(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】クレーン、及びクレーンの積み付け方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/22 20060101AFI20221021BHJP
【FI】
B66C13/22 W
(21)【出願番号】P 2019042307
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 伸郎
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/121973(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/012802(WO,A1)
【文献】特表2015-533747(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0097989(KR,A)
【文献】特開2018-150141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を積み付けするクレーンであって、
前記荷物を保持する吊具と、
吊部材を介して前記吊具を吊り下げるトロリと、
前記トロリを横行可能に支持するガーダーと、
前記ガーダーを走行可能に支持し、タイヤを有する走行部と、
前記吊具に設けられ、当該吊具の下方の画像を取得する撮影部と、
前記吊具に設けられ、前記撮影部によって取得された前記画像中の特定部の距離を取得する距離取得部と、
前記撮影部によって取得された前記画像及び前記距離取得部で取得された前記距離に基づいて、前記吊具で保持した前記荷物を積み付ける目標位置となる検出対象物を検出する検出部と、を備え
、
前記距離は、前記距離取得部が設けられた位置から、前記特定部までの距離である、クレーン。
【請求項2】
前記距離取得部は、二次元のレーザースキャナである、請求項1に記載のクレーン。
【請求項3】
前記距離取得部は、前記トロリが横行する横行方向にスキャンを行う、請求項2に記載のクレーン。
【請求項4】
前記検出部が前記検出対象物を検出できなかった場合、前記吊具は、前記撮影部から見て前記吊具に保持されている前記荷物側へ移動する、請求項1~3の何れか一項に記載のクレーン。
【請求項5】
荷物を保持する吊具と、
吊部材を介して前記吊具を吊り下げるトロリと、
前記トロリを横行可能に支持するガーダーと、
前記ガーダーを走行可能に支持し、タイヤを有する走行部と、を備えるクレーンで前記荷物を積み付けするクレーンの積み付け方法であって、
前記吊具の下方の画像を取得する撮影工程と、
前記撮影工程で取得された前記画像中の特定部の距離を取得する距離取得工程と、
前記撮影工程で取得された前記画像及び前記距離取得工程で取得された前記距離に基づいて、前記吊具で保持した前記荷物を積み付ける目標位置となる検出対象物を検出する検出工程と、を備え
、
前記距離は、前記距離取得工程において前記距離を取得する距離取得部が設けられた位置から、前記特定部までの距離である、クレーンの積み付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン、及びクレーンの積み付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクレーンとして、特許文献1に記載されたものが知られている。クレーンは、吊具を水平方向に移動させながら、荷物を吊具で吊り上げている。このクレーンは、横行方向に延びるガーダーと、ガーダーを支持する一対の脚部と、脚部を走行可能に支持する走行部と、吊具を吊り下げてガーダーに沿って横行するトロリと、を備える。走行部は、タイヤを有している。このクレーンは、吊具で保持した吊り荷物を既設の積み荷物の上に積み付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述のクレーンのように、走行部がタイヤを有するタイプのものである場合、ヤード内を自由に走行できるが、その分位置にずれが生じやすい。従って、クレーンが荷物を積み付けた場合、既存の積み荷物同士の間にずれが発生することがある。クレーンが、荷物を新たに積み付けるとき、このような積み荷物同士のずれに対応することが求められる。
【0005】
本発明は、新たに荷物を積み付けするときに、積み付け済みの荷物のずれに対応することができるクレーン、及びクレーンの積み付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係るクレーンは、荷物を積み付けするクレーンであって、荷物を保持する吊具と、吊部材を介して吊具を吊り下げるトロリと、トロリを横行可能に支持するガーダーと、ガーダーを走行可能に支持し、タイヤを有する走行部と、吊具に設けられ、当該吊具の下方の画像を取得する撮影部と、吊具に設けられ、撮影部によって取得された画像中の特定部の距離を取得する距離取得部と、撮影部によって取得された画像及び距離取得部で取得された距離に基づいて、吊具で保持した荷物を積み付ける目標位置となる検出対象物を検出する検出部と、を備える。
【0007】
クレーンは、タイヤを有する走行部で移動した移動先において、吊具で荷物を保持した状態でトロリを横行させ、当該吊り荷物を既設の積み荷物上に積み付けることができる。また、クレーンは、吊具に設けられ、当該吊具の下方の画像を取得する撮影部を有している。従って、クレーンは、撮影部で吊具の下方に存在する既設の積み荷物の画像を取得することができる。ここで、吊具で保持された吊り荷物は、積み付けられた積み荷物のうち、最も上側の積み荷物に対して積み付けられる。従って、撮影部によって取得された画像に基づいて、吊具で保持した吊り荷物を積み付ける目標位置となる検出対象物を検出することができる。しかし、画像のみからでは、検出部は、画像中の荷物の特定部が、最も上側の積み荷物のものであるか、下段側の荷物のものであるかを正確に判定することができない場合がある。これに対し、クレーンは、吊具に設けられ、撮影部によって取得された画像中の特定部の距離を取得する距離取得部を備えている。従って、距離取得部が、画像中の特定部の距離を取得することで、検出部は、特定部が最も上側の積み荷物によるものか、下段側の積み荷物によるものかを把握した上で、正確に検出対象物を特定することができる。以上より、新たに荷物を積み付けするときに、積み付け済みの荷物のずれに対応することができる。
【0008】
距離取得部は、二次元のレーザースキャナであってよい。この場合、距離取得部は、吊具の移動を伴わなくとも、画像中の積み荷物の特定部の距離を取得できる。
【0009】
距離取得部は、トロリが横行する横行方向にスキャンを行ってよい。これにより、距離取得部は、横行方向への吊具の移動を伴わなくとも、画像中の積み荷物の特定部の距離を取得できる。
【0010】
検出部が検出対象物を検出できなかった場合、吊具は、撮影部から見て吊具に保持されている荷物側へ移動してよい。この場合、撮影部は、吊り荷物の影に隠れていた、最も上側の積み荷物の特定部の画像を取得できる。
【0011】
本発明の一形態に係るクレーンの積み付け方法は、荷物を保持する吊具と、吊部材を介して吊具を吊り下げるトロリと、トロリを横行可能に支持するガーダーと、ガーダーを走行可能に支持し、タイヤを有する走行部と、を備えるクレーンで荷物を積み付けするクレーンの積み付け方法であって、吊具の下方の画像を取得する撮影工程と、撮影工程で取得された画像中の特定部の距離を取得する距離取得工程と、撮影工程で取得された画像及び距離取得工程で取得された距離に基づいて、吊具で保持した荷物を積み付ける目標位置となる検出対象物を検出する検出工程と、を備える。
【0012】
このクレーンの積み付け方法では、上述のクレーンと同様な作用・効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、新たに荷物を積み付けするときに、積み付け済みの荷物のずれに対応することができるクレーン、及びクレーンの積み付け方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るクレーンのブロック図である。
【
図3】吊具22周辺の構成を詳細に示す斜視図である。
【
図4】検出対応物である積みコンテナを検出するときの様子を示す模式図である。
【
図5】クレーンの積み付け方法の制御処理の内容を示すフローチャートである。
【
図6】比較例に係るクレーンでの積み付けの様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、例示的な実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態に係るクレーン100について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るクレーン100のブロック図である。
図2は、クレーン本体20を示す斜視図である。
図1に示すように、クレーン100は、クレーン本体20と、制御装置50と、を備える。
【0017】
図2に示すように、クレーン本体20は、門型をなしている。クレーン本体20は、例えば、接岸したコンテナ船に対してコンテナCの移載等が行われるコンテナターミナルのコンテナヤードにおいて、コンテナCの荷役を行うクレーン本体である。コンテナヤードCYには、コンテナCが移載されるトレーラ10等の走行路である荷役レーンが敷設されている。クレーン本体20は、例えば荷役レーン上に停止したトレーラ10に対して、コンテナCを自動で移載する。クレーン本体20は、トレーラ10によって搬入されるコンテナCをトレーラ10から取得して、当該コンテナCをコンテナヤードCYの所定位置に載置する。また、クレーン本体20は、コンテナヤードCYに載置されているコンテナCを取得して、当該コンテナCをトレーラ10に載置し、当該トレーラ10によりコンテナCを外部に搬出させる。
【0018】
クレーン本体20は、クレーン本体部21と、吊具22と、を有している。クレーン本体部21は、タイヤ付車輪を有する走行部25により走行可能とされている。走行部25は、走行モータの駆動によって走行する。また、クレーン本体部21は、走行部25に立設された一対の脚部26,26を二組備え、これら脚部26,26の上端部同士を繋ぐガーダー27,27を備える略門形に形成されている。更に、クレーン本体部21は、走行方向に直交する方向にガーダー27上を横行可能なトロリ28を備えている。トロリ28は、横行モータの駆動によって横行する。トロリ28は、ドラム駆動モータ及び当該ドラム駆動モータにより正逆回転するドラムによって構成される巻駆動部29を備え、ワイヤによって構成される吊部材30を介して吊具22を吊り下げている。吊具22は、走行方向へ延びる形状を有している。トロリ28からは、走行方向において二箇所から吊部材30が延びており、吊具22は走行方向における二箇所で吊部材30に吊られている。
【0019】
なお、
図1に示すように、走行部25の走行モータ及びトロリ28の横行モータは、制御装置50によって制御される。また、巻駆動部29のドラム駆動モータは、制御装置50によって制御される。
【0020】
吊具22は、コンテナCを保持して吊り上げるための装置である。吊具22は、コンテナCを上面側から係止可能であり、コンテナCを係止して吊り上げることによりコンテナCの荷役を行う。吊具22は、巻駆動部29からの吊部材30が掛け回されたシーブ33を介して吊り下げられ、巻駆動部29の正逆回転により昇降可能である。吊具22は、制御装置50によって制御される。
【0021】
吊具22は、平面視においてコンテナCの上面の形状と略同一の形状を呈している。クレーン本体部21は、長手方向における中央部の上側に、吊部材30が掛け回されるシーブ33を有している。吊具22は、コンテナCを吊具22が係止する際に当該コンテナC上に位置する。吊具22は、ガイド32及びロックピン(不図示)を含んでいる。 ガイド32は、吊具22により取得されるべき目標のコンテナCを吊具22が取得する場合において、吊具22が下降する際に、吊具22を目標のコンテナC上に案内する。ガイド32は、水平方向における吊具22の短手方向の一端部及び他端部のそれぞれにおいて、長手方向の両端付近のそれぞれに設けられている。
【0022】
トレーラ10で搬送されたコンテナCをコンテナヤードCYに降ろすとき、吊具22は、トレーラ10上のコンテナCを保持する。そして、吊具22は、予め設定された計画に従って、保持したコンテナCをコンテナヤードCYに積み付けする。吊具22は、保持したコンテナCをトレーラ10から持ち上げ、横行方向へ移動して、コンテナヤードCYの地面の上に、または既に積み付けされた既存のコンテナCの上面へ積み付ける。なお、以降の説明においては、XY座標を用いて説明を行う場合がある。走行部25の走行方向をX軸方向とし、トロリ28が横行する横行方向をY軸方向とする。また、トレーラ10の前側をX軸方向の正側とし、トレーラ10から遠ざかる側をY軸方向の正側とする。
【0023】
吊具22は、トレーラ10のコンテナCを保持して巻上げたら、自動運転によって予め計画された目標位置の上空まで、トロリ28と共にY軸方向の正側へ移動する。ここで、クレーン100は、吊具22がコンテナCを降ろして目標位置へ積み付けるときは、ずれが生じないように、目標位置周辺の様子を検出した上で積み付けを行う。具体的には、
図3に示すように、クレーン100は、保持しているコンテナCを既存の二段目の積みコンテナCの上面に積み付けるときには、当該二段目の積みコンテナCを検出対象物として検出し、当該検出対象物の位置情報を取得した上で、保持しているコンテナCがずれなく積み付けられるように、吊具22を降ろす。
【0024】
なお、説明のために、吊具22が保持しているコンテナCを吊りコンテナC1と称し、既に積み付けられた既存のコンテナCを積みコンテナC2,C3と称する。積みコンテナC2は一段目の積みコンテナであり、積みコンテナC3は二段目の積みコンテナである。この場合、積みコンテナC3が検出対象物となる。このような検出対象物としての積みコンテナC3を検出するため、クレーン本体20は、カメラ40(撮影部)と、距離計41(距離取得部)と、を備える。
【0025】
カメラ40は、吊具22に設けられ、当該吊具22の下方の画像を取得する機器である。
図3に示す例では、カメラ40は、吊具22のY軸方向の負側の端部に設けられている。すなわち、カメラ40は、吊具22に保持される吊りコンテナC1よりも、移動方向における下流側(Y軸方向の負側)に配置される。これにより、カメラ40は、検出対象物となる積みコンテナC3のY軸方向の負側のエッジ部E1付近の画像を取得することができる。また、カメラ40は、吊具22のX軸方向の両端部付近に一対設けられる。従って、一対のカメラ40は、積みコンテナC3のエッジ部E1のX軸方向の端部付近の画像をそれぞれ取得することができる。
【0026】
具体的には、カメラ40は、
図3において撮影領域PHで示す部分の画像を取得できる。なお、
図3では、積みコンテナC3の上面の高さ位置までの撮影領域PHが示されているが、当該撮影領域PHは、積みコンテナC3から逸れる部分は、更に下方まで延びる。すなわち、撮影領域PHのうち、積みコンテナC3の上面にさしかかる部分では、積みコンテナC3のエッジ部E1付近の様子を示した画像が取得できるが、エッジ部E1よりも外側の部分では、積みコンテナC3の上面よりも下方の様子を示した画像が取得される。
図3では、積みコンテナC3が積みコンテナC2に対してY軸方向の正側へ少しずれているため、積みコンテナC2の上面が少しだけ露出している。よって、カメラ40の画像には、積みコンテナC2のエッジ部E2のうち、「A」で示す部分が映り込む。
【0027】
距離計41は、吊具22に設けられ、カメラ40によって取得された画像中の特定部の距離を取得する機器である。
図3に示す例では、距離計41は、吊具22のY軸方向の負側の端部に設けられている。すなわち、距離計41は、吊具22に保持される吊りコンテナC1よりも、移動方向における下流側(Y軸方向の負側)に配置される。また、一対の距離計41は、一対のカメラ40にそれぞれ隣合う位置に配置される。これにより、距離計41は、カメラ40の画像中のいずれかの箇所の距離を測定することができる。距離とは、距離計41が設けられた位置から、測定対象の箇所までの距離である。距離計41は、画像中における、積みコンテナCXのエッジ部EXまたは上面の距離を測定する。なお、「積みコンテナCX」と表現したときは、「積みコンテナC2」「積みコンテナC3」を特に区別していない(または区別できない)ことを意味する。同じく、「エッジ部EX」と表現したときは、「エッジ部E1」「エッジ部E2」を特に区別していないことを意味する。
【0028】
距離計41として、レーザ距離計を採用することができる。また、レーザ距離計として、一軸のレーザ距離計を採用してもよく、二次元のレーザースキャナを採用してもよい。一軸のレーザ距離計の場合、光軸LAを設定したら、当該光軸LAは固定され移動することはできない。従って、距離計41が積みコンテナCXのエッジ部EXの距離を測定するときは、当該エッジ部EXが光軸LA上に来るように、吊具22を移動させる必要がある。距離計41として二次元のレーザースキャナを採用した場合、光軸LAを移動させてスキャンすることができる。ここでは、距離計41は、Y軸方向にスキャンすることが好ましい。この場合、エッジ部EXが距離計41の真下に存在しない場合でも、距離計41は、光軸LAをY軸方向にスキャンすることで、エッジ部EXの距離を取得することができる。
【0029】
図1に示すように、 制御装置50は、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信インターフェース及びユーザインターフェースを備え、一般的なコンピュータとして構成されている。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)などの演算器である。メモリは、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体である。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体である。通信インターフェースは、データ通信を実現する通信機器である。ユーザインターフェースは、液晶やスピーカなどの出力器、及び、操縦レバー、ボタン、キーボードやタッチパネルやマイクなどの入力器である。プロセッサは、メモリ、ストレージ、通信インターフェース及びユーザインターフェースを統括し、後述する機能を実現する。制御装置50では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。制御装置50は、複数のコンピュータから構成されていてもよい。
【0030】
制御装置50は、クレーン100全体を総合的に制御する装置である。制御装置50は、演算部51と、クレーン制御部52と、検出部53と、記憶部54と、を備える。
【0031】
演算部51は、クレーン100の制御に必要な各種演算を行う。演算部51は、吊具22でコンテナCを掴む際の動作やコンテナCの搬送位置などを演算する。クレーン制御部52は、クレーン100の動作を制御する。クレーン制御部52は、走行部25の走行モータ及びトロリ28への横行モータへ制御信号を送信することで、吊具22の水平方向への移動を制御する。また、クレーン制御部52は、巻駆動部29のドラム駆動モータへ制御信号を送信することで、吊部材30を介して吊具22の巻上げ及び巻下げの動作を制御する。
【0032】
検出部53は、カメラ40によって取得された画像及び距離計41で取得された距離に基づいて、吊具22で保持したコンテナCを積み付ける目標位置となる検出対象物を検出する。
図3に示す例では、検出部53は、検出対象物として、積みコンテナC3を検出する。検出部53は、画像中にエッジ部EXが写っている積みコンテナCXが、検出対象物の候補であると判断する。そして、検出部53は、候補の検出対象物に係るコンテナCXのエッジ部EXまたは上面の距離を距離計41から取得する。検出部53は、当該距離が、予め想定していた距離の範囲内に収まっているとき、候補の検出対象物が、正規の検出対象物として採用する(例えば、
図4(b)に示す状態)。すなわち、検出部53は、検出対象物である積みコンテナC3を検出する。一方、検出部53は、計測計41で取得された距離が、予め想定していた距離の範囲内に収まっていないとき、候補の検出対象物は、正規の検出対象物ではないと判定する(例えば、
図4(a)に示す状態)。
【0033】
記憶部54は、例えば、検出部53が検出対象物を検出するために必要な各種パラメータを記憶している。また、記憶部54は、クレーン100が自動運転を行う際のコンテナCの積み付けの計画などを記憶してよい。当該計画には、コンテナヤードCYに新たにやってきたコンテナCをどのような順序で積み付けするか、などの情報が含まれている(ススタックプロファイルデータ)。すなわち、演算部51は、記憶部54に記憶された計画を参照することで、吊具22が新たなコンテナCを保持したとき、当該コンテナCを既設のコンテナCのうち、どのコンテナCの上面に積み付けるかを決定することができる。
【0034】
次に、
図4及び
図5を参照して、本実施形態に係るクレーン100の積み付け方法による制御処理の内容について説明する。
図4は、検出対応物である積みコンテナC3を検出するときの様子を示す模式図である。
図5は、本実施形態に係るクレーン100の積み付け方法の制御処理の内容を示すフローチャートである。
【0035】
図5に示すように、演算部51は、コンテナヤードCYに新たに到着したコンテナCについて、自動運転によって積み付けを行う旨の指示信号を受信する(ステップS10)。このとき、演算部51は、記憶部54のスタックプロファイルデータを参照し、新たなコンテナCを積み付けする目標位置となる検出対象物の位置情報を取得する。ここでは、吊りコンテナC1の検出対象物は、二段目の積みコンテナC3となる。この位置情報は、検出対象物である積みコンテナC3の水平方向の位置情報に加え、積みコンテナC3の高さ情報H1を含んでいる(
図4参照)。
【0036】
次に、演算部51は、自動運転を開始する(ステップS20)。演算部51は、吊具22で吊りコンテナC1を保持したところから自動運転を開始する。そして、演算部51は、検出対象物である積みコンテナC3の上空まで吊りコンテナC1を自動搬送する(ステップS30)。演算部51は、移動中の吊りコンテナC1の高さ位置及びY軸方向の位置を監視しながら、自動制御を行う。
【0037】
吊りコンテナC1が、検出対象物である積みコンテナC3の上空まで来たら、制御装置50は、積みコンテナC3の位置を正確に把握するため、積みコンテナC3を検出対象物として検出するための処理を開始する。この処理では、吊りコンテナC1と積みコンテナC3との間の相対位置のずれを計測することができる。なお、このときの吊りコンテナC1の高さ情報H2(
図4参照)は、吊具22の位置などから把握可能である。
【0038】
まず、検出部53は、カメラ40で取得された画像から、検出対象物の候補を特定する(ステップS40)。検出部53は、画像の中でエッジ部EXを抽出し、当該エッジ部EXを有するコンテナCXを検出対象物の候補として特定する。次に、検出部53は、検出対象物の候補として特定したコンテナCXの相対高さを距離計41から取得する(ステップS50)。これにより、検出部53は、距離計41とコンテナCXの上面との距離H3を把握する(
図4参照)。
【0039】
次に、検出部53は、ステップS50で取得した距離を用いて、画像中に正規の検出対象物である積みコンテナC3が存在しているか否かを判定する(ステップS60)。検出部53は、距離計41で取得した距離に基づく値を所定の閾値と比較することで、ステップS60の判定を行う。例えば、検出部53は、閾値をSTとしたとき、「H2-H1-H3」の絶対値が閾値STよりも小さいときに、画像中に正規の検出対象物が存在すると判定してよい。なお、「H2-H1」は予め定められた相対距離でもあるため、固定値であってもよい。
【0040】
図4(a)を参照して、ステップS40~S60の内容について具体的に説明する。例えば、
図4(a)において仮想線で示されるように、積みコンテナC3と積みコンテナC2とのずれ量が小さい場合、撮影領域PH内に積みコンテナC2のエッジ部E2と、積みコンテナC3のエッジ部E1が両方とも含まれる。従って、画像中には、エッジ部EXが二つ検出される。このような画像が取得できる場合、検出部53は、積みコンテナC2がY軸方向の正側へずれていることを推定できるため、Y軸方向の負側のエッジ部EXに対応するコンテナCXを検出対象物の候補として特定する。あるいは、積みコンテナC3と積みコンテナC2とのずれが無い場合、または積みコンテナC3がY軸方向の負側にずれている場合、画像中には積みコンテナC3のエッジ部E1のみが写されるため、検出部53は、画像中に写されているコンテナCXを検出対象物の候補として特定する。これらの場合、ステップS50,S60の処理を行うことで、検出部53は、正規の検出対象物として積みコンテナC3を検出することができる。
【0041】
ステップS60において、画像中に正規の検出対象物が存在していると判定された場合、検出部53は、正常に積みコンテナC3を検出できたとして、検出された積みコンテナC3の位置情報を正常な検出値として採用する(ステップS70)。そして、演算部51は、ステップS70で採用した積みコンテナC3の位置情報に基づいて、吊りコンテナC1の積み付けを行う(ステップS80)。これにより、
図5に示す処理が終了する。新たなコンテナCがコンテナヤードCYに入って来たら、再び
図5に示す処理が実行される。
【0042】
一方、
図4(a)において実線で示されるように、積みコンテナC2に対する積みコンテナC3のずれ量が大きい場合、エッジ部E1は、吊りコンテナC1の影に隠れてしまい、画像中に写されない。この場合、検出部53は、エッジ部E2だけを検出するため、積みコンテナC2を検出対象物の候補として特定する。しかしながら、このときの距離計41によって取得される距離H3は、正常な値(
図4(b))に比べてかなり大きくなる。従って、ステップS60での「H2-H1-H3」の絶対値は、閾値STよりかなり大きくなるため、検出部53は、画像中に正規の検出対象物である積みコンテナC3は存在しないと判定する。
【0043】
このように、ステップS60において、画像中に正規の検出対象物が存在していないと判定された場合、演算部51は、吊具22を移動させることで、他の検出対象物の候補を探索すると共に、新たな検出対象物の候補を特定する(ステップS90)。ステップS90では、演算部51は、吊具22をカメラ40から見て吊具22に保持されている吊りコンテナC1側へ移動させる。すなわち、吊具22をY軸方向の正側へ移動させる。
【0044】
この場合、
図4(b)に示すように、吊具22がY軸方向の正側へ移動することで、撮影領域に積みコンテナC3のエッジ部E1が画像中に写される。この場合、検出部53は、積みコンテナC2がY軸方向の正側へずれていることを推定できるため、Y軸方向の負側のエッジ部EXに対応するコンテナCXを検出対象物の候補として特定する。
【0045】
ステップS90が終了したら、ステップS60の処理が繰り返される。このとき、
図4(b)の例では、検出対象物の候補として積みコンテナC3を特定することができたため、ステップS60の処理では画像中に積みコンテナC3が存在することを判定できる。
【0046】
なお、ステップS90において、吊具22をY軸方向の正側へ一定量移動させた場合、またはあらゆる方向へ吊具22を移動させた場合であっても、新しい検出対象の候補を特定できない場合は、自動運転を一度ストップしてもよい。または、ステップS90,S50,S60のループを何度繰り返しても積みコンテナC3を検出できないときも、自動運転を一度ストップしてよい。ストップした後、作業者は、手動で積み付け作業を継続してもよく、コンテナの様子を点検してもよい。
【0047】
次に、本実施形態に係るクレーン100、及びクレーン100の積み付け方法の作用・効果について説明する。
【0048】
まず、比較例として、
図6に示すように、距離計41を有さない場合の検出部について説明する。この場合、下側の積みコンテナC2に対する上側の積みコンテナC3のずれ量が大きくなった場合、積みコンテナC3のエッジ部E1は、吊りコンテナC1の死角になってしまうことにより、Y軸方向の負側から移動してきたカメラ40の画像には写らない。この場合、検出部は、画像中の積みコンテナC2を検出対象物である積みコンテナC3であると誤検出してしまう。
【0049】
これに対し、本実施形態に係るクレーン100は、タイヤを有する走行部25で移動した移動先において、吊具22でコンテナCを保持した状態でトロリ28を横行させ、当該吊りコンテナC1を既設の積みコンテナC3上に積み付けることができる。また、クレーン100は、吊具22に設けられ、当該吊具22の下方の画像を取得するカメラ40を有している。従って、クレーン100は、カメラ40で吊具22の下方に存在する既設の積みコンテナC3の画像を取得することができる。ここで、吊具22で保持された吊りコンテナC1は、積み付けられたコンテナCのうち、最も上側の積みコンテナC3に対して積み付けられる。従って、カメラ40によって取得された画像に基づいて、吊具22で保持した吊りコンテナC1を積み付ける目標位置となる検出対象物を検出することができる。しかし、画像のみからでは、検出部53は、画像中の荷物の特定部が、最も上側の積みコンテナC3のものであるか、下段側の積みコンテナC2のものであるかを正確に判定することが難しい。これに対し、クレーン100は、吊具22に設けられ、カメラ40によって取得された画像中の特定部の距離を取得する距離計41を備えている。従って、距離計41が、画像中の特定部の距離を取得することで、検出部53は、特定部が最も上側の積みコンテナC3によるものか、下段側の積みコンテナC2によるものかを把握した上で、正確に検出対象物を特定することができる。以上より、新たに吊りコンテナC1を積み付けするときに、積み付け済みの吊りコンテナC3のずれに対応することができる。
【0050】
距離計41は、二次元のレーザースキャナであってよい。この場合、距離計41は、吊具22の移動を伴わなくとも、画像中の積みコンテナCXの特定部の距離を取得できる。
【0051】
二次元のレーザースキャナである距離計41は、トロリ28が横行する横行方向にスキャンを行ってよい。これにより、距離計41は、横行方向への吊具22の移動を伴わなくとも、画像中の積みコンテナCXの特定部の距離を取得できる。
【0052】
検出部53が検出対象物を検出できなかった場合、吊具22は、カメラ40から見て吊具22に保持されている吊りコンテナC1側へ移動してよい。この場合、カメラ40は、吊りコンテナC1の影に隠れていた、最も上側の積みコンテナC3の特定部の画像を取得できる。
【0053】
クレーン100の積み付け方法は、クレーン100の積み付け方法は、コンテナC1を保持する吊具22と、吊部材30を介して吊具22を吊り下げるトロリ28と、トロリ28を横行可能に支持するガーダー27と、ガーダー27を走行可能に支持し、タイヤを有する走行部25と、を備えるクレーン100でコンテナCを積み付けするクレーン100の積み付け方法であって、吊具22の下方の画像を取得する撮影工程と、撮影工程で取得された画像中の特定部の距離を取得する距離取得工程と、撮影工程で取得された画像及び距離取得工程で取得された距離に基づいて、吊具で保持した荷物を積み付ける目標位置となる検出対象物を検出する検出工程と、を備える。
【0054】
このクレーン100の積み付け方法では、上述のクレーンと同様な作用・効果を得ることができる。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0055】
例えば、距離計41の位置は必ずしもカメラ40の隣でなくともよく、また、距離計41は真下を向いていなくともよく、傾斜していてもよい。この場合、距離計41の姿勢や位置を演算によって補正した上で、距離を演算に用いることが好ましい。
【0056】
例えば、上述の実施形態では、距離取得部としてレーザを用いた距離計が用いられた。しかし、距離取得部は、距離が取得できる手段であれば特に限定さえるものではない。例えば、カメラと距離計が一体になったTOFカメラ(Time of Flight Camera)が採用されてもよい。また、複数のカメラを用いることで三次元を取得できるシステムを用いて、画像と距離を同時に取得してもよい。ただし、カメラと距離計を別体とした場合、カメラによって取得された情報と、距離計によって取得された情報とを比較することが可能となるため、ダブルチェックの効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0057】
22…吊具、25…走行部、27…ガーダー、28…トロリ、30…吊部材、40…カメラ(撮影部)、41…距離計(距離取得部)、53…検出部、100…クレーン。