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特許7162592線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)標的イメージングおよび治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)標的イメージングおよび治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/55 20170101AFI20221021BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221021BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20221021BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20221021BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20221021BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20221021BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20221021BHJP
   C07K 5/06 20060101ALN20221021BHJP
   C07K 5/08 20060101ALN20221021BHJP
【FI】
A61K47/55
A61P35/00
A61P35/04
A61K49/00
A61K51/04 200
A61K47/54
A61K38/07
C07K5/06
C07K5/08
【請求項の数】 40
(21)【出願番号】P 2019531797
(86)(22)【出願日】2017-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 US2017065995
(87)【国際公開番号】W WO2018111989
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】62/434,380
(32)【優先日】2016-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/575,050
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505194066
【氏名又は名称】パーデュー・リサーチ・ファウンデイション
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ステュワート・ロウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョティ・ロイ
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/192123(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/114166(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0357650(US,A1)
【文献】特表2012-503670(JP,A)
【文献】Clin Cancer Res,2012年,Vol.18, No.22,pp.6208-6218
【文献】Clin Cancer Res,2008年,Vol.14,pp.4584-4592
【文献】ACS Med. Chem. Lett.,2013年,Vol.4,pp.491-496
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2012年,Vol.22,pp.3412-3417
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
C07D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造:B-L-X
[式中、
Bは線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)阻害剤を含み;
Lは二価リンカーを含み;
Xは近赤外(NIR)吸収色素、放射性イメージング剤、または癌細胞および/もしくは癌関連線維芽細胞(CAF)に対して有効な治療剤を含み、
Bが
【化1】
であって、
およびRは同一または異なっており、かつ、それぞれ独立して、水素およびハロゲンから成る群から選択され;
はC-Cアルキル、ニトリル、またはイソニトリルであり;
、R、およびRは同一または異なっており、かつ、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、およびC-Cアルキルから成る群から選択され;
nは1~8の整数である。]
である構造を有する、コンジュゲートまたはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
およびRがそれぞれハロゲンである、請求項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
がニトリルである、請求項2に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
、R、およびRがそれぞれ水素である、請求項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
Bが
【化2】
である構造を有する、請求項に記載のコンジュゲートまたはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項6】
Bが
【化3】

である構造を有する、請求項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項7】
リンカーが、Lys、Asn、Thr、Ser、Ile、Met、Pro、His、Gln、Arg、Gly、Asp、Glu、Ala、Val、Phe、Leu、Tyr、Cys、およびTrpから成る群から選択される、DまたはL配置の少なくとも1つのアミノ酸、またはその誘導体を含む、請求項1に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項8】
リンカーが、GluおよびCysから成る群から独立して選択される、少なくとも2つのアミノ酸、またはその誘導体を含む、請求項1に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項9】
リンカーが、式:Glu-Glu-Glu
[式中、グルタミン酸は適宜、側鎖のカルボン酸に共有結合し、アミド結合を形成したアミノ糖部位で置換されていてもよい。]
で示されるアミノ酸部位を含む、請求項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項10】
アミノ糖部位が1-デオキシ-1-アミノ-D-グルシトールである、請求項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項11】
リンカーが、式:
【化4】

[式中、
mは0~9の整数であり、pは3~10の整数であり、qは3~100の整数である。]
で示される部位を含む、請求項1に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項12】
リンカーが、
【化5】

[式中、
およびRはそれぞれ独立して、HまたはC-Cアルキルであり;
tは1~8の整数である。]
から成る群から選択される部位を含む、請求項1に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項13】
およびRがHであり、tが2である、請求項12に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項14】
Lが構造:
【化6】

である、請求項1に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項15】
リンカーが、
【化7】

[式中、RはHまたはC-Cアルキルである。]
から成る群から選択される部位を含む、請求項1に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項16】
式:
【化8】

を含む、請求項1に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項17】
Xが蛍光色素またはNIR色素を含む、請求項1に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項18】
蛍光色素がフルオレセインマレイミドまたはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)である、請求項17に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項19】
NIR色素がS0456である、請求項17に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項20】
Xが構造:
【化9】

を有する、請求項1に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項21】
構造:
【化10】
を有する、請求項1に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項22】
構造:
【化11】

を有する、請求項1に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項23】
Xが式:
【化12】
で示されるキレート剤である、請求項1に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項24】
Xがキレート剤に配位した放射性金属同位体を含む、請求項23に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項25】
構造:
【化13】
[式中、
Lが二価リンカーを含み;
Xが近赤外(NIR)吸収色素を含む。]
を有するコンジュゲート。
【請求項26】
構造:
【化14】

を有する、請求項25に記載のコンジュゲート。
【請求項27】
コンジュゲートを含む薬剤であって、当該コンジュゲートは、構造:
【化15】
[式中、Lは二価リンカーを含み、Xは近赤外(NIR)吸収色素を含む。]
を有し;患者から癌関連線維芽細胞(CAF)を外科的に除去するために使用され、
患者の腫瘍微小環境において、そこで光刺激の適用によって、NIR色素の蛍光を生じさせ、その腫瘍微小環境は少なくとも一つのCAFを含み、蛍光の結果に基づいて、患者のCAF含有組織が切除される、薬剤
【請求項28】
コンジュゲートによってイメージングされるCAF含有組織が、間質細胞を含む、請求項27に記載の薬剤
【請求項29】
が、ビンカアルカロイド、クリプトフィシン、ボルテゾミブ、チオボルテゾミブ、ツブリシン、アミノプテリン、ラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エベロリムス、α-アマニチン、ベルカリン、ジデムニンB、ゲルダナマイシン、プラバラノール(purvalanol)A、イスピネシブ、ブデソニド、ダサチニブ、エポシロン、メイタンシン、およびチロシンキナーゼ阻害剤から成る群から選択される治療剤である、請求項1~16のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項30】
治療剤が、式:
【化16】
[式中、
1a、R3a、R3a’およびR3a’’はそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-CアルキニルおよびC-Cシクロアルキルから成る群から選択され、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-CアルキニルおよびC-Cシクロアルキルにおける水素原子は、それぞれ独立して適宜、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、5~7員ヘテロアリール、-OR13a、-OC(O)R13a、-OC(O)NR13a13a’、-OS(O)R13a、-OS(O)13a、-SR13a、-SC(O)R13a、-S(O)R13a、-S(O)13a、-S(O)OR13a、-S(O)NR13a13a’、-S(O)NR13a13a’、-OS(O)NR13a13a’、-OS(O)NR13a13a’、-NR13a13a’、-NR13aC(O)R14a、-NR13aC(O)OR14a、-NR13aC(O)NR14a14a’、-NR13aS(O)R14a、-NR13aS(O)14a、-NR13aS(O)NR13a14a’、-NR13aS(O)NR14a14a’、-P(O)(OR13a、-C(O)R13a、-C(O)OR13a、または-C(O)NR13a13a’で置換されていてもよく、
2a、R4aおよびR12aはそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニルから成る群から選択され;
5aおよびR6aはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、-OR15a、-SR15aおよび-NR15a15a’から成る群から選択され、ここで、C-Cアルキル、C-CアルケニルおよびC-Cアルキニルにおける水素原子は、それぞれ独立して適宜、ハロゲン、-OR16a、-SR16a、-NR16a16a’、-C(O)R16a、-C(O)OR16a、または-C(O)NR16a16a’で置換されていてもよく;あるいは、R5aおよびR6aは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、-C(O)-を形成し;
7a、R8a、R9a、R10aおよびR11aはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、-CN、-NO、-NCO、-OR17a、-SR17a、-S(O)OR17a、-NR17a17a’、-P(O)(OR17a、-C(O)R17a、-C(O)OR17aおよび-C(O)NR17a17a’から成る群から選択され、ここで、C-Cアルキル、C-CアルケニルおよびC-Cアルキニルにおける水素原子は、それぞれ独立して適宜、ハロゲン、-OR18a、-SR18a、-NR18a18a’、-C(O)R18a、-C(O)OR18aまたは-C(O)NR18a18a’で置換されていてもよく;
13a、R13a’、R14a、R14a’、R15a、R15a’、R16a、R16a’、R17aおよびR17a’はそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールおよび5~7員ヘテロアリールから成る群から選択され、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、または5~7員ヘテロアリールにおける水素原子は、それぞれ独立して適宜、ハロゲン、-OH、-SH、-NH、または-COHで置換されていてもよく;
18aおよびR18a’はそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、5~7員ヘテロアリール -C(O)R19a、-P(O)(OR19a、および-S(O)OR19aから成る群から選択され;
19aはそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールおよび5~7員ヘテロアリールから選択され;
aは1、2、または3である。]
で示されるテトラペプチドである、請求項1~16のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項31】
が式:
【化17】
または

である、請求項1~16のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項32】
式:
【化18】

で示されるコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項33】
コンジュゲートが、それに配位する、111In、99mTc、64Cu、67Cu、67Gaおよび68Gaから成る群から選択される放射性金属同位体を含む、請求項32に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項34】
式:
【化19】

で示されるコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項35】
式:
【化20】

で示されるコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項36】
請求項1に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩、および適宜、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項37】
対象においてFAP発現性癌を治療するための有用な医薬の製造における、請求項1、29、30、31、および35のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩の使用。
【請求項38】
FAP発現性癌が前立腺癌、子宮内膜癌、皮膚癌、膵臓癌、乳房癌、腎臓癌、卵巣癌および脳腫瘍から成る群から選択される、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
a.細胞を請求項1~22のいずれか1項に記載のコンジュゲートと接触させて、標識細胞を得ること、および
b.標識細胞を可視化すること
を特徴とする、細胞集団をインビトロでイメージングする方法。
【請求項40】
請求項1~16、23、2432および33のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩を含む薬剤であって、細胞集団をインビボでイメージングするために用いられ、細胞が標識化されてイメージングにより可視化される薬剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は35 U.S.C.§119(e)の下で、米国仮特許出願第62/434,380号(2016年12月14日出願)、および米国仮特許出願第62/575,050号(2017年10月20日出願)の優先権を主張し、いずれもその全体が引用によって本明細書に援用される。
【0002】
本教示は一般に、患者における腫瘍微小環境をイメージングするためのコンジュゲートおよび方法、並びに、いくつかの実施態様において、患者の腫瘍微小環境における癌関連線維芽細胞(CAF)をイメージングするためのコンジュゲートおよび方法に関する。本教示はまた、患者における癌細胞および/またはCAFを治療するためのコンジュゲート並びに方法に関する。
【背景技術】
【0003】
腫瘍微小環境は、腫瘍の成長および発達において重要な役割を示す。癌細胞に加えて、腫瘍としては、T細胞、腫瘍関連マクロファージ、骨髄由来免疫抑制細胞、癌関連線維芽細胞(CAF)、血管およびリンパ管脈管構造ネットワーク、および細胞外マトリックス(ECM)などの浸潤性の免疫および炎症細胞が挙げられる。これらの細胞の助けがなければ、腫瘍は免疫回避、転移性、および耐性を獲得することができないであろう。
【0004】
CAFは、腫瘍微小環境において存在する細胞の主な種類の1つであり、ECMの修飾および分解と共に、多くのケモカイン、サイトカイン、成長因子の分泌において役割を果たす。CAFは、正常な細胞において限定的に発現する、線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAP)を過剰発現している。
【0005】
FAPはプロリン-アミノ酸ペプチド結合を切断することが可能であるプロテアーゼのより大きなファミリーに属する、II型膜内在性タンパク質である。同じファミリーの他のメンバーは、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)およびプロリルオリゴペプチダーゼ(POP)である。FAPはエンドおよびエキソペプチダーゼ活性の両方を発揮する。FAPは主に細胞表面に局在することが分かっているが、ヒト血漿におけるタンパク質の可溶な形態もまた報告されている。FAPはホモ二量体として存在する。FAPは上皮性固形腫瘍、創傷治癒およびリモデリングに関与する組織の90%を超えるCAFにおいて発現することが分かっている。
【0006】
腫瘤の効果的な外科的除去は、蛍光ガイド手術によって改善されている。しかし、癌細胞において過剰発現している受容体/タンパク質を標的とするNIR色素コンジュゲートは、抗原陽性癌細胞のみをイメージングすることができるが、間質細胞はできない。現在、腫瘍微小環境を効率的ににイメージングすることができる方法は存在しない。そのため、これらの細胞をイメージングし、外科的に除去する効率的な方法は存在しない。
【発明の概要】
【0007】
本発明の範囲は、付属の特許請求の範囲によってのみ定義され、この発明の概要の範囲内の記載によってどのようにも影響されることはない。
【0008】
本発明のいくつかの実施態様を、以下の列挙する項において記載する:
【0009】
1.構造:B-L-X
[式中、
Bは線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)阻害剤を含み;
Lは二価のリンカーを含み;
Xは近赤外(NIR)吸収色素、放射性イメージング剤、または癌細胞および/もしくは癌関連線維芽細胞(CAF)に対して有効な治療剤を含む。]
を有するコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0010】
2.Bが構造:
【化1】

[式中、
およびRは同一または異なっており、かつ、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、およびC-Cアルキルから成る群から選択され;
はC-Cアルキル、ニトリル、またはイソニトリルであり;
、R、およびRは同一または異なっており、かつそれぞれは独立して、水素、ハロゲン、およびC-Cアルキルから成る群から選択され;
nは1~8の整数である。]
を有する、項1に記載のコンジュゲート。
【0011】
3.RおよびRがそれぞれハロゲンである、項2に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0012】
4.RおよびRがそれぞれフッ素である、項2または3に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0013】
5.Rがニトリルであり、項2~4のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0014】
6.R、R、およびRがそれぞれ水素である、項2~5のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0015】
7.Bが構造:
【化2】

を有する、項2~6のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0016】
8.Bが構造:
【化3】

を有する、項2~7のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0017】
9.リンカーが、Lys、Asn、Thr、Ser、Ile、Met、Pro、His、Gln、Arg、Gly、Asp、Glu、Ala、Val、Phe、Leu、Tyr、Cys、およびTrpから成る群から選択される、DまたはL配置の少なくとも1つのアミノ酸またはその誘導体を含む、前記項のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0018】
10.リンカーが、GluおよびCysから成る群から独立して選択される、少なくとも2つのアミノ酸またはその誘導体を含む、前記項のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0019】
11.アミノ酸誘導体が、側鎖のカルボン酸に共有結合し、アミド結合を形成したアミノ糖部位を有するグルタミン酸である、項9または10に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0020】
12.アミノ糖部位が1-デオキシ-1-アミノ-D-グルシトールである、項11に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0021】
13.リンカーが式:Glu-Glu-Glu
[式中、グルタミン酸は適宜、側鎖のカルボン酸に共有結合し、アミド結合を形成したアミノ糖部位で置換されていてもよい。]
で示されるアミノ酸部位を含む、項9または10に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0022】
14.アミノ糖部位が1-デオキシ-1-アミノ-D-グルシトールである、項14に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0023】
15.Glu-Glu-Gluがカルボン酸側鎖を介して互いに共有結合する、項13または14に記載のコンジュゲート。
【0024】
16.リンカーが式:
【化4】

[式中、mは0~9の整数であり、pは3~10の整数であり、qは3~100の整数である。]
を含む、前記項のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0025】
17.リンカーが
【化5】

[式中、
およびRはそれぞれ独立して、HまたはC-Cアルキルであり;
tは1~8の整数である。]
から成る群から選択される部分を含む、前記項のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0026】
18.リンカーが式:
【化6】

である、項17の記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0027】
19.RおよびRがHであり;tが2である、項17もまたは18に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0028】
20.リンカーがヒドラジンである、前記項のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0029】
21.Lが構造:
【化7】

を含む、前記項のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0030】
22.リンカーが
【化8】

[式中、RはHまたはC-Cアルキルである。]
から成る群から選択される部分を含む、前記項のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0031】
23.式:
【化9】

を含む、項1に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0032】
24.Xが蛍光色素を含む、前記項のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0033】
25.XがNIR色素を含む、前記項のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0034】
26.蛍光色素がフルオレセインマレイミドまたはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)である、項24に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0035】
27.NIR色素がS0456である、項25に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0036】
28.Xが構造:
【化10】

を有する、項1~24、もしくは26のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0037】
29.Xが構造:
【化11】

を有する、項1~23、もしくは25のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0038】
30.構造:
【化12】

を有する、項1に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0039】
31.構造:
【化13】

を有する、項1に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0040】
32.Xが式:
【化14】

で示されるキレート剤である、項1~23のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0041】
33.Xがキレート剤に配位する放射性金属同位体を含む、項32に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0042】
34.構造:
【化15】

[式中、
Lは二価リンカーを含み;
Xは近赤外(NIR)吸収色素を含む。]
を有するコンジュゲート。
【0043】
35.構造:
【化16】

を有する、項34に記載のコンジュゲート。
【0044】
36.患者から癌関連線維芽細胞(CAF)を外科的に除去する方法であって、
患者の腫瘍微小環境にコンジュゲートを送達すること、ここで、腫瘍微小環境は少なくとも1つのCAFを含み、コンジュゲートは構造:
【化17】

[式中、Lは二価リンカーを含み、Xは近赤外(NIR)吸収色素を含む。]
を有し、
そこで光刺激の適用によって、NIR色素の蛍光を生じさせること;および
蛍光の結果に基づいて、患者のCAF含有組織を切除すること
を特徴とする方法。
【0045】
37.コンジュゲートによってイメージングされるCAF含有組織が間質細胞を含む、項22に記載の方法。
【0046】
38.Aがビンカアルカロイド、クリプトフィシン、ボルテゾミブ、チオボルテゾミブ、ツブリシン、アミノプテリン、ラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エベロリムス、α-アマニチン、ベルカリン、ジデムニンB、ゲルダナマイシン、プラバラノール(purvalanol)A、イスピネシブ、ブデソニド、ダサチニブ、エポシロン、メイタンシン、およびチロシンキナーゼ阻害剤から成る群から選択される薬物である、項1~23のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0047】
39.薬物がツブリシンである、項1~23のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0048】
40.薬物が式:
【化18】

[式中、
1a、R3a、R3a’およびR3a’’はそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、およびC-Cシクロアルキルから成る群から選択され、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-CアルキニルおよびC-Cシクロアルキルにおける水素原子は、それぞれ独立して適宜、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、5~7員ヘテロアリール、-OR13a、-OC(O)R13a、-OC(O)NR13a13a’、-OS(O)R13a、-OS(O)13a、-SR13a、-SC(O)R13a、-S(O)R13a、-S(O)13a、-S(O)OR13a、-S(O)NR13a13a’、-S(O)NR13a13a’、-OS(O)NR13a13a’、-OS(O)NR13a13a’、-NR13a13a’、-NR13aC(O)R14a、-NR13aC(O)OR14a、-NR13aC(O)NR14a14a’、-NR13aS(O)R14a、-NR13aS(O)14a、-NR13aS(O)NR13a14a’、-NR13aS(O)NR14a14a’、-P(O)(OR13a、-C(O)R13a、-C(O)OR13aまたは-C(O)NR13a13a’で置換されていてもよく;
2a、R4aおよびR12aはそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニルから成る群から選択され;
5aおよびR6aはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、-OR15a、-SR15aおよび-NR15a15a’から成る群から選択され、ここで、C-Cアルキル、C-CアルケニルおよびC-Cアルキニルにおける水素原子は、それぞれ独立して適宜、ハロゲン、-OR16a、-SR16a、-NR16a16a’、-C(O)R16a、-C(O)OR16aまたは-C(O)NR16a16a’で置換されていてもよく;あるいは、R5aおよびR6aは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、-C(O)-を形成し;
7a、R8a、R9a、R10aおよびR11aはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、-CN、-NO、-NCO、-OR17a、-SR17a、-S(O)OR17a、-NR17a17a’、-P(O)(OR17a、-C(O)R17a、-C(O)OR17aおよび-C(O)NR17a17a’から成る群から選択され、ここで、C-Cアルキル、C-CアルケニルおよびC-Cアルキニルにおける水素原子は、それぞれ独立して適宜、ハロゲン、-OR18a、-SR18a、-NR18a18a’、-C(O)R18a、-C(O)OR18aまたは-C(O)NR18a18a’で置換されていてもよく;
13a、R13a’、R14a、R14a’、R15a、R15a’、R16a、R16a’、R17aおよびR17a’はそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールおよび5~7員ヘテロアリールから成る群から選択され、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、または5~7員ヘテロアリールにおける水素原子は、それぞれ独立して適宜、ハロゲン、-OH、-SH、-NHまたは-COHで置換されていてもよく;
18aおよびR18a’はそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、5~7員ヘテロアリール -C(O)R19a、-P(O)(OR19a、および-S(O)OR19aから成る群から選択され;
19aはそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールおよび5~7員ヘテロアリールから選択され;
aは1、2、または3である。]
で示されるテトラペプチドである、項1~23のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0049】
41.Dが式:
【化19】

[式中、
1a、R3a、R3a’およびR3a’’はそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-CアルキニルおよびC-Cシクロアルキルから成る群から選択され、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-CアルキニルおよびC-Cシクロアルキルにおける水素原子は、それぞれ独立して適宜、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、5~7員ヘテロアリール、-OR13a、-OC(O)R13a、-OC(O)NR13a13a’、-OS(O)R13a、-OS(O)13a、-SR13a、-SC(O)R13a、-S(O)R13a、-S(O)13a、-S(O)OR13a、-S(O)NR13a13a’、-S(O)NR13a13a’、-OS(O)NR13a13a’、-OS(O)NR13a13a’、-NR13a13a’、-NR13aC(O)R14a、-NR13aC(O)OR14a、-NR13aC(O)NR14a14a’、-NR13aS(O)R14a、-NR13aS(O)14a、-NR13aS(O)NR13a14a’、-NR13aS(O)NR14a14a’、-P(O)(OR13a、-C(O)R13a、-C(O)OR13aまたは-C(O)NR13a13a’で置換されていてもよく;
2a、R4aおよびR12aはそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニルから成る群から選択され;
5aはH、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、-OR15a、-SR15aおよび-NR15a15a’から成る群から選択され、ここで、C-Cアルキル、C-CアルケニルおよびC-Cアルキニルにおける水素原子は、それぞれ独立して適宜、ハロゲン、-OR16a、-SR16a、-NR16a16a’、-C(O)R16a、-C(O)OR16aまたは-C(O)NR16a16a’で置換されていてもよく;
7a、R8a、R9a、R10aおよびR11aはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、-CN、-NO、-NCO、-OR17a、-SR17a、-S(O)OR17a、-NR17a17a’、-P(O)(OR17a、-C(O)R17a、-C(O)OR17aおよび-C(O)NR17a17a’から成る群から選択され、ここで、C-Cアルキル、C-CアルケニルおよびC-Cアルキニルにおける水素原子は、それぞれ独立して適宜、ハロゲン、-OR18a、-SR18a、-NR18a18a’、-C(O)R18a、-C(O)OR18aまたは-C(O)NR18a18a’で置換されていてもよく;
13a、R13a’、R14a、R14a’、R15a、R15a’、R16a、R16a’、R17aおよびR17a’はそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールおよび5~7員ヘテロアリールから成る群から選択され、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、または5~7員ヘテロアリールにおける水素原子は、それぞれ独立して適宜、ハロゲン、-OH、-SH、-NHまたは-COHで置換されていてもよく;
18aおよびR18a’はそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、5~7員ヘテロアリール -C(O)R19a、-P(O)(OR19a、および-S(O)OR19aから成る群から選択され;
19aはそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールおよび5~7員ヘテロアリールから選択され;
aは1、2、または3である。]
で示されるテトラペプチドである、項1~23のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0050】
42.Dが式:
【化20】

[式中、
9aはH、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、-CN、-NO、-NCO、-OR17a、-SR17a、-S(O)OR17a、-NR17a17a’、-P(O)(OR17a、-C(O)R17a、-C(O)OR17aおよび-C(O)NR17a17a’から成る群から選択され、ここで、C-Cアルキル、C-CアルケニルおよびC-Cアルキニルにおける水素原子は、それぞれ独立して適宜、ハロゲン、-OR18a、-SR18a、-NR18a18a’、-C(O)R18a、-C(O)OR18aまたは-C(O)NR18a18a’によって置換されていてもよく;
13a、R17aおよびR17a’はそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールおよび5~7員ヘテロアリールから成る群から選択され、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、または5~7員ヘテロアリールにおける水素原子は、それぞれ独立して適宜、ハロゲン、-OH、-SH、-NHまたは-COHで置換されていてもよく;
18aおよびR18a’はそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、5~7員ヘテロアリール -C(O)R19a、-P(O)(OR19a、および-S(O)OR19aから成る群から選択され;
19aはそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールおよび5~7員ヘテロアリールから選択される。]
で示されるテトラペプチドである、項1~23のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0051】
43.Aが天然に存在するツブリシンである、項1~23のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0052】
44.AがツブリシンA、ツブリシンB、ツブリシンC、ツブリシンD、ツブリシンE、ツブリシンF、ツブリシンG、ツブリシンHおよびツブリシンIから成る群から選択される、項1~23のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0053】
45.薬物がツブリシンBである、項1~23のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0054】
46.Aが式:
【化21】

である、項1~23のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0055】
47.Aが式:
【化22】

である、前記項のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0056】
48.式:
【化23】

で示されるコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0057】
49.コンジュゲートが、それに配位する、111In、99mTc、64Cu、67Cu、67Gaおよび68Gaから成る群から選択される放射性金属同位体を含む、項48に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0058】
50.放射性金属同位体が99mTcである、項49に記載のコンジュゲート。
【0059】
51.式:
【化24】
で示されるコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0060】
52.式:
【化25】

で示されるコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0061】
53.前記項のいずれかに記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩、および適宜、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含む、医薬組成物。
【0062】
54.
a.有効量の項1~23、38~47、もしくは51のいずれか1項に記載のコンジュゲートまたは組成物;またはその薬学的に許容可能な塩を、対象に投与すること
を特徴とする、対象における癌を治療する方法。
【0063】
55.対象がFAP発現性癌を有する、項54に記載の方法。
【0064】
56.FAP発現性癌が原発性または転移性である、項54または55に記載の方法。
【0065】
57.癌が前立腺癌、子宮内膜癌、皮膚癌、膵臓癌、乳房癌、腎臓癌、卵巣癌および脳腫瘍から成る群から選択される、項44~56のいずれか1項に記載の方法。
【0066】
58.対象におけるFAP発現性癌を治療する方法において用いるための、項1~23、38~47、もしくは51のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩。
【0067】
59.方法がFAP発現性癌の治療に有効な分量のコンジュゲートを、対象に投与することを特徴とする、項58に記載のコンジュゲート。
【0068】
60.FAP発現性癌が前立腺癌、子宮内膜癌、皮膚癌、膵臓癌、乳房癌、腎臓癌、卵巣癌および脳腫瘍から成る群から選択される、項58または59に記載のコンジュゲート。
【0069】
61.対象におけるFAP発現性癌の治療に有用な医薬の製造における、項1~23、38~47、もしくは51のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩の使用。
【0070】
62.FAP発現性癌が、前立腺癌、子宮内膜癌、皮膚癌、膵臓癌、乳房癌、腎臓癌、卵巣癌および脳腫瘍から成る群から選択される、項61に記載の使用。
【0071】
63.
a.細胞を、項1~31のいずれか1項に記載のコンジュゲートと接触させて、標識細胞を得ること、および
b.標識細胞を可視化すること
を特徴とする、細胞集団をインビトロでイメージングする方法。
【0072】
64.細胞集団のインビトロでのイメージング方法に用いるための、項1~31のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【0073】
65.方法が
a.細胞を項1~31のいずれか1項に記載のコンジュゲートと接触させて、標識細胞を得ること、および
b.標識細胞を可視化すること
を特徴とする、項63に記載のコンジュゲート。
【0074】
66.
a.有効量の項1~23、32、33、48もしくは49のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩を患者に投与し、標識細胞を得ること;および
b.標識細胞をイメージングによって可視化すること
を特徴とする、細胞集団をインビボでイメージングする方法。
【0075】
67.細胞集団をインビトロでイメージングする方法において用いるための、項1~23、32、33、48または49のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【0076】
68.方法が
a.有効量の項1~23、32、33、48もしくは49のいずれか1項に記載のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩を患者に投与し、標識細胞を得ること;および
b.イメージングによって標識細胞を可視化すること
を特徴とする、項67に記載のコンジュゲート。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1図1は化合物3の化学構造およびLC/MSトレースを示す。
図2図2は化合物4の化学構造およびLC/MSトレースを示す。
図3図3は化合物5の化学構造およびLC/MSトレースを示す。
図4図4は化合物7の化学構造およびLC/MSトレースを示す。
図5図5は化合物8(JFL)の化学構造およびLC/MSトレースを示す。
図6図6は化合物10の化学構造およびLC/MSトレースを示す。
図7図7はJFL-L1の化学構造およびLC/MSトレースを示す。
図8図8はJFL-L1-FMの化学構造およびLC/MSトレースを示す。
図9図9はS0456マレイミドの化学構造およびLC/MSトレースを示す。
図10図10はJFL-L1-S0456の化学構造およびLC/MSトレースを示す。
【0078】
図11図11はJFL-L1-FMのインビトロ共焦点イメージングを示す。
図12図12は蛍光対濃度によって決定される、JFL-L1-S0456FAP形質転換HEK293細胞のインビトロ結合親和性を示す。
図13図13はFaDuマウス異種移植片におけるJFL-L1-S0456のインビボイメージングを示す。
図14図14はKBマウス異種移植片におけるJFL-L1-S0456のインビボイメージングを示す。
図15図15はHT29マウス異種移植片におけるJFL-L1-S0456のインビボイメージングを示す。
図16図16はMDA-MB231マウス異種移植片におけるJFL-L1-S0456のインビボイメージングを示す。
図17図17はJFL-L1-TubBHのLC/MSトレースを示す。
図18図18AはJFL-L1-TubBHによる処理に対する応答における、経時的な腫瘍体積を示し、図18Bは実験において用いたマウスの体重を示す。(▲)対照;(◆)FAP-競合;(-)連続-FAP-TubBH(40nmol);(●)1日 FAP-TubBH(40nmol)。
図19図19Aは他の治療との組み合わせでJFL-L1-TubBHおよびJFL-L1-TubBHに対する応答における、経時的な腫瘍体積を示し、図19Bは実験において用いたマウスの体重を示す。(△)対照;(▲)FAP-競合;(■)FAP-TubBH;(▼)葉酸-TLR7;(●)葉酸-PI3K;(□)FAP-TubBH&葉酸-TLR7;(○)FAP-TubBH&葉酸-PI3K。
図20図20AはJFL-L1-FMに対する応答における、経時的な腫瘍体積を示し、図20Bは実験において用いたマウスの体重を示す。(○)対照;(■)FAP-FM;(●)FAP-競合。
【0079】
図21図21A-BはJFL-L2-S0456のLC/MSトレースを示す。
図22図22A-CはJFL-L2-S0456を用いたインビボイメージングを示す。
図23図23は異なる濃度のJFL-L1-S0456を用いたインビボイメージングを示す。
図24図24A-Bはカクテルイメージング:FAPαおよびLHRH-R標的NIRコンジュゲートを示す。
図25図25A-BはJFL-L3のLC/MSトレースを示す。
図26図26はJFL-L3のインビトロ結合親和性を示す。
図27図27A-CはJFL-L3のインビボイメージングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0080】
詳細な説明
本発明のいくつかの実施態様は、以下に列挙する項によって記載され、これらの実施態様と、この詳細な説明の節において記載される実施態様との任意の組み合わせが考慮される。以下に記載される様々な代表的な実施態様の要素および特徴は、同様に本教示の範囲内に属する新たな実施態様を生み出すために、異なる方法で組み合わせてもよいことが理解されるべきである。
【0081】
1.構造:B-L-X
[式中、Bは線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)阻害剤を含み;Lは二価リンカーを含み;Xは近赤外(NIR)吸収色素、放射性イメージング剤、または癌細胞および/もしくは癌関連線維芽細胞(CAF)に対して有効な治療剤を含む。]
を有するコンジュゲート。
【0082】
2.Bが構造:
【化26】

[式中、
およびRは同一または異なっており、かつ、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、およびC-Cアルキルから成る群から選択され;
はC-Cアルキル、ニトリル、またはイソニトリルであり;
、R、およびRは同一または異なっており、かつ、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、およびC-Cアルキルから成る群から選択される。]
を有する、項1に記載のコンジュゲート。
【0083】
3.RおよびRがそれぞれハロゲンである、前記項のいずれかに記載のコンジュゲート。
【0084】
4.RおよびRがそれぞれフッ素である、前記項のいずれかに記載のコンジュゲート。
【0085】
5.Rがニトリルである、前記項のいずれかに記載のコンジュゲート。
【0086】
6.R、R、およびRがそれぞれ水素である、前記項のいずれかに記載のコンジュゲート。
【0087】
7.Bが構造:
【化26】

を有する、前記項のいずれかに記載のコンジュゲート。
【0088】
8.Bが構造:
【化27】

を有する、前記項のいずれかに記載のコンジュゲート。
【0089】
9.Lが構造:
【化28】

を含む、前記項のいずれかに記載のコンジュゲート。
【0090】
10.Lが構造:
【化29】

を含む、前記項のいずれかに記載のコンジュゲート。
【0091】
11.XがNIR色素を含む、前記項のいずれかに記載のコンジュゲート。
【0092】
12.NIR色素がフルオレセインイソチオシアネート(FITC)である、前記項のいずれかに記載のコンジュゲート。
【0093】
13.NIR色素がS0456である、前記項のいずれかに記載のコンジュゲート。
【0094】
14.Xが構造:
【化30】

を有する、前記項のいずれかに記載のコンジュゲート。
【0095】
15.Xが構造:
【化31】

を有する、前記項のいずれかに記載のコンジュゲート。
【0096】
16.構造:
【化32】

を有する、前記項のいずれかに記載のコンジュゲート。
【0097】
17.構造:
【化33】

を有する、前記項のいずれかに記載のコンジュゲート。
【0098】
18.Xが放射性イメージング剤を含む、項1~10のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【0099】
19.Xが癌細胞および/またはCAFに対して有効な治療剤を含む、項1~10のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【0100】
20.構造:
【化34】

[式中、Lは二価リンカーを含み;XがNIR色素は近赤外(NIR)吸収色素を含む。]
を有するコンジュゲート。
【0101】
21.構造:
【化35】

を有する、項20に記載のコンジュゲート。
【0102】
22.患者から癌関連線維芽細胞(CAF)を外科的に除去する方法であって、
患者の腫瘍微小環境にコンジュゲートを送達すること、ここで、腫瘍微小環境は少なくとも1つのCAFを含み、コンジュゲートは構造:
【化36】

[式中、Lは二価リンカーを含み、Xは近赤外(NIR)吸収色素を含む。]
を有し;
そこで光刺激の適用によって、NIR色素の蛍光を生じさせること;および
蛍光の結果に基づいて、患者のCAF含有組織を切除すること
を特徴とする方法。
【0103】
23.コンジュゲートによってイメージングされるCAF含有組織が間質細胞を含む、項22に記載の方法。
【0104】
前記および下記の実施態様のそれぞれにおいて、式はコンジュゲートの全ての薬学的に許容可能な塩を含み、表すだけでなく、コンジュゲートの式の任意のおよび全ての水和物および/または溶媒和物も含むことが理解されるべきである。ヒドロキシ、アミノなどの基などのいくつかの官能基は、コンジュゲートの様々な物理的形態において、水および/または様々な溶媒と複合体および/または配位結合体を形成することが理解される。そのため、前記式は、様々な水和物および/または溶媒和物を含み、表すことが理解されるべきである。コンジュゲートの式の非水和物および/または非溶媒和物が、コンジュゲートの式の水和物および/溶媒和物と同様に、そのような式によって記載されることもまた理解されるべきである。
【0105】
本記載にわたって、および付属の特許請求の範囲において、以下の定義が理解されるべきである:
【0106】
本明細書で用いられる語句「C-Cアルキル」は、1~4個の炭素原子を含む、直鎖、分岐鎖、または環状炭化水素鎖をいう。本教示に記載されるC-Cアルキル基の代表的な例としては、限定はされないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、およびシクロブチルが挙げられる。
【0107】
本明細書で用いられる用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、ヨウ素または臭素をいう。
【0108】
本明細書で用いられる「アミノ酸(別名、「AA」)」は、アミノ基および酸性基に共有結合するアルファ炭素原子を含む任意の分子を意味する。酸性基としては、カルボキシル基が挙げられる。「アミノ酸」としては、式:
【化37】

[式中、R’は側鎖であり、Φは少なくとも3つの炭素原子を含む。]
のうち1つを有する分子、またはその誘導体が挙げられる。「アミノ酸」は、D-アミノ酸およびL-アミノ酸の形態などの立体異性体を含む。例示的なアミノ酸基としては、限定はされないが、リジン(Lys)、アスパラギン(Asn)、スレオニン(Thr)、セリン(Ser)、イソロイシン(Ile)、メチオニン(Met)、プロリン(Pro)、ヒスチジン(His)、グルタミン(Gln)、アルギニン(Arg)、グリシン(Gly)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、フェニルアラニン(Phe)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、システイン(Cys)、トリプトファン(Trp)、ホスホセリン(PSER)、スルホシステイン、アルギノコハク酸(ASA)、ヒドロキシプロリン、ホスホノエタノールアミン(PEA)、サルコシン(SARC)、タウリン(TAU)、カルノシン(CARN)、シトルリン(CIT)、アンセリン(ANS)、1,3-メチルヒスチジン(ME-HIS)、アルファ-アミノアジピン酸(AAA)、ベータ-アラニン(BALA)、エタノールアミン(ETN)、ガンマ-アミノ酪酸(GABA)、ベータ-アミノイソ酪酸(BAIA)、アルファ-アミノ酪酸(BABA)、L-アロシスタチオニン(シスタチオニン-A;CYSTA-A)、L-シスタチオニン(シスタチオニン-B;CYSTA-B)、シスチン、アロイソロイシン(ALLO-ILE)、DL-ヒドロキシリジン(ヒドロキシリジン(I))、DL-アロヒドロキシリジン(ヒドロキシリジン(2))、オルニチン(ORN)、ホモシスチン(HCY)、およびその誘導体などの、20個の内在性ヒトアミノ酸およびその誘導体が挙げられる。本明細書に記載される実施態様と関連して、アミノ酸は、アルファ-アミノおよびカルボキシ官能基を介して(すなわち、ペプチド結合形成)、または側鎖の官能基(グルタミン酸の側鎖カルボキシ基など)と、いずれかのアルファ-アミノもしくはカルボキシ官能基のいずれかとを介して、本明細書に記載されるコンジュゲートの他の部分に共有結合することもできる。本明細書に記載されるコンジュゲートに関連して用いられる場合、アミノ酸はそれらが組み込まれているコンジュゲート中に双性イオンとして存在しうることが理解されるであろう。
【0109】
いくつかの実施態様において、アミノ酸の誘導体としては、天然のアミノ酸に存在しない側鎖の置換基を含むアミノ酸が挙げられる。誘導体のいくつかの例は、前記で示される。いくつかの実施態様において、グルタミン酸の誘導体としては、グルタミン酸側鎖上のカルボン酸を介してアミド結合を形成する、アミン置換基の共有結合体が挙げられる。いくつかの実施態様において、アミン置換基は以下:
【化38】

に示す1-デオキシ-1-アミノ-D-グルシトールなどのアミノ糖である。
【0110】
本明細書で用いられる語句「治療上の有効量」は、限定はされないが、治療される疾患または障害の症状の軽減などの、研究者、獣医師、医師、他の臨床医によって求められる、対象(すなわち、組織系、動物、またはヒト)における生物学的または医学的応答を引き出す、薬物または医薬品の分量をいう。ある局面において、治療上の有効量は、任意の治療に適用可能な合理的な利益/リスク比で、疾患または疾患の症状を治療または軽減しうる、活性物質の分量である。別の局面において、治療上の有効量は、通常の代謝過程を介して変換された時に、対象において求められる生物学的または医学的応答を生み出すことができる活性な薬物の分量を生じる、不活性なプロドラッグの分量である。
【0111】
単剤療法または併用療法を問わず、用量は、本明細書に記載される1つ以上のコンジュゲートの投与の間に生じうる、任意の毒性、または他の望ましくない副作用を基準に、有利に選択されることもまた理解される。さらに、本明細書に記載の併用療法は、そのような毒性、または他の望ましくない副作用を示すコンジュゲートを、より低い用量で投与することを可能にしうることが理解され、ここで、これらのより低い用量は、毒性の閾値を下回るか、または併用療法がなければ投与されていたであろう濃度よりも低い治療濃度域である。
【0112】
本明細書で用いられる用語「投与すること」は、本明細書に記載されるコンジュゲートおよび組成物を、宿主動物に導入するための全ての手段、限定はされないが、経口(po)、静脈内(iv)、筋肉内(im)、皮下(sc)、経皮、吸入、バッカル、眼内、舌下、膣内、および直腸投与などを含む。本明細書において記載されるコンジュゲートおよび組成物は、従来の非毒性の薬学的に許容可能な担体、アジュバント、および/またはビヒクルを含む、単位剤形および/または製剤において投与されうる。
【0113】
本明細書において用いられる語句「医薬組成物」または「組成物」は、本教示に記載される1つ以上のコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、もしくは水和物と、薬学的に許容可能な賦形剤などの他の化学成分との混合物をいう。医薬組成物の目的は、コンジュゲートの対象への投与を容易にすることである。本教示に記載されるコンジュゲートの送達に適切な医薬組成物およびその製造方法は、当業者に容易に理解されうる。そのような組成物およびその製造方法は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th Edition (Mack Publishing Company, 1995)において見つけられうる。
【0114】
特に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において記載されるものと同様のまたは等価な任意の方法、装置、および物質は、本教示に記載される実施または試験において用いてもよいが、好ましい方法、装置、および物質をこれから記載する。
【0115】
いくつかの実施態様において、本教示に記載されるコンジュゲートは、近赤外(NIR)吸収色素または放射性イメージング剤などのイメージング剤を含む。本教示に記載されるイメージング剤として用いられうる代表的な化合物としては、限定はされないが、色素、(例えば、ローダミン色素、シアニン色素、フルオレセイン色素など)、PETイメージング剤、放射性標識色素が挙げられる。ローダミン色素の代表的な例としては、限定はされないが、5-カルボキシテトラメチルローダミン(5-TAMRA)、ローダミンB、ローダミン6G、TRITC、テキサス・レッド、ローダミン123、スルホローダミン101が挙げられる。フルオレセイン色素の例としては、限定はされないが、フルオレセイン、フルオレセインマレイミド(FM)、5-アミノ-フルオレセイン、6-アミノ-フルオレセイン、フルオレセインイソシアネート(FITC)、NHS-フルオレセイン、オレゴン・グリーン、トウキョウ・グリーン、シンガポール・グリーン、フィラデルフィア・グリーンなどが挙げられる。本教示に記載される、用いられうる代表的な近赤外色素としては、限定はされないが、LS288、IR800、SP054、S0121、KODAK、IRD28、S2076、S0456、およびその誘導体が挙げられる。
【0116】
いくつかの実施態様において、放射性標識剤は、本教示に記載されるイメージング剤として用いられうる。いくつかの実施態様において、ローダミン色素またはフルオレセイン色素は、同位体標識されうる。コンジュゲートに組み込むのに適切な同位体の例としては、水素(例えば、HおよびH)、炭素(例えば、11C、13C、および14C)、塩素(例えば、36Cl)、フッ素(例えば、18F)、ヨウ素(例えば、123Iおよび125I)、窒素(例えば、13Nおよび15N)、酸素(例えば、15O、17O、および18O)、リン(例えば、32P)、および硫黄(例えば、35S)が挙げられる。
【0117】
いくつかの同位体標識コンジュゲート、例えば、放射性同位体を組み込んだものは、薬物および/または基質組織分布試験において有用でありうる。放射性同位体トリチウム(すなわち、H)、および炭素-14(すなわち、14C)は、導入の容易さおよび検出の迅速な手段の観点から、本目的に特に有用である。
【0118】
11C、18F、および13Nなどの、ポジトロン放出同位体による置換は、基質受容体占有率の研究のためのポジトロン断層撮影(PET)試験において有用でありうる。同位体標識コンジュゲートは一般に、当業者に既知の従来の技術によって、または従来用いられる非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を用いて、付属の実施例において記載されるものと同様の方法によって、調製されうる。
【0119】
いくつかの実施態様において、本開示は細胞または組織の集団を、インビトロまたはインビボのいずれかでイメージングするための方法を提供する。そのようなインビトロ方法は、当技術分野において既知の任意の方法によって実施されうることが理解される。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるインビトロイメージング方法は、(a)イメージングに適切な本教示に記載されるコンジュゲートを、細胞集団に接触させて、FAPタンパク質を発現する細胞に結合するコンジュゲートを生じること、および(b)光の照射によって、細胞に結合したコンジュゲートを可視化することを含みうる。光の照射による細胞に結合したコンジュゲートの可視化は、励起波長における照射と、発光波長における検出を含むことが理解される。そのため、いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるインビトロイメージング方法は、(a)イメージングに適切な本教示に記載されるコンジュゲートを、細胞集団に接触させて、FAPタンパク質を発現する細胞に結合するコンジュゲートを生じること、(b)FAPタンパク質を発現する細胞に結合するコンジュゲートに励起波長光を照射すること、および(c)発光波長において、癌細胞から放射する光を検出することを含みうる。
【0120】
いくつかの実施態様において、癌腫瘍などの組織は、本明細書に記載される方法によってイメージングされうる。例えば、いくつかの実施態様において、本教示に記載されるインビボイメージング方法は、(a)イメージングに適切な本教示に記載されるコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩を患者に投与し、FAPタンパク質を発現する細胞に結合するコンジュゲートを得ること;および(b)光の照射によってFAPタンパク質を発現している細胞に結合するコンジュゲートを可視化することを含みうる。光の照射によって、細胞に結合したコンジュゲートを可視化することは、励起波長における照射および発光波長における検出を含みうることが理解される。そのため、いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるインビボイメージング方法は、(a)イメージングに適切な本明細書に記載されるコンジュゲート、またはその薬学的に許容可能な塩を患者に投与し、FAPタンパク質を発現している細胞に結合したコンジュゲートを生じること;(b)FAPタンパク質を発現している細胞に結合したコンジュゲートに、励起波長光を照射すること;および(c)発光波長において、癌細胞から放射する光を検出することを含みうる。任意の既知のイメージング技術(診断、または別の方法)、または当技術分野において既知の機器を用いて、光の照射による細胞に結合したコンジュゲートの可視化が行われうることが理解される。
【0121】
いくつかの実施態様において、本教示に記載されるコンジュゲートとしては、いくつかの実施態様において、癌細胞および/または癌関連線維芽細胞(CAF)に対して治療上有効な治療剤が挙げられる。本教示に記載されるように用いられる治療剤は、薬学的に活性な化合物(例えば、治療剤)などの、細胞機能を調節する、または改変することができる任意の分子、またはイメージングまたは可視化される細胞もしくは組織(例えば、イメージング剤)に、測定可能なシグナルを提供することができる任意の分子でありうる。
【0122】
治療剤として用いられうる適切な分子としては、限定はされないが、ペプチド、オリゴペプチド、レトロ-インベルソ オリゴペプチド、タンパク質、少なくとも1つの非ペプチド結合がペプチド結合に置き換わったタンパク質類似体、アポタンパク質、グリコタンパク質、酵素、補酵素、酵素阻害剤、アミノ酸およびその誘導体、受容体および他の膜タンパク質;抗原およびその抗体;ハプテンおよびその抗体;ホルモン、脂質、リン脂質、リポソーム;毒素;抗生物質;鎮痛剤;気管支拡張剤;β遮断薬;抗菌物質;降圧剤;抗不整脈薬、強心配糖体、抗狭心症薬および血管拡張薬などの心血管治療薬;興奮剤、向精神薬、抗躁薬、および抑制薬などの中枢神経系作用薬;抗ウイルス薬;抗ヒスタミン薬;化学療法剤などの癌治療薬;精神安定薬;抗うつ剤;H-2 アンタゴニスト;抗痙攣薬;制嘔吐薬;プロスタグランジンおよびプロスタグランジン類似体;筋弛緩薬;抗炎症物質;興奮剤;うっ血除去薬;制吐薬;利尿薬;鎮痙薬;抗喘息薬;抗パーキンソン病薬;去痰薬;鎮咳薬;粘液溶解薬;並びに、抗物質および栄養添加剤が挙げられる。
【0123】
いくつかの実施態様において、治療剤はツブリシンでありうる。天然のツブリシンは一般に、N-メチル ピペコリン酸(Mep)、イソロイシン(Ile)、ツブバリン(Tuv)と呼ばれる非天然アミノ酸、およびツブチロシン(Tut、チロシンの類似体)と呼ばれる非天然アミノ酸、またはツブフェニルアラニン(Tup、フェニルアラニンの類似体)と呼ばれる非天然アミノ酸のいずれかから成る、直線状のテトラペプチドである。
【0124】
いくつかの実施態様において、治療剤は式:
【化39】

[式中、
1a、R3a、R3a’およびR3a’’はそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-CアルキニルおよびC-Cシクロアルキルから成る群から選択され、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-CアルキニルおよびC-Cシクロアルキルにおける水素原子は、それぞれ独立して適宜、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、5~7員ヘテロアリール、-OR13a、-OC(O)R13a、-OC(O)NR13a13a’、-OS(O)R13a、-OS(O)13a、-SR13a、-SC(O)R13a、-S(O)R13a、-S(O)13a、-S(O)OR13a、-S(O)NR13a13a’、-S(O)NR13a13a’、-OS(O)NR13a13a’、-OS(O)NR13a13a’、-NR13a13a’、-NR13aC(O)R14a、-NR13aC(O)OR14a、-NR13aC(O)NR14a14a’、-NR13aS(O)R14a、-NR13aS(O)14a、-NR13aS(O)NR13a14a’、-NR13aS(O)NR14a14a’、-P(O)(OR13a、-C(O)R13a、-C(O)OR13aまたは-C(O)NR13a13a’で置換されていてもよく;
2a、R4aおよびR12aはそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニルから成る群から選択され;
5aおよびR6aはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、-OR15a、-SR15aおよび-NR15a15a’から成る群から選択され、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、およびC-Cアルキニルにおける水素原子は、それぞれ独立して適宜、ハロゲン、-OR16a、-SR16a、-NR16a16a’、-C(O)R16a、-C(O)OR16aまたは-C(O)NR16a16a’で置換されていてもよく;あるいは、R5aおよびR6aは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、-C(O)-を形成し;
7a、R8a、R9a、R10aおよびR11aはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、-CN、-NO、-NCO、-OR17a、-SR17a、-S(O)OR17a、-NR17a17a’、-P(O)(OR17a、-C(O)R17a、-C(O)OR17aおよび-C(O)NR17a17a’から成る群から選択され、ここで、C-Cアルキル、C-CアルケニルおよびC-Cアルキニルにおける水素原子は、それぞれ独立して適宜、ハロゲン、-OR18a、-SR18a、-NR18a18a’、-C(O)R18a、-C(O)OR18aまたは-C(O)NR18a18a’で置換されていてもよく;
13a、R13a’、R14a、R14a’、R15a、R15a’、R16a、R16a’、R17aおよびR17a’はそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールおよび5~7員ヘテロアリールから成る群から選択され、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、または5~7員ヘテロアリールにおける水素原子は、それぞれ独立して適宜、ハロゲン、-OH、-SH、-NHまたは-COHで置換されていてもよく;
18aおよびR18a’はそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、5~7員ヘテロアリール -C(O)R19a、-P(O)(OR19a、および-S(O)OR19aから成る群から選択され、
19はそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールおよび5~7員ヘテロアリールから選択され;
aは1、2、または3であり;
*はコンジュゲートの残りへの共有結合を表す。]
で示されるテトラペプチドである。
【0125】
いくつかの実施態様において、治療剤は式:
【化40】

[式中、R1a、R2a、R3a、R3a’、R3a’’、R4a、R5a、R7a、R8a、R9a、R10a、R11aおよびR12aは、本明細書で記載される通りであり、*はコンジュゲートの残りへの共有結合を表す。]
で示されるものである。
【0126】
別の実施態様において、治療剤は以下の一般式:
【化41】

[式中、R9aおよびR13aは本明細書に記載される通りであり、*はコンジュゲートの残りへの共有結合を表す。]
で示される、天然に存在するツブリシン、またはその類似体、もしくは誘導体でありうる。
【0127】
前記ツブリシンのそれぞれのコンジュゲートは、本明細書に記載される通りである。
【0128】
いくつかの実施態様において、治療剤は以下の一般式:
【化42】

[式中、
【表1】

*はコンジュゲートの残りへの共有結合を表す。]
で示される、天然に存在するツブリシンでありうる。
【0129】
いくつかの実施態様において、本教示に記載される方法は、「対象」として、ヒト臨床医学および獣医学的応用の両方のために使用されうる。そのため、「対象」は本教示に記載されるコンジュゲートを投与され、ヒト(「患者」)、または獣医学的応用の場合、実験、農業、飼育、または野生動物でありうる。いくつかの実施態様において、対象はヒト患者、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスターなど)、ウサギ、サル、チンパンジーなどの実験動物、イヌ、ネコ、およびウサギなどの飼育動物、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどの農業動物、クマ、パンダ、ライオン、トラ、ヒョウ、ゾウ、シマウマ、キリン、ゴリラ、イルカ、およびクジラなどの監禁した野生動物でありうる。
【0130】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載される癌は、良性腫瘍および悪性腫瘍などの腫瘍原性である癌細胞集団であってもよく、あるいは、癌は非腫瘍原性であってもよい。癌は自然発生的に、または患者の生殖細胞系において存在する突然変異、または体細胞突然変異などの過程で生じうるか、あるいは、癌は化学的、ウイルス的、または放射線誘発性でありうる。本教示に適用可能な癌としては、限定はされないが、癌、肉腫、リンパ腫、メラノーマ、中皮腫、上咽頭癌、白血病、腺癌、および骨髄腫が挙げられる。
【0131】
いくつかの実施態様において、癌は肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部癌、頸部癌、皮膚黒色腫、眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、子宮内膜癌、平滑筋肉腫、直腸癌、胃癌、大腸癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、卵管癌、子宮内膜癌、頚部癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性白血病、急性白血病、リンパ球性リンパ腫、胸膜中皮腫、膀胱癌、バーキットリンパ腫、尿管癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂腎癌、中枢神経系腫瘍(CNS)、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、胆管細胞癌、ハースル細胞甲状腺癌、または食道胃接合部腺癌でありうる。
【0132】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施態様において、本教示に記載されるコンジュゲートの薬学的に許容可能な塩が提供される。本教示に記載されるコンジュゲートの薬学的に許容可能な塩は、酸付加体およびその塩基性塩を含む。
【0133】
適切な酸付加塩は、非毒性の塩を形成する酸から形成される。具体的な例としては、限定はされないが、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸、ベシル酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフタレート、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素/リン酸二水素塩、糖酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、およびトリフルオロ酢酸塩が挙げられる。
【0134】
本明細書に記載されるコンジュゲートの適切な塩基性塩は、非毒性の塩を形成する塩基から形成される。具体的な例としては、限定はされないが、アルギニン塩、ベンザチン塩、カルシウム塩、コリン塩、ジエチルアミン塩、ジオラミン塩、グリシン塩、リジン塩、マグネシウム塩、メグルミン塩、オラミン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、トロメタミン塩、および亜鉛塩が挙げられる。酸および塩基のヘミ塩、例えば、ヘミ硫酸塩およびヘミカルシウム塩もまた形成されうる。
【0135】
いくつかの実施態様において、本教示に記載されるコンジュゲートは、1つ以上の薬学的に許容可能な担体と合わせて製剤として投与されうる。担体は賦形剤でありうる。担体の選択は、特定の投与方法、溶解性および安定性における担体の効果、並びに剤形の性質などの要素に応じて変化しうる。本明細書に記載されるコンジュゲートの送達に適した医薬組成物、およびその合成方法は、当業者に容易に明らかであろう。そのような組成物およびその合成方法は、例えば、Remington: The Science & Practice of Pharmacy, 21th Edition (Lippincott Williams & Wilkins, 2005)において存在しうる。
【0136】
いくつかの実施態様において、薬学的に許容可能な担体としては、生理学的に適合可能な任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤など、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施態様において、担体は非経口投与に適切である。薬学的に許容可能な担体としては、滅菌水溶液、または分散液、および注射可能な滅菌水溶液または分散液の即時調製のための滅菌散剤が挙げられる。補助的な活性化合物もまた、本発明の組成物に組み込んでもよい。
【0137】
いくつかの実施態様において、液体製剤は懸濁液および溶液を含みうる。そのような製剤は、担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、または適切な油、並びに1つ以上の乳化剤および/または懸濁剤を含みうる。液体製剤はまた、固体の再構成によっても調製されうる。
【0138】
いくつかの実施態様において、水性懸濁液は適切な賦形剤との混合で活性物質を含みうる。そのような賦形剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントガム、およびアラビアゴム;天然に存在するリン脂質でありうる分散剤または湿潤剤、例えば、レシチン;アルキレンオキシドと脂肪族との縮合生成物、例えば、ステアリン酸ポリエチレン;エチレンオキシドと長鎖脂肪酸アルコールとの縮合生成物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール;エチレンオキシドと、脂肪酸に由来する部分エステルおよびヘキシトールとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレート;または、エチレンオキシドと、脂肪酸に由来する部分エステルとヘキシトール無水物との縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートである。水性懸濁液はまた、1つ以上の防腐剤、例えば、アスコルビン酸、エチル、n-プロピル、もしくはp-ヒドロキシ安息香酸;または、1つ以上の着色剤を含みうる。
【0139】
いくつかの実施態様において、水の添加による水性懸濁液の調製に適切な分散可能な散剤および顆粒剤は、分散剤または湿潤剤、懸濁剤、および1つ以上の防腐剤との混合で、活性成分を提供する。さらなる賦形剤、例えば着色剤もまた、存在しうる。
【0140】
適切な乳化剤は、天然に存在するゴム、例えば、アラビアゴムまたはトラカントゴム;天然に存在するリン脂質、例えば、大豆レシチン;および脂肪酸に由来する部分エステルおよびヘキシトール無水物などのエステル、例えば、ソルビタンモノオレート、および前記部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートでありうる。
【0141】
いくつかの実施態様において、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムは、組成物に含まれうる。注射可能な組成物の長期的な吸収は、吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含むことによってもたらされうる。
【0142】
経口製剤の具体的な剤形としては、限定はされないが、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、シロップなどが挙げられる。
【0143】
本明細書に記載される癌の種類、投与経路および/またはコンジュゲートを局所的または全身に投与するかどうかに応じて、約1μg/kgから約1g/kgの範囲内の用量など、許容可能な用量の広い範囲が、本明細書において考慮される。用量は単一または分割であってもよく、q.d.、b.i.d.、t.i.d.、またはさらに隔日、隔週(b.i.w.)、週に1回、月に1回、3ヶ月に1回などの様々なプロトコルに応じて投与されてもよい。これらのそれぞれの場合において、本明細書に記載される治療上の有効量は、投与の事例に、あるいは用量プロトコルによって決定される、毎日、毎週、毎月、または3ヶ月の総用量に対応することが理解される。
【0144】
いくつかの実施態様において、本教示に記載されるコンジュゲートは、血流、筋肉、または内臓に直接投与されうる。非経口投与などのための適切な経路としては、静脈内、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、硬膜外、脳室内、尿道内、胸骨内、脳内、腫瘍内、筋肉内および皮下送達が挙げられる。非経口投与のための適切な手段としては、針(マイクロニードルなど)注射器、無針注射器、および点滴技術が挙げられる。
【0145】
いくつかの実施態様において、非経口製剤は一般に、塩、炭水化物、および緩衝剤(好ましくは3~9のpH)などの担体または賦形剤を含みうる水溶液であるが、いくつかの応用において、それらは滅菌非水溶液として、または滅菌、発熱物質フリーの水などの適切なビヒクルと共に用いられる乾燥形態として、より適切に製剤化されうる。別の実施態様において、本明細書に記載される任意の液体製剤は、本明細書に記載されるコンジュゲートの非経口剤形に適合しうる。例えば、滅菌条件下における凍結乾燥による、滅菌条件下における非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準的な薬学技術を用いて、容易に達成されうる。いくつかの実施態様において、非経口製剤の調製において用いられる、本明細書に記載されるコンジュゲートの溶解度は、溶解促進剤の組み込みなど、適切な製剤技術を用いることによって増加しうる。
【0146】
いくつかの実施態様において、非経口投与のための製剤は、即時および/または制御放出のために製剤化されうる。いくつかの実施態様において、本教示に記載される活性剤(すなわち、本明細書に記載されるコンジュゲート)は、除放性製剤において、例えば、除放性ポリマーを含む組成物において投与されうる。活性剤は、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤など、即時放出からコンジュゲートを保護する担体と共に製剤化されうる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸およびポリ酢酸、ポリグリコール酸共重合体(PGLA)などの、生分解性、生体適合性ポリマーが用いられうる。そのような製剤の製造方法は一般に、当技術分野において既知である。別の実施態様において、本教示に記載のコンジュゲート、または当該コンジュゲートを含む組成物は、適切な場合、持続的に投与されうる。
【0147】
いくつかの実施態様において、キットが提供される。本明細書に記載される活性なコンジュゲートの組み合わせが投与される場合、2つ以上の医薬組成物が、当該組成物の連続投与または共投与に適切なキットの形態で組み合わされうる。そのようなキットは、少なくとも1つが本教示に記載されるコンジュゲートを含む、2つ以上の別個の医薬組成物、および容器、分割容器、または分割ホイル小包などの、当該組成物を別個に保持するための手段を含みうる。いくつかの実施態様において、患者の選択および/または治療について、本明細書に記載されるコンジュゲートの使用のための説明を提供するラベルを有する容器中の、本明細書に記載の1つ以上のコンジュゲートを含む組成物が提供される。
【0148】
本明細書で用いられる用語「キット」は、本教示に記載される方法の実行において用いられる物質の集合をいう。キットの成分は、交差反応性および安定性に応じて、同じまたは別個の容器中に包装された組み合わせにおいて、液体または固体の形態で提供されうる。キットにおいて提供される成分の分量および特性は、特定の用途について最適な結果を生じるように選択されうる。いくつかの実施態様において、(例えば、患者に)投与される成分は、別個の物理的形態(例えば、1つ以上のの組成物および1つ以上の液体を含むキット)において提供されるが、別の実施態様において、患者に導入される成分の全てが、1つの共通の物理的形態(例えば、1つの組成物または1つの液体)において共に提供されうることが理解される。
【0149】
成分それ自体は、容器の材料によって実質的に吸着または変更されない一方で、本教示に記載されるキットに含まれる成分は、異なる成分の活性が実質的に維持されるように、あらゆる種類の容器で供給されうる。そのような容器としては、限定はされないが、アンプル、瓶、試験管、バイアル、フラスコ、シリンジ、袋および封筒(例えば、箔張)などが挙げられる。容器は、限定はされないが、ガラス、有機ポリマー(例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、セラミック、金属(例えば、アルミニウム)、金属合金(例えば、鋼)、コルクなどの任意の適切な物質から形成されうる。さらに、容器は、セプタムによって提供されうるものなどの、1つ以上のアクセスポート(例えば、針を介するアクセスのため)を含みうる。セプタムの好ましい物質としては、限定はされないが、例えば、DuPont (Wilmington, Del.)からTEFLONの商品名で販売されている種類のポリテトラフルオロエチレンなどのゴムおよびポリマーが挙げられる。さらに、容器は、それを除去することによって成分を混合することができる区切りまたは膜によって分離されている2つ以上の区画を含みうる。
【0150】
本教示に記載されるキットはまた、限定はされないが、キットの成分を熱交換システムに追加するための説明書などの、当技術分野において既知の、並びに/または商業上およびユーザーの観点から望ましい、他の品目と共に供給されうる。
【0151】
本発明に記載されるキットと共に提供される説明資料は、(例えば、紙に)印刷されてもよく、および/または電子可読媒体(例えば、フロッピーディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ジップディスク、ビデオテープ、オーディオテープなど)において供給されてもよい。あるいは、説明書は、(例えば、キットの製造者または販売者によって特定される)インターネットウェブサイトをユーザーに示すことによって、および/または電子メール、テキストメッセージ、ソーシャルメディアなどを介して、およびそれらの組み合わせによって、提供されうる。
【0152】
いくつかの実施態様において、滅菌注射可能溶液は、必要に応じて、前記の成分の1つまたは組み合わせと共に、適切な溶媒中に必要な分量の活性剤を組み入れ、次いで濾過滅菌することによって調製されうる。一般に、分散液は、分散媒および前記の任意のさらなる成分を含む滅菌ビヒクル中に、コンジュゲートを組み込むことによって調製される。滅菌注射可能製剤の調製のための滅菌散剤の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これによって活性成分に加えて、あらかじめ滅菌濾過したその溶液からの任意のさらなる望ましい成分の粉末を得ることができ、あるいは成分は一緒に滅菌濾過されうる。
【0153】
成分は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または高濃度の薬物に適した他の規則的な構造として製剤化されうる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒でありうる。いくつかの実施態様において、適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合は必要な粒子サイズを維持することによって、および界面活性剤の使用によって維持されうる。
【0154】
本明細書に記載されるコンジュゲートの投与のための、任意の効果的なレジメンが用いられうる。例えば、本明細書に記載されるコンジュゲートは、単一用量として投与されてもよく、あるいは、用量は毎日の複数回用量レジメンとして分割され投与されてもよい。さらに、例えば、週に1~5日など、時間をずらしたレジメンを、毎日の治療の代わりとして用いてもよく、本明細書に記載の方法の目的のために、そのような間欠的または時間をずらした毎日のレジメンは、毎日の治療と同等であると考えられ、検討される。いくつかの実施態様において、癌を治療するために、患者は本教示に記載されるコンジュゲートを複数回注射することによって治療される。いくつかの実施態様において、患者は本教示に記載されるコンジュゲートを、例えば、12~72時間間隔、または48~72時間間隔で複数回(例えば、約2~最大で50回)注射される。本教示に記載されるコンジュゲートのさらなる注射は、最初の注射後数日から数月の間隔で患者に投与され得、さらなる注射は癌の再発を予防しうる。
【0155】
本教示に記載されるコンジュゲートを用いた任意の適切な治療過程が用いられうる。いくつかの実施態様において、個々の用量および投与レジメンは、約15mgの1ヶ月間に投与される総用量を提供するように選択される。いくつかの実施態様において、本教示に記載されるコンジュゲートは、各4週のサイクルの第1、第2、第3週において週に5日、単一の1日用量で投与され、第4週において投与されない。別の実施例において、本教示に記載されるコンジュゲートは、各4週のサイクルの第1、および第3週において、週に3日、単一の1日用量で投与され、第2、および第4週において投与されない。別の実施例において、本教示に記載されるコンジュゲートは、第1および第2週において週に2回(すなわち、3週のサイクルのうち、1、4、8、11日目)投与される。別の実施例において、本明細書に記載されるコンジュゲートは、第1および第2週において週に1回(すなわち、3週のサイクルのうち、1および8日目)投与される。
【0156】
本教示に記載されるコンジュゲートの1日の単位用量は、患者の病状、治療される癌、本明細書に記載されるコンジュゲートの投与経路、および組織分布、並びに併用療法における放射線治療またはさらなる薬剤などの他の治療の共使用の可能性に依存して大きく変化しうる。患者に投与される有効量は、体表面積、質量、および患者の病状の医師による評価に基づく。治療上の有効な用量(本明細書において「治療上の有効量」ともいわれる)は、例えば、約0.5mg/mから約20.0mg/mの範囲でありうる。
【0157】
本教示に記載されるコンジュゲートは、1つ以上のキラル中心を含んでもよく、あるいは、多数の立体異性体として存在することができる。そのため、本発明は純粋な立体異性体、並びにエナンチオマー、ジアステレオマー、およびエナンチオマーまたはジアステレオマー濃縮混合物などの、立体異性体の混合物を含むことが理解される。本教示に記載されるコンジュゲートは、幾何異性体として存在することができる。そのため、本発明は純粋な幾何異性体、または幾何異性体の混合物を含むことが理解される。
【0158】
本明細書に記載のコンジュゲートは、非溶媒和形態、並びに水和物形態などの、溶媒和形態で存在しうることが理解される。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と等価であり、本発明の範囲内に含まれる。本明細書に記載されるコンジュゲートは、多数の結晶または非晶質形態で存在しうる。一般に、全ての物理的形態は、本発明によって考慮される使用と等価であり、本発明の範囲内であることが意図される。
【0159】
いくつかの実施態様において、本教示に記載されるコンジュゲートの投与のための組成物および/剤形は、少なくとも約90%、または約95%、または約96%、または約97%、または約98%、または約99%、または約99.5%の純度で、コンジュゲートから調製される。他の実施態様において、本教示に記載されるコンジュゲートの投与のための組成物および/または剤形は、少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも96%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%、または少なくとも99.5%の純度で、コンジュゲートから調製される。
【0160】
本明細書に記載されるFAP-標的イメージング剤は、腫瘍微小環境のイメージングを可能にし、蛍光ガイド手術によって、外科医がCAF細胞を切除することを可能にする。本明細書に記載されるイメージング剤は、他の癌細胞標的イメージング剤との組み合わせで、癌細胞標的イメージング剤では達成できない腫瘍微小環境のCAF細胞を、外科医が除去することを可能にすることによって、蛍光ガイド手術の結果をさらに向上させることができる。これはまた、癌細胞標的イメージング剤によってのみのイメージングと比較して、CAFの残りに起因する手術後の腫瘍再発の機会を減少させることができる。
【0161】
さらに、本明細書に記載される薬剤および方法は、癌細胞それ自体がLHRH-R、葉酸受容体、PSMAなどの癌関連抗原を発現しないが、癌を維持しているCAFがFAPを発現している癌の蛍光ガイド手術について、チャンスを与えうる。腫瘍微小環境の細胞の切除はさらに、術後の癌の再発を減少させることに寄与する。いくつかの実施態様において、FAP標的近赤外色素コンジュゲートは、他の癌細胞標的イメージング剤と組み合わせて、癌細胞および腫瘍微小細胞の両方のイメージングを可能にしうる。
【0162】
本明細書に記載されるFAP標的近赤外色素コンジュゲートは、FAP阻害剤の標的特異性に加えて、高い腫瘍浸透性、低い光退色、および高いシグナル/ノイズ比を可能にしうる。さらに、色素コンジュゲートは、受容体陰性組織から迅速に明白でありうる。FAPはほとんどの固形腫瘍のCAFにおいて発現しているため、FAP標的NIR色素は、多くの種類の癌のイメージングに用いられうる。
【0163】
以下の実施例および代表的な手順は、本教示に記載の特徴を示し、単に例示としてのみ提供される。それらは、付属の特許請求の範囲、またはその均等物の範囲を限定することを意図しない。
【0164】
材料.ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(PyBop)、N、N-ジメチルメタンアミド(DMF)、N-エチル-N-イソプロピルプロパン-2-アミン(DIPEA)、イソプロピルアルコール(IPA)、ジクロロメタン(DCM)およびトリフルオロ酢酸(TFA)、1、2-エタンジチオール、トリイソプロピルシラン(TIPS)、および他のすべての化学的試薬は、Sigma-Aldrichから購入した。ロズウェルパーク記念研究所培地1640(RPMI1640)などの細胞培養試薬はGIBCOから購入し、一方で、ウシ胎児血清(FBS)、1% ペニシリン-ストレプトマイシン、2mM グルタミンはLife Technologiesから購入した。
【0165】
化合物実施例
【化43】

スキーム1.線維芽細胞活性化タンパク質α(FAP)リガンドJFLの合成。試薬および条件 a)HATU、無水DIPEA、無水DMF、室温;b)TFAA、無水DCM、無水ピリン、室温;c)TFA、室温;d)HATU、無水DIPEA、無水DMF、室温;e)TFA、室温.
【0166】
JFLの合成は、カップリング剤としてHATUを用いて、化合物1および2をカップリングさせることによって開始され、化合物3を生じた。化合物3におけるアミド基は、TFAAを用いて、ニトリル(化合物4)に変換した。化合物4を次いで、Boc脱保護に付し、次いで化合物6をカップリングさせて、化合物7を生じた。化合物8は、化合物7のBoc基の脱保護によって得た。化合物8は、あるいは、本明細書ではFAPリガンドJFLとも称される。
【0167】
化合物3.無水DMF中の1の溶液に、1当量の化合物2およびHATUを加えた。上記溶液に、無水DIPEA(5当量)を加え、アルゴン雰囲気下で6時間攪拌した。粗生成物をRP-HPLC[A=2mM 酢酸アンモニウム緩衝液(pH7.0)、B=アセトニトリル、35分間で0%Bから80%Bの溶媒勾配]を用いて精製し、必要な生成物を得た。LRMS-LC/MS (m/z): [M+H]+ C13H21F2N3O4についての計算値、 321.32; 観測値 323. 化合物3のLC/MSトレースを図1に示す。
【0168】
化合物4.HPLCで精製した化合物3を、無水DCMに溶解させた。この溶液に、無水ピリジン(1当量)、次いでTFAA(1当量)を加えた。反応混合物を室温で1時間攪拌した。反応の完了をLC/MSで追跡した。粗生成物を、RP-HPLC[A=2mM 酢酸アンモニウム緩衝液(pH7.0)、B=アセトニトリル、35分間で0%Bから80%Bの溶媒勾配]を用いて精製し、目的の生成物を得た。LRMS-LC/MS (m/z): [M+H]+ C13H19F2N3O3についての計算値、 303.31; 観測値 305. 化合物4のLC/MSトレースを図2に示す。
【0169】
化合物7.化合物4をTFA中に溶解させ、室温で30分間攪拌した。反応の完了をLC/MSで追跡した。TFAを、ロータリーエバポレーターを用いて留去させ、化合物を高真空で乾燥させ、さらに精製を行わずに用いた。化合物5のLC/MSトレースを図3に示す。化合物5、化合物6(1当量)およびHATU(1当量)のDMF中の溶液に、DIPEA(5当量)を加え、アルゴン雰囲気下で6時間攪拌した。反応の完了をLC/MSで追跡した。粗製の化合物7を、RP-HPLC[A=2Mm 酢酸アンモニウム緩衝液(pH7.0)、B=アセトニトリル、35分間で0%Bから80%Bの溶媒勾配]を用いて精製し、目的の生成物を得た。LRMS-LC/MS (m/z): [M+H]+ C20H25F2N5O4の計算値、437.45; 観測値 438. 化合物7のLC/MSトレースを図4に示す。
【0170】
化合物8.化合物7をTFA中に溶解させ、室温で30分間攪拌した。TFAを、ロータリーエバポレーターを用いて留去し、粗製の化合物8をさらに精製を行わず次の反応に用いた。 LRMS-LC/MS (m/z): [M+H]+ C15H17F2N5O2の計算値、337.33; 観測値 338. 化合物8のLC/MSトレースを図5に示す。
【0171】
【化44】

スキーム2.JFL-L1-S0456およびJFL-L1-FMの合成。試薬および条件: a)(i)HATU、無水DIPEA、無水DMF、室温(ii)TFA、室温;b)(i)PyBop、無水DMF、無水DIPEA、室温(ii)TFA/HO/TIPS/EDT(92.5:2.5:2.5:2.5)、1時間;c)DMSO、DIPEA、S0456マレイミド、室温;d)DMSO、DIPEA、フルオレセインマレイミド、室温.
【0172】
化合物8は、スペーサーに結合し、本明細書においてJFL-L1として表示される。リガンドは液相において、標準的な固相ペプチド合成によって、リンカーに部分的に結合させた。これを次いで、FMまたはS0456のマレイミド誘導体とカップリングし、それぞれJFL-L1-FMまたはJFL-L1-S0456を得た。中間体および最終的なコンジュゲートはHPLCによって精製し、LC/MSおよびUPLCを用いて特徴づけられた。
【0173】
化合物10.化合物8の無水DMF中の溶液に、化合物9(1当量)、HATU(1当量)およびDIPEA(10当量)を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で6時間攪拌した。反応の完了をLC/MSによって追跡した。粗製の化合物10をRP-HPLC[A=2Mm 酢酸アンモニウム緩衝液(pH7.0)、B=アセトニトリル、35分間で0%Bから80%Bの溶媒勾配]を用いて精製し、目的の生成物を得た。LRMS-LC/MS (m/z): [M+H]+ C19H21F2N5O5についての計算値、437.4; 観測値 438. 化合物10のLC/MSトレースを図6に示す。
【0174】
JFL-L1の合成。スキーム2に記載されるように、化合物を固相ペプチド合成によって合成した。PyBop、無水DMF、無水DIPEA、化合物10、およびH-Cys(Trt)2-クロロトリチル樹脂を合わせた。最終生成物をTFA:Water:TIPS:エタンジチオール(95%:2.5%:2.5%:2.5%)の標準的なカクテル溶液を用いて、樹脂から切断した。粗製JFL-L1を、RP-HPLC[A=2Mm 酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.0)、B=アセトニトリル、35分間で0%Bから80%Bの溶媒勾配]を用いて精製し、目的の生成物を得た。LRMS-LC/MS (m/z): [M+H]+ C22H26F6N6O6Sの計算値、 540.54; 観測値 541. JFL-L1のLC/MSトレースを図7に示す。
【0175】
JFL-L1-FMおよびJFL-L1-S0456の合成。JFL-L1を、DMSOおよび5当量のDIPEA中に溶解させた。この反応混合物に、1当量のフルオレセインマレイミドまたはS0456マレイミドのいずれかを加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で1時間攪拌し、反応の完了をLC/MSで追跡した。粗製の化合物JFL-L1-FMおよびJFL-L1-S0456を、RP-HPLC[A=2Mm 酢酸アンモニウム緩衝液(pH7.0)、B=アセトニトリル、35分間で0%Bから80%Bの溶媒勾配]を用いて精製し、目的の生成物を得た。JFL-L1-FMおよびJFL-L1-S0456のLCMS特性は以下の通りである。LRMS-LC/MS (m/z): [M+H]+ C46H39F2N7O13Sの計算値、 967.91; 観測値 968. LRMS-LC/MS (m/z): [M+H]+ C75H85F2N10Na3O22S5の計算値、 1745.82.35; 観測値 1747. JFL-L1-FMのLC/MSトレースを図8に示す。JFL-L1-S0456のLC/MSトレースを図9に示す。
【0176】
【化45】

スキーム3.S0456マレイミドの合成。試薬および条件:a)KOH、HO、室温~100℃;b)HATU、無水DIPEA、無水DMF、室温. S0456マレイミドのLC/MSトレースを図10に示す。
【0177】
FAPα標的ツブリシンBヒドラジドの合成
【化46】

スキーム4.JFL-L1-TubBHの合成、試薬および条件:a.(i)JFL-L1、HO/NaHCO(pH=7.0-7.2)、アルゴン、室温.(ii)活性化TubBH、無水THF、アルゴン、室温.
【0178】
FAP標的ツブリシンBヒドラジドコンジュゲートを以下に記載するように合成した。簡潔には、JFL-L1をアルゴンしたHPLC等級の水に溶解させ、同じ水のNaHCOの飽和溶液を用いてpH7.0に調整した。THE中のジスルフィド活性化ツブリシンBヒドラジド(1当量)を反応混合液に加え、アルゴン雰囲気下、室温で攪拌した。反応の進行を分析LRMS-LCMSで追跡した。粗生成物を、分取RP-HPLC[A=2Mm 酢酸アンモニウム緩衝液(pH7.0)、B=アセトニトリル、35分間で0%Bから80%Bの溶媒勾配]を用いて精製し、95%の目的の生成物を得た。LRMS-LC/MS (m/z): [M+H]+ C67H93F2N13O17S3の計算値、 1487; 観測値 [M/2 +1] 744、図17に示す。
【0179】
FAP標的NIRイメージングの合成:PEGおよびペプチドグリカンリンカー
【化47】

スキーム5.JFL-L2-S0456の合成。試薬および条件:a)DMSO、DIPEA、S0456マレイミド、室温.
【0180】
JFL-L2-S0456の合成:FAP標的リガンド(JFL)を、PEGおよびペプチドグリカン分子とコンジュゲートさせて、JFL-L2を合成した。簡潔には、JFL-L2は標準的な固相ペプチド合成によって合成し、図21Aに示すようにRP-HPLCによって精製した。LRMS-LC/MS (m/z): [M+H]+ C48H75F2N9Na3O20Sの計算値、 1168; 観測値 1169、図21Bに示す。1当量の精製したJFL-L2およびS0456-マレイミドの、無水DMSO中の反応混合物に、5当量のDIPEAを加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で攪拌させ、反応の完了をLC-MSを用いて追跡した。粗製JFL-L2-S0456を、RP-HPLC[A=2mM 酢酸アンモニウム緩衝液(pH7.0)、B=アセトニトリル、35分間で0%Bから50%Bの溶媒勾配]を用いて精製し、目的の生成物を得た。LRMS-LC/MS (m/z): [M+H]+ C101H134F2N13Na3O36S5の計算値、 2371.5; 観測値 790.
【0181】
JFL-L3の合成
【化48】

スキーム6.JFL-L3の合成、試薬および条件:(a)(i)20%ピペリジン/DMF、室温、(ii)Fmoc-Asp(OtBu)、PyBop、DMF、DIPEA、(b)(i)20%ピペリジン/DMF、室温、10分(ii)Fmoc-ジアミノプロピオン(DAP)酸、PyBop、DMF、DIPEA、(c)(i)20%ピペリジン/DMF、室温、(ii)Fmoc-8-アミノ-オクタン酸、PyBop、DMF、DIPEA、(d)(i)20%ピペリジン/DMF、室温、10分(ii)化合物10、PyBop、DMF、DIPEA、(iii)TFA/HO/TIPS/EDT(92.5:2.5:2.5:2.5)、1時間.粗生成物を、HPLCを用いて精製し、LC/MSを用いて特徴づけた。
【0182】
JFL-L3の合成:スキームにおいて記載される通り、JFL-L3を標準的な固相ペプチド合成によって合成した。コンジュゲートの全ての要素をH-Cys(Trt)2-クロロトリチル樹脂上に構築した。TFA:水:TIPS:エタンジチオール(95%:2.5%:2.5%:2.5%)の標準カクテル溶液を用いて、樹脂から標準的なコンジュゲートを切断した。粗生成物を、RP-HPLC[A=2Mm 酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.0)、B=アセトニトリル、35分間で0%Bから80%Bの溶媒勾配]を用いて精製し、目的の生成物を得た。JFL-L3について、 LRMS-LC/MS (m/z): [M+H]+ C37H52F2N10O11Sの計算値、 882.9; 観測値 882、図25Aに示す。
【0183】
非放射性JFL-L3の生成:99mTcによる放射性標識の前に、JFL-L3をこれまでに公表された方法に従って調製した。簡潔には、0.1mgのJFL-L3、80mgのα-D-グルコヘプトン酸ナトリウム、および10mgの塩化スズ(II)を、アルゴンパージした水中に溶解させた。溶液のpHを、水酸化ナトリウムまたは塩酸で6.8±0.2に調整した。最終的な体積を10mlの調整し、次いでそれぞれ1mlの上記溶液を含む10個のバイアルに移し、凍結乾燥させた。凍結乾燥させた粉末をアルゴン下でバイアルに密閉し、-20℃で保管した。
【0184】
JFL-L3の99mTc標識:コンジュゲートの放射性標識を、公表された方法に従って行った。簡潔には、生成したJFL-L3のバイアルに、1mlの99mTc過テクネチウム酸ナトリウムを加えて、100℃で~18分間加熱した。キレートした溶液を室温に冷却し、その後インビトロおよびインビボ試験に用いた。図25Bに示すように、コンジュゲートのキレート効率は放射HPLCによって確認した。
【0185】
JL-L3-S0456の合成
【化49】

スキーム7.JL-L3-S0456の合成、試薬および条件:(a)(i)20%ピペリジン/DMF、室温、(ii)3、4、5、6-ジ-イソプロピリデン-1-アミノ-デオキシ(Fmoc-Glu-OH)-D-グルシトール、PyBop、DMF、DIPEA、(b)(i)20%ピペリジン/DMF、室温、10分(ii)Fmoc-Glu(OtBu)-OH、PyBop、DMF、DIPEA、(c)(i)20%ピペリジン/DMF、室温、(ii)3、4、5、6-ジ-イソプロピリデン-1-アミノ-デオキシ(Fmoc-Glu-OH)-D-グルシトール、PyBop、DMF、DIPEA、(d)(i)20%ピペリジン/DMF、室温、10分(ii)Fmoc-8-アミノ-オクタン酸、PyBop、DMF、DIPEA、(e)(i)20%ピペリジン/DMF、室温、10分(ii)JL、PyBop、DMF、DIPEA、(iii)TFA/HO/TIPS/EDT(92.5:2.5:2.5:2.5)、1時間、(f)JL-L3、S0456マレイミド、無水DMSO、DIPEA、室温.
【0186】
JL-L3の合成:スキーム7に記載されるように、リンカーは標準的な固相ペプチド合成によって合成した。ペプチドグリカンサブユニットは他に記載されるように合成した。JLを次いで、固相上でリンカーにカップリングした。最終生成物を、TFA:水:TIPS:エタンジチオール(95%:2.5%:2.5%:2.5%)の標準的なカクテル溶液を用いて、H-Cys(Trt)2-クロロトリチル樹脂から切断した。粗製のJL-L3を、RP-HPLC[A=2Mm 酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.0)、B=アセトニトリル、35分間で0%Bから80%Bの溶媒勾配]を用いて生成し、目的の生成物を得た。LRMS-LC/MS (m/z): [M+H]+ C67H94F2N10O23Sの計算値、 1477; 観測値 1478.
【0187】
NIRコンジュゲートJL-L3-S0456の合成:マレイミドを含むS0456色素を、スキーム3に記載されるように合成した。1当量のS0456-マレイミドおよびJL-L3を無水DMSO中に溶解させ、次いで5当量のDIPEAを加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下で1時間攪拌した。反応の完了をLC-MSを用いて追跡した。粗製JL-L3-S0456を、RP-HPLC[A=2Mm 酢酸アンモニウム緩衝液(pH7.0)、B=アセトニトリル、35分間で0%Bから80%Bの溶媒勾配]を用いて精製し、目的の生成物を得た。JL-L3-S0456のLCMS特性は以下の通りである。LRMS-LC/MS (m/z): [M+H]+ C120H151F2N14Na3O39S5の計算値、 2680.85; 観測値 2682.
【0188】
方法例
細胞培養.癌細胞FaDu、HT29、MDA-MB231、およびKB細胞は、RPMI1640、10% FBS、1% ペニシリン-ストレプトマイシン、1% 2mM グルタミンを含む培地中で、37℃、5%COおよび95%加湿雰囲気下で培養した。HEK293細胞を形質転換して、HEK293-FAPを生成した。FAP陽性細胞を、2μl/mlのピューロマイシン、10%FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、1% 2mM グルタミンを補充したDMEM培地中で、37℃、5%COおよび95%加湿雰囲気下で培養した。
【0189】
共焦点顕微鏡.FaDu、HT29、MDA-MB231およびKB癌細胞(30,000)を、4ウェルの共焦点プレート上に播種した。細胞を100mM JFL-L1-FMと共にインキュベートし、1時間インキュベートした。非結合の蛍光を、細胞を培地で3回洗浄することによって除去した。細胞結合蛍光を、オリンパス共焦点顕微鏡を用いて観測した。
【0190】
インビトロ結合アッセイ.100,000個のHEK293-FAP細胞を、アミンコート24ウェルプレート上に播種した。細胞を24時間、単層で生育させ、過剰なJFL-L1の存在下、または非存在下のいずれかで、様々な濃度のJFL-L1-S0456と共にインキュベートした。1時間インキュベートした後、細胞を培地で3回洗浄し、非結合の蛍光を除去した。細胞を1%SDS中に溶解させ、細胞結合蛍光を蛍光光度計を用いて測定した。
【0191】
畜産.5~6週齢のメス胸腺欠損nu/nuマウスを、Harlan Laboratoriesから購入した。動物は通常のげっ歯類固形飼料および水を自由に摂取した。動物を通常の12時間の明暗周期で飼育した。全ての動物手順はパデュー実験動物委員会によって承認された。
【0192】
インビボ蛍光イメージングおよび生体内分布.皮下腫瘍異種移植の発生のため、0.2mlの滅菌PBS中のMDA-MB231、OVCAR-3、およびHEC-1Bの5x10細胞を、メスnu/nuマウスの右後側腹部に皮下注射した。腫瘍体積が200mmおよび300mmに達した後、腫瘍イメージングを開始した。腫瘍保持マウスのそれぞれを、100倍過剰の非標識コンジュゲートの存在下、または非存在下のいずれかで、10ナノモルの蛍光色素コンジュゲートを(尾静脈を介して)静脈内注射した。注射の2時間後、動物をCOを用いて犠死させ、Caliper IVIS Luminal IIを用いてイメージングを得た。全身のイメージングを行った後、対象の臓器を採取してイメージングし、それらの臓器における蛍光の蓄積を検査した。イメージング取得パラメーターは以下の通りであった:i)ランプレベル-高、ii)励起-745nm、iii)発光-ICG、iv)ビニング(M)4M、(v)f-ストップ-4、(vi)FOV-12.5、(vii)獲得時間、5秒。
【0193】
インビトロ結合親和性および共焦点イメージング.癌細胞FaDU、HT29、MDA-MB231およびKBを、FAPの発現のために調査した。この目的のために、癌細胞を共焦点ウェルプレートに播種し、100nMのFAP標的FMコンジュゲート(JFL-L1-FM)と共にインキュベートした。37℃において1時間インキュベートした後、細胞を洗浄し、過剰な非を除去した。細胞を共焦点顕微鏡で観測し、図11に示すように、色素の任意の取り込みを調査した。4種類全ての細胞型において、色素コンジュゲートの取り込みは観測されなかった。このことは、これらの癌細胞がFAPに存在していないことを示唆した。
【0194】
FAP標的NIR色素コンジュゲート(JFL-L1-S0456)の結合親和性を得るために、FAP形質転換HEK293細胞を、アミンコート24ウェルプレートに播種し、過剰なFAPリガンドJFLの存在下または非存在下のいずれかで、様々な濃度の色素コンジュゲートと共にインキュベートした。インキュベーションの1時間後、細胞を洗浄し、任意の過剰な非結合色素を除去した。細胞を1%SDS中に溶解させ、次いで蛍光光度計を用いて、細胞結合蛍光の定量を行った。蛍光の定量のために、サンプルを745nmで励起させ、790nmの発光を測定した。図12に示すように、Graph pad prismを用いて、細胞結合蛍光を様々な濃度に対してプロットし、見かけのK値を得た。JFL-L1-S0456の見かけの解離定数は約3.5nMであった。過剰なJFLの存在下でNIR色素コンジュゲートとインキュベートした時、細胞結合蛍光は競合し、JFL-L1-S0456の取り込みはFAP介在性であることが示唆された。
【0195】
インビボ蛍光イメージング.JFL-L1-S0456がインビボで蓄積する能力を調査するために、マウスにFaDu(n=5)、HT29(n=5)、MDA-MB231(n=5)またはKB(n=5)細胞を移植した。これらの腫瘍含有マウスに、NIR色素コンジュゲートを単体で、または過剰なFAP標的リガンドJFLと共注射して、静脈内注射した。注射の2時間後、マウスを犠死させ、図13Aおよび13B(FaDu)、図14Aおよび14B(KB)、図15Aおよび15B(HT29)、並びに図16Aおよび16B(MDA-MB231)に示すようイメージングした。FAP介在性の色素コンジュゲートの取り込みが、全腫瘍型において観測され、過剰なJFLは腫瘍において蛍光と競合することができた。他の臓器における色素コンジュゲートの取り込みを調査するために、剖検を行い、臓器を回収し、図13Cおよび13D(FaDu)、図14Cおよび14D(KB)、図15Cおよび15D(HT29)、並びに図16Cおよび16D(MDA-MB231)(上から下の臓器:腫瘍、心臓、肺、脾臓、膵臓、筋肉、胃、小腸、大腸、肝臓、および腎臓)に示すようにイメージングした。腫瘍に加えて、肝臓および腎臓において、色素コンジュゲートの最小限の取り込み、または取り込みが全くないことが観察された。これらの臓器における取り込みは受容体介在性ではなく、腎臓または肝臓経路を介したコンジュゲートの排出に大きく起因した。理論に拘束されることを意図しないが、癌細胞はFAP陰性であるので、NIR色素コンジュゲートのインビボでの取り込みは、FAPを発現することが知られている癌関連線維芽細胞における蓄積の結果として起こることが予測される。インビボで試験した場合、FAP標的色素コンジュゲートは、腫瘍においてFAP介在性取り込みを示した。他の臓器(腎臓および肝臓)は、近赤外コンジュゲートの最小限の取り込み、または取り込みが全くないことのいずれかを示した。
【0196】
インビボ治療試験MDA-MB231:5~6週齢のメスnu/nu胸腺欠損ヌードマウスに、肩に5百万個の乳癌細胞(MDA-MB-231)を皮下注射した。ノギスでの処理の間、毎日または1日おきのいずれかで、腫瘍を2つの垂直な方向で測定し、その体積を0.5xLxW[式中、Lは最長の軸(ミリメートル)であり、WはLに垂直な軸(ミリメートル)である]として計算した。腫瘍の体積が~100mmに達した後、マウスを無作為に様々な群に分け、治療を開始した。投与溶液を滅菌生理食塩水中に調製し、尾静脈を介して静脈内注射した。毎日または1日おきのいずれかで、対照群におけるマウスに滅菌生理食塩水を注射し、一方で治療群におけるマウスには40ナノモルのJFL-L1-TubBHを注射した。図18Aに示すように、40ナノモルのJFL-L1-TubBHを投与されることに加えて、競合群のマウスに、リンカー(JFL-L1)にコンジュゲートした100倍過剰量のFAP標的リガンドもまた投与した。図18Bに示すように、マウスを各投与時における全体の毒性の測定として秤量した。
【0197】
FAP標的ツブリシンコンジュゲートのインビボ有効性の調査のために、MDA-MB-231腫瘍異種移植片をJFL-L1-S0456で処理した。治療期間中、対照群および競合群におけるマウスは、腫瘍体積の減少を示さなかった。治療群において、マウスに40ナノモルのJFL-L1-TubBHを投与し、治療剤の投与頻度に応じて2つの別個の群に分けた。対照群および競合群と比較すると、両方の治療群におけるマウスは、腫瘍体積の大きな減少が示された。1日おきにJFL-L1-TubBHで処理したマウスは完全な応答を示さず、むしろ腫瘍増殖の遅延が観察された。一方で、マウスが毎日同じ用量のJFL-L1-TubBHで処理された場合、完全な応答が観測された。研究を通して、マウスの体重を全体の毒性の測定として追跡した。1日おきにJFL-L1-TubBHを投与した完了および治療群の生理食塩水中のマウスは、体重の減少を示さなかった。FAP標的ツブリシンで処理したマウスは、約5%の体重の減少を示したが、同じマウスは治療の終了に向けて体重が増加した。
【0198】
FAP標的TubBHと、葉酸標的PI3キナーゼ阻害剤またはTLR7アゴニストを用いた、インビボ併用療法:
【0199】
4~5週齢メスBALB/cマウスに、乳脂肪体近位に100,000個の4T1細胞を注射した。腫瘍体積が~100mmに達した後、マウスを様々な群に無作為に分け、治療を開始した。FAP標的ツブリシンBヒドラジドコンジュゲート(JFL-L1-TubBH)、葉酸標的PI3キナーゼ阻害剤(FA-PI3K)、および葉酸標的TLR7アンタゴニスト(FA-TLR7)の投与溶液を、滅菌生理食塩水中に調製し、尾静脈を介して静脈内注射した。対照群のマウスに滅菌生理食塩水を投与し、一方で治療群のマウスには、JFL-L1-TubBHもしくはFA-PI3KもしくはFA-TLR7を単体で、または他の1つの治療剤(JFL-L1-TubBH、FA-PI3K、またはFA-TLR7)との組み合わせでのいずれかで投与した。治療に用いられる単回投与の濃度は、20nmolのJFL-L1-TubBH、10nmolのFA-PI3K、および10nmolのFA-TLR7であった。マウスに毎日、試験薬剤を注射し、次いで腫瘍体積を測定した(ノギス)。全体の毒性の測定として、マウスの体重もまた、それぞれの投与において追跡した。FAP競合群におけるマウスに、過剰なFAPリガンド、JFLの存在下、FAP標的ツブリシンBヒドラジドを投与した。
【0200】
図19Aに示すように、対照および競合(FAP競合)群における、4T1腫瘍含有マウスは、腫瘍体積の減少を示さなかった。2つの群を比較すると、FAP標的ツブリシンBヒドラジド(JFL-L1-TubBH)、または葉酸標的PI3キナーゼ阻害剤(FA-PI3K)、またはTLR7アンタゴニスト(FA-TLR7)のいずれかの単一の薬剤で処理したマウスは、腫瘍の増殖を遅延させた。FAPおよび葉酸標的化学療法剤の併用療法の効果を調査するため、併用療法群におけるマウスを2つの異なる群に分けた。1つの群はFA-TLRとの組み合わせでJFL-L1-TubBHを投与され、一方で、他の群のマウスはJFL-L1-TubBHと共にFA-PI3Kを投与された。単一の薬剤の治療と比較すると、いずれの併用療法も、付加的な腫瘍体積の減少を示した。治療を通して、全体の毒性の測定としてマウスの体重を追跡した。図19Bに示すように、いずれの群も体重の減少は示さなかった。
【0201】
インビボFAP標的CAR T細胞療法:5百万個の癌細胞を注射することによって、MDA-MB-231皮下腫瘍をメスNSGマウスにおいて発生させた。腫瘍体積が~100mmに達した後、マウスを無作為に3つの異なる群に分け、治療を開始した。全ての群におけるマウスに、フルオレセインに特異的かつ強固に結合するscFvドメインを有する、1500万個のCAR T細胞を投与した。CAR T細胞の投与の2時間後、全ての群におけるマウスに、それぞれの試験薬剤の初回投与を行った。対照群におけるマウスに滅菌生理食塩水を注射し、一方で治療群におけるマウスに、JFL-L1-FM(10nmol)を単体で、または100倍過剰のFAPリガンド、JFLとの組み合わせのいずれかで注射した。治療の間、異なる群におけるマウスに、1日おきにそれぞれの試験薬剤を静脈内投与した。全体の毒性の測定として、マウスを各投与においてまた秤量した。
【0202】
MDA-MB-231マウス異種移植モデルを用いて、FAP標的FMコンジュゲート(JFL-L1-FM)のフルオレセインフラグメントを認識するscFVドメインを有するCAR T細胞の効果を調査した。図20Aに示すように、対照群および競合群におけるマウスは、腫瘍の増殖率において違いを示さなかった。試験の最初において、CAR T細胞およびFAP標的FM(JFL-L1-FM)で処理した試験マウスは、腫瘍体積の減少を示さなかった。しかし、治療の1週間後、腫瘍増殖においてわずかな違いが観測された。図20Bに示すように、任意の試験群で、体重の減少は観察されなかった。FAP標的CAR T細胞療法は腫瘍を死滅させる可能性を有するが、CAR T細胞およびJFL-L1-Fの用量は、治療の初期に腫瘍抑制を誘導するように最適化する必要があることが結果から示唆される。
【0203】
JFL-L2-S0456を用いたインビボイメージング:MDA-MB-231腫瘍を有する胸腺欠損メスマウスに、5nmolのJFL-L2-S0456を静脈内注射した。注射の2時間後、マウスをCOを用いて犠死させ、IVIS Lumina IIを用いてイメージングを得た。全身のイメージングの完了後、臓器を採取して、さらにイメージングし、これらの臓器におけるJFL-L2-S0456の蓄積を調査した。
【0204】
図22A~Cに示すように、MDA-MB-231異種移植片を用いて、PEGおよびペプチドグリカンリンカー、JFL-L2-S0456から成る、FAP標的NIRコンジュゲートのインビボイメージング能を調査した。全身のイメージングによって、注射の2時間後、コンジュゲートが腫瘍に蓄積されることが分かったことが明らかになった。重要な臓器/組織の生体内分布によってさらに、腫瘍が色素コンジュゲートを最も高く取り込んでいたことが確認された。腫瘍に加えて、JFL-L2-S0456の取り込みを示した他の2つの臓器は、肝臓および腎臓であった。腎臓における取り込みは、肝臓と比較して高かった。腎臓および肝臓は、小分子の排出において重要な役割を示す。これらの臓器におけるFAP標的色素コンジュゲートの取り込みは、腎臓および肝臓経路を介した、蛍光コンジュゲートの排出によるものであったことがデータから示唆される。他のいずれの臓器においても、取り込みは観測されなかった。
【0205】
異なる濃度のJFL-L1-S0456を用いたインビボイメージング:MDA-MB-231腫瘍含有メス胸腺欠損ヌードマウスに、5、10、または20nmolのJFL-L1-S0456を静脈内注射した。2時間後、マウスをCOを用いて犠死させ、IVIS Lumina IIでイメージングした。図23に示すように、全身のイメージングが完了した後、生体内分布を行い、臓器をイメージングしてJFL-L1-S0456の蓄積を調査した。
【0206】
用量依存的様式におけるJFL-L1-S0456の取り込みを調査するために、MDA-MB-231腫瘍異種移植片に、5、10、および20nmolの色素コンジュゲートを投与した。用量の増加と腫瘍の蛍光強度の増加の間の直接的な相関関係が観察された。5nmolの群におけるマウスと比較して、10nmolの群においては、腫瘍の蛍光強度の2倍の増加が観測された。5および10nmolの群における腫瘍の蛍光強度は、10の範囲にあることが分かったが、一方で20nmolの群における取り込みは10の範囲であった。このように、腫瘍の蛍光強度はより高用量のJFL-L1-S0456の投与によって増加することが分かり、最大で20nmolまで飽和の兆候を示さなかった。
【0207】
カクテルイメージング:FAPαおよびLHRH-R標的NIRコンジュゲート
メス胸腺欠損マウスにMDA-MB-231癌細胞を移植し、皮下腫瘍を発生させた。腫瘍含有マウスに、FAP標的NIRコンジュゲート、JFL-L1-S0456(5nmol)を単体で、または黄体形成ホルモン放出ホルモン受容体標的NIRコンジュゲート、JL-L3-S0456(5nmol)を単体で、または両方のコンジュゲートのいずれかを、静脈内注射した。注射の2時間後、マウスをCOで犠死させ、図24Aに示すように、Caliper IVIS Lumina IIでイメージングした。図24Bに示すように、全身のイメージングが完了した後、生体内分布を行って、全ての臓器をイメージングして、色素コンジュゲートのと取り込みを調査した。
【0208】
FAPおよびLHRH-Rのいずれも発現している癌をイメージングするために、FAP標的NIR色素(JFL-L1-S0456)および黄体形成ホルモン放出受容体(LHRH-R)標的NIR色素(JL-L3-S0456)の実現可能性を評価した。JFL-L1-S0456またはJL-L3-S0456を単体で注射した場合、MDA-MB-231腫瘍における色素コンジュゲートの取り込みは、同様の強度範囲において見られた。同じ腫瘍型に、JFL-L1-S0456およびJL-L3-S0456と同じ用量で共投与した場合、腫瘍の蛍光強度の増加が観測された。単一の薬剤(JFL-L1-S0456またはJL-L3-S0456のみ)の群と比較して、組み合わせの群における強度の増加は2倍以上であった。FAPおよびLHRH-R標的イメージング剤の組み合わせによるカクテルイメージングは、両方の標的について優性である腫瘍のより良いイメージングを提供するために、効率的に用いることができることが結果から示唆される。
【0209】
99mTc標的JFL-L3を用いたインビトロ結合試験:ヒトFAPα形質転換HEK293細胞を、アミンコート24ウェルプレートに播種し、単層で生育させた。用いた培地を、様々な濃度の99mTc標識FAPコンジュゲート(JFL-L3)を含む培地で置き換えた。ブロッキング試験のために、細胞を過剰のJFLの存在下で、99mTc標識JFL-L3で処理した。2時間インキュベートした後、細胞を生育培地で3回洗浄し、非結合の放射性コンジュゲートを除去し、0.5mlの0.25N NaOH中に溶解させた。細胞結合放射能を、ガンマシンチレーション計測器を用いて計測した。Graph Pad Prismを用いたデータ解析によって見かけのKを決定し、これを図26に示す。
【0210】
インビボ放射性イメージング:MDA-MB-231腫瘍含有胸腺欠損ヌードマウス(メス)に、150μCiの99mTc標識JFL-L3を単体で、または100倍過剰量のJFLの存在下で、静脈内注射した。2時間後、マウスをCO窒息によって犠死させ、図27Aに示すように、KODAK Image Stationでイメージングした。放射性イメージングに用いたパラメーターは:獲得時間=2分、f-ストップ=4、焦点面=7、FOV=200、ビニング=4であった。白色光イメージングについて、パラメーターは:獲得時間=0.05秒、f-ストップ=11、焦点面=7、FOV=200、ビニングなしであった。生体内分布試験のために、剖検を行って、臓器/血液/組織を採取した。全ての臓器/血液/組織に関連する放射能を、ガンマ計測器を用いて計測した。
【0211】
99mTc放射性イメージングのために、FAP標的コンジュゲート(JFL-L3)を標準的な固相ペプチド合成によって合成した。ヒトFAPで形質転換したHEK細胞においてインビトロで試験した場合、99mTc標識FL-L3は、10.5nMの低いナノモラー結合(K)を示した。インビトロ試験の後、図27Bに示すように、放射性標識化合物を静脈内投与することによって、MDA-MB-231腫瘍異種移植片において、99mTc標識JFL-L3のインビボ標的を調査した。FAP標的放射性コンジュゲートは、腫瘍および腎臓において蓄積したことが観察された。腫瘍および腎臓以外の他の臓器は、放射性標識化合物の取り込みが非常に低いか全くないことが示された。競合実験において、過剰なJFLは腫瘍において99mTc標識JFL-L3の腫瘍取り込みを阻害することが分かり、これは腫瘍における放射性トレーサーの蓄積がFAPによって介在されることを示唆する。反対に、図27Cに示すように、腎臓における取り込みは、過剰なJFLの投与によって阻害されなかった。このことから、腎臓における放射性トレーサーの取り込みはむしろ非特異的であることが示唆された。親水性の小分子は腎臓経路によって排出されることが多いため、腎臓における取り込みは一過性である可能性がある。このデータから、99mTc標識JFL-L3は、標的抗原を欠く臓器に対して最小限の損傷を生じながら、腫瘍発現FAPに蓄積することができることが示唆される。
【0212】
本明細書と矛盾する開示または定義の場合に、本明細書における開示または定義が優先するとみなされるものとされる事象を除いて、本明細書で引用されるそれぞれのおよび全ての特許公報、非特許公報、および参照文献の全内容は、引用によって本明細書に援用される。
【0213】
要素に関する不定冠詞「a」および「an」の使用は、いくつかの実施態様において、そのような要素が複数存在することを排除するものではないことが理解されるべきである。
【0214】
前記の詳細な説明および添付の図面は、説明および例示の目的で提供され、付属の特許請求の範囲を限定することを意図しない。本明細書において例示される現在の好ましい実施態様における多くの改変は、当業者に明らかであり、付属の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内である。
【0215】
付属の特許請求の範囲において列挙される要素および特徴は、同様に本発明の範囲内に含まれる新たな請求項を生成するように、異なる方法で組み合わされてもよいことが理解されるべきである。そのため、以下の付属の従属請求項は単一の独立または従属請求項に従属するのみであるが、これらの従属請求項は、独立であるか従属であるかを問わず、任意の前記の請求項からの別のものに従属させることができ、そのような新たな組み合わせは、本明細書の一部を形成すると理解されるべきであることが理解されるべきである。
図1
図2
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