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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】光学フィルターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20221021BHJP
   C08J 9/26 20060101ALI20221021BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221021BHJP
   B32B 3/22 20060101ALI20221021BHJP
   B32B 3/26 20060101ALI20221021BHJP
   B32B 25/00 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
G02B5/00 B
C08J9/26 101
C08J9/26 CFH
B32B7/023
B32B3/22
B32B3/26 B
B32B25/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019129496
(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公開番号】P2021015181
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】土屋 昌俊
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-234096(JP,A)
【文献】特開昭61-85450(JP,A)
【文献】特開2007-171539(JP,A)
【文献】特開平10-286725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00- 5/136
B32B 1/00-43/00
C08J 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一樹脂層の第一面に、複数の線材を、一方向に揃えて任意の間隔で配置すること、
前記第一樹脂層の第一面に、前記複数の線材を覆う第二樹脂層を形成し、線材含有シートを形成すること、
複数の前記線材含有シートを、互いの線材の向きを揃えて積層した積層体を得ること、
前記積層体が有する複数の線材を横切る方向にスライスカットすることにより、スライスシートを得ること、及び、
前記スライスシートの厚さ方向に貫通する前記複数の線材の全部又は一部を除去し、前記スライスシートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を備えた光学フィルターを得ること、
を有する、光学フィルターの製造方法。
【請求項2】
前記線材を除去することが、溶解液を接触させて前記線材を溶解することである、請求項1に記載の光学フィルターの製造方法。
【請求項3】
前記スライスシートを得た後、
前記スライスシートの一方の主面及び他方の主面の一部にマスキング体を配置することと、
前記スライスシートにおける前記マスキング体が配置されていない領域において、前記複数の線材を除去することにより、前記スライスシートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を備えた貫通孔領域を形成し、その後、前記マスキング体を除去することにより、前記線材が残留した非貫通領域を形成した前記光学フィルターを得ること、
を有する、請求項1又は2に記載の光学フィルターの製造方法。
【請求項4】
前記スライスシートの少なくとも一方の主面側から、前記スライスシートの一部を厚さ方向に除去し、前記スライスシートに薄層部を形成することを有する、請求項1~3の何れか一項に記載の光学フィルターの製造方法。
【請求項5】
前記光学フィルターの少なくとも一方の主面側から、前記光学フィルターの一部を厚さ方向に除去し、前記光学フィルターに薄層部を形成することを有する、請求項1~3の何れか一項に記載の光学フィルターの製造方法。
【請求項6】
前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層がエラストマーである、請求項1~5の何れか一項に記載の光学フィルターの製造方法。
【請求項7】
前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層に遮光材が含まれる、請求項1~6の何れか一項に記載の光学フィルターの製造方法。
【請求項8】
前記線材が金属線材である、請求項1~7の何れか一項に記載の光学フィルターの製造方法。
【請求項9】
第一樹脂層の第一面に、複数の線材を、一方向に揃えて任意の間隔で配置すること、
前記第一樹脂層の第一面に、前記複数の線材を覆う第二樹脂層を形成し、線材含有シートを形成すること、
複数の前記線材含有シートを、互いの線材の向きを揃えて積層した積層体を得ること、
前記積層体に含まれる前記複数の線材の全部又は一部を除去することにより、前記積層体内に前記線材に対応する複数の貫通孔又は複数の非貫通孔が形成されたブロック体を得ること、及び、
前記ブロック体が有する前記複数の貫通孔又は前記複数の非貫通孔の長手方向を横切る方向にスライスカットすることにより、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を備えた光学フィルターを得ること、
を有する、光学フィルターの製造方法。
【請求項10】
前記積層体の一面において前記複数の線材の一方の端部がはみ出しており、
前記端部を把持し、前記積層体から前記複数の線材を引き抜くことにより、前記ブロック体を得る、請求項9に記載の光学フィルターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光の透過率や視野角を調節する光制御フィルムが知られている。例えば、特許文献1には、光吸収材料を含む光硬化性樹脂を基材フィルムとして備え、基材フィルムの一方の主面から反対側の他方の主面に向けて、すり鉢状の凹部が複数形成された光制御フィルムが提案されている。この凹部が多数形成された微細構造化層は、光制御フィルムの製造プロセスにおいて、凹部に対応する凸部を備えた成形型に光硬化性樹脂を流し込み、硬化させた後で離型することにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-54129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の光制御フィルムが有する微細構造化層の凹部の配置密度を高めたり、凹部のアスペクト比(深さ/直径)を高めたりするためには、製造プロセスに用いる成形型の凸部の密度を高め、そのアスペクト比(高さ/直径)を高める必要がある。しかし、細長い微細な凸部(微細突起)が高密度に配列された成形型に硬化性樹脂を流し込み、硬化させた後に成形型から離型すると、成形型の微細突起が割れたり、欠けたりする問題がある。
【0005】
本発明は、成形型を用いることなく、微細な貫通孔を高密度に備えた光学フィルターを製造することが可能な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] 第一樹脂層の第一面に、複数の線材を、一方向に揃えて任意の間隔で配置すること、前記第一樹脂層の第一面に、前記複数の線材を覆う第二樹脂層を形成し、線材含有シートを形成すること、複数の前記線材含有シートを、互いの線材の向きを揃えて積層した積層体を得ること、前記積層体が有する複数の線材を横切る方向にスライスカットすることにより、スライスシートを得ること、及び、前記スライスシートの厚さ方向に貫通する前記複数の線材の全部又は一部を除去し、前記スライスシートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を備えた光学フィルターを得ること、を有する、光学フィルターの製造方法。
[2] 前記線材を除去することが、溶解液を接触させて前記線材を溶解することである、[1]に記載の光学フィルターの製造方法。
[3] 前記スライスシートを得た後、前記スライスシートの一方の主面及び他方の主面の一部にマスキング体を配置することと、前記スライスシートにおける前記マスキング体が配置されていない領域において、前記複数の線材を除去することにより、前記スライスシートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を備えた貫通孔領域を形成し、その後、前記マスキング体を除去することにより、前記線材が残留した非貫通領域を形成した前記光学フィルターを得ること、を有する、[1]又は[2]に記載の光学フィルターの製造方法。
[4] 前記スライスシートの少なくとも一方の主面側から、前記スライスシートの一部を厚さ方向に除去し、前記スライスシートに薄層部を形成することを有する、[1]~[3]の何れか一項に記載の光学フィルターの製造方法。
[5] 前記光学フィルターの少なくとも一方の主面側から、前記光学フィルターの一部を厚さ方向に除去し、前記光学フィルターに薄層部を形成することを有する、[1]~[3]の何れか一項に記載の光学フィルターの製造方法。
[6] 前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層がエラストマーである、[1]~[5]の何れか一項に記載の光学フィルターの製造方法。
[7] 前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層に遮光材が含まれる、[1]~[6]の何れか一項に記載の光学フィルターの製造方法。
[8] 前記線材が金属線材である、[1]~[7]の何れか一項に記載の光学フィルターの製造方法。
[9] 第一樹脂層の第一面に、複数の線材を、一方向に揃えて任意の間隔で配置すること、前記第一樹脂層の第一面に、前記複数の線材を覆う第二樹脂層を形成し、線材含有シートを形成すること、複数の前記線材含有シートを、互いの線材の向きを揃えて積層した積層体を得ること、前記積層体に含まれる前記複数の線材の全部又は一部を除去することにより、前記積層体内に前記線材に対応する複数の貫通孔又は複数の非貫通孔が形成されたブロック体を得ること、及び、前記ブロック体が有する前記複数の貫通孔又は前記複数の非貫通孔の長手方向を横切る方向にスライスカットすることにより、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を備えた光学フィルターを得ること、を有する、光学フィルターの製造方法。
[10] 前記積層体の一面において前記複数の線材の一方の端部がはみ出しており、前記端部を把持し、前記積層体から前記複数の線材を引き抜くことにより、前記ブロック体を得る、[9]に記載の光学フィルターの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光学フィルターの製造方法によれば、成形型を用いることなく、微細な貫通孔を高密度に備えた光学フィルターを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】光学フィルターの製造方法の一例の概略を示す斜視図である。
図2】光学フィルター10を示す斜視図である。
図3図1の光学フィルター10の中央付近をX軸に沿って切断した断面図である。
図4図1の光学フィルター10の部分的な上面図である。
図5】光学フィルター20の上面図である。
図6】光学フィルター30をX軸に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一態様>
本発明の第一態様は、第一樹脂層の第一面に、複数の線材を、一方向に揃えて任意の間隔で配置すること(配置工程)、前記第一樹脂層の第一面に、前記複数の線材を覆う第二樹脂層を形成し、線材含有シートを形成すること(線材含有シート形成工程)、複数の前記線材含有シートを、互いの線材の向きを揃えて積層した積層体を得ること(積層体形成工程)、前記積層体が有する複数の導電線を横切る方向にスライスカットすることにより、スライスシートを得ること(スライスシート形成工程)、及び、前記スライスシートの厚さ方向に貫通する前記複数の線材の全部又は一部を除去し、前記スライスシートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を備えた光学フィルターを得ること(線材除去工程)、を有する、光学フィルターの製造方法である。
以下、図面を参照して、各工程の実施形態の例を説明する。
【0010】
[配置工程]
図1(a)に例示するように、基材100上に形成した第一樹脂層110の第一面110a上に、複数の線材Sを、一方向に向きを揃えて任意の間隔で平行に配置する。
本例では、各線材Sの長手方向が、基材100の長手方向に対して垂直となるように配置されている。ここで、第一樹脂層110の一方の主面を第一面といい、他方の主面を第二面という。
【0011】
複数の線材Sの間隔は、一定でもよいし、ランダムでもよい。隣接する2つの線材Sの中心間距離は、特に限定されず、光学フィルターの用途に応じて適宜調整される。線材Sの配置は、後工程で形成する貫通孔の配置に対応する。つまり、隣接する2つの線材Sの中心間距離は、隣接する2つの貫通孔の中心間距離に相当する。よって、線材S同士の間隔を小さくするほど、貫通孔の配置の密度を高めることができる。
前記中心間距離としては、例えば、6μm~1000μmとすることができ、高密度化を意図する場合には、例えば、6μm~50μmとすることができる。
【0012】
線材Sの材料は、第一樹脂層と一体化しないものであれば特に制限されず、例えば、金属、ガラス、セラミック、合成樹脂、天然樹脂、紙等が挙げられる。これらの中でも、後工程でウエットエッチングによる除去が可能な材料が好ましく、金属又は合成樹脂がより好ましく、金属がさらに好ましい。金属としては、例えば、硝酸を含む溶解液で除去することが可能な、鉄、銅、アルミニウム、鉛、亜鉛、スズ、タングステン等が挙げられる。
前記合成樹脂としては、ポリアミド、PEEK、液晶ポリマー等のエンジニアリングプラスチックが好ましい。
【0013】
長手方向に対して垂直に切断した線材Sの断面の形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、五角形以上の多角形等が挙げられる。
線材Sの直径(外径)は特に制限されず、例えば、5μm~300μmとすることができる。前記断面の形状が円形以外の場合、線材Sの直径は、前記断面を含む最小円の直径とする。
【0014】
線材Sは、芯線材と、前記芯線材の外周面に形成された被覆層と、を有する複合型線材であってもよい。線材除去工程において、前記複合型線材のうち、被覆層を残留させ、芯線材のみを除去することにより、被覆層が内壁を形成する貫通孔を形成することができる。被覆層は二層以上であってもよく、各被覆層を構成する材料は同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0015】
前記芯線材としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、鉛、亜鉛、スズ、タングステン等の卑金属、ポリビニルアルコール等の樹脂からなるものが挙げられる。卑金属からなる芯線材は硝酸を含む溶解液に接触させることにより、除去することができる。ポリビニルアルコール等の樹脂からなる芯線材は、水や有機溶剤からなる溶解液に接触させることにより、除去することができる。
【0016】
前記被覆層としては、溶解液に接触しても溶解し難いものが好ましく、例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、ロジウム、パラジウム、黒ルテニウム等の金属や、これらの金属の合金が挙げられる。なかでも、標準電極電位が高い金、白金、銀、銅がより好ましく、低硬度の金、銀がさらに好ましい。
前記被覆層を有することにより、前記芯線材と第一樹脂層110及び第二樹脂層120との接触を避けることができる。例えば硫黄、リン、窒素化合物、スズ等を含む芯線材が、シリコーン製の第一樹脂層110又は第二樹脂層120の硬化(加硫)を阻害することを防止することができる。
【0017】
長手方向に対して垂直に切断した複合型線材の断面の形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、五角形以上の多角形等が挙げられる。
複合型線材の直径(外径)は特に制限されず、例えば、5μm~300μmとすることができる。前記断面の形状が円形以外の場合、複合型線材の直径は、前記断面を含む最小円の直径とする。
複合型線材の芯線材の直径(外径)は特に制限されず、例えば、1μm~200μmとすることができる。前記断面の形状が円形以外の場合、芯線材の直径は、前記断面を含む最小円の直径とする。
【0018】
本明細書において、線材の直径は、無作為に選択された5個以上の線材の直径を顕微鏡等の拡大観察手段で測定し、平均した値である。
【0019】
基材100としては、必要に応じて線材含有シートから容易に剥離できるものが用いられ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルムが挙げられる。
第一樹脂層110を構成する樹脂は特に制限されず、公知の樹脂が適用可能であり、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の何れであってもよい。線材Sの配置が容易である観点から、第一樹脂層110の表面はタック性(粘着性)を有することが好ましく、前記樹脂はエラストマーであることがより好ましい。
【0020】
前記エラストマーとしては、例えば、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、シリコーンゴム等の熱硬化性エラストマー;ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系又はフッ素系等の熱可塑性エラストマー;或いはそれらの複合物等が挙げられる。これらの中でも、タック性を有し、圧縮永久歪が小さく、耐熱性が高く、耐候性及び耐寒性にも優れる、シリコーンゴムが好ましい。
【0021】
第一樹脂層110には、遮光材が含まれていることが好ましい。遮光材を大別すると、光吸収性材料と、光反射性材料とに分類される。
光吸収性材料としては、例えば、カーボン、染料、顔料等が挙げられる。これらのうち、光吸収性に優れることから、カーボンが好ましい。カーボンとしては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維等が挙げられる。
光反射性材料としては、例えば、金属が挙げられる。金属としては、アルミニウム、銀、金、クロム、ニッケル等が挙げられる。
【0022】
基材100上に第一樹脂層110を形成する方法としては、例えば、シート状の第一樹脂層110を基材100上に貼付する方法、液状の樹脂材料を基材100上に塗布し、形成した塗膜を硬化する方法等が挙げられる。
基材100上にシート状の第一樹脂層110を貼付する方法は特に制限されず、接着剤を用いる方法、エキシマ処理、コロナ処理等の表面処理により貼付面を活性化させ、接着させる方法等が挙げられる。
【0023】
第一樹脂層110の厚さは、例えば、0.5μm~500μmとすることができる。この厚さを薄くするほど、後工程のブロック体における線材含有シートの積層方向の線材の配置密度を高めることができる。
【0024】
線材Sを第一樹脂層1000の第一面110aに配置する方法は、特に制限されず、例えば、ロールから繰り出したシート状の基材100に連続的に形成した第一樹脂層110の第一面110aに対して、ボビンに巻回された複数の線材Sを繰り出して、第一樹脂層110の第一面110aに一定のピッチで連続的に配置する方法が挙げられる。
【0025】
[線材含有シート形成工程]
図1(b)に例示するように、複数の線材Sが配置された第一樹脂層110の第一面110a上に、第二樹脂層120を形成し、第二樹脂層120と第一樹脂層110を一体化することにより、第一樹脂層110と第二樹脂層120の間に線材Sを固定し、線材含有シート130を形成する。
【0026】
第二樹脂層120を構成する樹脂の例示は第一樹脂層110と同じである。第二樹脂層120を構成する樹脂は、第一樹脂層110を構成する樹脂と同じでもよいし、異なっていてもよいが、両層の密着性を向上させる観点から、互いに同じ樹脂であることが好ましい。第二樹脂層120には、第一樹脂層110と同様に遮光材を含むことが好ましい。
【0027】
第一樹脂層110の第一面上に第二樹脂層120を形成する方法は、基材100上に第一樹脂層110を形成する方法と同様の方法が挙げられる。
第二樹脂層120の厚さは、特に制限されず、例えば、0.5μm~500μmとすることができる。第二樹脂層120の厚さは、第一樹脂層110の厚さと同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0028】
[積層体形成工程]
図1(c)に例示するように、線材含有シート130の複数枚を積層した積層体140を形成する。積層の際、各線材含有シート130が有する線材Sの向きを互いに揃える。この際、積層体140の積層方向に見て、各線材Sの位置が重なるように、各線材Sの配置も揃えて積層することが好ましい。図示例では、積層方向に見て全ての線材Sが重なり合っている場合を例示したが、一部の線材Sは重なっていなくてもよい。
【0029】
本工程において、各線材含有シート130を積層する前に、各線材含有シート130から不要な基材100を剥離する。図示例では、最下層の線材含有シート130にのみ、基材100を残してある。また、積層体140の上面140aを構成する別の樹脂層をさらに積層してある。
【0030】
線材含有シート1300を積層する方法としては、例えば、接着剤を用いて各線材含有シートを接着する方法、線材含有シート130の積層面を表面処理により活性化させて接着する方法等が挙げられる。
前記接着剤は、第一樹脂層110及び第二樹脂層120を構成する樹脂と同じ種類の樹脂であってもよいし、異なる種類の樹脂であってもよい。
【0031】
[スライスシート形成工程]
図1(d)に例示するように、積層体140をスライスカットし、線材Sの切断面が表面に露出した、所望の厚さのスライスシート150を得る。スライスカットの際には、積層体140に含まれる複数の線材Sの長手方向を横切る方向に切断することにより、スライスシート150の表面に線材Sの切断面を露出させることができる。
積層体140をスライスカットする方法としては、例えば、レーザー加工、切削等の方法が挙げられる。
スライスシート150の厚さは、目的の光学フィルターの厚さに相当し、光学フィルターの用途に応じて適宜設定され、例えば、30μm~5000μmとすることができる。
【0032】
[線材除去工程]
スライスシート150が有する複数の線材Sは、スライスシート150の厚さ方向に貫通している。これらの線材Sの全部又は一部を除去することにより、線材Sが除去された箇所に貫通孔51が形成された、光学フィルター10を得ることができる(図2~4参照)。
【0033】
線材Sをスライスシート150から除去する方法は、第一樹脂層110、第二樹脂層120及び線材Sを構成する各材料に応じて選択される。
線材Sとスライスシート本体との密着力が弱い場合、例えば、スライスシート150を振動させたり、撓ませたり、叩いたりすることにより、線材Sをスライスシート本体から脱落させることができる。上記密着力が中程度である場合、スライスシート150に含まれる線材Sを引き抜いて除去することができる。上記密着力が強い場合、スライスシート150に含まれる線材Sに、溶解液を接触させて線材Sを溶解する方法が好ましい。
【0034】
線材Sの材料が、例えば、鉄、銅、アルミニウム、鉛、亜鉛、スズ、タングステン等の卑金属である場合、硝酸を含む溶解液を用いたウエットエッチングにより線材Sを除去し、貫通孔51を形成することができる。具体的には、例えば、溶解液にスライスシート150を浸漬することにより線材Sを溶解することができる。
また、線材Sがポリビニルアルコール等の有機物質からなる場合、前記有機物質を溶解することが可能な水や有機溶媒を含む溶解液を用いることができる。
線材Sを溶解する際の溶解液の温度は、例えば、10~100℃が挙げられる。
【0035】
線材Sが前述の複合型線材である場合、芯線材のみを溶解し、被覆層をスライスシート本体に残留させてもよい。この場合、芯線材が除去された箇所に貫通孔が形成され、その貫通孔の内壁を被覆層が形成する。
前記被覆層が金属である場合、前記貫通孔に入射した光は、被覆層において反射しながら貫通孔を通過し、貫通孔内で吸収され難いので、前記貫通孔に入射した光の光線透過率を向上させることができる。
【0036】
[マスキング]
スライスシート150の一方の主面150a及び他方の主面150bの一部にマスキング体を配置する方法を説明する。マスキング体は、スライスシート150に含まれる線材Sを保護するものである。マスキング体を配置した後で、前述した線材Sの除去工程を行うと、マスキング体が配置されていない領域Aにおいて線材Sを除去し、マスキング体を配置した領域Bにおいては、線材Sを残留させることができる。この結果、領域Aにおいては、スライスシート150の厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を備えた貫通孔領域を形成し、領域Bにおいては、マスキング体を除去することにより、線材Sが残留した非貫通領域を形成することができる。つまり、マスキング体を所望の領域に配置することにより、貫通孔領域と非貫通量基とを備えた光学フィルターを得ることができる。
【0037】
マスキング体としては、溶解液によって溶解し難い材料からなり、スライスシート150の主面に密着可能なものであれば特に制限されず、例えば、マスキングテープ、レジスト層、ガラス板等が挙げられる。
【0038】
[薄層部の形成]
スライスシート形成工程で得たスライスシート150の少なくとも一方の主面側から、スライスシート150の一部を厚さ方向に除去し、スライスシート150に薄層部を形成してもよい。その後、除去工程において線材Sを除去することにより、部分的に薄層部を備えた光学フィルター1を得ることができる。
或いは、線材除去工程で得た光学フィルター1の少なくとも一方の主面側から、光学フィルター1の一部を厚さ方向に除去し、光学フィルター1に薄層部を形成してもよい。
スライスシート150及び光学フィルター1の一部を厚さ方向に除去する方法としては、研削、切削、レーザー加工等の、公知の樹脂フィルム加工技術を適用できる。
【0039】
以上で説明した第一態様の製造方法は、スライスシートを得た後で、スライスシートに含まれる線材を除去する順序で行われるが、この順序に従わない第二態様の製造方法を実施してもよい。
【0040】
<第二態様>
本発明の第二態様は、第一樹脂層の第一面に、複数の線材を、一方向に揃えて任意の間隔で配置すること(配置工程)、前記第一樹脂層の第一面に、前記複数の線材を覆う第二樹脂層を形成し、線材含有シートを形成すること(線材含有シート形成工程)、複数の前記線材含有シートを、互いの線材の向きを揃えて積層した積層体を得ること(積層体形成工程)、前記積層体に含まれる前記複数の線材の全部又は一部を除去することにより、前記積層体内に前記線材に対応する複数の貫通孔又は複数の非貫通孔が形成されたブロック体を得ること(ブロック体形成工程)、及び、前記ブロック体が有する前記複数の貫通孔又は前記複数の非貫通孔の長手方向を横切る方向にスライスカットすることにより、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を備えた光学フィルターを得ること(切断工程)、を有する、光学フィルターの製造方法である。
【0041】
[配置工程]、[線材含有シート形成工程]、[積層体形成工程]
上記3つの工程は第一態様の各工程と同様に行うことができる。
本態様で得る積層体は、その一面から複数の線材の一方の端部がはみ出したものであることが好ましい。このような積層体を得る方法としては、配置工程において、第一樹脂層110の一方の主面に配置する複数の線材Sの一方の端部を第一樹脂層110の任意の一辺からはみ出して配置する方法が挙げられる。その後の線材含有シート形成工程において、第二樹脂層120を形成することにより、シートの一辺から各線材Sの一方の端部がはみ出した線材含有シートを得ることができる。その後の積層体形成工程において、各線材Sの一方の端部がはみ出した線材含有シートを積層することにより、各線材Sの一方の端部がはみ出した積層体を得ることができる。このような積層体として、例えば、図1(c)の紙面手前側に、各線材Sの一方の端部が突出し、本体の一面からはみ出した状態の積層体が挙げられる(不図示)。なお、各線材Sの他方の端部が紙面奥行き側の面(一面の反対側の面)からはみ出していてもよい。
【0042】
[ブロック体形成工程]
前記積層体から各線材Sを除去し、ブロック体を得る方法としては、第一態様の線材除去工程と同様の方法が挙げられる。
前記積層体の一面から各線材Sの一方の端部がはみ出している場合、そのはみ出した端部を把持し、積層体の本体から各線材Sを引き抜くことにより、ブロック体を得ることができる。
得られたブロック体内には、各線材Sが存在した位置に対応する複数の貫通孔又は複数の非貫通孔が形成されている。前記積層体において各線材Sの両端部が積層体本体からはみ出していた場合には、その線材Sが除去された箇所に貫通孔が形成される。前記積層体において各線材Sの一方の端部のみが積層体本体からはみ出していた場合には、その線材Sが除去された箇所に非貫通孔が形成される。
前記ブロック体において貫通孔及び非貫通孔を形成したくない箇所については、線材Sを除去せずに残留させてもよい。線材Sを残留させる方法は第一態様と同様に行うことができる。
【0043】
[切断工程]
前記ブロック体が有する前記複数の貫通孔又は前記複数の非貫通孔の長手方向を横切る方向に所望の厚さでスライスカットする方法としては、第一態様のスライスシート形成工程と同様の方法が挙げられる。
本工程により、その厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を備えた所望の厚さの光学フィルターを得ることができる。必要に応じて、第一態様と同様に薄層部を形成してもよい。
【0044】
<その他の加工>
以上の各態様により得られる光学フィルター1は、端的に言えば、厚さ方向に複数の貫通孔が形成された樹脂シートである。
樹脂シート本体に遮光材が含まれている場合、光学フィルター1の主面に入射した光は貫通孔51を透過する。
樹脂シート本体の表面を、金属メッキ層、塗料層等の遮光層が被覆していてもよい。この場合にも、光学フィルター1の主面に入射した光は貫通孔51を透過する。貫通孔51の内部には、透明部材が設置されていてもよい。このような透明部材は、例えば、貫通孔51に透明な樹脂を注入し、硬化させることにより形成することができる。
一方、樹脂シート本体に遮光材が含まれていない場合、貫通孔51に遮光部材を設置することにより、樹脂シート本体のみを光が透過する光学フィルターとすることができる。前記遮光部材としては、例えば、遮光材を含む樹脂部材が挙げられる。このような樹脂部材は、貫通孔51に遮光材を含む樹脂組成物を注入し、硬化させることにより形成することができる。
以下、本発明の製造方法により得られる光学フィルターの実施形態の例を説明する。
【0045】
《光学フィルター》
本発明の製造方法により得た光学フィルターは、光透過部と遮光部とからなる海島構造を備えたシートであり、第一の主面から第二の主面にわたって、光透過部と遮光部が各々延びており、前記光透過部及び前記遮光部のうち何れか一方が、前記第一の主面から前記第二の主面へ貫通する複数の島部分を形成し、他方が、前記複数の島部分を互いに独立させる海部分を形成している。つまり、光学フィルターの本体は樹脂シートであり、単一の海部分が前記樹脂シートを形成し、複数の島部分が前記樹脂シートを厚さ方向に貫通する複数の貫通領域を形成する。
【0046】
<第一実施形態>
図2~4に例示する光学フィルター10は、第一の主面1及び反対側の第二の主面2と、第一の主面1と第二の主面2との間に延在する光透過部3と、第一の主面1と第二の主面2との間に延在する遮光部4と、を備えている。光透過部3及び遮光部4は海島構造を形成している。光透過部3が、第一の主面1から第二の主面2へ貫通する複数の島部分5を形成し、島部分5を形成しない遮光部4が、複数の島部分5を互いに独立させる海部分6を形成している。光学フィルター10の本体はエラストマー等の樹脂によって形成されている。
【0047】
光学フィルター10は、矩形のシート状であり、その長手方向をX方向、その短手方向をY方向、その主面に対する垂線方向(すなわちシートの厚さ方向)をZ方向とする。
光学フィルター10の平面視の形状は矩形に限定されず、円形、楕円形、多角形、その他の任意の形状が採用できる。
光学フィルター10の縦×横のサイズは特に限定されず、例えば、5mm×5mm~100cm×100cmとすることができる。
【0048】
光学フィルター10の厚さは、例えば、30μm以上5000μm以下が好ましく、50μm以上1000μm以下がより好ましく、70μm以上500μm以下がさらに好ましい。
前記厚さが前記下限値以上であれば、光の透過角の制御がより容易になる。前記厚さが前記上限値以下であれば、可撓性がより高くなる。
光学フィルター10の厚さは、その断面を無作為に選択した10カ所以上で測定した値の平均値として求められる。測定には測定顕微鏡等の公知の微細構造観察手段が適用される。
【0049】
光学フィルター10は、複数の光透過部3(島部分5)と、遮光部4(海部分6と、によって形成された海島構造を有する。
光学フィルター10の本体はシートであり、そのシートの一方の表面を第一の主面1といい、他方の表面を第二の主面2という。
第一の主面1の全面積に対する海部分6の合計面積は、30~99%が好ましく、50~95%がより好ましく、65~90%がさらに好ましい。第二の主面2における海部分6の合計面積も、第一の主面1における海部分6の合計面積と同様であることが好ましい。
島部分5と海部分6の各主面におけるそれぞれの合計面積は、各主面を撮影した画像を公知の方法で画像処理することにより求められる。
【0050】
光透過部3の光線透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。光透過部3の光線透過率は100%であってもよい。光線透過率が上記下限値以上であると、光学フィルター10を通る光量が充分となる。
遮光部4の光線透過率は70%未満が好ましく、50%未満がより好ましく、30%未満がさらに好ましく、10%未満が特に好ましい。遮光部4の光線透過率は0%であってもよい。光線透過率が上記上限値未満であると、光学フィルター10による光透過角の制御が充分に行われる。
例えば、光透過部3の光線透過率が70%以上100%以下、且つ遮光部4の光線透過率が0%以上70%未満であることが好ましく、光透過部3の光線透過率が80%以上100%以下、且つ遮光部4の光線透過率が0%以上50%未満であることがより好ましく、光透過部3の光線透過率が90%以上100%以下、且つ遮光部4の光線透過率が0%以上30%未満であることがさらに好ましい。
ここで、「光線透過率」の値は、光源としてJIS Z 8720:2012に規定されるD65を用い、光源から出射された検査光の強度を受光センサで測定する装置において、前記検査光の光路上に被測定物が無い状態での受光センサの出力値をA、検査光の光路上に被測定物をセットし、被測定物を透過した透過光が受光センサにおいて受光される状態での出力値をBとするとき、光線透過率=(B/A)×100(単位;%)で求められる値とする。
【0051】
(光透過部)
光学フィルター10の光透過部3は、海島構造のうちの島部分5であり、海部分6によって互いに独立化された複数の円柱状の透明部分である。各島部分5は光学フィルター10を貫通しているので、各島部分5の第一端部は、光学フィルター10の第一の主面1に露出し、各島部分5の第二端部は、光学フィルター10の第二の主面2に露出している。各島部分5は、X方向及びY方向に沿って一定のピッチで配置されている。
【0052】
光学フィルター10をZ方向に貫通する島部分5の立体形状は、柱状であることが好ましい。ここで、島部分5が柱状であるとは、光学フィルター10から島部分5を取り出したと仮定したとき、島部分5が立体的な柱状として認識されることをいう。柱状の高さ方向は光学フィルター10の厚さ方向に沿う。柱状をなす柱の上面(頂面)と底面はそれぞれ第一の主面1及び第二の主面2に平行となる。
島部分5をXY平面で切断した断面形状は、例えば、円形、楕円形、四角形、その他の多角形等が挙げられる。島部分5の第一の主面1に露出する第一端部の前記断面形状(島部分5の第一の主面1にある平面形状)と、第二の主面2に露出する第二端部の前記断面形状(島部分5の第二の主面2にある平面形状)は、互いに同じでもよく、異なってもよいが、光制御の容易さの観点から同じであることが好ましい。
【0053】
柱状の島部分5の中心軸の軸線は、第一の主面1及び第二の主面2に対して、垂直でもよいし、傾いていてもよく、製造の容易さ及び光透過角の制御の容易さの観点から、略垂直であることが好ましい。ここで、略垂直とは、90°±2°で交わることである。略垂直である場合、柱状の島部分5の高さHは、光学フィルター10の厚さとほぼ同じである。
前記軸線と主面とがなす角、及び島部分5の高さHは、島部分5及び主面を含む断面を、測定顕微鏡等の公知の微細構造観察手段によって測定することにより求められる。島部分5の高さHは、第一の主面1と第二の主面2との距離である。
【0054】
個々の島部分5について、各主面に露出する端部の大きさRは、前記端部を含む最小円の直径である。前記直径は、光学フィルター10を透過する光の透過角の制御の容易さの観点から、例えば、5μm~300μmが好ましく、10μm~100μmがより好ましい。前記直径が上記下限値以上であると、製造時の線材Sの除去が容易になる。前記直径が上記上限値以下であると、後述のアスペクト比を高めることができる。
単一の島部分5の各主面に露出する2つの端部の大きさRは、互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
光学フィルター10の任意の主面における複数の島部分5から無作為に選択した10個以上の島部分5の前記直径の平均は、5μm~100μmが好ましく、10μm~50μmがより好ましい。
前記直径は、測定顕微鏡等の公知の微細構造観察手段によって測定することができる。
【0055】
柱状の島部分5の(大きさR:高さH)で表されるアスペクト比は、1:5~1:90が好ましく、1:8.5~1:60がより好ましい。
前記アスペクト比が1:5~1:90であり、島部分5が中空である場合、光透過角θは22.6°~1.2°となる。前記アスペクト比が1:8.5~1:60の場合、光透過角θは13.4°~1.8°となる。また、島部分5に透明材料が充填されている場合、透明材料の屈折率は通常空気よりも大きいので、上記で示した中空の場合の範囲よりも光透過角θは広がる。よって、光透過角θを狭める観点から、島部分5は中空であることが好ましい。
上記光透過角θの範囲の下限値以上であると光学フィルター10の島部分5を透過する光の透過角の制御が容易になる。
上記光透過角θの範囲の上限値以下であると光学フィルター10の島部分5を透過する光量を大きくすることができる。また、比較的容易に製造することができる。
前記アスペクト比は、光学フィルター10が有する複数の島部分5から無作為に選択した10個以上の島部分5について、両端部の大きさRを測定した平均値と、高さHを測定した平均値との比である。個々の大きさR及び高さHは、測定顕微鏡等の公知の微細構造観察手段を用いて、測定することができる。
【0056】
第一の主面1及び第二の主面2における島部分5の配置のピッチP、すなわち各主面に露出する島部分5の隣接する端部同士のピッチPは、個々の端部を含む各最小円同士の中心間距離である。このピッチPは、光学フィルター10を透過する光の透過角の制御の容易さの観点から、例えば、6μm~1000μmが好ましく、10μm~500μmがより好ましく、15μm~300μmがさらに好ましい。
前記ピッチPが上記下限値以上であると、製造時の線材Sの配置が容易になる。
前記ピッチPが上記上限値以下であると、光学フィルター10を通して見える画像の視認性が高まり、充分な解像度が得られやすい。
ピッチPは、各主面において一定であることが好ましい。各主面同士のピッチPは、互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
ピッチPは、任意の主面を撮影した画像を公知の方法で画像処理することにより求められる。
任意の主面のピッチPが、主面の領域によって異なる場合、連続する3個以上の島部分5のピッチPが上記範囲であることが好ましく、連続する5個以上の島部分5のピッチPが上記範囲であることがより好ましく、連続する10個以上の島部分5のピッチPが上記範囲であることがさらに好ましい。
【0057】
第一の主面1及び第二の主面2における島部分5の配置は、X列×Y行の2次元アレイ状の配置である。島部分5の配置はこの例に限定されず、任意の配置パターンが採用される。X列×Y行において、例えば、X,Yはそれぞれ独立に10~1000の任意の整数とすることができる。複数の島部分5が2次元アレイ状に配置されたとき、任意の列において隣接する島部分5同士の中心を結ぶ各線分は1つの直線上にあり、任意の行において隣接する島部分5同士の中心を結ぶ各線分は1つの直線上にあり、各列を代表する上記直線と各行を代表する上記直線とは互いに約90°で交わる。
配置パターンは、2次元アレイ状でもよく、ジグザグ状でもよく、その他の任意のパターンでもよく、無作為なランダム配置でもよい。
【0058】
図2,4に示す光学フィルター10の島部分5のX列×Y行の2次元アレイにおいて、各列の島部分5の配列方向(各列を代表する直線の方向)は光学フィルター10の外縁をなすX方向の辺と平行であり、各行の島部分5の配列方向(各行を代表する直線の方向)は光学フィルター10の外縁をなすY方向の辺と平行である。この変形例として、複数の島部分5からなるX列×Y行の2次元アレイのY行が、前記外縁のY方向の辺に対して平行ではなく、交わる方向に配置されていてもよい。この場合、前記2次元アレイのX列が、前記外縁のX方向の辺に対して平行ではなく、交わる方向に配置される。例えば、図5を参照して、光学フィルター20の外縁のY方向を直線Q1で表し、島部分5のY行の配列方向を直線Q2で表したとき、直線Q1と直線Q2は角度αで交わる。前記Y方向の辺と前記Y行との交わりの角度αは、任意に調整することができ、鋭角側を見て、例えば、10~30°とすることが好ましい。このように交わりの角度を付けると、光学フィルターをディスプレイ画面の枠に合わせて貼付した場合、ディスプレイ画面における画素配列のパターンと、光学フィルターが有する複数の島部分5の配列パターンとの干渉による干渉縞(モアレ)の発生を軽減することができる。
【0059】
光学フィルター10の光透過部3は、遮光部4に設けられた貫通孔51である。貫通孔51は空気で満たされていてもよく、光透過性材料が充填されていてもよい。貫通孔51が空気で満たされている場合には、透過する光の屈折率が小さいので、光透過角θを小さくすることができる。貫通孔51が光透過性材料で満たされている場合には、貫通孔51の形状が光透過性材料によって保持され易くなり、光学フィルター10を変形させた場合にも光透過部3の形状を保持し易くなる。
【0060】
前記光透過性材料としては、例えば、透明樹脂、ガラスが挙げられる。光学フィルター10の可撓性を高める観点から、透明エラストマーが好ましい。透明エラストマーの具体例としては、例えば、シリコーン、ポリウレタン等が挙げられる。前記貫通孔に充填される透明エラストマーは1種でもよいし、2種以上でもよい。透明性及び耐熱性等に優れる点から、前記透明エラストマーは、シリコーンゴムが好ましい。
【0061】
(遮光部)
光学フィルター10の遮光部4は、海島構造のうちの海部分6であり、島部分5を除いた不透明部分である。
遮光部4のZ方向の長さは、光学フィルター10の厚さと同じであり、30μm以上5000μm以下が好ましく、50μm以上1000μm以下がより好ましく、70μm以上500μm以下がさらに好ましい。前記長さが前記下限値以上であれば、光透過角θを制御し易くなる。前記長さが前記上限値以下であれば、光学フィルター10の可撓性がより高くなる。
【0062】
遮光部4の全質量に対するエラストマーの含有量は、50~99質量%が好ましく、60~97質量%がより好ましく、70~95質量%がさらに好ましい。
前記含有量が上記下限値以上であることにより、光学フィルター10の可撓性が充分に高まる。前記含有量が上記上限値以下であることにより、遮光部4に遮光材を充分に含ませる余地ができる。前記全質量のうちエラストマーの含有量を除いた残部を遮光材に割り当てることができる。
【0063】
遮光部4に含まれるエラストマーは、公知のエラストマーが適用され、透明でもよく、不透明でもよい。前記エラストマーは1種でもよく、2種以上でもよい。
光透過部3がエラストマーを含む場合、遮光部4と光透過部3の接着性を高め、一体化することにより光学フィルター10の可撓性が充分に高まることから、光透過部3に含まれるエラストマーと遮光部4に含まれるエラストマーとは同じであることが好ましい。
遮光部4に含まれるエラストマーはシリコーンゴムが好ましい。
【0064】
遮光部4は、エラストマー等の樹脂以外に、遮光材を含むことが好ましい。遮光材としては、光吸収性材料及び光反射性材料の少なくとも一方が使用される。具体例は前述したのでここでは省略する。
【0065】
<第二実施形態>
図6に例示する光学フィルター30は、本体として第一実施形態の光学フィルター10を備え、本体の両主面1,2にはそれぞれ第一の透明封止層7及び第二の透明封止層8が積層されている。また、光透過部3には透明樹脂が充填されている。
【0066】
光学フィルター30の各透明封止層は、本体の各主面を覆い、本体を保護している。
各透明封止層が存在すると、光透過部3が空洞の貫通孔である場合には、貫通孔内に外部から異物が侵入することを防止することができる。
また、各透明封止層の露出する面が平滑であれば、当該面における光の乱反射を防止し、光透過部3を通して、光学フィルター30の反対側を透かして見ることが容易になる。
【0067】
各透明封止層の構成材料は透明であればよく、例えば、ガラス、透明な合成樹脂が挙げられる。具体的には、例えば、シリコーン、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、シクロオレフィン、液晶ポリマー等が挙げられる。
本体との密着性を高める観点から、透明封止層を構成する材料は、本体を構成する海部分6に含まれるエラストマーと同類のエラストマーであることが好ましい。また、透明封止層がガラスであると光学フィルター30に剛性を付与すること、及び耐熱性をより一層向上させることができる。
【0068】
第一の透明封止層7及び第二の透明封止層8はそれぞれ同じ透明材料によって形成されていてもよく、異なる透明材料によって形成されてもよい。
第一の透明封止層7及び第二の透明封止層8はそれぞれ複数層であってもよい。前記複数層において、各層はそれぞれ同じ透明材料によって形成されていてもよいし、異なる材料によって形成されていてもよい。例えば、ガラス層と透明樹脂層の積層構造が上記の透明封止層を形成していてもよい。前記積層構造のうち、ガラス層が前記シートの主面に接していてもよいし、透明樹脂層が前記シートの主面に接していてもよい。
【0069】
各透明封止層の厚さは、1μm以上200μm以下であることが好ましく、3μm以上175μm以下であることがより好ましく、5μm以上150μm以下であることがさらに好ましい。透明封止層の厚さが前記下限値以上であれば、光学フィルターの本体を充分に保護できる。各透明封止層の厚さが前記上限値以下であれば、充分な光透過性を確保でき、良好な光学特性が得られる。
透明封止層の厚さは、その断面を無作為に選択した10カ所以上で測定した値の平均値として求められる。測定には測定顕微鏡等の公知の微細構造観察手段が適用される。
【0070】
以上で説明した第一及び第二実施形態の光学フィルターは、光透過部3と遮光部4を備える。第一の主面1に入射した光線のうち、光透過部3に入射した光線はこれを透過して第二の主面2から出射し、遮光部4に入射した光線はこれに吸収されるか反射される。
光透過部3の配列、ピッチP、大きさR、アスペクト比を適宜調整することにより、光線の透過角θ、透過する光量を制御することができる。
【0071】
<光透過部と遮光部の反転>
上述した光学フィルター10、光学フィルター20、光学フィルター30においては、海部分が遮光部であり、島部分が光透過部である。これらの変形例として、海部分が光透過部であり、島部分が遮光部である光学フィルターが挙げられる。つまり、遮光部と光透過部が反転していること以外は、光学フィルター10~30と同じ光学フィルターが挙げられる。
上記の変形例において、海部分の全質量のうち少なくとも70質量%、好ましくは80~100質量%が透明なエラストマーによって形成されていることが好ましい。海部分には、エラストマー以外の材料が含まれてもよい。島部分には前述した遮光材が含まれ、その他に公知のバインダーが含まれてもよい。海部分と島部分の密着性を高める観点から、海部分を構成するエラストマーと同じ種類のエラストマーが、島部分にも含まれることが好ましい。
【0072】
上記の変形例の光学フィルターにあっては、第一の主面に入射した光線のうち、島部分に入射した光線はこれに吸収されるか反射され、海部分に入射した光線はこれを透過して第二の主面から出射する。
柱状の島部分の遮光部の配列、ピッチ、大きさ、アスペクト比を適宜調整することにより、光線の透過角、透過する光量を制御することができる。
【0073】
本発明に係る光学フィルターは、例えば、視野角制御、輝度向上、防眩等を目的として、液晶表示装置等の画像表示装置に取り付けられる。また、光学フィルターは、例えば、発光ダイオード、有機エレクトロルミネッセンス素子等の発光体、光センサ等の受光体に取り付けることができる。
【実施例
【0074】
PETフィルムの表面に、遮光材を含むシリコーンゴムからなる厚さ15μmの第一樹脂層を常法により形成した。遮光材としてカーボンブラックを用いた。
第一樹脂層の表面に、複数の金属線材を、長手方向の向きを揃えて100μmのピッチで平行に配置した。金属線材として、真鍮からなる直径30μmの円柱状のものを用いた。
次に、複数の金属線材が配置された第一樹脂層の表面を、遮光材を含むシリコーンゴムからなる厚さ15μmの第二樹脂層で覆い、第二樹脂層と第一樹脂層を一体化することにより、第一樹脂層と第二樹脂層の間に複数の金属線材が固定された線材含有シートを得た。
続いて、上記方法により準備した200枚の線材含有シートを、各線材含有シートに含まれる金属線材の長手方向の向きが揃うように積層することにより、線材含有シートの積層体を得た。
次に、積層体に含まれる金属線材の長手方向を横切る方向に、積層体をスライスカットし、厚さ300μmのスライスシートを得た。スライスシートの表面には、金属線材の円形の切断面が100μmピッチで露出していた。
続いて、硝酸を含む溶解液にスライスシートを浸漬し、金属線材を溶解して除去した。これにより、金属線材の形状に対応した貫通孔を備えた、光学フィルターを得た。
得られた光学フィルターの一方の主面及び他方の主面には、直径約30μmの開口部が100μmピッチで配列していた。一方の主面に対して光を垂線方向に照射すると、開口部から入射した光が、他方の主面の開口部から出射することが観察された。次に、一方の主面に対して光を仰角70°の方向から照射すると、垂線方向から照射した場合に比べて弱い光が、他方の主面の開口部から出射することが確認された。
以上の結果から、本発明に係る製造方法によって、光学フィルターを製造できることが確認された。
【符号の説明】
【0075】
1 第一の主面
2 第二の主面
3 光透過部
4 遮光部
5 島部分
51 貫通孔
6 海部分
7 第一の透明封止層
8 第二の透明封止層
S 線材
10 光学フィルター
20 光学フィルター
30 光学フィルター
100 基材
110 第一樹脂層
120 第二樹脂層
110a 第一面
130 線材含有シート
140 積層体
150 スライスシート
図1
図2
図3
図4
図5
図6