシンおよびゴニオウトキシン、および渦鞭毛藻類により生成される他の毒素などのジノトキシン;壊死または細胞死を引き起こし、ドクイトグモに見られる毒素、ガラガラヘビおよび他の毒ヘビの毒液、壊死性筋膜炎菌の孔形成毒素を有する壊死毒;イオンチャネルの伝導性を混乱させる毒素を含み、テトロドトキシン、クロロトリアニセン、コノトキシン、ボツリヌス毒素、破傷風毒素、アナトキシン、ブンガロトキシン、carambotoxin、クラーレ毒、およびクロゴケグモ、クラゲ、elapid snakes、有毒魚、軟体動物、および両生類、珊瑚および一部の藻類の毒液に見られる神経毒を有する神経毒;ヘビおよびトカゲ毒に見られるミオトキシン;リシン、アピトキシン、およびマイコトキシンなど、アフラトキシン、オクラトキシン、シトリニン、麦角毒素、パツリン、フモニシン類、トリコテセン類、ゼアラレノン、ビューベリシン、エンニアチン、ブテノライド、エキセチン、フサリン、バトロキソビン、バトラコトキシン、コブロトキシン、クロタミン、ジデムニン、デルトルフィン、エクセンディン、ゲフィロトキシン、hannalgesins、ヒストリオニコトキシン、opitoxins、フィコトキシン、サソリ毒(β-サソリ毒など)、クモ毒(コアガトキシン、プサルモトキシンなど)などを含む細胞毒、またはその組み合わせを含むことができる。本明細者で使用可能なこれらおよび他の同様の多数の治療薬が米国特許第4493796号、第4925664号、第5514774号、第5672682号、第5719264号、第5739276号、第6165500号、第7244437号、第7608275号、第7833979号、および第8377951号明細書および米国特許公開第2003/0109670号、第2004/0192594号、および第2007/0191272号に説明され、この参照により本明細書に組み込まれる。疼痛、痙攣、多汗症、または他の局所神経作用の治療において、同様の薬理学的有用性を有するさらなる他の材料を使用することもできる。
【0033】
特定の一実施例では、前記治療用毒素をボツリヌス毒素とすることができる。筋組織に毒素を正確に投与することで、斜視、眼振、眼瞼痙攣、片側顔面けいれん、筋緊張異常、斜頚、脳性麻痺、アカラシア、痙攣性発声障害、脳卒中関連痙攣性疾患、胃腸および泌尿生殖器痙攣性疾患、乳児内斜視、および他の疾患を含む様々な疾患の治療、および顔のしわおよび表出性疾患を軽減する美容手技で治療用の局所麻痺を行うことができる。さらに、神経伝達のBTX抑制は発汗現象に関与する発汗運動の神経発火に拡大適用され、皮内および皮下BTX投与は多汗症を軽減するために確立された治療法である。BTX活性も末梢侵害受容性神経伝達物質の抑制に及ぶと理解され、ヘルペス後神経痛、糖尿病性神経障害、および三叉神経痛および他の慢性または神経因性疼痛が関与する病態など、神経障害性の要素を持つ慢性偏頭痛、慢性開胸後痛、および他の疼痛疾患に有効な治療として使用する際の基礎を成すと理解される。ボツリヌス毒素には、A型ボツリヌス毒素、B型ボツリヌス毒素、C1型ボツリヌス毒素、C2型ボツリヌス毒素C2、D型ボツリヌス毒素、E型ボツリヌス毒素、F型ボツリヌス毒素F、G型ボツリヌス毒素、その相同体(すなわち、少なくとも70%相同体、80%相同体、または90%相同体)、その誘導体、またはすべてのシナプトソーム関連タンパク質(25kDa)(SNAP-25)開裂剤、シナプトブレビンII開裂剤、またはシンタキシンI開裂剤、またはその組み合わせを含めることができる。SNAP-25、シナプトブレビンII、またはシンタキシンIはそれぞれBTXの標的基質となる可能性があり、BTXにより開裂する可能性がある。特定の解釈に縛られることは望まないが、前記ボツリヌス毒素は神経シナプス内でSNAP-25を開裂することができると理解され、これは正常な小胞融合および正常な運動ニューロン活動における軸索終末からのアセチルコリンの放出に必要である。このタンパク質が消失すると、ボツリヌス中毒に典型的な、特徴的弛緩性麻痺が生じる。そのため、SNAP-25、シナプトブレビンII、またはシンタキシンI開裂剤は、他に明記されていない限り、ボツリヌス毒素の範囲内と考えることができる。具体的な一実施形態では、A型ボツリヌス毒素(BTA)の投与が提供される。BTAなど、単一血清型のボツリヌス毒素を特に参照している場合、他に明記されていない限り、そのような参照はその相同体および誘導体を含むこともできる。別の具体的実施形態では、B型ボツリヌス毒素(BTB)の投与が提供される。さらに別の具体的実施例では、BTAとBTBの併用投与が提供される。
【0034】
一部の実施形態では、生物学的に活性なBTXを様々な原料から得ることができる。例えば、BTXはクロストリジウム属の様々な種から得ることができる。そのような種には、例えば、Clostridium botulinum(I、II、III、IV群など)、Clostridium butyricum、Clostridium baratii、またはその組み合わせを含むことができる。それらの原料のいずれか1つ、または他の適切な市販のBTX原料、またはその組み合わせを使用することができる。
【0035】
BTXの濃度は一般には単位として定義される。BTX 1単位(U)は、それぞれ体重18~20グラムの雌Swiss Websterマウスに腹腔内注射した時点でのLD50と定義される。すなわち、BTX 1単位は上述の条件で雌Swiss Websterマウス群の50%が死亡するBTXの量である。BTXの治療有効量は、治療に使用される条件によって決まる可能性がある。例えば、BTXの治療有効量は、交感神経の発汗運動神経でアセチルコリンの開口分泌を阻害するために十分な量である可能性がある。別の実施例では、治療有効量は、皮膚関連疼痛など、皮膚の疾患、疾病、または病態などの疾患、疾病、または病態と関連した疼痛の症状を治療および/または症状の軽減に有効な量である可能性がある。別の実施例では、前記治療有効量が、皮膚の疾患、疾病、または病態など、疾患、疾病、または病態による水疱形成を抑制するために十分な量である可能性がある。さらに別の実施例では、前記治療有効量は、治療部位で発汗量を減少させるのに十分な量である可能性がある。さらなる実施例では、前記治療有効量は、皮膚のしわを抑制するのに十分な量である可能性がある。さらなる実施例では、前記治療有効量は、投与部位に隣接した皮下筋肉の麻痺を誘導するのに十分な量である可能性がある。一部の実施例では、前記治療有効量が24時間以内または36時間以内に1以上、2以上、3以上、4以上の指外転スコア(digit abduction score:DAS)、またはそれと同等の結果を生じるのに十分な量である可能性がある。前記DASアッセイは、毒素が腓腹筋に導入され、麻痺の量が指外転に左右される試験の性能を観察することでスコア化されるアッセイである。
【0036】
したがって、一部の実施例では、治療有効量を約0.001単位~約3,000,000単位の量とすることができる。他の実施例では、前記治療有効量を約0.001単位~約10,000単位とすることができる。他の実施例では、前記治療有効量を約0.01単位~約300単位とすることができる。他の実施例では、前記治療有効量を約0.1単位~約50単位とすることができる。他の実施例では、前記治療有効量を約0.1単位~約10単位とすることができる。他の実施例では、前記治療有効量を約1単位~約100,000単位とすることができる。他の実施例では、前記治療有効量を約1単位~約10,000単位とすることができる。他の実施例では、前記治療有効量を約10単位~約1,000単位とすることができる。さらに他の実施例では、前記治療有効量を約100単位~約800単位とすることができる。
【0037】
マイクロニードルアレイなどによる局所および経皮送達は、多汗症および先天性爪肥厚症(PC)、また他の皮膚疾患における関連疼痛と水疱形成のBTX治療に対する重大な障害を軽減することができる。PC皮膚は、変異体のケラチン発現により弱くなった中間フィラメントのため、機械的に障害を受け、脆弱になっていると理解される。機械的ストレス(例えば、歩行)はこれらのPCの構成ケラチンの発現を誘導し、破壊的な下方疾患サイクルを促す。
【0038】
PC患部組織の赤外線顕微鏡写真は異常な汗管肥大と不規則な形態を示す可能性があり、これらの所見は、PCの病態生理は、過角化と関連した、障害があるまたは閉塞した汗管の結果であるという好奇心をそそる可能性、およびこの特徴は深在性汗疹と同様に、PCに伴う疼痛の発症および水疱形成に寄与しているかもしれないことを示している。発汗量とPCの病因とのそのような機構的関連性は、一部、BTX療法による発汗運動抑制後に観察される疼痛および水疱形成の目覚ましい軽減を説明している。BTXは、多汗症だけでなく、ケラチン(K5およびK14)の変異が関与し、中間フィラメントを形成する遺伝性皮膚症および単純型表皮水疱症(EBS)などの関連疾患の疼痛も同様に軽減することができる。
【0039】
BTXは、シナプスのアセチルコリン放出に介在するSNAREタンパク質を開裂することにより多汗症を遮断するように作用できるため、エクリン汗生成を誘発するシナプス後コリン作動性受容体の活性を抑制する。BTXはLD-50がng/kgの範囲で、恐らく間違いなく、知られている中で最も致死的な毒素であり、多汗症の治療に本物質を局所皮内注射に利用する場合、希釈溶液を近接して数回皮内および/または皮下注射することにより、広範な皮膚領域に微量送達される。そのため、この複雑な注射処置は、すでに非常に痛みを伴う皮膚疾患に罹患している患者にとって、かなり大きな障害となる可能性がある。したがって、局所および/または経皮投与は、理想的には皮膚に作用強度の高い薬物を微量送達するように合わせた可溶性マイクロニードルにより、ほぼ痛みのない送達を利用することで、はるかに忍容性に優れたBTX送達を提供することができる。
【0040】
そのようなマイクロニードルアレイは、基底部または基底層と、前記基底部または基底層表面に付着した、またはそこから突出した複数のマイクロニードルを含むことができる。一部の実施例では、前記基底部をポリマー層とすることができる。前記マイクロニードルアレイは、被験者の疾患または疾病を治療する経皮投与形態の一部とすることができる。そのため、治療有効量のBTXなどの活性剤は、前記被験者に投与するため、前記マイクロニードルアレイに充填することができる。前記マイクロニードルは、前記皮膚表面に前記マイクロニードルを埋め込むために十分な方法で、被験者の皮膚表面に適用することができる。一部の実施形態では、前記マイクロニードルアレイの基底部をマイクロニードルから分離し、前記マイクロニードルが皮膚表面に埋め込まれたまま、前記基底部が前記皮膚表面から取り除かれるようにすることができる。そのような実施例では、前記マイクロニードルが前記被験者に吸収されるまで、前記マイクロニードルを前記皮膚表面に保持することができる(
図2A参照)。他の実施形態では、前記基底部および前記マイクロニードルを接続したままとすることができる。いずれの場合も、
図2Bに見ることができるとおり、個々のマイクロニードルのサイズは皮下注射に必要な先端と比較して小さくすることができる。
図2Cは、皮膚に適用する前の一部の典型的な生分解性マイクロニードルの拡大図を図示する。
図2Dに図示するとおり、皮膚投与後、前記マイクロニードルは生分解され、治療有効量を放出することができる。前記マイクロニードルが生分解されることは必ずしも必要ではないが、生分解性マイクロニードルを使用することで、非生分解性マイクロニードルによる多数の安全上の懸念を排除することができる。
【0041】
一部の実施例では、前記マイクロニードルアレイまたは他の送達媒体が、治療用毒素の局所および/または経皮送達を提供することができる。局所または経皮送達のいずれかを利用し、治療用毒素の全身および/または局所投与を提供できることも分かる。一部の実施例では、局所および/または経皮送達が前記治療用毒素の局所(すなわち、非全身)投与を提供することができる。さらに他の実施例では、前記局所および/または経皮送達が前記治療用毒素の全身投与を提供することができる。
【0042】
特定の活性剤を経皮送達する際の重大な障害は、角質層のバリアから活性剤を送達させるという課題である。前記角質層の天然の機能は、水分損失を防ぎ、分子量のカットオフ値約500Daで外部物質が身体に入らないようにすることである。本発明のマイクロニードルアレイは、直接皮膚を透過することで、このバリアを効率的に回避することができる。さらに、本発明のマイクロニードルアレイは生分解性/生体吸収性材料で作成し、先端が皮膚に残り、貯留層として機能することができるというさらなる利益を提供することができ、活性剤を長時間放出するが、前記マイクロニードルは溶解し、前記被験者の身体に吸収される。一部の実施例では、前記マイクロニードルは前記基底部に実質的に垂直とすることができる。
【0043】
一部の実施例では、前記マイクロニードルは、内部縦通路および/または外部縦通路などの縦通路を含むことができる。一部の実施例では、前記マイクロニードルが、前記マイクロニードル先端から前記基底部分に伸びる、前記マイクロニードル内に形成された内部縦通路を有することができ、上部(先端)、底部(底面)、またはその両方で開口することができる。一部の実施例では、本発明のマイクロニードルが少なくとも1つの外部縦通路を有することができ、その縦方向の少なくとも一部に沿って、前記マイクロニードルの外部まで開口する。一部の実施形態では、前記マイクロニードルがこのような外部縦通路をいくつか有することができる。そのような外部縦通路は囲まれたチューブまたは前記マイクロニードル内に配置することができる内部縦通路とは異なり、上部(先端)または底部(底面)に開口を有することができるが、前記マイクロニードルの縦方向に沿っていない。ただし、前記縦通路(内部または外部)のいずれかには、前記マイクロニードルアレイにより送達される活性剤を充填することができる。前記外部縦通路は前記マイクロニードルの表面積を増大させるように作用し、それにより前記被験者への活性剤の放出率を高めることができる。さらに、前記内部および/または外部縦通路も機能し、前記活性剤または他の化合物の前記マイクロニードルへの充填を促すことができる。
【0044】
前記マイクロニードルアレイのマイクロニードルは適切な長さを有することができる。一部の実施例では、前記マイクロニードルが約1μm~約10,000μmの長さを有することができる。さらに他の実施例では、前記マイクロニードルが約50μm~約1,000μmの長さを有することができる。まだ他の実施例では、前記マイクロニードルが約75μm~約500μmの長さを有することができる。一部の実施例では、前記マイクロニードルを望みの形状および/または斜めに整えた後、前記マイクロニードルが上述の長さを有することができる。一部の実施例では、前記マイクロニードルを切断または整え、前記角質層を容易に貫通するのに適した鋭利な先端を形成することができる。
【0045】
前記マイクロニードルアレイは、前記マイクロニードルのサイズおよび分布によって、いかなる適切な数のマイクロニードルも有することもできる。一部の実施例では、前記マイクロニードルが約1本~約25,000,000本のマイクロニードルを有することができる。一部の実施例では、前記マイクロニードルが約10本~約200本のマイクロニードルを有することができる。さらに他の実施例では、前記マイクロニードルが約50本~約500本のマイクロニードルを有することができる。さらに他の実施例では、前記マイクロニードルが約100本~約1000本のマイクロニードルを有することができる。さらに他の実施例では、前記マイクロニードルが約500本~約50,000本のマイクロニードルを有することができる。まだ別の実施例では、前記マイクロニードルが約10,000本~約10,000,000本のマイクロニードルを有することができる。
【0046】
前記マイクロニードルアレイは、様々な分布のマイクロニードルを有することができる。例えば、場合によっては、前記マイクロニードルを1平方センチメートル(cm2)あたり約1本~1cm2あたり約2500本のマイクロニードルの密度で基底部に散在させることができる。他の実施例では、前記マイクロニードルを1cm2あたり約10本~1cm2あたり約100本のマイクロニードルの密度で基底部に散在させることができる。他の実施例では、前記マイクロニードルを1cm2あたり約50本~1cm2あたり約200本のマイクロニードルの密度で基底部に散在させることができる。まだ他の実施例では、前記マイクロニードルを1cm2あたり約100本~1cm2あたり約1000本のマイクロニードルの密度で基底部に散在させることができる。さらに他の実施例では、前記マイクロニードルを1cm2あたり約500本~1cm2あたり約2500本のマイクロニードルの密度で基底部に散在させることができる。
【0047】
前記マイクロニードルアレイは、一定範囲の皮膚表面積に同時に針を刺すように製造することができる。例えば、前記マイクロニードルアレイは連続シートとして製造することができ、選択的に小さな単位用量に細分することができる。一部の実施例では、前記マイクロニードルアレイの単位用量を1mm2~20cm2または10cm2~80cm2の表面積を有する、または皮膚表面積をカバーするように製造することができる。さらに他の実施例では、前記マイクロニードルアレイの単位用量を50mm2~150cm2または100cm2~1m2の表面積を有する、または皮膚表面積をカバーするように製造することができる。特定の一実施形態では、前記単位用量が1cm2~350cm2の表面積を有する、または皮膚表面積をカバーすることができる。単位用量のサイズは、例えば、手掌、足底、または前胴または後胴など、特定の身体部位の皮膚表面の治療に適するように予め選択することができる。さらに、柔軟なマイクロニードルのシートを、特定の身体部位に適用するのに適した形状に切断することができる。そのため、前記マイクロニードルアレイは、円、楕円、三角形、四角形、長方形、台形、菱形、三日月形、多角形、または特定の適用に適した他のいかなる形状とすることもできる。特定の一実施例として、三日月形の単位用量を製造し、眼の周囲に適用しやすくすることができる。同様に、眼、鼻、および/または口を空けるように孔を開けたマスクの形状を製造することもできる。代わりに、予め選択した形状を前記基底層として分配した後、予め選択した形状の基底層から針を製造することができる
別の具体的な実施例として、前記マイクロニードルアレイの単位用量は、前記基底層を切断する必要がなく、予め選択した形状で製造することができる。例えば、ポリマーフィルムを特定の形状で分配し、印刷、スクリーン印刷、マイクログラビア印刷、ジェット印刷、はがすことのできるテンプレートにより、または基質材料に液体フィルムを貼付し、形状を作る他の方法により、基底部または基底層を形成することができる。一部の実施例では、針はピンテンプレートまたは同等物を前記ポリマーフィルムに接触させ、前記フィルムの蒸発乾燥と同時に前記ピンテンプレートを引き抜き、本明細書に説明した方法のいずれかにより突起または突出したアレイを形成することができる。さらなる一部の実施例では、予め選択した基底層が、望みの長さに突出を切断または整え、選択的に前記支持基質を除去することで形成することができる。特に、前記予め選択した形状が連続で均一な基底層である必要はなく、一部の実施形態では、得られた形状で孔を形成する基底層に間隙があることが望ましい。一部の実施例では、当業者が認識するとおり、穿孔として副次的単位への分離を促すよう、またはさらに前記装置の柔軟性または硬性、蒸気透過性、重量、材料費、および前記単位用量の他の特性に影響するようにそのような孔を配置することができる。
【0048】
同様に、前記ピンテンプレートは前記ポリマーフィルムのすべての部分と接触する必要はなく、そのようなケースでは、針のない「ブランク」ゾーンを含む基底層を形成することができる。さらに、一部の実施例では、前記ピンテンプレートが様々な間隔および形状のピンを含み、突出を全く含まない領域を含め、不均一または密度勾配を持つ突出を有する生成物が形成されるようにすることができる。さらに、ポリマー組成物または色または他の溶解または懸濁した材料が異なるゾーンを含む単位用量が生成できるように、基底層の厚さまたは組成物が均一である必要はない。一部の実施例では、当業者の1人が認識するとおり、より厚い、または組成が異なる支持ポリマーの基底層ゾーンが、これに限定されるものではないが、着色、活性部分の視覚的指標、柔軟性または硬性、突出の形状または寸法、突出の硬性、皮膚へのフィルム接着、照準または参照マーク、アプリケータの機構での使用を促すつめまたは孔、活性または非活性表面の指標、処置済みの皮膚領域を特定する一時的な着色の移動、特定の製剤タイプの同定、および/または様々な他の利益を含む科学的利益を与えることができる。
【0049】
さらに、前記基底層が組織的に連続しているまたは平らである必要はない。一部の実施例では、前記基底層が連続することができ、または均一または不均一な曲線状または凹凸がある可能性もある。一部の実施例では、前記基底層の弯曲が前記ピンテンプレートがマッチした弯曲で形成される、テンプレートの複数のセグメントが独立して導入される、または突出構造を形成するように取り除く間、前記テンプレートの動きが前記基質について非線形的または複雑である必要がある。一部の実施例では、前記基質がさらに陥凹または質感を有し、前記ポリマー溶液を適用し、乾燥した突出および基底層を形成するその後の処置後、前記基底層が注型成型法で基質パターンを保持するようにすることができる。そのような成形の特徴は突出を支える装置領域の基礎になっていても、なっていなくてもよく、さらに、照準または登録マーク、空隙、陥凹、または突出ゾーンなど、前記装置のアプリケータへの接着または照準を促すテキストまたは他の識別マーク、または例えば、「こちら側を皮膚に向ける」または他の指示を含め、前記装置の活性または非活性ゾーンまたは異なる組成物または機能ゾーンの一体成型されたラベル、警告、または他の視覚的指標を含んでもよい。さらに、一部の実施例では、基礎基質によるマイクロ成形により生じた基底層の微細構造が突出の形状または構成に影響する可能性があり、さらに、前記得られた装置の硬性、柔軟性、伸縮性、弾性に影響する、または弯曲を促すことができる。一部の追加実施例では、前記基底層がさらに、例えば高周波識別RFID、または電子センサー装置などの予めまたは別に形成したコンポーネント、または、特にバーコードおよび他のスキャン識別因子を含む、識別タグまたは視覚的指標を含むまたは結合するように鋳造することができる。
【0050】
前記マイクロニードルは、下部および上部を有するように構成することができ、前記下部は前記基底部と隣接し、前記上部は前記基底部と反対、または前記マイクロニードル先端にある。一実施形態では、前記マイクロニードルの下部および上部が組成的に異なる。一実施形態では、前記活性剤が前記マイクロニードルの上部のみに存在することができる。別の実施形態では、前記活性剤が前記マイクロニードルの下部のみに存在することができる。別の実施例では、前記上部および前記下部が異なる濃度の前記活性剤を有することができる。まださらなる実施形態では、前記マイクロニードルが2種類の活性剤を含むことができる。一部の実施例では、前記マイクロニードルが2種類の活性剤を含む場合、最初の活性剤が前記下部に存在し、第2の活性剤は前記上部に存在することができる。さらに他の実施例では、前記活性剤が前記マイクロニードル先端から前記マイクロニードル基底部まで勾配濃度を有することができる。一部の実施例では、前記勾配濃度は先端の濃度を高く、基底部の濃度を低くすることができる。他の実施例では、前記勾配濃度は先端の濃度を低く、基底部の濃度を高くすることができる。前記勾配濃度は線形勾配である必要はないが、段階勾配(すなわち、2、3、4、またはそれ以上の段階)、または他の適切な勾配とすることができる。
【0051】
すでに考察したとおり、2若しくはそれ以上の異なる活性剤を前記マイクロニードルアレイに含めることができる。多数の適切な活性剤をBTXと併用投与することができる。例えば、前記BTXは、プラセタモール、NSAIDs、適切なオピオイド、またはその組み合わせなどの鎮痛薬と併用投与することができる。前記BTXは、コラーゲン、ヒアルロン酸など、またはその組み合わせなどの他の適切な薬物と併用投与することもできる。
【0052】
一部の実施例では、前記マイクロニードルアレイのマイクロニードルは生分解性/生体吸収性材料で作成することができ、一部のさらなる実施例では、投与時に含水して皮内および/または皮下デポー製剤を形成することができる材料を含むことができる。使用可能な生分解性/生体吸収性材料の限定されない例には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボマー、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマー、他のコポリマー、アルブミン、カゼイン、ゼイン、コラーゲン、他のタンパク質、グルコース、スクロース、マルトース、トレハロース、アミロース、デキストロース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、他の糖類、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトール、他の糖アルコール、コンドロイチンおよび/または他のグリコサミノグリカン、イヌリン、デンプン、アカシアガム、寒天、カルボメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギネート、カラゲナン、カッシアガム、セルロースガム、キチン、キトサン、カードラン、ゼラチン、デキストラン、フィブリン、ファーセレラン、ジェランガム、ガティガム、グアーガム、トラガカント、カラヤガム、ローカストビーンガム、ペクチン、デンプン、タラガム、キサンタンガム、および他のポリサッカライド、および上記のいずれかの機能性誘導体、そのコポリマー、またはその混合物を含む。前記生分解性/生体吸収性材料は、一般に線維様の針構造の形成時に揮発することができる溶媒で粘性溶液を作成する性能、および/またはガラス状または非結晶性固体を形成する乾燥特性に制限があるだけである。本発明では、水溶性のポリマーまたはガラス状材料が皮膚で含水し、吸収により生物学的に除去されるため、いくつか利点がある可能性がある。さらに、ガラス状ポリマーは乾燥状態で生体分子を安定化することができ、前記マイクロニードルに組み込まれる活性剤または薬物カーゴの保存安定性を上昇させるという有益な利益を提供する。一実施形態では、前記生分解性/生体吸収性材料をポリビニルアルコールとすることができる。前記生分解性/生体吸収性ポリマーがポリビニルアルコールの場合、前記ポリビニルアルコールの重量平均分子量(Mw)は10,000Mw以上とすることができる。
【0053】
本発明のマイクロニードルアレイの基底部は当該分野で既知の材料で作成することができ、これにマイクロニードルを接着することができる、またはここから前記マイクロニードルを伸長し、その後、選択的に分けることができる。一実施形態では、前記マイクロニードルアレイの基底部を、前記マイクロニードルと同じ生分解性/生体吸収性材料で作成することができる。典型的には、湾曲した皮膚表面に適用しやすくするため、前記基底部に柔軟性を持たせることができる。
【0054】
前記マイクロニードルアレイのマイクロニードルは、皮膚表面でのマイクロニードルの配置を視覚的に確認することができる指標を含むこともできる。前記指標は前記マイクロニードル本体に組み込む、前記マイクロニードル外部に装填する、または前記薬物と一緒に前記マイクロニードルに装填する、またはその組み合わせとすることができる。前記指標は、前記マイクロニードルアレイのミクロニードルすべてに存在することができるが、必ずしも必要ではない。さらに、前記指標は前記マイクロニードルアレイのマイクロニードルに存在し、前記マイクロニードルが皮膚に埋め込まれた際に画像を作成するようにすることができる。一実施形態では、前記マイクロニードルアレイの画像が、前記マイクロニードルアレイによって送達される特定の活性剤に特異的である可能性があり、それにより、医師は前記マイクロニードルが前記被験者の皮膚に適切に植え込まれたかだけでなく、前記被験者にどのタイプの活性剤が投与されたかを知ることができる。これは、前記被験者に複数の活性剤を投与する必要がある場合に特に有益となる可能性がある。さらに、そのような視覚的指標は前記マイクロニードルが溶解するまたは吸収されるまで、皮膚に「入れ墨」として残るため、その像は楽しみとワクチン接種を受ける小児などのため、創造的である、または楽しいものとすることができる。
【0055】
一般に、当該分野で既知の生物学的に許容される指標を使用することができる。一実施形態では、前記指標は色素とすることができる。一態様では、インクジェット装置を用い、前記針をすでに色素がパターン配置された表面と接触させる、または色素を指標を付けて個別に針構造と接触させることにより、前記色素をマイクロニードルアレイの少なくとも1つのマイクロニードル外側に配置することができる。別の実施形態では、前記指標を直接光源に当てた場合のみ見ることができるものとすることができる。一態様では、前記指標は紫外および/または赤外光に当てた場合のみ見ることができる。前記指標は生物学的指標とすることもできる。一実施形態では、前記指標はフルオロセインなどの蛍光プローブとすることができる。別の実施形態では、前記指標をルシフェラーゼなどの生物発光酵素とすることができる。
【0056】
一般に、前記針には上述のような活性剤を充填することができる。これは多数の方法で行うことができる。例えば、場合によっては、前記薬物を原液に含め、そこから針構造を形成することで、前記マイクロニードルに活性剤を充填することができる。一実施例では、複数の層でこれを行うことができ、その一部または全体の濃度および/または組成物を変えることができる。他の実施例では、ポリマーフィルム表面に材料を加え、そこから針を引き出すことで、前記マイクロニードルに活性剤を充填することができる。さらに他の実施例では、マイクロニードルが十分に形成された後に前記針を充填することで、前記マイクロニードルに活性剤を充填することができる。当然ながら、これらの方法を併用することもできる。
【0057】
前記原料が充填された場合、フルオレセインのモデル薬物などの充填された活性剤を前記フィルムのポリマーまたは乾燥成分と同時に溶解することができる、または針構造が引き抜かれるまたは成形されるフィルムとして分配する前にこの粘性溶液に溶解(または溶解性が低い場合は懸濁)してもよい。この方法で含まれる活性剤は、大まかに各部分の材料の量に応じて、針構造および基材に分配する。
【0058】
前記針構造が形成する前に充填材料を前記ポリマー溶液のフィルム表面に加える場合、特定の解釈に縛られることは望まないが、針構造が形成するフィルム表面の材料が、このフィルムから引き抜かれる針構造に優先的に引き抜かれ、このように形成した針はその後、どのような材料でも密になることが分かり、そのため、材料は基材と同等量で材料の量に比例して表面に充填された。したがって、前記フィルム表面の充填は、活性剤の使用効率を高める。例えば、針形成の前に、1%wtフルオロセインモデル薬物のエタノール溶液を、約20uL/cm2の負荷量で20% PVA溶液のフィルム(厚さ100μmで塗布)表面に適用することができる。この表面充填したPVAフィルムから引き抜いて得られた針は、フルオレセイン充填により強く発色するが、前記基剤はまだ比較的発色が薄く、前記フルオレセインの大部分が針に組み込まれていることを示している。同様に、薬物を含む第2の薄いPVAフィルムを同様に適用するか、PVAに加えて材料を組み込んだフィルムを適用し、同様に前記針構造にも選択的に組み込むことができる。
【0059】
これらの構造が完全に形成した後充填材料が針構造内/表面に充填される場合、前記針は揮発層に溶解または懸濁された活性剤を含む溶液と短時間接触させ、この後、この層を留去し、前記針構造の成分として活性充填物を沈着させる。前記揮発層が膨張、または前記針を形成した材料、例えば、PVA針と接触し水を含む溶液を溶解する場合は、前記針が前記溶媒の材料をさらに吸収することができ、前記基質を前記針を形成する構造材料の基質に充填材料を運ぶことができると理解される。例えば、50%エタノール/水溶媒に1%フルオレセインを溶解した溶液は、乾燥したPVA針構造表面を効率的に含水させ、針の縦方向に沿って表面の通路に取り込まれる。PVAは水で含水し、溶解するため、露出した針は柔軟性があり、曲げやすくなり、水が前記針構造を有する大量のPVA材料に拡散されたことを示している。このように処理された針の発色は、フルオレセインの充填材料が前記針構造に浸透することも示している。さらに、そのような充填接触時間は短く、典型的には1秒未満であるが、PVA針構造の一部の溶解および再沈着は起こる必要があり、さらに針構造の大部分に充填してもよい。一般に、大量の充填溶液は前記PVAマイクロニードル構造を直接溶媒和しないが、エタノールなどの揮発性成分を含み、前記針構造が前記溶液と瞬間的に接触して含水し、針の除去後、前記揮発性成分が前記水成分と比較して容易に蒸発し、針が少量の水で含水し、前記構造を実質的に溶解することなく吸収および留去することができるが、むしろこれが短時間含水し、この作用中に充填材料が組み込まれる。
【0060】
一部の実施例では、充填材料があらかじめ形成された針構造に充填され、前記充填溶液は、これに限定されるものではないが、針が適切に製造される、上述の材料のいずれかを含め、追加の不活性賦形剤、または補助材料を含むことができる。薬物充填溶液のそのような追加成分は、皮膚への沈着中および沈着後の溶解および薬物拡散の特徴に影響する可能性がある。さらに、そのような上塗り材料は充填した活性剤の安定性、前記マイクロニードル構造、または製品全体に影響する可能性がある、または、追加の着色料、マーカー、または指標を含むことができる。例えば、前記マイクロニードルの硬性または充填薬物の安全性を損なう水分の有無を示す追加の指標、または色が変化し、前記製品が適切な温度範囲外で保存されていたことを示す材料、または前記マイクロニードルが使用された、または前記針が前記充填材料を皮膚に効率的に送達したことを示す視覚的指標を提供する材料を用いることができる。さらに、一部の実施例では、そのような指標材料を針構造を含まない基底層領域に充填することができ、前記指標の材料が針充填の一部として送達される必要がないようにする。充填溶液には、粘性、表面張力、溶媒和、溶解賦形剤の量および/または前記針構造の含水または非溶解性または前記針および/または賦形剤層の活性剤充填の沈着を促す他の特性を変化させる成分も含むことができる。
【0061】
別の実施形態では、ボツリヌス毒素などの治療用毒素を用いて被験者の疾患、疾病、または病態を治療する方法が説明される。前記方法は、被験者に治療有効量のボツリヌス毒素を局所的または経皮的に投与する工程を含むことができる。一部の実施例では、本明細書に説明するとおり、マイクロニードルアレイを用いて前記ボツリヌス毒素を投与することができる。他の実施例では、前記治療用毒素をゲル、クリーム、軟膏、パッチなどを用いて投与することができる。他の実施例では、前記方法がゲル、クリーム、または他の製剤で前記毒素を投与する工程、及び別に、前記ゲル、クリーム、または他の毒素製剤の投与前および/または投与後に前記マイクロニードルアレイを投与する工程を含むことができる。
【0062】
前記疾患、疾病、または病態には、疼痛、そう痒など、その症状を含め、PC、多汗症、上位運動ニューロン症候群、眼瞼痙攣、斜視、慢性偏頭痛、歯ぎしり、癌、本明細書で説明された他のすべての疾患、疾病、または病態、またはその組み合わせを含むことができる。
【0063】
前記被験者はヒト、哺乳類、またはいかなる獣医学の被験者とすることもできる。治療薬の治療有効量は、治療する疾患、疾病、または病態、投与計画、投与される治療薬などに依存する可能性がある。一部の実施例では、前記治療有効量を効果的な投与計画により投与することができる。前記効果的な投与計画には、1日または数日で単回または複数回の投与を含むことができる。例えば、場合によっては、前記BTXを1~100回/日、1~50回/日、1~24回/日、1~12回/日、または1~6回/日、投与することができる。
【0064】
マイクロニードルアレイを用いて前記活性剤を投与する場合、前記マイクロニードルアレイは様々な回数留置することができる。例えば、場合によっては、前記マイクロニードルアレイを約5秒~約24時間の期間、留置することができる。さらに他の実施例では、前記マイクロニードルアレイを約10秒~約12時間、または約30秒~約6時間の期間、留置することができる。一部の実施例では、前記マイクロニードルを前記マイクロニードルアレイの基底部から引き離し、前記基底部が留置される期間を超えて持続的に送達することができる。
【0065】
投与頻度および投与期間も、投与1回あたりの投与量を決定する可能性がある。例えば、場合によっては、低用量の活性剤をより頻回に投与することが望ましい可能性がある。さらに他の実施例では、高用量の活性剤をより少ない頻度で投与することが望ましい可能性がある。そのため、症状が残っている間は、各投与を1日複数回、1日1回、週1回または2回、1ヵ月1回または2回、3ヵ月に1回または2回、4か月に1回または2回など繰り返すことができる。投与量および頻度は、経時的に前記活性剤の毒性が蓄積する可能性が少ない治療有効量を提供するように、調整することができる。
【0066】
一部の実施例では、前記治療有効量が、投与以前または投与を行わない場合の発汗量と比較し、投与部位の発汗量を減少させることができる。他の実施例では、前記治療有効量が、治療以前または治療を行わない場合の疼痛レベルと比較し、疼痛症状を軽減することができる。他の実施例では、前記治療有効量が、治療以前または治療を行わない場合のしわの数と比較し、投与部位のしわの数を減少させることができる。
【0067】
すでに考察したとおり、治療有効量のBTXは発汗量を減少させることができる。これに従い、本開示では、感湿フィルムを用い、治療有効量の治療用毒素を投与することにより得られる、発汗量の減少をモニタリングする方法も提供する。さらに、前記方法で使用する感湿フィルムについても説明する。
【0068】
前記感湿フィルムには、デンプン含有基質および前記デンプン含有基質に塗布される薄いヨウ素層を含むことができる。一般に、前記デンプン含有基質は紙、繊維、ポリマー材料など、またはその組み合わせを含むことができる。一部の特定の実施例では、前記デンプン含有基質をセルロースまたは紙を基本とした材料とすることができる。一部のさらなる実施例では、前記デンプンを前記セルロースまたは紙を基本とした材料を調整するために使用した原料と組み合わせ、乾燥強度が上昇したおよび/または表面の質感を変更した、紙を基本とした材料を提供することができる。さらなる実施例では、前記デンプンを前記紙を基本とした材料に塗布されるコーティングとして含めることができる。前記紙を基本とした材料にコーティングを塗布する場合、前記コーティングはいかなる適切な成分の組み合わせも有することができる、適切なコーティングとすることができる。例えば、前記コーティングは、色素、結合剤、ポリマー材料、賦形剤など、またはその組み合わせのいかなる適切な組み合わせも含むことができる。
【0069】
さらなる実施例では、前記デンプン含有基質を、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボマー、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマー、他のコポリマー、アルブミン、カゼイン、ゼイン、コラーゲン、他のタンパク質、グルコース、スクロース、マルトース、トレハロース、アミロース、デキストロース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、他の糖類、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトール、他の糖アルコール、コンドロイチンおよび/または他のグリコサミノグリカン、イヌリン、デンプン、アカシアガム、寒天、カルボメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギネート、カラゲナン、カッシアガム、セルロースガム、キチン、キトサン、カードラン、ゼラチン、デキストラン、フィブリン、ファーセレラン、ジェランガム、ガティガム、グアーガム、トラガカント、カラヤガム、ローカストビーンガム、ペクチン、デンプン、タラガム、キサンタンガム、および他のポリサッカライド、および上記のいずれかの機能性誘導体などのポリマー材料、そのコポリマー、またはその混合物とすることができる。前記デンプン含有基質の組成物は、一般に、乾燥してガラス状または非結晶性フィルムを形成することができる、溶解したデンプンを含む粘性溶液を形成する能力が限られているのみである。
【0070】
様々なデンプンを利用し、前記デンプン含有基質を作成またはコーティングすることができる。一部の実施例では、前記デンプンを酸化デンプン、カチオン化デンプン、エステル化デンプン、酵素的に変性したデンプンなど、またはその組み合わせとすることができる。一般に、すべてのデンプンまたはデンプン誘導体を利用し、水存在下、ヨウ素と着色した複合体を形成することができる。
【0071】
1つの具体的な制限されない例として、15%ポリビニルアルコール(Spectrum Chemicals、米国ニュージャージー州New Brunswick)および1%マルトデキストリン(Maltrin M040、Grain Processing Corporation、米国アイオワ州Muscatine)を含む水溶液を調整し、その後、厚さ200μmのフィルムに前記溶液を投じるまたはそうでない場合は散布し、乾燥するまで留去することで、デンプン含有基質を形成することができる。得られたフィルムは以下に説明するとおりにヨウ素でコーティングし、感湿フィルムまたは水分反応性画像センサーを形成することができる。
【0072】
さらに詳細には、ヨウ素(I2)の薄い層をデンプン含有基質に適用することができる。前記ヨウ素層は、様々な方法で前記デンプン含有基質に適用することができる。一部の実施例では、非水ヨウ素溶液(1wt%未満の水を含むヨウ素溶液など)でコーティングし、その後留去することで、強い発色を誘発することなく、前記層にヨウ素をコーティングすることができる。特定の一実施例では、1%ヨウ素の試薬級エタノール(Spectrum Chemicals、米国ニュージャージー州New Brunswick)溶液を、上述のマルトデキストリン/PVAフィルムに散布し、蒸発乾固させることができる。得られたヨウ素コーティングデンプン/PVAフィルムは、マイクロリットル以下の量の水存在下、強く発色した複合体を生じることができる。前記フィルムが皮膚に押し付けられ、皮膚表面の異なる領域に個々の汗管が分布している場合など、含水が空間的に不連続な場合、これらの汗管領域でフィルムが局所的に含水した結果、2次元画像が得られる。
【0073】
他の実施例では、液体の水存在下、ヨウ素を直接濃縮することで、強く発色した複合体を生成せずに前記フィルムにヨウ素を沈着させることができる。例えば、感熱レジペーパー(Thermal Paper Direct Inc、米国ニュージャージー州Mahwah)、または同様の紙を基本とした材料は、前記感湿フィルムの調製で有用な量のデンプンを有することができる。特定の一実施例では、24℃で感熱レジペーパーのサンプルを結晶ヨウ素とガラス容器に入れることで、前記感湿フィルムを調製することができる。前記ペーパー表面にヨウ素蒸気が凝縮するため、数時間かけて前記ペーパーは淡褐色を帯びる可能性がある。得られた感湿フィルムは水をかけると強く紫色に発色することができ、活発な汗孔部位が濃いスポットとして発色した、指紋画像を容易に作ることができる。被験個体の指の相対湿度により、この画像は5秒の短時間で現れることもあり、またははっきりと見えるまで1分もかかることもある。他の態様では、特定の水分量または組織の特徴を検出するため、長時間または短時間の接触時間がより適していることもあり、本明細書では特定の時間要件に言及しない。
【0074】
さらに他の実施例では、第2のヨウ素コーティングまたはヨウ素が多い層を前記デンプン含有基質と直接物理的に接触させることで、前記ヨウ素層を適用することができる。例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)シート基質で、可塑剤としてさらに0.05%グリセリン(Spectrum Chemicals、米国ニュージャージー州New Brunswick)、および1%ヨウ素(Spectrum Chemicals)を含む2%アルギン酸塩溶液を乾燥させることで、薄いアルギン酸ナトリウム層(Manucol DH、FMC Biopolymers、米国ペンシルバニア州Philadelphia)を生成することができる。アルギン酸塩のみでは、ヨウ素を用いても発色複合体を生成しない。ヨウ素を含む乾燥したアルギン酸塩フィルムは、PMMA基質から剥がし、上述のデンプン含有基質の1つに適用することができる。得られた2層感湿フィルムは、水を1滴かけると、局所的に強く発色したデンプンヨウ素複合体を形成することができる。
【0075】
前記薄いヨウ素層は、前記デンプン含有基質表面に、均一な褐色の発色を提供することができる。この色は、密閉した気密容器で保存すると、数週間保持することができる。そのような容器は、ガラス、ポリエチレン、ワックス、アルミ箔など、またはその組み合わせを含むことができるが、一部の金属または他の材料、特に鉄含有材料はヨウ素に感受性が高く、容易に腐食するため、ヨウ素蒸気を透過しない保護コーティングとともに提供しない限り、ヨウ素を多く含むフィルムの保存には最適ではない。前記薄いヨウ素層が指紋、足跡、または他の皮膚表面、およびそれに伴う汗管などの水分と接触すると、吸湿した部分がかなり濃くなる。さらに、一部の実施例では、この濃くなった部分が実質的に不可逆的であり、刷り込みで濃くなった部分が空気に曝露しても、まだ濃いままとなる。対照的に、一部の実施例では、空気と接触すると、褐色がかなりまたは完全に消失するまで、濃くなっていない部分が経時的に薄くなる可能性がある。理論に縛られることは望まないが、これは、水存在下でヨウ素が前記デンプン含有基質のアミラーゼらせんに取り込まれた結果であると考えられる。このヨウ素が取り込まれた形態は安定性が高く、蒸発による損失を受けにくい。刷り込まれていない領域の蒸発も刷り込まれた領域のコントラストを増すように機能し、刷り込まれた感湿フィルム画像をより鮮明にする。
【0076】
前記ヨウ素層をデンプン含有基質に適用することで、前記感湿フィルムと皮膚表面が接触する前に皮膚表面にヨウ素を塗布する必要がなくなる。これにより、ヨウ素を皮膚表面に塗布してから、前記皮膚表面をデンプン含有基質に接触させる場合と比較し、前記感湿フィルム全体で測定をより均一にすることができる。ただし、前記デンプン含有基質はヨウ素層が組み込まれていない状態で使用することができる。これらの実施例では、前記皮膚または他の皮膚に予めヨウ素をコーティングし、その後前記デンプン含有基質を接触させ、感湿フィルムにより得られた画像と同様の画像を得ることができる。
【0077】
一部のさらなる実施例では、前記感湿フィルムに前記デンプン含有基質の裏側に適用される支持層が含まれる可能性があり、前記裏側は前記ヨウ素層が適用されるデンプン含有基質と反対側である。一部の実施例では、前記支持層が皮膚表面の水分含有量を検出する感度を上昇させることができる。一部の実施例では、これにより、前記感湿フィルムから水分を透過させるのではなく、前記感湿フィルム内に水分を閉じ込めることができる。そのため、前記支持層は選択可能な水分透過度を提供することができる。例えば、場合によっては、前記支持層を不透水層とすることができる。さらに他の実施例では、前記支持層を半不透水層とすることができる。さらに他の実施例では、前記支持層を吸水材料とすることができる。これらの異なるタイプの支持層が様々な皮膚水分レベルに対応することができる。例えば、吸収性の高い支持層は水分の多いサンプルにはより適しており、前記感湿フィルムのシグナルの過剰露出または飽和がない。逆に、不浸透性支持層は前記感湿フィルムに水分が通過しないようにすることで、低湿サンプルの感度を上昇させることができる。
【0078】
すでに述べたとおり、前記感湿フィルムは、発汗量の減少をモニタリングする方法または皮膚表面の水分含有量をモニタリングする方法で使用することができる。前記方法には、被験者に感湿フィルムを提供する工程と前記被験者の皮膚表面に前記感湿フィルムを貼付する工程を含むことができる。一部の実施例では、前記感湿フィルムを貼付した皮膚表面が、上述したようなマイクロニードルアレイを処理した皮膚表面である可能性がある。一部のさらなる実施例では、前記皮膚表面がどのような皮膚表面であってもよく、何らかの理由で発汗量または皮膚表面の水分レベルを決定することが望ましい。一部の特定の実施例では、前記皮膚表面を足底など、足の皮膚表面とすることができる。
【0079】
上述のとおり、前記感湿フィルムは皮膚の水分に曝露すると濃くなる可能性がある。そのため、前記感湿フィルムにサンプル皮膚の表面を接触させた場合、前記感湿フィルムは前記皮膚表面の様々な部位の水分含有量に比例して濃くなる。これはサンプル皮膚表面の「指紋」または「perspirograph」を提供し、経時的な発汗量のモニタリングで画像化および使用することができ、治療有効量の前記治療用毒素または他の治療薬が前記治療部位に投与されたことを確認する上で役立つ可能性がある。それ自体、この方法はいかなる適切な間隔でも実施することができ、治療の進行をモニタリングする。
【0080】
本明細書で開示された方法、装置、およびシステムの利益をいくつか図示するため、以下に限定されない実施例をいくつか提供する。これらの実施例は図示の目的でのみ提供され、制限する意図はない。
【0081】
実施例
【実施例1】
【0082】
マイクロニードルアレイ装置の準備
マイクロニードルアレイは、ピンテンプレートを20%wt.ポリビニルアルコール(PVA)溶液の厚さ1mmのフィルムに接触させ(
図3A、左図および中央図)、空気流をコントロールしながら前記テンプレートを引き抜き、充填可能な通路を有する繊維状構造を形成することで生成した(
図3A、右図および3B)。乾燥した針構造は前記テンプレートとは分け、機械的に整え、均一な高さで鋭い斜めの先端を持つようにした(
図3C)。典型的なマイクロニードルの製造および乾燥は50℃以下で行われ(低い場合は30℃、データは示されていない)、核酸の機能が残るようにする。前記装置は、完全な材料の支持層を持つ、規則的な吸収性マイクロニードルアレイとして前記基質から除去する(
図3D)。典型的には、前記マイクロニードルアレイのマイクロニードルは厚さ100μm未満で直径わずかミクロンの鋭い先端を持つ(
図3E)。マイクロニードルアレイには、核酸、薬物、ワクチン、または他の治療薬など、充填材料の水溶液または懸濁液を充填することができる。複数の充填材料を同じアレイの別の針集団から送達することができる(
図3F)。充填の柔軟性を示すため、フィコビリンタンパク質であるRフィコエリスチンおよびフルオレセインを代わりにアレイに充填し、複数の積荷を単一装置に送達することができる(
図3F)。
【実施例2】
【0083】
発汗の指紋
本発明者は、汗孔を可視化するために使用されることが多いヨウ素-デンプン複合体の膜による適応を開発し、これは薄く柔軟性のあるポリビニルアルコール(PVA)およびマルトデキストリンフィルムを有する。ヨウ素存在下では、このフィルムは吸水すると急速に発色する。このフィルムアプローチは、乾燥デンプン顆粒またはオイルに分散した顆粒を用いたより一般的なアプローチと比較してかなり利点がある。乾燥膜でのデンプンの均一な分布を反映して前記フィルムは高い分解能で発色を示し、前記フィルム内で発色し、発色が基底組織の基質から消失した後可視化され、標準的な電子的方法で永久的に記録(スキャン)されるようにすることで、被験者皮膚の不規則な表面に見られる視覚的解析を大幅に省き、汗レベルの定量的比較が行いやすくなる。
【0084】
さらに詳細には、ポリビニルアルコール/マルトデキストリン溶液を乾燥させて調整した膜は、ヨウ素存在下で汗に反応する。解像可能な汗管による発汗量の高解像度画像はこの「指紋」法により得られ、ヨウ素コーティングした皮膚表面を乾燥デンプン/PVAフィルムに数秒押し付ける。マウスの足程度の小さな領域からヒトの足程度の大きな領域まで、この方法により一貫してアッセイすることができ、得られた「フィルム」は乾燥した環境で保存するか、より定量的な解析では電子画像とすることができる。
【0085】
本発明者はさらに、PVAまたは他の別に適用されたポリマーを使用する必要のない、紙を基本とした装置に上述の膜センサーを適用した。簡単に説明すると、紙、繊維、または他の親水性表面に、ヨウ素および水の存在下で発色する複合体を形成することが知られている材料、典型的にはデンプン、マルトデキストリンなどを充填するが、PVAもこの役割に使用することができる。必要であれば表面を乾燥させ、未成熟複合体が形成しないように無水でこの表面に元素ヨウ素を沈着させる。ヨウ素と、発色複合体を形成することができる対応する薬物を充填した表面は水に対して感受性があり、1nL/mm2未満の桁で微量の水分に曝露すると、または個々の汗孔で10pLの水に局所曝露すると、急速に発色して可視化される。ヨウ素は結晶固体からの直接蒸気曝露により、または試薬級メタノールまたはエタノールなどの無水(またはほぼ無水の)溶媒に元素材料を溶解した溶液でデンプン基質を湿らせた後、ヨウ素の蒸発による消失よりも急速に進む前記溶媒の蒸発乾燥により、無水的に簡便に沈着させることができる。得られたフィルムは密閉容器に保存し、ヨウ素含有量が徐々に低下しないようにすることができ、液体の水が凝集し、フィルムセンサー材料が発色しないように、十分低湿の条件で保存する必要がある。印刷できるようにデザインされたほとんどの市販ペーパーはいわゆるサイズ剤を含み、均一ですぐに吸収するインク材料を含む多数の利益を与える。これらのサイズ剤は、デンプンのように水存在下でヨウ素と発色した複合体を形成する材料を含むことが多く、それによって、本明細書で説明された感湿装置に適合する即時プラットフォームを提供する。
【0086】
上述のとおり生成した感湿フィルムは、微量の水を適用することで特定の水分レベルを検出するように、容易に較正される。微量の水を送達する簡便な方法は、試薬級エタノールまたはメタノールなどの非水溶媒中の溶液の形態で、水を導入するものである。上述のフィルムは、水を含まない試薬級エタノール1μLに曝露しても発色は確認されないことを示している。しかし、2%の水の試薬級エタノール溶液1μLは、一部の実施形態では、ペーパーに容易に識別できる色の変化を生じるのに十分であり、約28mm2の面積に対応する直径6mmのスポットで均一に可視化され、エタノールが蒸発する約10秒の間変色し、水はフィルムに浸透する。そのため、可視化されたスポットは元の1μL溶液の水含有量20nLから得られる。そのため、発色は水が0.7nL/mm2の量で見られる。活発なヒト汗孔との接触で発色した領域として見られるスポットサイズは、面積0.011mm2で直径0.12mmの小さなものとすることができ、1μLの較正スポットサイズよりも60倍小さく、10pLの範囲の孔で測定された水の用量に対応する。水曝露に応じてシグナル強度を定量化しやすくするため、シグナル反応データがin situで作成されるように、説明された本発明のフィルムの各サンプルまたはロットを、正確な量の較正濃度の水溶液に曝露することが望ましい。1若しくはそれ以上のそのような較正マークを含めることで、センサーが機能し、その後使用するための簡便な出力参照情報を提供するだけでなく、類別または品質管理を促すことができる。
【0087】
例えば、
図4Aは、ヨウ素処理したヒト手掌の皮膚と接触したPVAフィルムは汗孔で濃いスポットを示すことを図示する。
図4Bは、皮膚から剥がしたPVAフィルムを示す。
図4Bに図示するとおり、一部の薄い染色が全体にみられ、汗孔に対応する、明確な点状の濃いスポットを示している。さらに、
図4Cは、定量的測定で活発な腺の閾値検出例を図示している。
図4Dは、孔のサイズに合わせ、紙を基本としたデンプン-ヨウ素センサーフィルムの水分濃度に応じた反応を示し、約8~10pLの水で測定可能な反応が得られることを示している。水の反応強度は、Epson Reflection V550スキャナーを用い、24ビットのRGB色および1200dpiの解像度条件でEpson Scanソフトウェアバージョン3.9.2.3.USでフィルムを電子的に画像化することで定量した。画像シグナル強度はオープンソースのImageJソフトウェアバージョン2.0.0-rc-42/1.50dにより抽出した。
【0088】
図5Aは、1回の操作で広範な領域(例えば足底全体)の発汗量を記録するこのアプローチの性能を示した、足跡の1つの具体例を図示している。前記フィルムに記録された詳細のクローズアップ像を
図5Bに図示し、前記足底面の皮膚隆線に個々の孔が容易に識別可能である。この健常ボランティアではすべての孔が活発ではなく、薄い部分はPVAフィルムと接触せず、汗管の開口部が乾燥していることに対応する。水分含有量のため隆線は見ることができるが、孔の発色の方が強いため、これらは容易に識別できる。
【0089】
図6は、接着フィルムが結合した2つの紙を基本としたデンプン含有フィルムを図示する。この画像で見ることができるとおり、前記接着フィルムは皮膚表面の水分含有量の検出感度を上昇させることができる。
【実施例3】
【0090】
発汗量は、ID注射またはマイクロニードルアレイでBTAを投与したマウス足蹠で抑制される
図7A~7Cに図示されるとおり、BTA投与後の発汗量の抑制は、デンプン/PVAフィルムに曝露してから3分以内で明らかである。より具体的には、投与を行わなかった場合の陰性対照の足蹠を
図7Aに図示し、各足で染色強度が同等であることを示している。
図7Bは、食塩水の陰性対照(左)および50単位のBTA食塩水溶液(右)を皮内注射後24時間で観察した足蹠を示す。前記BTAを投与した足は薄い染色を示し、発汗量の減少と一致している。同様に、
図7Cは、ブランクのマイクロニードルアレイ(Flex-PAD)(左足)およびBTA充填Flex-PAD(約50単位のBTAを送達、右足)を適用する処理後4日で解析された足蹠を示す。前記Flex-PADでBTAを送達した足(右)は、BTAを介した発汗量の減少と一致した薄い染色を示している。
【0091】
ボツリヌス毒素は一般に長時間の保存溶液に適さないが、これらの予備結果は活性に十分な作用強度が保持されていることを示している。さらに、生物学的材料の劇的な安定性上昇は、マイクロニードルに充填後、高温でも達成することができる。一部のケースでは、これは前記PVA基質材料のガラス状ポリマー構造のためである可能性がある。さらなる安定性については、別の充填プロセスを利用し、前記処理温度が5℃付近に保持され、分解の可能性が最小限となるようにすることができる。
【実施例4】
【0092】
指外転スコア(DAS)アッセイによって測定したボツリヌス毒素の送達
雌Swiss-Webster(SW)マウスを評価し、尾懸垂または「scruffing」時の正常な指外転反射および正常で指を開ききった状態を観察した。前記被験者を麻酔し、合計約60ngのBTAを充填したマイクロニードル9本を有する単一のFlex-PAD単位用量を、各被験者の右腓腹筋にかかる皮膚の毛を剃って適用した。BTAの代わりに約5ngのUSPリン酸リボフラビンを充填した対照単位用量(対照)を、同じように、左腓腹筋にかかる皮膚の毛を剃って適用した。単位用量は指のピンチ挿入で適用し、5分間放置した。この後、投与後の単位用量を点検し、針の50%以上にかなりの浸食のエビデンスが示され、前記用量は全積荷を送達しなかった可能性があるが、かなりの部分が沈着したことを示している。
【0093】
BTAの実際の送達は、指外転スコア(digit abduction score:DAS)により測定した。内容を一部提供するため、
図8Aは、マウス足の典型的なDASスコア化を図示する。
図8Bは、BTAのFlex-PAD投与後に右後肢のDASスコアが4、対照のFlex-PAD投与後に左後肢のDASスコアが0であったマウスの写真を示す。同様に、
図8Cに図示するとおり、投与後24~36時間の検査は指外転に麻痺性の影響があることを示し、すべての被験者がBTA投与した右側のDAS値が「3~4」であることを示した。BTAを含まないFlex-PADを用いた対照足では、麻痺(DAS=0)は認められなかった。
【0094】
リン酸緩衝食塩水に希釈した同じBTA溶液の筋肉内(IM)注射で同じ有効量を決定するため、用量反応試験を行い、麻酔下で腓腹筋に20μLを直接IM注射することで、それぞれ90、180、360、720、および1440pgのBTAを投与した。24時間までに用量が高ものから4用量を投与したマウスはDAS値3~4を示したが、最低用量の90pgではDAS=1の値となった。Flex-PADおよびIM用量反応の実験で投与を行った被験者の代表的データを
図8Cに示す。Flex-PAD DASスコア(FP1~FP5)が
図8Cに示される各時点で順次提示され、この後IM DASスコア(IM1~IM5)が各時点で順次提示される。各被験者の反対の足に食塩水を投与した対照は、実験期間中DAS=0のままであった。
【0095】
前述の例は1若しくはそれ以上の特定の出願で本発明の原則を図示しているが、発明力を行使せずに、本発明の原則および概念から離れずに、実装の形態、使用、および詳細に多数の変更を加えることができることは、当業者に明白であろう。したがって、以下に示した請求項を除き、本発明が限定されることは意図していない。