(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】炎症性腸疾患の治療を目的とする三剤併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20221021BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20221021BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20221021BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20221021BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20221021BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221021BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20221021BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZMD
A61K31/519
A61K31/573
A61K31/58
A61P1/04
A61P29/00
A61P37/02
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2018558238
(86)(22)【出願日】2017-05-04
(86)【国際出願番号】 US2017031089
(87)【国際公開番号】W WO2017192867
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-04-30
(32)【優先日】2016-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500287639
【氏名又は名称】ミレニアム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】513321467
【氏名又は名称】アイカーン スクール オブ メディシン アット マウント サイナイ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100181168
【氏名又は名称】丸山 智裕
(72)【発明者】
【氏名】リスース,トレバー ワレン
(72)【発明者】
【氏名】コロンベル,ジーン-フレデリック
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】UNITED EUROPEAN GASTROENTEROLOGY JOURNAL,2015年06月09日,VOL:3, NR:5,PAGE(S):419 - 428,http://dx.doi.org/10.1177/2050640615590302
【文献】ClinicalTrials.gov archive, NCT02764762 [online], 2016-05-05,https://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT02764762?V_1=View#StudyPageTop
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395-39/44
A61P 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト化抗α4β7抗体を含む、クローン病(CD)患者を治療するための医薬製剤であって、
前記患者は
、CDの合併症に対して高リスクのCD患者であり、
前記抗α4β7抗体は、アダリムマブ及びメトトレキサートとの併用療法において、以下の投与計画:
a.
0週にヒト化抗α4β7抗体300mgを初回投与量として静脈内注入し、続いて前記初回投与
の2週後にヒト化抗α4β7抗体300mgを2回目の後続投与量として静脈内注入し、続いて、前記初回投与
の6週後に前記ヒト化抗α4β7抗体300mgを3回目の後続投与量として静脈内注入し、
b.
0週にアダリムマブ160mgを初回投与量として皮下注射し、続いて
前記初回投与の2週後にアダリムマブ80mgを2回目の後続投与量として皮下注射し、続いて前記初回投与
の4週後にアダリムマブ40mgを3回目の後続投与量として
皮下注射し、
c.
0週にメトトレキサート15mgを初回投与量として経口投与する
に従って投与するためのものであり、
ここで前記投与計画は内視鏡的寛解をもたらし、
さらにここで前記抗α4β7抗体は非ヒト由来の抗原結合領域及びヒト由来の抗体の少なくとも一部を含み、ここで前記ヒト化抗体が前記α4β7複合体に対する結合特異性を有し、ここで前記抗原結合領域はCDRとして、
軽鎖 CDR1 配列番号7
CDR2 配列番号8及び
CDR3 配列番号9ならびに
重鎖 CDR1 配列番号4
CDR2 配列番号5及び
CDR3 配列番号6
を含む、前記医薬製剤。
【請求項2】
前記ヒト化抗α4β7抗体
が30分間かけて前記患者に投与される、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記ヒト化抗α4β7抗体が、配列番号1のアミノ酸20~140の重鎖可変領域配列及び配列番号2のアミノ酸20~131の軽鎖可変領域配列を有する、請求項1または2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記ヒト化抗α4β7抗体が、配列番号1のアミノ酸20~470を含む重鎖及び配列番号2のアミノ酸20~238を含む軽鎖を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記抗α4β7抗体がベドリズマブである、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
前記高リスクのCD患者がさらにコルチコステロイドの1回投与量を投与される、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記コルチコステロイドがプレドニゾンまたはブデソニドである、請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記コルチコステロイドの1回投与量が、投与を中止するまで徐々に減量される、請求項6または7に記載の医薬製剤。
【請求項9】
前記3回目の後続投与
の4週後に、前記ヒト化抗α4β7抗体300mgが後続投与量として静脈内注入により投与されるか、
前記3回目の後続投与
の8週後に、前記ヒト化抗α4β7抗体300mgが後続投与量として静脈内注入により投与される、
請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項10】
その
後8週毎に、前記ヒト化抗α4β7抗体300mgが後続投与量として静脈内注入により投与される、請求項9に記載の医薬製剤。
【請求項11】
26
週後から、4週毎に、前記ヒト化抗α4β7抗体300mgが後続投与量として静脈内注入により投与される、請求項1~
9のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記3回目の後続投与後
の2週または4週毎に、前記ヒト化抗α4β7抗体108mgが後続投与量として皮下注射により投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項13】
ベドリズマブを含む、クローン病患者を治療するための医薬製剤であって、ベドリズマブは、アダリムマブ及びメトトレキサートとの併用療法において以下のとおり投与するためのものであり、
0、2及び6週にベドリズマブを300mgの1回投与量で投与し、その後8週毎に投与し、
0週にアダリムマブを160mgの投与量で皮下投与し、2週にアダリムマブを80mgの投与量で投与し、4週及びその後2週毎にアダリムマブを40mgの投与量で投与し、
0週に15mgのメトトレキサートを
経口投与
し、
前記患者は、CDの合併症に対して高リスクのCD患者である、
前記医薬製剤。
【請求項14】
アダリムマブが26週に投与を中止される、請求項13に記載の医薬製剤。
【請求項15】
ベドリズマブを含む、クローン病患者を治療するための医薬製剤であって、ベドリズマブは、アダリムマブ及びメトトレキサートとの併用療法において以下のとおり投与するためのものであり、
0、2、6、14、22及び30週にベドリズマブを300mgの1回投与量で投与し、その後4週毎に投与し、
0週にアダリムマブを1回160mgの投与量で皮下投与し、2週にアダリムマブを1回80mgの投与量で投与し、4週及びその後2週毎にアダリムマブを1回40mgの投与量で投与し、
0週に15mgのメトトレキサートを
経口投与
し、
前記患者は、CDの合併症に対して高リスクのCD患者である、
前記医薬製剤。
【請求項16】
アダリムマブが26週に投与を中止される、請求項15に記載の医薬製剤。
【請求項17】
前記メトトレキサートが34週に投与を中止される、請求項13
~16のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項18】
前記クローン病が中等度から重度の活動性クローン病である、請求項13~
17のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項19】
前記患者に投与されるコルチコステロイドの1回投与量が、投与を中止するまで徐々に減量される、請求項13~
18のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2016年5月4日に出願された米国仮出願第62/331,813号の利益を主張するものである。前述の出願の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
炎症性腸疾患(IBD)は、胃腸(GI)管の慢性、再発性、炎症性疾患であり、2つの疾患単位、すなわち、潰瘍性大腸炎(UC)及びクローン病(CD)を包含する疾患である。UCにおける結腸に限定されたびまん性、表在性、持続性の炎症とは対照的に、CDの炎症は限局的で貫壁性である場合があり、口から肛門までのGI管における任意のセグメントを包含し得る。CDの有病率は、米国(US)の人口100,000人あたり約150である。特徴的な病状は、好中球及びマクロファージからなる慢性の炎症性浸潤を包含する。CDの特徴としては、肉芽腫性炎症及びアフタ性潰瘍が挙げられる。CDは、現時点において医学的または外科的な治療が不可能である。
【0003】
未治療のCD患者は、通常、狭窄及び瘻形成などの構造的な合併症を発症し、このことは通常、入院及び外科手術を経時的にもたらす。米国のCD患者306人の調査において、Thia(2010,Gastroenterology 139:1147-55)は、狭窄または浸潤性疾患のいずれかによるCD合併症の発症における累積リスクが、CDの診断が確定した5年後に33.7%、20年後に50.8%であることを示した。この疾患の自然経過としては、長期の寛解期間を伴う無痛性の経過から、構造的な腸壁の損傷を伴う侵攻性、機能障害性の疾患にまで及ぶ可能性がある。特定の患者は、炎症に対して高い再発率、浸潤性疾患の発症、再手術の必要性を有するかまたは複数回入院することと定義され得る侵攻性のCDに罹患している。複数の環境因子が個体の遺伝子型と相互作用して疾患の発症を引き起こすため、IBDの病態生理は複雑である。公表されている侵攻性疾患のリスク因子には、上部GI管及び回腸の病変、浸潤性疾患、若年齢での診断、喫煙、粘膜の広範な潰瘍化、特定の血清抗体の高力価ならびにヌクレオチド結合オリゴマー化ドメイン含有タンパク質2(NOD2)遺伝子の変異が挙げられる。合併症に関してより高リスクになる患者をより容易に予測し、その患者集団をより強力な早期治療の対象とすることができることは非常に重要であるだろう。臨床的、血清学的及び遺伝学的変数を組み入れたCrohn's Disease Personalized Risk and Outcome Prediction Tool(PROSPECT)が、Siegelによって考案された(Aliment.Pharmacol.Ther.2016,43:262-71;Inflamm.Bowel Dis.2011,17:30-38)。このツールは、CDに関連する合併症、特に狭窄または内臓浸潤性疾患の発症可能性の予測に用いられる。予測モデルの結果は、3年の期間内における合併症の低リスクから中リスク、高リスクまでの患者のリスク層別化を可能にする。
【0004】
TNFアンタゴニスト療法による治療は、コルチコステロイド、免疫調節剤及びメサラミンに対するCD不応性患者の治療を実質的に改善した。2010年に、SONIC試験において、TNFアンタゴニストのインフリキシマブ及び免疫調節剤アザチオプリンとの併用療法により、治療の有効性がさらに有意に改善されることが示された。しかし、患者の約40%は、TNFアンタゴニスト及び免疫調節剤の併用開始後に寛解まで到達しない。したがって、寛解率を改善し、特にCDの合併症に関してよりリスクの高い患者の疾患進行を改変し得る併用療法に、未だ解決されていない緊急の医学的ニーズが依然として存在している。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、寛解率を改善し、疾患進行を改変し得る併用療法を用いて、炎症性腸疾患(例えば、クローン病(CD)または潰瘍性大腸炎(UC))患者を治療する方法に関する。
【0006】
一態様では、患者は、炎症性腸疾患による合併症に対して中等度から高度のリスクを有する。一実施形態では、患者は高リスクのCD患者である。
【0007】
一態様では、本発明は、ヒト化抗α4β7抗体、アダリムマブ及び免疫調節剤を含む三剤併用療法を使用してクローン病患者を治療する方法を提供し、三剤併用療法は、以下の投与計画によって患者に実施される。まず、ヒト化抗α4β7抗体300mgを初回投与量として静脈内注入し、続いて初回投与の約2週後に、ヒト化抗α4β7抗体300mgを2回目の後続投与量として静脈内注入し、続いて初回投与の約6週後に、ヒト化抗α4β7抗体300mgを3回目の後続投与量として静脈内注入し、アダリムマブ160mgを初回投与量として皮下注射し、続いてアダリムマブ80mgを2回目の後続投与量として皮下注射し、続いて初回投与の約4週後に、アダリムマブ40mgを3回目の後続投与量として投与し、免疫調節剤15mgを初回投与量として経口投与する。ここで、投与計画は内視鏡的寛解をもたらし、さらにここで、抗α4β7抗体は、非ヒト由来の抗原結合領域及びヒト由来抗体の少なくとも一部を含み、ヒト化抗体はα4β7複合体に対して結合特異性を有し、抗原結合領域はCDRとして、
軽鎖、CDR1 配列番号7
CDR2 配列番号8及び
CDR3 配列番号9ならびに
重鎖、CDR1 配列番号4
CDR2 配列番号5及び
CDR3 配列番号6を含む。
【0008】
一実施形態では、ヒト化抗α4β7抗体は、約30分間かけて患者に投与される。
【0009】
一実施形態では、ヒト化抗α4β7抗体は、配列番号1のアミノ酸20~140の重鎖可変領域配列を有する。一実施形態では、ヒト化抗α4β7抗体は、配列番号2のアミノ酸20~131の軽鎖可変領域配列を有する。さらに別の実施形態では、ヒト化抗α4β7抗体は、配列番号1のアミノ酸20~470を含む重鎖及び配列番号2のアミノ酸20~238を含む軽鎖を有する。一実施形態では、ヒト化抗α4β7抗体はベドリズマブである。
【0010】
一実施形態では、免疫調節剤はメトトレキサートである。
【0011】
一態様では、本方法は、3回目の後続投与の約8週後に、ヒト化抗α4β7抗体300mgを後続投与量として静脈内注入により投与することをさらに含む。
【0012】
一態様では、本方法は、3回目の後続投与後の約2、3または4週毎に、ヒト化抗α4β7抗体108mgを後続投与量として皮下注射により投与することをさらに含む。
【0013】
一態様では、患者によるコルチコステロイドの同時使用については、三剤併用療法の期間中に徐々に減量し投与を中止する。
【0014】
一態様では、本発明は炎症性腸疾患患者を治療する方法であって、患者にベドリズマブ、アダリムマブ及びメトトレキサートを三剤併用療法により投与することを含み、ここで三剤併用療法は、ベドリズマブを300mgの1回投与量で0、2及び6週に投与し、その後8週毎に投与し、アダリムマブを160mgの1回投与量で0週に皮下投与し、アダリムマブを80mgの投与量で2週に投与し、アダリムマブを40mgの投与量で4週及びその後2週毎に皮下投与し、メトトレキサートを投与することを含む方法を提供する。一実施形態では、アダリムマブは26週に投与が中止される。一実施形態では、メトトレキサートは経口投与される。一実施形態では、メトトレキサートは15mgの1回投与量で投与される。一実施形態では、メトトレキサートは34週に投与が中止される。一実施形態では、炎症性腸疾患はクローン病である。一実施形態では、炎症性腸疾患は、中等度から重度の活動性クローン病である。一実施形態では、患者は高リスクのCD患者である。一実施形態では、患者は、三剤併用療法の実施前に高リスクのCD患者として選択される。一実施形態では、炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎である。一実施形態では、潰瘍性大腸炎は、中等度から重度の活動性潰瘍性大腸炎である。
【0015】
一態様では、本発明は炎症性腸疾患患者を治療する方法であって、患者にベドリズマブ、インフリキシマブ及びメトトレキサートを三剤併用療法により投与することを含む方法を提供する。三剤併用療法は、ベドリズマブを300mgの1回投与量で0、2及び6週に投与し、その後8週毎に投与し、インフリキシマブを5mg/kgの1回投与量で0、2及び6週に静脈内投与し、その後8週毎に投与し、メトトレキサートを投与することを含み得る。一実施形態では、メトトレキサートは経口投与される。一実施形態では、メトトレキサートは15mgの1回投与量で投与される。一実施形態では、メトトレキサートは34週に投与が中止される。一実施形態では、炎症性腸疾患はクローン病である。一実施形態では、炎症性腸疾患は、中等度から重度の活動性クローン病である。一実施形態では、患者は高リスクのCD患者である。一実施形態では、患者は、三剤併用療法の実施前に高リスクのCD患者として選択される。一実施形態では、炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎である。一実施形態では、潰瘍性大腸炎は、中等度から重度の活動性潰瘍性大腸炎である。
【0016】
一態様では、本発明は炎症性腸疾患患者を治療する方法であって、患者にベドリズマブ、ゴリムマブ及びメトトレキサートを三剤併用療法により投与することを含む方法を提供する。三剤併用療法は、ベドリズマブを300mgの1回投与量で0、2及び6週に投与し、その後8週毎に投与し、ゴリムマブを200mgの1回投与量で0週に、100mgを2週に、その後100mgを4週毎に皮下投与し、メトトレキサートを投与することを含み得る。一実施形態では、メトトレキサートは経口投与される。一実施形態では、メトトレキサートは15mgの1回投与量で投与される。一実施形態では、メトトレキサートは34週に投与が中止される。一実施形態では、炎症性腸疾患はクローン病である。一実施形態では、炎症性腸疾患は、中等度から重度の活動性クローン病である。一実施形態では、患者は高リスクのCD患者である。一実施形態では、患者は、三剤併用療法の実施前に高リスクのCD患者として選択される。一実施形態では、炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎である。一実施形態では、潰瘍性大腸炎は、中等度から重度の活動性潰瘍性大腸炎である。
【0017】
一態様では、本発明は炎症性腸疾患患者を治療する方法であって、患者にベドリズマブ、セルトリズマブペゴル及びメトトレキサートを三剤併用療法により投与することを含む方法を提供する。三剤併用療法は、ベドリズマブを300mgの1回投与量で0、2及び6週に投与し、その後8週毎に投与し、セルトリズマブを400mgの1回投与量で0週に、400mgを2及び4週に、その後選択的に400mgを4週毎に皮下投与し、メトトレキサートを投与することを含み得る。一実施形態では、メトトレキサートは経口投与される。一実施形態では、メトトレキサートは15mgの1回投与量で投与される。一実施形態では、メトトレキサートは34週に投与が中止される。一実施形態では、炎症性腸疾患はクローン病である。一実施形態では、炎症性腸疾患は、中等度から重度の活動性クローン病である。一実施形態では、患者は高リスクのCD患者である。一実施形態では、患者は、三剤併用療法の実施前に高リスクのCD患者として選択される。一実施形態では、炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎である。一実施形態では、潰瘍性大腸炎は、中等度から重度の活動性潰瘍性大腸炎である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、炎症性腸疾患(例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎)を三剤併用療法を用いて治療する方法に関する。本方法は、クローン病患者、特に合併症を発症するリスクが高い患者に、抗インテグリンα4β7(例えばベドリズマブ)、TNFαアンタゴニスト(例えばアダリムマブ)、及び免疫調節剤(例えばメトトレキサート)を含む三剤併用療法を実施することを含む。
【0020】
一態様では、三剤併用療法は患者に対して1つ以上の投与経路を介して実施される。一部の実施形態では、抗インテグリンは注入により、TNFアンタゴニストは皮下注射により、免疫調節剤は経口により投与される。
【0021】
一部の実施形態では、三剤併用療法の抗インテグリンの成分は、抗α4β7抗体などの抗体である。一部の実施形態では、抗α4β7抗体はヒト化抗体、例えばAct-1マウスモノクローナル抗体のエピトープ特異性を有するヒト化抗体である。一部の実施形態では、抗α4β7抗体はベドリズマブである。
【0022】
一部の実施形態では、TNFアンタゴニストはアダリムマブである。一部の実施形態では、TNFアンタゴニストは、インフリキシマブ、ゴリムマブまたはセルトリズマブペゴルである。
【0023】
一部の実施形態では、免疫調節剤はメトトレキサートである。一部の実施形態では、免疫調節剤は、アザチオプリンまたは6-メルカプトプリンである。
【0024】
定義
本明細書で使用される用語「併用療法」は、2種以上の治療物質、例えば抗α4β7抗体及び別の薬物の投与を指す。他の薬物(複数可)は、抗α4β7抗体の投与と同時に、投与前にまたは投与後に投与してもよい。本明細書で使用される用語「三剤併用療法」は、少なくとも3種の治療物質、例えば抗α4β7抗体、抗TNF抗体及びメトトレキサートの投与を指す。
【0025】
本明細書で同義に使用される用語「TNFアンタゴニスト」または「TNFアンタゴニスト」は、TNFα活性を阻害、拮抗及び/または中和する治療剤を指す。TNFアンタゴニストの例には、これらに限定されないが、アダリムマブ、インフリキシマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブペゴル及びエタネルセプトが挙げられる。
【0026】
用語「高リスクのクローン病(CD)患者」は、Crohn’s Disease Personalized Risk and Outcome Prediction Tool(PROSPECT)予測ツール(Siegel,et al.,Aliment.Pharmacol.Ther.2016;43:262-271)により評価されるように、診断後2年までに少なくとも20%の疾患合併症の可能性があるクローン病患者を指す。一実施形態では、本明細書に開示される方法は、この特定の亜集団における患者の治療に用いられる。
【0027】
代替的には、用語「高リスクのクローン病(CD)患者」は、2014年の米国消化器病学会(AGA)のCD Clinical Care Pathway Criteria(Sandborn,Gastroenterology 2014,147:702-705)により定義された、合併症のリスクを有するクローン病患者を指す。その基準では、例えば初期診断<30歳である、広範な解剖学的病変、肛門周囲及び/または重度の直腸疾患、深部潰瘍、過去の外科的切除または狭窄及び/または浸潤挙動などの、現在及び過去の疾患の重篤度を評価する。一実施形態では、本明細書に開示される方法は、CDがこれらの基準の少なくとも1つを有する患者の治療に用いられる。一実施形態では、本明細書に開示される方法は、過去に外科的切除を受けた患者の治療には用いられない。
【0028】
本明細書で使用する「ベースライン」は、治療の初回投与前に測定されるパラメータの値を示す。それは初回治療時と同日、前日、前週、すなわち、初回投与後までに測定値がほとんど変化しないと予測される初回投与前の期間に得た試料測定値を指し得るものであり、初回投与後に得た測定値をこのベースライン値と比較することでその投与により起こる変化を表し得る。
【0029】
用語「医薬製剤」は、抗α4β7抗体などのα4β7アンタゴニストを抗体の生物学的活性を有効にするような形態で含有し、製剤を投与するであろう対象に対して許容されないほどの毒性を有する追加成分を含有しない調製物を指す。
【0030】
細胞表面分子「α4β7インテグリン」または「α4β7」は、α4鎖(CD49D、ITGA4)及びβ7鎖(ITGB7)のヘテロ二量体である。各鎖は、代替的なインテグリン鎖を有するヘテロ二量体を形成してα4β1またはαEβ7を形成し得る。ヒトα4及びβ7遺伝子(GenBank(National Center for Biotechnology Information,Bethesda,MD)のRefSeqアクセッション番号NM_000885及びNM_000889)は、B及びTリンパ球、特にCD4+記憶リンパ球において発現される。多くのインテグリンの特徴として、α4β7は休止状態または活性化状態のいずれかで存在し得る。α4β7のリガンドとしては、血管細胞接着分子(VCAM)、フィブロネクチン及び粘膜アドレシン(MAdCAM(例えばMAdCAM-1))が挙げられる。
【0031】
「α4β7アンタゴニスト」は、α4β7インテグリンの機能に拮抗、抑制または阻害する分子である。このようなアンタゴニストは、α4β7インテグリンと1つ以上のそのリガンドとの相互作用に拮抗し得る。α4β7アンタゴニストは、α4β7インテグリンのヘテロ二量体の鎖または両鎖を必要とする複合体のいずれかに結合し得るか、またはMAdCAMなどのリガンドに結合し得る。α4β7アンタゴニストは、例えば抗α4β7インテグリン抗体または「抗α4β7抗体」などの、このような結合機能を有する抗体であり得る。一部の実施形態では、抗α4β7抗体などのα4β7アンタゴニストは、「α4β7複合体に対する結合特異性」を有し、α4β7に結合するがα4β1またはαEβ7には結合しない。
【0032】
本明細書における用語「抗体(antibody)」または「抗体(antibodies)」は、最も広い意味で使用され、具体的には、完全長抗体、抗体ペプチド(複数可)または免疫グロブリン(複数可)、モノクローナル抗体、キメラ抗体(霊長類化抗体を包含する)、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、例えばマウス、ヒツジ、ニワトリまたはヤギの非ヒト種に形質導入したヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来するヒト抗体などのヒト化抗体及び非ヒト種由来の抗体、例えばモノボディ及びダイアボディなどの組換え抗原結合形態、少なくとも2つの完全長抗体(例えば、異なる抗原またはエピトープに対する抗体の抗原結合領域を含む各部分)から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)ならびに、例えば、dAbs、Fv、scFv、Fab、F(ab)'2、Fab'などの、抗体のまたは抗体に由来する、前述の任意における個々の抗原結合フラグメントに及ぶ。
【0033】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一の抗体の集団から得た抗体を指し、すなわち、その集団を含む個々の抗体は同一である、及び/または同一のエピトープに結合する。修飾語「モノクローナル(の)」は、実質的に均一な抗体の集団から得る抗体の特性を示し、任意の特定の方法による抗体の産生が必要であると解釈されるべきではない。
【0034】
抗体の「抗原結合フラグメント」は、好ましくは少なくとも抗α4β7抗体の重鎖及び/または軽鎖の可変領域を含む。例えば、ベドリズマブの抗原結合フラグメントは、配列番号2のヒト化軽鎖配列のアミノ酸残基20~131及び配列番号1のヒト化重鎖配列のアミノ酸残基20~140を含み得る。このような抗原結合フラグメントの例には、Fabフラグメント、Fab'フラグメント、Fvフラグメント、scFv及びF(ab')2フラグメントが挙げられる。抗体の抗原結合フラグメントは、酵素による切断または組換え技術により産生され得る。例えば、FabまたはF(ab')2フラグメントをそれぞれ生成するために、パパインまたはペプシン切断が用いられ得る。同様に抗体は、1つ以上の終止コドンが天然の終止部位の上流に導入された抗体遺伝子を使用して、様々な切断形態で産生され得る。例えば、F(ab')2フラグメントの重鎖をコードする組換え構築物は、重鎖のCHIドメイン及びヒンジ領域をコードするDNA配列を包含するように設計され得る。一態様では、抗原結合フラグメントは、そのリガンドの1つ以上(例えば粘膜アドレシンMAdCAM(例えばMAdCAM-1)、フィブロネクチン)へのα4β7インテグリンの結合を阻害する。
【0035】
「治療用モノクローナル抗体」は、ヒト対象の治療に使用される抗体である。本明細書に開示される治療用モノクローナル抗体は、抗α4β7抗体を包含する。
【0036】
抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列のFc領域またはアミノ酸配列のバリアントFc領域)に起因するそれらの生物学的活性を指す。抗体のエフェクター機能の例としては、C1q結合、補体依存性細胞障害、Fc受容体結合、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えばB細胞受容体、BCR)のダウンレギュレーションなどが挙げられる。目的の分子のADCC活性を評価するため、例えば、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載のin vitro ADCCアッセイなどが実施され得る。
【0037】
それらの重鎖における定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、完全長抗体は異なる「クラス」に割り当てられ得る。完全長抗体の5つの主要なクラスとしてIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらのいくつかはさらに、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2の「サブクラス」(アイソタイプ)に分けられ得る。抗体の種々のクラスに対応する重鎖の定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。抗体の種々のクラスのサブユニット構造及び三次元立体構造は周知である。
【0038】
任意の脊椎動物種に由来する抗体の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に異なる種類の1つに割り当てられ得る。
【0039】
用語「超可変領域」は、本明細書で使用される場合、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般に「相補性決定領域」または「CDR」に由来するアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメイン中の残基24~34(L1)、50~56(L2)及び89~97(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の31~35(H1)、50~65(H2)及び95~102(H3)、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))及び/または、「超可変ループ」に由来するそれらの残基(例えば、軽鎖可変ドメイン中の残基26~32(L1)、50~52(L2)及び91~96(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の26~32(H1)、53~55(H2)及び96~101(H3)、Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))を含む。「フレームワーク領域」または「FR」残基は、本明細書に定義される超可変領域の残基を除くそれらの可変ドメイン残基である。超可変領域またはそのCDRは、ある抗体鎖から別の抗体鎖または別のタンパク質に導入され、産生される(複合)抗体または結合タンパク質に抗原結合特異性を与え得る。
【0040】
非ヒト(例えば、げっ歯類)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体由来の最小配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の残基が、例えばマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基により置換され、所望の特異性、親和性及び機能を有するヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト抗体のフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基により置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には見られない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の機能をさらに改良するために行われる。さらなる詳細については、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988)及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照のこと。
【0041】
「親和性成熟」抗体は、それらの変化(複数可)がない親抗体と比較して、抗原に対する抗体親和性の改善をもたらす、その1つ以上の超可変領域での1つ以上の変化を有する。一態様では、親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモルレベルまたはさらにピコモルレベルでの親和性を有する。親和性成熟抗体は、当技術分野で公知の手順により産生される。Marks et al.Bio/Technology 10:779-783(1992)では、VH及びVLドメインシャッフリングによる親和性成熟について記載されている。CDR及び/またはフレームワーク残基のランダム変異導入法は、Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci,USA 91:3809-3813(1994)、Schier et al.Gene 169:147-155(1995)、Yelton et al.J.Immunol.155:1994-2004(1995)、Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310-9(1995)及びHawkins et al.,J.Mol.Biol.226:889-896(1992)により記載されている。
【0042】
「単離された」抗体は、同定されてその自然環境の成分から分離及び/または回収されたものである。ある特定の実施形態では、抗体は、(1)Lowry法により測定したタンパク質が95重量%、代替的には99重量%を超えるように、(2)スピニングカップシークエネーターを用いて少なくとも15残基のN末端または内部アミノ酸配列を十分に得られる程度に、または(3)クーマシーブルーまたは銀染色を用いた還元または非還元条件下でのSDS-PAGEにより均一性が確認されるように精製する。単離された抗体は、抗体の自然環境にある少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のin situの抗体を包含する。しかしながら、通常単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0043】
「治療」は治療的処置を指す。治療が必要な人には、既に疾患に罹患している人が包含される。したがって、例えばヒトのような、本明細書において治療される患者は、例えばクローン病または潰瘍性大腸炎の炎症性腸疾患などの疾患に罹患していると診断されている可能性がある。用語「患者」及び「対象」は、本明細書では同義に使用される。
【0044】
「予防」は、有害事象の重症度の非存在または抑制をもたらす治療を指す。ある集団の患者では、治療が一般的に一定の割合で有害事象を、または一定の割合で重篤な有害事象をもたらすが、予防目的で投与される治療は、代わりに有害事象の割合の低下をもたらし(すなわち、有害事象のリスクがより低くなるかまたは抑制される)、または重篤な有害事象の割合の低下をもたらす(すなわち、有害事象が重篤であるリスクがより低くなるかまたは抑制される)。
【0045】
中等度から重度の活動性潰瘍性大腸炎(UC)及びクローン病(CD)患者の治療を目的とする、α4β7インテグリンに対する結合特異性を有するヒト化モノクローナル抗体として、抗α4β7抗体のベドリズマブが既に示されている。ベドリズマブは、新規の腸管選択的な作用機序を有する。細胞表面に発現するα4β7に結合することから、ベドリズマブはα4β7アンタゴニストであり、腸管ホーミング記憶Tリンパ球のサブセットが内皮細胞上に発現する粘膜アドレシン細胞接着分子-1(MAdCAM-1)と相互作用するのを遮断する。
【0046】
抗薬物抗体の有無、性別、身体の大きさ、免疫抑制剤の同時使用、疾患の種類、アルブミン濃度及び全身性炎症の程度などのいくつかの要因が、抗体のクリアランスの促進に関与する。さらに、薬物投与量とは異なって、薬物トラフ濃度の上昇が有効性の向上に関与しているように、有効性と曝露の一貫した関係がこれらの薬剤の多くに認められている。薬物クリアランスの相違は、この観察結果を説明する重要な要因となり得る。例えば、がん患者は、腫瘍の免疫抑制治療及び感染症の治療を受ける。したがって、移植患者の治療用抗体に対するクリアランスの決定要因を理解することは、投薬計画の最適化をもたらし得る。
【0047】
以前の試験では、ベドリズマブの単回投与による薬物動態、薬力学(α4β7受容体飽和)、安全性、及び忍容性について、健康なボランティアに対して0.2~10mg/kgの1回投与量の範囲で調査した(静脈内[IV]注入)(未公開データ)。ベドリツズマブの血清濃度はピーク濃度に達した後、濃度が約1~10ng/mLに達するまで概ね双指数関数的に低下した。その後、濃度は非線形的に低下するように見えた。ベドリズマブの反復投与による薬物動態及び薬力学について、CD患者に対して0.5及び2mg/kgのIV注入後、及びUC患者に対して2、6及び10mg/kgの注入後に調査した。ベドリズマブの薬物動態は、UC患者に対して2~10mg/kgの投与量の範囲でIV注入した後、概ね線形であった。ベドリズマブの初回投与後における反復投与後に、α4β7受容体飽和が迅速かつほぼ完全に達成された。
【0048】
ベドリズマブの導入及び維持療法の有効性及び安全性は、GEMINI2(ClinicalTrials.gov番号、NCT00783692)及びGEMINI3(ClinicalTrials.gov番号、NCT01224171)試験のCD患者において示された。導入及び維持療法に関するCD患者のベドリズマブに対する曝露-反応(有効性)関係は、他の場所に示されている。
【0049】
TNFアンタゴニストはアダリムマブであってもよい。アダリムマブは、ヒトTNF-αに特異的な組換えヒトIgG1モノクローナル抗体である。アダリムマブはTNF-αに特異的に結合し、p55及びp75細胞表面のTNF-α受容体との相互作用を遮断する。同様にアダリムマブは、in vitroの補体存在下で表面TNF-α発現細胞を溶解する。アダリムマブは、リンホトキシン(TNF-β)に結合しないかまたはこれを不活性化しない。TNF-αは、正常な炎症反応及び免疫反応に関与する天然に存在するサイトカインである。TNF-αは、炎症性疾患の特徴である病的炎症及び関節破壊の両方において重要な役割を果たす。アダリムマブは同様に、白血球遊走に関与する接着分子の濃度変化など、TNF-αにより誘導または調節される生物学的反応を調整する。
【0050】
アダリムマブは、従来の治療法に対する反応が不十分な患者における中等度から重度の活動性CDの治療に関して世界的に承認されている。さらに、アダリムマブは、インフリキシマブに対する反応が消失した場合、またはインフリキシマブに不耐容である場合に、これらの患者の徴候及び症状を軽減し、臨床的寛解を誘導することに関して承認されている。
【0051】
アダリムマブ40mgを週1回または隔週で投与した場合、アダリムマブの導入療法に反応したCD患者において臨床的寛解の維持に有効であることが示されている。アダリムマブは、CD患者においてコルチコステロイドのスペアリング効果を有することも示されている(Behm BW BS.Cochrane Database of Systematic Reviews 2008(1))。
【0052】
免疫調節剤は、代謝拮抗剤であり得る。メトトレキサートは、特定の腫瘍性疾患、重度の乾癬及び成人関節リウマチの治療に関して承認された代謝拮抗剤である。メトトレキサートは元来抗悪性腫瘍剤として開発されたもので、テトラヒドロ葉酸の産生における反応を触媒する酵素、ジヒドロ葉酸還元酵素の阻害剤である。この経路は、デオキシリボ核酸(DNA)のプリン及びピリミジン成分の合成に必須であり、したがって薬物は細胞分裂を遅延させる。自己免疫疾患の治療における低用量メトトレキサートの作用機序は十分に理解されていないが、免疫抑制作用及び抗炎症作用の両方を裏付けるエビデンスが確認されている。
【0053】
三剤併用療法を用いた炎症性腸疾患の治療
本発明は、三剤併用療法を用いて患者の炎症性腸疾患(例えば、クローン病(CD)または潰瘍性大腸炎)を治療する方法に関する。ヒト患者は、成人(例えば18歳以上)、青年または子供であり得る。三剤併用療法は、特にCDの合併症リスクがより高い患者を対象に、異なる作用機序を有する薬物を包含することによって、寛解率を改善し、疾患の進行を改変し得る。インフリキシマブまたはアダリムマブを用いた治療に反応する患者においては、MAdCAMの減少及びα4β7陽性細胞の増加が示されている(Biancheri P,et al.Inflamm Bowel Dis 2013;19(2):259-64)。したがって、患者のベドリズマブ経路は活性化されており、治療計画にベドリズマブを追加することは、臨床的に意義のある相乗作用を提供し得る。
【0054】
一実施形態では、本発明の三剤併用療法は、炎症性腸疾患から合併症を発症するリスクが高い患者を治療するために使用される。例えば、CDまたは侵攻性CDから合併症を発症するリスクが高い患者には、上部GI管及び回腸の病変、浸潤性疾患、若年齢での診断、喫煙、粘膜の広範な潰瘍化、血清抗体の高力価、診断時のコルチコステロイドの使用ならびにNOD2遺伝子の変異を有する患者が挙げられ得る。CDの合併症を発症するリスクが高い患者は、PROSPECTアルゴリズムまたはAGA基準に関して上記のように定義され得る。高リスクのCD患者として判定された患者は、三剤併用療法の対象になり得る。三剤併用療法の対象となる患者は、限局性回腸疾患の場合、クローン病簡易内視鏡スコア(SES-CD)≧7または≧4であり得る。三剤併用療法の対象となる患者は、クローン病活動指数(CDAI)≧220と判定された場合、活動性疾患を有し得る。CDAIスコアでは、水様または泥状便の回数、腹痛の重症度、総合的な健康状態、例えば関節炎、虹彩炎、紅斑、瘻孔もしくは膿瘍または発熱などの疾患の腸外の症状、患者の下痢止め薬の使用有無、腹部腫瘤、ヘマトクリット値及び体重などの要因を考慮する。
【0055】
抗インテグリン
抗α4β7抗体などの抗インテグリンは、α4β7インテグリンがそのリガンドに結合するのを阻害する有効量で投与される。治療に関して、有効量は所望の作用(例えば内視鏡的寛解の誘導、粘膜治癒の誘導、臨床的寛解の達成、バイオマーカーによる寛解の達成)の達成に十分である。抗α4β7抗体などのα4β7アンタゴニストは、単回投与または反復投与で投与され得る。用量は、当技術分野で公知の方法により決定される可能性があり、例えば、個体の年齢、感受性、忍容性及び全体的な健康状態に依存し得る。投与方法の例としては、例えば経鼻もしくは吸入または経皮投与などの局所経路、例えば栄養管または坐剤などを介した経腸経路、及び例えば静脈内、筋肉内、皮下、動脈内、腹腔内または硝子体内投与などの非経口経路が挙げられる。抗体の適切な用量は、1回の治療につき約0.1mg/kg体重~約10.0mg/kg体重、例えば約2mg/kg~約7mg/kg、約3mg/kg~約6mg/kgまたは約3.5~約5mg/kgであり得る。特定の実施形態では、投与される投与量は、約0.3mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kgまたは約10mg/kgである。一部の実施形態では、ベドリズマブは、50mg、75mg、100mg、300mg、450mg、500mgまたは600mgの1回投与量で投与される。一部の実施形態では、ベドリズマブは、108mg、90~120mg、216mg、160mg、165mg、155~180mg、170mgまたは180mgの1回投与量で投与される。一部の実施形態では、ベドリズマブなどの抗α4β7抗体は、投与を行うため滅菌水などの液体で再構成され得る乾燥した凍結乾燥製剤として提供される。再構成された製剤の投与は、上記の経路の1つである非経口注射によるものであり得る。静脈注射は、滅菌生理食塩水、緩衝液、例えばリン酸緩衝生理食塩水またはリンゲル(乳酸加もしくはブドウ糖加)溶液を用いてさらに希釈するなどの注入によるものであり得る。一部の実施形態では、抗α4β7抗体は、治療開始後の約2、3もしくは4週毎または3回目の後続投与後に、例えば約108mgまたは約165mgまたは約216mgの1回投与量が皮下注射により投与される。
【0056】
抗α4β7抗体である抗インテグリンは、α4鎖上のエピトープ(例えばヒト化MAb21.6(Bendig et al.、米国特許第5,840,299号)、β7鎖上のエピトープ(例えばFIB504もしくはヒト化誘導体(例えばFong et al.、米国特許第7,528,236号))またはα4鎖とβ7鎖の会合により形成されるコンビナトリアルエピトープに結合し得る。AMG-181またはUS2010/0254975号に記載の他の抗体は、抗α4β7抗体である。一態様では、抗体は、α4β7複合体上のコンビナトリアルエピトープに結合するが、鎖が相互に会合していない限り、α4鎖またはβ7鎖上のエピトープに結合しない。インテグリンα4とインテグリンβ7の会合は、例えば、共にエピトープを含む両鎖上にある近接残基に接近させるか、または1つの鎖、例えば適切なインテグリンパートナーの非存在下またはインテグリン活性化の非存在下では抗体結合が不可能なエピトープ結合部位であるインテグリンα4鎖またはインテグリンβ7鎖に対して立体構造的に曝露することによりコンビナトリアルエピトープを生成し得る。別の態様では、抗α4β7抗体はインテグリンα4鎖及びインテグリンβ7鎖の両方に結合し、したがってα4β7インテグリン複合体に特異的である。このような抗体は、例えば、α4β7に結合するがα4β1に結合しない、及び/またはαEβ7に結合しない可能性がある。別の態様では、抗α4β7抗体は、Act-1抗体と同一または実質的に同一のエピトープに結合する(Lazarovits,A.I.et al.,J.Immunol.,133(4):1857-1862(1984)、Schweighoffer et al.,J.Immunol.,151(2):717-729,1993、Bednarczyk et al.,J.Biol.Chem.,269(11):8348-8354,1994)。マウスAct-1モノクローナル抗体を産生するマウスACT-1ハイブリドーマ細胞株は、Millennium Pharmaceuticals,Inc.,40 Landsdowne Street,Cambridge,Mass.02139,U.S.A.の代理として2001年8月22日にブダペスト条約の規定によりAmerican Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,Va.20110-2209,U.S.A.にアクセッション番号PTA-3663として寄託された。別の態様では、抗α4β7抗体は、米国特許出願公開第2010/0254975号に提供されるCDRを使用したヒト抗体またはα4β7結合タンパク質である。
【0057】
一態様では、抗インテグリンは、抗MAdCAM抗体(例えば米国特許第8,277,808号、PF-00547659またはWO2005/067620に記載の抗体を参照のこと)、または、米国特許第7,803,904号などに記載されているMAdCAM-Fcキメラなどのリガンドが遺伝子改変された形態である。
【0058】
一態様では、抗インテグリンは、1つ以上のそのリガンド(例えば粘膜アドレシン、例えばMAdCAM(例えばMAdCAM-1)、フィブロネクチン及び/または血管アドレシン(VCAM))に対するα4β7の結合を阻害する。霊長類のMAdCAMは、PCT公報WO96/24673に記載されており、本参照によりその全教示が本明細書に組み込まれる。別の態様では、抗インテグリンは、VCAMの結合を阻害することなく、MAdCAM(例えばMAdCAM-1)及び/またはフィブロネクチンへのα4β7の結合を阻害する。
【0059】
一態様では、抗インテグリン、例えば抗α4β7抗体は、例えばマウスAct-1抗体の相補性決定領域を含む結合特異性を有する。例えば、抗α4β7抗体は、マウスAct-1抗体の3つの重鎖相補性決定領域(CDR、CDR1、配列番号4、CDR2、配列番号5及びCDR3、配列番号6)を含有する重鎖ならびに適切なヒト重鎖のフレームワーク領域を含み、また同様に、マウスAct-1抗体の3つの軽鎖CDR(CDR1、配列番号7、CDR2、配列番号8及びCDR3、配列番号9)を含有する軽鎖ならびに適切なヒト軽鎖のフレームワーク領域を含む。一部の実施形態では、抗α4β7抗体はIgG1アイソタイプである。
【0060】
一態様では、治療に使用する抗インテグリンは、マウスAct-1抗体のヒト化型である。ヒト化抗体を調製する適切な方法は、当技術分野で周知である。一般に、ヒト化抗α4β7抗体は、マウスAct-1抗体の3つの重鎖相補性決定領域(CDR、CDR1、配列番号4、CDR2、配列番号5及びCDR3、配列番号6)を含有する重鎖ならびに適切なヒト重鎖のフレームワーク領域を含有し、また同様に、マウスAct-1抗体の3つの軽鎖CDR(CDR1、配列番号7、CDR2、配列番号8及びCDR3、配列番号9)を含有する軽鎖ならびに適切なヒト軽鎖のフレームワーク領域を含有する。ヒト化Act-1抗体は、アミノ酸置換の有無にかかわらず、コンセンサスフレームワーク領域などの任意の適切なヒトフレームワーク領域を含有し得る。例えば、1つ以上のフレームワークのアミノ酸は、例えばマウスAct-1抗体の対応する位置にあるアミノ酸などの別のアミノ酸と置換され得る。ヒト定常領域またはその一部は、存在する場合、κまたはλ軽鎖、及び/またはアレリックバリアントを包含するヒト抗体のγ(例えばγ1、γ2、γ3、γ4)、μ、α(例えばα1、α2)、δまたはε重鎖に由来し得る。エフェクター機能を調整するため、特定の定常領域(例えばIgG1)、そのバリアントまたはその一部が選択され得る。例えば、Fc受容体への結合及び/または補体を固定する機能を最小にするため、変異した定常領域(バリアント)は融合タンパク質に組み込まれ得る(例えばWinter et al.,GB2,209,757 B;Morrison et al.,WO89/07142;Morgan et al.,WO94/29351,Dec.22,1994を参照のこと)。Act-1抗体のヒト化型は、PCT公開番号WO98/06248及びWO07/61679に記載されており、その各々の全教示は本参照により本明細書に組み込まれる。抗α4β7インテグリン抗体を用いた治療法は、米国特許出願公開第2005/0095238号、第2005/0095238号、WO2012/151248及びWO2012/151247に記載されている。
【0061】
一態様では、抗インテグリンは抗α4β7抗体、ベドリズマブである。ベドリズマブIV(別名MLN0002、ENTYVIO(商標)またはKYNTELES(商標))は、ヒトリンパ球のインテグリンα4β7に対するヒト化抗体(Ig)G1 mAbである。α4β7インテグリンは、腸間膜リンパ節の内皮及びGI粘膜に発現する粘膜アドレシン細胞接着分子-1(MAdCAM-1)との接着相互作用を介してGI粘膜、腸管関連リンパ組織(GALT)及び腸間膜リンパ節へのリンパ球輸送を媒介する。ベドリズマブはα4β7インテグリンに結合し、MAdCAM-1への接着に拮抗し、そのようなものとしてナイーブT細胞のGALT及び腸間膜リンパ節への移動ならびに腸管ホーミング白血球のGI粘膜への移動を妨げる。
【0062】
別の態様では、抗インテグリンは、治療に使用するヒト化抗α4β7抗体であり、配列番号1のアミノ酸20~140を含む重鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸20~131または配列番号3のアミノ酸1~112を含む軽鎖可変領域を含む。所望により、適切なヒト定常領域(複数可)が存在し得る。例えば、ヒト化抗α4β7抗体は、配列番号1のアミノ酸20~470を含む重鎖及び配列番号3のアミノ酸1~219を含む軽鎖を含み得る。別の例では、ヒト化抗α4β7抗体は、配列番号1のアミノ酸20~470を含む重鎖及び配列番号2のアミノ酸20~238を含む軽鎖を含み得る。ベドリズマブは、Chemical Abstract Service(CAS,American Chemical Society)の下で登録番号943609-66-3としてカタログに掲載されている。
【0063】
ヒト化抗α4β7抗体の配列に対する置換は、例えば、重鎖及び軽鎖フレームワーク領域に対する変異であり得る。例えば、配列番号10の残基2のイソロイシンからバリンへの変異、配列番号10の残基4のメチオニンからバリンへの変異、配列番号11の残基24のアラニンからグリシンへの変異、配列番号11の残基38のアルギニンからリジンへの変異、配列番号11の残基40のアラニンからアルギニンへの変異、配列番号11の残基48のメチオニンからイソロイシンへの変異、配列番号11の残基69のイソロイシンからロイシンへの変異、配列番号11の残基71のアルギニンからバリンへの変異、配列番号11の残基73のスレオニンからイソロイシンへの変異、またはその任意の組合せ、ならびにマウスAct-1抗体の重鎖CDR(CDR1、配列番号4、CDR2、配列番号5及びCDR3、配列番号6)を有する重鎖CDRの置換、及びマウスAct-1抗体の軽鎖CDR(CDR1、配列番号7、CDR2、配列番号8及びCDR3、配列番号9)を有する軽鎖CDRの置換が挙げられる。
【0064】
投与量は、約20分、約25分、約30分、約35分または約40分かけて患者に投与され得る。一部の実施形態では、投与量は最大で2時間かけて患者に投与され得る。
【0065】
TNFアンタゴニスト
本発明は、炎症性腸疾患の治療を目的とするTNFアンタゴニストの投与を包含する三剤併用療法を特徴とする。TNFアンタゴニストは、TNF-αとの結合を阻害し、p55及びp75細胞表面TNF-α受容体との相互作用を遮断する有効量で投与される。適切なTNFアンタゴニストとしては、例えば、アダリムマブ、インフリキシマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、セルトリズマブペゴル、そのバイオシミラー及びその等価物が挙げられる。治療に関して、有効量は所望の作用(例えば内視鏡的寛解の誘導、粘膜治癒の誘導、臨床的寛解の達成、バイオマーカーによる寛解の達成)の達成に十分である。抗TNF-α抗体(例えばアダリムマブ)などのTNFアンタゴニストは、単回投与または反復投与により投与され得る。用量は、当技術分野で公知の方法により決定される可能性があり、例えば、個体の年齢、感受性、忍容性及び全体的な健康状態に依存し得る。投与方法の例としては、例えば経鼻もしくは吸入または経皮投与などの局所経路、例えば栄養管または坐剤などを介した経腸経路、及び例えば静脈内、筋肉内、皮下、動脈内、腹腔内または硝子体内投与などの非経口経路が挙げられる。抗体の適切な用量は、1回の治療につき約0.1mg/kg体重~約10.0mg/kg体重、例えば約1mg/kg~約8mg/kg、約2mg/kg~約7mg/kg、約3mg/kg~約6mg/kgまたは約3.5~約5mg/kgであり得る。特定の実施形態では、投与される投与量は、約0.3mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kgまたは約10mg/kgである。一部の実施形態では、TNFアンタゴニストは、40mg、50mg、75mg、80mg、100mg、150mg、160mg、175mg、200mg、300mg、400mg、450mg、500mgまたは600mgの1回投与量で投与される。一部の実施形態では、TNFアンタゴニストは、40mg、80mg、160mg、80~200mg、170mg、165mg、155mg、150~180mg、140mgまたは130mgの1回投与量で投与される。
【0066】
一実施形態では、本発明の三剤併用療法は、炎症性腸疾患の治療を目的とするアダリムマブの使用法を包含する。アダリムマブは、例えばクローン病または潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患患者に投与され得る。一実施形態では、アダリムマブを0週に160mgの初回投与量で、続いて2週に80mgの2回目の投与量で、その後4週及びその後2週毎に40mgの投与量で、クローン病または潰瘍性大腸炎に罹患している対象に皮下投与する。一実施形態では、三剤併用療法は、患者の治療開始から26週にアダリムマブの投与を中止することを含む。
【0067】
一実施形態では、本発明の三剤併用療法は、例えばクローン病または潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の治療を目的とするインフリキシマブの使用法を包含する。一実施形態では、インフリキシマブは、0、2及び6週に5mg/kgの1回投与量で、その後8週毎に、クローン病または潰瘍性大腸炎に罹患している対象に静脈内投与される。一実施形態では、三剤併用療法は、患者の治療開始から26週にインフリキシマブの投与を中止することを含む。
【0068】
一実施形態では、本発明の三剤併用療法は、例えばクローン病または潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の治療を目的とするゴリムマブの使用法を包含する。一実施形態では、ゴリムマブは、クローン病または潰瘍性大腸炎に罹患している対象に、0週に200mgの1回投与量、続いて2週に100mgの投与量、その後4週毎に100mgの投与量で皮下投与される。一実施形態では、三剤併用療法は、患者の治療開始から26週にゴリムマブの投与を中止することを含む。
【0069】
一実施形態では、本発明の三剤併用療法には、例えばクローン病または潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の治療を目的とするセルトリズマブペゴルの使用法が包含される。一実施形態では、セルトリズマブペゴルは、クローン病または潰瘍性大腸炎に罹患している対象に、0週に400mgの投与量で、続いて2及び4週に400mgの投与量で皮下投与される。反応が生じた場合、その後4週毎に400mgのセルトリズマブペゴルを投与する。一実施形態では、三剤併用療法は、患者の治療開始から26週にセルトリズマブペゴルの投与を中止することを含む。
【0070】
免疫調節剤
免疫調節剤は、免疫原性を抑制する有効量により投与される。適切な免疫調節剤の例としては、フルオロウラシル、クラドリビン、カペシタビン、メトトレキサート、ペメトレキセド、メルカプトプリン、ヒドロキシウレア、ゲムシタビン、フルダラビン、プララトレキサート、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン、ネララビン、及びチオグアニンが挙げられる。一実施形態では、免疫調節剤はメトトレキサートである。治療に関して、有効量は所望の作用(例えば内視鏡的寛解の誘導、粘膜治癒の誘導、臨床的寛解の達成、バイオマーカーによる寛解の達成)の達成に十分である。代謝拮抗剤(例えばメトトレキサート)などの免疫調節剤は、単回投与または反復投与により投与され得る。用量は、当技術分野で公知の方法により決定される可能性があり、例えば、個体の年齢、感受性、忍容性及び全体的な健康状態に依存し得る。投与方法の例としては、経口投与、例えば経鼻もしくは吸入または経皮投与などの局所経路、例えば栄養管または坐剤などを介した経腸経路、及び例えば静脈内、筋肉内、皮下、動脈内、腹腔内または硝子体内投与などの非経口経路が挙げられる。免疫調節剤の適切な用量は、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mgまたは45mgの1回投与量であり得る。一部の実施形態では、メトトレキサートは、10mg、15mg、20mg、10~30mg、25mg、30mgまたは45mgの1回投与量で投与される。
【0071】
免疫調節剤、例えばメトトレキサートの投与量は、1日1回、週に1回または月に1回患者に投与され得る。一部の実施形態では、その投与量は、最大34週まで週に1回患者に経口投与され得る。
【0072】
例えば抗インテグリン/TNFアンタゴニスト/免疫調節剤などの三剤併用療法は、個体(例えばヒト)に順次に、並行してまたは同時に投与され得る。三剤併用療法は、単一投与経路、2つの異なる投与経路、または3つの異なる投与経路により個体に投与され得る。
【0073】
一実施形態では、投与計画は、300mgの抗インテグリンの0、2、6週及びその後8週毎の静脈内注入、160mgのTNFアンタゴニスト、例えばアダリムマブの0週の皮下注射による投与、80mgのTNFアンタゴニスト、例えばアダリムマブの2週の投与及び40mgのTNFアンタゴニスト、例えばアダリムマブのその後2週毎の投与、ならびに15mgの免疫調節剤、例えばメトトレキサートの週1回の経口投与を含む。
【0074】
一実施形態では、本方法は三剤併用療法の有効量を患者に投与することを含む。三剤併用療法、または三剤併用療法のいずれかの成分が、固体、例えば乾燥状の製剤中にある場合、投与過程は製剤を液状に変換するステップを含み得る。一態様では、乾燥製剤は、例えば静脈内、筋肉内または皮下注射による注射で使用するために、例えば上述のような液体により再構成され得る。別の態様では、固体または乾燥製剤は局所的に、例えばパッチ、クリーム、エアロゾルまたは坐剤により投与され得る。
【0075】
一実施形態では、本発明は三剤併用療法を用いて高リスクのCD患者を治療する方法を提供する。本方法は、高リスクのCD患者に抗インテグリンを300mgの初回投与量で投与し、初回投与の2週後に抗インテグリンを300mgの後続投与量で投与し、初回投与の6週後に抗インテグリンを300mgの2回目の後続投与量で投与し、その後8週毎に300mgの後続投与量で投与し、TNFアンタゴニストを160mgの初回投与量で投与し、続いてTNFアンタゴニストを初回投与の2週後に80mgの後続投与量で投与し、その後2週毎にTNFアンタゴニスト40mgを後続投与し、メトトレキサートを15mgの投与量で0週に投与開始した後、週1回投与するステップを含む。
【0076】
本発明は、例えばCDまたはUCなどの炎症性腸疾患に関連する合併症のリスクが高い患者において、例えばCDまたはUCなどの炎症性腸疾患を治療する際に使用する三剤併用療法を提供し、本使用法は、抗インテグリンの初回投与量による投与、初回投与の2週後及び初回投与の6週後ならびにその後8週毎の合計102週の投与、TNFアンタゴニストの初回投与量による投与、初回投与の2週後に初回投与の半量及びその後2週毎に初回投与の4分の1量による合計26週の投与、免疫調節剤の週1回投与による34週の投与を含む。一部の実施形態では、抗インテグリンはベドリズマブである。一部の実施形態では、TNFアンタゴニストはアダリムマブである。一部の実施形態では、免疫調節剤はメトトレキサートである。一部の実施形態では、三剤併用療法には、ベドリズマブ、アダリムマブ及びメトトレキサートの投与が包含される。一部の実施形態では、三剤併用療法には、ベドリズマブ、TNFアンタゴニスト及びメトトレキサートが包含される。一部の実施形態では、三剤併用療法には、ベドリズマブ、TNFアンタゴニスト及び免疫調節剤が包含される。一部の実施形態では、三剤併用療法には、抗α4β7抗体、TNFアンタゴニスト及びメトトレキサートが包含される。
【0077】
一実施形態では、投与計画は、300mgのベドリズマブを0、2、6週及びその後8週毎に静脈内注入により投与し、0週に160mgのアダリムマブを皮下注射により投与し、2週目に80mgのアダリムマブを投与し、その後2週毎に40mgのアダリムマブを投与し、毎週15mgのメトトレキサートを経口投与することを含む。
【0078】
一部の実施形態では、IBD、例えばCDは、26週後に、例えば過去に2週の間隔をあけて2回来院した後のCDAIの増加>70及び大腸内視鏡検査により認められる疾患活動及び正常値を超えるCRP値(>5mg/L)、または糞便中のカルプロテクチン>250μg/gにより定義されるような増悪を有する。IBDの増悪における実施形態では、300mgのベドリズマブが4週毎に投与され得る。
【0079】
三剤併用療法は、例えば三剤併用療法を開始した約1~3週後または約2週後に開始する、コルチコステロイドを徐々に減量する投与計画などをさらに含み得る。一部の実施形態では、高リスクのIBD患者は、プレドニゾンを例えば10~20mg/日、20~40mg/日、25~35mg/日もしくは約30mg/日、またはブデソニドを例えば2~12mg/日、3~10mg/日もしくは約9mg/日など、診断時またはベースライン時においてコルチコステロイドによる前治療を受けている可能性がある。プレドニゾンの場合、投与量を5mg/日に達するまで5mg/週の割合で減量し、その後投与を中止するまでプレドニゾンの投与量を2.5mg/週の割合で減量し得る。ブデソニドの場合、投与量を2週毎に3mgの割合で投与を中止するまで減量する。
【0080】
一部の実施形態では、高リスク患者の三剤併用療法は、炎症性腸疾患の内視鏡的寛解をもたらす。本明細書で使用される「内視鏡的寛解」は、内視鏡的スコアが低い状態を指す。潰瘍性大腸炎の内視鏡スコアを評価する方法の一例は、軟性S状結腸鏡検査である。潰瘍性大腸炎における内視鏡スコアは、Mayoサブスコアであり得る。クローン病の内視鏡スコアを評価する方法の一例は、大腸内視鏡検査である。クローン病の内視鏡スコアは、クローン病簡易内視鏡スコア(SES-CD)であり得る。SES-CDは、例えば潰瘍の大きさ、形成された潰瘍表面の量、罹患した表面の量ならびに消化管の狭窄の有無及び程度などの測定を包含し得る。
【0081】
一実施形態では、高リスクのクローン病の三剤併用療法患者は、治療開始から26週、または22~30週もしくは24~28週のSES-CDスコアが0~2であることにより定義される内視鏡的寛解を達成する。他の実施形態では、本発明の三剤併用療法は、SES-CD≦4及びSES-CDのベースラインから少なくとも2ポイントの減少ならびに26週の個々のSES-CDサブスコア>1が存在しないこと、26週のSES-CDのベースラインから50%の減少、26週の深い寛解(CDAI<150及びSES-CD 0~2により定義される)、26週の粘膜治癒(SES-CDのベースラインから50%の減少により定義される)の測定時における臨床的寛解(CDAI<150により定義される)及び内視鏡的反応、10週及び26週の臨床的寛解(CDAIスコア<150)、10週及び26週の臨床的反応(CDAIスコアにおいて≧100ポイントの減少により定義される)、26週、52週、78週及び102週の臨床的寛解(CDAI<150により定義される)ならびにC反応性タンパク(CRP)<5mg/L(ベースライン時にCRPが高い対象において)、10、26及び102週のベースライン時コルチコステロイドの使用中止及び臨床的寛解(CDAIスコア<150)からなる群から選択される反応または寛解の程度をもたらす。
【0082】
一部の実施形態では、高リスクのクローン病の三剤併用療法患者は、長期的利益が得られる。一実施形態では、本発明の三剤併用療法は、52、78及び102週に臨床的寛解(CDAI<150により定義される)の維持をもたらす。別の実施形態では、本発明の三剤併用療法は、102週にSES-CD 0~2により定義される内視鏡的寛解の維持をもたらす。別の実施形態では、本発明の三剤併用療法は、102週に深い寛解(CDAI<150及びSES-CD 0~2により定義される)の維持をもたらす。他の実施形態では、本発明の三剤併用療法は、102週のSES-CD≦4及びSES-CDのベースラインから少なくとも2ポイントの減少ならびに個々のSES-CDサブスコア>1が存在しないことにより定義された内視鏡的治癒の維持、102週のSES-CDのベースラインから50%の減少により定義される内視鏡的反応の維持、102週の臨床的寛解(CDAI<150により定義される)及び粘膜治癒の測定による内視鏡的反応(SES-CDのベースラインから50%の減少により定義される)の維持、26週に<5mg/Lにより定義されたCRPの正常化の達成(ベースライン時に高い値である対象について)、患者が報告したアウトカム2(PRO-2)スコア≦75(CDAIスコアのサブセット、ならびに水様または泥状便(2を乗じる)及び腹痛の重症度((0~3のスケール)に5を乗じる)に対する過去7日間の平均値の組み合わせから得た値)の達成、ならびに26及び102週のSES-CD≦4、及びSES-CDのベースラインから少なくとも2ポイントの減少、及び個々のSES-CDサブスコア>1が存在しないことからなる群から選択される長期的利益の程度をもたらす。
【0083】
高リスクのクローン病患者
一実施形態では、本明細書に開示される三剤併用療法は、診断後に合併症を発症するリスクが高いクローン病患者の部分集団を治療するために使用される。このような高リスクの患者は、例えばPROSPECT予測法などの当技術分野で公知の予測法を用いて判定され得る。Siegel et al.(2016)Aliment Pharmacol Ther 43:262-271に記載のPROSPECT予測試験は、患者の臨床的、血清学的及び遺伝的変数に基づいており、CD患者が診断から2年までに疾患合併症を有する可能性を評価するために使用される。高リスクのCD患者は、例えば、PROSPECT予測法により評価されるように、2年までに少なくとも20%のそのような合併症の可能性がある患者である。
【0084】
高リスクの潰瘍性大腸炎疾患患者
一実施形態では、本明細書に開示される三剤併用療法は、診断後に合併症を発症するリスクが高いUC疾患患者の部分集団を治療するために使用される。このような高リスクのUC患者は、結腸切除のリスクが高いことが理解されている。高リスクのUC患者は、ステロイド療法による寛解を維持できないことによっても判定され得る。
【0085】
本発明は、次の実施例を参照することでより十分に理解される。しかし、それらは本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。すべての文献及び特許の引用は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0086】
実施例1
侵攻性疾患による合併症のリスクが高いCDと新たに診断された患者における第4相オープンラベル多施設試験は、3剤併用療法(300mgのベドリズマブIV、160/80/40mgのアダリムマブSC及び15mgのメトトレキサート)の安全性、忍容性及び臨床活性を評価するために設計される。臨床的、血清学的及び遺伝的変数を組み込んだ予測ツールを使用して、どの対象が合併症を発症するリスクが高いかを層別化する。本試験は、内視鏡的寛解及び粘膜治癒の誘導を目的として26週の治療期間にわたって実行され、続いて寛解を76週維持するためのベドリズマブIV単独療法の有効性及び安全性について、合計102週の治療期間にわたって実行される。
【0087】
患者は、過去18ヶ月以内にCDと診断され、生物製剤が未投与である場合に試験の対象となる。すべての適格基準を満たし、書面によるインフォームドコンセントを提供している患者を本試験に登録する。
【0088】
患者は、CDのPROSPECT予測ツールによって推定されたCD合併症のリスクが低く、スクリーニング中に活動性感染症の任意のエビデンスを有し、日和見病原体に起因する任意の細菌性、ウイルス性及び他の感染による既往を有し、TNFアンタゴニストの生物学的治療、またはベドリズマブ、ナタリズマブ、エファリズマブもしくはリツキシマブに対して過去に任意の曝露を受けており、過去に任意のCD関連手術を受けているかまたは手術が必要なCD合併症を有し、結核、リンパ腫、リンパ増殖性疾患、うっ血性心不全または不安定狭心症の既往を有する場合は試験から除外される。メトトレキサートもしくはアダリムマブの使用に矛盾するまたはメトトレキサートもしくはアダリムマブに対する不耐性を示す病歴を有する患者も同様に除外される。
【0089】
本試験は、4週のスクリーニング期間、26週の併用療法期間、76週の追加のベドリズマブIV単独治療期間及び最終投与に続く26週の追跡期間からなる(最終の有効性評価は120週)。スクリーニングから120週の最終の有効性評価を行うまでの期間は約124週である。すべての対象は、最終投与から18週後及び26週後に電話連絡による安全性追跡調査に参加し、合計128週の追跡が行われる。早期に中止した対象も同様に、最終投与から18及び26週後に電話連絡による安全性追跡調査に参加する。主要評価項目は、患者における26週の内視鏡的寛解(クローン病簡易内視鏡スコア(SES-CD)0~2により定義される)の達成である。SES-CDでは、4つの内視鏡的変数(潰瘍の大きさ、潰瘍のある表面の割合、罹患した表面の割合、狭窄)を、スコアの高さが疾患重症度の大きさを示す0から3のスケールにおいて各変数をスコア化することにより、5つの結腸セグメント(回腸、右結腸、横行結腸、左結腸及び直腸)について評価する。各内視鏡的変数のスコアは、各セグメントで得た値の合計である。SES-CDの合計は、0~56の4つの内視鏡的変数スコアの合計である。
【0090】
三剤併用療法の安全性及び忍容性を評価するため、バイタルサイン、身体的及び神経学的検査、有害事象(AE)評価ならびに臨床検査値(化学、血液学及び尿検査)を取得する。進行性多巣性白質脳症(PML)患者を除外するため、スクリーニング時及び各来院時の投与前にPML(RAMP)のリスク評価及び最小化のアンケートを実施することにより、PMLを示唆する症状を評価する。
【0091】
配列表
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
本発明は次の実施態様を含む。
[1]
クローン病(CD)患者を治療する方法であって、前記方法が
高リスクのCD患者として判定されたヒト患者に、ヒト化抗α4β7抗体、アダリムマブ及び免疫調節剤を含む三剤併用療法を実施するステップを含み、
ここで前記三剤併用療法は、以下の投与計画として
a.ヒト化抗α4β7抗体300mgを初回投与量として静脈内注入し、続いて前記初回投与の約2週後にヒト化抗α4β7抗体300mgを2回目の後続投与量として静脈内注入し、続いて、前記初回投与の約6週後に前記ヒト化抗α4β7抗体300mgを3回目の後続投与量として静脈内注入し、
b.アダリムマブ160mgを初回投与量として皮下注射し、続いてアダリムマブ80mgを2回目の後続投与量として皮下注射し、続いて前記初回投与の約4週後にアダリムマブ40mgを3回目の後続投与量として投与し、
c.免疫調節剤15mgを初回投与量として経口投与し、
ここで前記投与計画は内視鏡的寛解をもたらし、
さらにここで前記抗α4β7抗体は非ヒト由来の抗原結合領域及びヒト由来の抗体の少なくとも一部を含み、ここで前記ヒト化抗体が前記α4β7複合体に対する結合特異性を有し、ここで前記抗原結合領域はCDRとして、
軽鎖 CDR1 配列番号7
CDR2 配列番号8及び
CDR3 配列番号9ならびに
重鎖 CDR1 配列番号4
CDR2 配列番号5及び
CDR3 配列番号6
を含む、前記投与計画に従って前記患者に実施される前記方法。
[2]
前記ヒト化抗α4β7抗体が約30分間かけて前記患者に投与される、上記[1]に記載の方法。
[3]
前記ヒト化抗α4β7抗体が配列番号1のアミノ酸20~140の重鎖可変領域配列を有する、上記[1]または[2]に記載の方法。
[4]
前記ヒト化抗α4β7抗体が、配列番号2のアミノ酸20~131の軽鎖可変領域配列を有する、上記[1]から[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
前記ヒト化抗α4β7抗体が、配列番号1のアミノ酸20~470を含む重鎖及び配列番号2のアミノ酸20~238を含む軽鎖を有する、上記[1]から[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
前記抗α4β7抗体がベドリズマブである、上記[1]から[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
前記免疫調節剤がメトトレキサートである、上記[1]から[6]のいずれかに記載の方法。
[8]
前記高リスクのCD患者がさらにコルチコステロイドの1回投与量を投与される、上記[1]から[7]のいずれかに記載の方法。
[9]
前記コルチコステロイドがプレドニゾンまたはブデソニドである、上記[8]に記載の方法。
[10]
前記コルチコステロイドの1回投与量を、投与を中止するまで徐々に減量することをさらに含む、上記[8]または[9]に記載の方法。
[11]
前記3回目の後続投与の約4週後に、前記ヒト化抗α4β7抗体300mgを後続投与量として静脈内注入により投与することをさらに含む、上記[1]から[10]のいずれかに記載の方法。
[12]
前記3回目の後続投与の約8週後に、前記ヒト化抗α4β7抗体300mgを後続投与量として静脈内注入により投与することをさらに含む、上記[1]から[10]のいずれかに記載の方法。
[13]
その後約8週毎に、前記ヒト化抗α4β7抗体300mgを後続投与量として静脈内注入により投与することをさらに含む、上記[11]または[12]に記載の方法。
[14]
26週の治療後約4週毎に、前記ヒト化抗α4β7抗体300mgを後続投与量として静脈内注入により投与することをさらに含む、上記[1]から[13]のいずれかに記載の方法。
[15]
前記3回目の後続投与後の約2週または4週毎に、前記ヒト化抗α4β7抗体108mgを後続投与量として皮下注射により投与することをさらに含む、上記[1]から[10]のいずれかに記載の方法。
[16]
炎症性腸疾患患者を治療する方法であって、前記患者にベドリズマブ、アダリムマブ及びメトトレキサートを三剤併用療法により投与することを含み、前記三剤併用療法が
0、2及び6週にベドリズマブを300mgの1回投与量で投与し、その後8週毎に投与し、
0週にアダリムマブを160mgの投与量で皮下投与し、2週にアダリムマブを80mgの投与量で投与し、4週及びその後2週毎にアダリムマブを40mgの投与量で投与し、
メトトレキサートを投与することを含む前記方法。
[17]
アダリムマブが26週に投与を中止される、上記[16]に記載の方法。
[18]
炎症性腸疾患患者を治療する方法であって、前記患者にベドリズマブ、インフリキシマブ及びメトトレキサートを三重併用療法により投与することを含み、前記三剤併用療法が
0、2及び6週にベドリズマブを300mgの1回投与量で投与し、その後8週毎に投与し、
0、2及び6週にインフリキシマブを5mg/kgの1回投与量で、その後8週毎に静脈内投与し、
メトトレキサートを投与することを含む前記方法。
[19]
前記メトトレキサートが経口投与される、上記[16]から[18]のいずれかに記載の方法。
[20]
前記メトトレキサートが15mgの1回投与量で投与される、上記[19]に記載の方法。
[21]
前記メトトレキサートが34週に投与を中止される、上記[16]から[20]のいずれかに記載の方法。
[22]
前記炎症性腸疾患がクローン病である、上記[16]から[21]のいずれかに記載の方法。
[23]
前記クローン病が中等度から重度の活動性クローン病である、上記[22]に記載の方法。
[24]
前記患者が高リスクのクローン病患者である、上記[22]または[23]に記載の方法。
[25]
前記患者が前記三剤併用療法の実施前に高リスクのクローン病患者として選択される、上記[24]に記載の方法。
[26]
前記炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎である、上記[16]から[21]のいずれかに記載の方法。
[27]
前記潰瘍性大腸炎が中等度から重度の活動性潰瘍性大腸炎である、上記[26]に記載の方法。
[28]
炎症性腸疾患患者を治療する方法であって、前記患者にベドリズマブ、ゴリムマブ及びメトトレキサートを三剤併用療法により投与することを含み、前記三剤併用療法が
0、2及び6週にベドリズマブを300mgの1回投与量で投与し、その後8週毎に投与し、
0週に200mg、2週に100mg、その後4週毎に100mgの1回投与量でゴリムマブを皮下投与し、
メトトレキサートを投与することを含む前記方法。
[29]
前記メトトレキサートが経口投与される、上記[28]に記載の方法。
[30]
前記メトトレキサートが15mgの1回投与量で投与される、上記[28]に記載の方法。
[31]
前記メトトレキサートが34週に投与を中止される、上記[28]から[30]のいずれかに記載の方法。
[32]
前記炎症性腸疾患がクローン病である、上記[28]から[31]のいずれかに記載の方法。
[33]
前記クローン病が中等度から重度の活動性クローン病である、上記[32]に記載の方法。
[34]
前記患者が高リスクのクローン病患者である、上記[32]または[33]に記載の方法。
[35]
前記患者が前記三剤併用療法の実施前に高リスクのクローン病患者として選択される、上記[34]に記載の方法。
[36]
前記炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎である、上記[28]から[31]のいずれかに記載の方法。
[37]
前記潰瘍性大腸炎が、中等度から重度の活動性潰瘍性大腸炎である、上記[36]に記載の方法。
[38]
炎症性腸疾患患者を治療する方法であって、前記患者にベドリズマブ、セルトリズマブペゴル及びメトトレキサートを三剤併用療法により投与することを含み、前記三剤併用療法が
0、2及び6週にベドリズマブを300mgの1回投与量で投与し、その後8週毎に投与し、
0週に400mg、2及び4週に400mg、及び選択的にその後4週毎に400mgの1回投与量で、セルトリズマブを皮下投与し、
メトトレキサートを投与することを含む前記方法。
[39]
前記メトトレキサートが経口投与される、上記[38]に記載の方法。
[40]
前記メトトレキサートが15mgの1回投与量で投与される、上記[38]に記載の方法。
[41]
前記メトトレキサートが34週で投与を中止される、上記[38]から[40]のいずれかに記載の方法。
[42]
前記炎症性腸疾患がクローン病である、上記[38]から[41]のいずれかに記載の方法。
[43]
前記クローン病が中等度から重度の活動性クローン病である、上記[42]に記載の方法。
[44]
前記患者が高リスクのクローン病患者である、上記[42]または[43]に記載の方法。
[45]
前記患者が前記三剤併用療法の実施前に高リスクのクローン病患者として選択される、上記[44]に記載の方法。
[46]
前記炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎である、上記[38]から[41]のいずれかに記載の方法。
[47]
前記潰瘍性大腸炎が中等度から重度の活動性潰瘍性大腸炎である、上記[46]に記載の方法。
[48]
前記患者に投与されるコルチコステロイドの1回投与量が、投与を中止するまで徐々に減量される、上記[16]から[47]のいずれかに記載の方法。
[49]
炎症性腸疾患患者を治療する方法であって、前記患者にベドリズマブ、アダリムマブ及びメトトレキサートを三剤併用療法により投与することを含み、前記三剤併用療法が
0、2、6、14、22及び30週にベドリズマブを300mgの1回投与量で投与し、その後4週毎に投与し、
0週にアダリムマブを1回160mgの投与量で皮下投与し、2週にアダリムマブを1回80mgの投与量で投与し、4週及びその後2週毎にアダリムマブを1回40mgの投与量で投与し、
メトトレキサートを投与することを含む前記方法。
[50]
アダリムマブが26週に投与を中止される、上記[49]に記載の方法。
[51]
炎症性腸疾患患者を治療する方法であって、前記患者にベドリズマブ、インフリキシマブ及びメトトレキサートを三重併用療法により投与することを含み、前記三剤併用療法が
0、2、6、14、22及び30週にベドリズマブを300mgの1回投与量で投与し、その後4週毎に投与し、
0、2及び6週にインフリキシマブを5mg/kgの1回投与量で、その後8週毎に静脈内投与し、
メトトレキサートを投与することを含む前記方法。
[52]
前記メトトレキサートが経口投与される、上記[49]から[51]のいずれかに記載の方法。
[53]
前記メトトレキサートが15mgの1回投与量で投与される、上記[52]に記載の方法。
[54]
前記メトトレキサートが34週に投与を中止される、上記[49]から[53]のいずれかに記載の方法。
[55]
前記炎症性腸疾患がクローン病である、上記[49]から[54]のいずれかに記載の方法。
[56]
前記クローン病が中等度から重度の活動性クローン病である、上記[55]に記載の方法。
[57]
前記患者が高リスクのクローン病患者である、上記[55]または[56]に記載の方法。
[58]
前記患者が前記三剤併用療法の実施前に高リスクのクローン病患者として選択される、上記[57]に記載の方法。
[59]
前記患者に投与されるコルチコステロイドの1回投与量が、投与を中止するまで徐々に減量される、上記[49]から[58]のいずれかに記載の方法。
【配列表】