IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】抗GITR抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20221021BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221021BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221021BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221021BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20221021BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61P35/00
A61K39/395 N
A61P37/04
C12N15/13
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2018562357
(86)(22)【出願日】2017-06-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 US2017036818
(87)【国際公開番号】W WO2017214548
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-06-02
(31)【優先権主張番号】62/348,353
(32)【優先日】2016-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/432,023
(32)【優先日】2016-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/500,312
(32)【優先日】2017-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】デルフィーノ, フランク
(72)【発明者】
【氏名】スココス, ディミトリス
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ベイ
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-533993(JP,A)
【文献】国際公開第2016/070051(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
A61P
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトグルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(hGITR)に結合することによりヒトグルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体リガンド(hGITRL)媒介性受容体刺激を遮断する、単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、
(i)配列番号340を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)-1;配列番号342を含むHCDR2;配列番号344を含むHCDR3;配列番号404を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)-1;配列番号406を含むLCDR2;および配列番号408を含むLCDR3;
(ii)配列番号100を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)-1;配列番号102を含むHCDR2;配列番号104を含むHCDR3;配列番号108を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)-1;配列番号110を含むLCDR2;および配列番号112を含むLCDR3;
(iii)配列番号276を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)-1;配列番号278を含むHCDR2;配列番号280を含むHCDR3;配列番号284を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)-1;配列番号286を含むLCDR2;および配列番号288を含むLCDR3;
(iv)配列番号180を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)-1;配列番号182を含むHCDR2;配列番号184を含むHCDR3;配列番号188を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)-1;配列番号190を含むLCDR2;および配列番号192を含むLCDR3;
(v)配列番号212を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)-1;配列番号214を含むHCDR2;配列番号216を含むHCDR3;配列番号220を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)-1;配列番号222を含むLCDR2;および配列番号224を含むLCDR3;または
(vi)配列番号116を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)-1;配列番号118を含むHCDR2;配列番号120を含むHCDR3;配列番号124を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)-1;配列番号126を含むLCDR2;および配列番号128を含むLCDR3
を含む、抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項2】
前記抗体またはその抗原結合性断片は、Fcアンカリングの非存在下でhGITRL媒介性受容体刺激を遮断する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項3】
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片であって、ここで(i)または(ii)を含む該抗体またはその抗原結合性断片は、Fcアンカリングの存在下でhGITRL媒介性受容体刺激を遮断する、抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項4】
前記抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号338に対し90%配列同一性を有するHCVRおよび配列番号402に対し90%配列同一性を有するLCVRを含む、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項5】
前記抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号98に対し90%配列同一性を有するHCVRおよび配列番号106に対し90%配列同一性を有するLCVRを含む、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項6】
配列番号340を含むHCDR-1;配列番号342を含むHCDR2;配列番号344を含むHCDR3;配列番号404を含むLCDR-1;配列番号406を含むLCDR2;および配列番号408を含むLCDR3を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項7】
配列番号100を含むHCDR-1;配列番号102を含むHCDR2;配列番号104を含むHCDR3;配列番号108を含むLCDR-1;配列番号110を含むLCDR2;および配列番号112を含むLCDR3を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項8】
前記抗体またはその抗原結合性断片は、以下からなる群:
(i)表面プラズモン共鳴によって測定される5.0nMに満たないKで37℃において単量体ヒトGITRに結合する;
(ii12分より長いt1/2で37℃において単量体ヒトGITRに結合する;
(iii)表面プラズモン共鳴によって測定される950pMに満たないKで37℃において二量体ヒトGITRに結合する;
(iv7分より長いt1/2で37℃において二量体ヒトGITRに結合する;および
(v260pMに満たないEC50でヒトGITRトランスフェクトしたヒト胚性腎臓293(HEK-293)D9細胞に結合する、
より選択される1または複数の特性を示す、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項9】
前記抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトGITRを活性化する、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項10】
前記抗体またはその抗原結合性断片は、Fcアンカリングの非存在下でヒトGITRを活性化する、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項11】
前記抗体またはその抗原結合性断片は、NFκBレポーターアッセイによって決定される1.0nMに満たないEC50でヒトGITRを活性化する、請求項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項12】
前記抗体またはその抗原結合性断片は、ナイーブヒトCD4+ T細胞増殖アッセイにおいて決定される、Fcアンカリングの非存在下でT細胞増殖活性を示す、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項13】
前記抗体またはその抗原結合性断片は、ナイーブヒトCD4+ T細胞増殖アッセイにおいて決定される8nMまたはこれに満たないEC50で、Fcアンカリングの非存在下でT細胞増殖活性を示す、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項14】
前記抗体またはその抗原結合性断片は、Fcアンカリングの存在下でヒトGITRを活性化する、請求項に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項15】
前記抗体またはその抗原結合性断片は、ナイーブヒトCD4+ T細胞増殖アッセイにおいて決定される、バックグラウンドを少なくとも2倍上回って、Fcアンカリングの存在下でT細胞増殖活性を示す、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項16】
前記抗体またはその抗原結合性断片は、ナイーブヒトCD4+ T細胞増殖アッセイによって決定される34nMに満たないEC50でFcアンカリングの存在下でT細胞増殖活性を示す、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項17】
請求項1~1のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片、および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、薬学的組成物。
【請求項18】
がんを処置するための、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
被験体において抗腫瘍免疫応答を調節するための薬学的組成物であって、該薬学的組成物は、請求項1~1のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合性断片を含み、前記調節は、該被験体において、T調節性細胞に起因するTエフェクター細胞活性の抑制を低減するか、治療上の利益に寄与する腫瘍内Tエフェクター/T調節性細胞比を高めるか、および/またはT細胞生存を促進する、薬学的組成物。
【請求項20】
前記組成物は、第2のT細胞活性化受容体に結合する抗体またはその抗原結合性断片と組み合わせて投与されることを特徴とする、請求項19に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記T細胞活性化受容体は、CD28、OX40、CD137、CD27、またはHVEMである、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
前記組成物は、T細胞阻害受容体に結合する抗体またはその抗原結合性断片と組み合わせて投与されることを特徴とする、請求項19に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
前記T細胞阻害受容体は、CTLA-4、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、またはLAG-3である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
前記組成物は、放射線療法と組み合わせて投与されることを特徴とする、請求項1~2のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項25】
前記組成物は、1種または複数の化学療法剤と組み合わせて投与されることを特徴とする、請求項1~2のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項26】
前記T細胞阻害受容体は、PD1である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
T細胞阻害受容体に結合する前記抗体は、REGN 2810である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記hGITRに結合する抗体は、請求項4に記載の抗体である、請求項1~2のいずれかに記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)に特異的に結合する抗体およびその抗原結合性断片、ならびにその使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーである。GITR発現は、構成的には、調節性T細胞上では高く、ナイーブT細胞、NK細胞および顆粒球上では低/中程度であり、そして活性化に際して誘導可能である。GITRは、そのリガンドGITRLと相互作用し、このGITRLは、抗原提示細胞上で主に発現される。GITR受容体活性化は、エフェクターT細胞増殖および機能の両方を増大させ得、かつ調節性T細胞によって誘導される抑制を減衰し得る。その結果として、GITR活性の調節は、がん免疫療法および免疫障害のための基礎として働き得る。従って、GITRの活性を調節する薬剤(例えば、抗体)が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
要旨
本発明は、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)に結合する抗体およびその抗原結合性断片を提供する。本発明の抗体は、とりわけ、GITRを発現する免疫細胞、例えば、エフェクターT細胞、調節性T細胞、およびNK細胞を標的化するために有用である。
【0004】
本発明の抗体は、全長(例えば、IgG1またはIgG4抗体)であっても、あるいは抗原結合部分(例えば、Fab、F(ab’)またはscFv断片)のみを含んでいてもよく、機能性に影響を及ぼすよう、例えば、残存エフェクター機能を排除するよう修飾されていてもよい(Reddyら、(2000年)、J. Immunol.164巻:1925~1933頁)。
【0005】
本発明の例示的な抗GITR抗体は、本明細書における表1および2に列挙されている。表1は、例示的な抗GITR抗体の重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)のアミノ酸配列識別子を表記する。表2は、例示的な抗GITR抗体のHCVR、LCVR、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3の核酸配列識別子を表記する。
【0006】
本発明は、表1に列挙されているHCVRアミノ酸配列またはそれに対し少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むHCVRを含む、GITRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0007】
本発明は、表1に列挙されているLCVRアミノ酸配列またはそれに対し少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むLCVRを含む、GITRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片も提供する。
【0008】
本発明は、表1に列挙されているLCVRアミノ酸配列のいずれかとペアを組んだ表1に列挙されているHCVRアミノ酸配列のいずれかを含むHCVRおよびLCVRアミノ酸配列ペア(HCVR/LCVR)を含む、GITRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片も提供する。ある特定の実施形態によると、本発明は、表1に列挙されている例示的な抗GITR抗体のいずれかの内に含有されるHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む、抗体またはその抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、HCVR/LCVRアミノ酸配列ペアは、98/106;162/170;194/202;242/250;290/298;338/402;および346/402からなる群より選択される。
【0009】
本発明は、表1に列挙されているHCDR1アミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)を含む、GITRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片も提供する。
【0010】
本発明は、表1に列挙されているHCDR2アミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2(HCDR2)を含む、GITRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片も提供する。
【0011】
本発明は、表1に列挙されているHCDR3アミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3(HCDR3)を含む、GITRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片も提供する。
【0012】
本発明は、表1に列挙されているLCDR1アミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1)を含む、GITRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片も提供する。
【0013】
本発明は、表1に列挙されているLCDR2アミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2)を含む、GITRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片も提供する。
【0014】
本発明は、表1に列挙されているLCDR3アミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、GITRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片も提供
する。
【0015】
本発明は、表1に列挙されているLCDR3アミノ酸配列のいずれかとペアを組んだ表1に列挙されているHCDR3アミノ酸配列のいずれかを含むHCDR3およびLCDR3アミノ酸配列ペア(HCDR3/LCDR3)を含む、GITRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片も提供する。ある特定の実施形態によると、本発明は、表1に列挙されている例示的な抗GITR抗体のいずれかの内に含有されるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列ペアを含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。ある特定の実施形態では、HCDR3/LCDR3アミノ酸配列ペアは、104/112;168/176;200/208;248/256;296/304;344/408;および352/408からなる群より選択される。
【0016】
本発明は、表1に列挙されている例示的な抗GITR抗体のいずれかの内に含有される6個のCDR(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)のセットを含む、GITRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片も提供する。ある特定の実施形態では、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットは、100-102-104-108-110-112;164-166-168-172-174-176;196-198-200-204-206-208;244-246-248-252-254-256;292-294-296-300-302-304;340-342-344-404-406-408;および348-350-352-404-406-408からなる群より選択される。
【0017】
関連する実施形態では、本発明は、表1に列挙されている例示的な抗GITR抗体のいずれかによって定義されるHCVR/LCVRアミノ酸配列ペア内に含有される6個のCDR(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)のセットを含む、GITRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。例えば、本発明は、98/106;162/170;194/202;242/250;290/298;338/402;および346/102からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列ペア内に含有されるHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットを含む、GITRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を含む。HCVRおよびLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するための方法および技法は、本技術分野において周知のものであり、本明細書に開示されている規定のHCVRおよび/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRの同定に使用することができる。CDRの境界の同定に使用することのできる例示的な慣例として、例えば、Kabat定義、Chothia定義およびAbM定義が挙げられる。一般用語において、Kabat定義は、配列可変性に基づき、Chothia定義は、構造的ループ領域の位置に基づき、AbM定義は、KabatとChothiaアプローチの折衷である。例えば、Kabat、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、National Institutes of Health, Bethesda, Md.(1991年);Al-Lazikaniら、J. Mol. Biol.273巻:927~948頁(1997年);およびMartinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86巻:9268~9272頁(1989年)を参照されたい。抗体内のCDR配列を同定するために、公開データベースを利用することもできる。
【0018】
本発明は、抗GITR抗体またはその部分をコードする核酸分子も提供する。例えば、本発明は、表1に列挙されているHCVRアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供する;ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されているHCVR核酸配列またはそれに対し少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0019】
本発明は、表1に列挙されているLCVRアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する;ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されているLCVR核酸配列またはそれに対し少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0020】
本発明は、表1に列挙されているHCDR1アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する;ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されているHCDR1核酸配列またはそれに対し少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0021】
本発明は、表1に列挙されているHCDR2アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する;ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されているHCDR2核酸配列またはそれに対し少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0022】
本発明は、表1に列挙されているHCDR3アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する;ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されているHCDR3核酸配列またはそれに対し少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0023】
本発明は、表1に列挙されているLCDR1アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する;ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されているLCDR1核酸配列またはそれに対し少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0024】
本発明は、表1に列挙されているLCDR2アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する;ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されているLCDR2核酸配列またはそれに対し少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0025】
本発明は、表1に列挙されているLCDR3アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する;ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されているLCDR3核酸配列またはそれに対し少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列を含む。
【0026】
本発明は、HCVRをコードする核酸分子であって、前記HCVRが、3個のCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3)を含み、前記HCDR1-HCDR2-HCDR3アミノ酸配列セットが、表1に列挙されている例示的な抗GITR抗体のいずれかによって定義される核酸分子も提供する。
【0027】
本発明は、LCVRをコードする核酸分子であって、前記LCVRが、3個のCDRのセット(すなわち、LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含み、前記LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットが、表1に列挙されている例示的な抗GITR抗体のいずれかによって定義される核酸分子も提供する。
【0028】
本発明は、HCVRおよびLCVRの両方をコードする核酸分子であって、前記HCVRが、表1に列挙されているHCVRアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含み、前記LCVRが、表1に列挙されているLCVRアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含む核酸分子も提供する。ある特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されているHCVR核酸配列またはそれに対し少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列と、表2に列挙されているLCVR核酸配列またはそれに対し少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列とを含む。本発明の本態様に係るある特定の実施形態では、核酸分子は、HCVRおよびLCVRをコードし、前記HCVRおよびLCVRは両者共に、表1に列挙されている同じ抗GITR抗体に由来する。
【0029】
本発明は、抗GITR抗体の重または軽鎖可変領域を含むポリペプチドを発現することができる組換え発現ベクターも提供する。例えば、本発明は、上述の核酸分子、すなわち、表1に表記されているHCVR、LCVRおよび/またはCDR配列のいずれかをコードする核酸分子のいずれかを含む組換え発現ベクターを含む。係るベクターが導入された宿主細胞と共に、前記抗体または抗体断片の産生を可能にする条件下で前記宿主細胞を培養し、このようにして産生された前記抗体および抗体断片を回収することにより前記抗体またはその部分を産生する方法も、本発明の範囲内に含まれる。
【0030】
本発明は、修飾されたグリコシル化パターンを有する抗GITR抗体を含む。一部の実施形態では、望ましくないグリコシル化部位を除去するための修飾、あるいは例えば、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)機能を増加させるために、オリゴ糖鎖に存在するフコース部分を欠く抗体が有用となることもある(Shieldら(2002年)JBC 277巻:26733頁を参照)。他の適用では、補体依存性細胞傷害(CDC)を修飾するために、ガラクトシル化の修飾を行うことができる。
【0031】
別の態様では、本発明は、GITRに特異的に結合する組換えヒト抗体またはその断片と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。関連する態様では、本発明は、抗GITR抗体および第2の治療剤の組み合わせである組成物を特色とする。一実施形態では、第2の治療剤は、抗GITR抗体と有利に組み合わされるいずれかの薬剤である。本発明は、細胞傷害性薬剤にコンジュゲートされた抗GITR抗体を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)も提供する。本発明の抗GITR抗体に関与する例示的な併用療法、同時製剤およびADCは、本明細書の他の箇所に開示されている。
【0032】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の抗GITR抗体または抗体の抗原結合部分を使用して、腫瘍細胞を殺傷するためまたは腫瘍細胞成長を阻害もしくは減衰させるための、またはがんに罹患した患者を別の方法で処置するための、治療方法を提供する。本発明の本態様に係る治療方法は、本発明の抗体または抗体の抗原結合性断片を含む治療有効量の薬学的組成物を、それを必要とする被験体に投与するステップを含む。処置される障害は、GITRを標的化することによって、ならびに/あるいはT細胞増殖もしくは機能を増大するおよび/または調節性T細胞によって誘導される抑制活性を阻害することによって、改善(improve)される、回復(ameliorate)される、阻害される、または予防される任意の疾患または状態である。
【0033】
さらに別の態様において、本発明は、抗GITR抗体または抗GITR抗体の抗原結合部分および抗PD1抗体または抗PD1抗体の抗原結合部分の組み合わせを使用して、腫瘍細胞を殺傷するか、または腫瘍細胞成長を阻害もしくは減衰する、またはがんに罹患した患者を別の方法で処置するための治療法を提供する。本発明のこの態様に係る治療法は、治療有効量の、抗GITRおよび抗PD1抗体または抗原結合性断片組成物の組み合わせを含む薬学的組成物を、それを必要とする被験体に投与する工程を包含する。処置される障害は、GITRおよびPD1の両方を標的化することによって改善、回復、阻害または予防される任意の疾患または状態である。
【0034】
他の実施形態は、次の詳細な説明の総説から明らかになるであろう。他の実施形態は、次の詳細な説明の総説から明らかになるであろう。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)に結合する単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、ここで該抗体または抗原結合性断片は、以下からなる群:
(i)表面プラズモン共鳴によって測定される、約5.0nMに満たないK で37℃において単量体ヒトGITRに結合する;
(ii)約12分より長いt 1/2 で37℃において単量体ヒトGITRに結合する;
(iii)表面プラズモン共鳴によって測定される、約950pMに満たないK で37℃において二量体ヒトGITRに結合する;
(iv)約7分より長いt 1/2 で37℃において二量体ヒトGITRに結合する;および
(v)約260pMに満たないEC 50 でヒトGITRトランスフェクトしたヒト胚性腎臓293(HEK-293)D9細胞に結合する、
より選択される1または複数の特性を示す、抗体またはその抗原結合性断片。
(項目2)
前記抗体または抗原結合性断片は、ヒトGITRを活性化する、項目1に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目3)
グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)に結合する単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、ここで該抗体または抗原結合性断片は、Fcアンカリングの非存在下でヒトGITRを活性化する、抗体または抗原結合性断片。
(項目4)
前記抗体または抗原結合性断片は、NFκBレポーターアッセイによって決定される、約3nMに満たないEC 50 において約25%より高い活性化パーセンテージでヒトGITRを活性化する、項目3に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目5)
前記抗体または抗原結合性断片は、NFκBレポーターアッセイによって決定される、約1.0nMに満たないEC 50 でヒトGITRを活性化する、項目3または4に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目6)
グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)に結合する単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、ここで該抗体または抗原結合性断片は、ナイーブヒトCD4+ T細胞増殖アッセイにおいて決定される、Fcアンカリングの非存在下でT細胞増殖活性を示す、抗体または抗原結合性断片。
(項目7)
前記抗体または抗原結合性断片は、ナイーブヒトCD4+ T細胞増殖アッセイにおいて決定される、約8nMまたはこれに満たないEC 50 で、Fcアンカリングの非存在下でT細胞増殖活性を示す、項目6に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目8)
前記抗体または抗原結合性断片は、Fcアンカリングの存在下でヒトGITRを活性化する、項目1に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目9)
グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)に結合する単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、ここで該抗体または抗原結合性断片は、ナイーブヒトCD4+ T細胞増殖アッセイにおいて決定される、バックグラウンドを少なくとも2倍上回って、Fcアンカリングの存在下でT細胞増殖活性を示す、抗体または抗原結合性断片。
(項目10)
前記抗体または抗原結合性断片は、ナイーブヒトCD4+ T細胞増殖アッセイによって
決定される、約34nMに満たないEC 50 でFcアンカリングの存在下でT細胞増殖活性を示す、項目9に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目11)
前記抗体または抗原結合性断片は、hGITRリガンド(hGITRL)媒介性受容体刺激を遮断する、項目1に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目12)
前記抗体または抗原結合性断片は、Fcアンカリングの非存在下でhGITRL媒介性受容体刺激を遮断する、項目11に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目13)
グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)に結合する単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、ここで該抗体または抗原結合性断片は、NFκBレポーターアッセイによって決定される、約4.0nMに満たないIC 50 において約54%より高い遮断パーセンテージでFcアンカリングの非存在下で、hGITRL媒介性受容体刺激を遮断する、抗体または抗原結合性断片。
(項目14)
グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)に結合する単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、ここで該抗体または抗原結合性断片は、(a)表1に表記されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR);および(b)表1に表記されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)のCDRを含む、抗体または抗原結合性断片。
(項目15)
前記抗体または抗原結合性断片は、表1に表記されるアミノ酸配列を有するHCVRおよび表1に表記されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む、項目14に記載の単離された抗体または抗原結合性断片。
(項目16)
前記抗体または抗原結合性断片は、
(i)配列番号100、164、196、244、292、340、および348からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1ドメイン;
(ii)配列番号102、166、198、246、294、342、および350からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2ドメイン;
(iii)配列番号104、168、200、248、296、344、352からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3ドメイン;
(iv)配列番号108、172、204、252、300、および404からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1ドメイン;
(v)配列番号110、174、206、254、302、および406からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR2ドメイン、ならびに
(vi)配列番号112、176、208、256、304、および408からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するLCDR3ドメイン、
を含む、項目14に記載の単離された抗体または抗原結合性断片。
(項目17)
前記抗体または抗原結合性断片は、
(i)配列番号100を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)-1;配列番号102を含むHCDR2;配列番号104を含むHCDR3;配列番号108を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)-1;配列番号110を含むLCDR2;および配列番号112を含むLCDR3;
(ii)配列番号164を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)-1;配列番号166を含むHCDR2;配列番号168を含むHCDR3;配列番号172を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)-1;配列番号174を含むLCDR2;および配列番号176を含むLCDR3;
(iii)配列番号196を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)-1;配列番号19
8を含むHCDR2;配列番号200を含むHCDR3;配列番号204を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)-1;配列番号206を含むLCDR2;および配列番号208を含むLCDR3;
(iv)配列番号244を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)-1;配列番号246を含むHCDR2;配列番号248を含むHCDR3;配列番号252を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)-1;配列番号254を含むLCDR2;および配列番号256を含むLCDR3;
(v)配列番号292を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)-1;配列番号294を含むHCDR2;配列番号296を含むHCDR3;配列番号300を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)-1;配列番号302を含むLCDR2;および配列番号304を含むLCDR3;
(vi)配列番号340を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)-1;配列番号342を含むHCDR2;配列番号344を含むHCDR3;配列番号404を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)-1;配列番号406を含むLCDR2;および配列番号408を含むLCDR3;または
(vii)配列番号348を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)-1;配列番号350を含むHCDR2;配列番号352を含むHCDR3;配列番号404を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)-1;配列番号406を含むLCDR2;および配列番号408を含むLCDR3、
を含む、項目14に記載の単離された抗体または抗原結合性断片。
(項目18)
単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、ここで該抗体またはその抗原結合性断片は、GITRへの結合に関して、配列番号98/106;配列番号162/170;配列番号194/202;配列番号242/250;配列番号290/298;配列番号338/402;および配列番号346/102からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む参照抗体と競合する、単離された抗体またはその抗原結合性断片。
(項目19)
単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、ここで該抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号98/106;配列番号162/170;配列番号194/202;配列番号242/250;配列番号290/298;配列番号338/402;および配列番号346/102からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む参照抗体と、GITR上の同じエピトープに結合する、単離された抗体またはその抗原結合性断片。
(項目20)
項目1~19のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合性断片、および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、薬学的組成物。
(項目21)
項目20に記載の組成物を投与する工程を包含する、被験体においてがんを処置するための方法。
(項目22)
被験体において抗腫瘍免疫応答を調節するための方法であって、該方法は、項目1~19のいずれかに記載のGITRに結合する抗体またはその抗原結合性断片を該被験体に投与する工程を包含する方法。
(項目23)
第2のT細胞活性化受容体に結合する抗体またはその抗原結合性断片を投与する工程をさらに包含する、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記T細胞活性化受容体は、CD28、OX40、CD137、CD27、またはHVEMである、項目21に記載の方法。
(項目25)
T細胞阻害受容体に結合する抗体またはその抗原結合性断片を投与する工程をさらに包含する、項目19~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
前記T細胞阻害受容体は、CTLA-4、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、またはLAG-3である、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記被験体に放射線療法を投与する工程をさらに包含する、項目20~26のいずれか1項に記載の方法。
(項目28)
1種または複数の化学療法剤を投与する工程をさらに包含する、項目20~27のいずれかに記載の方法。
(項目29)
前記T細胞阻害受容体は、PD1である、項目26に記載の方法。
(項目30)
T細胞受容体に結合する前記抗体は、REGN 2810である、項目29に記載の方法。
(項目31)
GITRに結合する前記抗体は、項目17に記載の抗体である、項目22~30のいずれか1項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、実施例7に記載されている腫瘍チャレンジ後の日数に対してプロットした各処置群の平均腫瘍容積(mm±SEM)を示す。マウスを、アイソタイプ抗体抗体(白丸、○)、抗PD-1抗体(白四角、□)、抗GITR抗体(白角錐、△)、または抗PD-1および抗GITRの組み合わせ(逆向き黒角錐、下向き黒三角)のいずれかで処置した。
【0036】
図2図2は、実施例7に記載されている抗マウスGITRおよび抗マウスPD1抗体の組み合わせで処置したMC38を有するマウスの生存分析を示す。マウスを、アイソタイプ抗体(白丸、○)、抗PD-1抗体(白四角、□)、抗GITR抗体(白角錐、△)、または抗PD-1および抗GITRの組み合わせ(逆向き白角錐、▽)のいずれかで処置した。
【0037】
図3図3は、実施例7に記載されている腫瘍なしのマウスまたはMC38もしくはB16.F10.9腫瘍細胞でチャレンジしたナイーブ対照マウスの個々の腫瘍成長曲線を示す。
【0038】
図4図4は、実施例7に記載されている種々の枯渇抗体で処置したマウスの平均腫瘍容積を示す。
【0039】
図5図5は、実施例7に記載されている腫瘍内CD8/Treg、CD4 Teff/Treg比のFACS分析結果を示す。
【0040】
図6図6は、実施例7に記載されている腫瘍におけるT細胞サブセットのパーセンテージおよび細胞数/mm腫瘍を示す。
【0041】
図7図7は、実施例7に示されている腫瘍チャレンジ後の日数に対してプロットした各処置群の平均腫瘍容積(mm±SEM)を示す。
【0042】
図8図8は、実施例7に記載されている抗ヒトGITR抗体および抗マウスPD1抗体の組み合わせで処置したMC38を有するGITR/GIRLヒト化マウスの生存分析を示す。
【0043】
図9図9は、実施例7に記載されている、CD8 T細胞の腫瘍内および脾臓パーセンテージ、Treg細胞のパーセンテージ、ならびにCD8/Treg比のFACS分析を示す。
【0044】
図10図10は、実施例7に記載されている腫瘍チャレンジ後の日数に対してプロットした各処置群の平均腫瘍容積(mm±SEM)を示す。
【0045】
図11図11は、実施例7に記載されている抗マウスGITR抗体および抗ヒトPD1抗体の組み合わせで処置したMC38を有するPD1/PDL1ヒト化マウスの生存分析を示す。
【0046】
図12図12は、実施例7に記載されているMC38を有するマウスの腫瘍成長曲線を示す。Y軸は、腫瘍容積(立方ミリメートル単位)を示し、X軸は、腫瘍チャレンジ後の時間(日数単位)を示す。白抜きの記号(白四角、白丸)は、アイソタイプ抗体(対照)でまず処置したマウスを表す。塗りつぶしの記号(黒四角、黒丸)は、抗CD226抗体でまず処置したマウスを表す。アイソタイプ抗体で次に処置したそれらマウスは、丸(白丸、黒丸)および実線によって表される。抗GITRおよび抗PD-1の組み合わせで次に処置したそれらマウスは、四角(白四角、黒四角)および破線によって表される。
【0047】
図13図13は、実施例7に記載されているMC38を有するマウスの生存曲線を示す。Y軸は、%生存を示し、X軸は、腫瘍チャレンジ後の時間(日数単位)を示す。白抜き記号(白四角、白丸)は、アイソタイプ抗体(対照)でまず処置したマウスを表す。塗りつぶし記号(黒四角、黒丸)は、抗CD226抗体でまず処置したマウスを表す。アイソタイプ抗体で次に処置したそれらマウスは、丸(白丸、黒丸)および実線によって表される。抗GITRおよび抗PD-1の組み合わせで次に処置されたそれらマウスは、四角(白四角、黒四角)および破線によって表される。
【0048】
図14図14は、実施例7に記載されているアイソタイプIgGで処置した、MC38を有する野生型マウス(ひし形[白ひし形、黒ひし形]によって表される)またはTIGITノックアウトマウス(三角[白三角、黒三角]によって表される)の腫瘍成長曲線を示す。Y軸は、腫瘍容積(立方ミリメートル単位)を示し、X軸は、腫瘍チャレンジ後の時間(日数単位)を示す。白抜き記号および破線は、アイソタイプ抗体(対照)でまず処置したマウスを表す。塗りつぶし記号および実線は、抗CD226抗体でまず処置したマウスを表す。
【0049】
図15図15は、実施例7に記載されているアイソタイプIgGで処置した、MC38を有する野生型マウス(丸[白丸、黒丸]によって表される)またはTIGITノックアウトマウス(逆向き三角[逆向き白三角、逆向き黒三角]によって表される)の腫瘍成長曲線を示す。Y軸は、腫瘍容積(立方ミリメートル単位)を示し、X軸は、腫瘍チャレンジ後の時間(日数単位)を示す。白抜き記号および破線は、アイソタイプ抗体(対照)でまず処置したマウスを表す。塗りつぶし記号および実線は、抗CD226抗体でまず処置したマウスを表す。
【0050】
図16A図16は、合計(パネルA)、クローン性拡大(パネルB)、または非拡大(パネルC) CD8+ T細胞における併用処置によるCD226のアップレギュレートされた発現を示す累積分布関数(CDF)プロットを含む。X軸は、log2(RPKM)(eads er ilobase of transcript per illion mapped reads)におけるCD226発現を示し、Y軸は、累積度数を示す。赤線は、抗GITR/抗PD1処置を表す;黒線は、アイソタイプ抗体処置を表す;青線は、抗GITR処置を表す;そして紫の線は、抗PD1処置を表す。
図16B図16は、合計(パネルA)、クローン性拡大(パネルB)、または非拡大(パネルC) CD8+ T細胞における併用処置によるCD226のアップレギュレートされた発現を示す累積分布関数(CDF)プロットを含む。X軸は、log2(RPKM)(eads er ilobase of transcript per illion mapped reads)におけるCD226発現を示し、Y軸は、累積度数を示す。赤線は、抗GITR/抗PD1処置を表す;黒線は、アイソタイプ抗体処置を表す;青線は、抗GITR処置を表す;そして紫の線は、抗PD1処置を表す。
図16C図16は、合計(パネルA)、クローン性拡大(パネルB)、または非拡大(パネルC) CD8+ T細胞における併用処置によるCD226のアップレギュレートされた発現を示す累積分布関数(CDF)プロットを含む。X軸は、log2(RPKM)(eads er ilobase of transcript per illion mapped reads)におけるCD226発現を示し、Y軸は、累積度数を示す。赤線は、抗GITR/抗PD1処置を表す;黒線は、アイソタイプ抗体処置を表す;青線は、抗GITR処置を表す;そして紫の線は、抗PD1処置を表す。
【0051】
図17図17は、PD-1濃度の関数としてホスホ-CD3ζおよびホスホ-CD226の相対的発現を示すウェスタンブロットである。
【0052】
図18A図18、パネルA~Dは、野生型マウス(白抜き棒)およびCD226ノックアウトマウス(塗りつぶしの棒)において生成されたT細胞タイプの数の棒グラフを示す。パネルAは、胸腺におけるT細胞発生(Tconv、通常型T細胞(conventional T cell);DP、CD4/CD8ダブルポジティブ;SP、シングルポジティブ;DN、CD4/CD8ダブルネガティブ)のFACS分析(細胞数)を示す棒グラフである。パネルBは、野生型動物およびCD226-/-動物における脾臓および血液中のT細胞サブセットの集団のFACS検証(細胞数)を示す棒グラフである。パネルCは、PD1を発現する、脾臓および血液中のT細胞サブセットのFACS分析(MFI、平均蛍光強度)を示す棒グラフである。パネルDは、GITRを発現する、脾臓および血液中のT細胞サブセットのFACS分析(MFI)を示す棒グラフである。パネルE~Iは、脾細胞を、抗CD3+抗CD28 Abで16時間、ex vivoでTCR刺激した際の炎症性サイトカイン分泌(pg/ml単位)を示す棒グラフである。CD226-/-マウス(塗りつぶしの棒)または野生型(WT)マウス(白抜き棒)の脾細胞を、抗CD3+抗CD28 Abで16時間刺激した。パネルE=IFN-γ;パネルF=IL-2;パネルG=TNF-α;パネルH=IL-6;およびパネルI=IL-5。
図18B図18、パネルA~Dは、野生型マウス(白抜き棒)およびCD226ノックアウトマウス(塗りつぶしの棒)において生成されたT細胞タイプの数の棒グラフを示す。パネルAは、胸腺におけるT細胞発生(Tconv、通常型T細胞(conventional T cell);DP、CD4/CD8ダブルポジティブ;SP、シングルポジティブ;DN、CD4/CD8ダブルネガティブ)のFACS分析(細胞数)を示す棒グラフである。パネルBは、野生型動物およびCD226-/-動物における脾臓および血液中のT細胞サブセットの集団のFACS検証(細胞数)を示す棒グラフである。パネルCは、PD1を発現する、脾臓および血液中のT細胞サブセットのFACS分析(MFI、平均蛍光強度)を示す棒グラフである。パネルDは、GITRを発現する、脾臓および血液中のT細胞サブセットのFACS分析(MFI)を示す棒グラフである。パネルE~Iは、脾細胞を、抗CD3+抗CD28 Abで16時間、ex vivoでTCR刺激した際の炎症性サイトカイン分泌(pg/ml単位)を示す棒グラフである。CD226-/-マウス(塗りつぶしの棒)または野生型(WT)マウス(白抜き棒)の脾細胞を、抗CD3+抗CD28 Abで16時間刺激した。パネルE=IFN-γ;パネルF=IL-2;パネルG=TNF-α;パネルH=IL-6;およびパネルI=IL-5。
図18C図18、パネルA~Dは、野生型マウス(白抜き棒)およびCD226ノックアウトマウス(塗りつぶしの棒)において生成されたT細胞タイプの数の棒グラフを示す。パネルAは、胸腺におけるT細胞発生(Tconv、通常型T細胞(conventional T cell);DP、CD4/CD8ダブルポジティブ;SP、シングルポジティブ;DN、CD4/CD8ダブルネガティブ)のFACS分析(細胞数)を示す棒グラフである。パネルBは、野生型動物およびCD226-/-動物における脾臓および血液中のT細胞サブセットの集団のFACS検証(細胞数)を示す棒グラフである。パネルCは、PD1を発現する、脾臓および血液中のT細胞サブセットのFACS分析(MFI、平均蛍光強度)を示す棒グラフである。パネルDは、GITRを発現する、脾臓および血液中のT細胞サブセットのFACS分析(MFI)を示す棒グラフである。パネルE~Iは、脾細胞を、抗CD3+抗CD28 Abで16時間、ex vivoでTCR刺激した際の炎症性サイトカイン分泌(pg/ml単位)を示す棒グラフである。CD226-/-マウス(塗りつぶしの棒)または野生型(WT)マウス(白抜き棒)の脾細胞を、抗CD3+抗CD28 Abで16時間刺激した。パネルE=IFN-γ;パネルF=IL-2;パネルG=TNF-α;パネルH=IL-6;およびパネルI=IL-5。
図18D図18、パネルA~Dは、野生型マウス(白抜き棒)およびCD226ノックアウトマウス(塗りつぶしの棒)において生成されたT細胞タイプの数の棒グラフを示す。パネルAは、胸腺におけるT細胞発生(Tconv、通常型T細胞(conventional T cell);DP、CD4/CD8ダブルポジティブ;SP、シングルポジティブ;DN、CD4/CD8ダブルネガティブ)のFACS分析(細胞数)を示す棒グラフである。パネルBは、野生型動物およびCD226-/-動物における脾臓および血液中のT細胞サブセットの集団のFACS検証(細胞数)を示す棒グラフである。パネルCは、PD1を発現する、脾臓および血液中のT細胞サブセットのFACS分析(MFI、平均蛍光強度)を示す棒グラフである。パネルDは、GITRを発現する、脾臓および血液中のT細胞サブセットのFACS分析(MFI)を示す棒グラフである。パネルE~Iは、脾細胞を、抗CD3+抗CD28 Abで16時間、ex vivoでTCR刺激した際の炎症性サイトカイン分泌(pg/ml単位)を示す棒グラフである。CD226-/-マウス(塗りつぶしの棒)または野生型(WT)マウス(白抜き棒)の脾細胞を、抗CD3+抗CD28 Abで16時間刺激した。パネルE=IFN-γ;パネルF=IL-2;パネルG=TNF-α;パネルH=IL-6;およびパネルI=IL-5。
図18E-F】図18、パネルA~Dは、野生型マウス(白抜き棒)およびCD226ノックアウトマウス(塗りつぶしの棒)において生成されたT細胞タイプの数の棒グラフを示す。パネルAは、胸腺におけるT細胞発生(Tconv、通常型T細胞(conventional T cell);DP、CD4/CD8ダブルポジティブ;SP、シングルポジティブ;DN、CD4/CD8ダブルネガティブ)のFACS分析(細胞数)を示す棒グラフである。パネルBは、野生型動物およびCD226-/-動物における脾臓および血液中のT細胞サブセットの集団のFACS検証(細胞数)を示す棒グラフである。パネルCは、PD1を発現する、脾臓および血液中のT細胞サブセットのFACS分析(MFI、平均蛍光強度)を示す棒グラフである。パネルDは、GITRを発現する、脾臓および血液中のT細胞サブセットのFACS分析(MFI)を示す棒グラフである。パネルE~Iは、脾細胞を、抗CD3+抗CD28 Abで16時間、ex vivoでTCR刺激した際の炎症性サイトカイン分泌(pg/ml単位)を示す棒グラフである。CD226-/-マウス(塗りつぶしの棒)または野生型(WT)マウス(白抜き棒)の脾細胞を、抗CD3+抗CD28 Abで16時間刺激した。パネルE=IFN-γ;パネルF=IL-2;パネルG=TNF-α;パネルH=IL-6;およびパネルI=IL-5。
図18G-I】図18、パネルA~Dは、野生型マウス(白抜き棒)およびCD226ノックアウトマウス(塗りつぶしの棒)において生成されたT細胞タイプの数の棒グラフを示す。パネルAは、胸腺におけるT細胞発生(Tconv、通常型T細胞(conventional T cell);DP、CD4/CD8ダブルポジティブ;SP、シングルポジティブ;DN、CD4/CD8ダブルネガティブ)のFACS分析(細胞数)を示す棒グラフである。パネルBは、野生型動物およびCD226-/-動物における脾臓および血液中のT細胞サブセットの集団のFACS検証(細胞数)を示す棒グラフである。パネルCは、PD1を発現する、脾臓および血液中のT細胞サブセットのFACS分析(MFI、平均蛍光強度)を示す棒グラフである。パネルDは、GITRを発現する、脾臓および血液中のT細胞サブセットのFACS分析(MFI)を示す棒グラフである。パネルE~Iは、脾細胞を、抗CD3+抗CD28 Abで16時間、ex vivoでTCR刺激した際の炎症性サイトカイン分泌(pg/ml単位)を示す棒グラフである。CD226-/-マウス(塗りつぶしの棒)または野生型(WT)マウス(白抜き棒)の脾細胞を、抗CD3+抗CD28 Abで16時間刺激した。パネルE=IFN-γ;パネルF=IL-2;パネルG=TNF-α;パネルH=IL-6;およびパネルI=IL-5。
【0053】
図19A-B】図19は、腫瘍チャレンジ後の時間(日数単位)の関数として%動物生存を示す線グラフである。パネルAは、MC38腫瘍細胞でチャレンジしかつ抗GITR+抗PD-1 Ab(塗りつぶしの丸および四角)またはアイソタイプAb(白抜きの丸および四角)のいずれかで処置した、CD226 KOマウス(淡紅色の線)またはWT同腹仔(黒線)を示す。パネルB~Dは、(B)CD28シグナリングを遮断する抗体で処置した動物(10mg/kg CTLA-4-Ig;パネルB、緑の線);(C)OX40シグナリングを遮断する抗体で処置した動物(10mg/kg OX40L遮断抗体;パネルC);および(D)4-1BBシグナリングを遮断する抗体で処置した動物(10mg/kg 4-1BBL遮断抗体;パネルD)に対して抗体処置の効果を示す。
図19C-D】図19は、腫瘍チャレンジ後の時間(日数単位)の関数として%動物生存を示す線グラフである。パネルAは、MC38腫瘍細胞でチャレンジしかつ抗GITR+抗PD-1 Ab(塗りつぶしの丸および四角)またはアイソタイプAb(白抜きの丸および四角)のいずれかで処置した、CD226 KOマウス(淡紅色の線)またはWT同腹仔(黒線)を示す。パネルB~Dは、(B)CD28シグナリングを遮断する抗体で処置した動物(10mg/kg CTLA-4-Ig;パネルB、緑の線);(C)OX40シグナリングを遮断する抗体で処置した動物(10mg/kg OX40L遮断抗体;パネルC);および(D)4-1BBシグナリングを遮断する抗体で処置した動物(10mg/kg 4-1BBL遮断抗体;パネルD)に対して抗体処置の効果を示す。
【0054】
図20図20は、アイソタイプ(白抜きの丸および黒線)、抗PD1(白抜き四角、赤線)、抗GITR(白抜き角錐および緑の線)、および抗GITR/抗PD1併用療法(白抜きの逆向き角錐および青線)で処置したマウスに関する腫瘍チャレンジ後の日数の関数として腫瘍サイズ(立方ミリメートル単位)を示す線グラフである。パネルAは、CD155を発現しないMC38腫瘍を表す。パネルBは、CD155を発現するMC38腫瘍を表す。
【0055】
図21A図21は、CD155を過剰発現するMC38腫瘍細胞(塗りつぶしの棒)およびCD155を発現しないMC38腫瘍細胞(白抜きの棒)でチャレンジした動物からのCD226(パネルA)、4-1BB(パネルB)、およびIFN-γ(パネルC)を発現する細胞数を示す棒グラフである。
図21B図21は、CD155を過剰発現するMC38腫瘍細胞(塗りつぶしの棒)およびCD155を発現しないMC38腫瘍細胞(白抜きの棒)でチャレンジした動物からのCD226(パネルA)、4-1BB(パネルB)、およびIFN-γ(パネルC)を発現する細胞数を示す棒グラフである。
図21C図21は、CD155を過剰発現するMC38腫瘍細胞(塗りつぶしの棒)およびCD155を発現しないMC38腫瘍細胞(白抜きの棒)でチャレンジした動物からのCD226(パネルA)、4-1BB(パネルB)、およびIFN-γ(パネルC)を発現する細胞数を示す棒グラフである。
【0056】
図22図22は、抗PD-1 Ab処置の関数としてCD226 RNA発現(log2[RPKM]単位)を示すがん患者腫瘍生検のドットプロットRNA-seq分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
詳細な説明
本発明について記載する前に、記載されている特定の方法および実験条件は変動し得るため、本発明が、係る方法および条件に限定されないことを理解されたい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることから、本明細書において使用されている用語法が、単に特定の実施形態を説明するためのものであり、限定を企図しないことも理解されたい。
【0058】
他に断りがなければ、本明細書において使用されているあらゆる技術および科学用語は、本発明が属する分野における当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書において、用語「約」は、特定の列挙されている数値に関連して使用されている場合、値が、列挙されている値から1%以下で変動し得ることを意味する。例えば、本明細書において、表現「約100」は、99および101ならびにその間のあらゆる値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4等)を含む。
【0059】
本発明の実施または検査において、本明細書に記載されている方法および材料と類似または同等のいかなる方法および材料を使用してもよいが、好ましい方法および材料を次に説明する。本明細書に言及されているあらゆる特許、出願および非特許刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0060】
定義
表現、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体、「GITR」などは、本明細書において、配列番号413に表記されているアミノ酸配列(NCBIアクセッション#NP_004186.1)を含むヒトグルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体を指す。表現「GITR」は、単量体および多量体両方のGITR分子を含む。本明細書において、表現「単量体ヒトGITR」とは、任意の多量体化ドメインを含みも有しもせず、単一のGITR分子として、別のGITR分子への直接的な物理的接続なしで通常の条件下で存在するGITRタンパク質またはその部分を意味する。例示的な単量体GITR分子は、配列番号409のアミノ酸配列(例えば、本明細書中の実施例3を参照されたい)を含む「hGITR.mmh」と本明細書で指される分子である。本明細書において、表現「二量体ヒトGITR」とは、リンカー、共有結合、非共有結合を通じて、または多量体化ドメイン(例えば、抗体Fcドメイン)を通じて互いに接続される2個のGITR分子を含む構築物を意味する。例示的な二量体GITR分子は、それぞれ、配列番号410および配列番号411のアミノ酸配列(例えば、本明細書中の実施例3を参照されたい)を含む「hGITR.mFc」および「hGITR.hFc」と本明細書で指されるそれら分子を含む。
【0061】
本明細書におけるタンパク質、ポリペプチドおよびタンパク質断片のあらゆる参照は、非ヒト種に由来すると明確に指定されない限り、それぞれのタンパク質、ポリペプチドまたはタンパク質断片のヒトバージョンを指すよう企図されている。よって、表現「GITR」は、例えば「マウスGITR」、「サルGITR」等のように非ヒト種に由来すると指定されない限り、ヒトGITRを意味する。
【0062】
本明細書において、表現「細胞表面に発現されたGITR」は、GITRタンパク質の少なくとも一部分が、細胞膜の細胞外側に露出され、抗体の抗原結合部分に到達できるように、in vitroまたはin vivoで細胞の表面に発現される、1種もしくは複数のGITRタンパク質(単数または複数)またはその細胞外ドメインを意味する。「細胞表面に発現されたGITR」は、GITRタンパク質を正常に発現する細胞の表面に発現されたGITRタンパク質を含む、またはこれからなることができる。あるいは、「細胞表面に発現されたGITR」は、その表面にヒトGITRを正常には発現しないが、その表面にGITRを発現するように人為的に操作された、細胞の表面に発現されたGITRタンパク質を含む、またはこれからなることができる。
【0063】
本明細書において、表現「抗GITR抗体」は、単一特異性を有する一価抗体および単一特異性二価抗体、ならびにGITRに結合する第1のアームおよび第2の(標的)抗原に結合する第2のアームを含む二重特異的抗体の両方を含み、前記抗GITRアームは、本明細書における表1に表記されているHCVR/LCVRまたはCDR配列のいずれかを含む。表現「抗GITR抗体」は、薬物または毒素(すなわち、細胞傷害性薬剤)にコンジュゲートされた抗GITR抗体またはその抗原結合部分を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)も含む。表現「抗GITR抗体」は、放射性核種にコンジュゲートされた抗GITR抗体またはその抗原結合部分を含む抗体-放射性核種コンジュゲート(ARC)も含む。
【0064】
用語「抗体」は、本明細書において、特定の抗原(例えば、GITR)に特異的に結合するまたはこれと相互作用する、少なくとも1個の相補性決定領域(CDR)を含むいずれかの抗原結合分子または分子複合体を意味する。用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖である4本のポリペプチド鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにその多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書において、HCVRまたはVと省略)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3個のドメイン、C1、C2およびC3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書において、LCVRまたはVと省略)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1個のドメイン(C1)を含む。VおよびV領域は、フレームワーク領域(FR)と命名されたより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と命名された超可変性の領域にさらに細分することができる。各VおよびVは、アミノ末端からカルボキシ末端へと、次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4に配置された、3個のCDRおよび4個のFRで構成されている。本発明の異なる実施形態では、抗GITR抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であっても、あるいは天然にまたは人為的に修飾されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2種またはそれを超えるCDRの対比(side-by-side)解析に基づき定義することができる。
【0065】
用語「抗体」は、本明細書において、完全抗体分子の抗原結合性断片も含む。用語、抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合性断片」その他は、本明細書において、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、いずれかの天然に存在する、酵素により得ることができる、合成のまたは遺伝子改変されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合性断片は、例えば、タンパク質分解による消化または抗体可変ドメインおよび任意選択で抗体定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を含む組換え遺伝子操作技法等、いずれかの適した標準技法を使用して、完全抗体分子から得られ得る。このようなDNAは、公知であるおよび/または例えば、商業的供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ抗体ライブラリーを含む)から容易に入手することができる、または合成することができる。DNAを配列決定し、化学的にまたは分子生物学的技法を使用することにより操作して、例えば、適した構成へと1種または複数の可変および/または定常ドメインを配置する、あるいはコドンを導入する、システイン残基を作出する、アミノ酸を修飾、付加または欠失させること等ができる。
【0066】
抗原結合性断片の非限定例として、(i)Fab断片;(ii)F(ab’)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;および(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、CDR3ペプチド等、単離された相補性決定領域(CDR))または制約されたFR3-CDR3-FR4ペプチドが挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディ等)、小モジュラー免疫医薬(small modular immunopharmaceutical)(SMIP)およびサメ可変IgNARドメイン等、他の操作された分子も、本明細書における表現「抗原結合性断片」の内に包含される。
【0067】
抗体の抗原結合性断片は、典型的に、少なくとも1個の可変ドメインを含むであろう。可変ドメインは、いかなるサイズまたはアミノ酸組成のものであってもよく、一般に、1個または複数のフレームワーク配列に隣接するまたはこれとインフレームの少なくとも1個のCDRを含むであろう。Vドメインと会合するVドメインを有する抗原結合性断片において、VおよびVドメインは、いずれか適した配置において互いに対して位置することができる。例えば、可変領域は、二量体となり、V-V、V-VまたはV-V二量体を含有することができる。あるいは、抗体の抗原結合性断片は、単量体VまたはVドメインを含有することができる。
【0068】
ある特定の実施形態では、抗体の抗原結合性断片は、少なくとも1個の定常ドメインに共有結合により連結された少なくとも1個の可変ドメインを含有することができる。本発明の抗体の抗原結合性断片内に見出すことができる可変および定常ドメインの非限定的な例示的構成として、以下が挙げられる:(i)V-C1;(ii)V-C2;(iii)V-C3;(iv)V-C1-C2;(v)V-C1-C2-C3;(vi)V-C2-C3;(vii)V-C;(viii)V-C1;(ix)V-C2;(x)V-C3;(xi)V-C1-C2;(xii)V-C1-C2-C3;(xiii)V-C2-C3;および(xiv)V-C。上に列挙する例示的構成のいずれかを含む、可変および定常ドメインのいずれかの構成において、可変および定常ドメインは、互いに直接的に連結されていても、完全または部分的ヒンジまたはリンカー領域により連結されていてもよい。ヒンジ領域は、少なくとも2個(例えば、5、10、15、20、40、60個以上)のアミノ酸からなることができ、これにより、単一ポリペプチド分子における隣接する可変および/または定常ドメインの間に可撓性または半可撓性連結がもたらされる。さらに、本発明の抗体の抗原結合性断片は、互いにおよび/または1個または複数の単量体VまたはVドメインと非共有結合的に会合した(例えば、ジスルフィド結合(単数または複数)により)、上に列挙する可変および定常ドメイン構成のうちいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含むことができる。
【0069】
完全抗体分子と同様に、抗原結合性断片は、単一特異的または多特異的(例えば、二重特異的)となり得る。抗体の多特異的抗原結合性断片は、典型的に、少なくとも2個の異なる可変ドメインを含み、各可変ドメインは、別々の抗原にまたは同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができるであろう。本明細書に開示されている例示的な二重特異的抗体フォーマットを含むいずれかの多特異的抗体フォーマットは、本技術分野で利用できる慣用的な技法を使用して、本発明の抗体の抗原結合性断片の文脈における使用に適合させることができる。
【0070】
本発明の抗体は、補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介して機能することができる。「補体依存性細胞傷害」(CDC)は、補体の存在下における、本発明の抗体による抗原発現細胞の溶解を指す。「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」(ADCC)は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)が、標的細胞における結合された抗体を認識し、これにより標的細胞の溶解をもたらす細胞媒介性反応を指す。CDCおよびADCCは、本技術分野で周知かつ利用できるアッセイを使用して測定することができる(例えば、米国特許第5,500,362号および同第5,821,337号ならびにClynesら(1998年)Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 95巻:652~656頁を参照)。抗体の定常領域は、補体を固定し、細胞依存性細胞傷害を媒介する抗体の能力において重要である。よって、抗体のアイソタイプは、抗体が細胞傷害を媒介するのに望ましいか否かに基づいて選択することができる。
【0071】
本発明のある特定の実施形態では、本発明の抗GITR抗体は、ヒト抗体である。用語「ヒト抗体」は、本明細書において、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する抗体を含むように企図されている。本発明のヒト抗体は、例えば、CDR、特にCDR3において、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列にコードされないアミノ酸残基を含むことができる(例えば、in vitroにおけるランダムもしくは部位特異的変異誘発またはin vivoにおける体細胞変異によって導入された変異)。しかし、用語「ヒト抗体」は、本明細書において、マウス等、別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むようには企図されていない。用語「ヒト抗体」は、修飾もヒトの介入/操作もなしに、天然に存在する修飾されていない生きている生物において通常存在する天然に存在する分子を含まない。
【0072】
本発明の抗体は、一部の実施形態では、組換えヒト抗体となり得る。用語「組換えヒト抗体」は、本明細書において、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体(さらに後述する)、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(さらに後述する)、ヒト免疫グロブリン遺伝子のトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylorら(1992年)Nucl. Acids Res.20巻:6287~6295頁を参照)、または他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングに関与する他のいずれかの手段によって調製、発現、作出もしくは単離された抗体等、組換え手段によって調製、発現、作出または単離されたあらゆるヒト抗体を含むよう企図されている。係る組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する。しかし、ある特定の実施形態では、係る組換えヒト抗体は、in vitro変異誘発(または、ヒトIg配列のトランスジェニックである動物が使用される場合は、in vivo体細胞変異誘発)に付され、これにより、組換え抗体のVおよびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VおよびV配列に由来し、これに関係するが、in vivoにおけるヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然には存在しなくてよい配列となる。
【0073】
ヒト抗体は、ヒンジ不均一性に関連する2種の形態で存在することができる。一形態において、免疫グロブリン分子は、二量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合によって結び付けられた、およそ150~160kDaの安定的4鎖構築物を含む。第2の形態において、二量体は、鎖間ジスルフィド結合により連結されず、約75~80kDaの分子が、共有結合によりカップリングされた軽および重鎖で構成されて形成される(半抗体(half-antibody))。これらの形態は、親和性精製後であっても、分離が極めて困難であった。
【0074】
様々なインタクトIgGアイソタイプにおける第2の形態の出現頻度は、抗体のヒンジ領域アイソタイプに関連する構造の差によるが、これに限定されない。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一のアミノ酸置換は、ヒトIgG1ヒンジを使用して典型的に観察されるレベルまで、第2の形態の出現を有意に低下させることができる(Angalら(1993年)Molecular Immunology 30巻:105頁)。本発明は、ヒンジ、C2またはC3領域に1個または複数の変異を有する抗体を包含し、これは、例えば、所望の抗体形態の収量を向上するための産生において望ましくなり得る。
【0075】
本発明の抗体は、単離された抗体となり得る。「単離された抗体」は、本明細書において、その天然の環境の少なくとも1種の構成成分から同定および分離および/または回収された抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1個の構成成分からまたは抗体が天然に存在するもしくは天然に産生される組織もしくは細胞から分離または取り出された抗体は、本発明の目的のための「単離された抗体」である。単離された抗体は、組換え細胞内のin situにおける抗体も含む。単離された抗体は、少なくとも1種の精製または単離ステップに付された抗体である。ある特定の実施形態によると、単離された抗体は、他の細胞材料および/または化学物質を実質的に含まなくてよい。
【0076】
本明細書に開示される抗GITR抗体は、この抗体が得られた相当する生殖系列配列と比較して、重および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域に1個または複数のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を含むことができる。係る変異は、本明細書に開示されているアミノ酸配列を、例えば、公開抗体配列データベースから入手できる生殖系列配列と比較することによって容易に確認することができる。本発明は、本明細書に開示されているアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体およびその抗原結合性断片を含み、1個または複数のフレームワークおよび/またはCDR領域内の1個または複数のアミノ酸は、抗体が由来する生殖系列配列の相当する残基(単数または複数)へと、または別のヒト生殖系列配列の相当する残基(単数または複数)へと、または相当する生殖系列残基(単数または複数)の保存的アミノ酸置換へと変異されている(係る配列変化は、本明細書において、「生殖系列変異」とまとめて称される)。当業者であれば、本明細書に開示されている重および軽鎖可変領域配列から始めて、1個または複数の個々の生殖系列変異またはその組み合わせを含む多数の抗体および抗原結合性断片を容易に産生することができる。ある特定の実施形態では、Vおよび/またはVドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基の全てが、抗体が由来する本来の生殖系列配列に見出される残基へと逆変異されている。他の実施形態では、ある特定の残基のみが、例えば、FR1の最初の8アミノ酸の内もしくはFR4の最後の8アミノ酸の内に見出される変異された残基のみまたはCDR1、CDR2もしくはCDR3の内に見出される変異された残基のみが、本来の生殖系列配列へと逆変異されている。他の実施形態では、フレームワークおよび/またはCDR残基(単数または複数)のうち1個または複数が、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体が本来由来する生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の相当する残基(単数または複数)へと変異されている。さらに、本発明の抗体は、フレームワークおよび/またはCDR領域内の2個以上の生殖系列変異のいかなる組み合わせを含有することもできる、例えば、ある特定の個々の残基は、特定の生殖系列配列の相当する残基へと変異されるが、本来の生殖系列配列とは異なるある特定の他の残基は、維持される、あるいは異なる生殖系列配列の相当する残基へと変異される。1個または複数の生殖系列変異を含有する抗体および抗原結合性断片を得たら、結合特異性の向上、結合親和性の増加、アンタゴニストまたはアゴニスト性の生物学的特性の向上または増強(場合による)、免疫原性の低下等、1種または複数の所望の特性に関して容易に検査することができる。このような一般的な様式で得られる抗体および抗原結合性断片は、本発明の範囲内に包含される。
【0077】
本発明はまた、1個または複数の保存的置換を有する、本明細書に開示されているHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列のいずれかの改変体を含む抗GITR抗体を含む。例えば、本発明は、本明細書の表1に示されているHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列のいずれかと比べて、例えば、10個以下、8個以下、6個以下、4個以下等の保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列を有する抗GITR抗体を含む。
【0078】
用語「エピトープ」は、本明細書において、パラトープとして公知の抗体分子の可変領域における特異的な抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は、2個以上のエピトープを有し得る。よって、異なる抗体は、抗原における異なる区域に結合することができ、異なる生物学的効果を有することができる。エピトープは、コンフォメーション性または直鎖状のいずれであってもよい。コンフォメーション性エピトープは、直鎖状ポリペプチド鎖の異なるセグメント由来の空間的に並置されたアミノ酸によって産生される。直鎖状エピトープは、ポリペプチド鎖における隣接するアミノ酸残基によって産生されるエピトープである。ある特定の状況において、エピトープは、抗原における糖類、ホスホリル基またはスルホニル基の部分を含むことができる。
【0079】
用語「実質的同一性」または「実質的に同一」は、核酸またはその断片について言及する場合、後述するFASTA、BLASTまたはGap等、配列同一性のいずれか周知のアルゴリズムによって測定され、適切なヌクレオチド挿入または欠失を用いて別の核酸(またはその相補ストランド)と最適に整列されたときに、ヌクレオチド塩基の少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約96%、97%、98%または99%においてヌクレオチド配列同一性が存在することを示す。参照核酸分子に対し実質的同一性を有する核酸分子は、ある特定の事例において、参照核酸分子にコードされるポリペプチドと同じまたは実質的に類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることができる。
【0080】
ポリペプチドに適用する場合、用語「実質的類似性」または「実質的に類似の」は、2種のペプチド配列が、デフォルトギャップ重量を使用してプログラムGAPまたはBESTFIT等により最適に整列されたときに、少なくとも95%配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%または99%配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基ポジションは、保存的アミノ酸置換により異なる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基により置換される置換である。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変化させないであろう。2種以上のアミノ酸配列が、保存的置換により互いに異なる場合、パーセント配列同一性または類似性の程度は、置換の保存的性質を補正するために上向きに調整することができる。この調整を行うための手段は、当業者に周知のものである。例えば、参考として本明細書に援用されるPearson(1994年)Methods Mol. Biol.24巻:307~331頁を参照のこと。類似の化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸の群の例として、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン;(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリンおよびスレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン;(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニンおよびヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、ならびに(7)硫黄含有側鎖がシステインおよびメチオニンであることが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸およびアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置き換えは、参考として本明細書に援用されるGonnetら、(1992年)Science 256巻:1443~1445頁に開示されているPAM250対数尤度マトリックスにおいて正の値を有するいずれかの変化である。「中程度に保存的」置き換えは、PAM250対数尤度マトリックスにおいて負ではない値を有するいずれかの変化である。
【0081】
配列同一性とも称されるポリペプチドの配列類似性は、典型的には、配列解析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む様々な置換、欠失および他の修飾に割り当てられた類似性の尺度を使用して類似の配列を一致させる。例えば、GCGソフトウェアは、デフォルトパラメータにより使用して、異なる生物種由来の相同ポリペプチド等、密接に関係したポリペプチドの間、あるいは野生型タンパク質とその変異タンパク質との間の配列相同性または配列同一性を決定することのできるGapおよびBestfit等のプログラムを含有する。例えば、GCGバージョン6.1を参照されたい。ポリペプチド配列は、デフォルトまたは推奨されるパラメータを用いてFASTAを使用して比較することもできる。GCGバージョン6.1におけるプログラムFASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、アライメントならびに問い合わせおよび検索配列間の最良の重複の領域のパーセント配列同一性を提供する(Pearson(2000年)上記参照)。本発明の配列を、異なる生物由来の多数の配列を含有するデータベースと比較する際の別の好ましいアルゴリズムは、デフォルトパラメータを使用したコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、それぞれ参考として本明細書に援用されるAltschulら、(1990年)J. Mol. Biol.215巻:403 410頁およびAltschulら、(1997年)Nucleic Acids Res.25巻:3389 402頁を参照のこと。
【0082】
Fc改変体を含む抗GITR抗体
本発明のある特定の実施形態によると、例えば、中性pHと比較して酸性pHにおいて、FcRn受容体への抗体結合を増強または減弱化する1個または複数の変異を含むFcドメインを含む、抗GITR抗体が提供される。例えば、本発明は、FcドメインのC2またはC3領域に変異を含む抗GITR抗体を含み、前記変異(単数または複数)は、酸性環境(例えば、pHが約5.5~約6.0に及ぶエンドソーム)におけるFcRnに対するFcドメインの親和性を増加させる。係る変異は、動物に投与される際に、抗体の血清半減期の増加をもたらすことができる。係るFc修飾の非限定例として、例えば、250(例えば、EまたはQ);250および428(例えば、LまたはF);252(例えば、L/Y/F/WまたはT)、254(例えば、SまたはT)および256(例えば、S/R/Q/E/DまたはT)位における修飾;または428および/もしくは433(例えば、H/L/R/S/P/QまたはK)および/もしくは434(例えば、H/FまたはY)位における修飾;または250および/もしくは428位における修飾;または307もしくは308(例えば、308F、V308F)および434位における修飾が挙げられる。一実施形態では、修飾は、428L(例えば、M428L)および434S(例えば、N434S)修飾;428L、259I(例えば、V259I)および308F(例えば、V308F)修飾;433K(例えば、H433K)および434(例えば、434Y)修飾;252、254および256(例えば、252Y、254Tおよび256E)修飾;250Qおよび428L修飾(例えば、T250QおよびM428L);ならびに307および/または308修飾(例えば、308Fまたは308P)を含む。
【0083】
例えば、本発明は、250Qおよび248L(例えば、T250QおよびM248L);252Y、254Tおよび256E(例えば、M252Y、S254TおよびT256E);428Lおよび434S(例えば、M428LおよびN434S);ならびに433Kおよび434F(例えば、H433KおよびN434F)からなる群より選択される変異の1種または複数のペアまたは群を含むFcドメインを含む抗GITR抗体を含む。前述のFcドメイン変異および本明細書に開示されている抗体可変ドメイン内の他の変異のあらゆる可能な組み合わせは、本発明の範囲内であるとみなされる。
【0084】
抗GITR抗体の生物学的特徴
本発明は、高親和性で単量体ヒトGITRに結合する抗体およびその抗原結合性断片を含む。例えば、本発明は、表面プラズモン共鳴によって37℃で、例えば、本明細書中の実施例3で定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを使用して測定される、約5.0nMに満たないKで単量体ヒトGITR(例えば、hGITR.mmh)に結合する抗GITR抗体を含む。一部の実施形態では、表面プラズモン共鳴によって、例えば、本明細書中の実施例3に定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを使用して測定される、約4nMに満たない、約3nMに満たない、約2nMに満たない、または約1.50nMに満たないKで37℃において単量体ヒトGITRに結合する抗GITR抗体が提供される。
【0085】
本発明はまた、37℃において表面プラズモン共鳴によって、例えば、本明細書中の実施例3に定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを使用して測定される、約12分より長い解離半減期(t1/2)で、単量体ヒトGITR(例えば、hGITR.mmh)に結合する抗体およびその抗原結合性断片を含む。ある特定の実施形態によれば、表面プラズモン共鳴によって、例えば、本明細書中の実施例3に定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを使用して測定される、約12分より長い、約13分より長い、約14分より長い、約15分より長い、またはこれより長いt1/2で、37℃において単量体ヒトGITRに結合する抗GITR抗体が提供される。
【0086】
本発明はまた、高親和性で二量体ヒトGITR(例えば、hGITR.mFc)に結合する抗体およびその抗原結合性断片を含む。例えば、本発明は、37℃において表面プラズモン共鳴によって、例えば、本明細書中の実施例3に定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを使用して測定される、約950pMに満たないKで二量体ヒトGITRに結合する抗GITR抗体を含む。ある特定の実施形態によれば、表面プラズモン共鳴によって、例えば、本明細書中の実施例3に定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを使用して測定される、約900pMに満たない、約850pMに満たない、約800pMに満たない、約700pMに満たない、約600pMに満たない、約500pMに満たない、約400pMに満たない、約300pMに満たない、約200pMに満たない、または約100pMに満たないKで、37℃において二量体ヒトGITRに結合する抗GITR抗体が提供される。
【0087】
本発明はまた、37℃において表面プラズモン共鳴によって、例えば、本明細書中の実施例3に定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを使用して測定される、約7分より長い解離半減期(t1/2)で二量体ヒトGITR(例えば、hGITR.mFc)に結合する抗体およびその抗原結合性断片を含む。ある特定の実施形態によれば、表面プラズモン共鳴によって、例えば、本明細書中の実施例3に定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを使用して測定される、約10分より長い、約20分より長い、約30分より長い、約40分より長い、約50分より長い、約60分より長い、約70分より長い、約80分より長い、約90分より長い、約100分より長い、またはこれより長いt1/2で、37℃において二量体ヒトGITRに結合する抗GITR抗体が提供される。
【0088】
本開示はまた、細胞表面に発現したGITRに結合する抗体およびその抗原結合性断片を含む。例えば、ヒトGITRをトランスフェクトした胚性腎臓293(HEK-293) D9細胞に高親和性で結合する抗体が、本明細書で提供される。例えば、本開示は、エレクトロケミルミネッセンスによって、例えば、本明細書中の実施例4に定義されるアッセイフォーマットまたは実質的に類似のアッセイを使用して測定される、約260pMに満たないEC50でヒトGITRをトランスフェクトした胚性腎臓293(HEK-293)D9細胞に結合する抗GITR抗体を含む。ある特定の実施形態では、エレクトロケミルミネッセンスによって、例えば、本明細書中の実施例4に定義されるアッセイフォーマットまたは実質的に類似のアッセイを使用して測定される、約250pMに満たない、約240pMに満たない、約230pMに満たない、または約220pMに満たないEC50で、ヒトGITRをトランスフェクトした胚性腎臓293(HEK-293)D9細胞に結合する抗GITR抗体が提供される。
【0089】
本発明の抗体は、上述の生物学的特性の1つもしくは複数、またはこれらの任意の組み合わせを有し得る。本発明の抗体の生物学的特性の上記リストは、徹底的であるように意図されていない。本発明の抗体の他の生物学的特性は、本明細書の実施例を含む本開示を再検討することにより当業者に明らかとなる。
【0090】
Fcアンカリング依存性およびアンカリング非依存性のGITR活性化ならびにGITRL遮断
本開示は、例えば、本明細書中の実施例5および/もしくは実施例6に記載されるアッセイフォーマットにおいて、または実質的に類似のアッセイフォーマットにおいて決定される、ヒトGITRを活性化する抗体およびその抗原結合性断片を含む。本明細書において、「ヒトGITRを活性化する」とは、そのコグネートリガンド、GITRリガンド(GITRL)への結合を介するGITRの活性化、またはGITRへのアゴニスト抗GITR抗原結合タンパク質(単数または複数)の結合を指す。アゴニスト抗GITR結合タンパク質によるGITRの活性化に関して、「活性化」は、Fcγ受容体にアンカーしている抗原結合タンパク質の存在下または非存在下にあり得る。ヒトGITR活性化は、in vitroまたはin vivoでのGITRシグナリングの誘導または増強、エフェクターT細胞活性の調節性T細胞抑制の低下;in vitroまたはin vivoでの、循環するT regレベルの低下、腫瘍内T regsのin vivoでの低下、in vitroまたはin vivoでのエフェクターT細胞の活性化、in vitroまたはin vivoでのエフェクターT細胞増殖の誘導または増強、あるいはin vivoでの腫瘍成長の阻害または低減が挙げられるが、これらに限定されない、ある特定の生物学的活性を示すことにおいて現れる。
【0091】
Fcアンカリングの非存在下でのGITR活性化
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体およびその抗原結合性断片は、例えば、本明細書中の実施例5および/もしくは実施例6に記載されるアッセイフォーマットにおいて、または実質的に類似のアッセイフォーマットにおいて決定されるように、Fcアンカリングの非存在下でヒトGITRを活性化する。本明細書において、「Fcアンカリングの非存在下で」とは、GITRおよびGITR媒介性シグナリングの活性化またはFcγ受容体の異なるフォーマットによる抗GITR抗体のクラスター化なしでのGITRLの遮断を指し、例えば、細胞表面に結合したFcγ受容体(単数または複数)の非存在下で、in vitroで共培養した初代T細胞の活性化を介して、決定および定量され得る。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、NFκBレポーターアッセイによって決定されるように、例えば、実施例5または実質的に類似のアッセイフォーマットにおいて記載されるように、Fcアンカリングの非存在下で約3nMに満たないEC50において、約25%より高い活性化パーセンテージでヒトGITRを活性化する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、NFκBレポーターアッセイによって決定されるように、例えば、実施例5または実質的に類似のアッセイフォーマットにおいて記載されるように、Fcアンカリングの非存在下で約3nMに満たないEC50において、約30%より高い、約40%より高い、約50%より高い、約60%より高い、または約65%より高い活性化パーセンテージでヒトGITRを活性化する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、NFκBレポーターアッセイによって決定されるように、例えば、実施例5または実質的に類似のアッセイフォーマットにおいて記載されるように、Fcアンカリングの非存在下で約2nMに満たないEC50において、約30%より高い、約40%より高い、約50%より高い、約60%より高い、または約65%より高い活性化パーセンテージでヒトGITRを活性化する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、NFκBレポーターアッセイによって決定されるように、例えば、実施例5または実質的に類似のアッセイフォーマットにおいて記載されるように、Fcアンカリングの非存在下で約1.5nMに満たないEC50において、約30%より高い、約40%より高い、約50%より高い、約60%より高い、または約65%より高い活性化パーセンテージでヒトGITRを活性化する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、NFκBレポーターアッセイによって決定されるように、例えば、実施例5または実質的に類似のアッセイフォーマットにおいて記載されるように、Fcアンカリングの非存在下で約1.4nMに満たないEC50において、約30%より高い、約40%より高い、約50%より高い、約60%より高い、または約65%より高い活性化パーセンテージでヒトGITRを活性化する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、NFκBレポーターアッセイによって決定されるように、例えば、実施例5または実質的に類似のアッセイフォーマットにおいて記載されるように、Fcアンカリングの非存在下で約1.3nMに満たないEC50において、約30%より高い、約40%より高い、約50%より高い、約60%より高い、または約65%より高い活性化パーセンテージでヒトGITRを活性化する。
【0092】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ナイーブヒトCD4+ T細胞増殖アッセイによって決定されるように、例えば、実施例6または実質的に類似のアッセイフォーマットにおいて記載されるように、Fcアンカリングの非存在下でGITRに結合し、T細胞増殖活性を示す。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ナイーブヒトCD4+ T細胞増殖アッセイによって決定されるように、例えば、実施例6または実質的に類似のアッセイフォーマットにおいて記載されるように、約8nMまたはこれに満たないEC50でFcアンカリングの非存在下でGITRに結合し、T細胞増殖活性を示す。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ナイーブヒトCD4+ T細胞増殖アッセイによって決定されるように、例えば、実施例6または実質的に類似のアッセイフォーマットにおいて記載されるように、約22nM 抗体(または抗原結合性断片)濃度においてバックグラウンドを少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、または少なくとも11倍上回って、Fcアンカリングの非存在下でGITRに結合し、T細胞増殖活性を示す。
【0093】
Fcアンカリングの存在下でのGITR活性化
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、本明細書中の実施例5および/もしくは実施例6に記載されるアッセイフォーマットにおいて、または実質的に類似のアッセイフォーマットにおいて決定されるように、Fcアンカリングの存在下でヒトGITRを活性化する。本明細書において、「Fcアンカリングの存在下で」とは、GITRおよびGITR媒介性シグナリングの活性化、または抗体のFc領域とFcγ受容体(FcgR)の種々の形態(例えば、FcgRI、FcgRIIaまたはFcgRIIIa)との相互作用を介する抗GITR抗体のクラスター化を通じてのGITRLの遮断を指し、例えば、細胞表面に結合したFcγ受容体(単数または複数)の存在下で、in vitroで共培養したT細胞の活性化を介して、決定および定量化され得る。
【0094】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ナイーブヒトCD4+ T細胞増殖アッセイによって決定されるように、例えば、実施例6または実質的に類似のアッセイフォーマットにおいて記載されるように、約33nM 抗体(または抗体結合断片)濃度においてバックグラウンドを少なくとも約2倍上回って、Fcアンカリングの存在下でT細胞増殖活性を示す。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ナイーブヒトCD4+ T細胞増殖アッセイによって決定されるように、例えば、実施例6または実質的に類似のアッセイフォーマットにおいて記載されるように、約33nM抗体(または抗原結合性断片)濃度においてバックグラウンドを少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、または少なくとも約5倍上回って、Fcアンカリングの存在下でT細胞増殖活性を示す。一部の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、ナイーブヒトCD4+ T細胞増殖アッセイによって決定されるように、例えば、実施例6または実質的に類似のアッセイフォーマットにおいて記載されるように、約34nMに満たないEC50で、Fcアンカリングの存在下でT細胞増殖活性を示す。一部の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、ナイーブヒトCD4+ T細胞増殖アッセイによって決定されるように、例えば、実施例6または実質的に類似のアッセイフォーマットにおいて記載されるように、約30nMに満たない、約20nMに満たない、約10nMに満たない、約5nMに満たない、または約4nMに満たないEC50で、Fcアンカリングの存在下でT細胞増殖活性を示す。
【0095】
GITRリガンド媒介性受容体刺激を遮断する抗体
本開示は、例えば、本明細書中の実施例5に記載されるアッセイフォーマットにおいて決定されるように、ヒトGITRリガンド(hGITRL)媒介性受容体刺激を遮断する抗体を含む。本明細書において、「ヒトGITRリガンド(hGITRL)媒介性受容体刺激を遮断する」とは、抗GITR抗原結合タンパク質がそのコグネートリガンド、GITRLへのGITRの結合を遮断する能力を指す。GITRリガンドの遮断は、調節性T細胞によるエフェクターT細胞活性化の抑制を回復し得る。GITRリガンドの遮断は、当該分野で公知の種々の方法を介して決定および定量され得る(例えば、T細胞増殖またはサイトカイン分泌の低減および循環する調節性T細胞のレベルの増大が挙げられる)。
【0096】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、例えば、本明細書中の実施例5に記載されるアッセイフォーマットにおいて決定されるように、GITRアンカリングの非存在下でヒトGITRリガンド(hGITRL)媒介性受容体刺激を遮断する。一部の実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、NFκBレポーターアッセイによって決定されるように、例えば、実施例5または実質的に類似のアッセイフォーマットにおいて記載されるように、約4.0nMに満たないIC50において約55%より高い遮断パーセンテージでFcアンカリングの非存在下でヒトGITRリガンド媒介性受容体刺激を遮断する。一部の実施形態では、抗体またはその抗体結合断片は、NFκBレポーターアッセイによって決定されるように、例えば、実施例5または実質的に類似のアッセイフォーマットにおいて記載されるように、約4.0nMに満たない、約3.0nMに満たない、約2.0nMに満たない、約1.0nMに満たない、約0.9nMに満たない、約0.8nMに満たない、または約0.7nMに満たないIC50において、約60%より高い、約70%より高い、約80%より高い、または約85%より高い遮断パーセンテージで、Fcアンカリングの非存在下でヒトGITRリガンド媒介性受容体刺激を遮断する。
【0097】
一部の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、ヒトGITRを活性化し、NFκBレポーターアッセイによって、例えば、実施例5に記載されるアッセイまたは実質的に類似のアッセイにおいて決定されるように、Fcアンカリングの非存在下で約25%に満たない遮断パーセンテージでヒトGITRリガンド媒介性受容体刺激を遮断する。一部の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、ヒトGITRを活性化し、NFκBレポーターアッセイによって、例えば、実施例5に記載されるアッセイまたは実質的に類似のアッセイにおいて決定されるように、Fcアンカリングの非存在下で約54%に満たない遮断パーセンテージでヒトGITRリガンド媒介性受容体刺激を遮断する。一部の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、ヒトGITRを活性化し、NFκBレポーターアッセイによって、例えば、実施例5に記載されるアッセイまたは実質的に類似のアッセイにおいて決定されるように、Fcアンカリングの非存在下で、約40%に満たない、約30%に満たない、約20%に満たない、約10%に満たない、約5%に満たない、または約1%に満たない遮断パーセンテージでヒトGITRリガンド媒介性受容体刺激を遮断する。一部の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、少なくとも約50%の活性化パーセンテージにおいてヒトGITRを活性化し、NFκBレポーターアッセイによって、例えば、実施例5に記載されるアッセイまたは実質的に類似のアッセイにおいて決定されるように、Fcアンカリングの非存在下で約50%より高い遮断パーセンテージにおいて、hGITRL媒介性受容体刺激を遮断しない。
【0098】
一部の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、ヒトGITRを活性化しかつヒトGITRリガンド(hGITRL)媒介性受容体刺激を遮断する。
【0099】
一部の実施形態では、抗体は、例えば、本明細書中の実施例5に記載されるアッセイフォーマットまたは実質的に類似のアッセイにおいて決定されるように、Fcアンカリングの非存在下で、ヒトGITRを活性化しかつヒトGITRリガンド(hGITRL)媒介性受容体刺激を遮断する。一部の実施形態では、
(A)抗体または抗原結合性断片は、以下からなる群:
i.NFκBレポーターアッセイによって決定される、約3nMに満たないEC50において、約25%より高い活性化パーセンテージで、Fcアンカリングの非存在下でヒトGITRを活性化する、および
ii.NFκBレポーターアッセイによって決定される、約1.0nMに満たないEC50で、Fcアンカリングの非存在下でヒトGITRを活性化する、
より選択される特性のうちの少なくとも一方を有する;ならびに
(B)抗体または抗原結合性断片は、NFκBレポーターアッセイによって決定される、約4.0nMに満たないIC50において、約54%より高い遮断パーセンテージにおいてFcアンカリングの非存在下でhGITRL媒介性受容体刺激を遮断する。
【0100】
一部の実施形態では、
(A)抗体または抗原結合性断片は、NFκBレポーターアッセイによって決定される、約1.5nMに満たないEC50において、約50%より高い活性化パーセンテージにおいてFcアンカリングの非存在下でヒトGITRを活性化する;および
(B)抗体または抗原結合性断片は、NFκBレポーターアッセイによって決定される、約4.0nMに満たないIC50において、約54%より高い遮断パーセンテージにおいてFcアンカリングの非存在下でhGITRL媒介性受容体刺激を遮断する。
【0101】
エピトープマッピングおよび関連技法
本発明の抗体が結合するエピトープは、GITRタンパク質の3個またはそれを超える(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはそれを超える)アミノ酸の単一の近接配列からなることができる。あるいは、エピトープは、GITRの複数の非近接アミノ酸(またはアミノ酸配列)からなることができる。一部の実施形態では、エピトープは、GITRのGITRL結合ドメインにまたはその付近に位置する。他の実施形態では、エピトープは、GITRのGITRL結合ドメインの外側に、例えば、係るエピトープに結合される場合、抗体が、GITRへのGITRL結合に干渉しないGITRの表面における位置に位置する。
【0102】
当業者に公知の様々な技法を使用して、抗体が、ポリペプチドまたはタンパク質内の「1個または複数のアミノ酸と相互作用」するか決定することができる。例示的な技法は、例えば、Antibodies、HarlowおよびLane(Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harb.、NY)に記載されているもの等の慣用的なクロスブロッキングアッセイ、アラニン走査変異解析、ペプチドブロット解析(Reineke、2004年、Methods Mol Biol 248巻:443~463頁)およびペプチド切断解析を含む。加えて、抗原のエピトープ切除、エピトープ抽出および化学修飾等の方法を用いることができる(Tomer、2000年、Protein Science 9巻:487~496頁)。抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するために使用することのできる別の方法は、質量分析により検出される水素/重水素交換である。一般用語において、水素/重水素交換方法は、目的のタンパク質を重水素標識するステップと、続いて抗体を重水素標識タンパク質
に結合させるステップを含む。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移して、抗体によって保護された残基(重水素標識されたままになる)を除く全残基において水素-重水素交換を行わせる。抗体の解離後に、標的タンパク質を、プロテアーゼ切断および質量分析による解析に付し、これにより、抗体が相互作用する特異的なアミノ酸に相当する重水素標識残基を明らかにする。例えば、Ehring(1999年)Analytical Biochemistry 267巻(2号):252~259頁;EngenおよびSmith(2001年)Anal. Chem.73巻:256A~265A頁を参照されたい。
【0103】
本発明は、本明細書に記載されている特異的な例示的な抗体(例えば、本明細書における表1に表記されているアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)のいずれかと同じエピトープに結合する抗GITR抗体をさらに含む。同様に、本発明は、GITRへの結合に関して、本明細書に記載されている特異的な例示的な抗体(例えば、本明細書における表1に表記されているアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)のいずれかと競合する抗GITR抗体も含む。
【0104】
本技術分野で公知かつ本明細書で例証されている慣用的な方法を使用することにより、抗体が、参照抗GITR抗体と同じエピトープに結合するか、またはこれと結合に関して競合するか容易に決定することができる。例えば、被験抗体が、本発明の参照抗GITR抗体と同じエピトープに結合するか決定するために、参照抗体を、GITRタンパク質に結合させる。次に、GITR分子に結合する被験抗体の能力を評価する。被験抗体が、参照抗GITR抗体との飽和結合後にGITRに結合することができる場合、被験抗体が、参照抗GITR抗体とは異なるエピトープに結合すると結論付けることができる。他方では、被験抗体が、参照抗GITR抗体との飽和結合後にGITR分子に結合できない場合、被験抗体は、本発明の参照抗GITR抗体によって結合されるエピトープと同じエピトープに結合し得る。続いて、追加の慣用的な実験法(例えば、ペプチド変異および結合解析)を実行して、観察された被験抗体の結合の欠如が、実際に、参照抗体と同じエピトープへの結合によるものであるか、あるいは立体的遮断(または別の現象)が、観察される結合の欠如の原因であるかを確認することができる。この種の実験は、ELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリーまたは本技術分野で利用できる他のいずれかの定量的もしくは定性的抗体結合アッセイを使用して行うことができる。本発明のある特定の実施形態に従って、例えば、1、5、10、20または100倍過剰な一方の抗体が、競合的結合アッセイ(例えば、Junghansら、Cancer Res.1990年:50巻:1495~1502頁を参照)において測定される通り、他方の結合を少なくとも50%、ただし好ましくは75%、90%さらには99%阻害する場合、2種の抗体は、同じ(または重複する)エピトープに結合する。あるいは、一方の抗体の結合を低下または排除する抗原における基本的にあらゆるアミノ酸変異が、他方の結合を低下または排除する場合、2種の抗体は、同じエピトープに結合すると考慮される。一方の抗体の結合を低下または排除するアミノ酸変異のサブセットのみが、他方の結合を低下または排除する場合、2種の抗体は、「重複するエピトープ」を有すると考慮される。
【0105】
抗体が、参照抗GITR抗体と結合に関して競合(または結合に関して交差競合)するか否か決定するために、2種の配向性において上に記載されている結合手法を行う:第1の配向性において、参照抗体を、飽和条件下でGITRタンパク質に結合させ、続いてGITR分子への被験抗体の結合を評価する。第2の配向性において、被験抗体を、飽和条件下でGITR分子に結合させ、続いてGITR分子への参照抗体の結合を評価する。両方の配向性において、第1の(飽和)抗体のみが、GITR分子に結合することができる場合、被験抗体および参照抗体が、GITRへの結合に関して競合すると結論付けられる。当業者によって認められる通り、参照抗体と結合に関して競合する抗体は、参照抗体と同じエピトープに必ずしも結合しないが、重複するまたは隣接するエピトープに結合することにより、参照抗体の結合を立体的に遮断することができる。
【0106】
ヒト抗体の調製
本発明の抗GITR抗体は、完全ヒト抗体となり得る。完全ヒトモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体を生成するための方法は、本技術分野で公知である。いずれかの係る公知の方法を本発明の文脈において使用して、ヒトGITRに特異的に結合するヒト抗体を作製することができる。
【0107】
例えばVELOCIMMUNE(商標)技術、または完全ヒトモノクローナル抗体を生成するための他のいずれかの同様の公知の方法を使用して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する、GITRに対する高親和性キメラ抗体が、最初に単離される。後述する実験セクションにおける通り、抗体は、親和性、リガンド遮断活性、選択性、エピトープ等を含む望ましい特徴に関して特徴付けされ、選択される。必要に応じて、マウス定常領域を、所望のヒト定常領域、例えば、野生型または修飾型IgG1またはIgG4と置き換えて、完全ヒト抗GITR抗体を生成する。選択される定常領域は、特定の用途に応じて変動し得るが、高親和性抗原結合および標的特異性特徴は、可変領域に属する。ある特定の事例において、完全ヒト抗GITR抗体は、抗原陽性B細胞から直接的に単離される。
【0108】
生物学的同等物
本発明の抗GITR抗体および抗体断片は、記載されている抗体のアミノ酸配列から変動するがヒトGITRに結合する能力を保持するアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。係る改変体抗体および抗体断片は、親配列と比較してアミノ酸の1個または複数の付加、欠失または置換を含むが、記載されている抗体の生物学的活性と基本的に同等な生物学的活性を示す。同様に、本発明の抗GITR抗体をコードするDNA配列は、開示されている配列と比較してヌクレオチドの1個または複数の付加、欠失または置換を含むが、本発明の抗GITR抗体または抗体断片と基本的に生物学的に同等である抗GITR抗体または抗体断片をコードする配列を包含する。係る改変体アミノ酸およびDNA配列の例は、上記で検討されている。
【0109】
2種の抗原結合タンパク質または抗体が、例えば、同じモル濃度の用量にて類似の実験条件下、単一用量または複数用量のいずれかで投与された際に、その吸収の速度および程度が有意差を示さない薬学的同等物または薬学的代替物である場合、両者は生物学的に同等であるとみなされる。いくつかの抗体が、その吸収の程度において同等であるが、その吸収速度においては同等ではない場合において、これら抗体は、同等物または薬学的代替物であるとみなされ、そして係る吸収速度における差が意図的であり、標識において反映され、例えば慢性使用における有効な体内薬物濃度の到達に必須ではなく、試験される特定の薬物製品にとって医学的に無意味であるとみなされるため、これらが生物学的に同等であると依然としてみなされ得る。
【0110】
一実施形態では、2種の抗原結合タンパク質は、その安全性、純度および効力において臨床的に有意義な差がない場合、生物学的に同等である。
【0111】
一実施形態では、参照産物および生物学的産物の間で切り替えない継続的療法と比較して、免疫原性の臨床的に有意な変化または有効性の減弱化を含む有害効果のリスクにおいて増大が予想されずに、患者に対して、参照産物および生物学的産物の間でこのような切り替えを1回または複数回行うことができる場合、2種の抗原結合タンパク質は、生物学的に同等である。
【0112】
一実施形態では、2種の抗原結合タンパク質が両者共に、使用条件(単数または複数)に対し共通の作用機序(単数または複数)によって、係る機序が公知の程度まで作用する場合、2種の抗原結合タンパク質は、生物学的に同等である。
【0113】
生物学的同等性は、in vivoおよびin vitro方法によって示すことができる。生物学的同等性の測定は、例えば、(a)時間の関数として血液、血漿、血清または他の生体液における抗体またはその代謝物の濃度を測定する、ヒトまたは他の哺乳動物におけるin vivo検査;(b)ヒトin vivoバイオアベイラビリティデータと相関され、これを合理的に予測するin vitro検査;(c)時間の関数として抗体(またはその標的)の適切な急性薬理学的効果を測定する、ヒトまたは他の哺乳動物におけるin vivo検査;および(d)抗体の安全性、有効性またはバイオアベイラビリティまたは生物学的同等性を確立する十分に制御された臨床治験における検査を含む。
【0114】
本発明の抗GITR抗体の生物学的に同等な改変体は、例えば、残基もしくは配列の様々な置換を行うことによりまたは生物学的活性に必要とされない末端もしくは内部残基もしくは配列を欠失させることにより、構築することができる。例えば、生物学的活性に必須ではないシステイン残基を欠失または他のアミノ酸と置き換えて、復元における不要なまたは不正確な分子内ジスルフィド架橋の形成を防止することができる。他の文脈において、生物学的に同等な抗体は、抗体のグリコシル化特徴を修飾するアミノ酸変化、例えば、グリコシル化を排除または除去する変異を含む抗GITR抗体改変体を含むことができる。
【0115】
種選択性および種交差反応性
本発明は、ある特定の実施形態によると、ヒトGITRに結合するが、他の種由来のGITRには結合しない抗GITR抗体を提供する。本発明は、ヒトGITRおよび1種または複数の非ヒト種に由来するGITRに結合する抗GITR抗体も含む。例えば、本発明の抗GITR抗体は、ヒトGITRに結合することができ、場合により、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル(cynomologous)、マーモセット、アカゲザルまたはチンパンジーのGITRのうち1種または複数に結合しても結合しなくてもよい。本発明のある特定の例示的な実施形態によると、ヒトGITRおよびカニクイザル(例えば、Macaca fascicularis)GITRに特異的に結合する抗GITR抗体が提供される。本発明の他の抗GITR抗体は、ヒトGITRに結合するが、カニクイザルGITRには結合しない、またはごく弱く結合する。
【0116】
多特異的抗体
本発明の抗体は、単一特異的または多特異的(例えば、二重特異的)となり得る。多特異的抗体は、1種の標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的となり得る、あるいは2種以上の標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含有し得る。例えば、Tuttら、1991年、J. Immunol.147巻:60~69頁;Kuferら、2004年、Trends Biotechnol.22巻:238~244頁を参照されたい。本発明の抗GITR抗体は、別の機能分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質に連結するまたはこれと同時発現させることができる。例えば、抗体またはその断片は、別の抗体または抗体断片等、1種または複数の他の分子実体へと機能的に連結して(例えば、化学的カップリング、遺伝的融合、非共有結合的会合または他の方法により)、第2の結合特異性を有する二重特異的または多特異的抗体を産生することができる。
【0117】
本発明は、免疫グロブリンの一方のアームがヒトGITRに結合し、免疫グロブリンの他方のアームが第2の抗原に特異的な二重特異的抗体を含む。GITR結合アームは、本明細書における表1に表記されているHCVR/LCVRまたはCDRアミノ酸配列のいずれかを含むことができる。ある特定の実施形態では、GITR結合アームは、ヒトGITRに結合し、GITRへのGITRL結合を遮断する。他の実施形態では、GITR結合アームは、ヒトGITRに結合するが、GITRへのGITRL結合を遮断しない。一部の実施形態では、GITR結合アームは、ヒトGITRに結合し、GITRシグナリングを活性化する。他の実施形態では、GITR結合アームは、GITRL媒介性受容体刺激を遮断する。本発明はまた、抗体の一方のアームがヒトGITRの第1のエピトープに結合し、その抗体の他方のアームがヒトGITRの第2の異なるエピトープに結合する二重特異的抗体を含む。
【0118】
本発明の文脈において使用することのできる例示的な二重特異的抗体フォーマットは、第1の免疫グロブリン(Ig)C3ドメインおよび第2のIg C3ドメインの使用であって、第1および第2のIg C3ドメインが、互いに少なくとも1個のアミノ酸が異なり、少なくとも1個のアミノ酸の差異が、アミノ酸の差異を欠く二重特異的抗体と比較してプロテインAへの二重特異的抗体の結合を低下させる使用を含む。一実施形態では、第1のIg C3ドメインは、プロテインAに結合し、第2のIg C3ドメインは、H95R修飾(IMGTエクソンナンバリングによる;EUナンバリングによるH435R)等、プロテインA結合を低下または消失させる変異を含有する。第2のC3は、Y96F修飾(IMGTによる;EUによるY436F)をさらに含むことができる。第2のC3内に見出すことのできるさらなる修飾は、IgG1抗体の場合、D16E、L18M、N44S、K52N、V57MおよびV82I(IMGTによる;EUによるD356E、L358M、N384S、K392N、V397MおよびV422I);IgG2抗体の場合、N44S、K52NおよびV82I(IMGT;EUによるN384S、K392NおよびV422I);ならびにIgG4抗体の場合、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79QおよびV82I(IMGTによる;EUによるQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419QおよびV422I)を含む。上に記載されている二重特異的抗体フォーマットにおける変種は、本発明の範囲内であるとみなされる。
【0119】
本発明の文脈において使用することのできる他の例示的な二重特異的フォーマットとして、例えば、scFvに基づくまたはダイアボディ二重特異的フォーマット、IgG-scFv融合体、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、クアドローマ、ノブイントゥーホール(knobs-into-holes)、共通軽鎖(例えば、ノブイントゥーホールを有する共通軽鎖等)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、デュオボディ(Duobody)、IgG1/IgG2、二重作用Fab(DAF)-IgGおよびMab二重特異的フォーマットが挙げられるがこれらに限定されない(例えば、前述のフォーマットの総説に関して、Kleinら、2012年、mAbs 4巻:6号、1~11頁およびこれに引用されている参考文献を参照)。二重特異的抗体は、ペプチド/核酸コンジュゲーションを使用して構築することもでき、例えば、直交性の化学反応性を有する非天然アミノ酸を使用して、部位特異的抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを生成すると、これは、特定された組成、結合価および幾何学を有する多量体の複合体へと自己集合する(例えば、Kazaneら、J. Am. Chem. Soc.[Epub:2012年12月4日]を参照)。
【0120】
治療製剤および投与
本発明は、本発明の抗GITR抗体またはその抗原結合性断片を含む薬学的組成物を提供する。本発明の薬学的組成物は、適した担体、賦形剤および移動、送達、耐性その他の向上をもたらす他の薬剤と共に製剤化される。多数の適切な製剤は、あらゆる薬剤師に公知の処方集に見出すことができる:Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton, PA。これらの製剤は、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有小胞(LIPOFECTIN(商標)、Life Technologies、Carlsbad、CA等)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油型および油中水型エマルジョン、エマルジョンカーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲルならびにカーボワックスを含有する半固体混合物を含む。Powellら、「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA(1998年)J Pharm Sci Technol 52巻:238~311頁も参照されたい。
【0121】
患者に投与される抗体の用量は、患者の年齢およびサイズ、標的疾患、状態、投与経路その他に応じて変動し得る。好まれる用量は、典型的には、体重または体表面積に従って計算される。成体患者において、通常、約0.01~約20mg/kg体重、より好ましくは、約0.02~約7、約0.03~約5または約0.05~約3mg/kg体重の単一用量で、本発明の抗体を静脈内投与することが有利となり得る。状態の重症度に応じて、処置の頻度および持続時間を調整することができる。抗GITR抗体を投与するための有効投薬量およびスケジュールは、経験的に決定することができる;例えば、患者の進行を定期的評価によってモニターすることができ、これに従って用量を調整することができる。さらに、投薬量を種間で一定の基準で決めることは、本技術分野で周知の方法を使用して行うことができる(例えば、Mordentiら、1991年、Pharmaceut. Res.8巻:1351頁)。
【0122】
様々な送達系が公知であり、本発明の薬学的組成物の投与に使用することができ、例えば、リポソーム中のカプセル化、マイクロパーティクル、マイクロカプセル、変異体ウイルスを発現することのできる組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシスが挙げられる(例えば、Wuら、1987年、J. Biol. Chem.262巻:4429~4432頁を参照)。導入の方法として、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外および経口経路が挙げられるがこれらに限定されない。組成物は、いずれかの簡便な経路により、例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸管粘膜等)を通した吸収により投与することができ、他の生物学的に活性な薬剤と共に投与することができる。投与は、全身性であっても局所性であってもよい。
【0123】
本発明の薬学的組成物は、標準的な針およびシリンジにより皮下にまたは静脈内に送達することができる。加えて、皮下送達に関して、ペン型送達装置(pen delivery device)は、本発明の薬学的組成物の送達において容易に適用される。係るペン型送達装置は、再使用可能または使い捨てとなり得る。再使用可能なペン型送達装置は、一般に、薬学的組成物を含有する交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の薬学的組成物が全て投与され、カートリッジが空となったら、空のカートリッジを容易に廃棄し、薬学的組成物を含有する新しいカートリッジと交換することができる。続いて、ペン型送達装置を再使用することができる。使い捨てペン型送達装置において、交換可能なカートリッジは存在しない。寧ろ、使い捨てペン型送達装置は、装置内のリザーバーに保たれた薬学的組成物を予め充填した状態で届けられる。リザーバーから薬学的組成物が空になったら、装置全体が廃棄される。
【0124】
多数の再使用可能なペン型および自動注入送達装置が、本発明の薬学的組成物の皮下送達において適用される。例として、ほんの数例ではあるが、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford、Inc.、英国ウッドストック)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、スイス、ブルグドルフ)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.、インディアナ州インディアナポリス)、NOVOPEN(商標)I、IIおよびIII(Novo Nordisk、デンマーク、コペンハーゲン)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、デンマーク、コペンハーゲン)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、ニュージャージー州フランクリンレイクス)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)およびOPTICLIK(商標)(sanofi-aventis、ドイツ、フランクフルト)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の薬学的組成物の皮下送達において適用される使い捨てペン型送達装置の例として、ほんの数例ではあるが、SOLOSTAR(商標)ペン(sanofi-aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)自動注入装置(Amgen、Thousand Oaks、CA)、PENLET(商標)(Haselmeier、Stuttgart、Germany)、EPIPEN(Dey、L.P.)およびHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs、Abbott Park IL)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0125】
ある特定の状況において、薬学的組成物は、放出制御系において送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる(Langer、上記参照;Sefton、1987年、CRC Crit. Ref. Biomed. Eng.14巻:201頁を参照)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる;Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise(編)、1974年、CRC Pres.、Boca Raton、Floridaを参照されたい。さらに別の実施形態では、放出制御系は、組成物の標的に近接して置くことができ、このため、全身性用量の一部分のみを必要とする(例えば、Goodson、1984年、Medical Applications of Controlled Release、上記参照中、2巻、115~138頁を参照)。他の放出制御系は、Langer、1990年、Science 249巻:1527~1533頁による総説で検討されている。
【0126】
注射用調製物は、静脈内、皮下、皮内および筋肉内注射、点滴注入等のための剤形を含むことができる。これらの注射用調製物は、公に知られた方法によって調製することができる。例えば、注射用調製物は、例えば、注射のために従来から使用されてきた無菌水性媒体または油性媒体において、上に記載されている抗体またはその塩を溶解、懸濁または乳化することにより調製することができる。注射用の水性媒体として、例えば、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、水素化ヒマシ油のHCO-50(ポリオキシエチレン(50mol)付加物)]等、適切な可溶化剤と組み合わせて使用することのできる、生理食塩水、グルコースを含有する等張性溶液および他の補助的薬剤等が存在する。油性媒体として、例えば、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等、可溶化剤と組み合わせて使用することができる、ゴマ油、ダイズ油等が用いられている。このように調製された注射液は、好ましくは、適切なアンプル内に充填される。
【0127】
有利には、上に記載されている経口または非経口的使用のための薬学的組成物は、活性成分の用量を適合させるのに適した単位用量の剤形へと調製される。単位用量の係る剤形として、例えば、錠剤、丸剤、カプセル、注射(アンプル)、坐剤等が挙げられる。含有されている先述の抗体の量は一般に、単位用量の剤形当たり約5~約500mgである;特に注射形態において、先述の抗体は、約5~約100mgで、他の剤形では約10~約250mgで含有されることが好ましい。
【0128】
抗体の治療的使用
本発明は、それを必要とする被験体に、抗GITR抗体(例えば、本明細書における表1に表記されているHCVR/LCVRまたはCDR配列のいずれかを含む抗GITR抗体)を含む治療組成物を投与するステップを含む方法を含む。治療組成物は、本明細書に開示されている抗GITR抗体、その抗原結合性断片またはADCのいずれかと、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含むことができる。
【0129】
本発明の抗体は、GITR発現もしくは活性と関連するかまたはこれによって媒介されるか、あるいはGITRとGITRLとの間の相互作用を遮断すること、ならびに/またはGITR活性および/もしくはシグナリングを阻害または刺激することによって処置可能であるいずれかの疾患または障害の処置、予防および/または改善にとりわけ有用である。例えば、本開示の抗体および抗原結合性断片は、例えば、GITR活性化を通じて免疫応答を調節することによって、免疫および増殖性疾患または障害(例えば、がん)を処置するために使用され得る。
【0130】
本開示の抗体および抗原結合性断片は、免疫応答を増強することによって疾患または障害を処置するために使用され得る。本開示は、被験体において抗腫瘍免疫応答を調節するための方法を包含し、上記方法は、本明細書で記載される抗GITR抗体または抗原結合性断片を被験体に投与する工程を包含する。ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、T調節性細胞によって、Tエフェクター細胞の抑制活性を低減する。一部の実施形態では、本開示の抗体または抗原結合性断片は、治療上の利益に寄与する腫瘍内Tエフェクター/T調節性細胞比を高める。一部の実施形態では、本開示の抗体または抗原結合性断片は、T細胞生存を促進する。
【0131】
抗体および抗原結合性断片によって処置され得る例示的な疾患または障害としては、免疫および増殖性疾患または障害、例えば、がんが挙げられる。本発明の抗体および抗原結合性断片を使用して、脳および髄膜、口腔咽頭部、肺および気管支樹、胃腸管、雄性および雌性生殖器管、筋肉、骨、皮膚および付属器、結合組織、脾臓、免疫系、造血性細胞および骨髄、肝臓および尿路ならびに眼等の特殊な感覚器官に生じる原発性および/または転移性腫瘍を処置することができる。一部の実施形態では、本開示の抗体および抗原結合性断片は、固形腫瘍または血液由来の腫瘍を処置するために使用される。ある特定の実施形態では、本開示の抗体は、以下のがんのうちの1種または複数を処置するために使用される:腎細胞がん、膵臓がん、頭頚部がん、前立腺がん、悪性神経膠腫、骨肉腫、結腸直腸がん、胃がん(例えば、MET増殖を伴う胃がん)、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、子宮頚がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、滑膜肉腫、甲状腺がん、乳がん、黒色腫、精巣がん、腎臓がん、食道がん、子宮がん、子宮内膜がん、または肝臓がん。
【0132】
ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、自己免疫疾患(円形脱毛症、自己免疫性肝炎、セリアック病、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、溶血性貧血、炎症性腸疾患、炎症性ミオパチー、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、白斑、自己免疫性膵炎、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性血小板減少性紫斑病、クローン病、I型糖尿病、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、グッドパスチャー症候群、重症筋無力症、乾癬性関節炎、リウマチ熱、潰瘍性大腸炎、血管炎およびウェゲナー肉芽腫症が挙げられるが、これらに限定されない)を処置するために有用である。
【0133】
本明細書に記載されている処置方法の文脈において、抗GITR抗体は、単独療法として(すなわち、唯一の治療剤として)、または1種もしくは複数の追加的な治療剤と組み合わせて(その例は、本明細書の他の箇所に記載されている)投与することができる。
【0134】
併用療法および製剤
本開示の抗GITR抗体および有利なことには、本開示の抗体またはその抗原結合性断片と併用され得る任意の追加的な治療剤を利用する併用療法もまた、本明細書で提供される。
【0135】
本発明は、1種または複数の追加的な治療的に活性な構成成分と組み合わせた本明細書に記載されている抗GITR抗体のいずれかを含む組成物および治療製剤、ならびにそれを必要とする被験体に係る組み合わせを投与するステップを含む処置方法を含む。
【0136】
本発明の抗体は、がん(例えば、腎細胞がん、結腸直腸がん、多形性膠芽腫、頭頚部の扁平上皮がん、非小細胞肺がん、結腸がん、卵巣がん、腺がん、前立腺がん、神経膠腫、および黒色腫が挙げられる)を処置するために使用される1種または複数の抗がん薬または治療と相乗作用的に組み合わされ得る。腫瘍成長を阻害するおよび/またはがん患者の生存を高めるために、免疫刺激療法および/または免疫支持療法(immunosupportive therapies)と組み合わせて、本発明の抗GITR抗体を使用することが本明細書で企図される。免疫刺激療法は、抑制される免疫細胞に対して「ブレーキを開放する」かまたは免疫応答を活性化するために「アクセルを踏む」かのいずれかによる、免疫細胞活性を増大させる直接的免疫刺激療法を含む。例としては、他のチェックポイント受容体の標的化、ワクチン接種およびアジュバントが挙げられる。免疫支持モダリティーは、免疫原性細胞死、炎症を促進することによって腫瘍の抗原性を増大させ得るか、または抗腫瘍免疫応答を促進する他の間接的効果を有し得る。例としては、放射線療法、化学療法、抗血管新生薬剤、および手術が挙げられる。
【0137】
本開示は、被験体において抗腫瘍免疫応答を調節するための方法を包含し、上記方法は、上記被験体に、受容体活性化に対する1種または複数のアゴニスト性抗体およびT細胞刺激を増強して、腫瘍破壊を促進する阻害性受容体に対する1種または複数の遮断抗体と組み合わせて、抗GITR抗体を投与する工程を包含する。
【0138】
本開示は、被験体において抗腫瘍免疫応答を調節するための方法を包含し、上記方法は、第2のT細胞活性化受容体(すなわち、GITR以外)に結合する1種または複数の単離された抗体またはその抗原結合性断片と組み合わせて、本明細書で記載される抗GITR抗体または抗原結合性断片を被験体に投与する工程を包含する。一部の実施形態では、その第2のT細胞活性化受容体は、CD28、OX40、CD137、CD27、またはVEMである。本開示はまた、本明細書で提供される抗GITR抗体またはその抗原結合性断片、および上記第2のT細胞活性化受容体に結合する抗体または抗原結合性断片を含む製剤を包含する。
【0139】
種々の実施形態では、本発明の1種または複数の抗体は、以下と組み合わせて使用され得る:PD-L1に対する抗体、PD-1に対する抗体(例えば、ニボルマブ)、LAG-3インヒビター、CTLA-4インヒビター(例えば、イピリムマブ)、TIM3インヒビター、BTLAインヒビター、TIGITインヒビター、CD47インヒビター、別のT細胞コインヒビター(co-inhibitor)またはリガンド(例えば、CD-28、2B4、LY108、LAIR1、ICOS、CD160またはVISTAに対する抗体)のアンタゴニスト、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)インヒビター、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト[例えば、アフリベルセプトのような「VEGF-Trap」もしくはUS 7,087,411に表記されている他のVEGF阻害融合タンパク質、または抗VEGF抗体またはその抗原結合性断片(例えば、ベバシズマブもしくはラニビズマブ)またはVEGF受容体の低分子キナーゼインヒビター(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、もしくはパゾパニブ)]、Ang2インヒビター(例えば、ネスバクマブ)、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)インヒビター、上皮増殖因子受容体(EGFR)インヒビター(例えば、エルロチニブ、セツキシマブ)、共刺激受容体のアゴニスト(例えば、グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質のアゴニスト)、腫瘍特異的抗原(例えば、CA9、CA125、黒色腫関連抗原3(MAGE3)、癌胎児性抗原(CEA)、ビメンチン、腫瘍M2-PK、前立腺特異的抗原(PSA)、mucin-1、MART-1、およびCA19-9)に対する抗体、ワクチン(例えば、カルメットゲラン桿菌、がんワクチン)、抗原提示を増大させるアジュバント(例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)、二重特異的抗体(例えば、CD3xCD20二重特異的抗体、PSMAxCD3二重特異的抗体)、細胞毒、化学療法剤(例えば、ダカルバジン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、およびビンクリスチン)、シクロホスファミド、放射線療法、IL-6Rインヒビター(例えば、サリルマブ)、IL-4Rインヒビター(例えば、デュピルマブ)、IL-10インヒビター、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-7、IL-21、およびIL-15)、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)(例えば、抗CD19-DM4 ADC、および抗DS6-DM4 ADC)、抗炎症薬(例えば、コルチコステロイド、および非ステロイド系抗炎症薬)、栄養補助食品(例えば、抗酸化剤またはがんを処置するための任意の緩和ケア)。ある特定の実施形態では、本発明の抗GITR抗体は、抗腫瘍応答を増大させるために、がんワクチン(樹状細胞ワクチン、腫瘍溶解性ウイルス、腫瘍細胞ワクチンなどを含む)と組み合わせて使用され得る。本発明の抗GITR抗体と組み合わせて使用され得るがんワクチンの例としては、黒色腫および膀胱がんのためのMAGE3ワクチン、乳がんのためのMUC1ワクチン、脳のがん(多形性膠芽腫を含む)のためのEGFRv3(例えば、Rindopepimut)、またはALVAC-CEA(CEA+がんのための)が挙げられる。
【0140】
一部の実施形態では、本明細書で記載される1種または複数の抗GITR抗体は、1種または複数の抗PD1抗体(米国特許公開番号2015/0203579(これは、その全体において本明細書に参考として援用される)に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない)と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、抗GITR抗体は、H1H14536P2またはH2aM14536P2である。一部の実施形態では、抗PD1抗体は、REGN 2810(米国特許公開番号2015/0203579に開示されているH4H7798Nとしても公知)、ペムブロリズマブ、またはニボルマブである。
【0141】
ある特定の実施形態では、本発明の抗GITR抗体は、長期の持続的抗腫瘍応答を生成するおよび/またはがんを有する患者の生存を高める方法において、放射線療法と組み合わせて投与され得る。一部の実施形態では、本発明の抗GITR抗体は、がん患者への放射線療法の投与の前に、同時に、または後に投与され得る。例えば、放射線療法は、腫瘍病変への1または複数の線量において投与され得、続いて、本発明の抗GITR抗体の1または複数の用量が投与され得る。一部の実施形態では、放射線療法は、患者の腫瘍の局所的免疫原性を高める(放射線療法を助ける)および/または腫瘍細胞を殺傷する(切除的放射線療法)ために腫瘍病変に局所的に投与され得、続いて、本発明の抗GITR抗体が全身投与され得る。例えば、頭蓋内放射線療法は、脳のがん(例えば、多形性膠芽腫)を有する患者に、本発明の抗GITR抗体の全身投与と組み合わせて投与され得る。ある特定の実施形態では、本発明の抗GITR抗体は、放射線療法および化学療法剤(例えば、テモゾロミド)またはVEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト)と組み合わせて投与され得る。
【0142】
ある特定の実施形態では、本発明の抗GITR抗体は、LCMV、HIV、HPV、HBVまたはHCVによって引き起こされる慢性ウイルス感染症を処置するために、1種または複数の抗ウイルス薬と組み合わせて投与され得る。抗ウイルス薬の例としては、ジドブジン、ラミブジン、アバカビル、リバビリン、ロピナビル、エファビレンツ、コビシスタット、テノフォビル、リルピビリンおよびコルチコステロイドが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、本発明の抗GITR抗体は、慢性ウイルス感染症を処置するために、LAG3インヒビター、CTLA-4インヒビターまたは別のT細胞コインヒビターの任意のアンタゴニストと組み合わせて投与され得る。
【0143】
ある特定の実施形態では、本発明の抗GITR抗体は、自己免疫疾患の処置のために、免疫細胞上のFc受容体に対する抗体と組み合わされ得る。一実施形態では、本発明の抗体またはその断片は、自己免疫組織に特異的な抗原に標的化される抗体または抗原結合タンパク質と組み合わせて投与される。ある特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、T細胞受容体またはB細胞受容体(Fcα(例えば、CD89)、Fcγ(例えば、CD64、CD32、CD16a、およびCD16b)、CD19などが挙げられるが、これらに限定されない)に標的化される抗体または抗原結合タンパク質と組み合わせて投与される。本発明の抗体またはその断片は、自己免疫疾患または障害(円形脱毛症、自己免疫性肝炎、セリアック病、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、溶血性貧血、炎症性腸疾患、炎症性ミオパチー、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、白斑、自己免疫性膵炎、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性血小板減少性紫斑病、クローン病、I型糖尿病、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、グッドパスチャー症候群、重症筋無力症、乾癬性関節炎、リウマチ熱、潰瘍性大腸炎、血管炎およびウェゲナー肉芽腫症が挙げられるが、これらに限定されない)を処置するために当該分野で公知の任意の薬物または治療(例えば、コルチコステロイドおよび他の免疫抑制剤)と組み合わせて使用され得る。
【0144】
本開示はまた、被験体において抗腫瘍免疫応答を調節するための方法を包含し、上記方法は、T細胞阻害受容体に結合する1種または複数の単離された抗体またはその抗原結合性断片と組み合わせて、本明細書で記載される抗GITR抗体または抗原結合性断片を被験体に投与する工程を包含する。一部の実施形態では、T細胞阻害受容体は、CTLA-4、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、またはLAG-3である。本開示はまた、本明細書で提供される抗GITR抗体またはその抗原結合性断片および上記T細胞阻害受容体に結合する抗体または抗原結合性断片を含む製剤を包含する。
【0145】
本開示はまた、本明細書で記載される抗体もしくはその抗原結合性断片または製剤を、放射線療法または化学療法とともに被験体に投与することによって、がんを処置するための方法を包含する。
【0146】
一部の実施形態では、本発明の抗GITR抗体は、EGFRアンタゴニスト(例えば、抗EGFR抗体[例えば、セツキシマブまたはパニツムマブ]またはEGFRの小分子阻害剤[例えば、ゲフィチニブまたはエルロチニブ])、Her2/ErbB2、ErbB3またはErbB4等、別のEGFRファミリーメンバーのアンタゴニスト(例えば、抗ErbB2[例えば、トラスツズマブまたはT-DM1{KADCYLA(登録商標)}]、抗ErbB3もしくは抗ErbB4抗体、またはErbB2、ErbB3もしくはErbB4活性の小分子阻害剤)、EGFRvIIIのアンタゴニスト(例えば、EGFRvIIIに特異的に結合する抗体)、cMETアンタゴニスト(anagonist)(例えば、抗cMET抗体)、IGF1Rアンタゴニスト(例えば、抗IGF1R抗体)、B-raf阻害剤(例えば、ベムラフェニブ、ソラフェニブ、GDC-0879、PLX-4720)、PDGFR-α阻害剤(例えば、抗PDGFR-α抗体)、PDGFR-β阻害剤(例えば、抗PDGFR-β抗体または例えば、イマチニブメシレートもしくはスニチニブマレート等の小分子キナーゼ阻害剤)、PDGFリガンド阻害剤(例えば、抗PDGF-A、-B、-Cまたは-D抗体、アプタマー、siRNA等)、VEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト等、VEGFトラップ、例えば、US7,087,411を参照(本明細書において、「VEGF阻害性融合タンパク質」とも称される)、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)、VEGF受容体の小分子キナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブまたはパゾパニブ))、DLL4アンタゴニスト(例えば、REGN421等、US2009/0142354に開示されている抗DLL4抗体)、Ang2アンタゴニスト(例えば、H1H685P等、US2011/0027286に開示されている抗Ang2抗体)、FOLH1アンタゴニスト(例えば、抗FOLH1抗体)、STEAP1またはSTEAP2アンタゴニスト(例えば、抗STEAP1抗体または抗STEAP2抗体)、TMPRSS2アンタゴニスト(例えば、抗TMPRSS2抗体)、MSLNアンタゴニスト(例えば、抗MSLN抗体)、CA9アンタゴニスト(例えば、抗CA9抗体)、ウロプラキンアンタゴニスト(例えば、抗ウロプラキン[例えば、抗UPK3A]抗体)、MUC16アンタゴニスト(例えば、抗MUC16抗体)、Tn抗原アンタゴニスト(例えば、抗Tn抗体)、CLEC12Aアンタゴニスト(例えば、抗CLEC12A抗体)、TNFRSF17アンタゴニスト(例えば、抗TNFRSF17抗体)、LGR5アンタゴニスト(例えば、抗LGR5抗体)、一価CD20アンタゴニスト(例えば、リツキシマブ等、一価抗CD20抗体)等からなる群より選択される1種または複数の追加的な治療的に活性な構成成分(単数または複数)と同時製剤化されるおよび/またはこれらと組み合わせて投与される。本発明の抗体と組み合わせて有益に投与することができる他の薬剤は、例えば、タモキシフェン、アロマターゼ阻害剤、ならびに小分子サイトカイン阻害剤およびIL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-13、IL-17、IL-18等のサイトカインまたはこれらそれぞれの受容体に結合する抗体を含むサイトカイン阻害剤を含む。
【0147】
本発明は、1種または複数の化学療法剤と組み合わせた、本明細書に記載されている抗GITR抗体のいずれかを含む組成物および治療製剤を含む。化学療法剤の例として、チオテパおよびシクロホスファミド(cyclosphosphamide)(Cytoxan(商標))等、アルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン(piposulfan)等、スルホン酸アルキル;ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)およびウレドパ(uredopa)等、アジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)およびトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミンおよびメチラメラミン(methylamelamine);クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノブエンビキン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード等、ナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン等、ニトロソウレア(nitrosurea);アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン等、抗生物質;メトトレキセートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)等、代謝拮抗薬;デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート等、葉酸アナログ;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン等、プリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン等、ピリミジンアナログ;カルステロン(calusterone)、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等、アンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン等、抗副腎薬(anti-adrenal);フロリン酸等、葉酸補充薬;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビスアントレン(bisantrene);エダトレキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン;エルフォルニチン(elfornithine);エリプチニウムアセテート(elliptinium acetate);エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えば、パクリタキセル(Taxol(商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)およびドセタキセル(Taxotere(商標);Aventis Antony、France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチンおよびカルボプラチン等、白金アナログ;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;ならびに上述のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が挙げられる。この定義には、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY 117018、オナプリストン(onapristone)およびトレミフェン(フェアストン)を含む抗エストロゲン剤;ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリドおよびゴセレリン等、抗アンドロゲン剤;ならびに上述のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体等、腫瘍におけるホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤も含まれる。
【0148】
本発明の抗GITR抗体は、抗ウイルス薬、抗生物質、鎮痛薬、コルチコステロイド、ステロイド、酸素、抗酸化剤、COX阻害剤、心保護薬(cardioprotectant)、金属キレート剤、IFN-ガンマおよび/またはNSAIDと組み合わせて投与および/または同時製剤化することもできる。
【0149】
追加的な治療的に活性な構成成分(単数または複数)、例えば、上に列挙されている薬剤またはその誘導体のいずれかは、本発明の抗GITR抗体の投与の直前に、それと同時発生的に、またはその直後に投与することができる;(本開示の目的のため、係る投与レジメンは、追加的な治療的に活性な構成成分「と組み合わせた」抗GITR抗体の投与とみなされる)。本発明は、本発明の抗GITR抗体が、本明細書の他の箇所に記載されている追加的な治療的に活性な構成成分(単数または複数)のうち1種または複数と同時製剤化された薬学的組成物を含む。
【0150】
追加的な治療的に活性な構成成分(単数または複数)は、本発明の抗GITR抗体の投与の前に、被験体に投与され得る。例えば、第1の構成成分は、その第1の構成成分が、第2の構成成分の投与の1週間前に、72時間前に、60時間前に、48時間前に、36時間前に、24時間前に、12時間前に、6時間前に、5時間前に、4時間前に、3時間前に、2時間前に、1時間前に、30分前に、15分前に、10分前に、5分前に、または1分に満たない前に投与される場合、第2の構成成分の「前に」投与されると考えられ得る。他の実施形態では、その追加的な治療的に活性な構成成分(単数または複数)は、本発明の抗GITR抗体の投与後に被験体に投与され得る。例えば、第1の構成成分は、その第1の構成成分が、第2の構成成分の投与の1分後、5分後、10分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、60時間後、72時間後に投与される場合、第2の構成成分の「後に」投与されると考えられ得る。さらに他の実施形態では、その追加的な治療的に活性な構成成分(単数または複数)は、本発明の抗GITR抗体の投与と同時発生的に被験体に投与され得る。「同時発生的(concurrent)」投与は、本発明の目的のために、例えば、単一剤形において(例えば、同時製剤化)、または互いに約30分またはそれに満たない時間内に被験体に投与される別個の剤形において、被験体への抗GITR抗体および追加的な治療的に活性な構成成分の投与を含む。別個の剤形において投与される場合、各剤形は、同じ経路を介して投与され得る(例えば、抗GITR抗体および追加的な治療的に活性な構成成分の両方が、静脈内、皮下などに投与され得る);あるいは、各剤形は、異なる経路を介して投与され得る(例えば、抗GITR抗体は、静脈内に投与され得、追加的な治療的に活性な構成成分は、皮下に投与され得る)。いずれにしても、単一剤形において、同じ経路によって別個の剤形において、または異なる経路によって別個の剤形において、その構成成分を投与することは、全て、本開示の目的のために「同時発生的投与」と見做される。本開示の目的のために、追加的な治療的に活性な構成成分の投与の「前に」、「同時発生的に」または「後に」(それらの用語は、本明細書中上記で定義されるとおり)、抗GITR抗体を投与することは、追加的な治療的に活性な構成成分との「組み合わせ」での抗GITR抗体の投与と見做される。
【0151】
本発明は、本発明の抗GITR抗体が、本明細書中他の箇所で記載される追加的な治療的に活性な構成成分(単数または複数)のうちの1種または複数と、種々の投薬量の組み合わせを使用して同時製剤化される薬学的組成物を含む。
【0152】
抗GITR抗体およびVEGFアンタゴニストを含む同時製剤の投与を含む、本発明の抗GITR抗体がVEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプトのようなVEGFトラップ)と組み合わせて投与される例示的な実施形態では、その個々の構成成分は、種々の投薬量の組み合わせを使用して、被験体に投与され得るおよび/または同時製剤化され得る。例えば、抗GITR抗体は、0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1.0mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg、3.0mg、3.5mg、4.0mg、4.5mg、5.0mg、6.0mg、7.0mg、8.0mg、9.0mg、および10.0mgからなる群より選択される量において、被験体に投与され得るおよび/または同時製剤の中に含まれ得る;そしてVEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプトのようなVEGFトラップ)は、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1.0mg、1.1mg、1.2mg、1.3mg、1.4mg、1.5mg、1.6mg、1.7mg、1.8mg、1.9mg、2.0mg、2.1mg、2.2mg、2.3mg、2.4mg、2.5mg、2.6mg、2.7mg、2.8mg、2.9mgおよび3.0mgからなる群より選択される量において、被験体に投与され得るおよび/または同時製剤の中に含まれ得る。その組み合わせ/同時製剤は、本明細書中他の箇所で開示される投与レジメンのうちのいずれかに従って被験体に投与され得る(例えば、1週間に2回、1週間に1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、1ヶ月ごとに1回、2ヶ月ごとに1回、3ヶ月ごとに1回、4ヶ月ごとに1回、5ヶ月ごとに1回、6ヶ月ごとに1回などが挙げられる)。
【0153】
投与レジメン
本発明のある特定の実施形態によると、抗GITR抗体(または抗GITR抗体および本明細書に言及されている追加的な治療的に活性な薬剤のいずれかの組み合わせを含む薬学的組成物)の複数用量は、規定の時間経過にわたって被験体に投与することができる。本発明の本態様に係る方法は、本発明の抗GITR抗体の複数用量を被験体に逐次的に投与するステップを含む。本明細書において、「逐次的に投与する」は、抗GITR抗体の各用量が、異なる時点で、例えば、所定の間隔(例えば、数時間、数日間、数週間または数ヶ月間)によって隔てられた異なる日に被験体に投与されることを意味する。本発明は、抗GITR抗体の単一の初回用量、続いて抗GITR抗体の1または複数の二次用量と、任意選択で、続いて抗GITR抗体の1または複数の三次用量を患者に逐次的に投与するステップを含む方法を含む。
【0154】
用語「初回用量」、「二次用量」および「三次用量」は、本発明の抗GITR抗体の投与の時系列を指す。よって、「初回用量」は、処置レジメンの初めに投与される用量であり(「ベースライン用量」とも称される);「二次用量」は、初回用量の後に投与される用量であり;「三次用量」は、二次用量の後に投与される用量である。初回、二次および三次用量は全て、同じ量の抗GITR抗体を含有することができるが、一般に、投与頻度の観点から互いに異なっていてもよい。しかし、ある特定の実施形態では、初回、二次および/または三次用量に含有されている抗GITR抗体の量は、処置過程において互いに変動する(例えば、適宜、上方または下方に調整される)。ある特定の実施形態では、処置レジメンの初めに「負荷用量」として2以上の(例えば、2、3、4または5)用量が投与され、続いてより少ない頻度で投与されるその後の用量(例えば、「維持用量」)が投与される。
【0155】
本発明の例示的な特定の実施形態では、各二次および/または三次用量は、直前の用量から1~26(例えば、1、11/2、2、21/2、3、31/2、4、41/2、5、51/2、6、61/2、7、71/2、8、81/2、9、91/2、10、101/2、11、111/2、12、121/2、13、131/2、14、141/2、15、151/2、16、161/2、17、171/2、18、181/2、19、191/2、20、201/2、21、211/2、22、221/2、23、231/2、24、241/2、25、251/2、26、261/2またはそれより長い)週間後に投与される。語句「直前の用量」は、本明細書において、一連の複数の投与において、介在する用量が存在しない順番において丁度次の用量の投与の前に患者に投与される抗GITR抗体の用量を意味する。
【0156】
本発明の本態様に係る方法は、抗GITR抗体のいずれかの数の二次および/または三次用量を患者に投与するステップを含むことができる。例えば、ある特定の実施形態では、単一の二次用量のみが、患者に投与される。他の実施形態では、2もしくはそれより多い(例えば、2、3、4、5、6、7、8もしくはそれより多い)二次用量が、患者に投与される。同様に、ある特定の実施形態では、単一の三次用量のみが、患者に投与される。他の実施形態では、2以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8もしくはそれより多い)三次用量が、患者に投与される。投与レジメンは、特定の被験体の生涯にわたり無期限に、または係る処置がもはや治療上の必要がなくなるもしくは有利でなくなるまで行うことができる。
【0157】
複数の二次用量を含む実施形態では、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与することができる。例えば、各二次用量は、直前の用量の1~2週間または1~2か月後に患者に投与することができる。同じく、複数の三次用量を含む実施形態では、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与することができる。例えば、各三次用量は、直前の用量の2~12週間後に患者に投与することができる。本発明の特定の実施形態では、二次および/または三次用量が患者に投与される頻度は、処置レジメンの過程にわたって変動し得る。投与の頻度は、医師によって、臨床検査後に個々の患者の必要に応じて処置過程の間に調整することもできる。
【0158】
本発明は、2~6負荷用量が第1の頻度で(例えば、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、1ヶ月間に1回、2ヶ月間に1回等)患者に投与され、続いて2またはそれを超える維持用量がより低い頻度で患者に投与される投与レジメンを含む。例えば、本発明の本態様によると、負荷用量が、1ヶ月間に1回の頻度で投与される場合、維持用量は、6週間に1回、2ヶ月間に1回、3ヶ月間に1回等で患者に投与することができる。
【0159】
抗体の診断的使用
本発明の抗GITR抗体を使用して、例えば、診断目的で、試料におけるGITRまたはGITR発現細胞を検出および/または測定することもできる。例えば、抗GITR抗体またはその断片を使用して、GITRの異常発現(例えば、過剰発現、過小発現、発現の欠如等)によって特徴付けられる状態または疾患を診断することができる。GITRの例示的な診断アッセイは、例えば、患者から得られた試料を本発明の抗GITR抗体と接触させるステップを含むことができ、抗GITR抗体は、検出可能な標識またはレポーター分子で標識されている。あるいは、未標識の抗GITR抗体は、それ自体が検出可能に標識されている二次抗体と組み合わせて診断適用において使用することができる。検出可能な標識またはレポーター分子は、H、14C、32P、35Sもしくは125I等、放射性同位元素;フルオレセインもしくはローダミン等、蛍光もしくは化学発光部分;またはアルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼもしくはルシフェラーゼ等、酵素となり得る。試料におけるGITRの検出または測定に使用することのできる特異的な例示的アッセイとして、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、イムノPET(例えば、89Zr、64Cuなど)および蛍光標識細胞分取(FACS)が挙げられる。
【0160】
本発明に係るGITR診断アッセイにおいて使用することのできる試料は、正常または病的状態における、検出可能な量のGITRタンパク質またはその断片を含有する、患者から得ることができるいずれかの組織または流体試料を含む。一般に、健康な患者(例えば、異常なGITRのレベルまたは活性に関連する疾患または状態に罹患していない患者)から得られる特定の試料におけるGITRのレベルを測定して、GITRのベースラインまたは標準レベルを最初に確立するであろう。続いて、GITRのこのベースラインレベルは、GITR関連疾患または状態を有すると疑われる個体から得られる試料において測定されたGITRのレベルに対して比較することができる。
【実施例
【0161】
次の実施例は、本発明の方法および組成物を作製および使用する方法の完全な開示および説明を当業者に提供できるように示されており、本発明者らが自身の発明として考慮する範囲の限定を企図しない。使用された数に対する正確度を確保するための努力をしたが、一部の実験誤差および偏差が考慮されるべきである。他に断りがなければ、分子量は、平均分子量であり、温度はセ氏温度であり、圧力は大気圧またはその近辺である。
【0162】
実施例1.抗GITR抗体の生成
抗GITR抗体を、VELOCIMMUNE(登録商標)マウス(すなわち、ヒト免疫グロブリン重鎖およびκ軽鎖可変領域をコードするDNAを含む操作されたマウス)をヒトGITRの可溶性二量体細胞外ドメインを含む免疫原で免疫化することによって得た。その抗体免疫応答を、GITR特異的イムノアッセイによってモニターした。いくつかの完全ヒト抗GITR抗体を、US 2007/0280945A1に記載されるように、骨髄腫細胞に融合することなしに、抗原陽性B細胞から直接単離した。
【0163】
本実施例の方法に従って生成された例示的な抗GITR抗体の特定の生物学的特性を、下に記す実施例において詳細に説明する。
【0164】
(実施例2)重および軽鎖可変領域アミノ酸および核酸配列
表1は、本発明の選択された抗GITR抗体の重および軽鎖可変領域ならびにCDRのアミノ酸配列識別子を表記する。対応する核酸配列識別子を表2に表記する。
【表1-1】

【表1-2】

【表2-1】

【表2-2】
【0165】
抗体は典型的には、本明細書において、次の命名法に従って参照される:表1および2に示す通り、Fc接頭語(例えば、「H1H」、「H4H」等)と、続く数的識別子(例えば、「14493」、「14495」等)と、続く「P」または「P2」接尾語。よって、この命名法に従って、抗体は、本明細書において、例えば、「H1H14486P」、「H4H14531P2」等と称することができる。本明細書に使用されている抗体名称におけるH1H、H4H接頭語は、抗体の特定のFc領域アイソタイプを示す。例えば、「H1H」抗体は、ヒトIgG1 Fcを有し、「H4H」抗体は、ヒトIgG4 Fcを有し、「H2M」は、マウスIgG2 Fcを有する(全ての可変領域は、抗体名称における最初の「H」によって表示される通り、完全にヒトのものである)。当業者であれば認められる通り、特定のFcアイソタイプを有する抗体は、異なるFcアイソタイプを有する抗体に変換することができるが、いずれにせよ、可変ドメイン(CDRを含む)(これは表1および2に示す数的識別子によって示される)は、同じままであり、結合特性は、Fcドメインの性質にかかわらず、同一または実質的に同様であると予想される。
【0166】
以下の実施例において使用される対照構築物
比較目的のために対照構築物を次の実験に含めた:抗GITR対照Ab I:WO 2006/ 105021 A2に表記されている「クローン6C8」の相当するドメインのアミノ酸配列を有する可変性重鎖および軽鎖ドメインとのマウス抗ヒトGITRハイブリドーマ;以下の実施例においてmIgG1およびmIgG2a構築物領域で生成される;および抗GITR対照Ab II:US 8709424 B2に表記されている「36E5」の相当するドメインのアミノ酸配列を有する可変性重鎖および軽鎖ドメインを有するヒト抗GITR抗体。
【0167】
実施例3.表面プラズモン共鳴からのヒトモノクローナル抗TNFRSF18(GITR)抗体の結合親和性および動態学的定数の導出
37℃における表面プラズモン共鳴(Biacore 4000またはT-200)により、ヒト抗GITR抗体の結合親和性および動態学的定数を決定した(表3)。抗体(ヒトIgG1またはIgG4(すなわち、「H1H」または「H4H」名称)として発現される)を、マウス抗ヒトFc CM5 Biacoreセンサー表面(mAb捕捉フォーマット)、および可溶性単量体(ヒト(h)GITR.mmh;配列番号409およびMacaca fasicularis(mf)GITR.mmh;配列番号412)または二量体(hGITR.hFc;配列番号411およびhGITRmFc;配列番号410)に捕捉した。GITRタンパク質を、センサー表面にわたって流速30μL/分で注入した。全てのBiacore結合研究を、0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05% v/v Surfactant P20から構成される緩衝液(HBS-ET泳動緩衝液)中で行った。抗体-試薬会合を、4分間モニターした一方で、HBS-ET泳動緩衝液(10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05% (v/v) Surfactant P20、pH7.4)中での解離を10分間モニターした。Scrubber 2.0cカーブフィッティングソフトウェアを使用して1:1結合モデルへとリアルタイムセンサーグラムをフィットさせることによって、動態学的会合(k)および解離(k)速度定数を決定した。次の通り、動態学的速度定数から結合解離平衡定数(K)および解離半減期(t1/2)を計算した:K[M]=k/k;およびt1/2(分)=(ln2/(60*k)。結果を表3にまとめる。
【表3-1】

【表3-2】
【0168】
表3に示されるように、本発明の抗GITR抗体は全て、ヒトGITRに結合し、いくつかの抗体は、二量体ヒトGITRタンパク質に対してナノモル濃度未満の親和性を示した。さらに、その抗GITR抗体の大部分はまた、カニクイザルGITRタンパク質に対して交差反応性を示した。齧歯類GITRタンパク質に対する交差反応性は観察されなかった(データは示さず)。
【0169】
実施例4.抗GITR抗体はヒトGITR発現細胞に特異的にかつ強力に結合する
この実施例では、抗GITR抗体がヒトGITR発現細胞株に特異的に結合する能力を、電気化学発光法(ECL)ベースの検出を使用して決定した。
【0170】
簡単に説明すると、ヒト胚性腎臓(HEK)-293-D9細胞を、ヒトGITR(アミノ酸M1-V241、NCBIアクセッション#NP_004186.1、配列番号413)で、Lipofectamine 2000媒介性方法論を介して安定してトランスフェクトした。トランスフェクト体を、完全増殖培地+G418中で少なくとも2週間にわたって選択した。
【0171】
細胞結合研究のために、およそ1×10hGITR/HEK293-D9または親HEK293-D9細胞(これは、ヒトGITRを発現しない)を、96ウェル炭素電極プレート(MULTI-ARRAY, MSD)上に1時間、37℃において播種した。非特異的結合部位を、2% BSA(w/v)+PBSで1時間、室温(RT)においてブロッキングした。次に、抗GITR抗体の系列希釈(1.7pM~100nMの範囲)を、細胞に1時間にわたってRTにおいて添加した。次いで、プレートを洗浄して、結合していない抗体を除去し(AquaMax2000プレート洗浄機、MSD Analytical Technologies)、プレートに結合した抗体を、SULFO-TAG(商標)をコンジュゲートされた抗ヒトκ軽鎖IgG抗体(Jackson Immunoresearch)で1時間にわたってRTにおいて検出した。
【0172】
洗浄後、発光シグナルを、SECTOR Imager 6000(MSD)機器で記録した。直接結合シグナル(相対発光量、RLU)を、抗体濃度の関数として分析し、データを、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを使用してシグモイド(4パラメーターロジスティック)用量応答モデルとフィットさせた。hGITR/HEK293-D9細胞への結合に関するEC50(最大結合シグナルの50%が検出される抗体の濃度として定義される)を、各抗体の結合効力を示すために決定した。親細胞に対してhGITR発現細胞に結合する100nM 抗体で検出されたシグナルを、GITR結合の強度および特異性の示度として記録した。結果を表4にまとめる。
【0173】
表4にまとめられるように、本発明の抗GITR抗体の大部分は、親HEK293に対して、210pM~85nMの範囲に及ぶEC50でヒトGITR発現細胞に特異的に結合した。その抗体の大部分は、ヒトGITR発現細胞にナノモル濃度未満のEC50値で結合した。そのアイソタイプ対照抗体は、hGITR発現細胞株または親細胞株への結合を示さなかった。
【表4】
【0174】
まとめると、この実施例は、本発明の抗GITR抗体がヒトGITR発現細胞株への特異的かつ強力な結合を示すことを示す。
【0175】
実施例5.抗GITR抗体は、FcγR抗体アンカリングの存在下または非存在下でのNF-κB/ルシフェラーゼレポーターアッセイにおいて部分的遮断因子および部分的活性化因子である
この実施例では、抗GITR抗体がFcγ受容体(FcγR)への抗体アンカリングの存在下もしくは非存在下でhGITRを活性化するかまたはhGITRリガンド(hGITRL)媒介性受容体刺激を遮断する能力を、ルシフェラーゼベースのレポーターアッセイを介して評価した。
【0176】
簡単に説明すると、hGITRおよびNF-κB依存性ルシフェラーゼレポーターの安定な組み込みを有するJurkat細胞株を、操作した(hGITR/Jurkat/NF-κBLuc)。そのNF-κBルシフェラーゼレポーターを、Cignal Lenti Reporterシステム(SABiosciences)を使用して、Jurkat細胞へと導入した。hGITRを発現するレンチウイルスを、Lenti-X Lentiviral Expression System(Clontech)を利用して、HEK293/T17において生成した。Jurkat/NF-κB-Luc細胞を、hGITR発現受容体ウイルスでポリブレン媒介性形質導入を介して形質導入し、500μg/ml G418中で2週間にわたって選択した。抗体アンカリング研究に関しては、HEK293細胞を、上記で記載されるように、FcγRI発現レンチウイルスで形質導入した。
【0177】
先ず、FcγRアンカリングの非存在下(アンカーされていないバイオアッセイフォーマット)で抗hGITR抗体の活性化および遮断特性を評価した。およそ4×10 Jurkat/NF-κBLuc/hGITR細胞を、OptiMEM+0.5% FBS中で、PDLコーティング96ウェルプレートに一晩(ON)播種した。
【0178】
抗体活性化能力を決定するために、細胞を、6時間にわたって37℃において、0.5pM~100nMの範囲に及ぶ濃度で系列希釈した抗hGITR抗体またはhGITRLとともに、インキュベートした。hGITRL媒介性受容体刺激の抗体遮断を評価するために、細胞を、系列希釈した抗hGITR抗体(0.5pM~100nM)とともに30分間プレインキュベートし、続いて、10nM hGITRLの一定用量で6時間インキュベートした。
【0179】
次に、FcγRアンカリングの存在下(アンカーされたバイオアッセイフォーマット)での選択れた抗hGITR抗体の活性化および遮断特性を決定した。上記と同様に、2.5×10Jurkat/NfκBLuc/hGITR細胞を、完全増殖培地中でPDLコーティング96ウェルプレートに播種した。
【0180】
抗体活性化を評価するために、細胞を、1時間、37℃において系列希釈した抗hGITR mAbまたはhGITRL(0.5pM~100nM)とともにプレインキュベートした。次いで、1×10 hFcγ R1/HEK293細胞を直ぐにウェルに添加し、続いて、6時間インキュベートした。遮断を評価するために、hGITR/Jurkat/NfκBLuc細胞を、1時間、系列希釈した抗hGITR抗体(0.5pM~100nM)とともにプレインキュベートした。1×10 hFcγR1/HEK293細胞をウェルに添加し、続いて、一定用量の10nM hGITRLを添加した。
【0181】
アンカーされたバイオアッセイフォーマットおよびアンカーされていないバイオアッセイフォーマットの両方に関して、ルシフェラーゼ活性をOne glow reagent(Promega)で測定し、相対発光量(RLU)を、Victorルミノメーター(Perkin Elmer)で測定した。そのEC50/IC50値を、GraphPad Prismを使用して12点応答曲線に対する4パラメーターロジスティック方程式から決定した。結果を表5および表6にまとめる。%遮断を決定するために、非処理ウェルからのバックグラウンドRLU(相対発光量)を、処理したウェルから差し引き、%遮断を、以下に従って計算する:[100-(最大用量での抗体RLU/一定リガンド用量RLU)]*100]。%活性化を、以下の式に従って計算する:(正規化mAb RLU/最大GITRリガンド応答)*100;正規化mAb RLUは、非処理したウェルのRLUを処理したウェルから差し引くことによって決定する。平均倍数活性化を、以下のように計算する:最大抗体用量でのRLU/非処理ウェルからのバックグラウンドRLU。
【表5】
【0182】
上記の表5および以下の表6においてまとめられるように、試験した抗体は、アンカーされていないバイオアッセイフォーマットおよびアンカーされたバイオアッセイフォーマットの両方において、部分的活性化および部分的遮断特性を示した。アンカーされていないフォーマットにおいて、抗体は、0.4nM~2.5nMの範囲に及ぶEC50で受容体刺激を媒介した。いくつかの抗体(例えば、H4H14475PおよびH4H14491P)は、それぞれ、70%および60%の活性化を示すGITR受容体の強力な活性化因子であった。その試験した抗体の大部分はまた、0.6nM~3.8nMの範囲に及ぶIC50で、hGITRL媒介性受容体刺激の遮断を示した。いくつかの例示的抗体(例えば、H1H14512PおよびH4H14536P2)は、それぞれ、100%および90%という強力な遮断活性を示した。H4H14475P(最も強力な活性化因子)は、遮断アッセイにおいて最低の活性を示した(%遮断:-2%)。
【表6】
【0183】
FcγRアンカリングバイオアッセイフォーマットにおいて試験した、選択された抗体はまた、活性化および遮断特性の一定の範囲を示した。H4H14475P(アンカーされていないフォーマットにおいて最強の活性化因子)はまた、基底シグナルの8.0倍上回る倍数活性化で、アンカーされたバイオアッセイフォーマットにおいてhGITRを強力に活性化した。アンカーされていない遮断フォーマットにおいて強い遮断因子(例えば、H1H14512PおよびH4H14536P2)はまた、アンカーされたアッセイにおいて強力な遮断を示した(%遮断: 60%および70 %)。
【0184】
まとめると、その結果は、本発明の抗GITR抗体が、強力なGITR活性化特性、および操作されたバイオアッセイにおいてFcγRアンカリングの非存在下でGITRL媒介性受容体刺激を遮断する能力を示すことを示す。例示的な抗体(例えば、H4H14775PおよびH4H1536P2)はまた、それぞれ、FcγRアンカリングの存在下で、それらの活性化および遮断特性を維持する。
【0185】
実施例6.抗GITR抗体H4H14536P2は、FcγRアンカリングの存在下および非存在下でナイーブヒトCD4+ T細胞増殖アッセイにおいて強力な活性を示す
上記のように、抗GITR抗体を、それらがアンカリングFcγ受容体(FcγR)の存在下および非存在下でhGITRを活性化する能力について操作されたバイオアッセイにおいて試験した。この実施例では、hGITR活性化に対する抗体アンカリングの効果を、ナイーブヒトCD4+ T細胞増殖プライマリーバイオアッセイにおいて評価した。ヒトCD4+ T細胞システムは、GITRコピー数が内因性レベルにおいてあるのに対して、その操作されたシステムは、より高いGITRコピー数を有する細胞を利用するという利点を有する。
【0186】
先ず、抗GITR抗体を、プレートに結合した抗CD3の存在下でCD4+ T細胞増殖能力に関して試験した。簡単に説明すると、ヒトCD4 T細胞を、Human CD4 T cell Enrichment Cocktail(Stemcell Technologies)を使用して健康なドナーの白血球パックから単離した。ナイーブT細胞を、MACS(Miltenyi Biotech)によってCD45RO+細胞の枯渇によってさらに富化した。およそ5×10 T細胞を、最適量未満の抗CD3 mAb OKT3(30ng/mL)でプレコーティングした96ウェルU底ポリスチレンプレートにプレートし、抗GITR抗体または対照の量を滴定した。刺激後3日間、トリチウム化チミジン(1μCi/ウェル、Perkin Elmer Health Sciences NET027001)を、各マイクロウェルに添加し、18時間適用した。細胞を、Filtermate Harvester(Perkin Elmer Health Sciences D961962)を使用して、フィルタープレート(Unifilter-96 GF/C 6005174)上に採取した。シンチレーション液(Perkin Elmer Health Sciences Microscint20 6013621)を、フィルタープレートに添加し、放射活性カウントを、プレートリーダー(Perkin Elmer Health Sciences Topcount NXT)を使用して測定した。対照に対するT細胞増殖(10.6nMの抗体濃度における平均倍数活性化として与えられる)を、表7に表す。このアッセイフォーマットにおいて、10.6nMは、T細胞増殖が用量応答曲線上でプラトーに達した点を表した。
【表7-1】

【表7-2】
【0187】
表7における結果が示すように、試験した抗GITR抗体は、プレートに結合した抗CD3の存在下でプレートに結合した場合、T細胞増殖能力を示した。その抗GITR対照Ab Iは、アイソタイプ対照を27倍上回る増殖活性を示した。本発明の抗GITR抗体の大部分は、アイソタイプ対照を2~8倍上回る活性化を示し、いくつかの例示的な抗体(H4H14469P、H4H14539P2、およびH4H14536P2)は、それぞれ、対照を12倍、13倍および23倍上回る活性化を示した。まとめると、結果は、試験した抗GITR抗体がこの古典的なフォーマットにおいてT細胞増殖活性を示すことを示す。
【0188】
次に、追加的なアッセイフォーマットを使用して、抗GITR抗体が細胞表面に結合したFcγRの存在下および非存在下でT細胞を活性化する濃緑を試験した。
【0189】
抗GITR抗体がFcγR1アンカリングの存在下でT細胞を活性化する能力を評価するために、HEK293細胞を操作して、上記のように高親和性hFcγR1受容体を発現させた。HEK293/FcγRI細胞を、30分間、37℃において50μg/mL マイトマイシンCで処理して、増殖を阻害した。その後に洗浄して微量のマイトマイシンCを除去した後、細胞を、300ng/mL 抗CD3抗体OKT3でコーティングして、T細胞活性化を刺激した。HEK293/FcγRI細胞を、ヒトナイーブCD4+ T細胞とともに、1:2の比で共培養し、滴定した量の抗GITR抗体または対照を、その共培養培地に添加した。
【0190】
T細胞増殖を、トリチウム化チミジン組み込みのレベルを測定することによって評価した。刺激後72時間で、トリチウム化チミジン(0.5μCi/ウェル、Perkin Elmer Health Sciences)を、さらに18時間、37℃において各マイクロウェルに添加した。細胞を、Filtermate Harvester(Perkin Elmer Health Sciences D961962)を使用して、フィルタープレート(Unifilter-96 GF/C 6005174)上に採取した。シンチレーション液(Perkin Elmer Health Sciences Microscint20 6013621)をフィルタープレートに添加し、放射活性カウントを、プレートリーダー(Perkin Elmer Health Sciences Topcount NXT)を使用して測定した。対照に対するT細胞増殖(33nM濃度の抗体における平均倍数活性化として与えられる)を、表8に示す。このアッセイフォーマットにおいて、33nMは、T細胞増殖が用量応答曲線上でプラトーに達した点を表した。
【表8】

【表9】
【0191】
表8における結果がまとめるように、いくつかの抗体は、1~2倍の範囲に及ぶレベルで対照を上回る活性化を示した。しかし、1つの例示的な抗体、H4H14536P2は、アンカーされた状況において強力なT細胞増殖活性を示した。5.5という平均倍数活性化で、H4H14536P2は、抗GITR比較抗体(平均倍数活性化範囲:0.7~2.0)と比較して、より大きなT細胞活性化を刺激した。H4H14536P2は、最も強力な抗GITR対照Abである対照I-mIgGに関する34.1nMと比較して、3.2nMというT細胞増殖の平均EC50を有した(表9)。さらに、このアッセイフォーマットにおいて、H4H14475P(上記の操作されたバイオアッセイにおける強力な活性化因子)は、このプライマリーバイオアッセイ状況において中程度の増殖活性を示した。
【0192】
次に、抗体を、FcγRアンカリングの非存在下でT細胞増殖活性に関して試験した。ヒトCD4+ T細胞を、上記のように単離し、30ng/mLの抗CD3抗体OKT3でプレコーティングした96ウェルU底ポリスチレンプレート上にプレートした。上記と同様に、滴定した濃度の抗GITR抗体または対照を、培養培地に添加した。T細胞増殖を、トリチウム化チミジン組み込みによって測定した。22nM抗体濃度で4名のドナーにおいて観察されたT細胞増殖を、表10において、アイソタイプ対照と比較して倍数活性化として表す。H4H14536P2のEC50(nM)も、表11に示す。
【0193】
アンカーされたアッセイフォーマットにおいて観察されるように、H4H14536P2は、繰り返しになるが、アンカーされていないフォーマットにおいて22nMで強力なT細胞増殖活性を示した。H4H14536P2は、11.0の平均倍数活性化および8.3nMのEC50でT細胞を活性化した。このアッセイフォーマットにおいて、対照抗GITR抗体Iは、T細胞増殖能力を示さなかった。
【表10】

【表11】
【0194】
まとめると、この実施例は、1つの例示的抗GITR抗体であるH4H14536P2が、hFcγR1アンカリングの存在下および非存在下での強力なT細胞増殖活性を示す一方で、抗GITR比較抗体対照Iは、アンカーされていない状況においてT細胞増殖活性を示さなかったことを示す。従って、H4H14536P2がhFcγR1アンカリングの非存在下でT細胞を活性化する能力は、特有の特性であり、これは、その抗体が活性を保持するためにFcγ受容体への内因性IgG結合とin vivoで競合しなくてもよい可能性があることを示唆する。H4H14536P2のこの特有の特性は、治療状況において利点を付与し得る。
実施例7.抗PD1抗体との組み合わせでの抗GITR抗体の投与は、腫瘍を相乗作用的にコントロールおよび根絶する
【0195】
抗GITR抗体を抗PD1抗体と組み合わせて投与することの腫瘍成長に対する効果の評価を、以下の方法を使用して行った。その評価の結果を、以下にまとめる。
【0196】
腫瘍移植、処置レジメンおよび成長測定
MC38結腸直腸がん細胞(ATCCから得た)を、C57BL/6マウスの皮下に移植した(3×10 細胞/マウス)(0日目として定義)。6日目(すなわち、腫瘍移植の6日後)に、マウスを4群に分け(5匹のマウス/群)、各群を、以下で腹腔内(IP)処置した:(1)ラットIgG2a(2A3、Bio X cell、カタログ番号BE0089)(アイソタイプ対照)+ラットIgG2b(LTF2、Bio X cell、カタログ番号BE0090)(アイソタイプ対照)、(2)抗GITRモノクローナル抗体DTA1(ラット抗マウスGITR、Bio X cell、カタログ番号BE0063)+ラットIgG2a(対照)、(3)抗PD-1モノクローナル抗体RPM1-14(ラット抗マウスPD-1、Bio X cell、カタログ番号BE0146)+ラットIgG2b(対照)または(4)抗GITR抗体DTA1+抗PD-1抗体RPM1-14。次いで、抗体注射(単数または複数)を、13日目に再び投与した。抗体処置を、各抗体の5mg/kgで投与した。腫瘍を、二次元(長さ×幅)で測定し、腫瘍容積を計算した(長さ×幅×0.5)。マウスを、腫瘍が指定された腫瘍エンドポイント(腫瘍容積>2000mmまたは腫瘍潰瘍化)に達した場合に安楽死させた。
【0197】
腫瘍再チャレンジ評価
80日間にわたって腫瘍なしを維持した、抗PD-1抗体および抗GITR抗体の組み合わせで処置したマウスに、3×10の同系腫瘍(MC38)を右側腹部に、および2.5×10の同種異系(B16F10.9)腫瘍細胞株(黒色腫細胞株、ATCC)を左側腹部に、再チャレンジした。上記のように腫瘍をモニターした。
【0198】
抗体枯渇実験
腫瘍チャレンジの1日前に開始して、1週間に2回、合計8用量を与えて、異なる枯渇mAb(抗CD4、抗CD8、抗CD25)を注射したマウスを、併用療法またはアイソタイプ対照IgGで処置した。その枯渇効率を、末梢血サンプルのFACS分析によって確認した。
【0199】
腫瘍内リンパ球のフローサイトメトリー(FACS)分析
マウスを上記のように処置した。抗体処置の5日後に、腫瘍および脾臓を集めた。腫瘍を鋏で切り刻み、Liberase TL/DNAse Iミックスで単一細胞懸濁物に解離した。脾臓を、gentleMACS Octo Dissociatorで解離した。細胞を、マウスCD45、CD3、CD4、CD8、CD25およびFoxP3に対するFACS抗体のパネル、ならびに活性化マーカー(PD1、GITR、Ki67、CD160、CTLA4、ICOS、TIM3、LAG3、KLRG1およびCD44)で染色した。細胞を、BD Fortessa X20またはLSR IIで獲得し、FlowJoソフトウェアによって分析した。
【0200】
抗マウスPD1抗体との組み合わせでの抗マウスGITR抗体の投与は、腫瘍退縮を有意に誘導し、MC38を有するマウスにおいて長期の腫瘍寛解を提供する
上記の方法を使用して、皮下MC38腫瘍のコントロールにおいて抗マウスPD-1抗体(クローンRMP1-14、Bio X cell、カタログ番号BE0146)との組み合わせで抗マウスGITR抗体(クローンDTA-1、Bio X cell、カタログ番号BE0063)を投与することの有効性を評価した。図1ならびに表12および表13に示されるように、PD1遮断および抗GITR(DTA-1)抗体の併用処置は、抗PD-1もしくは抗GITR mAb単独、またはアイソタイプ対照処置マウスと比較して、MC38腫瘍を有するマウスにおいて腫瘍退縮を有意に誘導した。さらに、併用療法で処置したマウスは、そのマウスのうちの100%が120日間超にわたって腫瘍なしを維持したので、長期の腫瘍寛解を示した(図2、表14、表15)。
【表12】

【表13】

【表14】
【0201】
抗マウスPD1抗体との組み合わせでの抗マウスGITR抗体の投与は、腫瘍/抗原特異的免疫記憶応答を誘導する
抗PD-1および抗GITR抗体の併用投与で処置したマウスが腫瘍/抗原特異的記憶応答を発生させたか否かを決定するために、腫瘍なしの生存マウスに、3×10の同系MC38結腸がん細胞を右側腹部に、および2.5×10の同種異系黒色腫細胞株B16F10.9を左側腹部に、再チャレンジした。MC38腫瘍は、抗PD1抗体および抗GITR抗体組み合わせで処置したマウスにおいて成長しない一方で、その同じ腫瘍は、ナイーブ対照マウス(いかなる事前の処置もなし)において成長することが見出された(図3)。対照的に、その同種異系腫瘍(黒色腫)は、両方の群において成長しなかった。これは、その抗PD-1および抗GITR抗体の組み合わせ投与が、その同じタイプの腫瘍での第2のチャレンジをコントロールできる腫瘍-抗原特異的免疫記憶応答を誘導することを示した。
【0202】
免疫集団研究
マウスを、抗PD-1抗体および抗GITR抗体併用処置の前に、CD4、CD8およびCD25枯渇mAbで処置した。CD8+細胞の枯渇が、抗腫瘍効果(MC38腫瘍)を完全に排除する一方で、CD4またはCD25 T細胞の枯渇が部分的阻害を示すことを見出した(図4、表15)。従って、MC38腫瘍における併用療法の抗腫瘍効果は、CD8+ T細胞に大部分は依存するようである。
【0203】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)に対する抗GITRおよび抗PD1併用処置の効果を、評価した。その併用処置は、単独療法処置(抗PD-1もしくは抗GITR)またはアイソタイプ対照と比較すると、CD8/Treg比において有意な増大を誘導することが見出された(図5)。CD4/Treg比に対する併用処置の効果は、それほど著しくないことが見出された。抗PD-1および抗GITR併用処置は、CD8 T細胞を増大させた間に腫瘍内Tregのパーセンテージを低下させた(図6)。さらに、抗PD-1処置単独は、Treg細胞数の拡大を誘導した一方で、抗PD-1/抗GITR併用処置は、アイソタイプ対照処置マウスと比較して、Treg細胞数を有意に減少させた。
【表15】
【0204】
抗マウスPD1抗体との組み合わせでの抗ヒトGITR抗体の投与は、MC38を有するGITR/GITRLヒト化マウスにおいて腫瘍退縮を有意に誘導し、長期の腫瘍寛解を提供する
皮下MC38腫瘍のコントロールにおいて抗ヒトGITR抗体(H2aM14536P2)を抗マウスPD-1抗体(クローンRMP1-14 Bio X cell、カタログ番号BE0146)との組み合わせで投与することの有効性を、GITR/GITRLヒト化マウスにおいて評価した。抗マウスPD-1遮断は、抗ヒトGITR抗体と相乗的に作用し、平均腫瘍成長曲線において示されるように(図7、表16)、抗PD1(1/7)もしくは抗GITR(1/7)mAb単独、またはアイソタイプ対照(0/7)処置マウスと比較して、MC38腫瘍を有するマウスにおいて腫瘍退縮を有意に誘導した(4/6マウス)。さらに、併用療法で処置したマウスは、そのマウスうちの60%超が、アイソタイプ対照に関しては0%および抗PD-1または抗GITR処置群に関しては10%と比較して、50日目に腫瘍なしを維持するので、長期の腫瘍寛解を示した(図8、表16)。
【0205】
抗ヒトGITR抗体は、腫瘍内CD8/Treg比を増大させる
腫瘍内および脾臓のT細胞集団に対する抗ヒトGITR抗体の効果を評価した。抗ヒトGITR抗体、H2aM14536P2およびH1H14536P2を評価した。両方の抗ヒトGITR抗体アイソタイプ(mIg2aおよびhIgG1)は、腫瘍内CD8/Treg比において有意な増大を誘導することを見出した(図9)。その同じ処置は、末梢脾臓T細胞サブセットに対して効果を有しなかった。ヒトIgG1およびマウスIgG2aアイソタイプIgGを、対照のためにアッセイにおいて使用した。
【表16】
【0206】
抗ヒトPD1抗体との組み合わせでの抗マウスGITR抗体の投与は、MC38を有するPD1/PDL1ヒト化マウスにおいて腫瘍退縮を有意に誘導し、長期の腫瘍寛解を提供する
皮下MC38腫瘍のコントロールにおいて抗ヒトPD-1抗体(REGN2810(米国特許公開番号2015/0203579において開示されるようにH4H7798Nとしても公知))との組み合わせでの抗マウスGITR抗体(DTA-1)の投与の有効性を、PD1/PDL1ヒト化マウスにおいて評価した。抗ヒトPD-1遮断は、平均腫瘍成長曲線において示されるように、抗PD1もしくは抗GITR mAb単独、またはアイソタイプ対照処置マウスと比較して、MC38腫瘍を有するマウスにおいて抗マウスGITR抗体と相乗的に作用し、腫瘍成長の遅れを誘導することが見出された(図10、表17)。さらに、併用療法で処置したマウスは、そのマウスのうちの40%超が、アイソタイプ対照、抗PD-1または抗GITR処置群に関して0%と比較して、45日目で腫瘍なしを維持したので、長期の腫瘍寛解を示した(図11)。
【表17】
【0207】
実施例8:RNA抽出および分析
単一細胞ソーティングRNA-seq分析
腫瘍チャレンジ後の8日目および11日目に、腫瘍の単一細胞懸濁物を、マウス腫瘍解離キット(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, DE)によって調製し、脾臓を、gentleMACS(商標) Octo Dissociator(Miltenyi Biotec)で解離した。同じ処置群に由来する腫瘍および脾臓をプールし、生きているCD8+ T細胞をFACSによってソートした。FACSでソートしたT細胞を、C1 Cell Suspension Reagent(Fluidigm, South San Francisco, CA)と混合し、その後、5μm~10μmのC1 Integrated Fluidic Circuit(IFC; Fluidigm)上に載せた。LIVE/DEAD染色溶液を、2.5μL エチジウムホモ二量体-1および0.625μL カルシウムAM(Life Technologies, Carlsbad, CA)を、1.25mL C1 Cell Wash Buffer(Fluidigm)に添加することによって調製し、20μLをC1 IFCに載せた。各捕捉部位を、明視野においてZeiss顕微鏡下で、GFPを、ならびに細胞ダブレットおよび生存性に関してはテキサスレッドチャネルを注意深く検査した。細胞溶解、逆転写、およびcDNA増幅を、製造業者によって特定されるように(プロトコル100-7168 E1)、C1 Single-Cell Auto Prep IFCで行った。SMARTer(商標) Ultra Low RNA Kit(Clontech, Mountain View, CA)を、単一細胞からのcDNA合成に使用した。Illumina NGSライブラリーを、NEXTERA XT DNA Sample Prep kit(Illumina)を使用して、製造業者の推奨(プロトコル100-7168 E1)に従って構築した。合計で2,222個の単一細胞を、Illumina NextSeq(Illumina, San Diego, CA)で、75サイクルでの多重化シングルリード実行によって配列決定した。生の配列データ(BCLファイル)を、FASTQフォーマットへとIllumina CASAVA 1.8.2を介して変換した。リードを、それらのバーコードに基づいて解読した。リードの品質を、FastQCを使用して評価した(www.bioinformatics. babraham.ac.uk/projects/fastqc/)。
【0208】
実施例9:併用処置におけるCD226およびTIGITの役割
CD226の遺伝子不活性化または薬理学的阻害は、いくつかの実験において抗GITR/抗PD1併用処置によって媒介される腫瘍退縮を明らかにした一方で、他のTNF受容体またはB7スーパーファミリーメンバーの阻害は、効果を有しなかった。
【0209】
CD226遮断実験
0.5mgの抗CD226(10E5、eBioscience, San Diego, CA)またはラットIgG2bアイソタイプ対照IgG(LTF2、Bio X Cell, West Lebanon, NH)を、腫瘍チャレンジ後5日目におよび免疫療法の1日前に、腹腔内(i.p.)に注射した。垂直腫瘍直径を、デジタルカリパス(VWR, Radnor, PA)を使用して、1週間に2~3回盲目的に測定した。式L×W×0.5(ここでLは、最も長い寸法であり、Wは、その垂直の寸法である)を使用して容積を計算した。生存における差異を、カプラン-マイヤー法によって各群について決定し、全体のP値を、PRISMバージョン6(GraphPad Software Inc., La Jolla, CA)によって生存分析を使用してログランク検定によって計算した。事象を、罹病率を最小限にするために、腫瘍負荷が最大腫瘍容積において2000mmというプロトコルが特定したサイズに達したときに死亡と定義した。
【0210】
図12および図13に示されるように、MC38腫瘍を有するマウスを、CD226遮断AbまたはアイソタイプAb(対照IgG)のいずれかで、抗GITR+抗PD-1またはアイソタイプAbでの免疫療法の1日前に処置した。平均腫瘍成長曲線(図12)および生存曲線(図13)を示す。データは、3回の実験(n=5匹のマウス/群、ログランク検定による生存分析)の代表である。
【0211】
野生型またはTIGIT KOマウスを、MC38腫瘍でチャレンジし、抗CD226または対照IgGで処置し、アイソタイプ対照(図14)または抗GITR+抗PD-1併用療法(図15)のいずれかを受けた。データは、2回の実験の代表である平均腫瘍成長曲線を示す(n=4~5匹のマウス/群)。
【0212】
CD226遮断mAbを使用して、CD226を通じての共刺激シグナリングが併用処置によって媒介される抗腫瘍免疫のために必要とされることが示された。さらに、そのCD226シグナリング経路は、TIGIT KOマウスにおいて増強された腫瘍監視のために必要とされた(図14および15)。
【0213】
併用処置サンプルに由来するCD8+ T細胞におけるRNAシグネチャー
併用処置サンプルに由来するクローン性に拡大したCD8 T細胞(11日目に採取した腫瘍)における特有の遺伝子シグネチャーを同定するために、異なる処置群にわたる包括的な比較を行った。併用療法に由来するクローン性に拡大したCD8+ T細胞においてアップレギュレートした遺伝子を、アイソタイプ処置に由来するCD8+ T細胞または併用処置で拡大しなかったCD8+ T細胞のアップレギュレートした遺伝子と比較した。ヒートマッピング分析は、比較内で重なり合う30の遺伝子を同定した。≧2倍のRNAシグネチャー変化(p<0.01)を、腫瘍の抗GITR/抗PD1併用処置後に、その30の遺伝子に関してその拡大したCD8 T細胞集団内で観察した。それら30の遺伝子は、Id2、S100a11、Ndufb3、Serinc3、Ctsd、S100a4、Ppp1ca、Lbr、Peli1、Lcp2、Ube2h、Cd226、Mapkapk3、Racgap1、Arf3、Mki67、Ergic2、Azi2、Dync1i2、Sik1、Pde4d、Ppp3cc、Nek7、Emc4、Vav1、Dock10、Tmem173、Fam3c、Ppp1cc、およびGlud1を含む。
【0214】
全5つの群(すなわち、(i)アイソタイプ処置、(ii)抗GITR拡大CD8、(iii)抗GITR/抗PD1併用拡大CD8、(iv)抗PD1拡大CD8、および(v)抗GITR/抗PD1併用非拡大CD8)にわたる4元比較(four-way comparison)を、次に、併用療法 対 単独療法の処置に際して特異的にアップレギュレートした遺伝子を同定するために行った。2つの重なり合うアップレギュレートされた遺伝子(p<0.01、発現において≧2倍の変化)を、4元分析において同定した。CD226(これは、抗腫瘍応答において重要な役割を果たす共刺激分子である)を、異なる比較ペアにわたって共有される2種の遺伝子のうちの一方として同定した。処置群(すなわち、(i)アイソタイプ、(ii)抗GITR、(iii)抗PD1、および(iv)抗GITR/抗PD1併用)にわたる腫瘍内CD8 T細胞の異なるサブセット((a)合計、(b)クローン性に拡大、または(c)非拡大)の発現分析は、CD226 mRNAレベルが、クローン性に拡大したT細胞に対して併用処置によって有意に増大する(倍数変化=10.7)一方で、この差異は、バルク(倍数変化=3.5)および非拡大CD8 T細胞(有意でない)において希釈されることを明らかにした。さらに、CD226 mRNAレベルは、抗PD-1(倍数変化=6.5)および抗GITR(倍数変化=9.2)と比較して、クローン性に拡大したCD8 T細胞に対して併用処置によって有意に増大した(図16)。
【0215】
PD1とCD226との間の会合
PD1分子とCD226分子との間の潜在的な会合を、次に調査した。CD226がPD1-Shp2複合体による脱リン酸化(desphosphorylation)の標的であるか否かを調べるために、本発明者らは、無細胞ラージユニラメラ小胞(cell-free large unilamellar vesicle)(LUV)システムにおいてT細胞シグナリングに関与する種々の構成成分(すなわち、CD3、CD226、サイトゾルチロシンキナーゼLck、Zap70、SLP76 52、およびPI3K(p85a))を再構成した。LUV上でのPD-1滴定に応じた各構成成分の感受性を、ホスホチロシン(pY)イムノブロッティングによって測定した(図17)。本発明者らは、TCR/CD3ζがPD-1-Shp2による脱リン酸化の標的ではないのに対して、CD226が30分間の処置後に用量依存性の様式でPD1-Shp2によって効率的に脱リン酸化されることを確認した(図17)。このデータは、PD-1とCD226との間の会合を示す。
【0216】
次に、PD-1阻害とCD226発現との間の関係性を、臨床状況で調査した。RNA-seq分析を、PD-1標的化処置前および処置後の43名の進行したがん患者から集めた腫瘍生検に対して行った。CD226発現は、がん患者における抗hPD-1処置の2用量の後に有意に増大した(図22)。さらに、The Cancer Genome Atlas(TCGA)からの臨床データは問い合わせされて、CD226発現レベルが全体的なT細胞活性化強度と相関し、がん患者におけるよりよい予後を推定し得るか否かを調べた。実際に、高いベースラインCD226発現を有する患者は、評価した20種の異なるタイプの癌(皮膚原発の黒色腫(skin cutaneous melanma)、肺腺がん、頭頚部の扁平上皮がん、子宮体部子宮内膜がん(uterine corpus endometrial carcinoma)、肉腫、直腸腺がん、浸潤乳がん(breast invasive carcinoma)、腎明細胞がん(kidney renal clear cell carcinoma)、子宮頸部扁平上皮がんおよび子宮頚管内腺がん、多形性膠芽腫、結腸腺がん、胃腺がん、膀胱尿路上皮がん、甲状腺がん、前立腺がん、膵臓腺がん、脳の低悪性度神経膠腫、肺扁平上皮がん、乳頭状腎細胞がん(kidney renal papillary cell carcinoma)、および卵巣漿液性嚢胞腺がん)のうちの5種の(皮膚原発の黒色腫、肺腺がん、頭頚部扁平上皮がん、子宮体部子宮内膜がんおよび肉腫)において有意に高い生存可能性を有する。全体的に、これらの結果は、CD226シグナリングをブーストしながら、最大T細胞活性化のためにTIGITを同時に遮断する(例えば、抗GITR処置を通じて)免疫療法ストラテジーを裏付ける。
【0217】
CD226の遺伝子不活性化
CD226遮断mAbを使用して、本発明者らは、CD226を通じての共刺激シグナリングが併用処置によって媒介される抗腫瘍免疫に必要とされることを示した(図12図13)。CD226 AbがおそらくCD8 T細胞のサブセットに対する潜在的枯渇効果を有し得るので、CD226を、その結果を確認するためにC57BL/6バックグラウンドのマウスにおいて遺伝的に不活性化した。CD226-/-マウスは、T細胞(CD4+、CD8+、Tregs)ホメオスタシスに対して欠陥を示さず(図18、パネルA~D)、TCR活性化に対して野生型マウスと同様に応答した(図18、パネルE~I)。本発明者らは、併用処置がもはやCD226-/-マウスにおいて抗腫瘍効果も生存利益も付与しないことを観察した。このことは、CD226が組み合わせの観察された抗腫瘍効果に必須であったことを示唆する(図19、パネルA)。CD226の効果は特異的である。なぜならTNF受容体スーパーファミリーの他のメンバー(OX40Lまたは4-1BBL)の阻害、またはCTLA4-Igを使用するB7共刺激分子(CD28)の遮断は、併用療法によって媒介される抗腫瘍効果を保存したからである(図19、パネルB~D)。
【0218】
TIGIT Null動物におけるCD226の要求
全体的な単一細胞ソーティングRNA-seqおよびFACS表現型決定データは、抗PD-1がCD226の発現を有利にする一方で、抗GITR処理がTIGITの表面発現をダウンレギュレートし、T細胞の恒常的機能を相乗作用的に回復させることを示した。
【0219】
本発明者らは、CD226シグナリング経路がTIGIT-/-マウスにおける増強された腫瘍監視に必要とされることを示した(図14図15)。さらに、CD155/PVR6(これはCD226の腫瘍リガンドである)を過剰発現するMC38腫瘍細胞を有するマウスは、MC38-空ベクター(MC38-EV)腫瘍細胞またはアイソタイプ対照で処置したマウスと比較して、抗PD-1または抗GITRまたは併用療法に際して腫瘍成長の有意な遅れを示した(図20)。MC38-CD155を移植したマウスの免疫プロファイリング分析は、移植後にM38-EV(空ベクター)を超える、MC38-CD155細胞上で持続したより高いCD155発現レベルを確認した。本発明者らは、MC38腫瘍細胞上でのCD155過剰発現が、CD4+、CD8+ T細胞およびTreg細胞上での低下した検出可能なCD226発現と関連する(図21A)一方で、それが腫瘍内T細胞上での増強されたIFNγ(図21B)および4-1BB(図21C)の発現によって示されるようにT細胞活性化をブーストすることを見出した。末梢においては効果が観察されなかった。
【0220】
いかなる理論によっても拘束されないが、CD226発現レベルが全体的なT細胞活性化強度と相関するはずであり、がん患者におけるより良好な予後を予測し得ることが仮定される。実際に、高いCD226発現を有する患者は、3タイプのがん(皮膚原発の黒色腫、肺腺がんおよび肉腫)において有意により高い生存可能性を有する。これらのデータは、CD226シグナリングをブーストしながら最大T細胞活性化のためにTIGITを同時に遮断する免疫療法ストラテジーを裏付ける。
【0221】
前述の実験は、抗GITR抗体を抗PD1抗体と組み合わせて投与することの相乗効果を示す。特に、とりわけ、上記の実験は、抗GITR抗体および抗PD1抗体の組み合わせ投与が腫瘍退縮を誘導し、長期の腫瘍寛解を提供し、そして腫瘍/抗原特異的免疫記憶応答を誘導することを示す。
【0222】
実施例10:TCR分析
TCR分析のために、本発明者らは、ランダムプライミングショートRNA配列決定リードから、TCR配列を、特に、TCR-CDR3配列を再構築および抽出するために、新たなバイオインフォマティクスパイプラインrpsTCRを開発した。rpsTCRは、ペアになった末端のおよび単一末端の短いリードを取得し、これらのリードをマウスまたはヒトのゲノムおよびトランスクリプトームへとマッピングするが、デフォルトパラメーターでTopHat(Bioinformatics 25, 1105-1111 (2009))を使用してTCR遺伝子座および転写物をマッピングしない。マッピングされたリードを捨て、マッピングされていないリードをTCR配列の抽出のためにリサイクルする。マッピングされていないリードにおける低品質ヌクレオチドをトリミングした。次いで、35bpに満たない長さを有するリードを、HTQCツールキット(Bioinformatics 14, 33 (2013)を使用して除去した。QCを通過した短いリードを、iSSAKE(Bioinformatics 25, 458-464 (2009))デフォルト設定を使用してより長いリードへとアセンブリした。TCRklass(J Immunol 194, 446-454 (2015))を使用して、デフォルト1.7から2へと設定したScr(保存された残基サポートスコア)でCDR3配列を同定した。健康なヒトPBMCサンプルからの標的化TCR-seqデータを、陽性対照として使用して、そのパイプラインに導入した余分の工程が、TCRklass単独と比較した場合により高い偽陽性または偽陰性率を生じるか否かを評価した。
【0223】
TCRB(64,031)またはTCRA(51,448)に由来する特有のCDR3配列の大部分は、rpsTCRおよびTCRklassの両方によって検出された。rpsTCRとTCRklassとの間の二乗相関(squared correlation)は、TCRB-CDR3およびTCRA-CDR3に関してそれぞれ、0.9999および0.9365であった。6つのTCR陰性がんまたは非がん細胞株を、陰性対照として使用した。CDR3配列は、rpsTCRによって検出されなかったのに対して、いくつかのCDR配列は、TCRklassによっていくつかのTCR陰性がん細胞株から抽出された。
【0224】
対象パイプライン(subject pipeline)の性能をさらに検証するために、本発明者らは、健康なマウスPBMCサンプルを、標的化TCR-seqおよびランダムプライミングRNA-seqアプローチの両方を使用して配列決定した(200M, 2×100bp)。RNA-seqデータからアセンブリされたCDR3配列の数は、標的化TCR-seqアプローチからのものより遙かに小さかったものの、rpsTCRを使用するRNA-seqデータから同定されたCDR3配列のうちの約45%が、標的化TCR-seqに由来するCDR3配列の中でも観察された。標的化TCR-seqの技術的制限が原因で、本発明者らがRNA-seqデータから抽出したCDR3配列の一部は、TCR-seq結果の中に存在しなかったことは、驚くべきことではない。例えば、標的化TCR-seqに使用される5’ raceアダプターの効率は概して低く、多重PCR(multiply PCR)は、高頻度TCRを増幅する傾向にあるので、TCRの小さな部分のみが標的化され得る。予測されるように、RNA-seqデータからrpsTCRを使用して同定されたCDR3配列のうちの遙かにより高いパーセンテージ(約70%)が、標的化TCR-seqに由来する高頻度CDR3配列(>=0.1%)の中でも観察されたが、わずか約40%が、TCRklass単独を使用して抽出された。さらに、本発明者らは、100bpリード長を50bpセグメント単位で切断し、200Mリードをランダムに選択した。標的化TCR-seqアプローチによってランク付けされた上位10個のCDR3配列の中で、8個のCDR3配列を本発明者らのrpsTCRによって検出したが、3個のみがTCRklassによって検出された。次いで、本発明者らは、本発明者らのrpsTCRパイプラインを、異なる抗体で処置したMC38の腫瘍内CD8 T細胞から生成した単一細胞RNA-seqデータからのCDR3配列の抽出に適用した。本発明者らのCDR3_betaおよびCDR3_alpha配列検出率は、TCR配列を、T細胞の単一細胞配列決定から検出するために、標的化TCR-seqアプローチを使用する公開されたデータに匹敵した。
【0225】
本発明は、本明細書に記載されている具体的な実施形態による範囲内に限定されるべきではない。実際に、本発明の様々な修正が、本明細書に記載されているものに加えて、前述の記載および添付の図面から、当業者には明らかになるであろう。係る修正は、添付の特許請求の範囲内に収まることを企図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E-F】
図18G-I】
図19A-B】
図19C-D】
図20
図21A
図21B
図21C
図22
【配列表】
0007162535000001.app